JP5404393B2 - ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及びフィルム - Google Patents
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Description
最近、自動車のヘッドランプが、より高輝度のディスチャージタイプへ移行しており、ランプ周りの温度が高くなっている。
従来の多くのポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイにおいて、ポリアミドとしてポリアミド6又はポリアミド6,6といった比較的低融点のポリアミドが使用されている。このようなポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイでは、上記ランプ周りの温度に耐え得るものがなかった。
本発明の課題は、耐熱性、衝撃強度、低吸水性、流動性、離型性、成形外観に優れるとともに、フォギング性を抑制したポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的の1つは、上記の特性を兼ね備えたフィルムを提供することにある。
(1)シクロヘキサンジカルボン酸単位を20〜100モル%含有するジカルボン酸単位と炭素数6〜12の脂肪族ジアミン単位を含有するジアミン単位とからなる脂環構造を有するポリアミドと、ポリフェニレンエーテルと、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤と、を含み、前記脂環構造を有するポリアミドの末端アミノ基濃度が、5〜50μモル/gであるポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(2)前記脂環構造を有するポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、前記脂環構造を有するポリアミド90〜20質量部と、前記ポリフェニレンエーテル10〜80質量部と、を含む、上記(1)のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(3)前記ジアミン単位が、1,6−ヘキサメチレンジアミン単位、1,9−ノナメチレンジアミン単位、2−メチル−1,8オクタメチレンジアミン単位、1,12−ドデカメチレンジアミン単位、及びこれらの誘導体単位からなる群より選ばれる1種以上のジアミン単位を60〜100モル%含有する、上記(1)又は(2)のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(4)前記ジアミン単位が、1,12−ドデカメチレンジアミン単位を60〜100モル%含有する、上記(1)又は(2)のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(5)前記シクロヘキサンジカルボン酸単位が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含有する、上記(3)のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(6)前記1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位のトランス/シス比が、モル比で60/40〜90/10である、上記(5)のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(8)前記脂環構造を有するポリアミドが、結晶性樹脂である、上記(1)〜(7)のいずれか一つのポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(9)前記ジカルボン酸単位が、アジピン酸単位、イソフタル酸単位及びテレフタル酸単位からなる群より選ばれる1種以上の単位を含有する、上記(1)〜(8)のいずれか一つのポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(11)前記脂環構造を有するポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、前記相溶化剤を0.01〜8質量部含む、上記(1)〜(10)のいずれか一つのポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(12)前記相溶化剤が、マレイン酸又はその無水物である、上記(1)〜(11)のいずれか一つのポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(13)更に、導電性付与材を0.1〜10質量%含む、上記(1)〜(12)のいずれか一つのポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(14)前記導電性付与材として導電性カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブを0.5〜5質量%含む、上記(13)のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(16)前記強化無機フィラーを10〜60質量%含む、上記(15)のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(17)更に、前記脂環構造を有するポリアミド100質量部に対して、脂肪族ポリアミドを100質量部以下含む、上記(1)〜(16)のいずれか一つのポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(18)前記脂肪族ポリアミドが、炭素数4〜8の脂肪族ジアミン単位と炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸単位とからなる脂肪族ポリアミド、炭素数6〜8のラクタム単位からなる脂肪族ポリアミド、及びアミノカルボン酸単位からなる脂肪族ポリアミドからなる群より選ばれる1種以上の脂肪族ポリアミドである、上記(17)のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(19)更に、前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、衝撃改良材を10〜70質量部含む、上記(1)〜(18)のいずれか一つのポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
(21)上記(1)〜(19)のいずれか一つのポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を含むランプリフレクター部品。
(22)シクロヘキサンジカルボン酸単位を20〜100モル%含有するジカルボン酸単位と炭素数6〜12の脂肪族ジアミン単位を含有するジアミン単位とからなる脂環構造を有するポリアミドと、ポリフェニレンエーテルと、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤と、を含み、厚みが1〜200μmであり、前記脂環構造を有するポリアミドの末端アミノ基濃度が、5〜50μモル/gであるフィルム。
(23)前記脂環構造を有するポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、前記脂環構造を有するポリアミド80〜40質量部と、前記ポリフェニレンエーテル20〜60質量部と、前記相溶化剤0.01〜8質量部と、を含む、上記(22)のフィルム。
本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「本実施形態」という。)のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という。)は、脂環構造を有するポリアミドと、ポリフェニレンエーテルと、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤とを含むものである。また、本実施形態のフィルムは、その樹脂組成物から得られるものである。以下、本実施形態の樹脂組成物及びフィルムを構成する各成分について、詳しく述べる。
本実施形態において必須成分として使用されるポリアミドは、ジカルボン酸単位(a)とジアミン単位(b)とから構成される脂環構造を有するポリアミドである。
脂環構造を有するポリアミドを構成するジカルボン酸単位(a)は、シクロヘキサンジカルボン酸単位を20〜100モル%含有する。このシクロヘキサンジカルボン酸単位の含有量が20モル%を下回ると、耐熱性の低下を招く。脂環構造を有するポリアミドを構成するジカルボン酸単位中の上記シクロヘキサンジカルボン酸単位の含有量は、50〜100モル%であることがより好ましく、70〜100モル%であることが更に好ましく、実質的に全てのジカルボン酸単位が上記シクロヘキサンジカルボン酸単位であることが最も好ましい。これらの好ましい態様、特に実質的に全てのジカルボン酸単位を上記シクロヘキサンジカルボン酸単位とすることにより、耐熱性の低下を更に抑制することが可能となる。
あるいは、シクロヘキサンジカルボン酸単位は脂環中の水素原子が置換されていてもよい。そのようなジカルボン酸単位としては、例えば、1,4−(2−メチル)シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,4−(3−メチル)シクロヘキサンジカルボン酸単位等が挙げられる。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位には、立体構造異性体(トランス体とシス体)が存在する。本実施形態の脂環構造を有するポリアミドを構成する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位の好ましい異性体比(トランス/シス比)は、モル%比で60/40〜90/10である。樹脂組成物の耐熱性の低下を防ぐために、トランス異性体単位が60モル%を下回らないようにすることが推奨される。
本実施形態において、脂環構造を有するポリアミドのジアミン単位における、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン単位の好ましい含有量は60〜100モル%である。その含有量は、より好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%である。最も好ましくは、そのポリアミド中の実質的に全てのジアミン単位が、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン単位で構成されていることである。
樹脂組成物の耐衝撃性と低吸水性とを向上させるためには、脂環構造を有するポリアミドのジアミン単位における炭素数6〜12の脂肪族ジアミン単位の含有量を60〜100モル%の範囲内にすることが望ましい。
本実施形態において使用可能な脂環構造を有するポリアミドの末端アミノ基濃度は、耐衝撃性の低下を抑制するために、5μモル/g以上であることが望ましい。より好ましい末端アミノ基濃度の下限値は10μモル/gであり、更に好ましくは12μモル/gであり、最も好ましくは15μモル/gである。流動性の悪化を抑制するためには、上限値を50μモル/gとすることが望ましい。より好ましい末端アミノ基濃度の上限値は40μモル/gであり、更に好ましくは35μモル/gであり、特に好ましくは30μモル/gである。
末端アミノ基濃度を上記範囲とすることにより、成形品外観を向上させるという付加的な効果も得られる。
本実施形態のポリアミドにおいて、好ましい末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度)は、1.0以下である。その比は、より好ましくは0.9以下であり、更に好ましくは0.8以下であり、特に好ましくは0.7以下である。濃度比であるので、下限は特に制限されないが、その比を0.1以上とすることにより、衝撃性と流動性とに優れる組成物を得やすくなる。
これらの詳細は、例えば、Polymer Process Engineering(Prentice−Hall,Inc 1994)の291ページ〜294ページ等に記載されている。
このとき濃度の異なるいくつかの測定溶媒の点数は、少なくとも4点とすることが精度の観点より望ましい。このとき、推奨される異なる粘度測定溶液の濃度は、好ましくは、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dLの少なくとも4点である。
より具体的には、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、樹脂試料を340℃まで加熱し、少なくとも10分間保持した後、20℃/minの降温速度で40℃まで冷却し、40℃で少なくとも5分間保持した後、更に、20℃/minの昇温速度で、340℃まで再加熱する。その再加熱の際の吸熱ピークから算出される融解エンタルピーが5J/g以上である樹脂を、「結晶性樹脂」とする。
本実施形態の樹脂組成物は、脂環構造を有するポリアミドの結晶性を高める目的で結晶造核剤を含んでもよい。その場合の結晶造核剤の好ましい含有量は、脂環構造を有するポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して0.01〜1質量部である。
この結晶造核剤が存在することで、樹脂組成物の吸水率を大幅に低下させることが可能となる。また、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体の加熱時の発泡現象を抑制することもできる。
ここで、添加してもよい脂環構造を有するポリアミド以外のその他のポリアミドとしては、脂肪族ポリアミドが挙げられる。具体的には、炭素数4〜8の脂肪族ジアミン単位と炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸単位とからなる脂肪族ポリアミド、炭素数6〜8のラクタム単位からなる脂肪族ポリアミド、及びアミノカルボン酸単位からなる脂肪族ポリアミドからなる群より選ばれる1種以上の脂肪族ポリアミドが好ましい。これにより、耐熱性の制御や、機械的物性と成形流動性とのバランスの向上という効果が得られる。
この脂肪族ポリアミドの末端アミノ基濃度は、脂環構造を有するポリアミドの末端アミノ基濃度よりも大きいことが望ましい。ここで、脂環構造を有するポリアミドが混合物である場合、比較すべき末端アミノ基濃度は、これら脂環構造を有するポリアミドの平均末端アミノ基濃度を指す。
脂肪族ポリアミドを樹脂組成物中に少量配合することにより、若干の耐熱性の低下は生じるが、機械的特性(衝撃強度及び引張伸び)と流動性とのバランスをより高いレベルに引き上げることができる。
成形機での滞留安定性を悪化させないために、リン元素の含有量を1質量ppm以上とすることが望ましい。樹脂組成物の流動性(ここではMVR等の溶融流動時の流動性)の悪化を抑制するために、リン元素の含有量を500質量ppm以下とすることが望ましい。
上記1)のリン酸類、亜リン酸類及び次亜リン酸類としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸、二亜リン酸が挙げられる。
上記2)のリン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類及び次亜リン酸金属塩類としては、例えば、上記1)のリン元素含有化合物と、周期律表第1族及び第2族の金属、マンガン、亜鉛、アルミニウム、アンモニア、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、ジアミンとの塩が挙げられる。
リン酸エステル;(OR)nPO(OH)3−n
亜リン酸エステル;(OR)nP(OH)3−n
ここで、nは1、2又は3を表し、Rはアルキル基、フェニル基、又はそれらの基の一部を炭化水素基などで置換した基を表す。nが2以上の場合、上記一般式内の複数の(RO)基は同じでも異なっていてもよい。
上記Rとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基、オレイル基などの脂肪族基;フェニル基、ビフェニル基などの未置換の芳香族基;ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基などの置換基を有する芳香族基が挙げられる。
これらリン元素含有化合物も、予め脂環構造を有するポリアミドの相中に存在させておくことがより望ましい。その化合物を予め脂環構造を有するポリアミドの相中に存在させることにより、流動性と耐衝撃性とのバランスをより高めることが可能となる。これらリン元素含有化合物を予め脂環構造を有するポリアミドの相中に存在させておく方法としては、例えば、脂環構造を有するポリアミドの製造段階でリン元素含有化合物を添加する方法、脂環構造を有するポリアミドの相中にリン元素含有化合物を溶融混練しマスターペレットを作製することで、予め存在させておく方法等が挙げられる。
樹脂組成物中及び脂環構造を有するポリアミドの相中におけるリン元素の定量は、例えば、測定装置としてThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)で行うことが可能である。
金属系安定剤としては、例えば、ヨウ化銅、塩化第二銅、酢酸銅、ステアリン酸セリウムが挙げられる。それらの中でも、ヨウ化銅、酢酸銅等に代表される銅化合物がより好ましい。さらに好ましくはヨウ化銅である。
樹脂組成物中の上記銅化合物の好ましい下限の配合量は、樹脂組成物中のポリアミドの全量を100質量%としたとき、銅元素として10質量ppmであり、より好ましくは50質量ppmであり、さらに好ましくは100質量ppmである。好ましい上限の配合量は、1000質量ppmであり、より好ましくは800質量ppmであり、さらに好ましくは500質量ppmである。
銅元素の定量は、リン元素の定量同様に、例えば、装置としてThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により行うことができる。
本実施形態において、更に、ポリアミドに添加することが可能な他の公知の添加剤等も、ポリアミド100質量部に対して10質量部未満の量で添加してもよい。
2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率について、上記共重合体が、ポリフェニレンエーテル共重合体全量を100質量%としたときに10〜30質量%の2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールを含むと好ましい。より好ましくは、2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールが15〜25質量%であり、さらに好ましくは20〜25質量%である。
本実施形態で用いられるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dL/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dL/g、より好ましくは0.40〜0.55dL/gである。
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な他の公知の添加剤等も、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部未満の量で添加してもよい。
本実施形態の樹脂組成物において、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの好ましい質量比は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量を100質量部として、ポリアミド20〜90質量部、ポリフェニレンエーテル10〜80質量部である。より好ましくはポリアミド30〜80質量部、ポリフェニレンエーテル20〜70質量部であり、更に好ましくはポリアミド40〜80質量部、ポリフェニレンエーテル20〜60質量部であり、特に好ましくは、ポリアミド50〜65質量部、ポリフェニレンエーテル35〜50質量部である。これにより、本発明の課題を一層確実且つ有効に解決することができる。
本実施形態においては、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤は必須である。用いることのできる相溶化剤は、国際公開第WO01/81473号パンフレット中に詳細に記載されている。
これらの相溶化剤の中でも、マレイン酸、マレイン酸無水物(無水マレイン酸)、フマル酸及びクエン酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。特に好ましいのがマレイン酸及び/又はその無水物である。特に相溶化剤としてマレイン酸及び/又はその無水物を選択することで、樹脂組成物のウェルド強度を飛躍的に向上させることが可能となるとともに、成形片表面の光沢度(グロス値)が向上するといった効果が見られるようになる。
樹脂組成物としての耐衝撃性を低下させず、後述するポリフェニレンエーテルの分散粒子径を適度な分散径以下の大きさに制御するためには、相溶化剤の配合量は、0.01質量部以上であることが望ましい。射出成形時の金型内流動性(スパイラルフロー距離)の悪化を抑制し、ポリフェニレンエーテルの分散粒子径を適度な分散径以上の大きさに制御するためには、相溶化剤の配合量は8質量部以下であることが望ましい。
この場合、粒子形状を球形とみなせない場合には、その短径と長径とを測定し、両者の和の1/2を粒子径とする。平均粒子径の算出には最低1000個の粒子径を測定する必要がある。
本実施形態で使用できる衝撃改良材としては、芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックとからなるブロック共重合体及びその水素添加物、並びにエチレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物単位であるブロックを指す。そのブロックにおいて、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上が共役ジエン化合物単位である。
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。それらの中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエンが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。それらの中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
本実施形態におけるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[A]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]とが、A−B型、A−B−A型、又はA−B−A−B型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましく、これらの混合物であってもよい。これらの中でも、A−B−A型、A−B−A−B型、又はこれらの混合物がより好ましく、A−B−A型が最も好ましい。
これらのブロック共重合体は、水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体との混合物であっても、問題なく使用可能である。
本実施形態で用いられるブロック共重合体として、低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体との混合物が好ましい。具体的には、数平均分子量120000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量120000以上の高分子量ブロック共重合体との混合物である。より好ましくは、数平均分子量120000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量170000以上の高分子量ブロック共重合体との混合物である。
該ブロック共重合体中の一つの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの分子量が、15000〜50000であるブロック共重合体であることがより望ましい。
Mn(a),n={Mn×a/(a+b)}/N(a)
上記式中において、Mn(a),nはブロック共重合体nの芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Mnはブロック共重合体nの数平均分子量、aはブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、bはブロック共重合体n中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、及びN(a)はブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数を表す。
これら低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体との質量比(低分子量ブロック共重合体/高分子量ブロック共重合体)は95/5〜5/95であると好ましく、より好ましくは90/10〜10/90である。
ブロック共重合体として芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを55質量%以上90質量%未満の量で含有するブロック共重合体のみを用いた場合、高い衝撃性を有しつつ、耐熱性の低下が抑制された樹脂組成物が得られる。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体を指す。
ここでいう分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する変性化合物としては、例えば、マレイン酸、マレイン酸無水物(無水マレイン酸)、フマル酸及びクエン酸が挙げられる。
さらに、本実施形態の樹脂組成物はスチレン系重合体を含んでいてもよい。本実施形態のスチレン系重合体としては、例えば、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)が挙げられる。樹脂組成物がスチレン系重合体を含むことで、本発明の課題を達成するほかに、耐候性を向上することができる。スチレン系重合体の好ましい配合量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対し、50質量部未満である。
本実施形態において使用することができるウォラストナイトについて詳細に説明する。
本実施形態で好適に使用可能なタルクとは、珪酸マグネシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものである。また広角X線回折によるタルクの(002)回折面の結晶子径が570Å以上であることがより好ましい。
ここでいうタルクの(002)回折面の結晶子径は、広角X線回折装置(例えば、RAD-RX型広角X線回折装置(理学電機(株)製))を用いて測定した、約9.39Åにおけるピークの半値幅より決定される。
好ましいタルクの大きさ、形状は、平均粒子径が1〜20μmであり、粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)との比(d75%/d25%)が1.0〜2.5である粒径分布を有するものである。更には、(d75%/d25%)が1.5〜2.2であることがより好ましい。
タルクの好ましい平均粒子径は、1〜16μmであり、さらに好ましくは3μmよりも大きく9μm未満である。
本実施形態で好ましく使用可能な炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましい繊維径は、5〜20μmであり、より好ましくは5〜13μmである。そのアスペクト比は10以上であることが望ましい。
また、これらの強化無機フィラーには、表面処理剤としての高級脂肪酸又はそのエステル、塩等の誘導体(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸エチルエステル等)やカップリング剤(例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等)を用いて、必要により表面処理を施してもよい。その使用量は、強化無機フィラーを100質量部としたとき、0.05〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜2質量部である。
これらの強化無機フィラーは、取り扱い性を高める目的で、あるいは、樹脂との密着性を改善する目的で、集束剤で集束されていてもよい。この際の集束材としては、エポキシ系、ウレタン系、ウレタン/マレイン酸変性系、ウレタン/アミン変性系の化合物が好ましく使用できる。これら集束剤は併用してもよい。また、この集束剤として、分子構造内に複数のエポキシ基を有するエポキシ系化合物が、上述の中では、特に好ましく使用可能である。エポキシ化合物の中でも、ノボラック型エポキシ化合物が特に好ましい。
本実施形態において、強化無機フィラーは、ポリアミド又はポリフェニレンエーテルの重合段階から樹脂組成物の成形段階までの任意の段階で添加することができる。ただし、樹脂組成物の押出工程及び成形工程(ドライブレンドを含む)の段階で添加することが好ましい。
好ましい導電性付与材は、導電性カーボンブラック、グラファイト及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種以上である。これらの中でも、導電性カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブがより好ましい。これにより、耐衝撃性や面衝撃強度などの機械的物性の低下を抑制しつつ、導電性を付与できるという効果が奏される。
本実施形態において導電性付与材として導電性カーボンブラックを用いる場合の好ましい導電性カーボンブラックは、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が250mL/100g以上のものである。より好ましくはDBP吸油量が300mL/100g以上、更に好ましくは350mL/100g以上の導電性カーボンブラックである。ここで、DBP吸油量は、ASTM D2414に定められた方法で測定した値である。
これら導電性付与材の樹脂組成物への添加方法に関しては特に制限はないが、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの溶融混合物中に導電性付与材を添加して溶融混練する方法、樹脂中に導電性付与材を予め配合してマスターバッチを調製し、そのマスターバッチを樹脂組成物に添加する方法が挙げられる。特に、樹脂中に導電性付与材を配合してなるマスターバッチの形態で樹脂組成物に添加することが好ましい。
これらマスターバッチ中の導電性付与材の配合量は、マスターバッチを100質量%としたとき、導電性付与材の配合量が5〜25質量%であることが望ましい。導電性付与材として導電性カーボンブラックを使用する場合、好適なマスターバッチ中の導電性付与材の配合量は、5〜15質量%であり、より好ましくは8〜12質量%である。また、導電性付与材としてグラファイト又はカーボンナノチューブを使用する場合、好適なマスターバッチ中の導電性付与材の配合量は、15〜25質量%であり、より好ましくは18〜23質量%である。
これらの中で特に好ましい態様は、(3)ポリアミドの一部と導電性付与材とを溶融することなく両者の混合物を作製し、該混合物を溶融した残余のポリアミド中に供給し溶融混練する方法である。
(1)上流部に1箇所の供給口を有する二軸押出機を使用して、上流部供給口からポリアミドと導電性付与材とを混合した混合物を供給し、ポリアミドの融点以上の温度で溶融混練する方法。
(2)上流部に1箇所の供給口と下流部に1箇所の供給口とを有する二軸押出機を使用して、上流部供給口からポリアミドを供給し、ポリアミドの融点以上の温度で溶融混練した後、下流部供給口から導電性付与材を添加して更に溶融混練する製造方法、
(3)上流部に1箇所の供給口と下流部に1箇所の供給口とを有する二軸押出機を使用して、上流部供給口からポリアミドの一部を供給し、ポリアミドの融点以上の温度で溶融混練した後、下流部供給口から残りのポリアミドと導電性付与材とを溶融することなく混合した混合物を添加して更に溶融混練する製造方法、
(4)上流部に1箇所の供給口と、中流部に1箇所の供給口と、下流部に1箇所の供給口とを有する二軸押出機を使用して、上流部供給口からポリアミドを供給し、ポリアミドの融点以上の温度で溶融混練した後、中流部供給口から導電性付与材を添加して更に溶融混練し、下流部供給口からポリアミドを添加して更に溶融混練する方法。
また、これらマスターバッチを製造する際の加工機械のシリンダー設定温度は特に制限はなく、上述のようにポリアミドの融点以上の温度であれば問題ない。好ましいシリンダー設定温度は、290〜350℃であり、より好ましくは300〜330℃である。
工程(1):ポリアミドの一部と導電性付与材とを溶融することなく両者の混合物を作製し、該混合物を、溶融した残余のポリアミドに供給し、溶融混練して、ポリアミドと導電性付与材とのマスターバッチを製造する工程。
工程(2):上記マスターバッチ並びに必要により追加のポリアミド及びその他成分を、上記ポリフェニレンエーテルと、上記相溶化剤との溶融混合物と溶融混練して溶融混合物ペレットを得る工程。
工程(3):上記溶融混合物ペレットの水分を除去する工程。
上述の工程(1)〜(3)をこの順に経ることにより、導電性樹脂組成物の射出成形時の、MDの抑制、シルバーストリークス発生の抑制、及びシート・フィルム押出時のダイリップ部に付着する目ヤニの生成の抑制効果が得られる。
以下に具体的に、好ましいホスフィン酸塩類について説明する。本実施形態の好適なホスフィン酸塩類は、下記一般式(I)及び/又は下記一般式(II)で表されるジホスフィン酸塩、又はこれらの縮合物(本明細書中では、ホスフィン酸塩及びその縮合物をまとめてホスフィン酸塩類と略記することがある。)である。
これらホスフィン酸塩類は、本質的にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3の縮合物であるポリマー性ホスフィン酸塩も含まれる。 本実施形態の好適なホスフィン酸塩類は、より高い難燃性の発現、及びMD発生の抑制の観点から、下記式(III)で表されるホスフィン酸塩を好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上含む。
本実施形態の樹脂組成物において、好ましいホスフィン酸塩類の配合量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対し、1〜50質量部であり、より好ましくは2〜25質量部、更に好ましくは2〜15質量部、特に好ましくは3〜10質量部である。十分な難燃性を発現させるためには、ホスフィン酸塩類の配合量は1質量部以上が好ましく、押出加工により適した溶融粘度を実現するには、ホスフィン酸塩類の配合量は50質量部以下が好ましい。
ホスフィン酸塩類の数平均粒子径を0.1μm以上とすると、溶融混練等の加工時において、取扱い性や押出し機等への噛み込み性が向上し好ましい。また、その数平均粒子径を40μm以下とすることにより、樹脂組成物の機械的強度が発現しやすくなり、かつ成形品の表面良外観が向上する。
また、本実施形態におけるホスフィン酸塩類は、本実施形態の効果を損なわなければ、未反応物又は副生成物が残存していてもよい。
具体的には、本実施形態のフィルムは、シクロヘキサンジカルボン酸単位を20〜100モル%含有するジカルボン酸単位と、炭素数6〜12の脂肪族ジアミン単位を含有するジアミン単位とからなる脂環構造を有するポリアミドと、ポリフェニレンエーテルと、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤とを含み、厚みが1〜200μmである。
また、本実施形態のフィルムは上記本実施形態の樹脂組成物を原料とするものであってもよく、本実施形態の樹脂組成物に添加してよい各成分を全て添加可能である。
こうして得られた本実施形態のフィルムは、耐熱性、衝撃強度、流動性に優れると共に、フォギング性を抑制したものとなる。また、本実施形態のフィルムは、低吸水性、耐薬品性、耐引き裂き性、耐熱強度及び後工程で真空成形を行う際の真空成形性に優れる。さらに加えて、本実施形態のフィルムは熱収縮率が小さく、また難燃性、機械的強度、絶縁性や誘電率や誘電正接などに代表される電気特性にも優れ、耐加水分解性にも優れる。したがって、本実施形態のフィルムは、これらの特性が要求される用途に用いられる。
本実施形態の樹脂組成物及びフィルムでは、上記の成分の他に、本実施形態の効果を損なわない範囲で必要に応じて下記の付加的成分を添加してもよい。
この際の加工機械のシリンダー設定温度は特に限定されるものではなく、通常240〜360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができるが、好ましい設定温度は300〜350℃である。
成形品の具体例としては、例えば、ランプリフレクター部品などの自動車のランプを構成する部品、液晶プロジェクター等のランプ部分を構成する部品、リレーブロック材料等に代表されるオートバイ・自動車の電装部品、ICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット、SMT(表面実装技術)コネクターに代表されるSMT対応部品等の電気・電子部品、各種コンピューター及びその周辺機器等のOA部品や機械部品、さらにはオートバイのカウルや、自動車のバンパー・フェンダー・ドアーパネル・各種モール・エンブレム・アウタードアハンドル・ドアミラーハウジング・ホイール、キャップ・ルーフレール及びそのステイ材・スポイラー等に代表される外装品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等に代表される内装部品、自動車アンダーウード部品、自動車エンジン周り部品等に好適に使用できる。特に、本実施形態の樹脂組成物は、その低線膨張性と低吸水性とを活かし、自動車の外装材に好ましく使用することもできる。更に、本実施形態の樹脂組成物は、鉛フリーはんだ対応リフロー炉に耐えうる耐熱性を有するため、SMTコネクターに代表されるSMT対応部品等の電気・電子部品にも好ましく用いることができる。また、優れた低フォギング性を有することより自動車ランプ周りの耐熱部品、液晶プロジェクター等のランプ部分を構成する部品に好ましく使用可能である。
本実施形態の樹脂組成物を用いた成形品は、耐熱性、衝撃強度、流動性に優れると共に、フォギング性を抑制したものとなる。また、この成形品は、低吸水性、離型性、成形外観、真空成形性にも優れたものである。
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
(用いた原料)
1−1.脂環構造を有するポリアミド(PAC−1)の製造
ジカルボン酸単位の成分としてトランス/シスのモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を、ジアミン単位の成分として1,6−ヘキサメチレンジアミン及び1,12−ドデカンジアミンを準備した。なお、1,6−ヘキサメチレンジアミンと1,12−ドデカンジアミンとのモル比は、(1,6−ヘキサメチレンジアミン/1,12−ドデカンジアミン)で13/87であった。これらの成分を蒸留水中に溶解し、pH=7.80を中和等量点とするような水溶液を作製した。このとき、ジカルボン酸成分とジアミン成分とのモル比は1/1とした。また、重合触媒として、次亜リン酸ナトリウム一水和物を水溶液中に加えた。
その後、オートクレーブ内圧が3.5MPaとなるまで加熱した。その時の内部温度は250℃であった。そのままオートクレーブ内部の圧力を3.5MPaに保ちながら、水蒸気を徐々に除去して内部温度が300℃に到達するまで1時間反応させ、プレポリマーを得た。
このプレポリマーを3mm以下の大きさまで粉砕した後、窒素ガスを20L/分の流量で流した雰囲気の下、100℃で24時間乾燥した。その後、更に200mL/minの流量で窒素ガスを流した雰囲気の下、280℃で10時間プレポリマーを固相重合し、ポリアミドを得た。
この得られたポリアミドをポリアミドC−1(PAC−1)と称する。
上記ポリアミドC−1(PAC−1)の製造において、ジカルボン酸単位の成分及びジアミン単位の成分の合計100モル%に対し、0.2モル%の酢酸を水溶液に加えた以外は、1−1と同様にして重合を行いプレポリマーを得た。
このプレポリマーの固相重合時間を10時間から12時間に変更する以外は、1−1と同様にして固相重合を行いポリアミドを得た。
この得られたポリアミドをポリアミドC−2(PAC−2)と称する。
上記ポリアミドC−1(PAC−1)の製造において、ジカルボン酸単位の成分及びジアミン単位の成分の合計100モル%に対し、0.45モル%の酢酸を水溶液に加えた以外は、1−1と同様にして重合を行いプレポリマーを得た。
このプレポリマーの固相重合時間を10時間から13時間に変更する以外は、1−1と同様にして固相重合を行いポリアミドを得た。
この得られたポリアミドをポリアミドC−3(PAC−3)と称する。
上記ポリアミドC−1(PAC−1)の製造において、ジカルボン酸単位の成分及びジアミン単位の成分の合計100モル%に対し、0.75モル%の酢酸を水溶液加える以外は、1−1と同様にして重合を行いプレポリマーを得た。
このプレポリマーの固相重合時間を10時間から13時間に変更する以外は、1−1と同様にして固相重合を行いポリアミドを得た。
この得られたポリアミドをポリアミドC−4(PAC−4)と称する。
上記ポリアミドC−1(PAC−1)の製造において、ジカルボン酸単位の成分及びジアミン単位の成分の合計100モル%に対し、1.0モル%の酢酸を水溶液に加えた以外は、1−1と同様にして重合を行いプレポリマーを得た。
このプレポリマーの固相重合時間を10時間から15時間に変更する以外は、1−1と同様ににて固相重合を行いポリアミドを得た。
この得られたポリマーをポリアミドC−5(PAC−5)と称する。
特開2000−212433号公報に記載の製造例1に従いポリアミド9,Tを製造した。このポリアミドをPA9Tと称する。
1−7.ポリアミド6,T/6,6の製造
特開平7−126516号公報に記載の製造例1に従いポリアミド6,T/6,6を製造した。このポリアミドをPA6T/66と称する。
ポリフェニレンエーテルとして、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を準備した。このポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.41dL/g(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃測定)であった。これをPPEと称する。
3.ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤
ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤として無水マレイン酸(商品名:CRYSTALMAN−AB、日本油脂社製)を準備した。これをMAHと称する。
また、別のポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤としてクエン酸(和光純薬製)を準備した。これをCAと称する。
4.結晶造核剤
結晶造核剤として平均粒子径5.0μmのタルク(表面処理なし)を準備した。これをTalcと称する。
5.衝撃改良材
衝撃改良材としてスチレンーブタジエン系ブロック共重合体(商品名:クレイトンG1651、クレイトンポリマージャパン社製)を準備した。これをSEBSと称する。
強化無機フィラーとしてノボラックエポキシ系化合物で集束された繊維径13μmのチョップドストランドガラス繊維(商品名:ECS03T−747、日本電気硝子社製)を準備した。これをGFと称する。
また、別の強化無機フィラーとして、焼成カオリン(商品名:TRANSLINK445、巴工業社製)を準備した。これをKAと称する。
7.難燃剤
難燃剤としてジエチルホスフィン酸アルミニウム(商品名:Exolit OP930、クラリアントジャパン社製、平均粒子径5μm)を準備した。これをDEPと称する。
8.金属系安定剤として、ヨウ化銅(和光純薬製)を準備した。これをCuIと称する。
また、別の金属系安定剤として、ヨウ化カリウム(和光純薬製)を準備した。これをKIと称する。
(実施例、比較例)
押出機の上流部に1箇所、中流部に1箇所、下流部に1箇所の合計3箇所の供給口を有する二軸押出機(ZSK−25:コペリオン社製(ドイツ))を準備した。この二軸押出機の上流部供給口から中流部供給口の手前までを320℃、中流部供給口からダイまでを300℃に設定した。スクリュー回転数250rpm、吐出量15kg/hの条件で、表1〜4に示す組成の各原料を二軸押出機に供給し、溶融混練し、ストランドとして押出し、切断し、樹脂組成物のペレットを作製した。
得られたペレットを用いて、以下の項目について試験を実施した。結果を表1〜4に示す。
ペレットについて、ISO1133に準拠し、シリンダー温度320℃、荷重5kgの条件でMVRを測定した。
<シャルピー衝撃強度>
ペレットを、IS−80EPN成形機(東芝機械社製)を用いて、シリンダー温度330℃、金型温度130℃の条件で成形して、ISO294−1に準拠した4mm厚みの多目的試験片及び50mm×90mm×2.5mmの平板状試験片を得た。
得られた多目的試験片を用いて、ISO179に準拠しシャルピー衝撃強度を測定した。
<引張特性>
得られた多目的試験片を用いて、ISO−527に準拠し、引張強度(TS)、引張弾性率(TM)及び引張破壊呼び歪(TE)を測定した。
得られた多目的試験片の両端を切断した試験片について、ISO75に準拠し、0.45MPa荷重での荷重たわみ温度と1.8MPaでの荷重たわみ温度とを測定した。なお、0.45MPa荷重で、280℃を超えるDTULのサンプルについては、(株)東洋精機製作所製のエアーバス仕様のHDT(HT−3W)で測定した。
<難燃性(UL−94VB)>
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の方法により、1サンプル当たり、それぞれ5本ずつ測定を行った。なお、試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚み1.6mm)は射出成形機(東芝機械(株)製:IS−80EPN)を用いて樹脂組成物から成形して得られた。成形はシリンダー温度330℃、金型温度150℃の条件で実施した。
難燃等級には、UL94垂直燃焼試験によって分類される難燃性のクラスを示した。ただし、全てのサンプルで試験を5回行い、平均燃焼時間と最大燃焼時間とを算出した。また、得られた結果に基づき、UL94VBに従い判定した。
得られた多目的試験片の両端を切断し、厚み4mm、幅10mm、長さ50mmの直方体成形片を作成し、該成形片2本を外径25mm、高さ約70mmの内容量50cm3のガラス瓶に入れ、ガラス瓶上部にガラス板を乗載置し、蓋をした。
成形片の入ったガラス瓶を210℃に設定した熱風オーブン中に入れ、約100時間静置した。その後、室温まで冷却し、ガラス板を取り出し、ガラス板の曇り度をへーズメーターで測定した。
難燃性(UL−94VB)測定用に成形した試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚み1.6mm)を、熱風リフロー炉で加熱して、試験片の形状変化と、変色の度合いとを確認し、以下の基準で判定した。
変化なし:試験片の変形なし。試験片のごくわずかな変色が認められる。
変色あり:試験片の変形なし。試験片の明らかな変色が認められる。
変形あり:試験片に変形あり。
なお、このときに使用した熱風リフロー炉は、鉛フリーハンダ対応リフロー炉(UNI−6116H、日本アントム社製)であり、温度設定について、プレヒートゾーンの温度を180℃、ソルダリングゾーンの温度を280℃に設定した。また、リフロー炉内のコンベア−ベルト速度は0.3m/分に設定した。この条件下において、炉内の温度プロファイルを確認したところ、140℃〜200℃の熱暴露時間が90秒、220℃以上の熱暴露時間が48秒、260℃以上の熱暴露時間が11秒であり、最高到達温度は265℃であった。
耐リフロー試験で使用した試験片を温度40℃、湿度95%の環境下に100時間静置して得られた吸水試験片を用いて、上記耐リフロー性の評価と同様の試験を実施した。このときの吸水試験片の発泡の有無を確認した。
<金型離型性>
ペレットをIS−80EPN成形機(東芝機械社製)を用いて、シリンダー温度330℃、金型温度130℃の条件で成形して、150mm×150mm×2.5mmの平板状試験片を順に50枚得た。
41枚目から50枚目の10枚の試験片表面を、目視にて観察し以下の区分に分類した。
○:10枚中2枚以下の試験片表面に金型離型時の貼り付き痕があったもの。
△:10枚中2〜5枚の試験片表面に金型離型時の貼り付き痕があったもの。
×:10枚中6枚以上の試験片表面に金型離型時の貼り付き痕があったもの。
実施例4、参考例2及び比較例1で得られたペレットについてフィルム成形性を下記のようにして評価した。幅約15cmのシートを成形可能な単軸シート押出機を用いて、ペレットから押出成形によりフィルムを得た。この際、シリンダー温度及びダイ温度を330℃に設定し、ダイ厚みを0.1mmに調整し、吐出量が15kg/hとなるようスクリュー回転数を調節した。ダイ付近での目ヤニの発生状況を確認した。
なお、目ヤニの発生状況は以下の評価基準に基づき評価した。
AAA:シート押出開始後30分を経過しても、目ヤニの発生が確認されない。
AA :シート押出開始後20分〜30分経過後に目ヤニの発生が認められる。
A :シート押出開始後10分〜20分経過後に目ヤニの発生が認められる。
B :シート押出開始後、すぐに目ヤニの発生が認められる。
次に、ダイ部分をスクレープし、目ヤニを除去した後、ダイ厚みを0.4mmに調整し、吐出量が50kg/hとなるようスクリュー回転数を調節し、フィルム押出を実施し、長さ約10m、厚み約380μmのシートを得た。
真空成形機のヒーターは340℃に設定し、予備加熱時間は5分間とした。この5分間の加熱時間終了後、減圧吸引を実施して真空成形を実施した。
同一条件で真空成形後、得られたカップ状の成形片の成形状態を目視で確認し下記1)〜3)の3つの観点で評価した。
これらは、いずれも成形品に存在すると成形不良と判断される現象である。下記のいずれかの現象が発生したものは真空成形性を「不良」とし、いずれの現象も発生しなかったものは真空成形性を「良」として評価し、表1に記載した。
1)穴、裂け目:成形品に穴や裂け目が発生する。
2)しわ:成形品にしわが発生する。
3)真空穴の跡の有無:真空吸引する穴の跡が成形品にある。
金型離型性の評価で用いた、41枚目から50枚目の平板状試験片を用い、JIS K7105準拠して、ハンディ光沢計(商品名「IG−320」、堀場製作所製)にて表面のグロス値を測定した。測定光の入射角は60度として測定した。
本発明の樹脂組成物は、鉛フリーはんだ対応リフロー炉に耐え得る耐熱性を有するため、SMT対応部品にも好ましく用いることができる。また、本発明の樹脂組成物は、優れた低フォギング性を有することにより、自動車ランプ周りの耐熱部品に好ましく使用可能である。
Claims (23)
- シクロヘキサンジカルボン酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位と炭素数6〜12の脂肪族ジアミン単位を含有するジアミン単位とからなる脂環構造を有するポリアミドと、ポリフェニレンエーテルと、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤と、を含み、
前記脂環構造を有するポリアミドの末端アミノ基濃度が、5〜50μモル/gである、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。 - 前記脂環構造を有するポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、前記脂環構造を有するポリアミド90〜20質量部と、前記ポリフェニレンエーテル10〜80質量部と、を含む、請求項1に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記ジアミン単位が、1,6−ヘキサメチレンジアミン単位、1,9−ノナメチレンジアミン単位、2−メチル−1,8オクタメチレンジアミン単位、1,12−ドデカメチレンジアミン単位、及びこれらの誘導体単位からなる群より選ばれる1種以上のジアミン単位を60〜100モル%含有する、請求項1又は2に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記ジアミン単位が、1,12−ドデカメチレンジアミン単位を60〜100モル%含有する、請求項3に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記シクロヘキサンジカルボン酸単位が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位のトランス/シス比が、モル比で60/40〜90/10である、請求項5に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記脂環構造を有するポリアミドの濃硫酸中30℃の条件下で測定した固有粘度[η]が、0.6〜2.0dL/gである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記脂環構造を有するポリアミドが、結晶性樹脂である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記ジカルボン酸単位が、アジピン酸単位、イソフタル酸単位及びテレフタル酸単位からなる群より選ばれる1種以上の単位を含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 更に、前記脂環構造を有するポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、結晶造核剤を0.01〜1質量部含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記脂環構造を有するポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、前記相溶化剤を0.01〜8質量部含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記相溶化剤が、マレイン酸又はその無水物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 更に、導電性付与材を0.1〜10質量%含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記導電性付与材として導電性カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブを0.5〜5質量%含む、請求項13に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 更に、強化無機フィラーを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記強化無機フィラーを10〜60質量%含む、請求項15に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 更に、前記脂環構造を有するポリアミド100質量部に対して、脂肪族ポリアミドを100質量部以下含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 前記脂肪族ポリアミドが、炭素数4〜8の脂肪族ジアミン単位と炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸単位とからなる脂肪族ポリアミド、炭素数6〜8のラクタム単位からなる脂肪族ポリアミド、及びアミノカルボン酸単位からなる脂肪族ポリアミドからなる群より選ばれる1種以上の脂肪族ポリアミドである、請求項17に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 更に、前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、衝撃改良材を10〜70質量部含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 請求項1〜19のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を含むSMT対応部品。
- 請求項1〜19のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を含むランプリフレクター部品。
- シクロヘキサンジカルボン酸単位を50〜100モル%含有するジカルボン酸単位と炭素数6〜12の脂肪族ジアミン単位を含有するジアミン単位とからなる脂環構造を有するポリアミドと、ポリフェニレンエーテルと、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤と、を含み、厚みが1〜200μmであり、
前記脂環構造を有するポリアミドの末端アミノ基濃度が、5〜50μモル/gである、フィルム。 - 前記脂環構造を有するポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、前記脂環構造を有するポリアミド80〜40質量部と、前記ポリフェニレンエーテル20〜60質量部と、前記相溶化剤0.01〜8質量部と、を含む、請求項22に記載のフィルム。
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