JP2006299005A - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明性に優れ、かつ耐熱性、耐衝撃性に優れており、特にゴム成分配合による着色悪化の少ない生産性に優れる熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】
(i)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物構造単位25〜50重量%、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%、(iii)不飽和カルボン酸単位10重量%以下を有する熱可塑性重合体(A)および、ゴム質含有重合体(B)からなる熱可塑性樹脂組成物を製造する際に、共重合体(a)を加熱処理装置内で加熱処理し、脱水反応および/または脱アルコール反応を行うことにより熱可塑性重合体(A)を生成せしめる反応の反応率が20%以上に到達した段階でゴム質含有重合体(B)を添加し、同一加熱処理装置内で、脱水反応および/または脱アルコール反応と加熱混合を一度に行うことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【選択図】なし
【解決手段】
(i)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物構造単位25〜50重量%、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%、(iii)不飽和カルボン酸単位10重量%以下を有する熱可塑性重合体(A)および、ゴム質含有重合体(B)からなる熱可塑性樹脂組成物を製造する際に、共重合体(a)を加熱処理装置内で加熱処理し、脱水反応および/または脱アルコール反応を行うことにより熱可塑性重合体(A)を生成せしめる反応の反応率が20%以上に到達した段階でゴム質含有重合体(B)を添加し、同一加熱処理装置内で、脱水反応および/または脱アルコール反応と加熱混合を一度に行うことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【選択図】なし
Description
本発明は、透明性に優れ、かつ耐熱性、耐衝撃性に優れており、特にゴム成分配合による着色悪化の少ない生産性に優れる熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
ポリメタクリル酸メチル(以下PMMAと称する)やポリカーボネート(以下PCと称する)といった非晶性樹脂は、その透明性や寸法安定性を活かし、光学材料、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。
近年、これらの樹脂は、特に光学レンズ、プリズム、ミラー、光ディスク、光ファイバー、液晶ディスプレイ用シートまたはフィルム、導光板などの、より高性能な光学材料にも幅広く使用されるようになっており、樹脂に要求される光学特性、成形加工性および耐熱性もより高度なものになっている。
また現在、これらの透明樹脂は、テールランプやヘッドランプといった自動車等の灯具部材としても使用されている。近年、車内空間を大きくするためやガソリン燃費を改良するために、テールランプレンズやインナーレンズ、ヘッドランプ、シールドビーム等の各種レンズと光源の間隔を小さくすること、あるいは、部品の薄肉化が図られる傾向にあり、優れた成形加工性が要求されるようになっている。また、車両は過酷な条件下で使用されるため、高温多湿下での形状変化が小さいことや、優れた耐傷性、耐候性および耐油性も要求される。
しかしながら、PMMAは、優れた透明性および耐候性を有するものの、耐熱性および耐衝撃性が十分ではないといった問題があった。一方、PCは、耐熱性および耐衝撃性に優れるものの、光学的歪みである複屈折率が大きく、成形物に光学的異方性が生じること、そして成形加工性、耐傷性および耐溶剤性に著しく劣るといった問題があった。
そのため、PMMAの耐熱性を改良する目的で、耐熱性付与成分としてマレイミド単量体あるいは無水マレイン酸単量体等を導入した樹脂が開発されている。しかし、マレイミド単量体は高価であると同時に反応性が低く、無水マレイン酸は熱安定性が悪いという問題があった。
これらの問題点を解決する方法として、不飽和カルボン酸単量体単位を含有する共重合体を押出機を用いて加熱して環化反応させることにより得られるグルタル酸無水物含有単位を含有する共重合体が開示されている(特許文献1、2参照)。また、耐衝撃性などの機械特性を改良する方法として、グルタル酸無水物単位を含有する共重合体に、ゴム質含有重合体を添加する方法が開示されている(特許文献3、4、5、6参照)。しかしながら、これら特許文献に開示された方法においては、耐衝撃性などの機械特性は改良されるものの、樹脂組成物の着色、透明性が著しく損なわれるといった問題点があった。また、ゴム質含有重合体を添加する方法として、グルタル酸無水物含有単位を含有する共重合体とゴム質含有重合体を加熱溶融混合する方法および、不飽和カルボン酸単量体単位を含有する共重合体とゴム質含有重合体を同時に押出機に供給し、環化反応と加熱溶融混合とを同時に行う方法が開示されている(特許文献7、8参照)。しかしながら、これら特許文献に開示された方法においては、耐衝撃性などの機械特性は改良されるものの、樹脂組成物の色調においては、用途によって依然として不十分であるという問題点があった。以上述べたように、近年要求されるより高度な光学特性、すなわち透明性や光学等方性を有しながら、良好な耐衝撃性などの機械特性を兼備した着色の少ない樹脂組成物は知られていなかった。
特開昭49−85184号公報(第1−2頁、実施例)
特開平1−103612号公報(第1−2頁、実施例)
特開昭60−67557号公報(第1−2頁、実施例)
特開昭60−120734号公報(第1−2頁、実施例)
特開平4−277546号公報(第1−2頁、実施例)
特開平5−186659号公報(第1−2頁、実施例)
特開2004−292812号公報(第1−2頁、実施例)
特開2005−055884号公報(第1−2頁、実施例)
本発明は、透明性に優れ、かつ耐熱性、耐衝撃性にも優れており、特にゴム成分配合による着色悪化の少ない生産性に優れる熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)(i)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物構造単位25〜50重量%、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%、(iii)不飽和カルボン酸単位10重量%以下を有する熱可塑性重合体(A)および、ゴム質含有重合体(B)からなる熱可塑性樹脂組成物を製造する際に、(ii) 不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および(iii)不飽和カルボン酸単位を含有する共重合体(a)を加熱処理装置内で加熱処理し、脱水反応および/または脱アルコール反応を行うことにより熱可塑性重合体(A)を生成せしめる反応の反応率が20%以上に到達した段階でゴム質含有重合体(B)を添加し、同一加熱処理装置内で、脱水反応および/または脱アルコール反応と加熱混合を一度に行うことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(2)脱水反応および/または脱アルコール反応の反応率が50%以上に到達した段階でゴム質含有重合体(B)を添加することを特徴とする(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(3)加熱処理装置が二軸・単軸複合型連続混練押出装置であることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(4)熱可塑性重合体(A)が、上記(i) (ii) (iii)の単位にさらに、 (iv)その他のビニル単量体単位を10重量%以下有する共重合体である(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(5)前記ゴム質含有重合体(B)が、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有する多層構造重合体であることを特徴とする(4)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(6)多層構造重合体の最外殻層を構成する重合体が上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有する(5)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(7)多層構造重合体のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する(5)または(6)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(8)多層構造重合体が、最外殻層を構成する重合体に上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有し、かつ、内部のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する(5)〜(7)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
本発明の製造方法により、透明性に優れ、かつ耐熱性、耐衝撃性にも優れており、特にゴム成分配合による着色悪化の少ない生産性に優れる熱可塑性樹脂組成物を得ることが出来る。
以下、本発明の熱可塑性重合体の製造方法について具体的に説明する。
本発明の熱可塑性重合体(A)とは、上記のごとく、下記一般式(1)
中でも(i)上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位および(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有する共重合体が好ましい。
本発明の熱可塑性重合体(A)中の前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位(i)の含有量は、好ましくは熱可塑性重合体(A)100重量%中に25〜50重量%、より好ましくは30〜45重量%である。グルタル酸無水物含有単位が25重量%未満である場合、耐熱性向上効果が小さくなるだけでなく、複屈折特性(光学等方性)や耐溶剤性が低下する傾向がある。
また、本発明の熱可塑性重合体(A)中の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)の含有量は、熱可塑性重合体(A)100重量%中に好ましくは50〜75重量%、より好ましくは55〜70重量%である。
本発明の熱可塑性重合体(A)における各成分単位の定量には、一般に赤外分光光度計やプロトン核磁気共鳴(1H−NMR)測定機が用いられる。赤外分光法では、グルタル酸無水物含有単位は、1800cm−1および1760cm−1の吸収が特徴的であり、不飽和カルボン酸単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単位から区別することができる。また、1H−NMR法では、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。例えば、グルタル酸無水物含有単位、メタクリル酸単位、およびメタクリル酸メチル単位からなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5〜1.5ppmのピークはメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、上記に加えて、他の共重合成分としてスチレンを含有する共重合体の場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
また、本発明の熱可塑性重合体は、上記(i)、(ii)の単位に加えて、さらに(iii)不飽和カルボン酸単位および/または、(iv)その他のビニル単量体単位を含有することができる。ここで、(iv)その他のビニル単量体単位とは、上記(i)〜(iii)のいずれにも属さない共重合可能なビニル単量体単位である。
本発明の熱可塑性重合体(A)100重量%中に含有される不飽和カルボン酸単位(iii)の含有量は10重量%以下、すなわち0〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5重量%、最も好ましくは0〜1重量%である。不飽和カルボン酸単位(iii)が10重量%を超える場合には、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、その他のビニル単量体単位(iv)の含有量は、熱可塑性重合体(A)100重量%中、10重量%以下、すなわち0〜10重量%の範囲であることが好ましい。また、その他のビニル単量体単位(iv)としては、芳香環を含まないビニル単量体単位が好ましい。スチレンなどの芳香族ビニル単量体単位の場合、含有量が高いと、無色透明性、光学等方性、耐溶剤性が低下する傾向があるので、含有量は5重量%以下、すなわち0〜5重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜3重量%である。
前記不飽和カルボン酸単位(iii)としては、下記一般式(2)で表される構造を有するものが好ましい。
前記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)としては、下記一般式(3)で表される構造を有するものが好ましい。
また熱可塑性重合体(A)は、重量平均分子量が3万〜15万であることが好ましく、より好ましくは5万〜13万、特に7万〜11万が好ましい。重量平均分子量が、この範囲にあることにより、後工程の加熱脱気時の着色を低減でき、黄色度の小さい重合体を得ることができるとともに、成形品の機械的強度も高くすることができる。なお、本発明でいう重量平均分子量とは、多角度光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC−MALLS)で測定した絶対分子量での重量平均分子量を示す。
また、熱可塑性重合体(A)はガラス転移温度(Tg)が130℃以上であることが耐熱性の面で好ましい。ガラス転移温度は、140℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。また、上限としては、通常、170℃程度である。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定したガラス転移温度(Tg)である。
本発明で用いる熱可塑性重合体(A)は、黄色度(Yellowness Index)の値が5以下と着色が極めて抑制され、さらに好ましい態様においては4以下、最も好ましい態様においては、3以下と極めて優れた無色性を有する。これによって、熱可塑性重合体(A)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物の黄色度も、5以下、より好ましくは4以下、最も好ましくは3以下とすることができ、極めて優れた無色性を有する成形品やフィルムを得ることができるため好ましい。また、熱可塑性重合体(A)の黄色度の値が大きい場合は、熱可塑性重合体(A)の一部が熱分解を起こしており、熱可塑性重合体(A)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械物性が低下する傾向にある。この点でも、熱可塑性重合体(A)の黄色度が上記の範囲にあることが好ましい。なお、ここでいう黄色度(Yellowness Index)とは、熱可塑性重合体(A)もしくは本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出成形し、得られた厚さ1mm成形品をJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した値である。
このような本発明の上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有する熱可塑性重合体(A)は、基本的には以下に示す方法により製造することができる。すなわち、後の加熱工程により上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位(i)を与える不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を共重合させ、共重合体(a)を得る。その際、前記その他のビニル単量体単位(iv)を含む場合には該単位を与えるビニル単量体を共重合させてもよい。得られた共重合体(a)を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱水反応および/または脱アルコール反応による分子内環化反応を行わせることにより、熱可塑性重合体(A)を製造することができる。この場合、典型的には、共重合体(a)を加熱することにより、隣接する2単位の不飽和カルボン酸単位(iii)のカルボキシル基の間の脱水反応により、あるいは、隣接する不飽和カルボン酸単位(iii)と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)の間の脱アルコール反応により、1単位の前記(i)グルタル酸無水物含有単位が生成される。
この際に用いられる不飽和カルボン酸単量体としては、他のビニル化合物と共重合させることが可能ないずれの不飽和カルボン酸単量体も使用可能である。好ましい不飽和カルボン酸単量体として、下記一般式(4)
で表される化合物、マレイン酸、および無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸またはメタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上を用いることができる。なお、上記一般式(4)で表される不飽和カルボン酸単量体は、共重合すると上記一般式(2)で表される構造の不飽和カルボン酸単位(iii)を与える。
また不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の好ましい例として、下記一般式(5)で表されるものを挙げることができる。
これらのうち、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが特に好適である。なお、上記一般式(5)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は、共重合すると上記一般式(3)で表される構造の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)を与える。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の好ましい具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−へキシル、メタクリル酸n−へキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルおよびメタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
また、本発明で用いる共重合体(a)の製造においては、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のビニル単量体を用いてもかまわない。このその他のビニル単量体は、共重合すると前記のその他のビニル単量体単位(iv)を与える。その他のビニル単量体の好ましい具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができる。透明性、光学等方性および耐溶剤性の点で芳香環を含まない単量体がより好ましく使用できる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
共重合体(a)の重合方法については、基本的にはラジカル重合による、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、沈殿重合等の公知の重合方法を用いることができる。不純物がより少ない点で溶液重合、塊状重合、懸濁重合、沈殿重合が好ましい。
重合温度については、色調の観点から、95℃以下の重合温度で重合することが好ましい。さらに加熱処理後の着色をより抑制するために、好ましい重合温度は85℃以下であり、特に好ましくは75℃以下である。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、50℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上である。重合収率あるいは重合速度を向上させる目的で、重合進行に従い重合温度を昇温することも可能である。この場合も、昇温する上限温度は95℃以下に制御することが好ましく、重合開始温度も75℃以下の比較的低温で行うことが好ましい。また重合時間は、必要な重合度を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から60〜360分間の範囲が好ましく、90〜180分間の範囲が特に好ましい。
本発明において、共重合体(a)の製造時に用いられるこれらの単量体混合物の好ましい割合は、該単量体混合物全体を100重量%として、不飽和カルボン酸単量体が15〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は50〜85重量%、より好ましくは55〜80重量%である。これらに共重合可能な他のビニル単量体を用いる場合、その好ましい割合は0〜10重量%である。他のビニル単量体が、芳香族ビニル単量体である場合、その好ましい割合は0〜5重量%であり、より好ましい割合は0〜3重量%である。
不飽和カルボン酸単量体の含有量が15重量%未満の場合には、共重合体(a)の加熱により、熱可塑性重合体(A)を製造する際に、上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位(i)の生成量が少なくなり、熱可塑性重合体(A)の耐熱性向上効果が小さくなる傾向がある。一方、不飽和カルボン酸単量体(iii)の含有量が50重量%を超える場合には、共重合体(a)の加熱により、熱可塑性重合体(A)を製造する際に、不飽和カルボン酸単位(iii)が多量に残存する傾向があり、熱可塑性重合体(A)の無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、前記のように、本発明の熱可塑性重合体(A)は、重量平均分子量が3万〜15万であることが好ましい。このような分子量を有する熱可塑性重合体(A)は、共重合体(a)の製造時に、共重合体(a)を重量平均分子量で3万〜15万に予め制御しておくことにより、達成することができる。
共重合体(a)の分子量制御方法については、例えば、アゾ化合物、過酸化物等のラジカル重合開始剤の添加量、あるいはアルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤の添加量等により、制御することができる。特に、重合の安定性、取り扱いの容易さ等から、連鎖移動剤であるアルキルメルカプタンの添加量を制御する方法が好ましく使用することができる。
本発明に使用されるアルキルメルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでもt−ドデシルメルカプタンまたはn−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
これらアルキルメルカプタンの添加量としては、好ましい分子量に制御するために、単量体混合物の全量100重量部に対して、0.2〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.3〜4.0重量部、さらに好ましくは0.4〜3.0重量部である。
本発明における共重合体(a)を加熱処理し、脱水反応および/または脱アルコール反応により分子内環化反応を行い、グルタル酸無水物含有単位を含有する熱可塑性重合体(A)を製造する方法は、特に制限はないが、共重合体(a)をベントを有する加熱した押出機に通す方法や不活性ガス雰囲気または真空下で加熱脱揮する方法が好ましい。酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、系内を窒素などの不活性ガスで十分に置換することが好ましい。特に好ましい加熱処理装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸押出機、二軸・単軸複合型連続混練押出装置、三軸押出機その他の押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機などを用いることができ、とりわけ二軸・単軸複合型連続混練押出装置が色調の面から好ましく使用することができる。
前記二軸・単軸複合型連続押出装置としては、ケーシング内にスクリュー部を形成した第1軸および第2軸が並列に配置された二軸スクリュー部、および二軸スクリュー部より延長された第1軸が配置された単軸スクリュー部を有し、かつ前記二軸スクリュー部と単軸スクリュー部の連通部に流量調節機構を備え、前記ケーシングに二軸スクリュー部に連通する原料供給口を備えるとともに、前記延長された第1軸の端部に連通する吐出口を備えた二軸・単軸複合型連続混練押出装置を用いることが好ましい。
図1は、上記の二軸・単軸複合型連続混練押出装置の平面の断面模式図であり、前記ケーシング1は全体が筒状に形成されている。また、ケーシング1内には、前記第1軸2及び第2軸3が並列する二軸スクリュー部5と、前記第1軸の延長軸部4からなる単軸スクリュー部6とが形成されている。前記ケーシング1における前記第1軸2及び第2軸3のそれぞれの基端部の付近には、二軸スクリュー部5に連通する原料供給口7が成形されている。一方、ケーシング1における前記延長軸部4の先端部側には吐出口8が設けられている。さらに、ケーシング1において、延長軸部分4の基端部側に脱気口9が形成されていることが好ましい。また、原料供給口7以外にも複数のサイドフィード口10がケーシング1の側面或いは上面に設けられており、原料をサイドフィーダーを介して側面から、あるいは上面から直接供給出来る構造となっている。
また、本発明の上記二軸・単軸複合型連続混練押出装置の前記延長軸部4の基端部側におけるケーシング1には、流量調節機構として、バルブ部11が設けられていることが好ましい。バルブ部11は、矢印H方向において前進後退可能な弁体(図示せず)を有する構造で、二軸スクリュー部5から単軸スクリュー部6へ至る溶融樹脂をバイパスさせて流量を調節することが可能となるものである。
また、本発明で使用される二軸・単軸複合型連続混練押出装置の二軸スクリュー部は、異方向回転であり、非噛合型であることが、二軸スクリュー部におけるせん断発熱の抑制の点で好ましい。
上記二軸・単軸複合型連続混練押出装置としては、例えば、CTE社製「HTM50」、「HTM38」を好ましく使用することができる。
また、窒素などの不活性ガスが導入可能な構造を有した装置が、より好ましい。例えば、二軸押出機に、窒素などの不活性ガスを導入する方法としては、ホッパー上部および/または下部より、10〜100リットル/分程度の不活性ガス気流の配管を繋ぐ方法などが挙げられる。
また、窒素などの不活性ガスが導入可能な構造を有した装置が、より好ましい。例えば、二軸押出機に、窒素などの不活性ガスを導入する方法としては、ホッパー上部および/または下部より、10〜100リットル/分程度の不活性ガス気流の配管を繋ぐ方法などが挙げられる。
なお、上記の方法により加熱脱揮する温度は、脱水反応および/または脱アルコール反応により分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜320℃の範囲、特に好ましくは200〜310℃の範囲である。
また、この際の加熱脱揮する時間は、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間が好ましく、より好ましくは2分間〜30分間、とりわけ好ましくは3〜20分間の範囲である。押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機スクリューの長さをL、直径をDとすると、L/Dが40以上110以下であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位が多量に残存するため、加熱成形加工時に反応が再進行し、成形品にシルバーや気泡が見られる傾向や成形滞留時に色調が悪化する傾向がある。押出機のL/Dが110より大きい場合、押出機の機械的強度や構造上の問題のため、現実的な利点が小さくなるため好ましくない。
さらに本発明では、共重合体(a)を上記方法等により加熱する際にグルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリおよび塩化合物から選ばれた1種以上を添加することができる。その添加量は、共重合体(a)100重量部に対し、0.01〜1重量部程度が好ましい。酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩、各種アルキルアンモニウム塩を含むアンモニウム塩等が挙げられる。ただし、その触媒の色が熱可塑性重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。中でも、アルカリ金属を含有する化合物が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられる。とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、および酢酸ナトリウムが好ましく使用することができる。
本発明においては、上記の熱可塑性重合体(A)にゴム質含有重合体(B)を含有せしめることにより、熱可塑性重合体(A)の優れた特性を大きく損なうことなく優れた耐衝撃性を付与することができる。
ゴム質含有重合体(B)としては、1以上のゴム質重合体を含む層と、それとは異種の重合体から構成される1以上の層から構成され、かつ、内部に1層以上のゴム質重合体を含む層を有する構造の、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体や、ゴム質重合体の存在下に、ビニル単量体などからなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体等が好ましく使用できるが、特に多層構造重合体が透明性・着色の少なさの点で優れており、好ましい。
本発明に使用されるコアシェル型の多層構造重合体を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有する多層構造重合体であることが好ましい。
本発明の多層構造重合体において、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル系単量体、シリコーン系単量体、スチレン系単量体、ニトリル系単量体、共役ジエン系単量体、ウレタン結合を生成する単量体、エチレン系単量体、プロピレン系単量体、イソブテン系単量体などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル系単位およびブタジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン系単位から構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせたものから構成されるゴムも好ましい。例えば、(1)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位から構成されるゴム、(2)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位から構成されるゴム、(3)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン系単位から構成されるゴム、および(4)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位から構成されるゴムなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有するゴムが、透明性および機械特性の点から、最も好ましい。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、アリルアクリレート単位およびブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋性成分から構成される共重合体を架橋させたゴムも好ましい。
本発明の多層構造重合体において、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分であることが好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などから選ばれる1種以上の単位を含有する重合体が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を含有する重合体が好ましく、それに加えて不飽和グリシジル基含有単位、不飽和カルボン酸単位および不飽和ジカルボン酸無水物単位から選ばれる1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
上記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではないが、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられる。耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はなく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
上記不飽和グリシジル基含有単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではなく、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルおよび4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和ジカルボン酸無水物単位の原料となる単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸および無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、上記脂肪族ビニル単位の原料となる単量体としては、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどを用いることができる。上記芳香族ビニル単位の原料となる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンおよびハロゲン化スチレンなどを用いることができる。上記シアン化ビニル単位の原料となる単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどを用いることができる。上記マレイミド単位の原料となる単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドおよびN−(クロロフェニル)マレイミドなどを用いることができる。上記不飽和ジカルボン酸単位の原料となる単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸およびフタル酸などを用いることができる。上記その他のビニル単位の原料となる単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを用いることができる。これらの単量体は単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明のゴム質重合体を含有する多層構造重合体において、最外層(シェル層)の種類は、上述のとおり不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位およびその他のビニル単位などの1種類以上の単位を含有する重合体などから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位および不飽和ジカルボン酸無水物単位などを含有する重合体などから選ばれた少なくとも1種が好ましい。
本発明においては、熱可塑性重合体(A)との溶融混練に供するゴム質含有重合体(B)として、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体を最外層とする多層構造重合体を用いることが最も好ましい。
最外層が不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体である場合、加熱することにより、前述した本発明の熱可塑性共重合体(A)の製造時と同様に、分子内環化反応が進行し、前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位が生成する。従って、最外層に不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体を有する多層構造重合体を熱可塑性共重合体(A)に配合して溶融混練する際の加熱により、最外層に前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有する多層構造重合体が得られる。これにより、連続相(マトリックス相)となる熱可塑性共重合体(A)中に、前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有する多層構造重合体が良好に分散することが可能となり、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等の機械特性向上とともに、極めて高度な透明性が発現しうるものと考えられる。
ここでいう不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の原料となる単量体としては、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらにはアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルがより好ましく使用される。
また、不飽和カルボン酸単位の原料となる単量体としては、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましく、さらにはメタクリル酸がより好ましく使用される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中に含有せしめる多層構造重合体の好ましい例としては、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸共重合体であるもの、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、コア層がブタジエン/スチレン共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、およびコア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるものなどが挙げられる。ここで、“/”は共重合を示す。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体であるものも好ましい例として挙げられる。中でも、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸重合体であるものが、連続相(マトリックス相)である熱可塑性共重合体(A)との屈折率を近似させること、および樹脂組成物中での良好な分散状態を得ることが可能となり、近年より高度化する要求を満足しうる透明性が発現するため、好ましく使用することができる。
本発明の多層構造重合体の平均粒子径については、0.01μm以上、1000μm以下であることが好ましい。平均粒子径は、0.02μm以上、100μm以下がより好ましく、0.05μm以上、10μm以下がさらに好ましく、0.05μm以上、1μm以下が最も好ましい。上記の範囲未満では得られる熱可塑性組成物の衝撃強度が低下する傾向を生じ、上記の範囲を越えると透明性が低下する場合がある。なお、多層構造重合体の平均粒子径は、小角光散乱測定によるギニエプロットあるいは透過型電子顕微鏡写真から算出することができる。
本発明の多層構造重合体において、コアとシェルの重量比は、多層構造重合体全体に対して、コア層が50重量%以上、90重量%以下であることが好ましく、さらに、60重量%以上、80重量%以下であることがより好ましい。
本発明の多層構造重合体としては、上述した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもできる。
多層構造重合体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン(登録商標)”、鐘淵化学工業社製”カネエース(登録商標)”、呉羽化学工業社製”パラロイド(登録商標)”、ロームアンドハース社製”アクリロイド(登録商標)”、ガンツ化成工業社製”スタフィロイド(登録商標)”およびクラレ社製”パラペット(登録商標)SA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
また、本発明のゴム質含有重合体(B)として使用されるゴム質含有グラフト共重合体の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル単量体(その具体例は前述と同様である)、不飽和カルボン酸単量体(その具体例は前述と同様である)、芳香族ビニル単量体(その具体例は前述と同様である)、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体(その具体例は前述と同様である)の1種以上から選択される単量体(混合物)を(共)重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
グラフト共重合体に用いられるゴム質重合体としては、ジエンゴム、アクリルゴムおよびエチレンゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
本発明におけるグラフト共重合体を構成するゴム質重合体の重量平均粒子径は、0.1〜0.5μm、特に0.15〜0.4μmの範囲が好ましい。上記の範囲未満では得られる熱可塑性組成物の衝撃強度が低下する傾向を生じ、上記の範囲を越えると透明性が低下する場合がある。なお、ゴム質重合体の重量平均粒子径は「Rubber Age, Vol.88, p.484−490 (1960), by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
本発明におけるグラフト共重合体は、ゴム質重合体10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%の存在下に、上記の単量体(混合物)20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%を共重合することによって得られる。ゴム質重合体の割合が上記の範囲未満、または上記の範囲を越える場合には、衝撃強度や表面外観が低下する場合がある。
なお、グラフト共重合体は、ゴム質重合体に単量体混合物をグラフト共重合させる際に生成する、グラフトしていない共重合体を含んでいてもよい。衝撃強度の観点からは、グラフト率は10〜100%であることが好ましい。ここで、グラフト率とは、ゴム質重合体に対するグラフトした単量体混合物の重量割合である。また、グラフトしていない共重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は、0.1〜0.6dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられる。
本発明におけるグラフト共重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度には、特に制限はないが、0.2〜1.0dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられ、より好ましくは0.3〜0.7dl/gのものである。
本発明におけるグラフト共重合体の製造方法には、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などの公知の重合法により得ることができる。
また、熱可塑性重合体(A)およびゴム質含有重合体(B)のそれぞれの屈折率が近似している場合、透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができるため、好ましい。具体的には、両者の屈折率の差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。このような屈折率条件を満たすためには、熱可塑性重合体(A)の各単量体単位組成を調整する方法、および/またはゴム質含有重合体(B)に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成を調製する方法などが挙げられる。
なお、ここで言う屈折率差とは、以下に示す方法で測定した値である。熱可塑性重合体(A)が可溶な溶媒に、本発明の熱可塑性樹脂組成物を適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離する。この可溶部分(熱可塑性重合体(A)を含む部分)と不溶部分(ゴム質含有重合体(B)を含む部分)をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を屈折率差と定義する。
また、樹脂組成物中での熱可塑性重合体(A)とゴム質含有重合体(B)の共重合組成は、上記の溶媒による可溶成分と不溶成分の分離操作の後に、各成分を個別に分析する。
本発明において、熱可塑性重合体(A)とゴム質含有重合体(B)を配合する際の重量比は、99/1〜50/50の範囲であることが好ましく、さらに、99/1〜60/40の範囲であることがより好ましく、特に99/1〜70/30の範囲であることが最も好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際には、共重合体(a)を加熱処理装置内で加熱処理し、脱水反応および/または脱アルコール反応を行うことにより熱可塑性重合体(A)を生成せしめる反応開始後にゴム質含有重合体(B)を添加し、同一加熱処理装置内で、脱水反応および/または脱アルコール反応と加熱混合を一度に行うことで無色透明性に極めて優れる熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出した。
ゴム質含有重合体(B)の添加は、共重合体(a)の脱水反応および/または脱アルコール反応開始後に行うことが好ましく、共重合体(a)とゴム質含有重合体(B)を同時に加熱処理装置に供給した場合、共重合体(a)の脱水反応および/または脱アルコール反応の完結よりも先にゴム質含有重合体(B)の分散・混合が完了し、その後の滞留によりゴム質含有重合体(B)の着色が著しくなるため、好ましくない。また、共重合体(a)を加熱処理装置内で加熱処理し、脱水反応および/または脱アルコール反応を行うことにより熱可塑性重合体(A)を生成せしめた後一旦冷却し、ゴム質含有重合体(B)と混合するために再び加熱処理を行う方法では、熱可塑性重合体(A)の滞留時間増加による脱炭酸反応等の副反応による着色や冷却・再加熱時の酸素・不純物等の混入による着色が著しくなり好ましくない。
同一加熱処理装置内で、脱水反応および/または脱アルコール反応と加熱混合を一度に行う際、熱可塑性重合体(A)中に存在するグルタル酸無水物の重量分率に対する、共重合体(a)の反応途中におけるグルタル酸無水物の重量分率の割合を反応率とすると、ゴム質含有重合体(B)は、熱可塑性重合体(A)の反応率が20%以上の段階で添加する。20%未満の段階で添加した場合は、ゴム質含有重合体(B)の着色が著しくなり好ましくない。着色抑制効果の面から、50%以上の段階で添加することがより好ましい。さらには、ゴム質含有重合体(B)の分散・混合が不完全なまま吐出されない限り、反応率の上限はない。
共重合体(a)の脱水反応および/または脱アルコール反応開始後の段階でゴム質含有重合体(B)を添加する方法としては、上述の熱可塑性重合体(A)を押出機で製造する方法において、ゴム質含有重合体(B)をサイドフィーダーを介して押出機側面から供給する方法や、押出機上面から直接供給する方法が挙げられるが、サイドフィーダーを介して供給する方法が供給安定性の面で最も好ましい。
また、本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などや、熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などから選ばれた一種以上をさらに含有させることができる。また、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料、染料、蛍光増白剤などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的特性、成形加工性にも優れており、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、フィルム、シート、管、ロッド、その他の希望する任意の形状と大きさを有する成形品に成形して使用することができる。
かくして得られる成形品またはフィルムは、その優れた耐熱性を活かして、電気電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
本発明の成形品またはフィルムは、特に、透明性および耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等の撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等、光記録または光通信関連部品として各種光ディスク(ビデオディスク(VD)、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、ミニディスク(MD)、レーザーディスク(登録商標)(LD)等)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクター等、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導電フィルム、カバー等、自動車等の輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージング等、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セル等、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、バスタブ用材料等の用途にとって極めて有用である。
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
参考例1
熱可塑性重合体(A−1)の作成
メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部およびイオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保った。単量体が完全に、重合体に転化するまで反応を続け、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体の水溶液を得た。得られた水溶液を懸濁剤として使用した。容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、前記のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体懸濁剤0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体(a−1)を得た。この共重合体(a−1)の重合率は98%であった。
メタクリル酸 28重量部
メタクリル酸メチル 72重量部
t−ドデシルメルカプタン 1.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
熱可塑性重合体(A−1)の作成
メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部およびイオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保った。単量体が完全に、重合体に転化するまで反応を続け、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体の水溶液を得た。得られた水溶液を懸濁剤として使用した。容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、前記のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体懸濁剤0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体(a−1)を得た。この共重合体(a−1)の重合率は98%であった。
メタクリル酸 28重量部
メタクリル酸メチル 72重量部
t−ドデシルメルカプタン 1.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
次いで、得られた(a−1)を流量調節バルブを備えた非噛合異方向回転の二軸・単軸複合型連続混練押出装置であるHTM38mm(二軸部分L/D=34、単軸部分L/D=14、CTE社製、表1中I)を用いて、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給速度10kg/h、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度285℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性重合体(A−1)を得た。この際、流量調節バルブを適宜調節し、滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は11分であった。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。
得られた熱可塑性重合体(A−1)を赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、この熱可塑性重合体(A−1)中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。次いで、1H−NMRにより、定量した各共重合成分組成および各種特性評価結果を表1に示す。
参考例2
熱可塑性重合体(A−1’)の作成
(a−1)を噛合型同方向回転の2軸押出機TEX30α(L/D=44.5、日本製鋼所製、表1中II)を用いて、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給速度10kg/h、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度280℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性重合体(A−1’)を得た。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は5分であった。
熱可塑性重合体(A−1’)の作成
(a−1)を噛合型同方向回転の2軸押出機TEX30α(L/D=44.5、日本製鋼所製、表1中II)を用いて、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給速度10kg/h、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度280℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性重合体(A−1’)を得た。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は5分であった。
参考例3
熱可塑性重合体(A−2)の作成
単量体混合物および連鎖移動剤の仕込み組成を下記に変更した以外は(a−1)と同様の製造方法により、共重合体(a−2)を95%の重合率で得た。
メタクリル酸 15重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
スチレン 10重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.8重量部。
熱可塑性重合体(A−2)の作成
単量体混合物および連鎖移動剤の仕込み組成を下記に変更した以外は(a−1)と同様の製造方法により、共重合体(a−2)を95%の重合率で得た。
メタクリル酸 15重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
スチレン 10重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.8重量部。
次いで、得られた(a−2)を、(A−1)と同様の製造方法により、ペレット状の熱可塑性重合体(A−2)を得た。
得られた熱可塑性重合体(A−2)を赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、この熱可塑性重合体(A−2)中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。次いで、1H−NMRにより、定量した各共重合成分組成および各種特性評価結果を表1に示す。
参考例4
ゴム質含有重合体(B−1)の作成
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部および過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル51重量部、スチレン19重量部およびメタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部および過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(B−1)を得た。
ゴム質含有重合体(B−1)の作成
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部および過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル51重量部、スチレン19重量部およびメタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部および過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(B−1)を得た。
参考例5
グラフト共重合体(B−3)の作成
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm) 50重量部(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部。
グラフト共重合体(B−3)の作成
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm) 50重量部(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部。
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、スチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合物50重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(B−3)を得た。このグラフト共重合体(B−3)のグラフト率は45%、アセトン可溶分のメチルエチルケトン溶媒、30℃での極限粘度は0.36dl/gであった。
〔実施例1〜6、比較例7、8〕
上記の参考例1で得られた熱可塑性重合体(a−1)をHTM38mmを用いて、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給速度8kg/h、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度285℃で分子内環化反応を行い、同時に表1に示す位置(図2c、d、eのいずれか)の位置よりゴム質含有重合体(B−1)を原料供給速度2kg/hでサイドフィードして、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。なお、ここで表1に示すゴム質含有重合体の投入位置は、(a−1)の投入位置を0、吐出口位置を48とした相対位置として表す。二軸部分のスクリュー構成として、L/D=10、20、30の位置にニーディングゾーンを設けた。この際、流量調節バルブを適宜調節し、滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は11分であった。また、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。かくして得られた熱可塑性樹脂組成物をテトラヒドロフランにて分散させ、遠心分離によりゴム質含有重合体(B−1)を取り除き、残りの成分から溶媒を除去することにより熱可塑性重合体(A)を単離した。熱可塑性重合体(A)を赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、この熱可塑性樹脂組成物中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。次いで、1H−NMRにより定量した各共重合成分組成を表1に示す。また、ゴム質含有重合体の投入位置から反応途中の熱可塑性重合体をサンプリングし、グルタル酸無水物単位の組成を赤外分光光度計を用いて定量し、熱可塑性重合体(A)中に存在するグルタル酸無水物単位の組成との割合を反応率として表1に示す。
上記の参考例1で得られた熱可塑性重合体(a−1)をHTM38mmを用いて、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給速度8kg/h、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度285℃で分子内環化反応を行い、同時に表1に示す位置(図2c、d、eのいずれか)の位置よりゴム質含有重合体(B−1)を原料供給速度2kg/hでサイドフィードして、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。なお、ここで表1に示すゴム質含有重合体の投入位置は、(a−1)の投入位置を0、吐出口位置を48とした相対位置として表す。二軸部分のスクリュー構成として、L/D=10、20、30の位置にニーディングゾーンを設けた。この際、流量調節バルブを適宜調節し、滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は11分であった。また、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。かくして得られた熱可塑性樹脂組成物をテトラヒドロフランにて分散させ、遠心分離によりゴム質含有重合体(B−1)を取り除き、残りの成分から溶媒を除去することにより熱可塑性重合体(A)を単離した。熱可塑性重合体(A)を赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、この熱可塑性樹脂組成物中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。次いで、1H−NMRにより定量した各共重合成分組成を表1に示す。また、ゴム質含有重合体の投入位置から反応途中の熱可塑性重合体をサンプリングし、グルタル酸無水物単位の組成を赤外分光光度計を用いて定量し、熱可塑性重合体(A)中に存在するグルタル酸無水物単位の組成との割合を反応率として表1に示す。
なお、実施例4には、(a−1)の代わりに(a−2)を使用した。
また、実施例5には、(B−1)の代わりに(B−2)として、三菱レイヨン社製”メタブレン(登録商標)W377”(コア;アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)を使用した。実施例6には、(B−1)の代わりに、(B−3)を使用した。
また、比較例7には、(a−1)の代わりに、PMMA(「デルペット(登録商標)80N」(旭化成社製))を使用し、比較例8にはPC(「ユーピロン(登録商標)S3000」(三菱エンジニアプラスチックス社製)を使用した。
次いで、得られたペレット状の熱可塑性樹脂組成物を射出成形機(住友重機械工業社製 SG75H−MIV)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:(熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150)℃、金型温度:80℃、射出時間:5秒、冷却時間:10秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。各試験片を用いて黄色度、透明性、耐熱性、耐衝撃性を評価した結果を表1に示す。
〔実施例7、8〕
上記の参考例1で得られた熱可塑性重合体(a−1)をTEX30αを用いて、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給速度8kg/h、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度280℃で分子内環化反応を行い、同時にL/D=24(図3g)の位置よりゴム質含有重合体(B−1)を原料供給速度2kg/hでサイドフィードして、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。スクリュー構成として、L/D=10、20、30の位置にニーディングゾーンを設けた。なお、ここで表1に示すゴム質含有重合体の投入位置は、(a−1)の投入位置を0、吐出口位置を44.5とした相対位置として表す。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は5分であった。実施例1〜6と同様にして定量した熱可塑性重合体(A)の各共重合成分組成を表1に示す。次いで、得られたペレットを実施例1〜6と同様にして各試験片を成形し、各種特性を評価した結果を表1に示す。
上記の参考例1で得られた熱可塑性重合体(a−1)をTEX30αを用いて、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給速度8kg/h、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度280℃で分子内環化反応を行い、同時にL/D=24(図3g)の位置よりゴム質含有重合体(B−1)を原料供給速度2kg/hでサイドフィードして、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。スクリュー構成として、L/D=10、20、30の位置にニーディングゾーンを設けた。なお、ここで表1に示すゴム質含有重合体の投入位置は、(a−1)の投入位置を0、吐出口位置を44.5とした相対位置として表す。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は5分であった。実施例1〜6と同様にして定量した熱可塑性重合体(A)の各共重合成分組成を表1に示す。次いで、得られたペレットを実施例1〜6と同様にして各試験片を成形し、各種特性を評価した結果を表1に示す。
なお、実施例8には、(a−1)の代わりに(a−2)を使用した。
〔比較例1〕
上記の参考例1で得られた熱可塑性重合体(a−1)80重量部、ゴム質含有重合体(B−1)20重量部、酢酸リチウム0.2重量部をドライブレンドにより混合し、HTM38mmを用いて、原料供給速度10kg/hでホッパー部から投入し(L/D=0、図2a)、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度285℃で分子内環化反応と同時に混合を行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。この際、流量調節バルブを適宜調節し、滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は11分であった。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。熱可塑性重合体(A)の各共重合成分組成、熱可塑性樹脂組成物の各種特性については実施例1〜6と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
上記の参考例1で得られた熱可塑性重合体(a−1)80重量部、ゴム質含有重合体(B−1)20重量部、酢酸リチウム0.2重量部をドライブレンドにより混合し、HTM38mmを用いて、原料供給速度10kg/hでホッパー部から投入し(L/D=0、図2a)、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度285℃で分子内環化反応と同時に混合を行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。この際、流量調節バルブを適宜調節し、滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は11分であった。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。熱可塑性重合体(A)の各共重合成分組成、熱可塑性樹脂組成物の各種特性については実施例1〜6と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
〔比較例2〕
上記の参考例1で得られた熱可塑性重合体(a−1)をHTM38mmを用いて、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給速度8kg/h、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度285℃で分子内環化反応を行い、同時にL/D=6(図2b)の位置よりゴム質含有重合体(B−1)を原料供給速度2kg/hでサイドフィードして、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。この際、流量調節バルブを適宜調節し、滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は11分であった。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。熱可塑性重合体(A)の各共重合成分組成、熱可塑性樹脂組成物の各種特性については実施例1〜6と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
上記の参考例1で得られた熱可塑性重合体(a−1)をHTM38mmを用いて、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給速度8kg/h、スクリュー回転数:40rpm、シリンダ温度285℃で分子内環化反応を行い、同時にL/D=6(図2b)の位置よりゴム質含有重合体(B−1)を原料供給速度2kg/hでサイドフィードして、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。この際、流量調節バルブを適宜調節し、滞留時間(原料である共重合体(a−1)をホッパー部より投入してから、吐出されるまでの時間)は11分であった。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。熱可塑性重合体(A)の各共重合成分組成、熱可塑性樹脂組成物の各種特性については実施例1〜6と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
〔比較例3〜6〕
上記の参考例1で得られた熱可塑性重合体(A−1)80重量部、ゴム質含有重合体(B−1)20重量部、酢酸リチウム0.2重量部をドライブレンドにより混合し、TEX30αを用いて、原料供給速度10kg/hでホッパー部から投入し(L/D=0、図3f)、スクリュー回転数:100rpm、シリンダ温度280℃で混練を行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら混練を行った。
上記の参考例1で得られた熱可塑性重合体(A−1)80重量部、ゴム質含有重合体(B−1)20重量部、酢酸リチウム0.2重量部をドライブレンドにより混合し、TEX30αを用いて、原料供給速度10kg/hでホッパー部から投入し(L/D=0、図3f)、スクリュー回転数:100rpm、シリンダ温度280℃で混練を行い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら混練を行った。
なお、比較例4には、(A−1)の代わりに(A−2)を使用した。また、比較例5には、(B−1)の代わりに(B−2)を使用した。比較例6には、(A−1)の代わりに(A−1’)を使用した。
熱可塑性重合体(A)の各共重合成分組成、熱可塑性樹脂組成物の各種特性については実施例1〜6と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
実施例で使用した各種物性の測定方法を以下に記載する。
(1)黄色度(Yellowness Index)(YI)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、80mm×80mm×1mm成形品を得た。得られた成形品のYI値を、JIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、80mm×80mm×1mm成形品を得た。得られた成形品のYI値を、JIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
(2)透明性(全光線透過率、ヘイズ)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、80mm×80mm×1mmの成形品を得た。東洋精機社製直読ヘイズメーターを用いて、得られた成形品の23℃での全光線透過率(%)、ヘイズ(曇度)(%)を測定し、透明性を評価した。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、80mm×80mm×1mmの成形品を得た。東洋精機社製直読ヘイズメーターを用いて、得られた成形品の23℃での全光線透過率(%)、ヘイズ(曇度)(%)を測定し、透明性を評価した。
(3)熱変形温度
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、127mm×12.7mm×3.2mmの板状試験片を得た。得られた板状試験片を用い、ASTM D648(荷重:0.46MPa)に従い、熱変形温度を測定し、耐熱性を評価した。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、127mm×12.7mm×3.2mmの板状試験片を得た。得られた板状試験片を用い、ASTM D648(荷重:0.46MPa)に従い、熱変形温度を測定し、耐熱性を評価した。
(4)耐衝撃性(Izod衝撃値)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、ASTM D−256に従い、厚み12.7mmのノッチ付試験片を得た。得られた試験片を用いてASTM D−256に従い、23℃にてアイゾッド衝撃強度を測定し、衝撃特性を評価した。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、ASTM D−256に従い、厚み12.7mmのノッチ付試験片を得た。得られた試験片を用いてASTM D−256に従い、23℃にてアイゾッド衝撃強度を測定し、衝撃特性を評価した。
実施例1〜8の結果より、本発明の熱可塑性樹脂組成物は高度な透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れており、特にゴム成分配合による着色が極めて少ないことが分かる。中でも、加熱処理装置として、二軸・単軸複合型連続混練押出装置を用いることで、透明性、耐熱性、耐衝撃性を維持したまま、着色を大幅に減少させることが可能となる。
一方ゴム質含有重合体(B)と共重合体(a)とを同時に添加した場合(比較例1)は、ゴム質含有重合体(B)の押出装置内での滞留時間が長くなることによる熱分解の進行が著しくなり、得られる組成物は色調・透明性および耐衝撃性に劣ることが分かる。また、ゴム質重合体(B)の添加位置が本発明の範囲外の場合(比較例2)は、色調・耐衝撃性に劣ることが分かる。共重合体(a)の脱水反応および/または脱アルコール反応を行った後にゴム質重合体と混練した場合(比較例3〜6)は、熱可塑性重合体(A)の押出装置内での滞留時間が長くなることによる副反応の影響と、冷却・再加熱時の酸素・不純物等の混入による影響で、得られる組成物はやはり色調・透明性に劣ることが分かる。さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物は、PMMA(比較例7)やPC(比較例8)と比較しても、高度な透明性を有し、かつ着色が少なく優れた耐熱性、耐衝撃性、靱性を併せ持つ材料となりうることがわかる。
1・・・ケーシング、
2・・・第1軸、
3・・・第2軸、
4・・・延長軸部、
5・・・二軸スクリュー部、
6・・・単軸スクリュー部、
7・・・原料供給口、
8・・・吐出口、
9・・・脱気口、
10・・・サイドフィード口
11・・・流量調節バルブ
a・・・L/D=0
b・・・L/D=6
c・・・L/D=13
d・・・L/D=24
e・・・L/D=36
f・・・L/D=0
g・・・L/D=24
2・・・第1軸、
3・・・第2軸、
4・・・延長軸部、
5・・・二軸スクリュー部、
6・・・単軸スクリュー部、
7・・・原料供給口、
8・・・吐出口、
9・・・脱気口、
10・・・サイドフィード口
11・・・流量調節バルブ
a・・・L/D=0
b・・・L/D=6
c・・・L/D=13
d・・・L/D=24
e・・・L/D=36
f・・・L/D=0
g・・・L/D=24
Claims (8)
- (i)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物構造単位25〜50重量%、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%、(iii)不飽和カルボン酸単位10重量%以下を有する熱可塑性重合体(A)および、ゴム質含有重合体(B)からなる熱可塑性樹脂組成物を製造する際に、(ii) 不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および(iii)不飽和カルボン酸単位を含有する共重合体(a)を加熱処理装置内で加熱処理し、脱水反応および/または脱アルコール反応を行うことにより熱可塑性重合体(A)を生成せしめる反応の反応率が20%以上に到達した段階でゴム質含有重合体(B)を添加し、同一加熱処理装置内で、脱水反応および/または脱アルコール反応と加熱混合を一度に行うことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 脱水反応および/または脱アルコール反応の反応率が50%以上に到達した段階でゴム質含有重合体(B)を添加することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 加熱処理装置が二軸・単軸複合型連続混練押出装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 熱可塑性重合体(A)が、上記(i) (ii) (iii)の単位にさらに、 (iv)その他のビニル単量体単位を10重量%以下有する共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 前記ゴム質含有重合体(B)が、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有する多層構造重合体であることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 多層構造重合体の最外殻層を構成する重合体が上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有する請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 多層構造重合体のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する請求項5または6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 多層構造重合体が、最外殻層を構成する重合体に上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有し、かつ、内部のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する請求項5〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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WO2009145150A1 (ja) | 2008-05-27 | 2009-12-03 | 日東電工株式会社 | 粘着型偏光板、画像表示装置およびそれらの製造方法 |
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-
2005
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