JP2007046044A - 熱可塑性樹脂組成物、成形品およびフィルム - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、耐熱性、無色性、流動性、機械特性に極めて優れ、さらに好ましい態様においては透明性にも優れた熱可塑性樹脂組成物および該熱可塑性樹脂組成物を含む成形品およびフィルムに関するものである。
ポリメタクリル酸メチル(以下PMMAと称する)やポリカーボネート(以下PCと称する)といった非晶性樹脂は、その透明性や寸法安定性を活かし、光学材料、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。
近年、これらの樹脂は、特に光学レンズ、プリズム、ミラー、光ディスク、光ファイバー、液晶ディスプレイ用シートまたはフィルム、導光板などの、より高性能な光学材料にも幅広く使用されるようになっており、樹脂に要求される光学特性や成形加工性、耐熱性もより高度なものになっている。
また現在、これらの透明樹脂は、テールランプやヘッドランプといった自動車等の灯具部材としても使用されている。近年、車内空間を大きくするためやガソリン燃費を改良するために、テールランプレンズやインナーレンズ、ヘッドランプ、シールドビーム等の各種レンズと光源の間隔を小さくすること、あるいは部品の薄肉化が図られる傾向にあり、優れた成形加工性が要求されるようになっている。また、車両は過酷な条件下で使用されるため、高温多湿下での形状変化が小さいことや、優れた耐傷性、耐候性および耐油性も要求される。
しかしながら、PMMA樹脂は、優れた透明性、耐候性を有するものの、耐熱性、耐衝撃性が十分ではないといった問題があった。一方、PC樹脂は、耐熱性、耐衝撃性に優れるものの、光学的歪みである複屈折率が大きく、成形物に光学的異方性が生じること、成形加工性、耐傷性、耐溶剤性に著しく劣るといった問題があった。
このため、メタクリル樹脂の耐熱性を改良する方法として、N−置換マレイミド単量体あるいは無水マレイン酸単量体などの環状モノマーをMMAと共重合することにより、主鎖に環構造を導入して主鎖の剛直性を高め、耐熱性を向上する方法が知られている。
しかしながら、環状モノマーは、一般的にMMAとの共重合性が悪いため、耐熱性付与成分の導入に限界があり、しかも、重合終了後にも未反応モノマーとして残存する傾向にある。このような環状モノマーのポリマー中での残存は、このポリマーの加熱成形時における着色や機械物性の低下を引き起こすという問題があった。
そこで、主鎖に環構造を導入する方法として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)と第一級アルキルアミンとを反応させることにより、主鎖に六員環イミド構造(グルタルイミド環構造)を導入する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。上記の側鎖反応を利用した主鎖への環構造の導入は、耐熱性が向上し、さらに機械的強度においてもメタクリル樹脂以上の性能を付与することができる。しかしながら、六員環イミド構造の導入は、この構造を有する共重合体の成形時に未反応遊離アミンなどの窒素原子に基づく着色を引き起こすといった問題点を有していた。
これらの問題を解決する方法として、α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステル単量体を使用し、得られる重合体を大量の溶媒存在下、150℃の温度で加熱、またはエステル交換触媒を添加することでラクトン環化させて、主鎖にラクトン環構造を導入し、耐熱樹脂を得る方法(例えば、特許文献2参照)や、メタクリル酸アルキルエステル単量体およびアリルアルコール系単量体、またはこれらと他のビニル系単量体を共重合せしめ、得られた共重合体を150〜300℃で加熱処理することにより、分子内で隣接するメタクリル酸アルキルエステル系成分単位のアルキルエステル基とアリルアルコール系成分単位のヒドロキシメチル基とから対応するアルキルアルコールを脱離させてラクトン環構造単位を生成させ、耐熱樹脂を得る方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
また、耐衝撃性などの機械特性を改良する方法として、ラクトン環構造単位を含有する共重合体に、ゴム質重合体を添加する方法が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、これら特許文献に開示された方法においては、耐衝撃性、引張破断伸度等の機械特性、耐熱性、流動性、色調(無色性)、耐溶剤性等に均衡して優れる組成物は得られなかった。さらに、熱可塑性樹脂を添加した場合、樹脂組成物の透明性が著しく低下するといった問題点や、全光線透過率は低く、また光弾性係数(複屈折)も大きい光学異方性の材料となり、近年要求されるより高度な光学特性(透明性や光学等方性)を有しながら、良好な耐衝撃性などの機械特性が兼備できないという問題点も有していた。
米国特許第2146209号明細書、第4頁
特開2001−40228号公報、特許請求の範囲
特開2004−168882号公報、特許請求の範囲
本発明は、高度な耐熱性、機械特性を有すると同時に、成形性(流動性)、無色性、耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供すること、さらには、これらに加えて近年要求されている高度な無色透明性、光学等方性をも有する熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
すなわち本発明は、
〔1〕下記一般式(1)で表されるラクトン環構造単位を5重量%以上含有する共重合体(A)
〔1〕下記一般式(1)で表されるラクトン環構造単位を5重量%以上含有する共重合体(A)
(式中、R1、R2、R3は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基あるいは有機残基で置換されたフェニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基あるいは有機残基で置換されたフェニル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基から選ばれる基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基あるいは有機残基で置換されたフェニル基から選ばれる基を表す。)
および内部に少なくとも1層以上のゴム質層を有する多層構造重合体あるいはグラフト共重合体からなるゴム質含有重合体(B)を含有し、厚み2mmあたりの全光線透過率が90%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、
〔2〕ラクトン環構造単位が下記一般式(2)で表されるラクトン環構造単位であることを特徴とする〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物、
および内部に少なくとも1層以上のゴム質層を有する多層構造重合体あるいはグラフト共重合体からなるゴム質含有重合体(B)を含有し、厚み2mmあたりの全光線透過率が90%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、
〔2〕ラクトン環構造単位が下記一般式(2)で表されるラクトン環構造単位であることを特徴とする〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物、
(式中、R4は水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる基を表す。)
〔3〕共重合体(A)が、前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位と(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位とを有する共重合体、前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位と(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位と(iii)下記一般式(3)で表されるアリルアルコール系成分単位とを有する共重合体、および前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位と(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位と(iii)下記一般式(3)で表されるアリルアルコール系成分単位と(iv)その他のビニル系単量体単位とを有する共重合体から選ばれた少なくとも1種の共重合体である〔1〕または〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔3〕共重合体(A)が、前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位と(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位とを有する共重合体、前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位と(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位と(iii)下記一般式(3)で表されるアリルアルコール系成分単位とを有する共重合体、および前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位と(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位と(iii)下記一般式(3)で表されるアリルアルコール系成分単位と(iv)その他のビニル系単量体単位とを有する共重合体から選ばれた少なくとも1種の共重合体である〔1〕または〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物、
(式中、R4 は水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる基である。)
〔4〕共重合体(A)が、(i)(ii)(iii)(iv)の合計を100重量%としたときに、前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位5〜80重量%、(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位20〜95重量%、前記一般式(3)で表される(iii)アリルアルコール系成分単位0〜5重量%、および(iv)その他のビニル系単量体単位0〜75重量%を含有するものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔5〕多層構造重合体のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔6〕多層構造重合体のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔7〕ガラス転移温度が100℃以上である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔8〕厚み2mmあたりのヘイズが3%以下である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔9〕熱変形温度が100℃以上である〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔10〕共重合体(A)およびゴム質重合体(B)の屈折率差が0.02以下である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔11〕共重合体(A)およびゴム質重合体(B)の屈折率差が0.01以下である〔10〕記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔12〕光弾性係数が5×10−12Pa−1以下である〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔13〕不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および水酸基含有単位を含む重合体、または、水酸基およびエステル基を含有する単位を含む重合体を最外層とし、内部に少なくとも1層以上のゴム質層を有する多層構造重合体を、溶融混練によりアクリル系共重合体(A)と混合すると同時に、多層構造重合体の最外層を分子内環化反応せしめて上記一般式(1)または(2)で表されるラクトン環構造単位を含有する重合体を最外層とする多層構造重合体を生成せしめることを特徴とす〔5〕〜〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
〔14〕〔1〕〜〔12〕いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品、
〔15〕成形品がフィルムである〔14〕に記載の成形品
である。
〔4〕共重合体(A)が、(i)(ii)(iii)(iv)の合計を100重量%としたときに、前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位5〜80重量%、(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位20〜95重量%、前記一般式(3)で表される(iii)アリルアルコール系成分単位0〜5重量%、および(iv)その他のビニル系単量体単位0〜75重量%を含有するものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔5〕多層構造重合体のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔6〕多層構造重合体のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔7〕ガラス転移温度が100℃以上である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔8〕厚み2mmあたりのヘイズが3%以下である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔9〕熱変形温度が100℃以上である〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔10〕共重合体(A)およびゴム質重合体(B)の屈折率差が0.02以下である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔11〕共重合体(A)およびゴム質重合体(B)の屈折率差が0.01以下である〔10〕記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔12〕光弾性係数が5×10−12Pa−1以下である〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔13〕不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および水酸基含有単位を含む重合体、または、水酸基およびエステル基を含有する単位を含む重合体を最外層とし、内部に少なくとも1層以上のゴム質層を有する多層構造重合体を、溶融混練によりアクリル系共重合体(A)と混合すると同時に、多層構造重合体の最外層を分子内環化反応せしめて上記一般式(1)または(2)で表されるラクトン環構造単位を含有する重合体を最外層とする多層構造重合体を生成せしめることを特徴とす〔5〕〜〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
〔14〕〔1〕〜〔12〕いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品、
〔15〕成形品がフィルムである〔14〕に記載の成形品
である。
本発明により、高度な耐熱性、機械特性を有すると同時に、成形性(流動性)、無色性、耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂組成物、さらに好ましい態様においては、これらに加えて近年要求されている高度な無色透明性、光学等方性をも有する熱可塑性樹脂組成物が得られる。
以下、本発明の熱可塑性重合体について具体的に説明する。
本発明の共重合体(A)とは、下記一般式(1)
(式中、R1、R2、R3は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基あるいは有機残基で置換されたフェニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基あるいは有機残基で置換されたフェニル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基から選ばれる基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基あるいは有機残基で置換されたフェニル基から選ばれる基を表す。)
で表されるラクトン環構造単位5重量%以上を含有する共重合体であれば、特に限定されないが、水酸基とエステル基との間のエステル交換反応によって分子内環化されたものであることが好ましい。すなわち、分子内に水酸基とエステル基を有する原重合体(a)を、適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱処理することにより共重合体(A)を得ることが出来る。
で表されるラクトン環構造単位5重量%以上を含有する共重合体であれば、特に限定されないが、水酸基とエステル基との間のエステル交換反応によって分子内環化されたものであることが好ましい。すなわち、分子内に水酸基とエステル基を有する原重合体(a)を、適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱処理することにより共重合体(A)を得ることが出来る。
原重合体(a)は、通常公知の方法、例えば特許文献2に記載されているように、あらかじめ水酸基とエステル基を有する単量体や、水酸基を有する単量体とエステル基を有する単量体との混合物を、原料単量体の少なくとも一部として重合することにより得る方法や、ブタジエン等のジエン化合物の共重合体の二重結合部分への水酸基の付加反応や、酢酸ビニル共重合体などのエステル基を有する重合体の加水分解、カルボキシル基や酸無水物基を有する重合体のエステル化等の反応によって得ることができる。
前記の水酸基とエステル基を有する単量体としては特に限定されないが、例えば下記一般式(4)で示されるビニル単量体が好ましい。式中、R5 およびR6の有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。一般式(4)で示される単量体としては、例えば2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。これらの中でも特に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルおよび2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが挙げられ、これらの単量体を1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
(式中、R5 およびR6は、同一あるいは異なる基であって、水素原子または有機残基を示す。)
前記の分子内に水酸基を有する単量体としては特に限定されないが、例えば上記の一般式(4)で示されるビニル単量体や、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル等の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸等の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、メタリルアルコール、アクリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン等のアリルアルコール等が挙げられ、これらを1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
前記の分子内にエステル基を有する単量体としては特に限定されないが、上記の一般式(4)で示されるビニル単量体や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸クロロメチル、メタクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよびメタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル等が挙げられ、これらの単量体を1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、その他のビニル系単量体を共重合することができる。その他のビニル系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、および2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
また共重合体(A)の重量平均分子量は特に限定されないが、3万〜15万であることが好ましく、より好ましくは4万〜13万、特に5万〜11万が好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、後工程の加熱による分子内環化反応時の着色を低減でき、黄色度の小さい重合体を得ることができるとともに、成形品の機械的強度も高くすることができる。なお、本発明でいう重量平均分子量とは、多角度光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC−MALLS)で測定した絶対分子量での重量平均分子量を示す。
本発明における共重合体(A)のガラス転移温度は100℃以上であり、より好ましくは130℃以上、特に140℃以上のものが、耐熱性の面で好ましく使用することができる。また、ガラス転移温度の上限は特に制限はないが、通常160℃程度である。
なお、本発明において、ガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定されるものである。
共重合体(A)のガラス転移温度を100℃以上とするには、例えば、メタクリル酸アルキルエステル成分としてメタクリル酸メチル、アリルアルコール系成分としてメタリルアルコールを使用し、これらから得られる共重合体を加熱環化し、共重合体中に5重量%以上のラクトン環構造単位を形成せしめることにより、達成することができ、このラクトン環構造単位の量が多いほどガラス転移温度が高くなる傾向にある。
かくして得られる共重合体(A)は、黄色度(Yellowness Index)の値が5以下と着色が極めて抑制され、さらに好ましい態様においては4以下、最も好ましい態様においては、3以下と極めて優れた無色性を有する。これによって、共重合体(A)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物の黄色度も、5以下、より好ましくは4以下、最も好ましくは3以下とすることができ、極めて優れた無色性を有する成形品やフィルムを得ることができるため好ましい。また、共重合体(A)の黄色度の値が大きい場合は、共重合体(A)の一部が熱分解を起こしており、共重合体(A)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械物性が低下する傾向にある。この点でも、共重合体(A)の黄色度が上記の範囲にあることが好ましい。なお、ここでいう黄色度(Yellowness Index)とは、共重合体(A)もしくは本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出成形し、得られた厚さ2mm成形品をJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した値である。
また、本発明において、前記ラクトン環構造を、下記一般式(2)
(式中、R4 は水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる基である。)
とすることにより、過度の加熱条件においても架橋反応を抑制することが出来るため、流動性および滞留安定性の点で特に好ましい。
とすることにより、過度の加熱条件においても架橋反応を抑制することが出来るため、流動性および滞留安定性の点で特に好ましい。
前記一般式(1)または(2)で表されるラクトン環構造単位を5重量%以上有する共重合体(A)としては特に制限はないが、耐熱性、透明性、流動性の点から、前記一般式(1)または(2)で表される(i)ラクトン環構造単位と(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位とを有する共重合体、(i)の単位と(ii)の単位と(iii)下記一般式(3)で表されるアリルアルコール系成分単位とを有する共重合体、および上記(i)、(ii)の単位または上記(i)、(ii)、(iii) の単位と(iv)その他のビニル系単量体単位を有する共重合体であることが好ましく、これらは1種または2種以上で用いることができる。
(式中、R4 は水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる基である。)
上記式(2)で表されるラクトン環構造単位を5重量%以上有する共重合体(A)を製造する方法としては、特に制限はないが、メタクリル酸アルキルエステル単量体およびアリルアルコール系単量体、必要に応じてその他のビニル系単量体を共重合して原重合体(a’)とした後、かかる原重合体(a’)を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱処理することにより、分子内で隣接するメタクリル酸アルキルエステル成分単位およびアリルアルコール系成分単位から対応するアルキルアルコールを脱離させ(エステル交換反応)、分子内環化反応を進行せしめることにより製造する方法を好ましく使用することできる。
上記原重合体(a’)を製造する際に用いられるメタクリル酸アルキルエステルとしては特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキルエステル基を持つメタクリル酸アルキルエステルが好適である。
メタクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸クロロメチル、メタクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよびメタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、中でもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
また、アリルアルコールとしては、下記一般式(5)で表されるアリルアルコールが好ましく、その具体例としては、メタリルアルコール、アクリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、およびα−ヒドロキシメチルスチレンが挙げられ、中でもメタリルアルコールが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
(式中、R4は水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基から選ばれる基である。)
また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、既述のその他のビニル系単量体を単独ないし2種以上用いて共重合することができる。
本発明の耐熱性に優れた共重合体(A)は、分子中の隣接するメタクリル酸アルキルエステル成分単位と、アリルアルコール系成分単位との間で環化(ラクトン化)することにより得ることができるため、原重合体(a’)を製造する際に、メタクリル酸アルキルエステル成分単位とアリルアルコール系成分単位が交互に配列した構造をとることが好ましい。
例えば、メタクリル酸アルキルエステル単量体と、アリルアルコール系単量体としてメタリルアルコールを使用して共重合を行うことにより原重合体(a’)を製造する場合には、これらのラジカル共重合性の観点から、低重合率で反応を停止することにより、交互性の高い原重合体(a’)を製造することが可能となる。そして、この交互共重合性の高い原重合体(a’)を加熱環化(ラクトン化)処理することにより、よりラクトン環構造単位含量の多い耐熱性に優れた共重合体(A)を得ることができるようになる。
メタクリル酸アルキルエステル単量体およびアリルアルコール系単量体、またはこれらと他のビニル系単量体を共重合することにより原重合体(a’)を製造する場合の好ましい収率としては70%以下である。この場合には、分子中にメタクリル酸アルキルエステル成分単位とアリルアルコール系成分単位との交互配列がより数多く存在するようになるため、耐熱性により優れる共重合体(A)が得られる結果となる。
また、原重合体(a’)製造時に用いられる単量体混合物の好ましい割合は、原重合体(a’)の全単位を100重量%として、メタクリル酸アルキルエステル単量体が20〜95重量%、より好ましくは30〜80重量%、最も好ましくは40〜70重量%、アリルアルコール系単量体が5〜80重量%、より好ましくは25〜70重量%、最も好ましくは30〜60重量%、共重合可能な他のビニル系単量体が0〜30重量%の範囲である。メタクリル酸アルキルエステル単量体が40〜70重量%またはアリルアルコール系単量体が30〜60重量%の場合には、原重合体(a’)中のメタクリル酸アルキルエステル成分単位とアリルアルコール系成分単位の交互配列数がより多くなるため、耐熱性が向上し、最も好ましい結果となる。
本発明における原重合体(a)の加熱による共重合体(A)の製造方法には、特に制限はないが、分子内環化(ラクトン化)反応の際に副成するアルキルアルコールを減圧などの操作により系外に除去することが好ましい。例えば、上記原重合体(a)を減圧装置の備わった加熱器内において加熱処理し環化反応を行う方法、または上記原重合体(a)を、ベントを有する昇温した押出機に通して加熱脱気することにより環化反応を行う方法などが好ましく用いることができる。
この加熱処理を行う際の温度としては、150〜300℃の範囲が好ましく、特に180〜280℃の範囲で好ましく行うことができる。加熱処理を行う時間としては、加熱温度が150〜180℃の場合は1時間〜24時間が好ましく、特に6時間〜12時間が好ましい。また、加熱温度が180〜230℃の場合には5分〜12時間が好ましく、特に30分〜6時間が好ましい。さらに、加熱温度が230〜300℃の場合は1分〜10時間が好ましく、特に2分〜1時間で好ましく行うことができる。
また、原重合体(a)を加熱処理する際に、分子内環化反応(ラクトン化)を促進させる触媒として、原重合体(a)100重量部に対し、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を0.01〜1重量部添加することが好ましい。これら酸、アルカリ、塩化合物については特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、およびリン酸メチルなどを使用することができる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体アルコキシド類、および水酸化アンモニウム塩などを使用することができる。さらに塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、および炭酸金属塩などを使用することができ、特に水和物である塩が好ましく用いられる。
本発明におけるラクトン環構造単位を含有する共重合体(A)の全単位を100重量%としたときの(i) ラクトン環構造単位は5重量%以上であり、好ましくは10〜80重量%であり、より好ましくは15〜65重量%、特に好ましくは25〜60重量%である。ラクトン環構造単位が5重量%未満の場合は、耐熱性向上効果が十分でないため好ましくない。また、メタクリル酸アルキルエステル成分単位は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜75重量%である。アリルアルコール系成分単位は、好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜3重量%、最も好ましくは0重量%である。共重合体(A)中のラクトン化に寄与しなかったアリルアルコール系成分単位の存在は、樹脂の耐熱性を低下させる要因となるため、樹脂内のアリルアルコール成分単位は0重量%であることが最も好ましい。また、共重合可能なその他のビニル系単量体は、好ましくは0〜65重量%である。
本発明の共重合体(A)における各構造単位の定量には、一般にプロトン核磁気共鳴(1H−NMR)測定機が用いられる。1H−NMR法では、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。例えば、ラクトン環構造単位、メタクリル酸メチル単位、およびメタリルアルコール単位からなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5〜1.5ppmのピークは、メタクリル酸メチル単位およびメタリルアルコール単位のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖中のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチル単位のカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、2.4〜2.7ppmのピークはメタリルアルコール単位の水酸基の水素、4.0〜4.5ppmのピークはラクトン環構造単位中エステル基に隣接したメチレン基の水素である。また、上記に加えて、他の共重合成分としてスチレンを含有する共重合体の場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
本発明における共重合体(A)の各構造単位を定量する際は、後で述べるゴム質含有重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物に共重合体(A)が可溶な溶媒を加え、4時間還流した後、9,000rpmで30分間遠心分離することにより溶媒可溶分(A成分)と不溶分(B成分)に分離し、溶媒可溶分(A成分)について、ジメチルスルホキシド重溶媒中、30℃で1H−NMRを測定し、各共重合構造単位を定量する。ここで、共重合体(A)が可溶な溶媒としては通常アセトンを使用する。
また、本発明におけるラクトン環構造単位を含有する共重合体(A)は、メルトフローレート(温度:共重合体(A)のガラス転移温度+100℃、荷重:98N)が5g/10分以上であるものが好ましく、さらには10g/10分以上、とりわけ15g/10分以上のものが、溶融成形加工性の面で好ましく使用することができる。メルトフローレートの上限には特に制限はないが、通常50g/10分(温度:共重合体(A)のガラス転移温度+100℃、荷重:98N)程度である。
共重合体(A)のメルトフローレートを上記の範囲内にするには、この共重合体(A)中に含まれるゲル含量を極力抑制することが必要になるが、例えば、メタクリル酸アルキルエステル成分単位およびアリルアルコール系成分単位からなる共重合体を加熱し、ラクトン環構造単位を形成する本発明の方法によれば、ゲルの原因となる架橋反応が大幅に抑制され、上記範囲内の良好な流動性を得ることができる。
本発明におけるラクトン環単位を含有する共重合体(A)のクロロホルム溶媒、30℃で測定した極限粘度には特に制限はないが、好ましくは0.2〜1.0dl/g、より好ましくは0.3〜0.7dl/gのものが、機械特性と溶融成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられる。
本発明においては、上記の共重合体(A)にゴム質含有重合体(B)を含有せしめることにより共重合体(A)の優れた特性を大きく損なうことなく優れた耐衝撃性を付与することができる。ゴム質含有重合体(B)としては、1以上のゴム質重合体を含む層と、それとは異種の重合体から構成される1以上の層から構成され、かつ、内部に1層以上のゴム質重合体を含む層を有する構造の、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体や、ゴム質重合体の存在下に、ビニル単量体などからなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体等が好ましく使用できる。
本発明に使用されるコアシェル型の多層構造重合体を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有する多層構造重合体であることが好ましい。
本発明の多層構造重合体において、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分から構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせたものから構成されるゴムも好ましい。例えば、(1)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分から構成されるゴム、(2)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分から構成されるゴム、(3)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびブタジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分から構成されるゴム、および(4)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分から構成されるゴムなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有するゴムが、透明性および機械特性の点から、最も好ましい。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、アリルアクリレート単位およびブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋性成分から構成される共重合体を架橋させたゴムも好ましい。
本発明の多層構造重合体において、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分であることが好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、水酸基およびエステル基含有単位、水酸基含有単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などから選ばれる1種以上の単位を含有する重合体が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を含有する重合体が好ましく、それに加えて不飽和グリシジル基含有単位、不飽和カルボン酸単位、水酸基およびエステル基含有単位、水酸基含有単位、および不飽和ジカルボン酸無水物単位から選ばれる1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
上記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではないが、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和カルボン酸単位の原料となる単量体としては特に制限はなく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
上記水酸基およびエステル基含有単位の原料となる単量体としては特に制限はないが、例えば下記一般式(4)で示されるビニル単量体が好ましい。式中、R5 およびR6 の有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。一般式(4)で示される単量体としては、例えば2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。これらの中でも特に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルおよび2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが挙げられ、これらの単量体を1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
(式中、R5 およびR6 は、同一あるいは異なる基であって、水素原子または有機残基を示す。)
上記水酸基含有単位の原料となる単量体としては特に制限はないが、例えば上記の一般式(4)で示されるビニル単量体や、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル等の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸等の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、メタリルアルコール、アクリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン等のアリルアルコール等が挙げられ、これらを1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
上記不飽和グリシジル基含有単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではなく、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルおよび4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和ジカルボン酸無水物単位の原料となる単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸および無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、上記脂肪族ビニル単位の原料となる単量体としては、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどを用いることができる。上記芳香族ビニル単位の原料となる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンおよびハロゲン化スチレンなどを用いることができる。上記シアン化ビニル単位の原料となる単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどを用いることができる。上記マレイミド単位の原料となる単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドおよびN−(クロロフェニル)マレイミドなどを用いることができる。上記不飽和ジカルボン酸単位の原料となる単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸およびフタル酸などを用いることができる。上記その他のビニル単位の原料となる単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを用いることができる。これらの単量体は単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明のゴム質重合体を含有する多層構造重合体において、最外層(シェル層)の種類は、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、水酸基およびエステル基含有単位、水酸基含有単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位およびその他のビニル単位などを含有する重合体などから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、水酸基およびエステル基含有単位、水酸基含有単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位および不飽和ジカルボン酸無水物単位から選ばれた少なくとも1種が好ましい。中でも不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、水酸基およびエステル基含有単位、水酸基含有単位、不飽和カルボン酸単位を含有する重合体が特に好ましい。
特に、上記の多層構造重合体における最外層が不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および水酸基含有単位、あるいは水酸基およびエステル基含有単位を含有する重合体である場合、加熱することにより、前述した本発明の共重合体(A)の製造時と同様に、分子内環化反応が進行し、前記一般式(1)で表されるラクトン環構造含有単位が生成するため、最外層に不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および水酸基含有単位、あるいは水酸基およびエステル基含有単位を含有する重合体を有する多層構造重合体を共重合体(A)に配合し、適当な条件で、加熱溶融混練することにより、最外層に前記一般式(1)で表されるラクトン環構造含有単位を含有する多層構造重合体が得られる。これにより、連続相(マトリックス相)となる共重合体(A)中に、多層構造重合体が、凝集することなく、良好に分散することが可能となり、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等の機械特性向上とともに、極めて高度な透明性が発現しうるものと考えられる。
本発明の多層構造重合体の好ましい例としては、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるラクトン環構造含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/グルタル酸無水物含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/グルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸共重合体であるもの、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、コア層がブタジエン/スチレン共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、およびコア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるものなどが挙げられる。ここで、“/”は共重合を示す。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体であるものも好ましい例として挙げられる。中でも、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるラクトン環構造含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/グルタル酸無水物含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/グルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸重合体であるものが、連続相(マトリックス相)である共重合体(A)との屈折率を近似させること、および樹脂組成物中での良好な分散状態を得ることが可能となり、近年より高度化する要求を満足しうる透明性が発現するため、好ましく使用することができる。
本発明の多層構造重合体の数平均粒子径については、得られる熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度の点から0.01μm以上、透明性の点から1000μm以下であることが好ましく、さらに、0.02μm以上、100μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上、10μm以下であることがさらに好ましく、0.05μm以上、1μm以下であることが最も好ましい。
本発明の多層構造重合体において、コアとシェルの重量比は、多層構造重合体全体に対して、コア層が50重量%以上、90重量%以下であることが好ましく、さらに、60重量%以上、80重量%以下であることがより好ましい。
本発明の多層構造重合体としては、上述した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもできる。
多層構造重合体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン(登録商標)”、鐘淵化学工業社製”カネエース(登録商標)”、呉羽化学工業社製”パラロイド(登録商標)”、ロームアンドハース社製”アクリロイド(登録商標)”、ガンツ化成工業社製”スタフィロイド(登録商標)”およびクラレ社製”パラペット(登録商標)SA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
また、本発明におけるゴム質含有重合体(B)として使用されるゴム質含有グラフト共重合体の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル単量体、不飽和カルボン酸単量体、芳香族ビニル単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
また、本発明におけるゴム質含有重合体(B)として使用されるゴム質含有グラフト共重合体の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル単量体、不飽和カルボン酸単量体、芳香族ビニル単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
グラフト共重合体に用いられるゴム質重合体としては、ジエンゴム、アクリルゴムおよびエチレンゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
本発明におけるグラフト共重合体を構成するゴム質重合体の重量平均粒子径は、0.1〜0.5μm、特に0.15〜0.4μmの範囲が好ましい。上記の範囲未満では得られる熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度が低下する傾向を生じ、上記の範囲を越えると透明性が低下する場合がある。なお、ゴム質重合体の重量平均粒子径は「Rubber Age, Vol.88, p.484−490 (1960), by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
本発明におけるグラフト共重合体は、ゴム質重合体10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%の存在下に、上記の単量体(混合物)20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%を共重合することによって得られる。ゴム質重合体の割合が上記の範囲未満、または上記の範囲を越える場合には、衝撃強度や表面外観が低下する場合がある。
なお、グラフト共重合体は、ゴム質重合体に単量体混合物をグラフト共重合させる際に生成するグラフトしていない共重合体を含んでいてもよい。衝撃強度の観点からは、グラフト率は10〜100%であることが好ましい。ここで、グラフト率とは、ゴム質重合体に対するグラフトした単量体混合物の重量割合である。また、グラフトしていない共重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は、0.1〜0.6dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられる。
本発明におけるビニル共重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度には、特に制限はないが、0.2〜1.0dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられ、より好ましくは0.3〜0.7dl/gのものである。
本発明におけるグラフト共重合体の製造方法には、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などの公知の重合法により得ることができる。
また、本発明における共重合体(A)およびゴム質含有重合体(B)のそれぞれの屈折率が近似している場合、透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができるため、好ましい。具体的には、両者の屈折率の差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。このような屈折率条件を満たすためには、共重合体(A)の各単量体単位組成を調整する方法、および/またはゴム質含有重合体(B)に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成を調製する方法などが挙げられる。
なお、ここで言う屈折率差とは、共重合体(A)が可溶な溶媒に、本発明の熱可塑性樹脂組成物を適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(共重合体(A))と不溶部分(ゴム質含有重合体(B))をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:589nm)の差を示す。
また、樹脂組成物中での共重合体(A)とゴム質含有重合体(B)の共重合組成は、上記の溶媒による可溶成分と不溶成分の分離操作の後に、各成分を個別に分析可能である。
本発明において、共重合体(A)とゴム質含有重合体(B)との重量比は、99/1〜50/50の範囲であることが好ましく、さらに、99/1〜60/40の範囲であることがより好ましく、特に99/1〜70/30の範囲であることが最も好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その全光線透過率が90%以上であり、好ましくは92%以上である。これにより極めて優れた透明性を有する。また、全光線透過率の上限としては通常、94%程度である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性を表す指標の1つであるヘイズ値(濁度)が、3%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。これにより高度な透明性を有する。また、ヘイズ値の下限としては通常、0.5%程度である。
なお、上記熱可塑性樹脂組成物の全光線透過率およびヘイズは、いずれも射出成形により得た厚さ2mm成形品を、JIS−K7361およびJIS−K7136に従い、測定した値である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その光弾性係数が、5×10−12Pa−1以下であることが好ましく、より好ましくは、4×10−12Pa−1以下である。これにより極めて優れた光学等方性を有する。また、光弾性係数の下限としては通常、0.1×10−12Pa−1程度である。なお、ここで言う光弾性係数とは、流延法により得た厚さ約100μm(100±5μm)の無配向フィルムを1.5倍に一軸延伸を行った際の応力(σ)と、この延伸フィルムをエリプソメーター(大塚電子株式会社製、LCDセルギャップ検査装置 RETS−1100)を用いて23℃で、レーザー光をフィルムサンプル面に対して90°の角度で照射し、透過光の633nmで測定したリターデーション(Re)および上記延伸フィルムの23℃での厚み(d)を基に下記式により算出される値である。
光弾性係数=Re(nm)/d(nm)/σ(Pa)
光弾性係数=Re(nm)/d(nm)/σ(Pa)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その熱変形温度が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは115℃以上である。これにより極めて優れた耐熱性を有する。また、熱変形温度の上限としては通常、140℃程度である。なお、ここで言う熱変形温度とは、射出成形により得た厚さ6.4mm成形品を、ASTM D648に従い測定した値を示す。
また、本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど、熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など、から選ばれた一種以上をさらに含有させることができる。また、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステルステアリルアルコール、ステラアマイドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、および顔料などの着色剤などの添加剤を含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。
本発明において共重合体(A)とゴム質含有重合体(B)を配合する方法としては、共重合体(A)とその他の任意成分を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法が好ましく用いられる。また、(A)、(B)成分を両者を溶解する溶媒の溶液中で混合した後に溶媒を除く方法も用いることができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法として、前述の原共重合体(a)とゴム質含有重合体(B)を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練することにより、前述した環化反応による原共重合体(a)の共重合体(A)への変換を行うと同時に、(B)成分の配合を行うことができる。また、最外層に不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および水酸基含有単位を含む重合体、または、水酸基およびエステル基を含有する重合体、または、不飽和カルボン酸単量体単位および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位を含有する重合体を含む多層構造重合体と、共重合体(A)と混合すると同時に、多層構造重合体の最外層を分子内環化反応せしめて上記一般式(1)または(2)で表されるラクトン環構造単位を含有する重合体を最外層とする多層構造重合体を生成させることもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的特性、成形加工性にも優れており、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形およびプレス成形などが可能であり、フィルム、管、ロッドや希望する任意の形状と大きさを有する成形品に成形して使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムの製造方法には、公知の方法を使用することができる。すなわち、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルション法、ホットプレス法等の製造方法が使用できる。好ましくは、インフレーション法、T−ダイ法、キャスト法またはホットプレス法が使用できる。インフレーション法やT−ダイ法による製造法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明のフィルムを製造するための溶融押出温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。また、流延法により本発明のフィルムを製造する場合、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の溶剤が使用可能である。好ましい溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン等である。該フィルムは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を前記の1種以上の溶剤に溶かし、その溶液をバーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ダイ・コートなどを用いて、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱フィルム、スチールベルト、金属箔などの平板または曲板(ロール)上に流延し、溶剤を蒸発除去する乾式法あるいは溶液を凝固液で固化する湿式法等を用いることにより製造できる。
かくして得られる成形品またはフィルムは、その優れた耐熱性を活かして、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、光学機器部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨などの種々の用途に用いることができる。具体的用途としては、例えば、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバー、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変性器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される光学機器、精密機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルターおよび点火装置ケースなどが挙げられる。また、透明性、耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTVなどの撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなど、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(ビデオディスク(VD)、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、ミニディスク(MD)、レーザーディスク(登録商標)(LD)等)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクターなど、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導光フィルム、カバーなど、自動車などの輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、グレージングなど、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セルなど、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、バスタブ用材料など、これら各種の用途にとって極めて有用である。
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で使用した各種物性の測定方法を記載する。
(1)重量平均分子量(絶対分子量)
共重合体(A)をジメチルホルムアミドに溶解して、測定サンプルとした。ジメチルホルムアミドを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて、重量平均分子量(絶対分子量)を測定した。
共重合体(A)をジメチルホルムアミドに溶解して、測定サンプルとした。ジメチルホルムアミドを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて、重量平均分子量(絶対分子量)を測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。
(3)熱変形温度
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、共重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、127mm×12.7mm×6.4mmの板状試験片を得た。得られた板状試験片を用い、ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い荷重たわみ温度を測定し、耐熱性を評価した。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、共重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、127mm×12.7mm×6.4mmの板状試験片を得た。得られた板状試験片を用い、ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い荷重たわみ温度を測定し、耐熱性を評価した。
(4)透明性(全光線透過率、ヘイズ)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、共重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、70mm×70mm×2mmの成形品を得た。日本電色工業社製ヘイズメーターNDH−300Aを用いて、得られた成形品の23℃での全光線透過率(%)、ヘイズ(曇度)(%)を測定し、透明性を評価した。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、共重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、70mm×70mm×2mmの成形品を得た。日本電色工業社製ヘイズメーターNDH−300Aを用いて、得られた成形品の23℃での全光線透過率(%)、ヘイズ(曇度)(%)を測定し、透明性を評価した。
なお、厚さが2mmでない成形品について測定をする際には、該成形品をいったん粉砕し、上記の条件で70mm×70mm×2mmの成形品を成形し、測定すればよい。
(5)アイゾッド衝撃強度(Izod衝撃値)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、共重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、ASTM D−256に従い、厚み12.7mmのノッチ付試験片を得た。得られた試験片を用いてASTM D−256に従い、23℃にてアイゾッド衝撃強度を測定し、衝撃特性を評価した。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、共重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、ASTM D−256に従い、厚み12.7mmのノッチ付試験片を得た。得られた試験片を用いてASTM D−256に従い、23℃にてアイゾッド衝撃強度を測定し、衝撃特性を評価した。
(6)破断伸度
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、幅200mmのフィルム製造用T−ダイを備えた40mm直径のベント付き単軸押出機に供し、280℃で10kg/hの速度で押出し、厚みが0.1mmのフィルムを得た。得られたフィルムからASTM−1号ダンベルを打ち抜いて試験片を作成し、JIS K−7113に従い、引張破断伸度を測定した。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、幅200mmのフィルム製造用T−ダイを備えた40mm直径のベント付き単軸押出機に供し、280℃で10kg/hの速度で押出し、厚みが0.1mmのフィルムを得た。得られたフィルムからASTM−1号ダンベルを打ち抜いて試験片を作成し、JIS K−7113に従い、引張破断伸度を測定した。
(7)光弾性係数
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、メチルエチルケトンに溶解させ、25重量%濃度の溶液を得た。得られた溶液を用いて、流延法により、厚さ約100μm(100±5μm)の無配向フィルムを得た。該無配向フィルムを共重合体(A)のガラス転移温度+5℃で1.5倍に0.5mm/secの速度で一軸延伸を行い、応力(σ)の測定を行った。この延伸フィルムをASTM D542に準じて、エリプソメーター(大塚電子株式会社製、LCDセルギャップ検査装置 RETS−1100)を用いて23℃で、レーザー光をフィルムサンプル面に対して90°の角度で照射し、透過光の633nmでのリターデーション(Re)を測定した。また、ミツトヨ製デジマティックインジケーターを用いて、上記延伸フィルムの23℃での厚み(d)を測定し、これらを基に下記式により光弾性係数を算出した。
光弾性係数=Re(nm)/d(nm)/σ(Pa)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、メチルエチルケトンに溶解させ、25重量%濃度の溶液を得た。得られた溶液を用いて、流延法により、厚さ約100μm(100±5μm)の無配向フィルムを得た。該無配向フィルムを共重合体(A)のガラス転移温度+5℃で1.5倍に0.5mm/secの速度で一軸延伸を行い、応力(σ)の測定を行った。この延伸フィルムをASTM D542に準じて、エリプソメーター(大塚電子株式会社製、LCDセルギャップ検査装置 RETS−1100)を用いて23℃で、レーザー光をフィルムサンプル面に対して90°の角度で照射し、透過光の633nmでのリターデーション(Re)を測定した。また、ミツトヨ製デジマティックインジケーターを用いて、上記延伸フィルムの23℃での厚み(d)を測定し、これらを基に下記式により光弾性係数を算出した。
光弾性係数=Re(nm)/d(nm)/σ(Pa)
(8)屈折率、屈折率差
本発明の熱可塑性樹脂組成物にアセトンを加え、4時間還流した後、9,000rpmで30分間遠心分離することにより、アセトン可溶分(A成分)と不溶分(B成分)に分離した。これらを、それぞれ60℃で5時間減圧乾燥した。得られたそれぞれの固形物を250℃でプレス成形し、厚さ0.1mmのフィルムとした後、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製、DR−M2)によって、23℃、589nm波長における屈折率を測定した。A成分の屈折率とB成分の屈折率の差の絶対値を屈折率差とした。
本発明の熱可塑性樹脂組成物にアセトンを加え、4時間還流した後、9,000rpmで30分間遠心分離することにより、アセトン可溶分(A成分)と不溶分(B成分)に分離した。これらを、それぞれ60℃で5時間減圧乾燥した。得られたそれぞれの固形物を250℃でプレス成形し、厚さ0.1mmのフィルムとした後、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製、DR−M2)によって、23℃、589nm波長における屈折率を測定した。A成分の屈折率とB成分の屈折率の差の絶対値を屈折率差とした。
(9)各成分組成
上記(8)で分離抽出したアセトン可溶分(A成分)については、ジメチルスルホキシド重溶媒中、30℃で1H−NMRを測定し、各共重合単位の組成決定を行った。また、上記(8)で分離抽出したアセトン不溶分(B成分)は、赤外分光法で成分の特定を行った。
上記(8)で分離抽出したアセトン可溶分(A成分)については、ジメチルスルホキシド重溶媒中、30℃で1H−NMRを測定し、各共重合単位の組成決定を行った。また、上記(8)で分離抽出したアセトン不溶分(B成分)は、赤外分光法で成分の特定を行った。
(10)黄色度(Yellowness Index)(YI)
共重合体(A)、もしくは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を、共重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、70mm×70mm×2mm成形品を得た。得られた成形品のYI値を、JIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
共重合体(A)、もしくは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を、共重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、70mm×70mm×2mm成形品を得た。得られた成形品のYI値を、JIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
なお、厚さが2mmでない成形品について測定をする際には、該成形品をいったん粉砕し、上記の条件で70mm×70mm×2mmの成形品を成形し、測定すればよい。
(11)流動性
本発明の熱可塑性樹脂組成物について、温度:共重合体(A)のガラス転移温度+150℃、荷重:37.3Nでのメルトインデックス(MI値)をISO−R1133法に従い測定した。
本発明の熱可塑性樹脂組成物について、温度:共重合体(A)のガラス転移温度+150℃、荷重:37.3Nでのメルトインデックス(MI値)をISO−R1133法に従い測定した。
(12)耐溶剤性
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、共重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、試験片として、図1に示す12.5mm×125mm×1.6mmの板状成形品1を得た。該成形品を、図1に示すように、1/4楕円治具2の湾曲面3に沿わして固定後、薬液としてワックスリムーバー(ユシロ化学社製、「ワックスリムーバーCPC」)、またはトルエン/メチルイソブチルケトン(MIBK)=50/50重量%混合溶媒を成形品表面全体に塗布した。23℃環境下で24時間放置後、クラックの発生有無およびその位置を確認した。図1はこの評価における1/4楕円治具および板状成形品の概略図である。そのクラック発生位置の最短長軸方向長(X)を測定し、下式により臨界歪みτ(%)を算出し、0.6%以上のものを○、0.6%未満のものを×と判定した。
τ= b / 2a2 {1−(a2−b2)X2/ a4 }−3/2× t × 100
τ:臨界歪み(%)
a:治具の長軸(127mm)
b:治具の短軸(38.1mm)
t:試験片の厚み(1.6mm)
X:クラック発生位置の最短長軸方向長(mm)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、共重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、試験片として、図1に示す12.5mm×125mm×1.6mmの板状成形品1を得た。該成形品を、図1に示すように、1/4楕円治具2の湾曲面3に沿わして固定後、薬液としてワックスリムーバー(ユシロ化学社製、「ワックスリムーバーCPC」)、またはトルエン/メチルイソブチルケトン(MIBK)=50/50重量%混合溶媒を成形品表面全体に塗布した。23℃環境下で24時間放置後、クラックの発生有無およびその位置を確認した。図1はこの評価における1/4楕円治具および板状成形品の概略図である。そのクラック発生位置の最短長軸方向長(X)を測定し、下式により臨界歪みτ(%)を算出し、0.6%以上のものを○、0.6%未満のものを×と判定した。
τ= b / 2a2 {1−(a2−b2)X2/ a4 }−3/2× t × 100
τ:臨界歪み(%)
a:治具の長軸(127mm)
b:治具の短軸(38.1mm)
t:試験片の厚み(1.6mm)
X:クラック発生位置の最短長軸方向長(mm)
<参考例(1)水酸基とエステル基を有する単量体の合成>
特許文献(特開H7−285906号公報)に記載の以下の方法によって水酸基とエステル基を有する単量体を合成した。
特許文献(特開H7−285906号公報)に記載の以下の方法によって水酸基とエステル基を有する単量体を合成した。
温度計、ガス吹き込み管、冷却管、攪拌装置および水浴を備えた1000mlの4つ口フラスコに、メチルアクリレート 430g(5モル)、35重量%ホルムアルデヒド水溶液51g(0.6 モル)、30重量%トリメチルアミン水溶液59g(0.3 モル)、および、p−メトキシフェノール0.4gを仕込んだ。メチルアクリレートに対するp−メトキシフェノールの割合は、約1000 ppmである。その後、上記の反応溶液に空気を吹き込みながら、該反応溶液を40℃で6時間攪拌して反応させた。
反応終了後、反応溶液を有機相と水相とに分液した。次に、上記の水相に対して、該水相と同量のメチルアクリレート(抽媒)を用いて抽出操作を行い、該抽媒を有機相に加えた。その後、上記有機相の分別蒸留を行い、63℃〜67℃/5mmHgの留分である無色透明液体状の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルを得た。
反応終了後、反応溶液を有機相と水相とに分液した。次に、上記の水相に対して、該水相と同量のメチルアクリレート(抽媒)を用いて抽出操作を行い、該抽媒を有機相に加えた。その後、上記有機相の分別蒸留を行い、63℃〜67℃/5mmHgの留分である無色透明液体状の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルを得た。
<参考例(2)原重合体(a)の合成>
(a−1)
窒素吹き込み管、冷却管、撹拌装置、滴下漏斗、および水浴を備えた1リットルの四つ口フラスコに、窒素パージを行いながら、参考例(1)で得られた2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル20重量部、メタクリル酸メチル80重量部、溶媒としてトルエン100重量部、および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5部を仕込み、100℃で4時間重合を行った。次にこの重合反応液を室温まで冷却した後、重合反応液に対して過剰のn−ヘキサン中に投入して重合物を沈殿させ、これを濾過して分別した。
(a−1)
窒素吹き込み管、冷却管、撹拌装置、滴下漏斗、および水浴を備えた1リットルの四つ口フラスコに、窒素パージを行いながら、参考例(1)で得られた2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル20重量部、メタクリル酸メチル80重量部、溶媒としてトルエン100重量部、および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5部を仕込み、100℃で4時間重合を行った。次にこの重合反応液を室温まで冷却した後、重合反応液に対して過剰のn−ヘキサン中に投入して重合物を沈殿させ、これを濾過して分別した。
続いて、得られた重合物を80℃にて熱風乾燥させることにより、原重合体を白色粉末として得た。このとき得られた原重合体の収率は73%であった。
(a−2)
窒素吹き込み管、冷却管、撹拌装置、滴下漏斗、および水浴を備えた1リットルの四つ口フラスコに、窒素パージを行いながら、メタリルアルコール30重量部、溶媒としてベンゼン100重量部、および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5部を仕込んだ。次いで、浴温を65℃にて撹拌しながら、メタクリル酸メチル70重量部を滴下漏斗により連続的に3時間で添加した。引き続き3時間重合を行った後、重合反応液を室温まで冷却した。次いで、この重合反応液を約10倍量のn−ヘキサン中に投入して重合物を沈殿させ、これを濾過して分別した。続いて、得られた重合物を80℃にて熱風乾燥させることにより、原重合体(a−2)を白色粉末として得た。このときの収率は65%であった。
窒素吹き込み管、冷却管、撹拌装置、滴下漏斗、および水浴を備えた1リットルの四つ口フラスコに、窒素パージを行いながら、メタリルアルコール30重量部、溶媒としてベンゼン100重量部、および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5部を仕込んだ。次いで、浴温を65℃にて撹拌しながら、メタクリル酸メチル70重量部を滴下漏斗により連続的に3時間で添加した。引き続き3時間重合を行った後、重合反応液を室温まで冷却した。次いで、この重合反応液を約10倍量のn−ヘキサン中に投入して重合物を沈殿させ、これを濾過して分別した。続いて、得られた重合物を80℃にて熱風乾燥させることにより、原重合体(a−2)を白色粉末として得た。このときの収率は65%であった。
<参考例(3)共重合体(A)の合成>
(A−1)
原重合体(a−1)を原重合体の100倍量のジメチルスルホキシドに溶解させた。この溶液を窒素気流下、170℃にて10時間加熱した後、反応溶液を過剰のn−ヘキサンに投入して再沈した。次に得られた沈殿物を100℃、1mmHgの減圧下にて5時間乾燥して、共重合体(A−1)を得た。
(A−1)
原重合体(a−1)を原重合体の100倍量のジメチルスルホキシドに溶解させた。この溶液を窒素気流下、170℃にて10時間加熱した後、反応溶液を過剰のn−ヘキサンに投入して再沈した。次に得られた沈殿物を100℃、1mmHgの減圧下にて5時間乾燥して、共重合体(A−1)を得た。
(A−2)
原重合体(a−2)を窒素気流下、200℃にて2時間、熱処理することにより、共重合体(A−2)を得た。
原重合体(a−2)を窒素気流下、200℃にて2時間、熱処理することにより、共重合体(A−2)を得た。
<参考例(4)マレイミド共重合PMMAの合成>
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載の懸濁安定剤)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、メタクリル酸メチル80重量部、N−フェニルマレイミド20重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.4重量%をそれぞれ反応系を撹拌しながら添加し、60℃に昇温し懸濁重合を開始した。15分かけて反応温度を65℃まで昇温した後、120分かけて100℃まで昇温し100℃を120分間保ち重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応液の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状のマレイミド共重合PMMAを得た。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載の懸濁安定剤)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、メタクリル酸メチル80重量部、N−フェニルマレイミド20重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.4重量%をそれぞれ反応系を撹拌しながら添加し、60℃に昇温し懸濁重合を開始した。15分かけて反応温度を65℃まで昇温した後、120分かけて100℃まで昇温し100℃を120分間保ち重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応液の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状のマレイミド共重合PMMAを得た。
次いで、100℃で3時間乾燥した参考例(3)および参考例(4)を射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:ガラス転移温度+150℃、金型温度:80℃、射出速度:90cm3/秒、射出時間:10秒、冷却時間:30秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。
1H−NMRにより、定量した各共重合成分組成および各種特性評価結果を表1に示す。
<参考例(5)ゴム質含有重合体(B)の合成>
(B−1)
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部、過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル53重量部、スチレン17重量部、メタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、参考例(1)で得られた2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル6重量部、メタクリル酸メチル24重量部、過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(B−1)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は160nmであった。
(B−1)
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部、過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル53重量部、スチレン17重量部、メタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、参考例(1)で得られた2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル6重量部、メタクリル酸メチル24重量部、過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(B−1)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は160nmであった。
(B−2)
三菱レイヨン社製”メタブレン(登録商標)W377”(コア;アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)を使用した。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は150nmであった。
三菱レイヨン社製”メタブレン(登録商標)W377”(コア;アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)を使用した。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は150nmであった。
(B−3)
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部、過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル53重量部、スチレン17重量部、メタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部、過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(B−3)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は155nmであった。
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部、過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル53重量部、スチレン17重量部、メタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部、過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(B−3)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は155nmであった。
(B−4)
下記により得られたグラフト共重合体(B−4)を用いた。
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm) 50重量部(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部
下記により得られたグラフト共重合体(B−4)を用いた。
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm) 50重量部(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、スチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合物50重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(B−4)を得た。このグラフト共重合体(B−4)のグラフト率は45%、アセトン可溶分のメチルエチルケトン溶媒、30℃での極限粘度は0.36dl/gであった。
〔実施例1〜11、比較例1〜6〕
上記の参考例(3)で得られた共重合体(A)および参考例(5)で得られたゴム質重合体(B)を表2に示した組成で配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、100℃で3時間乾燥したペレットを射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:共重合体(A)のガラス転移温度+150℃、金型温度:80℃、射出速度:90cm3/秒、射出時間:10秒、冷却時間:30秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。
上記の参考例(3)で得られた共重合体(A)および参考例(5)で得られたゴム質重合体(B)を表2に示した組成で配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、100℃で3時間乾燥したペレットを射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:共重合体(A)のガラス転移温度+150℃、金型温度:80℃、射出速度:90cm3/秒、射出時間:10秒、冷却時間:30秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。
なお、比較例4、5、6には、共重合体(A)の代わりに、それぞれPMMA(「デルペット(登録商標)80N」(旭化成社製))、参考例(4)で得られたマレイミド共重合PMMA、およびPC(「ユーピロン(登録商標)S3000」(三菱エンジニアプラスチックス社製)を使用した。
かくして得られた試験片について、評価した結果を表3に示す。
実施例1〜11および比較例1〜6の結果より、本発明の熱可塑性樹脂組成物は高度な耐熱性、機械特性を有すると同時に、無色透明性に優れ、かつ高度な光学等方性、耐溶剤性を有していることが分かる。中でも、特定の多層構造を有したゴム質含有重合体(B)を含有させることにより、極めて高度な透明性と耐衝撃性などの機械特性の兼備が可能となることがわかる。また、共重合体(A)を、特定のラクトン環構造を含有させることで(実施例8〜11)、流動性に極めて優れる熱可塑性樹脂組成物が得られることがわかる。
一方、共重合体(A)にゴム質重合体を配合しない場合(比較例1,2)、引張特性、耐衝撃性に優れた組成物は得られないことがわかる。
また、共重合体(A)とゴム質含有重合体(B)との屈折率差が大きく、全光線透過率が本発明の範囲外の場合(比較例3)、透明性に優れた組成物は得られない。
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物は、PMMAおよびマレイミド共重合PMMAを使用した場合(比較例4、5)やPC(比較例6)と比較しても、高度な無色透明性を有し、かつ優れた耐熱性、耐衝撃性、光学等方性、耐溶剤性を併せ持つ材料となりうることがわかる。
本発明は、耐熱性、無色性、流動性、機械特性に極めて優れ、さらに好ましい態様においては透明性にも優れた熱可塑性樹脂組成物および該熱可塑性樹脂組成物を含む成形品およびフィルムを提供することができる。
Claims (15)
- 下記一般式(1)で表されるラクトン環構造単位を5重量%以上含有する共重合体(A)
および内部に少なくとも1層以上のゴム質層を有する多層構造重合体あるいはグラフト共重合体からなるゴム質含有重合体(B)を含有し、厚み2mmあたりの全光線透過率が90%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 共重合体(A)が、前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位と(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位とを有する共重合体、前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位と(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位と(iii) 下記一般式(3)で表されるアリルアルコール系成分単位とを有する共重合体、および前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位と(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位と(iii)下記一般式(3)で表されるアリルアルコール系成分単位と(iv)その他のビニル系単量体単位とを有する共重合体から選ばれた少なくとも1種の共重合体である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 共重合体(A)が、(i)(ii)(iii)(iv)の合計を100重量%としたときに、前記一般式(1)で表される(i)ラクトン環構造単位5〜80重量%、(ii)メタクリル酸アルキルエステル成分単位20〜95重量%、前記一般式(3)で表される(iii)アリルアルコール系成分単位0〜5重量%、および(iv)その他のビニル系単量体単位0〜75重量%を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 多層構造重合体の最外層を構成する重合体が上記一般式(1)または(2)で表されるラクトン環構造単位を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 多層構造重合体のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ガラス転移温度が100℃以上である請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 厚み2mmあたりのヘイズが3%以下である請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱変形温度が100℃以上である請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 共重合体(A)およびゴム質重合体(B)の屈折率差が0.02以下である請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 共重合体(A)およびゴム質重合体(B)の屈折率差が0.01以下である請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 光弾性係数が5×10−12Pa−1以下である請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および水酸基含有単位を含む重合体、または、水酸基およびエステル基を含有する単位を含む重合体を最外層とし、内部に少なくとも1層以上のゴム質層を有する多層構造重合体を、溶融混練によりアクリル系共重合体(A)と混合すると同時に、多層構造重合体の最外層を分子内環化反応せしめて上記一般式(1)または(2)で表されるラクトン環構造単位を含有する重合体を最外層とする多層構造重合体を生成せしめることを特徴とする請求項5〜12のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
- 成形品がフィルムである請求項14に記載の成形品。
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-
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