JP5585162B2 - 電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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Description
なお、従来の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物では、ポリアミド樹脂として、ポリアミド6、ポリアミド66等の汎用のポリアミド樹脂が用いられており、本発明で用いるポリアミド5Xが用いられた例はない。
[2] ポリアミド樹脂と導電性付与剤とを含み、該ポリアミド樹脂が、ペンタメチレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂(以下、このポリアミド樹脂を「ポリアミド5X」と称す。)であり、前記導電性付与剤が中空炭素フィブリルを含み、該中空炭素フィブリルの含有量が該ポリアミド5X100重量部に対して2.2〜50重量部であり、周波数10〜800MHzにおいて測定した電界シールド性が−10dB以下かつ周波数400〜1000MHzにおいて測定した磁界シールド性が−10dB以下であることを特徴とする電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物。
即ち、本発明で用いるポリアミド5Xは、従来のポリアミド樹脂組成物に用いられているポリアミド樹脂であるポリアミド6やポリアミド66等に比べて、ポリアミド樹脂のアミド基と導電性付与剤の反応性基との反応性が高く、親和性が高いことにより、ポリアミド5Xのマトリックス中に導電性付与剤による安定かつ良好な導電性のネットワークが形成され、この結果、優れた電磁波シールド性が得られる。
即ち、ポリアミド樹脂により形成されたマトリックス中に、導電性付与剤が分散したポリアミド樹脂組成物中にあっては、溶融時からの固化過程において、ポリアミド樹脂が結晶化する過程で導電性付与剤はポリアミド樹脂の結晶部から排斥され、ポリアミド樹脂の非晶部の連続相内に固定化される。
ここで、連続相を構成するポリアミド樹脂が2つの吸熱ピークを持つ場合、溶融時からの固化過程において、まずポリアミド樹脂の高温側の吸熱ピーク温度で結晶が生成し、次に低温側の吸熱ピーク温度で結晶が生成するので、高温側の結晶化過程において、ポリアミド樹脂の非晶部へ押し出された導電性付与剤は、次いで低温側の結晶化過程において、更に押し出されるようになる。このように、溶融時からの固化過程において、導電性付与剤が受ける応力が2度に分散することにより、ポリアミド5Xのマトリックス中に分散している導電性付与剤は少しずつ集められ、マトリックス中において、過度に分散しすぎることなく、また、過度に凝集しすぎることなく、導電性付与剤による導電性のネットワークを形成するに好適な適度な分散状態で、分散する。この結果、従来のポリアミド6等の汎用のポリアミド樹脂に導電性付与剤を配合した場合に比べて、同種同等の配合量であっても、成形品内で良好な導電性ネットワークが効率的に形成されるようになり、周波数5〜800MHzにおける電界シールド性と周波数200〜1000MHzにおける磁界シールド性とに共に優れる工業的に有益な電磁波シールド性が得られるようになる。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、ポリアミド5X、即ち、ペンタメチレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂である。
即ち、ポリアミド5Xはγ型結晶を有する傾向にあるが、従来使用されてきたポリアミド6やポリアミド66等はα型結晶のみを有する傾向にある。α型結晶はγ型結晶に比べて結晶サイズが大きいため、導電性付与剤による導電経路を遮断し易くなり電磁波シールド性が低くなる傾向にある。γ型結晶を有するポリアミド5Xは、上記のような問題がないため、導電性付与剤の配合による電磁波シールド性の発現効果が向上するものと考えられる。
以上のことから、本発明においては、特にポリアミド5Xとしてはポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510、ポリアミド512及びポリアミド56/6を用いることが好ましい。
本発明で用いる導電性付与剤としては特に制限はなく、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官能基を有する高分子帯電防止剤等の有機化合物の他に、カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維、金属粉末、金属酸化物等の無機物等が挙げられる。特に、比較的少量の配合で、高い電磁波シールド性を発現し、良好な外観が得られ、他の物性とのバランスも良好であることから、導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリルが好ましい。
導電性カーボンブラックとしては、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、30ml/100g以上であり、より好ましくは100ml/100g以上である導電性カーボンブラックが挙げられる。
好ましい導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるファーネスブラックやケッチェンブラック等が挙げられる。
これらの導電性カーボンブラックは、ペイント等に着色目的で加える顔料用カーボンブラックとは相違し、通常、微細な粒子が連なった形態を有している。
中空炭素フィブリルとしては、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、100ml/100g以上であり、より好ましくは200ml/100g以上である中空炭素フィブリルが挙げられる。
ここで、本発明で使用する中空炭素フィブリルとしては、規則的に炭素原子が配列した本質的に連続的な多層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、外側領域の多層各層と中空領域とが実質的に同心に配置され、本質的に円筒状のフィブリルが挙げられる。
さらに、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2nm〜20nmの範囲のものが好ましい。
導電性付与剤の配合量が少な過ぎると十分な電磁波シールド性を得ることができず、多過ぎると成形性、機械的特性等のポリアミド樹脂本来の特性が損なわれる。
<各種添加剤>
本発明の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、各種の添加剤が配合される。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、強化材等が挙げられる。
耐候剤としては、レゾルシノール系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
離型剤又は滑剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素化合物、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
顔料としては、フタロシアニン、カーボンブラック等が挙げられる。
染料としては、ニグロシン、アニリンブラック等が挙げられる。
結晶核剤としては、タルク、シリカ、カオリン、クレー等が挙げられる。
可塑剤としては、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
難燃剤としては、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等が挙げられる。
強化材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、窒化硼素、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム等が挙げられる。
これらの添加剤の配合量は、少な過ぎるとその配合効果を十分に得ることができないが、多過ぎると成形性や機械的特性が損なわれることから、ポリアミド5X100重量部に対して添加剤の合計で30重量部以下とすることが好ましい。
他のポリマー成分としては、ポリアミド5X以外のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。
これらの他のポリマー成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
これらの他のポリマー成分を配合する場合、その配合量が多過ぎると、本発明で用いるポリアミド5X分の効果が損なわれるため、他のポリマー成分を配合する場合、その配合量はポリアミド5X100重量部に対して他のポリマー成分の合計量として1重量部以下とすることが好ましい。
本発明の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物を製造するには、前述のポリアミド5Xと導電性付与剤を、必要に応じて用いられる添加剤やその他のポリマー成分と共に、公知の混合手段で混合する。
溶融混練する場合、その条件は一般的なポリアミド樹脂の溶融混練条件でよく、例えば、使用するポリアミド5XのDSCにて測定した吸熱ピークのピークトップ温度(吸熱ピークが2つある場合はその高い方の温度)より5〜50℃程度高い温度設定で溶融混練する条件が挙げられる。
本発明の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物は、周波数5〜800MHzにおいて測定した電界シールド性が−10dB以下かつ周波数200〜1000MHzにおいて測定した磁界シールド性が−10dB以下という優れた電磁波シールド性を有する。この電界シールド性、磁界シールド性が−10dBより高いと、本発明で目的とする電磁波シールド性を達成し得ない。
本発明の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物の特に好ましいものは、周波数5〜800MHzにおける電界シールド性が−15dB以下、特には−20dB以下で、周波数200〜1000MHzにおける磁界シールド性が−15dB以下、特には−20dB以下という著しく優れた電磁波シールド性を有する。
なお、本発明の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物の電磁波シールド性は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物は、公知の射出成形方法により射出成形品を製造することができる。
射出成形品を得るために使用する射出成形機としては、例えば、日精樹脂工業株式会社製:NEX80型、や東芝機械株式会社製:IS80等が挙げられる。
射出成形方法における射出成形条件は特に限定されず、例えば、ポリアミド6やポリアミド66等公知のポリアミド樹脂を成形する条件の範囲で適宜選択される。
本発明の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物は、公知の押出成形方法により、押出成形品を製造することができる。
公知の押出成形方法としては特に限定されず、例えば、Tダイを用いたフラットフィルム成型、水冷又は空冷インフレーションフィルム成形、チューブ成形、モノフィラメント成形、マルチフィラメント成形等が挙げられる。また、押出成形方法において使用する押出成形機としては、公知の単軸及び二軸押出機が挙げられる。
本発明の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品は、成形性に優れ、ポリアミド樹脂本来の耐薬品性、曲げ弾性率等の機械的特性を有し、また、電磁波シールド性に優れるものであり、自動車、鉄道車両用部品、コンピューター用部品、携帯電話用部品、家電製品用部品等、各種の電気・電子・OA部品などの一部又は全体を構成するものとして工業的に極めて有用である。
(1)ポリアミド樹脂の相対粘度(ηr)
ポリアミド樹脂の相対粘度(ηr)は、ポリアミド樹脂を98%硫酸に溶解した溶液(濃度:0.01g/ml)を調製し、25℃で、オストワルド式粘度計を使用して測定した。
ポリアミド樹脂の吸熱ピーク温度は、示差走査熱量測定(DSC)法により、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製「Diamond DSC」)を使用して、窒素雰囲気下にて測定した。ポリアミド樹脂試料約5mgを予想される吸熱ピークのピークトップの温度(吸熱ピークが2つ存在する場合は、高温側の吸熱ピークのピークトップの温度)よりも50℃高い温度まで、20℃/分の速度で昇温し、3分間保持し試料を完全に融解させた後、降温速度20℃/分で30℃まで降温した。続いて、30℃で3分間保持した後、昇温速度20℃/分で昇温したときに観測される吸熱ピークのピークトップの温度を測定した。
ポリアミド樹脂試料0.1〜0.2gを正確に秤量し、フェノール(林純薬工業株式会社製)50ml中に溶解した後、自動滴定装置(三菱化学株式会社製「GT−06」)を用いて、0.1N塩酸で滴定して算出した(単位:μeq/g)
下記記載の方法で得られたポリアミド樹脂組成物を、120℃の減圧乾燥機で8時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業社製「SH100」、型締め力100T)を用いて、樹脂温度(パージ樹脂の実測温度)260℃、金型温度80℃にて、縦100mm、横100mm、厚み2mmの成形品を射出成形し、得られた射出成形品を市販の2液エポキシ系接着剤にて5枚を重ねて接着して、(株)アドバンテスト製「TR−17301A」と「R3361A」を用いて、周波数10、100、200、600、1000MHzにおける電界波シールド性、周波数400、600、800、1000MHzにおける磁界波シールド性を測定した。この値は、電気用品安全法による製品試験値によって必要値が定められており、また製品から発生する周波数やその強さにも依存するため一概に決められる値ではないが、−10dB以下であることが好ましい。
下記記載のポリアミド樹脂組成物を120℃の減圧乾燥機で8時間乾燥後、先端に600mm幅のTダイを装着した直径40mm単軸押出機で、シリンダ温度270℃で押出し、ダイス温度275℃、ロール温度60℃で、厚み100μmのフラットフィルムに押出成形した。得られたフィルムを100mm×100mmに切り出し、市販の2液のエポキシ系接着剤で10枚を重ねて接着して、射出成形片と同様に電磁波シールド性を測定した。
[射出成形片での測定]
下記記載の方法で得られたポリアミド樹脂組成物を、120℃の減圧乾燥機で8時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業社製「SH100」、型締め力100T)を用いて、樹脂温度(パージ樹脂の実測温度)260℃、金型温度80℃にて、ASTM−D638に準拠した引張試験片を作成した。得られた試験片の両端を、剪定ハサミで切断し、12.7mm×50mm×3mm厚の短冊を切り出し、短冊の両端面(12.7mm×3mm)に銀ペーストを塗布して、23℃で30分間、風乾したものを試験片とした。
測定は、銀ペーストを塗布した両端面の間の抵抗を測定し、体積抵抗率を算出し、これを体積固有抵抗値とした。
尚、測定器は、株式会社三菱化学アナリテック社製「ロレスタEP」及び株式会社三菱化学アナリテック製「ハイレスタUP」を使用した。体積抵抗値が106Ω・cm以下の場合は「ロレスタEP」を用い、それを超える時は「ハイレスタUP」を用いた。プローブはESP型を使用した。
「ハイレスタUP」はリング法を用い、500Vで1分間チャージを行い、測定開始から1分後の値を採用した。体積固有抵抗値が低いほど導電性が優れている。
下記記載の方法で得られたポリアミド樹脂組成物を、120℃の減圧乾燥機で8時間乾燥後、先端に600mm幅のTダイを装着した直径40mm単軸押出機で、シリンダ温度270℃で押出し、ダイス温度275℃、ロール温度60℃で、厚み100μmのフラットフィルムに押出成形した。得られたフィルムをカッターを用いて100mm×100mmに切り出し、その両端に銀ペーストを塗布後、射出成形品同様の方法で、体積固有抵抗値を測定した。
ε−カプロラクタム、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ヘキサメチレンジアミンは、いずれも市販品を使用した。
ε−カプロラクタム:三菱化学株式会社製
アジピン酸:旭化成ケミカルズ株式会社製
セバシン酸:小倉合成株式会社製
アゼライン酸:cognis社製
ドデカン二酸:宇部興産株式会社製
ヘキサメチレンジアミン:旭化成ケミカルズ株式会社製
以下の操作により、ペンタメチレンジアミンを調製した。
cadA増幅株を用い、リジン・アジピン酸塩を原料とし、以下の方法でペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液調製した。
培養開始6時間後、この培養液全量を、3m3の2×LB培地が入った5m3容培養タンクに接種して更に培養を行った。5m3容培養タンクでの培養条件は、通気量0.5vvm、35℃であった。撹拌回転数は溶存酸素濃度が十分高い値になるように60rpm〜100rpmの範囲で調節した。培養4時間目に、滅菌したIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を終濃度で0.5mMになるように添加し、その後14時間培養を継続した。
JM109/pCAD1の菌体をOD660が0.5になるように添加して反応を開始した。
また、リジン濃度318g/Lの基質濃厚溶液(600L)を開始から約130L/hで連続的にフィードし、約4.5時間で全量を添加した。さらに反応を継続して計22時間反応させた。
反応後の溶液(約4m3)は、菌体の不活化処理(80℃、30min)を実施したのち、分子量13,000以上をカットするUF膜モジュールACP−3053(旭化成工業株式会社製)を通して高分子量体の不純物除去を行った。
UF処理による回収率は99.3%であった。以上のようにして、ほぼペンタメチレンジアミンとアジピン酸をほぼ等モル含むペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を取得した。
直径700mmの活性炭塔に三菱化学カルゴン株式会社製活性炭「MM−11」(105kg、約440L)を仕込み、2日間脱塩水を通水した。次に、上記のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液(約4m3)を1.32m3/hの速度で通液し、最後に500Lの脱塩水を通水した。初期460Lをパージした後、活性炭処理したペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液を採取した。
活性炭処理前はペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液4076.5kg、含有するペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩603.9kgであった。活性炭処理後はペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液5029kg、含有するペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩603.7kgであった。
濃縮液の重量は918.4kg、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩濃度は63.5重量%であった。
内温37.4℃のときに、予め作成したペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩を種晶として1kg添加して結晶を析出させ、内温10.5℃で晶析終了として、ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩スラリーを得た。尚、種晶としてのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩は、本実施例に準じてラボスケールにて準備した。
次いで、予め窒素置換した1m3のステンレス製容器に、脱塩水(100kg)と、含水率が約15重量%のペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩(250kg)とを仕込み、撹拌して溶解させた。
次に、この溶解液中に25重量%の水酸化ナトリウム水溶液(273.8kg)を仕込み、中和した(即ち、ペンタメチレンジアミンを脱塩して遊離アミンとした)。溶解液中に水酸化ナトリウム水溶液を仕込む際は、溶解液の内温が70℃を超えないように調整した。
中和処理を行った溶解液を、内温50℃、減圧度50Torrの条件で水を留去し、次いで、内温80℃、減圧度20Torrの条件でぺンタメチレンジアミンを蒸留した。得られたペンタメチレンジアミンを内温80℃、減圧度20Torrの条件で再度蒸留を行い、ナトリウム含有率が約2ppmのペンタメチレンジアミンを得た。
(1)ポリアミド6
ε−カプロラクタム50kg、脱塩水1.5kg、及び亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素置換した後に100℃にて溶解した。この原料水溶液をオートクレーブに移送し、ジャケット温度を280℃に設定して加熱を開始した。内容物を270℃迄昇温した後、オートクレーブの圧力を徐々に放圧し、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後、窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットに対し、得られたペレットの1.5倍量の沸騰水を使用して未反応のモノマー、オリゴマーを抽出除去した。未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド6を得た。
ポリアミド6の相対粘度(ηr)は2.8、吸熱ピーク温度は224℃、末端アミノ基濃度は32μeq/gであった。
濃度50重量%、数量100kgのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アジピン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。プランジャーポンプにて予め窒素置換したオートクレーブに、上記の原料水溶液を移送した。ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド56を得た。
ポリアミド56の相対粘度(ηr)は2.8、吸熱ピーク温度は232℃と255℃であり、末端アミノ基濃度は33μeq/gであった。
濃度50重量%、数量100kgのペンタメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。プランジャーポンプにて予め窒素置換したオートクレーブに、上記の原料水溶液を移送した。ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド510を得た。
ポリアミド510の相対粘度(ηr)は2.5、吸熱ピーク温度は176℃と219℃であり、末端アミノ基濃度は35μeg/gであった。
濃度50重量%、数量100kgのペンタメチレンジアミン・アゼライン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アゼライン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。以降は(2)ポリアミド56の製造と同様にして、ポリアミド59を得た。
ポリアミド59の相対粘度(ηr)は2.8、吸熱ピーク温度は190℃と210℃であり、末端アミノ基濃度は32μeq/gであった。
濃度50重量%、数量100kgのペンタメチレンジアミン・ドデカン二酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、ドデカン二酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。以降は(2)ポリアミド56の製造と同様にして、ポリアミド512を得た。
ポリアミド512の相対粘度(ηr)は2.8、吸熱ピーク温度は173℃と211℃であり、末端アミノ基濃度は32μeq/gであった。
濃度50重量%、数量100kgのヘキサメチレンジアミン・セバシン酸塩水溶液となるように、ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらに亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ、原料水溶液を得た。プランジャーポンプにて予め窒素置換したオートクレーブに、上記の原料水溶液を移送した。ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。得られたペレットは、120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥し、ポリアミド610を得た。
ポリアミド610の相対粘度(ηr)は2.8、吸熱ピーク温度は222℃、末端アミノ基濃度は33μeg/gであった。
濃度50重量%、数量80kgのペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩水溶液となるように、ペンタメチレンジアミン、アジピン酸、及び脱塩水を容器に入れ、さらにε−カプロラクタム10kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物3.48g、及びペンタメチレンジアミン135gを容器に入れ、窒素雰囲気下で混合物を溶解させ原料水溶液を得た。プランジャーポンプにて予め窒素置換したオートクレーブに、上記の原料水溶液を移送した。ジャケット温度を280℃に、オートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物を270℃に昇温した。次に、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、更に減圧して所定の撹拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後に窒素にて復圧し、内容物をストランド状に冷却水槽へ導入した後、回転式カッターでペレット化した。
得られたペレットに対し、得られたペレットの1.5倍量の沸騰水を使用して未反応のモノマー、オリゴマーを抽出除去した。未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1重量%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド56/6(56/6仕込み重量比=80/20)を得た。
ポリアミド56/6の相対粘度(ηr)は3.5、末端アミノ基濃度は38μeg/gであった。吸熱ピーク温度は181℃と216℃であった。
中空炭素フィブリルとしては、DBP吸油量256ml/100gの三菱化学(株)製カーボンナノチューブ「MC−4」を、ピンミル型粉砕機(槙野産業社製「コロプレックス160Z」)を用い、回転数12000rpmで予め粉砕処理してから用いた。
また、導電性カーボンブラックとしては、DBP吸油量140ml/100gの三菱化学(株)製カーボンブラック「#3230MJ」を用いた。
二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX−30α」)を用い、表1に示すポリアミド樹脂と導電性付与剤(表1中、中空炭素フィブリルは「CNT」と表記し、導電性カーボンブラックは「CB」と表記する。)とを表1に示す配合でシリンダ設定温度265℃、スクリュ回転数250rpm、吐出量20kg/時間で溶融混練して、導電性ポリアミド樹脂ペレットを製造した。
このポリアミド樹脂ペレットを用いて、必要な試験片を成形し、各評価を行い、結果を表1に示した。
Claims (10)
- ポリアミド樹脂と導電性付与剤とを含み、該ポリアミド樹脂が、ペンタメチレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂(以下、このポリアミド樹脂を「ポリアミド5X」と称す。)であり、
前記導電性付与剤が導電性カーボンブラックを含み、該導電性カーボンブラックの含有量が該ポリアミド5X100重量部に対して10〜300重量部であり、
周波数10〜800MHzにおいて測定した電界シールド性が−10dB以下かつ周波数400〜1000MHzにおいて測定した磁界シールド性が−10dB以下であることを特徴とする電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物。 - ポリアミド樹脂と導電性付与剤とを含み、該ポリアミド樹脂が、ペンタメチレンジアミンを含むジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として用いる重縮合反応により得られる重縮合体に相当する構造を有するポリアミド樹脂(以下、このポリアミド樹脂を「ポリアミド5X」と称す。)であり、
前記導電性付与剤が中空炭素フィブリルを含み、該中空炭素フィブリルの含有量が該ポリアミド5X100重量部に対して2.2〜50重量部であり、
周波数10〜800MHzにおいて測定した電界シールド性が−10dB以下かつ周波数400〜1000MHzにおいて測定した磁界シールド性が−10dB以下であることを特徴とする電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物。 - 請求項1又は2において、前記ポリアミド5Xは、示差走査熱量測定法による測定で2つの吸熱ピークを有することを特徴とする電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項3において、前記2つの吸熱ピークのピークトップの温度差が5〜50℃であることを特徴とする電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記ポリアミド5Xの末端アミノ基濃度が16〜100μeq/gであることを特徴とする電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ポリアミド5Xが、ポリアミド56、ポリアミド59、ポリアミド510、ポリアミド512及びポリアミド56/6からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物を射出成形してなる電磁波シールド性成形品。
- 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電磁波シールド性ポリアミド樹脂組成物を押出成形してなる電磁波シールド性成形品。
- 請求項8において、押出成形品がフィルム状であり、その厚みが5〜200μmであることを特徴とする電磁波シールド性成形品。
- 少なくともその一部が請求項7ないし9のいずれか1項に記載の成形品で構成されていることを特徴とする自動車・鉄道車両用部品又は電気・電子・OA用部品。
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