JP5565523B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Description
本発明は、スチレン系樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物ならびにその成形品に関するものである。
ABS樹脂に代表されるスチレン系樹脂は、すぐれた機械的性質、成形加工性および電気絶縁性を有することから、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。
一方、ポリエステル系樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂は機械的強度や透明性、ガスバリア性に優れているために各種ボトル、食品トレー、シートなどに広く用いられている。
PET樹脂は延伸すれば耐衝撃性が高くなり、結晶化すれば耐熱性も高くなるという特性を有しているために、上記用途での使用比率は高いものの、射出成形法では耐衝撃性が低いなどの欠点が顕著に出てしまい、射出成形製品としての使用比率は極めて低いのが現状である。
また、近年、環境問題への取組みの関心の高さからグリーン購入法や米国電子機器基準(EPEAT)など再生樹脂を活用するための規格が国内外を問わず制定されており、本背景からも再生樹脂もしくは再生樹脂を活用した樹脂組成物の需要は高まりつつある。中でも、PET樹脂製品は廃棄量も年々増加の一途を辿っており、それら廃棄物の回収、再利用が注目されている。
そこで、PET樹脂の前記射出成形製品としての欠点を解消することが出来れば、バージン材利用用途のみならず、再利用用途も拡がり、使用量の増大が期待できる。
課題となっている耐衝撃性の改良手段のひとつとしては、前述のABS樹脂とのポリマーアロイ化が挙げられる。特許文献1では再生PET樹脂にABS樹脂をブレンドすることで耐衝撃性を改良するための組成および製造条件を開示している。しかしながら、元来よりPET樹脂とABS樹脂の相溶性は良好ではないことが知られており、本特許文献記載の方法で得られる組成物においては、必ずしも良好な耐衝撃性が得られるわけではなかった。
そこで、PET樹脂とABS樹脂とのアロイ組成物の相溶性向上に関する研究は古くから行われている。特許文献2ではエポキシ基を有するアクリロニトリル・スチレン共重合体を改質剤として用いる例が開示されており、特許文献3ではアクリロニトリルおよびスチレンの他にエポキシ基を有するビニル系単量体をジエン系ゴムにグラフト共重合させることで相溶性向上を図る方法が提案されている。しかしながら、これらの手段では機械的強度の向上は成し得るものの、押出機内あるいは成形機内で架橋物が生成され表面光沢性が損なわれる場合があった。
一方、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体は再生PET樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなる組成物(特許文献4)、およびポリ乳酸樹脂とABS樹脂からなる組成物(特許文献5)に添加された例はあるものの、PET樹脂とABS樹脂からなる組成物に相溶性向上および良好な表面光沢性をもたらすために添加された例はない。
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消し、機械特性、表面光沢性に優れたスチレン系樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(II)からなる樹脂組成物100重量部に対し、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を0.01〜1重量部を配合することにより、上記課題が解決できることを見出した。
即ち本発明は、以下の(1)〜(5)に記載するとおりの熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に係るものである。
(1)スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(II)からなる樹脂組成物100重量部に対し、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を0.01〜1重量部含み、スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(II)の重量比が50:50〜99:1であり、スチレン系樹脂(I)が、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)および共重合可能なその他のビニル系単量体(d)から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)ならびに芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)および共重合可能なその他のビニル系単量体(d)から選ばれた1種以上の単量体を重合してなるビニル系(共)重合体(B)を、重量比10:90〜50:50の割合で含む組成物である、熱可塑性樹脂組成物。
(2)エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の重量平均分子量が2,000〜20,000である、(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)のエポキシ価が0.5〜4.0(meq/g)である、(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)としてポリエチレンテレフタレート樹脂成形品のリサイクル材を全部または一部使用する、(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
(1)スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(II)からなる樹脂組成物100重量部に対し、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を0.01〜1重量部含み、スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(II)の重量比が50:50〜99:1であり、スチレン系樹脂(I)が、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)および共重合可能なその他のビニル系単量体(d)から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)ならびに芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)および共重合可能なその他のビニル系単量体(d)から選ばれた1種以上の単量体を重合してなるビニル系(共)重合体(B)を、重量比10:90〜50:50の割合で含む組成物である、熱可塑性樹脂組成物。
(2)エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の重量平均分子量が2,000〜20,000である、(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)のエポキシ価が0.5〜4.0(meq/g)である、(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(4)ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)としてポリエチレンテレフタレート樹脂成形品のリサイクル材を全部または一部使用する、(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
本発明により、機械特性、表面光沢性に優れたスチレン系樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物およびその成形品が得られる。
以下、本発明を実施するための形態について、具体的に記載する。
本発明におけるスチレン系樹脂(I)とは、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)および共重合可能なその他のビニル系単量体(d)から選ばれた1種以上の単量体からなるビニル系(共)重合体(B)や、ビニル系(共)重合体(B)にゴム質重合体(a)を加えたものを指す。
スチレン系樹脂(I)がビニル系(共)重合体(B)にゴム質重合体(a)を加えたものである場合、ビニル系(共)重合体(B)とゴム質重合体(a)の相溶性の観点から、ゴム質重合体(a)に対し、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)および共重合可能なその他のビニル系単量体(d)から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)と、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)および共重合可能なその他のビニル系単量体(d)から選ばれた1種以上の単量体からなるビニル系(共)重合体(B)を含む組成物であることが好ましい。なお、グラフト共重合体(A)に配合された単量体混合物は、そのすべてが、ゴム質重合体(a)と結合してグラフト化している必要はなく、単量体混合物の単量体同士で結合し、グラフト化していない重合体として含まれていても良い。しかし、グラフト率は好ましくは、10〜100%、より好ましくは20〜50%である。
グラフト共重合体(A)に用いられるゴム質重合体(a)の配合量は特に規定はないが、好ましくは10〜80重量部、より好ましくは20〜70重量部、更に好ましくは35〜65重量部である。また、グラフト共重合体(A)における単量体混合物の配合量は好ましくは20〜90重量部、より好ましくは30〜80重量部、更に好ましくは35〜65重量部である。ゴム質重合体(a)および単量体混合物をこれらの割合で使用することにより、良好な耐衝撃性及び成形加工性を得ることができる。また、グラフト共重合体(A)に配合される単量体混合物の割合については特に制限はないが、芳香族ビニル系単量体(b)は20〜99重量%、シアン化ビニル系単量体(c)は1〜40重量%、およびこれらと共重合可能なその他のビニル系単量体(d)は0〜79重量%の割合で使用することが好ましく、良好な耐衝撃性及び成形加工性を得ることができる。
ビニル系(共)重合体(B)に配合される単量体混合物の割合については特に規定はないが、好ましくは芳香族ビニル系単量体(b)20〜99重量%、シアン化ビニル系単量体(c)1〜40重量%、およびこれらと共重合可能なその他のビニル系単量体(d)0〜79重量%の割合で使用することが好ましく、良好な耐衝撃性及び成形加工性を得ることができる。
グラフト共重合体(A)とビニル系(共)重合体(B)との混合比は、(A):(B)の重量比が10:90〜50:50の割合であることが好ましく、より好ましくは20:80〜40:60である。グラフト共重合体(A)の割合が上記の範囲未満もしくはビニル系(共)重合体(B)の割合が上記の範囲を越えると、衝撃強度が低下する傾向となる。また、グラフト共重合体(A)の割合が上記の範囲を越えると、流動性が低下する傾向となる。
グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の還元粘度(ηsp/c)は特に制限はないが、0.1〜0.6dl/gが好ましい。これ以外の場合、耐衝撃性が低下し、或いは溶融粘度が上昇して成形性が悪くなりやすい。さらに好ましくは0.3〜0.5dl/gである。
ビニル系(共)重合体(B)の還元粘度(ηsp/c)は特に制限はないが、0.1〜0.6dl/gが好ましい。これ以外の場合、耐衝撃性が低下し、或いは溶融粘度が上昇して成形性が悪くなりやすい。さらに好ましくは0.3〜0.5dl/gである。
ゴム質重合体(a)は特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴム等が使用できる。具体例として、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)等が挙げられる。これらのゴム質重合体(a)は、1種または2種以上の混合物で使用される。これらのゴム質重合体(a)のうち、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、エチレン−プロピレンラバーが耐衝撃性の点で好ましく用いられる。
ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は特に制限はないが、耐衝撃性等の機械的強度、成形品外観のバランスから、0.1〜0.5μmが好ましい。0.1μm未満では得られる熱可塑性組成物の衝撃強度が低下することがあり、0.5μmを超えると成形品外観が低下するケースが多くなる。より好ましくは0.15〜0.4μmである。
グラフト共重合体(A)およびビニル系(共)重合体(B)に用いる芳香族ビニル系単量体(b)は特に制限はないが、具体例として、スチレン、α−メチルスチレン、オルソメチルスチレン、パラメチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレンおよびハロゲン化スチレン等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。なかでもスチレン、α−メチルスチレンが好ましく、特に好ましくはスチレンである。
グラフト共重合体(A)およびビニル系(共)重合体(B)に用いるシアン化ビニル系単量体(c)は特に制限はないが、具体例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。なかでもアクリロニトリルが耐衝撃性の点で好ましい。
グラフト共重合体(A)およびビニル系(共)重合体(B)に用いる共重合可能なその他のビニル系単量体(d)は特に制限はないが、具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチルおよび(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等の不飽和カルボン酸エステル、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物およびアクリルアミド等の不飽和アミド化合物に代表される共重合可能なビニル化合物等を挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。なお、ビニル系(共)重合体(B)は複数種類用いることができる。
グラフト共重合体(A)またはビニル系(共)重合体(B)の製造方法は特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等のいずれでもよい。単量体の仕込方法も特に制限はなく、初期一括仕込み、単量体の一部または全てを連続仕込み、あるいは単量体の一部または全てを分割仕込みのいずれの方法を用いてもよい。
本発明で用いられるスチレン系樹脂(I)の具体例としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、AS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ABS樹脂、MAS樹脂、MABS樹脂、MBS樹脂や、これらの樹脂と他樹脂とのアロイなどが挙げられる。
本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂(II)とは、テレフタル酸を酸成分に、エチレングリコールをグリコール成分に用いた、主鎖にエステル結合を有する高分子量の熱可塑性ポリエステル樹脂を指すが、この他に酸成分として、イソフタル酸、アジピン酸、シュウ酸などを、グリコール成分として、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなど、あるいは分子量400〜6000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを20モル%以下用いることもできる。
また、本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂(II)は、成形加工等の熱履歴を受けていないバージン材であってもよく、また、ポリエチレンテレフタレート樹脂成形品のリサイクル材(以下、リサイクル材、と略す。)であってもよいが、資源保護の観点から、リサイクル材を全部または一部として含むことが好ましい。リサイクル材の具体例としては、少なくとも1度ペットボトルなどに成形された成形品を回収して得られる廃材や、シート形状物の成形の際のトリミング工程で発生する端材が挙げられ、リサイクル材の形状の具体例としては、フレーク状や粉末状、あるいは異物除去のためにリペレット化したものが具体例として挙げられる。また、リサイクル材はガラス繊維などの強化材が混入していないものが好ましい。
本発明におけるスチレン系樹脂(I)とポリエチレンテレフタレート樹脂(II)からなる樹脂組成物におけるスチレン系樹脂(I)とポリエチレンテレフタレート樹脂(II)の重量比は特に限定されないが、本発明の効果を奏するにあたっては、該樹脂組成物の合計量100重量部において、スチレン系樹脂(I)とポリエチレンテレフタレート樹脂(II)が、重量比50:50〜99:1の割合であるのが好ましく、より好ましくは重量比55:45〜90:10の割合である。スチレン系樹脂(I)の割合が上記の範囲未満もしくはポリエチレンテレフタレート樹脂(II)の割合が上記の範囲を超えると、機械的強度が低下することがある。
本発明におけるエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)は、その製造方法としては特に制限はなく、たとえばエポキシ基を有する(メタ)アクリルエステルモノマー、(メタ)アクリル酸等のエポキシ基を有さないモノマーおよびスチレンを共重合させる方法や、(メタ)アクリル酸等のエポキシ基を有さないモノマーとスチレンとを共重合させた後に、該共重合体中の(メタ)アクリル酸単位のカルボキシル基にエポキシ基を有するアルコール類を縮合反応により付加させる方法が挙げられる。
エポキシ基を有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を共重合により製造する際に使用できるエポキシ基を有する(メタ)アクリルエステルモノマーとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられるが、グリシジルメタクリレートが好ましい。
(メタ)アクリル酸等のエポキシ基を有さないモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチルおよび(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく用いられる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の重量平均分子量は、流動性、ブリードアウトの抑制の点から2,000〜20,000であることが好ましく、5,000〜15,000がより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)のエポキシ価は、機械的強度、表面光沢性の点から0.5〜4.0(meq/g)であることが好ましく、1.0〜3.5(meq/g)がより好ましい。なお、ここでいうエポキシ価は、塩酸−ジオキサン法で測定した値である。
エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の重合方法は特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、縣濁重合、乳化重合などの公知の重合方法を用いることができ、150℃以上の高温で、かつ加圧条件(好ましくは1MPa以上)で、短時間(好ましくは5分〜30分)で連続塊状重合する方法が、重合率が高い点、不純物や硫黄含有の原因となる重合開始剤や連鎖移動剤および溶媒を使用しない点からより好ましい。
本発明で用いるエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の配合量は、スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(II)からなる樹脂組成物100重量部に対し0.01〜1重量部であり、好ましくは0.03〜0.7重量部であり、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の添加量が上記の範囲未満では機械的強度が十分でなく、逆に上記の範囲を超えると得られる熱可塑性樹脂組成物の表面光沢性が悪化する傾向が招かれるため好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(I)〜(III)を配合することにより表面光沢性に優れることを特徴の一つとしている。ここでいう表面光沢性とは、JIS Z 8741(1997年)の規定に準拠して測定される数値によって評価されるものであり、特許文献4(特開2005−200534号公報)に言うところの表面性(ブツの評価)とは評価内容を異にするものである。本発明の熱可塑性樹脂組成物では90以上、好ましくは95以上の表面光沢性を有しているため、外観製品として好ましく使用することができる。
その他、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲でポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレートおよびポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂および各種エラストマー類等を配合してもよい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスビーズ、ガラスフレーク、アルミナ、アルミナ繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、ステンレス繊維、ウィスカ、チタン酸カリ繊維、ワラステナイト、アスベスト、ハードクレー、焼成クレー、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウムおよび鉱物などの無機充填材や、ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系又は含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系又はサリシレート系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、各種難燃剤、難燃助剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、リン酸、リン酸1ナトリウム、無水マレイン酸、無水コハク酸などの中和剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、カーボンブラック、顔料、染料などの着色剤、などの通常の添加剤を1種以上を配合してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、(I)〜(III)や前述のその他の成分を、例えばV型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローターおよびヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて予備混合した組成物であってもよいが、通常、前記予備混合物を均一に溶融混合した混合物である場合が多い。このような混合物は、前記予備混合物に混練手段を用い、例えば、好ましくは230〜300℃、より好ましくは250〜285℃程度の温度で溶融混練し、ペレット化することにより得ることができる。具体的な溶融混練、ペレット化の手段としては、種々の溶融混合機、例えば、ニーダー、一軸および二軸押出機などを用いて樹脂組成物を溶融して押出し、ペレタイザによりペレット化する方法が挙げられる。
上記によって得られた本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形およびガスアシスト成形などの現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形することができ、成形方法自体は特に制限されるものではない。
以下、本発明を実施例および比較例にて詳細に説明するが、これをもって本発明を制限するものではない。
(1)重量平均ゴム粒子径
「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法によって求めた。すなわち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求めた。
「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法によって求めた。すなわち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求めた。
(2)グラフト率
グラフト共重合体所定量(m)にアセトンを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離後、不溶分を濾取し、この不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100
ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有率である。
グラフト共重合体所定量(m)にアセトンを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離後、不溶分を濾取し、この不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100
ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有率である。
(3)還元粘度[ηsp/c]
サンプル1gにアセトン200mlを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を60℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml(メチルエチルケトン、30℃)に調整し、ウベローデ粘度計を用い[ηsp/c]を測定した。
サンプル1gにアセトン200mlを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を60℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml(メチルエチルケトン、30℃)に調整し、ウベローデ粘度計を用い[ηsp/c]を測定した。
(4)極限粘度[η]
サンプル1gをジクロロメタン100cm3に均一溶解させ、ウベローデ粘度計を用い比粘度[ηsp]を測定した。更に濃度を変えて同様に比粘度を測定し、濃度[c]と[ηsp/c]とをプロットしたグラフを濃度ゼロ側へ外挿した値を極限粘度[η]とした。即ち、η=limηsp/c(c→0)より算出した。
サンプル1gをジクロロメタン100cm3に均一溶解させ、ウベローデ粘度計を用い比粘度[ηsp]を測定した。更に濃度を変えて同様に比粘度を測定し、濃度[c]と[ηsp/c]とをプロットしたグラフを濃度ゼロ側へ外挿した値を極限粘度[η]とした。即ち、η=limηsp/c(c→0)より算出した。
(5)引張強度、引張伸度
ISO 527(1993年)の規定に準拠し、速度50mm/min、23℃、50%RHの条件で測定した。
ISO 527(1993年)の規定に準拠し、速度50mm/min、23℃、50%RHの条件で測定した。
(6)シャルピー衝撃強度
ISO 179(2000年)の規定に準拠し、Vノッチ入り(残り幅8.0mm)、23℃、50%RHの条件で測定した。
ISO 179(2000年)の規定に準拠し、Vノッチ入り(残り幅8.0mm)、23℃、50%RHの条件で測定した。
(7)表面光沢性
JIS Z 8741(1997年)の規定に準拠し、入射角および反射角が60°の条件で測定した。
JIS Z 8741(1997年)の規定に準拠し、入射角および反射角が60°の条件で測定した。
[参考例1]グラフト共重合体(A)の製造方法
窒素置換した反応器に、純水120重量部、ブドウ糖0.5重量部、ピロリン酸ナトリウム0.5重量部、硫酸第一鉄0.005重量部およびポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.3μm、ゲル含有率85%)60重量部(固形分換算)を仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始としてモノマー(スチレン30重量部およびアクリロニトリル10重量部)およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合物を5時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を7時間かけて連続滴下し、反応を完結させた。得られたスチレン系共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(A)を得た。このスチレン系グラフト共重合体(A)のグラフト率は35%、アセトン可溶分の還元粘度ηsp/cは0.35dl/gであった。
窒素置換した反応器に、純水120重量部、ブドウ糖0.5重量部、ピロリン酸ナトリウム0.5重量部、硫酸第一鉄0.005重量部およびポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.3μm、ゲル含有率85%)60重量部(固形分換算)を仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始としてモノマー(スチレン30重量部およびアクリロニトリル10重量部)およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合物を5時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を7時間かけて連続滴下し、反応を完結させた。得られたスチレン系共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(A)を得た。このスチレン系グラフト共重合体(A)のグラフト率は35%、アセトン可溶分の還元粘度ηsp/cは0.35dl/gであった。
[参考例2]ビニル系(共)重合体(B)の製造方法
単量体蒸気の蒸発還流用コンデンサーおよびヘリカルリボン翼を有する2m3の完全混合型重合槽と、単軸押出機型予熱機と、2軸押出機型脱モノマー機および脱モノマー機の先端から1/3長のバレル部にタンデムに接続した加熱装置を有する2軸押出機型フィーダーとからなる連続式塊状重合装置を用いて、次のように、共重合と樹脂成分の混合を実施した。
単量体蒸気の蒸発還流用コンデンサーおよびヘリカルリボン翼を有する2m3の完全混合型重合槽と、単軸押出機型予熱機と、2軸押出機型脱モノマー機および脱モノマー機の先端から1/3長のバレル部にタンデムに接続した加熱装置を有する2軸押出機型フィーダーとからなる連続式塊状重合装置を用いて、次のように、共重合と樹脂成分の混合を実施した。
まず、スチレン70.0重量部、アクリロニトリル30.0重量部、n−オクチルメルカプタン0.15重量部および1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.01重量部からなる単量体混合物を、150kg/時で重合槽に連続的に供給し、重合温度130℃、槽内圧0.08MPaに保って連続塊状重合させた。重合槽出における重合反応混合物の重合率は、74〜76%の間に制御した。得られた重合反応生成物を、二軸押出機型脱モノマー機により未反応モノマーをベント口より減圧蒸留回収して、見かけの重合率を99%以上にしてストランド状に吐出してカッターによりペレット化しビニル系(共)重合体(B)を得た。このビニル系(共)重合体(B)の還元粘度ηsp/cは0.53dl/gであった。
[参考例3]ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)
ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)−1
ポリエチレンテレフタレート樹脂のリサイクルペレット(協栄産業株式会社製)を準備した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)−1
ポリエチレンテレフタレート樹脂のリサイクルペレット(協栄産業株式会社製)を準備した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)−2
ポリエチレンテレフタレート樹脂のバージンペレットは、o−クロロフェノール溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.90であるTSB900(東レ株式会社製)を準備した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂のバージンペレットは、o−クロロフェノール溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.90であるTSB900(東レ株式会社製)を準備した。
[参考例4]エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)
エポキシ基を含有したアクリル・スチレン系共重合体(III)−1
モノマー単位としてグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレンを含有する、重量平均分子量が11,000、エポキシ価が1.8meq/gのエポキシ基を含有したアクリル・スチレン系共重合体(商品名:ARUFON UG−4035、東亞合成株式会社製)を準備した。
エポキシ基を含有したアクリル・スチレン系共重合体(III)−1
モノマー単位としてグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレンを含有する、重量平均分子量が11,000、エポキシ価が1.8meq/gのエポキシ基を含有したアクリル・スチレン系共重合体(商品名:ARUFON UG−4035、東亞合成株式会社製)を準備した。
エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)−2
モノマー単位としてグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレンを含有する、重量平均分子量が7,000、エポキシ価が3.5meq/gのエポキシ基を含有したアクリル・スチレン系共重合体(商品名:ジョンクリルADR−4368、BASF社製)を準備した。
モノマー単位としてグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレンを含有する、重量平均分子量が7,000、エポキシ価が3.5meq/gのエポキシ基を含有したアクリル・スチレン系共重合体(商品名:ジョンクリルADR−4368、BASF社製)を準備した。
[参考例5]エポキシ基を含有するアクリロニトリル・スチレン共重合体(IV)
スチレン73重量部、アクリロニトリル26重量部、グリシジルメタクリレート1重量部を懸濁重合して、ビーズ状のエポキシ基を含有したアクリロニトリル・スチレン共重合体を得た。
スチレン73重量部、アクリロニトリル26重量部、グリシジルメタクリレート1重量部を懸濁重合して、ビーズ状のエポキシ基を含有したアクリロニトリル・スチレン共重合体を得た。
[実施例1〜6]
参考例で示したグラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を表1に示した配合比で混合し、ベント付30mm二軸押出機を用いシリンダー設定温度260℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造し、得られた熱可塑性樹脂組成物を105℃熱風乾燥機中で5時間予備乾燥し、住友重機械工業社製電動射出成形機SE50を用いシリンダー温度260℃、金型温度60℃でISO 3167 (2002年)で規定された多目的試験片A形(全長150mm、試験部の幅10mm、厚さ4mm)について成形し、引張強度、引張伸度、シャルピー衝撃強度を測定した。また、角板成形品(厚さ3mm)についても成形し、表面光沢性の測定に用いた。
参考例で示したグラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を表1に示した配合比で混合し、ベント付30mm二軸押出機を用いシリンダー設定温度260℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造し、得られた熱可塑性樹脂組成物を105℃熱風乾燥機中で5時間予備乾燥し、住友重機械工業社製電動射出成形機SE50を用いシリンダー温度260℃、金型温度60℃でISO 3167 (2002年)で規定された多目的試験片A形(全長150mm、試験部の幅10mm、厚さ4mm)について成形し、引張強度、引張伸度、シャルピー衝撃強度を測定した。また、角板成形品(厚さ3mm)についても成形し、表面光沢性の測定に用いた。
[比較例1〜5]
参考例で示したグラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を表2に示した配合比で混合し、実施例と同様の方法でペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。また、比較例5においては、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の代わりに、エポキシ基を含有するアクリロニトリル・スチレン共重合体(IV)を表2に記載の配合比で使用した。得られた熱可塑性樹脂組成物については実施例1〜6に準じて各物性を測定した。
参考例で示したグラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を表2に示した配合比で混合し、実施例と同様の方法でペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。また、比較例5においては、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の代わりに、エポキシ基を含有するアクリロニトリル・スチレン共重合体(IV)を表2に記載の配合比で使用した。得られた熱可塑性樹脂組成物については実施例1〜6に準じて各物性を測定した。
表1、2の結果から、次のことが明らかになった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜6)は、いずれも機械的強度および表面光沢性が均衡して優れていた。
一方、比較例1はエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)が添加されておらず、それぞれ実施例2、4および5と比較して機械的強度が劣るものであった。逆に比較例3および4ではエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)添加量が多く、それぞれ実施例2、6と比較して表面光沢性が劣るものであった。
比較例2ではポリエチレンテレフタレート樹脂(II)の配合比が多く、それぞれ実施例1〜3に比較して機械的強度が劣るものであった。また、比較例5ではエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の代わりに、エポキシ基を含有するアクリロニトリル・スチレン共重合体(IV)を使用したが、実施例2、4および5と比較して表面光沢性が劣るものであった。
[実施例7および8、比較例6および7]
参考例で示したグラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を表3に示した配合比で混合し、前記実施例と同様の方法でペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。また、比較例7においては、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の代わりに、エポキシ基を含有するアクリロニトリル・スチレン共重合体(IV)を表3に記載の配合比で使用した。得られた熱可塑性樹脂組成物については前記実施例に準じて各物性を測定した。
参考例で示したグラフト共重合体(A)、ビニル系(共)重合体(B)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を表3に示した配合比で混合し、前記実施例と同様の方法でペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。また、比較例7においては、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の代わりに、エポキシ基を含有するアクリロニトリル・スチレン共重合体(IV)を表3に記載の配合比で使用した。得られた熱可塑性樹脂組成物については前記実施例に準じて各物性を測定した。
表3の結果から、次のことが明らかになった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例7および8)は、いずれも機械的強度および表面光沢性が均衡して優れていた。
一方、比較例6はエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)が添加されておらず、それぞれ実施例7および8と比較して機械的強度が劣るものであった。また、比較例7ではエポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の代わりに、エポキシ基を含有するアクリロニトリル・スチレン共重合体(IV)を使用したが、実施例7および8と比較して表面光沢性が劣るものであった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は機械特性、表面光沢性に優れるため、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類など種々の用途に用いることができる。具体的には、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品、VTR部品、テレビ枠、台座、バックキャビ等のテレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどが挙げられ、これら各種の用途にとって極めて有用である。
Claims (5)
- スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(II)からなる樹脂組成物100重量部に対し、エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)を0.01〜1重量部含み、スチレン系樹脂(I)およびポリエチレンテレフタレート樹脂(II)の重量比が50:50〜99:1であり、スチレン系樹脂(I)が、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)および共重合可能なその他のビニル系単量体(d)から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A)ならびに芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)および共重合可能なその他のビニル系単量体(d)から選ばれた1種以上の単量体を重合してなるビニル系(共)重合体(B)を、重量比10:90〜50:50の割合で含む組成物である、熱可塑性樹脂組成物。
- エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)の重量平均分子量が2,000〜20,000である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- エポキシ基を含有するアクリル・スチレン系共重合体(III)のエポキシ価が0.5〜4.0(meq/g)である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ポリエチレンテレフタレート樹脂(II)としてポリエチレンテレフタレート樹脂成形品のリサイクル材を全部または一部使用する、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、成形品。
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