JP5581767B2 - 導電性熱可塑性樹脂組成物、導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法、及びこれより得られる射出成形品並びに押出成形品 - Google Patents
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Description
また近年では、電気絶縁性であるポリアミド樹脂に導電性を付与した導電性ポリアミド樹脂組成物が、自動車外装材を中心とした静電塗装用途、電気・電子部品を中心とした静電気防止用途、導電用途等に用いられている。
また、これらの導電性物質は熱可塑性樹脂に比べ高価であり、経済性の観点からも、少量の導電性物質の添加で、より高い導電性を有する熱可塑性樹脂組成物が望まれている。
(1)二種類以上の熱可塑性樹脂と導電性付与剤とを含有する導電性熱可塑性樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂が、ポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510及びポリアミド56/6からなる群より選ばれた少なくとも1種のポリアミド樹脂(以下「ポリアミド5X」と称す。)であり、前記導電性付与剤が導電性カーボンブラック及び中空炭素フィブリルからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、上記ポリアミド5Xの中で、最も配合量の多いポリアミド5Xを「熱可塑性樹脂a」とし、該導電性熱可塑性樹脂組成物に用いられる、上記熱可塑性樹脂a以外の熱可塑性樹脂の中で、最も配合量の多い熱可塑性樹脂を「熱可塑性樹脂b」としたとき、前記熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとの重量比が、熱可塑性樹脂a/熱可塑性樹脂bとして、82/18〜48/52の範囲に
あり、前記熱可塑性樹脂aの溶解度パラメータ値と、前記熱可塑性樹脂bの溶解度パラメータ値との差の絶対値が、0.65以上、2.33以下で、前記導電性熱可塑性樹脂組成物の総量を100重量%としたとき、前記導電性付与剤の含有量が0.01重量%〜65重量%である導電性熱可塑性樹脂組成物。
(2)前記熱可塑性樹脂aと前記熱可塑性樹脂bとは、それぞれ異なり、かつポリアミド510及びポリアミド56/6から選ばれるものである上記(1)に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
(3)前記熱可塑性樹脂aと前記熱可塑性樹脂bの少なくとも一方の樹脂の末端アミノ基濃度が16μeq/g〜100μeq/gである上記(1)又は(2)に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
(4)前記熱可塑性樹脂aの相対粘度をηrel(a)、前記熱可塑性樹脂bの相対粘度を
ηrel(b)とした場合に、これらの相対粘度が下記式を満たす上記(1)〜(3)のい
ずれかに記載の導電性熱可塑性樹脂組成物、但し、相対粘度は、25℃、濃度0.01g/ml、溶媒:98%硫酸の条件で測定した値とする。
ηrel(a)>ηrel(b)
ηrel(a)=1.5〜6.5
ηrel(b)=1.5〜6.5
(5)前記熱可塑性樹脂a及び前記熱可塑性樹脂bを含む熱可塑性樹脂成分と、前記導電性付与剤とを溶融混練する上記(1)に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(6)前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bと前記導電性付与剤とを溶融混練して混合物とし、次いで、該混合物と前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とを溶融混練する前記(1)に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(7)前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bと前記導電性付与剤とを溶融混練して混合物とし、次いで、該混合物と前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とをドライブレンドする上記(1)に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(8)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる射出成形品。
(9)射出成形品の体積固有抵抗値が1.00×108Ω・cm以下であることを特徴とする上記(8)に記載の射出成形品。
(10)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる押出成形品。
(11)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる導電性フィルム。
(12)厚さが5μm〜200μmである上記(11)に記載の導電性フィルム。
(13)体積固有抵抗値が1.00×108Ω・cm以下である上記(11)又は(12)に記載の導電性フィルム。
[組成物の原材料]
<熱可塑性樹脂>
本発明では少なくとも二種類の熱可塑性樹脂を使用し、その樹脂として、主としてペンタメチレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂(以下「ポリアミド5X」と称す。)を少なくとも含むものである。
上記ポリアミド5X以外の熱可塑性樹脂としては、特に限定はされないが、混和性や導電性の向上効果、あるいは求められる物性等を考慮すれば、ポリアミド樹脂を用いるのが好適である。
本発明に用いることができる樹脂について、以下説明する。
本発明においては、主としてペンタメチレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂、即ちポリアミド5Xを必須成分として使用する。
ここで「主としてペンタメチレンジアミンを含むジアミン」とは、ポリアミド5Xを構成するジアミン由来の単位として、ペンタメチレンジアミン由来の単位が、ポリアミド5X中の50重量%以上含まれることを言い、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
ジアミンとして、ペンタメチレンジアミン以外に使用できるジアミンは、例えばエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミン;キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン、等の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
ポリアミド5Xとしては、用いるジカルボン酸の炭素数(X)によって種々のポリアミド5Xがあるが、好ましくはポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510であり、中でもポリアミド56が、物性のバランスが良好であるため特に好ましい。
ポリアミド5X以外のポリアミド樹脂としては、ポリアミド5Xを与えることになるペンタメチレンジアミン或いはδ−バレロラクタム以外のジアミンやラクタム類を除いては、上述したジアミン類やラクタム類を用いることができる。
また、ジカルボン酸としては上記のジカルボン酸を特に制限なく用いることができる。
このような、ポリアミド5X以外のポリアミド樹脂としては、ポリアミド6(いわゆる6ナイロン)、ポリアミド66(いわゆる6,6ナイロン)やポリアミド610、ポリアミド12(いわゆる12ナイロン)などが例示できる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、ポリアミド5X以外の熱可塑性樹脂として、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、上記「その他のポリアミド樹脂」以外の熱可塑性樹脂を用いることができる。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
本発明においては、本発明の組成物に含まれる熱可塑性樹脂から、主な成分として用いられている2つの熱可塑性樹脂を選定して、これらの溶解度パラメータ値(以下「SP値」と記す)の差の絶対値が特定の範囲にあることを特徴としている。
(1)ポリアミド5Xと、それ以外の熱可塑性樹脂との二つに分けて、それぞれのSP値に基づいて集計する。この時同じ区分内であれば樹脂が異なっていてもSP値が同じであれば、その配合量を合算する。
(2)ポリアミド5Xの区分の中で、最大の配合量のポリアミド5X(群)を選択し、これを「熱可塑性樹脂a」とし、そのSP値を「SP(a)」とする。なお、最大の配合量となり得るポリアミド5X(群)が複数存在する場合は、その全てを熱可塑性樹脂aとする。この時のSP値は、各ポリアミド5XのSP値の算術平均を取り、これをSP(a)とする。
(3)次に、上記で選定した熱可塑性樹脂aを除いて、全てのポリアミド5X及び熱可塑性樹脂の中から、最大の配合量の熱可塑性樹脂(群)を選択し、これを「熱可塑性樹脂b」とし、そのSP値を「SP(b)」とする。
(4)上記(3)において、「熱可塑性樹脂b」となり得る熱可塑性樹脂(群)の候補が複数ある場合(配合量が同一でSP値が異なる樹脂(群))は、前記SP(a)との差の絶対値が、より小さくなる熱可塑性樹脂(群)を、「熱可塑性樹脂b」とする。
この△SP値のより好ましい範囲は、0.5以上、3.2以下であり、更に好ましい範囲は0.8以上、2.7以下であり、特に好ましい範囲は、1.2以上、2.2以下である。
一方△SP値が3.7を超えて過度に大きい場合は、熱可塑性樹脂組成物の主成分である熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとの相溶性が低下して、良好な成形品が得られなかったり、成形品表面が不均一になることがある。
また熱可塑性樹脂bとしては、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミド5Xであることが更に好ましい。特に好ましいのはポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510等である。 特に、前記熱可塑性樹脂aと前記熱可塑性樹脂bとが、それぞれ異なり、かつポリアミド510及びポリアミド56/6から選ばれるものであること、即ち、「熱可塑性樹脂a:熱可塑性樹脂b」の組み合わせが、「ポリアミド510:ポリアミド56/6」又は「ポリアミド56/6:ポリアミド510」のいずれかであることが好ましい。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は良好な導電性を示すものであるが、これは、必須成分として用いられるポリアミド5Xの結晶形態が影響している可能性があると推定できる。即ち、ポリアミド5Xはγ型結晶を有する傾向にあるが、一般的に使用されているポリアミド6、ポリアミド66等はα型結晶のみを有する傾向にある。γ型結晶はα型結晶に比べて結晶サイズが小さく、上記の導電パスを遮断する傾向が低くなり、かつ上記のSP値差によって微視的レベルでの相界面が形成され、この界面部分に導電性付与剤が集まることで、更に導電パスが形成されやすくなるものと推定される。
本発明に用いる熱可塑性樹脂a及び熱可塑性樹脂bの少なくとも一方の樹脂の末端アミノ基濃度は、16μeq/g〜100μeq/gであるのが好ましく、更に好ましくは20μeq/g〜90μeq/g、特に好ましくは25μeq/g〜80μeq/g、中でも特に好ましくは30μeq/g〜70μeq/である。
この末端アミノ基濃度を調整するためには、仕込原料組成の微調整やモノカルボン酸やモノアミンを少量配合することが効果的である。例えば、末端アミノ基濃度を増加するためには仕込原料中のジアミンのモル数をジカルボン酸のモル数より多くするか、或いはモノアミンを添加しておくことで可能であり、一方、末端アミノ基濃度を減少させるためには、仕込原料中のジアミンのモル数をジカルボン酸のモル数より少なくするか、又はモノカルボン酸を添加することにより可能である。
また、高い導電性を得るためには、熱可塑性樹脂aの25℃における98%硫酸に溶解した溶液(濃度:0.01g/ml)の相対粘度をηrel(a)、同様に熱可塑性樹脂bの相対粘度をηrel(b)とした場合に、ηrel(a)>ηrel(b)であり、ηrel(a)≧3.0である事が好ましい。
(導電性付与剤の配合量)
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、導電性付与剤を含有している。ここで用いることができる導電性付与剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官能基を有する高分子帯電防止剤等の有機化合物の他に、カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維、金属粉未、金属酸化物等の無機物等が挙げられる。特に、比較的少量の添加で、高い導電性が発現し、かつ導電性と耐衝撃性のバランスに優れると共に良好な外観が得られることから、導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリルが好ましい。
また、導電性付与剤の配合量としては、導電性熱可塑性樹脂組成物中における含有量として、該導電性熱可塑性樹脂組成物100重量%中、0.01重量%〜65重量%とするのが好ましく、より好ましくは0.05重量%〜60重量%、更に好ましくは0.1重量%〜55重量%であり、特に好ましくは0.5重量%〜55重量%、中でも特に好ましくは1重量%〜30重量%である。
本発明で好ましく使用する導電性付与剤の一つとしては導電性カーボンブラックが挙げられる。この導電性カーボンブラックとしては、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、30ml/100g以上のものが好ましく、より好ましくは100ml/100g以上のカーボンブラックが挙げられる。 本発明で好ましく用いられる導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック等が挙げられる。
これらの導電性カーボンブラックは、ペイント等に着色目的で加える顔料用カーボンブラックとは異なり、通常微細な粒子が連なった形態(ストラクチャ)を有している。
本発明で好ましく使用する導電性付与剤の一つとしては中空炭素フィブリルが挙げられる。この中空炭素フィブリルとしては、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、200ml/100g以上であるものが好ましく、より好ましくは400ml/100g以上である中空炭素フィブリルが挙げられる。
<熱可塑性樹脂の組成>
本発明は二種類以上の熱可塑性樹脂と導電性付与剤とを含有する導電性熱可塑性樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂が、主としてペンタメチレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂(以下「ポリアミド5X」と称す。)を少なくとも含み、上記ポリアミド5Xの中で、最も配合量の多いポリアミド5Xを「熱可塑性樹脂a」とし、該導電性熱可塑性樹脂組成物に用いられる、上記熱可塑性樹脂a以外の熱可塑性樹脂の中で、最も配合量の多い熱可塑性樹脂を「熱可塑性樹脂b」としたとき、前記熱可塑性樹脂aの溶解度パラメータ値と、前記熱可塑性樹脂bの溶解度パラメータ値との差の絶対値が、0.2以上、3.7以下である導電性熱可塑性樹脂組成物である。
また、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物における、熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとの含有割合は、熱可塑性樹脂a/熱可塑性樹脂b(重量比)として、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、30/70〜70/30が更に好ましい。この時、50/50よりも熱可塑性樹脂aが多くなる組み合わせが、特に好ましい。
なお、導電性付与剤の組成物への配合量は、既に「導電性付与剤」の項において記載した通りである。
本実施の導電性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、強化材等が挙げられる。
酸化防止剤又は熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、ホスファイト系化合物及びこれらの置換体等が挙げられる。
耐候剤としては、レゾルシノール系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
離型剤又は滑剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素化合物、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
染料としては、ニグロシン、アニリンブラック等が挙げられる。
結晶核剤としては、タルク、シリカ、カオリン、クレー等が挙げられる。
可塑剤としては、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
難燃剤としては、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等が挙げられる。
強化材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、窒化硼素、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム等が挙げられる。
これらは、原料となる熱可塑性樹脂を製造(重縮合、重合)する工程から、導電性熱可塑性樹脂組成物の成形に至るまでの任意の段階で、その添加量、添加工程等を適宜選択して、添加すればよい。
次に、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、前述した通り、ポリアミド樹脂5Xから選定される熱可塑性樹脂a、該熱可塑性樹脂aとは異なる溶解度パラメータを有する熱可塑性樹脂b、導電性付与剤、及び必要に応じて配合される各種の添加剤を混合することにより製造することができる。
具体的な混合方法としては、例えば以下のような方法が挙げられる。
(1)前記熱可塑性樹脂a、前記熱可塑性樹脂b、導電性付与剤及び所望の添加剤を、一括して溶融混練又はドライブレンドする方法
(2)予め熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bと導電性付与剤とを溶融混練して混合物(以下、「導電剤マスターバッチ」と記すことがある)とし、次いで、該混合物と熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とを溶融混練する方法
(3)予め熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bと導電性付与剤とを溶融混練して混合物(導電剤マスターバッチ)とし、次いで、該混合物と前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とをドライブレンドする方法
なお、上記「前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部」とは、導電剤マスターバッチを用いる場合、所定の配合量から、導電剤マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bの分を差し引いた分を、その後の溶融混練又はドライブレンドに用いて最終的な熱可塑性樹脂組成物を製造することになるため、当該所定の配合量から導電剤マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bの量を差し引いた、それぞれの熱可塑性樹脂の量を言うものである。
<成形品>
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、フィルム成形、溶融紡糸、ブロー成形、或いは真空成形等の任意の成形方法により、所望の形状に成形することができる。成形品としては、例えば、射出成形品、フィルム、シート、フィラメント、テーパードフィラメント、繊維等が挙げられる。
次に、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を用いる射出成形方法及び得られる射出成形品について説明する。
射出成形に用いる射出成形機は、特に限定されず、例えば日精樹脂工業株式会社製:NEX80型や東芝機械株式会社製:IS80等が挙げられる。
射出成形の際の射出成形条件は特に限定されず、用いる熱可塑性樹脂a、熱可塑性樹脂b等の主成分として含まれる熱可塑性樹脂の成形条件の範囲から適宜選択される。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物から得られる射出成形品の具体例としては、自動車用部品を例に取れば、フロントエンドモジュール、ラジエーターマウント、ボディー・バンパーリテーナー、インテークマニホールド、ヒンジ付きクリップ(ヒンジ付き成形品)、結束バンド、レゾネータ、エアークリーナ、エンジンカバー、ロッカーカバー、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、ガソリンタンク、ガソリンサブタンク、ラジエータータンク、インタークーラータンク、オイルリザーバータンク、オイルパン、電動パワステギヤ、オイルストレーナ、キャニスタ、エンジンマウント、ジャンクションブロック、リレーブロック、ECUケース、コネクタ、コルゲートチューブ、プロテクター等のアンダーフード部品;ドアハンドル、フェンダー、フードバルジ、ルーフレールレグ、ドアミラーステー、バンパ、スポイラ、ホイールカバー等の外装部品;カップホルダ、コンソールボックス、アクセルペダル、クラッチペダル、シフトレバー台座、シフトレバーノブ、電磁波シールド部品等の内装部品等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物から得られるフロントエンドモジュール、ラジエーターマウント、ボディー・バンパーリテーナー等は、安定した導電性と耐熱性を達成でき好ましい用途である。
次に、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を用いる押出成形方法及び得られる押出成形品について説明する。
押出成形の具体的な成形方法は特に限定されず、例えば、Tダイを用いたフラットフィルム成形、水冷または空冷インフレーションフィルム成形、チューブ成形、モノフィラメント成形、マルチフィラメント成形等を用いることができる。また押出成形機としては、特に限定されず、一般的な単軸および二軸押出機等を用いることができる。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物から得られる押出成形品の具体例としては、例えば、釣り糸、漁網等の漁業関連資材、スイッチ類、超小型スライドスイッチ、ディップスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、結束バンド、電解コンデンサー、コンデンサーケース、モータの内部フィルム状部品、耐熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、工業用養生シート、プリンタリボンガイド等に代表される電気・電子関連部品、家庭・事務電気製品部品、コンピューター関連部品、ファクシミリ・複写機関連部品、機械関連部品等各種用途等が挙げられる。
[評価・測定方法]
(1)熱可塑性樹脂の相対粘度(ηrel)
熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いる場合、その相対粘度(ηrel)は、98%硫酸を溶媒として用いた濃度0.01g/mlの溶液について、25℃にてオストワルド式粘度計を使用して測定した(単位:dl/g)。
熱可塑性樹脂の融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC:セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC)を使用して、窒素雰囲気下にて測定した。熱可塑性樹脂の試料約5mgを完全に融解させ、3分間保持した後、降温速度20℃/分で30℃まで降温し、続いて30℃で3分間保持した後、昇温速度20℃/分で昇温したときに観測される吸熱ピークの温度を融点(Tm)とした。吸熱ピークが複数ある場合は、最も高い温度を融点(Tm)とした。
射出成形品の場合は、ASTM−D638に準拠した引張試験片の両端を、剪定ハサミで切断し、12.7mm×50mm×3mm厚の短冊を切り出し、短冊の両端面(12.7mm×3mm)に銀ペーストを塗布して、23℃で30分間、風乾したものを試験片とした。
測定器は、株式会社三菱化学アナリテック製「ロレスタEP」および株式会社三菱化学アナリテック製「ハイレスタUP」を使用した。体積固有抵抗値が106Ω・cm以下の場合は「ロレスタEP」を用い、それを超える時は「ハイレスタUP」を用いた。プローブはESP型を使用した。
体積固有抵抗値が低いほど導電性が優れていると評価される。
また、押出成形したフィルムを測定する場合は、試料フィルムから、カッターを用いて100mm×100mmのサンプルを切り出し、その両端に銀ペーストを塗布し、23℃で30分間風乾したものを試料とした。
この銀ペーストを塗布した両端面間の抵抗を測定して体積抵抗率を算出し、これを体積固有抵抗値とした。測定器については上記射出成形品の場合と同様の機器を使用し、やはり同様にして抵抗測定を実施した。
(1)重縮合用単量体成分
1)ε−カプロラクタム、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、AH塩(ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩)、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミンは、いずれも市販品を使用した。
アジピン酸:旭化成ケミカルズ株式会社製
アゼライン酸:コグニス(cognis)社製
セバシン酸:小倉合成株式会社製
AH塩:ローディア(Rhodia)社製
12−アミノドデカン酸:宇部興産株式会社製
ヘキサメチレンジアミン:旭化成ケミカルズ株式会社製
ペンタメチレンジアミンは、以下の手順により調製した。
まず初めに、特開2008−189918号公報(段落[0108]〜[0113])に記載されたカダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)の1番晶を得る方法と同様の操作を行い、含水率が約15重量%のカダベリン・アジピン酸塩(ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩)を得た。
予め窒素置換した1m3のステンレス製容器に、脱塩水(100kg)と、含水率が約15重量%のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩(250kg)とを仕込み、撹拌して溶解させた。
中和処理を行った溶解液を、内温50℃、減圧度50torr(6.5kPa)の条件で水を留去し、次いで、内温80℃、減圧度20torr(2.6kPa)の条件でぺンタメチレンジアミンを蒸留した。得られたペンタメチレンジアミンを内温80℃、減圧度20torr(2.6kPa)の条件で再度蒸留を行い、ナトリウム含有率が約2ppmのペンタメチレンジアミンを得た。
1)ポリアミド6(PA6)
ε−カプロラクタム50kg、脱塩水1.5kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素置換した後に100℃にて溶解した。この原料水溶液をオートクレーブに移送し、ジャケット温度を280℃に設定して加熱を開始した。
内容物を270℃迄昇温した後、オートクレーブの圧力を徐々に放圧し、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後、窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットに対し、その1.5倍量の沸騰水を使用して未反応のモノマー、オリゴマーを抽出除去した。未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド6(PA6)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は224℃であった。
12−アミノドデカン酸50kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gをオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内の窒素置換を行った。その後、ジャケット温度を230℃に設定して加熱を開始した。
内容物を220℃迄昇温した後、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧し、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で反応終了とした。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド12(PA12)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は182℃であった。
濃度50重量%で100kgのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アジピン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットを120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥して、ポリアミド56(PA56)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は255℃であった。
濃度50重量%、100kgのペンタメチレンジアミン・アゼライン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アゼライン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。
以後、上記ポリアミド56の製造方法と同様にして、ポリアミド59(PA59)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は210℃であった。
濃度50重量%で100kgのペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。
以後、ポリアミド56の製造方法と同様にして、ポリアミド510(PA510)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は218℃であった。
ε−カプロラクタム40kgを容器に入れ、窒素置換した後に100℃にて溶解した。この原料水溶液をオートクレーブ(a)に移送し、ジャケット温度を270℃に設定して加熱を開始した。
濃度50重量%のヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液20kg、及び亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gをオートクレーブ(b)に入れ、窒素置換した後に昇温を開始した。内容物の温度と圧力が、150℃、0.15MPaに到達するまでヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液の濃縮を行った。
オートクレーブ(a)の内温が245℃に到達した時点で、オートクレーブ(b)のヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液をオートクレーブ(a)に移送した。ジャケット温度を250℃に、オートクレーブの圧力を0.20MPaにそれぞれ調節し、内容物を240℃に昇温した。次に、オートクレーブの圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド6/66(PA6/66)(6/66仕込み重量比=80/20)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は191℃であった。
濃度50重量%で100kgのヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド66(PA66)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は264℃であった。
濃度50重量%で100kgのヘキサメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド610(PA610)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は222℃であった。
ポリアミド6I/6Tは、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製X21を使用した。
濃度50重量%で100kgのペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド510−2を得た。末端アミノ基濃度は43μeq/g、相対粘度(ηrel)は2.5、融点(Tm)は218℃であった。
濃度50重量%で100kgのペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48g、酢酸74gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド510−3を得た。末端アミノ基濃度は15μeq/g、相対粘度(ηrel)は2.5、融点(Tm)は218℃であった。
濃度50重量%で80kgのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アジピン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらにε−カプロラクタム10kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48g、ペンタメチレンジアミン135gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。
濃度50重量%で80kgのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アジピン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらにε−カプロラクタム10kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
濃度50重量%で100kgのヘキサメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド610−2を得た。末端アミノ基濃度は44μeq/g、相対粘度(ηrel)は2.5、融点(Tm)は224℃であった。
(1)導電性付与剤
導電性付与剤として、中空炭素フィブリルと導電性カーボンブラックを使用した。
中空炭素フィブリルとしては、DBP吸油量256ml/100gの三菱化学株式会社製カーボンナノチューブMC−4を用いた。
また、導電性カーボンブラックとしては、DBP吸油量495ml/100gのライオン株式会社製「ケッチェンブラックEC600JD」(以下「CB−1」と記す)、及びDBP吸油量140ml/100gの三菱化学株式会社製「カーボンブラック#3230MJ」(以下「CB−2」と記す)を用いた。なお上記「#3230MJ」は原油を原料としてファーネス式不完全燃焼法により製造された導電性カーボンブラックである。
二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用い、表2又は表3に示す組成の導電性付与剤とポリアミド樹脂とをシリンダ設定温度265℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量20kg/hrの条件で溶融混練し、導電剤マスターバッチを調製した。
[導電性熱可塑性樹脂組成物及び成形品の製造]
(実施例1〜実施例6、実施例9〜実施例10、比較例1〜比較例3、比較例7、比較例8)
表2に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2に示す配合で、回転式タンブラーを用いてドライブレンドし、ブレンド物とした後、該ブレンド物をASTM−D638に準拠した引張試験片金型を搭載した射出成形機(日精樹脂工業株式会社製:NEX80型)にてシリンダ温度260℃、金型温度80℃で射出成形を行った。
得られた射出成形品(引張試験片)を用いて体積固有抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
表2(実施例15〜18については表3)に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2(実施例15〜18については表3)に示す配合で、回転式タンブラーを用いてドライブレンドし、ブレンド物とした後、該ブレンド物を先端に600mm幅のTダイを装着した直径40mm単軸押出機を用いて、シリンダ温度270℃で押し出し、ダイス温度275℃、ロール温度60℃で、厚み50μmのフラットフィルムに押出成形し、得られたフラットフィルムの体積固有抵抗値を測定した。但し、比較例9では製膜性が悪くフィルムを得ることができなかったため、以後の評価を行うことができなかった。
結果を表2(実施例15〜18については表3)に示す。
表2に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2に示す配合で、ニ軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用いてシリンダ温度265℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間で溶融混練し、混練物とし、該混練物をASTM−D638に準拠した引張試験片金型を搭載した射出成形機(日精樹脂工業株式会社製:NEX80型)にてシリンダ温度260℃、金型温度80℃で射出成形を行った。
得られた射出成形品(引張試験片)を用いて体積固有抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
表2に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2に示す配合で、ニ軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用いてシリンダ温度265℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間で溶融混練し、混練物とし、該混練物を先端に600mm幅のTダイを装着した直径40mm単軸押出機で、シリンダ温度270℃で押し出し、ダイス温度275℃、ロール温度60℃で、厚み50μmのフラットフィルムに押出成形した。
このフラットフィルムの体積固有抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
表2に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2に示す配合で、回転式タンブラーを用いてドライブレンドし、ブレンド物とし、該ブレンド物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製:NEX80型)にてシリンダ温度260℃で、ASTM−D638に準拠した引張試験片金型を搭載して金型温度80℃で射出成形を行った。しかし、ポリアミド樹脂(ベースPA)と導電剤マスターバッチとの相溶性が悪く、得られた成形品の表面が剥離状に荒れてしまい、体積固有抵抗値を測定することが出来なかった。結果を表2に示す。
表2に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2に示す配合で、回転式タンブラーを用いてドライブレンドし、ブレンド物とし、該ブレンド物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製:NEX80型)にてシリンダ温度270℃で、ASTM−D638に準拠した引張試験片金型を搭載し、金型温度80℃で射出成形を行った。
得られた射出成形品(引張試験片)を用いて体積固有抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
更に、表3から、本発明の範囲を満たす末端アミノ基濃度の熱可塑性樹脂を用いることにより、体積固有抵抗値が低い成形品が得られていることが判る。
また、本発明の導電性熱可塑性組成物から得られるシート類は、電磁波シールド用材料として用いても有効である。
Claims (13)
- 二種類以上の熱可塑性樹脂と導電性付与剤とを含有する導電性熱可塑性樹脂組成物であって、
該熱可塑性樹脂が、ポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510及びポリアミド56/6からなる群より選ばれた少なくとも1種のポリアミド樹脂(以下「ポリアミド5X」と称す。)であり、
前記導電性付与剤が導電性カーボンブラック及び中空炭素フィブリルからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
上記ポリアミド5Xの中で、最も配合量の多いポリアミド5Xを「熱可塑性樹脂a」とし、該導電性熱可塑性樹脂組成物に用いられる、上記熱可塑性樹脂a以外の熱可塑性樹脂の中で、最も配合量の多い熱可塑性樹脂を「熱可塑性樹脂b」としたとき、
前記熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとの重量比が、熱可塑性樹脂a/熱可塑性樹脂bとして、82/18〜48/52の範囲にあり、
前記熱可塑性樹脂aの溶解度パラメータ値と、前記熱可塑性樹脂bの溶解度パラメータ値との差の絶対値が、0.65以上、2.33以下で、
前記導電性熱可塑性樹脂組成物の総量を100重量%としたとき、前記導電性付与剤の含有量が0.01重量%〜65重量%であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。 - 前記熱可塑性樹脂aと前記熱可塑性樹脂bとは、それぞれ異なり、かつポリアミド510及びポリアミド56/6から選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂aと前記熱可塑性樹脂bの少なくとも一方の樹脂の末端アミノ基濃度が16μeq/g〜100μeq/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂aの相対粘度をηrel(a)、前記熱可塑性樹脂bの相対粘度をηrel(b)とした場合に、これらの相対粘度が下記式を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物、但し、相対粘度は、25℃、濃度0.01g/ml、溶媒:98%硫酸の条件で測定した値とする。
ηrel(a)>ηrel(b)
ηrel(a)=1.5〜6.5
ηrel(b)=1.5〜6.5 - 前記熱可塑性樹脂a及び前記熱可塑性樹脂bを含む熱可塑性樹脂成分と、前記導電性付与剤とを溶融混練することを特徴とする請求項1に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bと前記導電性付与剤とを溶融混練して混合物とし、次いで、該混合物と前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とを溶融混練することを特徴とする請求項1に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bと前記導電性付与剤とを溶融混練して混合物とし、次いで、該混合物と前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とをドライブレンドすることを特徴とする請求項1に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる射出成形品。
- 射出成形品の体積固有抵抗値が1.00×108Ω・cm以下であることを特徴とする請求項8に記載の射出成形品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる押出成形品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる導電性フィルム。
- 厚さが5μm〜200μmであることを特徴とする請求項11に記載の導電性フィルム。
- 体積固有抵抗値が1.00×108Ω・cm以下であることを特徴とする請求項11又は12に記載の導電性フィルム。
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