JP4075355B2 - 耐熱性共重合体、耐熱性熱可塑性樹脂組成物、それからなる樹脂成形品および耐熱性共重合体の製造方法 - Google Patents
耐熱性共重合体、耐熱性熱可塑性樹脂組成物、それからなる樹脂成形品および耐熱性共重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性および成形加工性に優れる共重合体、該共重合体にゴム強化スチレン系樹脂を配合した高度な耐衝撃性を有する耐熱性熱可塑性樹脂組成物、前記共重合体に透明性ゴム強化スチレン系樹脂を配合した透明性に優れた耐熱性熱可塑性樹脂組成物、及び、それらからなる樹脂成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂あるいはメタクリル酸エステル系樹脂は優れた機械的性質、成形加工性および外観を有しており、光学材料、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。しかしながら、これらの樹脂は耐熱性に劣るという欠点があり、その耐熱性を改良する目的で、耐熱性付与成分としてマレイミド系単量体あるいは無水マレイン酸単量体等を導入した樹脂が開発されている。しかし、マレイミド系単量体は高価であると同時に反応性が低く、無水マレイン酸は熱安定性が悪いという問題があった。
【0003】
これらの問題点を解決する方法として、特開昭49−85184号公報にアルキルメタクリレートまたはスチレンとα−置換アクリル酸とその酸無水物からなる熱可塑性共重合体が提案されている。しかし、この共重合体は、押出機による加熱時に樹脂が発泡し、カッターによる引き取りが困難になるばかりか、成形時にも発泡するため、成形片にシルバーが発生する不具合があった。
【0004】
さらに、特開昭61−254608号公報あるいは特開昭61−261303号公報にはメタクリル酸および/またはアクリル酸単位を含む共重合体を熱処理する際に、塩基性化合物や、有機カルボン酸塩および/または炭酸塩等の触媒を添加することにより、閉環速度を促進させる方法が記載されている。しかし、この方法でも、成形時に発泡して成形品中に気泡が残るという不具合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における成形時の樹脂の発泡問題の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、高度な耐熱性を有すると同時に、成形時に樹脂が発泡しない共重合体を提供することにある。また、ゴム強化重合体と配合したときの機械的強度および成形加工性に優れた樹脂組成物、さらには透明性ゴム強化重合体に適用したときの透明性に優れた樹脂組成物およびそれらからなる成形品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、特定のグルタル酸無水物単位、及び、必要に応じて含まれる他の単量体単位からなる共重合体において、不飽和カルボン酸単位が実質上含有されない共重合体にすることにより、成形時の発泡を抑制でき、さらに成形品にシルバーが観察されない、表面外観に優れる成形品が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の耐熱性共重合体は、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、下記一般式(1)
【化1】
(上記式中、R1、R2は同一または相異なるものであり水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す。)で表されるグルタル酸無水物単位および、必要に応じて含まれる他の単量体単位からなる共重合体であって、共重合体中の全単量体単位100重量%に対し、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位が30〜85重量%であり、共重合体中に不飽和カルボン酸単位を実質的に含まれないことを特徴とするものであって、不飽和カルボン酸系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体及び必要に応じて含まれる他のビニル系単量体を重合してなる原重合体をさらに環化反応する際に、エポキシを有する化合物またはカルボジイミド化合物を添加して製造されたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の耐熱性共重合体、該耐熱性共重合体とゴム強化スチレン系樹脂を配合した高度な耐衝撃性を有する耐熱性熱可塑性樹脂組成物、前記共重合体に透明性ゴム強化スチレン系樹脂を配合した透明性に優れた耐熱性熱可塑性樹脂組成物、及び、それらからなる樹脂成形品について具体的に説明する。
【0010】
本発明の耐熱性共重合体は、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位、及び、必要に応じて含まれる他の単量体単位からなる共重合体であって、かつ、不飽和カルボン酸単位が実質的に含有されないものである。ここで、他の単量体単位としては、他のビニル系単量体単位が好ましいものであり、以下、他のビニル系単量体単位である場合について説明する。
【0011】
この耐熱性共重合体は、基本的に、不飽和カルボン酸系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体及び必要に応じて含まれる他のビニル系単量体等を重合して得られる原重合体を、さらに環化反応することによって得られるものであるが、不飽和カルボン酸単位が実質的に含有されないものとするためには、環化反応時に、不飽和カルボン酸と反応性を有する化合物を添加する等の方法をとることを要する。
【0012】
上記原重合体を製造する際に用いられる不飽和カルボン酸系単量体としては特に制限はなく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、さらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられるが、特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
【0013】
原重合体の製造に用いられる不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが好適である。
【0014】
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
【0015】
原重合体の製造に用いられるその他のビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができ、中でも芳香族ビニル系単量体が好ましく用いられ、特にスチレンが好ましい。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0016】
これらの単量体を共重合する方法については特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができる。
【0017】
これらの原重合体の製造に用いられる単量体混合物の好ましい割合は、不飽和カルボン酸系単量体が5〜50重量%、より好ましくは7〜45重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体は30〜95重量%、より好ましくは30〜93重量%、共重合可能な他のビニル系単量体は0〜63重量%である。
【0018】
不飽和カルボン酸系単量体量が5重量%未満の場合には、得られる耐熱性共重合体において、環化反応物として含まれるグルタル酸無水物単位の量が少なくなり、従って共重合体の耐熱性が低下し好ましくない。
【0019】
本発明における耐熱性共重合体は上記原重合体を環化反応させることによって得られるものである。この環化反応させるための方法は特に制限はないが、上記原重合体を200〜300℃に昇温したベントを有する押出機を通過させる方法が挙げられ、さらに、得られる耐熱性共重合体中に不飽和カルボン酸単位が実質的に含まれないようにするためには、環化反応させる溶融押出時に、不飽和カルボン酸と反応性を有する化合物を0.01〜2重量部、添加することが有効である。具体的には、上記原重合体を200〜300℃に昇温したベントを有する押出機を通す際、原重合体100重量部に対して、不飽和カルボン酸と反応性を有する化合物0.01〜2重量部をサイドフィードする方法や、上記原重合体を一旦、押出機に通してペレタイズした後、このポリマー100重量部に対し、不飽和カルボン酸と反応性を有する化合物0.01〜2重量部を加えて、再度押出機に通す方法が好ましく用いられる。
【0020】
これら不飽和カルボン酸と反応性を有する化合物としては、エポキシ基を有する化合物、カルボジイミド化合物を使用する。
【0021】
このようにして得られる本発明の耐熱性共重合体は、共重合単位として、不飽和カルボン酸単位を実質的に含まないものであり、成形時の発泡を抑え、成形品表面のシルバー発生を回避することができる。これに対し、耐熱性共重合体中に不飽和カルボン酸単位が含有される場合、成形時の発泡や成形品中の気泡混入が生じ、また、成形品表面にシルバーが現れて、外観が悪くなる等の不具合を生じる。
【0022】
また、原重合体を押出機に通す際に、グルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒を添加してもよい。この触媒としては酸、アルカリ、塩化合物の1種以上が用いられ、その添加量は、原重合体100重量部に対し0.01〜1重量部が好ましい。これら酸、アルカリ、塩化合物については特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられ、特に水和物である塩が好ましく用いられる。
【0023】
本発明の耐熱性共重合体中におけるグルタル酸無水物単位の好ましい量は、5〜33重量%、より好ましくは10〜30重量%、最も好ましくは15〜30重量%である。グルタル酸無水物単位が5重量%未満の場合、耐熱性が低下し、好ましくない。また、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位の好ましい量は、30〜95重量%、より好ましくは30〜90重量%、最も好ましくは30〜85重量%である。他のビニル系単量体単位の好ましい量は、0〜65重量%、より好ましくは0〜60重量%、最も好ましくは0〜55重量%である。さらに不飽和カルボン酸系単位は実質的に含まれないものである。
【0024】
本発明の耐熱性共重合体の黄色度(Yellow Index)の値は20以下が好ましく、より好ましくは15以下、最も好ましくは10以下である。黄色度を低下させる方法としては、不飽和カルボン酸と反応性を有する化合物を添加する前の耐熱性共重合体中に残存する不飽和カルボン酸系単量体量を2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下にする方法や、共重合体100重量部に対し、亜リン酸エステル系化合物0.1〜2重量部を含有させる方法が有効である。亜リン酸エステル系化合物を含有させる方法としては特に制限はなく、原重合体に添加して溶融混練する方法や共重合体に添加して溶融混練する方法が挙げられる。ここで、亜リン酸エステル系化合物としては、特に制限はなく、アルキルホスファイト、アルキルアリルホスファイト、アリルホスファイト等が用いられる。
【0025】
本発明の耐熱性共重合体を他のポリマや添加剤と混合させて樹脂組成物にする場合、例えば、本発明の耐熱性共重合体(A)10〜90重量部に対し、ゴム強化スチレン系樹脂(B)90〜10重量部を添加することにより耐衝撃性を向上させることが好ましい。
【0026】
このゴム強化スチレン系樹脂(B)とは、ビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が微粒子状に分散してなるグラフト重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体または必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル系単量体を加えた単量体混合物を、公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合に供することにより得られる。
【0027】
このようなゴム強化スチレン系樹脂(B)としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、およびAES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)などが挙げられる。
【0028】
このようなゴム強化スチレン系樹脂(B)としては、スチレン単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体にグラフトした構造をとったものと、スチレン単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体に非グラフトした構造をとったものとを含むものである。
【0029】
具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体(B−1)と、芳香族ビニル系単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体を共重合せしめてなるビニル系共重合体(B−2)とからなるゴム強化スチレン系樹脂が挙げられる。
【0030】
グラフト共重合体(B−1)に用いられるゴム質重合体には特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能であるが、透明性スチレン系樹脂に適用する場合で2種以上の混合物で使用する場合には、透明性の観点から、混合物のアッベ屈折計を用いて測定した屈折率差を0.03以下にすることが好ましい。これらのゴム質重合体のうち、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体およびアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が耐衝撃性の観点で好ましく用いられる。
【0031】
本発明におけるグラフト共重合体(B−1)を構成するゴム質重合体の重量平均粒子径には特に制限はないが、0.1〜0.5μm、特に0.15〜0.4μmの範囲が好ましい。上記の範囲未満では得られる熱可塑性組成物の衝撃強度が低下する傾向を生じ、上記の範囲を越えると透明性が低下する場合がある。なお、ゴム質重合体の重量平均粒子径は「Rubber Age, Vol.88, p.484-490 (1960), by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
【0032】
本発明におけるグラフト共重合体(B−1)およびビニル系共重合体(B−2)に用いる芳香族ビニル系単量体としては、特に制限はなく、スチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられ、なかでもスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらの芳香族ビニル系単量体は、1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
さらに、本発明におけるグラフト共重合体(B−1)およびビニル系共重合体(B−2)には必要に応じて共重合可能な他のビニル系共単量体を用いることができ、この他のビニル系単量体としては、特に制限はないが、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、および炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体が好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体の具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが好ましい。
【0034】
さらに、必要に応じて(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどの他の共重合体可能な単量体を使用することもできる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0035】
本発明におけるグラフト共重合体(B−1)は、ゴム質重合体10〜80重量部、好ましくは20〜70重量部、より好ましくは30〜60重量部の存在下に、上記の単量体(混合物)20〜90重量部、好ましくは30〜80重量部、より好ましくは40〜70重量部を共重合することによって得られる。ゴム質重合体の割合が上記の範囲未満、または上記の範囲を越える場合には、衝撃強度や表面外観が低下する場合がある。
【0036】
また、グラフト共重合体(B−1)およびビニル系共重合体(B−2)に用いられる単量体混合物中の、芳香族ビニル単量体は10〜100重量%の範囲が必要であり、さらに好ましくは20〜80重量%の範囲である。
【0037】
ここで、透明性スチレン系樹脂とするためには、共重合可能な他のビニル系単量体として、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体を混合することが必要であり、この場合には、靱性、耐衝撃性の観点から不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体を80重量%以下、さらには75重量%以下の範囲で混合することが好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体以外の単量体を混合する場合には、その単量体が30重量%以下の範囲であることが、耐衝撃性および成形加工性の観点から好ましい。
【0038】
なお、グラフト共重合体(B−1)は、ゴム質重合体に単量体混合物をグラフト共重合させる際に生成するグラフトしていない共重合体を含んでいてもよい。ただし、衝撃強度の観点からは、グラフト率は10〜100%であることが好ましい。ここで、グラフト率とは、ゴム質重合体に対するグラフトした単量体混合物の重量割合である。また、グラフトしていない共重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度には特に制限はないが、0.1〜0.6dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられる。
【0039】
本発明におけるビニル系共重合体(B−2)のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度には、特に制限はないが、0.2〜1.0dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられ、より好ましくは0.3〜0.7dl/gのものである。
【0040】
本発明におけるグラフト共重合体(B−1)およびビニル系共重合体(B−2)の製造方法には、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などの公知の重合法により得ることができる。
【0041】
本発明のゴム強化スチレン系樹脂(B)を構成するグラフト共重合体(B−1)とビニル系共重合体(B−2)との混合比は、グラフト共重合体(B−1)10〜100重量部、好ましくは30〜70重量部の範囲と、ビニル系共重合体(B−2)90〜0重量部、好ましくは70〜30重量部の範囲との割合である。グラフト共重合体(B−1)が上記の範囲未満では、ゴム強化スチレン系樹脂(B)の耐衝撃性が不足する場合がある。さらに、ゴム強化スチレン系樹脂(B)に含まれるゴム質重合体の含有量は、5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の範囲である。ゴム質重合体が上記の範囲未満では耐衝撃性が不足し、上記の範囲を超えると成形加工性を損なう場合がある。
【0042】
ここで、スチレン系樹脂(B)が透明性スチレン系樹脂である場合には、グラフト重合体(B−1)のゴムを除いた成分およびビニル系共重合体(B−2)の屈折率と、グラフト重合体(B−1)に使用されるゴム質重合体との屈折率の差を0.05以下にすることが好ましく、より好ましくは0.02以下になるように、単量体の組成比を調製することが、透明性の観点から好ましい。なお、このようなグラフト重合体(B−1)およびビニル系共重合体(B−2)は複数種類を組合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明において、耐熱性共重合体(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)とを混合して耐熱性熱可塑性樹脂組成物を製造する場合、その混合比は耐熱性共重合体(A)10〜90重量部、好ましくは30〜80重量部と、ゴム強化スチレン系油脂(B)90〜10重量部、好ましくは70〜20重量部である。耐熱性共重合体(A)が10重量部未満の場合には耐熱性が不足するため好ましくない。
【0044】
ここで、耐熱性共重合体(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)からなる耐熱性熱可塑性樹脂組成物がさらに透明性にも優れたものとする場合には、耐熱性共重合体(A)とゴム強化スチレン系樹脂(B)との屈折率の差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下である。このような屈折率条件とするためには、単量体の組成比を調製することが、透明性の観点から好ましい。
【0045】
また、このように透明性にも優れた耐熱性熱可塑性樹脂組成物とする場合には、その23℃で測定した全光線透過率は60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の範囲である。ここでいう全光線透過率は、厚み3mmの試験片での全光線透過率を表し、ASTM D−1003に準じ、室温下で測定したものである。
【0046】
さらに、本発明の耐熱性共重合体(A)およびこれとゴム強化スチレン系樹脂(B)からなる耐熱性熱可塑性樹脂組成物は、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステラアマイドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、燐系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有してもよい。
【0047】
ただし、透明性にも優れた耐熱性熱可塑性樹脂組成物の場合には、その透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。
【0048】
本発明の耐熱性共重合体(A)およびゴム強化スチレン系樹脂(B)からなる耐熱性樹脂組成物は、通常公知の方法で製造される。例えば、耐熱性共重合体(A)、ゴム強化スチレン系樹脂(B)、およびその他の添加剤を予備混合するか、または個別に押出機などに供給して、150℃〜300℃において十分溶融混練することにより調製される。
【0049】
本発明の耐熱性共重合体(A)やこれとゴム強化スチレン系樹脂(B)からなる耐熱性樹脂組成物は、機械的特性、成形加工性にも優れており、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形およびプレス成形などが可能であり、フィルム、管、ロッドや、希望する任意の形状と大きさを有する成形品に成形して使用することができる。
【0050】
そして、本発明の耐熱性共重合体(A)やこれとゴム強化スチレン系樹脂(B)からなる耐熱性樹脂組成物から成形される樹脂成形品は、その優れた耐熱性を活かして、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
【0051】
本発明の耐熱性共重合体(A)やこれとゴム強化スチレン系樹脂(B)からなる耐熱性樹脂組成物から成形される樹脂成形品の具体的用途としては、例えば、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバー、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルターおよび点火装置ケースなどが挙げられ、これら各種の用途にとって極めて有用である。
【0052】
【実施例】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明する。
(1)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いてガラス転移温度を測定した。
(2)1H−NMRスペクトルによる共重合組成割合
日本電子(株)製400MHz核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、重ジメチルスルホキシド溶媒に溶解した各サンプルについて1H−NMRスペクトルを測定し、これから共重合組成割合を求めた。
【0053】
(3)重量平均分子量(Mw)
GPCにより、分子量測定用標準ポリメタクリル酸メチル換算にて、重量平均分子量を測定した。
(4)黄色度(YI)
JIS−K7103に従いペレットの黄色度(Yellow Index)を求めた。
(5)MFR
ISO−R1133に従い、樹脂ペレットを、70℃で3時間乾燥し、250℃、98Nの条件でMFRを測定し、流動性を評価した。この値が大きいほど、高い流動性を示し、成形加工性が優れる。
【0054】
(6)荷重たわみ温度
ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い荷重たわみ温度を測定し、耐熱性を評価した。
(7)アイゾッド衝撃強度
ASTM D−256に従い、厚み12.7mmの試験片(ノッチ付)を用いて23℃にてアイゾッド衝撃強度を測定し、衝撃特性を評価した。
(8)全光線透過率
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して、23℃で厚み3mmの角板の全光線透過率(%)をASTM D−1003に準じ、室温下で測定し、透明性の評価尺度とした。
【0055】
(9)成形時の発泡
100℃で3時間乾燥したペレットを(株)名機製作所製射出成形機M−50AII−SJにて成形し、ゲート、ランナー、成形品中の発泡の有無を確認した。成形品の形状は、9cm(縦)×5cm(横)×2mm(厚み)の角板であり、成形条件は成形温度:250℃、金型温度:60℃、射出速度:88cm3/秒、射出時間:15秒、冷却時間:30秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)で行った。
【0056】
(10)シルバーの有無
成形時の発泡の確認時と同様な成形条件にて成形を行い、成形品表面のシルバーの有無を確認した。
【0057】
[参考例1]原重合体の製造
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記組成の混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、60℃に昇温し懸濁重合を開始した。
メタクリル酸 15重量部
メタクリル酸メチル 67重量部
スチレン 18重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.3重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部
【0058】
15分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、120分かけて100℃まで昇温し100℃を120分間保ち重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行ない、ビーズ状の原重合体を得た。GC(ガスクロマトグラフィー)によりビーズ中の残存モノマーを測定した結果、残存モノマーはメタクリル酸0.4重量部、メタクリル酸メチル0.6重量部であり、スチレンは0重量部(未検出)であった。
【0059】
[参考例2]グラフト共重合体(B−1)の製造
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm) 50重量部(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部
【0060】
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、スチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合物50重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(B−1−1)を得た。
【0061】
このグラフト共重合体(B−1−1)のグラフト率は45%、アセトン可溶分のメチルエチルケトン溶媒、30℃での極限粘度は0.36dl/gであった。また、アセトン可溶分の屈折率を測定した結果、1.572であった。
【0062】
また、ポリブタジエンを重量平均粒子径0.2μmのポリブタジエンに変更し、モノマーをメタクリル酸メチル70重量部、スチレン25重量部、アクリロニトリル5重量部の混合物に変更した以外は、上記と同様の方法によりグラフト共重合体(B−1−2)を製造した。得られたグラフト共重合体(B−1−2)のグラフト率は48%、アセトン可溶分の極限粘度は0.35dl/gであった。また、アセトン可溶分の屈折率を測定した結果、1.516であり、ポリブタジエンの屈折率と同等であった。
【0063】
[参考例3]ビニル系共重合体(B−2)の製造
参考例1に記載した原重合体の製造方法と同様な方法で、モノマーとして、スチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部の混合物を用いることにより、ビニル共重合体(B−2−1)を製造した。得られたビニル共重合体(B−2−1)のメチルエチルケトン中、30℃での極限粘度は0.54dl/gであった。また、屈折率は1.572であった。
【0064】
同様にメタクリル酸メチル70重量部、スチレン25重量部、アクリロニトリル5重量部、t−ドデシルメルカプタン0.4重量部を用いることにより、ビニル共重合体(B−2−2)を得た。このときの極限粘度は0.33dl/gであった。また、屈折率は1.516であった。
【0065】
[実施例1]耐熱性共重合体(A−1)の製造
参考例1にて調整した原重合体を、スクリュウ径30mm、L/Dが35のベント真空度が200mmHg以下である2つのベントを有する2軸押出機(日本精鋼製 TEX30α)のホッパー口より10kg/hで供給し、サイドフィーダーよりモノグリシジルエステルである“カージュラE−10”(油化シェルエポキシ社製)を170g/hで供給した。押出時の樹脂温度は280℃、スクリュウ回転数は150rpmで溶融混練押出を行い、グルタル酸無水物単位を有する耐熱性共重合体(A−1)のペレットを得た。
【0066】
得られた耐熱性共重合体(A−1)について、GCによる残存モノマー測定の結果、メタクリル酸メチル780ppmを含有しており、その黄色度は8であった。また、DSCにより求めたガラス転位点(Tg)は126℃、重量平均分子量は14.6万、MFRは40g/10分、1H−NMRスペクトルから求めた組成はメタクリル酸メチル単位62重量%、スチレン単位19重量%、グルタル酸無水物単位19重量%であり、残存するメタクリル酸単位のピークは観察されなかった。
【0067】
この耐熱性共重合体(A−1)のペレットを射出成形したところ、成形時の発泡がなく、得られた成形品におけるシルバーも観察されなかった。得られた成形品の透明性および屈折率を測定した結果、全光線透過率は85%、屈折率は1.51であった。
【0068】
[比較例1]耐熱性共重合体(A−2)の製造
モノグリシジルエステルである“カージュラE−10”の添加をしなかったこと以外は実施例1と同様に溶融混練押出を行い、耐熱性共重合体(A−2)を得た。
【0069】
得られた耐熱性共重合体(A−2)について、GCによる残存モノマー測定の結果、メタクリル酸460ppm、メタクリル酸メチル880ppmを含有しており、その黄色度は6であった。また、DSCにより求めたガラス転位点(Tg)は128℃、重量平均分子量は14.6万、MFRは38g/10分、1H−NMRスペクトルから求めた組成はメタクリル酸メチル単位61.5重量%、メタクリル酸単位0.5重量%、スチレン単位19重量%、グルタル酸無水物単位19重量%であった。
【0070】
この共重合体(A−2)のペレットを実施例1の場合と同様に射出成形したところ、成形時に発泡が認められ、得られた成形品にシルバーが観察された。得られた成形品の透明性および屈折率を測定した結果、全光線透過率は86%、屈折率は1.51であった。
【0071】
実施例1および比較例1の結果より、共重合体中のメタクリル酸単位が実質的に存在しなければ、成形時の発泡がなく、成形品表面にシルバーが観察されない、表面外観に優れる成形品が得られることが分かる。
【0072】
[実施例2〜8、比較例2〜9]
実施例1又は比較例1で得られた耐熱性共重合体、参考例2で得られたグラフト共重合体、及び/又は、参考例3で得られたビニル系共重合体を、表1に示す配合割合に従った組成で用い、スクリュウ径30mm、L/Dが25の同方向回転2軸押出機(池貝鉄工製 PCM−30)のホッパー口より一括供給して、樹脂温度250℃、スクリュウ回転数150rpmで溶融押出した。得られたペレットを70℃で3時間乾燥後、射出成形に供し、目的とする試験片を成形した。各試験片の物性測定結果を表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
表1の実施例、比較例より以下のことが分かる。
実施例2、3の結果から、本発明の耐熱性共重合体(A−1)にゴム強化スチレン系樹脂を配合することにより、発泡がなく、成形品表面にシルバーが観察されない、表面外観に優れた、高度な耐熱性、耐衝撃性を有する樹脂組成物が得られた。また、実施例4、5の結果から、本発明の耐熱性共重合体(A−1)にゴム強化スチレン系樹脂(B)のマトリックス部の屈折率がポリブタジエンゴムの屈折率と同等であるものを用いることにより、透明性に優れる熱可塑性共重合体が得られた。
【0075】
これに対し、比較例2、3、6、7のように、発泡が認められ、成形品にシルバーが観察された本発明外の共重合体(A−2)を用いると、ゴム強化スチレン系樹脂と配合した場合にも、発泡が認められ、成形品にシルバーが観察された。
【0076】
比較例4、8のように、本発明の耐熱性共重合体(A−1)を用いても、ゴムで補強されていないスチレン系樹脂を配合した場合には、耐衝撃性が得られなかった。また、比較例5,9のように、本発明の耐熱性共重合体(A−1)を用いても、その配合量が10重量部未満と少なすぎる場合には、高度な耐熱性が得られなかった。
【0077】
さらにまた、実施例1又は比較例1で得られた耐熱性共重合体と屈折率が近似するグラフト共重合体(B−1−2)やビニル系共重合体(B−2−2)を配合した組成物の場合(実施例4、5、比較例6〜9)では透明性に優れていたが、耐熱性共重合体と屈折率が異なるグラフト共重合体(B−1−1)やビニル系共重合体(B−2−1)を配合した組成物の場合(実施例2、3、比較例2〜5)では透明性が失われた。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、特定のグルタル酸無水物単位、及び、必要に応じて含まれる他の単量体単位からなる耐熱性共重合体において、不飽和カルボン酸単位を実質的に含有しない共重合体にすることによって、成形時の発泡を抑制でき、さらに成形品にシルバーが観察されない、表面外観に優れる成形品が得られると同時に、耐熱性が高く、さらにゴム強化重合体と配合したときの機械的強度および成形加工性に優れた樹脂、さらには透明性ゴム強化重合体と配合したときの透明性にも優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0079】
そして、本発明で得られる共重合体、熱可塑性樹脂組成物、およびそれからなる成形品は、自動車や一般雑貨、電気機器、OA機器などのハウジングや部品などの用途に好適である。
Claims (10)
- 不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、下記一般式(1)
- 前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位が共重合体中の全単量体単位100重量%に対し5〜33重量%であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性共重合体。
- 黄色度が10以下であることを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の耐熱性共重合体。
- (A)と(B)の合計を100重量部として、請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性共重合体(A)10〜90重量部と、ゴム強化スチレン系樹脂(B)90〜10重量部とからなる耐熱性熱可塑性樹脂組成物。
- 23℃で測定した全光線透過率が60%以上である請求項4に記載の耐熱性熱可塑性樹脂組成物。
- ゴム強化スチレン系樹脂(B)が、スチレン単量体を含有する(共)重合体がポリブタジエンにグラフトしたものである請求項4または5に記載の耐熱性熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性共重合体、又は請求項4〜6のいずれかに記載の耐熱性熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂成形品。
- 不飽和カルボン酸系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体及び必要に応じて含まれる他のビニル系単量体を重合して得られた原重合体を、さらに環化反応する際に、エポキシを有する化合物またはカルボジイミド化合物を添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性共重合体の製造方法。
- 単量体混合物の合計を100重量%とした場合に、不飽和カルボン酸系単量体5〜50重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体30〜90重量%、芳香族ビニル系単量体5〜40重量%、共重合可能な他のビニル系単量体0〜60重量%を共重合して原共重合体を得ることを特徴とする請求項8に記載の耐熱性共重合体の製造方法。
- 環化反応を、原共重合体を200〜300℃に昇温したベントを有する押出機を通過させることで行う請求項8または9に記載の耐熱性共重合体の製造方法。
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