JP6042114B2 - 共重合ポリアミド及び共重合ポリアミド組成物 - Google Patents
共重合ポリアミド及び共重合ポリアミド組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6042114B2 JP6042114B2 JP2012143213A JP2012143213A JP6042114B2 JP 6042114 B2 JP6042114 B2 JP 6042114B2 JP 2012143213 A JP2012143213 A JP 2012143213A JP 2012143213 A JP2012143213 A JP 2012143213A JP 6042114 B2 JP6042114 B2 JP 6042114B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- acid
- polyamide
- copolymerized polyamide
- diamine
- dicarboxylic acid
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
- Polyamides (AREA)
Description
特許文献7には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とウンデカメチレンジアミンと1,6−ジアミノヘキサンとを重合したポリアミドが開示されている。特許文献8には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と1,12−ジアミノドデカンと1,6−ジアミノヘキサンとを重合したポリアミドが開示されている。
特許文献7に開示されたポリアミドは、低ブロッキング性、離型性の面で改善が必要な場合がある。
特許文献8に開示されたポリアミドは、可塑化時間安定性、振動疲労特性、表面外観及び連続生産性の面で改善が必要な場合がある。
(a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸からなる単位と、
(b)1種の炭素数8以上のジアミンからなる単位と、
(c)下記(c−1)〜(c−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合成分からなる単位と、を含有し、かつ下記条件(1)〜(4)を満足する、共重合ポリアミド;
(c−1)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸、
(c−2)前記(b)のジアミンより炭素数の少ないジアミン、
(c−3)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸、
(1)JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、20℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tpc-1と、ガラス転移温度Tgとの差(Tpc-1−Tg)が、140℃以上であること、
(2)炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)が、8以上であること、
(3)JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、20℃/minで昇温したときに得られる融解ピーク温度Tpmと、20℃/minで再度昇温したときに得られる融解ピーク温度Tpm-1との差(Tpm−Tpm-1)が、30℃以下であること、
(4)アミノ末端量とカルボキシル末端量との総量に対するアミノ末端量の比{アミノ末端量/(アミノ末端量+カルボキシル末端量)}が、0.0以上0.5未満であること。
[2]
前記(a)脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、[1]に記載の共重合ポリアミド。
[3]
前記(a)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率が、65〜80モル%である、[1]又は[2]に記載の共重合ポリアミド。
[4]
不純物としてリン元素含有化合物を含み、
リン元素含有量が1ppm以上100ppm未満である、[1]〜[3]のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
[5]
前記(b)炭素数8以上のジアミンが、デカメチレンジアミンである、[1]〜[4]のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
[6]
前記(c−1)ジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸である、[1]〜[5]のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
[7]
前記(c−1)ジカルボン酸が、セバシン酸及び/又はドデカン二酸である、[1]〜[6]のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
[8]
前記(c−1)ジカルボン酸が、イソフタル酸である、[1]〜[5]のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
[9]
前記(c−2)ジアミンが、炭素数4〜7の脂肪族ジアミンである、[1]〜[8]のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
[10]
JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、20℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tpc-1と、50℃/minで再度冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tpc-2との差(Tpc-1−Tpc-2)が、10℃以下である、[1]〜[9]のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
[11]
前記(c)共重合成分からなる単位の含有量が、共重合ポリアミドの全構成単位の含有量の合計100モル%に対し、7.5モル%以上20.0モル%以下である、[1]〜[10]のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
[12]
バイオマスプラスチック度が、25%以上である、[1]〜[11]のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
[13]
[1]〜[12]のいずれかに記載の共重合ポリアミドと、
無機充填材、造核剤、潤滑剤、安定剤、及び前記共重合ポリアミド以外のポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分と、を含む共重合ポリアミド組成物。
[14]
[1]〜[12]のいずれかに記載の共重合ポリアミド、又は[13]に記載の共重合ポリアミド組成物を含む成形品。
[15]
自動車部品、電子部品、家電部品、OA機器部品又は携帯機器部品として用いられる、[14]に記載の成形品。
[16]
(a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸と、
(b)1種の炭素数8以上のジアミンと、
(c)下記(c−1)〜(c−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合成分と、を重合させる工程を含み、
該重合工程で得られる共重合ポリアミド中の(a)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率を65〜80%に維持する、[1]〜[12]のいずれかに記載の共重合ポリアミドの製造方法;
(c−1)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸、
(c−2)前記(b)のジアミンより炭素数の少ないジアミン、
(c−3)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸。
[17]
[1]〜[12]のいずれかに記載の共重合ポリアミドを含む原料成分を押出機で溶融混練する工程を含み、
前記押出機の設定温度を[1]に記載の融解ピーク温度Tpm-1+30℃以下とする、共重合ポリアミド組成物の製造方法。
本実施の形態の共重合ポリアミドは、下記成分(a)からなる単位、下記成分(b)からなる単位及び下記成分(c)からなる単位を含有し、かつ下記条件(1)〜(4)を満足する共重合ポリアミドである。
(a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸。
(b)1種の炭素数8以上のジアミン。
(c)特定の少なくとも1種の共重合成分。
(1)JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、20℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tpc-1と、ガラス転移温度Tgとの差(Tpc-1−Tg)が140℃以上であること。
(2)炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)が8以上であること。
(3)JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、20℃/minで昇温したときに得られる融解ピーク温度Tpmと、20℃/minで再度昇温したときに得られる融解ピーク温度Tpm-1との差(Tpm−Tpm-1)が30℃以下であること。
(4)アミノ末端量とカルボキシル末端量との総量に対するアミノ末端量の比{アミノ末端量/(アミノ末端量+カルボキシル末端量)}が0.0以上0.5未満であること。
本実施の形態に用いる(a)脂環族ジカルボン酸(以下「脂環式ジカルボン酸」とも記される。)としては、特に限定されないが、例えば、脂環構造の炭素数が3〜10である脂環族ジカルボン酸、好ましくは脂環構造の炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。(a)脂環族ジカルボン酸の具体例としては、特に限定されないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸などが挙げられる。
本実施の形態に用いる(b)炭素数8以上のジアミンとしては、炭素数8以上のジアミンであれば特に限定されないが、例えば、無置換の直鎖脂肪族ジアミンでも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などの置換基を有する分岐状脂肪族ジアミンでも、脂環族ジアミンでも、芳香族ジアミンでもよい。本実施の形態に用いる(b)ジアミンにおける炭素数は、8〜20であることが好ましく、8〜15であることがより好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。
本実施の形態に用いる(c)共重合成分は、(c−1)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸、(c−2)前記(b)のジアミンより炭素数の少ないジアミン、並びに(c−3)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
本実施の形態に用いる(c−1)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
本実施の形態に用いる(c−1)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、強度及び剛性などの観点で、好ましくは芳香族ジカルボン酸であり、より好ましくは、炭素数8以上の芳香族ジカルボン酸である。
中でも、(c−1)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、耐熱性、流動性、表面外観などの観点で、イソフタル酸が好ましい。
本実施の形態に用いる(c−2)としては、前記(b)のジアミンより炭素数の少ないジアミンであれば特に限定されず、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミンなどが挙げられる。
本実施の形態に用いる(c−3)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、重(縮)合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
中でも、アミノカルボン酸としては、低吸水、靭性の観点で、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などがより好ましい。
なお、本実施形態において、共重合ポリアミド中の各構成単位の含有量は、1H−NMRにより測定することができ、詳細には後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施の形態において、共重合ポリアミドを重合する際に、上記(a)〜(c)成分以外に、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加することができる。
本実施の形態の共重合ポリアミドにおいて、(a)脂環族ジカルボン酸に由来する部分は、トランス異性体及びシス異性体の幾何異性体として存在する。
共重合ポリアミド中の(a)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの重合方法、並びに重合条件を制御する方法などが挙げられる。熱溶融重合法により共重合ポリアミドを製造する際には、重合が終了するまで、溶融状態を保持することが好ましい。溶融状態を保持するためには、共重合ポリアミドの構成成分に適した重合条件で製造することが好ましい。具体的には、例えば、重合圧力を23〜50kg/cm2(ゲージ圧)、好ましくは25kg/cm2(ゲージ圧)以上の高圧に制御し、加熱を続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで30分以上かけながら降圧する方法などが挙げられる。
共重合ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrを上記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの熱溶融重合時の添加物としてのジアミン及び末端封止剤の添加量、並びに重合条件を制御する方法などが挙げられる。
共重合ポリアミドの融解ピーク温度(融点)Tpm-1を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(c)成分とし、共重合成分の配合比率を上述した範囲に制御する方法などが挙げられる。
測定装置としては、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いることができる。該測定は、窒素雰囲気下で行う。まず、試料約10mgを昇温速度20℃/minで50℃から350℃まで昇温する。このときに現れる吸熱ピークを融解ピークとし、もっとも高温側に現れるピークを融解ピーク温度Tpmとする。続いて、350℃で3分間保った後、冷却速度20℃/minで350℃から50℃まで冷却する。このときに現れる発熱ピークを結晶化ピークとし、結晶化ピーク温度をTpc-1、結晶化ピーク面積を結晶化エンタルピーとする。続いて、50℃で3分間保った後、再度昇温速度20℃/minで50℃から350℃まで昇温する。このときに現れるもっとも高温側に現れる吸熱ピークを融解ピーク温度Tpm-1とし、もっとも低温側に現れる吸熱ピークを融解ピーク温度Tpm-2とする。なお、このときに現れる吸熱ピークが1つの場合は、該吸熱ピークを融解ピーク温度Tpm-1及びTpm-2(Tpm-1=Tpm-2)とする。さらに、350℃で3分間保った後、冷却速度50℃/minで350℃から50℃まで冷却する。このときに現れる結晶化ピーク温度をTpc-2とする。
共重合ポリアミドの融解ピーク温度(融点)Tpm-2を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(c)成分とし、共重合成分の配合比率を上述した範囲に制御する方法などが挙げられる。
共重合ポリアミドにおける融解ピーク温度Tpm-1と融解ピーク温度Tpm-2との差(Tpm-1−Tpm-2)を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(c)成分とし、共重合成分の配合比率を上述した範囲に制御する方法などが挙げられる。
共重合ポリアミドの結晶化ピーク温度Tpc-1を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(c)成分とし、共重合成分の配合比率を上述した範囲に制御する方法などが挙げられる。
共重合ポリアミドの結晶化ピーク温度Tpc-2を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(c)成分とし、共重合成分の配合比率を上述した範囲に制御する方法などが挙げられる。
共重合ポリアミドにおける結晶化ピーク温度Tpc-1と結晶化ピーク温度Tpc-2との差(Tpc-1−Tpc-2)を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(c)成分とし、共重合成分の配合比率を上述した範囲に制御する方法などが挙げられる。また、(Tpc-1−Tpc-2)を小さくし、共重合ポリアミドを安定な結晶構造にするためには、共重合ポリアミドの構成成分(a)〜(c)の炭素数を偶数とすることや、炭素鎖を直鎖状とすることや、共重合ポリアミド中の炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を8以上9未満とすることが好ましい。
共重合ポリアミドの結晶化エンタルピーを前記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミド中の炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を8以上とし、共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(c)成分とし、共重合成分の配合比率を上述した範囲に制御する方法が挙げられる。
共重合ポリアミドのガラス転移温度Tgを前記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(c)成分とし、共重合成分の配合比率を上述した範囲に制御する方法などが挙げられる。
すなわち、1)アミノ末端、2)カルボキシル末端、3)封止剤による末端、及び4)その他の末端である。
共重合ポリアミドのポリマー末端とは、ジカルボン酸とジアミンとがアミド結合により重合したポリマー鎖の末端部分を意味する。前記共重合ポリアミドのポリマー末端は、これら1)〜4)の末端のうちの1種以上である。
2)カルボキシル末端は、カルボキシル基(−COOH基)が結合したポリマー末端であり、原料のジカルボン酸に由来する。
3)封止剤による末端は、重合時に添加した末端封止剤、例えば、カルボン酸又はアミンにより封止されたポリマー末端である。
4)その他の末端は、上記の1)〜4)に分類されないポリマー末端であり、特に限定されないが、例えば、アミノ末端が脱アンモニア反応して生成した末端や、カルボキシル末端から脱炭酸反応して生成した末端等が挙げられる。
本実施の形態に係る共重合ポリアミドの製造方法としては、上述した条件(1)〜(4)等の特性を満たす共重合ポリアミドが得られる方法であれば特に限定されないが、例えば、上述した(a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸と、(b)1種の炭素数8以上のジアミンと、(c)少なくとも1種の共重合成分とを重合させる工程を含む、共重合ポリアミドの製造方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸、ジアミン塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)。
3)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分と、ジアミン成分とを用いて重合させる方法(「溶液法」)。
中でも、熱溶融重合法を含む製造方法が好ましく、熱溶融重合法により共重合ポリアミドを製造する際には、重合が終了するまで、溶融状態を保持することが好ましい。溶融状態を保持するためには、共重合ポリアミドの構成成分に適した重合条件で製造することが好ましい。具体的には、例えば、該熱溶融重合法における重合圧力を23〜50kg/cm2(ゲージ圧)、好ましくは25kg/cm2(ゲージ圧)以上の高圧に制御し、加熱を続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで30分以上かけながら降圧する方法などが挙げられる。このような製造方法により得られる共重合ポリアミドは、上述した条件(1)〜(4)やトランス異性体比率等の特性を満たすことができる。
本実施の形態に係る共重合ポリアミドの製造方法において、上述のような加熱による共重合ポリアミドの着色等を防ぐ目的で、亜リン酸金属塩を用いることができる。亜リン酸金属塩とは、亜リン酸又は次亜リン酸と、元素周期律表の1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13族元素及びスズ、鉛などの金属との金属塩を意味する。
亜リン酸金属塩は、1種の亜リン酸金属塩を用いてもよく、2種以上の亜リン酸金属塩を組み合わせて用いてもよい。
亜リン酸金属塩としては、共重合ポリアミドの高分子量化をより顕著に達成できるという観点から、好ましくは次亜リン酸金属塩であり、より好ましくは次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)及び次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO2)2)が挙げられる。
亜リン酸金属塩は、水和物であってもよい。該水和物としては、特に限定されないが、例えば、次亜リン酸ナトリウム・一水和物(NaH2PO2・H2O)などが挙げられる。
本実施の形態に係る共重合ポリアミドの製造方法において、亜リン酸金属塩を用いる場合、上述した(a)〜(c)成分を重合させる工程で亜リン酸金属塩を添加してもよく、共重合ポリアミドの重合度を上昇させる工程で亜リン酸金属塩を添加してもよい。また、亜リン酸金属塩の添加量は、得られる共重合ポリアミド中のリン元素含有量が後述の特定の範囲となるように制御することが好ましい。
本実施の形態の共重合ポリアミドは、例えば、上述のような製造工程において亜リン酸金属塩を添加した場合、不純物としてリン元素含有化合物を含む。該共重合ポリアミド中のリン元素含有量は、好ましくは1〜500質量ppm、より好ましくは1ppm以上100ppm未満、特に好ましくは1〜50質量ppmである。共重合ポリアミド中のリン元素含有量を前記範囲内とすることにより、該共重合ポリアミドを含む共重合ポリアミド組成物の色調、振動疲労特性、強度半減期を向上させることができる。
なお、本実施形態において、共重合ポリアミド中のリン元素含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
水を溶媒として、共重合ポリアミドの構成成分(上記(a)〜(c)成分)を含有する約40〜60質量%の水溶液を、110〜180℃の温度及び約0.35〜6kg/cm2(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約23〜50kg/cm2(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約23〜50kg/cm2(ゲージ圧)に保つ。ここで、溶融状態を保持するためには、共重合ポリアミドの構成成分に適した圧力が好ましく、特に炭素数の大きいジアミンを用いた際には容器における圧力が25kg/cm2(ゲージ圧)以上であることが好ましい。容器における温度が約250〜350℃に達した時点で、容器における圧力を大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0kg/cm2)。ここで、溶融状態を保持するためには、加熱を続けながら、30分以上かけながら降圧することが好ましい。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。樹脂温度(液温)の最終温度は溶融状態を保持するためTpm-1より10℃以上高い方が好ましい。該ストランドを、冷却、カッティングして共重合ポリアミドのペレットを得ることができる。
本実施の形態の共重合ポリアミド組成物は、上述した共重合ポリアミドと、無機充填材、造核剤、潤滑剤、安定剤、及び前記共重合ポリアミド以外のポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分と、を含む。
無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、クレー、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが挙げられる。
造核剤としては、例えば、添加により共重合ポリアミド組成物の、結晶化ピーク温度を上昇させたり、結晶化ピークの補外開始温度と補外終了温度との差を小さくしたり、得られる成形品の球晶を微細化又はサイズの均一化させたりする効果が得られる物質のことを意味する。造核剤としては、特に限定されないが、例えば、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、窒化珪素、カーボンブラック、チタン酸カリウム、及び二硫化モリブデンなどが挙げられる。
潤滑剤としては、特に限定されないが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミド挙げられる。
安定剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤、並びに元素周期律表の第3族、第4族及び第11〜14族の元素の金属塩、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物などが挙げられる。
前記共重合ポリアミド以外のポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、前記共重合ポリアミド以外のポリアミド、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアリレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
本実施の形態に係る共重合ポリアミド組成物には、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、ポリアミドに慣用的に用いられる添加剤を含有させることもできる。該添加剤としては、特に限定されないが、例えば、顔料及び染料などの着色剤(着色マスターバッチを含む。)、難燃剤、フィブリル化剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、展着剤、エラストマー等が挙げられる。
本実施の形態に係る共重合ポリアミド組成物の製造方法としては、上述の共重合ポリアミドを含む原料成分を溶融混練する工程を含む製造方法であれば、特に限定されないが、例えば、上述の共重合ポリアミドを含む原料成分を押出機で溶融混練する工程を含み、前記押出機の設定温度を、上述の共重合ポリアミドの融解ピーク温度Tpm-1+30℃以下とする方法が好ましい。
本実施の形態の成形品は、上述の共重合ポリアミド又は共重合ポリアミド組成物を含む。
本実施の形態の成形品は、上述の共重合ポリアミド又は共重合ポリアミド組成物を、公知の成形方法を用いて成形することにより得られる。当該成形方法としては、特に限定されないが、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法が挙げられる。
携帯機器部品としては、特に限定されないが、例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコン、携帯ゲーム機器、デジタルカメラなどの筐体、及び構造体などが挙げられる。
また、本実施の形態の成形品は、表面外観に優れるので、成形品表面に塗装膜を形成させた成形品としても好ましく用いられる。塗装膜の形成方法は公知の方法であれば特に限定されず、例えば、スプレー法、静電塗装法などの塗装によることができる。また、塗装に用いる塗料は、公知のものであれば特に限定されず、メラミン架橋タイプのポリエステルポリオール樹脂塗料、アクリルウレタン系塗料などを用いることができる。
本実施例において下記化合物を用いた。
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDC)
商品名:1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体=25/75)(イーストマンケミカル社製)
(2)イソフタル酸(IPA)(和光純薬工業社製)
(1)1,10−ジアミノデカン(デカメチレンジアミン)(C10DA)
商品名:1,10−デカンジアミン(小倉合成工業社製)
(2)1,12−ジアミノドデカン(ドデカメチレンジアミン)(C12DA)(東京化成工業社製)
(3)1,6−ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン)(C6DA)(東京化成工業社製)
(1)11−アミノウンデカン酸(11AU)(アルドリッチ社製)
次亜リン酸ナトリウム 和光純薬製 商品名 ジ亜リン酸ナトリウム(NaP)
ガラス繊維(GF) 日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H 数平均繊維径(平均粒径)10μm(真円状)、カット長3mm
本実施例において、ガラス繊維の数平均繊維径は、以下の方法により求めた。任意に選択した100本以上のガラス繊維を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらのガラス繊維の繊維径を測定し、該測定値に基づき数平均繊維径を求めた。
ヨウ化銅(CuI)和光純薬工業製 商品名 ヨウ化銅(I)
ヨウ化カリウム(KI)和光純薬工業製 商品名 ヨウ化カリウム
エチレンビスステアリルアミド ライオン製 商品名 アーモワックス EBS
(1)融解ピーク温度(融点)、結晶化ピーク温度、結晶化エンタルピー
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドの、融解ピーク温度(融点)、結晶化ピーク温度及び結晶化エンタルピーを、JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて以下のとおり測定した。該測定は、窒素雰囲気下で行った。まず、試料約10mgを昇温速度20℃/minで50℃から350℃まで昇温した。このときに現れる吸熱ピークを融解ピークとし、もっとも高温側に現れたピークを融解ピーク温度Tpmとした。続いて、350℃で3分間保った後、冷却速度20℃/minで350℃から50℃まで冷却した。このときに現れる発熱ピークを結晶化ピークとし、結晶化ピーク温度をTpc-1、結晶化ピーク面積を結晶化エンタルピーとした。続いて、50℃で3分間保った後、再度昇温速度20℃/minで50℃から350℃まで昇温した。このときに現れるもっとも高温側に現れたピークを融解ピーク温度Tpm-1とし、もっとも低温側に現れたピークを融解ピーク温度Tpm-2とした。さらに、350℃で3分間保った後、冷却速度50℃/minで350℃から50℃まで冷却した。このときに現れる結晶化ピーク温度をTpc-2とした。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドのガラス転移温度を、JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて以下のとおり測定した。まず、試料をホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させた。得られた溶融状態のサンプルを、液体窒素を用いて急冷し、固化させ、測定サンプルとした。当該測定サンプル10mgを用いて、昇温速度20℃/minの条件下、30〜350℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度Tgを測定した。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドの25℃における硫酸相対粘度ηrを、JIS−K6920に準じて測定した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作成し、25℃の温度条件下で測定した。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドの脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性化率を以下のとおり求めた。
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、得られた溶液を用い、1H−NMRを測定した。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、1H−NMR測定における、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積とシス異性体に由来する1.77ppm及び1.86ppmのピーク面積との比率から共重合ポリアミドの脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率を求めた。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドにおいて、ポリマー末端に結合するアミノ末端量を、中和滴定により以下のとおり測定した。
ポリアミド3.0gを90質量%フェノール水溶液100mLに溶解し、得られた溶液を用い、0.025Nの塩酸で滴定を行い、該滴定結果に基づきアミノ末端量(μ当量/g)を求めた。終点はpH計の指示値から決定した。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドにおいて、ポリマー末端に結合するカルボキシル末端量を、中和滴定により以下のとおり測定した。
ポリアミド4.0gをベンジルアルコール50mLに溶解し、得られた溶液を用い、0.1NのNaOHで滴定を行い、該滴定結果に基づきカルボキシル末端量(μ当量/g)を求めた。終点はフェノールフタレイン指示薬の変色から決定した。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドにおいて、アミド基1個あたりの炭素数の平均値(炭素数/アミド基数)を計算により求めた。具体的には、分子種主鎖中に含まれる炭素数を分子主鎖中に含まれるアミド基数で割り返すことにより炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を求めた。該炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を、共重合ポリアミドにおけるアミノ基濃度を示す指標とした。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドにおいて、バイオマス由来の原料にて構成されるユニットの質量%をバイオマスプラスチック度として算出した。具体的には、ひまし油を原料としている、セバシン酸、1,10−ジアミノデカン、11−アミノウンデカン酸及びグルコースを原料としている、ペンタメチレンジアミンを、バイオマス由来の原料とした。そして、実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドにおいて、セバシン酸及び1,10−ジアミノデカンに由来するユニットの割合を算出し、当該割合をバイオマスプラスチック度とした。尚、ポリアミドの重合においては、アミド結合の形成の際に、ジアミン中の2つの水素原子と、ジカルボン酸中の2つの酸素原子と、2つの水素原子とから、2モルの水分子が生成することを考慮して算出した。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドのリン元素含有量を、島津製作所製ICPS−8100を用いてICP発光分光分析法(ICP−AES法)で測定した。当該測定波長は213.620nmとした。試料0.1gをPTFE製分解容器に精秤し、硫酸、硝酸及びフッ酸を加えてマイルストーンゼネラル製マイクロウェーブ分解装置で加圧酸分解を行って得られた溶液を測定液とした。
共重合ポリアミド中の各構成単位の含有量を1H−NMR測定により以下のように定量した。共重合ポリアミドのペレットを約5質量%の濃度になるように重ヘキサフルオロイソプロパノールに加熱して溶解し、日本電子製核磁気共鳴分析装置JNM ECA−500を用いて1H−NMRの分析を行い積分比を計算することによって、共重合ポリアミドを構成するジアミン及びジカルボン酸等の各構成単位の含有量を決定した。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドのペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、ISO 3167に準拠し、多目的試験片A型の成形片に成形した。具体的な成形条件は、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度を80℃、溶融樹脂温度を共重合ポリアミドの高温側の融解ピーク温度(Tpm-1)+20℃に設定した。
上記(11)のとおり多目的試験片A型の成形片を成形した後の絶乾状態(dry as mold)で、多目的試験片A型の成形片の試験前質量(吸水前質量)を測定した。次に、多目的試験片A型の成形片を、80℃の純水中に72時間浸漬させた。その後、水中から多目的試験片A型の成形片を取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定した。吸水前質量に対しての吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を、試行数n=3で求め、その平均値を吸水率とした。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドのペレットを、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、押出機の上流側供給口からダイまでを340℃に設定し、スクリュー回転数200rpm、吐出量25kg/hで溶融混練した。ダイから排出されたストランド1.5mを20℃の水浴に浸漬し、ストランドカッターによりカッティングしてペレットを得た。このとき水浴の浸漬時間を約2秒になるようにした。得られたペレット5kgを、角度:45度、投入口の径:500mm、排出口の径:50mmのステンレス製漏斗に投入し、漏斗上でブロッキングし、残留したポリアミドの割合を測定した。
上記(11)における射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドから、長さ128mm×巾12.8mm×厚さ0.75mmの成形片を成形した。当該成形において、射出+保圧時間5秒、金型温度を共重合ポリアミドのTgと同じ温度に設定し、溶融樹脂温度を共重合ポリアミドの高温側の融解ピーク温度(Tpm-1)+20℃に設定した。冷却時間を調整し、金型から成形品が問題なく離型する最短の冷却時間を、離型性として評価した。当該冷却時間を短縮することは、生産性の向上に繋がる。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドのペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、ISO 3167に準拠し、多目的試験片A型の成形片に成形した。具体的な成形条件は、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度を120℃、溶融樹脂温度を共重合ポリアミドの高温側の融解ピーク温度(Tpm-1)+20℃に設定した。該射出成形を1000ショットまで実施し、ISO試験片を得た。
該射出成形の各ショットにおいて、共重合ポリアミドのペレットが可塑化状態となるまでの時間(以下「可塑化時間」とも記す。)を測定した。該測定値に基づき、可塑化時間安定性(標準偏差)を下記式により求めた。
X1=1000ショットの可塑化時間の相加平均
上記の標準偏差(σ)が小さいほど、可塑化時間安定性に優れるものと判断した。
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を用いて、ASTM D638に準じて破壊応力(MPa)の測定を行った。実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミド組成物のペレットからダンベル射出成形試験片を以下のとおり成形した。射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)にASTM引張試験(ASTM D638)用のダンベル試験片(3mm厚)の金型(金型温度=Tg+20℃)を取り付けて、シリンダー温度=(Tpm-1+10)℃〜(Tpm-1+30)℃で成形を行って、共重合ポリアミド組成物のペレットからダンベル射出成形試験片を得た。得られたASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)について、株式会社鷺宮製作所製油圧サーボ疲労試験機EHF−50−10−3を用い、120℃の雰囲気下、周波数20Hzの正弦波にて引張り荷重を負荷し、100,000回で破壊する応力(MPa)を求めた。求めた破壊応力(MPa)が大きいほど振動疲労特性に優れると評価した。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミド組成物の色調を以下のとおり測定した。
上記(16)のASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)の初期成形品と熱風オーブン中で120℃、500時間後の成形品とのそれぞれの色調b値を、日本電色社製色差計ND−300Aを用いて求め、その差をΔbとした。当該測定はダンベル射出成形試験片3枚を用い、反ゲート側の幅広部の中央位置について1枚ずつ3回測定し、平均値から求めた。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミド組成物について、銅濃度、ハロゲン濃度、及びハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/Cu)を以下のとおり測定した。
銅濃度は、試料に硫酸を加え、加熱しながら硝酸を滴下し有機分を分解し、該分解液を純水にて定容しICP発光分析(高周波プラズマ発光分析)法により定量した。ICP発光分析装置は、SEIKO電子工業社製Vista−Proを用いた。
ハロゲン濃度は、ヨウ素を例にとると、試料を高純度酸素で置換したフラスコ中で燃焼し、発生したガスを吸収液に捕集し、該捕集液中のヨウ素を1/100N硝酸銀溶液による電位差滴定法を用いて定量した。
ハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/Cu)は、上記それぞれの定量値を用いて分子量からモルに換算し算出した。
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミド組成物の強度半減期(日)を以下のとおり測定した。
上記(16)のASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を熱風オーブン中で200℃、所定時間処理した後、ASTM−D638に準じて引張強度を測定した。そして熱処理前に測定した引張強度に対する熱処理後の引張強度を引張強度保持率として算出し、引張強度保持率が50%となる熱処理時間を強度半減期とした。
以下、共重合ポリアミドの実施例及び比較例を示す。併せて上記の測定項目を実施したので、説明する。
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
(a)脂環族ジカルボン酸、(b)炭素数8以上のジアミン、(c)共重合成分、及び、溶融重合時の添加物として、表1に記載の化合物及び量を用いたこと、並びに樹脂温度の最終温度を表1に記載の温度にしたこと以外は、実施例1に記載した方法でポリアミドの重合反応を行って(「熱溶融重合法」)、共重合ポリアミドのペレットを得た。得られた共重合ポリアミド中の各構成単位の含有量を上記のとおり1H−NMRにより測定した。該測定結果より共重合ポリアミドを構成するジアミン及びジカルボン酸等の各構成単位の含有量が、仕込み通りの割合になっていることを確認した。
共重合ポリアミド組成物の原料として以下の共重合ポリアミド、上述した無機充填材、銅化合物及び金属ハロゲン化物を用いた。
実施例1〜11で得られた共重合ポリアミド、並びに比較例1及び2で得られたポリアミドを、窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%に調整して、ポリアミド組成物の原料として用いた。
KI 85.1質量部、エチレンビスステアリルアミド10質量部を混合し、KIとエチレンビスステアリルアミドとの混合物を得た。該混合物にCuI 4.9質量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(1)を得た。
2軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、L/D=47.6(D=37mmφ)、設定温度Tpm-1+20℃(実施例1で得られた共重合ポリアミドを用いた場合、298+20=318℃)、スクリュー回転数300rpm)を用いて、以下のとおり共重合ポリアミド組成物を製造した。該2軸押出機の最上流部に設けられたトップフィード口より、上記水分率を調整した共重合ポリアミド(100質量部)、上記で製造した顆粒(1)(6.1質量部)を供給し、前記2軸押出機の下流側(トップフィード口より供給された樹脂が充分溶融している状態)のサイドフィード口より無機充填材としてガラス繊維を表3に示す割合(質量部)で供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして共重合ポリアミド組成物のペレットを得た。
得られた共重合ポリアミド組成物のペレットの各物性について上記(16)、(17)、(18)及び(19)の方法に基づき測定した。該測定結果を下記表3に示す。
なお、引張試験における引張速度は5mm/minで実施した。
Claims (17)
- (a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸からなる単位と、
(b)1種の炭素数10のジアミンからなる単位と、
(c)下記(c−1)〜(c−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合成分からなる単位と、を含有し、かつ下記条件(1)〜(4)を満足する、共重合ポリアミド(但し、1,9-ノナンジアミンからなる単位及び主鎖から分岐した置換基を持つジアミン単位を含むものを除く);
(c−1)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸、
(c−2)前記(b)のジアミンより炭素数の少ないジアミン、
(c−3)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸、
(1)JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、20℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tpc-1と、ガラス転移温度Tgとの差(Tpc-1−Tg)が、140℃以上であること、
(2)炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)が、8以上であること、
(3)JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、20℃/minで昇温したときに得られる融解ピーク温度Tpmと、20℃/minで再度昇温したときに得られる融解ピーク温度Tpm-1との差(Tpm−Tpm-1)が、30℃以下であること、
(4)アミノ末端量とカルボキシル末端量との総量に対するアミノ末端量の比{アミノ末端量/(アミノ末端量+カルボキシル末端量)}が、0.0以上0.5未満であること。 - 前記(a)脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、請求項1に記載の共重合ポリアミド。
- 前記(a)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率が、65〜80モル%である、請求項1又は2に記載の共重合ポリアミド。
- 不純物としてリン元素含有化合物を含み、
リン元素含有量が1ppm以上100ppm未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合ポリアミド。 - 前記(b)炭素数10のジアミンが、デカメチレンジアミンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合ポリアミド。
- 前記(c−1)ジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の共重合ポリアミド。
- 前記(c−1)ジカルボン酸が、セバシン酸及び/又はドデカン二酸である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の共重合ポリアミド。
- 前記(c−1)ジカルボン酸が、イソフタル酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の共重合ポリアミド。
- 前記(c−2)ジアミンが、炭素数4〜7の脂肪族ジアミンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の共重合ポリアミド。
- JIS−K7121に準じた示差走査熱量測定において、20℃/minで冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tpc-1と、50℃/minで再度冷却したときに得られる結晶化ピーク温度Tpc-2との差(Tpc-1−Tpc-2)が、10℃以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の共重合ポリアミド。
- 前記(c)共重合成分からなる単位の含有量が、共重合ポリアミドの全構成単位の含有量の合計100モル%に対し、7.5モル%以上20.0モル%以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の共重合ポリアミド。
- バイオマスプラスチック度が、25%以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の共重合ポリアミド。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の共重合ポリアミドと、
無機充填材、造核剤、潤滑剤、安定剤、及び前記共重合ポリアミド以外のポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分と、を含む共重合ポリアミド組成物。 - 請求項1〜12のいずれか1項に記載の共重合ポリアミド、又は請求項13に記載の共重合ポリアミド組成物を含む成形品。
- 自動車部品、電子部品、家電部品、OA機器部品又は携帯機器部品として用いられる、請求項14に記載の成形品。
- (a)少なくとも1種の脂環族ジカルボン酸と、
(b)1種の炭素数10のジアミンと、
(c)下記(c−1)〜(c−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合成分と、を重合させる工程を含み、
該重合工程で得られる共重合ポリアミド中の(a)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率を65〜80%に維持する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の共重合ポリアミドの製造方法;
(c−1)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸、
(c−2)前記(b)のジアミンより炭素数の少ないジアミン、
(c−3)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸。 - 請求項1〜12のいずれか1項に記載の共重合ポリアミドを含む原料成分を押出機で溶融混練する工程を含み、
前記押出機の設定温度を請求項1に記載の融解ピーク温度Tpm-1+30℃以下とする、共重合ポリアミド組成物の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012143213A JP6042114B2 (ja) | 2012-06-26 | 2012-06-26 | 共重合ポリアミド及び共重合ポリアミド組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012143213A JP6042114B2 (ja) | 2012-06-26 | 2012-06-26 | 共重合ポリアミド及び共重合ポリアミド組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2014005406A JP2014005406A (ja) | 2014-01-16 |
JP6042114B2 true JP6042114B2 (ja) | 2016-12-14 |
Family
ID=50103432
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012143213A Expired - Fee Related JP6042114B2 (ja) | 2012-06-26 | 2012-06-26 | 共重合ポリアミド及び共重合ポリアミド組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6042114B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104610739B (zh) * | 2015-01-21 | 2017-09-15 | 金发科技股份有限公司 | 一种反射板用聚酰胺组合物 |
Family Cites Families (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3481730B2 (ja) * | 1995-06-26 | 2003-12-22 | 株式会社クラレ | ポリアミド組成物 |
DE10197012T1 (de) * | 2000-12-11 | 2003-10-30 | Asahi Chemical Ind | Polyamid |
JP5404393B2 (ja) * | 2007-06-04 | 2014-01-29 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及びフィルム |
CN101970535B (zh) * | 2008-03-12 | 2015-05-27 | 旭化成化学株式会社 | 聚酰胺、聚酰胺组合物及聚酰胺的制造方法 |
FR2932808B1 (fr) * | 2008-06-20 | 2010-08-13 | Arkema France | Copolyamide, composition comprenant un tel copolyamide et leurs utilisations. |
JP5149220B2 (ja) * | 2009-02-25 | 2013-02-20 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | 高度に熱安定化された共重合ポリアミド |
JP2011068874A (ja) * | 2009-08-25 | 2011-04-07 | Asahi Kasei Chemicals Corp | ポリアミド組成物を含む自動車部品 |
JP5714834B2 (ja) * | 2010-04-14 | 2015-05-07 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | ポリアミド組成物及びポリアミド組成物からなる成形体 |
-
2012
- 2012-06-26 JP JP2012143213A patent/JP6042114B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2014005406A (ja) | 2014-01-16 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5497921B2 (ja) | 共重合ポリアミド | |
JP5964964B2 (ja) | ポリアミド、ポリアミド組成物及び成形品 | |
JP6039945B2 (ja) | ポリアミド樹脂組成物及び成形品 | |
JP5429966B2 (ja) | ポリアミド組成物からなる自動車冷却系部品 | |
JP5744439B2 (ja) | 摺動部材 | |
JP5942122B2 (ja) | 長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品 | |
JP2015129243A (ja) | ポリアミド組成物及び成形品 | |
JP5942109B2 (ja) | ポリアミド組成物及びポリアミド組成物を成形した成形体 | |
JP6034074B2 (ja) | 共重合ポリアミド | |
JP5997525B2 (ja) | 共重合ポリアミド組成物及び成形品 | |
JP5997526B2 (ja) | ポリアミド樹脂組成物及び成形品 | |
JP5637772B2 (ja) | ポリアミド溶着成形品 | |
JP6067254B2 (ja) | 共重合ポリアミド | |
JP5965230B2 (ja) | ポリアミド樹脂組成物及び成形品 | |
JP6042114B2 (ja) | 共重合ポリアミド及び共重合ポリアミド組成物 | |
JP6042110B2 (ja) | 共重合ポリアミド | |
JP6042121B2 (ja) | ポリアミド樹脂組成物及び成形品 | |
JP6013813B2 (ja) | 共重合ポリアミド組成物及び成形品 | |
JP5207548B2 (ja) | ポリアミド組成物からなる自動車吸気系部品 | |
JP2022051850A (ja) | ポリアミド組成物及び成形品 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20150320 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20160204 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20160217 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20160401 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160414 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160523 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20160614 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160914 |
|
A911 | Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20160921 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20161013 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20161109 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6042114 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |