JP5565034B2 - 難燃性ポリアミド樹脂組成物及び押出成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性、更には導電性にも優れた難燃性ポリアミド樹脂組成物と、この難燃性ポリアミド樹脂組成物を押出成形してなる押出成形品に関する。
ポリアミド樹脂は、成形性、耐薬品性、引っ張り強さ、曲げ強さ等の機械的性質や、耐摩耗性等に優れることから、幅広い分野で用いられている。
その用途の一つとして、ポリアミド樹脂をシート状に押出成形してなる建築ないし設備メンテナンス用養生シートがあるが、養生シートの成形材料としてのポリアミド樹脂組成物には、ポリアミド樹脂本来の耐薬品性や機械的特性のみならず、現場での溶接等の火炎に対しても延焼を防止し得る高い難燃性が要求され、場合によっては、静電気による問題を防止するために導電性(帯電防止性)にも優れることが要求される。
従来、ポリアミド樹脂組成物に難燃性を付与するために各種の難燃剤が配合されており、近年では、環境問題が指摘されるハロゲン系難燃剤ではなく、非ハロゲン系難燃剤を配合して難燃性を付与する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2)。
なお、従来の難燃性ポリアミド樹脂組成物では、ポリアミド樹脂として、ポリアミド6、ポリアミド66等の汎用のポリアミド樹脂が用いられており、本発明で用いるポリアミド5Xが用いられた例はない。
特開平11−335552号公報 特開2002−127338号公報
建築ないし設備メンテナンス用養生シート等の用途においては、UL−94規格VTM試験においてVTM−0を満たし、また、JIS K−7201に準拠して測定した臨界酸素指数(LOI)が26以上であるような高い難燃性が要求されるが、従来においては、ポリアミド樹脂組成物の難燃性を高めるためにはポリアミド樹脂に難燃剤を多量に配合する必要があり、このために成形性、機械的強度等のポリアミド樹脂本来の特性が損なわれる結果となっていた。
更に、難燃性と共に導電性をも付与するべく、難燃剤と導電性付与剤とを配合した場合には、難燃剤配合により導電性が低下しやすい傾向にあるため、所望の導電性を付与するためには多量の導電性付与剤が必要となり、また、この導電性付与剤の多量配合により難燃性も低下してしまうため、これらの添加剤を添加することによる難燃性と導電性の両立が難しく、また、ポリアミド樹脂の特性が更に損なわれることが懸念される。
本発明は、成形性や機械的特性等のポリアミド樹脂本来の優れた特性を維持した難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、難燃性に優れると共に、導電性にも優れた難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂としてポリアミド5Xを用いること、また、溶解度パラメータが異なる2種類のポリアミド樹脂を用い、その一方のみに予め難燃剤を配合して用いることにより、組成物中に難燃剤の高濃度領域が形成され、これにより、少ない難燃剤配合量で優れた難燃性を得ることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] ポリアミド樹脂aと、該ポリアミド樹脂aとは異なる溶解度パラメータを有するポリアミド樹脂bとを含むポリアミド樹脂組成物であって、該ポリアミド樹脂a及び/又はポリアミド樹脂bが、ポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510及びポリアミド56/6よりなる群から選ばれる少なくとも一種のポリアミド樹脂(以下、このポリアミド樹脂を「ポリアミド5X」と称す。)を含み、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの合計を100重量部とした場合において、ポリアミド5Xが9重量部以上であり、該ポリアミド樹脂aの溶解度パラメータSPaと、該ポリアミド樹脂bの溶解度パラメータSPbとの差の絶対値が0.65〜2.33の範囲であり、ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bの相対粘度(ηr)が1.5〜5.5であり、該ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bのいずれか一方の少なくとも一部は、予め難燃剤を含有する組成物として配合されていることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[2] [1]において、JIS K−7201に準拠して測定した臨界酸素指数(OLI)が26以上であり、かつUL−94規格VTM試験での難燃性がVTM−0を満足することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[3] [1]又は[2]において、予め難燃剤を含有させない前記ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bのいずれか他方の少なくとも一部は、予め導電性付与剤を含有する組成物として配合されていることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[4] [3]において、体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記難燃剤が、フォスフィン酸塩類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[6] [3]ないし[5]のいずれかにおいて、前記導電性付与剤が、導電性カーボンブラック及び中空炭素フィブリルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[7] [3]ないし[6]のいずれかにおいて、前記ポリアミド樹脂a5〜95重量部と前記ポリアミド樹脂b95〜5重量部との合計100重量部に対して、前記難燃剤10〜40重量部と、前記導電性付与剤0.05〜50重量部とを含むことを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[8] [1]ないし[8]のいずれかにおいて、前記ポリアミド樹脂a及び/又はポリアミド樹脂bが、ポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510及び56/6からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[9] [8]において、前記ポリアミド樹脂aがポリアミド510及びポリアミド56/6のいずれか一方であり、前記ポリアミド樹脂bがポリアミド510及びポリアミド56/6のいずれか他方であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[10] [1]ないし[9]のいずれかにおいて、前記ポリアミド樹脂a及び/又はポリアミド樹脂bは、DSC法による測定で2つの吸熱ピークを有することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[11] [10]において、前記2つの吸熱ピークの温度差が5〜50℃であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
[12] [1]ないし[11]のいずれかに記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物を厚み5〜200μmのシート状に押出成形してなる押出成形品。
[13] [12]に記載の押出成形品よりなる建築ないし設備メンテナンス用養生シート。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物では、難燃剤を多量に配合することなく優れた難燃性を付与することができ、このため、ポリアミド樹脂本来の優れた成形性や機械的特性を損なうことなく、難燃性に優れたポリアミド樹脂組成物を実現することができる。
即ち、本発明では、異なる溶解度パラメータを有し、その溶解度パラメータ差が所定の範囲内にあるポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとを用いるため、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物においては、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの2相構造、好ましくは共連続構造が形成される
しかして、難燃剤は、この共連続構造等の2相構造を形成するポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bのうちのいずれか一方にのみ含有されるため、配合された難燃剤は、当該ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bのうちのいずれか一方の相内にのみ存在することにより、難燃剤配合相は、難燃剤含有相となる。このため、難燃性ポリアミド樹脂組成物の難燃剤配合量自体は少なくても、この相内で難燃剤が濃縮されて高い難燃性を発現する。一方で、難燃剤の配合されていない他方の相において、ポリアミド樹脂本来の優れた成形性、機械的特性が維持される。
本発明では、この難燃剤が配合されていない他方の相にのみ導電性付与剤を含有させることにより、同様に、この導電性付与剤配合相内で導電性付与剤が高濃度に存在することで、良好な導電性ネットワークが形成され、少ない導電性付与剤配合量で優れた導電性を得ることができる。
このように一方の相に難燃剤を配合し、他方の相に導電性付与剤を配合した場合であっても、それぞれの相への難燃剤配合量、導電性付与剤配合量は少量で足りることから、難燃性ポリアミド樹脂組成物全体としての成形性や機械的特性が損なわれることはない。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[溶解度パラメータ]
本発明で用いるポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとは、互いに溶解度パラメータが異なり、ポリアミド樹脂aの溶解度パラメータSPaとポリアミド樹脂bの溶解度パラメータSPbとの差の絶対値|SPa−SPb|が0.2〜3.7であることを特徴とする。
本発明における溶解度パラメータ(以下、「SP値」と記す。)は、2005年(株式会社 情報機構)、山本秀樹著「SP値基礎・応用と計算方法」第66頁〜第67頁の「2.Fedorの推算法」に基づき算出した値である。このFedorの推算法におけるSP値は、(凝集エネルギー[J/mol])/(分子容[cm/mol])の1/2乗で定義される値であり、主として、ポリマーの各種溶媒への溶解性を予測するのに用いられる有用な物性値である。
一般的に使用されているポリアミド、及び後述の実施例及び比較例で使用したポリアミド(表1中「PA」と記載する。)のモノマー構成、凝集エネルギーE(J/mol)、分子容V(cm/mol)、溶解度パラメータSP値を表1に示す。
Figure 0005565034
本発明で使用するポリアミド樹脂aの溶解度パラメータSPaとポリアミド樹脂bの溶解度パラメータSPbとの差の絶対値|SPa−SPb|は、0.2〜3.7の範囲である。|SPa−SPb|は、0.5〜3.2の範囲が好ましく、0.8〜2.7の範囲がさらに好ましく、1.2〜2.2の範囲が特に好ましい。
ポリアミド樹脂aのSPaとポリアミド樹脂bのSPbとの差の絶対値|SPa−SPb|が過度に小さいと、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの2相構造、好ましくは共連続構造を形成し得ず、難燃剤が一方の相にのみ存在することによる本発明の難燃性向上効果を十分に得ることができず、難燃性が低くなる傾向がある。同様に更に導電性付与剤を配合した場合にも、十分な導電性向上効果が得られない傾向がある。また、該差の絶対値が過度に大きいと、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bの相溶性が低下する傾向があり、機械的特性が損なわれる場合がある。
なお、本発明において、ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bに相当するポリアミド樹脂は1種類に限らず、2種類以上であってもよい。この場合には、最も含有量の多いポリアミド樹脂と2番目に含有量の多いポリアミド樹脂の溶解度パラメータをSPa、SPbとし、SPaとSPbとの差の絶対値|SPa−SPb|が上述の範囲であればよい。ただし、このように多種類のポリアミド樹脂を用いることは、原材料の調達や管理の手間が増加することで工業的に好ましいことではなく、一方で、本発明では、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとでそれぞれ1種類のポリアミド樹脂を用いて組成物中にポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bの2相構造、好ましくは共連続構造を形成することにより、本発明の目的を十分に達成することができることから、ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bとしてそれぞれ1種類のポリアミド樹脂を用いることが好ましい。ただし、本発明は、3種類以上のポリアミド樹脂を含む組成物を何ら排除するものではない。
但し、3種類以上のポリアミド樹脂を含む組成物の場合には、下記の方法でSPaとSPbとの差を計算するものとする。
(1)樹脂種が異なっていてもSP値が同じ樹脂を2種以上含有する場合は、これら異樹脂を合算して一樹脂とみなすものとする。
(2)最も含有量の多いポリアミド樹脂と2番目に含有量の多いポリアミド樹脂の溶解度パラメータをSPa、SPbとする。
(3)含有量が同一で、SP値が異なるポリアミド樹脂が複数存在する場合で、該複数存在するポリアミド樹脂と異なる他方のポリアミド樹脂の含有量が、該複数存在するポリアミド樹脂のそれぞれの含有量よりも多い場合は、該他方のポリアミド樹脂のSP値と、該他方のポリアミド樹脂のSP値と最も近いSP値を有するポリアミド樹脂のSP値をSPa、SPbとする。
(4)含有量が同一で、SP値が異なるポリアミド樹脂が複数存在する場合で、該複数存在するポリアミド樹脂と異なる他方のポリアミド樹脂の含有量が、該複数存在するポリアミド樹脂のそれぞれの含有量よりも少ない場合は、該複数存在するポリアミド樹脂のうち、SP値の差が最も小さいポリアミド樹脂のSP値をSPa、SPbとする。
[ポリアミド樹脂]
本発明で用いるポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bのうち、少なくとも一方は、ポリアミド樹脂5Xを含むことを特徴とする。
<ポリアミド5X>
本発明において、ポリアミド5Xとは、ペンタメチレンジアミンを含むジアミンと、ジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂である。
この重縮合反応に用いられるジアミンは、ペンタメチレンジアミンを必須成分とするが、その他、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミン;キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン、などの1種又は2種以上を含んでいても良い。
一方、ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、などの1種又は2種以上が挙げられる。また、その他のモノマー成分として例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム、などの1種又は2種以上を含んでいても良い。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、良好な難燃性、更には導電性が得られるが、これは本発明で用いるポリアミド5Xの結晶形態が影響していることが考えられる。
即ち、ポリアミド5Xはγ型結晶を有する傾向にあるが、一般的に使用されているポリアミド6、ポリアミド66等はα型結晶のみを有する傾向にある。α型結晶はγ型結晶に比べて結晶サイズが大きく、難燃剤の作用や導電経路を遮断し易いが、γ型結晶はこのような不具合がないことが考えられる。
ポリアミド5Xとしては、好ましくはポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510、ポリアミド56/6が挙げられ、より好ましくはポリアミド510、ポリアミド56/6である。
<他のポリアミド樹脂>
本発明に用いられるポリアミド5X以外のポリアミド樹脂としては特に制限はなく、以下に示す化合物の少なくとも1つをモノマー成分として用いる重縮合反応により得られるポリアミド樹脂が挙げられる。
即ち、ポリアミド5X以外のポリアミド樹脂を得るためのモノマー成分としては、ラクタム、ジカルボン酸、ジアミンが挙げられる。
このモノマー成分としては、具体的には、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミン;キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
具体的には、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド5X以外に用いられるポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド610、ポリアミド6I/6Tなどが挙げられる。
<分子量>
本発明で使用するポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bの分子量は特に限定されず、目的に応じて適宜選択される。実用性の観点から、ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bの分子量は、25℃における98%硫酸に溶解した溶液(ポリアミド樹脂a又はbの濃度:0.01g/ml)の相対粘度(η)として、通常1.5〜5.5、好ましくは1.6〜3.5、さらに好ましくは1.8〜3、特に好ましくは2〜2.8の範囲である。
この相対粘度が過度に低いと実用的強度が得られない傾向がある。また、相対粘度が過度に大きいと流動性が低下して成形加工性が損なわれる傾向がある。
<末端アミノ基濃度>
本発明で使用するポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bの末端アミノ基濃度は特に限定されず、目的に応じて適宜選択される。実用性の観点から、ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bの末端アミノ基濃度は16〜100μeq/g、特に20〜90μeq/g、とりわけ25〜80μeq/gであることが好ましい。末端アミノ基濃度が低過ぎると、導電性付与剤の反応性基との反応性が十分に得られず、高過ぎるとゲルが生成する恐れがあり好ましくない。
なお、ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bの分子量及び末端アミノ基濃度は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
<DSC法による吸熱ピーク>
本発明で用いるポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bの少なくとも一方は、DSC(示差走査熱量測定)法による融点として測定される吸熱ピークを2つ有することが好ましく、その2つの吸熱ピークのピークトップの温度差が5〜50℃、特に10〜45℃であることが好ましい。また、吸熱ピークを2つ有する場合、それぞれの吸熱ピークのピークトップの温度は、高温側が好ましくは180〜280℃、より好ましくは200〜270℃であり、低温側が好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜250℃である。なお、本発明において、吸熱ピークとは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温した時に観測される吸熱ピークとする。具体的には、ポリアミド56の場合は、例えば、次の要領で求めることができる。30〜300℃まで20℃/minの速度で昇温し、300℃で3分間保持した試料を完全に溶解させた後、20℃/minの速度で30℃まで降温する。続いて、30℃で3分間保持した後、20℃/minの速度で300℃まで昇温し、昇温時に観測される吸熱ピークのピークトップの温度を求める。昇温時の最高温度は、予想される樹脂の吸熱ピークのピークトップの温度に応じて適宜調整すればよく、通常は吸熱ピークのピークトップの温度(吸熱ピークが2つ以上存在する場合は、高温側の吸熱ピークのピークトップの温度)+50℃の範囲で選択すればよい。
このDSC法による吸熱ピークが2つ存在することは、成形時の結晶化が2段階で進行することを意味し、結晶化が2段階で進行することにより、ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bで形成される2相構造の相内において、難燃剤又は導電性付与剤が適度に分散し、その機能を有効に発揮するようになる。
この吸熱ピークのピークトップ温度差が過度に小さいと、上記2段階の結晶化による効果を十分に得ることができず、過度に大きいと、成形性が損なわれる恐れがあることから、2つの吸熱ピークのピークトップ温度差は5〜50℃、特に10〜45℃であることが好ましい。
<ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの組み合わせ>
本発明で用いるポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bは、溶解度パラメータ差が本発明の範囲内であり、少なくとも一方がポリアミド5Xであればよく、その組み合わせには特に制限はないが、その組み合わせ例としては、ポリアミド56とポリアミド6、ポリアミド510、ポリアミド59、ポリアミド6/66、又はポリアミド6I/6Tとの組み合わせ、ポリアミド510とポリアミド56/6との組み合わせ等が挙げられるが、導電性が良好であることより、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bのいずれか一方がポリアミド510で、他方がポリアミド56/6であることが好ましい。
[難燃剤]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bのいずれか一方の少なくとも一部が、予め難燃剤を含有する組成物として配合されていることを特徴とする。
本発明で用いる難燃剤としては特に制限はなく、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等を用いることができるが、特にポリアミド樹脂に適することから、ハロゲン系難燃剤又はリン系難燃剤を配合することが好ましく、特にリン系難燃剤が好ましい。
ハロゲン系難燃剤の好ましい具体例としては、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ブロム化イミド等が挙げられ、中でも、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレン樹脂、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが、耐衝撃性の低下を抑制しやすい傾向にあり、より好ましい。
リン系難燃剤とは、リン原子を含有する難燃剤であり、例えば、
(1)メラミンとリン酸との反応生成物
(2)フォスフィン酸塩類
(3)ホスファゼン化合物
等を挙げることができる。
(1)メラミンとリン酸との反応生成物とは、メラミン又はメラミンの縮合生成物と、リン酸、ピロリン酸、もしくはポリリン酸との実質的に等モルの反応生成物から得られるものを意味し、その製法には特に制約はない。通常、リン酸メラミンを窒素雰囲気下、加熱縮合して得られるポリリン酸メラミン(化学式「(C・HPO」(ここでrは縮合度を表す))を挙げることができる。
ここでリン酸メラミンを構成するリン酸としては、具体的にはオルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が挙げられるが、特にオルトリン酸、ピロリン酸を用いたメラミンとの付加物を縮合したポリリン酸メラミンが難燃剤としての効果が高く、好ましい。特に耐熱性の点から、かかるポリリン酸メラミンの縮合度rは5以上が好ましい。
また、ポリリン酸メラミンはポリリン酸とメラミンの等モルの付加塩であっても良く、上記ポリリン酸とメラミンの全てが付加塩を形成しているものには限られず、これらの混合物であってもよい。すなわち、メラミンとの付加塩を形成するポリリン酸としては、いわゆる縮合リン酸と呼ばれる鎖状ポリリン酸、環状ポリメタリン酸を用いてもよい。これらポリリン酸の縮合度rには特に制約はなく通常3〜50であるが、得られるポリリン酸メラミン付加塩の耐熱性の点で、ここに用いるポリリン酸の縮合度rは5以上が好ましい。かかるポリリン酸メラミン付加塩は、メラミンとポリリン酸との混合物を例えば水スラリーとなし、よく混合して両者の反応生成物を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、洗浄、乾燥し、さらに必要であれば焼成し、得られた固形物を粉砕して得られる粉末である。
また、該ポリリン酸メラミンは、リン酸とメラミン縮合生成物の付加塩であってもよく、上記リン酸とメラミン縮合生成物の全てが付加塩を形成しているものには限られず、これらの混合物であってもよい。リン酸と付加塩を形成するメラミン縮合生成物としては、メレム、メラム、メロン等が挙げられる。
本発明においては、成形品の機械的強度や外観の点で、ポリリン酸メラミンの重量平均粒径が好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下になるように粉砕した粉末を用いるのが好ましい。特に、0.5〜20μmの粉末を用いることにより、高い難燃性を発現するばかりでなく、成形品の強度が著しく向上するのでさらに好ましい。また、ポリリン酸メラミンは必ずしも完全に純粋である必要はなく、未反応のメラミン、メラミン縮合物、あるいはリン酸、ポリリン酸が多少残存していてもよい。さらに、ポリリン酸メラミン中のリン原子の含有量は8〜18重量%であるものが、成形加工時に成形金型に汚染性物質が付着する現象が少なく特に好ましい。
(2)フォスフィン酸塩類としては、下記式(I)で表されるフォスフィン酸塩及び/又は下記式(II)で表されるジフォスフィン酸塩が挙げられ、例えば、フォスフィン酸と金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物を用いて水性媒体中で製造されたものが挙げられる。該フォスフィン酸塩類は、本質的にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3のポリマー性フォスフィン酸塩となる場合もある。
Figure 0005565034
Figure 0005565034
(一般式(I)及び(II)において、R及びRは、それぞれ、線状もしくは分枝状の炭素数1〜6のアルキル基及び/又は炭素数1〜10のアリール基を表し、Rは線状もしくは分枝状の炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数7〜10のアルキルアリーレン基又は炭素数7〜10のアリールアルキレン基を表す。MはCa、Mg、Al、Znから選ばれるものであり、mはMの価数を表し、2n=mxであり、nは1又は3、xは1又は2である。)
ここで、m又はnが2以上の場合、それぞれの、R〜Rは同一であっても良いし異なっていても良い。
フォスフィン酸としては、例えば、ジメチルフォスフィン酸、エチルメチルフォスフィン酸、ジエチルフォスフィン酸、メチル−n−プロピルフォスフィン酸、メタンジ(メチルフォスフィン酸)、ベンゼン−1,4−ジ(メチルフォスフィン酸)、メチルフェニルフォスフィン酸及びジフェニルフォスフィン酸等が挙げられる。
フォスフィン酸塩としては、ジメチルフォスフィン酸カルシウム、ジメチルフォスフィン酸マグネシウム、ジメチルフォスフィン酸アルミニウム、ジメチルフォスフィン酸亜鉛、エチルメチルフォスフィン酸カルシウム、エチルメチルフォスフィン酸マグネシウム、エチルメチルフォスフィン酸アルミニウム、エチルメチルフォスフィン酸亜鉛、ジエチルフォスフィン酸カルシウム、ジエチルフォスフィン酸マグネシウム、ジエチルフォスフィン酸アルミニウム、ジエチルフォスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルフォスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルフォスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルフォスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルフォスフィン酸亜鉛、メチルフェニルフォスフィン酸カルシウム、メチルフェニルフォスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルフォスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルフォスフィン酸亜鉛、ジフェニルフォスフィン酸カルシウム、ジフェニルフォスフィン酸マグネシウム、ジフェニルフォスフィン酸アルミニウム、ジフェニルフォスフィン酸亜鉛等が挙げられる。
ジフォスフィン酸塩としては、メタンジ(メチルフォスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルフォスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルフォスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルフォスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−ジ(メチルフォスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルフォスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルフォスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−ジ(メチルフォスフィン酸)亜鉛等が挙げられる。
これら、フォスフィン酸塩の中でも、特に、難燃性、電気特性の観点から、エチルメチルフォスフィン酸アルミニウム、ジエチルフォスフィン酸アルミニウム、ジエチルフォスフィン酸亜鉛が好ましい。
本発明においては、成形品の機械的強度や外観の点で、フォスフィン酸塩類の重量平均粒径が100μm以下、好ましくは80μm以下になるように粉砕した粉末を用いるのが好ましい。特に、0.5〜50μmの粉末を用いることにより、高い難燃性を発現するばかりでなく成形品の強度が著しく向上するのでより好ましい。さらに、フォスフィン酸塩類中のリン原子の割合は5〜40重量%のものが、成形加工時に成形金型に汚染物質が附着する現象が少なく特に好ましい。該フォスフィン酸塩類は難燃剤として作用するが、(1)メラミンとリン酸との反応生成物と併用することで、優れた難燃性と優れた電気特性を発現することができる。
(3)ホスファゼン化合物は分子中に−P=N−結合を有する有機化合物、好ましくは、下記一般式(III)で表される環状フェノキシホスファゼン、下記一般式(IV)で表される鎖状フェノキシホスファゼン、ならびに、下記一般式(III)及び下記一般式(IV)からなる群より選択される少なくとも一種のフェノキシホスファゼンが、下記一般式(V)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
Figure 0005565034
(一般式(III)において、pは3〜25の整数であり、Phはフェニル基を示す。)
Figure 0005565034
(一般式(IV)において、Xは−N=P(OPh)基、又は、−N=P(O)OPh基であり、Yは−P(OPh)基、又は、−P(O)(OPh)基であり、qは3〜10000の整数であり、Phはフェニル基を示す。)
Figure 0005565034
(一般式(V)において、Aは−C(CH−、−SO−、−S−、又は−O−であり、tは0又は1である。)
一般式(III)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120〜130℃の温度で反応させて得られる環状及び直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。また、該環状フェノキシホスファゼン化合物は、一般式(III)中のpが3〜8の整数である化合物が好ましい。
一般式(IV)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220〜250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3〜10000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。該直鎖状フェノキシホスファゼン化合物の、一般式(IV)中のqは、好ましくは3〜1000、より好ましくは3〜100、さらに好ましくは3〜25である。
架橋フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、4,4’−スルホニルジフェニレン(ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2−(4,4’−ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’−ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、一般式(III)で表される環状ホスファゼン化合物及び/又は一般式(IV)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基及びフェニレン基数を基準として、通常50〜99.9%、好ましくは70〜90%である。また、該架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
上記環状フェノキシホスファゼン化合物及び鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、H.R.Allcook著「Phosphorus−Nitrogen Compounds(Academic Press,(1972))」、J.E.Mark、H.R.Allcook、R.West著「Inorganic Polymers(Prentice−Hall International、Inc.(1992))」に記載されている方法によって合成することができる。
これらの難燃剤のうち、特に難燃性が優れていることから、本発明においては、フォスフィン酸塩類を用いることが好ましい。
これらの難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
[導電性付与剤]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物においては、必要に応じて導電性付与剤を配合してもよい。この場合、導電性付与剤は、ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bのうち、予め難燃剤を配合しない方のポリアミド樹脂に予め含有させた組成物として配合することが好ましい。これにより、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物では、ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bで形成される2相構造の一方の相に難燃剤が含有され、他方の相に導電性付与剤が含有されたものとなり、それぞれの相内で難燃剤及び導電性付与剤が高濃縮されて存在することにより、良好な難燃性と導電性が発現される。
本発明で用いる導電性付与剤としては特に制限はなく、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官能基を有する高分子帯電防止剤等の有機化合物の他に、カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維、金属粉末、金属酸化物等の無機物等が挙げられる。特に、比較的少量の配合で、高い導電性を発現し、良好な外観が得られ、他の物性とのバランスも良好であることから、導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリルが好ましい。
<導電性カーボンブラック>
導電性カーボンブラックとしては、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、30ml/100g以上であり、より好ましくは100ml/100g以上である導電性カーボンブラックが挙げられる。
好ましい導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるファーネスブラックやケッチェンブラック等が挙げられる。
これらの導電性カーボンブラックは、ペイント等に着色目的で加える顔料用カーボンブラックとは相違し、通常、微細な粒子が連なった形態を有している。
<中空炭素フィブリル>
中空炭素フィブリルとしては、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、100ml/100g以上であり、より好ましくは200ml/100g以上である中空炭素フィブリルが挙げられる。
ここで、本発明で使用する中空炭素フィブリルとしては、規則的に炭素原子が配列した本質的に連続的な多層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、外側領域の多層各層と中空領域とが実質的に同心に配置され、本質的に円筒状のフィブリルが挙げられる。
さらに、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2nm〜20nmの範囲のものが好ましい。
このような中空炭素フィブリルは、例えば、特表昭62−500943号公報や、米国特許第4,663,230号明細書等に詳細に記載されている。その製法としては、後者の米国特許明細書に詳細に記載されているように、例えば、アルミナを支持体とする鉄、コバルト、ニッケル含有粒子等の遷移金属含有粒子を、一酸化炭素、炭化水素等の炭素含有ガスと、850℃〜1200℃の高温で接触させ、熱分解によって生じた炭素を、遷移金属を起点として、繊維状に成長させる方法が挙げられる。また、この種の中空炭素フィブリルは、ハイペリオン・カタリシス社が、グラファイト・フィブリルという商品名で販売しており、容易に入手することができる。
なお、導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリルは、ジェットミルやスーパーミキサー等の高速粉砕機を用いて予め粉砕しておくことが好ましい。
これらの導電性付与剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
[その他の添加剤及び他の重合体]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、各種の添加剤や他の重合体が配合される。
<その他の添加剤>
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、充填剤、強化材等が挙げられる。
具体的には、酸化防止剤又は熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、ホスファイト系化合物及びこれらの置換体等が挙げられる。
耐候剤としては、レゾルシノール系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
離型剤又は滑剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素化合物、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
顔料としては、フタロシアニン、カーボンブラック等が挙げられる。
染料としては、ニグロシン、アニリンブラック等が挙げられる。
結晶核剤としては、タルク、シリカ、カオリン、クレー等が挙げられる。
可塑剤としては、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
帯電防止剤としては、アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等の非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等が挙げられる。
充填剤としては、グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ベントナイト、モンモリロナイト、合成雲母等の粒子状、針状、板状充填材が挙げられる。
強化材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、窒化硼素、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム等が挙げられる。
<他の重合体>
他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。
これらの添加剤や重合体は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
なお、上記のその他の添加剤やその他の重合体は、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物に用いるポリアミド樹脂の重縮合工程から、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造工程、更には、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物の成形工程のうちの任意の段階で添加量、添加工程等を適宜選択して、添加すればよい。
[配合割合]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの配合割合には特に制限はなく、いずれのポリアミド樹脂に難燃剤を配合するか、或いは、どの程度の難燃性が必要とされるか、更には、導電性付与剤の配合の有無や要求される導電性の程度などにより異なるが、その適切な溶解度パラメータ差で良好な2相構造、好ましくは共連続構造を形成するために、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの配合重量比は、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの合計を100重量部とした場合において、ポリアミド樹脂a5〜95重量部、ポリアミド樹脂b95〜5重量部、特にポリアミド樹脂a7〜93重量部、ポリアミド樹脂b93〜7重量部、とりわけポリアミド樹脂a9〜91重量部、ポリアミド樹脂b91〜9重量部とすることが好ましい。
また、難燃剤の配合量は、要求される難燃性の程度や導電性付与剤の配合の有無などによっても異なるが、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの合計100重量部に対して、10〜40重量部、特に15〜40重量部とりわけ15〜37重量部とすることが好ましい。
難燃剤の配合量が少な過ぎると十分な難燃性を得ることができず、多過ぎると成形性、機械的特性等のポリアミド樹脂本来の特性が損なわれる。特に、本発明では、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bのいずれか一方にのみ難燃剤を配合することで、難燃剤の少量配合で優れた難燃性を得るものであり、難燃剤の多量配合は本発明の目的に反するものである。
また、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物に更に導電性付与剤を配合する場合、導電性付与剤の配合量は、要求される導電性の程度によっても異なるが、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの合計100重量部に対して、0.05〜50重量部、特に0.075〜45重量部とりわけ0.01〜40重量部とすることが好ましい。導電性付与剤として導電性カーボンブラックを配合する場合は、ポリアミド樹脂bとの合計100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、3〜45重量部がより好ましく、5〜40重量部がさらに好ましい。導電性付与剤として中空炭素フィブリルを配合する場合は、0.05〜20重量部が好ましく、0.1〜15重量部がより好ましく、0.3〜10重量部がさらに好ましい。
導電性付与剤の配合量が少な過ぎると十分な導電性を得ることができず、多過ぎると成形性、機械的特性等のポリアミド樹脂本来の特性が損なわれる。特に、本発明では、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bのうち、難燃剤を配合しない他方にのみ導電性付与剤を配合することで、導電性付与剤の少量配合で優れた導電性を得るものであり、導電性付与剤の多量配合は本発明の目的に反するものである。
なお、前述のその他の添加剤を配合する場合、その配合量が少な過ぎると十分な配合効果が得られないが、多過ぎると成形性や機械的特性等が損なわれるため、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの合計100重量部に対して、その他の添加剤の合計で30重量部以下とすることが好ましい。
また、他の重合体を配合する場合、その配合量が多過ぎるとポリアミド樹脂本来の特性が損なわれることから、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの合計100重量部に対して、他の重合体の合計で1重量部以下とすることが好ましい。
[製造方法]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物を製造するには、まず、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとのいずれか一方の少なくとも一部に難燃剤を予め含有させた組成物(以下、この組成物を「難燃性マスターバッチ」と称す。)を製造する。この難燃性マスターバッチは具体的には、ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとのいずれか一方の少なくとも一部に難燃剤と必要に応じて配合されるその他の添加剤や重合体を添加して溶融混練することにより製造される。
難燃剤を予め混合するポリアミド樹脂は、溶解度パラメータの大きい方のポリアミド樹脂であっても小さい方のポリアミド樹脂であってもよく、また、ポリアミド5Xであっても、ポリアミド5X以外のポリアミド樹脂であってもよいが、好ましくはポリアミド5Xである。
また、難燃剤は、ポリアミド樹脂a又はポリアミド樹脂bの全量と混合してもよく、その一部と混合してもよいが、溶融混練時の安定性と難燃性に優れている点で、得られる難燃性マスターバッチの難燃剤含有量が10〜50重量%、特に15〜40重量%となるように調整することが好ましい。
一方、導電性付与剤を配合する場合は、別に、ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bのうち、難燃剤を配合しない方のポリアミド樹脂の少なくとも一部に導電性付与剤を予め含有させた組成物(以下、この組成物を「導電性マスターバッチ」と称す。)を製造する。この導電性マスターバッチは具体的には、難燃剤を含有させないポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとのいずれか他方の少なくとも一部に導電性付与剤と必要に応じて配合されるその他の添加剤や重合体を添加して溶融混練することにより製造される。
この導電性付与剤を予め混合するポリアミド樹脂は、溶解度パラメータの大きい方のポリアミド樹脂であっても小さい方のポリアミド樹脂であってもよく、また、ポリアミド5Xであっても、ポリアミド5X以外のポリアミド樹脂であってもよいが、導電性付与剤の導電性ネットワークを形成し易いことから、好ましくはポリアミド5Xである。
また、導電性付与剤はポリアミド樹脂a又はポリアミド樹脂bの全量と混合してもよく、その一部と混合してもよいが、溶融混練時の安定性と導電性が優れている点で、得られる導電性マスターバッチの導電性付与剤含有量が3〜70重量%、特に7〜65重量%となるように調整することが好ましい。
難燃性マスターバッチ又は導電性マスターバッチを製造する際の溶融混練手段としては、特に制限はなく、二軸押出機、単軸押出機などを用いることができる。
また、この溶融混練条件は、一般的なポリアミド樹脂を溶融混練する場合の条件でよく、例えば、使用するポリアミド樹脂の融点(DSC法で測定される吸熱ピークのピークトップ温度。この吸熱ピークが2つある場合はそのうち、温度の高い方の吸熱ピークのピークトップ温度)より5〜50℃程度高い温度設定で溶融混練することが好ましい。
このようにして、難燃性マスターバッチ、或いは難燃性マスターバッチと導電性マスターバッチとを製造した後は、次のようにして本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物を製造する。
・難燃性マスターバッチのみを用いる場合は、難燃性マスターバッチと難燃性マスターバッチの製造に用いなかった方のポリアミド樹脂と、難燃性マスターバッチの製造に用いたポリアミド樹脂の残部がある場合はその残部と、更に必要に応じて添加される添加剤や他の重合体を公知の混合手段で混合する。
・難燃性マスターバッチと導電性マスターバッチとを用いる場合は、難燃性マスターバッチと導電性マスターバッチと、難燃性マスターバッチ及び/又は導電性マスターバッチの製造に用いたポリアミド樹脂の残部がある場合はその残部と、更に必要に応じて添加される添加剤や他の重合体を公知の混合手段で混合する。
公知の混合手段としては特に制限はなく、例えば、二軸押出機や単軸押出機を用いる溶融混練方法、タンブラー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーを用いるドライブレンド等が挙げられる。溶融混練条件は、上記のマスターバッチ製造時の溶融混練条件と同様である。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、射出成形、フィルム成形、溶融紡糸、ブロー成形、真空成形等の任意の成形方法により、所望の形状に成形することができる。成形品としては、例えば、射出成形品、フィルム、シート、フィラメント、テーパードフィラメント、繊維等が挙げられる。
[難燃性]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、前述した比較的少ない難燃剤配合量でJIS K−7201に準拠して測定した臨界酸素指数(LOI)が26以上であり、かつUL−94規格VTM試験でVTM−0を満足する優れた難燃性を発現する。
[導電性]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物のうち、更に導電性付与剤を配合したものは、前述した比較的少ない導電性付与剤配合量で、体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以下、好ましくは1×10Ω・cm以下の優れた導電性を発現する。
[押出成形品]
次に、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物を用いる押出成形品について説明する。本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、公知の押出成形方法により、押出成形品を製造することができる。
公知の押出成形方法としては特に限定されず、例えば、Tダイを用いたフラットフィルム成形、水冷又は空冷インフレーションフィルム成形、チューブ成形、モノフィラメント成形、マルチフィラメント成形等が挙げられる。また、押出成形方法において使用する押出成形機としては、公知の単軸及び二軸押出機が挙げられる。
押出成形品の具体例としては、特に限定されず、例えば、釣り糸、漁網等の漁業関連資材、スイッチ類、超小型スライドスイッチ、ディップスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、結束バンド、電解コンデンサー、コンデンサーケース、モータの内部フィルム状部品、耐熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、工業用養生シート、プリンタリボンガイド等に代表される電気・電子関連部品、家庭・事務電気製品部品、コンピューター関連部品、ファクシミリ・複写機関連部品、機械関連部品等各種用途等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物を用いて得られる押出成形品は、高い難燃性、更には、導電性や帯電防止性が必要な部品や部材に好適である。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物を押出成形して得られるフィルムは、例えば、建築ないし設備メンテナンス用養生シートとして有用であり、このうち、導電性をも付与したものは、発塵を著しく低減する必要がある半導体製造現場の床、壁、天井を覆う養生シートに好適である。また、静電塗装を行う車両、航空機の塗装現場では、帯電防止性はもとより導電性を有する養生シートを用いることで、静電気のスパークによる火災の危険性を大幅に低減できる。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物をシート状に押出成形してなる本発明の押出成形品の厚みは、その用途に応じて異なり、任意の厚さとすることができるが、通常5〜200μm、好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μm、特に好ましくは30〜70μmである。この押出成形シートの厚みが過度に薄いとシートとしての強度が低下する傾向があり好ましくない。一方、押出成形シートの厚みが過度に厚いとシートとしての柔軟性が低下する傾向があるため好ましくない。
特に、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物をシート状に押出成形してなる押出成形品は、比較的薄いフィルム状であっても、前述のJIS K−7201によるLOIが26以上と、UL−94/VTM−0を満たす優れた難燃性を発現するものであり、各種用途に有用である。
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[各種物性ないしは特性の測定・評価方法]
(1)ポリアミド樹脂の相対粘度(η
ポリアミド樹脂の相対粘度(η)は、ポリアミド樹脂を98%硫酸に溶解した溶液(濃度:0.01g/ml)を調製し、25℃で、オストワルド式粘度計を使用して測定した。
(2)ポリアミド樹脂の吸熱ピーク温度
ポリアミド樹脂の吸熱ピーク温度は、示差走査熱量測定(DSC)法により、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製「Diamond DSC」)を使用して、窒素雰囲気下にて測定した。ポリアミド樹脂試料約5mgを予想される吸熱ピークのピークトップの温度(吸熱ピークが2つ存在する場合は、高温側の吸熱ピークのピークトップの温度)よりも50℃高い温度まで、20℃/分の速度で昇温し、3分間保持し試料を完全に融解させた後、降温速度20℃/分で30℃まで降温した。続いて、30℃で3分間保持した後、昇温速度20℃/分で昇温したときに観測される吸熱ピークのピークトップの温度を測定した。
(3)フィルムの体積固有抵抗値
下記記載の押出成形により得られたフィルムをカッターを用いて100mm×100mmに切り出し、その両端に銀ペーストを塗布後、23℃で30分間、風乾したものを試験片とした。
測定は、銀ペーストを塗布した両端面の間の抵抗を測定し、体積抵抗率を算出し、これを体積固有抵抗値とした。
尚、測定器は、株式会社三菱化学アナリテック製「ロレスタEP」及び株式会社三菱化学アナリテック製「ハイレスタUP」を使用した。体積抵抗値が10Ω・cm以下の場合は「ロレスタEP」を用い、それを超える時は「ハイレスタUP」を用いた。プローブはESP型を使用した。
「ハイレスタUP」はリング法を用い、500Vで1分間チャージを行い、測定開始から1分後の値を採用した。体積固有抵抗値が低いほど導電性が優れている。
(4)フィルムの難燃性試験
下記記載の押出成形により得られたフィルムを用い、UL94規格の薄手材料(フィルム/シート)の垂直燃焼試験(VTM試験)を実施した。
尚、当該試験結果は難燃性が優れている順にVTM−0、VTM−1、VTM−2と評価した。
(5)フィルムの臨界酸素指数(LOI)の測定
下記記載の押出成形により得られたフィルムを用い、東洋精機製作所製「OXYGEN INDEXER」にて、JIS K−7201に準拠して測定した。
(6)製膜性
下記記載の押出成形において、製膜性を下記基準で評価した。
○:10分間以上安定連続製膜可能
×:10分間以上安定連続製膜不可
[重縮合用モノマーの準備]
ε−カプロラクタム、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩(AH塩)、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミンは、いずれも以下の市販品を使用した。
ε−カプロラクタム:三菱化学株式会社製
アジピン酸:旭化成ケミカルズ株式会社製
アゼライン酸:cognis社製
セバシン酸:小倉合成株式会社製
AH塩:Rhodia社製
12−アミノドデカン酸:宇部興産株式会社製
ヘキサメチレンジアミン:旭化成ケミカルズ株式会社製
[重合用モノマーの調製]
以下の操作により、ペンタメチレンジアミンを調製した。
<ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液の調製>
cadA増幅株を用い、リジン・アジピン酸塩を原料とし、以下の方法でカダベリン・アジピン酸塩水溶液調製した。
E.coli JM109/pCAD1をLB培地入りフラスコ10本で前培養した後、1Lの培養液を99LのLB培地が入った200L容ジャーファーメンターに接種し、通気量0.5vvm、35℃、250rpmで通気撹拌培養を行った。
培養開始6時間後、この培養液全量を、3mの2×LB培地が入った5m容培養タンクに接種して更に培養を行った。5m容培養タンクでの培養条件は、通気量0.5vvm、35℃であった。撹拌回転数は溶存酸素濃度が十分高い値になるように60rpm〜100rpmの範囲で調節した。培養4時間目に、滅菌したIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を終濃度で0.5mMになるように添加し、その後14時間培養を継続した。
6,400rpm、フィード速度750L/hrの条件下で、アルファラバル分離機により培養液からの菌体回収を行った。回収された菌体の湿重量は36.9kgであった。この湿菌体を10mMの酢酸ナトリウム溶液160Lに懸濁した後、15,000rpm、フィード速度1.0L/minの条件下でシャープレス遠心機により再度菌体回収を行い、18.7kgの湿菌体を取得した。
50%(w/v)リジンベース溶液(協和醗酵工業株式会社製)にpHが6.0となるようにアジピン酸を添加して、リジン・アジピン酸塩の濃厚溶液を調製した。リジン濃度で60g/Lとなるように基質溶液(3m)を作成し、5m容培養タンクにはり込んだ。ピリドキサルリン酸を0.1mMとなるように基質溶液に添加し、さらにE.coli
JM109/pCAD1の菌体をOD660が0.5になるように添加して反応を開始した。
反応条件は、37℃、0.5vvm通気、70rpmとした。反応中の溶液のpHは、250kgのアジピン酸をイオン交換水400Lに懸濁したスラリーを添加し、6.5になるように制御した。
また、リジン濃度318g/Lの基質濃厚溶液(600L)を開始から約130L/hで連続的にフィードし、約4.5時間で全量を添加した。さらに反応を継続して計22時間反応させた。
反応終了時には、リジン残存濃度が0.03g/L以下であり、ほぼ100%のリジンがカダベリンに変換されていた。
反応後の溶液(約4m)は、菌体の不活化処理(80℃、30min)を実施したのち、分子量13,000以上をカットするUF膜モジュールACP−3053(旭化成工業株式会社製)を通して高分子量体の不純物除去を行った。
UF処理による回収率は99.3%であった。以上のようにして、ほぼカダベリンとアジピン酸をほぼ等モル含むペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を取得した。
<ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の精製・単離>
直径700mmの活性炭塔に三菱化学カルゴン株式会社製活性炭「MM−11」(105kg、約440L)を仕込み、2日間脱塩水を通水した。次に、上記のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液(約4m)を1.32m/hの速度で通液し、最後に500Lの脱塩水を通水した。初期460Lをパージした後、活性炭処理したペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を採取した。
活性炭処理前はペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液4076.5kg、含有するペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩603.9kgであった。活性炭処理後はペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液5029kg、含有するペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩603.7kgであった。
PPプリーツカートリッジフィルターTCP−JXを通して、前記活性炭処理後のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を2m撹拌槽に仕込み、ジャケット温度110℃、内温57℃、真空度140Torr〜150Torrにて濃縮を開始し、適宜、活性炭処理後のカダベリン・アジピン酸塩水溶液を仕込みながら濃縮を行った。
濃縮液の重量は918.4kg、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩濃度は63.5重量%であった。
尚、上記濃縮液等のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液中のペンタメチレンジアミン濃度は、1N−HCl水溶液にて滴定して、pHの変曲点までの滴定量から算出した。同様に上記濃縮液等のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液中のアジピン酸濃度は、1N−NaOH水溶液にて滴定して、pHの変曲点までの滴定量から算出した。滴定には、自動滴定装置(三菱化学株式会社製GT−06型)を使用した。
次に、同一の2m撹拌槽にて晶析を行った。撹拌翼は3枚後退翼、撹拌速度は40rpm、降温速度は8℃/hである。内温37.4℃のときに、予め作成したペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩を種晶として1kg添加して結晶を析出させ、内温10.5℃で晶析終了として、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩スラリーを得た。尚、種晶としてのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩は、本実施例に準じてラボスケールにて準備した。
直径1.22mの遠心濾過器を用い、前記ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩スラリーを3回に分けて遠心濾過した。回転数は980rpm、母液振り切り時間は15分、母液振り切り後に10℃の脱塩水約12kg(脱塩水約12kgは、予想wetケーキ重量の約20重量%分)をシャワー状に振りかけて洗浄し、その脱塩水の振り切り時間は15分間とした。
上記の操作により、種晶として、含水率が約15重量%のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩
を得た。
次いで、予め窒素置換した1mのステンレス製容器に、脱塩水(100kg)と、含水率が約15重量%のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩(250kg)とを仕込み、撹拌して溶解させた。
次に、この溶解液中に25重量%の水酸化ナトリウム水溶液(273.8kg)を仕込み、中和した(即ち、ペンタメチレンジアミンを脱塩して遊離アミンとした)。溶解液中に水酸化ナトリウム水溶液を仕込む際は、溶解液の内温が70℃を超えないように調整した。
中和処理を行った溶解液を、内温50℃、減圧度50Torrの条件で水を留去し、次いで、内温80℃、減圧度20Torrの条件でペンタメチレンジアミンを蒸留した。得られたペンタメチレンジアミンを内温80℃、減圧度20Torrの条件で再度蒸留を行い、ナトリウム含有率が約2ppmのペンタメチレンジアミンを得た。
[ポリアミド樹脂の製造]
(1)ポリアミド6
ε−カプロラクタム50kg、脱塩水1.5kg、及び亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素置換した後に100℃にて溶解した。この原料水溶液をオートクレーブに移送し、ジャケット温度を280℃に設定して加熱を開始した。内容物を270℃迄昇温した後、オートクレーブの圧力を徐々に放圧し、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後、窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットに対し、得られたペレットの1.5倍量の沸騰水を使用して未反応のモノマー、オリゴマーを抽出除去した。未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド6を得た。
ポリアミド6の相対粘度(η)は2.8、吸熱ピーク温度は224℃であった。
(2)ポリアミド12
12−アミノドデカン酸50kgと亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gをオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内の窒素置換を行った。その後、ジャケット温度を230℃に設定して加熱を開始した。内容物を220℃迄昇温した後、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧し、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で反応終了とした。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド12を得た。
ポリアミド12の相対粘度(η)は2.8、吸熱ピーク温度は182℃であった。
(3)ポリアミド56
濃度50重量%、数量100kgのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アジピン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。プランジャーポンプにて予め窒素置換したオートクレーブに、上記の原料水溶液を移送した。ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド56を得た。
ポリアミド56の相対粘度(η)は2.8、吸熱ピーク温度は232℃と255℃であった。
(4)ポリアミド59
濃度50重量%、数量100kgのペンタメチレンジアミン・アゼライン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アゼライン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。以降は(3)ポリアミド56の製造と同様にして、ポリアミド59を得た。
ポリアミド59の相対粘度(η)は2.8、吸熱ピーク温度は190℃と210℃であった。
(5)ポリアミド510
濃度50重量%、数量100kgのペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。以降は(3)ポリアミド56の製造と同様にして、ポリアミド510を得た。
ポリアミド510の相対粘度(η)は2.8、吸熱ピーク温度は176℃と219℃であった。
(6)ポリアミド6/66(6/66仕込み重量比=80/20)
ε−カプロラクタム40kgを容器に入れ、窒素置換した後に100℃にて溶解した。
この原料水溶液を第1のオートクレーブに移送し、ジャケット温度を270℃に設定して加熱を開始した。
濃度50重量%、数量20kgのヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液、及び亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを第2のオートクレーブに入れ、窒素置換した後に昇温を開始した。内容物の温度と圧力が、150℃、0.15MPaに到達するまでヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液の濃縮を行った。
第1のオートクレーブの内温が245℃に到達した時点で、第2のオートクレーブのヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を第1のオートクレーブに移送した。ジャケット温度を250℃に、オートクレーブの圧力を0.20MPaにそれぞれ調節し、内容物を240℃に昇温した。次に、オートクレーブの圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後、窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットに対し、得られたペレットの1.5倍量の沸騰水を使用して未反応のモノマー、オリゴマーを抽出除去した。未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド6/66(6/66仕込み重量比=80/20)を得た。
ポリアミド6/66の相対粘度(η)は2.8、吸熱ピーク温度は191℃であった。
(7)ポリアミド610
濃度50重量%、数量100kgのヘキサメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。プランジャーポンプにて予め窒素置換したオートクレーブに、上記の原料水溶液を移送した。ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド610を得た。
ポリアミド610の相対粘度(η)は2.8、吸熱ピーク温度は222℃であった。
(8)ポリアミド56/6(56/6仕込み重量比=80/20)
濃度50重量%、数量80kgのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アジピン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらにε−カプロラクタム10kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48g、及びペンタメチレンジアミン135gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ原料水溶液を得た。プランジャーポンプにて予め窒素置換したオートクレーブに、上記の原料水溶液を移送した。ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットに対し、得られたペレットの1.5倍量の沸騰水を使用して未反応のモノマー、オリゴマーを抽出除去した。未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド56/6(56/6仕込み重量比=80/20)を得た。
ポリアミド56/6の相対粘度(η)は3.5、吸熱ピーク温度は181℃と216℃であった。
[難燃剤及び導電性付与剤の準備]
<難燃剤>
難燃剤としては、ジエチルホスフィン酸アルミニウム塩(クラリアント社製「OP1240」)用いた。
<導電性付与剤>
中空炭素フィブリルとしては、DBP吸油量256ml/100gの三菱化学(株)製カーボンナノチューブ「MC−4」を用いた。
導電性カーボンブラックとしては、DBP吸油量495ml/100gのライオン製ケッチェンブラック「EC600JD」を用いた。
[難燃性マスターバッチの製造]
二軸押出機(日本製鋼所製「TEX−30α」)を用い、表2〜4に示すポリアミド樹脂と上記難燃剤とをシリンダ設定温度265℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量20kg/時間で溶融混練して難燃剤含有量30重量%の難燃性マスターバッチを製造した。
[導電性マスターバッチの製造]
二軸押出機(日本製鋼所製「TEX−30α」)を用い、表2〜4に示すポリアミド樹脂と導電性付与剤とをシリンダ設定温度265℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量20kg/時間で溶融混練して、中空炭素フィブリル含有量12重量%又は導電性カーボンブラック含有量60重量%の導電性マスターバッチを製造した。
[実施例1〜32、比較例1〜14]
<実施例1〜11,13〜32、比較例1〜14>
表2〜4に示す難燃性マスターバッチとポリアミドペレット又は難燃性マスターバッチと導電性マスターバッチ、或いは難燃性マスターバッチ及び導電性マスターバッチとポリアミドペレットを、表2〜4に示す配合で、回転式タンブラーを用いてドライブレンドした。該ブレンド物を120℃の減圧乾燥機で8時間乾燥後、先端に600mm幅のTダイを装着した直径40mm単軸押出機で、シリンダ温度270℃で押出し、ダイス温度275℃、ロール温度60℃で、厚み50μmのフラットフィルムに押出成形した。
<実施例12>
表2に示す難燃性マスターバッチとポリアミドペレットとを表2に示す配合で、二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用いてシリンダ温度265℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間で溶融混練して混練物とした。該混練物を120℃の減圧乾燥機で8時間乾燥後、先端に600mm幅のTダイを装着した直径40mm単軸押出機で、シリンダ温度270℃で押出し、ダイス温度275℃、ロール温度60℃で、厚み50μmのフラットフィルムに押出成形した。
実施例1〜32及び比較例1〜14で得られたフラットフィルムについて、各評価を行い、結果を表5〜7に示した。
なお、表5〜7には、用いた2種類のポリアミド樹脂の溶解度パラメータ差の絶対値|SPa−SPb|と、得られた難燃性ポリアミド樹脂組成物の各成分含有量を併記した。
Figure 0005565034
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以上の結果より、本発明によれば、少ない難燃剤配合量で高い難燃性を示す難燃性ポリアミド樹脂組成物を得ることができ、更に少ない導電性付与剤配合量で高い導電性を示す難燃性ポリアミド樹脂組成物を得ることができることが分かる。

Claims (13)

  1. ポリアミド樹脂aと、該ポリアミド樹脂aとは異なる溶解度パラメータを有するポリアミド樹脂bとを含むポリアミド樹脂組成物であって、
    該ポリアミド樹脂a及び/又はポリアミド樹脂bが、ポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510及びポリアミド56/6よりなる群から選ばれる少なくとも一種のポリアミド樹脂(以下、このポリアミド樹脂を「ポリアミド5X」と称す。)を含み、
    ポリアミド樹脂aとポリアミド樹脂bとの合計を100重量部とした場合において、ポリアミド5Xが9重量部以上であり、
    該ポリアミド樹脂aの溶解度パラメータSPaと、該ポリアミド樹脂bの溶解度パラメータSPbとの差の絶対値が0.65〜2.33の範囲であり、
    ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bの相対粘度(ηr)が1.5〜5.5であり、
    該ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bのいずれか一方の少なくとも一部は、予め難燃剤を含有する組成物として配合されていることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  2. 請求項1において、JIS K−7201に準拠して測定した臨界酸素指数(LOI)が26以上であり、かつUL−94規格VTM試験での難燃性がVTM−0を満足することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2において、予め難燃剤を含有させない前記ポリアミド樹脂a及びポリアミド樹脂bのいずれか他方の少なくとも一部は、予め導電性付与剤を含有する組成物として配合されていることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  4. 請求項3において、体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記難燃剤が、フォスフィン酸塩類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  6. 請求項3ないし5のいずれか1項において、前記導電性付与剤が、導電性カーボンブラック及び中空炭素フィブリルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  7. 請求項3ないし6のいずれか1項において、前記ポリアミド樹脂a5〜95重量部と前記ポリアミド樹脂b95〜5重量部との合計100重量部に対して、前記難燃剤10〜40重量部と、前記導電性付与剤0.05〜50重量部とを含むことを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項において、前記ポリアミド樹脂a及び/又はポリアミド樹脂bが、ポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510及び56/6からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  9. 請求項8において、前記ポリアミド樹脂aがポリアミド510及びポリアミド56/6のいずれか一方であり、前記ポリアミド樹脂bがポリアミド510及びポリアミド56/6のいずれか他方であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項において、前記ポリアミド樹脂a及び/又はポリアミド樹脂bは、DSC法による測定で2つの吸熱ピークを有することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  11. 請求項10において、前記2つの吸熱ピークのピークトップ温度差が5〜50℃であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  12. 請求項1ないし11のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物を厚み5〜200μmのシート状に押出成形してなる押出成形品。
  13. 請求項12に記載の押出成形品よりなる建築ないし設備メンテナンス用養生シート。
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