JP2013060495A - ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性、耐衝撃性に加えて、ウェルド強度を向上させたポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミド樹脂30〜99質量部および耐衝撃改良剤1〜70質量部を合計100質量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジアミン成分が1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかであり、ポリアミド樹脂中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐衝撃性およびウェルド強度を向上させた高耐熱性ポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミド6T、ポリアミド9Tに代表される半芳香族ポリアミドは、耐熱性、機械特性に加え、低吸水性に優れ、多くの電気・電子部品、自動車のエンジン周りの部品として使用されている。
一方、ポリイミド、液晶ポリエステルに代表される高耐熱材料は、電気、電子部品の基板材料として用いられている。しかしながら、このような材料は、性能面で非常に優れるものの、非常に高価であり加工適性に劣るため、前記半芳香族ポリアミドをこのような用途で用いることが検討されている。
ポリアミド6Tは、そのホモポリマーの融点が370℃と高すぎるため、溶融加工時のポリアミド6Tの熱分解を抑制することができなくなってしまう。そのため、ポリアミド6Tは、共重合成分を多く導入することにより、融点を十分に下げた状態で使用されている。しかし、このような共重合されたポリアミド6Tは、結晶性が損なわれ、結晶化速度が低下するために、射出成形の成形サイクルを短縮するには限界があった。
また特許文献1で開示されたポリアミド9Tに関しても、共重合成分の導入によりポリアミド9T本来の耐熱性を引き下げ、成形加工性の改善を行っている。このようなポリアミドはポリアミド9Tの有する結晶性が阻害され、やはり結晶化速度の低下を引き起こし、成形サイクルの短縮が困難となる。
一方、ポリアミドの耐衝撃性の改良のために、熱可塑性エラストマーをアロイ化する場合、加工温度によって熱可塑性エラストマーが熱劣化するという問題があった。成形サイクルが長くなると、さらに熱劣化が顕著となり、それに伴う分解ガスの発生が顕著であった。分解ガスは金型内に侵入することで、成形体の外観を損ねたり、ウェルド部の成形体強度を低下させる問題があった。
特許文献2には、ポリアミド9Tよりも成形加工性に優れるポリアミド10Tを用いたポリアミド成形体が開示されている。従来よりポリアミド10Tにはその製造過程で副生するトリアミンが多く含有されるが、このような樹脂組成物においては、2成分の相溶性低下だけでなく、成形性の低下を引き起こし、得られる成形品のウェルド強度が低下してしまうという問題があった。
特許第3242781号公報 特開平6−239990号公報
本発明は、耐熱性、耐衝撃性に加えて、ウェルド強度を向上させたポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミド樹脂30〜99質量部および耐衝撃改良剤1〜70質量部を合計100質量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジアミン成分が1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかであり、ポリアミド樹脂中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)耐衝撃改良剤が、オレフィン系重合体、スチレン系エラストマーから選ばれる1種以上の耐衝撃改良剤であることを特徴とする(1)のポリアミド樹脂組成物。
(3)オレフィン系樹脂が、(エチレンおよび/またはプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、(エチレンおよび/またはプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)系共重合体のいずれかであることを特徴とする(1)または(2)のポリアミド樹脂組成物。
(4)スチレン系エラストマーが、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体であることを特徴とする(1)〜(3)のポリアミド樹脂組成物。
(5)さらに、繊維状強化材を含有してなる(1)〜(4)のポリアミド樹脂組成物。
(6)繊維状強化材がガラス繊維、炭素繊維、金属繊維から選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)〜(5)のポリアミド樹脂組成物。
(7)(1)〜(6)のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明によれば、耐熱性、耐衝撃性に加えて、ウェルド強度を向上させたポリアミド樹脂組成物が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。 本発明で用いるポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミドである。本発明においては、高結晶性の観点から、特定の化学構造を有するジカルボン酸成分とジアミン成分とを用いることが必要である。
ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分は、主成分としてテレフタル酸を用いる必要がある。その理由は、テレフタル酸は、芳香族ジカルボン酸の中でも化学構造の対称性が高く、高い結晶性を有するポリアミド樹脂を得る上で最も好ましいからである。
ポリアミド樹脂を構成するジアミン成分は、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかである直鎖脂肪族ジアミンである。直鎖脂肪族ジアミンは、化学構造の対称性が高いため、高い結晶性を有するポリアミド樹脂を得る上で好ましい。
用いられるジアミンの炭素数が、偶数であることが必要である理由について以下に述べる。一般的に、ポリアミドにおいてはいわゆる偶奇効果が発現する。すなわち、用いられるジアミン成分のモノマー単位の炭素数が偶数である場合には、奇数である場合と比較して、より安定な結晶構造をとるため、結晶性が向上するという効果が発現する。従って、高結晶性の観点から、直鎖脂肪族ジアミンの炭素数は偶数である必要がある。
ジアミンの炭素数が8未満の場合には、得られるポリアミド樹脂の融点が340℃を超えて分解温度を上回るため、好ましくない。一方、ジアミンの炭素数が12を超える場合には、得られるポリアミド樹脂の融点が280℃未満となり、実用に供する際に、耐熱性が不足してしまうため好ましくない。炭素数9、11のジアミンでは、ポリアミドの偶奇効果により、結晶性が不足する。
本発明で用いるポリアミド樹脂には、主成分となるテレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分、および/または炭素数が8、10または12である直鎖脂肪族ジアミン成分以外の種類のジアミン成分(以下、「共重合成分」と称する場合がある)が共重合されていてもよい。共重合成分は、原料モノマーの総モル数(100モル%)に対し、5モル%以下とすることが好ましく、実質的に共重合成分を含まないことがより好ましい。なぜなら、高結晶性の観点からは、化学構造の不規則な共重合体よりも、規則性の高いホモポリマーに近い構造を有することが好ましいからである。つまり、共重合成分が5モル%を超えると、結晶性が低下し、高結晶性を有するポリアミド樹脂を得ることができない場合がある。
ポリアミド樹脂の共重合成分として用いることが可能なテレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
ポリアミド樹脂の共重合成分として用いることが可能な他のジアミン成分としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミンなどの脂環式ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。なお、上記に列挙された1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−オクタンジアミンのいずれかは、本発明のポリアミド樹脂に必須のジアミン成分である。1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかを必須のジアミン成分として用いた場合には、それ以外のジアミン成分が共重合成分として用いられる。例えば、1,8−オクタンジアミンを必須のジアミン成分として用いる場合には、1,10−デカンジアミンおよび1,12−ドデカンジアミンが共重合成分として用いられる。
ポリアミド樹脂には、必要に応じて、カプロラクタム等のラクタム類を共重合させてもよい。
ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、15,000〜50,000であることが好ましく、20,000〜50,000であることがより好ましく、26,000〜50,000であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂の重量平均分子量が15,000未満であると得られるポリアミド樹脂の結晶化は速くなるものの、剛性が低下する。ポリアミド樹脂の重量平均分子量が50,000を超えると結晶化は遅くなり、射出成形時の流動性が低下する。
ポリアミド樹脂の相対粘度は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、成形加工が容易なポリアミド樹脂を得ようとすれば、相対粘度を2.0以上とすることが好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、トリアミン量が十分に低減されていることが必要である。ポリアミド樹脂は、重合時におけるジアミン同士の縮合反応により、トリアミン構造が副生し易い。トリアミン量が多いと、分子鎖中に架橋構造が生成し、その架橋構造は分子鎖の動きや配列を束縛するため、結晶性が低下する。また、トリアミン量が多いと、ゲルが多く発生するため、得られる成形体の表面にフィッシュアイやブツとして存在し、表面外観を損ねる原因となることがある。さらには、後述する耐衝撃改良剤を配合した際に、耐衝撃改良剤中に存在する反応性官能基がトリアミンと反応し、耐衝撃改良剤の反応点とポリアミド樹脂末端との反応が抑制されることでポリアミド樹脂と耐衝撃改良剤の相溶性が低下し、得られる成形品のウェルド強度が低下してしまう。
なお、ウェルド強度とは、成形体の形状にもよるが、射出成形において、溶融樹脂の流れが分岐、流動の終端で再び合流する場合に、合流部にできる溶融樹脂の接合部の強度のことをいう。通常このような接合部は、成形体に対して剪断方向の力に弱く、成形体外部から曲げ等の応力が加えられた場合に、本来の成形体強度よりも低い応力によって、成形体が破断するという問題がある。
そのため、ポリアミド樹脂中に含まれるトリアミン単位は、ジアミン単位の0.3モル%以下であることが必要であり、0.2モル%以下であることが好ましい。ポリアミド樹脂中のトリアミン構造がジアミン単位の0.3モル%を超える場合には、ポリアミド樹脂と耐衝撃改良剤の相溶性が低下することでウェルド強度が低下してしまう。また、結晶性が低下したり、ゲルが発生して得られる成形体の表面平滑性を損ねたり、色調が低下するという問題が発現することがある。
上記のトリアミン単位をジアミン単位の0.3モル%以下とするためには、テレフタル酸成分とジアミン成分とから塩を生成するに際し、水や有機溶剤の配合量を、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下とすることが必要である。
一般的に、ポリアミドの加熱重合反応を均一的に進行させるために、水の共存下、原料を混合し、加熱して脱水反応を進行させる方法が用いられている。しかしながら、このような方法においては、重合時の水と有機溶剤の合計量が、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部を超えて多くなると、重合度の上昇が抑制されるという問題がある。その場合、アミン末端が多い状態での重合装置中の滞留時間が長くなり、ジアミン同士の縮合反応により副生成するトリアミン量が増加する。その結果、ポリアミドの一部が架橋構造をとり、ゲル化が促進されたり、色調が低下したりする。ゲル化はポリアミドの結晶性の低下や、結晶化速度を遅延させる原因となる。本発明のような半芳香族ポリアミドでは、トリアミンの生成が脂肪族ポリアミドより顕著である。従って、本発明のように、トリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下であるポリアミド樹脂を得るためには、水や有機溶剤の配合量を、原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下とすることが必要であり、実質的に水を配合させないことがより好ましい。
また、本発明で用いるポリアミド樹脂のように、ポリアミド6、ポリアミド66に比べ融点が高く、成形体を得るための樹脂溶融温度が高く、樹脂が長時間にわたって成形機シリンダー内に滞留する場合には、前記樹脂の劣化、分解ガスの発生は著しくなるため、成形サイクルを短くし、溶融樹脂の成形機シリンダー内への滞留を極力抑制することは、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形して耐熱性に優れた成形体を得るための成形体品質面、成形ハンドリング面において好ましいことである。
なお、炭素数が偶数個であるジアミン成分が用いられたポリアミド樹脂は、そもそも高結晶性を有するものである。さらなる高結晶性を達成するために、上述のように、本発明のポリアミド樹脂中の共重合成分を0〜5モル%とすることができる。さらなる高結晶性を達成するためには、上述のように、ポリアミド樹脂中のジアミン単位に対するトリアミン単位を0.3モル%以下としてもよい。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、ポリアミドを製造する方法として従来から知られている加熱重合法や溶液重合法などの方法を用いて製造することができる。中でも、工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、溶融重合法、溶融押出法、固相重合法などが挙げられる。前記ポリアミド樹脂は融点が280℃〜340℃と高く、分解温度に近い。よって、生成ポリマーの融点以上の温度で反応させる溶融重合法や溶融押出法は、製品の品質が低下する場合があるため、不適当な場合がある。そのため、生成ポリマーの融点未満の温度での固相重合法が好ましい。
一般に、ポリアミド樹脂の製造は、モノマーから反応物を得る工程(i)と、このような反応物を重合する工程(ii)からなることが多いが、本発明においては、トリアミン単位がジアミン単位の0.3モル%以下であるポリアミドを得るために、工程(i)の段階を、重合系中の水分や溶媒が少ない条件、すなわち、ジカルボン酸とジアミンの合計100質量部に対して、水と有機溶剤の合計量が5質量部以下である水および/または有機溶剤の存在下で実施することが好ましい。
工程(i)の具体例としては、たとえば、溶融状態のジアミンと固体のジカルボン酸からなる懸濁液を攪拌混合し、混合液を得た後、最終的に生成するポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンとの反応による塩の生成と、前記塩の重合による低重合体の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る方法が挙げられる。このような反応物は通常塊状であるため、反応をさせながら破砕を行なうか、反応後に一旦取り出してから破砕を行うことで粉末状の反応物を得ることができる。
工程(ii)の具体例としては、たとえば、工程(i)で得られた反応物を、最終的に生成するポリアミド樹脂の融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、ポリアミド樹脂を得る工程である。固相重合は、重合温度180〜270℃、反応時間0.5〜10時間で窒素などの不活性ガス気流中で行うことが好ましい。
ポリアミド樹脂の製造において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いたり、重合度の調整、熱分解や着色を抑制するため末端封止剤を用いることができる。
重合触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩などが挙げられ、重合触媒の添加量としては、通常、ジカルボン酸とジアミンの総モルに対して、0〜2モル%で用いることが好ましい。
末端封鎖剤としては、酢酸、ラウリン酸、安息香酸などのモノカルボン酸、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンなどのモノアミンが挙げられ、これらいずれか一種、あるいはこれらを組み合わせて用いられる。末端封鎖剤の添加量としては、通常、テレフタル酸とジアミンの総モルに対して0〜5モル%で用いることが好ましい。
本発明で用いる耐衝撃改良剤は、ポリアミド樹脂の耐衝撃性を改良する成分である。耐衝撃改良剤としては、ポリアミド樹脂の耐衝撃性を改良するものであれば限定されず、オレフィン系重合体、エラストマー、合成ゴム、天然ゴムを挙げることができる。
耐衝撃改良剤を具体的に例示すると、(エチレンおよび/またはプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、(エチレンおよび/またはプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、アイオノマ−重合体等のオレフィン系重合体、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等のエラストマー、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムなどを挙げることができ、中でも、耐熱性、ポリアミド樹脂との相溶性に優れる点で、オレフィン系重合体、エラストマーが好ましく、(エチレンおよび/またはプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、(エチレンおよび/またはプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、スチレン系エラストマーがさらに好ましい。これらは単独または混合して用いることができる。
本発明で用いるオレフィン系重合体において、(エチレンおよび/またはプロピレン)・α−オレフィン系共重合体は、エチレンおよび/またはプロピレンと炭素数3以上のα−オレフィンを共重合した重合体であり、炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
また、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどの非共役ジエンのポリエンを共重合してもよい。
(エチレンおよび/またはプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレンおよび/またはプロピレンとα,β−不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体であり、α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これら不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
アイオノマ−重合体は、オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンの中和によりイオン化されたものである。オレフィンとしてはエチレンが好ましく用いられ、α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられるが、ここに例示したものに限定されるものではなく、不飽和カルボン酸エステル単量体が共重合されていても構わない。また、金属イオンはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Baなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の他、Al、Sn、Sb、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd等を挙げることできる。
本発明で用いるエラストマーにおいて、スチレン系エラストマーは、スチレンなどの芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体であり、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを少なくとも1個と、共役ジエン系重合体ブロックを少なくとも1個有するブロック共重合体が用いられる。また、上記のブロック共重合体では、共役ジエン系重合体ブロックにおける不飽和結合が水素添加されていてもよい。
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロックである。その場合の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどを挙げることができ、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは前記した単量体の1種または2種以上からなる構造単位を有していることができる。また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、場合により少量の他の不飽和単量体からなる構造単位を有していてもよい。
共役ジエン系重合体ブロックは、1,3−ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエン系化合物の1種または2種以上から形成された重合体ブロックであり、水素添加した芳香族ビニル化合物/共役ジエンブロック共重合体では、その共役ジエン系重合体ブロックにおける不飽和結合部分の一部または全部が水素添加により飽和結合になっている。ここで共役ジエンを主体とする重合体ブロック中の分布は、ランダム、テ−パ−、一部ブロック状またはこれら任意の組み合わせであってもよい。
芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、またはそれら任意の組み合わせのいずれであってもよい。そのうちでも、本発明では芳香族ビニル化合物・共役ジエンブロック共重合体および/またはその水素添加物として、1個の芳香族ビニル化合物重合体ブロックと1個の共役ジエン重合体ブロックが直鎖状に結合したジブロック共重合体、芳香族ビニル化合物重合体ブロック・共役ジエン重合体ブロック・芳香族ビニル化合物重合体ブロックの順に3つの重合体ブロックが直鎖状に結合しているトリブロック共重合体およびそれらの水素添加物の1種または2種以上が好ましく用いられ、未水添または水添スチレン・ブタジエン共重合体、未水添または水添スチレン・イソプレン共重合体、未水添または水添スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、未水添または水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、未水添または水添スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレン共重合体、未水添または水添スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体などが挙げられる。
本発明で用いる耐衝撃改良剤は、カルボン酸および/またはその誘導体で変性された重合体が好ましく使用される。このような成分により変性することにより、ポリアミド樹脂に対して親和性を有する官能基をその分子中に導入することができる。ポリアミド樹脂に対して親和性を有する官能基としては、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩基、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基などが挙げられる。
前記ポリアミド樹脂と親和性の高い官能基を有する化合物としては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸およびこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどが挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、さらに繊維状強化材を含有することが好ましい。繊維状強化材としては特に制限はないが、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アスベスト繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、玄武岩繊維などを挙げることができ、機械的特性の向上効果の高い点、ポリアミド樹脂との溶融混練時の加熱温度に耐え得る耐熱性や入手しやすさからガラス繊維、炭素繊維および金属繊維が好適に用いられる。
ガラス繊維、炭素繊維を用いる場合、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。また、シランカップリング剤は、集束剤に分散され、ガラス繊維を束ねるための集束剤として表面処理されていてもよい。シランカップリング剤としては、ビニルシラン系、アクリルシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系などが挙げられるが、
ポリアミド樹脂とガラス繊維または炭素繊維との密着効果を得やすい点で、アミノシラン系カップリング剤が特に好ましい。
繊維状強化材の繊維長は、0.1〜7mmのものが好ましく、0.5〜6mmのものがさらに好ましい。繊維状強化材の繊維長が0.1mm未満であると、補強効果に劣る場合があり、一方、7mmを超えると、成形性に悪影響を及ぼす場合がある。また、繊維径は3〜20μmのものが好ましく、5〜13μmのものがさらに好ましい。繊維径が3μm未満であると、溶融混練時に折損しやすく、一方、20μmを超えると、補強効果に劣る場合がある。また、断面形状として、円形断面である繊維状強化材を好ましく用いることができるが、必要に応じて、長方形、楕円、それ以外の異形断面である繊維状強化材を用いることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂および耐衝撃改良剤100質量部に対し、繊維状強化材10〜60質量部含有させることが好ましく、15〜55質量部であることがより好ましく、20〜50質量部であることがさらに好ましい。繊維状強化材の配合量が10質量部未満では、補強効果が少なく、60質量部を超える場合には、溶融混練時の作業性が低下し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得ることが難しくなる。また、ポリアミド樹脂組成物が得られたとしても、ウェルド強度低下率が増大する。
繊維状強化材の配合方法は、その補強効果が損なわれなければ特に制限はないが、二軸混練機を用いた溶融混練が好適に用いられる。混練温度はポリアミド樹脂の融点(Tm)以上とする必要があり、(Tm+100℃)未満とすることが好ましい。混練温度がTm未満では混練機が過負荷となり、ベントアップなどの不具合が生じる場合がある。また混練温度が高すぎると、ポリアミド樹脂の分解、黄変が起こる場合がある。得られたポリアミド樹脂組成物の採取方法は特に限定されるものではないが、その後の成形を考慮すると、ストランドを作製し、ペレット化することが好ましい。
ポリアミド樹脂組成物の溶融時の粘度特性としては、340℃、1.20kgにおけるメルトフローレート(以下、MFRという)が、0.1〜50g/10分であることが好ましく、1〜40g/10分であることがより好ましく、10〜30g/10分であることがさらに好ましい。MFRを0.1〜50g/10分の範囲とすることで、ポリアミド樹脂組成物の射出性成形時の流動性と得られる成形体の機械強度のバランスを図ることができる。さらに、ポリアミド樹脂組成物の結晶化を速くすることができるため好ましい。MFRが0.1g/10分未満であると流動性が不足し溶融混練や射出成形が困難となる傾向があり、MFRが50g/10分を超えると得られる成形体の機械強度を向上させることが難しくなる。
ポリアミド樹脂組成物を用いて成形を行う方法としては、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法等が挙げられるが、本発明で用いるポリアミド樹脂の機械特性、成形性を十分に向上させることができる点で、射出成形法を好ましく用いることができる。射出成形機としては、特に限定されるものではないが、たとえばスクリューインライン式射出成形機またはプランジャ式射出成形機などが挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、ポリアミド樹脂の融点(Tm)以上で加熱溶融する必要があり、(Tm+100℃)未満とすることが好ましい。なお、ポリアミド樹脂組成物の加熱溶融時には、用いるポリアミド樹脂組成物ペレットは十分に乾燥されたものを用いることが好ましい。含有する水分量が多いと、射出成形機のシリンダー内で樹脂が発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いるポリアミド樹脂組成物ペレットの水分率は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中、好ましくは0.3質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。
本発明で用いるポリアミド樹脂組成物を射出成形する場合、金型温度はポリアミド樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)未満に保持する必要があり、(Tg−30℃)未満であることが好ましく、(Tg−50℃)未満であることがより好ましい。金型温度がポリアミド樹脂組成物のTgを超えると、ポリアミド樹脂の繊維状強化材配合による機械特性向上の効果を十分に引き出すことができない。なお、金型温度とは、金型分割表面の実温であり、この部位が上記温度範囲内になるよう、金型温度調節機を用いて調節する。必要に応じて、金型内に冷媒を循環してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて他の充填材、安定剤などの添加剤を加えてもよい。添加の方法は、ポリアミドの重合時に添加する、または得られたポリアミド樹脂に溶融混練することが挙げられる。添加剤としては、タルク、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイトのような充填材、酸化チタン、カーボンブラックなどのような顔料、そのほか、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤など周知の添加剤が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形用途において特に好ましく用いられ、成形体とされることができる。本発明のポリアミド樹脂組成物から成形体を製造するには、通常の成形加工方法が用いられる。成形加工方法としては、例えば、射出成形、押出成形、吹き込み成形、焼結成形などの熱溶融成形法が挙げられる。このような方法により、各種の成形体が得られる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、結晶化速度が速いため、成形体の加工時、特に射出成形において成形サイクルを短縮することができる。成形サイクルを短縮することにより、耐衝撃改良剤からの分解ガスの発生を抑制することができ、ウェルド強度の低下を防ぐことができる。
成形サイクルとは、同じ射出条件で連続して成形した際、1ショット目の成形体の射出が開始してから、2ショット目の成形体の射出が開始するまでの時間をいう。すなわち、一つの成形体を成形するのに要する時間(射出時間+冷却時間+取出し時間の合計)をいう。成形サイクルの短縮とは、上記一つの成形体を成形するのに要する時間中、特に冷却時間の短縮を意味する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、従来より有する機械強度に加えて、成形性に優れているため、自動車部品、電気電子部品、雑貨、土木建築用品等広範な用途に使用できる。
中でも、繊維状強化材により補強されれば、自動車部品、電気電子部品に好適に用いることができる。
自動車部品用途においては、エンジンカバー、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエタータンク、ラジエターサポート、ラジエターホース、ラジエターグリル、タイミングベルトカバー、ウォーターポンプインレット、ウォーターポンプアウトレット、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンマウント等のエンジン周辺部品、プロペラシャフト、スタビライザーバーリンケージロッド、アクセルペダル、ペダルモジュール、シールリング、ベアリングリテーナー、ギア等の機構部品、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、燃料タンク、燃料チューブ、フューエルカットオフバルブ、キャニスター、フューエルデリバリーパイプ、フューエルフィラーネック、フューエルセンダーモジュール、燃料配管用継手等の燃料・配管系部品、ワイヤーハーネス、リレーブロック、センサーハウジング、エンキャプシュレーション、イグニッションコイル、ディストリビューター、サーモスタットハウジング、クイックコネクター、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプソケット等の電装系部品、リアスポイラー、ホイールカバー、ホイールキャップ、カウルベントグリル、エアアウトレットルーバー、エアスクープ、フードバルジ、フェンダー、バックドア、シフトレバーハウジング、ウインドーレギュレータ、ドアロック、ドアハンドル、アウトサイドドアミラーステー等の各種内外装部品等で好適に用いることができる。
電気電子部品用途においては、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、IC、LEDのハウジング等が挙げられる。
これら自動車部品、電気電子部品は、主に射出成形、ブロー成形により成形されるため、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いた場合には、成形サイクルを短縮し、樹脂劣化物、分解ガスの混入を抑制し、外観に優れた成形体を得ることができる。また、成形サイクルを短縮しているため、量産性に優れ、品質を均一にして大量に生産を行うような部品の成形においては、顕著に優れた成形性を有する。
1.測定方法
以下のような方法にしたがって、樹脂特性の測定、成形体の性能評価を行った。
(1)ポリアミド樹脂の相対粘度
96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
(2)ポリアミド樹脂の重量平均分子量
東ソー社製ゲル浸透クロマトグラフィ装置を用い、下記条件で調製した試料溶液にてGPC分析を行った後、ポリメチルメタクリレート(ポリマーラボラトリーズ社製)を標準試料として作成した検量線を用いて、重量平均分子量を求めた。
<試料調製>
ポリアミド樹脂5mgに10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール2mlを加えて溶解後、ディスクフィルターで濾過した。
<条件>
・検出器:示差屈折率検出器RI−8010(東ソー社製)
・溶離液:10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール
・流速:0.4ml/min
・温度:40℃
(3)ポリアミド樹脂の融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温し、さらに25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温測定した際の吸熱ピークのトップを融点とした。
(4)ポリアミド樹脂中のトリアミンの定量
ポリアミド樹脂10mgに47%臭化水素酸を3mL加え、130℃で20時間加熱後、蒸発乾固し、さらに80℃2時間減圧乾燥する。これにピリジン2mL、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド1mLを加え、90℃で30分加熱する。冷却後、メンブランフィルターでろ過した溶液を、質量分析計を備えたガスクロマトグラフィー装置で分析した。別に測定した標準物質のジアミンとトリアミンにより得た検量線を用いてポリアミド樹脂中のジアミンとトリアミンを定量し、ジアミンに対するトリアミンのモル比を算出した。トリアミンの標準物質は、酸化パラジウムを触媒として用いて、オートクレーブ中にてジアミンを240℃で3時間加熱撹拌して反応させて得たトリアミン化合物を用いた。
(5)成形性
東芝機械社製射出成形機EC−100を用いて、シリンダー温度を(融点+25℃)、金型温度を(融点−185℃)で設定した後、射出圧力100MPa、射出時間10秒、取出し時間5秒で、成形体(127mm×12.7mm×10mm)の成形を行った。突出ピンで成形体に対し変形を与えないで容易に取出しが可能な冷却時間を設定した。ここで成形サイクルとは、同じ射出条件で連続して成形した際、1ショット目の成形体の射出が開始してから、2ショット目の成形体の射出が開始するまでの時間をいう。すなわち、一つの成形体を成形するのに要する時間(射出時間+冷却時間+取出し時間の合計)をいう。
(6)Izod衝撃強度(ノッチ付き)
東芝機械社製射出成形機EC−100を用いて、シリンダー温度を(融点+25℃)、金型温度を(融点−185℃)で設定した後、射出圧力100MPa、ASTM1号ダンベル試験片の成形を行った。これを用いてASTM D256−56に準拠して測定した。本発明においては100J/m以上であるものを実用に耐えうるとした。
(7)曲げ強度
ASTM D790に準拠して測定した。なお、試験片として、ASTM1号ダンベルを用いた。
(8)ウェルド部の曲げ強度
(7)と同様にして測定した。但し、試験片として、(7)と同様の形状であり、かつ、両端にゲートを設置した金型を用いて成形を行い、得られたASTM1号ダンベルを用いた。試験片の中央部には、溶融樹脂の合流による接合部(ウェルド)を有する。
(9)ウェルド強度低下率
(7)で得られた曲げ強度、(8)で得られたウェルド部の曲げ強度を用い、次式によりウェルド強度低下率を算出した。
ウェルド強度低下率=1−(ウェルド部の曲げ強度/曲げ強度)
本発明においては、繊維状強化材を含まない場合は10%未満、好ましくは3%未満であるものを実用に耐えうるとした。繊維状強化材を含む場合は50%未満であるものを実用に耐えうるとした。
(10)荷重たわみ温度
ASTM D648に準拠して、荷重0.45MPaにて測定した。本発明においては100℃以上であるものを実用に耐えうるとした。
2.原料
実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。
(1)ジカルボン酸成分
・テレフタル酸
・イソフタル酸
(2)ジアミン成分
・1,8−オクタンジアミン
・1,10−デカンジアミン
・1,12−ドデカンジアミン
(3)芳香族ポリアミド
・ポリアミド9T(クラレ社製ジェネスタ)、非強化品
・ポリアミド6T(デュポン社製ザイテルHTN52)、非強化品
(4)耐衝撃改良剤
・PO:無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体(三井化学社製タフマーMH5020)
・SEBS:無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製タフテックM1911)
・TPEE:熱可塑性ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン社製ハイトレル4047)
(5)繊維状強化材
・GF:ガラス繊維(旭ファイバーグラス社製03JAFT692)、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm
・CF:炭素繊維(東邦テナックス社製HTA−C6−NR)、平均繊維径7μm、平均繊維長6mm
製造例1
[工程(i)]
ジアミン成分として1,10−デカンジアミン(5050質量部)、平均粒径80μmの粉末状テレフタル酸(4870質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(72質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(6質量部)をオートクレーブに入れ、100℃に加熱後、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数28rpmで撹拌を開始し、1時間加熱した。原料モノマーのモル比は、1,10−デカンジアミン:テレフタル酸=50:50であった。この混合物を、回転数を28rpmに保ったまま230℃に昇温し、その後230℃で3時間加熱した。塩と低重合体の生成反応と破砕を同時に行った。反応により生じた水蒸気を放圧後、得られた反応物を取り出した。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、乾燥機中、常圧窒素気流下、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−1)を得た。得られたポリアミド(P−1)について、相対粘度、重量平均分子量、融点、トリアミン量の測定を行った。その結果を表1に示す。
製造例2
[工程(i)]
体積平均粒径80μmのテレフタル酸粉末(4870質量部)、重合触媒としての次亜リン酸ナトリウム(6質量部)、末端封鎖剤としての安息香酸(72質量部)からなる混合物を、リボンブレンダー式の反応装置に供給し、窒素密閉下、ダブルヘリカル型の攪拌翼を用いて回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温したデカンジアミン(5050質量部、100質量%)を、28質量部/分の速度で、3時間かけて連続的(連続液注方式)にテレフタル酸粉末に添加し反応物を得た。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、引き続き工程(i)で用いたリボンブレンダー式の反応装置内で、窒素気流下、230℃に昇温し、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−2)を得た。得られたポリアミド(P−2)について、相対粘度、重量平均分子量、融点、トリアミン量の測定を行った。その結果を表1に示す。
製造例3〜5、8、9
使用するモノマーの種類、製造条件、末端封鎖材の添加量を表1のように変更する以外は、実施例2と同様にしてポリアミド(P−3)〜(P−5)、(P−8)および(P−9)を得、各特性の測定を行った。その結果を表1に示す。
製造例6
[工程(i)]
ジアミン成分として1,10−デカンジアミン(5050質量部)、平均粒径80μmの粉末状テレフタル酸(4870質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(72質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(6質量部)、蒸留水400質量部(原料モノマーの合計量100質量部に対して、4質量部)をオートクレーブに入れ、100℃に加熱後、回転数28rpmで撹拌を開始し、1時間加熱した。この混合物を、回転数を28rpmに保ったまま230℃に昇温し、その後230℃で3時間加熱した。塩と低重合体の生成反応を行ないながら、得られた固形物を破砕した。水蒸気を放圧後、得られた反応物を取り出した。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、乾燥機中、常圧窒素気流下、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−6)を得た。得られたポリアミド(P−6)について、相対粘度、重量平均分子量、融点、トリアミン量の測定を行った。その結果を表1に示す。なお、ポリアミド(P−6)を得るにあたり、原料モノマーの合計量100質量部に対して、蒸留水を4質量部用いて重合を行ったため、蒸留水の添加の有無以外が同条件である製造例1に比べ、重量平均分子量はやや低めであり、トリアミン量は多かった。
製造例7
[工程(i)]
ジアミン成分として1,10−デカンジアミン(5050質量部)、平均粒径80μmの粉末状テレフタル酸(4870質量部)、末端封鎖剤として安息香酸(72質量部)、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(6質量部)、蒸留水9200質量部(原料モノマーの合計量100質量部に対して、92質量部)をオートクレーブに入れ、100℃に加熱後、回転数28rpmで撹拌を開始し、1時間加熱した。この混合物を、回転数を28rpmに保ったまま230℃に昇温し、その後230℃で3時間加熱した。塩と低重合体の生成反応を行ないながら、得られた固形物を破砕した。水蒸気を放圧後、得られた反応物を取り出した。
[工程(ii)]
工程(i)で得られた反応物を、乾燥機中、常圧窒素気流下、230℃で5時間加熱して重合しポリアミド(P−7)を得た。得られたポリアミド(P−7)について、相対粘度、重量平均分子量、融点、トリアミン量の測定を行った。その結果を表1に示す。なお、ポリアミド(P−7)を得るにあたり、原料モノマーの合計量100質量部に対して、蒸留水を92質量部用いて重合を行ったため、蒸留水の添加の有無以外が同条件である製造例1に比べ、重量平均分子量は顕著に低めであり、トリアミン量は顕著に多かった。
実施例1
製造例1で得たポリアミド(P−1)95質量部、耐衝撃改良剤5質量部をドライブレンドし、クボタ社製ロスインウェイト式連続定量供給装置CE−W−1型を用いて計量し、スクリュー径37mm、L/D40の同方向二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)の主供給口に供給して、溶融混練を行った。ダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。押出機のバレル温度設定は、320℃〜340℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量35kg/hとした。
次いで射出成形機(東芝機械社製EC100型)を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃条件下、得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを射出成形して試験片を得た。得られた試験片を用い各種評価試験を行った。その結果を表2に示す。
実施例2〜4、7〜15
用いたポリアミド樹脂と耐衝撃改良剤の種類、配合量を表2の通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た後、射出成形して試験片を得、各種評価試験を行った。その結果を表2に示す。
実施例5、6
製造例1で得たポリアミド(P−1)70質量部、耐衝撃改良剤30質量部をドライブレンドし、クボタ社製ロスインウェイト式連続定量供給装置CE−W−1型を用いて計量し、スクリュー径37mm、L/D40の同方向二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)の主供給口に供給した。途中、サイドフィーダーよりガラス繊維(GF)を供給し溶融混練を行った。ガラス繊維の配合量は、表2の通りとした。続けて、ダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。押出機のバレル温度設定は、320℃〜340℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量35kg/hとした。
実施例16〜19
用いる耐衝撃改良剤の種類、配合量を変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た後、射出成形して試験片を得、各種評価試験を行った。その結果を表3に示す。
実施例20、21
用いる繊維状強化材の配合量を変更した以外は、実施例5と同様にしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た後、射出成形して試験片を得、各種評価試験を行った。その結果を表3に示す。
比較例1〜9
用いたポリアミド樹脂、耐衝撃改良剤、強化材の種類と配合を表3の通りとした以外実施例1と同様にしてポリアミド樹脂を得、各種評価試験を行った。その結果を表3に示す。
実施例1〜15では、所定のポリアミド樹脂を用いたため、耐衝撃性、ウェルド強度、耐熱性に優れた成形体を得ることができた。
比較例1は耐衝撃改良剤を配合しなかったため耐衝撃性が劣った。また比較例2は耐衝撃改良剤の配合量が過少であったため、耐衝撃性に劣る結果となった。さらに、比較例3は耐衝撃改良剤の配合量が過多であったため、耐熱性に劣る結果となった。
比較例4は用いたポリアミド樹脂中に含まれるトリアミン量が過多であったため、ウェルド強度低下率が大きくなった。
比較例5、6では用いたポリアミド樹脂が不適であったため、ウェルド強度低下率が大きくなった。これは成形サイクルが長くなったために、成形機中での滞留により分解ガスが多く発生し、ウェルド部でのポリアミド樹脂組成物の接着が低下したためである。
比較例7は用いたポリアミド樹脂中に含まれるトリアミン量が過多であったため、ウェルド強度低下率が大きくなった。
比較例8、9では用いたポリアミド樹脂が不適であったため、ウェルド強度低下率が大きくなった。これは成形サイクルが長くなったために、成形機中での滞留により分解ガスが多く発生し、ウェルド部でのポリアミド樹脂組成物の接着が低下したためである。
































Claims (7)

  1. ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミド樹脂30〜99質量部および耐衝撃改良剤1〜70質量部を合計100質量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジアミン成分が1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンのいずれかであり、ポリアミド樹脂中のジアミン単位に対するトリアミン単位が0.3モル%以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
  2. 耐衝撃改良剤が、オレフィン系重合体、スチレン系エラストマーから選ばれる1種以上の耐衝撃改良剤であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. オレフィン系重合体が、(エチレンおよび/またはプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、(エチレンおよび/またはプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)系共重合体のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. スチレン系エラストマーが、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. さらに、繊維状強化材を含有してなる請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 繊維状強化材がガラス繊維、炭素繊維、金属繊維から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
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