JP5728799B2 - ポリマーアロイとその製造方法 - Google Patents

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本発明は、優れた機械特性を活かして構造材料や、優れた規則性を活かして機能材料として有用に用いることができる、ナノメーターオーダーからミクロンオーダーに構造制御可能なポリマーアロイに関する。
近年、異なった物性を有する樹脂を組み合わせ、各々の原料となる樹脂の長所を引き出し、短所を補い合うことで、単一の樹脂に比べて優れた特性を発現させる技術、いわゆるポリマーアロイ化技術による新規材料の開発が活発に行われている。
ポリマーアロイの特性は、原料樹脂の物性が大きく影響することは言うまでもないが、それら樹脂の分散相サイズと均一性、またその粒径分布によっても大きく変化することが知られている。たとえば、分散相サイズを1μm以下に、かつ均一に制御することで靭性向上といった力学特性の向上が期待できる(特許文献1)。また、異なった2種以上の樹脂から成るポリマーアロイにおいて、マトリックス中に分散する分散相がバイモーダル分布を持つポリマーアロイは、分散相がモノモーダル分布を持つポリマーアロイと比較し、その衝撃特性が向上することが知られている(特許文献2)。たとえば、ビニル芳香族モノマーをゴム粒子存在下で重合させ、静的分散装置により剪断変形をかけることでバイモーダルゴム粒子を製造することができ、このような製品はその衝撃特性が向上しているという特徴がある。しかしながら、該ゴム粒子は架橋性ゴムであり、本発明者らの検討によれば、同公報記載の方法ではゴム粒子はモノマーと相溶せず、スピノーダル分解様式での相分離構造は形成することができなかった。
また、ポリマーアロイの特性はその相構造によっても大きく変化することが知られている。一般に、異なった2種以上の樹脂から成るポリマーアロイにおいては、多量成分から成るマトリックス成分の物性が強く引き出されるが、分散構造の制御により、少量成分をマトリックス成分とする相反転構造を形成させることにより少量成分の物性を強く引き出せることが知られている(特許文献3)。
2種以上の樹脂を一旦、1相状態に相溶後、相分離させることによって得られるポリマーアロイとしては、核生成と成長からなるもの、およびスピノーダル分解からなるものが知られている。核生成と成長によるポリマーアロイ化ではその初期から海島構造である分散構造が形成され、それが成長するため、構造を均一に制御することは困難である。
一方スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急速にした場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長まで単色化され、均一かつ微細な相構造を形成することが可能となる。
スピノーダル分解によるポリマーアロイの製法は大きく分けて、部分相溶系によるスピノーダル分解によるものと非相溶系で溶融混練によるスピノーダル分解の誘発とに分けられる。前者は、使用可能なポリマーが限定されるだけでなく、温度変化が小さいために分散径を小さく制御することが困難といった問題があった。一方後者は、溶融混練時の剪断下で一旦相溶させた後、非剪断下で再度不安定状態にすることでスピノーダル分解を誘発する方法であるが、均一に剪断をかけることが難しく分散相の均一性が低くなるといった問題や、剪断による分子量が低下する場合が問題となっていた。
かかる問題に対して、熱硬化樹脂のポリマーアロイにおいて、構成する熱硬化樹脂成分の前駆体を架橋反応させることによりスピノーダル分解を誘発させ、微細かつ均一に構造制御されたポリマーアロイを得る方法がある(特許文献4)。この方法は、架橋反応によりスピノーダル曲線が変化し、不安定領域が拡大するため、スピノーダル曲線が変化しない部分相溶系の温度変化による方法に比べて、より微細に構造制御することが可能で、かつ溶融混練の剪断なども不要なため均一な構造を得ることが可能な方法である。しかしながら、熱硬化性樹脂ポリマーアロイであるため、得られたポリマーアロイを射出成形や押し出し成形などの成形方法用いることは困難であった。
特開平3―20333号公報 特表2003−504495号公報 特開2002−241605号公報 特開2003−286414号公報
本発明は、優れた機械特性を有する構造材料や、すぐれた規則性を有する機能材料を提供するにあたり、分散相がバイモーダル構造を有し、その構造の少なくとも一部分を微細に制御することが可能であり、さらにはその構造が均一に分散した、少なくとも2成分の樹脂からなるポリマーアロイを提供することを課題とするものである。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
1.少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイにおいて、該ポリマーアロイを構成する熱可塑性樹脂成分のうち少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分の前駆体がビニル単量体(A)であり、該ビニル単量体を残りの熱可塑性樹脂成分(B1)および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)共存下で化学反応させることでスピノーダル分解を誘発させることにより得られるポリマーアロイであって、前記ビニル単量体(A)が、メタクリル酸またはそのエステル、アクリル酸またはそのエステル、カルボン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種であり、前記熱可塑性樹脂成分(B1)が、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステル、ポリカルボン酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミドおよびセルロース類から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂および/またはその共重合体であり、前記熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)が、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィドおよびポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂成分の前駆体であり、マトリックス中に平均粒子径0.3μm以上5μm未満の分散ドメインaが存在し、該分散ドメインa中に構造周期0.001μm以上0.1μm未満の両相共連続構造および/または粒子間距離0.001μm以上0.1μm未満の分散構造を有し、前記ポリマーアロイを構成する成分中でポリマーアロイ中の体積分率の多い成分が分散ドメイン相を形成していることを特徴とするポリマーアロイ。
2.前記ポリマーアロイにおいて、マトリックス中に構造周期0.001μm以上0.1μm未満の両相共連続構造および/または粒子間距離0.001μm以上0.1μm未満の分散構造を有することを特徴とする1に記載のポリマーアロイ。
.化学反応前にはビニル単量体(A)と残りの熱可塑性樹脂成分(B1)および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)の少なくとも一つが相溶し、化学反応後に相分離することを特徴とする1または2に記載のポリマーアロイ。
.前記化学反応がラジカル重合反応であり、ポリマー生成に伴う少なくとも2段階の液―液相分離を経て得られることを特徴とする1〜のいずれかに記載のポリマーアロイ。
.1〜のいずれかに記載のポリマーアロイを成形してなる成形品。
6.少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイを製造する際に、前記ポリマーアロイを構成する熱可塑性樹脂成分のうち少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分の前駆体がビニル単量体(A)であり、該ビニル単量体(A)を残りの熱可塑性樹脂成分(B1)および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)共存下で化学反応させることでスピノーダル分解を誘発させるポリマーアロイの製造方法であって、前記ビニル単量体(A)が、メタクリル酸またはそのエステル、アクリル酸またはそのエステル、カルボン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種であり、前記熱可塑性樹脂成分(B)が、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステル、ポリカルボン酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミドおよびセルロース類から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂および/またはその共重合体であり、前記熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)が、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィドおよびポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂成分の前駆体であることを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
.ビニル単量体(A)と残りの熱可塑性樹脂成分(B1)および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)の少なくとも一つが相溶し、化学反応後に相分離することを特徴とするに記載のポリマーアロイの製造方法。
.前記化学反応がラジカル重合反応であり、ポリマー生成に伴う少なくとも2段階の液―液相分離を経て得られることを特徴とする6または7に記載のポリマーアロイの製造方法。
本発明によれば、少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイにおいて、該ポリマーアロイを構成する熱可塑性樹脂成分のうち少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分の前駆体がビニル単量体(A)であり、該ビニル単量体(A)を残りの熱可塑性樹脂成分(B1)および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)共存下で化学反応させることでスピノーダル分解を誘発させることで、分散相がバイモーダル構造を有し、その構造の少なくとも一部分を微細に制御することが可能であり、さらにはその構造が均一に分散した、少なくとも2成分の樹脂からなるポリマーアロイを得ることができる。さらには少量成分がマトリックス相を形成する相反転構造を有するポリマーアロイを得ることができる。
このように分散相にそれぞれの粒子径が均一であるバイモーダル構造を有するポリマーアロイは、分散相成分にたとえば柔軟樹脂を用いた場合に、分散相が通常のモノモーダル分布のポリマーアロイと比較して、耐衝撃性に優れ、さらにはスピノーダル分解に由来する均一に分散した分散相を有するため、通常のポリマー同士の溶融混練により得られるポリマーアロイに比べ、該ポリマーアロイを成形品にした際の外観不良が著しく低減されたり、構造の均一性により成形品各部位での耐衝撃性に著しく優れるといった特徴がある。
さらに、少量成分がマトリックス相を形成する相反転ポリマーアロイにおいては、少量成分の特性を発現することができるため、少量成分により多量成分の短所を補うことができるという特徴がある。
ここで、(A)と(B)が同一の樹脂となる場合、単なる1成分のポリマーとなるため(A)と(B)は異なる種類の樹脂である必要がある。また、熱可塑性樹脂から構成されるので、射出成形や押出成形などに好適に用いることも可能である。一方、モノマーやオリゴマーは分子量が低いため、ポリマー同士溶融混練時の剪断付与や温度変化では相溶し得なかった組合せのポリマーアロイを得ることが可能となる。特にモノマーやオリゴマー同士の場合は、低分子量同士のため相溶性がさらに増加し、より多くの組合せのポリマーアロイを得ることが可能となる。
本発明における、少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイは、該ポリマーアロイを構成する熱可塑性樹脂成分のうち少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分の前駆体がビニル単量体(A)であり、該ビニル単量体(A)を残りの熱可塑性樹脂成分(B1)および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)共存下で化学反応させることでスピノーダル分解を誘発させることにより得られることを特徴とするものである。
スピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分の樹脂組成および温度に対する相図においてスピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指し、また核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分の樹脂を混合した場合、相溶した場合の自由エネルギーと相溶しない2相における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂ΔGmix/∂φ)が0となる曲線のことであり、またスピノーダル曲線の内側では、∂ΔGmix/∂φ<0の不安定状態であり、外側では∂ΔGmix/∂φ>0である。
またかかるバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶する領域と相分離する領域の境界の曲線のことである。
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急速にした場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λm)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った両相連続構造を形成する。この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]−1/2
(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)ここで本発明でいうところの両相連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この両相連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ 基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人)に記載されている。
ここで本発明にいうところの分散構造とは、片方の樹脂成分が主成分であるマトリックスの中に、もう片方の樹脂成分が主成分である粒子が点在している、いわゆる海島構造のことをさす。
ここで本発明における相溶する場合とは、分子レベルで均一に混合している状態のことであり、具体的には異なる2成分の樹脂を主成分とする相がいずれも0.001μm以上の相構造を形成していない場合を指し、また、非相溶の場合とは、相溶状態でない場合のことであり、すなわち異なる2成分の樹脂を主成分とする相が互いに0.001μm以上の相構造を形成している状態のことを指す。相溶するか否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers,Munich Viema New York,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
均一性に優れた熱可塑性ポリマーアロイを得る方法として、熱可塑性樹脂成分の前駆体を残りの熱可塑性樹脂成分および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)の共存下で化学反応させることでスピノーダル分解を誘発することで得ることができる。本方法では、従来のポリマーアロイの一般的な製造方法である溶融混練と比較して、剪断や圧力が小さいことが特徴である。その結果、分子量低下のリスクが低いという特徴、剪断力や圧力の分布に起因する相分離構造の均一性低下のリスクが低いという特徴がある。特に化学反応が重合など分子量の増加を伴う場合、すなわちポリマーアロイを構成する樹脂成分の原料、オリゴマー或いは低分子量物など(樹脂成分の前駆体)が残りの樹脂成分と相溶系であって、前記モノマー、オリゴマー或いは低分子量物を高重合度化し、アロイ化すべき樹脂とした場合に他の樹脂成分と相分離を生じるような場合、スピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)が小さくなるため、ポリマーアロイの構造周期をより微細化可能であるため好ましい。
一方、従来の溶融混練によるポリマーアロイ化の場合、ポリマーを溶融しつつ剪断や圧力を付与し、ポリマー間の自由体積を圧縮することで、ポリマー同士を相溶化し、アロイ化するため、剪断や圧力付与による分子量低下以外に剪断や圧力に分布が生じると構造周期または分散構造における粒子間距離の均一性が低下する危険性が生じる場合がある。
また、本発明において、ポリマーアロイを構成する熱可塑性樹脂成分のうち少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分にビニル単量体を用い、該ビニル単量体と相溶する熱可塑性樹脂成分の共存下で該ビニル単量体をラジカル重合させることにより、反応誘発型相分解に由来する特殊な相構造を有するポリマーアロイを得ることができる。すなわち、ビニル単量体の重合に伴うスピノーダル分解により、一段階目の反応誘発型相分解が生じる。この段階では系内に該ビニル単量体が残存しているため、相分離した2相にはモノマーとポリマーの両方が相溶状態で液相として存在している(液−液相分離)。さらに重合が進むと先に相分離した2相のそれぞれでスピノーダル分解により二段階目の反応誘発型相分解を生じ、特殊な相構造を有するポリマーアロイを得ることができる。本発明の方法において、同様の過程を経て三段階以上の反応誘発型相分解を生じることもある。
一方、ビニル単量体以外の前駆体を用いてラジカル重合とは異なる重合形態を用いた場合、液−液相分離は生じず、2段階以上の相分離を生じさせることが困難であり、本発明のような構造を形成することが困難である。
本発明におけるポリマーアロイの特殊な相構造の詳細について記載する。本発明において、スピノーダル分解に由来する平均粒子径0.3〜5μmの分散ドメインaを有し、さらには構造周期0.001μm〜0.1μmの両相共連続構造b1および/または粒子間距離0.001μm〜0.1μmの分散構造b2を有することを特徴とするものである。
優れた機械特性などの物理特性を発現するためには、全ての分散ドメインが均一に分散しており、分散ドメインaの平均粒子径が0.3〜5μmであり、両相共連続構造b1の構造周期、分散構造b2の粒子間距離が0.001μm〜0.1μmであることが好ましく、分散ドメインaの平均粒子径が0.3〜1μmであり、両相共連続構造b1の構造周期、分散構造b2の粒子間距離が0.001μm〜0.05μmであることがさらに好ましい。
分散ドメインaの平均粒子径が0.3μm未満ではバイモーダル分布の効果が発現しづらく、逆に分散ドメインの平均粒子径が5μmより大きい、または両相共連続構造b1の構造周期、分散構造b2の粒子間距離が0.1μmより大きいと、用いている成分の特徴を発現しづらく、好ましくない。また、両相共連続構造b1の構造周期、分散構造b2の粒子間距離が0.001μm未満では原料樹脂の特性が失われる傾向にあるため好ましくない。
前記相構造において、両相共連続構造b1および/または分散構造b2はマトリックス中、分散構造a中のいずれか、またはその両方に存在していても良い。
ここでいう分散ドメインaの平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡写真における透過画像の解析により算出することができる。画像解析としては、Scion Corporation社製画像解析ソフト「Scion Image」等の画像解析ソフトを使用して、前記透過画像中に存在する、長径と短径の平均値が0.1μm以上の分散相の長径及び短径の平均値を算出し、長径と短径の平均値として平均粒子径を算出する。
本発明の方法により得られる両相連続構造b1の構造周期、もしくは分散構造b2の粒子間距離を確認するためには、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察に加え、規則的な周期構造の確認のために小角X線散乱装置または光散乱装置を用いた散乱測定を行うことができる。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つことを示し、その周期は両相共連続相の場合、構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。
ビニル単量体を用いた反応誘発型相分解の具体例を次に挙げる。ビニル単量体(A)を残りの熱可塑性樹脂成分(B1)共存下で化学反応させるケースとして、メタクリル酸またはそのエステル、アクリル酸またはそのエステル、カルボン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種のビニル単量体(A)に、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステル、ポリカルボン酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミドおよびセルロース類から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂および/またはその共重合体である熱可塑性樹脂成分(B1)を相溶化し、ビニル単量体(A)を重合させて相分解させる方法が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂成分(B1)として使用する樹脂のうち、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステル、ポリカルボン酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる熱可塑性樹脂および/またはその共重合体の分子量は10000以上であることが好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂成分(B1)として使用する樹脂のうち、ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸(あるいは、そのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはそのエステル形成性誘導体)とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体、あるいはこれらの混合物が挙げられ、これらのポリエステル樹脂はo-クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60dl/g、特に0.52〜1.35dl/gの範囲にあるものが好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂成分(B1)として使用する樹脂のうち、ポリアミド樹脂としては、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられ、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
また、ビニル単量体(A)を残りの熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)共存下で化学反応させるケースとして、メタクリル酸またはそのエステル、アクリル酸またはそのエステル、カルボン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種のビニル単量体(A)に、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィドおよびポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)を相溶化し、ビニル単量体(A)と前駆体(B2)を重合させて相分解させる方法が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)のうち、ポリエステル樹脂の前駆体としては、ジカルボン酸成分とジオールが挙げられる。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。またジオール成分としては、炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、あるいは分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
また、前記熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)のうち、ポリアミド樹脂の前駆体としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられる。また、該ジアミンと該ジカルボン酸の塩も使用することができる。
また、前記熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)として、環状オリゴエステル、環状オリゴアミド、環状オリゴアリーレンスルフィド、ラクトン、ラクタムなどの環状オリゴマーまたは環状モノマーを用いることができる。このような環状オリゴマーまたは環状モノマーを前駆体とする開環重合では、副生成物が無く、かつ反応速度が速く、短時間で高分子量化するため、過冷却度が大きくなり、その結果、スピノーダル分解の初期過程における構造周期が小さくなり、最終的なポリマーアロイの構造周期を微細化する事が容易となるため好ましい。
前記開環重合を行う方法として、例えばω−ラクタム類のアニオン重合が挙げられる。ω−ラクタム類としては、炭素数4〜12の環状アミド化合物が通常使用され、例えばピロリドン、バレロラクタム、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウロラクタムなどが挙げられ、なかでも重合速度の点から、ε−カプロラクタムが好ましく使用される。
前記アニオン重合のためには、通常重合触媒が添加される。重合触媒についてはとくに制限がなく、ラクタム類のアニオン重合に使用可能な化合物が使用できる。代表例を挙げるとナトリウムラクタメート、カリウムラクタメート、カルシウムラクタメート、マグネシウムラクタメートなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属とラクタムとの塩あるいは系内でラクタムとラクタメ−トアニオンを形成しうるようなアルカリ性物質であり、これらの例としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびこれらの金属の水素化物、水酸化物、酸化物、炭酸塩、アルコキシ化合物、アリール化合物ならびにトリアルキルアルミニウム、グリニヤール試薬などが挙げられる。これらの触媒は各々単独または二種以上の混合物として用いることができる。
さらに重合においては、活性化剤の添加が好ましい。活性化剤としては一般的に次のものが使用できる。例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのイソシアネート類、またはチオイソシアネート化合物などにピロリドン、カプロラクタムを付加させることにより合成した化合物、およびジアミン化合物にホスゲン、チオホスゲンを反応させ後、ピロリドン、カプロラクタムなどをさらに付加させて合成した化合物、ヘキサメチレン−1、6−ビスカルバミド、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンスカルバミドなどのピロリドン、カプロラクタムを付加したカルバミドラクタム類、テレフタロイルビスカプロラクタム、アジポイルビスカプロラクタム、2−クロロテレフタロイルビスカプロラクタム、セバコイルビスカプロラクタム、ベンゾイルカプロラクタム、アセチルカプロラクタムなどの酸ハライド類にピロリドン、カプロラクタムを付加させて合成したアシルラクタム類などが用いられる。活性化剤は一種の化合物を主として用いるのが一般的であるが、二種以上の活性化剤を混合して用いることもできる。
ビニル単量体(A)を重合させる際には必要に応じ、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を添加する。ラジカル重合開始剤としては、遊離基を生成して重合を開始させるものが使用でき、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネイト)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]および1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等のアゾ化合物;ジベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよび過コハク酸等の有機過酸化物;過硫酸塩および過ホウ酸塩等の無機過酸化物等が挙げられる。なお、これらは2種以上を併用することができる。また、連鎖移動剤としては、例えば、ドデシルメルカプタンおよびメルカプトエタノール等のアルキルメルカプタン類;イソプロピルアルコール、メタノール、2−ブタノールおよびアリルアルコール等のアルコール類;四塩化炭素、四臭化炭素およびクロロホルム等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
また、前駆体(B2)を重合させる際に、必要に応じて重合触媒を添加する。重合触媒は、金属触媒や酸塩基触媒など、その重合反応に応じて適宜選択することが可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレートの前駆体であるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを重合させる場合は、三酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ゲルマニウムや、亜鉛、コバルト、ニッケル等の遷移金属の酢酸塩等が好ましく用いられる。この場合、添加量はビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに対して、0.001モル%以上0.1モル%以下が好ましい。
本発明でのポリマーアロイを構成する樹脂成分の組成については特に制限はないが、2成分の場合、ビニル単量体(A)と熱可塑性樹脂成分(B)の合計を100重量部とした場合、(A)/(B)が通常95重量部/5重量部〜5重量部/95重量部の範囲が好ましく用いられ、さらには90重量%/10重量%〜10重量%/90重量%の範囲がより好ましく用いられる。また、(A)/(B)が30重量部/70重量部〜50重量部/50重量部である場合に体積分率の多い成分が分散ドメイン相を形成する相反転構造を形成しやすい。
また本発明のポリマーアロイには、その衝撃強度を改良し、かつ湿熱時の耐加水分解性を改良するため、少なくとも1種以上のゴム質重合体を添加することも可能である。
前記ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−メタクリレート、エチレン−ブチルアクリレートなどのエチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、例えばブチルアクリレート−ブタジエン共重合体などのアクリルゴム、エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体などのエチレン−プロピレン非共役ジエン3元共重合体、ブチレン−イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレンなどがあげられる。
また、本発明を構成する2成分の樹脂からなるポリマーアロイに、さらにポリマーアロイを構成する成分を含むブロックコポリマーやグラフトコポリマーやランダムコポリマーなどのコポリマーである第3成分を添加することは、相分解した相間における界面の自由エネルギーを低下させ、両相連続構造における構造周期や、分散構造における分散粒子間距離の制御を容易にするため好ましく用いられる。この場合通常、かかるコポリマーなどの第3成分は、それを除く2成分の樹脂からなるポリマーアロイの各相に分配されるため、2成分の樹脂からなるポリマーアロイ同様に取り扱うことができる。
なお、本発明のポリマーアロイには、本発明の目的を損なわない範囲でさらに他の各種の添加剤を含有せしめることもできる。これら他の添加剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、セリサイト、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、炭酸カルシウム、ケイ砂、ワラステナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズ、酸化チタンなどの強化材、非板状充填材、あるいは酸化防止剤(リン系、硫黄系など)、紫外線吸収剤、熱安定剤(ヒンダードフェノール系など)、滑剤、離型剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料および顔料を含む着色剤、難燃剤(ハロゲン系、リン系など)、難燃助剤(三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンなど)、発泡剤、カップリング剤(エポキシ基、アミノ基メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基を一種以上含むシランカップリング剤やチタンカップリング剤)、抗菌剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、本発明のポリマーアロイを製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、少なくとも2成分の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2成分の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法等が挙げられる。
本発明から得られるポリマーアロイの成形方法は、任意の方法が可能であり、成形形状は、任意の形状が可能である。成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを挙げることができるが、中でも射出成形は射出時の可塑化工程で相溶解させ、射出後、スピノーダル分解し金型内で熱処理と構造固定化が同時にできることから好ましく、またフィルムおよび/またはシート押出成形であれば、押出時に相溶解させ、吐出後、スピノーダル分解しフィルムおよび/またはシート延伸時に熱処理し、その後の巻き取り前の自然冷却時に構造固定ができることから好ましい。もちろん前記成形品を別途熱処理し構造形成させることも可能である。またかかるフィルムおよび/またはシート化の製造方法としては、単軸あるいは2軸押出機を用いてTダイから溶融押出し、キャストドラムで冷却固化してシート化する方法、溶融押出シートを2つのロール間で成形するポリッシング方法やカレンダーリング方法などがあるが、ここでは特に限定されるものではない。またキャストドラムにキャストする際、溶融樹脂をキャストドラムに密着させるには、静電印加を与える方法、エアーナイフを用いる方法、キャストドラムに対向する押さえのドラムを用いる方法等を用いることもできる。さらにはフィルムおよび/またはシート化用の押出機に供給する前に、予め2軸押出機を用いて相溶化させその構造を凍結させたペレットを用いることがより好ましい。また延伸してフィルム化する方法は、特に制限はなく、逐次2軸延伸、同時2軸延伸でも構わなく、また通常延伸倍率は2〜8倍の間、延伸速度は500〜5000%/分の間が多く用いられる。さらに延伸時の熱処理温度は、ポリマーアロイを構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で熱処理する方法が通常好ましく用いられるが、ポリマーアロイが相溶化状態で単一のガラス転移温度を有する場合や、相分解が進行しつつある状態でポリマーアロイ中でのガラス転移温度が、ポリマーアロイを構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度間にある場合には、そのポリマーアロイ中のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で熱処理することがより好ましい。またポリマーアロイを構成する個々の樹脂成分として結晶性樹脂を用いる場合、該熱処理温度を結晶性樹脂の昇温結晶化温度以下とすることは、結晶性樹脂の結晶化による延伸の阻害を受けにくくする観点から好ましい。
本発明におけるポリマーアロイは、一般にその構成成分の特徴によって様々な利用方法があるが、中でも片方の樹脂として、耐衝撃性に優れる樹脂を用いて耐衝撃性を高めた構造材料や、片方の樹脂として、耐熱性に優れる樹脂を用いて耐熱性を高めた耐熱樹脂材料や、片方の樹脂に耐薬品性に優れる樹脂を用いて耐薬品性を高めた構造材料に好適に用いることができる。
かかる耐衝撃性を高めた構造材料は、例えば自動車部品や電機部品などに好適に使用することができる。自動車部品の例としては、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、エアフローメーター、エアポンプ、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、サーモスタットハウジング、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブ−スター部品、各種ケース、燃料関係・排気系・吸気系等の各種チューブ、各種タンク、燃料関係・排気系・吸気系等の各種ホース、各種クリップ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、各種パイプ、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、ブレーキパッド摩耗センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコンパネルスイッチ基板、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、スタータースイッチ、スターターリレー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、デュストリビューター、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、ホーンターミナル、ウィンドウォッシャーノズル、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプソケット、ランプハウジング、ランプベゼル、ドアハンドル、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクターなどの各種コネクターなどが挙げられる。
また電気部品の例としては、コネクター、コイル、各種センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク・DVD等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、携帯電話関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライター関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等の光学機器/精密機械関連部品などが挙げられる。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(PMMAの準備)
乾燥窒素雰囲気下、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBN)0.08g、連鎖移動剤として、n−ドデシルメルカプタン(以下、NDM)0.02g、単量体としてメタクリル酸メチル(以下、MMA)をフラスコに100g仕込み、70℃オイルバス中で3時間加熱した。その後重合を完結させるために90℃に昇温し1時間加熱した。反応物の一部を100gのアセトンに溶解し、1Lのヘキサン中に注いで得られた沈殿物を、一晩真空乾燥し、サンプルを得た。該サンプルのH−NMR分析(装置:日本電子社製 270M核磁気共鳴装置、溶媒:重クロロホルム)およびGPC分析(装置:Waters社製515型、カラム:東ソー社製TSK−gel−GMHXL、溶媒:テトラヒドロフラン)を実施した結果、数平均分子量217000、重量平均分子量470000のポリメタクリル酸メチル(以下、PMMA)であることがわかった。該PMMAを実施例1,2および比較例1,2に用いた。
(実施例1〜2)
乾燥窒素雰囲気下、重合開始剤としてAIBN、連鎖移動剤としてNDM、単量体としてアクリル酸ブチル(以下、BA)、前記PMMAを表1の組成でフラスコに仕込み、PMMAがBAに溶解するまで23℃環境下で撹拌を行った。溶解後、70℃オイルバス中で3時間加熱した。その後重合を完結させるため、90℃に昇温し1時間加熱し、ポリマーアロイを得た。
該ポリマーアロイの一部をヘキサン中に浸漬し、ポリアクリル酸ブチル(以下、PBA)成分のみ抽出し、メタノール中に注いで得られた沈殿物を一晩真空乾燥し、サンプルを得た。該サンプルのH−NMR分析(装置:日本電子社製 270M核磁気共鳴装置、溶媒:重クロロホルム)およびGPC分析(装置:Waters社製515型、カラム:東ソー社製TSK−gel−GMHXL、溶媒:テトラヒドロフラン)を実施した結果、表1に示す分子量のPBAであることがわかった。
得られたポリマーアロイを透過型電子顕微鏡で1000倍に拡大して観察したところ、PMMAのマトリックス中に、PBAを主成分としたPMMAとの共連続構造からなる分散ドメインとして均一に分散していた。画像解析ソフト「Scion Image」を用いて0.1μm以上の分散ドメインの平均粒子径を計測した結果を表1に示す。さらに詳細に構造を観察するため、20000倍に拡大して該分散ドメインを観察すると、微細な一定の構造周期を有する共連続構造が存在することを確認した。
また、マトリックス部分の詳細観察のため、10000倍に拡大して観察を行うと、マトリックス中にさらに小さな分散構造が存在することを確認した。該共連続構造および分散構造の構造サイズを計測するため、小角X線散乱測定および光散乱測定を実施して得られたピーク極大波長と構造サイズを表1に示す。
得られたポリマーアロイを、加熱プレス(240℃、1.5MPa)によってシート化(厚み0.2mm)し、得られたシートの構造を前記方法と同様の方法により測定した結果を表1に示す。本結果から、加熱プレスでの熱処理によっても、上記重合により得られたサンプルと同様に構造が形成されていることがわかる。
次に、該シートから10mm×50mmの大きさの試験片を切り出し、ヒートサグ試験として、試験片の片端20mmを保持して試験片が水平になるように片持ち状態で固定し、70℃のオーブン中に30分間放置した後、保持した部分と反対側の先端が自重によって垂れ下がった水平距離を求め、耐熱性を評価した。
また、該シートから、長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.2mmのサンプルを切り出し、引張衝撃試験機(東洋精機製作所製)を用い、ASTM D1822に従って引張衝撃試験を行った。さらに、上記試験片をエタノール溶液中に30分間浸漬後、未処理試験片と同様に引張衝撃試験を行った。
(PSの準備)
乾燥窒素雰囲気下、重合開始剤としてAIBN0.08g、連鎖移動剤としてNDMを0.02g単量体としてスチレン(以下、St)をフラスコに100g仕込み、90℃オイルバス中で3時間加熱した。その後重合を完結させるために120℃に昇温し1時間加熱した。反応物の一部を100gのクロロホルムに溶解し、1Lのヘキサン中に注いで得られた沈殿物を、一晩真空乾燥し、サンプルを得た。該サンプルのH−NMR分析(装置:日本電子社製 270M核磁気共鳴装置、溶媒:重クロロホルム)およびGPC分析(装置:Waters社製515型、カラム:東ソー社製TSK−gel−GMHXL、溶媒:テトラヒドロフラン)を実施した結果、数平均分子量48000、重量平均分子量120000のポリスチレン(以下、PS)であることがわかった。該PSを実施例3,4および比較例3,4に用いた。
(実施例3〜4)
乾燥窒素雰囲気下、重合開始剤としてAIBN、連鎖移動剤としてNDM、単量体として酢酸ビニル(以下、VAc)、前記PSを表2の組成でフラスコに仕込み、PSがVAcに溶解するまで23℃環境下で撹拌を行った。溶解後、50℃オイルバス中で3時間加熱した。その後重合を完結させるため、70℃に昇温し3時間加熱し、ポリマーアロイを得た。
該ポリマーアロイの一部をメタノール中に浸漬し、ポリ酢酸ビニル(以下、PVAc)成分のみ抽出し、エーテル中に注いで得られた沈殿物を一晩真空乾燥し、サンプルを得た。実施例1と同様に該サンプルのH−NMR分析およびGPC分析を実施した結果、表2に示す分子量のPVAcであることがわかった。
実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて得られたポリマーアロイを観察した結果と、小角X線散乱測定および光散乱測定を実施して得られた相構造のピーク極大波長と構造サイズを表2に示す。
得られたポリマーアロイを、加熱プレス(240℃、1.5MPa)によってシート化(厚み0.2mm)し、得られたシートの構造を実施例1と同様の方法により測定した結果を表2に示す。本結果から、加熱プレスでの熱処理によっても、上記重合により得られたサンプルと同様に構造が形成されていることがわかる。
次に、実施例1と同様にしてヒートサグ試験により耐熱性を評価した結果、引張衝撃試験により機械物性を評価した結果を表2に示す。
(実施例5)
乾燥窒素雰囲気下、重合開始剤としてAIBN、連鎖移動剤としてNDM、ビニル単量体としてBA、 開環重合モノマーとしてε−カプロラクタム、触媒としてナトリウムラクタメート、活性化剤としてヘキサメチレン−1,6−ビス−(カルバミド−カプロラクタム)(以下、HD−2CL)を表3の組成でフラスコに仕込んだ。該組成物を70℃オイルバス中で2時間加熱した後、160℃に昇温して5分間保持した後、水浴にて急冷することによりポリマーアロイを得た。
該ポリマーアロイの一部をヘキサン中に浸漬し、PBA成分のみ抽出し、メタノール中に注いで得られた沈殿物を一晩真空乾燥し、サンプルを得た。該サンプルのH−NMR分析およびGPC分析を実施した結果、表3に示す分子量のPBAであることがわかった。
実施例1と同様に透過型電子顕微鏡を用いて得られたポリマーアロイを観察した結果と、小角X線散乱測定および光散乱測定を実施して得られた相構造のピーク極大波長と構造サイズを表3に示す。
得られたポリマーアロイを、加熱プレス(240℃、1.5MPa)によってシート化(厚み0.2mm)し、得られたシートの構造を実施例1と同様の方法により測定した結果を表3に示す。本結果から、加熱プレスでの熱処理によっても、上記重合により得られたサンプルと同様に構造が形成されていることがわかる。
次に、実施例1と同様にしてヒートサグ試験により耐熱性を評価した結果、引張衝撃試験により機械物性を評価した結果を表3に示す。
(PBAの準備)
乾燥窒素雰囲気下、AIBN0.03g、連鎖移動剤として、NDM0.04g、単量体としてBA60gをフラスコに仕込み、70℃オイルバス中で3時間加熱した。その後重合を完結させるために90℃に昇温し1時間加熱した。反応物をアセトンに溶解し、メタノール中に注いで得られた沈殿物を一晩真空乾燥し、サンプルを得た。該サンプルのH−NMR分析(装置:日本電子社製 270M核磁気共鳴装置、溶媒:重クロロホルム)およびGPC分析(装置:Waters社製515型、カラム:東ソー社製TSK−gel−GMHXL、溶媒:テトラヒドロフラン)を実施した結果、数平均分子量150000、重量平均分子量466000のPBAであることがわかった。該PBAを比較例1,2に用いた。
(PVAcの準備)
乾燥窒素雰囲気下、AIBN0.12g、連鎖移動剤として、NDM0.14g、単量体としてPVAc60gをフラスコに仕込み、70℃オイルバス中で3時間加熱した。その後重合を完結させるために90℃に昇温し1時間加熱した。反応物をメタノールに溶解し、エーテル中に注いで得られた沈殿物を一晩真空乾燥し、サンプルを得た。該サンプルのH−NMR分析(装置:日本電子社製 270M核磁気共鳴装置、溶媒:重クロロホルム)およびGPC分析(装置:Waters社製515型、カラム:東ソー社製TSK−gel−GMHXL、溶媒:テトラヒドロフラン)を実施した結果、数平均分子量80000、重量平均分子量266000のPVAcであることがわかった。該PVAcを比較例3,4に用いた。
(ナイロン6の準備)
乾燥窒素雰囲気下、ε−カプロラクタム40gに触媒としてナトリウムラクタメートを0.25g、活性化剤としてHD−2CLを0.75g試験管に仕込み、160℃で5分間加熱した。得られたサンプルのH−NMR分析(装置:日本電子社製 270M核磁気共鳴装置、溶媒:重ヘキサフルオロイソプロパノール)およびGPC分析(装置:Waters社製515型、カラム:東ソー社製TSK−gel−GMHXL、溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール)を実施した結果、数平均分子量8.5万、重量平均分子量23万のナイロン6であることがわかった。該ナイロン6を比較例5に用いた。
(比較例1〜2)
PBAと実施例1で用いたPMMAを表1に示す組成で、溶融混練装置としてラボプラストミル(東洋精機製50C150型)を用いて、設定温度240℃、滞留時間3分間、スクリュー回転数100rpmで溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
得られたポリマーアロイを透過型電子顕微鏡で500倍に拡大して観察したところ、マトリックス中に粗大な分散ドメインが不均一に分散していた。画像解析ソフト「Scion Image」を用いて分散ドメインの平均粒子径を計測した結果を表1に示す。さらに詳細に相構造を観察したが、該分散ドメイン以外の構造は確認できなかった。また、小角X線散乱測定および光散乱測定を行ったが、均一な構造に由来する散乱ピークは観測されなかった。
得られたポリマーアロイを、加熱プレス(240℃、1.5MPa)によってシート化(厚み0.2mm)し、得られたシートの構造を実施例1と同様の方法により測定した結果を表1に示す。該シートを用い、実施例1と同様に機械物性を測定した。その結果、表1に示す通り、比較例1では実施例1と比較し、耐熱性、エタノール浸漬後の引張衝撃性が大きく低下していることがわかった。また、比較例2ではバイモーダル構造を有する実施例2と比較し、エタノール浸漬前後の耐衝撃性が著しく劣ることがわかった。
(比較例3〜4)
PVAcと実施例3で用いたPSを表2に示す組成で、溶融混練装置としてラボプラストミルを用いて、設定温度240℃、滞留時間3分間、スクリュー回転数100rpmで溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
得られたポリマーアロイを透過型電子顕微鏡で500倍に拡大して観察したところ、マトリックス中に粗大な分散ドメインが不均一に分散していた。画像解析ソフト「Scion Image」を用いて分散ドメインの平均粒子径を計測した結果を表2に示す。さらに詳細に相構造を観察したが、該分散ドメイン以外の構造は確認できなかった。また、小角X線散乱測定および光散乱測定を行ったが、均一な構造に由来する散乱ピークは観測されなかった。
得られたポリマーアロイを、加熱プレス(240℃、1.5MPa)によってシート化(厚み0.2mm)し、得られたシートの構造を実施例3と同様の方法により測定した結果を表2に示す。該シートを用い、実施例3と同様に機械物性を測定した。その結果、表2に示す通り、比較例3では実施例3と比較し、耐熱性、エタノール浸漬後の引張衝撃性が大きく低下していることがわかった。また、比較例4ではバイモーダル構造を有する実施例4と比較し、エタノール浸漬前後の耐衝撃性が著しく劣ることがわかった。
(比較例5)
前記ナイロン6とPBAを表3に示す組成で、溶融混練装置としてラボプラストミルを用いて、設定温度240℃、滞留時間3分間、スクリュー回転数100rpmで溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
得られたポリマーアロイを透過型電子顕微鏡で500倍に拡大して観察したところ、マトリックス中に粗大な分散ドメインが不均一に分散していた。画像解析ソフト「Scion Image」を用いて分散ドメインの平均粒子径を計測した結果を表3に示す。さらに詳細に相構造を観察したが、該分散ドメイン以外の構造は確認できなかった。また、小角X線散乱測定および光散乱測定を行ったが、均一な構造に由来する散乱ピークは観測されなかった。
得られたポリマーアロイを、加熱プレス(240℃、1.5MPa)によってシート化(厚み0.2mm)し、得られたシートの構造を実施例5と同様の方法により測定した結果を表3に示す。該シートを用い、実施例5と同様に機械物性を測定した。その結果、表3に示す通り、比較例5では実施例5と比較し、耐熱性、エタノール浸漬後の引張衝撃性が大きく低下していることがわかった。
Figure 0005728799
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本発明におけるポリマーアロイは、耐衝撃性を高めた構造材料、耐熱樹脂材料、耐薬品性を高めた構造材料に好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイにおいて、該ポリマーアロイを構成する熱可塑性樹脂成分のうち少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分の前駆体がビニル単量体(A)であり、該ビニル単量体を残りの熱可塑性樹脂成分(B1)および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)共存下で化学反応させることでスピノーダル分解を誘発させることにより得られるポリマーアロイであって、前記ビニル単量体(A)が、メタクリル酸またはそのエステル、アクリル酸またはそのエステル、カルボン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種であり、前記熱可塑性樹脂成分(B1)が、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステル、ポリカルボン酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミドおよびセルロース類から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂および/またはその共重合体であり、前記熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)が、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィドおよびポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂成分の前駆体であり、マトリックス中に平均粒子径0.3μm以上5μm未満の分散ドメインaが存在し、該分散ドメインa中に構造周期0.001μm以上0.1μm未満の両相共連続構造および/または粒子間距離0.001μm以上0.1μm未満の分散構造を有し、前記ポリマーアロイを構成する成分中でポリマーアロイ中の体積分率の多い成分が分散ドメイン相を形成していることを特徴とするポリマーアロイ。
  2. 前記ポリマーアロイにおいて、マトリックス中に構造周期0.001μm以上0.1μm未満の両相共連続構造および/または粒子間距離0.001μm以上0.1μm未満の分散構造を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマーアロイ。
  3. 化学反応前にはビニル単量体(A)と残りの熱可塑性樹脂成分(B1)および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)の少なくとも一つが相溶し、化学反応後に相分離することを特徴とする請求項1または2に記載のポリマーアロイ。
  4. 前記化学反応がラジカル重合反応であり、ポリマー生成に伴う少なくとも2段階の液―液相分離を経て得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーアロイ。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーアロイを成形してなる成形品。
  6. 少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイを製造する際に、前記ポリマーアロイを構成する熱可塑性樹脂成分のうち少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分の前駆体がビニル単量体(A)であり、該ビニル単量体(A)を残りの熱可塑性樹脂成分(B1)および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)共存下で化学反応させることでスピノーダル分解を誘発させるポリマーアロイの製造方法であって、前記ビニル単量体(A)が、メタクリル酸またはそのエステル、アクリル酸またはそのエステル、カルボン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種であり、前記熱可塑性樹脂成分(B1)が、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステル、ポリカルボン酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミドおよびセルロース類から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂および/またはその共重合体であり、前記熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)が、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィドおよびポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂成分の前駆体であることを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
  7. ビニル単量体(A)と残りの熱可塑性樹脂成分(B1)および/または熱可塑性樹脂成分の前駆体(B2)の少なくとも一つが相溶し、化学反応後に相分離することを特徴とする請求項6に記載のポリマーアロイの製造方法。
  8. 前記化学反応がラジカル重合反応であり、ポリマー生成に伴う少なくとも2段階の液―液相分離を経て得られることを特徴とする請求項6または7に記載のポリマーアロイの製造方法。
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