JP4792721B2 - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有するポリカーボネート樹脂組成物に関するものであり、優れた耐衝撃性を活かして、各種成形品として有用に使用されるものである。
従来よりポリカーボネート樹脂は、優れた耐衝撃性を有すものの、耐薬品性や流動性に劣るため、各種樹脂とのポリマーアロイによる改良検討がなされている。しかしながらポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイ化は、一方でポリカーボネートの特徴である耐衝撃性が低下する問題があった。
特許文献1には、ポリカーボネート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリアルキレンテレフタレート樹脂に対し、アクリル系グラフト(共)重合体粒子を配合して溶融混練することにより、ポリカーボネート樹脂およびポリアルキレンテレフタレート樹脂成分が相互に侵入した編目構造を形成した成形体が記載されている。この構造により、単純なポリマーアロイに比較して耐薬品性や強度、靭性がある程度改良されることが示されている。しかしながら同文献記載の方法による成形品の耐衝撃性や耐薬品性の改良効果は必ずしも満足すべきものでは無かった。
特許文献2には、ポリカーボネート樹脂と、ポリブチレンテレフタレート樹脂をスピノーダル分解により、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造とすることで、機械強度が改良されることを示している。同文献記載の方法は、押出機中で剪断をかけることにより、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を相溶化させ、その後スピノーダル分解せしめてアロイ構造を制御するものであり、この方法によれば、機械特性の向上効果が得られるものの、単に両者を相溶化させるのみでは耐衝撃性の改良効果は必ずしも満足すべきものではなく、さらなる改良が要望されていた。
特開平5−156141号公報(第2頁) 特開2003−286414号公報(第2頁、実施例)
本発明は、ポリカーボネート樹脂と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有するポリカーボネート樹脂組成物で優れた耐衝撃性を有する材料を提供することをその課題とするものである。
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂組成物において、優れた耐衝撃性を有する材料を提供すべく鋭意検討した結果、2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)を特定値以上となるようにすることにより、これまでのポリマーアロイと比較し、著しく優れた耐衝撃性を有すことを見出し本発明を完成させるにいたった。
すなわち本発明は、
(1)ポリカーボネート樹脂100重量部と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂10〜1000重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、該組成物の赤外線吸収スペクトルを測定した場合、2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)が、下式1を満足することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物、
赤外吸収ピーク強度比=I(2933cm−1)/I(2965cm−1)≧0.43 −[式1]
I(2933cm−1):該組成物中の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
I(2965cm−1):該組成物中の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
(2)前記ポリカーボネート樹脂組成物が、構造周期0.001〜5μm未満の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μm未満の分散構造を形成していることを特徴とする上記(1)記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(3)スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂が、剪断速度100〜10000sec−1の範囲の剪断下でポリカーボネート樹脂と相溶となる樹脂を含むものであることを特徴とする上記(1)〜(2)いずれか記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(4)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(3)いずれか記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(5)前記ポリカーボネート樹脂組成物が、さらにゴム質重合体を含有することを特徴とする上記(4)記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(6)ゴム質重合体がポリカーボネート樹脂100重量部に対して、1〜100重量部であることを特徴とする上記(5)記載のポリカーボネート樹脂組成物、
(7)ポリカーボネート樹脂100重量部と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂10〜1000重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなるペレットであって、該ペレット表面の赤外線吸収スペクトルを測定した場合、2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)が、下式2を満足することを特徴とするペレット、
赤外吸収ピーク強度比=Ip(2933cm−1)/Ip(2965cm−1)≧0.43−[式2]
Ip(2933cm−1):ペレット表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
Ip(2965cm−1):ペレット表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
(8)ポリカーボネート樹脂100重量部と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂10〜1000重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなるフィルムまたはシートであって、該フィルムまたはシート表面の赤外線吸収スペクトルを測定した場合、2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)が、下式3を満足することを特徴とするフィルムまたはシート、
赤外吸収ピーク強度比=If(2933cm−1)/If(2965cm−1)≧0.43−[式3]
If(2933cm−1):フィルムまたはシート表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
If(2965cm−1):フィルムまたはシート表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
(9)ポリカーボネート樹脂100重量部と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂10〜1000重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなる射出成形品であって、該射出成形品表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度)が、下式4を満足することを特徴とする射出成形品、
赤外吸収ピーク強度比=Ii(2933cm−1)/Ii(2965cm−1)≧0.43−[式4]
Ii(2933cm−1):射出成形品表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
Ii(2965cm−1):射出成形品表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性に著しく優れた射出成形品や、機械特性に優れたフィルムを得ることができるため、これらの特性を活かした材料として有用に用いることができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(1)ポリカーボネート樹脂
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールA、つまり2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた1種以上のジヒドロキシ化合物を主原料とするものが好ましく挙げられる。なかでもビスフェノールA、つまり2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料として製造されたものが好ましい。具体的には、上記ビスフェノールAなどをジヒドロキシ成分として用い、エステル交換法あるいはホスゲン法により得られたポリカーボネートが好ましい。さらに、上記ビスフェノールAは、これと共重合可能なその他のジヒドロキシ化合物、例えば4,4'−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどと併用することも可能であり、その他のジヒドロキシ化合物の使用量は、ジヒドロキシ化合物の総量に対し、10モル%以下であることが好ましい。
また上記ポリカーボネート樹脂は、優れた耐衝撃性と成形性の観点から、ポリカーボネート樹脂0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定したときの比粘度が0.1〜2.0、特に0.5〜1.5の範囲にあるものが好適であり、さらには0.8〜1.5の範囲にあるものが最も好ましい。
(2)ポリカーボネート樹脂組成物
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有するものである。
そして、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、該組成物の赤外線吸収スペクトルを測定した場合、2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)(下記式1)が0.43以上であることが必要であり、好ましくは0.45以上である。また0.45〜0.7の範囲にあるものが好ましく、さらには0.45〜0.6の範囲にあるのが最も好ましい。
赤外吸収ピーク強度比=I(2933cm−1)/I(2965cm−1)≧0.43−[式1]
I(2933cm−1):該組成物の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
I(2965cm−1):該組成物の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
なお、上記においてピーク強度とは、ピーク位置における強度値から、該位置におけるベース直線上の強度値を差し引いた値のことを指す。またかかるベース直線とは、3200cm−1、及び2700cm−1の強度を結んだ直線のことである。またかかる赤外線吸収スペクトルの測定は、赤外吸収ATR測定により行うことができる。赤外線吸収スペクトルにおいて、2933cm−1付近に現れるピークは、C=O及びO−C−Oのコンビネーションに帰属し、2965cm−1付近に現れるピークはC−H非対称伸縮に帰属するものである。すなわち、上記赤外吸収ピーク強度比は、ポリカーボネートのC=Oに対しシス−トランス構造が支配的なアモルファス相に対する、ポリカーボネートのC=Oに対しトランス−トランス構造が支配的なセミクリスタル相の割合を表し、本発明においては、ポリカーボネート樹脂組成物中、赤外線吸収スペクトルで測定されるポリカーボネート樹脂のセミクリスタル相/アモルファス相比が、上記式(1)を満たす場合に、耐衝撃性が飛躍に向上することを見いだしたものである。
このようにポリカーボネート樹脂組成物において、セミクリスタル相/アモルファス相比は、例えば、ポリカーボネート樹脂を、他の樹脂と溶融混練する際に、高剪断応力下で溶融混練することにより高めることができ、なかでも他の樹脂として、好ましくは剪断速度100〜10000sec−1の範囲の剪断下でポリカーボネート樹脂と相溶となる樹脂、より好ましくは溶融混練時の剪断下でポリカーボネート樹脂と相溶となる樹脂を選択して相溶状態で混練を行うことにより、溶融状態で形成したセミクリスタル相/アモルファス相比を大きく損なわずに組成物とすることができる点で好ましい。なお、本発明において「剪断速度が100〜10000sec−1の範囲の剪断下でポリカーボネート樹脂と相溶となる」とは、その剪断速度の全ての範囲の剪断条件下で、ポリカーボネート樹脂と相溶となる必要はなく、その範囲のいずれかの剪断条件下でポリカーボネート樹脂と相溶となればよいことを意味する。またセミクリスタル相/アモルファス相比を大きくする観点から、上記剪断速度は、特に500〜5000sec−1の範囲とすることが好ましく、さらには1000sec−1〜3000sec−1の範囲とすることがより好ましく、最も好ましくは、溶融混練時に上記剪断速度範囲を実現し、その際にポリカーボネート樹脂と相溶となる樹脂を選択することである。このように剪断速度100〜10000sec−1の範囲の剪断下でポリカーボネート樹脂と相溶となる樹脂としては、ポリカーボネート樹脂と相溶性の樹脂、あるいは非剪断下では非相溶系であっても上記剪断下で相溶性となる樹脂が挙げられるが、後述する好ましい周期構造、分散構造を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られる点で、非剪断下では非相溶系であっても上記剪断下で相溶性となる樹脂が好ましく用いられる。なお、上記において剪断速度は、例えば平行円盤型剪断賦与装置を用いる場合、所定の温度に加熱し溶融状態とした樹脂を平行円盤間に投入し、中心からの距離(r)、平行円盤間の間隔(h)、回転の角速度(ω)から、ω×r/hとして求めることが可能である。
かかるポリカーボネート樹脂組成物の具体的な製造方法としては、ポリカーボネート樹脂と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂を、2軸押出機のニーディングゾーンにおいて、ポリカーボネート樹脂組成物としたときに、セミクリスタル相/アモルファス相比が本発明で規定する範囲となるのに十分な高剪断応力下で溶融混練することによって得ることができる。2軸押出機を用いる場合、ニーディングブロックを多用したスクリューアレンジにしたり、樹脂温度を下げたり、スクリュー回転数を高くしたり、使用ポリマーの粘度を上げることによってより高剪断応力状態を形成することにより、適宜調節することができる。
使用ポリマーの粘度を上げ高剪断応力状態を形成する場合、好ましいポリカーボネート樹脂の比粘度は、0.5〜1.5の範囲であり、さらに好ましくは、0.8〜1.5の範囲である。ここでポリカーボネート樹脂の比粘度は、ポリカーボネート0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定することによって求めることができる。
また本発明のポリカーボネート樹脂組成物においては、ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート樹脂以外の樹脂とが、構造周期0.001〜5μm未満の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μm未満の分散構造を形成していることが好ましい。
かかる構造を有するポリカーボネート樹脂組成物を得る方法としては、後述のスピノーダル分解を利用する方法が好ましい。さらにはより優れた特性を得るためには、構造周期0.002〜1μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.002〜1μmの範囲の分散構造に制御することが好ましく、さらには、構造周期0.003〜0.5μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.003〜0.5μmの範囲の分散構造に制御することがより好ましく、さらには、構造周期0.003〜0.3μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.003〜0.3μmの範囲の分散構造に制御することが最も好ましい。
一般に、2成分の樹脂からなるポリマーアロイには、相溶系、非相溶系および半相溶系がある。相溶系は、平衡状態である非剪断下において、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な温度の全領域において相溶な系である。非相溶系は、相溶系とは逆に、全領域で非相溶となる系である。半相溶系は、ある特定の温度および組成の領域で相溶し、別の領域で非相溶となる系である。さらにこの半相溶系には、その相分離状態の条件によってスピノーダル分解によって相分離するものと、核生成と成長によって相分離するものがある。
さらに3成分以上からなるポリマーアロイの場合は、3成分以上のいずれもが相溶である系、3成分以上のいずれもが非相溶である系、2成分以上のある相溶な相と、残りの1成分以上の相が非相溶な系、2成分が半相溶系で、残りの成分がこの2成分からなる半相溶系に分配される系、2成分が半相溶系で、残りの成分がこの2成分と非相溶となる系などがある。本発明においては、3成分以上からなるポリマーアロイの場合、2成分が非相溶系で、残りの成分がこの2成分からなる非相溶系に分配される系であることが好ましい。この場合ポリマーアロイの構造は、2成分からなる非相溶系の構造と同等になる。以下2成分の樹脂からなるポリマーアロイで代表して説明する。
上記非相溶系においても溶融混練によってスピノーダル分解を誘発することが可能であり、それには、溶融混練時の剪断速度100〜10000sec−1の剪断下で一旦相溶化し、その後非剪断下とすることにより相分解するいわゆる剪断場依存型スピノーダル分解により相分離する。この剪断場依存型スピノーダル分解様式の基本部分については、上述の一般的な半相溶系におけるスピノーダル分解と同様であることから、以下一般的な半相溶系におけるスピノーダル分解について説明した後、本発明に特徴的な部分を付記する形で説明する。
一般にスピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分の樹脂組成および温度に対する相図において、スピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指す。一方、核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分の樹脂を混合した場合、相溶な場合の自由エネルギーと相溶しない2相における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂ΔGmix/∂φ)が0となる曲線のことである。スピノーダル曲線の内側では、∂ΔGmix/∂φ<0の不安定状態であり、スピノーダル曲線の外側では∂ΔGmix/∂φ>0である。
またバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶な領域と非相溶な領域の境界の曲線のことである。
ここで相溶状態とは、分子レベルで均一に混合している状態のことである。具体的には異なる成分からなる相が、0.001μm以上の構造物を形成していない場合を指す。また、非相溶状態とは、相溶状態でない場合のことである。すなわち異なる成分からなる相が、0.001μm以上の構造物を形成している状態のことを指す。ここで、0.001μm以上の構造物とは、例えば、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造や粒子間距離0.001〜1μmの分散構造などのことである。相溶か否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers,MunichViema New York,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶化した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急速に変化させた場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λm)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った両相連続構造を形成する。この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]−1/2
(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)
ここで両相連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この両相連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ 基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人)に記載されている。
上記剪断場依存型スピノーダル分解では、剪断を賦与することにより相溶領域が拡大する。つまりはスピノーダル曲線が剪断を賦与することにより大きく変化するため、スピノーダル曲線が変化しない上記一般的なスピノーダル分解に比べて、同じ温度変化幅においても実質的な過冷却度(│Ts−T│)が大きくなる。その結果、上述の関係式におけるスピノーダル分解の構造周期を小さくすることが容易となる。
スピノーダル分解では、この様な初期過程を経た後、波長の増大と濃度差の増大が同時に生じる中期過程、濃度差が共存組成に達した後、波長の増大が自己相似的に生じる後期過程を経て、最終的には巨視的な2相に分離するまで進行する。本発明においては、最終的に巨視的な2相に分離する前の所望の構造周期に到達した段階で構造を固定すればよい。また中期過程から後期過程にかける波長の増大過程において、組成や界面張力の影響によっては、片方の相の連続性が途切れ、上述の両相連続構造から分散構造に変化する場合もある。この場合には所望の粒子間距離に到達した段階で構造を固定すればよい。
ここで分散構造とは、片方の相が連続相であるマトリックスの中に、もう片方の相である粒子が点在している、いわゆる海島構造のことをさす。
またこの初期過程から構造発展させる方法に関しては、特に制限はないが、ポリマーアロイを構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度のうち、最も低い温度以上で熱処理する方法が通常好ましく用いられる。さらにはポリマーアロイが相溶状態で単一のガラス転移温度を有する場合や、相分解が進行しつつある状態で、ポリマーアロイのガラス転移温度がポリマーアロイを構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度間にある場合には、そのポリマーアロイ中のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で熱処理することがより好ましい。またポリマーアロイを構成する個々の樹脂成分として結晶性樹脂を用いる場合、該熱処理温度を結晶性樹脂の結晶融解温度以上とすることは、熱処理による構造発展が効果的に得られるため好ましく、また該熱処理温度を結晶性樹脂の結晶融解温度±20℃以内とすることは上記構造発展の制御を容易にするために好ましく、さらには結晶融解温度±10℃以内とすることがより好ましい。ここで樹脂成分として2種以上の結晶性樹脂を用いる場合、該熱処理温度は、結晶性樹脂の結晶融解温度のうち最も高い温度を基準として、かかる結晶融解温度±20℃以内とすることが好ましく、さらにはかかる結晶融解温度±10℃以内とすることがより好ましい。
またスピノーダル分解による構造を固定化する方法としては、急冷等により、相分離相の一方または両方の相の構造を固定する方法や、一方が熱硬化する成分である場合、熱硬化性成分の相が反応によって自由に運動できなくなることを利用する方法、さらに一方が結晶性樹脂である場合、結晶性樹脂相を結晶化によって自由に運動できなくなることを利用する方法が挙げられる。中でも結晶性樹脂を用いた場合、結晶化による構造固定が好ましく用いられる。
一方、核生成と成長により相分離する系では、その初期から海島構造である分散構造が形成されてしまい、それが成長するため、本発明の様な規則正しく並んだ構造周期0.001〜1μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの範囲の分散構造を形成させることは困難である。
かかる両相連続構造、もしくは分散構造が得られていることを確認するためには、規則的な周期構造が確認されることが重要である。そのためには、例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認に加えて、光散乱装置や小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れることを確認する。なお、光散乱装置、小角X線散乱装置は最適測定領域が異なるため、構造周期の大きさに応じて適宜選択して用いられる。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造が存在することの証明であり、その周期Λm は、両相連続構造の場合構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θm を用いて次式
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
により計算することができる。
スピノーダル分解を実現させるためには、2成分以上の樹脂を、一旦相溶状態とした後、スピノーダル曲線の内側の不安定状態とすることが必要である。一般的な半相溶系におけるスピノーダル分解においては、相溶条件下で溶融混練後、非相溶域に温度ジャンプさせることによって、スピノーダル分解を生じさせ得る。一方、上記剪断場依存型スピノーダル分解においては、非相溶系において、剪断速度100〜10000sec−1の範囲の剪断下で相溶化しているため、非剪断下とすることのみでスピノーダル分解を生じさせ得るので、ポリカーボネート樹脂と溶融混練するその他の樹脂として、上記のような条件を満たすものを選択することが前記周期構造または分散構造を有するポリカーボネート樹脂組成物を得る上で好ましい。
上記剪断場依存型スピノーダル分解による相分離を起こしうる上記ポリカーボネート樹脂との組み合わせとしては、非剪断下で非相溶であって、剪断下で相溶であり、かつ、剪断下から非剪断下への変化でスピノーダル分解するような組み合わせである。具体的には、例えばポリカーボネート樹脂とスチレン・アクリロニトリル共重合体の組み合わせ、ポリカーボネート樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂の組み合わせ、ポリカーボネート樹脂とスチレン・ブタジエン共重合体の組み合わせ、ポリカーボネート樹脂とスチレン・ブタジエン共重合体の水添物の組み合わせなどが挙げられる。なかでもポリカーボネート樹脂とスチレン・アクリロニトリル共重合体の組み合わせ、ポリカーボネート樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂の組み合わせが好ましく、特にポリカーボネート樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
かかる熱可塑性ポリエステル樹脂としては、二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体および、ジオールまたはその誘導体からエステル化反応により合成される飽和ポリエステルが挙げられる。
上記二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらの低級アルコールエステルなどが挙げられる。またジオールまたはその誘導体としては炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、あるいは分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらの二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体、ジオールまたはその誘導体はそれぞれ一種または2種以上で用いることにより重合体ないしは共重合体とすることができる。
これらの重合体ないしは共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどが挙げられる。なかでもポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどが好ましく、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどがさらに好ましく、最も好ましいのはポリブチレンテレフタレートである。
かかるポリブチレンテレフタレートとは、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とを主成分とし重縮合反応によって得られる重合体であって、特性を損なわない範囲において共重合成分を含んでも良く、共重合成分の共重合量は全単量体に対して20モル%以下であることが好ましい。
これら重合体および共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられ、単独で用いても2種以上混合して用いても良い。
また上述した熱可塑性ポリエステルは、成形性、機械的特性の観点からo−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60、特に0.52〜1.25の範囲にあるものが好適であり、さらには0.6〜1.0の範囲にあるものが最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂と、上記剪断速度100〜10000sec−1の範囲の剪断下でポリカーボネート樹脂と相溶となる樹脂の配合量には特に制限がないが、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、剪断速度100〜10000sec−1の範囲の剪断下でポリカーボネート樹脂と相溶となる樹脂10〜1000重量部であり、好ましくは10〜500重量部である。
また、上記ポリカーボネート樹脂組成物に、さらにポリカーボネート樹脂組成物を構成する成分を含むブロックコポリマーやグラフトコポリマーやランダムコポリマーなどの第3成分を添加することは、相分離した相間における界面の自由エネルギーを低下させ、両相連続構造における構造周期や、分散構造における分散粒子間距離の制御を容易にするため好ましい。この場合、通常、かかるコポリマーなどの第3成分は、それを除く2成分の樹脂からなるポリマーアロイの各相に分配されるため、2成分の樹脂からなるポリマーアロイ同様に取り扱うことができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物におけるその他の樹脂として、上記好ましい樹脂に、さらに他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を本発明の構造を損なわない範囲で含有させることもできる。これらの熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリエステル、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に、ゴム質重合体を含有させることは、優れた低温耐衝撃性を得られるため好ましい。ゴム質重合体とは、常温ではゴム状弾性をもつ固体であり、かかるゴム質重合体を含有する化合物の例としては、熱可塑性エラストマー、ゴム変性ポリスチレン系樹脂、コアシェルポリマー等が挙げられる。かかる熱可塑性エラストマーとは、常温ではゴム状弾性をもつ固体であるが、加熱すると粘度が低下し溶融混練可能な高分子物質の総称であり、ゴム変性ポリスチレン系樹脂とは、ゴム質重合体をポリスチレン系樹脂中に混合した高分子物質の総称であり、コアシェルポリマーとは、多層構造からなり、ゴム層からなるコア層をガラス状の樹脂が包含したコアシェル型グラフト共重合体の総称である。
かかるゴム質重合体を含有する化合物の例としては、中でもコアシェルポリマーが好ましく用いられる。
熱可塑性エラストマーの種類は特に制限されず、例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系及びウレタン系等が挙げられる。オレフィン系エラストマーの例としては、エチレン及び/又はプロピレンを主成分とする共重合体が挙げられ、具体的にはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。スチレン系エラストマーの例としては、スチレン等のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化及び/又は水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体が挙げられる。かかるブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第三級ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、p−メチルスチレン、1,1 −ジフェニルスチレン等のうちから一種又は二種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3 −ペンタジエン、2,3 −ジメチル−1,3 −ブタジエン、ピレリレン、3−ブチル−1,3 −オクタジエン、フェニル−1,3 −ブタジエン等のうちから一種又は二種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。ここでいうブロック共重合体とは、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとからなるブロック共重合体であり、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合比は5/95〜70/30であり、特に10/90〜60/40の重合比が好ましい。ポリエステル系エラストマーの例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートといった芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエチレングリコールやポリテトラメチレングリコールといったポリエーテル、またはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトンといった脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられる。ポリアミド系エラストマーの例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられる。ウレタン系エラストマーの例としては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートとエチレングリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールとを反応させることによって得られるポリウレタンをハードセグメントとし、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルもしくはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられる。
かかるゴム変性ポリスチレン系樹脂とは、ゴム質重合体をポリスチレン系樹脂中に混合したものである。混合方法としては、単純な機械的ブレンド方法でもかまわないが、良好な相溶性を得るためには、ゴム質重合体の存在下にスチレン系単量体等をグラフト共重合させる、いわゆるグラフト共重合によって得られたものが好ましい。また、該方法で得られるゴム変性ポリスチレン系樹脂(グラフト重合体)に、別途方法によって得られるポリスチレン系樹脂を混合する、いわゆるグラフト−ブレンド法によって得られたものを用いることも望ましい。かかるゴム質重合体として、具体的には、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の共役ジエン系ゴム、エチレン−プロピレン系共重合体等の非共役ジエン系ゴムが挙げられるが、なかでもポリブタジエンが好ましい。またかかる前記スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ブロモスチレン等があるが、これらのなかでもスチレン及び/又はα−メチルスチレンを用いることが最適である。スチレン系単量体以外の単量体としては、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニル単量体が挙げられる。
コアシェルポリマーとは、多層構造からなり、好ましくは平均粒径 1.0μm 以下のゴム層をガラス状の樹脂が包含したコアシェル型グラフト共重合体である。かかるコアシェル型共重合体のゴム層としては珪素系、ジエン系、アクリル系エラストマー単独またはこの中から選ばれる2種以上のエラストマー成分系を共重合/グラフト共重合させたものを用いることができる。珪素系エラストマーとしては、オルガノシロキサン単量体を重合させて製造されるもので、オルガノシロキサンとしては、例えばヘキサメチルトリシクロシロキサン、オクタメチルシクロシロキサン、デカメチルペンタシクロシロキサン、ドデカメチルヘキサシクロシロキサン、トリメチルトリフェニルシロキサン、テトラメチルフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が用いられる。アクリル系ゴムとしては、ブチルアクリレートの様なアクリル酸エステルと少量のブチレンジアクリレートの様な架橋性モノマーを重合させて得られる。かかるアクリル酸エステルとしては、ブチルアクリレートの他に、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。また、架橋性モノマーとしては、ブチレンジアクリレートの他に、ブチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパンの様なポリオールとアクリル酸のエステル類、ジビニルベンゼン、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレートのようなビニル化合物、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルイタニレート、モノアリルマレート、モノアリルフマレート、トリアリルシアヌレートのようなアリル化合物が挙げられる。ジエン系ゴムとは、例としてブタジエン単量体を重合して得られるポリブタジエンが挙げられる。更に、コアシェル型共重合体のガラス状の樹脂で形成されるシェル層は、ビニル系重合体が用いられる。ビニル系重合体は、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、メタクリル酸エステル系単量体、及びアクリル酸エステル単量体の中から選ばれた少なくとも一種の単量体を重合あるいは共重合させて得られる。かかるコアシェル型共重合体のゴム層とシェル層は、通常グラフト共重合によって結合されている。このグラフト共重合化は、必要な場合には、ゴム層の重合時にシェル層と反応するグラフト交差剤を添加し、ゴム層に反応基を与えた後、シェル層を形成させることによって得られる。グラフト交差剤としては、シリコーン系ゴムでは、ビニル結合を有したオルガノシロキサンあるいはチオールを有したオルガノシロキサンが用いられ、好ましくはアクロキシシロキサン、メタクリロキシシロキサン、ビニルシロキサンが使用される。上記したようなコアシェルポリマーとしては、例えば鐘淵化学製カネエースFM(登録商標)、三菱レイヨン製メタブレンW−300 、W−530 、S−2001(登録商標)、ロームアンドハース社製アクリロイドKM−323 、KM−330(登録商標)、呉羽化学製パラロイドEXL−2311、−2602、−3211(登録商標)、武田薬品製スタフィロイドP−3267(登録商標)等が挙げられる。
かかるゴム質重合体の配合量に特に制限はないが、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、1〜100重量部が好ましい。より好ましくは、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、2〜50重量部であり、最も好ましくは、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、5〜30重量部である。
ポリカーボネート樹脂と、上記ポリカーボネート樹脂を除く樹脂(剪断速度100〜10000sec−1の範囲の剪断下でポリカーボネート樹脂と相溶となる樹脂、ゴム質重合体、その他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を含む)の合計の配合量には特に制限がないが、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、ポリカーボネート樹脂を除く樹脂の合計10〜1000重量部が好ましく、より好ましくは、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、ポリカーボネート樹脂を除く樹脂の合計10〜500重量部である。
これらの他の熱可塑性樹脂やゴム質重合体、熱硬化性樹脂は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能である。例えば、2種の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2種の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに2種の樹脂のうち、いずれか片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法等が挙げられる。
さらに本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、不活性粒子を含有させることも好ましい。不活性粒子としては、高分子架橋粒子や、アルミナ粒子、球状シリカ粒子、凝集シリカ粒子、ケイ酸アルミニウム粒子、炭酸カルシウム粒子、酸化チタン粒子、カオリン粒子などの無機粒子などが挙げられる。これらの中でも、高分子架橋粒子、アルミナ粒子、球状シリカ粒子、ケイ酸アルミニウム粒子が好ましく用いられる。
不活性粒子の平均粒径は0.001〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜3μmである。また、不活性粒子の配合割合は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。より好ましい配合割合は、0.05〜5重量部である。不活性粒子が0.01重量部未満の場合は、フィルムやシート成形の際に滑り性が不良となり成形性を低下させる可能性があり、好ましくない。逆に不活性粒子が10重量部を超えると靭性を低下させる可能性があり、好ましくない。
さらに本発明のペレットには離型剤を含有させることも好ましい。離型剤としては、ステアリン酸やモンタン酸のような長鎖脂肪族カルボン酸とエチレングリコールやグリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとのエステル化合物や、ステアリン酸やモンタン酸のような長鎖脂肪族カルボン酸とステアリルアミンやエチレンジアミンなどとのアミド化合物、また、ポリエチレン、シリコーン化合物などが用いられる。好ましい離型剤の具体例としてはポリエチレン、シリコーン化合物、モンタン酸のエチレングリコールエステルやエチレンビスステアリルアミドなどが挙げられる。
離型剤の配合割合は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.8重量部である。離型剤が0.001重量部未満では射出成形の際に離型性が不良となり成形性を低下させる可能性があり、好ましくない。逆に離型剤が1重量部を超えると離型剤が成形品表面にブリードアウトし成形品外観を低下させたり金型を汚染したりする可能性があり、好ましくない。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲でさらに各種の添加剤を含有させることもできる。これらの添加剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、セリサイト、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、炭酸カルシウム、ケイ砂、ワラステナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズ、酸化チタンなどの強化材、非板状充填材、あるいは酸化防止剤(リン系、硫黄系など)、紫外線吸収剤、熱安定剤(ヒンダードフェノール系など)、エステル交換反応抑制剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料および顔料を含む着色剤、難燃剤(ハロゲン系、リン系など)、難燃助剤(三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンなど)、発泡剤、カップリング剤(エポキシ基、アミノ基メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基を一種以上含むシランカップリング剤やチタンカップリング剤)、抗菌剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能である。例えば、2種の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2種の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに2種の樹脂のうち、いずれか片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法等が挙げられる。
(3)ペレット
上記ポリカーボネート樹脂組成物は、上記のように2軸押出機等を用いて溶融混練し、ガット状またはシート状に吐出したものをカッティングすることによりペレット状に加工することができる。
次に本発明のペレットについて説明する。
本発明におけるペレットは、赤外線吸収スペクトルを測定した場合、該ペレット表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)(下記式2)が0.43以上であることが必要であり、好ましくは0.45以上である。また0.45〜0.7の範囲にあるものが好ましく、さらには0.45〜0.6の範囲にあるものが最も好ましい。
赤外吸収ピーク強度比=I(2933cm−1)/I(2965cm−1)≧0.43 −[式2]
(2933cm−1):ペレット表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
(2965cm−1):ペレット表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
上記赤外線吸収スペクトルにおける吸収のピーク強度、測定法は、前記式1において説明したのと同様である。
上記本発明のペレットの具体的な製造方法としては、前記本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法と同様に、ポリカーボネート樹脂を含む少なくとも2成分の樹脂を溶融混練し、ストランドまたはシートとして吐出後、水中で急冷し、ペレタイズすることによって得ることができる。
本発明のペレットの形状には特に制限が無いが、射出成形、押出成形など公知の塑性加工に供するために適した大きさおよび形状であることが好ましい。具体例としては、直径1〜6mm、好ましくは1.5〜4mm、長さ2〜6mm、好ましくは2.5〜4mmの円筒形状や、縦、横それぞれ3〜6mm、厚さ1.5〜3mmの直方体形状等が挙げられる。
さらに本発明のペレットに離型剤を含有させることも好ましいのは前述のとおりであるが、この離型剤は全てがペレット内部に含有されていても良いが、一部または全部がペレットの表面に存在している、すなわち、ペレットと離型剤をドライブレンドすることによりペレット表面に存在させることも好ましい。
かかるペレットは任意の方法で成形加工することが可能であり、成形形状は、任意の形状が可能である。成形方法としては、例えば、溶融紡糸、溶融製膜、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを挙げることができる。
(4)フィルムまたはシート
上記ポリカーボネート樹脂組成物は、溶融製膜を経ることによりフィルムまたはシートに加工することができる。
次に本発明のフィルムまたはシートについて説明する。
本発明におけるフィルムまたはシートは、赤外線吸収スペクトルを測定した場合、該フィルムまたはシート表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)(下記式3)が0.43以上であることが必要であり、好ましくは0.45以上である。また0.45〜0.7の範囲にあるものが好ましく、さらには0.45〜0.6の範囲にあるものが最も好ましい。
赤外吸収ピーク強度比=I(2933cm−1)/I(2965cm−1)≧0.43 −[式3]
(2933cm−1):フィルムまたはシート表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
(2965cm−1):フィルムまたはシート表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
上記赤外吸収スペクトルにおける吸収のピーク強度、測定法は、前記式1において説明したのと同様である。
また本発明のフィルムまたはシートは、ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート樹脂以外の樹脂とが、構造周期0.001〜5μm未満の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μm未満の分散構造を形成していることが好ましい。
上記構造を有するフィルムまたはシートを得る方法としては、前述のスピノーダル分解を利用する方法が好ましい。さらにはより優れた特性を得るためには、構造周期0.002〜1μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.002〜1μmの範囲の分散構造に制御することが好ましく、さらには、構造周期0.003〜0.5μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.003〜0.5μmの範囲の分散構造に制御することがより好ましく、さらには、構造周期0.003〜0.3μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.003〜0.3μmの範囲の分散構造に制御することが最も好ましい。
また本発明のフィルムまたはシートに用いられる、上記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂としては、上記ポリカーボネート樹脂組成物の項に記載した、非剪断下で非相溶であり、ポリカーボネート樹脂との溶融混練により相溶化する樹脂が好ましく用いられる。中でもポリカーボネート樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂の組み合わせが好ましく、さらにはポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂の組み合わせが特に好ましい。
かかるフィルムまたはシートの好ましい製造方法としては、前記ポリカーボネート樹脂組成物の項において説明した製造方法と同様に2軸押出機を用いて溶融混練した、ポリカーボネート樹脂組成物をTダイから吐出し、吐出後冷却されることにより固定化する方法が挙げられる。より具体的には、吐出後にキャストドラムで冷却固化して構造を固定化する方法や、吐出後2つのロール間で成形するポリッシング法や、カレンダーリング法等があるが、ここでは特に限定されるものではない。またキャストドラムにキャストする際、溶融樹脂をキャストドラムに密着させるには、静電印加を与える方法、エアーナイフを用いる方法、キャストドラムに対向する押さえのドラムを用いる方法等を用いることもできる。またキャストドラムにキャストする場合は、キャストドラムを吐出口直下に設置し、急冷することが好ましい。
また得られたフィルムを延伸することも可能である。延伸する方法は、特に制限はなく、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでも構わない。また延伸倍率は2〜8倍の間、延伸速度は500〜5000%/分の間が多く用いられる。さらに延伸時の熱処理温度は、ポリカーボネート樹脂組成物を構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で熱処理する方法が通常好ましく用いられる。ポリカーボネート樹脂組成物が相溶状態で単一のガラス転移温度を有する場合や、相分解が進行しつつある状態でポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度が、ポリカーボネート樹脂組成物を構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度間にある場合には、そのポリカーボネート樹脂組成物中のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で熱処理することがより好ましい。またポリカーボネート樹脂組成物を構成する個々の樹脂成分として結晶性樹脂を用いる場合、該熱処理温度を結晶性樹脂の昇温結晶化温度以下とすることは、結晶性樹脂の結晶化による延伸の阻害を受けにくくする観点から好ましい。この延伸フィルムは、さらに熱処理することにより、その構造を安定化させて用いることが好ましい。この安定化のための熱処理温度は、通常ポリカーボネート樹脂組成物を構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で熱処理する方法が通常好ましく用いられるが、相分離が進行しつつある状態でポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度が、ポリカーボネート樹脂組成物を構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度間にある場合、そのポリカーボネート樹脂組成物中のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で熱処理することがより好ましい。またこの延伸フィルムは、延伸により、構造周期または粒子間距離を増大させることができる。かかる延伸フィルム中でポリカーボネート樹脂組成物の樹脂が構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を有することが優れた機械特性を得られることから好ましい。さらには構造周期0.001〜0.1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜0.1μmの分散構造を有することがフィルムの透明性の点から好ましい。
本発明でのフィルムまたはシートを構成する樹脂成分の組成については前記ポリカーボネート樹脂組成物と同様であるが、シートまたはフィルムに用いる場合、製膜時の巻き取り性を向上させるため、前記ポリカーボネート樹脂組成物の項で説明した不活性無機粒子および/または高分子架橋粒子を配合することが好ましい。
また、本発明のフィルムまたはシートにはゴム質重合体等を含め各種の添加剤を含有させることもできるのは、前記ポリカーボネート樹脂組成物の項で説明したのと同様である。これらの添加剤は、本発明のフィルムまたはシートを製造する任意の段階で配合することが可能であるが、これらの添加剤を、予めポリカーボネート樹脂組成物を構成する樹脂のいずれかに添加したマスターバッチを作製し、それを添加する方法が通常好ましく用いられる。さらにゴム質重合体等、前述したような各種の添加剤をさらに含有せしめる場合、ゴム質重合体等のその他添加剤成分は前記好ましい構造周期を有する樹脂組成物中に分散した構造となっていてもよい。
(5)射出成形品
上記ポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形を経ることにより射出成形品を得ることができる。
本発明における射出成形品は、赤外線吸収スペクトルを測定した場合、該射出成形品表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)(下記式4)が0.43以上であることが必要であり、好ましくは0.45以上である。また0.45〜0.7の範囲にあるものが好ましく、さらには0.45〜0.6の範囲にあるものが最も好ましい。
赤外吸収ピーク強度比=I(2933cm−1)/I(2965cm−1)≧0.43 −[式4]
(2933cm−1):射出成形品表面の2933±5cm−1の範囲に現れる赤外吸収のピーク強度
(2965cm−1):射出成形品表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
上記赤外線吸収スペクトルにおける吸収のピーク強度、測定法とは、前期式1において説明したのと同様である。 また本発明の射出成形品は、ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート樹脂以外の樹脂とが、構造周期0.001〜5μm未満の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μm未満の分散構造を形成していることが好ましい。
上記構造を有する射出成形品を得る方法としては、前述のスピノーダル分解を利用する方法が好ましい。さらにはより優れた特性を得るためには、構造周期0.002〜1μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.002〜1μmの範囲の分散構造に制御することが好ましく、さらには、構造周期0.003〜0.5μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.003〜0.5μmの範囲の分散構造に制御することがより好ましく、さらには、構造周期0.003〜0.3μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.003〜0.3μmの範囲の分散構造に制御することが最も好ましい。
また本発明の射出成形品に用いられる、樹脂の組み合わせとしては、上記ポリカーボネート樹脂組成物の項に記載した、非剪断下で非相溶であり、溶融混練により相溶化する組み合わせが好ましく用いられる。中でもポリカーボネート樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂の組み合わせが好ましく、さらにはポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂の組み合わせが特に好ましい。
かかる射出成形品を構成するポリカーボネート樹脂組成物の樹脂の配合量には特に制限がないが、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、ポリカーボネートを除く樹脂10〜1000重量部が好ましい。より好ましくはポリカーボネート樹脂100重量部に対して、ポリカーボネートを除く樹脂10〜100重量部である。長尺ものの成形体や精密成形体を得る場合には、ポリカーボネート樹脂の配合量を100重量部以下とし、射出成形時の流動性を低下させないようにすることが好ましい。
本発明の射出成形品を製造する好ましい方法は、高剪断を付与することのできる2軸押出機内で、ポリカーボネート樹脂組成物を前記ポリカーボネート樹脂組成物の項において説明した製造方法と同様に本発明で規定する条件を満たす射出成形品を得るのに十分な程度の高剪断応力下で一旦相溶化させ、それを押出機から吐出後直ぐに冷却することによって、2成分の樹脂が相溶状態で構造が固定されたペレットか、あるいはスピノーダル分解の初期状態である構造周期が0.4μm以下の両相連続構造のペレットを製造した後、このペレットを射出成形し、その射出成形の過程においてスピノーダル分解をさらに進行させ、構造周期が0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの範囲の分散構造を有する射出成形品を形成させる方法である。
なお、本発明の射出成形品を構成するポリカーボネート樹脂組成物には、前記ポリカーボネート樹脂組成物の項で説明したのと同様に本発明の目的を損なわない範囲でさらに各種の添加剤を含有させることもでき、なかでも本発明の射出成形品とする場合、成形品の離型性を向上させるため、前記ポリカーボネート樹脂組成物の項で説明した離型剤を含有させることが好ましい。 これらの添加剤は、本発明の射出成形品を製造する任意の段階で配合することが可能である。例えば、2成分の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2成分の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに2成分の樹脂のいずれか片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法等が挙げられる。
また、本発明の射出成形品には、前記ポリカーボネート樹脂組成物の項で説明したのと同様に、ポリカーボネート樹脂と配合するその他の樹脂として、好ましく用いられる樹脂とともにさらに他の熱可塑性樹脂やゴム質重合体、熱硬化性樹脂を本発明の構造を損なわない範囲で含有させることもできる。 これらの他の熱可塑性樹脂、ゴム質重合体や熱硬化性樹脂は、本発明の射出成形品を製造する任意の段階で配合することが可能である。例えば、2成分の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2成分の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに2成分の樹脂のいずれか片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法等が挙げられる。さらにゴム質重合体等、前述したようなその他各種の添加剤、他の樹脂をさらに含有せしめる場合、ゴム質重合体等のその他添加剤、樹脂成分は前記好ましい構造周期を有する樹脂組成物中に分散した構造となっていてもよい。
かかる耐衝撃性を高めた構造材料は、例えば自動車部品や電機部品などに好適に使用することができる。
自動車部品の例としては、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、エアフローメーター、エアポンプ、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、サーモスタットハウジング、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブ−スター部品、各種ケース、燃料関係・排気系・吸気系等の各種チューブ、各種タンク、燃料関係・排気系・吸気系等の各種ホース、各種クリップ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、各種パイプ、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、ブレーキパッド摩耗センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコンパネルスイッチ基板、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、スタータースイッチ、スターターリレー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、デュストリビューター、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、ホーンターミナル、ウィンドウォッシャーノズル、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプソケット、ランプハウジング、ランプベゼル、ドアハンドル、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクターなどの各種コネクターなどが挙げられる。
また電気部品の例としては、コネクター、コイル、各種センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク・DVD等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、携帯電話関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライター関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等の光学機器/精密機械関連部品などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。
実施例、比較例では以下の評価方法を用いた。
(1)評価試験片の製造
得られたペレットを、ホッパ下から先端に向かって、240℃−250℃−260℃−260℃に設定した日精樹脂工業社製射出成形機(PS−60E9DSE)で、金型温度80℃とし、保圧10秒、冷却時間30秒の成形サイクルで厚さ1/8インチ(3.2mm)のモールドノッチ付きアイゾット衝撃試験片を成形した。
(2)赤外線吸収スペクトルにおける吸収のピーク強度の測定
実施例、比較例で得られた吐出ガット、ペレット表面、射出成形品表面、シート表面について、パーキンエルマー社製Spectrum One フーリエ変換赤外吸収ATR装置を用い、分解能4cm−1、積算回数4回で、赤外線吸収スペクトルを測定し、2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度と2965±55cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度を求めた。また該赤外吸収ピーク強度とは、ピーク位置における強度値から、該位置におけるベース直線上の強度値を差し引いた値で計算した。またかかるベース直線とは、3200cm−1、及び2700cm−1の強度を結んだ直線とした。
(3)相構造の評価
i)電子顕微鏡による観察
吐出ガット。ペレット、射出成形品またはシートをヨウ素染色法によりポリカーボネート樹脂を染色後、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出し、サンプルとした。そのサンプルについて日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して相構造の観察を行った。両相連続構造が観察されたものは、下記ii)の測定を行い、構造周期を決定した。
ii)両相連続構造の構造周期は小角X線散乱により測定した。X線発生装置は理学電機社製RU−200で、CuKα線を線源とし、出力50KV/150mA、スリット径0.5mm、カメラ半径405mm、露出時間120分、フィルムKodak DEF−5にて散乱写真を撮影した。なお、サンプルは上記i)と同様の方法で作製したサンプルを用いた。小角X線散乱においてピーク位置(θm)から下式で構造周期(Λm)を計算した。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)。
(4)アイゾット衝撃試験
厚さ1/8インチ(3.2mm)のモールドノッチ付きアイゾット試験片を使用し、ASTM D638に従い、アイゾット衝撃値を測定した。
また、実施例、比較例において使用樹脂、添加剤は、以下に示すものを使用した。
PBT−1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1050S、ガラス転移温度32℃、結晶融解温度220℃)
PC−1:ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”E2000、ガラス転移温度151℃、0.7gを100mlの塩化 メチレンに溶解し20℃で測定した時の比粘度1.18)
PC−2:ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”S2000、ガラス転移温度151℃、0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定した時の比粘度0.78)
PC−3:ポリカーボネート樹脂(出光石油化学(株)製“タフロン”A1900、ガラス転移温度151℃、0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定した時の比粘度0.48)
PC−4:ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”H4000、ガラス転移温度151℃、0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定した時の比粘度0.44)
不活性粒子:平均粒径2.5μm(2次径)の湿式シリカ
離型剤−1:エチレングリコールモンタン酸エステル(クラリアントジャパン社製、Licowax E)。
[実施例1〜6]
表1記載の組成からなる原料を、押出温度250℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数300rpmとした2軸押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給し、ダイから吐出後のガットを、氷水中に急冷した。各実施例のガットはいずれも透明であり、またこれらのガットをヨウ素染色法によりポリカーボネートを染色後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行ったが、いずれのサンプルについても0.001μm以上の構造物がみられず相溶化していることを確認した。これらのガットの2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度と2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度を求め、下式1に従って計算した赤外吸収ピーク強度比を表1に示した。
赤外吸収ピーク強度比=I(2933cm−1)/I(2965cm−1)−[式1]
I(2933cm−1):該組成物中の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
I(2965cm−1):該組成物中の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
次に、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。各実施例のペレットはいずれも透明であるが、ヨウ素染色法によりポリカーボネートを染色後、切り出した超薄切片であるサンプルを用いて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行ったところ、実施例1〜3及び5〜6は0.001μm以上の構造物がみられず相溶化しているが、実施例4では、0.07μmの両相連続構造が形成していることを確認した。またこれらのペレットの2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度と2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度を求め、下式2に従って計算した赤外吸収ピーク強度比を表1に示した。
赤外吸収ピーク強度比=I(2933cm−1)/I(2965cm−1) −[式2]
(2933cm−1):ペレット表面の2933±5cm−1の範囲に現れる赤外吸収のピーク強度
(2965cm−1):ペレット表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
得られたペレットを用いて上記製造法にしたがって厚さ1/8インチ(3.2mm)のアイゾット衝撃試験片を成形した。このアイゾット衝撃試験片を用いて、ASTM D638に従い23℃でのアイゾット衝撃試験を行った。結果を表1に示した。
上記射出成形条件で成形を行った成形品から超薄切片を切り出し、、上記ペレットと同様に、透過型電子顕微鏡写真から構造の状態を観察した。電子顕微鏡写真では黒色に染色されたポリカーボネート相と、白色のポリブチレンテレフタレート相が、互いに連続相を形成している両相連続構造が観察された。
また、上記の両相連続構造の構造周期を小角X線散乱で測定した。小角X線散乱においてピーク位置(θm)から下式で構造周期(Λm)を計算した。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)。
またこれらのアイゾット衝撃試験片の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度と2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度を求め、下式3に従って計算した赤外吸収ピーク強度比を表1に示した。
赤外吸収ピーク強度比=I(2933cm−1)/I(2965cm−1) −[式3]
(2933cm−1):射出成形品表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
(2965cm−1):射出成形品表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
[比較例1〜2]
スクリュー回転数を100、及び200回転とする以外は実施例1〜6と同様にして溶融混練を行いガットを得た。比較例1のガットは不透明であり、比較例2のガットは透明であった。これらのサンプルについても実施例1〜6と同様にペレット、成形品を作製し、それぞれ顕微鏡観察及び赤外吸収ピーク強度比を求め表1に示した。また比較例1のサンプルの構造周期は、電子顕微鏡写真から構造周期を求めた。また、実施例1〜6と同様に成形評価を行い結果を表1に示した。
Figure 0004792721
[実施例7〜11]
表2記載の組成からなる原料を実施例1〜6と同様にして溶融混練を行いペレットを得た。さらに、得られたペレットを用いて、押出温度250℃に設定し、先端部にTダイを有する単軸押出機(φ40mm)に供給し、フィルム化を行った。尚、フィルム化においては、Tダイの下部に50℃に温調したハードクロムの鏡面キャストドラムにTダイの口金から吐出した樹脂をキャストし、さらに50℃に温調した第2ドラムを通過後、巻き取り速度が一定となる様、毎分5mに設定したロール間を通過後、巻き取りロールにより巻き取ることによりフィルムを得た。得られたフィルムの厚みは0.1mmであった。また得られたフィルムは透明であったが、ヨウ素染色法によりポリカーボネートを染色後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行い、いずれのサンプルも両相連続構造物が存在することを確認した。また、小角X線散乱によって構造周期を測定した。またこれらのフィルムの2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度と2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度を求め、下式4に従って計算した赤外吸収ピーク強度比を表2に示した。
赤外吸収ピーク強度比=I(2933cm−1)/I(2965cm−1) −[式4]
(2933cm−1):フィルム表面の2933±5cm−1の範囲に現れる赤外吸収のピーク強度
(2965cm−1):フィルム表面の2965±5cm−1の範囲に現れる赤外吸収のピーク強度
次に上記得られたフィルムから長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.1mmのサンプルを切り出し、チャック間距離20mm、引張速度10mm/分で測定した引張強度、引張伸びを測定した結果を表2に記載した。
[比較例3〜4]
表2記載の組成からなる原料を、スクリュー回転数を100、及び200回転とする以外は実施例7〜11と同様にして溶融混練を行いガットを得た。これらのサンプルについても実施例7〜11と同様にペレット、フィルムを作製し、それぞれ顕微鏡観察及び赤外吸収ピーク強度比を求め表2に示した。また比較例3のサンプルの構造周期は、電子顕微鏡写真から構造周期を求めた。また、実施例7〜11と同様にフィルムから長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.1mmのサンプルを切り出し、チャック間距離20mm、引張速度10mm/分で測定した引張強度、引張伸びを測定した結果を表2に記載した。
Figure 0004792721
[実施例12〜17]
ゴム質重合体を配合した表3記載の組成からなる原料を実施例1〜6と同様にして溶融混練を行いペレット、成形品を作製し、それぞれ透過型電子顕微鏡観察及び赤外吸収ピーク強度比を求め、表3に示した。またいずれのサンプルにおいてもガット、及びペレットでは、PCとPBTが相溶したマトリックスに、ゴム質重合体が分散した構造であった。一方、成形品では、上記マトリックスにおいてPCとPBTが相分離した構造となり、かかる構造の構造周期について、電子顕微鏡から構造周期を求めた。また実施例1〜6と同様に成形評価を行い、23℃、及び−40でのアイゾット衝撃試験を行い、結果を表3に示した。尚使用樹脂は、以下に示すものを使用した。
PBT−2:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1200S、ガラス転移温度32℃、結晶融解温度220℃)
PC−1:ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”E2000、ガラス転移温度151℃、0.7gを100mlの塩
ゴム質重合体−1:コアシェルポリマー(鐘淵化学(株)製“カネエース”FM511)
ゴム質重合体−2:コアシェルポリマー(三菱レーヨン(株)製“メタブレン”S2001)
離型剤−2:ポリエチレン(三井化学社製、“ハイゼックス”7000F)。
Figure 0004792721

Claims (9)

  1. ポリカーボネート樹脂100重量部と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂10〜1000重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、該組成物の赤外線吸収スペクトルを測定した場合、2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)が、下式1を満足することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
    赤外吸収ピーク強度比=I(2933cm−1)/I(2965cm−1)≧0.43 −[式1]
    I(2933cm−1):該組成物中の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
    I(2965cm−1):該組成物中の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
  2. 前記ポリカーボネート樹脂組成物が、構造周期0.001〜5μm未満の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μm未満の分散構造を形成していることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂が、剪断速度100〜10000sec−1の範囲の剪断下でポリカーボネート樹脂と相溶となる樹脂を含むものであることを特徴とする請求項1〜2いずれか記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする請求項1〜いずれか記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 前記ポリカーボネート樹脂組成物が、さらにゴム質重合体を含有することを特徴とする請求項記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. ゴム質重合体がポリカーボネート樹脂100重量部に対して、1〜100重量部であることを特徴とする請求項記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. ポリカーボネート樹脂100重量部と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂10〜1000重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなるペレットであって、該ペレット表面の赤外線吸収スペクトルを測定した場合、2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)が、下式2を満足することを特徴とするペレット。
    赤外吸収ピーク強度比=Ip(2933cm−1)/Ip(2965cm−1)≧0.43−[式2]
    Ip(2933cm−1):ペレット表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
    Ip(2965cm−1):ペレット表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
  8. ポリカーボネート樹脂100重量部と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂10〜1000重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなるフィルムまたはシートであって、該フィルムまたはシート表面の赤外線吸収スペクトルを測定した場合、2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度比)が、下式3を満足することを特徴とするフィルムまたはシート。
    赤外吸収ピーク強度比=If(2933cm−1)/If(2965cm−1)≧0.43−[式3]
    If(2933cm−1):フィルムまたはシート表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
    If(2965cm−1):フィルムまたはシート表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
  9. ポリカーボネート樹脂100重量部と、スチレン・アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の樹脂10〜1000重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなる射出成形品であって、該射出成形品表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークと2965±5cm−1の範囲に現れる吸収ピークの強度比(赤外吸収ピーク強度)が、下式4を満足することを特徴とする射出成形品。
    赤外吸収ピーク強度比=Ii(2933cm−1)/Ii(2965cm−1)≧0.43−[式4]
    Ii(2933cm−1):射出成形品表面の2933±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
    Ii(2965cm−1):射出成形品表面の2965±5cm−1の範囲に現れる吸収のピーク強度
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