JP6848462B2 - 樹脂組成物及び樹脂成形体 - Google Patents
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Description
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂と、グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体及びポリエチレンテレフタレート樹脂の反応物と、前記グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体と未反応のポリエチレンテレフタレート樹脂と、有機リン系難燃剤と、難燃滴下防止剤と、を含む樹脂組成物である。本実施形態に係る樹脂組成物は、電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、ポリカーボネート系樹脂及び未反応のポリエチレンテレフタレート樹脂が連続相、反応物が分散相を形成している。所謂、ポリカーボネート系樹脂及び未反応のポリエチレンテレフタレート樹脂が海、反応物が島となる海島構造を形成している。なお、樹脂組成物を構成する有機リン系難燃剤や難燃滴下防止剤は、連続相(海)及び分散相(島)のうち少なくともいずれか一方に分散している。そして、本実施形態に係る樹脂組成物では、分散相の比表面積が2μm −1 以上となっている。
ポリエチレンテレフタレート樹脂とグリシジル基含有ポリエチレン系共重合体との反応物は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂の末端基と、グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体のグリシジル基とが結合した反応物である。そして、当該反応物は、ポリエチレンテレフタレート樹脂同士が、グリシジル基含有ポリエチレン共重合体を介して結合した状態となるため、グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体と未反応のポリエチレンテレフタレート樹脂と比べて、高分子量化していると考えられる。
ポリカーボネート系樹脂は、芳香族ポリカーボネート、ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂環式ポリカーボネートなどが挙げられる。樹脂成形体の面衝撃強度の点等から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えばビスフェノールA型、Z型、S型、MIBK型、AP型、TP型、ビフェニル型、ビスフェノールA水添加物型のポリカーボネート等が挙げられる。
有機リン系難燃剤としては、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ホスフィン酸塩、及びトリアジン骨格を有するポリリン酸塩等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、合成したものを用いてもよいし市販品を用いてもよい。有機リン系難燃剤の市販品としては、大八化学工業社製の「CR−741」、クラリアント社製の「AP422」、燐化学工業社製の「ノーバエクセル140」等が挙げられる。
難燃滴下防止剤は、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂が挙げられる。難点滴下防止剤により、樹脂成形体の燃焼時の樹脂だれ(ドリップ)が抑えられる。
本実施形態における樹脂組成物は、樹脂組成物を成型する際の流動性(成型流動性)が向上する点で、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を含むことが好ましい。成型流動性が向上するメカニズムは十分に明らかでないが、以下のことが考えられる。樹脂組成物の各原料が溶融混練される際、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)がポリエチレンテレフタレート樹脂中に分子相溶して、分子間の自由体積が増加し滑性が発現するため、樹脂組成物を成型する際の流動性が向上すると考えられる。
本実施形態における樹脂組成物は、得られる樹脂成形体の面衝撃強度及び難燃性が損なわれない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、加水分解防止剤、酸化防止剤、充填剤等が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形体は、前述の本実施形態に係る樹脂組成物を含んで構成されている。例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形などの成形方法により、前述の本実施形態に係る樹脂組成物を成形して、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。本実施形態においては、樹脂成形体における各成分の分散性等の点から、本実施形態の樹脂組成物を射出成形して得られたものであることが好ましい。
実施例又は比較例で使用したポリカーボネート系樹脂(以下、PC樹脂と呼ぶ)は、飲料ボトル由来のリサイクルPC樹脂である。
実施例又は比較例で使用したポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET樹脂と呼ぶ)は、PET製の飲料ボトル由来のリサイクルPET樹脂である。
PC樹脂の末端水酸基濃度(μeq/g)は、PC樹脂1g中に存在するフェノール性末端水酸基の個数を示すものであり、測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88215(1965)に記載の方法)である。
PET樹脂の酸価測定を以下の手順で行った。
試料を粉砕し、70℃で24時間、真空乾燥を行った後、天秤を用いて0.20±0.0005gの範囲に秤量した。そのときの重量をW(g)とした。試験管にベンジルアルコール10mlと秤量した上記試料を加え、試験管を205℃に加熱したオイルバスに浸し、ガラス棒で攪拌しながら試料を溶解した。溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれA、B、Cとした。次いで、新たに試験管を用意し、ベンジルアルコールのみを入れ、同様の手順で処理し、溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれa、b、cとした。
予めファクターの分かっている0.04mol/l水酸化カリウム溶液(エタノール溶液)を用いて、上記サンプルの滴定を行った。指示薬はフェノールレッドを用い、上記サンプルが黄緑色から淡紅色に変化したところを終点とし、終点時の水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)を求めた。サンプルA、B、Cの滴定量をXA、XB、XC(ml)とし、サンプルa、b、cの滴定量をXa、Xb、Xc(ml)とした。
各溶解時間に対しての滴定量XA、XB、XCを用いて、最小2乗法により、溶解時間0分での滴定量V(ml)を求めた。同様にXa、Xb、Xcを用いて、滴定量V0(ml)を求めた。次いで、次式に従い、酸価を求めた。
酸価(eq/t)=[(V−V0)×0.04×NF×1000]/W
NF:0.04mol/l水酸化カリウム溶液のファクター
W:試料重量(g)
グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体はARKEMA社製「AX8900」であり、グリシジルメタアクリレート/エチレン/メチルアクリレート共重合体である。その組成比は、グリシジルメタアクリレート/エチレン/メチルアクリレートが8/68/24(質量%)である。グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体のガラス相転移点(Tg)は−33℃であった。
PET樹脂を78.95質量部と、グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体を21.05質量部とをタンブラーで混合した後、ベント付2軸押出機(日本製鋼所社製:TEX‐30α、L/D=49)にて、バレル(シリンダ)温度およびダイス温度260℃、スクリュー回転数240rpm、ベント吸引度100MPa、並びに吐出量10kg/hで溶融混練して、ペレットを得た。得られたペレットを90℃で4時間、熱風乾燥器を用いて乾燥し、これを溶融混練物C−1とした。
実施例1と同様に溶融混練物C−1を得た。当該溶融混練物C−1において、反応物中の反応PET樹脂は、反応物総量に対して、5.9質量%であった。
PC樹脂を70質量部と、PET樹脂を30質量部と、グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体を8質量部と、難燃滴下防止剤(商品名「A−3800」、ポリテトラフルオロエチレン含量50%、三菱レイヨン社製)を1質量部と、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、商品名「Irganox1076」、BASF社製)を0.2質量部とをタンブラーで混合した後、ベント付2軸押出機に投入し、8つ目のセグメント上に設けた投入口より、芳香族縮合リン酸エステル難燃剤(商品名「CR−741」、燐分9%、大八化学工業社製)を15質量部、1.21kg/hで添加して、溶融混練を行った。溶融混練条件は、2つ目〜7つ目のセグメントを高温混練(バレル(シリンダ)温度270℃)とし、8つ目〜14つ目のセグメントを低温混練(バレル(シリンダ)温度230℃)とし、スクリュー回転数240rpm、ベント吸引度100MPa、並びに吐出量10kg/hとした。スクリューはニーディングゾーンを3箇所備えたものを使用した。そして、2軸押出機から吐出された樹脂をペレット状にカッティングした。得られたペレット状の樹脂組成物を90℃で4時間、熱風乾燥機を用いて乾燥した。
ベント付2軸押出機のバレル温度を、2つ目〜7つ目のセグメントを高温混練(バレル(シリンダ)温度270℃)とし、8つ目〜14つ目のセグメントを低温混練(バレル(シリンダ)温度260℃)としたこと以外は、実施例2と同じ条件で樹脂成形体(評価用試験片)を得た。得られた樹脂成形体を前述した方法で透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM―2100)により観察し、得られた画像を基に、アメリカ国立衛生研究所製画像解析ソフト「Image J」 を使用して、分散相の比表面積を求めた結果、1.8μm −1 であった。
PC樹脂を70質量部と、PET樹脂を30質量部と、グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体を8質量部と、難燃滴下防止剤(商品名「A−3800」、ポリテトラフルオロエチレン含量50%、三菱レイヨン社製)を1質量部と、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、商品名「Irganox1076」、BASF社製)を0.2質量部とをタンブラーで混合した後、ベント付2軸押出機に投入し、3つ目のセグメント上に設けた投入口より、芳香族縮合リン酸エステル難燃剤(商品名「CR−741」、燐分9%、大八化学工業社製)を15質量部、1.21kg/hで添加して、バレル(シリンダ)温度を初期200℃、中期220℃、後期230℃と順次高くなるように設定し、ダイス温度を250℃に設定した。スクリューはニーディングゾーンを3箇所備えたものを使用した。スクリュー回転数240rpm、ベント吸引度100MPa、並びに吐出量10kg/hで、溶融混練を行った。そして、2軸押出機から吐出された樹脂組成物をペレット状にカッティングした。得られたペレット状の樹脂組成物を90℃で4時間、熱風乾燥機を用いて乾燥した。
ベント付2軸押出機にて、バレル(シリンダ)温度を一律260℃に設定、ダイス温度を260℃に設定し、スクリューはニーディングゾーンを2箇所備えたものを使用したこと以外は、実施例3と同じ条件で樹脂成形体(評価用試験片)を得た。得られた樹脂成形体を前述した方法で透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM―2100)により観察し、得られた画像を基に、アメリカ国立衛生研究所製画像解析ソフト「Image J」を使用して、分散相の比表面積を求めた結果、1.9μm −1 であった。
PC樹脂を70質量部と、PET樹脂を30質量部と、難燃滴下防止剤(商品名「A−3800」、ポリテトラフルオロエチレン含量50%、三菱レイヨン社製)を1質量部と、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、商品名「Irganox1076」、BASF社製)を0.2質量部とをタンブラーで混合した後、ベント付2軸押出機に投入し、3つ目のセグメント上に設けた投入口より、芳香族縮合リン酸エステル難燃剤(商品名「CR−741」、燐分9%、大八化学工業社製)を15質量部、1.21kg/hで添加して、バレル温度およびダイス温度260℃、スクリュー回転数240rpm、ベント吸引度100MPa、並びに吐出量10kg/hで、溶融混練を行った。そして、2軸押出機から吐出された樹脂組成物をペレット状にカッティングした。得られたペレット状の樹脂組成物を90℃で4時間、熱風乾燥機を用いて乾燥した。
得られた評価用試験片を用いて、以下の評価及び試験を行った。表2に、実施例1〜3、比較例1〜4の樹脂組成物の組成(全て質量部にて表示)、反応PET樹脂の含有量、及び以下の試験の結果をまとめた。
UL−94におけるVテスト用UL試験片(厚み0.8mm、1.5mm)を用い、UL−94に規定の方法に準拠して、UL−Vテストを実施し、試験片の燃え難さの度合いを測定した。ここで、UL−94規格の難燃性の度合いは、難燃性の低い順から高い順に、not−V,V−2,V−1,V−0,5VBになっている。
試験片に、ASTM D648の試験方法規格で定められた荷重(1.8MPa)を与えた状態で、評価用試験片の温度を上げていき、たわみの大きさが規定の値になる温度(荷重たわみ温度:DTUL)を測定した。これを耐熱温度として評価した。
試験片の引張強度及び引張り破断伸度を、JIS K−7113に準じて測定した。尚、成形体として、射出成形により得られたJIS1号試験片(厚さ4mm)を用いた。引張強度の数値が大きいほど、引張強度に優れていることを示し、引張り破断伸度の数値が大きいほど、引張り破断伸度に優れていることを示す。
ISO多目的ダンベル試験片をノッチ加工したものを用い、ISO−179に準拠して、デジタル衝撃試験機(東洋精機製、DG−5)により、持ち上げ角度150度、使用ハンマー2.0J、測定数n=10の条件で、MD方向にシャルピー耐衝撃強度(単位:kJ/m2)を測定した。シャルピー耐衝撃強度の数値が大きいほど、耐衝撃性に優れていることを示す。
射出成型により60mm×60mm、厚み2mm、及び1.8mmの平板を作成した。各平板の中央部に10mm×10mmの角穴を切削加工した試験片を作製した。該試験片の中央部に、直径50mm、重さ500gの鋼球を、高さ0.7m〜2mの範囲で落下衝突させ、以下の条件で、面衝撃強度を評価した。この面衝撃強度の試験を各高さで3回行った。なお、1.3mの鋼球の落下高さで○の評価となることが実用上好ましいと言える。
○:試験片の角穴周囲に全く亀裂が発生しない。
△:試験片の角穴周囲に1箇所〜3箇所の亀裂発生。
×:試験片が複数に破断する。
射出成型機を用いて、図1に示す格子状のルーバー部10(開口部)を有する、厚み2mm、及び1.8mmの試験片1を成形した。図1に示す試験片1の中央部に、直径50mm、重さ500gの鋼球を、高さ1.3mから落下衝突させ、以下の条件で、ルーバー部強度を評価した。このルーバー部強度の試験を3回行った。なお、1.3mの鋼球の落下高さで○の評価となることが実用上好ましいと言える。
○:試験片の割れ発生なし、又は厚み方向1mm以下の微小なひび割れのみ発生。
△:ルーバー部周囲に破断が1〜2箇所発生。
×:ルーバー部周囲に破断が3箇所以上発生。
PC樹脂を70質量部と、溶融混練物C−1を38質量部と、難燃滴下防止剤(商品名「A−3800」、ポリテトラフルオロエチレン含量50%、三菱レイヨン社製)を1質量部と、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、商品名「Irganox1076」、BASF社製)を0.2質量部と、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET、ペットリファインテクノロジー社製)を1質量部とをタンブラーで混合したこと以外は、実施例1と同じ条件で樹脂組成物を得た。樹脂組成物中には、グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体とPET樹脂との反応物、及びグリシジル基含有ポリエチレン系共重合体と未反応のPET樹脂が含まれており、反応物中の反応PET樹脂は、反応物総量に対して、6.0質量%であった。
PC樹脂を70質量部と、PET樹脂を30質量部と、グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体を8質量部と、難燃滴下防止剤(商品名「A−3800」、ポリテトラフルオロエチレン含量50%、三菱レイヨン社製)を1質量部と、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、商品名「Irganox1076」、BASF社製)を0.2質量部と、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET、ペットリファインテクノロジー社製)を1質量部とをタンブラーで混合したこと以外は、実施例2と同じ条件で樹脂組成物を得た。樹脂組成物中には、グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体とPET樹脂との反応物、及びグリシジル基含有ポリエチレン系共重合体と未反応のPET樹脂が含まれており、反応物中の反応PET樹脂は、反応物総量に対して、3.4質量%であった。
樹脂組成物を成型する際の流動性について評価すべく、以下の方法によりスパイラルフロー流動長を測定した。上記で得られた実施例1、2、4及び5の樹脂組成物を用いて試験を行った。具体的には、射出成型機(東芝機械社製、製品名「NEX500」)を用いて成形温度230℃、金型温度80℃、射出圧力120MPaとした。また、成型品の厚さは2mm、幅は15mmとした。数値が大きいほど樹脂組成物の成型流動性が良好であることを示す。
Claims (2)
- ポリカーボネート系樹脂と、グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体及びポリエチレンテレフタレート樹脂の反応物と、前記グリシジル基含有ポリエチレン系共重合体と未反応のポリエチレンテレフタレート樹脂と、有機リン系難燃剤と、難燃滴下防止剤と、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)と、を含み、電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、前記ポリカーボネート系樹脂及び前記未反応のポリエチレンテレフタレート樹脂が連続相であり、前記反応物が分散相であり、前記分散相の比表面積が2μm −1 以上であることを特徴とする樹脂組成物。
- 請求項1に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする樹脂成形体。
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