JP2023142848A - 半芳香族ポリアミド樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】嵩密度が高く、運搬・保管効率を向上させることができる半芳香族ポリアミド樹脂組成物を提供すること。【解決手段】本開示の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が280℃以上である半芳香族ポリアミド樹脂を含む。当該半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量は、100mmol/kg以下である。【選択図】なし

Description

本開示は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物及び成形体に関する。
従来から、半芳香族ポリアミド樹脂は、耐熱性が高く、低吸水性に優れていることから、電気電子部品用や自動車用等の種々の部品の材料として広く用いられている。
これらの用途に用いる半芳香族ポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物には、それぞれの用途に応じた特性を発現するため、様々な添加物が添加される。
例えば、特許文献1には、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分、モノカルボン酸成分からなる半芳香族ポリアミド(A)と、当該半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対して0.01~3質量部の銅化合物(B)と、0.1~5質量部のハロゲン化アルカリ金属化合物(C)とを含む半芳香族ポリアミド樹脂組成物が記載されている。また、半芳香族ポリアミド(A)のモノカルボン酸成分は、0.3~4モル%であることが記載されている。
このようなポリアミド樹脂組成物は、通常、半芳香族ポリアミド樹脂と種々の添加物とを、押出機等で溶融した状態で混錬されて、ペレット状に成形される。そして、当該ペレット状に成形されたポリアミド樹脂組成物は、ユーザーにて射出成型機等により所望の形状に成形される。
特開2015-61892号公報
上記の通り、ポリアミド樹脂組成物は、ユーザーにおいて射出成型機等で成形されるまでの間は、ペレットの状態で運搬又は保管される。しかしながら、特許文献1のような従来のポリアミド樹脂組成物のペレットは、嵩密度が低かった。嵩密度が低いペレットは、運搬又は保管する際に、同じ体積で運搬又は保管できる量が少ないため、運搬・保管効率が低下するという問題があった。このような現象は、脂肪族ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物では見られなかったが、半芳香族ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物において顕著であった。
これらの事情に鑑み、本開示は、嵩密度が高く、運搬・保管効率を向上させることができる半芳香族ポリアミド樹脂組成物及び成形体を提供することを目的とする。
即ち、本開示は、以下の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を提供する。
[1]示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が280℃以上である半芳香族ポリアミド樹脂を含み、前記半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量が100mmol/kg以下である、半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[2] 前記半芳香族ポリアミド樹脂の末端アミノ基量は、末端カルボキシ基量よりも多い、[1]に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[3]前記半芳香族ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位と、ジアミンに由来する構成単位とを含み、前記ジカルボン酸に由来する構成単位の含有量a(モル)と、前記ジアミンに由来する構成単位の含有量b(モル)の比a/bは、0.97以下である、[1]又は[2]に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[4] 前記半芳香族ポリアミド樹脂の分子末端は、モノカルボン酸で封止されている、[1]~[3]のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[5] 前記半芳香族ポリアミド樹脂の末端アミノ基量と末端カルボキシ基量の合計量は、130mmol/kg以下である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[6] 前記半芳香族ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位と、ジアミンに由来する構成単位とを含み、前記ジカルボン酸に由来する構成単位は、20~100モル%のテレフタル酸に由来する構成単位と、0~80モル%の、テレフタル酸以外の芳香族カルボン酸に由来する構成単位又は炭素数4~10の脂肪族カルボン酸に由来する構成単位と、を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[7] 前記半芳香族ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位と、ジアミンに由来する構成単位とを含み、前記ジカルボン酸に由来する構成単位は、テレフタル酸に由来する構成単位と、イソフタル酸に由来する構造単位とを含み、前記ジアミンに由来する構成単位は、主鎖の炭素数が4~15である脂肪族ジアミンに由来する構成単位を含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[8] 前記半芳香族ポリアミド樹脂組成物に対して0.01~3質量%の銅系の耐熱安定剤をさらに含む、[1]~[7]のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[9] 前記半芳香族ポリアミド樹脂組成物に対して15~70質量%の強化材を含む、[1]~[8]のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[10] 前記半芳香族ポリアミド樹脂組成物の嵩密度が50g/ml以上である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
本開示は、以下の成形体を提供する。
[11] [1]~[10]のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を含む、成形体。
[12] 自動車用部品である、[11]に記載の成形体。
[13] 自動車冷却系部品である、[12]に記載の成形体。
本開示によれば、嵩密度が高く、運搬・保管効率を向上させることができる半芳香族ポリアミド樹脂組成物及び成形体を提供することができる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を
それぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
1.半芳香族ポリアミド樹脂組成物
本開示の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド樹脂を含む。
1-1.半芳香族ポリアミド樹脂
半芳香族ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)と、ジアミンに由来する構成単位(a2)とを含む。
[ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)]
ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)は、融点(Tm)が高く、耐熱性に優れる半芳香族ポリアミド樹脂を得る観点から、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位を含む。
芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びそれらのエステル等が含まれる。芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位は、1種又は2種以上が含まれてもよい。中でも、結晶性が高く、耐熱性が高い半芳香族ポリアミド樹脂を得る観点等から、ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)は、テレフタル酸に由来する構成単位を含むことが好ましい。
テレフタル酸に由来する構成単位の含有量は、ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)の総モル数に対して、20~100モル%であることが好ましく、50~100モル%であることがより好ましく、60~80モル%であることがさらに好ましい。テレフタル酸に由来する構成単位の含有量が20モル%以上であると、半芳香族ポリアミド樹脂の融点(Tm)を十分に高めることができ、耐熱性や機械的強度を高めやすい。
ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)は、テレフタル酸以外のジカルボン酸に由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。テレフタル酸以外のジカルボン酸の例には、イソフタル酸、2-メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;2,5-フランジカルボン酸等のフランジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の炭素数4~20、好ましくは4~10の脂肪族ジカルボン酸が含まれる。テレフタル酸以外のジカルボン酸に由来する構成単位は、1種のみ含まれてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
中でも、耐熱性、低吸水性を維持しやすくする観点では、テレフタル酸以外のジカルボン酸に由来する構成単位は、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位であることが好ましく、ガラス転移温度Tgを一定以下に調整しやすい観点から、イソフタル酸に由来する構成単位であることがさらに好ましい。一方、成形時の流動性を確保の観点では、テレフタル酸以外のジカルボン酸に由来する構成単位は、炭素数4~10の脂肪族カルボン酸に由来する構成単位であることが好ましい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸に由来する構成単位の含有量は、ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)の総モル数に対して、0~80モル%であることが好ましく、0~50モル%であることがより好ましく、20~40モル%であることがさらに好ましい。上記含有量が0モル%よりも多いと、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の流動性をより高めやすい。上記含有量が80モル%以下であると、半芳香族ポリアミド樹脂の融点が低くなりすぎず、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の耐熱性が損なわれにくい。
[ジアミンに由来する構成単位(a2)]
ジアミンに由来する構成単位(a2)は、少なくとも脂肪族ジアミンに由来する構成単位と、脂環族ジアミンに由来する構成単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、脂肪族ジアミンに由来する構成単位を含むことがより好ましい。
脂肪族ジアミンに由来する構成単位は、主鎖の炭素数が4~15、好ましくは6~12の脂肪族ジアミンに由来する構成単位であることが好ましい。脂肪族ジアミンは、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン等の直鎖状のアルキレンジアミンであってもよいし;2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、及び2-メチル-1,8-オクタンジアミン等の分岐状のアルキレンジアミンであってもよい。中でも、耐熱性の観点では、直鎖状のアルキレンジアミンが好ましく、1,6-ジアミノヘキサンがより好ましい。例えば、脂肪族ジアミンに由来する構成単位は、直鎖状のアルキレンジアミン、好ましくは1,6-ジアミノヘキサンに由来する構成単位を、好ましくは90モル%以上含むことが好ましい。脂肪族ジアミンに由来する構成単位は、1種のみ含まれてもよいし、2種以上含まれてもよい。
脂肪族ジアミンに由来する構成単位の含有量は、ジアミンに由来する構成単位(a2)の総モル数に対して、50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましい。脂肪族ジアミンに由来する構成単位の含有量が50モル%以上であると、成形時の半芳香族ポリアミド樹脂組成物の流動性をより高めやすい。
脂環式ジアミンに由来する構成単位は、炭素数が4~20、好ましくは4~15の脂環式ジアミンに由来する構成単位であることが好ましい。脂環式ジアミンの例には、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が含まれる。
ジアミンに由来する構成単位(a2)は、上記以外の他のジアミンに由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。他のジアミンの例には、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、2,6-ジアミノナフタレン、2,7-ジアミノナフタレン等の芳香族ジアミンが含まれる。
半芳香族ポリアミド樹脂の好ましい例には、ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)が、テレフタル酸由来の構成単位と、イソフタル酸由来の構造単位とを含み、ジアミンに由来する構成単位(a2)が、主鎖の炭素数が4~15である脂肪族ジアミン由来の構成単位を含む半芳香族ポリアミド樹脂(例えば6T6I)や;ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)が、テレフタル酸に由来する構成単位と、炭素数が4~10である脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位とを含み、ジアミンに由来する構成単位(a2)が、主鎖の炭素数が4~15である脂肪族ジアミン由来の構成単位を含む半芳香族ポリアミド樹脂(例えば6T66)が含まれる。
半芳香族ポリアミド樹脂の分子末端は、末端封止剤により封止されていてもよい。それにより、半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]がより適切な範囲に調整されうる。
末端封止剤の例には、モノカルボン酸やモノアミンが含まれる。モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸等の炭素数2~30の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸が含まれる。モノアミンの例には、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン等の脂肪族モノアミン;ベンジルアミン、メチルベンジルアミン等の芳香脂肪族モノアミンが含まれる。
上記の通り、従来の半芳香族ポリアミド樹脂組成物のペレットは、嵩密度が低かった。この理由は明らかではないが、半芳香族ポリアミド樹脂と他の添加物とを押出機等で溶融混錬する際に、半芳香族ポリアミド樹脂組成物が発泡しやすく、ペレットの表面が粗くなるためと考えられる。そして、当該発泡は、半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量が多いほど生じやすい。即ち、末端カルボキシ基が多く存在する系において、高温で溶融混練されると、末端カルボキシ基からの脱炭酸によってガス等が発生しやすく、そのガスにより樹脂組成物が発泡しやすい。このような現象は、融点が比較的低く、溶融温度も低い脂肪族ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物ではほとんど見られなかったのに対し、融点が比較的高く、溶融温度も高い半芳香族ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物では顕著であった。
これに対し、本開示では、半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量は、100mmol/kg以下である。それにより、高温で溶融混練しても、末端カルボキシ基の脱炭酸によるガス発生等を少なくすることができる。それにより、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の発泡を少なくし、嵩密度の低下を低減できる。それにより、嵩密度が高いペレットを得ることができ、運搬・保管効率を高めることができる。半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量は、好ましくは80mmol/kg以下であり、より好ましくは70mmol/kg以下であり、さらに好ましくは60mmol/kg以下である。また、半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量の下限値は、特に制限されないが、副反応等を一層生じにくくし、重合反応を一層促進してポリアミド樹脂の生産性を向上させる観点から、20mmol/kg以上でありうる。
末端カルボキシ基量([COOH])とは、半芳香族ポリアミド1kg中に含有する末端カルボキシ基の量(単位:mmol)を指し、以下の方法により測定及び算出される。
ポリアミド樹脂30mgを重水素化ヘキサフロロイソプロパノール(HFIP)0.5mLに溶解し、NMR測定用サンプルとする。サンプルについて、ECA-500型核磁気共鳴装置を用いて、H-NMR測定を行い、得られたスペクトル中の、ポリマーを構成する各成分の水素由来のピーク面積からポリマーの分子量を算出し、末端基特有の水素由来のピーク面積の、各成分の水素由来のピーク面積の総和に対する比率と、ポリマーの分子量の値とから、末端基量(mmol/kg)を算出する。なお、H-NMR測定は、繰り返し時間10秒、積算回数256回、測定温度50℃の条件で行うことが好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量は、反応させるジアミンとジカルボン酸の比率(ジカルボン酸に由来する構成単位の含有量a(モル)と、ジアミンに由来する構成単位の含有量b(モル)の比a/b)や末端封止量により調整することができる。例えば、半芳香族ポリアミド樹脂の上記比a/bを大きくすれば、末端カルボキシ基量は少なくなる。また、半芳香族ポリアミド樹脂の末端封止量を多くすれば、末端カルボキシ基量は少なくなる。
半芳香族ポリアミド樹脂の末端アミノ基量は、末端カルボキシ基量よりも多いことが好ましい。高温で混練したときの樹脂の熱劣化により生じるラジカルを末端アミノ基により捕捉して安定化させやすく、樹脂の分解によるガス発生を一層少なくしうる。また、使用環境下においても、末端アミノ基がラジカルを捕捉しやすいため、高温保存後の引張強度の低下も一層低減しうる。例えば、末端アミノ基量と末端カルボキシ基量の差(末端アミノ基量―末端カルボキシ基量)は、好ましくは5mmol/kg以上、より好ましくは10mmol/kg以上である。具体的には、半芳香族ポリアミド樹脂の末端アミノ基量は、好ましくは40~200mmol/kgであり、より好ましくは40~180mmol/kgである。末端アミノ基量が200mmol/kg以下であると、アミン同士が反応した上で架橋構造が生成することによる増粘を抑制しやすく、40mmol/kg以上であると、溶融混錬時の樹脂の分解によるガス発生を一層抑制しうる。
末端アミノ基量([NH])とは、半芳香族ポリアミド1kg中に含有する末端アミノ基の量(単位:mmol)を指し、以下の方法により測定及び算出される。
まず、半芳香族ポリアミド樹脂1gをフェノール35mLに溶解させ、メタノールを2mL混合し、試料溶液とする。そして、チモールブルーを指示薬として、当該試料溶液に対して0.01規定のHCl水溶液を使用して青色から黄色になるまで、電位差滴定装置(例えばメトローム社製の電位差滴定装置)により滴定を実施し、末端アミノ基量([NH]、単位:mmol/kg)を測定する。
半芳香族ポリアミド樹脂の末端アミノ基量と末端カルボキシ量との大小関係は、上記と同様、反応させるジアミンとジカルボン酸の比率(比a/b)や末端封止量により調整することができる。例えば、上記比(a/b)を小さくしたり、末端アミノ基の封止量を少なくしたりすれば、末端アミノ基量は相対的に多くなる。
半芳香族ポリアミド樹脂の末端アミノ基量と末端カルボキシ基量の合計は、好ましくは130mmol/kg以下であり、より好ましくは80~130mmol/kgである。上記合計が、130mmol/kg以下であると、親水性の官能基量の減少に伴い、使用環境下において、半芳香族ポリアミド樹脂の吸水や加水分解を一層抑制しやすい。そのため、VN維持率の低下を一層抑制できる。上記合計が80mmol/kg以上であると、末端アミノ基や末端カルボキシ基の量が十分であるため、これらの基と比較的親和性の良い添加剤やガラス繊維の分散不良を一層抑制できる。上記合計量は、より好ましくは90~130mmol/kg、さらに好ましくは100~120mmol/kgとしうる。
なお、耐熱老化性(加熱後の引張強度)を高める観点では、半芳香族ポリアミド樹脂の末端アミノ基量と末端カルボキシ基量の合計は、130mmol/kg以上であってもよい。例えば酸素存在下で成形品を高温処理したときの、半芳香族ポリアミド樹脂の両末端基周辺での熱劣化時の酸化によって、成形体内部を保護する膜(酸化膜)が成形体表面に形成され、成形体内部へ酸素がより浸透し難くなるからである。
ジカルボン酸に由来する構成単位の含有量a(モル)と、ジアミンに由来する構成単位の含有量b(モル)の比a/bは、好ましくは0.97以下であり、より好ましくは0.96未満である。上記比が0.97以下であると、末端カルボキシ基量を上記範囲に一層調整しやすい。上記比は、例えば0.90以上としうる。上記比a/bは、半芳香族ポリアミド樹脂を調製する際の、ジカルボン酸とジアミンの仕込み比によって特定してもよい。
半芳香族ポリアミド樹脂の、示差走査熱量測定(DSC)で測定されるガラス転移温度(Tg)は、100~145℃であることが好ましく、120~145℃であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂のTgが100℃以上であると、高温における分子の運動性を抑制し、耐熱性をより高めやすい。半芳香族ポリアミド樹脂のTgが145℃以下であると、溶融状態の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を冷却したときの固化速度を一層高めやすく、射出成形時のサイクルタイムをより短縮できる。
半芳香族ポリアミド樹脂の示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)は、好ましくは280℃以上であり、より好ましくは280~340℃、さらに好ましくは300~330℃である。半芳香族ポリアミド樹脂の融点が280℃以上であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の機械的強度や耐熱性を十分に高めやすく、340℃以下であると、成形温度を過剰に高くする必要がないため、溶融時における樹脂や他の成分の熱分解を一層抑制できる。
半芳香族ポリアミド樹脂の融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(例えばDSC220C型、セイコーインスツル社製)を用いて測定することができる。
具体的には、約5mgの半芳香族ポリアミド樹脂を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで350℃まで加熱する。樹脂を完全融解させるために、350℃で3分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却する。30℃で5分間置いた後、10℃/minで350℃まで2度目の加熱を行う。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)をポリアミド樹脂の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とする。
半芳香族ポリアミド樹脂の融点及びガラス転移温度は、半芳香族ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸やジアミンの種類等で調整されうる。例えば、テレフタル酸に由来する構成単位の含有量を増やせば、半芳香族ポリアミド樹脂の融点やガラス転移温度は高くなりやすい。
半芳香族ポリアミド樹脂の、温度25℃、96.5%硫酸中で測定される極限粘度[η]は、0.7~1.6dl/gであることが好ましく、0.8~1.2dl/gであることがより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]が0.7dl/g以上であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の機械的強度を十分に高めやすく、1.6dl/g以下であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の成形時の流動性が損なわれにくい。
半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度は、以下の方法で測定することができる。まず、約0.5gの半芳香族ポリアミド樹脂を96.5%濃硫酸50mlに溶解させる。そして、得られた溶液の、25℃±0.05℃の条件下での流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して測定する。その後、以下の式に基づいて、極限粘度を算出する。
[η]=ηSP/(C(1+0.205ηSP))
上記式において、各代数又は変数は、以下を表す。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
上記ηSPは、以下の式によって求められる。
ηSP=(t-t0)/t0
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
半芳香族ポリアミド樹脂は、例えば上述したジカルボン酸と、ジアミンとを均一溶液中で重縮合させて製造することができる。具体的には、ジカルボン酸とジアミンとを、国際公開第03/085029号に記載されているように触媒の存在下で加熱することにより低次縮合物を得て、次いで、この低次縮合物の溶融物にせん断応力を付与して重縮合させることで製造することができる。反応させるジカルボン酸とジアミンの比率(ジカルボン酸/ジアミン)は、上記比a/bと同様である。
また、半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量や末端アミノ基量、極限粘度を調整する観点等から、上記の通り、ジカルボン酸とジアミンとの反応系に末端封止剤を添加してもよい。
末端封止剤の添加量は、ジカルボン酸の合計量1モルに対して、0.07モル以下であることが好ましく、0.05モル以下であることがより好ましい。それにより、末端封止剤の一部は、半芳香族ポリアミド樹脂中に取り込まれ、末端カルボキシ基量や極限粘度[η]等を調整しうる。
半芳香族ポリアミド樹脂の含有量は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物に対して35~100質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂の含有量が上記範囲であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の成形性を損なうことなく、耐熱性を十分に高めうる。
1-2.他の成分
上記半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド樹脂以外の他の成分をさらに含んでもよい。
他の成分の例には、強化材、耐熱安定剤、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類及びリン類等)、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤(染色剤や顔料等)、他の熱可塑性樹脂(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂)等が含まれる。
このうち、例えば自動車用部品等に用いられる半芳香族ポリアミド樹脂組成物には、高い耐熱性や機械的強度を有することが求められる。従って、半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、耐熱安定剤や強化材をさらに含むことが好ましい。
1-2-1.耐熱安定剤
銅系の耐熱安定剤は、成形時における半芳香族ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させることができる。また、銅系の耐熱安定剤は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる。
銅系の耐熱安定剤は、(i)ハロゲンと元素周期律表の1族又は2族金属元素との塩(ハロゲン金属塩)と、(ii)銅化合物とを含み、必要に応じて(iii)高級脂肪酸金属塩をさらに含みうる。
(i)ハロゲン金属塩の例には、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウムが含まれる。中でも、ヨウ化カリウム及び臭化カリウムが好ましい。ハロゲン金属塩は、1種類のみ含まれてもよいし、2種類以上が含まれてもよい。
(ii)銅化合物の例には、銅のハロゲン化物、銅の塩(硫酸塩、酢酸塩、プロピオオン酸塩、安息香酸塩、アジピン酸塩、テレフタル酸塩、サルチル酸塩、ニコチン酸塩、ステアリン酸塩等)、及び銅のキレート化合物(銅とエチレンジアミン又はエチレンジアミン四酢酸等との化合物)が含まれる。中でも、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅、及び酢酸銅が好ましい。銅化合物は、1種類のみ含まれてもよいし、2種類以上が含まれてもよい。
(i)ハロゲン金属塩と(ii)銅化合物との含有質量比は、成形体の耐熱性や製造時の腐食性を改善しやすくする観点から、ハロゲンと銅とのモル比が、0.1/1~200/1、好ましくは0.5/1~100/1、より好ましくは2/1~40/1となるように調整されうる。
(iii)高級脂肪酸金属塩の例には、高級飽和脂肪酸金属塩及び高級不飽和脂肪酸金属塩が含まれる。
高級飽和脂肪酸金属塩は、炭素原子数6~22の飽和脂肪酸と、元素周期律表の1、2、3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等の金属元素(M1)との金属塩であることが好ましい。そのような高級飽和脂肪酸金属塩は、下記式(1)で示される。
CH(CHCOO(M1)...(1)
(式(1)中、金属元素(M1)は、元素周期律表の1、2、3族元素、亜鉛又はアルミニウムであり、nは、8~30でありうる。)
高級飽和脂肪酸金属塩の例には、カプリン酸、ウラデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸のリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カル
シウム塩、亜鉛塩及びアルミニウム塩が含まれる。
高級不飽和脂肪酸金属塩は、炭素原子数6~22の不飽和脂肪酸と、元素周期律表の1、2、3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等の金属元素(M1)との金属塩であることが好ましい。
高級不飽和脂肪酸金属塩の例には、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビル酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸、2-ヘキサデセン酸、7-ヘキサデセン酸、9-ヘキサデセン酸、ガドレイン酸、ガドエライジン酸、11-エイコセン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩及びアルミニウム塩が含まれる。
銅系の耐熱安定剤の例には、10~12質量%のヨウ化銅(I)と90~88質量%のヨウ化カリウムの混合物や、14.3質量%のヨウ化銅(I)と85.7質量%のヨウ化カリウム/ジステアリン酸カルシウム(98:2質量比)との混合物等が含まれる。
半芳香族ポリアミド樹脂組成物中の銅系の耐熱安定剤の含有量は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物に対して0.01~3質量%であり、0.01~2質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましい。銅系の耐熱安定剤の含有量が、半芳香族ポリアミド樹脂組成物に対し0.01質量%以上であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の流動性及び耐熱老化性をより高めることができる。また、銅系の耐熱安定剤の含有量が多いほど、ペレットを作製するための溶融混練時に、半芳香族ポリアミド樹脂のアミド基のカルボニル部分と銅系の耐熱安定剤の銅との相互作用により、半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基からの脱炭酸がさらに促進されること(さらなる発泡)を生じやすい。そのような場合に、半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量を一定以下に調整することが特に有効である。また、3質量%以下であると、成形体の機械的強度が一層損なわれにくい。
1-2-2.強化材
強化材は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物に高い機械的強度を付与しうる。強化材の例には、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ミルドファイバー及びカットファイバー等の繊維状強化材、並びに粒状強化材が含まれる。これらのうち、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、成形体の機械的強度を高めやすいこと等から、ワラストナイト、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカーが好ましく、ワラストナイト又はガラス繊維がより好ましい。
繊維状強化材の平均繊維長は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の成形性、及び得られる成形体の機械的強度や耐熱性の観点から、例えば1μm~20mm、好ましくは5μm~10mmとしうる。また、繊維状強化材のアスペクト比は、例えば5~2000、好ましくは30~600としうる。
繊維状強化材の平均繊維長と平均繊維径は、以下の方法により測定することができる。
1)半芳香族ポリアミド樹脂組成物を、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させた後、濾過して得られる濾過物を採取する。
2)前記1)で得られた濾過物を水に分散させ、光学顕微鏡(倍率:50倍)で任意の300本それぞれの繊維長(Li)と繊維径(di)を計測する。繊維長がLiである繊維の本数をqiとし、次式に基づいて重量平均長さ(Lw)を算出し、これを繊維状強化材の平均繊維長とする。
重量平均長さ(Lw)=(Σqi×Li)/(Σqi×Li)
同様に、繊維径がDiである繊維の本数をriとし、次式に基づいて重量平均径(Dw)を算出し、これを繊維状強化材の平均繊維径とする。
重量平均径(Dw)=(Σri×Di)/(Σri×Di)
強化材の含有量は、特に制限されないが、半芳香族ポリアミド樹脂組成物に対して、例えば15~70質量%、好ましくは15~50質量%、より好ましくは30~50質量%とすることができる。強化材の含有量が好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の機械的強度を一層高めやすい。強化材の含有量が好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下であると、混練時の発熱により上記発泡が促進されるのを一層抑制しやすい。
1-3.物性
本開示では、運搬・保管効率を向上させること観点から、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の嵩密度は好ましくは50g/ml以上であり、より好ましくは55g/ml以上である。半芳香族ポリアミド樹脂組成物の嵩密度の上限値は、特に制限されないが、例えば、70g/ml以下である。
嵩密度の測定は、以下の方法で測定することができる。即ち、上記半芳香族ポリアミド樹脂組成物のペレットを、100mLメスシリンダーで100mL測り取り、重量を測定する。同様の操作を3回行い、その平均値から嵩密度を算出する。
嵩密度は、上記の通り、末端カルボキシ基量により調整することができる。即ち、上記比a/bを大きくしたり、末端封止量を多くしたりすると、半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基に起因する発泡をより少なくすることができ、嵩密度はより高くなりやすい。
なお、半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、粉末状であってもよいし、ペレット状であってもよい。ペレットの形状は、特に制限されず、扁平な丸型や楕円型であってもよいし、円柱状等であってもよい。ペレットの大きさも、特に制限されないが、例えば円柱状ペレットでは、好ましくは直径が2.0~6.0mm、長さが2.0~6.0mmである。球状ペレットでは、好ましくは直径が2.0~6.0mmである。楕円柱状ペレットでは、好ましくは短径が1.0~3.0mm、長径が2.0~6.0mm、長さが2.0~6.0mmであるが、いずれもこれらに制限されるものではない。
1-3.製造方法
上記半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、上記半芳香族ポリアミド樹脂、及び必要に応じて他の成分を、公知の樹脂混練方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、又はタンブラーブレンダーで混合する方法、或いは混合後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、又はバンバリーミキサーで溶融混練した後、造粒又は粉砕する方法で製造することができる。
2.ポリアミド樹脂組成物の用途
上記半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、圧縮成形法、射出成形法、押出成形法等の公知の成形法で成形することにより、各種ポリアミド成形体として用いられる。
上記半芳香族ポリアミド樹脂組成物の成形体は、各種用途に用いることができる。そのような用途の例には、自動車部品、電気電子部品、雑貨部品、土木建築用品等が挙げられる。
自動車部品としては、例えば、エンジンカバー、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエタータンク、ラジエターサポート、ラジエターホース、ラジエターグリル、インタークーラーのエンドキャップ、タイミングベルトカバー、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンマウント等のエンジン周辺部品、ラジエタータンク部品、冷却液リザーブタンク、ウォーターインレットパイプ、ウォーターアウトレットパイプ、ウォーターポンプハウジング、ウォーターポンプインペラ、ウォーターバルブ等のウォーターポンプ部品等の自動車冷却系部品、プロペラシャフト、スタ ビライザーバーリンケージロッド、アクセルペダル、ペダルモジュール、シールリング、ベアリングリテーナー、ギア、ドリブンギア、電動パワステアリングギア等の機構部品、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、燃料タンク、燃料チューブ、フューエルカットオフバルブ、キャニスター、フューエルデリバリーパイプ、フューエルフィラーネック、フューエルセンダーモジュール、燃料配管用継手等の燃料・配管系部品、ワイヤーハーネス、リレーブロック、センサーハウジング、エンキャプシュレーション、イグニッションコイル、ディストリビューター、サーモスタットハウジング等のサーモスタット筐体、クイックコネクター、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプソケット、ホーン用ボビン、バスバー等の電装系部品、マフラーカバー、吸気ダクト、リアスポイラー、ホイールカバー、ホイールキャップ、カウルベントグリル、エアアウトレットルーバー、エアスクープ、フードバルジ、フェンダー、バックドア、シフトレバーハウジング、ウインドーレギュレータ、ドアロック、ドアハンドル、アウトサイドドアミラーステー等の各種内外装部品が挙げられる。
電気電子部品としては、例えば、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー 、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗 器、IC、LEDのハウジング、各種筐体が挙げられる。
雑貨部品としては、例えば、樹脂ネジ、時計枠、ファスナーが挙げられる。
中でも、本開示の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、機械的強度や耐熱性に優れるため、自動車用部品に好適に使用することができる。また、半芳香族ポリアミド樹脂組成物はVN維持率も良好であるため、自動車冷却系部品にも好適に使用することができる。
以下、実施例を参照して本開示を更に具体的に説明するが、本開示の範囲は実施例の記載に限定されない。
1.半芳香族ポリアミド樹脂の調製
(半芳香族ポリアミド樹脂PA-1の調製)
1,6-ジアミノヘキサン2940g(25.3モル)、テレフタル酸2774g(16.7モル)、イソフタル酸1196g(7.2モル)、安息香酸73.3g(0.60モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7g及び蒸留水545gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温させた。このとき、オートクレーブの内圧を3.03MPaまで昇圧させた。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して、低次縮合物を抜き出した。その後、この低縮合物を室温まで冷却後、低次縮合物を粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥させた。得られた低次縮合物の水分量は4100ppm、極限粘度[η]は0.15dl/gであった。
次に、この低次縮合物を棚段式固相重合装置に入れ、窒素置換後、約1時間30分かけて180℃まで昇温させた。その後、1時間30分反応させて、室温まで降温させた。得られたプレポリマーの極限粘度[η]は、0.20dl/gであった。
その後、得られたプレポリマーを、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度を330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合させて、半芳香族ポリアミド樹脂PA-1を得た。
(半芳香族ポリアミド樹脂PA-2~PA-6及びPA-9の調製)
各成分の配合量を表1に示されるように変更した以外は半芳香族ポリアミド樹脂PA-1と同様にして半芳香族ポリアミド樹脂PA-2~PA-6及びPA-9を調製した。
(脂肪族ポリアミド樹脂PA-7及びPA-8の調製)
各成分の配合量を表1に示されるように変更し、且つ合成時の内部温度を230℃、内圧を2.0MPa、押出時の温度を300℃とした以外は半芳香族ポリアミド樹脂PA-1と同様にして脂肪族ポリアミド樹脂PA-7及びPA-8を得た。
[物性の測定]
上記調製したポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量、末端アミノ基量、融点、ガラス転移温度及び極限粘度[η]は、以下の方法で測定した。
(末端カルボキシ基量)
ポリアミド樹脂30mgを重水素化ヘキサフロロイソプロパノール(HFIP)0.5mLに溶解し、NMR測定用サンプルとした。サンプルについて、ECA-500型核磁気共鳴装置を用いて、H-NMR測定を行い、得られたスペクトル中の、ポリマーを構成する各成分の水素由来のピーク面積からポリマーの分子量を算出し、末端基特有の水素由来のピーク面積の各成分の水素由来のピーク面積の総和に対する比率と、ポリマーの分子量の値から、末端基量(mmol/kg)を算出した。なお、H-NMR測定は、繰り返し時間10秒、積算回数256回、測定温度50℃の条件で行った。
(末端アミノ基量)
まず、ポリアミド樹脂1gをフェノール35mLに溶解させ、メタノールを2mL混合し、試料溶液とする。そして、チモールブルーを指示薬として、当該試料溶液に対して0.01規定のHCl水溶液を使用して青色から黄色になるまでメトローム社製の電位差滴定装置により滴定を実施し、末端アミノ基量([NH]、単位:mmol/kg)を測定した。
(融点Tm、ガラス転移温度Tg)
ポリアミド樹脂の融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計DSC220C型、セイコーインスツル社製を用いて測定した。具体的には、約5mgのポリアミド樹脂を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで350℃まで加熱した。樹脂を完全融解させるために、350℃で3分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却した。30℃で5分間置いた後、10℃/minで350℃まで2度目の加熱を行った。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)をポリアミド樹脂の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とした。
半芳香族ポリアミド樹脂PA-1~PA-6及びPA-9、並びに脂肪族ポリアミド樹脂PA-7及びPA-8の調製条件と物性を、表1に示す。
Figure 2023142848000001
2.ポリアミド樹脂組成物の調製
2-1.ポリアミド樹脂
上記調製した半芳香族ポリアミド樹脂PA-1~PA-6及びPA-9、並びに脂肪族ポリアミド樹脂PA-7及びPA-8を用いた。
2-2.強化材
ガラス繊維(日本電気硝子社製、ECS03T-747H)
2-3.銅系の耐熱安定剤
11.1質量%のヨウ化銅(I)と88.9質量%のヨウ化カリウムの混合物を銅系の耐熱安定剤として用いた。
2-4.ポリアミド樹脂組成物の調製
(実施例1~4、比較例1~2、参考例1~3)
表2に示されるポリアミド樹脂64.64質量%と、強化材としてガラス繊維35質量%と、銅系の耐熱安定剤としてヨウ化銅(I)0.04質量%及びヨウ化カリウム0.32質量%と、をタンブラーブレンダーにて混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製TEX30α)にて、シリンダー温度340℃で溶融混錬した。その後、ストランド状に押出し、水槽で冷却した。その後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることで、ペレット状(直径:約3mm、長さ:約3mmの円柱状)のポリアミド樹脂組成物を得た。
(評価)
(1)嵩密度
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、100mLメスシリンダーで100mL測り取り、重量を測定した。同様の操作を3回行い、その平均値から算出した。
(2)熱老化後の引張強度
(試験片の作製)
得られたポリアミド樹脂組成物を、下記の射出成形機を用いて、下記成形条件で成形して、厚み3.2mmのASTMダンベル型試験片Type Iを得た。
成形機:住友重機械工業社製 SG50M3
成形機シリンダー温度:335℃(比較例1、2は300℃)
金型温度:120℃
射出設定速度:60mm/sec
得られた試験片を、大気雰囲気中で180℃で1000時間加熱した後、ISO527に準拠して引張強度を測定した。
(3)耐加水分解性(LLC液浸漬後のVN保持率)
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機[東芝機械(株)製 EC75N-2A]を用いて、射出速度30mm/秒、金型温度120℃、溶融樹脂温度335℃に設定し、長さ125mm、幅13mm、厚さ0.8mmの短冊試験片を成形した。得られた試験片を、オートクレーブを用いて、純水/ロングライフクーラント液(LLC液;BASF社製G48)=50/50に、130℃で1000時間浸漬した。浸漬前後の粘度数(VN)をISO307に準拠して測定し、その維持率を算出した。
実施例1~4、比較例1~2及び参考例1~3の評価結果を、表2に示す。
Figure 2023142848000002
表2に示されるように、末端カルボキシ基量が100mmol/kg以下である半芳香族ポリアミド樹脂PA1~PA4を含む実施例1~4のポリアミド樹脂組成物は、嵩密度が高いことがわかる。また、実施例1~4のポリアミド樹脂組成物は、熱老化後の引張強度やVN維持率も高いことがわかる。
これに対し、末端カルボキシ基量が100mmol/kgを超える半芳香族ポリアミド樹脂PA-5、PA-6又はPA-9を含む比較例1~2及び参考例3のポリアミド樹脂組成物は、嵩密度が低いことがわかる。一方、脂肪族ポリアミドPA-7、PA-8を含む比較例1~2のポリアミド樹脂組成物は、嵩密度の低下がみられず、本開示の課題が生じないことがわかる。
本開示の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、嵩密度が高く、運搬・保管効率を向上させることができる。そのため、本開示は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物のさらなる普及に寄与すると期待される。

Claims (13)

  1. 示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が280℃以上である半芳香族ポリアミド樹脂を含み、
    前記半芳香族ポリアミド樹脂の末端カルボキシ基量が100mmol/kg以下である、
    半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記半芳香族ポリアミド樹脂の末端アミノ基量は、末端カルボキシ基量よりも多い、
    請求項1に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記半芳香族ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位と、ジアミンに由来する構成単位とを含み、
    前記ジカルボン酸に由来する構成単位の含有量a(モル)と、前記ジアミンに由来する構成単位の含有量b(モル)の比a/bは、0.97以下である、
    請求項1又は2に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記半芳香族ポリアミド樹脂の分子末端は、モノカルボン酸で封止されている、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記半芳香族ポリアミド樹脂の末端アミノ基量と末端カルボキシ基量の合計量は、130mmol/kg以下である、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記半芳香族ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位と、ジアミンに由来する構成単位とを含み、
    前記ジカルボン酸に由来する構成単位は、
    20~100モル%のテレフタル酸に由来する構成単位と、
    0~80モル%の、テレフタル酸以外の芳香族カルボン酸に由来する構成単位又は炭素数4~10の脂肪族カルボン酸に由来する構成単位と、
    を含む、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  7. 前記半芳香族ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位と、ジアミンに由来する構成単位とを含み、
    前記ジカルボン酸に由来する構成単位は、テレフタル酸に由来する構成単位と、イソフタル酸に由来する構造単位とを含み、
    前記ジアミンに由来する構成単位は、主鎖の炭素数が4~15である脂肪族ジアミンに由来する構成単位を含む、
    請求項1~6のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  8. 前記半芳香族ポリアミド樹脂組成物に対して0.01~3質量%の銅系の耐熱安定剤をさらに含む、
    請求項1~7のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  9. 前記半芳香族ポリアミド樹脂組成物に対して15~70質量%の強化材を含む、
    請求項1~8のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  10. 前記半芳香族ポリアミド樹脂組成物の嵩密度が50g/ml以上である、
    請求項1~9のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を含む、
    成形体。
  12. 自動車用部品である、
    請求項11に記載の成形体。
  13. 自動車冷却系部品である、
    請求項12に記載の成形体。
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