JP5581767B2 - 導電性熱可塑性樹脂組成物、導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法、及びこれより得られる射出成形品並びに押出成形品 - Google Patents

導電性熱可塑性樹脂組成物、導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法、及びこれより得られる射出成形品並びに押出成形品 Download PDF

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Description

本発明は、導電性熱可塑性樹脂組成物、導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法、及びこれより得られる射出成形品並びに押出成形品に係り、詳しくは、比較的少量の導電性付与剤の添加により、良好な導電性を有する熱可塑性樹脂組成物に関する。
ポリアミド樹脂は、成形性、耐薬品性、引っ張り強さ、曲げ強さ等の機械的性質や、耐摩耗性等に優れ、電気・電子部品、機械部品、自動車部品等広範な分野で使用されている。
また近年では、電気絶縁性であるポリアミド樹脂に導電性を付与した導電性ポリアミド樹脂組成物が、自動車外装材を中心とした静電塗装用途、電気・電子部品を中心とした静電気防止用途、導電用途等に用いられている。
例えば特許文献1には、自動車の外板など、静電塗装により塗装される用途に好適な導電性を有すると共に、機械的強度、成形加工性に優れた導電性ポリアミド樹脂組成物が報告されている。
特開2004−182866号公報
一般に、熱可塑性樹脂に添加される導電性付与剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官能基を有する高分子帯電防止剤等の有機化合物の他に、カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維、金属粉未、金属酸化物等の無機物等が挙げられる。特に、比較的少量の添加でも、高い導電性が発現し、良好な外観が得られることから、導電性カーボンブラックや中空炭素フィブリルが広く使用されている。
しかしながら、導電性カーボンブラックや中空炭素フィブリルを多量に配合すると、耐衝撃性や成形加工性(流動性)が低下する等の問題点があり、これを補って、低下した耐衝撃性を向上するためにエラストマーを配合すると、今度は成形品の強度、剛性が低下する等の問題が発生する。
また、これらの導電性物質は熱可塑性樹脂に比べ高価であり、経済性の観点からも、少量の導電性物質の添加で、より高い導電性を有する熱可塑性樹脂組成物が望まれている。
本発明の目的は、少量の導電性物質を添加した場合でも、より高い導電性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
本発明によれば、下記に示すような導電性熱可塑性樹脂組成物、導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法、及びこれに基づく射出成形品及び押出成形品が提供される。
(1)二種類以上の熱可塑性樹脂と導電性付与剤とを含有する導電性熱可塑性樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂が、ポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510及びポリアミド56/6からなる群より選ばれた少なくとも1種のポリアミド樹脂(以下「ポリアミド5X」と称す。)であり前記導電性付与剤が導電性カーボンブラック及び中空炭素フィブリルからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、上記ポリアミド5Xの中で、最も配合量の多いポリアミド5Xを「熱可塑性樹脂a」とし、該導電性熱可塑性樹脂組成物に用いられる、上記熱可塑性樹脂a以外の熱可塑性樹脂の中で、最も配合量の多い熱可塑性樹脂を「熱可塑性樹脂b」としたとき、前記熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとの重量比が、熱可塑性樹脂a/熱可塑性樹脂bとして、82/18〜48/52の範囲に
あり、前記熱可塑性樹脂aの溶解度パラメータ値と、前記熱可塑性樹脂bの溶解度パラメータ値との差の絶対値が、0.65以上、2.33以下で、前記導電性熱可塑性樹脂組成物の総量を100重量%としたとき、前記導電性付与剤の含有量が0.01重量%〜65重量%である導電性熱可塑性樹脂組成物。
(2)前記熱可塑性樹脂aと前記熱可塑性樹脂bとは、それぞれ異なり、かつポリアミド510及びポリアミド56/6から選ばれるものである上記(1)に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
(3)前記熱可塑性樹脂aと前記熱可塑性樹脂bの少なくとも一方の樹脂の末端アミノ基濃度が16μeq/g〜100μeq/gである上記(1)又は(2)に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
(4)前記熱可塑性樹脂aの相対粘度をηrel(a)、前記熱可塑性樹脂bの相対粘度を
ηrel(b)とした場合に、これらの相対粘度が下記式を満たす上記(1)〜(3)のい
ずれかに記載の導電性熱可塑性樹脂組成物、但し、相対粘度は、25℃、濃度0.01g/ml、溶媒:98%硫酸の条件で測定した値とする。
ηrel(a)>ηrel(b)
ηrel(a)=1.5〜6.5
ηrel(b)=1.5〜6.5
(5)前記熱可塑性樹脂a及び前記熱可塑性樹脂bを含む熱可塑性樹脂成分と、前記導電性付与剤とを溶融混練する上記(1)に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(6)前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bと前記導電性付与剤とを溶融混練して混合物とし、次いで、該混合物と前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とを溶融混練する前記(1)に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(7)前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bと前記導電性付与剤とを溶融混練して混合物とし、次いで、該混合物と前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とをドライブレンドする上記(1)に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(8)上記(1)〜()のいずれかに記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる射出成形品。
(9)射出成形品の体積固有抵抗値が1.00×10Ω・cm以下であることを特徴とする上記()に記載の射出成形品。
(10)上記(1)〜()のいずれかに記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる押出成形品。
(11)上記(1)〜()のいずれかに記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる導電性フィルム。
(12)厚さが5μm〜200μmである上記(11)に記載の導電性フィルム。
(13)体積固有抵抗値が1.00×10Ω・cm以下である上記(11)又は(12)に記載の導電性フィルム。
本発明によれば、同量の導電性付与剤を添加した樹脂組成物と比較して、より高い導電性を有する熱可塑性樹脂組成物が得られる。この導電性を有する熱可塑性樹脂組成物は、例えば、電気・電子部品や、自動車外装材をはじめとする広範囲の分野に利用できるものである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[組成物の原材料]
<熱可塑性樹脂>
本発明では少なくとも二種類の熱可塑性樹脂を使用し、その樹脂として、主としてペンタメチレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂(以下「ポリアミド5X」と称す。)を少なくとも含むものである。
上記ポリアミド5X以外の熱可塑性樹脂としては、特に限定はされないが、混和性や導電性の向上効果、あるいは求められる物性等を考慮すれば、ポリアミド樹脂を用いるのが好適である。
本発明に用いることができる樹脂について、以下説明する。
(ポリアミド5X)
本発明においては、主としてペンタメチレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂、即ちポリアミド5Xを必須成分として使用する。
ここで「主としてペンタメチレンジアミンを含むジアミン」とは、ポリアミド5Xを構成するジアミン由来の単位として、ペンタメチレンジアミン由来の単位が、ポリアミド5X中の50重量%以上含まれることを言い、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
ジアミンとして、ペンタメチレンジアミン以外に使用できるジアミンは、例えばエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミン;キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン、等の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
一方、ポリアミド5Xを構成するジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられ、その1種又は2種以上を用いることができる。
また、その他の単量体成分として、一分子中にアミノ基とカルボキシル基を有するアミノ酸、或いは開環することによってポリアミド構成単位を与えることができるラクタム類を併用することもでき、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの1種又は2種以上を用いてもよい。
ポリアミド5Xとしては、用いるジカルボン酸の炭素数(X)によって種々のポリアミド5Xがあるが、好ましくはポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510であり、中でもポリアミド56が、物性のバランスが良好であるため特に好ましい。
(その他のポリアミド樹脂)
ポリアミド5X以外のポリアミド樹脂としては、ポリアミド5Xを与えることになるペンタメチレンジアミン或いはδ−バレロラクタム以外のジアミンやラクタム類を除いては、上述したジアミン類やラクタム類を用いることができる。
また、ジカルボン酸としては上記のジカルボン酸を特に制限なく用いることができる。
このような、ポリアミド5X以外のポリアミド樹脂としては、ポリアミド6(いわゆる6ナイロン)、ポリアミド66(いわゆる6,6ナイロン)やポリアミド610、ポリアミド12(いわゆる12ナイロン)などが例示できる。
(ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂)
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、ポリアミド5X以外の熱可塑性樹脂として、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、上記「その他のポリアミド樹脂」以外の熱可塑性樹脂を用いることができる。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
(熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bの選定)
本発明においては、本発明の組成物に含まれる熱可塑性樹脂から、主な成分として用いられている2つの熱可塑性樹脂を選定して、これらの溶解度パラメータ値(以下「SP値」と記す)の差の絶対値が特定の範囲にあることを特徴としている。
このような2種の熱可塑性樹脂を選定する手順は以下の通りである。
(1)ポリアミド5Xと、それ以外の熱可塑性樹脂との二つに分けて、それぞれのSP値に基づいて集計する。この時同じ区分内であれば樹脂が異なっていてもSP値が同じであれば、その配合量を合算する。
(2)ポリアミド5Xの区分の中で、最大の配合量のポリアミド5X(群)を選択し、これを「熱可塑性樹脂a」とし、そのSP値を「SP(a)」とする。なお、最大の配合量となり得るポリアミド5X(群)が複数存在する場合は、その全てを熱可塑性樹脂aとする。この時のSP値は、各ポリアミド5XのSP値の算術平均を取り、これをSP(a)とする。
(3)次に、上記で選定した熱可塑性樹脂aを除いて、全てのポリアミド5X及び熱可塑性樹脂の中から、最大の配合量の熱可塑性樹脂(群)を選択し、これを「熱可塑性樹脂b」とし、そのSP値を「SP(b)」とする。
(4)上記(3)において、「熱可塑性樹脂b」となり得る熱可塑性樹脂(群)の候補が複数ある場合(配合量が同一でSP値が異なる樹脂(群))は、前記SP(a)との差の絶対値が、より小さくなる熱可塑性樹脂(群)を、「熱可塑性樹脂b」とする。
このようにして選定された熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bのそれぞれのSP値の差を取ったとき、本発明においては、その差の絶対値(以下「△SP値」と記す)が0.2以上、3.7以下であることが必要である。
この△SP値のより好ましい範囲は、0.5以上、3.2以下であり、更に好ましい範囲は0.8以上、2.7以下であり、特に好ましい範囲は、1.2以上、2.2以下である。
△SP値が、0.2未満のように過度に小さい場合は、熱可塑性樹脂相がミクロレベルで完全相溶に近づき、導電性付与剤の分散が良くなり過ぎてしまうため、導電性付与剤のつながり、即ち「導電パス」が形成しにくくなって、導電性が低くなる傾向となる。
一方△SP値が3.7を超えて過度に大きい場合は、熱可塑性樹脂組成物の主成分である熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとの相溶性が低下して、良好な成形品が得られなかったり、成形品表面が不均一になることがある。
なお熱可塑性樹脂aとしては、ポリアミド5Xと同様、好ましくはポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510が挙げられ、中でもポリアミド56が、物性のバランスが良好であるため特に好ましい。
また熱可塑性樹脂bとしては、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミド5Xであることが更に好ましい。特に好ましいのはポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510等である。 特に、前記熱可塑性樹脂aと前記熱可塑性樹脂bとが、それぞれ異なり、かつポリアミド510及びポリアミド56/6から選ばれるものであること、即ち、「熱可塑性樹脂a:熱可塑性樹脂b」の組み合わせが、「ポリアミド510:ポリアミド56/6」又は「ポリアミド56/6:ポリアミド510」のいずれかであることが好ましい。
(溶解度パラメータ(SP値))
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は良好な導電性を示すものであるが、これは、必須成分として用いられるポリアミド5Xの結晶形態が影響している可能性があると推定できる。即ち、ポリアミド5Xはγ型結晶を有する傾向にあるが、一般的に使用されているポリアミド6、ポリアミド66等はα型結晶のみを有する傾向にある。γ型結晶はα型結晶に比べて結晶サイズが小さく、上記の導電パスを遮断する傾向が低くなり、かつ上記のSP値差によって微視的レベルでの相界面が形成され、この界面部分に導電性付与剤が集まることで、更に導電パスが形成されやすくなるものと推定される。
なお、上記溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、山本秀樹著「SP値基礎・応用と計算方法」第66頁〜第67頁(2005年、株式会社情報機構発行)に記載の、「2.Fedorの推算法」に基づき算出できる。Fedorの推算法におけるSP値は、(凝集エネルギー[J/mol])/(分子容[cm/mol])の1/2乗で定義される値であり、主として、ポリマーの各種溶媒への溶解性を予測するのに用いられる物性値である。また、SP値が近似する物質同士は、相溶性が良好となると一般的に考えられている。
一般的に使用されているポリアミド、及び実施例、比較例で使用したポリアミドのモノマー構成、凝集エネルギーE(J/mol)、分子容V(cm/mol)、溶解度パラメータ(SP値)を表1に示す。
(熱可塑性樹脂のその他の物性)
本発明に用いる熱可塑性樹脂a及び熱可塑性樹脂bの少なくとも一方の樹脂の末端アミノ基濃度は、16μeq/g〜100μeq/gであるのが好ましく、更に好ましくは20μeq/g〜90μeq/g、特に好ましくは25μeq/g〜80μeq/g、中でも特に好ましくは30μeq/g〜70μeq/である。
末端基アミノ基濃度が過度に低いと導電性が低下する傾向があるので好ましくない。末端アミノ基濃度が過度に高いとゲルが生成するおそれがあるので好ましくない。上記範囲内において、導電性とゲル生成抑制とのバランスが良好になる。
この末端アミノ基濃度を調整するためには、仕込原料組成の微調整やモノカルボン酸やモノアミンを少量配合することが効果的である。例えば、末端アミノ基濃度を増加するためには仕込原料中のジアミンのモル数をジカルボン酸のモル数より多くするか、或いはモノアミンを添加しておくことで可能であり、一方、末端アミノ基濃度を減少させるためには、仕込原料中のジアミンのモル数をジカルボン酸のモル数より少なくするか、又はモノカルボン酸を添加することにより可能である。
このような末端アミノ基濃度の調整に用いられる、モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等が挙げられる。また、モノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン等が挙げられる。
本発明で使用する熱可塑性樹脂a及び熱可塑性樹脂bの分子量は特に限定されず、目的に応じて適宜選択される。実用性の観点から、熱可塑性樹脂a及び熱可塑性樹脂bがポリアミド樹脂である場合の25℃における98%硫酸に溶解した溶液(濃度:0.01g/ml)の相対粘度(ηrel)は、いずれも、通常1.5〜6.5、好ましくは1.6〜4.5、更に好ましくは1.8〜4.0、特に好ましくは2.0〜3.7の範囲である。
相対粘度が過度に低いと実用的強度が得られない傾向がある。また、相対粘度が過度に大きいと加工時の熱流動性が低下して成形加工性が損なわれる傾向がある。
また、高い導電性を得るためには、熱可塑性樹脂aの25℃における98%硫酸に溶解した溶液(濃度:0.01g/ml)の相対粘度をηrel(a)、同様に熱可塑性樹脂bの相対粘度をηrel(b)とした場合に、ηrel(a)>ηrel(b)であり、ηrel(a)≧3.0である事が好ましい。
さらに、フィルムやモノフィラメント等の押出用途に使用する場合は、成形性の観点から、ηrel(a)は、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.2以上、更に好ましくは3.4以上である。
<導電性付与剤>
(導電性付与剤の配合量)
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、導電性付与剤を含有している。ここで用いることができる導電性付与剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官能基を有する高分子帯電防止剤等の有機化合物の他に、カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維、金属粉未、金属酸化物等の無機物等が挙げられる。特に、比較的少量の添加で、高い導電性が発現し、かつ導電性と耐衝撃性のバランスに優れると共に良好な外観が得られることから、導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリルが好ましい。
なお、導電性カーボンブラックや中空炭素フィブリルは、配合に先立ってジェットミルやスーパーミキサー等の高速粉砕機を用いて粉砕しておくことが好ましい。
また、導電性付与剤の配合量としては、導電性熱可塑性樹脂組成物中における含有量として、該導電性熱可塑性樹脂組成物100重量%中、0.01重量%〜65重量%とするのが好ましく、より好ましくは0.05重量%〜60重量%、更に好ましくは0.1重量%〜55重量%であり、特に好ましくは0.5重量%〜55重量%、中でも特に好ましくは1重量%〜30重量%である。
導電性付与剤の含有量が過度に少ないと、所期の導電性が得られないことがある。また、含有量が過度に多いと耐衝撃性や機械物性(強度、伸び)が低下し、電気・電子部品、自動車部品、或いはフィルム等の製品とした時に、実用上求められる強度が不十分となる場合がある。
(導電性カーボンブラック)
本発明で好ましく使用する導電性付与剤の一つとしては導電性カーボンブラックが挙げられる。この導電性カーボンブラックとしては、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、30ml/100g以上のものが好ましく、より好ましくは100ml/100g以上のカーボンブラックが挙げられる。 本発明で好ましく用いられる導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック等が挙げられる。
これらの導電性カーボンブラックは、ペイント等に着色目的で加える顔料用カーボンブラックとは異なり、通常微細な粒子が連なった形態(ストラクチャ)を有している。
(中空炭素フィブリル)
本発明で好ましく使用する導電性付与剤の一つとしては中空炭素フィブリルが挙げられる。この中空炭素フィブリルとしては、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、200ml/100g以上であるものが好ましく、より好ましくは400ml/100g以上である中空炭素フィブリルが挙げられる。
本発明で好ましく用いられる中空炭素フィブリルとしては、規則的に炭素原子が配列した本質的に連続的な多層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが実質的に同心に配置され、本質的に円筒状のフィブリルが挙げられる。本発明においては、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2nm〜20nmの範囲のものが更に好ましい。
このような中空炭素フィブリルは、例えば、特表昭62−500943号公報や、米国特許第4,663,230号明細書等に詳細に記載されている。その製法は、後者の米国特許明細書に詳細に記載されているように、例えば、アルミナを支持体とする鉄、コバルト、ニッケル含有粒子等の遷移金属含有粒子を、一酸化炭素、炭化水素等の炭素含有ガスと、850℃〜1200℃の高温で接触させ、熱分解によって生じた炭素を、遷移金属を起点として、繊維状に成長させる方法が挙げられる。また、この種の中空炭素フィブリルは、ハイペリオン・カタリシス社が、グラファイト・フィブリルという商品名で販売しており入手することができる。
[導電性熱可塑性樹脂組成物]
<熱可塑性樹脂の組成>
本発明は二種類以上の熱可塑性樹脂と導電性付与剤とを含有する導電性熱可塑性樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂が、主としてペンタメチレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂(以下「ポリアミド5X」と称す。)を少なくとも含み、上記ポリアミド5Xの中で、最も配合量の多いポリアミド5Xを「熱可塑性樹脂a」とし、該導電性熱可塑性樹脂組成物に用いられる、上記熱可塑性樹脂a以外の熱可塑性樹脂の中で、最も配合量の多い熱可塑性樹脂を「熱可塑性樹脂b」としたとき、前記熱可塑性樹脂aの溶解度パラメータ値と、前記熱可塑性樹脂bの溶解度パラメータ値との差の絶対値が、0.2以上、3.7以下である導電性熱可塑性樹脂組成物である。
上記熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとは、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物における主な成分であり、通常該組成物中に含まれる熱可塑性樹脂の60重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上を占める。特に好ましい含有量は90重量%以上である。
また、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物における、熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとの含有割合は、熱可塑性樹脂a/熱可塑性樹脂b(重量比)として、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、30/70〜70/30が更に好ましい。この時、50/50よりも熱可塑性樹脂aが多くなる組み合わせが、特に好ましい。
なお、導電性付与剤の組成物への配合量は、既に「導電性付与剤」の項において記載した通りである。
<その他の添加剤>
本実施の導電性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、強化材等が挙げられる。
酸化防止剤又は熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、ホスファイト系化合物及びこれらの置換体等が挙げられる。
耐候剤としては、レゾルシノール系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
離型剤又は滑剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素化合物、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
顔料としては、フタロシアニン、カーボンブラック等が挙げられる。
染料としては、ニグロシン、アニリンブラック等が挙げられる。
結晶核剤としては、タルク、シリカ、カオリン、クレー等が挙げられる。
可塑剤としては、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
帯電防止剤としては、アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等の非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等が挙げられる。
難燃剤としては、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等が挙げられる。
充填剤としては、グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ベントナイト、モンモリロナイト、合成雲母等の粒子状、針状、板状充填材が挙げられる。
強化材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、窒化硼素、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム等が挙げられる。
これらは、原料となる熱可塑性樹脂を製造(重縮合、重合)する工程から、導電性熱可塑性樹脂組成物の成形に至るまでの任意の段階で、その添加量、添加工程等を適宜選択して、添加すればよい。
<組成物の製造方法>
次に、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、前述した通り、ポリアミド樹脂5Xから選定される熱可塑性樹脂a、該熱可塑性樹脂aとは異なる溶解度パラメータを有する熱可塑性樹脂b、導電性付与剤、及び必要に応じて配合される各種の添加剤を混合することにより製造することができる。
混合のために用いる混合手段としては特に制限はなく、例えば、ニーダーや二軸押出機、単軸押出機等を用いる溶融混練方法、タンブラー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーを用いるドライブレンド方法等が挙げられる。
具体的な混合方法としては、例えば以下のような方法が挙げられる。
(1)前記熱可塑性樹脂a、前記熱可塑性樹脂b、導電性付与剤及び所望の添加剤を、一括して溶融混練又はドライブレンドする方法
(2)予め熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bと導電性付与剤とを溶融混練して混合物(以下、「導電剤マスターバッチ」と記すことがある)とし、次いで、該混合物と熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とを溶融混練する方法
(3)予め熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bと導電性付与剤とを溶融混練して混合物(導電剤マスターバッチ)とし、次いで、該混合物と前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とをドライブレンドする方法
上記、(2)又は(3)の導電剤マスターバッチを用いる方法においては、上記導電性付与剤の使用量は、前記導電剤マスターバッチ100重量%あたり、0.05重量%〜70重量%の範囲、好ましくは、0.1重量%〜50重量%の範囲、より好ましくは2重量%〜25重量%の範囲とするのが好ましい。
また上記導電剤マスターバッチを調製するときの条件としては、特に制限されず、用いる熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bを溶融混練する場合に一般的に用いられる条件でよく、例えば、使用する熱可塑性樹脂の融点(DSCにて測定した融解ピーク温度)の5℃以上、50℃以下の温度で溶融混練をすればよい。
なお、上記「前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部」とは、導電剤マスターバッチを用いる場合、所定の配合量から、導電剤マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bの分を差し引いた分を、その後の溶融混練又はドライブレンドに用いて最終的な熱可塑性樹脂組成物を製造することになるため、当該所定の配合量から導電剤マスターバッチに含まれる熱可塑性樹脂a及び/又は熱可塑性樹脂bの量を差し引いた、それぞれの熱可塑性樹脂の量を言うものである。
[成形品とその製造方法]
<成形品>
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、フィルム成形、溶融紡糸、ブロー成形、或いは真空成形等の任意の成形方法により、所望の形状に成形することができる。成形品としては、例えば、射出成形品、フィルム、シート、フィラメント、テーパードフィラメント、繊維等が挙げられる。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を用いて得られた各種の成形品は、導電性付与剤の含有量が0.01重量%〜65重量%、好ましくは0.05重量%〜60重量%、更に好ましくは0.1重量%〜55重量%であり、特に好ましくは0.5重量%〜55重量%、中でも特に好ましくは1重量%〜30重量%であり、このような範囲で導電性付与剤を含有することで、体積固有抵抗値が、例えば1.00×10Ω・cm以下のようなレベルまで低減できる。これは、従来の導電性熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる成形品と比べて、より少ない導電性付与剤含有量で、より低い体積固有抵抗値が得られる結果となっている。
<射出成形及び射出成形品>
次に、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を用いる射出成形方法及び得られる射出成形品について説明する。
射出成形に用いる射出成形機は、特に限定されず、例えば日精樹脂工業株式会社製:NEX80型や東芝機械株式会社製:IS80等が挙げられる。
射出成形の際の射出成形条件は特に限定されず、用いる熱可塑性樹脂a、熱可塑性樹脂b等の主成分として含まれる熱可塑性樹脂の成形条件の範囲から適宜選択される。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物から得られる射出成形品の具体例としては、自動車用部品を例に取れば、フロントエンドモジュール、ラジエーターマウント、ボディー・バンパーリテーナー、インテークマニホールド、ヒンジ付きクリップ(ヒンジ付き成形品)、結束バンド、レゾネータ、エアークリーナ、エンジンカバー、ロッカーカバー、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、ガソリンタンク、ガソリンサブタンク、ラジエータータンク、インタークーラータンク、オイルリザーバータンク、オイルパン、電動パワステギヤ、オイルストレーナ、キャニスタ、エンジンマウント、ジャンクションブロック、リレーブロック、ECUケース、コネクタ、コルゲートチューブ、プロテクター等のアンダーフード部品;ドアハンドル、フェンダー、フードバルジ、ルーフレールレグ、ドアミラーステー、バンパ、スポイラ、ホイールカバー等の外装部品;カップホルダ、コンソールボックス、アクセルペダル、クラッチペダル、シフトレバー台座、シフトレバーノブ、電磁波シールド部品等の内装部品等が挙げられる。
もちろん本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物から得られる射出成形品が自動車用部品に限定されるものでないことは言うまでもない。
これらの中でも、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物から得られるフロントエンドモジュール、ラジエーターマウント、ボディー・バンパーリテーナー等は、安定した導電性と耐熱性を達成でき好ましい用途である。
なお、上述のフロントエンドモジュール、ラジエーターマウント等は、従来、鋼材にて製造されていた部品であるが、車両の軽量化を目的として樹脂製へと置き替わりつつある。しかしながら、これらの部品を汎用樹脂を用いて樹脂化すると導電性が無くなり、アース用のワイヤーハーネスを別途設置する必要がある。本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された樹脂部品においては、アースを設ける必要がなくなり、樹脂化による車両軽量化を促進することが可能となる。
<押出成形及び押出成形品>
次に、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を用いる押出成形方法及び得られる押出成形品について説明する。
押出成形の具体的な成形方法は特に限定されず、例えば、Tダイを用いたフラットフィルム成形、水冷または空冷インフレーションフィルム成形、チューブ成形、モノフィラメント成形、マルチフィラメント成形等を用いることができる。また押出成形機としては、特に限定されず、一般的な単軸および二軸押出機等を用いることができる。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物から得られる押出成形品の具体例としては、例えば、釣り糸、漁網等の漁業関連資材、スイッチ類、超小型スライドスイッチ、ディップスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、結束バンド、電解コンデンサー、コンデンサーケース、モータの内部フィルム状部品、耐熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、工業用養生シート、プリンタリボンガイド等に代表される電気・電子関連部品、家庭・事務電気製品部品、コンピューター関連部品、ファクシミリ・複写機関連部品、機械関連部品等各種用途等が挙げられる。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる押出成形品は、導電性や帯電防止性が必要な部品や部材に好適であり、特に、半導体製造現場の床、壁、天井を覆うシートに本発明の組成物から得られるシート類を用いると発塵を著しく低減することができ、また静電塗装を行う車両、航空機の塗装現場においては、静電気のスパークによる火災の危険があるが、本発明の組成物より得られる養生シートを用いることで静電気のスパークによる火災の危険性を大幅に低減できる等、その価値は高いものである。
なお、本発明の導電性熱可塑性組成物から得られるシート類は、電磁波シールド特性にも優れるため、電磁波シールド用材料としても好適である。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[評価・測定方法]
(1)熱可塑性樹脂の相対粘度(ηrel)
熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いる場合、その相対粘度(ηrel)は、98%硫酸を溶媒として用いた濃度0.01g/mlの溶液について、25℃にてオストワルド式粘度計を使用して測定した(単位:dl/g)。
(2)熱可塑性樹脂の融点(Tm)
熱可塑性樹脂の融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC:セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC)を使用して、窒素雰囲気下にて測定した。熱可塑性樹脂の試料約5mgを完全に融解させ、3分間保持した後、降温速度20℃/分で30℃まで降温し、続いて30℃で3分間保持した後、昇温速度20℃/分で昇温したときに観測される吸熱ピークの温度を融点(Tm)とした。吸熱ピークが複数ある場合は、最も高い温度を融点(Tm)とした。
(3)末端アミノ基濃度ポリアミド樹脂の試料0.1〜0.2gを正確に秤量し、フェノール(林純薬工業株式会社製)50ml中に溶解した後、自動滴定装置(三菱化学株式会社製、GT−06)を用いて、0.1N(規定)塩酸で滴定して算出した(単位:μeq/g)。
(4)体積固有抵抗値
射出成形品の場合は、ASTM−D638に準拠した引張試験片の両端を、剪定ハサミで切断し、12.7mm×50mm×3mm厚の短冊を切り出し、短冊の両端面(12.7mm×3mm)に銀ペーストを塗布して、23℃で30分間、風乾したものを試験片とした。
測定は、銀ペーストを塗布した両端面の間の抵抗を測定し、体積抵抗率を算出し、これを体積固有抵抗値とした。
測定器は、株式会社三菱化学アナリテック製「ロレスタEP」および株式会社三菱化学アナリテック製「ハイレスタUP」を使用した。体積固有抵抗値が10Ω・cm以下の場合は「ロレスタEP」を用い、それを超える時は「ハイレスタUP」を用いた。プローブはESP型を使用した。
「ハイレスタUP」はリング法を用い、500Vで1分間チャージを行い、測定開始から1分後の値を採用した。
体積固有抵抗値が低いほど導電性が優れていると評価される。
また、押出成形したフィルムを測定する場合は、試料フィルムから、カッターを用いて100mm×100mmのサンプルを切り出し、その両端に銀ペーストを塗布し、23℃で30分間風乾したものを試料とした。
この銀ペーストを塗布した両端面間の抵抗を測定して体積抵抗率を算出し、これを体積固有抵抗値とした。測定器については上記射出成形品の場合と同様の機器を使用し、やはり同様にして抵抗測定を実施した。
[ポリアミド樹脂の製造]
(1)重縮合用単量体成分
1)ε−カプロラクタム、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、AH塩(ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩)、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミンは、いずれも市販品を使用した。
ε−カプロラクタム:三菱化学株式会社製
アジピン酸:旭化成ケミカルズ株式会社製
アゼライン酸:コグニス(cognis)社製
セバシン酸:小倉合成株式会社製
AH塩:ローディア(Rhodia)社製
12−アミノドデカン酸:宇部興産株式会社製
ヘキサメチレンジアミン:旭化成ケミカルズ株式会社製
2)ペンタメチレンジアミン
ペンタメチレンジアミンは、以下の手順により調製した。
まず初めに、特開2008−189918号公報(段落[0108]〜[0113])に記載されたカダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)の1番晶を得る方法と同様の操作を行い、含水率が約15重量%のカダベリン・アジピン酸塩(ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩)を得た。
予め窒素置換した1mのステンレス製容器に、脱塩水(100kg)と、含水率が約15重量%のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩(250kg)とを仕込み、撹拌して溶解させた。
次に、この溶液中に25重量%の水酸化ナトリウム水溶液(273.8kg)を仕込み、中和した(即ち、ペンタメチレンジアミンを脱塩して遊離アミンとした)。溶解液中に水酸化ナトリウム水溶液を仕込む際は、溶解液の内温が70℃を超えないように調整した。
中和処理を行った溶解液を、内温50℃、減圧度50torr(6.5kPa)の条件で水を留去し、次いで、内温80℃、減圧度20torr(2.6kPa)の条件でぺンタメチレンジアミンを蒸留した。得られたペンタメチレンジアミンを内温80℃、減圧度20torr(2.6kPa)の条件で再度蒸留を行い、ナトリウム含有率が約2ppmのペンタメチレンジアミンを得た。
(2)ポリアミド樹脂
1)ポリアミド6(PA6)
ε−カプロラクタム50kg、脱塩水1.5kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素置換した後に100℃にて溶解した。この原料水溶液をオートクレーブに移送し、ジャケット温度を280℃に設定して加熱を開始した。
内容物を270℃迄昇温した後、オートクレーブの圧力を徐々に放圧し、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後、窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットに対し、その1.5倍量の沸騰水を使用して未反応のモノマー、オリゴマーを抽出除去した。未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド6(PA6)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は224℃であった。
2)ポリアミド12(PA12)
12−アミノドデカン酸50kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gをオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内の窒素置換を行った。その後、ジャケット温度を230℃に設定して加熱を開始した。
内容物を220℃迄昇温した後、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧し、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で反応終了とした。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド12(PA12)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は182℃であった。
3)ポリアミド56(PA56)
濃度50重量%で100kgのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アジピン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットを120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥して、ポリアミド56(PA56)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は255℃であった。
4)ポリアミド59(PA59)
濃度50重量%、100kgのペンタメチレンジアミン・アゼライン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アゼライン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。
以後、上記ポリアミド56の製造方法と同様にして、ポリアミド59(PA59)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は210℃であった。
5)ポリアミド510(PA510)
濃度50重量%で100kgのペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。
以後、ポリアミド56の製造方法と同様にして、ポリアミド510(PA510)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は218℃であった。
6)ポリアミド6/66(PA6/66)(6/66仕込み重量比=80/20)
ε−カプロラクタム40kgを容器に入れ、窒素置換した後に100℃にて溶解した。この原料水溶液をオートクレーブ(a)に移送し、ジャケット温度を270℃に設定して加熱を開始した。
濃度50重量%のヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液20kg、及び亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gをオートクレーブ(b)に入れ、窒素置換した後に昇温を開始した。内容物の温度と圧力が、150℃、0.15MPaに到達するまでヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液の濃縮を行った。
オートクレーブ(a)の内温が245℃に到達した時点で、オートクレーブ(b)のヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液をオートクレーブ(a)に移送した。ジャケット温度を250℃に、オートクレーブの圧力を0.20MPaにそれぞれ調節し、内容物を240℃に昇温した。次に、オートクレーブの圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後、窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットに対し、その1.5倍量の沸騰水を使用して未反応のモノマー、オリゴマーを抽出除去した。
未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド6/66(PA6/66)(6/66仕込み重量比=80/20)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は191℃であった。
7)ポリアミド66(PA66)
濃度50重量%で100kgのヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
ジャケット温度を285℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を275℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド66(PA66)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は264℃であった。
8)ポリアミド610(PA610)
濃度50重量%で100kgのヘキサメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド610(PA610)を得た。相対粘度(ηrel)は2.8、融点(Tm)は222℃であった。
9)ポリアミド6I/6T(PA6I/6T)
ポリアミド6I/6Tは、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製X21を使用した。
10)ポリアミド510−2 (PA510−2、前記「ポリアミド510」の粘度を低く調整)
濃度50重量%で100kgのペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解し、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して、前記ポリアミド510より低く設定された所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド510−2を得た。末端アミノ基濃度は43μeq/g、相対粘度(ηrel)は2.5、融点(Tm)は218℃であった。
11)ポリアミド510−3(PA510−3、酢酸を加えてアミノ末端基濃度を低くなるように調整)
濃度50重量%で100kgのペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48g、酢酸74gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して上記ポリアミド510−2の製造時と同じ撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド510−3を得た。末端アミノ基濃度は15μeq/g、相対粘度(ηrel)は2.5、融点(Tm)は218℃であった。
12)ポリアミド56/6−1(56/6仕込み重量比=80/20)(PA56/6−1)
濃度50重量%で80kgのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アジピン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらにε−カプロラクタム10kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48g、ペンタメチレンジアミン135gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して前記ポリアミド510の製造時より高く設定された所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットに対し、その1.5倍量の沸騰水を使用して未反応のモノマー、オリゴマーを抽出除去した。未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド56/6−1(56/6仕込み重量比=80/20)を得た。末端アミノ基濃度は45μeq/g、相対粘度(ηrel)は3.5、融点(Tm)は224℃であった。
13)ポリアミド56/6−2(56/6仕込み重量比=80/20)(PA56/6−2)(上記PA56/6−1を低粘度化)
濃度50重量%で80kgのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アジピン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらにε−カプロラクタム10kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して前記ポリアミド510−2と同じ撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットに対し、その1.5倍量の沸騰水を使用して未反応のモノマー、オリゴマーを抽出除去した。未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド56/6−2(56/6仕込み重量比=80/20)を得た。末端アミノ基濃度は40μeq/g、相対粘度(ηrel)は2.5、融点(Tm)は224℃であった。
14)ポリアミド610−2(PA610−2、前記「ポリアミド610」の粘度を低く調整)
濃度50重量%で100kgのヘキサメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを加えて、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。予め窒素置換したオートクレーブに、プランジャーポンプにて上記の原料水溶液を移送した。
ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して前記ポリアミド510−2と同じ撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。
反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド610−2を得た。末端アミノ基濃度は44μeq/g、相対粘度(ηrel)は2.5、融点(Tm)は224℃であった。
[導電剤マスターバッチ]
(1)導電性付与剤
導電性付与剤として、中空炭素フィブリルと導電性カーボンブラックを使用した。
中空炭素フィブリルとしては、DBP吸油量256ml/100gの三菱化学株式会社製カーボンナノチューブMC−4を用いた。
また、導電性カーボンブラックとしては、DBP吸油量495ml/100gのライオン株式会社製「ケッチェンブラックEC600JD」(以下「CB−1」と記す)、及びDBP吸油量140ml/100gの三菱化学株式会社製「カーボンブラック#3230MJ」(以下「CB−2」と記す)を用いた。なお上記「#3230MJ」は原油を原料としてファーネス式不完全燃焼法により製造された導電性カーボンブラックである。
(2)導電剤マスターバッチの調製
二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用い、表2又は表3に示す組成の導電性付与剤とポリアミド樹脂とをシリンダ設定温度265℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量20kg/hrの条件で溶融混練し、導電剤マスターバッチを調製した。
[導電性熱可塑性樹脂組成物及び成形品の製造]
(実施例1〜実施例6、実施例9〜実施例10、比較例1〜比較例3、比較例7、比較例8)
表2に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2に示す配合で、回転式タンブラーを用いてドライブレンドし、ブレンド物とした後、該ブレンド物をASTM−D638に準拠した引張試験片金型を搭載した射出成形機(日精樹脂工業株式会社製:NEX80型)にてシリンダ温度260℃、金型温度80℃で射出成形を行った。
得られた射出成形品(引張試験片)を用いて体積固有抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
(実施例7、実施例8、実施例13〜実施例18、比較例5、比較例9)
表2(実施例15〜18については表3)に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2(実施例15〜18については表3)に示す配合で、回転式タンブラーを用いてドライブレンドし、ブレンド物とした後、該ブレンド物を先端に600mm幅のTダイを装着した直径40mm単軸押出機を用いて、シリンダ温度270℃で押し出し、ダイス温度275℃、ロール温度60℃で、厚み50μmのフラットフィルムに押出成形し、得られたフラットフィルムの体積固有抵抗値を測定した。但し、比較例9では製膜性が悪くフィルムを得ることができなかったため、以後の評価を行うことができなかった。
結果を表2(実施例15〜18については表3)に示す。
(実施例11)
表2に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2に示す配合で、ニ軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用いてシリンダ温度265℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間で溶融混練し、混練物とし、該混練物をASTM−D638に準拠した引張試験片金型を搭載した射出成形機(日精樹脂工業株式会社製:NEX80型)にてシリンダ温度260℃、金型温度80℃で射出成形を行った。
得られた射出成形品(引張試験片)を用いて体積固有抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
(実施例12)
表2に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2に示す配合で、ニ軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用いてシリンダ温度265℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間で溶融混練し、混練物とし、該混練物を先端に600mm幅のTダイを装着した直径40mm単軸押出機で、シリンダ温度270℃で押し出し、ダイス温度275℃、ロール温度60℃で、厚み50μmのフラットフィルムに押出成形した。
このフラットフィルムの体積固有抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
(比較例4)
表2に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2に示す配合で、回転式タンブラーを用いてドライブレンドし、ブレンド物とし、該ブレンド物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製:NEX80型)にてシリンダ温度260℃で、ASTM−D638に準拠した引張試験片金型を搭載して金型温度80℃で射出成形を行った。しかし、ポリアミド樹脂(ベースPA)と導電剤マスターバッチとの相溶性が悪く、得られた成形品の表面が剥離状に荒れてしまい、体積固有抵抗値を測定することが出来なかった。結果を表2に示す。
(比較例6)
表2に示す導電剤マスターバッチと、ポリアミド樹脂(ベースPA)とを表2に示す配合で、回転式タンブラーを用いてドライブレンドし、ブレンド物とし、該ブレンド物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製:NEX80型)にてシリンダ温度270℃で、ASTM−D638に準拠した引張試験片金型を搭載し、金型温度80℃で射出成形を行った。
得られた射出成形品(引張試験片)を用いて体積固有抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0005581767
Figure 0005581767
Figure 0005581767
Figure 0005581767
表2及び表3に示す結果から、熱可塑性樹脂(ポリアミド樹脂)a、前記熱可塑性樹脂aとは異なる溶解度パラメータを有する熱可塑性樹脂(ポリアミド樹脂)b、及び導電性付与剤(導電性カーボンブラック/中空炭素フィブリル)とを少なくとも含有し、熱可塑性樹脂aがポリアミド5Xであり、かつ熱可塑性樹脂aの溶解度パラメータSP(a)と、熱可塑性樹脂bの溶解度パラメータSP(b)との差の絶対値が0.2〜3.7の範囲である導電性熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜実施例18)は、射出成形品、押出成形品のいずれの場合においても、体積固有抵抗値が低く、導電性が高いことが判る。
また、比較例1〜9より導電性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂aがポリアミド5Xではない場合、或いは△SP値が上記範囲を満たさない場合は、体積固有抵抗値が良好な成形品は得られないことが判る。
更に、表3から、本発明の範囲を満たす末端アミノ基濃度の熱可塑性樹脂を用いることにより、体積固有抵抗値が低い成形品が得られていることが判る。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品は、導電性が良好であり、自動車用部品の樹脂化による車両軽量化を促進することが可能となる。また、本発明の成形品は、導電性や帯電防止性が必要な部品や部材に好適であり、半導体製造現場における発塵の低減や、静電塗装時の静電気のスパークによる火災予防等に有用である。
また、本発明の導電性熱可塑性組成物から得られるシート類は、電磁波シールド用材料として用いても有効である。

Claims (13)

  1. 二種類以上の熱可塑性樹脂と導電性付与剤とを含有する導電性熱可塑性樹脂組成物であって、
    該熱可塑性樹脂が、ポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510及びポリアミド56/6からなる群より選ばれた少なくとも1種のポリアミド樹脂(以下「ポリアミド5X」と称す。)であり、
    前記導電性付与剤が導電性カーボンブラック及び中空炭素フィブリルからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
    上記ポリアミド5Xの中で、最も配合量の多いポリアミド5Xを「熱可塑性樹脂a」とし、該導電性熱可塑性樹脂組成物に用いられる、上記熱可塑性樹脂a以外の熱可塑性樹脂の中で、最も配合量の多い熱可塑性樹脂を「熱可塑性樹脂b」としたとき、
    前記熱可塑性樹脂aと熱可塑性樹脂bとの重量比が、熱可塑性樹脂a/熱可塑性樹脂bとして、82/18〜48/52の範囲にあり、
    前記熱可塑性樹脂aの溶解度パラメータ値と、前記熱可塑性樹脂bの溶解度パラメータ値との差の絶対値が、0.65以上、2.33以下で、
    前記導電性熱可塑性樹脂組成物の総量を100重量%としたとき、前記導電性付与剤の含有量が0.01重量%〜65重量%であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記熱可塑性樹脂aと前記熱可塑性樹脂bとは、それぞれ異なり、かつポリアミド510及びポリアミド56/6から選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記熱可塑性樹脂aと前記熱可塑性樹脂bの少なくとも一方の樹脂の末端アミノ基濃度が16μeq/g〜100μeq/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記熱可塑性樹脂aの相対粘度をηrel(a)、前記熱可塑性樹脂bの相対粘度をηrel(b)とした場合に、これらの相対粘度が下記式を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物、但し、相対粘度は、25℃、濃度0.01g/ml、溶媒:98%硫酸の条件で測定した値とする。
    ηrel(a)>ηrel(b)
    ηrel(a)=1.5〜6.5
    ηrel(b)=1.5〜6.5
  5. 前記熱可塑性樹脂a及び前記熱可塑性樹脂bを含む熱可塑性樹脂成分と、前記導電性付与剤とを溶融混練することを特徴とする請求項1に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bと前記導電性付与剤とを溶融混練して混合物とし、次いで、該混合物と前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とを溶融混練することを特徴とする請求項1に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bと前記導電性付与剤とを溶融混練して混合物とし、次いで、該混合物と前記熱可塑性樹脂a及び/又は前記熱可塑性樹脂bの残部を含む熱可塑性樹脂成分とをドライブレンドすることを特徴とする請求項1に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる射出成形品。
  9. 射出成形品の体積固有抵抗値が1.00×10Ω・cm以下であることを特徴とする請求項8に記載の射出成形品。
  10. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる押出成形品。
  11. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を押出成形してなる導電性フィルム。
  12. 厚さが5μm〜200μmであることを特徴とする請求項11に記載の導電性フィルム。
  13. 体積固有抵抗値が1.00×10Ω・cm以下であることを特徴とする請求項11又は12に記載の導電性フィルム。
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