JP3620197B2 - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は衝撃強度、引張伸びなどに代表される靭性に優れ、かつ熱水に長時間さらされても優れた靭性が保持される、さらに耐トラッキング性にも優れた、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形体に関するものであり、熱水と直接接触する用途などに特に好適である他、電気、電子部品、自動車部品、一般機械部品など種々の広い分野に適用できる。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す)は優れた耐熱性、難燃性、剛性、耐薬品性、電気絶縁性などエンジニアリングプラスチックとしては好適な性質を有しており、射出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などに使用されている。しかしPPS樹脂はポリアミド樹脂等の他のエンジニアリングプラスチックに比べ、靭性面で十分に優れているとは言い難い。
【0003】
従来PPS樹脂は多くの場合ガラス繊維などの補強材を併用し、強度を向上させて用いられてきた。しかし近年、軽量性や表面平滑性などの要求から、PPS樹脂においても、ガラス繊維などを用いない非強化材料の需要が高まり、靭性の優れた非強化PPS材料が求められている。
【0004】
非強化PPS材料の靭性を向上させる方法として例えば、エラストマーなどの靭性に優れる材料とのアロイ化により靭性を向上させる試みは多々検討されているが、エラストマーとのアロイ化は多くの場合、PPSが有する高弾性率、燃焼性などの優れた特性を損なう問題がある。
【0005】
一方、特開昭62−197422号公報には、ウェルドクラック発生の抑制された機械的強度に優れた酸化架橋PPS樹脂が開示されているが、引張伸びや衝撃強度などの靭性面では必ずしも十分優れているとは言い難い。
【0006】
また例えば射出成形時に、金型温度を下げて成形を行うことによって、結晶化度を低下させることにより靭性を向上させることは可能であるが、かかる方法では熱水などと接触すると結晶化が進行し靭性を低下させる問題点がある。
【0007】
さらに電気部品用途に適用する場合、耐トラッキング性が要求される場合が多々あるが、PPS樹脂は耐トラッキング性が必ずしも優れているとは言えず、特に非強化PPS材料はこの傾向が強く、耐トラッキング性も備えた非強化PPS材料の開発が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、引張伸び、衝撃強度などの靭性に優れ、かつ耐熱水性、耐トラッキング性にも優れた実用価値の高い、非強化PPS高靭性材料の取得を課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
( 1) (A)ゲル浸透クロマトグラフ法で求められた分子量分布のピーク分子量が45000〜90000であり、かつ酸化架橋処理を施されたポリフェニレンスルフィド樹脂(但し、酸化架橋前のポリフェニレンスルフィド樹脂は実質的に下記構造式(I)で示される繰り返し単位のみから構成されるものとする)99.9〜95重量%、および(B)25℃における粘度が10〜10000mm2 /sのシリコーンオイル(但し、前記シリコーンオイルはエポキシ基で変性されていないものとする)0.1〜5重量%を溶融混練してなる、実質的に繊維状充填材、非繊維状充填材を含有しないポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(但し、ポリフェニレンスルフィド樹脂50〜95重量%およびα−オレフィン60〜99重量%とα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40重量%を必須成分とするオレフィン系共重合体5〜50重量%からなる組成物100重量部に対し、シリコーンオイルを0.05〜10重量部配合してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を除く。)、
【化2】
(2)酸化架橋処理がポリフェニレンスルフィド樹脂の融点以下で行なわれたものである上記(1)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(3)(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂として、酸化架橋後のポリフェニレンスルフィド樹脂の示差走査熱量計で求められた融解ピーク温度が266〜276℃であるポリフェニレンスルフィド樹脂を用いる上記(1)または(2)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(4)(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂として、酸化架橋後のポリフェニレンスルフィド樹脂の融解ピーク温度(Tm2)が266〜276℃であり、かつ酸化架橋前のポリフェニレンスルフィド樹脂の融解ピーク温度(Tm1)との差(Tm1−Tm2)が2℃以上である、酸化架橋ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いる上記(1)〜(3)のいずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(5)(B)シリコーンオイルがジメチルシリコーンオイルを用いる上記(1)〜(4)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(6)(B)シリコーンオイルとして、メチル基の一部がフェニル基で置換されたメチルフェニルシリコーンオイルを用いる上記(1)〜(4)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(7)(B)メチルフェニルシリコーンオイルの、屈折率が1.45〜1.60である上記(6)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(8)(B)シリコーンオイルが、アミノ基、ヒドロキシル基、ポリアルキレンオキシド基、カルボキシル基、チオール基などの官能基で変性されていないシリコーンオイルである上記(1)〜(7)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(9)(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂の全灰分量が0.1〜1.0wt%である上記(1)〜(8)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(10)(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、アルカリ土類金属を50〜1500ppm含有するものである上記(1)〜(9)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(11)さらに第3成分として(C−1)炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸と多価アルコールからなるエステル化合物、(C−2)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸とジアミンからなるアミド化合物、(C−3)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜20の多塩基酸とジアミンからなるアミド化合物、から選ばれる少なくとも1種の添加剤を、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂と(B)シリコーンオイルの合計量100重量部に対し、0.05〜1.5重量部添加してなる上記(1)〜(10)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(12)添加剤が、(C−3)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜20の多塩基酸とジアミンからなるアミド化合物である上記(11)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(13)(D)平均粒子径が10〜100nmのカーボンブラックを(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂と(B)シリコーンオイルの合計量100重量部に対し、0.05〜2重量部さらに添加してなる上記(1)〜(12)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(14)(D)カーボンブラックの平均粒子径が10〜50nmである上記(13)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(15)(D)カーボンブラックがファーネスブラックである上記(13)または(14)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
(16)(D)カーボンブラックが酸性ファーネスブラックである上記(15)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および
(17)ASTM−D−256に準じて測定したノッチ無しアイゾット衝撃強度が120kJ/m2 以上である上記(1)〜(16)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である。
【0010】
本発明はまた、
(18)上記(1)〜(17)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる120℃以下の熱水と直接接触する成形品用のポリフェニレンスルフィド樹脂成形材料、
(19)上記(1)〜(17)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形してなる成形体、および
(20)成形体が120℃までの熱水と直接接触する用途に用いられるものである上記(19)記載の成形体である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)は、ゲル浸透クロマトグラフ法で求められた分子量分布のピーク分子量が45000〜90000、より好ましくは55000〜80000であり、かつ酸化架橋処理を施されたポリフェニレンスルフィド樹脂である必要がある。分子量分布のピーク分子量が45000未満のPPSを用いても優れた靭性を得ることは困難であり、一方90000を越えるPPSを用いても、より靭性を向上させる効果は少なく、むしろ溶融流動性の低下や重合コストの上昇等の問題を生じるため好ましくない。
【0012】
かかる酸化架橋処理を施されたポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)の前駆体である酸化架橋前のPPS樹脂は、実質的に構造式(I)で示される繰り返し単位のみから構成されるPPS樹脂である。
【0013】
かかる酸化架橋前のPPS樹脂は通常公知の方法、すなわち特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造できる。
【0014】
また、上記の様にして得られたPPS樹脂を本発明の効果を損なわない範囲で、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、熱水などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することはもちろん可能である。
【0015】
次に酸化架橋の方法としては、PPS樹脂の融点以下で加熱処理することにより行なう方法が挙げられる。具体的には、例えばオーブン、スパイラル攪拌翼付釜、流動層、容器回転式混合機などを用い、空気、酸素、オゾンの存在下、150℃以上PPS樹脂の融点以下の温度で好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上加熱処理する方法が挙げられる。また酸化架橋速度を制御するために空気、酸素、オゾンに窒素、アルゴン等の不活性ガスを混合した雰囲気下で上記加熱処理を行っても良い。
【0016】
本発明で用いられる酸化架橋処理を施されたPPS樹脂の溶融粘度は、酸化架橋処理前の分子量にもよるが、通常メルトフローレイト(5000g荷重、315.5℃)が1〜300g/10分であることが好ましく、特に1〜150g/10分、さらに3〜80g/10分が好ましい。また酸化架橋前のメルトフロ−レイト(MF1)と酸化架橋後のメルトフローレイト(MF2)の比(MF2/MF1)は1/2〜1/30の範囲が好ましい。
【0017】
PPS樹脂は重合時に食塩などの無機塩を副生し、これを除去するために酸性水溶液などで処理して用いられる場合があるが、本発明で使用される酸化架橋処理を施されたPPS樹脂は、全灰分量が0.1〜1.0wt%に制御されたPPS樹脂であることが好ましく、さらに0.2〜0.8重量%が好ましい。
【0018】
通常、PPSを酸化架橋しても、通常全灰分量はかわらず、酸化架橋前のPPSが上記範囲内にある場合、酸化架橋をより均一に行い得る点で好ましい。
【0019】
なお、全灰分量は150℃で1時間乾燥したPPS樹脂5gをるつぼに入れ、540℃で有機物を燃焼除去させて残渣重量を測定し、乾燥後の樹脂(5g)に対する残渣重量の割合を算出したものである。
【0020】
かかるPPS樹脂の全灰分量の調整方法はPPS樹脂の性状により異なるが、例えば80℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上の熱水で重合後のPPSを一定時間処理し、乾燥後酸化架橋処理する方法などが挙げられる。また例えばかかる熱水処理時に、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩を溶解した水溶液を用いることにより、アルカリ土類金属を50〜1500ppm、より好ましくは300〜1200ppm含有する酸化架橋処理を施されたPPS樹脂を得ることも可能であり、かかるPPSを用いることもまた均一に酸化架橋を行う意味で好ましい。なおアルカリ土類金属含有量は上記と同様の方法でPPS樹脂を灰化した後、原子吸光法により求める。
【0021】
また本発明において、粒子径が5mm以下、より好ましくは3mm以下の微粉末PPS樹脂を用いることは、酸化架橋を均一に行う意味でより好ましい。
【0022】
上記の如く本発明で用いられるPPS樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフ法で求められた分子量分布のピーク分子量が45000〜90000であり、かつ酸化架橋処理を施されたPPS樹脂である必要がある。ゲル浸透クロマトグラフ法による分子量分布の測定方法としては、例えば、溶媒として1−クロロナフタレンを用い、ポリスチレン系カラムで分離し、紫外可視吸光度検出器、溶媒蒸発−光散乱検出器、水素炎イオン化検出器、示差屈折率検出器などの検出器を用いて検出する方法が挙げられる。かかる方法により分子量分布を求め、そのピーク分子量を求めることができる。ゲル浸透クロマトグラフ法で求められた分子量分布のピーク分子量が45000〜90000は、PPS樹脂としては比較的高い分子量であり、より低分子量のPPS樹脂に比較すれば高い靭性を示すが、それ単独では本発明が目的とする十分な靭性向上効果は得られない。また分子量分布のピーク分子量が45000〜90000であっても酸化架橋処理を施されていないPPS樹脂に(B)シリコーンオイルを適用しても、十分な靭性向上効果は得られない。
【0023】
何故分子量分布のピーク分子量が45000〜90000であり、かつ酸化架橋処理を施されたPPS樹脂に(B)シリコーンオイルを適用することで、優れた靭性向上効果が得られるのかについては判然とはしないが、示差走査熱量計にて本発明の組成物の測定を行ったところ、酸化架橋の度合が増すに従いPPS樹脂の融点、融解熱量の低下が認められた。但し、単に酸化架橋を行っただけでは安定した靭性、耐熱水性の向上は認められないが、これにシリコーンオイルを添加することにより、明らかに靭性、耐熱水性の向上が認められ、融点の低下に伴い靭性がより向上する傾向が認められた。かかる融点、融解熱量の変化は、酸化架橋によりPPS樹脂の結晶化度、結晶構造が変化していることを示しており、そこにシリコーンオイルが作用して本発明の効果が得られたものと推定される。
【0024】
通常、実質的に直鎖状のPPS樹脂の融点のピーク温度は278℃以上であるが、本発明においては上記理由から、酸化架橋処理により融点のピーク温度が266〜276℃に低下せしめたPPS樹脂が好ましく、270〜275℃がより好ましい。また酸化架橋後のポリフェニレンスルフィド樹脂の融解ピーク温度(Tm2)が266〜276℃であり、かつ酸化架橋前のポリフェニレンスルフィド樹脂の融解ピーク温度(Tm1)との差(Tm1−Tm2)が2℃以上、好ましくは3〜8℃である、酸化架橋ポリフェニレンスルフィド樹脂がより好ましい。
【0025】
本発明において優れた靱性、耐熱水性、耐トラッキング性を得るためには(B)シリコ−ンオイル(但し、前記シリコーンオイルはエポキシ基で変性されていないものとする)の添加が必須であり、(B)シリコーンオイルの添加量は(A)PPS樹脂99.9〜95重量%に対し(B)シリコーンオイル0.1〜5重量%、好ましくは(A)PPS樹脂99.7〜97重量%に対し(B)シリコーンオイル0.3〜3重量%、より好ましくは(A)PPS樹脂99.5〜98重量%に対し(B)シリコーンオイル0.5〜2重量%である。添加量が0.1重量%未満では靱性、耐熱水性、耐トラッキング性向上効果に乏しく、5.0重量部を越えると成形品外観などを損なうため好ましくない。
【0026】
シリコーンオイルとは一般に直鎖シロキサン構造を骨格とし、そのケイ素に有機基などが直接結合した有機ケイ素化合物である。ケイ素に直接結合した有機基としては、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基およびそれらの併用などが知られており、また有機基の一部がエポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、ポリアルキレノキシド基、カルボキシル基、チオール基などを有する置換基で置換されたシリコーンオイルも知られている。本発明ではエポキシ基で変性されていないシリコーンオイルであればいずれも使用可能であるが、上記ケイ素に直接結合した有機基が全てメチル基であるシリコーンオイルあるいはメチル基の一部がフェニル基で置換されたメチルフェニルシリコンーンオイルがより優れた靱性、耐熱水性、耐トラッキング性向上効果を得る意味において好ましい。
【0027】
シリコーンオイルは、その粘度が0.65〜100万mm 2 /s(25℃)と広範なものが知られている。本発明ではシリコーンオイルの粘度は10〜10000mm 2 /s(25℃)である必要があり、特に10〜5000mm 2 /s(25℃)のものが、より優れた靭性、耐熱水性、耐トラッキング性向上効果を得る意味においておよび生産性の点で好ましい。
【0028】
またメチル基の一部がフェニル基で置換されたメチルフェニルシリコーンオイルを用いる場合も、25℃における粘度は10〜10000mm 2 /sであり、10〜1000mm 2 /sが特に好ましい。また屈折率が1.45〜1.60のフェニル基含有量の比較的多いメチルフェニルシリコーンオイルはより優れた靭性向上効果を得る意味において特に好ましい。
【0029】
本発明において、本発明の効果を損なうこと無く、離型性、表面光沢性を向上させる目的で、(C−1)炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸と多価アルコールからなるエステル化合物、(C−2)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸とジアミンからなるアミド化合物、(C−3)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜20の多塩基酸とジアミンからなるアミド化合物、から選ばれる少なくとも1種の添加剤を加えることは有効であり、中でも(C−3)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜20の多塩基酸とジアミンからなるアミド化合物が、より少量で靭性向上効果を損なうこと無く、離型性、表面光沢性を向上できる点でより好ましい。
【0030】
(C−1)炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸と多価アルコールからなるエステル化合物における炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸の具体例としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリル酸、モンタン酸などが挙げられ、また多価アルコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0031】
(C−2)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸とジアミンからなるアミド化合物における炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸の具体例としては(C−1)と同様のものが例示でき、ジアミンの具体例としてはエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0032】
(C−3)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜20の多塩基酸とジアミンからなるアミド化合物における炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸の具体例としては(C−1)と同様のものが例示でき、ジアミンの具体例としては(C−2)と同様のものが例示できる。また多塩基酸とは2塩基酸以上のカルボン酸であり、具体例としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸などが例示できる。かかるアミド化合物は、原料である脂肪族モノカルボン酸および多塩基酸をジアミンとともに、180〜300℃、好ましくは200〜270℃で加熱反応させる方法などによって合成することができる。
【0033】
かかる(C−1)炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸と多価アルコ−ルからなるエステル化合物、(C−2)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸とジアミンからなるアミド化合物、(C−3)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜20の多塩基酸とジアミンからなるアミド化合物、から選ばれる少なくとも1種の添加剤の添加量は、(A)PPSと(B)シリコ−ンオイルからなる樹脂組成物100重量部に対し、0.05〜1.5重量部、好ましくは0.1〜0.8重量部が選択される。またこれら(C−1)、(C−2)、(C−3)はその合計量が1.5重量部を越えない範囲で2種以上を併用して用いてもよい。
【0034】
かかる添加剤は、本発明の効果を損なうこと無く、離型性を向上させ、さらに射出成形体の表面光沢性を向上させる上で大きな効果が認められる。かかる添加剤がなぜ表面光沢性を向上させるかは定かではないが、本発明のごとく比較的高い溶融粘度を有する非強化PPS組成物を射出成形する際、金型内の樹脂の流動挙動を安定化させる働きがあるのではないかと推察される。
【0035】
本発明において、本発明の靭性向上効果を損なうこと無く、優れた表面光沢性を得る目的で(E)平均粒子径が10〜100nmのカーボンブラックを添加することは有効である。カーボンブラックは一般に、その平均粒子径が5nmから300nmのものまで広範なものが知られているが、本発明でカーボンブラックを添加する場合は、靭性および表面光沢の点から平均粒子径が10〜100nmであるものが好ましく、10〜80nmがさらに好ましく、10〜50nmのものが特に好ましい。
【0036】
またカーボンブラックはその製法による分類から、チャンネルブラック、ロールブラック、デスクブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が知られている。本発明ではそのいずれも使用可能であるが、中でもファーネスブラックが靭性、表面光沢性の点で有効であり、更に酸性ファーネスブラックが特に好適である。
【0037】
かかる(E)平均粒子径が10〜100nmのカーボンブラックの添加量としては、(A)PPSと(B)シリコ−ンオイルからなる樹脂組成物100重量部に対し、0.05〜2重量部が有効であり、0.1〜1.0重量部が特に好適である。
【0038】
かかるカーボンブラックは、組成物中への分散性を高めるため、例えばPPS90〜50重量%とカーボンブラック10〜50重量%を予め溶融混練するなどしてマスターペレット化し、本発明に適用することも可能であり、生産性の点で有効な方法である。
【0039】
本発明は実質的に非強化PPS樹脂組成物であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、少量の繊維状および/または非繊維状充填材を適用することは可能である。かかる繊維状および/または非繊維状充填材の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムおよびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられる。
【0040】
また本発明は、本発明の効果を損なわない範囲で少量の他樹脂を添加することは可能であり、その具体例として例えばポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマ、ポリアルキレンオキサイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/ブテン−1ゴムなどのポリオレフィン、エポキシ基やカルボキシル基を含有するポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂等の樹脂を挙げることができる。
【0041】
また本発明のPPS樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物などの結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、ウレイドシラン、イソシアネートシランなどの強度向上剤など、公知の添加剤を添加することも可能である。
【0042】
本発明のPPS樹脂組成物の調製方法は特に制限はないが、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して270〜380℃の温度で30秒以上混練する方法などを代表例として挙げることができるが、ベント孔を有した2軸の押出機にて溶融混練する方法が特に好ましい。
【0043】
原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
【0044】
本発明のPPS樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形など各種公知の成形法を用いた成形体、フィルム、パイプ、繊維などへの適用が可能であるが、特に射出成形には好適な樹脂組成物である。
【0045】
本発明により得られるPPS樹脂組成物は、PPS樹脂組成物の本来有する剛性、難燃性、電気絶縁性などを大きく損なうことなく、靭性が向上し、かつ耐熱水性、耐トラッキング性、表面光沢性等に優れた樹脂組成物である。かくして得られたPPS樹脂組成物は特に熱水、なかでも120℃以下の熱水と直接接触する用途の用いる成形品、例えば給湯機や生ゴミ処理機用途などに特に適している他、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、機遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品用途、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品等々、各種用途に適用できる。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお本実施例、比較例における各種物性の測定方法は以下の通りである。
【0047】
引張試験:ASTM−D−638に準じて行った。
【0048】
曲げ試験:ASTM−D−790に準じて行った。
【0049】
ノッチ無しアイゾット衝撃試験:ASTM−D−256に準じ、サンプルとして、長さ約63mm、幅約12.7mm、厚み約1/8インチの射出成形片を用い、側面から打撃を行った。
【0050】
熱水処理:耐圧容器中に、試験片をお互いに接触しないように仕込み、試験片が完全に浸るまで水を入れ、耐圧容器の蓋をし、150℃のオーブン中で72時間処理した。
【0051】
離型性:強度測定用試験片を射出成形する際に、成形片の型離れの難易を観察し、次の基準で評価した。◎:成形片突き出し時に成形片が全て落下する、○:成形片突出し時に成形片が落下しない場合がある、△:成形片突出し時に半分以上が落下しない。
【0052】
表面光沢性:強度測定用試験片を射出成形片の表面を目視観察し、次の基準で評価した。◎:成形片表面全体に光沢がある、○:成形片表面の一部に光沢がない、△:成形片表面の半分以上に光沢がない、×:成形片全体に光沢がない。
【0053】
融点ピーク温度:下記に示した方法で得られたペレットを用い、ホットプレス機にて、320℃、4分間加圧して、厚み約20μmのシートを得た。これを150℃にて1時間かけて結晶化させた後、約7mgを切り出し測定サンプルとした。測定にはパーキンエルマー社製DSC−7を用い、2点校正(インジウム、鉛)、ベースライン補正を行った後、40℃から20℃/分の速度で昇温し、その際に認められた融点のピーク温度を測定した。
【0054】
耐トラッキング性:IEC 112法(A液)に従って、比較トラッキング指数(CTI)を測定した。CTIが大きいほど耐トラッキング性に優れている事を示す。
【0055】
ゲル浸透クロマトグラフ測定:WATERS社製(GPC−244)の装置を用い、カラム:ShodexK−80M(昭和電工社製)、溶媒:1−クロロナフタレン、検出器:溶媒蒸発−光散乱検出器を用い、6種類の単分散ポリスチレンを校正に用いて分子量分布を測定し、縦軸がd(重量)/dLog(分子量)、横軸がLog(分子量)の微分重量分子量分布を得、そのピ−ク分子量を横軸から読み取った。
【0056】
PPSの製造方法
PPS−1:オ−トクレ−ブ中に、Na 2 S・9H 2 Oを1モル、酢酸ナトリウム0.35モル、N−メチル−2−ピロリドン2.5モルを仕込み、N 2 気流下、230℃に昇温し、水152mlと一部溶媒を留出した。ここに1,4−ジクロルベンゼン1.01モル、N−メチル−2−ピロリドン0.5モルからなる溶液を仕込み、2時間かけて270℃に昇温し、3時間保持した。次に260℃から冷却しつつ高圧ポンプにて系内へ水と溶媒の混合物をゆっくり滴下し、200℃まで冷却後、生成物を水中へあけた。これをイオン交換水の熱湯2リットルで5回洗浄し、さらに150℃にて酢酸カルシウム水溶液で3時間処理し、再びイオン交換水の熱湯2リットルで2回洗浄した後、10時間真空乾燥し、MFR170g/10分、分子量分布のピーク分子量が65000、融解ピーク温度が278℃、全灰分量が0.56wt%、カルシウム含有量が980ppmのPPS−1を得た。
【0057】
PPS−2:PPS−1をオーブン中、250℃で2時間処理し、MFR50g/10分、分子量分布のピーク分子量が65000、融解ピーク温度が275.5℃、全灰分量が0.56wt%、カルシウム含有量が980ppmのPPS−2を得た。
【0058】
PPS−3:PPS−1をオーブン中、250℃で6時間処理し、MFR10g/10分、分子量分布のピーク分子量が65000、融解ピーク温度が274℃、全灰分量が0.56wt%、カルシウム含有量が980ppmのPPS−3を得た。
【0059】
PPS−4:オートクレーブ中に、Na 2 S・9H 2 Oを1モル、酢酸ナトリウム0.32モル、N−メチル−2−ピロリドン2.5モルを仕込み、N 2 気流下、230℃に昇温し、水152mlと一部溶媒を留出した。ここに1,4−ジクロルベンゼン1.025モル、N−メチル−2−ピロリドン0.5モルからなる溶液を仕込み、1.5時間かけて270℃に昇温し、2時間保持した。次に260℃から冷却しつつ高圧ポンプにて系内へ水と溶媒の混合物をゆっくり滴下し、200℃まで冷却後、生成物を水中へあけた。これをイオン交換水の熱湯2リットルで7回洗浄し、さらに150℃にてpH4酢酸水溶液で3時間処理し、再びイオン交換水の熱湯2リットルで濾液が中性になるまで洗浄した後、10時間真空乾燥し、MFR1000g/10分のPPSを得た。これをオーブン中、250℃で6時間処理し、MFR50g/10分、、分子量分布のピーク分子量が40000、融解ピーク温度が275℃のPPS−4を得た。
【0060】
本実施例、比較例で用いた添加剤は以下の通りである。
【0061】
シリコーン化合物
B−1:ジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)社製、SH200、粘度(25℃)1000mm 2 /s)
B−2:メチルフェニルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)社製、SH710、粘度(25℃)500mm 2 /s、屈折率1.533)
B−3:ジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウシリコーン(株)社製、SH200、粘度(25℃)20000mm 2 /s)
エステル化合物
C−1:エチレングリコールのジモンタネート
アミド化合物
C−2:エチレンジアミンのジステアリルアミド
C−3:コンデンサー付き検水管、攪拌機の付いた反応容器にステアリン酸2モルとセバシン酸1モルを仕込み、加熱溶融後、エチレンジアミン2モルを滴下し、窒素気流中160℃より脱水反応を開始し、250〜260℃にてアミン価が5以下になるまで約7時間反応して得られるアミド化合物。
【0062】
カーボンブラック
D−1:酸性ファーネスブラック(平均粒子径20nm)
D−2:サーマルブラック(平均粒子径149nm)
(平均粒子径は電子顕微鏡写真より粒子径、数を求め計算)
実施例1〜8、比較例1〜6
(A)PPS樹脂、(B)シリコーン化合物、およびその他の添加剤を表1、2に示す割合でドライブレンドした後、タンブラーにて2分間予備混合したのち、シリンダー温度290〜300℃に設定した2軸押出機で滞留時間約3分で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化し、120℃で1晩乾燥した。かかるペレットを用い降温結晶化熱量を測定した。さらにかかるペレットを用い、シリンダー温度310℃に設定した射出成形機を用いて、140℃の金型により、物性測定用の試験片を射出成形した。得られた試験片について測定した物性値を表1、2に示す。なお表中、添加剤C、D、の添加量は、(A)PPS樹脂と(B)シリコーン化合物からなる組成物100重量部に対する配合量である。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【発明の効果】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、靭性、耐熱水性、耐トラッキグ性、表面光沢性に優れたPPS樹脂である。
Claims (20)
- (A)ゲル浸透クロマトグラフ法で求められた分子量分布のピーク分子量が45000〜90000であり、かつ酸化架橋処理を施されたポリフェニレンスルフィド樹脂(但し、酸化架橋前のポリフェニレンスルフィド樹脂は実質的に下記構造式(I)で示される繰り返し単位のみから構成されるものとする)99.9〜95重量%、および(B)25℃における粘度が10〜10000mm2 /sのシリコーンオイル(但し、前記シリコーンオイルはエポキシ基で変性されていないものとする)0.1〜5重量%を溶融混練してなる、実質的に繊維状充填材、非繊維状充填材を含有しないポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(但し、ポリフェニレンスルフィド樹脂50〜95重量%およびα−オレフィン60〜99重量%とα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40重量%を必須成分とするオレフィン系共重合体5〜50重量%からなる組成物100重量部に対し、シリコーンオイルを0.05〜10重量部配合してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を除く。)。
- 酸化架橋処理がポリフェニレンスルフィド樹脂の融点以下で行なわれたものである請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂として、酸化架橋後のポリフェニレンスルフィド樹脂の示差走査熱量計で求められた融解ピーク温度が266〜276℃であるポリフェニレンスルフィド樹脂を用いる請求項1または2記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂として、酸化架橋後のポリフェニレンスルフィド樹脂の融解ピーク温度(Tm2)が266〜276℃であり、かつ酸化架橋前のポリフェニレンスルフィド樹脂の融解ピーク温度(Tm1)との差(Tm1−Tm2)が2℃以上である、酸化架橋ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いる請求項1〜3いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (B)シリコーンオイルがジメチルシリコーンオイルを用いる請求項1〜4いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (B)シリコーンオイルとして、メチル基の一部がフェニル基で置換されたメチルフェニルシリコーンオイルを用いる請求項1〜4いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (B)メチルフェニルシリコーンオイルの、屈折率が1.45〜1.60である請求項6記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (B)シリコーンオイルが、アミノ基、ヒドロキシル基、ポリアルキレンオキシド基、カルボキシル基、チオール基などの官能基で変性されていないシリコーンオイルである請求項1〜7いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂の全灰分量が0.1〜1.0wt%である請求項1〜8いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、アルカリ土類金属を50〜1500ppm含有するものである請求項1〜9いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- さらに第3成分として(C−1)炭素数12〜40の脂肪族カルボン酸と多価アルコールからなるエステル化合物、(C−2)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸とジアミンからなるアミド化合物、(C−3)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜20の多塩基酸とジアミンからなるアミド化合物、から選ばれる少なくとも1種の添加剤を、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂と(B)シリコーンオイルの合計量100重量部に対し、0.05〜1.5重量部添加してなる請求項1〜10いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 添加剤が、(C−3)炭素数12〜40の脂肪族モノカルボン酸と炭素数2〜20の多塩基酸とジアミンからなるアミド化合物である請求項11記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (D)平均粒子径が10〜100nmのカーボンブラックを(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂と(B)シリコーンオイルの合計量100重量部に対し、0.05〜2重量部さらに添加してなる請求項1〜12いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (D)カーボンブラックの平均粒子径が10〜50nmである請求項13記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (D)カーボンブラックがファーネスブラックである請求項13または14記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (D)カーボンブラックが酸性ファーネスブラックである請求項15記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- ASTM−D−256に準じて測定したノッチ無しアイゾット衝撃強度が120kJ/m2 以上である請求項1〜16いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 請求項1〜17いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる120℃以下の熱水と直接接触する成形品用のポリフェニレンスルフィド樹脂成形材料。
- 請求項1〜17いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成型してなる成形体。
- 成形体が120℃までの熱水と直接接触する用途に用いられるものである請求項19記載の成形体。
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