JP2007169626A - ゴム質含有共重合体、熱可塑性樹脂組成物、およびその製造方法 - Google Patents

ゴム質含有共重合体、熱可塑性樹脂組成物、およびその製造方法 Download PDF

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英樹 松本
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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂への分散性が良好で、耐熱性、滞留安定性に優れたゴム質含有共重合体、およびこれを含有する熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される環状構造単位から選ばれる1種または2種以上の化学構造を有するゴム質含有共重合体(A)であって、かつゴム質含有共重合体(A)中、有機溶媒で抽出される可溶成分(B)の重量平均分子量が3万〜12万であるゴム質含有共重合体。
Figure 2007169626

【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂への分散性、耐熱性、滞留安定性に優れたゴム質含有共重合体、およびこれを含有する熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
ポリメタクリル酸メチル(以下PMMAと称する)に代表されるアクリル系樹脂は、その透明性や寸法安定性を活かし、光学材料、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されているが、耐熱性や耐衝撃性が十分ではないという問題点がある。PMMAの耐熱性を改良する目的で、耐熱性付与成分としてマレイミド単量体あるいは無水マレイン酸単量体等を導入した樹脂が開発され、いずれもガラス転移温度(Tg)の上昇は見られるものの、高温下で滞留させた際の熱安定性に劣るという問題があった。
さらに、耐衝撃性改良剤として、ゴム成分を添加することが古くから実施されているが(特許文献1参照)、一般的なゴム成分は、耐熱性が低く、とりわけ高温下で滞留した際に、比較的多量の分解ガスを発生するといった課題があった。
これらの問題点を解決する方法として、グルタル酸無水物含有単位を含有する共重合体に、ゴム質含有重合体を添加する方法が開示されている(特許文献2参照)。
しかしながら、これら特許文献に開示されたゴム成分は、分子量などを重合時に制御されたものではなく、これを用いた方法で得られる組成物は、ゴム質含有重合体中に超高分子量体が含まれているため、フィルムや薄肉成型品を得る為に不可欠な流動性と、ゴム成分の微分散化による表面平滑性、耐衝撃性、靱性、外観での欠点の少なさを全て満足することが出来ず、特に近年、より高度な光学等方性が要求される光学材料としては全く不十分であるといった問題点を有していた。すなわち、滞留安定性と、フィルムや薄肉成型品を得る為に不可欠な流動性、耐衝撃性や靱性などの機械特性、製膜・成形加工後の表面平滑性や外観での欠点の少なさを兼備し、かつ優れた光学特性を有する樹脂組成物はこれまでに知られていなかった。
特開昭54−18298号公報(第1−2頁、実施例) 特開2004−292812号公報(第1−2頁、実施例)
本発明は、熱可塑性樹脂への分散性が良好で、耐熱性、滞留安定性に優れ、とりわけ、光学材料として有用な優れた光学等方性を発現するゴム質含有共重合体、およびこれを含有する熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の化学構造および分子量を有するゴム質含有共重合体が、特異的に、熱可塑性樹脂への分散性、滞留安定性に優れることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
〔1〕下記一般式(1)で表される環状構造単位から選ばれる1種または2種以上の化学構造を有するゴム質含有共重合体(A)であって、かつゴム質含有共重合体(A)中、有機溶媒で抽出される可溶成分(B)の重量平均分子量が3万〜12万であることを特徴とするゴム質含有共重合体、
Figure 2007169626
(上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基およびフェニル基からえらばれるいずれかを表す。また、Xはカルボニル基、メチレン基および炭素数1〜5のアルキル基あるいはフェニル基で置換されたメチレン基から選ばれるいずれかを表す。)
〔2〕ゴム質含有重合体(A)が、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有する多層構造重合体であることを特徴とする上記〔1〕記載のゴム質含有共重合体、
〔3〕多層構造重合体の最外層を構成する重合体が上記一般式(1)で表される環状構造単位を有することを特徴とする上記〔2〕記載のゴム質含有共重合体、
〔4〕多層構造重合体のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する上記〔2〕または〔3〕に記載のゴム質含有共重合体、
〔5〕請求項1〜4のいずれかに記載のゴム質含有共重合体(A)1〜50重量%および熱可塑性樹脂(C)50〜99重量%からなる熱可塑性樹脂組成物、
〔6〕ゴム質含有共重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)の屈折率(23℃、測定波長550nm)の差が0.02以下であることを特徴とする上記〔5〕記載の熱可塑性樹脂組成物、
〔7〕熱可塑性樹脂(C)が、下記一般式(1)で表される環状構造単位を有することを特徴とする上記〔5〕または〔6〕いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
Figure 2007169626
(上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基およびフェニル基からえらばれるいずれかを表す。また、Xはカルボニル基、メチレン基および炭素数1〜5のアルキル基あるいはフェニル基で置換されたメチレン基から選ばれるいずれかを表す。)
〔8〕熱可塑性樹脂(C)が、下記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物単位25〜50重量%、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%、(iv)その他のビニル単量体単位10重量%以下を有することを特徴とする上記〔7〕記載の熱可塑性樹脂組成物、
Figure 2007169626
(上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す。)
〔9〕有機溶媒で抽出される可溶成分(B)の重量平均分子量と、熱可塑性樹脂(C)の重量平均分子量との差が0〜5万であることを特徴とする(5)〜(8)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、および
〔10〕下記一般式(1)で表される環状構造単位から選ばれる1種または2種以上の化学構造を有するゴム質含有共重合体(A)であって、かつゴム質含有共重合体(A)中、有機溶媒で抽出される可溶成分(B)の重量平均分子量が3万〜12万であることを特徴とするゴム質含有共重合体と、重量平均分子量が、ゴム質含有重合体の有機溶媒で抽出される可溶成分(B)の重量平均分子量と0〜5万の差である熱可塑性樹脂(C)を溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
Figure 2007169626
(上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基およびフェニル基からえらばれるいずれかを表す。また、Xはカルボニル基、メチレン基および炭素数1〜5のアルキル基あるいはフェニル基で置換されたメチレン基から選ばれるいずれかを表す。)
本発明のゴム質含有共重合体を熱可塑性樹脂に配合することにより、耐熱性、耐衝撃性、靱性、流動性にも優れた熱可塑性樹脂組成物が得られ、とりわけゴム質含有共重合体の分散性と滞留安定性に優れるため、映像機器関連部品、光記録または光通信関連部品、情報機器関連部品、自動車等の輸送機器関連部品、医療機器関連部品、建材関連部品等の用途にとって極めて有用である。
以下、本発明のゴム質含有共重合体について具体的に説明する。
本発明のゴム質含有共重合体(A)とは、1以上のゴム質重合体と、それとは異種の重合体から構成されるブロックあるいはグラフト共重合体であり、ゴム質重合体、あるいは、それとは異種の重合体の少なくとも一方に、下記一般式(1)で表される環状化学構造単位を有するものである。
Figure 2007169626
(上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基およびフェニル基からえらばれるいずれかを表す。また、Xはカルボニル基、メチレン基および炭素数1〜5のアルキル基あるいはフェニル基で置換されたメチレン基から選ばれるいずれかを表す。)
また、本発明では、ゴム質含有共重合体(A)中に含まれる有機溶媒可溶成分(B)の分子量を精密に制御することにより、熱可塑性樹脂への分散性に優れ、特に薄膜のフィルム成形した場合の外観欠点が顕著に減少できることを見出した。すなわち、ゴム質含有共重合体(A)中に含まれる有機溶媒可溶成分(B)の重量平均分子量は、3万〜12万であることが必要であり、より好ましくは4万〜10万、とりわけ5万〜9万が好ましい。
尚、ここで言う有機溶媒可溶成分(B)とは、ゴム質含有共重合体(A)を100重量倍量の有機溶媒中、50℃で72時間可溶分の抽出を行った後、10000rpmで60分遠心分離を行い、固液分離した有機溶媒溶液を濃縮して得られる成分である。
また、用いる有機溶媒は、ゴム質含有共重合体が膨潤あるいは溶解する溶媒であれば、特に制限はないが、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒が好ましく使用することができる。
また、ここで言う重量平均分子量とは、上記有機溶媒可溶成分(B)を、0.3重量%の測定サンプル溶液とし、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製、流速:0.8ml/分)を用いて、測定した絶対分子量での重量平均分子量である。
ゴム質含有共重合体(A)中、有機溶媒で抽出される可溶成分(B)量は、0.01〜50重量%であることが、製造する上でのハンドリング性、耐衝撃性を付与する効率面で好ましく、より好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%である。
本発明のゴム質含有共重合体(A)の中でも、内部に1層以上のゴム質重合体を含む層とそれとは異種の重合体から構成される層を有する構造の、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造グラフト共重合体がとりわけ好ましく使用できる。
本発明に使用されるコアシェル型の多層構造重合体を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有する多層構造重合体であることが好ましい。
本発明の多層構造重合体において、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル系単量体、シリコーン系単量体、スチレン系単量体、ニトリル系単量体、共役ジエン系単量体、ウレタン結合を生成する単量体、エチレン系単量体、プロピレン系単量体、イソブテン系単量体などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル系単位およびブタジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン系単位から構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせたものから構成されるゴムも好ましい。例えば、(1)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位から構成されるゴム、(2)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位から構成されるゴム、(3)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン系単位から構成されるゴム、および(4)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位から構成されるゴムなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する重位であるゴムが、透明性および機械特性の点から、最も好ましい。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、アリルアクリレート単位およびブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋性成分から構成される共重合体を架橋させたゴムも好ましい。
本発明の多層構造重合体において、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分であることが好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、前記一般式(1)で表される環状構造単位、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などから選ばれる1種以上の単位を含有する重合体などが挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を含有する重合体が好ましく、それに加えて、前記一般式(1)で表される環状構造単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和カルボン酸単位および不飽和ジカルボン酸無水物単位、α−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、α−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸単位から選ばれる1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
上記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではないが、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられる。耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はなく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
上記不飽和グリシジル基含有単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではなく、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルおよび4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和ジカルボン酸無水物単位の原料となる単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸および無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、上記脂肪族ビニル単位の原料となる単量体としては、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどを用いることができる。上記芳香族ビニル単位の原料となる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンおよびハロゲン化スチレンなどを用いることができる。上記シアン化ビニル単位の原料となる単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどを用いることができる。上記マレイミド単位の原料となる単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドおよびN−(クロロフェニル)マレイミドなどを用いることができる。上記不飽和ジカルボン酸単位の原料となる単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸およびフタル酸などを用いることができる。上記その他のビニル単位の原料となる単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを用いることができる。これらの単量体は単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明のゴム質重合体を含有する多層構造重合体において、最外層(シェル層)は、上述のとおり不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、(メタ)アリルアルコール単位、α−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、α−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位およびその他のビニル単位などの1種類以上の単位を含有する重合体などから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、カルボン酸不飽和エステル単位、(メタ)アリルアルコール単位、α−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、α−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位および不飽和ジカルボン酸無水物単位などを含有する重合体などから選ばれた少なくとも1種が好ましい。
本発明においては、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位、カルボン酸不飽和エステル単位、(メタ)アリルアルコール単位、α−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、α−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸単位を最外層とする多層構造重合体を用いることが最も好ましい。
最外層が不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位、カルボン酸不飽和エステル単位、(メタ)アリルアルコール単位、α−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、α−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸単位を含有する重合体である場合、加熱することにより、分子内環化反応が進行し、前記一般式(1)で表される環状構造単位が生成する。
ここでいう不飽和カルボン酸アルキルエステル単位としては、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらにはアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルがより好ましく使用される。
また、不飽和カルボン酸単位の原料となる単量体としては、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましく、さらにはメタクリル酸がより好ましく使用される。
また、(メタ)アリルアルコールとしては、下記一般式(3)で表される(メタ)アリルアルコールが好ましく、その具体例としては、メタリルアルコール、アクリルアルコール、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、およびα−ヒドロキシメチルスチレンが挙げられ、中でもメタリルアルコールが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
Figure 2007169626
(式中、Rは水素原子、メチル基、エチル基およびフェニル基から選ばれるいずれかである。)
例えば、最外層が不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する共重合体である場合、加熱することにより、前述した本発明の熱可塑性共重合体(A)の製造時と同様に、分子内環化反応が進行し、下記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物含有単位が生成する。
Figure 2007169626
(上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す。)
また、最外層が、メタクリル酸アルキルエステル成分単位と、(メタ)アリルアルコール系成分単位からなる共重合体である場合、同じく加熱することにより、各成分単位間で環化(ラクトン化)することにより、下記一般式(4)で表されるラクトン環含有単位が生成する。
Figure 2007169626
(上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す。)
上述のとおり、本発明では、上記の多層構造重合体に上記一般式(1)で表される環状構造単位を導入するには、特定の単量体単位を有する共重合体を加熱することにより、達成することができる。その加熱方法としては、所定の分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜350℃の範囲、特に200〜330℃の範囲が好ましい。また、この際の加熱する時間も特に限定されず、適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間、好ましくは2分間〜30分間、とりわけ3〜20分間の範囲が好ましい。加熱装置も特に制限はなく、真空脱気可能なオーブン、ベント付き押出機などを用いることができる。押出機を用いる場合、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機のスクリュー直径(D)とスクリューの長さ(L)の比(L/D)が40以上であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の単量体単位が多量に残存する傾向が見られるため、吸湿による寸法安定性が低下するなどの傾向がある。
本発明のゴム質含有共重合体(A)において、多層構造重合体の好ましい例としては、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(3)で表されるラクトン環含有単位/メタリルアルコール共重合体であるものなどが、滞留安定性の点で好ましく使用することが出来る。ここで、“/”は共重合を示す。
また、本発明のゴム質含有共重合体(A)における上記一般式(1)で表される環状構造の有無を確認するためには、赤外分光光度計が用いられる。赤外分光法では、例えば、グルタル酸無水物単位は、1800cm−1及び1760cm−1の吸収が特徴的であり、不飽和カルボン酸単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単位から区別することができる。また、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)測定機では、各共重合組成を定量できる。例えば、グルタル酸無水物単位、メタクリル酸、メタクリル酸メチルからなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中でのスペクトルの帰属を、0.5〜1.5ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素と、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。また、上記に加えて、他の共重合成分として、スチレンを含有する場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。また、例えば、ラクトン環構造単位、メタクリル酸メチル単位、およびメタリルアルコール単位からなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5〜1.5ppmのピークは、メタクリル酸メチル単位およびメタリルアルコール単位のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖中のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチル単位のカルボン酸エステル(−COOCH)の水素、2.4〜2.7ppmのピークはメタリルアルコール単位の水酸基の水素、4.0〜4.5ppmのピークはラクトン環構造単位中エステル基に隣接したメチレン基の水素である。また、上記に加えて、他の共重合成分としてスチレンを含有する共重合体の場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
本発明の多層構造重合体の平均粒子径については、0.01μm以上、1000μm以下であることが好ましい。平均粒子径は、0.02μm以上、100μm以下がより好ましく、0.05μm以上、10μm以下がさらに好ましく、0.05μm以上、1μm以下が最も好ましい。上記の範囲未満では得られる熱可塑性組成物の衝撃強度が低下する傾向を生じ、上記の範囲を越えると透明性が低下する場合がある。なお、多層構造重合体の平均粒子径は、小角光散乱測定によるギニエプロットあるいは透過型電子顕微鏡写真から算出することができる。
本発明の多層構造重合体において、コアとシェルの重量比は、多層構造重合体全体に対して、コア層が50重量%以上、90重量%以下であることが好ましく、さらに、60重量%以上、80重量%以下であることがより好ましい。
本発明におけるゴム質含有共重合体(A)の製造方法には、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などの公知の重合法を用いることができるが、とりわけ乳化重合法が好ましい。
本発明のゴム質含有共重合体(A)の好ましい重合法である乳化重合法については、反応容器に脱イオン水、乳化剤、重合開始剤を加えた後、各単量体および架橋剤等を単独あるいは2種以上の混合物で所定量を添加し、所定温度で重合することが好ましい。
単量体と水の仕込み比は、単量体/水=1/1〜1/10が好ましく、より好ましくは1/2〜1/9である。
重合開始剤としては、アゾ化合物、過酸化物、過硫酸化物、過硼酸化物等を用いることができる。特に、過硫酸塩、過硼酸塩等の水溶性無機開始剤、あるいはこれらと亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩等とを組み合わせてレドックス開始剤として用いることもできる。
乳化剤としては、長鎖脂肪酸アルカリ(土類)金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、長鎖アルキル硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等が好ましく使用できる。
架橋剤としては、α,β−不飽和モノカルボン酸あるいはジカルボン酸のアリルエステル、メタアリルエステル、クロチルエステル、およびトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が単独または混合物として用いることができる。架橋剤の添加量は特に制限はないが、通常、単量体混合物100重量部に対して、0〜5重量部であり、0.1〜3重量部であることが耐衝撃性の点で好ましい。
本発明においては、ゴム質含有共重合体(A)およびゴム質含有共重合体(A)中に含まれる有機溶媒可溶成分(B)の分子量制御が必要であり、その制御方法については、例えば、アゾ化合物、過酸化物、過硫酸化物等のラジカル重合開始剤の添加量、あるいはメルカプタン系化合物、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤の添加量等により、制御することができる。特に、重合の安定性、取り扱いの容易さ等から、連鎖移動剤であるメルカプタン系化合物の添加量を制御する方法が好ましく使用することができる。
本発明に使用されるメルカプタン系化合物としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、チオグリコール酸n−オクチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸n−プロピル、チオグリコール酸n−ブチル、チオグリコール酸ドデシル、チオグリコール酸n−ブチル等のチオグリコール酸エステル、2−メルカプトプロピオン酸メチル、2−メルカプトプロピオン酸エチル、2−メルカプトプロピオン酸n−ブチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、3−メルカプトプロピオン酸n−プロピル、3−メルカプトプロピオン酸イソプロピル、3−メルカプトプロピオン酸n−ブチル、3−メルカプトプロピオン酸tert−ブチル、3−メルカプトプロピオン酸イソブチル、3−メルカプトプロピオン酸n−ペンチル、3−メルカプトプロピオン酸イソアミル、3−メルカプトプロピオン酸−sec−アミル(3−メルカプトプロピオン酸1−メチルブチル)、3−メルカプトプロピオン酸2−メチルブチル、3−メルカプトプロピオン酸1,3−ジメチルブチル、3−メルカプトプロピオン酸ネオペンチル、3−メルカプトプロピオン酸1−メチルアミル、3−メルカプトプロピオン酸2−メチルアミル、3−メルカプトプロピオン酸3−メチルアミル、3−メルカプトプロピオン酸tert−アミル、3−メルカプトプロピオン酸n−ヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸シクロヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−へプチル、3−メルカプトプロピオン酸2,4−ジメチルペンチル、3−メルカプトプロピオン酸2,3−ジメチルペンチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシメチル、3−メルカプトプロピオン酸エトキシメチル、3−メルカプトプロピオン酸ブトキシメチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシエチル、3−メルカプトプロピオン酸エトキシエチル、3−メルカプトプロピオン酸ブトキシエチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシプロピル、3−メルカプトプロピオン酸エトキシプロピル、3−メルカプトプロピオン酸ブトキシプロピル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸エトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ブトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸イソオクチル、3−メルカプトプロピオン酸tert−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸ノニル、3−メルカプトプロピオン酸イソノニル、3−メルカプトプロピオン酸tert−ノニル、3−メルカプトプロピオン酸デシル、3−メルカプトプロピオン酸イソデシル、3−メルカプトプロピオン酸ウンデシル、3−メルカプトプロピオン酸n−ドデシル、3−メルカプトプロピオン酸tert−ドデシル、3−メルカプトプロピオン酸イソドデシル、3−メルカプトプロピオン酸トリデシル、3−メルカプトプロピオン酸テトラデシル、3−メルカプトプロピオン酸ペンタデシル、3−メルカプトプロピオン酸ヘキサデシル、3−メルカプトプロピオン酸オクタデシル、3−メルカプトプロピオン酸イソオクタデシル、3−メルカプトプロピオン酸オエレイル、3−メルカプトプロピオン酸パルミトレイル、3−メルカプトプロピオン酸リノリル、3−メルカプトプロピオン酸リノレニル、3−メルカプトプロピオン酸フェニル、3−メルカプトプロピオン酸ベンジル、3−メルカプトプロピオン酸アリル等のメルカプトプロピオン酸エステルおよびこれらのフロロ化物等のハロゲン化物、2−メルカプトエチルオクタン酸エステル等のメルカプトカルボン酸エステル、6−メルカプトメチル−2−メチル−2−オクタノール、2−フェニル−1−メルカプト−2−エタノール、4−メルカプト−1,1−ビス(トリフルオロメチル)−1−ブタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(6−メルカプト−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルメチル)プロパン−2−オールおよび1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(5−メルカプト−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルメチル)プロパン−2−オール等のメルカプトアルコール、ベンゼンチオール、m−ブロモベンゼンチオール、p−ブロモベンゼンチオール、m−クロロベンゼンチオール、p−クロロベンゼンチオール、1−ナフタレンチオール、2−ナフタレンチオール、ベンジルチオール、m−トルエンチオールおよびp−トルエンチオール等の芳香族チオール、p−アニソイルジスルフィド、ベンゾイルジスルフィド、ビス(p−ブロモベンゾイル)ジスルフィド、ビス(p−クロロベンゾイル)ジスルフィド、ビス(p−シアノベンゾイル)ジスルフィド、ビス(p−ニトロベンゾイル)ジスルフィド、p−トルオイルジスルフィドおよびベンゾイルジメチルチオカルバモイルスルフィド等のスルフィド、1−ペンタンチオール、ポルフィリン類縁体等の窒素原子を有する化合物を配位子として有するコバルト触媒を例示することができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。より好ましくは、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸エステルおよびメルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプトカルボン酸エステル、芳香族チオールであり、更に好ましくは、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸エステル、芳香族チオールであり、これらの1種または2種以上を併用することも好ましい。前記メルカプトプロピオン酸エステルとして特に好ましくは3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸n−ブチル、3−メルカプトプロピオン酸n−ドデシル、3−メルカプトプロピオン酸イソオクチルおよび3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルである。
これらメルカプタン系化合物の添加量としては、好ましい分子量に制御するために、単量体混合物の全量100重量部に対して、0.1〜3.0重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜2.0重量部、さらに好ましくは0.3〜1.0重量部である。
重合温度については、20〜120℃が好ましく、より好ましくは30〜100℃、とりわけ40〜90℃が分子量制御の点で好ましい。また、重合時間について、特に制限はないが、通常、30分〜10時間であり、1時間〜8時間が生産性の点で特に好ましい。
本発明のゴム質含有共重合体(A)は、熱可塑性樹脂(C)と混合して熱可塑性樹脂組成物として使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂(C)とは加熱すると流動性を示し、これを利用して成形加工できる合成樹脂のことである。
この具体例としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)などのポリスチレン系樹脂、PMMAなどのアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、変性ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、エチレン/プロピレン樹脂、エチレン/1−ブテン樹脂、エチレン/プロピレン/非共役ジエン樹脂、エチレン/アクリル酸エチル樹脂、エチレン/メタクリル酸グリシジル樹脂体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸樹脂、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマー、あるいはこれら熱可塑性樹脂の2種以上の混合物が挙げられる。
本発明では、特に、ゴム質含有重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)のそれぞれの屈折率が近似している場合、透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができるため、そのようなゴム質含有重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)の組み合わせを選択することが好ましい。具体的には、両者の屈折率の差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。このような屈折率条件を満たすためには、熱可塑性重合体(C)の各単量体単位組成を調整する方法、および/またはゴム質含有共重合体(A)に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成を調製する方法などが挙げられる。
なお、ここで言う屈折率差とは、ゴム質含有重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)のそれぞれの23℃、測定波長:550nmにおける屈折率を測定し、その差の絶対値と定義する。また、熱可塑性樹脂組成物中のゴム質含有重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)は、熱可塑性樹脂(C)が可溶な溶媒に、熱可塑性樹脂組成物を適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(熱可塑性樹脂(C)を含む部分)と不溶部分(ゴム質含有重合体(A)を含む部分)をそれぞれ精製した後、屈折率(23℃、測定波長:550nm)を測定することも可能である。
上述のとおり、ゴム質含有共重合体(A)の好ましい態様の1つであるアクリル系単位(アクリル酸ブチルなど)を主成分とするゴム質含有共重合体(A)を用いる場合、その屈折率は一般に1.45〜1.55程度で、比較的、低屈折率領域であるため、熱可塑性樹脂(C)としては、芳香族基を含有する量が少ない熱可塑性樹脂を選択することがより好ましく、具体的には、アクリル系樹脂、脂肪族あるいは半芳香族ポリエステル、脂肪族あるいは半芳香族ポリアミド、環状ポリオレフィンなどが好ましく、とりわけアクリル系樹脂が好ましい。
アクリル系樹脂とは、少なくとも1種以上の不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステルを重合して得られる熱可塑性重合体であり、その好ましい例としては、その分子主鎖中に環状構造単位を含有する熱可塑性重合体を挙げることができる。環状構造単位としては、特に制限はないが、無水マレイン酸単位、マレイミド単位、グルタル酸無水物単位、グルタルイミド単位、ラクトン単位、ラクタム単位が好ましく、上記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物単位を含有するアクリル系熱可塑性重合体がとりわけ好ましく使用することができる。
中でも(i)上記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物含有単位および(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有するアクリル系共重合体が好ましい。
上記アクリル系共重合体中の前記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物含有単位(i)の含有量は、好ましくは上記アクリル系共重合体100重量%中に25〜50重量%、より好ましくは30〜45重量%である。グルタル酸無水物含有単位が25重量%未満である場合、耐熱性向上効果が小さくなるだけでなく、複屈折特性や耐溶剤性が低下する傾向がある。
また、上記アクリル系共重合体中の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)の含有量は、上記アクリル系共重合体100重量%中に好ましくは50〜75重量%、より好ましくは55〜70重量%である。上記(i)、(ii)の単位に加えて、さらに(iii)不飽和カルボン酸単位および/または、(iv)その他のビニル単量体単位を含有することができる。ここで、(iv)その他のビニル単量体単位とは、上記(i)〜(iii)のいずれにも属さない共重合可能なビニル単量体単位である。上記アクリル系共重合体100重量%中に含有される不飽和カルボン酸単位(iii)の含有量は10重量%以下、すなわち0〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5重量%、最も好ましくは0〜1重量%である。不飽和カルボン酸単位(iii)が10重量%を超える場合には、吸湿による寸法安定性が低下する傾向がある。
また、その他のビニル単量体単位(iv)の含有量は、上記アクリル系共重合体100重量%中、10重量%以下、すなわち0〜10重量%の範囲であることが好ましい。また、その他のビニル単量体単位(iv)としては、芳香環を含まないビニル単量体単位が好ましい。スチレンなどの芳香族ビニル単量体単位の場合、含有量が高いと、無色透明性、耐溶剤性が低下する傾向があるので、含有量は5重量%以下、すなわち0〜5重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜3重量%である。
このような前記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有するアクリル系共重合体は、基本的には以下に示す方法により製造することができる。すなわち、後の加熱工程により前記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物含有単位(i)を与える不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を共重合させ、共重合体(a)を得る。その際、前記その他のビニル単量体単位(iv)を含む場合には該単位を与えるビニル単量体を共重合させてもよい。得られた共重合体(a)を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコールおよび/または脱水による分子内環化反応を行わせることにより、前記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有するアクリル系共重合体を製造することができる。この場合、典型的には、共重合体(a)を加熱することにより、隣接する2単位の不飽和カルボン酸単位(iii)のカルボキシル基の間の脱水反応により、あるいは、隣接する不飽和カルボン酸単位(iii)と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)の間の脱アルコール反応により、1単位の前記(i)グルタル酸無水物含有単位が生成される。
この際に用いられる不飽和カルボン酸単量体としては、他のビニル化合物と共重合させることが可能ないずれの不飽和カルボン酸単量体も使用可能である。好ましい不飽和カルボン酸単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、および無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸またはメタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
また不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の好ましい具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−へキシル、メタクリル酸n−へキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルおよびメタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
また、本発明で用いる共重合体(a)の製造においては、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のビニル単量体を用いてもかまわない。このその他のビニル単量体は、共重合すると前記のその他のビニル単量体単位(iv)を与える。その他のビニル単量体の好ましい具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができる。透明性および耐溶剤性の点で芳香環を含まない単量体がより好ましく使用できる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
共重合体(a)の重合方法については、基本的にはラジカル重合による、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、沈殿重合等の公知の重合方法を用いることができる。不純物がより少ない点で溶液重合、塊状重合、懸濁重合および沈殿重合が特に好ましい。
重合温度については、色調の観点から、95℃以下の重合温度で重合することが好ましい。さらに加熱処理後の着色をより抑制するために、好ましい重合温度は95℃以下であり、特に好ましくは75℃以下である。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、50℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上である。重合収率あるいは重合速度を向上させる目的で、重合進行に従い重合温度を昇温することも可能である。この場合も、昇温する上限温度は95℃以下に制御することが好ましく、重合開始温度も75℃以下の比較的低温で行うことが好ましい。また重合時間は、必要な重合度を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から60〜360分間の範囲が好ましく、90〜180分間の範囲が特に好ましい。
本発明において、共重合体(a)の製造時に用いられるこれらの単量体混合物の好ましい割合は、該単量体混合物全体を100重量%として、不飽和カルボン酸単量体が15〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は50〜85重量%、より好ましくは55〜80重量%である。これらに共重合可能な他のビニル単量体を用いる場合、その好ましい割合は0〜10重量%である。他のビニル単量体が、芳香族ビニル単量体である場合、その好ましい割合は0〜5重量%であり、より好ましい割合は0〜3重量%である。
不飽和カルボン酸単量体の含有量が15重量%未満の場合には、共重合体(a)の加熱により、前記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有するアクリル系共重合体を製造する際に、上記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物含有単位(i)の生成量が少なくなり、共重合体の耐熱性向上効果が小さくなる傾向がある。一方、不飽和カルボン酸単量体(iii)の含有量が50重量%を超える場合には、共重合体(a)の加熱により、前記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有するアクリル系共重合体を製造する際に、不飽和カルボン酸単位(iii)が多量に残存する傾向があり、前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有する熱可塑性樹脂の吸湿による寸法安定性が低下する傾向がある。
また、共重合体(a)を加熱し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応を行いグルタル酸無水物単位を含有するアクリル系熱可塑性重合体を製造する方法は、特に制限はないが、ベントを有する加熱した押出機に通して製造する方法や窒素気流中などの不活性ガス雰囲気で、または真空下で加熱脱揮できる装置内で製造する方法が好ましい。中でも、酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、十分に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。特に好ましい装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機などを用いることができ、とりわけ二軸押出機が好ましく使用することができる。
なお、上記の方法により加熱脱揮する温度は、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜350℃の範囲、特に200〜330℃の範囲が好ましい。
また、この際の加熱脱揮する時間も特に限定されず、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間、好ましくは2分間〜30分間、とりわけ3〜20分間の範囲が好ましい。特に、押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機のスクリュー直径(D)とスクリューの長さ(L)の比(L/D)が40以上であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位が多量に残存するため、吸湿による寸法安定性が低下する傾向がある。
また、押出機の中でも、二軸・単軸複合型連続混練押出機を用いることにより、極めて無色透明性、機械特性に優れる熱可塑性重合体が得られる傾向があるため、好ましく使用することができる。ここで、二軸・単軸複合型連続混練押出機とは、押出機ケーシング内に、スクリュー部を形成した第1軸および第2軸が並列に配置された二軸スクリュー部、および二軸スクリュー部より延長された第1軸が配置された単軸スクリュー部を有し、かつ前記二軸スクリュー部と単軸スクリュー部の連通部に流量調節機構を備え、前記ケーシングに二軸スクリュー部に連通する原料供給口を備えるとともに、前記延長された第1軸の端部に連通する吐出口を備えた二軸・単軸複合型連続混練押出機を言い、市販されているこのタイプの押出機としては、CTE社製の「HTM型押出機」が挙げられる。原料となる共重合体(a)を、連続式で加熱処理し環化反応を進行させる際、反応の進行に従い、溶融粘度が高くなることに起因し、押出装置のせん断による発熱が大きくなり、分子主鎖の熱分解による着色が大きくなる傾向が見られる。また、該せん断発熱は、単軸スクリューよりも二軸スクリューで溶融混練した場合に大きくなる。一方、反応速度の観点からは、二軸スクリューで溶融混練することが好ましい。以上のことから、特定の二軸・単軸複合型連続混練押出機を用いることにより、溶融粘度が比較的低い反応初期段階では、二軸スクリューで、十分な反応速度を確保しながら、溶融粘度が比較的高くなる反応後期段階では、せん断発熱を抑制した単軸スクリュー部で加熱処理することにより、分子主鎖の熱分解が抑制されたため、得られるグルタル酸無水物含有単位を含有する熱可塑性樹脂(C)は色調、機械特性に優れるものと推察される。
押出機を用いて共重合体(a)を加熱する際の押出機のシリンダー温度は200〜320℃に設定することが好ましく、220〜310℃に設定することが好ましい。
さらに本発明では、共重合体(a)を上記方法等により加熱する際にグルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は特に制限はなく、共重合体(a)100重量部に対し、0.01〜1重量部程度が適当である。また、これら酸、アルカリ、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。ただし、その触媒保有の色が熱可塑性重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。中でも、アルカリ金属を含有する化合物(アルカリ金属化合物)が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムが好ましく使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂(C)は、重量平均分子量が3万〜17万であることが好ましく、より好ましくは4万〜13万、とりわけ6万〜10万が流動性に優れ、特にフィルム成形する際の表面平滑性、外観欠点低減が達成できる観点から好ましい。尚、本発明でいう重量平均分子量とは、多角度光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC−MALLS)で測定した絶対分子量での重量平均分子量を示す。
また、熱可塑性樹脂(C)はガラス転移温度(Tg)が120℃以上であることが耐熱性の面で好ましい。ガラス転移温度は、130℃以上がより好ましく、140℃以上が特に好ましい。また、上限としては、通常、170℃程度である。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定したガラス転移温度(Tg)である。
本発明において、ゴム質含有重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)を配合する際の重量比は、1/99〜50/50の範囲であることが好ましく、さらに、5/95〜40/60の範囲であることがより好ましく、特に10/90〜30/70の範囲であることが最も好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際には、ゴム質含有重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)とを、適度な剪断場の下で加熱溶融混合する方法を用いる。本発明においてゴム質含有重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)を加熱溶融混合する方法としては、熱可塑性重合体(A)とその他の任意成分を予めブレンドした後、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法が分散性・生産性の面から好ましく用いられる。
本発明では、ゴム質含有重合体(A)中の有機溶媒可溶成分(B)と熱可塑性樹脂(C)の重量平均分子量の差が小さいほど、特異的に熱可塑性樹脂(C)へのゴム質含有重合体(A)の分散性に優れることを見出した。該重量平均分子量差としては、好ましくは0〜5万、より好ましくは0〜3万である。該重量平均分子量差が5万を越える場合は、分散性に劣り、耐衝撃性、靱性が低下する傾向が見られる。特に光学特性の均質性が要求される場合には、バラツキが大きくなる傾向が見られるため、好ましくない。
また、本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料、染料、蛍光増白剤などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的特性、成形加工性にも優れており、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、フィルム、シート、管、ロッド、その他の希望する任意の形状と大きさを有する成形品に成形して使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムの製造方法には、公知の方法を使用することができる。すなわち、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルション法、ホットプレス法等の製造方法が使用できる。好ましくは、インフレーション法、T−ダイ法、キャスト法またはホットプレス法が使用できる。インフレーション法やT−ダイ法による製造法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明のフィルムを製造するための溶融押出温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。また、流延法により本発明のフィルムを製造する場合、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の溶剤が使用可能である。好ましい溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン等である。該フィルムは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を前記の1種以上の溶剤に溶かし、その溶液をバーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ダイ・コートなどを用いて、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱フィルム、スチールベルト、金属箔などの平板または曲板(ロール)上に流延し、溶剤を蒸発除去する乾式法、あるいは溶液を凝固液で固化する湿式法等を用いることにより製造できる。
かくして得られる成形品またはフィルムは、その優れた耐熱性を活かして、電気電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
本発明の成形品またはフィルムは、特に、透明性および耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等の撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等、光記録または光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクター等、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導電フィルム、カバー等、自動車等の輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージング等、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セル等、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、バスタブ用材料等、の用途にとって極めて有用である。
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で使用した各種物性の測定方法を記載する。
(1)重量平均分子量・分子量分布
重合体をテトラヒドロフランに溶解して、測定サンプルとした。テトラヒドロフランを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて、重量平均分子量(絶対分子量)、数平均分子量(絶対分子量)を測定した。分子量分布は、重量平均分子量(絶対分子量)/数平均分子量(絶対分子量)で算出した。
(2)各成分組成
重ジメチルスルフォキシド中、30℃でH−NMRを測定し、各共重合単位の組成決定を行った。
(3)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。
(4)屈折率、屈折率差
固体状サンプルを280℃でプレス成形し、厚さ0.1mmのフィルムとした後、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製、DR−M2)によって、23℃、550nm波長における屈折率を測定した。各サンプルの屈折率の差の絶対値を屈折率差とした。
(5)ゴム分散性
溶融混練で熱可塑性樹脂組成物を製造する際のストランドガット表面を目視で観察し、突起状の異物(ブツと呼ぶ)有無を判定した。ブツなしのものを○、ブツがストランドガット表面全体に観察されるものを×と表2には記載した。
また、上記熱可塑性樹脂組成物を40mmφのベント付き単軸押出機に供し、280℃で20kg/hの速度で、幅200mmのフィルム製造用T−ダイから押出し、ポリッシングロールに供し、平均フィルム厚みが約40μmのフィルムを得た。得られたフィルム中、任意箇所の10cm角(100cm2)を蛍光灯に翳し、目視で観察される異物数をカウントした。
(6)滞留安定性(ガス発生量)
得られた熱可塑性共重合体ペレットを80℃で12時間予備乾燥し、280℃に温調した加熱炉内で30分間加熱処理した前後での重量を測定し、下式により算出した重量減少率を滞留時の発生ガス量として評価した。
重量減少率(%)=[(加熱処理前重量−加熱処理後重量)/加熱処理前重量]×100。
(7)透明性(ヘイズ)
得られた平均厚みが40μmのフィルムを東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、23℃でのヘイズ(曇度)(%)を測定し、透明性を評価した。
(8)光学等方性バラツキ
得られた平均厚みが40μmのフィルム中、任意の10箇所を選択し、ASTM D542に準じて従って、エリプソメーター(大塚電子株式会社製、LCDセルギャップ検査装置 RETS−1100)を用いて23℃で、レーザー光をフィルムサンプル面に対して90°の角度で照射し、透過光の633nmでのリターデーション(Re)を測定した。測定値10点の最大値と最小値の差を光学特性バラツキの指標とした。
(9)引張伸度
127mm×12.7mm×0.1mmの短冊状フィルムサンプルを用い、ASTM D−638に準じて引張破断伸度を測定し、引張伸度とした。
参考例1 ゴム質含有共重合体(A)
(A−1)
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部、および過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル53重量部、スチレン17重量部およびメタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部、、連鎖移動剤(分子量調整剤)としてn−ドデシルメルカプタン0.4部および過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過した。これを真空オーブンに入れ、250℃で60分、減圧度10torrで加熱処理を行い、2層構造のゴム質含有共重合体(A−1)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の平均粒子径は155nmであり、屈折率は1.50であった。得られた(A−1)を2gを秤量し、200gのアセトン溶媒中、攪拌しながら、50℃で72時間可溶分の抽出を行い、10000rpmで60分遠心分離した。アセトン不溶分は、赤外分光法で測定し、グルタル酸無水物含有単位の特徴的ピークである1800cm−1および1760cm−1の吸収ピークの有無により、グルタル酸無水物含有単位の生成を確認した。アセトン溶液相をエバポレーションし、アセトン可溶成分(B−1)の分子量測定を行い、重量平均分子量は11.4万であった。
(A−2)
連鎖移動剤(分子量調整剤)n−ドデシルメルカプタンの添加量を0.6重量部とした以外は、上記(A−1)と同様にして、2層構造のゴム質含有共重合体(A−2)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の平均粒子径は150nmであり、屈折率は1.50であった。アセトン不溶分には、同様に赤外分光法で測定し、グルタル酸無水物含有単位の生成を確認した。アセトン可溶成分(B−2)の重量平均分子量は6.9万であった。
(A−3)
連鎖移動剤(分子量調整剤)n−ドデシルメルカプタンの添加量を1.0重量部とした以外は、上記(A−1)と同様にして、2層構造のゴム質含有共重合体(A−3)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の平均粒子径は150nmであり、屈折率は1.50であった。アセトン不溶分には、同様に赤外分光法で測定し、グルタル酸無水物含有単位の生成を確認し、アセトン可溶成分(B−3)の重量平均分子量は4.5万であった。
(A−4)
シェル層の重合時の仕込み単量体混合物をメタクリル酸メチル21重量部、メタリルアルコール9重量部とした以外は、上記(A−3)と同様にして、2層構造のゴム質含有共重合体(A−4)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の平均粒子径は250nmであり、屈折率は1.49であった。アセトン不溶分には、NMR法で測定し、ラクトン環含有単位の生成を確認した。アセトン可溶成分(B−4)の重量平均分子量は7.8万であった。
(A−5)
特開2004−292812号公報の参考例(3)に準じて、連鎖移動剤(分子量調整剤)n−ドデシルメルカプタンを添加しなかった以外は、上記(A−1)と同様にして、2層構造のゴム質含有共重合体(A−5)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の平均粒子径は150nmであり、屈折率は1.50であった。アセトン不溶分には、同様に赤外分光法で測定し、グルタル酸無水物含有単位の生成を確認し、アセトン可溶成分(B−5)の重量平均分子量は18.5万であった。
(A−6)
連鎖移動剤(分子量調整剤)n−ドデシルメルカプタンの添加量を0.2重量部に変更した以外は、上記(A−4)と同様にして、2層構造のゴム質含有共重合体(A−6)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の平均粒子径は250nmであり、屈折率は1.49であった。アセトン不溶分には、同様にNMR法で測定し、ラクトン環含有単位の生成を確認した。アセトン可溶成分(B−6)の重量平均分子量は14.2万であった。
(A−7)
シェル層の重合時の仕込み単量体混合物をメタクリル酸を添加せず、全てメタクリル酸メチル30重量部とした以外は、上記(A−2)と同様にして、2層構造のゴム質含有共重合体(A−7)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の平均粒子径は250nmであり、屈折率は1.49であった。アセトン不溶分には、赤外分光法、NMR法で測定し、上記一般式(1)で表される環状構造含有単位の生成は認められなかった。アセトン可溶成分(B−7)の重量平均分子量は8.2万であった。
上記参考例1で得られた(A−1)〜(A−7)について、表1にまとめる。
Figure 2007169626
参考例2
熱可塑性樹脂(C−1)の製造
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら95℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに60分間保った後、重合を終了し、得られたスラリーを吸引ろ過し、ケークを得た。続いて、得られたケークをバッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製の洗浄槽に供給し、ケーク100部に対して400部のイオン交換水を添加し、80℃、回転速度250rpmにて90分間洗浄を行った後、吸引濾過し、得られたケークをさらに80℃で12時間乾燥を行い、原共重合体(MMA/MAA共重合体)パウダーを得た。
混合物質(イ):
メタクリル酸 22重量部、
メタクリル酸メチル 78重量部、
n−ヘプタン 175重量部、
酢酸ブチル 525重量部、
n−ドデシルメルカプタン 1.1重量部。
混合物質(ロ):
n−ヘプタン 25重量部、
酢酸ブチル 75重量部、
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
次いで、原共重合体(MMA/MAA共重合体)パウダーを流量調節バルブを備えた非噛合異方向回転の二軸・単軸複合型連続混練押出装置であるHTM38mm(二軸部分L/D=34、単軸部分L/D=14、CTE社製)を用いて、酢酸リチウム0.2部を添加し、原料供給速度10kg/h、スクリュー回転数:75rpm、シリンダ温度325℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性樹脂(C−1)を得た。
得られた熱可塑性樹脂(C−1)を赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、この熱可塑性樹脂(C−1)中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。次いで、H−NMRにより各共重合成分組成を定量し、メタクリル酸メチル単位/グルタル酸無水物構造単位/メタクリル酸単位=63/36/1重量%であった。重量平均分子量は6.8万、分子量分布(Mw/Mn)は2.8、ガラス転移温度(Tg)は136℃であり、屈折率は1.50であった。
熱可塑性樹脂(C−2)の製造
混合物質(イ)を下記組成とした以外は、上記(C−1)と同様にして、熱可塑性樹脂(C−2)を製造した。
メタクリル酸 15重量部、
メタクリル酸メチル 85重量部、
n−ヘプタン 200重量部、
酢酸ブチル 500重量部、
n−ドデシルメルカプタン 0.8重量部。
得られた熱可塑性樹脂(C−2)を赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、この熱可塑性樹脂(C−2)中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。次いで、H−NMRにより各共重合成分組成を定量し、メタクリル酸メチル単位/グルタル酸無水物構造単位/メタクリル酸単位=78/21/1重量%であった。重量平均分子量は10.9万、分子量分布(Mw/Mn)は2.5、ガラス転移温度(Tg)は127℃であり、屈折率は1.50であった。
参考例3 熱可塑性樹脂組成物の製造
上記の参考例1で得られたゴム質含有共重合体(A)および参考例2で得られた熱可塑性樹脂(C)を表2に示した組成で配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてシリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpmで混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
実施例1〜5、比較例1〜3
上記の参考例1で得られたゴム質含有共重合体(A)を用いて、参考例2で得られた熱可塑性樹脂(C)に溶融混練した熱可塑性樹脂組成物について、各種特性評価結果を表2に示す。
Figure 2007169626
実施例1〜5、および比較例1〜3の結果より、本発明の特定の環状構造単位を含有するゴム質含有共重合体を用いた場合、ガス発生量が少なく、滞留安定性に優れ、また特異的に熱可塑性樹脂への分散性が向上するため、熱可塑性樹脂組成物は、異物、光学特性バラツキも少ないことが分かる。また、ゴム質含有共重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)の屈折率差を小さくすることで、高度な透明性が得られることがわかる。
実施例6、比較例4
参考例1に記載したゴム質含有共重合体(A−1)および(A−5)製造時の加熱処理前ゴム質含有共重合体を、それぞれ加熱処理なしで、熱可塑性樹脂(C−1)に、実施例1と同じ条件で溶融混練した熱可塑性樹脂組成物を製造した。それぞれの各種特性評価結果を表3に示す。
尚、熱可塑性樹脂組成物ペレットにアセトンを加え、4時間還流した後、10000rpmで60分間遠心分離することにより、アセトン可溶分(C−1成分)と不溶分(A−1成分)に分離した。これらを、それぞれ60℃で5時間減圧乾燥し、赤外分光法で、アセトン可溶分と不溶分それぞれにグルタル酸無水物構造単位が存在していた。また、NMR測定から、アセトン可溶分は、熱可塑性樹脂(C−1)と同じ共重合組成であった。
Figure 2007169626
実施例6および比較例4の結果から、特定の環状構造を有するゴム質含有共重合体(A−1)は、予め加熱処理をしなくても、熱可塑性樹脂(C)と溶融混練する際に、特定の環状構造が生成しており、予め加熱処理をした場合と同じく、本発明の効果を発現することがわかる。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)で表される環状構造単位から選ばれる1種または2種以上の化学構造を有するゴム質含有共重合体(A)であって、かつゴム質含有共重合体(A)中、有機溶媒で抽出される可溶成分(B)の重量平均分子量が3万〜12万であることを特徴とするゴム質含有共重合体。
    Figure 2007169626
    (上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基およびフェニル基からえらばれるいずれかを表す。また、Xはカルボニル基、メチレン基および炭素数1〜5のアルキル基あるいはフェニル基で置換されたメチレン基から選ばれるいずれかを表す。)
  2. ゴム質含有重合体(A)が、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有する多層構造重合体であることを特徴とする請求項1記載のゴム質含有共重合体。
  3. 多層構造重合体の最外層を構成する重合体が上記一般式(1)で表される環状構造単位を有することを特徴とする請求項2記載のゴム質含有共重合体。
  4. 多層構造重合体のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する請求項2または3に記載のゴム質含有共重合体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のゴム質含有共重合体(A)1〜50重量%および熱可塑性樹脂(C)50〜99重量%からなる熱可塑性樹脂組成物。
  6. ゴム質含有共重合体(A)と熱可塑性樹脂(C)の屈折率(23℃、測定波長550nm)の差が0.02以下であることを特徴とする請求項5記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 熱可塑性樹脂(C)が、下記一般式(1)で表される環状構造単位を有することを特徴とする請求項5または6いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2007169626
    (上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基およびフェニル基からえらばれるいずれかを表す。また、Xはカルボニル基、メチレン基および炭素数1〜5のアルキル基あるいはフェニル基で置換されたメチレン基から選ばれるいずれかを表す。)
  8. 熱可塑性樹脂(C)が、下記一般式(2)で表されるグルタル酸無水物単位25〜50重量%、(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%、(iv)その他のビニル単量体単位10重量%以下を有することを特徴とする請求項7記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2007169626
    (上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す。)
  9. 有機溶媒で抽出される可溶成分(B)の重量平均分子量と、熱可塑性樹脂(C)の重量平均分子量との差が0〜5万であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  10. 下記一般式(1)で表される環状構造単位から選ばれる1種または2種以上の化学構造を有するゴム質含有共重合体(A)であって、かつゴム質含有共重合体(A)中、有機溶媒で抽出される可溶成分(B)の重量平均分子量が3万〜12万であることを特徴とするゴム質含有共重合体と、重量平均分子量が、ゴム質含有重合体の有機溶媒で抽出される可溶成分(B)の重量平均分子量と0〜5万の差である熱可塑性樹脂(C)を溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
    Figure 2007169626
    (上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基およびフェニル基からえらばれるいずれかを表す。また、Xはカルボニル基、メチレン基および炭素数1〜5のアルキル基あるいはフェニル基で置換されたメチレン基から選ばれるいずれかを表す。)
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