JP2005239811A - 離型性に優れた樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】界面活性剤をポリアミド重合時に少量添加することで、ポリフェニレンエーテル/ポリアミドアロイの耐熱性等の物性を維持しながら、離型性とMDの抑制という特性を同時に満足させた樹脂組成物及び成形品を提供する。
【解決手段】ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ゴム状重合体及び界面活性剤を含む樹脂組成物であり、界面活性剤がポリアミドの重合時に添加された熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】選択図なし。

Description

本発明は射出成形時の金型からの離型性に優れ、且つ射出成形時に金型へ付着する成分(モールドデポジット:以下単にMDと略記)の発生が大幅に抑制できる熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法に関する。また本発明はそれからなる成形体にも関する。
本発明の組成物は、電気・電子部品、OA部品、車両部品、機械部品などの幅広い分野に使用することができ、中でも特に自動車部品に好適に使用することができる。
ポリフェニレンエーテルは機械的性質・電気的性質及び耐熱性が優れており、しかも寸法安定性に優れるため幅広い用途で使用されている。しかしながら、単独では成形加工性に劣っており、これを改良するためにポリアミドを配合する技術が古くから提案されている。(特許文献1参照)
ポリアミドとポリフェニレンエーテルからなるポリマーアロイは、その優れた流動性と耐熱性を評価され、例えば自動車用のリレーブロックやコネクターといった非常に精密な構造をした成形体に使用されている。近年の自動車の高度電装化により、その構造はますます複雑になりつつあり、従来からの材料では成形時に金型から離型しにくくなり、連続成形ができないといったトラブルが発生し、結果的に、成形不良率の増大、トラブルによる成形サイクルの長時間化といった問題点が顕在化してきている。
ポリアミド/ポリフェニレンエーテルアロイの離型性を改良するための技術は、過去において提案されている。
例えば、モンタン酸金属塩を0.1〜3重量部配合する技術(特許文献2参照)、同じくモンタン酸金属塩を配合しリレーボックス材料として適した組成物を得る技術(特許文献3参照)、スルホン酸塩を添加して光沢、金型転写性、離型性を向上する技術(特許文献4参照)等が開示されている。
これら技術により、確かに離型性は向上するものの、数千ショットを超える連続成形を実施したとき、モールドデポジットと呼ばれる析出物が金型のエアー抜き部等に発生するため、金型清掃の為に金型の分解掃除を実施しなければならなくなるという新たな問題点が発生し、新たな技術が待望されていた。
特公昭45−997号公報 特開平5−163429号公報 特開平6−136256号公報 特開平10−36683号公報
本発明は、界面活性剤をポリアミド重合時に添加することで、離型性とMD発生の抑制という特性を同時に満足させたポリアミド/ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及び成形品を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、界面活性剤をポリアミド重合時に添加することにより、少量の添加で離型性を大きく改善でき、更にMDの発生が大幅に抑制される事を見いだし本発明に到達した。
すなわち本発明は、(A)ポリアミド、(B)ポリフェニレンエーテル、(C)ゴム状重合体、及び(D)界面活性剤を含む樹脂組成物であり、(D)成分が(A)成分の重合時に添加されてなる事を特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関する。
以下、本発明で使用することのできる各成分について詳細に説明する。
本発明で(A)成分として使用することのできるポリアミドの種類は、ポリマー主鎖中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、いずれも使用することができる。
一般にポリアミドは、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合などによって得られるが、これらに限定されるものではない。
上記ジアミンとしては大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジアミンが挙げられ、具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルナノメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸としては、大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジカルボン酸が挙げられ、具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。
ラクタム類としては、具体的にはεカプロラクタム、エナントラクタム、ωラウロラクタムなどが挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、具体的にはεアミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノナノン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸などが挙げられる。
本発明においては、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ωアミノカルボン酸は、単独あるいは二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類はいずれも使用することができる。
特に本発明で有用に用いることのできるポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミド6MXD(m−キシリレンジアミン)、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド6・6/6・T、ポリアミド6・6/6・I、ポリアミド6/6・T/6・I、ポリアミド6・6/6・T/6・I、ポリアミド6/12/6・T、ポリアミド6・6/12/6・T、ポリアミド6/12/6・I、ポリアミド6・6/12/6・Iなどが挙げられ、複数のポリアミドを押出機等で共重合化したポリアミド類も使用することができる。好ましいポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/6・6及び、それらの混合物であり、最も好ましくはポリアミド66である。
本発明において使用可能な(D)界面活性剤に関しては、特に制限はなく、非イオン系、アニオン系、カチオン系及び両性系のもののいずれでも使用可能である。使用可能な界面活性剤としては、例えば、「14303の化学商品」(2003年1月28日,化学工業日報社発行)の1336〜1367頁に記載されているような公知の界面活性剤はすべて使用可能である。これらの中でもより好ましく使用できるものは、アニオン系界面活性剤である。アニオン系の中でも、特にアルキルスルホン酸塩が好ましく使用することができ、中でも炭素数が10以上の30未満のアルキル基を有するスルホン酸塩が好ましい。市販されているアルキルスルホン酸塩の実例を挙げると、クラリアント社等から入手可能なラウリルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
また、使用する界面活性剤の好ましい性状を挙げると、熱分解開始温度が200℃以上の界面活性剤が好ましく、更に好ましくは250℃以上の界面活性剤である。押出加工時に界面活性剤の散逸を防止し、離型性を少量添加で維持するためには、200℃以上に熱分解開始温度を有する界面活性剤を使用する事が望ましい。
ここでいう分解開始温度とは、熱天秤測定装置を用いて、窒素雰囲気下で30℃から500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温した際の、5%重量が減少した時の温度を指す。
本発明においては、(A)成分を重合する際に、(D)成分,界面活性剤を添加して重合する事が必須である。好ましくは、A成分を形成するモノマーに(D)成分を添加して、重合する方法が挙げられる。
界面活性剤のポリアミドへの添加量は、ポリアミド100重量部に対して0.01〜10重量部である。好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.07〜3重量部、最も好ましくは、0.1〜1重量部である。
離型性の向上効果を得るためには0.01重量部以上の添加が望ましく、高重合度のポリアミドを得るためには10重量部以下の添加量とする事が望ましい。
本発明の方法を実施するには、ポリアミドを形成するモノマーに界面活性剤を所定量添加し、通常のポリアミドの重合に準じた条件で重合すればよい。重合は、高重合度のポリアミドが得られるまで行なう必要があり、ISO307に従い96%硫酸中で測定した粘度数が90〜130ml/gの範囲のものが得られるようにする事が好ましい。より好ましくは100〜125ml/gの範囲である。
本発明においては上記した範囲外の粘度数を持つポリアミドの混合物であっても、その混合物の粘度数が上記した範囲内に入っていれば問題なく使用可能である。例えば、粘度数150ml/gのポリアミドと粘度数80ml/gのポリアミドの混合物、粘度数120ml/gのポリアミドと粘度数115ml/gのポリアミドの混合物等が挙げられる。これらの場合においても、その混合物の粘度数を実測し、上記範囲内であれば構わない。これら混合物の粘度数が上記範囲内に有るか否かは、混合する重量比で96%硫酸に溶解して、ISO307に従い粘度数を測定することで容易に確認することができる。
ポリアミド混合物のなかで特に好ましい混合形態は、各々のポリアミドが粘度数90〜139ml/gの範囲内にあり、かつ粘度数の異なるポリアミドの混合物である。
ポリアミド成分が混合物である場合、少なくとも1つ以上のポリアミドが界面活性剤を重合時に添加して重合したポリアミドである必要がある。
ポリアミドの末端基は、官能化ポリフェニレンエーテルとの反応に関与する。ポリアミド樹脂は末端基として一般にアミノ基、カルボキシル基を有しているが、一般的にカルボキシル基濃度が高くなると、一般的に耐衝撃性が低下し、流動性が向上し、逆にアミノ基濃度が高くなると耐衝撃性が向上し、流動性が低下する。
本願における、これらの好ましい比はアミノ基/カルボキシル基濃度比で、9/1〜1/9であり、より好ましくは8/2〜1/9、更に好ましくは6/4〜1/9である。
また、末端のアミノ基の濃度としては少なくとも1×10mol/g以上であることが好ましい。更に好ましくは1×10以上、4×10mol/kg以下である。
末端のカルボキシル基の濃度としては少なくとも9×10mol/g以上であることが好ましい。更に好ましくは9×10以上、13×10mol/kg以下である。
これらポリアミド樹脂の末端基の調整方法は、当業者には明らかであるような公知の方法を用いることができる。例えばポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるようにジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物などから選ばれる1種以上を添加する方法が挙げられる。
また、本発明においては、ポリアミド樹脂の耐熱安定性を向上させる目的で公知となっている特開平1−163262号公報に記載されてあるような金属系安定剤も、問題なく使用することができる。
これら金属系安定剤の中で特に好ましく使用することのできるものとしては、CuI、CuCl 、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等が挙げられる。また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるアルカリ金属のハロゲン化塩も好適に使用することができる。これらは、もちろん併用添加しても構わない。
金属系安定剤および、又はアルカリ金属のハロゲン化塩の好ましい配合量は、合計量としてポリアミド樹脂の100重量部に対して、0.001〜1重量部である。
これらの添加方法は、特に制限はないが、重合時にモノマーと共存させて重合しても、押出加工時に固体あるいは、水等に溶解した液体として加えても構わない。
また、本発明においては、上述した金属系安定剤の他に、公知の有機安定剤も問題なく使用することができる。有機安定剤の例としては、イルガノックス1098等に代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤、イルガフォス168等に代表されるリン系加工熱安定剤、HP−136に代表されるラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
これら有機安定剤の中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、もしくはその併用がより好ましい。
これら有機安定剤の好ましい配合量は、ポリアミド樹脂の100重量部に対して、0.001〜1重量部である。
さらに、上記の他にポリアミドに添加することが可能な公知の添加剤等もポリアミド100重量部に対して10重量部未満の量で添加してもかまわない。
本発明で使用できる成分(B)ポリフェニレンエーテルとは、式(1)の構造単位からなる、ホモ重合体及び/または共重合体である。
Figure 2005239811
〔式中、Oは酸素原子、Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、又はハロ炭化水素オキシ(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表わす。〕
本発明のポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されてあるような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
本発明で用いるポリフェニレンエーテルの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
本発明で使用することのできるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dl/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dl/gの範囲、より好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
本発明においては、ポリフェニレンエーテルを変性したものであることがより好ましい。ここでいう変性されたポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたポリフェニレンエーテルを指し、国際公開特許WO02/094936号公報に記載されてある変性されたポリフェニレンエーテルはすべて使用可能である。
変性されたポリフェニレンエーテルの形態は、粉体状でも粒状でも構わないが、粒状である方がより望ましい。
また、混合されたポリフェニレンエーテルにおける変性されたポリフェニレンエーテルの量比に特に制限はないが、好ましくは、10〜95重量%(すべてのポリフェニレンエーテルを100%とした場合)であり、より好ましくは30〜90重量%、最も好ましくは45〜85重量%である。
本発明に使用できるポリフェニレンエーテルは、重合溶媒に起因する有機溶剤が、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して5重量%未満の量で残存していても構わない。これら重合溶媒に起因する有機溶剤は、重合後の乾燥工程で完全に除去するのは困難であり、通常数百ppmから数%の範囲で残存しているものである。ここでいう重合溶媒に起因する有機溶媒としては、トルエン、キシレンの各異性体、エチルベンゼン、炭素数1〜5アルコール類、クロロホルム、ジクロルメタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の1種以上が挙げられる。
また、本発明では、スチレン系熱可塑性樹脂をポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100重量部に対し、50重量部未満の量であれば配合しても構わない。
本発明でいうスチレン系熱可塑性樹脂とは、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。
また、ポリフェニレンエーテルの安定化の為に公知となっている各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤であり、これらの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して5重量部未満である。
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な公知の添加剤等もポリフェニレンエーテル100重量部に対して10重量部未満の量で添加しても構わない。
本発明で用いることができる(C)成分ゴム状重合体としては、天然ゴム又はジエン系合成ゴム、例えばポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
また、本発明においては(C)成分ゴム状重合体が、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体(以下、単にブロック共重合体と略記)であることがより好ましい。
芳香族ビニル化合物の具体例としてはスチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
本発明におけるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(a)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(b)がa−b型、a−b−a型、a−b−a−b型のから選ばれる結合形式を有するブロック共重合体である事が好ましい。これらはもちろん混合物であっても構わない。
これらの中でもa−b−a型、a−b−a−b型がより好ましく、更にはa−b−a型が最も好ましい。
結合形式の異なるブロック共重合体混合物の好ましい混合形態は、a−b−a型ブロック共重合体とa−b型ブロック共重合体の混合物、a−b−a型とa−b−a−b型ブロック共重合体の混合物、a−b−a−b型とa−b型のブロック共重合体の混合物等が挙げられる。
また、本発明で使用することのできるブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を0を越えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は50%以上であり、より好ましくは80%以上、最も好ましくは98%以上である。
これらブロック共重合体は水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
また、本発明においては、国際公開特許WO02/094936号公報に記載されてあるような、全部又は一部が変性されたブロック共重合体や、オイルがあらかじめ混合されたブロック共重合体も好適に使用することができる。
さらに、本発明においては、(E)成分として導電性フィラーを添加しても構わない。導電性フィラーを添加する事により導電性が必要な用途へ適用することが可能となる。
本発明で使用可能な導電性フィラーは、添加することで樹脂組成物の導電性を低下させることが可能なものであれば特に制限はなく、炭素系フィラー、金属系フィラー等が挙げられる。中でもより好ましいのは、炭素系フィラーである。
炭素系フィラーの中でも、特に導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバー等に代表されるカーボンフィブリル、炭素繊維、グラファイトが好ましく使用でき、これらの中でも特に導電性カーボンブラック、カーボンフィブリルが特に好適に使用可能である。もちろんこれらは、混合物であっても問題なく使用可能である。
本発明で使用可能な導電性カーボンブラックとしては、WO01/081473号公報に導電用カーボンブラックとして記載されているカーボンブラック等が挙げられる。市販されている導電性カーボンブラックの一例を挙げると、ケッチェンブラックインターナショナル社から入手可能なケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC600JD等が挙げられる。
また、本発明で使用可能なカーボンフィブリルとしては、国際公開特許WO94/023433号公報に記載されている微細なカーボンフィブリルが挙げられる。市販されているカーボンフィブリルとしてはハイペリオンキャタリストインターナショナル社から入手可能なBNフィブリル等が挙げられる。
これら導電性フィラーの好ましい添加量は、樹脂組成物を100とした際に、0.5〜3重量%である。より好ましくは1.0〜2.5重量%である。
本発明で使用する導電性フィラーの好ましい添加形態は、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ブロック共重合体から選ばれる1種以上の樹脂中にあらかじめ混合されたマスターバッチの形態で添加する事である。混合方法に特に制限はないが、押出機を使用した溶融混練が最も好ましい。より好ましくは、250〜300℃に設定した2箇所以上の供給口を備えた同方向回転二軸押出機を用いて、上流側供給口より樹脂を供給し溶融混練した後、下流側供給口より導電性フィラーを供給し溶融混練する方法が挙げられる。この際に樹脂温度は340℃未満にする事がより望ましい。
該マスターバッチ中の導電性フィラーの好ましい配合量は5〜30重量%である。より好ましくは8〜25重量%である。該マスターバッチは市販しているものを使用しても構わない。市販品のマスターバッチの例としては、ハイペリオンキャタリストインターナショナル社から入手可能なポリアミド66/カーボンフィブリルマスターバッチ(商品名:Polyamide66 with Fibril TM Nanotubes RMB4620−00:カーボンフィブリル量20%)等が挙げられる。
本発明においては、相溶化剤を使用しても構わない。本発明で、使用することが可能な相溶化剤は、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物の物理的性質を改良するものであれば特に制限はない。本発明で使用できる相溶化剤とは、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドまたはこれら両者と相互作用する多官能性の化合物を指すものである。この相互作用は化学的(たとえばグラフト化)であっても、または物理的(たとえば分散相の表面特性の変化)であってもよい。
いずれにしても得られるポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物は改良された相溶性を示す。
本発明において使用することのできる相溶化剤の例としては、特開平8−8869号公報及び特開平9−124926号公報等に詳細に記載されており、これら公知の相溶化剤はすべて使用可能であり、併用使用も可能である。
これら、種々の相溶化剤の中でも、特に好適な相溶化剤の例としては、マレイン酸またはその誘導体、クエン酸またはその誘導体、フマル酸またはその誘導体、及びこれらによりあらかじめ変性されたポリフェニレンエーテルペレットが挙げられる。
本発明で使用できる相溶化剤の好ましい形態に特に制限はないが、粉体形状よりも、粒子形状のほうが取り扱い性に優れるため好ましい。具体的には無水マレイン酸のような刺激臭が伴う相溶化剤を使用する際は、粉体状より粒状の方が臭気が低減し、作業環境を悪化させにくくなるためより好ましい。
これら相溶化剤の好ましい粒子サイズは、直径1mm以上の粒状である。より好ましくは直径1mm〜10mmの粒状の形態である。好ましくは直径3〜8mmの粒状の形状である。直径10mm以下であれば押出機への供給に問題が発生する恐れがなくなる。
本発明における相溶化剤の好ましい量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの混合物100重量部に対して0.01〜25重量部である。より好ましくは、0.05から10重量部、最も好ましくは、0.1〜5重量部である。
本発明では、上記した成分のほかに、本成分の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。
付加的成分の例としては、ポリエステル、ポリオレフィン等の他の熱可塑性樹脂、無機充填材(タルク、カオリン、ゾノトライト、ワラストナイト、酸化チタン、チタン酸カリウム、炭素繊維、ガラス繊維など、)、無機充填材と樹脂との親和性を高める為の公知のシランカップリング剤、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、三酸化アンチモン等の難燃助剤、カーボンブラック等の着色剤、カーボンファイバー、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等である。
これらの成分の具体的な添加量は、(A)〜(D)成分の合計量100重量部に対して、合計で100重量部を越えない範囲である。
本発明の樹脂組成物を得るための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも二軸押出機が好ましく、特に、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えた二軸押出機が最も好ましい。
具体的な樹脂組成物の製造方法としては、上流側に1カ所及び下流側に少なくとも1カ所の供給口を備えた二軸押出機を用い、上流側供給口よりポリフェニレンエーテル及び/または官能化ポリフェニレンエーテル、ゴム状重合体、必要に応じて相溶化剤、ポリスチレン、ポリアミド等を供給し、溶融混練した後、下流側供給口よりポリアミド、必要に応じてゴム状重合体を添加し、溶融混練する方法等が挙げられる。
この際の押出機のスクリュー径としては特に制限はないが、好ましいのは約20mm以上約200mm以下である。より好ましくは、約40mm以上約125mm以下であり、最も好ましいのは約50mm以上約100mm未満である。
また、押出機のL/Dは約20以上約60未満が好ましく、約30以上約60未満がより好ましく、約40以上約60未満が最も好ましい。
押出機における下流側供給口の好ましい位置は、第一の下流側供給口が押出機の上流側供給口の位置を起点とし、シリンダー長さを100とした際に、約30〜約70の範囲内の位置である。
また、製法上の都合により、第二の下流側供給口を設置する必要があれば、約40〜約90の範囲内の位置(第一の下流側供給口よりは下流側に位置する)に存在させることが望ましい。具体的には例えばL/Dが40の押出機の場合、好ましい第一の下流側供給口の位置は、L/Dが約12〜約28の位置であり、第二の下流側供給口の位置はL/Dが約16〜約36の位置である。
溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常約240〜約360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。好ましくは約260℃〜約320℃の範囲内であり、特に下流側供給口までを約280℃〜約320℃とし、下流側供給口以降を約260〜約290℃の範囲内とする事が望ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形方法に特に制限はなく、一般的な射出成形、インジェクションプレス成形、ガスインジェクション成形、コンプレッション成形、フィルム成形、押出成形等、公知の成形方法が適用可能である。
次に、例によって本発明を詳細に説明する。
使用した原料
(A)ポリアミド及び(D)界面活性剤
(ポリアミド−1) 界面活性剤0.4重量%を重合時添加したポリアミド(PA−1)
アジピン酸10kgとヘキサメチレンジアミン10kgの混合物に対して、5kgの水と(D)成分としてラウリルスルホン酸ナトリウム(クラリアント社製、商標SAS93)を0.4重量%で配合し、これを内容量50リットルの反応槽に入れ、撹拌しながら18kg/cmの圧力に昇圧し、270℃まで加熱した。その後、270℃の加熱状態で常圧まで放圧し、270℃で1時間重合した。重合の終了した時点で反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断して(D)成分を(A)成分の重合時に添加したポリアミドペレットとした。[以下、単にPA−1と略記]
(ポリアミド−2) 界面活性剤0.8重量%を重合時添加したポリアミド(PA−2)
(D)ラウリルスルホン酸ナトリウムの添加量を0.8重量%に変更した以外はすべて実施例1と同様に重合を実施してポリアミドペレットを得た。[以下、単にPA−2と略記]
(ポリアミド−3) 界面活性剤非添加のポリアミド(PA−3)
(D)成分を配合せず、他はPA−1と同様に重合を行い、ポリアミドペレットを得た[以下、単にPA−3と略記]
(B)ポリフェ二レンエーテル
還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が0.52dl/gの[ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)][以下PPEと略記]
また、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルペレットは、還元粘度0.42dl/gのポリフェニレンエーテル100重量部に無水マレイン酸3重量部及び過酸化物0.1重量部をドライブレンドし、ZSK−40押出機[コペリオン社(ドイツ)製,L/D=42]で樹脂温度320℃で溶融混練し、得られたペレットを用いた。[以下、単にMPPEと略記]このときのポリフェニレンエーテルへの無水マレイン酸の付加量は、0.5重量%であった。(クロロホルムにペレットを溶解し、アセトン中に再沈殿させ、濾過して、未反応の無水マレイン酸を除去し、濾別された樹脂を更にクロロホルムに溶解し、キャストフィルムを作成した。得られたフィルムをフーリエ変換赤外線スペクトロメーターを用いて測定し、カルボン酸に由来する吸光度と、ポリフェニレンエーテルに由来する吸光度の比を算出し、あらかじめ作成しておいた検量線を元に付加量を確定した。)
(C)ゴム状重合体
数平均分子量246,000のスチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(結合スチレン量33%)[以下単にSEBSと略記]
(E)導電性カーボンブラック
ケッチェンブラックEC600JD(ケッチェンブラックインターナショナル(株)製)[以下単にKB]
相溶化剤
無水マレイン酸 [以下MAHと略記]
[実施例1〜5及び比較例1〜3]
上流側に1箇所と下流側(L/D=23の位置)に1箇所の合計2箇所の供給口を有するL/D=48の同方向回転二軸押出機(ZSK25:コペリオン社製,12の温度調節ブロックを有する)を用い、各供給口より、各原料を表1記載の割合で混合したものをそれぞれ供給し、溶融混練してペレットを得た。このときのシリンダー温度は、上流側供給口に位置する温度調節ブロック1は水冷とし、温度調節ブロック2及び3は250℃、温度調節ブロック4〜7は320℃、温度調節ブロック8〜12は280℃、ダイは315℃に設定した。また、吐出量は15kg/hになるように各フィーダーを調節した。また、スクリュー回転数は300rpmで実施した。
得られたペレットを、FN3000射出成形機[日精樹脂(株)製]に、図1に示すような離型力測定装置を取り付けたカップ状成形品用金型を取り付け、成形する際の突き出しピン(エジェクターピン)にかかる力(離型力)をロードセルにて測定した。
この時の射出成形機のシリンダー温度は290℃であり、金型温度は80℃であった。このときの射出圧力はカップ状成形品が充填できる最小圧力に設定し、更に射出時の最高圧力の70%の保圧をかけて成形した。射出時間は10秒、成形サイクルは30秒であった。また、離型力の測定は連続した50ショットで測定を行い、その加算平均値とした。
次に、得られたペレットをシリンダー温度290℃及び金型温度90℃に設定したIS80EPN射出成形機[東芝機械社製]を用いて、ASTM D648−95に準拠した試験片厚みが約3.2mmの試験片の連続成形を実施した。5000ショット後の金型面を観察し、MD発生の状況を目視で確認し、3段階評価を行った。結果は表1に記載した。
なお、評価基準は以下の通りである。
A:ほとんどMDの発生が認められない。
B:エア抜き部にMDが発生している。
C:キャビティー内にもMDが発生し、成形片に痕が残る。
Figure 2005239811
本発明の樹脂組成物及び成形体は、離型性及びMDの抑制に優れ、更に機械的物性、耐熱性、流動性のバランスにも優れ、自動車用リレーブロック材料はもちろんのこと、電気・電子部品、OA部品、機械部品及び、オートバイ・自動車の外装部品や内装部品などの幅広い分野にも好適に用いることができる。
本発明の実施例、比較例の離型力を測定する金型の構造模式図である。
符号の説明
1 スプルー
2 カップ状成形品
3 エジェクターピン
4 ロードセル
5 エジェクターロッド

Claims (17)

  1. (A)ポリアミド、(B)ポリフェニレンエーテル、(C)ゴム状重合体及び(D)界面活性剤を含む熱可塑性樹脂組成物であり、(D)成分が(A)成分の重合時に添加されてなる事を特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. (A)成分100重量部に対し、(D)成分が0.01〜10重量部である事を特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. (A)〜(C)成分の量が、それぞれ(A)成分30〜70重量%、(B)成分20〜50重量%および(C)成分5〜30重量%である事を特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. (D)成分が、アニオン系界面活性剤である事を特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. (A)成分を形成するモノマーに、(D)成分が添加されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. (C)成分が、芳香族ビニル化合物ブロック(a)と共役ジエン化合物ブロック(b)よりなるa−b−a型及び/またはa−b−a−b型ブロック共重合体の水素添加物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. (E)導電性フィラーを更に含む事を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. (A)〜(C)成分の合計100重量部に対して、(E)成分が0.1〜3重量部である請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. (E)成分が炭素系フィラーである請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  10. (E)成分が、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭素繊維、グラファイトから選ばれる1種以上である請求項7〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  11. 請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物よりなる成形体。
  12. 請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物よりなる自動車用リレーブロック。
  13. 請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物よりなる自動車外装材。
  14. (A)〜(D)成分を含み、(D)成分が(A)成分の重合時に添加されてなる事を特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  15. (A)成分を形成するモノマーに、(D)成分が添加されることを特徴とする請求項14に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  16. (D)成分として用いる界面活性剤が、アニオン系界面活性剤である事を特徴とする請求項14または15に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  17. (E)成分を更に含む事を特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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