JP2013053244A - ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温環境下での機械的特性、表面平滑性を向上させたポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】テレフタル酸成分と炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジアミン成分とからなるポリアミド樹脂100質量部および繊維状粘土鉱物0.5〜30質量部を含有してなるポリアミド樹脂組成物。
【効果】高温環境下での曲げ特性と表面平滑性を兼ね備えているため、自動車のエンジン周辺部品として、優れた耐熱性、剛性とともに、特にエンジン給排気系の配管部品とした場合、高温耐久性、給排気効率を高めることが可能となる。
【選択図】なし

Description

本発明は、高温環境下での機械的特性、表面平滑性を向上させたポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミド6T、ポリアミド9Tに代表される半芳香族ポリアミドは、耐熱性、機械特性に加え、低吸水性に優れ、多くの電気・電子部品、自動車のエンジン周りの部品として使用されている。
一方、ポリイミド、液晶ポリエステルに代表される高耐熱材料は、電気、電子部品の基板材料として用いられている。しかしながら、このような材料は、性能面で非常に優れるものの、非常に高価であり加工適性に劣るため、前記半芳香族ポリアミドをこのような用途で用いることが検討されている。
ポリアミド6Tは、そのホモポリマーの融点が370℃と高すぎるため、溶融加工時のポリアミド6Tの熱分解を抑制することができなくなってしまう。そのため、ポリアミド6Tは、共重合成分を多く導入することにより、融点を十分に下げた状態で使用されている。しかし、このような共重合されたポリアミド6Tは、結晶性が損なわれ、結晶化を速めることはできなかった。
特許文献1には、ポリアミド10Tに対してガラス繊維を含有させたポリアミド成形体が開示されている。しかしながら、このような成形体は、ガラス繊維を多量に用いないと必要な機械特性を得ることはできず、反面含有するガラス繊維によって得られる成形体の表面平滑性が損なわれ問題があった。
特許文献2には、ポリアミド6T/10Tに対して有機クレーからなる層状シリケートを含有させたポリアミド組成物が開示されている。このようなポリアミド組成物は、前記ガラス繊維を含有させた組成物よりも得られる成形体の表面平滑性を改善することができたが、結晶化に要する時間が長いため、射出成形を行う場合に短時間で金型からの取出し可能なまで、十分に結晶化を速め、高温環境下での機械的特性を向上させたポリアミド樹脂組成物は得られていなかった。
特開平6−239990号公報 特開2010−159414号公報
本発明は、高温環境下での機械的特性、表面平滑性を向上させたポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)テレフタル酸成分と炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジアミン成分とからなるポリアミド樹脂100質量部および繊維状粘土鉱物0.5〜30質量部を含有してなるポリアミド樹脂組成物。
(2)繊維状粘土鉱物がセピオライトおよび/またはパリゴルスカイトであることを特徴とする(1)のポリアミド樹脂組成物。
(3)さらに、繊維状粘土鉱物100質量部に対してカップリング剤を0.1〜15質量部を含有してなることを特徴とする(1)または(2)のポリアミド樹脂組成物。
(4)カップリング剤がエポキシ基、ウレイド基、イソシアネート基から選ばれるいずれか1種の反応性を有する基を含むシランカップリング剤であることを特徴とする(3)のポリアミド樹脂組成物。
(5)ポリアミド樹脂、繊維状粘土鉱物、カップリング剤を一括で混合し、溶融混練することを特徴とする(3)または(4)のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明によれば、高温環境下での機械的特性、表面平滑性を向上させたポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミドである。本発明においては、高結晶性の観点から、特定の化学構造を有するジカルボン酸成分とジアミン成分とを用いることが必要である。
ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分は、主成分としてテレフタル酸を用いる必要がある。その理由は、テレフタル酸は、芳香族ジカルボン酸の中でも化学構造の対称性が高く、高い結晶性を有するポリアミド樹脂を得る上で最も好ましいからである。
ポリアミド樹脂を構成するジアミン成分は、得られるポリアミドの溶融加工性の点から炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジアミンである必要があり、いずれかのジアミンを単独で用いることが好ましい。また、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンは、化学構造の対称性が高いため、高い結晶性を有するポリアミド樹脂を得る上で好ましい。
用いられるジアミンの炭素数が、偶数であることが好ましい理由について以下に述べる。一般的に、ポリアミドにおいてはいわゆる偶奇効果が発現する。すなわち、用いられるジアミン成分のモノマー単位の炭素数が偶数である場合には、奇数である場合と比較して、より安定な結晶構造をとるため、結晶性が向上するという効果が発現する。従って、高結晶性の観点から、直鎖脂肪族ジアミンの炭素数は偶数であることが好ましい。
ジアミンの炭素数が8未満の場合には、得られるポリアミド樹脂の融点が340℃を超えて分解温度を上回るため、好ましくない。一方、ジアミンの炭素数が12を超える場合には、得られるポリアミド樹脂の融点が280℃未満となり、実用に供する際に、耐熱性が不足してしまうため好ましくない。炭素数9、11のジアミンでは、ポリアミドの偶奇効果により、結晶性が不足する。
本発明で用いるポリアミド樹脂には、主成分となるテレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分、および/または炭素数が8〜12である直鎖脂肪族ジアミン成分以外の種類のジアミン成分(以下、「共重合成分」と称する場合がある)が共重合されていてもよい。共重合成分は、原料モノマーの総モル数(100モル%)に対し、5モル%以下とすることが好ましく、実質的に共重合成分を含まないことがより好ましい。なぜなら、高結晶性の観点からは、化学構造の不規則な共重合体よりも、規則性の高いホモポリマーに近い構造を有することが好ましいからである。つまり、共重合成分が5モル%を超えると、結晶性が低下し、高結晶性を有するポリアミド樹脂を得ることができない場合がある。
ポリアミド樹脂の共重合成分として用いることが可能なテレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
ポリアミド樹脂の共重合成分として用いることが可能な他のジアミン成分としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミンなどの脂環式ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかを必須のジアミン成分として用いた場合には、それ以外のジアミン成分を共重合成分として用いることができる。
ポリアミド樹脂には、必要に応じて、カプロラクタム等のラクタム類を共重合させてもよい。
ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、15,000〜50,000であることが好ましく、20,000〜50,000であることがより好ましく、26,000〜50,000であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂の重量平均分子量が15,000未満であると得られるポリアミド樹脂の結晶化は速くなるものの、剛性が低下する。ポリアミド樹脂の重量平均分子量が50,000を超えると結晶化は遅くなり、射出成形時の流動性が低下する。
ポリアミド樹脂の相対粘度は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、成形加工が容易なポリアミド樹脂を得ようとすれば、相対粘度を2.0以上とすることが好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、トリアミン量が十分に低減されていることが好ましい。ポリアミド樹脂は、重合時におけるジアミン同士の縮合反応により、トリアミン構造が副生し易い。トリアミン量が多いと、分子鎖中に架橋構造が生成し、その架橋構造は分子鎖の動きや配列を束縛するため、結晶性が低下する。また、トリアミン量が多いと、ゲルが多く発生するため、得られる成形体の表面にフィッシュアイやブツとして存在し、表面外観を損ねる原因となることがある。
そのため、ポリアミド樹脂中に含まれるトリアミン単位は、ジアミン単位の0.3モル%以下であることが必要であり、0.2モル%以下であることが好ましい。ポリアミド樹脂中のトリアミン構造がジアミン単位の0.3モル%を超える場合には、結晶性が低下したり、ゲルが発生して得られる成形体の表面平滑性を損ねたり、色調が低下するという問題が発現することがある。ポリアミド樹脂中のトリアミン量が0.3モル%を超えると、ポリアミド樹脂のゲル化により分子の拘束が起き、結晶性が低下してしまう。その結果、高温環境下での曲げ特性の改善効果が低減してしまう。一方、ポリアミド樹脂中のトリアミン量が0.3モル%以下であると、ポリアミド樹脂と繊維状粘土鉱物の親和性、密着性が向上、また、ポリアミド樹脂組成物の溶融時の流動性が改善し、成形性を向上させることができる。
上記のトリアミン単位をジアミン単位の0.3モル%以下とするためには、テレフタル酸成分とジアミン成分とから塩を生成するに際し、水や有機溶剤の配合量を、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下とすることが必要である。
一般的に、ポリアミドの加熱重合反応を均一的に進行させるために、水の共存下、原料を混合し、加熱して脱水反応を進行させる方法が用いられている。しかしながら、このような方法においては、重合時の水と有機溶剤の合計量が、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部を超えて多くなると、重合度の上昇が抑制されるという問題がある。その場合、アミン末端が多い状態での重合装置中の滞留時間が長くなり、ジアミン同士の縮合反応により副生成するトリアミン量が増加する。その結果、ポリアミドの一部が架橋構造をとり、ゲル化が促進されたり、色調が低下したりする。ゲル化はポリアミドの結晶性の低下や、結晶化速度を遅延させる原因となる。そして、本発明のような半芳香族ポリアミドでは、トリアミンの生成が脂肪族ポリアミドより顕著である。従って、本発明のように、トリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下であるポリアミド樹脂を得るためには、水や有機溶剤の配合量を、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下とすることが必要であり、実質的に水を配合させないことがより好ましい。
本発明で用いる繊維状粘土鉱物は、繊維状の含水マグネシウム珪酸塩鉱物であることが好ましい。なかでも、ポリアミド中への分散の容易性から、特にセピオライト、パリゴルスカイトが好ましく用いられる。
セピオライトはMg(SiO11)・4HOを主成分として含有する天然鉱物であり、パリゴルスカイトはMgAlSi20(OH)・8HOを主成分として含有する天然鉱物である。なお、パリゴルスカイトにおいては、マグネシウムが鉄やアルミニウムによって置換されていてもよい。
繊維状粘土鉱物の基本的な構造を以下に説明する。
繊維状粘土鉱物は、八面体の酸化マグネシウム層を中心層として、その両側に正四面体の珪酸塩層が配された三層構造を有するものである。この三層構造はX軸方向(繊維長方向)に沿って伸びているため、繊維状粘土鉱物の結晶は繊維状(繊維状結晶)となる。また複数の繊維状結晶が繊維方向に沿って凝集することもある。
また、正四面体の珪酸塩層は数単位ごとにZ軸上で反転して結合しているため、八面体の酸化マグネシウム層は不連続層となり、繊維断面にゼオライト孔を形成する。また、繊維状粘土鉱物は、X軸方向に沿って、多数のシラノール基(Si−OH基)を有しているため、前記ゼオライト孔と粒子間の空隙には水などの極性の高い物質が浸入しやすいという性質を有する。
上記のように繊維状粘土鉱物は、他の粘土鉱物と比較して繊維状でありながらも、多孔性であるため、嵩高い反面、ポリアミド樹脂との親和性に優れ、高密度となることなく樹脂組成物中に配合することができ、効果的に曲げ特性を向上させることができる。さらに、本発明で用いるポリアミド樹脂は結晶性が優れるため、繊維状粘土鉱物の補強効果と相まって機械的特性の向上効果が大きく、他のポリアミド樹脂を用いた場合よりも高温環境下での曲げ特性が非常に優れるものとなる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、繊維状粘土鉱物を0.5〜30質量部が含有させる必要があり、2〜25質量部であることが好ましく、5〜20質量であることがさらに好ましい。繊維状粘土鉱物の含有量が0.5質量部未満では、機械的特性の向上効果が少なく、特に高温環境下での機械的特性を向上させることが困難となる。30質量部を越える場合には、得られた樹脂組成物が脆くなるばかりでなく、溶融混練時の作業性が低下し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得ることが難しくなる。
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物は、カップリング剤を含有することが好ましい。本発明におけるカップリング剤とは、ポリアミド樹脂および繊維状粘土鉱物と親和性または反応性を有する官能基を含有する化合物である。カップリング剤によってポリアミド樹脂と繊維状粘土鉱物の界面破壊が抑制され、曲げ強度が向上する。特に繊維状粘土鉱物はその表面にSi−OHが多く存在しているため、他の無機充填材に比べてその効果が非常に大きい。
カップリング剤として用いることのできる化合物としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤が挙げられるが、繊維状粘土鉱物との反応性の観点からシランカップリング剤が好ましい。さらに、繊維状粘土鉱物との反応性の観点からアルコキシシラン化合物が好ましい。
このようなアルコキシシラン化合物の具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリルーN−(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N−フェニルー3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有アルコキシシラン化合物、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのアクリロキシ基含有アルコキシシラン化合物、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。これらの中で、成分(A)との反応性の観点からエポキシ基含有アルコキシシラン、ウレイド基含有アルコキシシラン、イソシアネート基含有アルコキシシランが特に好ましい。
カップリング剤の含有量は、繊維状粘土鉱物100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。カップリング剤の含有量が、繊維状粘土鉱物100質量部に対して0.1質量部未満であると、ポリアミド樹脂と繊維状粘土鉱物との、親和性、密着性の向上効果が不十分となり、曲げ特性の改善ができない。一方、15質量部を超えると、ポリアミド樹脂の粘度増加が顕著となり、生産性が低下してしまうため好ましくない。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、結晶化を速め、成形性を向上させることを目的としているので、結晶化速度が特定の範囲に制御されている必要がある。本発明において、結晶化速度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した過冷却度ΔTを指標とすることができ、ΔTは40℃以下である必要があり、35℃以下であることが好ましい。ΔTが40℃を超えると、結晶性を十分に高めることができず、成形サイクルを短縮することができなかったり、金型からの離型が困難となるため、成形時の連続生産性が低下することがある。
なお、本発明においては、下記式のように、過冷却度ΔTは、当該ポリアミド樹脂組成物の融点(以下、Tmと略称する場合がある)と降温結晶化温度(以下、Tccと略称する場合がある)との差と定義される。
ΔT=Tm−Tcc
上記式においては、示差走査熱量計(DSC)を用いて、不活性ガス雰囲気下、当該ポリアミド樹脂組成物を溶融状態から20℃/分の降温速度で25℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度を融点(Tm)と定義する。また、同様に溶融状態から20℃/分の降温速度で25℃まで降温した場合に現れる発熱ピークの温度を降温結晶化温度(Tcc)と定義する。このΔTが小さい程、ポリアミド樹脂組成物の溶融状態からの結晶化が速いことを示す。
ΔTが40℃以下の範囲を満たすことで、繊維状粘土鉱物による成形体の補強効果と相まって、射出成形時の金型からの取出し時の成形体の剛性が高まるため、繊維状粘土鉱物を含有しないポリアミド樹脂成形体に比べ、冷却時間を短くしても金型内からの成形体の取出しが可能となる。したがって、射出成形によって成形体1個を成形するために要する時間(以下、成形サイクルという)を短縮することができる。このことは、成形体の生産効率を向上させるばかりでなく、特に連続して射出成形を行う場合、射出成形機のシリンダー内に滞留する樹脂の滞留時間の短縮も図ることができるため、樹脂の劣化、分解ガスの発生を抑制し、成形体への前記劣化物、分解ガスの混入、金型汚れを抑制し、成形体の品質向上を図ることができる。金型汚れの抑制は、金型からの取出し時の離型を良好にし、しかも良好な離型性能を継続して維持することができるため、生産ライン等で自動成形を行う場合の離型不良による運転停止を起こすことなく、長時間の連続成形が可能な連続生産性を向上させることができる。
また、本発明で用いるポリアミド樹脂のように、ポリアミド6、ポリアミド66に比べ融点が高く、成形体を得るための樹脂溶融温度が高く、樹脂が長時間にわたって成形機シリンダー内に滞留する場合には、前記樹脂の劣化、分解ガスの発生は著しくなるため、成形サイクルを短くし、溶融樹脂の成形機シリンダー内への滞留を極力抑制することは、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形して耐熱性に優れた成形体を得るための成形体品質面、成形ハンドリング面において好ましいことである。
なお、炭素数が偶数個であるジアミン成分が用いられたポリアミド樹脂は、そもそも高結晶性を有するものである。さらなる高結晶性を達成するために、上述のように、本発明のポリアミド樹脂中の共重合成分を0〜5モル%とすることができる。さらなる高結晶性を達成するためには、上述のように、ポリアミド樹脂中のジアミン単位に対するトリアミン単位を0.3モル%以下としてもよい。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、ポリアミドを製造する方法として従来から知られている加熱重合法や溶液重合法などの方法を用いて製造することができる。中でも、工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、溶融重合法、溶融押出法、固相重合法などが挙げられる。前記ポリアミド樹脂は融点が280℃〜340℃と高く、分解温度に近い。よって、生成ポリマーの融点以上の温度で反応させる溶融重合法や溶融押出法は、製品の品質が低下する場合があるため、不適当な場合がある。そのため、生成ポリマーの融点未満の温度での固相重合法が好ましい。
一般に、ポリアミド樹脂の製造は、モノマーから反応物を得る工程(i)と、このような反応物を重合する工程(ii)からなることが多いが、本発明においては、トリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下であるポリアミドを得るために、工程(i)の段階を、重合系中の水分や溶媒が少ない条件、すなわち、ジカルボン酸とジアミンの合計100質量部に対して、水と有機溶剤の合計量が5質量部以下である水および/または有機溶剤の存在下で実施することが好ましい。
工程(i)の具体例としては、たとえば、溶融状態のジアミンと固体のジカルボン酸からなる懸濁液を攪拌混合し、混合液を得た後、最終的に生成するポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンとの反応による塩の生成と、前記塩の重合による低重合体の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る方法が挙げられる。このような反応物は通常塊状であるため、反応をさせながら破砕を行なうか、反応後に一旦取り出してから破砕を行うことで粉末状の反応物を得ることができる。
工程(ii)の具体例としては、たとえば、工程(i)で得られた反応物を、最終的に生成するポリアミド樹脂の融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、ポリアミド樹脂を得る工程である。固相重合は、重合温度180〜270℃、反応時間0.5〜10時間で窒素などの不活性ガス気流中で行うことが好ましい。
ポリアミド樹脂の製造において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いたり、重合度の調整、熱分解や着色を抑制するため末端封止剤を用いることができる。
重合触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩などが挙げられ、重合触媒の添加量としては、通常、ジカルボン酸とジアミンの総モルに対して、0〜2モル%で用いることが好ましい。
末端封鎖剤としては、酢酸、ラウリン酸、安息香酸などのモノカルボン酸、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンなどのモノアミンが挙げられ、これらいずれか一種、あるいはこれらを組み合わせて用いられる。末端封鎖剤の添加量としては、通常、テレフタル酸とジアミンの総モルに対して0〜5モル%で用いることが好ましい。
繊維状粘土鉱物およびカップリング剤の配合方法は、特に制限はないが、二軸混練機を用いた溶融混練が好適に用いられる。ポリアミド樹脂、繊維状粘土鉱物、カップリング剤を一括混合し溶融混練する方法、溶融したポリアミド樹脂に対し、繊維状粘土鉱物、カップリング剤を順々に添加する方法、予め混合を行った繊維状粘土鉱物、カップリング剤を溶融したポリアミド樹脂に添加する方法等から選ばれる。混練温度はポリアミド樹脂の融点(Tm)以上とする必要があり、(Tm+100℃)未満とすることが好ましい。混練温度がTm未満では混練機が過負荷となり、ベントアップなどの不具合が生じる場合がある。また混練温度が高すぎると、ポリアミド樹脂、カップリング剤の分解、黄変が起こる場合がある。得られたポリアミド樹脂組成物の採取方法は特に限定されるものではないが、その後の成形を考慮すると、ストランドを作製し、ペレット化することが好ましい。
ポリアミド樹脂組成物の溶融時の粘度特性としては、340℃、1.20kgにおけるメルトフローレート(以下、MFRという)が、0.1〜50g/10分であることが好ましく、1〜40g/10分であることがより好ましく、10〜30g/10分であることがさらに好ましい。MFRを0.1〜50g/10分の範囲とすることで、ポリアミド樹脂組成物の射出性成形時の流動性と得られる成形サイクルのバランスを図ることができる。さらに、ポリアミド樹脂組成物の結晶化を速くすることができるため好ましい。MFRが0.1g/10分未満であると流動性が不足し溶融混練や射出成形が困難となる傾向があり、MFRが50g/10分を超えると得られる成形体の機械強度を向上させることが難しくなる。上記粘度特性とするためには、前記ポリアミド樹脂中に含まれるトリアミン単位を、ジアミン単位の0.3モル%以下とすること、用いる繊維状粘土鉱物をポリアミド樹脂100質量部に対し0.5〜30質量部とすることで好ましく実施することができる。
ポリアミド樹脂組成物を用いて成形を行う方法としては、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法等が挙げられるが、本発明で用いるポリアミド樹脂の成形性を十分に向上させることができる点で、射出成形法を好ましく用いることができる。射出成形機としては、特に限定されるものではないが、たとえばスクリューインライン式射出成形機またはプランジャ式射出成形機などが挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、ポリアミド樹脂の融点(Tm)以上で加熱溶融する必要があり、(Tm+100℃)未満とすることが好ましい。なお、ポリアミド樹脂組成物の加熱溶融時には、用いるポリアミド樹脂組成物ペレットは十分に乾燥されたものを用いることが好ましい。含有する水分量が多いと、射出成形機のシリンダー内で樹脂が発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いるポリアミド樹脂組成物ペレットの水分率は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、好ましくは0.3質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。
本発明で用いるポリアミド樹脂組成物を射出成形する場合、金型温度はポリアミド樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)未満に保持する必要があり、(Tg−30℃)未満であることが好ましく、(Tg−50℃)未満であることがより好ましい。金型温度がポリアミド樹脂組成物のTgを超えると、ポリアミド樹脂の繊維状粘土鉱物配合による機械特性向上の効果を十分に引き出すことができない。なお、金型温度とは、金型分割表面の実温であり、この部位が上記温度範囲内になるよう、金型温度調節機を用いて調節する。必要に応じて、金型内に冷媒を循環してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて他の充填材、安定剤などの添加剤を加えてもよい。添加の方法は、ポリアミドの重合時に添加する、または得られたポリアミド樹脂組成物に溶融混練することが挙げられる。添加剤としては、タルク、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイトのような充填材、酸化チタン、カーボンブラックなどのような顔料、そのほか、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤など周知の添加剤が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形用途において特に好ましく用いられ、成形体とされることができる。本発明のポリアミド樹脂組成物から成形体を製造するには、通常の成形加工方法が用いられる。成形加工方法としては、例えば、射出成形、押出成形、吹き込み成形、焼結成形などの熱溶融成形法が挙げられる。このような方法により、各種の成形体が得られる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したΔTが40℃以下の範囲を満たし、結晶化速度が速いため、成形体の加工時、特に射出成形において成形サイクルを短縮することができ、成形コストの低減に寄与することができる。
成形サイクルとは、同じ射出条件で連続して成形した際、1ショット目の成形体の射出が開始してから、2ショット目の成形体の射出が開始するまでの時間をいう。すなわち、一つの成形体を成形するのに要する時間(射出時間+冷却時間+取出し時間の合計)をいう。成形サイクルの短縮とは、上記一つの成形体を成形するのに要する時間中、特に冷却時間の短縮を意味する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、従来より有した機械強度に加えて、高温環境下での曲げ特性と表面平滑性に優れているため、自動車部品、電気電子部品、雑貨、土木建築用品等広範な用途に使用できる。
中でも、繊維状粘土鉱物による補強効果を生かして、耐久消費財用途で用いることが可能であり、自動車部品、電気電子部品に好適に用いることができる。
自動車部品用途においては、エンジンカバー、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエタータンク、ラジエターサポート、ラジエターホース、ラジエターグリル、タイミングベルトカバー、ウォーターポンプレンレット、ウォーターポンプアウトレット、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンマウント等のエンジン周辺部品、プロペラシャフト、スタビライザーバーリンケージロッド、アクセルペダル、ペダルモジュール、シールリング、ベアリングリテーナー、ギア等の機構部品、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、燃料タンク、燃料チューブ、フューエルカットオフバルブ、キャニスター、フューエルデリバリーパイプ、フューエルフィラーネック、フューエルセンダーモジュール、燃料配管用継手等の燃料・配管系部品、ワイヤーハーネス、リレーブロック、センサーハウジング、エンキャプシュレーション、イグニッションコイル、ディストリビューター、サーモスタットハウジング、クイックコネクター、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプソケット等の電装系部品、リアスポイラー、ホイールカバー、ホイールキャップ、カウルベントグリル、エアアウトレットルーバー、エアスクープ、フードバルジ、フェンダー、バックドア、シフトレバーハウジング、ウインドーレギュレータ、ドアロック、ドアハンドル、アウトサイドドアミラーステー等の各種内外装部品等で好適に用いることができる。
電気電子部品用途においては、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、IC、LEDのハウジング等が挙げられる。
これら自動車部品、電気電子部品は、主に射出成形、ブロー成形により成形されるため、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いた場合には、高温環境下での曲げ特性と表面平滑性を兼ね備えた成形体とすることができる。自動車のエンジン周辺部品には、優れた耐熱性、剛性が要求されるが、高温環境下での曲げ特性、配管内部の平滑性の付与が容易であることから、特にエンジン給排気系の配管部品とした場合、高温耐久性、給排気効率を高めることが可能となる。
1.測定方法
以下のような方法にしたがって、樹脂の性能評価を行った。
(1)ポリアミド樹脂の相対粘度
96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
(2)ポリアミド樹脂の重量平均分子量
東ソー社製ゲル浸透クロマトグラフィ装置を用い、下記条件で調整した試料溶液にてGPC分析を行った後、ポリメチルメタクリレート(ポリマーラボラトリーズ社製)を標準試料として作成した検量線を用いて、重量平均分子量を求めた。
<試料調製>
ポリアミド樹脂5mgに10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール2mlを加えて溶解後、ディスクフィルターで濾過した。
<条件>
・検出器:示差屈折率検出器RI−8010(東ソー社製)
・溶離液:10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール
・流速:0.4ml/min
・温度:40℃
(3)ポリアミド樹脂の降温結晶化温度、融点、過冷却度
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温した際の発熱ピークのトップを与える温度を降温結晶化温度(Tcc)、さらに25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温測定した際の吸熱ピークのトップを融点(Tm)とした。融点と降温結晶化温度の差(Tm−Tcc)を過冷却度(ΔT)とした。
(4)ポリアミド樹脂中のトリアミンの定量
ポリアミド樹脂10mgに47%臭化水素酸を3mL加え、130℃で20時間加熱後、蒸発乾固し、さらに80℃2時間減圧乾燥する。これにピリジン2mL、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド1mLを加え、90℃で30分加熱する。冷却後、メンブランフィルターでろ過した溶液を、質量分析計を備えたガスクロマトグラフィー装置で分析した。別に測定した標準物質のジアミンとトリアミンにより得た検量線を用いてポリアミド樹脂中のジアミンとトリアミンを定量し、ジアミンに対するトリアミンのモル比を算出した。トリアミンの標準物質は、酸化パラジウムを触媒として用いて、オートクレーブ中にてジアミンを240℃で3時間加熱撹拌して反応させて得たトリアミン化合物を用いた。
(5)ポリアミド樹脂組成物の比重
ポリアミド樹脂組成物の樹脂ペレットを1g準備し、乾式自動密度計(島津製作所社製アキュピックII 134型)を用い、気体置換型ピノメータ法により測定した。
(6)ポリアミド樹脂組成物の曲げ強度、曲げ弾性率
ASTM D790に準拠して測定した。曲げ強度、曲げ弾性率の測定にあたっては、恒温炉を使用し、23℃、100℃の各温度で測定を行った。
23℃における曲げ強度は250MPa以上、曲げ弾性率は9MPa以上であることが好ましい。100℃における曲げ強度は190MPa以上、曲げ弾性率は7MPa以上であることが好ましい。
(7)表面平滑性
射出成形により得られた60mm×60mm×1mmのプレートについて、表面粗さ測定器(小坂研究所社製サーフコーダSE−3400型)を用いて、任意の10個所の表面での平均粗さ(Rz)(μm)を測定した。本発明においては、平均粗さが10μm以下である場合を◎、10〜20μmである場合を○、20μm以上である場合を×とした。
(8)ゲルの個数
(7)と同様のプレート表面にあるゲルの個数を目視で数えた。5個未満であることが好ましい。
2.原料
実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。
(1)ジカルボン酸成分
・テレフタル酸
・イソフタル酸
(2)ジアミン成分
・1,8−オクタンジアミン
・1,9−ノナンジアミン
・1,10−デカンジアミン
・1,12−ドデカンジアミン
(3)繊維状粘土鉱物
・セピオライト(TOLSA社製PANGEL AD)、平均粒径5μm、比重2.3
・パリゴルスカイト(昭和KDE社製POLEISY)、平均粒径50μm、比重2.1
(4)充填材
・ガラス繊維(旭ファイバーグラス社製03JAFT692)、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm、比重2.54
(4)カップリング剤
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−403)
製造例1
[工程(i)]
ジアミン成分として1,10−デカンジアミン(5050質量部)、平均粒径80μmの粉末状テレフタル酸(4870質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(72質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(6質量部)をオートクレーブに入れ、100℃に加熱後、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数28rpmで撹拌を開始し、1時間加熱した。原料モノマーのモル比は、1,10−デカンジアミン:テレフタル酸=50:50であった。この混合物を、回転数を28rpmに保ったまま230℃に昇温し、その後230℃で3時間加熱した。塩と低重合体の生成反応と破砕を同時に行った。反応により生じた水蒸気を放圧後、得られた反応物を取り出した。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、乾燥機中、常圧窒素気流下、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−1)を得た。得られたポリアミド(P−1)について、相対粘度、重量平均分子量、融点、降温結晶化温度、過冷却度△T、トリアミン量の測定を行った。その結果を表1に示す。
製造例2
[工程(i)]
体積平均粒径80μmのテレフタル酸粉末(4870質量部)、重合触媒としての次亜リン酸ナトリウム(6質量部)、末端封鎖剤としての安息香酸(72質量部)からなる混合物を、リボンブレンダー式の反応装置に供給し、窒素密閉下、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温したデカンジアミン(5050質量部、100質量%)を、28質量部/分の速度で、3時間かけて連続的(連続液注方式)にテレフタル酸粉末に添加し反応物を得た。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、引き続き工程(i)で用いたリボンブレンダー式の反応装置内で、窒素気流下、230℃に昇温し、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−2)を得た。得られたポリアミド(P−2)について、相対粘度、重量平均分子量、融点、降温結晶化温度、過冷却度△T、トリアミン量の測定を行った。その結果を表1に示す。
製造例3〜5および7
使用するモノマーの種類、製造条件を表1のように変更する以外は、実施例2と同様にしてポリアミド(P−3)〜(P−5)および(P−7)を得、各特性の測定を行った。その結果を表1に示す。
製造例6
[工程(i)]
ジアミン成分として1,10−デカンジアミン(5050質量部)、平均粒径80μmの粉末状テレフタル酸(4870質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(72質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(6質量部)、蒸留水400質量部(原料モノマーの合計量100質量部に対して、4質量部)をオートクレーブに入れ、100℃に加熱後、回転数28rpmで撹拌を開始し、1時間加熱した。この混合物を、回転数を28rpmに保ったまま230℃に昇温し、その後230℃で3時間加熱した。塩と低重合体の生成反応を行ないながら、得られた固形物を破砕した。水蒸気を放圧後、得られた反応物を取り出した。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、乾燥機中、常圧窒素気流下、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−6)を得た。得られたポリアミド(P−6)について、相対粘度、重量平均分子量、融点、降温結晶化温度、過冷却度△T、トリアミン量の測定を行った。その結果を表1に示す。なお、ポリアミド(P−6)を得るにあたり、原料モノマーの合計量100質量部に対して、蒸留水を4質量部用いて重合を行ったため、蒸留水の添加の有無以外が同条件である製造例1に比べ、重量平均分子量はやや低めであり、トリアミン量は多かった。
製造例8
[工程(i)]
ジアミン成分として1,10−デカンジアミン(5050質量部)、平均粒径80μmの粉末状テレフタル酸(4870質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(72質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(6質量部)、蒸留水9200質量部(原料モノマーの合計量100質量部に対して、92質量部)をオートクレーブに入れ、100℃に加熱後、回転数28rpmで撹拌を開始し、1時間加熱した。この混合物を、回転数を28rpmに保ったまま230℃に昇温し、その後230℃で3時間加熱した。塩と低重合体の生成反応を行ないながら、得られた固形物を破砕した。水蒸気を放圧後、得られた反応物を取り出した。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、乾燥機中、常圧窒素気流下、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−8)を得た。得られたポリアミド(P−8)について、相対粘度、重量平均分子量、融点、降温結晶化温度、過冷却度△T、トリアミン量の測定を行った。その結果を表1に示す。なお、ポリアミド(P−8)を得るにあたり、原料モノマーの合計量100質量部に対して、蒸留水を92質量部用いて重合を行ったため、蒸留水の添加の有無以外が同条件である製造例1に比べ、重量平均分子量は顕著に低めであり、トリアミン量は顕著に多かった。
製造例9
[工程(i)]
ジアミン成分として1,10−デカンジアミン(5050質量部)、平均粒径80μmの粉末状テレフタル酸(4870質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(72質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(6質量部)、蒸留水600質量部(原料モノマーの合計量100質量部に対して、6質量部)をオートクレーブに入れ、100℃に加熱後、回転数28rpmで撹拌を開始し、1時間加熱した。この混合物を、回転数を28rpmに保ったまま230℃に昇温し、その後230℃で3時間加熱した。塩と低重合体の生成反応を行ないながら、得られた固形物を破砕した。水蒸気を放圧後、得られた反応物を取り出した。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、乾燥機中、常圧窒素気流下、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−9)を得た。得られたポリアミド(P−9)について、相対粘度、重量平均分子量、融点、降温結晶化温度、過冷却度△T、トリアミン量の測定を行った。その結果を表1に示す。なお、ポリアミド(P−9)を得るにあたり、原料モノマーの合計量100質量部に対して、蒸留水を6質量部用いて重合を行ったため、蒸留水の添加の有無以外が同条件である製造例1に比べ、重量平均分子量はやや低めであり、トリアミン量は多かった。
製造例10、11
用いる末端封鎖剤の配合量を変更する以外は、実施例1と同様にしてポリアミド(P−10)、(P−11)を得、各特性の測定を行った。その結果を表1に示す。
実施例1
製造例1で得たポリアミド樹脂(P−1)100質量部、セピオライト20質量部を用いてポリアミド樹脂組成物の作製を行った。最初に、スクリュー径37mm、L/D40の同方向二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)の主供給口より、ロスインウェイト式連続定量供給装置(クボタ製CE−W−1型)を用いて計量したポリアミド樹脂100質量部を供給し、次いで、サイドフィーダーよりセピオライトを5質量部供給し溶融混練した後、ダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、ペレタイザーでカッティングしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。押出条件は、押出機のバレル温度設定320℃〜340℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量35kg/hとした。
次いで射出成形機(東芝機械社製EC100型)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃条件下、得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを射出成形して試験片を得て、各種評価試験を行った。その結果を表2に示す。
実施例2〜11
用いるポリアミド樹脂を変更した以外は、実施例1と同様にして試験片を得、各種評価試験を行った。その結果を表2に示す。
実施例12〜16
用いる繊維状粘土鉱物の種類、配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして試験片を得、各種評価試験を行った。その結果を表3に示す。
実施例17〜21
サイドフィーダーよりセピオライトを供給し溶融混練した後、さらに同方向二軸押出機のダイス側のベント口より、カップリング剤を液状で添加する以外は、実施例1と同様にして試験片を得、各種評価試験を行った。なお、カップリング剤は、表3記載の配合量で行った。その結果を表3に示す。
比較例1〜11
繊維状粘土鉱物は用いず、製造例1〜11で得たポリアミド樹脂(P−1)〜(P−11)のみを用いて、実施例1と同様にして射出成形を行い、試験片を得、各種評価試験を行った。その結果を表4に示す。
比較例13、14
繊維状粘土鉱物の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして試験片を得、各種評価試験を行った。その結果を表4に示す。
比較例15
繊維状粘土鉱物に代えてガラス繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして試験片を得、各種評価試験を行った。その結果を表4に示す。
実施例1〜21では、所定のポリアミド樹脂を用いたため、低比重で高温環境下での曲げ特性や表面平滑性、外観に優れた成形体を得ることができた。特に、実施例1、2、5、6については、23℃下、100℃下における曲げ強度、曲げ弾性率ともに優れていた。
比較例1〜11は繊維状粘土鉱物の配合を行わなかったため曲げ特性が劣った。加えて、比較例8は表面平滑性も劣った。
比較例12は繊維状粘土鉱物の配合量が過少であったため、補強効果が不十分となり、曲げ特性が低かった。
比較例13は繊維状粘土鉱物の配合量が過多であったため、溶融混練時の作業性が低下し、ポリアミド樹脂ペレットを得ることができなかった。
比較例14は繊維状粘土鉱物を用いずガラス繊維を用いたため、高比重で、表面平滑性に劣った。










Claims (6)

  1. テレフタル酸成分と炭素数8〜12の直鎖脂肪族ジアミン成分とからなるポリアミド樹脂100質量部および繊維状粘土鉱物0.5〜30質量部を含有してなるポリアミド樹脂組成物。
  2. 繊維状粘土鉱物がセピオライトおよび/またはパリゴルスカイトであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. さらに、繊維状粘土鉱物100質量部に対してカップリング剤を0.1〜15質量部を含有してなることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. カップリング剤がエポキシ基、ウレイド基、イソシアネート基から選ばれるいずれか1種の反応性を有する基を含むシランカップリング剤であることを特徴とする請求項3に記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. ポリアミド樹脂、繊維状粘土鉱物、カップリング剤を一括で混合し、溶融混練することを特徴とする請求項3または4に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。


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