JP3823802B2 - ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気部品として有効に用いられる、電気特性、特に耐トラッキング性に優れたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンサルファイド樹脂は、優れた耐熱性、難燃性、剛性、耐薬品性、電気絶縁性および耐湿熱性などを有することから、エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有しており、射出成形用を中心として、各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などの用途に広く使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリアリーレンサルファイド樹脂は、ナイロン6やナイロン66樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂などの他の結晶性汎用エンジニアリングプラスチックに比べて耐トラッキング性に劣る難点を有しており、高電圧下での使用が制限される場合があった。
【0004】
この観点からポリアリーレンサルファイド樹脂にタルクを配合して耐トラッキング性等の電気特性を向上させる試みはこれまでにもなされているが(例えば特開昭54−162752号、特開昭59−131653号、特開昭62−151461号など)、十分に高い耐トラッキング性が得られるには至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ポリアリーレンサルファイド樹脂が有する優れた特性、すなわち耐熱性、難燃性、剛性、耐薬品性および耐湿熱性などを大きく損なうことなく、耐トラッキング性が飛躍的に向上したポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、(a)ポリアリーレンサルファイド樹脂100重量部に対し、(b)非繊維状充填材を100〜200重量部含有し、(b)非繊維状充填材の25〜85重量%がタルクであり、残部がアルカリ土類金属炭酸塩であるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物であって、(b)非繊維状充填材として用いられるタルク及びアルカリ土類金属炭酸塩を予め混合機にて混合したのち、これと(a)ポリアリーレンサルファイド樹脂をドライブレンドし、続いて溶融混練することにより製造されたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物が優れた耐トラッキング性を示すことを見出し本発明に到達した。
【0008】
本発明では更に(c)繊維状充填材を50〜200重量部含有することが好ましい。更に(b)非繊維状充填材として用いられるタルク及び他の非繊維状充填材を予め混合機にて混合したのち、これと(a)ポリアリーレンサルファイド樹脂、その他の原料をドライブレンドし、続いて溶融混練することにより、より優れた耐トラッキング性を有するポリアリーレンサルファイド樹脂組成物が得られる。
【0009】
かかる方法により、比較トラッキング指数が450V以上の耐トラッキング性に極めて優れたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物が得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する(a)ポリアリーレンサルファイド樹脂とは、下記構造式で示される繰り返し単位
【0011】
【化1】
を70モル%以上、好ましくは90モル%以上を含む重合体であり、上記繰り返し単位が70モル%未満では、耐熱性が損なわれる傾向にある。また、ポリアリーレンサルファイド樹脂は、その繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位などで構成することが可能である。
【0012】
【化2】
これらポリアリーレンサルファイド樹脂の代表例としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられ、中でもポリフェニレンサルファイドが特に好ましい。
【0013】
かかるポリアリーレンサルファイド樹脂は、通常公知の方法、つまり特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。
【0014】
本発明においては、上記のようにして得られたポリアリーレンサルファイド樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
【0015】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。この場合の加熱処理温度としては、通常150〜280℃の範囲が選択され、好ましくは200〜270℃であり、処理時間としては、通常0.5〜100時間の範囲が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この両者をコントロールすることによって目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0016】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間の条件で加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0017】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、ポリアリーレンサルファイド樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のなかでも、特にN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でポリアリーレンサルファイド樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分な効果が得られる。なお、有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンサルファイド樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0018】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるポリアリーレンサルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンサルファイド樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンサルファイド樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、ポリアリーレンサルファイド樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0019】
ポリアリーレンサルファイド樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はポリアリーレンサルファイド樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、および硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。これらの酸のなかでも、特に酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンサルファイド樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によるポリアリーレンサルファイド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられるポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、通常0.5〜5,000Pa・s(310℃、せん断速度1,000/秒)のものが使用され、2〜100Pa・sの範囲が好ましく、2〜80Pa・sの範囲がより好ましい。溶融粘度が小さすぎると機械物性が低下する傾向にあり、また大きすぎると流動性が低下する傾向にある。
【0021】
次に本発明で(b)非繊維状充填材として用いられるタルクについて説明する。純粋なタルクは、化学式 3MgO・4SiO2・H2O で表される化学的に安定な珪酸塩化合物である。通常はその他の不純物も含んでおり、その種類・量はタルク原石の産地によって異なるが、本発明で用いられるタルクとしては、それらの点で特に限定されるものではない。
【0022】
また、本発明で用いられるタルクの平均粒子径にも特に制限はなく、通常平均粒径0.1〜30μmのものが用いられ、より優れた耐トラッキング性を得る意味では1〜12μmのものがより好ましい。
【0023】
本発明において用いられる、タルク以外の非繊維状充填材はアルカリ土類金属炭酸塩であり、中でも炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトが特に好ましく用いられる。これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を1種の使用でも2種類以上併用することも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0025】
本発明は、(a)ポリアリーレンサルファイド樹脂100重量部に対し、(b)非繊維状充填材を100〜200重量部、より好ましくは100〜150重量部含有する樹脂組成物である。更に(b)非繊維状充填材の25〜85重量%、好ましくは45〜85重量%、更に好ましくは60〜80重量%がタルクであり、残部がアルカリ土類金属炭酸塩であるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物である。
【0026】
(b)非繊維状充填材の配合量が100重量部未満では十分な耐トラッキング性が得られず、一方200重量部以上配合してもより優れた耐トラッキング性が得られないばかりか、樹脂組成物の溶融流動性が悪化するため適していない。また、(b)非繊維状充填材中のタルク含有量が25重量%未満でも、85重量%を越える範囲でも、十分な耐トラッキング性が得られない。
【0027】
本発明においては、タルクとアルカリ土類金属炭酸塩を特定割合で併用することが重要である。即ち、タルクとアルカリ土類金属炭酸塩とを本発明で特定した割合で併用することにより、それぞれ単独で配合する場合では得られない特異的に優れた耐トラッキング性が得られ、また強度的にも優れたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物が得られるものである。このように格段に優れた耐トラッキング性及び機械的強度が得られることは、従来の耐トラッキング性向上技術検討では見出されていなかったものである。
【0028】
かかる本発明の方法により、比較トラッキング指数が450Vを上回る、優れた耐トラッキング特性が得られる。なお、本発明における比較トラッキング指数の測定は、IEC 112(A液)の方法に従って測定されたものである。
【0029】
本発明のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物には、所望に応じて、(c)繊維状充填剤をさらに配合して用いることもできる。かかる(c)繊維状充填剤の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などが例示できる。
【0030】
これら繊維状充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
【0031】
本発明のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブレンド可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシル基やカルボン酸エステル基や酸無水物無水物基やエポキシ基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタールおよびポリイミドなどが挙げられる。
【0032】
また、本発明のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、カオリン、有機リン化合物などの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物などの離型剤、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物などの酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0033】
さらに、本発明のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、機械的強度、靱性などの向上を目的に、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランを添加してもよい。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0034】
かかるシラン化合物の好適な添加量は、ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、0.05〜5重量部の範囲が選択される。
【0035】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の調製方法は、(b)非繊維状充填材として用いられるタルク及びアルカリ土類金属炭酸塩を予め、ヘンシェルミキサーなどの混合機にて混合したのち、これと(a)ポリアリーレンサルファイド樹脂、その他の原料をドライブレンドし、続いて上記方法にて溶融混練することにより製造される。これによりすぐれた耐トラッキング性を得ることができる。上記溶融混練方法としては、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280〜380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
【0037】
このようにして得られる本発明のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に射出成形用途に適している。
【0038】
また本発明の樹脂組成物は、特に高い電圧のかかる電気部品用途に適しており、その他用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品、その他の各種用途が例示できる。
【0039】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0040】
[比較トラッキング指数(CTI)の測定]
比較トラッキング指数(CTI)の測定は、IEC 112(A液)に記載された方法に従って行った。即ち、電極を試料にあて、交流電圧印加のもとで電極間に電解液を30秒毎に滴下する。滴下数が50滴でトラッキング破壊に至らない最大の電圧を比較トラッキング指数(CTI)とする。この値が高いほど耐トラッキング性に優れていると言える。詳細な測定条件は下記の通り。
【0041】
装置:トラッキングレジスタンステスター(東京精電(株)社製)
電極:白金
電極圧着荷重:1±0.05N
試料の大きさ:15×15mm2以上
試料の厚さ :3mm
電解液の種類(A液):0.1±0.002重量%塩化アンモニウム水溶液
電解液の滴下量:20mm3/1滴
電解液の滴下間隔:30±5秒
印加電圧:100〜600V間で25V間隔
周波数:48〜60Hz
判定方法:過電流リレーにて、0.5A、2秒でトリップしたとき
[衝撃強度の測定]
ASTM D256に記載された方法に準じて測定を行った。具体的には次の様に測定を行った。樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度330℃に設定した住友−ネスタール社製射出成形機(SG75−HIPRO・MIII)に供給し、射出圧力=成形下限圧力+5kgf/cm2ゲージ圧にて射出成形を行い、幅12.7mm×厚み3.1mm×長さ64mmのノッチ付き試験片を得た。この試験片を用い、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、アイゾット衝撃試験器を用い、衝撃強度の測定を行った。
【0042】
[実施例、比較例で使用した原材料]
PPS樹脂:東レ株式会社製ポリフェニレンスルフィド樹脂 M2900
タルク:竹原化学工業(株)社製“ハイトロン”
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)社製“カルファイン”200M
ガラス繊維:旭ファイバーグラス社製、03JAFT523
ポリエチレン:三井化学社製、PE7000FP
[比較例1〜3]
PPS樹脂とタルクおよび/または炭酸カルシウム、ガラス繊維、ポリエチレンとを表1に示す割合で一括ドライブレンドし、スクリュー型2軸押出機(池貝PCM−30)を用いて溶融混練、ペレタイズを行った。
【0043】
このペレットを用いて比較トラッキング指数(CTI)測定用の成形片(80×80×3mm)及び衝撃強度測定用試験片を成形した。成形には、住友−ネスタール社製射出成形機(SG75−HIPRO・MIII)を用いた。評価結果を表1に示す。
【0045】
[実施例1]
タルクと炭酸カルシウムを予めヘンシェルミキサーにて30分混合した後、これとPPS樹脂、ガラス繊維、ポリエチレンを実施例1と同様の割合で混合し、比較例1と同様にして溶融混練、ペレタイズ、CTI、衝撃強度評価を行った。
【0046】
タルクと炭酸カルシウムを予めヘンシェルミキサーにて混合することにより、更に優れた耐トラッキング性(CTI)、衝撃強度が得られることがわかる。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物は、電気特性、特に耐トラッキング性が著しく高められたものであり、電気部品用途を中心として、各種機械部品および自動車部品などの用途に広く使用することができる。
Claims (4)
- (a)ポリアリーレンサルファイド樹脂100重量部に対し、(b)非繊維状充填材を100〜200重量部含有し、(b)非繊維状充填材の25〜85重量%がタルクであり、残部がアルカリ土類金属炭酸塩であるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物であって、(b)非繊維状充填材として用いられるタルク及びアルカリ土類金属炭酸塩を予め混合機にて混合したのち、これと(a)ポリアリーレンサルファイド樹脂をドライブレンドし、続いて溶融混練することにより製造されたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
- 更に(c)繊維状充填材を50〜200重量部含有することを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
- 比較トラッキング指数が450V以上である、請求項1または2に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
- (b)非繊維状充填材として用いられるタルク及びアルカリ土類金属炭酸塩を予め混合機にて混合したのち、これと(a)ポリアリーレンサルファイド樹脂、その他の原料をドライブレンドし、続いて溶融混練することにより請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を製造することを特徴とする、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物の製造方法。
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