以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
〔共重合ポリアミド〕
本実施形態の共重合ポリアミドは、
(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位と、
(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸からなる単位と、
(c)炭素数8以上のジアミンからなる単位と、
を、含有し、
25℃の硫酸相対粘度ηrが2.1以下である。
なお、本実施形態において、ポリアミドとは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。
以下、上記成分(a)、(b)及び(c)について詳細に説明する。
((a)脂環族ジカルボン酸)
本実施形態に用いる(a)脂環族ジカルボン酸の具体例としては、特に限定されないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、及び1,2−シクロペンタンジカルボン酸などが挙げられる。
本実施形態に用いる(a)脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
当該置換基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
本実施形態に用いる(a)脂環族ジカルボン酸としては、耐熱性、低吸水性、強度及び剛性などの観点で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であることが好ましい。
本実施形態に用いる(a)脂環族ジカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸には、トランス体とシス体との幾何異性体が存在する。原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス体とシス体とのどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体との種々の比率の混合物として用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることやシス体の方がトランス体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス体/シス体比(モル比)が、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。ここで、本明細書におけるトランス体/シス体の比(モル比)は、1H−NMRにより求めることとする。
((b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸)
本実施形態に用いる(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸などの炭素数3〜20の直鎖又は分岐状脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
種々の置換基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩などのその塩などが挙げられる。
本実施形態に用いる(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、イソフタル酸類が好ましい。イソフタル酸類としては、芳香族環の1,3−位にカルボキシル基を有するジカルボン酸であれば特に限定されない。イソフタル酸類としては、無置換のイソフタル酸でも、置換基を有する置換イソフタル酸でもよい。当該置換基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基やメトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。
本実施形態に用いるイソフタル酸類の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸、4−メチルイソフタル酸、5−メチルイソフタル酸、4−エチルイソフタル酸、5−メトキシイソフタル酸などが挙げられる。中でもイソフタル酸が共重合ポリアミドの強度向上の観点から特に好ましい。
本実施形態の共重合ポリアミドに含まれる(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、強度及び剛性などの観点で、好ましくは炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸である。
炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸などが挙げられる。
成分(b)は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、本実施形態の共重合ポリアミドに含まれる成分(b)は、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を含んでもよい。
多価カルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の共重合ポリアミドに用いるジカルボン酸としては、上記ジカルボン酸として記載の化合物に限定されるものではなく、上記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。
ジカルボン酸と等価な化合物としては、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物などが挙げられる。
((c)炭素数8以上のジアミン)
本実施形態の共重合ポリアミドに用いる(c)炭素数8以上のジアミンとしては、炭素数8以上のジアミンであれば特に限定されないが、例えば、無置換の直鎖脂肪族ジアミンでも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などの置換基を有する分岐状脂肪族ジアミンでも、脂環族ジアミンでも、芳香族ジアミンでもよい。本実施の形態に用いる(c)ジアミンにおける炭素数は、8〜20であることが好ましく、8〜15であることがより好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。
本実施形態の共重合ポリアミドに用いる(c)炭素数8以上のジアミンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、オクタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、オルトキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどが挙げられる。
本実施形態の共重合ポリアミドに用いる(c)炭素数8以上のジアミンとしては、耐熱性、低吸水性、強度及び剛性などの観点で、オクタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンが好ましく、より好ましくは、2−メチルオクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンであり、さらに好ましくは、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンであり、特に好ましくはデカメチレンジアミンである。
デカメチレンジアミンとしては、共重合ポリアミドの低吸水性の向上と環境負荷の低減の観点から、1,10−位にアミノ基を有する直鎖デカン骨格を有する1,10−デカメチレンジアミンが好ましい。1,10−デカメチレンジアミンとしては、無置換の1,10−デカメチレンジアミンでも、置換基を有する置換1,10−デカメチレンジアミンでもよい。当該置換基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
成分(c)は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(末端封止剤)
本実施形態の共重合ポリアミドを重合する際に、上記(a)〜(c)成分以外に、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加することができる。
末端封止剤としては、特に限定されないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミンが挙げられる。また、本実施形態の共重合ポリアミドを重合する際に、上記(a)〜(c)成分以外に末端封止剤をさらに添加することにより、共重合ポリアミド中に末端封止剤からなる単位が形成される。
末端封止剤としては、特に限定されないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類などが挙げられ、共重合ポリアミドの熱安定性の観点で、モノカルボン酸、及びモノアミンが好ましい。
末端封止剤としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族モノカルボン酸;並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸;などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなどの脂環族モノアミン;並びにアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミンなどの芳香族モノアミン;などが挙げられる。
モノアミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(各構成成分の含有量)
本実施形態の共重合ポリアミドにおいて、(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位の含有量は、共重合ポリアミドを構成する全ジカルボン酸からなる単位100モル%に対して、好ましくは20モル%以上99モル%以下であり、より好ましくは30モル%以上90モル%以下であり、さらに好ましくは35モル%以上80モル%以下である。(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位の含有量を前記範囲とすることで、強度、低ブロッキング性、離型性に特に優れる共重合ポリアミドとすることができる。また、該共重合ポリアミドを含む共重合ポリアミド組成物は、振動疲労特性、表面外観及び連続生産性に優れる。
本実施形態の共重合ポリアミドにおいて、(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸からなる単位の含有量は、共重合ポリアミドを構成する全ジカルボン酸からなる単位100モル%に対して、好ましくは1モル%以上80モル%以下であり、より好ましくは10モル%以上70モル%以下であり、さらに好ましくは20モル%以上65モル%以下である。(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸からなる単位の含有量を前記範囲とすることで、強度、低ブロッキング性、離型性及び可塑化時間安定性に特に優れる共重合ポリアミドとすることができる。また、該共重合ポリアミドを含む共重合ポリアミド組成物は、振動疲労特性、表面外観及び連続生産性に優れる。
本実施形態の共重合ポリアミドにおいて、(c)炭素数8以上のジアミンからなる単位の含有量は、共重合ポリアミドを構成する全ジアミンからなる単位100モル%に対して、好ましくは50モル%以上100モル%以下であり、より好ましくは60モル%以上100モル%以下であり、さらに好ましくは70モル%以上100モル%以下である。(c)炭素数8以上のジアミンからなる単位の含有量を前記範囲とすることで、強度、靭性、低吸水性、吸水時剛性、及び低環境負荷性に特に優れる共重合ポリアミドとすることができる。
本実施の形態の共重合ポリアミドにおいて、末端封止剤からなる単位の含有量は、共重合ポリアミドを構成する全モノマーからなる単位100モル%に対して、好ましくは0.01モル%以上5モル%以下であり、より好ましくは0.05モル%以上4モル%以下であり、さらに好ましくは0.1モル%以上3モル%以下である。末端封止剤からなる単位の含有量を前記範囲とすることで、溶融流動性、低ブロッキング性、離型性及び可塑化時間安定性に特に優れる共重合ポリアミドとすることができる。また、該共重合ポリアミドを含む共重合ポリアミド組成物は、溶融流動性、残揮発分性、及び表面外観に優れる。
本実施の形態において、各成分からなる単位の含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、本実施形態において、共重合ポリアミドを構成するモノマーとは、上記成分(a)〜(c)や、必要に応じて含有する後述の(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸などの共重合成分を意味し、共重合ポリアミドの末端を封止するために用いる末端封止剤は、該モノマーに含まれない。
(前記(c)炭素数8以上のジアミン以外のその他のジアミン)
本実施形態の共重合ポリアミドを構成するジアミンとして、(c)炭素数8以上のジアミン以外のジアミン(以下、単に、その他のジアミンと記載する場合がある。)を用いることができる。(c)炭素数8以上のジアミン以外のジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数7以下の、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミンなどが挙げられる。
炭素数7以下の脂肪族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、及びヘプタメチレンジアミンなどの直鎖脂肪族ジアミンや、2−メチルペンタメチレンジアミン、及び3−メチルペンタメチレンジアミンなどの分岐状脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
炭素数7以下の脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、特に限定されないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロペンタンジアミン及び1,3−ジアミノメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
炭素数7以下の芳香族ジアミンとしては、芳香族を含有するジアミンであり、特に限定されないが、例えば、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、及びオルトフェニレンジアミンなどが挙げられる。
(ジカルボン酸及びジアミンの含有割合)
本実施形態の共重合ポリアミドにおいて、ジカルボン酸とジアミンとの含有割合は、同モル量であることが好ましい。そのため、本実施形態の共重合ポリアミドを得る際の原料として、ジカルボン酸の使用量とジアミンの使用量とは、同モル量付近であることが好ましい。具体的には、重合反応中のジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、ジカルボン酸全体のモル量1に対して、ジアミン全体のモル量は、0.9〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.1であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
((d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)
本実施形態の共重合ポリアミドは、さらに(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位を含有してもかまわない。(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、ジカルボン酸及び/又はジアミンと重(縮)合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、炭素数が4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸が好ましく、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸であることがより好ましい。
ラクタムとしては、特に限定されないが、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)などが挙げられる。
中でも、ラクタムとしては、共重合ポリアミドの靭性の観点で、ε−カプロラクタム、ウンデカノラクタム、ラウロラクタムなどが好ましく、ε−カプロラクタム、ラウロラクタムがより好ましい。
アミノカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、前記ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸などが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、特に限定されないが、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸などが挙げられる。アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸なども挙げられる。
中でも、アミノカルボン酸としては、共重合ポリアミドの低吸水、靭性の観点で、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などがより好ましい。
(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位の含有量(モル%)は、特に限定されないが、共重合ポリアミドを構成する全モノマーからなる単位100モル%に対して、好ましくは0モル%以上20モル%以下であり、より好ましくは0モル%以上18モル%以下である。(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位を含有させる場合、当該(d)からなる単位の含有量の下限は、例えば、0.5モル%以上である。(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位の含有量が前記範囲内であることにより、耐熱性、低吸水性、強度及び離型性などに優れる共重合ポリアミドとすることができる。
〔共重合ポリアミドの特性〕
(異性体比率)
本実施の形態の共重合ポリアミドにおいて、(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位は、トランス異性体及びシス異性体の幾何異性体として存在する。
本実施形態の共重合ポリアミド中、(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位におけるトランス異性体比率は、共重合ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸からなる単位全体中のトランス異性体である比率を表す。当該トランス異性体比率は、好ましくは50〜85モル%であり、より好ましくは50〜80モル%であり、さらに好ましくは65〜80モル%である。
原料である(a)脂環族ジカルボン酸としては、上述したとおりトランス体/シス体比(モル比)が50/50〜0/100である脂環族ジカルボン酸を用いることが好ましい。その一方で、共重合ポリアミド中、(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位におけるトランス異性体比率は上記範囲内、すなわち好ましくは50〜85モル%、より好ましくは50〜80モル%、さらに好ましくは65〜80モル%であるものとする。
前記トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、共重合ポリアミドは、高融点、靭性、強度、剛性及び可塑化時間安定性に優れるという特性に加えて、高いTgによる熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性とを同時に満足するという性質を持つ。また、該共重合ポリアミドを含む共重合ポリアミド組成物は、表面外観及び連続生産性に優れる。
共重合ポリアミド中の(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位におけるトランス異性体比率を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの重合方法、並びに重合条件を制御する方法などが挙げられる。熱溶融重合法により共重合ポリアミドを製造する際には、重合が終了するまで、溶融状態を保持することが好ましい。溶融状態を保持するためには、共重合ポリアミドの構成成分に適した重合条件で製造することが好ましい。具体的には、例えば、重合圧力を23〜50kg/cm2(ゲージ圧)、好ましくは25kg/cm2(ゲージ圧)以上の高圧に制御し、加熱を続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで30分以上かけながら降圧する方法などが挙げられる。
本実施形態の共重合ポリアミドにおいて、当該共重合ポリアミド中の前記トランス異性体比率は、例えば、共重合ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、得られた溶液を1H−NMRで測定することにより求めることができる。具体的には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、1H−NMR測定における、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積と、シス異性体に由来する1.77ppm及び1.86ppmのピーク面積との比率からトランス異性体比率を求めることができる。
(バイオブラスチック度)
本実施形態の共重合ポリアミドのバイオマスプラスチック度は、25%以上であることが好ましい。バイオマスプラスチック度とは、共重合ポリアミドのうち、バイオマス由来の原料にて構成されるユニットの割合を意味し、下記実施例に記載する方法により算出することができる。より好ましいバイオプラスチック度としては30%以上である。
本実施形態の共重合ポリアミドのバイオマスプラスチック度の上限値は、特に限定されないが、耐熱性の観点から80%よりも低いことが好ましい。
ここでいうバイオマス由来の原料とは、共重合ポリアミドの構成成分である上記(a)〜(c)、及び任意の(d)成分のうち、植物などの成分を出発物質として合成することができるモノマーを意味する。
例えば、ひまし油の主成分であるリシノレイン酸トリグリセライドから合成することができる、セバシン酸、デカメチレンジアミン及び11−アミノウンデカン酸や、ひまわり種子の成分から合成することができる、アゼライン酸や、セルロースから合成することができる、ペンタメチレンジアミン、γ−アミノ酪酸等が挙げられる。
バイオマスは、光合成により大気中の炭酸ガスを吸収することにより蓄積されたものである。そのため、これらを原料としたプラスチックを、使用後に燃焼などによって二酸化炭素を大気中に放出した場合でも、該二酸化炭素はもともと大気中に存在した炭酸ガスであることから、大気中の炭酸ガス濃度は上昇したことにならない。
したがって、共重合ポリアミドにおいて、バイオマスプラスチック度が高いことは、環境負荷の低減に非常に有効である。共重合ポリアミドのバイオマスプラスチック度を高くする方法としては、特に限定されないが、例えば、共重合ポリアミドを製造する際、上述したバイオマス由来の原料の配合割合を高くする方法などが挙げられる。
(硫酸相対粘度)
本実施形態の共重合ポリアミドの分子量は、25℃の硫酸相対粘度ηrを指標とする。
本実施の形態の共重合ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrは、共重合ポリアミド組成物の成形時の流動性及び表面外観などの観点で2.1以下である。好ましくは、共重合ポリアミドの強度の観点から1.3〜2.1であり、より好ましくは1.4〜2.0であり、さらに好ましくは1.5〜1.9であり、よりさらに好ましくは1.6〜1.8である。
共重合ポリアミドの硫酸相対粘度ηrを上記の範囲にすることによって、共重合ポリアミドの溶融流動性を向上し成形を容易にし、さらに微細成形品の射出成形加工や多数個取りの金型を用いた射出成形加工に有利になる。
また、後述する無機充填材に代表される成分との共重合ポリアミド組成物の射出成形加工において平滑性や光沢性などの表面外観性により優れた成形品を得ることができる。
共重合ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrを上記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの熱溶融重合時の添加物としてのジアミンやジカルボン酸の添加量を制御する方法、末端封止剤の添加量を制御する方法、及び重合条件を制御する方法などが挙げられる。
本実施形態の共重合ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrの測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6920に準じて行うことができる。
(融解ピーク温度(融点)、結晶化ピーク温度、結晶化エンタルピー)
本実施形態の共重合ポリアミドの、融解ピーク温度(融点)、結晶化ピーク温度及び結晶化エンタルピーは、JIS−K7121に準じて、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。具体的には、以下のとおり測定することができる。
測定装置としては、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いることができる。
該測定は、窒素雰囲気下で行う。まず、試料約10mgを昇温速度20℃/minで50℃から350℃まで昇温する。このときに現れる吸熱ピークを融解ピークとし、もっとも高温側に現れるピークを融解ピーク温度Tm1とする。続いて、350℃で3分間保った後、冷却速度20℃/minで350℃から50℃まで冷却する。このときに現れる発熱ピークを結晶化ピークとし、結晶化ピーク温度をTc、結晶化ピーク面積を結晶化エンタルピーとする。続いて、50℃で3分間保った後、再度昇温速度20℃/minで50℃から350℃まで昇温する。このときに現れるもっとも高温側に現れる吸熱ピークを融解ピーク温度Tm2とする。
本実施形態の共重合ポリアミドの融解ピーク温度(融点)Tm2は、共重合ポリアミドの耐熱性の観点から、好ましくは260℃以上が好ましく、より好ましくは、270℃以上330℃以下であり、さらに好ましくは280℃以上320℃以下であり、特に好ましくは310℃以上325℃以下である。共重合ポリアミドの融解ピーク温度Tm2が330℃以下である共重合ポリアミドは、押出、成形などの溶融加工における熱分解などを抑制することができるため好ましい。
共重合ポリアミドの融解ピーク温度(融点)Tm2を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、上記(a)、(b)、(c)成分の配合比率や、必要に応じて添加する(d)成分及びその他の成分から選ばれる共重合成分の配合比率を上述した範囲に制御する方法などが挙げられる。
本実施形態の共重合ポリアミドの結晶化エンタルピーは、共重合ポリアミドの耐熱性、低ブロッキング性、離型性の観点から、好ましくは10J/g以上であり、より好ましくは15J/g以上であり、さらに好ましくは20J/g以上である。
本実施形態の共重合ポリアミドの結晶化エンタルピーの上限は、特に限定されないが100J/g以下である。
共重合ポリアミドの結晶化エンタルピーを前記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミド中の炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を8以上とし、
共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(d)成分とし、共重合成分の配合比率を以下のような範囲に制御する方法などが挙げられる。すなわち、前記(a)からなる単位の含有量を、共重合ポリアミドを構成する全ジカルボン酸からなる単位100モル%に対して、20〜99モル%とし、前記(b)からなる単位の含有量を、共重合ポリアミドを構成する全ジカルボン酸からなる単位100モル%に対して、1〜80モル%とし、前記(c)からなる単位の含有量を、共重合ポリアミドを構成する全ジアミンからなる単位100モル%に対して、50〜100モル%とし、前記(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位を、共重合ポリアミドを構成する全モノマーからなる単位100モル%に対して、0〜20モル%とする。
(Tg)
本実施形態の共重合ポリアミドのガラス転移温度Tgは、好ましくは70℃以上150℃以下であり、より好ましくは75℃以上140℃以下であり、さらに好ましくは90℃以上130℃以下である。該ガラス転移温度Tgを70℃以上とすることにより、耐熱性や耐薬品性に優れる共重合ポリアミドとすることができる。また、該ガラス転移温度を150℃以下とすることにより、共重合ポリアミドから表面外観のよい成形品を得ることができる。
共重合ポリアミドのガラス転移温度Tgを前記範囲内に制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(d)成分とし、共重合成分の配合比率を以下のような範囲に制御する方法などが挙げられる。すなわち、前記(a)からなる単位の含有量を、共重合ポリアミドを構成する全ジカルボン酸からなる単位100モル%に対して、20〜99モル%とし、前記(b)からなる単位の含有量を、共重合ポリアミドを構成する全ジカルボン酸からなる単位100モル%に対して、1〜80モル%とし、前記(c)からなる単位の含有量を、共重合ポリアミドを構成する全ジアミンからなる単位100モル%に対して、50〜100モル%とし、前記(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位を、共重合ポリアミドを構成する全モノマーからなる単位100モル%に対して、0〜20モル%とする。
本実施形態の共重合ポリアミドにおいて、ガラス転移温度Tgは、JIS−K7121に準じて、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
(ポリマー末端)
本実施形態の共重合ポリアミドのポリマー末端は、以下のように分類し、定義される。
すなわち、1)アミノ末端、2)カルボキシル末端、3)封止剤による末端、及び4)その他の末端である。
共重合ポリアミドのポリマー末端とは、ジカルボン酸とジアミンとがアミド結合により重合したポリマー鎖の末端部分を意味する。前記共重合ポリアミドのポリマー末端は、これら1)〜4)の末端のうちの1種以上である。
1)アミノ末端は、アミノ基(−NH2基)が結合したポリマー末端であり、原料のジアミンに由来する。
2)カルボキシル末端は、カルボキシル基(−COOH基)が結合したポリマー末端であり、原料のジカルボン酸に由来する。
3)封止剤による末端は、重合時に添加した末端封止剤、例えばカルボン酸又はアミンにより封止されたポリマー末端である。
4)その他の末端は、上記の1)〜3)に分類されないポリマー末端であり、例えば、アミノ末端が脱アンモニア反応して生成した末端や、カルボキシル末端から脱炭酸反応して生成した末端等が挙げられる。
本実施形態の共重合ポリアミドのアミノ末端量とカルボキシル末端量との総量に対するカルボキシル末端量の比{カルボキシル末端量/(アミノ末端量+カルボキシル末端量)}は、特に限定されないが、0.3以上であると好ましい。より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.7以上である。
本実施形態の共重合ポリアミドのアミノ末端量とカルボキシル末端量との総量に対するカルボキシル末端量の比{カルボキシル末端量/(アミノ末端量+カルボキシル末端量)}の上限値は、0.95未満であることが好ましい。より好ましくは0.90、さらに好ましくは0.85である。
共重合ポリアミドのアミノ末端量とカルボキシル末端量との総量に対するカルボキシル末端量の比を0.3以上とすることにより、共重合ポリアミドの強度、靭性、熱時安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。また、該共重合ポリアミドを含む共重合ポリアミド組成物は、振動疲労特性に優れる。
共重合ポリアミドのアミノ末端量とカルボキシル末端量との総量に対するカルボキシル末端量の比を0.95未満とすることにより、熱時安定性及び耐加水分解性を向上することができる。
共重合ポリアミドのアミノ末端量とカルボキシル末端量との総量に対するカルボキシル末端量の比{カルボキシル末端量/(アミノ末端量+カルボキシル末端量)}を制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの熱溶融重合時の添加物としてのジアミン及び末端封止剤の添加量、並びに重合条件を制御する方法が挙げられる。
ポリマー末端に結合するアミノ末端量は、中和滴定により測定することができる。具体的には、ポリアミド3.0gを90質量%フェノール水溶液100mLに溶解し、得られた溶液について0.025Nの塩酸で滴定を行い、アミノ末端量を求める。終点はpH計の指示値から決定する。
ポリマー末端に結合するカルボキシル末端量は、中和滴定により測定することができる。具体的には、ポリアミド4.0gをベンジルアルコール50mLに溶解し、得られた溶液について0.1NのNaOHで滴定を行い、カルボキシル末端量を求める。終点はフェノールフタレイン指示薬の変色から決定する。
上記アミノ末端量及びカルボキシ末端量を用いて、共重合ポリアミドのアミノ末端量とカルボキシル末端量との総量に対するカルボキシル末端量の比{カルボキシル末端量/(アミノ末端量+カルボキシル末端量)}を算出できる。
(炭素数/アミド基)
本実施形態の共重合ポリアミドにおいて、炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)は、低吸水の観点から8.0以上であることが好ましく、より好ましくは8.2以上10.5以下である。該炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)は、共重合ポリアミドのアミノ基濃度を示す指標である。該炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を前記範囲内とすることにより、強度、低吸水性、低ブロッキング性、離型性及び可塑化時間安定性に優れた共重合ポリアミド、並びに振動疲労特性、表面外観及び連続生産性に優れた共重合ポリアミド組成物を提供できる。
共重合ポリアミドにおける炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を制御する方法としては、例えば、共重合ポリアミドの構成成分を上記(a)〜(d)成分とし、共重合成分の配合比率を以下に示す範囲に制御する方法が挙げられる。すなわち、前記(a)からなる単位の含有量を、共重合ポリアミドを構成する全ジカルボン酸からなる単位100モル%に対して、20〜99モル%とし、前記(b)からなる単位の含有量を、共重合ポリアミドを構成する全ジカルボン酸からなる単位100モル%に対して、1〜80モル%とし、前記(c)からなる単位の含有量を、共重合ポリアミドを構成する全ジアミンからなる単位100モル%に対して、50〜100モル%とし、前記(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位を、共重合ポリアミドを構成する全モノマーからなる単位100モル%に対して、0〜20モル%とする。
アミノ基濃度を示す指標である(炭素数/アミド基数)は、共重合ポリアミドにおけるアミド基1個あたりの炭素数の平均値を計算により求めることができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
〔共重合ポリアミドの製造方法〕
本実施形態の共重合ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、上述した(a)脂環族ジカルボン酸と、(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸と、(c)炭素数8以上のジアミンと、任意で(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸などの共重合成分を重合させる工程を含む、共重合ポリアミドの製造方法が挙げられる。
本実施形態の共重合ポリアミドの製造方法としては、末端封止剤を添加する工程を含む。末端封止剤は、共重合時に添加することが好ましい。
本実施の形態の共重合ポリアミドの具体的な製造方法としては、例えば、以下に例示するように種々の方法が挙げられる:
1)ジカルボン酸、ジアミン塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)。
3)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分と、ジアミン成分とを用いて重合させる方法(「溶液法」)。
中でも、熱溶融重合法を含む製造方法が好ましく、熱溶融重合法により共重合ポリアミドを製造する際には、重合が終了するまで、溶融状態を保持することが好ましい。溶融状態を保持するためには、共重合ポリアミドの構成成分に適した重合条件で製造することが好ましい。例えば、該熱溶融重合法における重合圧力を23〜50kg/cm2(ゲージ圧)、好ましくは25kg/cm2(ゲージ圧)以上の高圧に制御し、加熱を続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで30分以上かけながら降圧する方法などが挙げられる。このような製造方法により得られる共重合ポリアミドは、トランス異性体比率等の特性を満たすことができる。
本実施形態の共重合ポリアミドの製造方法において、共重合ポリアミドの融解ピーク温度を高く保ち、流動性を良好にする観点から、得られる共重合ポリアミド中の(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位におけるトランス異性体比率を50〜85%以下に維持して重合することが好ましく、特に、該トランス異性体比率を60〜80%以下、より好ましくは65〜80%に維持することにより、さらに色調、引張伸度及び可塑化時間安定性に優れ、高融点の共重合ポリアミドを得ることができる。また、該共重合ポリアミドを含む共重合ポリアミド組成物は、表面外観及び連続生産性に優れる。
本実施形態の共重合ポリアミドの製造方法において、重合度を上昇させて共重合ポリアミドの融点を上昇させるために、加熱の温度を上昇させたり、及び/又は加熱の時間を長くしたりする場合がある。その場合、加熱によるポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下が起こるおそれがある。また、分子量の上昇する速度が著しく低下するおそれがある。
このような共重合ポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下、可塑化時間安定性の低下を防止するため、また、該共重合ポリアミドを含む共重合ポリアミド組成物の表面外観及び連続生産性の低下を防止するため、前記トランス異性体比率を80%以下に維持して重合することが好適である。
本実施形態の共重合ポリアミドを製造する方法としては、1)熱溶融重合法、及び2)熱溶融重合・固相重合法により共重合ポリアミドを製造する方法が好ましい。このような製造方法であると、共重合ポリアミド中の(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位におけるトランス異性体比率を80%以下に維持することが容易であり、また、得られる共重合ポリアミドは色調及び可塑化時間安定性に優れる。さらに、該共重合ポリアミドを含む共重合ポリアミド組成物は、表面外観及び連続生産性に優れる。
本実施形態の共重合ポリアミドの製造方法において、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。
重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及びニーダーなどの押出機型反応器などが挙げられる。
本実施形態の共重合ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下に記載するバッチ式の熱溶融重合法により共重合ポリアミドを製造することができる。
バッチ式の熱溶融重合法により共重合ポリアミドを製造する方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。熱溶融重合法により共重合ポリアミドを製造する際には、重合が終了するまで、溶融状態を保持することが好ましい。溶融状態を保持するためには、共重合ポリアミドの構成成分に適した重合条件で製造することが好ましい。
水を溶媒として、共重合ポリアミドの構成成分(上記(a)〜(c)成分、及び任意の(d)成分、その他の成分)を含有する約40〜60質量%の水溶液を、110〜180℃の温度及び約0.35〜6kg/cm2(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約23〜50kg/cm2(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約23〜50kg/cm2(ゲージ圧)に保つ。ここで、溶融状態を保持するためには、共重合ポリアミドの構成成分に適した圧力が必要であり、特に炭素数の大きいジアミンを用いた際には容器における圧力が25kg/cm2(ゲージ圧)以上であることが好ましい。容器における温度が約250〜350℃に達した時点で、容器における圧力を大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0kg/cm2)。ここで、溶融状態を保持するためには、加熱を続けながら、30分以上かけながら降圧することが好ましい。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。樹脂温度(液温)の最終温度は溶融状態を保持するためTm2より10℃以上高い方が好ましい。該ストランドを、冷却、カッティングして共重合ポリアミドのペレットを得ることができる。
〔共重合ポリアミド組成物〕
本実施形態の共重合ポリアミド組成物は、上述した本実施形態の共重合ポリアミドと、無機充填材、造核剤、潤滑剤、安定剤、及び上述した共重合ポリアミド以外のポリマーからなる群から選ばれる1種以上の成分と、を含む。
(無機充填材)
前記無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、クレー、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが挙げられる。
中でも、共重合ポリアミド組成物の機械的強度をより一層向上させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維及びクレーからなる群より選択される一以上が好ましい。その中でも、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム及びクレーからなる群より選択される一以上がより好ましい。
まず、ガラス繊維や炭素繊維の形状としては、その断面が真円状でも扁平状でもよい。かかる扁平状の断面の形状としては、特に限定されないが、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、及び長手方向の中央部がくびれた繭型が挙げられる。ここで、本明細書における「扁平率」は、当該繊維断面の長径をD2及び該繊維断面の短径をD1とするとき、D2/D1で表される値をいう(真円状は、扁平率が約1となる。)。
ガラス繊維や炭素繊維の中でも、優れた機械的強度を共重合ポリアミド組成物に付与できる観点から、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が100〜750μmであり、且つ重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)が10〜100であるものが、好適に用いられ得る。
また、本実施形態の共重合ポリアミド組成物を含む板状成形品の反りを低減させ、並びに共重合ポリアミド組成物の耐熱性、靭性、低吸水性及び耐熱エージング性を向上させる観点から、前記扁平率が、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.5〜10.0、さらに好ましくは2.5〜10.0、さらにより好ましくは3.1〜6.0である。ガラス繊維や炭素繊維は、扁平率が上記範囲内の場合、他の成分との混合、混練や成形などの処理の際に、破砕されてしまうことを効果的に防止でき、成形品にとって所望の効果が充分得られる。
扁平率が1.5以上のガラス繊維や炭素繊維の太さは、特に限定されないが、当該繊維断面の短径D1が0.5〜25μm及び当該繊維断面の長径D2が1.25〜250μmであることが好ましい。ガラス繊維や炭素繊維の太さが上記範囲内の場合、繊維の紡糸の困難性を有効に回避でき、且つ樹脂(ポリアミド)との接触面積を減少させることなく成形品の強度を向上させることができ得る。前記短径D1は、より好ましくは3〜25μmであり、さらに好ましくは3〜25μmであり且つ前記扁平率は3より大きいことが好ましい。
これらの扁平率が1.5以上のガラス繊維や炭素繊維は、例えば、特公平3−59019号公報、特公平4−13300号公報、特公平4−32775号公報などに記載の方法を用いて製造することができる。特に、底面に多数のオリフィスを有するオリフィスプレートにおいて、複数のオリフィス出口を囲み、当該底面より下方に延びる凸状縁を設けたオリフィスプレート、又は単数若しくは複数のオリフィス孔を有するノズルチップの外周部先端から下方に延びる複数の凸状縁を設けた異形断面ガラス繊維紡糸用ノズルチップのいずれかを使用して製造された扁平率が1.5以上のガラス繊維が好ましい。これらのガラス繊維は、繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
ここで、本明細書における数平均繊維径(D)及び重量平均繊維長(L)は、以下の方法により求められた値である。共重合ポリアミド組成物を電気炉に入れて、共重合ポリアミド組成物中に含まれる有機物を焼却処理する。当該処理後の残渣分から、任意に選択した100本以上のガラス繊維(又は炭素繊維)を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらのガラス繊維(又は炭素繊維)の繊維径を測定することにより数平均繊維径を求める。加えて、倍率1,000倍で撮影した、上記100本以上のガラス繊維(又は炭素繊維)についてのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより、重量平均繊維長を求める。
上記のガラス繊維や炭素繊維を、シランカップリング剤などにより表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類、エポキシシラン類、並びにビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙した成分からなる群より選択される一以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
また、上記のガラス繊維や炭素繊維については、さらに集束剤として、特に限定されないが、例えば、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩などを含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記集束剤としては、中でも、得られる共重合ポリアミド組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましい。より好ましくは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせである。
前記集束剤を含むガラス繊維や炭素繊維は、公知の当該繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、上記の集束剤を、当該繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することにより、連続的に反応させて得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
かかる集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として、好ましくは0.2〜3質量%相当を付与(添加)し、より好ましくは0.3〜2質量%相当を付与(添加)する。すなわち、当該繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、得られる共重合ポリアミド組成物の熱安定性を向上させる観点から、集束剤の添加量は3質量%以下であることが好ましい。ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよいし、ストランドを乾燥した後に切断してもよい。
ガラス繊維及び炭素繊維以外の無機充填材としては、本実施形態の共重合ポリアミド組成物を含む成形品の強度、剛性や表面外観を向上させる観点から、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、クレーが好ましい。より好ましくはウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム及びクレーであり、さらに好ましくは、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルクであり、さらにより好ましくは、ウォラストナイト、マイカであり、特に好ましくはウォラストナイトである。これらの無機充填材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ガラス繊維や炭素繊維以外の無機充填材の平均粒径は、本実施形態の共重合ポリアミド組成物の靭性、及び本実施形態の共重合ポリアミド組成物を含む成形品の表面外観を向上させる観点から、0.01〜38μmが好ましく、0.03〜30μmがより好ましく、0.05〜25μmがさらに好ましく、0.10〜20μmがさらにより好ましく、0.15〜15μmがよりさらに好ましい。
上記の平均粒径を38μm以下とすることにより、靭性、及び成形品の表面外観に優れた共重合ポリアミド組成物とすることができる。一方、上記の平均粒径を0.1μm以上とすることにより、コスト面及び粉体のハンドリング面と物性(流動性など)とのバランスに優れた共重合ポリアミド組成物が得られる。
ここで、無機充填材の中でも、前記ウォラストナイトのような針状の形状を持つものに関しては、数平均繊維径(以下、単に「平均繊維径」ともいう。)を平均粒径とする。また、断面が円でない場合はその長さの最大値を(数平均)繊維径とする。
上記した針状の形状を持つ無機充填材の重量平均繊維長(以下、単に「平均繊維長」ともいう。)については、上述の数平均繊維径の好ましい範囲、及び下記の重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)の好ましい範囲から算出される数値範囲が好ましい。
前記針状の形状を持つ無機充填材の重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)に関しては、本実施形態の共重合ポリアミド組成物の成形品の表面外観を向上させ、且つ射出成形機などの金属性パーツの磨耗を防止する観点から、1.5〜10が好ましく、2.0〜5がより好ましく、2.5〜4がさらに好ましい。
また、上述したガラス繊維及び炭素繊維以外の無機充填材を、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤などを用いて表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類、エポキシシラン類、並びにビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記で列挙した成分から選択される一種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。このような表面処理剤は、予め無機充填材の表面に処理してもよいし、共重合ポリアミドと無機充填材とを混合する際に添加してもよい。また、表面処理剤の添加量は、無機充填材100質量%に対して、好ましくは0.05〜1.5質量%である。
本実施形態の共重合ポリアミド組成物において、無機充填材の含有量は、共重合ポリアミド100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜150質量部であり、さらに好ましくは5〜120質量部であり、さらにより好ましくは、10〜80質量部である。
本実施形態の共重合ポリアミド組成物において、無機充填材の含有量を、共重合ポリアミド100質量部に対して、1質量部以上とすることにより、得られる共重合ポリアミド組成物の強度及び剛性を向上させる効果が発現される。一方、無機充填材の含有量を、共重合ポリアミド100質量部に対して、200質量部以下とすることにより、押出性及び成形性に優れた共重合ポリアミド組成物を得ることができる。
(造核剤)
前記造核剤としては、以下に制限されないが、添加により共重合ポリアミド組成物の、結晶化ピーク温度を上昇させたり、結晶化ピークの補外開始温度と補外終了温度との差を小さくしたり、得られる成形品の球晶を微細化又はサイズの均一化させたりする効果が得られる物質のことを意味する。造核剤としては、特に限定されないが、例えば、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、窒化珪素、カーボンブラック、チタン酸カリウム、及び二硫化モリブデンなどが挙げられる。
造核剤は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
造核剤は、造核剤効果の観点で、タルク、窒化ホウ素が好ましい。
また、造核剤効果が高いため、数平均粒径が0.01〜10μmである造核剤が好ましい。
造核剤の数平均粒径の測定は、成形品をギ酸などのポリアミドが可溶な溶媒で溶解し、得られた不溶成分の中から、例えば100個以上の造核剤を任意に選択し、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで観察し、求めることができる。
本実施形態の共重合ポリアミド組成物において、造核剤の含有量は、共重合ポリアミド100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5質量部であり、さらに好ましくは0.001〜0.09質量部である。
前記造核剤の含有量を、共重合ポリアミド100質量部に対して、0.001質量部以上とすることにより、ポリアミド組成物の耐熱性が良好に向上し、また、造核剤の含有量を、共重合ポリアミド100質量部に対して、1質量部以下とすることにより、靭性に優れる共重合ポリアミド組成物を得ることができる。
(潤滑剤)
前記潤滑剤としては、特に限定されないが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミド挙げられる。
潤滑剤は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記高級脂肪酸としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸などの炭素数8〜40の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸が挙げられ、ステアリン酸及びモンタン酸などが好ましい。
前記高級脂肪酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記高級脂肪酸金属塩とは、前記高級脂肪酸の金属塩である。
前記高級脂肪酸金属塩を構成する金属元素としては、元素周期律表の第1,2,3族元素、亜鉛、及びアルミニウムなどが好ましく、より好ましくはカルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウムなどの第1,2族元素、並びにアルミニウムなどが挙げられる。
前記高級脂肪酸金属塩としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、及びモンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウムなどが挙げられ、モンタン酸の金属塩及びステアリン酸の金属塩などが好ましい。
前記高級脂肪酸金属塩としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記高級脂肪酸エステルとは、前記高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。高級脂肪酸エステルは、炭素数8〜40の脂肪族カルボン酸と炭素数8〜40の脂肪族アルコールとのエステルであることが好ましい。
前記脂肪族アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びラウリルアルコールなどが挙げられる。
前記高級脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニルなどが挙げられる。
前記高級脂肪酸エステルとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記高級脂肪酸アミドとは、前記高級脂肪酸のアミド化合物である。
前記高級脂肪酸アミドとしては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカアミドなどが挙げられる。
前記高級脂肪酸アミドとしては、好ましくはステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN−ステアリルエルカアミドであり、より好ましくはエチレンビスステアリルアミド及びN−ステアリルエルカアミドである。
前記高級脂肪酸アミドとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記潤滑剤としては、共重合ポリアミド組成物の成形性改良の効果の観点から、好ましくは、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸アミドであり、より好ましくは、高級脂肪酸金属塩である。
本実施形態の共重合ポリアミド組成物において、潤滑剤の含有量は、共重合ポリアミド100質量部に対して、好ましくは潤滑剤0.001〜1質量部であり、より好ましくは0.03〜0.5質量部である。
前記潤滑剤の含有量が上記範囲内にあることにより、離型性及び可塑化時間安定性に優れ、また、靭性に優れる共重合ポリアミド組成物とすることができると共に、分子鎖が切断されることによるポリアミドの極端な分子量低下を防止することができる。
(安定剤)
前記安定剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤、並びに元素周期律表の第3族、第4族及び第11〜14族の元素の金属塩、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物などの各種熱安定剤が挙げられる。
前記フェノール系熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダートフェノール化合物が挙げられる。前記ヒンダードフェノール化合物は、ポリアミド等の樹脂や繊維に優れた耐熱性及び耐光性を付与する性質を有する。
前記ヒンダードフェノール化合物としては、特に限定されないが、例えば、N,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性向上の観点から、好ましくはN,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]である。
フェノール系熱安定剤を用いる場合、共重合ポリアミド組成物中のフェノール系熱安定剤の含有量は、共重合ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。フェノール系熱安定剤の含有量が上記の範囲内の場合、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性を一層向上させ、さらにガス発生量を低減させることができる。
前記リン系熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)テトラ(トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4'−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)ビス(4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイトが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記で列挙したものの中でも、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性の一層の向上及びガス発生量の低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物及び/又はトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。前記ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、特に限定されないが、例えば、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)フェニルペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)メチルペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)2−エチルヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)イソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)イソトリデシルペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)シクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ベンジルペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)エチルセロソルブペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ブチルカルビトールペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)オクチルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)(2,4−ジ−t−オクチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)(2−シクロヘキシルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)フェニルペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記で列挙したペンタエリスリトール型ホスファイト化合物の中でも、共重合ポリアミド組成物のガス発生量を低減させる観点から、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2、6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトよりなる群から選択される1種以上が好ましく、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
前記リン系熱安定剤を用いる場合、共重合ポリアミド組成物中のリン系熱安定剤の含有量は、共重合ポリアミド組成物100質量部に対して、0.01〜1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1質量部である。リン系熱安定剤の含有量が上記の範囲内の場合、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性を一層向上させ、さらにガス発生量を低減させることができる。
前記アミン系熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β',β'−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記アミン系熱安定剤を用いる場合、共重合ポリアミド組成物中のアミン系熱安定剤の含有量は、共重合ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。アミン系熱安定剤の含有量が上記の範囲内の場合、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性を一層向上させることができ、さらにガス発生量を低減させることができる。
前記元素周期律表の第3族、第4族及び第11〜14族の元素の金属塩としては、これらの族に属する金属の塩であれば何ら制限されることはない。共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性を一層向上させる観点から、好ましくは銅塩である。かかる銅塩としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅など)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅及びステアリン酸銅、並びにエチレンジアミン及びエチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に銅の配位した銅錯塩が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記で列挙した銅塩の中でも、好ましくはヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅及び酢酸銅よりなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはヨウ化銅及び/又は酢酸銅である。上記のより好ましい銅塩を用いた場合、耐熱エージング性に優れ、且つ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に「金属腐食」ともいう。)を効果的に抑制できる共重合ポリアミド組成物が得られる。
銅塩を用いる場合、共重合ポリアミド組成物中の銅塩の含有量は、共重合ポリアミド100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.60質量部であり、より好ましくは0.02〜0.40質量部である。銅塩の含有量が上記範囲内の場合、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性を一層向上させるとともに、銅の析出や金属腐食を効果的に抑制することができる。
また、上記の銅塩に由来する銅元素の含有濃度は、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性を向上させる観点から、共重合ポリアミド106質量部に対し、好ましくは10〜2000質量部であり、より好ましくは30〜1500質量部であり、さらに好ましくは50〜500質量部である。
前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、特に限定されないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。中でも、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性の向上及び金属腐食の抑制という観点から、好ましくはヨウ化カリウム及び/又は臭化カリウムであり、より好ましくはヨウ化カリウムである。
前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いる場合、共重合ポリアミド組成物中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量は、共重合ポリアミド100質量部に対して、好ましくは0.05〜20質量部であり、より好ましくは0.2〜10質量部である。アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量が上記の範囲内の場合、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を効果的に抑制することができる。
上記で説明してきた熱安定剤の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性を一層向上させる観点から、銅塩と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との混合物が好適である。
銅塩と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との割合は、ハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)として、好ましくは2/1〜40/1であり、より好ましくは5/1〜30/1である。上記した範囲内の場合、共重合ポリアミド組成物の耐熱エージング性を一層向上させることができる。
上記のハロゲン/銅が2/1以上である場合、銅の析出及び金属腐食を効果的に抑制することができるため、好適である。一方、上記のハロゲン/銅が40/1以下である場合、共重合ポリアミド組成物の機械的物性(靭性など)を殆ど損なうことなく、成形機のスクリュー等の腐食を防止できるため、好適である。
(共重合ポリアミド以外のポリマー)
上述した共重合ポリアミド以外のポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、上述した共重合ポリアミド以外のポリアミド、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアリレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
上述した共重合ポリアミド以外のポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド66、ポリアミド56、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6などが挙げられ、これらのホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。
前記ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。
上述した共重合ポリアミド以外のポリマーの配合量は、共重合ポリアミド100質量部に対して、1〜200質量部が好ましく、より好ましくは5〜100質量部であり、さらに好ましくは5〜50質量部である。共重合ポリアミド以外のポリマーの配合量を上記の範囲内にすることにより、耐熱性、離型性に優れる共重合ポリアミド組成物とすることができる。
本実施の形態の共重合ポリアミド組成物には、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、ポリアミドに慣用的に用いられる添加剤を含有させることもできる。該添加剤としては、特に限定されないが、例えば、顔料及び染料などの着色剤(着色マスターバッチを含む。)、難燃剤、フィブリル化剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、展着剤、エラストマー等が挙げられる。
本実施形態の共重合ポリアミド組成物が、上記で説明してきた共重合ポリアミド組成物に含まれ得るその他の原料を含有する場合、当該その他の原料の含有量は、その種類や共重合ポリアミド組成物の用途などによって様々であるため、本実施形態の目的を損なわない範囲であれば特に制限されることはない。
〔共重合ポリアミド組成物の製造方法〕
本実施形態の共重合ポリアミド組成物の製造方法としては、上述の共重合ポリアミドを含む原料成分を溶融混練する工程を含む製造方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、上述の共重合ポリアミドを含む原料成分を押出機で溶融混練する工程を含み、前記押出機の設定温度を、上述の共重合ポリアミドの融解ピーク温度Tm2+30℃以下とする方法が好ましい。
共重合ポリアミドを含む原料成分を溶融混練する方法として、例えば、共重合ポリアミドとその他の原料とをタンブラー、ヘンシェルミキサーなどを用いて混合し、得られた混合物を溶融混練機に供給し混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした共重合ポリアミドに、サイドフィダーからその他の原料を配合する方法などが挙げられる。
共重合ポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給する方法でもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給する方法でもよい。
該溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃程度であることが好ましい。
該溶融混練時間は、0.25〜5分程度であることが好ましい。
該溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロールなどの溶融混練機を用いることができる。
〔成形品〕
上述した本実施形態の共重合ポリアミド又は共重合ポリアミド組成物を公知の成形方法で成形することにより所定の成形品が得られる。
当該成形方法としては、特に限定されないが、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法が挙げられる。
(用途)
前記成形品は、上述の共重合ポリアミド又は共重合ポリアミド組成物から得られるので、耐熱性、成形性、機械的強度、低吸水性、振動疲労特性、及び表面外観に優れる。したがって、本実施形態の成形品は、自動車部品、電気及び電子部品、家電部品、OA機器部品、携帯機器部品、産業機器部品、日用品及び家庭品などの各種部品として、また、押出用途などに好適に用いることができる。中でも、本実施形態の成形品は、自動車部品、電子部品、家電部品、OA機器部品又は携帯機器部品として好適に用いられる。
自動車部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、吸気系部品、冷却系部品、燃料系部品、内装部品、外装部品、及び電装部品などが挙げられる。
自動車吸気系部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどが挙げられる。
自動車冷却系部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプなどが挙げられる。
自動車燃料系部品では、特に限定されるものではなく、例えば、燃料デリバリーパイプ及びガソリンタンクケースなどが挙げられる。
自動車内装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、及びトリムなどが挙げられる。
自動車外装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパー、及びドアミラーステイ、ルーフレールなどが挙げられる。
自動車電装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、コネクターやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、及びコンビネーションスイッチなどが挙げられる。
電気及び電子部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、コネクター、発光装置用リフレクタ、スイッチ、リレー、プリント配線板、電子部品のハウジング、コンセント、ノイズフィルター、コイルボビン、及びモーターエンドキャップなどが挙げられる。
前記発光装置用リフレクタは、発光ダイオード(LED)の他にレーザーダイオード(LD)等の光半導体をはじめ、フォットダイオード、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)等の半導体パッケージに広く使用することができる。
携帯機器部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコン、携帯ゲーム機器、デジタルカメラなどの筐体、及び構造体などが挙げられる。
産業機器部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギヤ、カム、絶縁ブロック、バルブ、電動工具部品、農機具部品、エンジンカバーなどが挙げられる。
日用品及び家庭品としては、特に限定されるものではなく、例えば、ボタン、食品容器、及びオフィス家具などが挙げられる。
押出用途としては、特に限定されるものではなく、例えば、フィルム、シート、フィラメント、チューブ、棒、及び中空成形品など挙げられる。
前記成形品は、これら種々の用途の中でも、薄肉部(例えば肉厚0.5mmなど)を有し、さらに加熱処理される工程を経るような部品(例えばSMTコネクター、発光装置用リフレクタ、スイッチ等の電気・電子部品)に特に好適である。
また、前記成形品は、表面外観に優れるので、成形品表面に塗装膜を形成させた成形品としても好ましく用いられる。塗装膜の形成方法は公知の方法であれば特に限定されず、例えば、スプレー法、静電塗装法などの塗装によることができる。また、塗装に用いる塗料は、公知のものであれば特に限定されず、メラミン架橋タイプのポリエステルポリオール樹脂塗料、アクリルウレタン系塗料などが挙げられる。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。なお、本実施例において、1kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
〔原材料〕
本実施例において下記化合物を用いた。
<ジカルボン酸>
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)
商品名:1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体=25/75)(イーストマンケミカル社製)
(2)イソフタル酸(IPA)(和光純薬工業社製)
(3)セバシン酸(C10DC)
商品名:セバシン酸(小倉合成工業社製)
<ジアミン>
(1)1,10−デカメチレンジアミン(1,10−ジアミノデカン)(C10DA)
商品名:1,10−デカメチレンジアミン(飛翔化工社製)
(2)1,12−ドデカメチレンジアミン(1,12−ジアミノドデカン)(C12DA)(東京化成工業社製)
(3)1,6−ヘキサメチレンジアミン(1,6−ジアミノヘキサン)(C6DA)(東京化成工業社製)
<ラクタム及び/又はアミノカルボン酸>
(1)ε−カプロラクタム(CPL)(和光純薬工業社製)
<無機充填材>
ガラス繊維(GF) 日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H 数平均繊維径(平均粒径)10μm(真円状)、カット長3mm
なお、本実施例において、ガラス繊維の数平均繊維径は、以下のとおり測定した。まず、共重合ポリアミド組成物を電気炉に入れて、共重合ポリアミド組成物中に含まれる有機物を焼却処理した。当該処理後の残渣分から、任意に選択した100本以上のガラス繊維(又は炭素繊維)を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらのガラス繊維の繊維径を測定することにより数平均繊維径を求めた。
〔測定方法〕
(1) 共重合ポリアミド中の各構成単位の含有量
共重合ポリアミド中の各構成単位の含有量を1H−NMR測定により以下のように定量した。実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドのペレットを約5質量%の濃度になるように重ヘキサフルオロイソプロパノールに加熱して溶解し、日本電子製核磁気共鳴分析装置JNM ECA−500を用いて1H−NMRの分析を行い積分比を計算することによって、共重合ポリアミドを構成する(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位、(b)前記(a)以外のジカルボン酸からなる単位、(c)炭素数8以上のジアミンからなる単位、及び(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位の含有量を決定した。
(2)融解ピーク温度(融点)
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドの、融解ピーク温度(融点)、結晶化ピーク温度及び結晶化エンタルピーを、JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。該測定は、窒素雰囲気下で行った。
まず、試料約10mgを昇温速度20℃/minで50℃から350℃まで昇温する条件とした。このときに現れる吸熱ピークを融解ピークとし、もっとも高温側に現れたピークを融解ピーク温度Tm1とした。
続いて、350℃で3分間保った後、冷却速度20℃/minで350℃から50℃まで冷却した。このときに現れる発熱ピークを結晶化ピークとし、結晶化ピーク温度をTc、結晶化ピーク面積を結晶化エンタルピーとした。
続いて、50℃で3分間保った後、再度昇温速度20℃/minで50℃から350℃まで昇温した。このときに現れるもっとも高温側に現れたピークを融解ピーク温度Tm2とした。
(3)25℃における硫酸相対粘度ηr
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドの25℃における硫酸相対粘度ηrを、JIS−K6920に準じて測定した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作成し、得られた溶解液を用いて25℃の温度条件下で硫酸相対粘度ηrを測定した。
(4)アミノ末端量([NH2])
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドにおいて、ポリマー末端に結合するアミノ末端量を、中和滴定により以下のとおり測定した。
ポリアミド3.0gを90質量%フェノール水溶液100mLに溶解し、得られた溶液を用い、0.025規定の塩酸で滴定を行い、アミノ末端量(μ当量/g)を求めた。終点はpH計の指示値から決定した。
(5)カルボキシル末端量([COOH])
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドにおいて、ポリマー末端に結合するカルボキシル末端量を、中和滴定により以下のとおり測定した。
ポリアミド4.0gをベンジルアルコール50mLに溶解し、得られた溶液を用い、0.1規定のNaOHで滴定を行い、カルボキシル末端量(μ当量/g)を求めた。終点はフェノールフタレイン指示薬の変色から決定した。
上記(4)、(5)において得られた値から、[COOH]/([NH2]+[COOH])を算出した。
(6)炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドにおいて、アミド基1個あたりの炭素数の平均値(炭素数/アミド基数)を計算により求めた。具体的には、分子主鎖中に含まれる炭素数を分子主鎖中に含まれるアミド基数で割り返すことにより炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を求めた。該炭素数とアミド基数との比(炭素数/アミド基数)を、共重合ポリアミドにおけるアミノ基濃度を示す指標とした。
(7)バイオマスプラスチック度
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドにおいて、バイオマス由来の原料にて構成されるユニットの質量%をバイオマスプラスチック度として算出した。
具体的には、ひまし油を原料としている、セバシン酸及び1,10−デカメチレンジアミンを、バイオマス由来の原料とした。そこで、実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドにおいて、セバシン酸、1,10−デカメチレンジアミンに由来するユニットの割合を算出し、当該割合をバイオマスプラスチック度とした。
尚、ポリアミドの重合においては、アミド結合の形成の際に、ジアミン中の2つの水素原子と、ジカルボン酸中の2つの酸素原子と、2つの水素原子とから、2モルの水分子が生成することを考慮して算出した。
(8)引張強度
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミドのペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、ISO 3167に準拠し、多目的試験片A型の成形片に成形した。具体的な成形条件は、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度を80℃、溶融樹脂温度を共重合ポリアミドの高温側の融解ピーク温度(Tm2)+20℃に設定した。
得られた多目的試験片A型の成形片を用いて、ISO 527に準拠し、23℃下、引張速度50mm/minで引張試験を行い、引張降伏応力を測定し、引張強度とした。
(9)吸水率
上記(7)のとおり多目的試験片A型の成形片を成形した後の絶乾状態(dry as mold)で、多目的試験片A型の成形片の試験前質量(吸水前質量)を測定した。次に、多目的試験片A型の成形片を、80℃の純水中に72時間浸漬させた。その後、水中から多目的試験片A型の成形片を取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定した。吸水前質量に対しての吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を、試行数n=3で求め、その平均値を吸水率とした。
(10)スパイラルフロー長(cm)
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミド組成物のペレットを、射出成型機[IS−100GN:東芝機械株式会社製]を用いて、以下の条件で射出成形してスパイラルフロー成形品(2mm厚み×10mm幅)を作製した。該射出成形において、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度を120℃、溶融樹脂温度を(A)ポリアミドのTm2+20℃に設定し、射出速度100mm/s、射出圧力100MPaの条件に設定した。該射出成形において、5ショットの流動長を測定し、平均した数値をスパイラルフロー長とした。スパイラルフロー長の数値が高いほど成形時の流動性が優れていると判断した。
(11)表面外観(60°グロス)
実施例及び比較例で得られた共重合ポリアミド組成物のペレットから平板プレート成形片を以下のとおり作製した。該成形装置としては、射出成形機[FN−3000:日精樹脂株式会社製]を用いた。該成形において、冷却時間25秒、スクリュー回転数200rpm、金型温度を120℃、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃に設定し、充填時間が1.0±0.1秒の範囲となるように、射出圧力及び射出速度を適宜調整した。該成形により共重合ポリアミド組成物ペレットから平板プレート成形片(13cm×13cm、厚さ3mm)を作製した。このようにして作製した平板プレート成形片の中央部を、光沢計(HORIBA製IG320)を用いてJIS−K7150に準じて60度グロスを測定した。該測定値が大きいほど表面外観に優れると判断した。
以下、共重合ポリアミドの実施例及び比較例を示す。併せて上記の測定項目を実施したので、説明する。
〔実施例1〕
(共重合ポリアミドの製造)
熱溶融重合法によりポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
(a)脂環族ジカルボン酸としてCHDA490g(2.8モル)、(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としてIPA255g(1.5モル)、及び(c)炭素数8以上のジアミンとしてC10DA754g(4.4モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル約50質量%均一水溶液を作った。
得られた水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、オートクレーブ内の液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内(以下、単に「槽内」とも記す。)の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm2になるまで、液温を約50℃から加熱を続けた(この系での液温は約145℃であった。)。槽内の圧力を約2.5kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約75質量%になるまで濃縮した(この系での液温は約160℃であった。)。水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約245℃であった。)。槽内の圧力を約30kg/cm2に保つため、水を系外に除去しながら、最終温度(Tm2+20℃、325℃)−50℃(ここでは275℃)になるまで加熱を続けた。液温が280℃まで上昇した後に、加熱を続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで30分ほどかけながら降圧した。
その後、槽内の樹脂温度(液温)の最終温度がおよそTm2+20℃(約325℃)になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度は約325℃のまま、槽内を真空装置で約80kPa(約600torr)の減圧下に2分間維持し、重合体を得た。その後、得られた重合体を、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にして排出した。さらにストランド状の重合体を、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、共重合ポリアミドのペレットを得た。
〔共重合ポリアミドの物性評価〕
得られた共重合ポリアミドの各物性について、上記(2)〜(9)の方法に基づいて測定した。該測定結果を表2に示す。
(共重合ポリアミド組成物の製造)
上記の共重合ポリアミド及びガラス繊維を用いて共重合ポリアミド組成物の製造を実施した。
具体的には、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、L/D=47.6(D=37mmφ)、設定温度Tm2+20℃(実施例1で得られた共重合ポリアミドを用いた場合、285+20=305℃)、スクリュー回転数300rpm)を用いて、以下のとおり共重合ポリアミド組成物を製造した。該2軸押出機の最上流部に設けられたトップフィード口より、上記水分率を調整した共重合ポリアミド(100質量部)を供給し、前記2軸押出機の下流側(トップフィード口より供給された樹脂が充分溶融している状態)のサイドフィード口より無機充填材としてガラス繊維を(共重合ポリアミド:ガラス繊維=50:50)の重量比で供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして共重合ポリアミド組成物のペレットを得た。
(共重合ポリアミド組成物の物性評価)
得られた共重合ポリアミド組成物のペレットの各物性について上記(10)及び(11)の方法に基づき測定した。該測定結果を下記表2に示す。
〔参考例2、実施例3、参考例4、5〕
(a)脂環族ジカルボン酸、(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸
、(c)炭素数8以上のジアミン、(d)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の各原料
成分として、表1に記載の化合物及び量を用いたこと、並びに樹脂温度の最終温度を表1
に記載の温度にしたこと以外は、実施例1に記載した方法でポリアミドの重合反応を行い
、共重合ポリアミドのペレットを得た。
得られた共重合ポリアミドの各物性について上記方法に基づいて測定した。該測定結果を表2に示す。
また、得られた共重合ポリアミドを用いて、実施例1に記載した方法で共重合ポリアミドを製造した後、共重合ポリアミド組成物の各物性について上記方法に基づいて測定した。該測定結果を表2に示す。
〔比較例1〜3〕
(a)脂環族ジカルボン酸、(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸、及び(c)炭素数8以上のジアミンの原料成分として、表1に記載の化合物及び量を用いたこと、並びに樹脂温度の最終温度を表1に記載の温度にしたこと、さらに樹脂温度が表1に記載の最終温度の状態で、槽内を真空装置で約13.3kPa(約100torr)の減圧下に20分維持したこと以外は実施例1に記載した方法で、ポリアミドの重合反応を行い、共重合ポリアミドのペレットを得た。
得られた共重合ポリアミドの各物性について上記方法に基づいて測定した。該測定結果を表2に示す。
また、得られた共重合ポリアミドを用いて、実施例1に記載した方法で共重合ポリアミドを製造した後、共重合ポリアミド組成物の各物性について上記方法に基づいて測定した。該測定結果を表2に示す。
表2の結果から、実施例1〜5のように、(a)脂環族ジカルボン酸からなる単位と、(b)前記(a)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸からなる単位と、及び(c)炭素数8以上のジアミンからなる単位とを少なくとも含有し、特定の分子量(硫酸粘度)の範囲にある共重合ポリアミドでは、強度及び低吸水性に優れることが確認された。
さらに前記共重合ポリアミドを用いて得られる共重合ポリアミド組成物は、成形時の流動性及び表面外観性にも優れることが確認された。