JP5693881B2 - ポリアミド組成物、ポリアミド組成物のペレット及びポリアミド組成物を含む成形品 - Google Patents

ポリアミド組成物、ポリアミド組成物のペレット及びポリアミド組成物を含む成形品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアミド組成物、ポリアミド組成物のペレット及びポリアミド組成物を含む成形品に関する。
ポリアミド6及びポリアミド66(以下、それぞれ、「PA6」、「PA66」と略称する場合がある。)などに代表されるポリアミドは、成形加工性、機械物性又は耐薬品性に優れていることから、自動車用、電気及び電子用、産業機器用、工業材料用、並びに日用及び家庭品用などの各種部品材料として広く用いられている。
自動車産業において、環境に対する取り組みとして、排出ガス低減のために、金属代替による車体軽量化の要求がある。該要求に応えるために、外装材料や内装材料などにポリアミドが一段と用いられる様になり、ポリアミド材料に対する耐熱性、強度、及び外観などの要求特性のレベルは一層向上している。中でも、エンジンルーム内の温度も上昇傾向にあるため、ポリアミド材料に対する高耐熱化の要求が強まっている。
また、家電などの電気及び電子産業において、表面実装(SMT)ハンダの鉛フリー化に対応すべく、ハンダの融点上昇に耐えることができる、ポリアミド材料に対する高耐熱化が要求されている。
PA6及びPA66などのポリアミドでは、融点が低く、耐熱性の点でこれらの要求を満たすことができない。
PA6及びPA66などの従来のポリアミドの前記問題点を解決するために、高融点ポリアミドが提案されている。具体的には、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド(以下、「PA6T」と略称する場合がある。)などが提案されている。
しかしながら、PA6Tは、融点が370℃程度という高融点ポリアミドであるため、溶融成形により成形品を得ようとしても、ポリアミドの熱分解が激しく起こり、十分な特性を有する成形品を得ることが難しい。
PA6Tの前記問題点を解決するために、PA6TにPA6及びPA66などの脂肪族ポリアミドや、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる非晶性芳香族ポリアミド(以下、「PA6I」と略称する場合がある。)などを共重合させ、融点を220〜340℃程度にまで低融点化したテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンを主成分とする高融点半芳香族ポリアミド(以下、「6T系共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)などが提案されている。
6T系共重合体ポリアミドとして、特許文献1には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなり、脂肪族ジアミンがヘキサメチレンジアミン及び2−メチルペンタメチレンジアミンの混合物である芳香族ポリアミド(以下、「PA6T/2MPDT」と略称する場合がある。)が開示されている。
また、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミドに対して、アジピン酸とテトラメチレンジアミンからなる高融点脂肪族ポリアミド(以下、「PA46」と略称する場合がある。)や、脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる脂環族ポリアミドなどが提案されている。
特許文献2及び3には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなる脂環族ポリアミド(以下、「PA6C」と略称する場合がある。)と他のポリアミドとの半脂環族ポリアミド(以下、「PA6C共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)が開示されている。
特許文献2には、ジカルボン酸単位として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を1〜40%配合した半脂環族ポリアミドからなる電気及び電子部材では、ハンダ耐熱性が向上することが開示され、特許文献3には、該半脂環族ポリアミドからなる自動車部品では、流動性及び靭性などに優れることが開示されている。
特許文献4には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含むジアミン単位とからなるポリアミドが耐光性、靭性、成形性、軽量性、及び耐熱性などに優れることが開示されている。また、該ポリアミドの製造方法として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,9−ノナンジアミンを230℃以下で反応してプレポリマーを作り、そのプレポリマーを230℃で固相重合し融点311℃のポリアミドを製造することが開示されている。
また、特許文献5には、トランス/シス比が50/50から97/3である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を原料として用いたポリアミドが、耐熱性、低吸水性、及び耐光性などに優れることが開示されている。
特表平6−503590号公報 特表平11−512476号公報 特表2001−514695号公報 特開平9−12868号公報 国際公開第2002/048239号パンフレット
6T系共重合ポリアミドは確かに、低吸水性、高耐熱性、及び高耐薬品性という特性を持ってはいるものの、流動性が低く、成形性や成形品表面外観が不十分であり、靭性及び耐光性に劣る。そのため、外装部品のような成形品の外観が要求されたり、日光などに曝されたりする用途では改善が望まれている。また比重も大きく、軽量性の面でも改善が望まれている。
特許文献1に開示されたPA6T/2MPDTは、従来のPA6T共重合ポリアミドの問題点を一部改善することができるが、流動性、成形性、靭性、成形品表面外観、及び耐光性の面でその改善水準は不十分である。
PA46は、良好な耐熱性及び成形性を有するものの、吸水率が高く、また、吸水による寸法変化や機械物性の低下が著しく大きいという問題点を持っており、自動車用途などで要求される寸法変化の面で要求を満たせない場合がある。
特許文献2及び3に開示されたPA6C共重合ポリアミドも、吸水率が高く、また、流動性が十分でないなどの問題がある
特許文献4及び5に開示されたポリアミドも、靭性、剛性、及び流動性の面で改善が不十分である。
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性に優れ、さらに成形性及び熱安定性に優れるポリアミド組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、脂環族ジカルボン酸と、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンと、を主たる構成成分として重合させたポリアミドと、成形性改良剤と、を含有するポリアミド組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b
)少なくとも50モル%の、炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンを含むジアミン
と、
を重合させた、融点が270〜350℃であるポリアミドと、
(B)炭素数8〜40の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高
級脂肪酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1つの成形性改良剤と、
を、含有するポリアミド組成物。
〔2〕
前記炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、前記〔1〕に記載のポリアミド組成物。
〔3〕
前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアミド組成物。
〔4〕
前記ジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔5〕
前記(A)ポリアミドが、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドである、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔6〕
前記(A)ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸全体中のトランス異性体比率が、50〜
85モル%である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔7〕
前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記(B)成形性改良剤0.001〜1
質量部を含有する、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔8〕
前記(B)成形性改良剤の一部又は全部が、
前記(A)ポリアミドのペレット、又は前記(A)ポリアミドと任意に他の成分とを含
むポリアミド組成物のペレットの表面に付着している、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物のペレット。
〔9〕
前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物を含む成形品。
本発明によれば、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性に優れ、さらに成形性及び熱安定性に優れるポリアミド組成物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
〔ポリアミド組成物〕
本実施形態のポリアミド組成物は、(A)ポリアミドと、(B)成形性改良剤と、を含有するポリアミド組成物である。
((A)ポリアミド)
本実施形態のポリアミド組成物において用いられる(A)ポリアミドは、下記(a)及び(b)を重合させたポリアミドである。
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸。
(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミン。
本実施形態において、ポリアミドとは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体を意味する。
<(a)ジカルボン酸>
本実施形態のポリアミド組成物に用いられる(a)ジカルボン酸は、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含む。
(a)ジカルボン酸として、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むことにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
(a−1)脂環族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸とも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの、脂環構造の炭素数が3〜10である、好ましくは炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、耐熱性、流動性、及び剛性などの観点で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸には、トランス体とシス体の幾何異性体が存在する。
原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス体とシス体のどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体の種々の比率の混合物として用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることや、シス体の方がトランス体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとして、トランス体/シス体比が、モル比にして、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)やNMRにより求めることができる。
本実施形態のポリアミド組成物に用いられる(a)ジカルボン酸の、(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸などの炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数3〜10のアルキルシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩などのその塩である基などが挙げられる。
(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性などの観点で、好ましくは脂肪族ジカルボン酸であり、より好ましくは、炭素数が6以上である脂肪族ジカルボン酸である。
中でも、耐熱性及び低吸水性などの観点で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸などが挙げられる。
中でも、耐熱性などの観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸成分として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を含んでもよい。
多価カルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸中の(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合は、少なくとも50モル%である。
(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合は、50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましい。脂環族ジカルボン酸の割合が、少なくとも50モル%であることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性などを同時に満足するポリアミドとすることができる。また、耐熱性の観点から、脂環族カルボン酸の割合は、60モル%以上が好ましく、70モル%以上が特に好ましい。
(a)ジカルボン酸中の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
本実施形態のポリアミド組成物に用いられる(a)ジカルボン酸としては、上記ジカルボン酸として記載の化合物に限定されるものではなく、上記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。
ジカルボン酸と等価な化合物としては、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物などが挙げられる。
<(b)ジアミン>
本実施形態のポリアミド組成物に用いられる(b)ジアミンは、少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含む。
(b)ジアミンとして、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを少なくとも50モル%含むことにより、流動性、靭性、及び剛性などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
主鎖から分岐した置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミンなどの炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、剛性などの観点で、2−メチルペンタメチレンジアミンであることが好ましい。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンは、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリアミド組成物に用いられる(b)ジアミンの、(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、及び芳香族ジアミンなどが挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミンなどが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミンなどが挙げられる。
(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性などの観点で、好ましくは脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンであり、より好ましくは、炭素数4〜13の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらに好ましくは、炭素数6〜10の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらにより好ましくはヘキサメチレンジアミンである。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンは、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン成分として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミンなどの3価以上の多価脂肪族アミンを含んでもよい。
多価脂肪族アミンは、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン中の(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合は、少なくとも50モル%である。(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合は、50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましい。(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合が、少なくとも50モル%であることにより、流動性、靭性、及び剛性などに優れるポリアミドとすることができる。
(b)ジアミン中の(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンの割合は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
(b)ジアミンの添加量は、上述した(a)ジカルボン酸の添加量と、同モル量付近であることが好ましい。
重合反応中の(b)ジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸全体のモル量1.00に対して、(b)ジアミン全体のモル量は、好ましくは0.90〜1.20であり、より好ましくは0.95〜1.10であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
<(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸>
本実施形態において用いられる(A)ポリアミドは、靭性の観点で、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させることが好ましい。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、重縮合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸としては、好ましくは、炭素数4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸であり、より好ましくは、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸である。
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)などが挙げられる。
中でも、靭性の観点で、ε−カプロラクタム、ラウロラクタムなどが好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
アミノカルボン酸としては、例えば、前記ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸などが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸などが挙げられ、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸なども挙げられる。
ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の添加量(モル%)は、上述した(a)、(b)及び(c)の各モノマー全体のモル量に対して、0〜20モル%であることが好ましい。
<末端封止剤>
上述した(a)ジカルボン酸、上述した(b)ジアミン、及び必要に応じて(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いて、(A)ポリアミドを重合する際に、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加することができる。
末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類などが挙げられ、ポリアミドの熱安定性の観点で、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。
末端封止剤は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族モノカルボン酸;並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸;などが挙げられる。
モノカルボン酸は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなどの脂環族モノアミン;並びにアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミンなどの芳香族モノアミン;などが挙げられる。
モノアミンは、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
<(a)ジカルボン酸、(b)ジアミンの好適な組み合わせ>
(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンの組み合わせは、下記に限定されるものではなく、(a)少なくとも50モル%以上の(a−1)脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸及び(b)少なくとも50モル%以上の、(b−1)2−メチルペンタメチレンジアミンを含むジアミンの組み合わせが好ましく、(a)少なくとも50モル%以上の(a−1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸、及び(b)少なくとも50モル%以上の、(b−1)2−メチルペンタメチレンジアミンを含むジアミンの組み合わせがより好ましい。
これらの組み合わせを(A)ポリアミドの成分として重合させることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性に優れることを同時に満足する高融点ポリアミドとすることができる。
<(A)ポリアミドの構造>
本実施形態のポリアミド組成物に用いられる(A)ポリアミドにおいて、脂環族ジカルボン酸構造は、トランス異性体及びシス異性体の幾何異性体として存在する。
(A)ポリアミド中における脂環族ジカルボン酸構造のトランス異性体比率は、(A)ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸全体中のトランス異性体である比率を表し、トランス異性体比率は、好ましくは50〜85モル%であり、より好ましくは50〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜80モル%である。
(a−1)脂環族ジカルボン酸としては、トランス体/シス体比(モル比)が50/50〜0/100である脂環族ジカルボン酸を用いることが好ましいが、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンとの重合により得られる(A)ポリアミドとしては、トランス異性体比率が50〜85モル%であることが好ましい。
トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、ポリアミドは、高融点、靭性及び剛性に優れるという特徴に加えて、高いガラス転移温度による熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性及び低吸水性とを同時に満足するという性質を持つ。
ポリアミドのこれらの特徴は、(a)少なくとも50モル%以上の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸、(b)少なくとも50モル%以上の2−メチルペンタメチレンジアミンを含むジアミンの組み合わせからなり、かつトランス異性体比率が50〜85モル%であるポリアミドで特に顕著である。
本実施形態において、トランス異性体比率は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
<(A)ポリアミドの製造方法>
本実施形態において用いられる(A)ポリアミドの製造方法としては、(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つ脂肪族ジアミンを含むジアミンと、を重合させる工程を含む、ポリアミドの製造方法であれば、特に限定されるものではない。
ポリアミドの製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。
ポリアミドの製造方法としては、例えば、以下に例示するように種々の方法が挙げられる:
1)ジカルボン酸及びジアミンの水溶液又は水の懸濁液、又はジカルボン酸及びジアミン塩と他の成分との混合物(以下、本段落において、「その混合物」と略称する。)の水溶液又は水の懸濁液を、加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)、
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)、
3)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」と略称する場合がある。)、
4)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」と略称する場合がある。)、
5)ジカルボン酸及びジアミン又はその混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と略称する場合がある)、
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド及びジアミンを用いて重合させる方法「溶液法」。
ポリアミドの製造方法においては、脂環族ジカルボン酸のトランス異性体比率を50〜85%に維持して重合することが好ましく、ポリアミドの流動性の観点から、50〜80%に維持して重合することがより好ましい。
トランス異性体比率を上記範囲内に、特に、80%以下に維持することにより、色調や引張伸度に優れ、高融点のポリアミドを得ることができる。
ポリアミドの製造方法において、重合度を上昇させてポリアミドの融点を上昇させるために、加熱の温度を上昇させたり、及び/又は加熱の時間を長くしたりする必要が生ずるが、その場合、加熱によるポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下が起こる場合がある。また、分子量の上昇する速度が著しく低下する場合がある。
ポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下を防止することができるため、トランス異性体比率を80%以下に維持して重合することが好適である。
ポリアミドを製造する方法としては、トランス異性体比率を80%以下に維持することが容易であるため、また、得られるポリアミドが色調に優れるため、1)熱溶融重合法及び2)熱溶融重合・固相重合法によりポリアミドを製造することが好ましい。
ポリアミドの製造方法において、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。
重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型反応器、タンブラー型反応器、及びニーダーなどの押出機型反応器などが挙げられる。
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、以下に記載するバッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
バッチ式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒として、ポリアミド成分((a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び、必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、以下に記載する連続式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
連続式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒としてポリアミド成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮層/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、その後、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物は押し出されてストランドとなり、冷却、カッティングされペレットとなる。
<(A)ポリアミドの物性>
<分子量>
本実施形態のポリアミド組成物に含まれる(A)ポリアミドの分子量は、25℃の相対粘度ηrを指標とする。
(A)ポリアミドの分子量は、靭性及び剛性などの機械物性並びに成形性などの観点で、JIS−K6810に従って測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度ηrにおいて、好ましくは1.5〜7.0であり、より好ましくは1.7〜6.0であり、さらに好ましくは1.9〜5.5である。
25℃の相対粘度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6810に準じて行うことができる。
<融点>
(A)ポリアミドの融点は、Tm2として、耐熱性の観点から、270〜350℃であることが好ましい。
融点Tm2は、好ましくは270℃以上であり、より好ましくは275℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上である。また、融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。
ポリアミドの融点Tm2を270℃以上とすることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。ポリアミドの融点Tm2を350℃以下とすることにより、押出、成形などの溶融加工でのポリアミドの熱分解などを抑制することができる。
(A)ポリアミドの融点(後述するTm1又はTm2)の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点及び融解熱量の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
<ガラス転移温度Tg>
(A)ポリアミドのガラス転移温度Tgは、90〜170℃であることが好ましい。
ガラス転移温度は、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上である。ガラス転移温度は、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは165℃以下であり、さらに好ましくは160℃以下である。
ガラス転移温度を90℃以上とすることにより、耐熱性や耐薬品性に優れるポリアミドとすることができる。また、ガラス転移温度を170℃以下とすることにより、外観のよい成形品を得ることができる。
ガラス転移温度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
ガラス転移温度の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
((B)成形性改良剤)
本実施形態のポリアミド組成物は、前記(A)ポリアミドと、(B)成形性改良剤と、を含有するポリアミド組成物である。
ポリアミド組成物として、(B)成形性改良剤を含有することにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び剛性などに優れるポリアミドの性質を損なうことなく、ポリアミド組成物としても、耐熱性、流動性、靭性、及び低吸水性などを満足しながら、さらに、特に、成形性及び熱安定性に優れるポリアミド組成物とすることができる。
PA6及びPA66などのポリアミドでは、融点が低く、耐熱性の点でこれらの要求を満たすことができない。
ポリアミド組成物は、成形性改良剤を含有しても、耐光性に優れ、ポリアミド組成物の色調としても優れるものである。
本実施形態のポリアミド組成物において用いられる(B)成形性改良剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1つであり、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸などの炭素数8〜40の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸が挙げられ、ステアリン酸及びモンタン酸などが好ましい。
高級脂肪酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸金属塩とは、前記高級脂肪酸の金属塩である。
金属元素としては、元素周期律表の第1,2,3族元素、亜鉛、及びアルミニウムなどが好ましく、より好ましくはカルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウムなどの第1,2族元素、並びにアルミニウムなどが挙げられる。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、及びモンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウムなどが挙げられ、モンタン酸の金属塩及びステアリン酸の金属塩などが好ましい。
高級脂肪酸金属塩としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸エステルとは、前記高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。炭素数8〜40の脂肪族カルボン酸と炭素数8〜40の脂肪族アルコールとのエステルであることが好ましい。
脂肪族アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びラウリルアルコールなどが挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニルなどが挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸アミドとは、前記高級脂肪酸のアミド化合物である。
高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカアミドなどが挙げられる。
高級脂肪酸アミドとしては、好ましくはステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN−ステアリルエルカアミドであり、より好ましくはエチレンビスステアリルアミド及びN−ステアリルエルカアミドである。
高級脂肪酸アミドとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成形性改良剤としては、成形性改良の効果の観点から、好ましくは、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸アミドであり、より好ましくは、高級脂肪酸金属塩である。
本実施形態におけるポリアミド組成物中の(B)成形性改良剤の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、好ましくは(B)成形性改良剤0.001〜1質量部であり、より好ましくは0.03〜0.5質量部である。
(B)成形性改良剤の含有量が上記範囲内にあることにより、離型性及び可塑化性に優れ、また、靭性に優れるポリアミド組成物とすることができると共に、分子鎖が切断されることによるポリアミドの極端な分子量低下を防止することができる。
(ポリアミド組成物の(A)、(B)以外の成分)
ポリアミド組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ポリアミドに慣用的に用いられる添加剤、例えば、無機充填材、顔料、染料、難燃剤、潤滑剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、有機酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、核剤、ゴム、及び強化剤などを含有することもできる。
(ポリアミド組成物の形態)
本実施形態におけるポリアミドと成形性改良剤とを含有するポリアミド組成物とは、(A)ポリアミドと(B)成形性改良剤とを溶融混練することにより得られる組成物でもあってもよく、(A)ポリアミドの表面に(B)成形性改良剤が付着した組成物であってもよい。
具体的には、前記(B)成形性改良剤の一部又は全部が、前記(A)ポリアミドのペレット、又は前記(A)ポリアミドと任意に他の成分とを含むポリアミド組成物のペレットの表面に付着しているポリアミド組成物のペレットであってもよい。
(ポリアミド組成物の製造方法)
本実施形態におけるポリアミド組成物の製造方法としては、前記(A)ポリアミドと、(B)成形性改良剤とを混合する方法であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミドと成形性改良剤とをヘンシェルミキサーなどを用いて混合し溶融混練機に供給し混練する方法や、単軸又は二軸押出機で溶融状態にしたポリアミドに、サイドフィーダーから成形性改良剤を配合する方法などが挙げられる。
ポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃程度であることが好ましい。
溶融混練時間は、0.5〜5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、公知の装置を用いることができ、例えば、単軸又は二軸押出機、バンバリーミキサー及びミキシングロールなどの溶融混練機などが挙げられる。
また、本実施形態のポリアミド組成物の他の製造方法としては、前記(A)ポリアミドと、展着剤としてポリエチレングリコールとをタンブラーで混合した後、前記(B)成形性改良剤を添加し、タンブラーで混合することにより、(A)ポリアミドの表面に(B)成形性改良剤を付着させる方法や、前記(B)成形性改良剤の軟化温度以上に加熱した前記(A)ポリアミドをワックスブレンダーにより混合することにより、ポリアミドの表面に成形性改良剤を付着させる方法などが挙げられる。
(ポリアミド組成物の物性)
<25℃の相対粘度ηr、融点Tm2、ガラス転移温度Tg>
本実施形態のポリアミド組成物の25℃の相対粘度ηr、融点Tm2、ガラス転移温度Tgは、前記ポリアミドにおける測定方法と同様の方法により測定することができる。
また、ポリアミド組成物における測定値が、前記ポリアミドの測定値として好ましい範囲と同様の範囲にあることにより、耐熱性、成形性、及び耐薬品性に優れる、高い融点を有するポリアミド組成物を得ることができる。
<引張強度>
ポリアミド組成物の引張強度は、好ましくは70MPa以上であり、より好ましくは80MPa以上であり、さらに好ましくは85MPa以上である。
引張強度の測定は、下記実施例に記載するように、ASTM D638に準じて行うことができる。
引張強度が70MPa以上であることにより、剛性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
<引張伸度>
ポリアミド組成物の引張伸度は、好ましくは3%以上であり、より好ましくは4%以上であり、さらに好ましくは5%以上である。
引張伸度の測定は、下記実施例に記載するように、ASTM D638に準じて行うことができる。
引張伸度が3%以上であることにより、靭性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
<吸水率>
ポリアミド組成物の吸水率は、好ましくは5.0%以下であり、より好ましくは4.0%以下であり、さらに好ましくは3.0%以下である。
吸水率は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
吸水率が5.0%以下であることにより、低吸水性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
<色調b値>
ポリアミド組成物の色調b値は、黄色度の指標であり、好ましくは、−4以下であり、より好ましくは−5以下である。
色調b値は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
色調b値が−4以下であることにより、熱安定性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
〔ポリアミド組成物を含む成形品〕
本実施形態のポリアミド組成物を含む成形品は、公知の成形方法、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いてポリアミド組成物から得ることができる。
ポリアミド組成物から得られる成形品は、耐熱性、靭性、成形性、及び低吸水性に優れ、さらに剛性に優れる。したがって、本実施形態のポリアミド組成物は、自動車用、電気及び電子用、産業機器用、及び日用及び家庭品用などの各種部品材料として、また、押出用途などに好適に用いることができる。
自動車用としては、特に限定されるものではなく、例えば、吸気系部品、冷却系部品、燃料系部品、内装部品、外装部品、及び電装部品などに用いられる。
自動車吸気系部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどが挙げられる。
自動車冷却系部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプなどが挙げられる。
自動車燃料系部品では、特に限定されるものではなく、例えば、燃料デリバリーパイプ及びガソリンタンクケースなどが挙げられる。
内装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、及びトリムなどが挙げられる。
外装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパー、及びドアミラーステイ、ルーフレールなどが挙げられる。
電装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、コネクターやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、及びコンビネーションスイッチなどが挙げられる。
電気及び電子用としては、特に限定されるものではなく、例えば、コネクター、スイッチ、リレー、プリント配線板、電子部品のハウジング、コンセント、ノイズフィルター、コイルボビン、及びモーターエンドキャップなどに用いられる。
産業機器用としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギヤ、カム、絶縁ブロック、バルブ、電動工具部品、農機具部品、エンジンカバーなどに用いられる。
日用及び家庭品用としては、特に限定されるものではなく、例えば、ボタン、食品容器、及びオフィス家具などに用いられる。
押し出し用途としては、特に限定されるものではなく、例えば、フィルム、シート、フィラメント、チューブ、棒、及び中空成形品などに用いられる。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。なお、本実施例において、1Kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
〔原材料〕
本実施例において下記化合物を用いた。
<(A)ポリアミド>
(a)ジカルボン酸
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA) イーストマンケミカル製 商品名 1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体=25/75)
(2)テレフタル酸(TPA) 和光純薬工業製 商品名 テレフタル酸
(3)アジピン酸(ADA) 和光純薬工業製 商品名 アジピン酸
(4)ドデカン二酸(C12DA) 和光純薬工業製 商品名 ドデカン二酸
(b)ジアミン
(5)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MPD) 東京化成工業製 商品名 2−メチル−1,5−ジアミノペンタン
(6)ヘキサメチレンジアミン(HMD) 和光純薬工業製 商品名 ヘキサメチレンジアミン
(7)1,9−ノナメチレンジアミン(NMD) アルドリッチ製 商品名 1,9−ノナンジアミン
(8)2−メチルオクタメチレンジアミン(2MOD) 特開平05−17413号公報に記載されている製法を参考にして製造した。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸
(9)ε−カプロラクタム(CPL) 和光純薬工業製 商品名 ε−カプロラクタム
<(B)成形性改良剤>
(10)モンタン酸カルシウム クラリアント製 商品名 Licomont CaV 102
(11)モンタン酸ナトリウム クラリアント製 商品名 Licomont NaV 101
(12)N−ステアリルエルカ酸アミド 日本精化製 商品名 ニュートロン(登録商標)SNT
(13)モノステアリン酸アルミニウム 和光純薬工業製 商品名 ステアリン酸アルミニウム、モノ
(14)ジステアリン酸アルミニウム 和光純薬工業製 商品名 ステアリン酸アルミニウム、ジ
(15)エチレンビスステアリン酸アミド 花王製 商品名 カオーワックスEB−FF
(16)ステアリン酸カルシウム 和光純薬工業製 商品名 ステアリン酸カルシウム
(17)ステアリン酸ステアリル 和光純薬工業製 商品名 ステアリン酸ステアリル
(18)ステアリン酸 和光純薬工業製 商品名 ステアリン酸
〔ポリアミド成分量の計算〕
(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた全ての(a)ジカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル%は、(原料モノマーとして加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数/原料モノマーとして加えた全ての(b)ジアミンのモル数)×100として、計算により求めた。
また、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた、全ての(a)ジカルボン酸のモル数+(b)全てのジアミンのモル数+(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
なお、上記式により計算する際に、分母及び分子には、追添分として加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数は含まれない。
〔測定方法〕
<(1)融点Tm1、Tm2(℃)>
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。
測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minでサンプルの融点に応じて300〜350℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とし、昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最大ピーク温度を融点Tm2(℃)とし、その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。
なお、ピークが複数ある場合には、ΔHが1J/g以上のものをピークとみなした。
例えば、融点295℃、ΔH=20J/gと、融点325℃、ΔH=5J/gとの二つのピークが存在する場合、融点は325℃とした。
<(2)ガラス転移温度Tg(℃)>
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。
測定条件は、試料をホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させて得られた溶融状態のサンプルを、液体窒素を用いて急冷し、固化させ、測定サンプルとした。
そのサンプル10mgを用いて、昇温スピード20℃/minの条件下、30〜350℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度を測定した。
<(3)トランス異性体比率>
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、1H−NMRで測定した。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積とシス異性体に由来する1.77ppmと1.86ppmのピーク面積の比率からトランス異性体比率を求めた。
<(4)25℃の相対粘度ηr>
JIS−K6810に準じて実施した。
具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作製し、25℃の温度条件下で測定した。
<(5)色調b値>
ポリアミド組成物ペレットを用いて、ASTM引張試験(ASTM D638)用のダンベル試験片(3mm厚)の金型を取り付けた射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)により、射出成形条件はシリンダ温度をTm2+30℃、金型温度Tg+20℃、成形サイクル60秒として、ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(ASTMダンベル、3mm厚)を得た。
日本電色社製色差計ND−300Aを用いて、色調b値を求めた。
測定は、ダンベル射出成形試験片3枚を用い、反ゲート側の幅広部の中央位置について1枚ずつ3回測定し、平均値から求めた。
なお、後述する製造例1のポリアミドの測定においては、以下も同様に、ポリアミドペレットを用いてASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片を用いた。
<(6)引張強度(MPa)及び引張伸度(%)>
上記(5)と同様にして成形したASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を用いて、ASTM D638に準じて測定した。
<(7)吸水率(%)>
上記(5)と同様にして成形したASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を成形後の絶乾状態(dry as mold)で、試験前質量(吸水前質量)を測定した。
80℃の純水中に24時間浸漬させた。
その後、水中から試験片を取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定した。
吸水前質量に対しての吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を、試行数n=3で求め、その平均値を吸水率(%)とした。
<(8)可塑化性>
上記(5)と同様にして成形したASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を成形する際の可塑化性を評価した。
成形機のホッパーからのフィード、スクリューの噛み込みについて、ポリアミド組成物の可塑化性の指標として、基準は以下の通りとした。
◎:フィード、噛み込みとも非常に安定している。
○:フィード、噛み込みともほぼ安定している。時々、異音が発生する。
△:フィード、噛み込みは比較的不安定であるが、成形は可能。
<(9)離型性>
上記(5)と同様にして成形したASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を成形する際の離型性を評価した。
ポリアミド組成物の離型性の指標として、基準は以下の通りとした。
◎:問題なく離型する。(全自動での成形が可能なレベル)
○:問題なく離型する時と離型しないときがある。(半自動では成形可能なレベル)
△:ほとんど離型せず、成形品の取り出しに人手が必要。
<(10)モールドデポジット>
上記(5)と同様にして成形したASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を成形する際の金型に付着する物質の量を評価した。
ポリアミド組成物のモールドデポジットの指標として、基準は以下の通りとした。
◎:成形時の付着物はほとんどなし。
○:成形時の付着物は微量存在するが、そのまま成形が可能。
△:成形時の付着物は比較的多いが、金型をふき取りながら成形は可能。
<(11)包装性>
実施例、比較例で得られたポリアミド組成物ペレット25kgを、内寸が85cm×45cm×10cmの、ポリエチレンを内側にラミネートしたアルミ袋を用いて包装できるかどうかを評価した。
袋にペレット25kgを入れ、上部から5cmのところをヒートシールができる場合は包装可能、ペレットが上部まで達し、ヒートシールができない場合を包装不可能と判断した。
10回同様の試験を行い、包装可能であった回数を評価した。
〔製造例1〕
「熱溶融重合法」でのポリアミド重合を実施した。
(a)CHDA896g(5.20モル)、及び(b)2MPD604g(5.20モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作った。該均一水溶液中に2MPD15g(0.13モル)を追添した。
得られた水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧(株)製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。
次に、液温を約50℃から、槽内の圧力がゲージ圧(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)にして約2.5Kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約145℃だった)。
槽内の圧力を約2.5Kg/cm2に保つため、水を系外に除去しながら加熱を続けて、水溶液の濃度が約75%になるまで濃縮した(この系での液温は約160℃だった)。
水の除去を止め、槽内の圧力が約30Kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約245℃だった)。槽内の圧力を約30Kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、液温が300℃になるまで加熱を続けた。液温が300℃まで上昇した後に、加熱は続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで120分ほどかけながら降圧した。
その後、樹脂温度(液温)の最終温度が約350℃になるようにヒーター温度を調整した。
樹脂温度はその状態のまま、槽内を真空装置で400torrの減圧下に30分維持した。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミドを得た。
〔製造例2〜11〕
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、下記表1に記載の化合物と量を用いたことと、液温の最終温度を下記表1に記載の温度にしたこと以外は、前記製造例1に記載した方法(「熱溶融重合法」)でポリアミドの重合を行った。
Figure 0005693881
〔比較製造例1〕
(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンとして、下記表2に記載の化合物と量を用いたことと、液温の最終温度を下記表2に記載の温度にしたこと以外は、前記製造例1に記載した方法(「熱溶融重合法」)でポリアミドの重合を行った。
重合途中で、オートクレーブ内で固化したため、ストランドでの取り出しができなかったので、冷却後、塊で取り出し、粉砕機にて粉砕して、ペレットくらいの大きさにした。
〔比較製造例2〜7〕
(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンとして、下記表2に記載の化合物と量を用いたことと、液温の最終温度を下記表2に記載の温度にしたこと以外は、前記製造例1に記載した方法(「熱溶融重合法」)でポリアミドの重合を行った。
Figure 0005693881
〔実施例1〕
ポリアミドとして前記製造例1のポリアミドを、成形性改良剤としてモンタン酸カルシウムを用いた。
前記製造例1のポリアミドを窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%に調整して用いた。
2軸押出機[東芝機械(株)製TEM35、L/D=47.6(D=37mmφ)]を用いて、設定温度は前記製造例1のポリアミドの融点(Tm2)+20℃(具体的には、327+20=347℃)、スクリュー回転数300rpm、吐出量50kg/hrにて、押出機最上流部に設けられたトップフィード口より(A)ポリアミド及び(B)成形性改良剤を予めブレンドしたものを供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてポリアミド組成物ペレットを得た。
配合量は(A)ポリアミド100質量部に対して、(B)成形性改良剤0.1質量部とした。得られたポリアミド組成物の測定結果を下記表3に示す。
〔実施例2〜9〕
モンタン酸カルシウムに代えて、下記表3に記載の(B)成形性改良剤を用いる以外は前記実施例1と同様に実施した。得られたポリアミド組成物の測定結果を下記表3に示す。
Figure 0005693881
〔実施例10〜19〕
前記製造例1のポリアミドに代えて、前記製造例2〜11のポリアミドを用いる以外は実施例1と同様に実施した。得られたポリアミド組成物の測定結果を下記表4に示す。
Figure 0005693881
〔比較例1〕
前記製造例1のポリアミドに代えて、前記比較製造例1のポリアミドを用いる以外は実施例1と同様に実施しようとしたが、押出状態が非常に不安定で、ポリアミド組成物を得ることができなかった。
〔比較例2〜7〕
前記製造例1のポリアミドに代えて、前記比較製造例2〜7のポリアミドを用いる以外は実施例1と同様に実施した。得られたポリアミド組成物の測定結果を下記表5に示す。
製造例1のポリアミドについて、成形改良剤を加えず、その他は実施例1と同様に実施した。この製造例1のポリアミドに対する測定結果を、併せて下記表5に示す。
Figure 0005693881
前記表3及び表4の結果から、特定の(a)及び(b)を重合させたポリアミドと成形性改良剤とを含有する実施例1〜19のポリアミド組成物は、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、強度、成形性(可塑化性、離型性)、及び熱安定性(モールドデポジット)の全ての点で特に優れた特性を有するものであった。
50モル%未満の主鎖から分岐した置換基を持つジアミン(2−メチルペンタメチレンジアミン)を重合させたポリアミド(比較製造例1)を含有する比較例1では、押出状態が不安定なものであり、ポリアミド組成物を得ることができなかった。
また、50モル%未満の脂環族ジカルボン酸を重合させたポリアミド(比較製造例2及び3)を含有する比較例2及び3のポリアミド組成物では、低吸水性及び耐熱性の点で劣るものであった。同様に、50モル%未満の脂環族ジカルボン酸を重合させたポリアミド(比較製造例6)を含有する比較例6のポリアミド組成物では、剛性及び耐熱性の点で劣るものであった。
さらに、脂環族ジカルボン酸の代わりに芳香族ジカルボン酸を用いたポリアミド(比較製造例4や比較製造例5)を含有する比較例4及び5のポリアミド組成物では、成形品は色調に劣り、また引張伸度が小さく、靭性が十分ではなかった。
PA66(比較製造例7)を含有する比較例7のポリアミド組成物では、耐熱性及び低吸水性の点で劣るものであった。
〔実施例20〕
ポリアミドとして、前記製造例1のポリアミドペレット25kgと、展着剤としてポリエチレングリコール7.5g(和光純薬工業製 商品名:ポリエチレングリコール400)とを、タンブラー[(株)プラテック製SKD−25S]に投入し、22rpmで10分間混合した後、成形性改良剤としてモンタン酸カルシウム17.5gを投入して、22rpmでさらに10分間混合し、ポリアミドの表面に成形性改良剤を付着させたポリアミド組成物ペレットを得た。
タンブラーから排出する際に、得られたポリアミド組成物ペレットの包装性を評価した。評価結果を下記表6に示す。
〔実施例21及び22〕
下記表6に記載のポリアミドを使用する以外は、実施例20と同様に実施した。評価結果を下記表6に示す。
〔比較例8〕
ポリアミドとして下記製造例1のポリアミドペレット25kgのみを、上記タンブラーに投入し、22rpmで10分間攪拌した後、タンブラーから排出する際に包装性を評価した。評価結果を下記表6に示す。
〔比較例9、10、比較例11〜14〕
下記表6に記載のポリアミドを使用する以外は、比較例8と同様に実施した。
評価結果を表6に示す。
Figure 0005693881
表6の結果から、特定の(a)及び(b)を重合させたポリアミドペレットの表面に成形性改良剤を付着させた実施例20〜22のポリアミド組成物ペレットは、成形性改良剤をペレットの表面の付着させなかった比較例8〜10と比較して、安定して包装することができることがわかる。安定して包装できることは生産効率の向上に繋がる。一方、この包装性に関する課題は、比較例11〜14からわかるように、従来のポリアミドにはなかった課題であり、本発明のポリアミドに特有の課題であった。
本発明によれば、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性に優れ、さらに成形性及び熱安定性に優れるポリアミド組成物を提供することができる。そして、本発明のポリアミド組成物は、自動車用、電気及び電子用、産業機器用、工業材料用、日用及び家庭品用など各種部品の成形材料として好適に使用することができるなど、産業上の利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. (A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b
    )少なくとも50モル%の、炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンを含むジアミン
    と、
    を重合させた、融点が270〜350℃であるポリアミドと、
    (B)炭素数8〜40の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高
    級脂肪酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1つの成形性改良剤と、
    を、含有するポリアミド組成物。
  2. 前記炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミ
    ンである、請求項1に記載のポリアミド組成物。
  3. 前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、請求項1又
    は2に記載のポリアミド組成物。
  4. 前記ジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、請求項1乃
    至3のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
  5. 前記(A)ポリアミドが、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合
    させたポリアミドである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
  6. 前記(A)ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸全体中のトランス異性体比率が、50〜85モル%である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
  7. 前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記(B)成形性改良剤0.001〜1質量部を含有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
  8. 前記(B)成形性改良剤の一部又は全部が、
    前記(A)ポリアミドのペレット、又は前記(A)ポリアミドと任意に他の成分とを含
    むポリアミド組成物のペレットの表面に付着している、請求項1乃至のいずれか一項に記載のポリアミド組成物のペレット。
  9. 請求項1乃至のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を含む成形品。
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