JP2016132718A - 樹脂組成物及び樹脂成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】得られる樹脂成形体の面衝撃強度が向上する樹脂組成物及び当該樹脂組成物を含む樹脂成形体を提供する。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂と、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体と、を含み、前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量に対して、前記ポリスチレン系樹脂の含有量は10質量%以上40質量%以下であり、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量は60質量%以上90質量%以下であり、前記グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の含有量は、前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して、3質量%以上20質量%以下である樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物及び樹脂成形体に関する。
従来、樹脂組成物としては種々のものが提供され、各種用途に使用されている。例えば家電製品や自動車の各種部品、筐体等の樹脂成形体に使用されたり、また事務機器、電子電気機器の筐体などの樹脂成形体に使用されたりしている。
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、耐熱性などに優れ、良好な成形流動性を示す樹脂であり、また、ポリスチレン系樹脂は、安価で成形性および成形時の寸法安定性に優れた樹脂であり、これらは、機械、自動車、電気、電子などの分野における部品、筐体等の樹脂成形体などとして広く用いられている。
近年、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物から得られる樹脂成形体の面衝撃強度の向上が求められている。
例えば、特許文献1には、(A−1)スチレン系樹脂、(A−2)芳香族ポリエステル系樹脂、(A−3)ポリアミド系樹脂、(A−4)ポリカーボネート系樹脂及び(A−5)ポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれる2以上の熱可塑性樹脂と、(B)ホスフィン酸塩と、を含有する樹脂組成物が開示されている。
例えば、特許文献2には、(A)飽和ポリエステル、(B)ポリスチレン系樹脂、(C)グラフト変性ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物が開示されている。
特開2001−335699号公報 特開平8−259772号公報
本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレート樹脂と、ポリスチレン系樹脂とからなる樹脂組成物と比較して、得られる樹脂成形体の面衝撃強度が向上する樹脂組成物及び当該樹脂組成物を含む樹脂成形体を提供することにある。
請求項1に係る発明は、ポリスチレン系樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂と、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体と、を含み、前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量に対して、前記ポリスチレン系樹脂の含有量は10質量%以上40質量%以下であり、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量は60質量%以上90質量%以下であり、前記グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の含有量は、前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して、3質量%以上20質量%以下であり、前記グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体は、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位と、エチレン単位とから構成されるポリエチレン系共重合の主鎖に重合性ビニル単量体をグラフト重合した共重合体である樹脂組成物である。
請求項2に係る発明は、前記グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体における前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が5質量%以上20質量%以下であり、前記ポリエチレン系共重合体のガラス相転移点が0℃以下である請求項1に記載の樹脂組成物である。
請求項3に係る発明は、前記重合性ビニル単量体がスチレンである請求項1又は2に記載の樹脂組成物である。
請求項4に係る発明は、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の酸価が10eq/t以上15eq/t以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物である。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂成形体である。
請求項1に係る発明によれば、ポリスチレン系樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂とからなる樹脂組成物と比較して、得られる樹脂成形体の面衝撃強度が向上する樹脂組成物が提供される。
請求項2に係る発明によれば、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体におけるグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が5質量%未満又は20質量%を超える場合と比較して、得られる樹脂成形体の面衝撃強度がより向上する樹脂組成物が提供される。
請求項3に係る発明によれば、ポリエチレン系共重合の主鎖にグラフト重合される重合性ビニル単量体がブチルアクリレート及びメチルメタアクリレートである場合と比較して、得られる樹脂成形体の面衝撃強度がより向上する樹脂組成物が提供される。
請求項4に係る発明によれば、ポリエチレンテレフタレート樹脂の酸価が10eq/t未満、又は15eq/tを超える場合と比較して、得られる樹脂成形体の面衝撃強度がより向上する樹脂組成物が提供される。
請求項5に係る発明によれば、ポリスチレン系樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂とからなる樹脂組成物により得られる樹脂成形体と比較して、面衝撃強度が向上した樹脂成形体が提供される。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
[樹脂組成物]
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂と、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体と、を含む樹脂組成物である。そして、当該樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量に対して、ポリスチレン系樹脂の含有量は10質量%以上40質量%以下であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量は60質量%以上90質量%以下であり、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の含有量は、ポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して3質量%以上20質量%以下である。そして上記グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体は、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位と、エチレン単位とから構成されポリエチレン系共重合体の主鎖に重合性ビニル単量体をグラフト重合した共重合体である。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂とからなる樹脂組成物と比較して、得られる樹脂成形体の面衝撃強度が向上する。このメカニズムについては明らかではないが、以下の理由が推察される。
通常、相対的に含有量の多いポリエチレンテレフタレート樹脂と相対的に含有量の少ないポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物を成形した場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂が海に、ポリスチレン系樹脂が島となる海島構造が形成される。そして、このような海島構造の成形体に衝撃が加えられた場合における破壊の起点は、主に島(ポリスチレン)と海(ポリエチレンテレフタレート樹脂)の界面等であると考えられている。本実施形態の樹脂組成物では、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端基とグリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体のグリシジル基とが反応し、ポチエチレンテレフタレートの高分子量化が図られると共に、上記グラフト共重合体中の重合性ビニル単量体が、ポリスチレン系樹脂等との相溶性を有するため、ポリスチレン系樹脂が樹脂組成物中に分散されて、偏在が抑制されると考えられる。その結果、海と島の界面の強度が向上すると考えられる。また、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合自体は、冷却によりゴム状の弾性体を有するエラストマーとして機能すると考えられる。これらのことが、本実施形態の樹脂組成物から得られる樹脂成形体の面衝撃強度の向上に寄与すると考えられている。
以下、本実施形態に係る樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
<ポリスチレン系樹脂>
ポリスチレン系樹脂は、スチレン由来の構成単位を含む重合体であれば特に制限されるものではなく、スチレンの単独重合体でもよいし、スチレンと共重合する炭素間二重結合を有する化合物の共重合体等でもよい。
ポリスチレン系樹脂は、例えば、スチレンの単独重合体である汎用ポリスチレン(GPPS)、GPSSにブタジエン等のゴムを添加した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレンとアクリロニトリルを共重合させたスチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂の含有量は、ポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量に対して10質量%以上40質量%以下であれば特に制限されるものではないが、例えば、20質量%以上30質量%以下であることが好ましい。ポリスチレン系樹脂の含有量が、10質量%未満又は40質量%を超える場合、上記範囲を満たす場合と比較して、樹脂の成型流動性が低下する等して、樹脂成形体の面衝撃強度が低下する場合がある。
ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は、例えば、1000以上100000以下であることが好ましく、5000以上50000以下であることがより好ましい。ポリスチレン系樹脂の数平均分子量は、1000以上50000以下であることが好ましく、5000以上10000以下であることがより好ましい。ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量が1000未満であり数平均分子量が1000未満であると、樹脂組成物の流動性が過剰になり、樹脂成形体の加工性が低下する場合があり、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量が100000を超え、数平均分子量が50000を超えると、樹脂組成物の流動性が低下し、樹脂成形体の加工性が低下する場合がある。
重量平均分子量及び数平均分子量の測定は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒で行われる。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して算出される。重量平均分子量及び数平均分子量の測定については、以下、同様である。
<ポリエチレンテレフタレート樹脂>
ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量は、ポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量に対して60質量%以上90質量%以下であれば特に制限されるものではないが、例えば、70質量%以上80質量%以下であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が、60質量%未満又は90質量%を超える場合、上記範囲を満たす場合と比較して、樹脂の成型流動性が低下する等して、樹脂成形体の面衝撃強度が低下する場合がある。
本実施形態のポリエチレンテレフタレート樹脂の重量平均分子量は、例えば、5000以上100000以下であることが好ましい。また、本実施形態のポリエチレンテレフタレート樹脂の数平均分子量は、例えば、5000以上50000以下であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂の重量平均分子量が5000未満であり数平均分子量が5000未満の場合、上記範囲を満たしている場合と比較して、樹脂組成物の流動性が高くなり、樹脂成形体の加工性が低下する場合がある。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の重量平均分子量が100000を超え、数平均分子量が50000を超える場合、上記範囲を満たしている場合と比較して、樹脂組成物の流動性が低くなり、樹脂成形体の加工性が低下する場合がある。
本実施形態のポリエチレンテレフタレート樹脂の酸価は、10eq/t以上15eq/t以下であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂の酸価が10eq/t以上15eq/t以下の場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂の酸価が10eq/t未満の場合と比較して、グリシジル基と反応する末端基が多いため、ポリエチレンテレフタレート樹脂の高分子量化が図られ、樹脂成形体の面衝撃強度がより向上すると考えられる。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の酸価が15eq/tを超える場合と比較して、グリシジル基と過剰に反応することが抑制され、ポリエチレンテレフタレート成分のゲル化が抑制されると考えられる。そして、ポリエチレンテレフタレート成分のゲル化が抑制されることで、樹脂組成物の成形流動性の低下が抑制されるため、面衝撃強度がより向上すると考えられる。ポリエチレンテレフタレートの酸価は、固相重合により調整される。なお、酸化の測定方法については実施例の欄で説明する。
本実施形態のポリエチレンテレフタレート樹脂は、市場から回収した回収ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、リサイクルPET樹脂と呼ぶ場合がある)を含むことが好ましい。リサイクルPET樹脂は、市場に出る前のPET樹脂と比較して、加水分解が進行しているため、10eq/t以上15eq/t以下の酸価を有するPET樹脂となり易い。このため、樹脂成形体の面衝撃強度が向上すると考えられる。
リサイクルPET樹脂は、例えば、PET樹脂の樹脂成形体を市場より回収し、乾式若しくは湿式破砕機などの破砕機などを用いて粉砕することにより生成される。リサイクルPET樹脂の含有量は、例えば、樹脂組成物中に含まれる芳香族ポリエステル樹脂(B)の30%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。リサイクルPET樹脂の含有量が30%未満の場合、当該範囲を満たさない場合と比較して、樹脂成形体の引張破断伸度が低下する場合がある。
<グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体>
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体は、エチレン単位とグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位とから構成されるポリエチレン系共重合体の主鎖に重合性ビニル単量体をグラフト重合した共重合体である。グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の含有量は、上記ポリスチレン系樹脂及び上記ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して、3質量%以上20質量%以下であれば特に制限されるものではないが、例えば、5質量%以上12質量%以下であることが好ましい。グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の含有量が、3質量%未満である場合、上記範囲を満たす場合と比較して、ポリスチレンの相溶性が低下して、樹脂組成物中にポリスチレンが偏在する等して、樹脂成形体の面衝撃強度が低下する場合がある。また、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の含有量が、20質量%を超える場合、上記範囲を満たす場合と比較して、樹脂の成型流動性が低下する等して、樹脂成形体の面衝撃強度が低下する場合がある。
上記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、(メタ)アクリルグリシジルエーテル、2−メチルプロペニルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、グリシジルシンナメート、イタコン酸グリシジルエステル及びN−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル]メタクリルアミド等のモノマーから誘導される構成単位が挙げられる。なお「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタアクリルを意味する。
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体におけるグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は5質量%以上20質量%以下であり、主鎖であるポリエチレン系共重合体のガラス相転移点が0℃以下であることが好ましい。グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体におけるグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が5質量%未満であると、上記範囲を満たす場合と比較して、ポリエチレンテレフタレート樹脂の高分子量化が図られず、また、20質量%を超えると、上記範囲を満たす場合と比較して、樹脂組成物の流動性が低下し、樹脂成形体の加工性が低下する場合がある。また、主鎖であるポリエチレン系共重合体のガラス相転移点が0℃を超えると、ガラス相転移点が0℃以下の場合と比較して、得られる樹脂成形体の弾性が低下する場合がある。
ポリエチレン系共重合体のガラス相転移点とは、以下のようにして測定されるガラス相転移点を意味する。すなわち、示差熱量測定装置((株)島津製作所製、示唆差走査熱量計 DSC−60)にて毎分10℃の昇温速度条件で熱量スペクトルを測定し、ガラス相転移に由来するピークから接線法により求めた2つのショルダー値の中間値(Tgm)をガラス相転移点とする。
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の製造方法の一例を説明する。例えば、まず、エチレン単位と、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位を構成するモノマーをリビング重合することで、主鎖となるポリエチレン系共重合体を得る。次に、該ポリエチレン系共重合体に重合性ビニル単量体を加えて、ラジカル重合することにより、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体を得る。なお、上記リビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩存在下でアニオン重合する方法、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として銅化合物の存在下で、ラジカル重合する方法などが挙げられる。
重合性ビニル単量体としては、例えば、エステル系ビニル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、及びシアン化ビニル単量体単位等が挙げられる。エステル系ビニル単量体単位としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、ビニルナフタレン等挙げられる。シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらの中では、ポリスチレン系樹脂との相溶性の点等から、芳香族ビニル単量体が好ましく、特にスチレンが好ましい。
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の重量平均分子量は、例えば、3000以上100000以下であることが好ましい。グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の重量平均分子量が3000未満の場合、上記範囲を満たしている場合と比較して、耐衝撃性が低下する場合があり、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の重量平均分子量が100000を超える場合、上記範囲を満たしている場合と比較して、樹脂組成物への分散性が低下する場合がある。
<その他の成分>
本実施形態における樹脂組成物は、得られる樹脂成形体の面衝撃強度が損なわれない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、加水分解防止剤、酸化防止剤、充填剤等が挙げられる。
加水分解防止剤としては、例えば、カルボジイミド化合物、オキソゾリン系化合物が挙げられる。カルボジイミド化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ナフチルカルボジイミド等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、アミン系、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤等が挙げられる。
充填剤としては、例えば、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土などのクレイ、タルク、マイカ、モンモリナイト等が挙げられる。
[樹脂成形体]
本実施形態に係る樹脂成形体は、前述の本実施形態に係る樹脂組成物を含んで構成されている。例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形などの成形方法により、前述の本実施形態に係る樹脂組成物を成形して、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。本実施形態においては、樹脂成形体における各成分の分散性等の点から、本実施形態の樹脂組成物を射出成形して得られたものであることが好ましい。
前記射出成形は、例えば、日精樹脂工業製「NEX150」、日精樹脂工業製「NEX70000」、東芝機械製「SE50D」等の市販の装置を用いて行う。この際、シリンダ温度としては、ポリスチレン系樹脂等の相溶化の点から、170℃以上280℃以下とすることが好ましい。また、金型温度としては、生産性等の点から、30℃以上120℃以下とすることが好ましい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。特に、電子・電気機器の部品は、高い耐衝撃性及び難燃性が要求される。そして、前述の樹脂組成物により得られる本実施形態の樹脂成形体は、ポリスチレン系樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂とからなる樹脂組成物により得られる樹脂成形体と比較して、面衝撃強度が向上する。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(ポリスチレン系樹脂)
実施例又は比較例で使用したポリスチレン系樹脂(以下、PS樹脂と呼ぶ)は以下の通りである。PS樹脂A−1はPSジャパン社製の汎用ポリスチレン(GPPS)「HF77」であり、PS樹脂A−2はPSジャパン社製の耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)「H8672」であり、PS樹脂A−3はLuen Kee Plastics社製のリサイクルHIPS「LK55」である。
(ポリエチレンテレフタレート樹脂)
実施例又は比較例で使用したポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET樹脂と呼ぶ)は、以下の通りである。PET樹脂B−1は三井化学社製「J125」、PET樹脂B−2は、PET製の繊維由来のリサイクルPET樹脂、PET樹脂B−3は、PET製の飲料ボトル由来のリサイクルPET樹脂であり、PET樹脂B−4は、PET製のフィルム由来のリサイクルPET樹脂である。
表1に、PS樹脂A−1〜A−3のMVR(cm/10min)、及びPET樹脂B−1〜B−4の酸価をまとめた。
<MVR(メルトボリュームレイト)>
MVRは、樹脂の溶融時の流動性を表す数値であり、ISO1133に準拠して測定を行った値である。具体的にはシリンダ内で溶融した樹脂を、温度230℃、2.16kg荷重の条件のもと、シリンダ底部に設置された規定口径のダイスから10分間あたり押し出される樹脂量を測定することにより求められる。
<酸価測定>
PET樹脂の酸価測定を以下の手順で行った。
(試料の調整)
試料を粉砕し、70℃で24時間、真空乾燥を行った後、天秤を用いて0.20±0.0005gの範囲に秤量した。そのときの重量をW(g)とした。試験管にベンジルアルコール10mlと秤量した上記試料を加え、試験管を205℃に加熱したオイルバスに浸し、ガラス棒で攪拌しながら試料を溶解した。溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれA、B、Cとした。次いで、新たに試験管を用意し、ベンジルアルコールのみを入れ、同様の手順で処理し、溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれa、b、cとした。
(滴定)
予めファクターの分かっている0.04mol/l水酸化カリウム溶液(エタノール溶液)を用いて、上記サンプルの滴定を行った。指示薬はフェノールレッドを用い、上記サンプルが黄緑色から淡紅色に変化したところを終点とし、終点時の水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)を求めた。サンプルA、B、Cの滴定量をXA、XB、XC(ml)とし、サンプルa、b、cの滴定量をXa、Xb、Xc(ml)とした。
(酸価の算出)
各溶解時間に対しての滴定量XA、XB、XCを用いて、最小2乗法により、溶解時間0分での滴定量V(ml)を求めた。同様にXa、Xb、Xcを用いて、滴定量V0(ml)を求めた。次いで、次式に従い、酸価を求めた。
酸価(eq/t)=[(V−V0)×0.04×NF×1000]/W
NF:0.04mol/l水酸化カリウム溶液のファクター
W:試料重量(g)
Figure 2016132718
(グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1は日油社製「モディパA4100」であり、グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体の主鎖にビニル単量体としてのスチレンをグラフト重合した共重合体である。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/スチレン/が9/61/30(質量%)である。グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体のガラス相転移点(Tg)は−45℃であった。
(グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−2)
ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ニポロンZ 1P53A)65質量部に対し、グリシジルメタアクリレート5質量部、ジアルキルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサ25B)0.5質量部をヘキシェルミキサーにて均一に混合した。その後、二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35)にて、シリンダ温度220℃で押出し、エチレン/グリシジルメタアクリレート共重合体を得た後、ビニル単量体としてのスチレン30質量部をグラフト重合して、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−2を得た。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/スチレン/が5/65/30(質量%)である。グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体のガラス相転移点(Tg)は−51℃であった。
(グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−3)
グリシジルメタアクリレート20質量部、ポリエチレン40質量部、ジアルキルパーオキサイド0.5質量部を上記C−2と同一の条件で押し出し、エチレン/グリシジルメタアクリレート共重合体を得た後、ビニル単量体としてのスチレン30質量部をグラフト重合して、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−3を得た。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/スチレン/が20/40/30(質量%)である。グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体のガラス相転移点(Tg)は−30℃であった。
(グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−4)
グリシジルメタアクリレート4質量部、ポリエチレン66質量部、ジアルキルパーオキサイド0.5質量部を上記C−2と同一の条件で押し出し、エチレン/グリシジルメタアクリレート共重合体を得た後、ビニル単量体としてのスチレン30質量部をグラフト重合して、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−4を得た。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/スチレン/が4/66/30(質量%)である。グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体のガラス相転移点(Tg)は−51℃であった。
(グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−5)
グリシジルメタアクリレート21質量部、ポリエチレン39質量部、ジアルキルパーオキサイド0.5質量部を上記C−2と同一の条件で押し出し、エチレン/グリシジルメタアクリレート共重合体を得た後、ビニル単量体としてのスチレン30質量部をグラフト重合して、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−5を得た。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/スチレン/が21/39/30(質量%)である。グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体のガラス相転移点(Tg)は−29℃であった。
(グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−6)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−6は日油社製「モディパA4400」であり、グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体の主鎖にスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合した共重合体である。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/アクリロニトリル/スチレン/が9/61/9/21(質量%)である。グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体のガラス相転移点(Tg)は−45℃であった。
(グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−7)
グリシジルメタアクリレート9質量部、ポリエチレン61質量部、ジアルキルパーオキサイド0.5質量部を上記C−2と同一の条件で押し出し、エチレン/グリシジルメタアクリレート共重合体を得た後、アクリロニトリル11質量部、スチレン19質量部をグラフト重合して、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−7を得た。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/アクリロニトリル/スチレン/が9/61/11/19(質量%)である。グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体のガラス相転移点(Tg)は−45℃であった。
(グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−8)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−8は日油社製「モディパA4300」であり、グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体の主鎖にブチルアクリレート及びメチルメタアクリレートをグラフト重合した共重合体である。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/ブチルアクリレート/メチルメタアクリレートが9/61/21/9(質量%)である。グリシジルメタアクリレート/エチレン共重合体のガラス相転移点(Tg)は−45℃であった。
(比較重合体C−9)
比較重合体C−9は日油社製「モディパA1100」であり、エチレン重合体の主鎖にスチレンをグラフト重合した共重合体である。その組成比は、エチレン/スチレンが70/30(質量%)である。エチレン/スチレン共重合体のガラス相転移点(Tg)は−58℃であった。
(比較重合体C−10)
比較重合体C−10はARKEMA製「AX8900」であり、グリシジルメタアクリレート/エチレン/メチルアクリレート共重合体である。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/メチルアクリレートが8/68/24(質量%)であり、ガラス相転移点(Tg)は−33℃であった。
(比較重合体C−11)
グリシジルメタアクリレート8質量部、エチレン62質量部、スチレン24質量部、を混合し、グリシジルメタアクリレート/エチレン/スチレン共重合体を得た。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/スチレンが8/68/24(質量%)であり、ガラス相転移点(Tg)は−33℃であった。
表2に、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1〜C−8及び比較重合体C−9〜C−11の組成をまとめた。
Figure 2016132718
(実施例1)
表3に示す組成(全て質量部にて表示)で、PS樹脂A−2を40質量部と、PET樹脂B−3を60質量部と、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1を6質量部と、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、商品名「Irganox1076」、BASF社製)0.2質量部と、をタンブラーで混合した後、ベント付2軸押出機(日本製鋼所社製:TEX‐30α)にて、シリンダ温度およびダイス温度260℃、スクリュー回転数240rpm、ベント吸引度100MPa、並びに吐出量10kg/hで溶融混練押出しを行った。そして、2軸押出機から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして、ペレットを得た。
得られたペレット状の樹脂組成物を90℃で4時間、熱風乾燥機を用いて乾燥した後、射出成形機(製品名「NEX500」、東芝機械社製)により、シリンダ温度260℃、金型温度60℃で射出成型し、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例2)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1の代わりにグリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−2を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例3)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1の代わりにグリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−3を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例4)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1の代わりにグリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−4を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例5)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1の代わりにグリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−5を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例6)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1の代わりにグリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−6を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例7)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1の代わりにグリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−7を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例8)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1の代わりにグリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−8を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例9)
PS樹脂A−2を10質量部、PET樹脂B−3を90質量部としたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例10)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1を3質量部としたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例11)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1を20質量部としたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例12)
PS樹脂A−2の代わりにPS樹脂A−1を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例13)
PS樹脂A−2の代わりにPS樹脂A−3を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例14)
PET樹脂B−3の代わりにPET樹脂B−2を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例15)
PET樹脂B−3の代わりにPET樹脂B−4を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(実施例16)
PET樹脂B−3の代わりにPET樹脂B−1を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(比較例1)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1の代わりに比較重合体C−9を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(比較例2)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1の代わりに比較重合体C−10を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(比較例3)
グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体C−1の代わりに比較重合体C−11を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
(比較例4)
グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体C−1を添加しなかったこと以外は、実施例1と同じ条件で所定の樹脂性形体(評価用試験片)を得た。
(比較例5)
PS樹脂A−2を50質量部、PET樹脂B−3を50質量部としたこと以外は、実施例1と同じ条件で所定の樹脂性形体(評価用試験片)を得た。
(比較例6)
グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体C−1を21質量部としたこと以外は、実施例1と同じ条件で、所定の樹脂成形体(評価用試験片)を得た。
<評価・試験>
得られた評価用試験片を用いて、以下の評価及び試験を行った。表3に、実施例1〜11の樹脂組成物の組成(全て質量部にて表示)、以下の試験の結果をまとめた。表4に、実施例12〜16の樹脂組成物の組成(全て質量部にて表示)、以下の試験の結果をまとめた。また、表5に、比較例1〜6の樹脂組成物の組成(全て質量部にて表示)、以下の試験の結果をまとめた。
<耐熱性の試験>
試験片に、ASTM D648の試験方法規格で定められた荷重(1.8MPa)を与えた状態で、評価用試験片の温度を上げていき、たわみの大きさが規定の値になる温度(荷重たわみ温度:DTUL)を測定した。これを耐熱温度として評価した。
<引張強度、引張り破断伸度、及び引張り弾性率の試験>
試験片の引張強度、引張り破断伸度、及び引張り弾性率を、JIS K−7113に準じて測定した。尚、成形体として、射出成形により得られたJIS1号試験片(厚さ4mm)を用いた。引張強度の数値が大きいほど、引張強度に優れていることを示し、引張り破断伸度の数値が大きいほど、引張り破断伸度に優れていることを示し、引張り弾性率の数値が大きいほど剛性に優れていることを示す。
<耐衝撃性の試験>
ISO多目的ダンベル試験片をノッチ加工したものを用い、ISO−179に準拠して、デジタル衝撃試験機(東洋精機製、DG−5)により、持ち上げ角度150度、使用ハンマー2.0J、測定数n=10の条件で、MD方向にシャルピー耐衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。シャルピー耐衝撃強度の数値が大きいほど、耐衝撃性に優れていることを示す。
<面衝撃強度の試験>
射出成型により60mm×60mm、厚み2mmの平板を作成し、その平板の中央部に10mm×10mmの角穴を切削加工した試験片を作製した。該試験片の中央部に、直径50mm、重さ500gの鋼球を、高さ0.3m〜1.3mの範囲で落下衝突させ、以下の条件で、面衝撃強度を評価した。この面衝撃強度の試験を各高さで3回行った。なお、1.3mの鋼球の落下高さで○の評価となることが実用上好ましいと言える。
○:試験片の角穴周囲に全く亀裂が発生しない。
△:試験片の角穴周囲に1箇所〜3箇所の亀裂発生。
×:試験片が複数に破断する。
Figure 2016132718
Figure 2016132718
Figure 2016132718
表3〜5から分かるように、PS樹脂と、PET樹脂と、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体とを有する樹脂組成物から得られた実施例1〜16の樹脂成形体は、PS樹脂と、PET樹脂とから構成された樹脂組成物から得られた比較例4の樹脂成形体と比較して、面衝撃強度が向上した。また、PS樹脂およびPET樹脂の合計量に対してPS樹脂の含有量が10質量%以上40質量%以下及びPET樹脂の含有量が60質量%以上90質量%の範囲を満たし、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の含有量がPS樹脂及びPET樹脂の合計量100質量部に対して3質量%以上20質量%以下の範囲を満たす実施例1〜16の樹脂成形体は、上記範囲を満たさない比較例1〜3及び比較例5〜6の樹脂成形体と比較しても、面衝撃強度が向上した。
また、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体におけるグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は5質量%以上20質量%以下である実施例1の樹脂成形体は、上記範囲を満たさない実施例4及び5と比較して、より面衝撃強度が向上した。また、共重合体のグラフト部分である重合性ビニル単量体がスチレンである実施例1の樹脂成形体は、スチレンを用いていない実施例8と比較して、より面衝撃強度が向上した。さらに、酸価が10eq/t以上15eq/t以下であるPET樹脂を用いた実施例1及び14は、上記範囲外のPET樹脂を用いた実施例15及び16と比較して、より面衝撃強度が向上した。

Claims (5)

  1. ポリスチレン系樹脂と、ポリエチレンテレフタレート樹脂と、グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体と、を含み、
    前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量に対して、前記ポリスチレン系樹脂の含有量は10質量%以上40質量%以下であり、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量は60質量%以上90質量%以下であり、
    前記グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体の含有量は、前記ポリスチレン系樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して、3質量%以上20質量%以下であり、
    前記グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体は、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位と、エチレン単位とから構成されるポリエチレン系共重合の主鎖に重合性ビニル単量体をグラフト重合した共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記グリシジル基含有ポリエチレン系グラフト共重合体における前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が5質量%以上20質量%以下であり、
    前記ポリエチレン系共重合体のガラス相転移点が0℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記重合性ビニル単量体がスチレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の酸価が10eq/t以上15eq/t以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする樹脂成形体。
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