JP4972878B2 - ポリマーアロイ - Google Patents

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Description

本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含有し、2種以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイに関するものであり、優れた耐衝撃性を活かして、各種成形品として有用に使用されるものである。
ポリブチレンテレフタレート樹脂に代表されるポリエステル樹脂は、機械特性、耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気的特性に優れ、自動車、電気・電子部品などの広い分野で使用されている。しかし、ポリエステル樹脂は、ノッチ付き衝撃試験による耐衝撃性が低いことから、各種樹脂とのポリマーアロイによる改良検討がなされている。
特許文献1には、ポリカーボネート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリアルキレンテレフタレート樹脂に対し、アクリル系グラフト(共)重合体粒子を配合して溶融混練することにより、ポリカーボネート樹脂およびポリアルキレンテレフタレート樹脂成分が相互に侵入した編目構造を形成した成形体が記載されている。この構造により、単純なポリマーアロイに比較して耐薬品性や強度、靭性がある程度改良されることが示されている。しかしながら同文献記載の方法によっても、得られる成形品の物性、特にノッチ付き耐衝撃性や耐薬品性の改良効果は必ずしも満足すべきものでは無かった。
特許文献2には、ポリカーボネート樹脂と、ポリブチレンテレフタレート樹脂をスピノーダル分解により、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造とすることで、機械強度が改良されることを示している。同文献記載の方法は、押出機中で剪断をかけることにより、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂を相溶化させ、その後スピノーダル分解せしめてアロイ構造を制御するものであり、この方法によれば、機械特性の向上効果が得られるものの、単に両者を相溶化させるのみではノッチ付き耐衝撃性の改良効果は必ずしも満足すべきものではなく、さらなる改良が要望されていた。
特開平5−156141号公報(第2頁) 特開2003−286414号公報(第2頁、実施例)
本発明は、特にノッチ付き衝撃試験における優れた耐衝撃性を活かして、有用に使用することのできる各種成形品を提供することをその課題とするものである。
本発明者らは、ポリマーアロイにおいて、優れた耐衝撃性を有する材料を提供すべく鋭意検討した結果、少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、2種以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイとし、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶を任意に100本選択した際のラメラの長軸方向の平均長さが100nm以下となるようにすることにより、著しく優れた耐衝撃性を有すことを見出し、本発明を完成させるにいたった。
すなわち本発明は、
(1)少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、2種以上の熱可塑性樹脂からなり、融点180℃以上の有機核剤を含有するポリマーアロイであり、前記ポリマーアロイが、構造周期0.001〜5μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μmの分散構造を形成しており、前記ポリマーアロイ中に存在するポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶を任意に100本選択した際のラメラの長軸方向の平均長さが100nm以下であることを特徴とするポリマーアロイ、
(2)少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、2種以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイであり、前記ポリマーアロイ中に存在するポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶を任意に100本選択した際、任意に設定した基準面に対してラメラの長軸方向となす鋭角角度の標準偏差が20以上であることを特徴とする前記(1)に記載のポリマーアロイ、
(3)前記有機核剤の添加量が、前記ポリマーアロイ(樹脂成分の合計)100重量部に対して0.01〜10重量部であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のポリマーアロイ、
(4)前記ポリマーアロイが、ポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリマーアロイ、
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリマーアロイからなる射出成形品である。
本発明のポリマーアロイは、耐衝撃性に著しく優れた射出成形品を得ることができるため、これらの特性を活かした各種成形品として有用に用いることができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(1)ポリマーアロイ
本発明のポリマーアロイは、少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、2種以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイであり、前記ポリマーアロイ中に存在するポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶を任意に100本選択した際のラメラの長軸方向の平均長さが100nm以下であることが必要である。
(2)ポリブチレンテレフタレート樹脂
本発明で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とを主成分とし重縮合反応によって得られる重合体であって、特性を損なわない範囲において共重合成分を含んでも良く、共重合成分の共重合量は全単量体に対して20モル%以下であることが好ましい。
これら重合体および共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられ、単独で用いても2種以上混合して用いても良い。
またこれら重合体および共重合体は、成形性、機械的特性の観点からo−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60、特に0.52〜1.25の範囲にあるものが好適であり、さらには0.6〜1.0の範囲にあるものが最も好ましい。
(3)ポリマーアロイ中に存在するポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶
本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶とは、ポリブチレンテレフタレート樹脂の折り畳み鎖によって形成される結晶物を指し、その結晶成長方向を長軸方向とする。かかるラメラ結晶の測定法としては、射出成形品等ポリマーアロイで構成される塊状物の表面から1mmの深さの部位で、四酸化ルテニウム染色法によりポリブチレンテレフタレート樹脂を染色後、超薄切片を切り出し、これを透過型電子顕微鏡にて12万倍に拡大して観察することができる。本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶は、かかる測定法により観察されるラメラ結晶を任意に100本選択した際、ラメラの長軸方向の平均長さが100nm以下であることが必要である。さらには、80nm以下であることが好ましく、さらには、50nm以下であることがより好ましい。下限については、耐熱性の点から、5nm以上であることが好ましい。また、かかる測定法により観察される本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶の配向状態は、ある方向に向いている状態、すなわち配向度が高い状態であるよりも、ランダムな方向に向いている状態、すなわち配向度が低い状態にある方が好ましい。具体的にはこれを任意に100本選択した際、任意に設定した基準面に対してラメラの長軸方向となす鋭角角度の標準偏差σが20以上であることが好ましい。さらには、25以上であることがより好ましく、上限としては特に制限はないが、耐衝撃性の向上効果を効果的に得る点から50以下であることが好ましい。
また、標準偏差σは、N個の資料x,x,…,xに対して、平均値x、分散Vを用いて次式
x =(1/N)Σx (k=1〜N)
V =(1/N)Σ(x−x) (k=1〜N)
σ =√V
により計算することができる。
また、ラメラ結晶100本を任意に選択する際には、例えば超薄切片における任意の1μm四方の範囲から選択することができる。
一般にポリブチレンテレフタレートと他の樹脂を溶融混練して得られるポリマーアロイ中に存在するポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶は、アロイ中の各成分のモルフォロジーにもよるが、分子鎖が折り畳まれて配向しながら成長し、長軸方向の長さとして概ね150〜300nm程度であり、またその配向の度合いを標準偏差で示すと10〜15程度である。
しかしながら、本発明は、そのラメラ結晶の長軸方向の平均長さを本発明で規定するようにごく短く制御すること、さらには配向の標準偏差を大きくすることで耐衝撃性が飛躍的に向上することを見出したものである。
なお、上記ラメラ長さ及び標準偏差を得るための手法については、それが得られる限りにおいて特に制限はないが、ポリブチレンテレフタレートが溶融状態のポリマーアロイ中で微細な分散を形成させつつ、細かなラメラ結晶を形成するよう制御する方法が挙げられる。このような態様でラメラ結晶を形成させるためには融点180℃以上の有機核剤を添加し、かつ後述するようなスピノーダル分解による相分離等を行う方法が有効である。これにより、溶融状態のポリブチレンテレフタレート相が微細な相構造を形成しつつ、その中でラメラ結晶を形成させることができる。なお、タルク等の無機核剤を使用する場合には、ラメラ結晶が生成する速度を制御しにくく、その長軸方向の長さが長くなる傾向にある。
上記有機核剤の例としては、カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコール、カルボン酸エステルなどが挙げられる。
前記カルボン酸アミドとしては、通常アミド結合と呼ばれる結合を有する化合物であり、融点が180℃以上のカルボン酸アミドを用いることとする。融点は、好ましくは250〜400℃、より好ましくは280〜320℃である。かかるカルボン酸アミドとしては、芳香族基を有するアミド類が好ましい。
前記脂肪族カルボン酸塩としては、特に制限されないが、融点が180℃以上であるものを用いることとする。融点は、250〜400℃であるものがより好ましく、280〜320℃であるものが特に好ましい。脂肪族カルボン酸塩としては下記一般式(1)に示される化合物を包含する。
R−COOM (1)
(Rは、炭素原子数10〜40の、飽和若しくは不飽和又は直鎖若しくは分岐の炭化水素基であり、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ベリリウム、バリウム、銅、ニッケル、鉛、タリウム、亜鉛及び銀である。)
かかる脂肪族カルボン酸塩の具体例としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸水素カリウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸銀等のラウリン酸塩;ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸水素カリウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸銀等のミリスチン酸塩;パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸鉛、パルミチン酸タリウム、パルミチン酸コバルト等のパルミチン酸塩;オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸鉛、オレイン酸タリウム、オレイン酸銅、オレイン酸ニッケル等のオレイン酸塩;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸タリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸ベリリウム等のステアリン酸塩;イソステアリン酸ナトリウム、イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸マグネシウム、イソステアリン酸カルシウム、イソステアリン酸バリウム、イソステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸亜鉛、イソステアリン酸ニッケル等のイソステアリン酸塩;ベヘニン酸ナトリウム、ベヘニン酸カリウム、べヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸バリウム、ベヘニン酸アルミニウム、べヘニン酸亜鉛、ベヘニン酸ニッケル等のベヘニン酸塩;モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸ニッケル等のモンタン酸塩等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。
前記脂肪族アルコールとしては、脂肪族モノアルコール及び脂肪族多価アルコールであり、融点が180℃以上であるものを用いることとする。融点は、250〜400℃であるものがより好ましく、280〜320℃であるものが特に好ましい。脂肪族モノアルコールとしては一般式(2)で示される化合物である。
X−R’−OH (2)
(R’は、炭素原子数が6〜40の、飽和若しくは不飽和又は直鎖若しくは分岐若しくは環状の炭化水素基であり、Xは、水素原子又は水酸基である。)
かかる脂肪族アルコールの具体例としては、例えば、脂肪族モノアルコール類、脂肪族多価アルコール類、環状アルコール類が挙げられる。例えば、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の脂肪族モノアルコール類;1,6ヘキサンジオール、1,7−へプタンジール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族多価アルコール類;シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等の環状アルコール類等が挙げられる。これらは一種類又は二種類以上の混合物であってもよい。
前記カルボン酸エステルとは、融点が180℃以上であるものを用いることとする。融点は、250〜400℃であるものが好ましく、280〜320℃であるものがより好ましい。かかるカルボン酸エステルとしては、芳香族基を有するエステルが好ましい。
かかる有機核剤の添加量は、前記ポリマーアロイ(樹脂成分の合計)100重量部に対して、0.01〜10重量部であり、好ましくは、0.05〜5重量部である。0.01重量部より小さいと、透明核剤としての効果が不十分となる場合があり、逆に10重量部より大きくなると、さらなる透明核剤としての効果は得られなくなるばかりか、外観や物性の変化をきたす場合がある。
(4)ポリマーアロイ中の相構造
本発明のポリマーアロイは、少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、2種以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイであり、本発明で規定する要件を満たすことが必要である。ポリマーアロイ中に存在するポリブチレンテレフタレートのラメラ結晶を短く、好ましくはさらに低配向度で生成させるためには、前記ポリマーアロイ中のポリブチレンテレフタレートが微細な相構造を形成していることが好ましく、なかでも構造周期0.001〜5μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μmの分散構造を形成していることが好ましい。かかる構造を有するポリマーアロイを得る方法としては、後述のスピノーダル分解を利用する方法が好ましい。さらには、構造周期0.002〜1μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.002〜1μmの範囲の分散構造に制御することが好ましく、さらには、構造周期0.003〜0.5μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.003〜0.5μmの範囲の分散構造に制御することがより好ましく、さらには、構造周期0.003〜0.3μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.003〜0.3μmの範囲の分散構造に制御することが最も好ましい。
本発明の前記ポリマーアロイが、構造周期0.001〜5μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μmの分散構造を形成させる好ましい方法は、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂及び熱可塑性樹脂の2成分の樹脂が相溶状態で構造が固定された状態か、あるいはスピノーダル分解の初期状態である構造周期が0.1μm以下の両相連続構造を有する状態のペレットを製造した後、このペレットを成形し、その成形の過程においてスピノーダル分解をさらに進行させ、構造周期が0.001〜5μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μmの範囲の分散構造を形成させて、構造を固定する方法が挙げられる。
本発明における好ましい成形方法としては、任意の方法が可能であり、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを挙げることができるが、中でも射出成形が好ましい。
(5)熱可塑性樹脂
本発明は、少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、2種以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイであるが、本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、例えばポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられ、これらは1種または2種以上で用いることができるが、なかでもポリカーボネート樹脂が好ましい。
(6)ポリカーボネート樹脂
本発明で用いるポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールA、つまり2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた1種以上のジヒドロキシ化合物を主原料とするものが好ましく挙げられる。なかでもビスフェノールA、つまり2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料として製造されたものが好ましい。具体的には、上記ビスフェノールAなどをジヒドロキシ成分として用い、エステル交換法あるいはホスゲン法により得られたポリカーボネートが好ましい。さらに、上記ビスフェノールAは、これと共重合可能なその他のジヒドロキシ化合物、例えば4,4'−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどと併用することも可能であり、その他のジヒドロキシ化合物の使用量は、ジヒドロキシ化合物の総量に対し、10モル%以下であることが好ましい。
また上記ポリカーボネート樹脂は、優れた耐衝撃性と成形性の観点から、ポリカーボネート樹脂0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定したときの比粘度が0.1〜2.0、特に0.5〜1.5の範囲にあるものが好適であり、さらには0.8〜1.5の範囲にあるものが最も好ましい。
(7)スピノーダル分解
一般に、2成分の樹脂からなるポリマーアロイには、相溶系、非相溶系および半相溶系がある。相溶系は、平衡状態である非剪断下において、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な温度の全領域において相溶な系である。非相溶系は、相溶系とは逆に、全領域で非相溶となる系である。半相溶系は、ある特定の温度および組成の領域で相溶し、別の領域で非相溶となる系である。さらにこの半相溶系には、その相分離状態の条件によってスピノーダル分解によって相分離するものと、核生成と成長によって相分離するものがある。
さらに3成分以上からなるポリマーアロイの場合は、3成分以上のいずれもが相溶である系、3成分以上のいずれもが非相溶である系、2成分以上のある相溶な相と、残りの1成分以上の相が非相溶な系、2成分が半相溶系で、残りの成分がこの2成分からなる半相溶系に分配される系などがある。本発明においては、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂以外の樹脂成分を含む3成分以上からなるポリマーアロイの場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂以外の3成分目が、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂の少なくともいずれかに分配される系であることが好ましい。この場合ポリマーアロイの構造は、2成分からなる非相溶系の構造と同等になる。以下2成分の樹脂からなるポリマーアロイで代表して説明する。
上記非相溶系においても溶融混練によってスピノーダル分解を誘発することが可能であり、それには、溶融混練時の剪断速度100〜10000sec−1の剪断下で一旦相溶化し、その後非剪断下とすることにより相分解するいわゆる剪断場依存型スピノーダル分解により相分離する。この剪断場依存型スピノーダル分解様式の基本部分については、上述の一般的な半相溶系におけるスピノーダル分解と同様であることから、以下一般的な半相溶系におけるスピノーダル分解について説明した後、本発明に特徴的な部分を付記する形で説明する。
一般にスピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分の樹脂組成および温度に対する相図において、スピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指す。一方、核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分の樹脂を混合した場合、相溶な場合の自由エネルギーと相溶しない2相における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂ΔGmix/∂φ)が0となる曲線のことである。スピノーダル曲線の内側では、∂ΔGmix/∂φ<0の不安定状態であり、スピノーダル曲線の外側では∂ΔGmix/∂φ>0である。
またバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶な領域と非相溶な領域の境界の曲線のことである。
ここで相溶状態とは、分子レベルで均一に混合している状態のことである。具体的には異なる成分からなる相が、0.001μm以上の構造物を形成していない場合を指す。また、非相溶状態とは、相溶状態でない場合のことである。すなわち異なる成分からなる相が、0.001μm以上の構造物を形成している状態のことを指す。ここで、0.001μm以上の構造物とは、例えば、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造や粒子間距離0.001〜1μmの分散構造などのことである。相溶か否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers,MunichViema New York,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶化した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急速に変化させた場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λm)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った両相連続構造を形成する。この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]−1/2
(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)
ここで両相連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この両相連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ 基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人)に記載されている。
上記剪断場依存型スピノーダル分解では、剪断を賦与することにより相溶領域が拡大する。つまりはスピノーダル曲線が剪断を賦与することにより大きく変化するため、スピノーダル曲線が変化しない上記一般的なスピノーダル分解に比べて、同じ温度変化幅においても実質的な過冷却度(│Ts−T│)が大きくなる。その結果、上述の関係式におけるスピノーダル分解の構造周期を小さくすることが容易となる。
スピノーダル分解では、この様な初期過程を経た後、波長の増大と濃度差の増大が同時に生じる中期過程、濃度差が共存組成に達した後、波長の増大が自己相似的に生じる後期過程を経て、最終的には巨視的な2相に分離するまで進行する。本発明においては、本発明で規定する範囲内の所望の構造周期に到達した段階で構造を固定すればよい。また中期過程から後期過程にかける波長の増大過程において、組成や界面張力の影響によっては、片方の相の連続性が途切れ、上述の両相連続構造から分散構造に変化する場合もある。この場合には本発明で規定する範囲内の所望の粒子間距離に到達した段階で構造を固定すればよい。
ここで分散構造とは、片方の相が連続相であるマトリックスの中に、もう片方の相である粒子が点在している、いわゆる海島構造のことをさす。
またこの初期過程から構造発展させる方法に関しては、特に制限はないが、ポリマーアロイを構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度のうち、最も低い温度以上で熱処理する方法が通常好ましく用いられる。さらにはポリマーアロイが相溶状態で単一のガラス転移温度を有する場合や、相分解が進行しつつある状態で、ポリマーアロイのガラス転移温度がポリマーアロイを構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度間にある場合には、そのポリマーアロイ中のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で熱処理することがより好ましい。
またスピノーダル分解による構造を固定化する方法としては、急冷等により、相分離相の一方または両方の相の構造を固定する方法や、一方が熱硬化する成分である場合、熱硬化性成分の相が反応によって自由に運動できなくなることを利用する方法、さらに一方が結晶性樹脂である場合、結晶性樹脂相を結晶化によって自由に運動できなくなることを利用する方法が挙げられる。中でも結晶性樹脂を用いた場合、結晶化による構造固定が好ましく用いられる。
一方、核生成と成長により相分離する系では、その初期から海島構造である分散構造が形成されてしまい、それが成長するため、本発明の様な規則正しく並んだ構造周期0.001〜5μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μmの範囲の分散構造を形成させることは困難である。
かかる両相連続構造、もしくは分散構造が得られていることを確認するためには、規則的な周期構造が確認されることが重要である。そのためには、例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認に加えて、光散乱装置や小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れることを確認する。なお、光散乱装置、小角X線散乱装置は最適測定領域が異なるため、構造周期の大きさに応じて適宜選択して用いられる。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造が存在することの証明であり、その周期Λm は、両相連続構造の場合構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θm を用いて次式
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
により計算することができる。
スピノーダル分解を実現させるためには、2成分以上の樹脂を、一旦相溶状態とした後、スピノーダル曲線の内側の不安定状態とすることが必要である。一般的な半相溶系におけるスピノーダル分解においては、相溶条件下で溶融混練後、非相溶域に温度ジャンプさせることによって、スピノーダル分解を生じさせ得る。一方、上記剪断場依存型スピノーダル分解においては、非相溶系において、溶融混練時の剪断速度100〜10000sec−1の範囲の剪断下で相溶化しているため、非剪断下とすることのみでスピノーダル分解を生じさせ得る。本発明に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂を配合してなるポリマーアロイは、上記剪断場依存型スピノーダル分解に属し、溶融混練時の剪断速度100〜10000sec−1の範囲の剪断下で相溶化するため、非剪断下とすることのみでスピノーダル分解を生じさせ得る。なお、上記において剪断速度は、例えば平行円盤型剪断賦与装置を用いる場合、所定の温度に加熱し溶融状態とした樹脂を平行円盤間に投入し、中心からの距離(r)、平行円盤間の間隔(h)、回転の角速度(ω)から、ω×r/hとして求めることが可能である。
上記溶融混練時の剪断下で相溶化を実現させる方法として、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂を、2軸押出機のニーディングゾーンにおいて、高剪断応力下で溶融混練する方法が好ましい方法として挙げられる。
かかる2軸押出機を用いる場合、ニーディングブロックを多用したスクリューアレンジにしたり、樹脂温度を下げたり、スクリュー回転数を高くしたり、使用ポリマーの粘度を上げることによってより高剪断応力状態を形成することにより、適宜調節することができる。
使用ポリマーの粘度を上げ高剪断応力状態を形成する場合、好ましいポリカーボネート樹脂の比粘度は、0.5〜1.5の範囲であり、さらに好ましくは、0.8〜1.5の範囲である。ここでポリカーボネート樹脂の比粘度は、ポリカーボネート0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定することによって求めることができる。
かかるポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂などその他の熱可塑性樹脂との配合量には特に制限がないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂とその他の熱可塑性樹脂の配合量の比として、ポリブチレンテレフタレート樹脂/その他の熱可塑性樹脂=10/90〜90/10(重量比)の範囲が好ましく、さらには15/85〜85/15(重量比)の範囲が好ましい。
また、上記ポリマーアロイに、さらにポリマーアロイを構成する成分を含むブロックコポリマーやグラフトコポリマーやランダムコポリマーなどの第3成分を添加することは、相分離した相間における界面の自由エネルギーを低下させ、両相連続構造における構造周期や、分散構造における分散粒子間距離の制御を容易にするため好ましい。この場合、通常、かかるコポリマーなどの第3成分は、それを除く2成分の樹脂(本発明においてはポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂)からなるポリマーアロイの各相に分配されるため、2成分の樹脂からなるポリマーアロイ同様に取り扱うことができる。
(8)添加剤
また、本発明で用いるポリマーアロイには、さらに熱硬化性樹脂を本発明の構造を損なわない範囲で含有させることもできる。これらの熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂は、本発明に用いるポリマーアロイを製造する任意の段階で配合することが可能である。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂とその他の熱可塑性樹脂(ポリカーボネート樹脂等)を配合する際に同時に添加する方法や、予めポリブチレンテレフタレート樹脂とその他の熱可塑性樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めにポリブチレンテレフタレート樹脂とその他の熱可塑性樹脂のうち、いずれか片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法等が挙げられる。
なお、本発明に用いるポリマーアロイには、本発明の目的を損なわない範囲でさらに各種の添加剤を含有させることもできる。これらの添加剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、セリサイト、塩基性炭酸マグネシウム、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、ケイ砂、ワラステナイト、ガラスビーズなどの強化材、非板状充填材、あるいは酸化防止剤(リン系、硫黄系など)、紫外線吸収剤、熱安定剤(ヒンダードフェノール系など)、エステル交換反応抑制剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料および顔料を含む着色剤、難燃剤(ハロゲン系、リン系など)、難燃助剤(三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンなど)、発泡剤、カップリング剤(エポキシ基、アミノ基メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基を一種以上含むシランカップリング剤やチタンカップリング剤)、抗菌剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、本発明に用いるポリマーアロイを製造する任意の段階で配合することが可能である。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予めポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めにポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂のうち、いずれか片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法等が挙げられる。
(9)射出成形品
かくして得られる本発明のポリマーアロイは、射出成形を経ることにより射出成形品を得ることができる。また本発明の射出成形品は、その成形品の表面から1mmの深さの部位で、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂以外の樹脂とが、構造周期0.001〜5μm未満の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μm未満の分散構造を形成していることが好ましい。かかる耐衝撃性を高めた射出成形品は、例えば自動車部品や電気部品などに好適に使用することができる。
自動車部品の例としては、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、エアフローメーター、エアポンプ、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、サーモスタットハウジング、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブ−スター部品、各種ケース、燃料関係・排気系・吸気系等の各種チューブ、各種タンク、燃料関係・排気系・吸気系等の各種ホース、各種クリップ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、各種パイプ、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、ブレーキパッド摩耗センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコンパネルスイッチ基板、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、スタータースイッチ、スターターリレー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、デュストリビューター、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、ホーンターミナル、ウィンドウォッシャーノズル、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプソケット、ランプハウジング、ランプベゼル、ドアハンドル、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクターなどの各種コネクターなどが挙げられる。
また電気部品の例としては、コネクター、コイル、各種センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク・DVD等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、携帯電話関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライター関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等の光学機器/精密機械関連部品などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。
[実施例1〜4]
表1記載の組成からなる原料を、押出温度270℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、スクリュー回転数300rpmとした2軸押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給し、ダイから吐出後のガットを10℃に温調した水を満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し、構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。
得られたペレットから、以下の通り評価した結果を表1に記載した。
(1)評価試験片の製造
得られたペレットを、ホッパ下から先端に向かって、240℃−250℃−260℃−260℃に設定した日精樹脂工業社製射出成形機(PS−60E9DSE)で、金型温度80℃とし、保圧10秒、冷却時間30秒の成形サイクルで厚さ1/8インチ(3.2mm)のアイゾット衝撃試験片を成形した。これをノッチカッターにて切削し、カットノッチ付きアイゾット衝撃試験片を得た。
(2)アイゾット衝撃試験
厚さ1/8インチ(3.2mm)のカットノッチ付きアイゾット試験片を使用し、ASTM D638に従い、アイゾット衝撃値を測定した。
(3)相構造の評価
i)電子顕微鏡による観察
射出成形品の表面から1mmの深さの部位で、四酸化ルテニウム染色法によりポリブチレンテレフタレート樹脂を染色後、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出し、サンプルとした。そのサンプルについて日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡にて12万倍に拡大して相構造の観察を行った。サンプルの任意の1μm四方の範囲からラメラ結晶100本を任意に選択し、その長軸方向の長さ及び任意に設定した基準面に対してラメラの長軸方向となす鋭角角度を測定した。これより、任意のラメラ100本の、前記長軸方向の長さの平均値及び前記鋭角角度の標準偏差を算出した。また、両相連続構造が観察されたものは、下記ii)の測定を行い、構造周期を決定した。
ii)両相連続構造の構造周期は小角光散乱により測定した。なお、サンプルは上記i)と同様の方法で作製したサンプルを用いた。小角光散乱においてピーク位置(θm)から下式で構造周期(Λm)を計算した。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)。
[比較例1〜3]
表1記載の組成の原料を用いた以外は実施例1〜4と同様にして溶融混練及びペレタイズを行い、ペレットを得た。これらのサンプルについても実施例1〜4と同様に成形品を作製し、実施例1〜4と同様に評価した結果を表1に記載した。
[比較例4、5]
表1記載の組成からなる原料を用い、スクリュー回転数を100rpmとする以外は実施例1〜4と同様にして溶融混練及びペレタイズを行い、ペレットを得た。このサンプルについても実施例1〜4と同様に成形品を作製し、実施例1〜4と同様に評価した結果を表1に記載した。なお、比較例4、5で得られた成形品については、周期構造が観察されなかったため、以下の方法で評価した。すなわちヨウ素染色法により成形品中のポリカーボネート樹脂を染色後、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出し、サンプルとした。そのサンプルについて日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡にて2万倍に拡大して相構造の観察を行った。その結果、比較例4および5のいずれのサンプルもポリカーボネート樹脂からなる平均分散粒径が1.0μm超の分散粒子がポリブチレンテレフタレート樹脂中に分散した相構造を有するものであった。
Figure 0004972878
また、実施例、比較例において使用樹脂、添加剤は、以下に示すものを使用した。
PBT−1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1100S、ガラス転移温度32℃、結晶融解温度220℃)
PC−1:ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”E2000、ガラス転移温度151℃、0.7gを100mlの塩化 メチレンに溶解し20℃で測定した時の比粘度1.18)
核剤−1:ナフタレンジカルボン酸アミド(新日本理化社製“エヌジュスタ”NU−100)(融点320℃)
核剤−2:リン酸ナトリウム(旭電化社製“アラカ”NA−10)
核剤−3:タルク(富士タルク工業社製、LMS300)

Claims (5)

  1. 少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、2種以上の熱可塑性樹脂からなり、融点180℃以上の有機核剤を含有するポリマーアロイであり、前記ポリマーアロイが、構造周期0.001〜5μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜5μmの分散構造を形成しており、前記ポリマーアロイ中に存在するポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶を任意に100本選択した際のラメラの長軸方向の平均長さが100nm以下であることを特徴とするポリマーアロイ。
  2. 少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、2種以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイであり、前記ポリマーアロイ中に存在するポリブチレンテレフタレート樹脂のラメラ結晶を任意に100本選択した際、任意に設定した基準面に対してラメラの長軸方向となす鋭角角度の標準偏差が20以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーアロイ。
  3. 前記有機核剤の添加量が、前記ポリマーアロイ(樹脂成分の合計)100重量部に対して0.01〜10重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリマーアロイ。
  4. 前記ポリマーアロイが、ポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーアロイ。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーアロイからなる射出成形品。
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