JP5429966B2 - ポリアミド組成物からなる自動車冷却系部品 - Google Patents
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Description
自動車用部品として、ポリアミドは、例えば、エンジンカバー類、これに直結されるコネクタ類、及びエアインテークマニホールド類などのエンジン本体関連部品、リレーボックス類、ギア類、並びにクリップ類などに広く使用されている。
さらに、エンジンカバー類及びエアインテークマニホールド類などの比較的大型の部品である場合には、成形時に例えばPA66のような流動性も要求される。
また、耐薬品性を改善するために、PA612、PA610、PA11、PA12等の長鎖脂肪族ポリアミドをそのまま、あるいはPA66と混合したものが用いられているが、これらの長鎖脂肪族ポリアミドは、耐熱性の点でPA66より劣ってしまう欠点を有している。
しかしながら、PA6Tは、融点が370℃程度という高融点ポリアミドであるため、溶融成形により成形品を得ようとしても、ポリアミドの熱分解が激しく起こり、十分な特性を有する成形品を得ることが難しい。
特許文献2には、ジカルボン酸単位として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を1〜40%配合した半脂環族ポリアミドの電気及び電子部材はハンダ耐熱性が向上することが開示され、特許文献3には、自動車部品では、流動性及び靭性などに優れることが開示されている。
また、特許文献5には、トランス/シス比が50/50から97/3である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を原料として用いたポリアミドが、耐熱性、低吸水性、及び耐光性などに優れることが開示されている。
特許文献4及び5に開示されたポリアミドも、靭性、剛性、及び流動性の面で改善が不十分である。
(1)
(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドと、
(B)無機充填材と、を含有するポリアミド組成物からなる自動車冷却系部品。
(2)
前記主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、(1)に記載の自動車冷却系部品。
(3)
前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、(1)又は(2)に記載の自動車冷却系部品。
(4)
前記ジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
(5)
前記(A)ポリアミドが、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドである、(1)〜(4)のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
(6)
前記(A)ポリアミドの融点が、270〜350℃である、(1)〜(5)のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
(7)
前記(A)ポリアミドにおけるトランス異性体比率が、50〜85%である、(1)〜(6)のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
(8)
前記ポリアミド組成物が、前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記(B)無機充填材1〜200質量部を含有する、(1)〜(7)のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
(9)
前記ポリアミド組成物が、(C)銅化合物および金属ハロゲン化合物をさらに含有する、(1)〜(8)のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
(10)
前記銅化合物が、酢酸銅及び/又はヨウ化銅であり、前記金属ハロゲン化物が、ヨウ化カリウムである、(9)に記載の自動車冷却系部品。
(11)
前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記銅化合物0.01〜0.6質量部及び前記金属ハロゲン化物0.05〜20質量部を含有する、(9)又は(10)に記載の自動車冷却系部品。
(12)
ハロゲンと銅のモル比(ハロゲン/銅)が、2/1〜50/1である、(9)〜(11)のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
(13)
前記(A)ポリアミド106質量部に対して、銅として50〜2000質量部となるように前記銅化合物を含有する、(9)〜(12)のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
本実施の形態において用いられる(A)ポリアミドは、下記(a)及び(b)を重合させたポリアミドである:
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸、
(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミン。
本実施の形態において、ポリアミドとは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。
本実施の形態に用いられる(a)ジカルボン酸は、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含む。
(a)ジカルボン酸として、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むことにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
脂環族ジカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス体とシス体のどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体の種々の比率の混合物として用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることやシス体の方がトランス体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとして、トランス体/シス体比がモル比にして、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)やNMRにより求めることができる。
種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数3〜10のアルキルシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩などのその塩である基などが挙げられる。
中でも、耐熱性及び低吸水性などの観点で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸などが挙げられる。
中でも、耐熱性などの観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
多価カルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸中の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
ジカルボン酸と等価な化合物としては、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物などが挙げられる。
本実施の形態に用いられる(b)ジアミンは、少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含む。
(b)ジアミンとして、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを少なくとも50モル%含むことにより、流動性、靭性、及び剛性などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、剛性などの観点で、2−メチルペンタメチレンジアミンであることが好ましい。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
多価脂肪族アミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施の形態において用いられるポリアミドは、靭性の観点で、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させることが好ましい。
本実施の形態に用いられる(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、重縮合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
ラクタム及び/又はアミノカルボン酸としては、好ましくは、炭素数4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸であり、より好ましくは、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸である。
中でも、靭性の観点で、ε−カプロラクタム、ラウロラクタムなどが好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸などが挙げられ、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸なども挙げられる。
末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類などが挙げられ、ポリアミドの熱安定性の観点で、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。
末端封止剤としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
モノカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
モノアミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの組み合わせをポリアミドの成分として重合させることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性に優れることを同時に満足する高融点ポリアミドとすることができる。
ポリアミド中における脂環族ジカルボン酸構造のトランス異性体比率は、
ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸全体中のトランス異性体である比率を表し、トランス異性体比率は、好ましくは50〜85モル%であり、より好ましくは50〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜80モル%である。
(a−1)脂環族ジカルボン酸としては、トランス体/シス体比(モル比)が50/50〜0/100である脂環族ジカルボン酸を用いることが好ましいが、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンの重合により得られるポリアミドとしては、トランス異性体比率が50〜85モル%であることが好ましい。
トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、ポリアミドは、高融点、靭性及び剛性に優れるという特徴に加えて、高いガラス転移温度による熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性及び低吸水性とを同時に満足するという性質を持つ。
ポリアミドのこれらの特徴は、(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、(b)少なくとも50モル%の2−メチルペンタメチレンジアミンの組み合わせからなり、かつトランス異性体比率が50〜85モル%であるポリアミドで特に顕著である。
本実施の形態において、トランス異性体比率は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリアミドの製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。
1)ジカルボン酸及びジアミンの水溶液又は水の懸濁液、又はジカルボン酸及びジアミン塩と他の成分との混合物(以下、本段落において、「その混合物」と略称する。)の水溶液又は水の懸濁液を、加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)、
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)、
3)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」と略称する場合がある。)、
4)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」と略称する場合がある。)、
5)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と略称する場合がある)、
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド及びジアミンを用いて重合させる方法「溶液法」。
トランス異性体比率を上記範囲内に、特に、80%以下に維持することにより、色調や引張伸度に優れ、高融点のポリアミドを得ることができる。
ポリアミドの製造方法において、重合度を上昇させてポリアミドの融点を上昇させるために、加熱の温度を上昇させたり、及び/又は加熱の時間を長くする必要が生ずるが、その場合、加熱によるポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下が起こる場合がある。また、分子量の上昇する速度が著しく低下する場合がある。
ポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下を防止することができるため、トランス異性体比率を80%以下に維持して重合することが好適である。
重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型反応器、タンブラー型反応器、及びニーダーなどの押出機型反応器などが挙げられる。
バッチ式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒として、ポリアミド成分((a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び、必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
連続式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒としてポリアミド成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮層/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、その後、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物は押し出されてストランドとなり、冷却、カッティングされペレットとなる。
本実施の形態におけるポリアミドの分子量は、靭性及び剛性などの機械物性並びに成形性などの観点で、JIS−K6810に準じて測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度ηrにおいて、好ましくは1.5〜7.0であり、より好ましくは1.7〜6.0であり、さらに好ましくは1.9〜5.5である。
25℃の相対粘度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6810に準じて行うことができる。
ポリアミドの融点Tm2を270℃以上とすることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。ポリアミドの融点Tm2を350℃以下とすることにより、押出、成形などの溶融加工でのポリアミドの熱分解などを抑制することができる。
融点及び融解熱量の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
ガラス転移温度を90℃以上とすることにより、耐熱性や耐薬品性に優れるポリアミドとすることができる。また、ガラス転移温度を170℃以下とすることにより、外観のよい成形品を得ることができる。
ガラス転移温度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
ガラス転移温度の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
溶融せん断粘度は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
溶融せん断粘度が上記範囲内にあることにより、流動性に優れるポリアミドを得ることができる。
引張強度の測定は、下記実施例に記載するように、ASTM D638に準じて行うことができる。
引張強度が70MPa以上であることにより、剛性に優れるポリアミドを得ることができる。
引張伸度の測定は、下記実施例に記載するように、ASTM D638に準じて行うことができる。
引張伸度が3.0%以上であることにより、靭性に優れるポリアミドを得ることができる。
吸水率は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
吸水率が5.0%以下であることにより、低吸水性に優れるポリアミドを得ることができる。
本実施の形態において用いられる(B)無機充填材は、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、及びアパタイトなどが挙げられる。
無機充填材としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施の形態の自動車冷却系部品として、斯かるポリアミド組成物からなる自動車冷却系部品とすることにより、流動性、靭性、低吸水性、及び強度剛性に優れ、さらに耐熱性及び耐LLC性に優れる自動車冷却系部品を提供することができる。
また、(B)無機充填材としては、ウォラストナイトがより好ましく、ウォラストナイトの中でも、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が10〜500μmであり、前記アスペクト比(L/D)が3〜100であるものがさらに好ましく用いられる。
さらに、(B)無機充填材としては、タルク、マイカ、カオリン、及び窒化珪素などがより好ましく、タルク、マイカ、カオリン、及び窒化珪素などの中でも、数平均繊維径が0.1〜3μmであるものがさらに好ましく用いられる。
(A)ポリアミドと(B)無機充填材の混合方法として、例えば、(A)ポリアミドと(B)無機充填材とをヘンシェルミキサーなどを用いて混合し溶融混練機に供給し混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミドに、サイドフィダーから(B)無機充填材を配合する方法などが挙げられる。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃程度であることが好ましい。
溶融混練時間は、0.5〜5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロールなどの溶融混練機を用いることができる。
(B)無機充填材の配合量を0.1質量部以上とすることにより、(B)無機充填材を含有するポリアミド組成物の靭性及び強度剛性などの機械物性が良好に向上し、また、(B)無機充填材の配合量を200質量部以下とすることにより、成形性に優れる(B)無機充填材を含有するポリアミド組成物を得ることができる。
本実施の形態において用いられる銅化合物としては、例えば、ハロゲン化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅、及びステアリン酸銅などや、エチレンジアミン、及びエチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に配位した銅錯塩などが挙げられる。
銅化合物としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
金属ハロゲン化物としては、元素周期律表の1族又は2族金属元素とハロゲンとの塩であり、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、及び塩化ナトリウムなどが挙げられ、ヨウ化カリウム及び臭化カリウムであることが好ましい。
金属ハロゲン化合物としては、1種類で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
金属ハロゲン化物としては、耐LLC性に優れ、金属腐食を抑制することができるので、ヨウ化カリウムが好ましい。
本実施の形態の自動車冷却系部品として、斯かるポリアミド組成物からなる自動車冷却系部品とすることにより、流動性、靭性、低吸水性、及び強度剛性に優れ、さらに耐熱性及び耐LLC性に優れる自動車冷却系部品を提供することができる。
銅化合物の配合量を、上記範囲内にすることにより、十分な耐LLC性が向上し、銅析出及び金属腐食を抑制することができる。
(C)銅化合物及び金属ハロゲン化物を含有するポリアミド組成物中に、銅として50〜2000質量部含有することにより、耐LLC性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
金属ハロゲン化物の配合量を、上記範囲内にすることにより、十分な耐LLC性が向上し、銅析出及び金属腐食を抑制することができる。
ハロゲンと銅のモル比が2/1以上である場合には銅析出及び金属腐食の抑制をすることができるため好ましい。また、ハロゲンと銅のモル比が50/1以下であれば靭性及び剛性などの機械物性を損なうことなく、成形機のスクリューなどを腐食するという問題を抑制することができる。
(A)ポリアミドと、(B)無機充填材と、(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物の混合方法として、例えば、(A)ポリアミドと、(B)無機充填材と、(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物と、をヘンシェルミキサーなどを用いて混合し溶融混練機に供給し混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミドと(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物に、サイドフィダーから(B)無機充填材を配合する方法などが挙げられる。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃程度であることが好ましい。
溶融混練時間は、0.5〜5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロールなどの溶融混練機を用いることができる。
製法1におけるポリアミドの重合工程中とは、原料モノマーからポリアミドの重合完了までのいずれかの工程であって、どの段階でもよい。
製法2の溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロールなどの溶融混練機などを用いることができる。
中でも2軸押出機が好ましく用いられる。
溶融混練の温度は、好ましくは、(A)ポリアミドの融点より1〜100℃程度高い温度、より好ましくは10〜50℃程度高い温度である。
混練機での剪断速度は100sec-1以上程度であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は0.5〜5分程度であることが好ましい。
他の成分としては、例えば、滑剤としてラウリル酸などの高級脂肪酸、高級脂肪酸とアルミニウムなどの金属との高級脂肪酸金属塩、エチレンビスステアリルアミドなどの高級脂肪酸アミド、及びポリエチレンワックスなどのワックス類などが挙げられる。
また、少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物も挙げられる。
溶融せん断粘度は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
溶融せん断粘度が上記範囲内にあることにより、流動性に優れるポリアミド組成物を得ることができ、自動車冷却系部品として成形する際に、成形品の比較的大きな部品や薄肉部のある成形品にたい、成形不良が起こりにくい点で優れる。
引張強度の測定は、下記実施例に記載するように、ASTM D638に準じて行うことができる。
成形品の引張強度が180MPa以上であることにより、強度剛性に優れる自動車冷却系部品を得ることができる。
引張伸度の測定は、下記実施例に記載するように、ASTM D638に準じて行うことができる。
成形品の引張伸度が1.5%以上であることにより、靭性に優れる自動車冷却系部品を得ることができる。
吸水率は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
成形品の吸水率が5.0%以下であることにより、低吸水性に優れる自動車冷却系部品を得ることができる。
強度半減期は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
成形品の強度半減期が40日以上であることにより、耐熱性、特に、耐熱エージング性に優れる自動車冷却系部品を得ることができる。
浸漬後の引張強度保持率は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
成形品の浸漬後の引張強度保持率が70%以上であることにより、耐LLC性に優れる自動車冷却系部品を得ることができる。
本実施の形態において用いられるポリアミド組成物は、周知の成形方法、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸などを用いて各種成形品を得ることができる。
本実施の形態におけるポリアミド組成物から得られる成形品は、靭性、成形性、及び低吸水性に優れ、さらに耐熱性及び耐LLC性に優れる。したがって、本実施の形態におけるポリアミド組成物からなる成形品は、自動車冷却系部品として用いることができる。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。なお、本実施例において、1Kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
本実施例において下記化合物を用いた。
(A)ポリアミド
(a)ジカルボン酸
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA) イーストマンケミカル製 商品名 1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体(モル比)=25/75)
(2)テレフタル酸(TPA) 和光純薬工業製 商品名 テレフタル酸
(3)アジピン酸(ADA) 和光純薬工業製 商品名 アジピン酸
(4)スベリン酸(C8DA) 和光純薬工業製 商品名 スベリン酸
(5)アゼライン酸(C9DA) 和光純薬工業製 商品名 アゼライン酸
(6)セバシン酸(C10DA) 和光純薬工業製 商品名 セバシン酸
(7)ドデカン二酸(C12DA) 和光純薬工業製 商品名 ドデカン二酸
(8)テトラデカン二酸(C14DA) 東京化成工業製 商品名 テトラデカン二酸
(9)ヘキサデカン二酸(C16DA) 東京化成工業製 商品名 ヘキサデカン二酸
(10)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MPD) 東京化成工業製 商品名 2−メチル−1,5−ジアミノペンタン
(11)ヘキサメチレンジアミン(HMD) 和光純薬工業製 商品名 ヘキサメチレンジアミン
(12)1,9−ノナメチレンジアミン(NMD) アルドリッチ製 商品名 1,9−ノナンジアミン
(13)2−メチルオクタメチレンジアミン(2MOD) 特開平05−17413号公報に記載されている製法を参考にして製造した。
(14)2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンの混合物(TMHD) アルドリッチ製 商品名 C,C,C−1,6−ヘキサメチレンジアミン
(15)ε−カプロラクタム(CPL) 和光純薬工業製 商品名 ε−カプロラクタム
(15)ガラス繊維(GF) 日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H 平均繊維径10μmφ、カット長3mm
(16)ヨウ化銅(CuI)和光純薬工業製 商品名 ヨウ化銅(I)
(17)ヨウ化カリウム(KI)和光純薬工業製 商品名 ヨウ化カリウム
(18)エチレンビスステアリルアミド ライオン製 商品名 アーモワックス EBS
(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた全ての(a)ジカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル%は、(原料モノマーとして加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数/原料モノマーとして加えた全ての(b)ジアミンのモル数)×100として、計算により求めた。
また、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた、全ての(a)ジカルボン酸のモル数+(b)全てのジアミンのモル数+(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
なお、上記式により計算する際に、分母及び分子には、追添分として加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数は含まれない。
(1)融点Tm1、Tm2(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minでサンプルの融点に応じて300〜350℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とし、昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最大ピーク温度を融点Tm2(℃)とし、その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。なお、ピークが複数ある場合には、ΔHが1J/g以上のものをピークとみなした。例えば、融点295℃、ΔH=20J/gと融点325℃、ΔH=5J/gの二つのピークが存在する場合、融点は325℃とした。
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、1H−NMRで測定した。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積とシス異性体に由来する1.77ppmと1.86ppmのピーク面積の比率からトランス異性体比率を求めた。
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、試料をホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させて得られた溶融状態のサンプルを、液体窒素を用いて急冷し、固化させ、測定サンプルとした。そのサンプル10mgを用いて、昇温スピード20℃/minの条件下、30〜350℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度を測定した。
JIS−K6810に準じて実施した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作成し、25℃の温度条件下で測定した。
上記(1)で求めた融点+20℃の温度条件下で、せん断速度1000sec-1における溶融せん断粘度ηsで流動性を評価した。具体的な測定方法は、英国ROSAND社製ツインキャピラリーレオメーターRH7−2型を使用し、オリフィスは、ダイ径1.0mm、ダイ入口角180度のもので、L/Dが16及び0.25、の2つのオリフィスを使用した。
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を用いて、ASTM D638に準じて行った。成形試験片は、射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)にASTM引張試験(ASTM D638)用のダンベル試験片(3mm厚)の金型(金型温度=Tg+20℃)を取り付けて、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃で成形を行った。
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を成形後の絶乾状態(dry as mold)で、試験前質量(吸水前質量)を測定した。80℃の純水中に24時間浸漬させた。その後、水中から試験片を取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定した。吸水前質量に対しての吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を、試行数n=3で求め、その平均値を吸水率(%)とした。
銅濃度は、試料に硫酸を加え、加熱しながら硝酸を滴下し有機分を分解し、該分解液を純水にて定容しICP発光分析(高周波プラズマ発光分析)法により定量した。ICP発光分析装置は、SEIKO電子工業社製Vista−Proを用いた。
ハロゲン濃度は、ヨウ素を例にとると、試料を高純度酸素で置換したフラスコ中で燃焼し、発生したガスを吸収液に捕集し、該捕集液中のヨウ素を1/100N硝酸銀溶液による電位差滴定法を用いて定量した。
ハロゲンと銅のモル比(ハロゲン/Cu)は、上記それぞれの定量値を用いて分子量からモルに換算し算出した。
上記(6)のASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を熱風オーブン中で200℃、所定時間処理した後、ASTM−D638に準じて引張強度を測定した。そして熱処理前に測定した引張強度に対する熱処理後の引張強度を引張強度保持率として算出し、引張強度保持率が50%となる熱処理時間を強度半減期とした。
上記(6)のASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を、120℃のエチレングリコール50%水溶液に24時間、720時間浸漬し、室温に放置した後、上記(6)の方法の引張試験を行い、引張強度を測定した。720時間浸漬後に測定した引張強度の、24時間浸漬後に測定した引張強度に対する割合を浸漬後の引張強度保持率として求めた。
[製造例1]
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を実施した。
(a)CHDA896g(5.20モル)、及び(b)2MPD604g(5.20モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作った。該均一水溶液に2MPD15g(0.13モル)を追添した。
得られた水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5Kg/cm2になるまで、液温を約50℃から加熱を続けた(この系での液温は約145℃であった。)。槽内の圧力を約2.5Kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約75%になるまで濃縮した(この系での液温は約160℃であった。)。水の除去を止め、槽内の圧力が約30Kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約245℃であった。)。槽内の圧力を約30Kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、最終温度−50℃になるまで加熱を続けた。液温が最終温度−50℃(ここでは300℃)まで上昇した後に、加熱は続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0Kg/cm2)になるまで120分ほどかけながら降圧した。
その後、樹脂温度(液温)の最終温度が約350℃になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度はその状態のまま、槽内を真空装置で400torrの減圧下に30分維持した。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミドを得た。得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を表4(融点Tm2、ガラス転移温度Tg、トランス異性体比率及び25℃の相対粘度)に示す。
製造例1において、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、表1又は2に記載の化合物と量を用いたことと、樹脂温度の最終温度を表4又は5に記載の温度にしたこと以外は、製造例1に記載した方法でポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。
得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を表4及び5に示す。
製造例1において、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、表3に記載の化合物と量を用いたことと、樹脂温度の最終温度を表6に記載の温度にしたこと以外は、製造例1に記載した方法でポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。
比較製造例1においては、重合途中で、オートクレーブ内で固化したため、ストランドでの取り出しができなかったので、冷却後、塊で取り出し、粉砕機にて粉砕して、ペレットくらいの大きさにした。成形は発泡が激しかったため、成形品が得られなかった。
製造例1において、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、表3に記載の化合物と量を用いたことと、樹脂温度の最終温度を表6に記載の温度にしたこと以外は、製造例1に記載した方法でポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を表6に示す。
[製造例21]
KI 85.1質量部、エチレンビスステアリルアミド10質量部を混合し、KIとエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。該混合物にCuI 4.9質量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(1)を得た。
KI 80.7質量部、エチレンビスステアリルアミド10質量部を混合し、KIとエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。該混合物にCuI 9.3質量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(2)を得た。
KI 88.0質量部、エチレンビスステアリルアミド10質量部を混合し、KIとエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。該混合物にCuI 2.0質量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(3)を得た。
[実施例1]
100質量部の製造例1のポリアミド対して、6.1質量部の製造例21で製造した顆粒(1)、55質量部の無機充填材(GF)を配合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35φL/D=47.6、設定温度はポリアミドの融点(Tm2)+20℃(具体的には、製造例1のポリアミドを用いる場合、327+20=347℃)とした、スクリュー回転数300rpm)で溶融混練してポリアミド組成物を得た。得られたポリアミド組成物の上記測定方法に基づいて行った測定結果を表11に示す。
製造例1のポリアミドに代えて製造例2〜20の各ポリアミドを用いる以外は実施例1と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物の上記測定方法に基づいて行った測定結果を表4及び5に示す。
製造例1のポリアミドに代えて比較製造例1のポリアミドを用いる以外は実施例1と同様にして実施しようとしたが、押出状態が非常に不安定で、ポリアミド組成物を得ることができなかった。
製造例1のポリアミドに代えて比較製造例2〜7の各ポリアミドを用いる以外は実施例1と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物の上記測定方法に基づいて行った測定結果を表6に示す。
100質量部の製造例5のポリアミド対して、55質量部の無機充填材(GF)を配合し、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35φL/D=47.6、設定温度340℃、スクリュー回転数300rpm)で溶融混練してポリアミド組成物を得た。得られたポリアミド組成物の上記測定方法に基づいて行った測定結果を表7に示す。
100質量部の製造例5のポリアミド対して、3.1質量部の製造例21の顆粒(1)を用いた以外は実施例5と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物の上記測定方法に基づいて行った測定結果を表7に示す。
100質量部の製造例5のポリアミド対して、9.2質量部の製造例21の顆粒(1)を用いた以外は実施例5と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物の上記測定方法に基づいて行った測定結果を表7に示す。
100質量部の製造例5のポリアミド対して、12.2質量部の製造例21の顆粒(1)を用いた以外は実施例5と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物の上記測定方法に基づいて行った測定結果を表7に示す。
100質量部の製造例5のポリアミド対して、3.2質量部の製造例22の顆粒(2)を用いた以外は実施例5と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物の上記測定方法に基づいて行った測定結果を表7に示す。
100質量部の製造例5のポリアミド対して、15.0質量部の製造例23の顆粒(3)を用いた以外は実施例5と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物の上記測定方法に基づいて行った測定結果を表7に示す。
これに対して、50モル%未満の2−メチルペンタメチレンジアミンを含むポリアミドを含有する比較例1では、押出状態が不安定なものであり、ポリアミド組成物を得ることができなかった。
また、50モル%未満の脂環族ジカルボン酸を重合させたポリアミドを含有する比較例2及び3では、低吸水性の点で十分なものではなく、また、比較例6では、強度剛性の点で十分なものではなかった。
また、特許文献1に開示されるように、テレフタル酸をジカルボン酸として重合させたポリアミドを含有する比較例4では、また、比較例5では、溶融せん断粘度が大きく、流動性が低すぎるものであり、成形性の点で十分なものではなかった。
また、PA66を含有する比較例7では、耐熱性及び低吸水性の点で劣るものであった。
Claims (13)
- (A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の、炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドと、
(B)無機充填材と、を含有するポリアミド組成物からなる自動車冷却系部品。 - 前記炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、請求項1に記載の自動車冷却系部品。
- 前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、請求項1又は2に記載の自動車冷却系部品。
- 前記ジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
- 前記(A)ポリアミドが、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドである、請求項1〜4のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
- 前記(A)ポリアミドの融点が、270〜350℃である、請求項1〜5のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
- 前記(A)ポリアミドにおけるトランス異性体比率が、50〜85%である、請求項1〜6のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
- 前記ポリアミド組成物が、前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記(B)無機充填材1〜200質量部を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
- 前記ポリアミド組成物が、(C)銅化合物および金属ハロゲン化合物をさらに含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
- 前記銅化合物が、酢酸銅及び/又はヨウ化銅であり、前記金属ハロゲン化物が、ヨウ化カリウムである、請求項9に記載の自動車冷却系部品。
- 前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記銅化合物0.01〜0.6質量部及び前記金属ハロゲン化物0.05〜20質量部を含有する、請求項9又は10に記載の自動車冷却系部品。
- ハロゲンと銅のモル比(ハロゲン/銅)が、2/1〜50/1である、請求項9〜11のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
- 前記(A)ポリアミド10 6 質量部に対して、銅として50〜2000質量部となるように前記銅化合物を含有する、請求項9〜12のいずれかに記載の自動車冷却系部品。
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