JP2008088401A - 原共重合体および熱可塑性重合体ならびにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高度な耐熱性、無色透明性および剛性を有し、従来比、耐湿熱性に優れたグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体、および前記熱可塑性重合体に誘導可能で、かつ高温下での溶融滞留安定性に優れた原共重合体を提供することを課題とする。また、原共重合体および前記熱可塑性重合体の製造方法として、製造時の生産性に従来より大きく優れる製造方法を提供する。
【解決手段】13C−NMRスペクトルにおいて所定の2つの化学シフトの領域におけるピークの高さの比が特定の値以下であることを特徴とする熱可塑性重合体、および所定の2つの化学シフトの領域におけるピークの積分値の比が特定の値以上であることを特徴とする原共重合体。また、特定の有機溶媒中、特定の条件にて共重合を行って原共重合体を製造する製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】13C−NMRスペクトルにおいて所定の2つの化学シフトの領域におけるピークの高さの比が特定の値以下であることを特徴とする熱可塑性重合体、および所定の2つの化学シフトの領域におけるピークの積分値の比が特定の値以上であることを特徴とする原共重合体。また、特定の有機溶媒中、特定の条件にて共重合を行って原共重合体を製造する製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、高度な耐熱性と無色透明性を有し、従来比、耐湿熱性に優れたグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体、高温下での溶融滞留安定性に優れた原共重合体およびこれらの製造方法に関するものである。
ポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと称する)やポリカーボネート(以下、PCと称する)といった非晶性樹脂は、その透明性や寸法安定性を活かし、光学材料、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。
近年、これらの樹脂は、特に光学レンズ、プリズム、ミラー、光ディスク、光ファイバー、液晶ディスプレイ用シート・フィルム、導光板などの、より高性能な光学材料にも幅広く使用されるようになっており、樹脂に要求される光学特性や成形加工性、耐熱性もより高度なものになっている。
また現在、これらの透明樹脂は、テールランプやヘッドランプといった自動車等の灯具部材としても使用されているが、近年、車内空間を大きくするためやガソリン燃費を改良するために、テールランプレンズやインナーレンズ、ヘッドランプ、シールドビーム等の各種レンズと光源の間隔を小さくすること、部品の薄肉化が図られる傾向にあり、優れた成形加工性、溶融滞留安定性が要求されるようになっている。また、車両は過酷な条件下で使用されるため、高温多湿下での形状変化、物性変化が小さいことや、優れた耐傷性、耐候性、耐油性も要求される。
しかしながら、PMMA樹脂は、優れた透明性、耐候性を有するものの、耐熱性が十分ではないといった問題があった。一方、PC樹脂は、耐熱性、耐衝撃性に優れるものの、光学的歪みである複屈折率が大きく、成形物に光学的異方性が生じること、成形加工性、溶融滞留安定性、耐湿熱性、耐傷性、耐油性に劣るといった問題があった。
そのため、PMMAの耐熱性を改良する目的で、耐熱性付与成分としてマレイミド系単量体あるいは無水マレイン酸単量体等を導入した樹脂が開発されている。しかし、マレイミド系単量体は高価であると同時に反応性が低く、無水マレイン酸は熱安定性が悪いという問題があった。
これらの問題点を解決する方法として、不飽和カルボン酸単位を含有する共重合体を、押出機を用いて加熱して環化反応させることにより得られるグルタル酸無水物単位を含有する共重合体が例えば特許文献1に開示されているが、押出機を用いて該共重合体を加熱処理して得られるグルタル酸無水物単位を有する共重合体は著しく着色するという問題があった。
また、不飽和カルボン酸単位を含有する重合体溶液を真空下で加熱することによりグルタル酸無水物単位を含有する共重合体を製造する方法が開示されている(特許文献2参照)。しかし、これら公報に記載されている方法においては、溶媒を完全に真空下で脱溶媒するためには、高温で長時間の熱処理が必要となり、多大な労力とエネルギーが必要になるといった問題点があった。また、不飽和カルボン酸単量体を含有する重合体を溶液中で製造する際、高重合率を得るためには、重合温度を高める必要があり、重合体を溶液のまま真空下で加熱しても、得られるグルタル酸無水物単位を含有する共重合体の着色抑制効果は十分ではなく、近年のより高度な無色性の要求を満たすものではなかった。
そこで、特許文献3の如く、特定の不飽和カルボン酸単位を含有する共重合体を特定の重合条件下で製造し、続いて該共重合体を加熱処理することにより、無色透明性と滞留安定性に優れるグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体およびその製造方法が提案されている。特許文献3提案の技術によれば、得られる熱可塑性重合体の着色および滞留安定性は大いに改良されたが、光学レンズ、プリズム、ミラー、光ディスク、光ファイバー、液晶ディスプレイ用シート・フィルム、偏光板、導光板などの、より高性能な光学材料に使用するためには、より高度な無色透明性、剛性(曲げ弾性率)、溶融滞留安定性、耐湿熱性について更なる向上が求められるとともに、いわゆるフィッシュアイ等の未溶融異物の少ない熱可塑性重合体が望まれていた。
また、特定の重量平均分子量と分子量分布を有し、無色透明性と耐熱性、成形性、光学等方性、耐溶剤性に優れたグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体が提案されている(特許文献4参照)。しかし、特許文献4提案の技術によっても、フィルム等の薄肉成形体用途で要求される耐湿熱性について未だ十分ではなく、更なる向上が求められていた。また、グルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体の前駆体である原共重合体を分子内環化反応せしめて、グルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体を得る際に、時間当たりの吐出量アップによる生産性の向上と、分子内環化反応を促進させ残存カルボン酸量を低減し、無色透明性を更に高める観点から、分子内環化反応時のプロセス温度は300℃以上、好ましくは320℃以上に設定することが好ましいが、従来公知の技術で得られる原共重合体の場合、300℃以上の高温での処理においては、300℃未満の処理時と比較して、黄色度保持率が低下する傾向にあった。更に、製造プロセスにおいて、グルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体の前駆体を高温にて処理する場合、空気(酸素)と接触すれば色調が低下していく傾向にあるため、窒素雰囲気下とすることが好ましいが、窒素使用量の低減、工程の簡素化等の観点から、空気雰囲気下での溶融滞留安定性の向上が求められていた。
一方、重合体の製造法に関し、一般的に、PMMA樹脂や(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合物(AC樹脂とも言う)、ポリスチレン(以下PS樹脂とも言う)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(以下AS樹脂とも言う)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂(以下ABS樹脂とも言う)などは、工業的に製造される場合には、その大部分が塊状重合、懸濁重合、乳化重合で製造され、ごく一部が溶液重合で製造されている。
塊状重合、懸濁重合、乳化重合は、大量に生産する場合には好都合の製造方法であるが、重合形式から容易に推察されるとおり、共重合組成、分子量分布の制御が困難である場合が多い。さらに言えば、懸濁重合、乳化重合のように、水を媒体とする重合方法では、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有する不飽和単量体を共重合することが困難であり、ポリマーに機能性や他ポリマーとの相溶性を付与することができず、機能性ポリマーとしての展開やポリマーアロイとして物理的な性質、化学的な性質を改善することを困難としていた。さらに、塊状重合、懸濁重合、乳化重合では、重合速度の制御がきわめて難しく、巨大分子量ポリマーの生成を抑制することが困難である。このため、ポリマー中には異物としてこれら巨大分子量ポリマーが混在し、フィルムや成形品に加工した際に、この巨大分子量ポリマーを核とする欠点(ブツ、フィッシュアイなど)が発生することがある。したがって、塊状重合、懸濁重合、乳化重合で製造されたポリマーは、透明性、均一性が高度に要求される光学用途では使用が制限されることがあるといった問題点があった。
一方、溶液重合では、共重合組成の制御および巨大分子量ポリマーの生成抑制が比較的容易であり、前記水溶性官能基を有する不飽和単量体の共重合も可能となるが、生成した共重合体を有機溶剤溶液から分離、回収するのがきわめて困難であり、多大な労力とエネルギーが必要になるといった問題点があった。また、色調や溶融滞留安定性に悪影響を及ぼす低分子量ポリマーやオリゴマーの生成を抑制することが比較的困難であった。
このような問題点を解決する方法として、沈殿重合で製造される重合体を含有する架橋性光学材料に関する技術が知られている(特許文献5参照)。この特許文献によれば、透明で、高屈折率かつ軽量な架橋性の光学材料が提供できるとされ、沈殿重合が「その前駆体である重合性単量体を溶解するが重合体は溶解しない溶剤に該重合性単量体を溶解し、その溶液を重合することにより、一定の重合度に達した重合体を析出物として回収する重合方法」と定義されている。
しかしながら、特許文献5に具体的に記載された方法を単純にカルボキシル基含有アクリル系単量体を含む単量体混合物の沈殿重合に単に適用するのみでは、共重合組成、シーケンス、タクティシティーおよび分子量分布を精密に制御できるものではないことが判明した。
また、非特許文献1、2には、不飽和カルボン酸単量体の共重合に関して、ベンゼンやトルエンといった芳香族基を含有する溶媒を用いた沈殿重合法が開示されている。しかしながら、本発明者等の検討によれば上記溶媒を用いて不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸アルキルエステルを含む単量体混合物を共重合する際、単量体混合物中での不飽和カルボン酸単量体の二量化が顕著に起こり、部分的に不均一な相を形成することや、溶媒への連鎖移動が避けられないため、生成する共重合体の共重合組成、シーケンス、タクティシティー、分子量および分子量分布を精密に制御することが困難であり、とりわけ分子量分布が極端に大きくなるといった問題点があることが判明した。
さらに、分散重合法で製造される重合体微粒子の製造方法が知られている(特許文献6参照)。しかし、かかる方法をカルボキシル基含有アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合に単に適用するのみでは、共重合組成、シーケンス、タクティシティーおよび分子量分布を精密に制御できるものではないことが判明した。
特開昭49−85184号公報(第1−2頁、実施例)
特開昭60−120707号公報(第1−2頁、実施例)
特開2004−002711号公報(第1−2頁、実施例)
特開2004−292811号公報(第1−2頁、発明の詳細な説明)
特開平8−217824号公報(特許請求の範囲)
特開平10−218935号公報(特許請求の範囲)
Die Angewandte Makromolekuare Chemie 11(1970)p53−62
Journal of Polymer Science:Polymer Letters Edition, Vol.18(1980), p241−248
したがって、本発明は、高度な耐熱性、無色透明性および剛性を有し、従来比、耐湿熱性に優れるグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体、および前記熱可塑性重合体に誘導可能で、300℃以上の高温下での溶融滞留安定性に優れる原共重合体を提供することを課題とする。また、前記原共重合体および前記熱可塑性重合体の製造方法として、従来より、製造時の生産性に大きく優れる製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、13C−NMRスペクトルにおいて所定の2つの化学シフトの領域におけるピークの高さの比が特定の値以下であることを特徴とする熱可塑性重合体が、高度な耐熱性、無色透明性および剛性を有したまま、耐湿熱性にも優れ、13C−NMRスペクトルにおいて所定の2つの化学シフトの領域におけるピークの積分値の比が特定の値以上の原共重合体が、グルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体に分子内環化反応せしめる際に、高温下での溶融滞留安定性に優れることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)(iii)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含み、かつ重水素化ピリジン中、15℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト171.8〜172.0ppmの範囲に観測されるピークの高さ(Z)と、化学シフト172.65〜172.85ppmの範囲に観測されるピークの高さ(W)の比である(Z)/(W)の値が、0.55以下であることを特徴とする熱可塑性重合体、
(1)(iii)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含み、かつ重水素化ピリジン中、15℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト171.8〜172.0ppmの範囲に観測されるピークの高さ(Z)と、化学シフト172.65〜172.85ppmの範囲に観測されるピークの高さ(W)の比である(Z)/(W)の値が、0.55以下であることを特徴とする熱可塑性重合体、
(ただし、R1、R2は、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
(2)ガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性重合体、
(3)(i)不飽和カルボン酸エステル単位および(ii)不飽和カルボン酸単位を含み、かつ重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)と、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)の比である(X)/(Y)の値が、0.21以上であることを特徴とする原共重合体、
(4)不飽和カルボン酸エステル単量体および不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物を溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)中で共重合することを特徴とする原共重合体の製造方法であって、前記有機溶媒(A)が脂環式炭化水素を含む有機溶媒、および/または[(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量)/(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量)]×100で算出される仕込みモノマー濃度が17.0%以上の範囲であることを特徴とする原共重合体の製造方法、
(5)不飽和カルボン酸エステル単量体および不飽和カルボン酸単量体からなる単量体混合物を溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)中で、[(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量)/(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量)]×100で算出される仕込みモノマー濃度が17.0〜40.0%の範囲で共重合することを特徴とする(4)に記載の原共重合体の製造方法、
(6)(5)に記載の有機溶媒(A)が脂環式炭化水素を含むことを特徴とする(5)に記載の原共重合体の製造方法、
(7)(3)に記載の原共重合体または(4)〜(6)に記載の原共重合体の製造方法で得られた原共重合体に(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコール反応による分子内環化反応せしめることにより得られるものであることを特徴とする、(1)または(2)記載の熱可塑性重合体の製造方法、
(8)(3)に記載の原共重合体または(4)〜(6)に記載の原共重合体の製造方法で得られた原共重合体のスラリーを固液分離した後、得られた原共重合体のケークに水および/または有機溶媒を添加し、5〜200℃の温度で洗浄し、該洗浄液から、5〜200℃にて再度固液分離を行った後に、分子内環化反応を行うことを特徴とする(7)に記載の熱可塑性重合体の製造方法、
(9)洗浄系内気相中の酸素濃度を100000ppm以下として洗浄を行うことを特徴とする(8)に記載の熱可塑性重合体の製造方法、
(10)(1)あるいは(2)に記載の熱可塑性重合体または(3)に記載の原共重合体に更にゴム質含有重合体(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物、、
(11)(1)あるいは(2)に記載の熱可塑性重合体、(3)に記載の原共重合体または(10)に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品またはフィルムである。
(2)ガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性重合体、
(3)(i)不飽和カルボン酸エステル単位および(ii)不飽和カルボン酸単位を含み、かつ重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)と、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)の比である(X)/(Y)の値が、0.21以上であることを特徴とする原共重合体、
(4)不飽和カルボン酸エステル単量体および不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物を溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)中で共重合することを特徴とする原共重合体の製造方法であって、前記有機溶媒(A)が脂環式炭化水素を含む有機溶媒、および/または[(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量)/(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量)]×100で算出される仕込みモノマー濃度が17.0%以上の範囲であることを特徴とする原共重合体の製造方法、
(5)不飽和カルボン酸エステル単量体および不飽和カルボン酸単量体からなる単量体混合物を溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)中で、[(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量)/(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量)]×100で算出される仕込みモノマー濃度が17.0〜40.0%の範囲で共重合することを特徴とする(4)に記載の原共重合体の製造方法、
(6)(5)に記載の有機溶媒(A)が脂環式炭化水素を含むことを特徴とする(5)に記載の原共重合体の製造方法、
(7)(3)に記載の原共重合体または(4)〜(6)に記載の原共重合体の製造方法で得られた原共重合体に(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコール反応による分子内環化反応せしめることにより得られるものであることを特徴とする、(1)または(2)記載の熱可塑性重合体の製造方法、
(8)(3)に記載の原共重合体または(4)〜(6)に記載の原共重合体の製造方法で得られた原共重合体のスラリーを固液分離した後、得られた原共重合体のケークに水および/または有機溶媒を添加し、5〜200℃の温度で洗浄し、該洗浄液から、5〜200℃にて再度固液分離を行った後に、分子内環化反応を行うことを特徴とする(7)に記載の熱可塑性重合体の製造方法、
(9)洗浄系内気相中の酸素濃度を100000ppm以下として洗浄を行うことを特徴とする(8)に記載の熱可塑性重合体の製造方法、
(10)(1)あるいは(2)に記載の熱可塑性重合体または(3)に記載の原共重合体に更にゴム質含有重合体(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物、、
(11)(1)あるいは(2)に記載の熱可塑性重合体、(3)に記載の原共重合体または(10)に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品またはフィルムである。
本発明の原共重合体は、グルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体に導入する際に、300℃以上の高温下での溶融滞留安定性に優れ、かつ前記原共重合体を分子内環化してなる前記熱可塑性重合体は、高度な耐熱性、無色透明性および剛性を有したまま、耐湿熱性にも優れる。また、本発明の製造法によれば、熱可塑性重合体の製造時の生産性において従来より大きく優れる。従って、本発明の熱可塑性重合体は、光学材料、機械関連部品、精密機械関連部品、電気機器のハウジング、情報機器関連部品等の多種多様な用途に好適に用いることができ、特に光学補償フィルム等の光学フィルム用途に好ましく用いることができる。
以下、本発明の熱可塑性重合体、原共重合体およびその製造方法について具体的に説明する。
本発明の熱可塑性重合体は、下記一般式(1)で表される(iii)グルタル酸無水物単位を含み、かつ重水素化ピリジン中、15℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト171.8〜172.0ppmの範囲に観測されるピークの高さ(Z)と、化学シフト172.7〜172.9ppmの範囲に観測されるピークの高さ(W)の比である(Z)/(W)の値が、0.55以下であることを特徴とする。
(式中、R1、R2は同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表す)
前記炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R1、R2として好ましくは、同一または相異なるもので、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数6〜20の芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R1、R2としてより好ましくは、同一または相異なるもので、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素で置換されたフェニル基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜6の脂環式炭化水素基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R1、R2として更に好ましくは、同一または相異なるもので、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかであり、特に好ましくはR1、R2が共にメチル基である場合である。
前記(Z)/(W)の値は、熱可塑性重合体の耐湿熱性、すなわち湿熱処理後の剛性保持率の観点から、好ましくは0.53以下であり、より好ましくは0.50以下であり、更に好ましくは0.45以下であり、特に好ましくは0.42以下であり、最も好ましくは0.40以下である。前記(Z)/(W)の値の下限は特に制限はなく0でもよいが、熱可塑性重合体の溶融加工性、透明性および耐熱性の向上の観点から0.05以上であることが好ましく、より好ましくは0.10以上であり、更に好ましくは0.13以上であり、特に好ましくは0.15以上であり、最も好ましくは0.17以上である。(Z)/(W)の値がより小さな値である方が熱可塑性重合体の耐湿熱性に優れるが、(Z)/(W)の値が同等である場合、熱可塑性重合体中に残存する(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量が少ない方が耐湿熱性に優れる傾向となる。熱可塑性重合体中に残存する(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量を低減させることにより、耐湿熱性が向上する傾向となるが、熱可塑性重合体中に残存する(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量を低減させるためには、例えば300℃以上の高温で長時間加熱処理を行うといった、過酷な分子内環化条件が必要となり、(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量を低減させることができたとしても、黄色度が著しく悪化し、熱分解による劣化により剛性(曲げ弾性率)および耐湿熱性が低下する傾向となる。また、原共重合体中の(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量を低減すれば、分子内環化後に残存する(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量も減少させることができるが、一方で(iii)グルタル酸無水物単位の含有量も低下するため、耐熱性および剛性(曲げ弾性率)が悪化する傾向にある。従って、(iii)グルタル酸無水物単位を含む熱可塑性重合体の耐熱性および剛性を維持しつつ、耐湿熱性を向上させるには、(Z)/(W)の値を本発明で規定の範囲に制御することが必要である。ここで、本発明の熱可塑性重合体の前記13C−NMRスペクトルは、本発明の熱可塑性重合体を600mg/3gの濃度で重水素化ピリジンに溶解させ、Varian社製、UNITY INOVA500型NMR測定機を用いて、測定核13C、基準としてTMSを用い、観測周波数125.7MHz、積算回数30000回、温度15℃、観測幅35KHz、パルス幅45°、パルス繰り返し時間3.0秒(カルボニルに対し2T1)、全てのカルボニル炭素のスピン−格子緩和時間(T1)および核オーバーハウザー効果は同一として仮定し測定することで得られるものであり、本発明の熱可塑性重合体の重水素化ピリジン中、15℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて観察されるグルタル酸無水物のカルボニル基のスペクトルの一例を図1に示す。ここで、化学シフト171.8〜172.0ppmの範囲に観測されるピークの高さ(Z)とは、前記範囲で観察されるピーク(前記範囲内でベースラインに対して最も高さのあるピークトップ)の13C−NMRのベースラインからの高さを示し、前記で用いたものと同じ13C−NMRスペクトルのチャートにおいて、化学シフト172.7〜172.9ppmの範囲に観察されるピークの高さ(W)(13C−NMRのベースラインからの高さ)を求め、これらの比を算出する。例えば、図1において、化学シフト171.90ppm(ここでは小数点以下第3位を四捨五入し第2位で表示)に観察されるピークのベースラインからの高さが(Z)となり、化学シフト172.77ppm(ここでは小数点以下第3位を四捨五入し第2位で表示)に観察されるピークのベースラインからの高さが(W)となる。
前記13C−スペクトルにおいて、(iii)グルタル酸無水物単位のグルタル酸無水物環のカルボニルピークは、化学シフト170.8〜174.1ppmの範囲に、グルタル酸無水物環のそれぞれのカルボニルの置かれた環境の違いにより分裂し、これらが一部重なって観察される。グルタル酸無水物環のうち、シンジオタクチックな関係にある不飽和カルボン酸エステル単位と不飽和カルボン酸単位および/またはシンジオタクチックな関係にある不飽和カルボン酸単位同士を環化して形成されたグルタル酸無水物環の割合が多くなると(Z)/(W)の値は大きくなる傾向にあり、これにより、熱可塑性重合体の湿熱処理時の安定性が低下する傾向にある。一方、グルタル酸無水物環のうち、アイソタクチックな関係にある不飽和カルボン酸エステル単位と不飽和カルボン酸単位および/またはアイソタクチックな関係にある不飽和カルボン酸単位同士を環化して形成されたグルタル酸無水物環の割合が多くなると(Z)/(W)の値は小さくなる傾向にあり、これにより、湿熱処理後の剛性低下をゼロ化もしくは大幅に抑制させることができる。
尚、本発明の熱可塑性重合体を重水素化ピリジン中で13C−NMRスペクトルを測定した場合、熱可塑性重合体中の(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量、用いた(i)不飽和カルボン酸エステル単位の種類、用いた(ii)不飽和カルボン酸単位の種類、原共重合体含有重水素化ピリジン溶液中に含有される水分量の差異、測定毎の測定機に由来する微少な誤差等の影響により、グルタル酸無水物環のカルボニルピーク、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピーク、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークの各ピークトップの化学シフトが0.2ppm程度の範囲内でシフトする。そのため、例えば、図1において、高さが(Z)となる化学シフト171.90ppm(ここでは小数点以下第3位を四捨五入し第2位で表示)に観察されるピークトップ、高さが(W)となる化学シフト172.77ppm(ここでは小数点以下第3位を四捨五入し第2位で表示)に観察されるピークトップの化学シフトは、例えば0.2ppm程度の範囲内でシフトして観察されることがあり、この場合は各化学シフトのシフト(移動)を考慮しつつ、(Z)/(W)の値を求めるものとする。
本発明の熱可塑性重合体中の(iii)グルタル酸無水物単位の含有量の下限は、特に制限はないが、耐熱性付与の観点から5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは15重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上である。本発明の熱可塑性重合体中の(iii)グルタル酸無水物単位の含有量の上限は、特に制限はないが、成形加工性および耐湿熱性の向上の観点から80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは50重量%以下であり、更に好ましくは45重量%以下であり、特に好ましくは40重量%以下である。本発明の熱可塑性重合体中の(iii)グルタル酸無水物単位の好ましい含有量を範囲で表せば、例えば好ましい範囲は、熱可塑性共重合体100重量%中に5〜80重量%の範囲であり、より好ましくは5〜50重量%の範囲であり、更に好ましくは10〜50重量%の範囲であり、特に好ましくは15〜50重量%の範囲であり、最も好ましくは20〜50重量%の範囲である。
また、本発明の熱可塑性重合体には、上記(iii)グルタル酸無水物単位および(i)不飽和カルボン酸エステル単位成分の他に(ii)不飽和カルボン酸単位および/または共重合可能な他のビニル系単量体単位を含有することができる。
本発明においては、原共重合体の(イ)脱水及び/又は(ロ)脱アルコール反応を十分に行うことにより熱可塑性重合体中に含有される不飽和カルボン酸単位量は特に制限はないが50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、すなわち0〜10重量%とすることが好ましく、特に好ましくは0〜5重量%であり、最も好ましくは0〜2重量%である。熱可塑性重合体中の不飽和カルボン酸単位の含有量が50重量%を超える場合には、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、共重合可能な他のビニル系単量体単位量は特に制限はなく0〜35重量%であることが好ましいが、より好ましくは10重量%以下、すなわち0〜10重量%であり、更に好ましくは0〜5重量%であり、最も好ましくは0〜2重量%である。特に、スチレンなどの芳香族ビニル系単量体単位を含有する場合、含有量が多すぎると、無色透明性、光学等方性、耐薬品性が低下する傾向がある。
かくして得られる本発明の熱可塑性重合体のガラス転移温度としては、特に制限はないが、実用耐熱性の観点から、好ましくは110℃以上であり、より好ましくは115℃以上であり、更に好ましくは120℃以上であり、特に好ましくは125℃以上であり、最も好ましくは130℃以上である。また、上限としては、特に制限はないが、成形加工性の点から200℃以下であることが好ましく、より好ましくは180℃以下であり、更に好ましくは170℃以下であり、特に好ましくは160℃以下である。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて昇温速度20℃/分で測定したガラス転移温度である。
また、本発明の製造方法により製造される熱可塑性重合体の黄色度(Yellowness Index)の値は特に制限はないが40以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、更に好ましくは10以下であり、特に好ましくは5以下であり、最も好ましくは4以下と着色が抑制され、更に好ましい態様においては2以下と極めて高度な無色透明性を有する。上記において黄色度はガラス転移温度+140℃で射出成形した厚さ1mm成形品のYI値をJIS−K7103に従い、測定した値である。黄色度の下限は、特に制限はなく、低いほど好ましいが、通常1程度である。
本発明の熱可塑性重合体の分子量分布の下限は特に制限はなく、その下限は1.0に限りなく近くてもよいが、溶融流動性の観点から1.05以上であることが好ましく、より好ましくは1.1以上であり、更に好ましくは1.2以上であり、特に好ましくは1.3以上であり、最も好ましくは1.5以上であり、熱可塑性重合体の分子量分布の上限は特に制限はないが、耐衝撃性の観点から20.0以下であることが好ましく、より好ましくは10.0以下であり、更に好ましくは5.0以下であり、特に好ましくは3.0以下であり、最も好ましくは2.85以下である。尚、本発明における分子量分布とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いて、重量平均分子量(絶対分子量)、数平均分子量(絶対分子量)を測定し、重量平均分子量(絶対分子量)/数平均分子量(絶対分子量)で算出するものである。
また、本発明の熱可塑性重合体に関し、その厚さ100±5μmのフィルムにおいて、このフィルムを光学顕微鏡で観察して異物数を確認した際に、無作為に10カ所の点で観察、異物数のカウントを繰り返し、その平均値を1mm四方単位面積当たりの異物数(個/mm2)として評価した場合の1mm四方単位面積当たりの10μm以上の異物数は、特に制限はないが、1000個以下が好ましく、より好ましくは15個以下であり、更に好ましくは10個以下、特に好ましくは3個以下、最も好ましくは0個である。ここで、厚さ100±5μmのフィルムは溶液製膜および溶融製膜により作製することができる。例えば、溶液製膜の方法は、本発明の熱可塑性重合体をメチルエチルケトンに濃度25重量%で、室温で24時間攪拌しながら溶解させ、得られた熱可塑性重合体溶液をガラス板上に流延した後、50℃で20分、次いで80℃で30分乾燥処理を行い、厚さ100±5μmのフィルムを作成するというものである。また、このフィルムを光学顕微鏡で観察して異物数を確認した際に、1mm四方単位面積当たりの10μm以上の異物数をカウントする際には、1サンプルあたり、無作為に10カ所の点で観察、異物数のカウントを繰り返し、その平均値を1mm四方単位面積当たりの異物数(個/mm2)とし評価する。異物の確認に用いる光学顕微鏡としては具体的に微分干渉型反射顕微鏡(ニコン社製 ECLIPSE LV100D)を挙げることができ、前記光学顕微鏡により、厚さ100±5μmのフィルムの表面を観察し、内部の異物由来の凹凸数を異物数としてカウントする。
本発明の熱可塑性重合体における異物とは、製造工程で外部から混入した無機物や有機物といった外乱異物と本発明の原共重合体の製造時に生成した巨大分子量体や低分子量化合物等の副生成物をはじめとした不溶成分および/または非溶融成分、および原共重合体から分子内環化反応により熱可塑性重合体を得る際に生成した巨大分子量体や低分子量化合物等の副生成物をはじめとした不溶成分および/または非溶融成分のうち、少なくとも1種である。ここで、外部から混入した外乱異物を除く異物に関して、光学顕微鏡を用いた同様の確認法で評価した際に、無作為に10カ所の点で観察、異物数のカウントを繰り返し、その平均値を1mm四方単位面積当たりの異物数(個/mm2)として評価した場合の1mm四方単位面積当たりの10μm以上の異物数は、特に制限はないが、500個以下が好ましく、より好ましくは10個以下であり、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは0.1個以下、最も好ましくは0個である。異物について、外部から混入した外乱異物を除く異物とそれ以外を見分ける方法としては、例えば、個々の異物について顕微IRを測定し、特性吸収を確認する方法が挙げられる。
また、本発明の熱可塑性重合体は、重量平均分子量(以下Mwとも呼ぶことがある)が、好ましくは2000〜1000000であり、より好ましくは2000〜200000である。本発明の共重合体のフィルムを溶融製膜により効果的に作製する観点と、流動性の観点から、Mwの上限としては90000であることがより好ましく、更に好ましくは上限が80000であり、特に好ましくは上限が70000である。また、Mwの下限は、耐衝撃性と溶融滞留安定性の観点から3000であることがより好ましく、更に好ましくは5000であり、特に好ましくは10000である。
尚、本発明でいう重量平均分子量とは、多角度光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC−MALLS)で測定した絶対分子量での重量平均分子量を示す。
本発明の熱可塑性重合体の溶融粘度は特に制限はないが、プランジャー式キャピラリーレオメーター(東洋精機製作所製 キャピログラフ タイプ1C)を用いて、ガラス転移温度+150℃の温度で測定し、せん断速度5秒−1に外挿して得たせん断速度5秒−1における溶融粘度(Pa・s)が、10〜1000000Pa・sの範囲であることが好ましく、溶融製膜性と溶融濾過性の向上の観点からより好ましくは10〜100000Pa・sの範囲であり、更に好ましくは100〜10000Pa・sの範囲であり、特に好ましくは100〜5000Pa・sの範囲であり、最も好ましくは100〜2000Pa・sの範囲である。
本発明の(iii)グルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体の製造方法は特に制限はないが、以下に示す2つの工程により製造されることが好ましい。すなわち、後の工程により(iii)グルタル酸無水物単位を与える不飽和カルボン酸エステル単量体及び不飽和カルボン酸単量体と、その他のビニル系単量体単位を含む場合には該単位を与えるビニル系単量体とを共重合させ、原共重合体を製造する工程(第一工程)と、続いて、かかる原共重合体を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で、好ましくは加熱せしめることにより、(イ)脱水及び/又は(ロ)脱アルコールによる分子内環化反応を行わせる工程(第二工程)からなる製造方法である。この場合、典型的には、原共重合体を加熱することにより2単位の(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボキシル基が脱水され、あるいは、隣接する(ii)不飽和カルボン酸単位と(i)不飽和カルボン酸エステル単位からアルコールの脱離により1単位の前記(iii)グルタル酸無水物単位が生成される。このとき、原共重合体としては、本発明の原共重合体を用いて(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコール反応による分子内環化反応せしめて得ることが、特定の(Z)/(W)値を有する本発明の熱可塑性重合体を得る上で好ましく、これにより、得られる熱可塑性重合体は、耐湿熱性に大きく優れる。
本発明の原共重合体とは、下記一般式(2)で表される(i)不飽和カルボン酸エステル単位および下記一般式(3)で表される(ii)不飽和カルボン酸単位を含む共重合体であって、かつ重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)と、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)の比である(X)/(Y)の値が、0.21以上であることを特徴とする。
(ただし、R3は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表し、R4は炭素数1〜22の有機残基を表す)
ここで、R3の炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R3として好ましくは、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数6〜20の芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R3としてより好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素で置換されたフェニル基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜6の脂環式炭化水素基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基であり、R3として更に好ましくは水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかであり、特に好ましくはメチル基である場合である。
R4の炭素数1〜22の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R4として好ましくは、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数6〜20の芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜22の脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基から選ばれるいずれかであり、より好ましくは、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基から選ばれる基であり、更に好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、R4として特に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、上記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸エステル単位が、炭素数1〜6の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位であることが特に好ましい。
(ただし、R5は水素原子および炭素数1〜20の有機残基基から選ばれるいずれかを表す)
前記一般式(3)において、R5の炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R5として好ましくは、水素、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数6〜20の芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜20の脂環式炭化水素基から選ばれる基であり、より好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜6の脂環式炭化水素基から選ばれるいずれかであり、更に好ましくは水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかであり、特に好ましくはメチル基である。
ここで、(i)不飽和カルボン酸エステル単位および(ii)不飽和カルボン酸単位は一種または二種以上を用いることができる。前記原共重合体を得る方法としては特に制限はないが、下記一般式(4)で表される不飽和カルボン酸エステル単量体および下記一般式(5)で表される不飽和カルボン酸単量体からなる単量体混合物を共重合することにより得ることが好ましい。すなわち、前記方法では、原共重合体中に含まれる(i)不飽和カルボン酸エステル単位は下記一般式(4)で表される不飽和カルボン酸エステル単量体の共重合により誘導され、原共重合体中に含まれる(ii)不飽和カルボン酸単位は下記一般式(5)で表される不飽和カルボン酸単量体から誘導される。
(ただし、R6は水素原子および炭素数1〜20の有機残基から選ばれるいずれかを表し、R7は炭素数1〜22の有機残基を表す)
前記一般式(4)において、ここで、R6の炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R6として好ましくは、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数6〜20の芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜20の脂環式炭化水素基から選ばれる基であり、より好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜6の脂環式炭化水素基から選ばれるいずれかであり、更に好ましくは水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかであり、特に好ましくはメチル基である。
R7の炭素数1〜22の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R4として好ましくは、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数6〜20の芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜22の脂環式炭化水素基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基から選ばれるいずれかであり、より好ましくは、水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基、シクロヘキシル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれる基から選ばれる基であり、更に好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、R7として特に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、前記一般式(4)で表される不飽和カルボン酸エステル単量体が、炭素数1〜6の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体であることが特に好ましい。
(ただし、R8は水素原子および炭素数1〜20の脂肪族基から選ばれるいずれかを表す)
前記一般式(5)において、R8の炭素数1〜20の有機残基としては特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、構造中にヘテロ原子を含んでもよい。R3として好ましくは、水素、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数6〜20の芳香族基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜20の脂環式炭化水素基から選ばれる基であり、より好ましくは水素原子、無置換またはハロゲンで置換された炭素数1〜6のアルキル基、無置換またはハロゲンあるいはアルキル基で置換されたフェニル基、無置換またはハロゲンあるいは脂肪族炭化水素基で置換された炭素数3〜6の脂環式炭化水素基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基から選ばれるいずれかであり、更に好ましくは水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかであり、最も好ましくはメチル基である。
前記一般式(4)で表される不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては特に制限はないが、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられる。中でも、光学特性、熱安定性に優れる点で、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましく、とりわけメタクリル酸メチルが好ましい。これらは単独でも、もしくは2種以上の混合物であってもよい。
また、不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はないが、他のビニル化合物と共重合させることが可能ないずれの不飽和カルボン酸単量体も使用可能である。好ましい不飽和カルボン酸単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等の上記一般式(5)で表される化合物のほか、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等の無水マレイン酸の加水分解物、およびこれら不飽和カルボン酸単量体の金属塩等が挙げられ、これらの中では熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が特に好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種以上を用いることができる。
本発明の原共重合体において、(i)不飽和カルボン酸エステル単位の含有量は特に制限はないが、原共重合体に含まれる全単量体単位を100重量%として、その下限は20重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、更に好ましくは55重量%以上であり、特に好ましくは60重量%以上であり、最も好ましくは65重量%以上であり、その含有量の上限は95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましく、85重量%以下であることが更に好ましく、特に好ましくは80重量%以下であり、最も好ましくは78重量%以下である。一方、原共重合体に含まれる(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量の下限は特に制限はないが、分子内環化反応せしめて得られる熱可塑性重合体の耐熱性の観点から、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることが更に好ましく、特に好ましくは20重量%以上であり、最も好ましくは22重量%以上である。(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量の上限は特に制限はないが、分子内環化反応時の加工性と分子内環化反応せしめて得られる熱可塑性重合体の耐湿熱性の観点から、80重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましく、更に好ましくは45重量%以下であり、特に好ましくは40重量%以下であり、最も好ましくは35重量%以下である。(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量が5重量%以上の場合には、原共重合体の加熱による(iii)グルタル酸無水物単位の生成量が多くなり、耐熱性向上効果が大きくなる傾向がある。一方、(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量が80重量%以下の場合には、原共重合体の加熱による環化反応後に、(ii)不飽和カルボン酸単位の残存量が少なくなる傾向があり、無色透明性、溶融滞留安定性が向上する傾向がある。本発明で規定の(X)/(Y)の値が大きな値である方が溶融滞留安定性に優れるが、(X)/(Y)の値が同等である場合、原共重合体の(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量が少ないほど、溶融滞留安定性に優れる傾向がある。
また、原共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のビニル系単量体単位を含むことができる。この際に、原共重合体中のその他のビニル系単量体単位は、その他のビニル系単量体を共重合することにより導入されることが好ましい。その他のビニル系単量体の好ましい具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、無水イタコン酸、1,2−ジメチル無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸3−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、2−スチリル−オキサゾリン、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4−ジヒドロキシ−2−ブテン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、酢酸プロペニル、酢酸イソプロぺニル、安息香酸ビニル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールメタクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコール、α−メチレン−γ−ブチロラクトン等に代表されるエキソ−メチレンラクトン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の従来公知のヒンダードアミン系紫外線安定性単量体、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン等の従来公知のベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等の従来公知のベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン等の従来公知のトリアジン系紫外線吸収性単量体、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸ノルボルニルメチル、アクリル酸シアノノルボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ボルニル、アクリル酸メンチル、アクリル酸フェンチル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸ジメチルアダマンチル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−8−イル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−4−メチル、アクリル酸シクロデシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチル、メタクリル酸シアノノルボルニル、メタクリル酸フェニルノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカ−4−メチルおよびメタクリル酸シクロデシルなどを挙げることができる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。また、本発明では、本発明の効果を損なわない範囲において、n−ドデシルベンゼンスルホン酸、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体等のアニオン系、オクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン系、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート等の非イオン系の界面活性剤を分散剤として用いることもできる。中でも着色が少ない等の理由から、非イオン系界面活性剤が好ましく用いることができる。分散剤の使用により、分散粒子同士の合着が低下する傾向がある。
本発明の原共重合体の重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト176.00〜179.43ppmの範囲に分裂して観測され、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲に分裂して観測される。(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、本発明の参考例1で製造した原共重合体(a−1)においては、複数のピークが重なり合った結果、大きく8つのピーク群に分裂して観察される。
本発明の原共重合体は、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)と、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)の比である(X)/(Y)の値が、0.21以上であることを特徴とし、この場合、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基の分裂ピークのうち、sAsBsBs、sBsBsAs、iAsBsAs、sAsBsAiのピーク(これら4つのピークはほぼ同じ化学シフトの範囲に重なって、一見1つのピークとして観察され、本発明の参考例1で製造した原共重合体(a−1)の13C−NMRスペクトルにおいては、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基の分裂ピークのうちで最大の積分値を有するピークである)のピークトップ(M)は180.92ppmに確認される。一般的に、13C−NMRスペクトル測定により得られる化学シフトは、周波数、温度およびサンプル濃度を同一条件とし、標準試薬TMSを用いて測定を行っても、測定毎に例えば0.2ppm程度の範囲内でシフトする。
本発明の原共重合体を重水素化ピリジン中で13C−NMRスペクトルを測定した場合、原共重合体中の(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量、用いた(i)不飽和カルボン酸エステル単位の種類、用いた(ii)不飽和カルボン酸単位の種類、原共重合体含有重水素化ピリジン溶液中に含有される水分量の差異、測定毎の測定機に由来する微少な誤差等の影響(前記の中では原共重合体中の(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量の差異による影響が特に大きい)により、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピーク、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークの各ピークトップの化学シフトが0.2ppm程度の範囲内でシフトする。そのため、前記ピークトップ(M)の化学シフトは180.92ppmから0.1ppm程度高磁場あるいは低磁場にシフトして観察されることがある。この場合、本発明では、前記ピークトップ(M)が化学シフト180.92ppmに観察される際に、179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークと、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観察されるピークは、前記ピークのピークトップ(M)がシフトした磁場側に同じ分だけ、シフトさせて考えるものとする。例えば、前記ピークトップ(M)が0.08ppm高磁場側に観察され、180.84ppmに観察された場合、179.15〜179.43ppmの範囲に観察されるピークの範囲は、0.08ppm分、高磁場側にシフトして観察されるため、179.07〜179.35ppmの範囲に補正するものとし、同様に181.12〜181.50ppmの範囲に観察されるピークの範囲も0.08ppm分、高磁場側にシフトして観察されるため、181.04〜181.42ppmの範囲に補正するものとする。
ここで、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲には、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークのうち、両隣が不飽和カルボン酸単位で、かつ不飽和カルボン酸エステル単位とその両隣の不飽和カルボン酸単位とのタクティシティーが共にシンジオタクチックであり、かつ両隣の不飽和カルボン酸単位と更にその隣の単位とのタクティシティーが共にアイソタクチックであるピーク(iBsAsBi)と、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークのうち、片側の隣が不飽和カルボン酸エステル単位で、もう一方の隣が不飽和カルボン酸単位であり、かつこれらとのタクティシティーが共にアイソタクチックであるピーク(iAiBiBi、iAiBiBs、sAiBiBi、sAiBiBs、iBiBiAi、iBiBiAs、sBiBiAiおよびsBiBiAs)が一部重なって観測される。一方、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲は、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークのうち、両隣が不飽和カルボン酸単位であるピークで、かつ不飽和カルボン酸単位とその両隣の不飽和カルボン酸単位とのタクティシティーが共にシンジオタクチックであり、かつ両隣の不飽和カルボン酸単位と更にその隣の単位とのタクティシティーが共にシンジオタクチックであるピーク(sBsBsBs)と、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークのうち、片側の隣が不飽和カルボン酸エステル単位で、もう一方の隣が不飽和カルボン酸単位であり、かつこれらとのタクティシティーが共にシンジオタクチックであり、かつこれら両端の単位の更にその隣の単位とのタクティシティーについて、一方がシンジオタクチックで、もう片方がアイソタクチックであるピーク(sAsBsBi、iAsBsBs、sBsBsAiおよびiBsBsAs)が一部重なって観測される。尚、上記の記号(A、B、sおよびi)のうち、Aは(i)不飽和カルボン酸エステル単位を、Bは(ii)不飽和カルボン酸単位を、sはシンジオタクチックを、iはアイソタクチックをそれぞれ示し、これら記号によって原共重合体のペンタッドタクティシティー−トライアッドシーケンスを表現した。
本発明の原共重合体の分子内環化反応において、その環化反応速度は下記の順であると考えられる。すなわち、環化反応速度が最も速い組み合わせは、不飽和カルボン酸単位同士の反応でかつこれらのタクティシティーがアイソタクチックの関係の場合であり、次いで、不飽和カルボン酸単位と不飽和カルボン酸エステル単位の反応でこれらがアイソタクチックの関係の場合であり、次いで、不飽和カルボン酸単位同士の反応でかつこれらがシンジオタクチックの関係の場合であり、次いで、不飽和カルボン酸単位と不飽和カルボン酸エステル単位の反応でこれらがシンジオタクチックの関係の場合である。従って、本発明では、(X)/(Y)の値を0.21以上に制御することによって、分子内環化反応において、環化反応速度を向上させることが可能となり、副反応や脱炭酸反応等により溶融滞留安定性を低下させる一因となる不飽和カルボン酸単位を速く反応で消費させることができる。同時に、環化反応速度を向上させ、共重合体中に、熱処理中の早い段階からグルタル酸無水物環を形成せしめることにより、グルタル酸無水物環の嵩高さによる立体障害によって、残存不飽和カルボン酸の副反応を低減させる効果、更には、グルタル酸無水物環単位の存在により不飽和カルボン酸単位由来の分解、あるいは不飽和カルボン酸エステル単位由来の主鎖分解等が抑制または防止される効果が発現すると考える。本発明では、前記(X)/(Y)の値の下限は、原共重合体の高温下、および酸素存在下での溶融滞留安定性を向上させ、かつ分子内環化反応により得られる熱可塑性重合体の耐湿熱性を向上させる観点から、0.21以上であり、好ましくは0.22以上であり、より好ましくは0.25以上であり、更に好ましくは0.27以上であり、特に好ましくは0.30以上であり、最も好ましくは0.35以上である。一方、(X)/(Y)の値の上限は特に制限はないが、分子内環化反応における熱処理時の加工性、分子内環化後の熱可塑性重合体の透明性および耐熱性の観点から、0.90以下であることが好ましく、より好ましくは0.70以下であり、更に好ましくは0.50以下であり、特に好ましくは0.46以下であり、最も好ましくは0.44以下である。(X)/(Y)の値が0.21以上である場合、分子内環化反応の速度が優れる傾向にある。また、(X)/(Y)の値を0.21以上とし、かつ(X)/(Y)の値を0.90以下、より好ましくは0.70以下であり、更に好ましくは0.50以下であり、特に好ましくは0.46以下であり、最も好ましくは0.44以下に制御することで、分子内環化反応の速度を高いレベルに維持したまま、分子内環化反応時の温度コントロール、分子内環化反応に伴う脱気条件等の制御が容易となる傾向にあり、また、分子内環化後の熱可塑性重合体に含まれるグルタル酸無水物環構造単位に関し、グルタル酸無水物環構造単位を分子内環化反応により形成する2単位のタクティシティーに由来する立体構造に偏りが生じないことにより、分子内環化後の熱可塑性重合体の透明性および耐熱性が向上し、これらと耐湿熱性を両立できる傾向にある。従来のアクリル系単量体のラジカル重合においては、シンジオタクチックなタクティシティーを有するアクリル系共重合体の合成は比較的容易であるが、一方で、例えば、不飽和カルボン酸エステル単量体と不飽和カルボン酸単量体との共重合体においては、不飽和カルボン酸単位のその隣接する単位とにアイソタクチックなタクティシティーを構築する場合、その導入量は、シンジオタクチックなタクティシティーの導入量と比較して極めて低くなる傾向にあり、更には、アイソタクチックなタクティシティーの導入量を特定の範囲に制御することは困難であった。本発明の原共重合体は、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)と、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)の比である(X)/(Y)の値が0.21以上に制御されているため、溶融滞留安定性に優れ、かつ分子内環化反応を経て導入される熱可塑性樹脂重合体は、重水素化ピリジン中、15℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト171.8〜172.0ppmの範囲に観測されるピークの高さ(Z)と、化学シフト172.7〜172.9ppmの範囲に観測されるピークの高さ(W)の比である(Z)/(W)の値が0.55以下に制御され、これにより、耐湿熱性に優れる。
本発明の原共重合体の製造法としては、(i)不飽和カルボン酸エステル単位および(ii)不飽和カルボン酸単位を含み、かつ重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)と、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)の比である(X)/(Y)の値が0.21以上である原共重合体が得られる限りにおいては特に制限はないが、例えば、不飽和カルボン酸エステル単量体および不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物を溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)中で共重合することを特徴とする原共重合体の製造方法であって、前記有機溶媒(A)が脂環式炭化水素を含む有機溶媒、および/または[(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量)/(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量)]×100で算出される仕込みモノマー濃度が17.0%以上であることを特徴とする製造方法で製造できる。、本発明で規定の(X)/(Y)を0.21以上により好ましく制御する観点から、不飽和カルボン酸エステル単量体および不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物を溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)中で、[(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量)/(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量)]×100で算出される仕込みモノマー濃度が17.0%以上として共重合することが好ましく、更に好ましくは、前記仕込みモノマー濃度が17.0〜40.0%の範囲であることであり、特に好ましくは前記有機溶媒(A)が脂環式炭化水素を含むことである。
本発明の原共重合体を共重合により得る際の重合反応の伝達体としてはイオン、ラジカル等が挙げられるが、好ましくはラジカルである。重合方法としては、(X)/(Y)の値が0.21以上である原共重合体が得られる限りにおいては特に制限はなく、有機溶媒(A)中で行う重合を挙げることができ、回分式、連続式のいずれでもよく、例えば沈殿重合、連続沈殿重合である。
本発明において、沈殿重合とは、例えば、原共重合体の原料である単量体混合物は溶解するが、原共重合体の少なくとも一部が析出してくる重合であり、より好ましくは、原共重合体の原料である単量体混合物は溶解するが、溶解度が1g/100g以下である溶媒中で重合をするものである。尚、ここで、「原共重合体の溶解度」とは、原共重合体の有機溶媒100gに対する、23℃で24時間、攪拌した後の溶解量を意味する。(X)/(Y)の値を0.21以上により好ましく制御するには、不飽和カルボン酸エステル単量体および不飽和カルボン酸単量体からなる単量体混合物を有機溶媒(A)中で共重合することに加えて、[重合系内に仕込んだ全モノマーの質量]/[重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量]で算出する仕込みモノマー濃度が17.0%以上であることが好ましく、前記仕込みモノマー濃度はより好ましくは17.0〜40.0%の範囲であることがより好ましい。
本発明において、有機溶媒(A)とは、溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲のものであるが、溶解度パラメーターの下限は好ましくは12.9MPa1/2以上であり、より好ましくは14.0MPa1/2以上であり、更に好ましくは15.4MPa1/2以上であり、特に好ましくは15.8MPa1/2以上である。有機溶媒(A)の溶解度パラメーターの上限は好ましくは17.4MPa1/2以下であり、より好ましくは17.3MPa1/2以下であり、更に好ましくは17.2MPa1/2以下である。
有機溶媒(A)としては、溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある単独溶媒、溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある混合溶媒を挙げることができる。溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある混合溶媒としては、例えば、溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある単独溶媒の2種以上からなる混合溶媒、溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲の単独溶媒の1種以上に、更に溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にない有機溶媒の1種以上を混合して、混合溶媒としての溶解度パラメーターを11.9〜17.6MPa1/2の範囲に調整した混合溶媒を挙げることができる。
有機溶媒(A)として、単独溶媒としても用いることができるものとしては、溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲であれば特に制限はなく、例えば、脂肪族炭化水素、カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、アルコール、アルデヒド、ラクトン、芳香族化合物、極性非プロトン溶媒、カーボネート化合物およびハロゲン系化合物から選ばれる1種以上を好ましく挙げることができ、中でも、得られる原共重合体、および原共重合体を分子内環化して得られる熱可塑性重合体の色調の観点から脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、カルボン酸エステル、ケトン、アルコール、エーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
ここで、有機溶媒(A)として、単独溶媒としても用いることもできる脂肪族炭化水素としては、炭素数が5〜12の直鎖状炭化水素、側鎖を有する脂肪族炭化水素を挙げることができ、具体例として、n−ペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、ペルフルオロヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2−エチルヘキサン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、ウンデカン、ドデカン、2,4−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタンおよびこれらの種々の異性体等が好ましく挙げられ、これらの一種以上を用いることができ、これらの中では原共重合体の滞留安定性の観点からn−ヘキサン、n−デカンがより好ましい。有機溶媒(A)として、単独でも用いることもできる脂環式炭化水素としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、trance−デカリン、cis−デカリン、t−ブチルシクロヘキサンおよびペルフルオロメチルシクロヘキサン等のシクロヘキサンの置換体およびこれらの異性体等が好ましく挙げられ、これらの1種以上を用いることができ、これらの中ではシクロヘキサンがより好ましい。有機溶媒(A)として、単独でも用いることもできるカルボン酸エステルとしては、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸−n−ヘキシル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸イソプロピル、酢酸1−メトキシ−2−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−tert−ブチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸アミル、酢酸−n−ヘキシル、酢酸−n−ヘプチル、酢酸−n−オクチル、酢酸−n−ノニル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸−n−ヘキシル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸−n−ブチル、酪酸イソブチル、酪酸アミル、酪酸−n−ヘキシル、酢酸イソアミル、酢酸−sec−アミル(酢酸1−メチルブチル)、酢酸2−メチルブチル、酢酸1,3−ジメチルブチル、酢酸1−メチルアミル、酢酸2−メチルアミルおよび酢酸3−メチルアミル等の酢酸エステルのほか、蟻酸イソアミル、蟻酸−sec−アミル、蟻酸−2−メチルブチル、蟻酸1−メチルアミル、蟻酸2−メチルアミルおよび蟻酸3−メチルアミル等の蟻酸エステル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸−sec−ブチル、イソ酪酸アミルおよびイソ酪酸イソアミル等のイソ酪酸エステル、酪酸イソアミル、酪酸−sec−アミル、酪酸−2−メチルブチル、酪酸1−メチルアミル、酪酸2−メチルアミルおよび酪酸3−メチルアミル等の酪酸エステル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸イソプロピル、吉草酸ブチル、吉草酸イソブチル、吉草酸−sec−ブチル、吉草酸アミル、吉草酸イソアミル、吉草酸−sec−ブチル、吉草酸2−メチルブチル、吉草酸1−メチルアミル、吉草酸2−メチルアミルおよび吉相酸3−メチルアミル等の吉草酸エステル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、イソ吉草酸イソプロピル、イソ吉草酸ブチル、イソ吉草酸イソブチル、イソ吉草酸−sec−ブチル、イソ吉草酸アミル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸−sec−ブチル、イソ吉草酸2−メチルブチル、イソ吉草酸1−メチルアミル、イソ吉草酸2−メチルアミルおよびイソ吉草酸3−メチルアミル等のイソ吉草酸エステル、2−エチル酪酸イソブチル、オクタン酸エチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブトキシエチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸ブチルおよびこれらの種々の異性体等が好ましく挙げられ、これらの一種以上を用いることができる。
有機溶媒(A)として、単独でも用いることもできるケトンとしては、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジイソブチルケトン、メチルノニルケトン(2−ウンデカノン)、メチルヘキシルケトン、メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)、メチルイソアミルケトン、メチル−sec−アミルケトン、エチルアミルケトン、プロピルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、4,6−ジメチル−2−ヘプタノンおよびイソブチルイソプロピルケトンなどを好ましく挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として、単独でも用いることもできるエーテルとしては、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ブチルエーテル、プロピルエーテルおよびジヘキシルエーテル等を好ましく挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として添加できるアルコールとしては、例えば、イソノニルアルコール、イソデカノール、イソトリデカノール、ラウリルアルコール等を好ましく挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。
また、有機溶媒(A)は、前記の通り、溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2となる範囲において、前記の単独溶媒として用いることが可能な有機溶媒に、更にその他の溶媒を添加して調製することができる。有機溶媒(A)として単独で用いることができる有機溶媒と混合して用いることができるカルボン酸エステルとしては、前記に例示したもの以外のカルボン酸エステルを挙げることができ、例えば、ギ酸イソプロピル、ギ酸−n−ブチル、ギ酸−n−プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸2−メトキシエチル、酢酸2−エトキシエチル、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、トリアセチン、酢酸−n−プロピル、プロピオン酸メチル等を好ましく挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として単独で用いることができる溶媒と混合して用いることができるケトンとしては、有機溶媒(A)として単独で用いることができるケトンを除く炭素数1〜10で直鎖状および分岐状の飽和脂肪族基からなるケトンであり、具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、メチル−n−ブチルケトン等を好ましく挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として単独で用いることができる溶媒と混合して用いることができるエーテルとしては、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等を好ましく挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として単独で用いることができる溶媒と混合して用いることができるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブチルアルコール、tert−ブタノール、3−メトキシブタノール、1,3−ブタンジオール、アリルアルコール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1−メチルブタノール、2−メチルブタノール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、メチルアミルアルコール、ヘプタノール、イソヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、ノナノール、イソノナノール、デカノール、メチルイソブチルカービノール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、ジイソブチルカービノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ジエチルペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、オクタンジオール等のジオールおよびこれらの異性体等を挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として単独で用いることができる溶媒と混合して用いることができる芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等を挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として単独で用いることができる溶媒と混合して用いることができるアルデヒドとしては、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド等を挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として単独で用いることができる溶媒と混合して用いることができるラクトンとしては、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン等を挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として単独で用いることができる溶媒と混合して用いることができる極性非プロトン溶媒としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として単独で用いることができる溶媒と混合して用いることができるカーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等を挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。有機溶媒(A)として単独で用いることができる溶媒と混合して用いることができるハロゲン系化合物としては、有機溶媒(A)および前記した有機溶媒(A)以外のその他の有機溶媒として添加できる脂肪族炭化水素、カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、アルコール、芳香族化合物、極性非プロトン溶媒、カーボネート化合物、ハロゲン系化合物から選ばれる1種以上のハロゲン化物のほか、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ヘキサフルホロイソプロパノール等を挙げることができ、これらの一種以上を用いることができる。
有機溶媒(A)としては、本発明の(X)/(Y)の値を本発明で規定の特定の範囲に制御し、原共重合体の溶融滞留安定性および原共重合体を分子内環化せしめて得られる熱可塑性重合体の耐湿熱性を向上させる観点から、少なくとも脂環式炭化水素を含むことが好ましく、より好ましくは脂環式炭化水素を含む混合溶媒であり、更に好ましくは、脂環式炭化水素とカルボン酸エステルまたはケトンの混合物であり、特に好ましくは、脂環式炭化水素とカルボン酸エステルの混合物であり、最も好ましくは、脂環式炭化水素と単独でも有機溶媒(A)として用いることができるカルボン酸エステルの混合物である。有機溶媒(A)が少なくとも脂環式炭化水素を含むことにより、原共重合体の共重合において、スケーリング抑制に優れ、これにより高濃度沈殿重合が可能となり、原共重合体および原共重合体を分子内環化せしめて得られる熱可塑性重合体の色調(黄色度)にも優れ、スケーリング抑制と良色調を両立することができる。
ここで、前記脂環式炭化水素としてはシクロヘキサンが最も好ましい。シクロヘキサンは純度が高い方が好ましいが、ベンゼン、メチルシクロヘキサン、シクロパラフィン等を含んでいてもよい。有機溶媒(A)として好ましく用いられる脂環式炭化水素とカルボン酸エステルの混合物に関し、混合溶媒全体を100重量%とした際に、脂環式炭化水素の混合割合の下限としては特に制限はないが、共重合時のスケーリング抑制の観点および原共重合体の(X)/(Y)の値を本発明で規定の範囲に制御する観点から、27重量%以上であることが好ましく、より好ましくは30重量%以上であり、更に好ましくは35重量%以上であり、特に好ましくは40重量%以上であり、最も好ましくは45重量%以上であり、脂環式炭化水素の配合割合の上限としては特に制限はなく100重量%でもよいが、共重合により得られる粒子の粒子径を制御しハンドリング性を向上させる観点から、好ましくは95重量%以下であり、より好ましくは90重量%以下であり、更に好ましくは850重量%以下であり、特に好ましくは80重量%以下である。混合溶媒全体を100重量%とした際に前記カルボン酸エステルの混合割合の上限は特に制限はないが、73重量%以下であることが好ましく、より好ましくは70重量%以下であり、更に好ましくは60重量%以下であり、特に好ましくは55重量%以下であり、前記カルボン酸エステルの含有量の下限は特に制限はないが、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは15重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上である。
有機溶媒(A)として、脂環式炭化水素と好ましく併用されるカルボン酸エステルとしては、前記した、単独でも有機溶媒(A)として用いることができるカルボン酸エステルであり、これらの中でも、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸アミルおよび酢酸イソアミルのうち少なくとも1種が好ましく、特に好ましくは酢酸−n−ブチルである。
また、本発明の有機溶媒(A)を用いることで、原共重合体の重合時の反応容器壁部、反応容器底部、および攪拌翼等への析出ポリマーの付着、および析出ポリマー同士の合着による粗大化を高度に防止することが可能となる。更には、原共重合体を粉体として極めて容易に取り出すことができる。重合後の原共重合体スラリーの固液分離を行った後の原共重合体の粒子の回収において、有機溶媒(A)の効果により、原共重合体の粒子の分散性が大きく向上する。本発明では、有機溶媒(A)を使用して、原共重合体を製造することで、上記のような効果が得られるとともに、得られた原共重合体を分子内環化反応を行って得られる熱可塑性重合体に含まれる異物の数を非常に低いレベルに押さえることができる。
前記共重合において、前記仕込みモノマー濃度は、(X)/(Y)の値を0.21以上に制御する観点、および原共重合体の高温での溶融滞留安定性とこれを分子内環化反応せしめて得られる熱可塑性重合体の耐湿熱性の観点から、その下限は17.5%以上であることがより好ましく、更に好ましくは18.0%以上であり、特に好ましくは20.0%以上であり、最も好ましくは25.0%以上である。一方、該モノマー濃度の上限としては特に制限はないが、(X)/(Y)の値を0.21以上に制御する観点から40.0%以下であることが好ましく、36.0%以下であることがより好ましく、更に好ましくは33.0%以下であり、特に好ましくは31.0%以下である。このように、特定の有機溶媒(A)を用いて、かつ仕込みモノマー濃度を17.0%以上、好ましくは17.0〜40.0%に設定して沈殿重合を行うことにより、重合時の不飽和カルボン酸単量体同士の会合の度合いを制御することが可能となる。特に、仕込みモノマー濃度を前記特定の範囲に設定し、かつ本発明の特定の範囲の溶解度パラメーターを有する有機溶媒(A)(好ましくは脂環式炭化水素を含む)を用いることで、不飽和カルボン酸単量体同士の会合により不飽和カルボン酸単量体のみが局在化することによる(ii)不飽和カルボン酸単位の多連シーケンス(例えば、(ii)不飽和カルボン酸単位の5連以上のシーケンス)の生成を抑制できる程度に、不飽和カルボン酸単量体同士の会合を抑制し、重合中の各モノマー成分を分散させることが可能となり、一方で、不飽和カルボン酸単量体同士の会合に由来する親和性も一部残るため、不飽和カルボン酸単位と隣接する不飽和カルボン酸単位または不飽和カルボン酸エステル単位とのタクティシティーがアイソタクチックとなる確率が向上し、(X)/(Y)の値を0.21以上に制御されるものと推察される。
第一工程を経て得られる原共重合体の(X)/(Y)の値を本発明で規定の特定範囲内に制御し、これにより原共重合体の高温での溶融滞留安定性および空気存在下での溶融滞留安定性を向上させる観点から、第一工程における重合方法については、重合開始剤の存在下あるいは非存在下で、脂環式炭化水素を含む溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)を用いた重合方法、および/または、溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)を用いて、[重合系内に仕込んだ全モノマーの質量]/[重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量]で算出する仕込みモノマー濃度が17.0%以上、好ましくは17.0〜40.0%の範囲とした重合方法が好ましい。重合方法としてより好ましくは、溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)を用いて、[重合系内に仕込んだ全モノマーの質量]/[重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量]で算出する仕込みモノマー濃度が17.0%以上、好ましくは17.0〜40.0%の範囲とした重合方法であり、更に好ましくは、脂環式炭化水素を含む溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)を用いて、[重合系内に仕込んだ全モノマーの質量]/[重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量]で算出する仕込みモノマー濃度を17.0〜40.0%の範囲とした重合方法である。このように得られた原共重合体を(イ)脱水及び/又は(ロ)脱アルコールによる分子内環化反応せしめて得られる熱可塑性重合体は、耐湿熱性に大きく優れる。
また、有機溶媒(A)を用いて、原共重合体の沈殿重合を行った場合、有機溶媒(A)を用いない従来の沈殿重合では析出ポリマーの合着および/または凝集による攪拌継続困難等により実現が困難であった高モノマー濃度での沈殿重合を実施することが可能となり、これによって、得られた原共重合体は高温での溶融滞留安定性および空気存在下での溶融滞留安定性に優れる上、前記原共重合体を(イ)脱水及び/又は(ロ)脱アルコールによる分子内環化反応せしめて得られる熱可塑性重合体は、耐湿熱性に大きく優れる。
また、本発明の熱可塑性重合体、原共重合体における各成分単位の定量には、一般に赤外分光光度計や核磁気共鳴(1H−NMR、13C−NMR)測定機が用いられ、本発明では13C−NMR法により定量を行う。13C−NMR法では、得られた熱可塑性重合体、原共重合体の各々を600mg/3gの濃度で重水素化ピリジンに溶解させ、Varian社製、UNITY INOVA500型NMR測定機を用いて、測定核13C、基準としてTMSを用い、観測周波数125.7MHz、積算回数30000回として、熱可塑性重合体は温度15℃にて、原共重合体は温度25℃にて、各々測定を行った。本発明の熱可塑性重合体の13C−NMRスペクトルにおいて、(iii)グルタル酸無水物単位の酸無水物のカルボニル基のピークは化学シフト170.50〜174.40ppmの範囲に分裂して観測され、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト174.60〜179.43ppmの範囲に分裂して観測され、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲に分裂して観測される。ここで、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが一部重なるが、本発明の熱可塑性重合体の13C−NMRスペクトルの(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが重なった部分において、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークが占める割合は(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが占める割合と比較して無視できるほど小さいため、本発明の熱可塑性重合体の13C−NMRでは、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、化学シフト174.60〜179.14ppmの範囲、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲とし、これらの積分値から各々の組成を決定するものとする。
本発明の原共重合体の13C−NMRにおいて、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト176.00〜179.43ppmの範囲に分裂して観測され、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲に分裂して観測され、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが一部重なるが、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが重なった部分において、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークが占める割合は(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが占める割合と比較して無視できるほど極めて小さいため、本発明では、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、化学シフト176.00〜179.14ppmの範囲、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲とし、これらの積分値から各々の組成を決定するものとする。尚、本発明の原共重合体、熱可塑性重合体を重水素化ピリジン中で13C−NMRスペクトルを測定した場合、(i)グルタル酸無水物含有単位の含有量、(iii)不飽和カルボン酸単位の含有量、用いた(i)不飽和カルボン酸エステル単位の種類、用いた(ii)不飽和カルボン酸単位の種類、重水素化ピリジン溶液中に含有される水分量の差異、測定毎の測定機に由来する微少な誤差等の影響により、本発明の原共重合体、熱可塑性重合体の各々の13C−NMRスペクトルにおいて、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピーク、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークの各ピークトップの化学シフトが0.2ppm程度の範囲内でシフト(移動)して観察される(各ピークトップ間の化学シフトの差はほとんど変化しない)。そのため、この場合はこれら各化学シフトのシフト(移動)を考慮し(例えば原共重合体の13C−NMRのカルボニルの各ピークトップの化学シフトが高磁場側に0.10ppmシフトした場合、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、化学シフト175.90〜179.04ppmの範囲、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、化学シフト179.05〜181.90ppmの範囲としてこれらの積分値から各々の組成を決定する)、組成を求めるものとする。赤外分光法は原共重合体および熱可塑性重合体の組成決定において、13C−NMR法の補完等の点から好ましく用いることができ、例えばグルタル酸無水物単位は1800cm−1及び1760cm−1の吸収が特徴的であり、不飽和カルボン酸単位や不飽和カルボン酸エステル単位から区別することができる。
1H−NMR法は原共重合体および熱可塑性重合体の組成決定において、13C−NMR法の補完等の点から好ましく用いることができ、例えば、グルタル酸無水物単位、メタクリル酸、メタクリル酸メチルからなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中でのスペクトルの帰属を、0.5〜1.5ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素として観測されるため、これらスペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。また、上記に加えて、他の共重合成分として、スチレンを含有する場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
また、本発明では、有機溶媒(A)は、本発明の効果を損なわない範囲において、酢酸等の遊離酸、各種安定剤、水分等を含むことができる。
第一工程における重合温度については、任意に設定することが可能であり、重合温度の上限は特に制限はないが、180℃以下で重合することが好ましく、より好ましくは150℃以下であり、更に好ましくは120℃以下である。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、40℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上である。また重合時間は、必要な重合率を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から20〜720分間の範囲が好ましく、より好ましくは30〜420分間の範囲であり、更に好ましくは60〜240分間の範囲である。また、第一工程における、重合液中の溶存酸素濃度は、特に制限はないが、加熱処理後の共重合体の無色透明性の観点から好ましくは100000ppm以下であり、より好ましくは10000ppm以下であり、更に好ましくは1000ppm以下であり、重合液中の溶存酸素濃度は0ppmあるいは0ppmに限りなく近いことが特に好ましいが、本発明では、第一工程の重合液中の溶存酸素濃度が5ppmを超える場合であっても、本発明の(X)/(Y)を特定の範囲に制御することによって、従来比、無色透明性、300℃以上の高温下での溶融滞留安定性および空気存在下での溶融滞留安定性に優れた原共重合体を得ることができる。尚、本発明における、溶存酸素濃度は、重合液中の溶存酸素を溶存酸素計(例えばガルバニ式酸素センサである飯島電子工業株式会社製、DOメーターB−505)を用いて測定した値である。溶存酸素濃度を低下させる方法としては、重合容器中に窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを通じる方法、重合液に直接不活性ガスをバブリングする方法、重合開始前に不活性ガスを重合容器に加圧充填した後、放圧を行う操作を1回若しくは2回以上行う方法、単量体混合物を仕込む前に密閉重合容器内を脱気した後、不活性ガスを充填する方法、重合容器中に不活性ガスを通じる方法を例示することができ、単量体混合物および有機溶媒(A)を蒸留後、不活性ガスを充填させたものを用いることも好ましく例示できる。
第一工程である原共重合体の製造時に用いられる単量体混合物は、有機溶媒中に一括で仕込んで共重合しても良く、分割添加、逐次添加しながら共重合しても良い。より好ましくは、生成する原共重合体を構成する単量体単位の組成分布を低減する目的で、単量体混合物中の重量組成比を任意に設定して、分割添加あるいは逐次添加する方法が挙げられる。
本発明において重合開始剤は必須ではないが、使用される場合、重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、通常使用されるあらゆる開始剤が使用できるが、中でも、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどのアゾ系化合物、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が好適に使用することができる。
使用される重合開始剤の量は、共重合に用いられる単量体混合物量に対して、0.001〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.001〜2.0重量部であり、更に好ましくは0.01〜1.5重量部である。
また、本発明においては、必須ではないが、分子量を制御する目的で、メルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミンおよびコバルト系触媒等の連鎖移動剤を添加することができる。
本発明に使用されるメルカプタンとしては、例えば、n−ブチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、sec−ブチルメルカプタン、sec−ドデシルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等のアルキル基又は置換アルキル基を有する第1級、第2級、第3級メルカプタン化合物、フェニルメルカプタン、チオクレゾール、4−tert−ブチル−o−チオクレゾール等の芳香族メルカプタン化合物、エチレンチオグリコール等の炭素数3〜18のメルカプタン化合物、メルカプトカルボン酸エステル等が挙げられ、、これらの1種または2種以上を用いることができる。メルカプトカルボン酸エステルとしては、例えば、チオグリコール酸n−オクチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸ドデシル、チオグリコール酸n−ブチル等のチオグリコール酸エステル、2−メルカプトプロピオン酸エチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、3−メルカプトプロピオン酸n−ブチル、3−メルカプトプロピオン酸n−プロピル、3−メルカプトプロピオン酸イソプロピル、3−メルカプトプロピオン酸n−ペンチル、3−メルカプトプロピオン酸イソアミル、3−メルカプトプロピオン酸ネオペンチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸イソオクチル、3−メルカプトプロピオン酸n−ヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸シクロヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ノニル、3−メルカプトプロピオン酸イソノニル、3−メルカプトプロピオン酸デシル、3−メルカプトプロピオン酸イソデシル、3−メルカプトプロピオン酸n−ドデシル、3−メルカプトプロピオン酸tert−ドデシル、3−メルカプトプロピオン酸オクタデシル、3−メルカプトプロピオン酸トリデシル、2−メルカプトエチルオクタン酸エステル等のメルカプトカルボン酸エステル、6−メルカプトメチル−2−メチル−2−オクタノール、2−フェニル−1−メルカプト−2−エタノール、p−アニソイルジスルフィド、ベンゼンチオール、m−ブロモベンゼンチオール、p−ブロモベンゼンチオール、m−クロロベンゼンチオール、p−クロロベンゼンチオール、ベンゾイルジスルフィド、ビス(p−ブロモベンゾイル)ジスルフィド、ビス(p−クロロベンゾイル)ジスルフィド、ビス(p−シアノベンゾイル)ジスルフィド、ビス(p−ニトロベンゾイル)ジスルフィド、2−ナフタレンチオール、1−ペンタンチオール、ベンゾイルジメチルチオカルバモイルスルフィド、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、p−トルオイルジスルフィド等を例示することができる。なかでもt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンおよび3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルが好ましく用いられる。
本発明において好ましい重合溶媒である有機溶媒(A)中で共重合することにより得られた原共重合体を含む有機溶媒スラリーに関し、共重合が終了した段階のスラリーにおいて、前スラリーの全重量に占める原共重合体の割合は特に制限はないが、生産性の観点から5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは14重量%以上であり、特に好ましくは16重量%以上であり、最も好ましくは20重量%以上である。
また、前記有機溶媒スラリーは、例えば、遠心分離機により固液分離することにより、原共重合体と有機溶媒(A)とを分離・分別でき、さらに必要であれば、有機溶媒(A)を数%程度含有する原共重合体を棚段式乾燥機、コニカルドライヤー、遠心式乾燥機などにより乾燥することにより、有機溶媒(A)を含有しない原共重合体を製造することも可能である。
もっと簡便には、可能であれば、スプレードライヤーにより原共重合体を回収すると同時に、乾燥ポリマーとし、有機溶媒(A)を回収することもできる。
また、本発明の原共重合体は、前記好ましい態様の製造方法において、重量平均分子量(以下Mwと呼ぶことがある)が好ましくは2000〜1000000であり、より好ましくは2000〜200000である。原共重合体の流動性とそれを分子内環化反応してなる本発明の熱可塑性樹脂、および更にゴム質重合体(C)を添加してなる本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融加工時の流動性の観点から、Mwの上限としては90000であることがより好ましく、更に好ましくは上限が80000であり、特に好ましくは上限が70000である。また、Mwの下限は、耐衝撃性と溶融滞留安定性の観点から3000であることがより好ましく、更に好ましくは5000であり、特に好ましくは10000である。Mwが2000未満の場合には、耐衝撃性が低下する傾向にある。Mwが1000000を超える場合には、溶融加工時に、十分に溶融、または溶解しない高分子量物が成形体中に異物として残りやすくなる傾向にありフィッシュアイやハジキの欠点が出やすくなる傾向にある。
前記原共重合体の一次粒子の数平均粒子径は特に制限はないが、重合中の有機溶媒(A)による粒子中の残存モノマーおよびオリゴマーの抽出効果の向上および重合後の粒子の乾燥効率の向上の観点から、0.05〜5000μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜500μmの範囲であり、更に好ましくは0.1〜10μmの範囲であり、特に好ましくは0.1〜5.0μmの範囲であり、最も好ましくは0.1〜2.0μmの範囲である。上記範囲の数平均粒径の原共重合体は、分子内環化反応を実施する第二工程に先立って必要に応じ好ましく実施される水での洗浄において、洗浄効率が向上するという利点も有する。
また、本発明の原共重合体の分子量分布は特に制限はなく、分子量分布の下限は1.0に限りなく近くてもよく、分子量分布の上限は20程度でもよいが、好ましくは1.05〜5.0の範囲であり、より好ましくは1.1〜4.0の範囲であり、更に好ましくは1.1〜3.0の範囲であり、特に好ましくは1.2〜2.9の範囲であり、最も好ましくは1.2〜2.85の範囲である。
本発明においては、第一工程において得られた、本発明の特定の有機溶媒(A)中で共重合した原共重合体を含む有機溶媒スラリー(以下原共重合体スラリーと呼ぶことがある)を、第二工程で分子環化反応せしめるのに先立ち、以下の洗浄工程を実施することができる。すなわち、原共重合体スラリーを固液分離した後、得られた原共重合体のケーク(洗浄工程に用いる際の原共重合体のケークは好ましくは有機溶媒(A)を含む)に水および/または有機溶媒を添加して洗浄し、該洗浄液から再度固液分離を行い、原共重合体(B)を得て、次いで、原共重合体(B)を用いて前記第二工程を行うというものである。尚、本洗浄は製造工程の簡略化の観点から1回であることが好ましいが、必要に応じて、水および/または有機溶媒により複数回実施することができ、有機溶媒での洗浄と水での洗浄を交互に実施することもできる。本発明では、洗浄後の粒径制御と固液分離後の分散性、乾燥効率、乾燥後の分散性の観点から、少なくとも水で洗浄することが好ましい。洗浄に使用する有機溶媒としては、原共重合体の該有機溶媒に対する溶解度が1g/100ml以下のものが好ましく、単独溶媒、混合溶媒を問わないが、洗浄を経て得られる原共重合体の固液分離、乾燥時等におけるハンドリング性と乾燥効率、および本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物の黄色度(色調)の観点から、有機溶媒(A)が最も好ましい。また、有機溶媒(A)以外のその他のケトン、カルボン酸エステル、エーテル、アルコールおよび芳香族化合物から選ばれる少なくとも一種も、好ましく用いることができる。これら有機溶媒(A)以外のその他のケトン、カルボン酸エステル、エーテル、アルコールおよび芳香族化合物から選ばれる少なくとも一種としては、有機溶媒(A)以外のその他の有機溶媒を例示した頁に挙げたものが好ましい。
上記洗浄工程により、揮発成分が少なく、減容化されたハンドリング性に優れる原共重合体(B)粒子を得ることができ、また、第二工程を経て得られる本発明の熱可塑性重合体の色調を向上させることができる。ここで、固液分離後の原共重合体(B)のケーク中の揮発分含有量は、特に制限はなく、10〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜60重量%である。特定の有機溶媒(A)中で共重合して得た原共重合体のケークに前記の洗浄を施した場合、原共重合体(B)の数平均粒子径は特に制限はないが、1〜40000μmの範囲に制御され、好ましくは1〜5000μmの範囲であり、より好ましくは1〜3000μmの範囲であり、更に好ましくは2〜2000μmの範囲に制御される。原共重合体に洗浄工程を施すことにより得られた原共重合体(B)では、粒子径が増大し、第二工程と第二工程に先立った乾燥等の作業において、粒子のハンドリング性に優れる。洗浄工程において、原共重合体のケーク中に残存する有機溶媒(A)および/または洗浄時の添加された有機溶媒(A)が存在する場合には、原共重合体の粒子同士の凝集の度合いが制御され、粒子径を上記のより好ましい範囲に制御することが可能となる。
第一ろ過における原共重合体スラリーの固液分離の方法については、特に制限はなく、通常の遠心分離機、加圧ろ過機、吸引ろ過機、振動ろ過機、ベルトフィルターなどを好ましく用いることにより、原共重合体のケークを得ることができる。
第一ろ過によって分離・分別されて得られた原共重合体のケークに水を添加する場合、攪拌下加熱することにより、原共重合体を洗浄するとともに、ポリマー粒子を凝集させ、粒子を前記の特定の範囲に制御することができる。洗浄時に添加する水の量は、特に制限はないが、前記第一ろ過で得られたケーク100重量部に対して、100〜2000重量部であることが好ましく、より好ましくは100〜1000重量部、更に好ましくは200〜600重量部である。水の添加量が100重量部以上であれば、洗浄効果が増大する傾向にあり、水の添加量が2000重量部以下であれば、、廃水処理負荷が小さくなる傾向にある。
洗浄液中の原共重合体の濃度は、特に制限はないが、好ましくは0.1〜50重量%の範囲であり、より好ましくは1〜30重量%の範囲であり、最も好ましくは1〜20重量%の範囲である。ここで、洗浄液中の原共重合体の濃度は以下のように計算される。
洗浄液中の原共重合体の濃度(重量%)
=100×(1−α/100)×(原共重合体ケーク量(重量部))/(原共重合体ケーク量(重量部)+水添加量(重量部))。
α:原共重合体(A)ケークの揮発分含有量(重量%)
洗浄液中の原共重合体の濃度(重量%)
=100×(1−α/100)×(原共重合体ケーク量(重量部))/(原共重合体ケーク量(重量部)+水添加量(重量部))。
α:原共重合体(A)ケークの揮発分含有量(重量%)
なお、原共重合体ケーク中の揮発分含有量(重量%)は該ケークを真空乾燥機中、130℃にて揮発分が完全に留去されるまで加熱処理を実施した時の重量変化より、下式にて算出した値である。
原共重合体ケーク中の揮発分含有量(重量%)=重量減少率(%)=[(加熱処理前重量−加熱処理後重量)/加熱処理前重量]×100。
原共重合体ケーク中の揮発分含有量(重量%)=重量減少率(%)=[(加熱処理前重量−加熱処理後重量)/加熱処理前重量]×100。
本発明においては、洗浄温度および洗浄後の固液分離温度(第二ろ過温度)には特に制限はなく、用いる水および/または有機溶媒が固体とならない温度であればよいが、5〜200℃の範囲で行うことが好ましい。洗浄温度はより好ましくは50〜120℃の範囲であり、洗浄温度の上限は100℃以下であることが更に好ましく、特に好ましくは90℃以下であり、最も好ましくは80℃以下であり、洗浄温度の下限は50℃以上であることが更に好ましく、特に好ましくは60℃以上である。洗浄後の固液分離温度(第二ろ過温度)は、得られる原共重合体(B)の溶融滞留安定性の観点から、その上限は120℃以下であることがより好ましく、更に好ましくは80℃以下であり、特に好ましくは50℃未満であり、最も好ましくは45℃以下である。洗浄後の固液分離温度(第二ろ過温度)の下限は5℃以上であることが好ましく、より好ましくは10℃以上であり、更に好ましくは15℃以上であり、特に好ましくは20℃以上であり、最も好ましくは30℃以上である。洗浄温度および第二ろ過温度を5℃以上にすることで、洗浄効果が増大する傾向にある。
上記洗浄操作を実施する装置については、洗浄温度を上記範囲内に制御できるものであれば、特に制限はなく、通常の攪拌機を備えたオートクレーブ等を使用することができる。なお、洗浄に際しては原共重合体のスラリー及び/またはそれに添加する水を予熱しておくことも可能である。
上記洗浄操作により得られた水スラリーの固液分離(第二ろ過)の方法については、上記温度にてろ過が可能なものであれば、特に制限はなく、通常の遠心分離機、加圧ろ過機、吸引ろ過機、振動ろ過機、ベルトフィルターなどを好ましく用いることができるが、固液分離後の揮発分を低減し、その後の乾燥工程の負荷を低減するという観点から、遠心分離が説くに好ましい。本発明の洗浄方法を実施することにより、第二ろ過後の共重合体の揮発分含有量を10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは20〜50重量部とすることができ、その後の乾燥工程の負荷を低減することが可能となる。
さらに必要であれば、上記洗浄操作によって得られた水および/または有機溶媒を含有する原共重合体(B)ケークを棚段式乾燥機、コニカルドライヤー、遠心式乾燥機などにより乾燥することにより、有機溶媒(A)を含有しない原共重合体(B)を製造することも可能である。
尚、ここで言う数平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、150倍または1万倍で観察し、粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径を表す。
また、洗浄時の洗浄系内気相中の酸素濃度および洗浄液中の溶存酸素濃度は特に制限はなく、通常大気中で、例えばイオン交換水等の通常、工程で用いる水および/または有機溶媒を用いてよいが、洗浄後の原共重合体(B)の色調、および原共重合体(B)の高温下での溶融滞留安定性の観点から、洗浄系内気相中の酸素濃度は好ましくは800000ppm以下であり、より好ましくは100000ppm以下であり、更に好ましくは10000ppm以下であり、特に好ましくは1000ppm以下であり、最も好ましくは0ppmあるいは0ppmに限りなく近いことである。洗浄時の洗浄液中の溶存酸素濃度は特に制限はないが、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは20ppm以下であり、更に好ましくは10ppm以下であり、特に好ましくは6ppm以下であり、最も好ましくは0ppmあるいは0ppmに限りなく近いことである。洗浄系内気相中の酸素濃度および洗浄液中の溶存酸素濃度をそれぞれ前記の好ましい範囲に制御するには、不活性ガス雰囲気下で洗浄を行うことが好ましい。より具体的には、洗浄容器中および/または洗浄液中に不活性ガスを通じる方法、洗浄開始前の洗浄容器に不活性ガスを加圧充填する方法(加圧充填と脱気を繰り返す方法)、原共重合体の仕込み前に密閉洗浄容器内を脱気した後、不活性ガスを充填する方法等を例示できる。尚、不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。
本発明における第二工程、すなわち原共重合体または原共重合体(B)を加熱し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応を行いグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体を製造する方法は、特に制限はなく、種々の反応器内で原共重合体または原共重合体(B)を溶融させて分子内環化させる方法、有機溶媒中で分子内環化させる方法を行うことができるが、ベントを有する加熱した押出機に通して製造する方法や窒素気流中などの不活性ガス雰囲気で、または真空下で加熱脱揮できる装置内で製造する方法が好ましい。中でも、酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、十分に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。特に好ましい装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機などを用いることができ、より好ましくは、二軸押出機または二軸・単軸複合型連続混練押出機である。特に二軸・単軸複合型連続混練押出機を用いることにより、極めて無色透明性、機械特性に優れる熱可塑性共重合体が得られる傾向があるため、好ましく使用することができる。ここで、二軸・単軸複合型連続混練押出機とは、押出機ケーシング内に、スクリュー部を形成した第1軸および第2軸が並列に配置された二軸スクリュー部、および二軸スクリュー部より延長された第1軸が配置された単軸スクリュー部を有し、かつ前記二軸スクリュー部と単軸スクリュー部の連通部に流量調節機構を備え、前記ケーシングに二軸スクリュー部に連通する原料供給口を備えるとともに、前記延長された第1軸の端部に連通する吐出口を備えた二軸・単軸複合型連続混練押出機を言い、市販されているこのタイプの押出機としては、CTE社製の「HTM型押出機」が挙げられる。原料となる原共重合体を、連続式で加熱処理し環化反応を進行させる際、反応の進行に従い、溶融粘度が高くなることに起因し、押出装置のせん断による発熱が大きくなり、分子主鎖の熱分解による着色が大きくなる傾向が見られる。また、該せん断発熱は、単軸スクリューよりも二軸スクリューで溶融混練した場合に大きくなる。一方、反応速度の観点からは、二軸スクリューで溶融混練することが好ましい。以上のことから、特定の二軸・単軸複合型連続混練押出機を用いることにより、溶融粘度が比較的低い反応初期段階では、二軸スクリューで、十分な反応速度を確保しながら、溶融粘度が比較的高くなる反応後期段階では、せん断発熱を抑制した単軸スクリュー部で加熱処理することにより、分子主鎖の熱分解が抑制されるため、得られるグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体は特に色調、機械特性に優れるものと推察される。
なお、上記の方法により加熱脱揮する温度は、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、その下限は140℃以上であることが好ましく、より好ましくは180℃以上であり、更に好ましくは200℃以上であり、また、時間当たりの分子内環化処理量アップによる生産性の向上と、分子内環化反応を促進させ残存カルボン酸量を低減し、無色透明性を更に高める観点から、分子内環化反応時の温度の下限は300℃以上が特に好ましく、最も好ましくは下限は320℃以上である。一方、分子内環化反応時の温度の上限は、380℃以下であることが好ましく、より好ましくは370℃以下であり、特に好ましくは360℃以下である。従って、押出機を用いて原共重合体または原共重合体(B)を加熱脱揮する際の押出機のシリンダー温度も上記の好ましい範囲に設定することが好ましい。
また、この際の加熱脱揮する時間も特に限定されず、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間、好ましくは2分間〜30分間、とりわけ3〜20分間の範囲が好ましい。特に、押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機のスクリュー直径(D)とスクリューの長さ(L)の比(L/D)は特に制限はないが、20以上であることが好ましく、より好ましくは30以上であり、更に好ましくは40以上である。特にL/Dが40以上の押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位の低減が可能となるため、加熱成形加工時の反応の再進行を抑制し、成形品にシルバーや気泡が見られる傾向や成形滞留時に色調が大幅に悪化する傾向を抑制することができる。
さらに本発明では、原共重合体または原共重合体(B)を上記方法等により加熱する際に必須ではないが、グルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は特に制限はなく、原共重合体または原共重合体(B)100重量部に対し、0.01〜1重量部程度が適当である。また、これら酸、アルカリ、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。ただし、その触媒保有の色が熱可塑性重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。中でも、アルカリ金属を含有する化合物(アルカリ金属化合物)が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムを好ましく使用することができる。尚、これらアルカリ金属化合物は、水和物、無水物のいずれも好ましく用いることができ、特に好ましくは酢酸リチウム、酢酸リチウム無水物である。 また、本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性を付与するためにヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系およびシアノアクリレート系等の従来公知の紫外線吸収剤が含まれていることが好ましい。紫外線吸収剤の融点は特に制限はないが、80℃以上が好ましく、より好ましくは110℃以上であり、更に好ましくは120℃以上であり、特に好ましくは130℃以上であり、最も好ましくは140℃以上である。また、本発明の熱可塑性重合体またはゴム質重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物は、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、難燃剤(赤燐、金属水酸化物系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、あるいはこれらのハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせなど)、核剤、アミン系、スルホン酸系、帯電防止剤(イオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤や、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミドエーテル、オレフィン系エーテルエステルアミドまたはオレフィン系エーテルエステルアミド等のポリアミドエラストマーのランダムまたはブロックポリマーなど)、顔料、蛍光顔料、蛍光増白剤などの着色剤、耐候剤、紫外線安定剤、光安定剤、滑剤、顔料、蛍光顔料、染料、蛍光染料、着色防止剤、可塑剤、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、木材粉、もみがら粉、くるみ粉、古紙、蓄光顔料、タングステン粉末あるいはタングステン合金粉末、ホウ酸ガラスや銀系抗菌剤などの抗菌剤や抗カビ剤、マグネシウム−アルミニウムヒドロキシハイドレートに代表されるハイドロタルサイトなどの金型腐食防止剤、含硫黄化合物系、アクリレート系、リン系有機化合物、塩化銅 、ヨウ化第1銅、酢酸銅、またはステアリン酸セリウムなどの金属塩安定剤などの酸化防止剤や耐熱安定剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。本発明の原共重合体または熱可塑性重合体には、耐衝撃性の向上の観点から、更にゴム質含有重合体(C)を含むことが好ましい。ゴム質含有重合体(C)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなるフィルムは、ゴム質含有重合体(C)を含まない場合と比較して、剛性が低下する傾向となるが、一方で、フィルム展開の課題である耐折り曲げ性が向上する。従って、フィルム用途への展開においては、ゴム質含有重合体(C)を含有量を制御して、剛性と耐折り曲げ性のバランスを調整することが好ましい。ゴム質含有重合体(C)は、1以上のゴム質重合体を含む層と、それとは異種の重合体から構成される1以上の層から構成され、かつ、内部に1層以上のゴム質重合体を含む層を有する構造の、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体や、ゴム質重合体の存在下に、ビニル単量体などからなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体等が好ましく使用できるが、特に多層構造重合体が透明性・着色の少なさの点で優れており、好ましい。
前記多層構造重合体を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有する多層構造重合体であることが好ましい。多層構造重合体において、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル系単量体、シリコーン系単量体、スチレン系単量体、ニトリル系単量体、共役ジエン系単量体、ウレタン結合を生成する単量体、エチレン系単量体、プロピレン系単量体、イソブテン系単量体などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル系単位およびブタジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン系単位から構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせたものから構成されるゴムも好ましい。例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位から構成されるゴム、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位から構成されるゴム、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系単位およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン系単位から構成されるゴム、およびアクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル系位体、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン系単位およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン系単位から構成されるゴムなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸エステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する重位であるゴムが、透明性および機械特性の点から、最も好ましい。また、これらの成分の他に、架橋性成分から構成される重合体を架橋させたゴムも好ましい。このような架橋性成分としては特に制限はないが、対応する単量体として、例えば、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性単量体が例示され、これらを単独で使用もしくは二種以上を併用することができる。
前記多層構造重合体において、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分であることが好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸エステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などから選ばれる1種以上の単位を含有する重合体が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸エステル単位を含有する重合体が好ましく、それに加えて不飽和グリシジル基含有単位、不飽和カルボン酸単位および不飽和ジカルボン酸無水物単位から選ばれる1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
上記不飽和カルボン酸エステル単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではないが、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましく使用される。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられる。耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はなく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
上記不飽和グリシジル基含有単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではなく、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルおよび4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和ジカルボン酸無水物単位の原料となる単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸および無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、上記脂肪族ビニル単位の原料となる単量体としては、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどを用いることができる。上記芳香族ビニル単位の原料となる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンおよびハロゲン化スチレンなどを用いることができる。上記シアン化ビニル単位の原料となる単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどを用いることができる。上記マレイミド単位の原料となる単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドおよびN−(クロロフェニル)マレイミドなどを用いることができる。上記不飽和ジカルボン酸単位の原料となる単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸およびフタル酸などを用いることができる。上記その他のビニル単位の原料となる単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを用いることができる。これらの単量体は単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明のゴム質含有重合体(C)は、その多層構造において、最外層(シェル層)の種類は、上述のとおり不飽和カルボン酸エステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位およびその他のビニル単位などの1種類以上の単位を含有する重合体などから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸エステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位および不飽和ジカルボン酸無水物単位などを含有する重合体などから選ばれた少なくとも1種が好ましい。
本発明の熱可塑性重合体との溶融混練に供するゴム質含有重合体(C)として、不飽和カルボン酸エステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体を最外層とする多層構造重合体を用いることが最も好ましい。
最外層が不飽和カルボン酸エステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体である場合、加熱することにより、前述した本発明の共重合体の製造時と同様に、分子内環化反応が進行し、前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位が生成する。従って、最外層に不飽和カルボン酸エステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体を有する多層構造重合体を熱可塑性共重合体に配合して溶融混練する際の加熱により、最外層に前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有する多層構造重合体が得られる。これにより、連続相(マトリックス相)となる本発明の共重合体中に、前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有する多層構造重合体が良好に分散することが可能となり、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等の機械特性向上とともに、極めて高度な透明性が発現しうるものと考えられる。
ここでいう不飽和カルボン酸エステル単位の原料となる単量体としては、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましく、さらにはアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルがより好ましく使用される。
また、不飽和カルボン酸単位の原料となる単量体としては、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましく、さらにはメタクリル酸がより好ましく使用される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中に含有せしめるゴム質含有重合体(C)の好ましい例としては、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位/メタクリル酸共重合体であるもの、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、コア層がブタンジエン/スチレン共重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、およびコア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるものなどが挙げられる。ここで、“/”は共重合を示す。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体であるものも好ましい例として挙げられる。中でも、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位/メタクリル酸重合体であるものが、連続相(マトリックス相)である本発明の共重合体との屈折率を近似させること、および樹脂組成物中での良好な分散状態を得ることが可能となり、近年より高度化する要求を満足しうる透明性が発現するため、好ましく使用することができる。
多層構造重合体の平均粒子径については、0.01μm以上、1000μm以下であることが好ましい。平均粒子径は、0.02μm以上、100μm以下がより好ましく、0.05μm以上、10μm以下がさらに好ましく、0.05μm以上、1μm以下が最も好ましい。上記の範囲未満では得られる熱可塑性組成物の衝撃強度が低下する傾向を生じ、上記の範囲を越えると透明性が低下する場合がある。なお、多層構造重合体の平均粒子径は、小角光散乱測定によるギニエプロットあるいは透過型電子顕微鏡写真から算出することができる。
本発明の多層構造重合体において、コアとシェルの重量比は、多層構造重合体全体に対して、コア層が30重量%以上、90重量%以下であることが好ましく、コア層が50重量%以上、90重量%以下であることがより好ましく、さらに、60重量%以上、80重量%以下であることが特に好ましい。
本発明の多層構造重合体としては、上述した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもできる。
多層構造重合体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン(登録商標)”、鐘淵化学工業社製”カネエース(登録商標)”、呉羽化学工業社製”パラロイド(登録商標)”、ロームアンドハース社製”アクリロイド(登録商標)”、ガンツ化成工業社製”スタフィロイド(登録商標)”およびクラレ社製”パラペット(登録商標)SA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
また、ゴム質含有重合体(C)として使用されるゴム質含有グラフト共重合体の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル単量体(その具体例は前述と同様である)、不飽和カルボン酸単量体(その具体例は前述と同様である)、芳香族ビニル単量体(その具体例は前述と同様である)、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体(その具体例は前述と同様である)の1種以上から選択される単量体(混合物)を(共)重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
グラフト共重合体に用いられるゴム質重合体としては、ジエンゴム、アクリルゴムおよびエチレンゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
本発明におけるグラフト共重合体を構成するゴム質重合体の重量平均粒子径は、0.1〜0.5μm、特に0.15〜0.4μmの範囲が好ましい。上記の範囲未満では得られる熱可塑性組成物の衝撃強度が低下する傾向を生じ、上記の範囲を越えると透明性が低下する場合がある。なお、ゴム質重合体の重量平均粒子径は「Rubber Age, Vol.88, p.484−490 (1960), by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
本発明におけるグラフト共重合体は、ゴム質重合体10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%の存在下に、上記の単量体(混合物)20〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%を共重合することによって得られる。ゴム質重合体の割合が上記の範囲未満、または上記の範囲を越える場合には、衝撃強度や表面外観が低下する場合がある。
なお、グラフト共重合体は、ゴム質重合体に単量体混合物をグラフト共重合させる際に生成する、グラフトしていない共重合体を含んでいてもよい。衝撃強度の観点からは、グラフト率は10〜100%であることが好ましい。ここで、グラフト率とは、ゴム質重合体に対するグラフトした単量体混合物の重量割合である。また、グラフトしていない共重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は特に制限はないが、耐衝撃性と成形加工性とのバランスの観点から0.1〜2.0dl/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.6dl/gの範囲である。 本発明におけるグラフト共重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は特に制限はないが、耐衝撃性と成形加工性とのバランスの観点から0.1〜2.0dl/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0dl/gの範囲であり、更に好ましくは0.3〜0.7dl/gのものである。
本発明におけるグラフト共重合体の製造方法には、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などの公知の重合法および塊状懸濁重合のようにこれら重合法の組み合わせにより得ることができる。
また、本発明の熱可塑性重合体およびゴム質含有重合体(C)のそれぞれの屈折率が近似している場合、透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができるため、好ましい。具体的には、両者の屈折率の差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。このような屈折率条件を満たすためには、本発明の熱可塑性重合体の各単量体単位組成を調整する方法、および/またはゴム質含有重合体(C)に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成を調製する方法などが挙げられる。
なお、ここで言う屈折率差とは、以下に示す方法で測定した値である。本発明の共重合体が可溶な溶媒に、本発明の熱可塑性樹脂組成物を適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離する。この可溶部分(本発明の共重合体を含む部分)と不溶部分(ゴム質含有重合体を含む部分)をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を屈折率差と定義する。
また、熱可塑性樹脂組成物中での本発明の熱可塑性重合体とゴム質含有重合体(C)の共重合組成および分子量分布については、上記の溶媒による可溶成分と不溶成分の分離操作の後に、各成分を個別に分析する。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に関し、溶液製膜または溶融製膜により厚さ100±5μmのフィルムを作製し、このフィルムの表面を微分干渉型反射顕微鏡(ニコン社製 ECLIPSE LV100Dにより観察した際に、無作為に10カ所の点で観察、異物数(内部の異物由来の凹凸数)のカウントを繰り返し、その平均値を1mm四方単位面積当たりの異物数(個/mm2)として評価した場合の1mm四方単位面積当たりの10μm以上の異物数は特に制限はないが、通常1000個以下であり、好ましくは15個以下であり、より好ましくは10個以下であり、更に好ましくは3個以下、特に好ましくは1個以下、最も好ましくは0個である。ここで、外部から混入した外乱異物を除く異物に関して、光学顕微鏡を用いた同様の確認法で評価した際に、無作為に10カ所の点で観察、異物数のカウントを繰り返し、その平均値を1mm四方単位面積当たりの異物数(個/mm2)として評価した場合の1mm四方単位面積当たりの10μm以上の異物数は特に制限はないが、20個以下であることが好ましく、より好ましくは10個以下であり、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは1個以下、最も好ましくは0個である。
本発明において、本発明の熱可塑性重合体とゴム質含有重合体(C)を配合する際の重量比(重量%比)は、99/1〜40/60の範囲であることが好ましく、99/1〜50/50の範囲であることがより好ましく、99/1〜60/40の範囲であることが更に好ましく、99/1〜70/30の範囲であることが特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際には、本発明の熱可塑性重合体とゴム質含有重合体(C)とを、適度な剪断場の下で加熱溶融混合する方法を用いる。製造する熱可塑性樹脂組成物中のゴム質含有重合体粒子の凝集を抑制するためには、比較的低温、かつ回転数を低めにして剪断力があまりかからないように溶融混練することが好ましい。具体的にはニーディングゾーンにおける樹脂温度をTとすると、(本発明の共重合体のTg+100℃)≦T≦(ゴム質含有重合体の1%分解温度)の範囲に制御することが好ましく、さらには、(本発明の共重合体のTg+120℃)≦T≦(ゴム質含有重合体の0.5%分解温度)の範囲に制御することが一層好ましい。ここで、ゴム質含有重合体の1%分解温度とは、窒素中での示差熱重量同時測定装置(セイコー電子工業社製、TG/DTA−200)を用いて、100〜450℃の温度領域を20℃/分の昇温速度で行った加熱試験により、加熱前の重量を100%とした時の重量減少率が1%に達した時の温度である。樹脂温度が本発明の範囲より低い場合、溶融粘度が極めて高くなり、溶融混練が事実上不可能となり好ましくない。また、樹脂温度が本発明の範囲より高い場合、ゴム質含有重合体(C)の再凝集および着色が著しくなり、好ましくない。
本発明では、ゴム質含有重合体(C)に加えて、更にモノホスファイト系化合物を含有することができる。これにより、ゴム質含有重合体(C)の分解が抑制され大幅な着色抑制、流動性向上効果が得られるため好ましく使用できる。
本発明で用いるモノホスファイト系化合物とはその分子内に1個のリン原子を持ち3個の有機基が結合した有機亜リン酸エステルであり、耐熱性の点から分子量300〜2000が好ましく、さらに分子量350〜1500の範囲であることがより好ましく、特に分子量400〜1000の範囲であることが最も好ましい。分子量が300以下では溶融混練時に揮発しやすく着色抑制、流動性向上効果が得られ難く、分子量が2000以上の場合には異物化しやすく高度な透明性が得られない問題がある。さらに、性状として液体または固体などの形態があるが使用に際しての制限はなく、液体の場合粘度1〜10000mPa・sの範囲であることが好ましく、さらに粘度2〜7000mPa・sの範囲であることがより好ましく、特に粘度5〜5000mPa・sの範囲であることが最も好ましい。または固体性状の場合、融点60〜220℃の範囲が好ましく、さらに融点80〜210℃の範囲がより好ましく、特に融点100〜200℃の範囲が最も好ましい。さらに、有機亜リン酸エステルの3個の酸素原子の内2個以上が芳香族残基と結合しているされる環状モノホスファイト系化合物、または、有機亜リン酸エステルの3個の酸素原子の内少なくとも1つが芳香族残基と結合しているモノホスファイト系化合物であることが好ましい。具体的なホスファイト系化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト等が挙げられる。
この中で、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが特に好ましく利用できる。これらの特定のホスファイト系化合物を1種または2種以上併用して使用する事が可能である。
本発明で用いるモノホスファイト系化合物には、さらにヒンダードフェノール系またはチオエーテル系化合物を併用することが可能である。ヒンダ−ドフェノ−ル系化合物、チオエーテル系化合物を少なくとも一種を併用させることによりゴム質含有重合体の分解がさらに抑制され大幅な色調改良効果が得られる。
具体的なヒンダ−ドフェノ−ル系化合物としては分子量400以上のものが好ましく、具体的には、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、1,6−へキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、N,N’−ヘキサメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。
具体的なチオエーテル系化合物はとしては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)などが挙げられる。
本発明の熱可塑性重合体にゴム質含有重合体(C)および必要に応じてホスファイト系化合物を含有する樹脂組成物を製造する方法としては、本発明の原共重合体を加熱処理装置内で加熱処理し、本発明の熱可塑性重合体を製造する際、ゴム質含有重合体(C)と原共重合体の合計量100重量部に対して0.001〜5重量部のホスファイト系化合物を原共重合体と同時に添加し溶融混練する方法、本発明の熱可塑性重合体を製造する過程、該加熱処理途中の段階でゴム質含有重合体(C)と原共重合体との合計量100重量部に対して0.001〜5重量部のホスファイト系化合物を添加し溶融混練する方法、本発明の熱可塑性重合体を製造した後、本発明の熱可塑性重合体とゴム質含有重合体(C)の合計量100重量部に対して0.001〜5重量部のホスファイト系化合物を溶融混練する方法等が挙げられる。
使用できる加熱処理装置としては制限はなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機、二軸・単軸複合型連続混練押出装置、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダー混練機等が好ましく使用できる。
また、ゴム質含有重合体(C)を含んでなる本発明の熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は特に制限はないが、プランジャー式キャピラリーレオメーター(東洋精機製作所製 キャピログラフ タイプ1C)を用いて、ガラス転移温度+150℃の温度で測定し、せん断速度5秒−1に外挿して得たせん断速度5秒−1における溶融粘度(Pa・s)が、10〜1000000Pa・sの範囲であることが好ましく、溶融製膜性と溶融濾過性の向上の観点からより好ましくは10〜100000Pa・sの範囲であり、更に好ましくは100〜20000Pa・sの範囲であり、特に好ましくは100〜5000Pa・sの範囲であり、最も好ましくは100〜2000Pa・sの範囲である。
本発明の熱可塑性重合体またはゴム質含有重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物を光学補償フィルムとして使用する場合は、波長550nmの光に対する光弾性係数は特に制限はないが、好ましくは−20×10−12〜20×10−12Pa−1であり、より好ましくは−5×10−12〜5×10−12Pa−1であり、更に好ましくは−3×10−12〜3×10−12Pa−1であり、特に好ましくは−2×10−12〜2×10−12Pa−1であり、最も好ましくは−1×10−12〜1×10−12Pa−1であり、これにより、優れた光学特性を発揮することができる。尚、波長550nmの光に対する光弾性係数は、分光エリプソメーター(日本分光社製、製品名「M−220」)を用いて、サンプル(サイズ2cm×10cm)の両端を挟持して応力(5〜15N)をかけながら、23℃、波長550nmにてサンプル中央の位相差を測定し、応力(σ)と位相差の値の関数の傾きから算出することができる。
また、本発明の熱可塑性重合体、および更にゴム質含有重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど、熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など、から選ばれた一種以上をさらに含有させることができる。また高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料、染料、蛍光増白剤などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。
本発明の熱可塑性重合体および更にゴム質含有重合体(C)を含んでなる熱可塑性樹脂組成物は、機械的特性、成形加工性にも優れており、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、フィルム、シート、管、ロッド、その他の希望する任意の形状と大きさを有する成形体に成形して使用することができる。
本発明の熱可塑性重合体または熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムの製造方法には、公知の方法を使用することができる。すなわち、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルション法、ホットプレス法等の製造方法が使用できる。好ましくは、インフレーション法、T−ダイ法、流延法またはホットプレス法が使用できる。インフレーション法やT−ダイ法による製造法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明のフィルムを製造するための溶融押出温度は、好ましくは150〜380℃、より好ましくは200〜350℃である。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。また、流延法により本発明のフィルムを製造する場合、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の溶剤が使用可能である。好ましい溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン等である。該フィルムは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を前記の1種以上の溶剤に溶かし、その溶液をバーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ダイ・コートなどを用いて、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱フィルム、スチールベルト、金属箔などの平板または曲板(ロール)上に流延し、溶剤を蒸発除去する乾式法、あるいは溶液を凝固液で固化する湿式法等を用いることにより製造できる。また、従来公知の単軸押出機や2軸押出機の先端部にTダイを取り付け、フィルム状に押出した本発明の熱可塑性重合体または熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムを巻取りロールにてロール状のフィルムとして得る際、巻取りロールの温度を適宜調整して、押出し方向に延伸した1軸延伸、押出し方向に垂直な方向に延伸した同時2軸延伸、逐次2軸延伸を行うこともできる。本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムは、未延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよいが、延伸、好ましくは2軸延伸することにより、フィルムの靱性、耐折り曲げ性が更に向上する傾向にある。ここで、延伸倍率の下限は特に制限はないが、好ましくは1.1倍以上であり、より好ましくは1.2倍以上であり、更に好ましくは1.3倍以上であり、特に好ましくは1.4倍以上であり、延伸倍率の上限は特に制限はないが、好ましくは5.0倍以下であり、より好ましくは4.0倍以下であり、更に好ましくは3.5倍以下であり、特に好ましくは3.0倍以下である。 かくして得られる成形品またはフィルムは、高度な耐熱性、無色透明性および剛性を有し、耐湿熱性に大きく優れる点を活かして、光学材料、電気電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。例えば、前記の優れた特性を活かして、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバー、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルターおよび点火装置ケースなどが挙げられる。また、透明性、耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品として、カメラ、VTR、プロジェクションTVなどの撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなど、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクターなど、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導光フィルム、カバーなど、自動車などの輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージングなど、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セルなど、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、バスタブ用材料などにも適用することができ、これら各種の用途にとって極めて有用である。中でも、本発明の熱可塑性重合体、ゴム質含有重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物は、耐湿熱性(湿熱処理前後での曲げ弾性率保持率)に優れるものであり、かつ耐湿熱性が高いほど、フィルムの湿熱処理時の耐カール性が向上する傾向にあることから、光学補償フィルム等の光学フィルム用途に特に好ましく用いることができる。光学フィルム用途において、原料ポリマーが耐湿熱性に劣る場合、長時間使用および湿熱条件を伴う製造工程等において、耐カール性が低下し、カール(反り)が生じて、光学特性にムラができる傾向にあり、この傾向は、特にほかのフィルムや偏光板と貼り合わせて使用する場合に顕著で、例えば偏光子保護フィルムとして偏光板液晶表示装置に用いた際に均一な表示品質を得ることが難しくなる傾向にある。尚、本発明においては、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム等を光学補償フィルムと総称する。また、本発明の熱可塑性重合体またはゴム質含有重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物、あるいはこれらに更に他の樹脂を配合した熱可塑性樹脂組成物を偏光子保護フィルムとして用いる際には、偏光子との間に易接着層を用いることができ、前記接着層としては特に制限はないが、例えば従来公知のものを好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、各測定および評価は次の方法で行った。
(1)ピークの積分値の比(X)/(Y)
原共重合体を600mg/3gの濃度で重水素化ピリジンに溶解させ、Varian社製、UNITY INOVA500型NMR測定機を用いて、測定核13C、基準としてTMSを用い、観測周波数125.7MHz、積算回数30000回、温度25℃、観測幅35KHz、パルス幅45°、パルス繰り返し時間3.0秒(カルボニルに対し2T1)、全てのカルボニル炭素のスピン−格子緩和時間(T1)および核オーバーハウザー効果は同一として仮定して測定を行った。得られた13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)と、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)の比である(X)/(Y)の値を求めた。ここで、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)とは、前記範囲179.15〜179.43ppmにおいて観測される各ピークの積分値の和とし、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)とは、前記範囲において観測される各ピークの積分値の和とした。尚、本発明の原共重合体を重水素化ピリジン中で13C−NMRスペクトルを測定した場合、原共重合体中の(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量、用いた(i)不飽和カルボン酸エステル単位の種類、用いた(ii)不飽和カルボン酸単位の種類、原共重合体含有重水素化ピリジン溶液中に含有される水分量の差異、測定毎の測定機に由来する微少な誤差等の影響により、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピーク、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークの各ピークトップの化学シフトが0.2ppm程度の範囲内でシフトする。そのため、発明を実施するための最良の形態の項で記載したピークトップ(M)がシフトした磁場側に同じ分だけ、179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークと、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観察されるピークもシフトさせて考えるものとした。例えば、前記ピークトップ(M)が0.08ppm高磁場側に観察され、180.84ppmに観察された場合、179.15〜179.43ppmの範囲に観察されるピークの範囲は、0.08ppm分、高磁場側にシフトして観察されるため、179.07〜179.35ppmの範囲に補正するものとし、同様に181.12〜181.50ppmの範囲に観察されるピークの範囲も0.08ppm分、高磁場側にシフトして観察されるため、181.04〜181.42ppmの範囲に補正した。
原共重合体を600mg/3gの濃度で重水素化ピリジンに溶解させ、Varian社製、UNITY INOVA500型NMR測定機を用いて、測定核13C、基準としてTMSを用い、観測周波数125.7MHz、積算回数30000回、温度25℃、観測幅35KHz、パルス幅45°、パルス繰り返し時間3.0秒(カルボニルに対し2T1)、全てのカルボニル炭素のスピン−格子緩和時間(T1)および核オーバーハウザー効果は同一として仮定して測定を行った。得られた13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)と、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)の比である(X)/(Y)の値を求めた。ここで、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)とは、前記範囲179.15〜179.43ppmにおいて観測される各ピークの積分値の和とし、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)とは、前記範囲において観測される各ピークの積分値の和とした。尚、本発明の原共重合体を重水素化ピリジン中で13C−NMRスペクトルを測定した場合、原共重合体中の(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量、用いた(i)不飽和カルボン酸エステル単位の種類、用いた(ii)不飽和カルボン酸単位の種類、原共重合体含有重水素化ピリジン溶液中に含有される水分量の差異、測定毎の測定機に由来する微少な誤差等の影響により、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピーク、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークの各ピークトップの化学シフトが0.2ppm程度の範囲内でシフトする。そのため、発明を実施するための最良の形態の項で記載したピークトップ(M)がシフトした磁場側に同じ分だけ、179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークと、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観察されるピークもシフトさせて考えるものとした。例えば、前記ピークトップ(M)が0.08ppm高磁場側に観察され、180.84ppmに観察された場合、179.15〜179.43ppmの範囲に観察されるピークの範囲は、0.08ppm分、高磁場側にシフトして観察されるため、179.07〜179.35ppmの範囲に補正するものとし、同様に181.12〜181.50ppmの範囲に観察されるピークの範囲も0.08ppm分、高磁場側にシフトして観察されるため、181.04〜181.42ppmの範囲に補正した。
(2)ピークの高さの比(Z)/(W)
熱可塑性重合体を600mg/3gの濃度で重水素化ピリジンに溶解させ、Varian社製、UNITY INOVA500型NMR測定機を用いて、測定核13C、基準としてTMSを用い、観測周波数125.7MHz、積算回数30000回、温度15℃、観測幅35KHz、パルス幅45°、パルス繰り返し時間3.0秒(カルボニルに対し2T1)、全てのカルボニル炭素のスピン−格子緩和時間(T1)および核オーバーハウザー効果は同一として仮定して測定を行った。得られた13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト171.8〜172.0ppmの範囲に観測されるピークの高さ(Z)と、化学シフト172.7〜172.9ppmの範囲に観測されるピークの高さ(W)の比(Z)/(W)を求めた。ここで、化学シフト171.8〜172.0ppmの範囲に観測されるピークの高さ(Z)とは、前記範囲で検出されるピーク(前記範囲内でベースラインに対して最も高さのある吸収)の13C−NMRのベースラインからの高さを示し、前記で用いたものと同じ13C−NMRスペクトルのチャートにおいて、化学シフト172.7〜172.9ppmの範囲に検出されるピーク(前記範囲内でベースラインに対して最も高さのある吸収)の13C−NMRのベースラインからの高さ(W)を求め、ピークの高さの比(Z)/(W)を求めた。
熱可塑性重合体を600mg/3gの濃度で重水素化ピリジンに溶解させ、Varian社製、UNITY INOVA500型NMR測定機を用いて、測定核13C、基準としてTMSを用い、観測周波数125.7MHz、積算回数30000回、温度15℃、観測幅35KHz、パルス幅45°、パルス繰り返し時間3.0秒(カルボニルに対し2T1)、全てのカルボニル炭素のスピン−格子緩和時間(T1)および核オーバーハウザー効果は同一として仮定して測定を行った。得られた13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト171.8〜172.0ppmの範囲に観測されるピークの高さ(Z)と、化学シフト172.7〜172.9ppmの範囲に観測されるピークの高さ(W)の比(Z)/(W)を求めた。ここで、化学シフト171.8〜172.0ppmの範囲に観測されるピークの高さ(Z)とは、前記範囲で検出されるピーク(前記範囲内でベースラインに対して最も高さのある吸収)の13C−NMRのベースラインからの高さを示し、前記で用いたものと同じ13C−NMRスペクトルのチャートにおいて、化学シフト172.7〜172.9ppmの範囲に検出されるピーク(前記範囲内でベースラインに対して最も高さのある吸収)の13C−NMRのベースラインからの高さ(W)を求め、ピークの高さの比(Z)/(W)を求めた。
(3)重量平均分子量・分子量分布
得られた原共重合体または熱可塑性重合体をテトラヒドロフランに溶解して、測定サンプルとした。テトラヒドロフランを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて、重量平均分子量(絶対分子量)、数平均分子量(絶対分子量)を測定した。分子量分布は、重量平均分子量(絶対分子量)/数平均分子量(絶対分子量)で算出した。尚、参考例、実施例および比較例において、重量平均分子量(以下、Mwと記載することもある)は、百の位で四捨五入し、有効数字を千の位までとし、分子量分布(以下、Mw/Mnと記載することもある)は、小数点以下3位で四捨五入し、小数点以下2位までで表した。
得られた原共重合体または熱可塑性重合体をテトラヒドロフランに溶解して、測定サンプルとした。テトラヒドロフランを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて、重量平均分子量(絶対分子量)、数平均分子量(絶対分子量)を測定した。分子量分布は、重量平均分子量(絶対分子量)/数平均分子量(絶対分子量)で算出した。尚、参考例、実施例および比較例において、重量平均分子量(以下、Mwと記載することもある)は、百の位で四捨五入し、有効数字を千の位までとし、分子量分布(以下、Mw/Mnと記載することもある)は、小数点以下3位で四捨五入し、小数点以下2位までで表した。
(4)各成分組成
得られた原共重合体、熱可塑性重合体の各々を600mg/3gの濃度で重水素化ピリジンに溶解させ、Varian社製、UNITY INOVA500型NMR測定機を用いて、測定核13C、基準としてTMSを用い、観測周波数125.7MHz、積算回数30000回として、原共重合体は温度25℃にて、熱可塑性重合体は温度15℃にて各々測定を行った。熱可塑性重合体の13C−NMRスペクトルにおいて、(iii)グルタル酸無水物単位の酸無水物のカルボニル基のピークは化学シフト170.50〜174.40ppmの範囲に分裂して観測され、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト174.60〜179.43ppmの範囲に分裂して観測され、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲に分裂して観測され、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが一部重なって観察されるが、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが重なった部分において、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークが占める割合は(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが占める割合と比較して無視できるほど小さいため、本発明では、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、化学シフト174.60〜179.14ppmの範囲、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲とし、これらの積分値から各々の組成を決定した。原共重合体の13C−NMRにおいて、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト176.00〜179.43ppmの範囲に分裂して観測され、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲に分裂して観測され、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが一部重なるが、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークがが重なった部分において、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークが占める割合は(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが占める割合と比較して無視できるほど小さいため、本発明では、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、化学シフト176.00〜179.14ppmの範囲、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲とし、これらの積分値から各々の組成を決定した。尚、本発明の原共重合体、熱可塑性重合体を重水素化ピリジン中で13C−NMRスペクトルを測定した場合、(iii)グルタル酸無水物単位の含有量、(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量、用いた(i)不飽和カルボン酸エステル単位の種類、用いた(ii)不飽和カルボン酸単位の種類、重水素化ピリジン溶液中に含有される水分量の差異、測定毎の測定機に由来する微少な誤差等の影響により、本発明の原共重合体、熱可塑性重合体の各々の13C−NMRスペクトルにおいて、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピーク、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークの各ピークトップの化学シフトが0.2ppm程度の範囲内でシフト(移動)して観察される。そのため、この場合はこれら各化学シフトのシフト(移動)を考慮した上で、組成を求めた。
得られた原共重合体、熱可塑性重合体の各々を600mg/3gの濃度で重水素化ピリジンに溶解させ、Varian社製、UNITY INOVA500型NMR測定機を用いて、測定核13C、基準としてTMSを用い、観測周波数125.7MHz、積算回数30000回として、原共重合体は温度25℃にて、熱可塑性重合体は温度15℃にて各々測定を行った。熱可塑性重合体の13C−NMRスペクトルにおいて、(iii)グルタル酸無水物単位の酸無水物のカルボニル基のピークは化学シフト170.50〜174.40ppmの範囲に分裂して観測され、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト174.60〜179.43ppmの範囲に分裂して観測され、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲に分裂して観測され、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが一部重なって観察されるが、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが重なった部分において、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークが占める割合は(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが占める割合と比較して無視できるほど小さいため、本発明では、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、化学シフト174.60〜179.14ppmの範囲、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲とし、これらの積分値から各々の組成を決定した。原共重合体の13C−NMRにおいて、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト176.00〜179.43ppmの範囲に分裂して観測され、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、そのシーケンスとタクティシティーによって、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲に分裂して観測され、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが一部重なるが、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークと(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークがが重なった部分において、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークが占める割合は(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークが占める割合と比較して無視できるほど小さいため、本発明では、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピークは、化学シフト176.00〜179.14ppmの範囲、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークは、化学シフト179.15〜182.00ppmの範囲とし、これらの積分値から各々の組成を決定した。尚、本発明の原共重合体、熱可塑性重合体を重水素化ピリジン中で13C−NMRスペクトルを測定した場合、(iii)グルタル酸無水物単位の含有量、(ii)不飽和カルボン酸単位の含有量、用いた(i)不飽和カルボン酸エステル単位の種類、用いた(ii)不飽和カルボン酸単位の種類、重水素化ピリジン溶液中に含有される水分量の差異、測定毎の測定機に由来する微少な誤差等の影響により、本発明の原共重合体、熱可塑性重合体の各々の13C−NMRスペクトルにおいて、(i)不飽和カルボン酸エステル単位のカルボニル基のピーク、(ii)不飽和カルボン酸単位のカルボニル基のピークの各ピークトップの化学シフトが0.2ppm程度の範囲内でシフト(移動)して観察される。そのため、この場合はこれら各化学シフトのシフト(移動)を考慮した上で、組成を求めた。
(5)溶解度パラメーター
本発明で採用した溶解度パラメーターδ(MPa1/2)は、「POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION」、J.BRANDRUP、E.H.IMMERGUT、およびE.A.GRULKE著、pVII/675−714、WILEY INTERSCIENCE(1999)のTABLE7に記載のデータを採用した。また、TABLE7に記載されていない有機溶媒に関しては、前記文献に記載されているSmallの方法で算出して採用した。尚、Smallの方法とは、前記文献のTABLE2で与えられたSmallの方法による特定の原子及び原子団の凝集エネルギー定数F(MPa1/2・cm3/mol)を採用し、密度をs(g/cm3)、基本分子量をM(g/mol)とし、δ=(sΣF)/Mで溶解度パラメーターδ(MPa1/2)を算出するものである。尚、1(MPa1/2)=2.046(cal/cm3)1/2である。
本発明で採用した溶解度パラメーターδ(MPa1/2)は、「POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION」、J.BRANDRUP、E.H.IMMERGUT、およびE.A.GRULKE著、pVII/675−714、WILEY INTERSCIENCE(1999)のTABLE7に記載のデータを採用した。また、TABLE7に記載されていない有機溶媒に関しては、前記文献に記載されているSmallの方法で算出して採用した。尚、Smallの方法とは、前記文献のTABLE2で与えられたSmallの方法による特定の原子及び原子団の凝集エネルギー定数F(MPa1/2・cm3/mol)を採用し、密度をs(g/cm3)、基本分子量をM(g/mol)とし、δ=(sΣF)/Mで溶解度パラメーターδ(MPa1/2)を算出するものである。尚、1(MPa1/2)=2.046(cal/cm3)1/2である。
また、2種類以上の有機溶媒からなる混合物である場合の溶解度パラメーターδは、混合有機溶媒中の各溶媒成分のモル分率Xi(%)、各溶媒成分の溶解度パラメーターδiから、下記式により算出した。δ=Σ(δi×Xi/100)
(6)ケーク中の揮発分含有量
重合に続く第一ろ過後の原共重合体ケークおよび第二ろ過後の原共重合体ケークをそれぞれ真空乾燥機中130℃にて揮発分が完全に留去されるまで真空乾燥を実施し、重量変化を測定し、下式より算出した重量減少率を揮発分含有量として評価した。
原共重合体ケーク中の揮発分含有量(重量%)=重量減少率(重量%)=[(加熱処理前重量−加熱処理後重量)/加熱処理前重量]×100。
重合に続く第一ろ過後の原共重合体ケークおよび第二ろ過後の原共重合体ケークをそれぞれ真空乾燥機中130℃にて揮発分が完全に留去されるまで真空乾燥を実施し、重量変化を測定し、下式より算出した重量減少率を揮発分含有量として評価した。
原共重合体ケーク中の揮発分含有量(重量%)=重量減少率(重量%)=[(加熱処理前重量−加熱処理後重量)/加熱処理前重量]×100。
(7)黄色度(Yellowness Index(YI値))
得られた熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて、射出成形機(名機製作所 M−50AII−SJ)を用いて、熱可塑性重合体のガラス転移温度+140℃(熱可塑性樹脂組成物の場合、マトリックスである熱可塑性重合体のガラス転移温度+140℃)で射出成形し、得た厚さ1mm成形品(フィルム)のYI値をJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
得られた熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて、射出成形機(名機製作所 M−50AII−SJ)を用いて、熱可塑性重合体のガラス転移温度+140℃(熱可塑性樹脂組成物の場合、マトリックスである熱可塑性重合体のガラス転移温度+140℃)で射出成形し、得た厚さ1mm成形品(フィルム)のYI値をJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
(8)透明性(全光線透過率)
得られた熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて、前記(6)に記載した条件で射出成形し、得た厚さ1mm成形品(フィルム)の23℃での全光線透過率(%)を東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて測定し、透明性を評価した。
得られた熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて、前記(6)に記載した条件で射出成形し、得た厚さ1mm成形品(フィルム)の23℃での全光線透過率(%)を東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて測定し、透明性を評価した。
(9)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。
(10)溶融滞留安定性(空気雰囲気下):原共重合体50.0gをラボプラストミル(東洋精機社製、50C150)にて、空気雰囲気下、280℃の温度において回転速度50rpmで15分間溶融混練した後、プレス成形機(280℃設定)により1mm成形品を得た。次に、ラボプラストミル溶融混練前の原共重合体についても同様にプレス成形機(280℃設定)により1mm成形品を得た。ラボプラストミル溶融混練後の1mm成形品とラボプラストミル溶融混練前の1mm成形品に関し、これら成形品のYI値をJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定し、YI値の差ΔYIを算出した。ΔYI(空気雰囲気)=(ラボプラストミル溶融混練後の1mm成形品のYI値)−(ラボプラストミル溶融混練前の1mm成形品のYI値)とする。
(11)溶融滞留安定性(高温下):ラボプラストミル(東洋精機社製、50C150)の投入口から窒素ガスを1L/分の流量でラボプラストミル系内に2分間流した。次に原共重合体50.0gと酢酸リチウム(無水物)をラボプラストミル(東洋精機社製、50C150)に投入し、投入口に窒素ガスを1L/分の流量でフローしながら、280℃、340℃のそれぞれの温度において、回転速度50rpmで30分間溶融混練した後、プレス成形機(280℃設定)により1mm成形品を得た。次に、280℃の温度で溶融混練後の1mm成形品と340℃の温度で溶融混練後の1mm成形品に関し、これら成形品のYI値をJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定し、YI値の差ΔYI(高温)を算出した。ΔYI(高温)=(340℃の温度で溶融混練後の1mm成形品のYI値)−(280℃の温度で溶融混練後の1mm成形品のYI値)とする。
(12)剛性および耐湿熱性(剛性保持率):熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて、射出成形機(名機製作所 M−50AII−SJ)を用いて、熱可塑性重合体のガラス転移温度+140℃(熱可塑性樹脂組成物の場合、マトリックスである熱可塑性重合体のガラス転移温度+140℃)で射出成形することにより厚さ1/4インチの射出成形品(試験片)を得た。これら1/4インチ試験片品を温度80℃、湿度95%RHにて恒温高湿槽内で24時間湿熱処理した後、湿熱処理前後の各々の1/4インチ試験片について、剛性の指標として、曲げ弾性率をASTM D790に準拠して測定し、また、耐湿熱性の指標として、熱処理前の曲げ弾性率に対する曲げ弾性率保持率(%)を熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物のそれぞれについて求めた。曲げ弾性率保持率(%)=(湿熱処理後の曲げ弾性率/湿熱処理前の曲げ弾性率)×100。
(13)重合収率:単量体混合物を重合して得た原共重合体のスラリーについて、固液分離を行って得た原共重合体のケークから、130℃で真空条件下、加熱処理を実施することにより揮発分を完全に留去し、重合収率を下式より算出した。ここで、原共重合体には重合中に攪拌翼および/または壁部に付着したものは含んでいない。
重合収率(%)=[加熱処理後得られた原共重合体の全重量/仕込んだ単量体混合物の全重量]×100。
重合収率(%)=[加熱処理後得られた原共重合体の全重量/仕込んだ単量体混合物の全重量]×100。
(14)スラリー濃度:原共重合体の重合終了後、系内を均一に攪拌しつつ、原共重合体を含むスラリーをサンプリングした。スラリーから、130℃で真空条件下、加熱処理を実施することにより揮発分を完全に留去し、加熱処理前後の各々の重量からスラリー濃度を算出した。スラリー濃度(重量%)=[(加熱処理前のスラリーの全重量−スラリーから揮発分を完全に留去した後の原共重合体の重量)/加熱処理前のスラリーの全重量]×100。
(15)溶存酸素濃度の測定
形内の液中の溶存酸素濃度を、飯島電子工業株式会社製、DOメーターB−505を用いて測定した。測定は、重合容器内温が所定の重合温度に到達した重合開始時点と、所定の重合温度および時間重合反応を行った重合終了時点に実施した。
形内の液中の溶存酸素濃度を、飯島電子工業株式会社製、DOメーターB−505を用いて測定した。測定は、重合容器内温が所定の重合温度に到達した重合開始時点と、所定の重合温度および時間重合反応を行った重合終了時点に実施した。
重合工程(第一工程):原共重合体(a−1)〜(a−11)の製造
参考例1:原共重合体(a−1)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5リットル/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は80%であり、スラリー濃度は17.8%であった。また、仕込みモノマー濃度は22.2%であった。得られた原共重合体スラリーを40℃まで冷却した後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過し、原共重合体(a−1)のケークを得た。得られたケークの粒子はろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、130℃で12時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−1)を得た。得られた原共重合体(a−1)はSEM観察の結果、数平均粒子径が2.0μmであった。Mwは、72000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.24であった。原共重合体(a−1)の共重合組成はメタクリル酸メチル単位(MMA)/メタクリル酸単位(MAA)(重量%比)=72/28であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.28であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 190重量部
シクロヘキサン 140重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.3重量部。
参考例1:原共重合体(a−1)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5リットル/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は80%であり、スラリー濃度は17.8%であった。また、仕込みモノマー濃度は22.2%であった。得られた原共重合体スラリーを40℃まで冷却した後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過し、原共重合体(a−1)のケークを得た。得られたケークの粒子はろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、130℃で12時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−1)を得た。得られた原共重合体(a−1)はSEM観察の結果、数平均粒子径が2.0μmであった。Mwは、72000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.24であった。原共重合体(a−1)の共重合組成はメタクリル酸メチル単位(MMA)/メタクリル酸単位(MAA)(重量%比)=72/28であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.28であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 190重量部
シクロヘキサン 140重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.3重量部。
参考例2:原共重合体(a−2)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5リットル/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は82%であり、スラリー濃度は22.1%であった。また仕込みモノマー濃度は、27.0%であった。得られた原共重合体スラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離を行った。得られたケークの粒子はろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、110℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−2)を得た。得られた原共重合体(a−2)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.9μmであった。Mwは、100000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.18であった。原共重合体(a−2)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=71/29であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.32であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 26重量部
メタクリル酸メチル 74重量部
酢酸ブチル 120重量部
シクロヘキサン 135重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.0重量部。
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 15重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5リットル/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は82%であり、スラリー濃度は22.1%であった。また仕込みモノマー濃度は、27.0%であった。得られた原共重合体スラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離を行った。得られたケークの粒子はろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、110℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−2)を得た。得られた原共重合体(a−2)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.9μmであった。Mwは、100000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.18であった。原共重合体(a−2)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=71/29であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.32であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 26重量部
メタクリル酸メチル 74重量部
酢酸ブチル 120重量部
シクロヘキサン 135重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.0重量部。
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 15重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
参考例3:原共重合体(a−3)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら85℃に昇温した。内温が85℃に達した時点を重合開始とし、さらに210分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は87%であり、スラリー濃度は26.5%であった。また仕込みモノマー濃度は30.5%であった。得られた原共重合体スラリーを40℃まで冷却した後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過で得たケークの粒子はろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、110℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−3)を得た。得られた原共重合体(a−3)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.8μmであった。Mwは130000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.52であった。原共重合体(a−3)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=71/29であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.37であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 103重量部
シクロヘキサン 125重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.3重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら85℃に昇温した。内温が85℃に達した時点を重合開始とし、さらに210分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は87%であり、スラリー濃度は26.5%であった。また仕込みモノマー濃度は30.5%であった。得られた原共重合体スラリーを40℃まで冷却した後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過で得たケークの粒子はろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、110℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−3)を得た。得られた原共重合体(a−3)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.8μmであった。Mwは130000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.52であった。原共重合体(a−3)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=71/29であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.37であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 103重量部
シクロヘキサン 125重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.3重量部。
参考例4:原共重合体(a−4)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記混合物質を供給し、250rpmで撹拌しながら、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点を重合開始とし、内温を80℃に300分間保ち、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。系内の全原共重合体スラリーの7重量%が凝集し壁部や攪拌翼に付着した。重合収率は70%であり、スラリー濃度は13.0%であった。また、仕込みモノマー濃度は18.5%であった。得られた原共重合体スラリーを40℃まで冷却後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過し、80℃で12時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−4)を得た。得られた比較例用の原共重合体(a−4)をSEMで観察した結果、数平均粒子径が0.9μmであった。また、GPC測定によるMwは133000、分子量分布(Mw/Mn)は4.01であった。原共重合体(a−4)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=68/32であった。重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.25であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
シクロヘキサン 440重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.3重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記混合物質を供給し、250rpmで撹拌しながら、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点を重合開始とし、内温を80℃に300分間保ち、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。系内の全原共重合体スラリーの7重量%が凝集し壁部や攪拌翼に付着した。重合収率は70%であり、スラリー濃度は13.0%であった。また、仕込みモノマー濃度は18.5%であった。得られた原共重合体スラリーを40℃まで冷却後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過し、80℃で12時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−4)を得た。得られた比較例用の原共重合体(a−4)をSEMで観察した結果、数平均粒子径が0.9μmであった。また、GPC測定によるMwは133000、分子量分布(Mw/Mn)は4.01であった。原共重合体(a−4)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=68/32であった。重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.25であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
シクロヘキサン 440重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.3重量部。
参考例5:原共重合体(a−5)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後にスケーリングとして攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち13重量%であった。重合収率は57%であり、スラリー濃度は11.4%であった。また仕込みモノマー濃度は20.0%であった。得られた原共重合体スラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離し、原共重合体(a−5)のケークを得た。次いで、110℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−5)を得た。得られた原共重合体(a−5)はSEM観察の結果、数平均粒子径が2.9μmであった。Mwは、70000、分子量分布(Mw/Mn)は、3.05であった。原共重合体(a−5)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=71/29であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.23であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 280重量部
ヘプタン 100重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.3重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後にスケーリングとして攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち13重量%であった。重合収率は57%であり、スラリー濃度は11.4%であった。また仕込みモノマー濃度は20.0%であった。得られた原共重合体スラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離し、原共重合体(a−5)のケークを得た。次いで、110℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−5)を得た。得られた原共重合体(a−5)はSEM観察の結果、数平均粒子径が2.9μmであった。Mwは、70000、分子量分布(Mw/Mn)は、3.05であった。原共重合体(a−5)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=71/29であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.23であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 280重量部
ヘプタン 100重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.3重量部。
参考例6:原共重合体(a−6)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリー(a−6)を得た。重合後にスケーリングとして攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%であった。重合収率は73%であり、スラリー濃度は16.2%であった。また仕込みモノマー濃度は22.2%であった。得られた原共重合体(a−6)のスラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離し、原共重合体(a−6)のケークを得た。次いで、110℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−6)を得た。得られた原共重合体(a−6)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.5μmであった。Mwは、73000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.80であった。原共重合体(a−6)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=70/30であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.25であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 242.5重量部
ヘキサン 87.5重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.3重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら90℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリー(a−6)を得た。重合後にスケーリングとして攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%であった。重合収率は73%であり、スラリー濃度は16.2%であった。また仕込みモノマー濃度は22.2%であった。得られた原共重合体(a−6)のスラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離し、原共重合体(a−6)のケークを得た。次いで、110℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−6)を得た。得られた原共重合体(a−6)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.5μmであった。Mwは、73000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.80であった。原共重合体(a−6)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=70/30であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.25であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 242.5重量部
ヘキサン 87.5重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.3重量部。
参考例7:原共重合体(a−7)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら87℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は86%であり、スラリー濃度は23.9%であった。また仕込みモノマー濃度は27.8%であった。得られた原共重合体(a−7)のスラリーを40℃まで冷却した後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過で得たケークの粒子はろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、130℃で12時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−7)を得た。得られた原共重合体(a−7)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.3μmであった。Mwは85000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.33であった。原共重合体(a−7)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=77/23であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.34であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 19重量部
メタクリル酸メチル 81重量部
酢酸ブチル 90重量部
シクロヘキサン 156重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.15重量部。
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 14重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら87℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は86%であり、スラリー濃度は23.9%であった。また仕込みモノマー濃度は27.8%であった。得られた原共重合体(a−7)のスラリーを40℃まで冷却した後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過で得たケークの粒子はろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、130℃で12時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−7)を得た。得られた原共重合体(a−7)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.3μmであった。Mwは85000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.33であった。原共重合体(a−7)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=77/23であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.34であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 19重量部
メタクリル酸メチル 81重量部
酢酸ブチル 90重量部
シクロヘキサン 156重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.15重量部。
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 14重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
参考例8:原共重合体(a−8)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら87.5℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに110分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は75%であり、スラリー濃度は15.0%であった。また仕込みモノマー濃度は20.0%であった。得られた原共重合体(a−8)のスラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離を行った。得られたケークの粒子は、ろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、130℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−8)を得た。得られた原共重合体(a−8)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.5μmであった。Mwは133000、分子量分布(Mw/Mn)は、3.09であった。原共重合体(a−8)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=82/18であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.27であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 13重量部
メタクリル酸メチル 87重量部
酢酸ブチル 140重量部
シクロヘキサン 240重量部
3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル 0.46重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら87.5℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに110分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は75%であり、スラリー濃度は15.0%であった。また仕込みモノマー濃度は20.0%であった。得られた原共重合体(a−8)のスラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離を行った。得られたケークの粒子は、ろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、130℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−8)を得た。得られた原共重合体(a−8)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.5μmであった。Mwは133000、分子量分布(Mw/Mn)は、3.09であった。原共重合体(a−8)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=82/18であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.27であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 13重量部
メタクリル酸メチル 87重量部
酢酸ブチル 140重量部
シクロヘキサン 240重量部
3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル 0.46重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
参考例9:原共重合体(a−9)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら87.5℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに110分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は72%であり、スラリー濃度は11.5%であった。また仕込みモノマー濃度は16.0%であった。得られた原共重合体(a−9)のスラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離を行った。得られたケークの粒子は、ろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、130℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−8)を得た。得られた原共重合体(a−9)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.4μmであった。Mwは120000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.60であった。原共重合体(a−9)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=82/18であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.22であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 13重量部
メタクリル酸メチル 87重量部
酢酸ブチル 190重量部
シクロヘキサン 315重量部
3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル 0.44重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら87.5℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに110分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は72%であり、スラリー濃度は11.5%であった。また仕込みモノマー濃度は16.0%であった。得られた原共重合体(a−9)のスラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離を行った。得られたケークの粒子は、ろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、130℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−8)を得た。得られた原共重合体(a−9)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.4μmであった。Mwは120000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.60であった。原共重合体(a−9)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=82/18であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.22であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 13重量部
メタクリル酸メチル 87重量部
酢酸ブチル 190重量部
シクロヘキサン 315重量部
3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル 0.44重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
参考例10:原共重合体(a−10)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら85℃に昇温した。85℃に到達後、下記(ロ)の混合物質を100分間、下記(ハ)の混合物質を80分間で各々添加した。下記(ロ)の混合物質の添加が終了した後、更に85℃で100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は74%であり、スラリー濃度は14.8%であった。また仕込みモノマー濃度は20.0%であった。得られた原共重合体(a−10)のスラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離を行った。得られたケークの粒子は、ろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、130℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−10)を得た。得られた原共重合体(a−10)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.4μmであった。Mwは133000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.70であった。原共重合体(a−10)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=82/18であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.28であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 9.6重量部
メタクリル酸メチル 83.6重量部
酢酸ブチル 100重量部
シクロヘキサン 280重量部
3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル 0.44重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
混合物質(ハ):
メタクリル酸 3.4重量部
メタクリル酸メチル 3.4重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10リットル/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら85℃に昇温した。85℃に到達後、下記(ロ)の混合物質を100分間、下記(ハ)の混合物質を80分間で各々添加した。下記(ロ)の混合物質の添加が終了した後、更に85℃で100分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は74%であり、スラリー濃度は14.8%であった。また仕込みモノマー濃度は20.0%であった。得られた原共重合体(a−10)のスラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離を行った。得られたケークの粒子は、ろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、130℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−10)を得た。得られた原共重合体(a−10)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.4μmであった。Mwは133000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.70であった。原共重合体(a−10)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=82/18であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.28であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 9.6重量部
メタクリル酸メチル 83.6重量部
酢酸ブチル 100重量部
シクロヘキサン 280重量部
3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル 0.44重量部
混合物質(ロ):
酢酸ブチル 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
混合物質(ハ):
メタクリル酸 3.4重量部
メタクリル酸メチル 3.4重量部。
参考例11:原共重合体(a−11)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5リットル/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら85℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに140分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は88%であり、スラリー濃度は22.0%であった。また仕込みモノマー濃度は、25.0%であった。得られた原共重合体(a−11)のスラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離を行った。得られたケークの粒子はろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、110℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−11)を得た。得られた原共重合体(a−11)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.3μmであった。Mwは120000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.80であった。原共重合体(a−11)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=84/16であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.32であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 13重量部
メタクリル酸メチル 87重量部
酢酸ブチル 60重量部
シクロヘキサン 220重量部
3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル 0.50重量部
混合物質(ロ):
シクロヘキサン 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5リットル/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら85℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに140分間保った後、重合を終了し、原共重合体スラリーを得た。重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は88%であり、スラリー濃度は22.0%であった。また仕込みモノマー濃度は、25.0%であった。得られた原共重合体(a−11)のスラリーを40℃まで冷却した後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で遠心分離を行った。得られたケークの粒子はろ過後の粒子の分散性にも優れ、ハンドリング性に優れるものであった。次いで、110℃で15時間真空乾燥を行い、パウダー状の原共重合体(a−11)を得た。得られた原共重合体(a−11)はSEM観察の結果、数平均粒子径が1.3μmであった。Mwは120000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.80であった。原共重合体(a−11)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=84/16であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.32であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 13重量部
メタクリル酸メチル 87重量部
酢酸ブチル 60重量部
シクロヘキサン 220重量部
3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル 0.50重量部
混合物質(ロ):
シクロヘキサン 20重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部。
比較例用の原共重合体(a−12)〜(a−16)の製造
参考例12:比較例用の原共重合体(a−12)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記混合物質を供給し、250rpmで撹拌しながら、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら85℃に昇温した。内温が85℃に達した時点を重合開始とし、内温を85℃に60分間保ち、95℃まで30分かけて昇温した後、さらに95℃で30分間保ち、重合を終了し、比較例用の原共重合体(a−12)を得た。重合は、重合初期から比較例用の原共重合体(a−12)が分散質としてスラリー状に分散した不均一系で、重合後に攪拌翼および壁部に付着した比較例用の原共重合体は、全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は61%であり、スラリー濃度は6.1%であった。また仕込みモノマー濃度は10.0%であった。得られた原共重合体(a−12)のスラリーを40℃まで冷却後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過し、130℃で12時間真空乾燥を行い、パウダー状の比較例用の原共重合体(a−12)を得た。得られた比較例用の原共重合体(a−12)をSEMで観察した結果、数平均粒子径が3.2μmであった。また、GPC測定によるMwは143000、分子量分布(Mw/Mn)は4.68であった。原共重合体(a−12)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=68/32であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.06であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
n−ヘプタン 900重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.2重量部。
参考例12:比較例用の原共重合体(a−12)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記混合物質を供給し、250rpmで撹拌しながら、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら85℃に昇温した。内温が85℃に達した時点を重合開始とし、内温を85℃に60分間保ち、95℃まで30分かけて昇温した後、さらに95℃で30分間保ち、重合を終了し、比較例用の原共重合体(a−12)を得た。重合は、重合初期から比較例用の原共重合体(a−12)が分散質としてスラリー状に分散した不均一系で、重合後に攪拌翼および壁部に付着した比較例用の原共重合体は、全原共重合体のうち5重量%未満であった。重合収率は61%であり、スラリー濃度は6.1%であった。また仕込みモノマー濃度は10.0%であった。得られた原共重合体(a−12)のスラリーを40℃まで冷却後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過し、130℃で12時間真空乾燥を行い、パウダー状の比較例用の原共重合体(a−12)を得た。得られた比較例用の原共重合体(a−12)をSEMで観察した結果、数平均粒子径が3.2μmであった。また、GPC測定によるMwは143000、分子量分布(Mw/Mn)は4.68であった。原共重合体(a−12)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=68/32であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.06であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
n−ヘプタン 900重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.2重量部。
参考例13:比較例用の原共重合体(a−13)
重合溶媒を酢酸ブチル75重量%およびn−ヘプタン25重量%の混合物に変更した以外は、比較例用の原共重合体(a−12)と同様の製造方法で共重合を行い(用いた混合物質を下記)、比較例用の原共重合体(a−13)を得た。重合は、重合初期から共重合体が分散質としてスラリー状に分散した不均一系で、重合後に攪拌翼および壁部に付着した比較例用の原共重合体は、全原共重合体のうち7重量%であった。重合収率は62%であった。また仕込みモノマー濃度は10.0%であった。得られた比較例用の原共重合体(a−13)のスラリーを40℃まで冷却後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過し、130℃で12時間真空乾燥を行い、パウダー状の比較例用の原共重合体(a−13)を得た。得られた比較例用の原共重合体(a−13)をSEMで観察した結果、数平均粒子径が5.5μmであった。また、GPC測定によるMwは140000、分子量分布(Mw/Mn)は3.32であった。比較例用の原共重合体(a−13)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.06であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 675重量部
n−ヘプタン 225重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.2重量部。
重合溶媒を酢酸ブチル75重量%およびn−ヘプタン25重量%の混合物に変更した以外は、比較例用の原共重合体(a−12)と同様の製造方法で共重合を行い(用いた混合物質を下記)、比較例用の原共重合体(a−13)を得た。重合は、重合初期から共重合体が分散質としてスラリー状に分散した不均一系で、重合後に攪拌翼および壁部に付着した比較例用の原共重合体は、全原共重合体のうち7重量%であった。重合収率は62%であった。また仕込みモノマー濃度は10.0%であった。得られた比較例用の原共重合体(a−13)のスラリーを40℃まで冷却後、定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過し、130℃で12時間真空乾燥を行い、パウダー状の比較例用の原共重合体(a−13)を得た。得られた比較例用の原共重合体(a−13)をSEMで観察した結果、数平均粒子径が5.5μmであった。また、GPC測定によるMwは140000、分子量分布(Mw/Mn)は3.32であった。比較例用の原共重合体(a−13)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.06であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 675重量部
n−ヘプタン 225重量部
ラウロイルパーオキサイド 0.8重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.2重量部。
参考例14:比較例用の原共重合体(a−14)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら95℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を180分間で逐次添加し、さらに60分間保った後、重合を終了した。ここで、仕込みモノマー濃度は16.7%であった。得られたスラリーを40℃まで冷却後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で2時間処理し、有機溶媒を分離した。80℃で12時間、乾燥を行い、パウダー状の比較例用の原共重合体(a−14)を得た。この比較例用の原共重合体(a−14)の重合収率は77%であった。得られた比較例用の原共重合体(a−14)はSEM観察の結果、平均粒子径が5.0μmであった。Mwは、120000、分子量分布(Mw/Mn)は、3.03であった。比較例用の原共重合体(a−14)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.12であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 2重量部
メタクリル酸メチル 8重量部
酢酸ブチル 37.5重量部
n−ヘプタン 12.5重量部
混合物質(ロ):
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 65重量部
酢酸ブチル 337.5重量部
n−ヘプタン 112.5重量部
2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル 0.5重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら95℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を180分間で逐次添加し、さらに60分間保った後、重合を終了した。ここで、仕込みモノマー濃度は16.7%であった。得られたスラリーを40℃まで冷却後、窒素ガスを流しながら遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)の製品)で2時間処理し、有機溶媒を分離した。80℃で12時間、乾燥を行い、パウダー状の比較例用の原共重合体(a−14)を得た。この比較例用の原共重合体(a−14)の重合収率は77%であった。得られた比較例用の原共重合体(a−14)はSEM観察の結果、平均粒子径が5.0μmであった。Mwは、120000、分子量分布(Mw/Mn)は、3.03であった。比較例用の原共重合体(a−14)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.12であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 2重量部
メタクリル酸メチル 8重量部
酢酸ブチル 37.5重量部
n−ヘプタン 12.5重量部
混合物質(ロ):
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 65重量部
酢酸ブチル 337.5重量部
n−ヘプタン 112.5重量部
2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル 0.5重量部。
参考例15:比較例用の原共重合体(a−15)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記混合物質を供給し、250rpmで撹拌しながら、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら85℃に昇温した。内温が85℃に達した時点を重合開始とし、内温を85℃に90分間保ち、30分間かけて90℃に昇温した後、さらに90分間保ち、重合を終了した。反応系を室温まで冷却し、不溶な沈殿物のないポリマー溶液を得た。該ポリマー溶液を多量のイオン交換水に滴下し得られたパウダーを80℃で乾燥したが、重合溶媒であるエチレングリコールモノエチルエーテルを完全除去するのに、72時間を要した。得られた比較例用の原共重合体(a−15)の重量平均分子量は94000、分子量分布(Mw/Mn)は3.32であった。比較例用の原共重合体(a−15)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.02であった。
メタクリル酸 27重量部
メタクリル酸メチル 73重量部
エチレングリコールモノエチルエーテル 200重量部
2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル 0.3重量部。
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記混合物質を供給し、250rpmで撹拌しながら、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら85℃に昇温した。内温が85℃に達した時点を重合開始とし、内温を85℃に90分間保ち、30分間かけて90℃に昇温した後、さらに90分間保ち、重合を終了した。反応系を室温まで冷却し、不溶な沈殿物のないポリマー溶液を得た。該ポリマー溶液を多量のイオン交換水に滴下し得られたパウダーを80℃で乾燥したが、重合溶媒であるエチレングリコールモノエチルエーテルを完全除去するのに、72時間を要した。得られた比較例用の原共重合体(a−15)の重量平均分子量は94000、分子量分布(Mw/Mn)は3.32であった。比較例用の原共重合体(a−15)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.02であった。
メタクリル酸 27重量部
メタクリル酸メチル 73重量部
エチレングリコールモノエチルエーテル 200重量部
2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル 0.3重量部。
参考例16:比較例用の原共重合体(a−16)
容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体系懸濁剤(以下の方法で調整した。メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、イオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保つ。反応は単量体が完全に、重合体に転化するまで続け、メタクリル酸メチルとアクリルアミド共重合体の水溶液として得る。得られた水溶液を懸濁剤として使用した)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の比較例用の原共重合体(a−16)を得た。この比較例用の原共重合体(a−16)の重合収率は98%であり、重量平均分子量は90000であり、分子量分布は1.79であった。比較例用の原共重合体(a−16)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.05であった。
メタクリル酸 27重量部
メタクリル酸メチル 73重量部
t−ドデシルメルカプタン 1.5重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体系懸濁剤(以下の方法で調整した。メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、イオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保つ。反応は単量体が完全に、重合体に転化するまで続け、メタクリル酸メチルとアクリルアミド共重合体の水溶液として得る。得られた水溶液を懸濁剤として使用した)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の比較例用の原共重合体(a−16)を得た。この比較例用の原共重合体(a−16)の重合収率は98%であり、重量平均分子量は90000であり、分子量分布は1.79であった。比較例用の原共重合体(a−16)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であり、重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、(X)/(Y)の値は0.05であった。
メタクリル酸 27重量部
メタクリル酸メチル 73重量部
t−ドデシルメルカプタン 1.5重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
参考例1〜16の共重合結果をまとめたものを表1に示す。
表1中の粒子の付着程度について、重合中に原共重合体粒子の塊状化がなく、重合終了後、原共重合体が固体として、スラリー状で溶媒中に分散し、かつ重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が全原共重合体のうち5重量%未満である場合を◎、重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が、全原共重合体のうち5重量%以上10重量%未満である場合を○、重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が、全原共重合体のうち10重量%以上30重量%未満である場合を△、重合後に攪拌翼および壁部に付着した原共重合体が、全原共重合体のうち30重量%以上である場合を×とした。
また、表1中の粒子の分散性について、原共重合体を含むスラリーを40℃まで冷却した後に、窒素雰囲気下、遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)社製)に供給し、回転速度1000rpmで遠心分離を行い、固液分離した後に得られる遠心分離機内のケークのうち、粉体状で取り出すことができない部分が、全ケークの重量中、1重量%未満であり、粒子の分散性に優れるものを◎、原共重合体が固体として、スラリー状で溶媒中に分散するが、原共重合体を含むスラリーを遠心分離した後に得られるケークのうち、粉体で取り出すことができない部分が、全ケークの重量中、1重量%以上5重量%未満である場合を○、原共重合体が固体として、スラリー状で溶媒中に分散するが、原共重合体を含むスラリーを遠心分離した後に得られるケークのうち、粉体で取り出すことができない部分が全ケークの重量中、5重量%以上である場合を△、既に重合終了後に粉体で得られなかったものについては×で記載した。尚、粉体で取り出すことができない部分としては、粉体状であるが、取り出し時に粉体が大気中に舞い上がることにより、結果として回収できなかったものも含む。
表1より、実施例用の参考例1〜11、および比較例用の参考例12〜16の比較から、本発明の特定の有機溶媒(A)を用い、かつ本発明の特定の仕込みモノマー濃度で沈殿重合を行うことにより、本発明で規定した(X)/(Y)の値が0.21以上の範囲に制御された原共重合体を得ることができ、これら参考例1〜7の原共重合体は、(X)/(Y)の値が0.21以上に制御されていない比較例用の参考例8〜12と比較して、300℃以上の高温での溶融滞留安定性および空気雰囲気下(酸素存在下)での溶融滞留安定性に優れることがわかった。また、有機溶媒(A)を用いた重合により、原料モノマーを従来の沈殿重合法と比較して高濃度で使用しても、原共重合体の粒子の合着および攪拌翼や壁部等への付着を抑制することができ、これにより、原共重合体を、従来の沈殿重合法と比較して、高重合率、高スラリー濃度で得ることができることがわかった。また、重合後の粒子の付着程度と前述(4)のPOLYMER HANDBOOKに開示されている溶解度パラメーターには関係があり、有機溶媒(A)の溶解度パラメーターが11.1〜17.6MPa1/2内でもより低い値に制御されることで、重合時のスケーリングを抑制し、重合中、固液分離および乾燥時の粒子の分散性に優れていく傾向にあるが、参考例1〜3および参考例7のように、有機溶媒(A)として、脂環式炭化水素であるシクロヘキサンとカルボン酸エステルの混合物を用いた際には、前述のPOLYMER HANDBOOKに開示されている溶解度パラメーターから計算される結果からの予想と異なり、本発明の原共重合体の沈殿重合においては、粒子の合着、凝集および攪拌翼や壁部等への付着を大きく抑制することができ、極めて高い仕込みモノマー濃度においても、合着、凝集を抑制し、高濃度沈殿重合を実施できることが判った。更に、本発明の原共重合体のケークはハンドリング性にも優れ、従来の沈殿重合法では、重量平均分子量が9万以下であり、流動性の観点から好ましい原共重合体を、粒子同士の合着や攪拌翼や壁部への付着を高度に防止し、粒子の分散性に優れる状態で、かつ高スラリー濃度で得ることは不可能であったが、本発明の有機溶媒(A)、特に脂環式炭化水素であるシクロヘキサンとカルボン酸エステルの混合物を用いた系による沈殿重合により、前記の課題を全て解決できることがわかった。
洗浄工程
参考例17:原共重合体(B)(b−1)
参考例1で得られた原共重合体(a−1)のスラリーを加圧ろ過機(三菱化工機械社製)にて40℃で固液分離し、原共重合体(a−1)のケークを得た。得られたケークを真空乾燥機中、130℃、12時間乾燥し、揮発分含有量を求めた結果、75重量%であった。続いて、遠心分離後に得られたケークをバッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製の洗浄槽に供給し、ケーク100重量部に対して400重量部のイオン交換水を添加し、25℃、回転速度250rpmにて攪拌を開始した。この混合物を引き続き250rpmにて攪拌しながら、60分間かけて80℃に昇温し、内温が80℃に到達した時点から90分間洗浄操作を行った。続いて、得られたスラリーを40℃まで冷却した後、遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)社製)に供給して、回転速度1000rpm、30℃で遠心分離を行った。得られた原共重合体(b−1)ケークの揮発分含有量は50重量%であり、さらに130℃で12時間乾燥を行い、揮発分を完全に留去し、粒子状の原共重合体(b−1)を得た。SEMにて、150倍で観察し、粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径は230μmであった。また、GPC測定によるMwは71000、分子量分布(Mw/Mn)は2.11であった。原共重合体(b−1)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であった。尚、熱水洗浄開始時の系内液中の溶存酸素濃度は重合開始時点、重合終了時点ともに9.0ppmであり、系内気相中の酸素濃度は重合開始時点、重合終了時点ともに100000ppmを超えた。
参考例17:原共重合体(B)(b−1)
参考例1で得られた原共重合体(a−1)のスラリーを加圧ろ過機(三菱化工機械社製)にて40℃で固液分離し、原共重合体(a−1)のケークを得た。得られたケークを真空乾燥機中、130℃、12時間乾燥し、揮発分含有量を求めた結果、75重量%であった。続いて、遠心分離後に得られたケークをバッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製の洗浄槽に供給し、ケーク100重量部に対して400重量部のイオン交換水を添加し、25℃、回転速度250rpmにて攪拌を開始した。この混合物を引き続き250rpmにて攪拌しながら、60分間かけて80℃に昇温し、内温が80℃に到達した時点から90分間洗浄操作を行った。続いて、得られたスラリーを40℃まで冷却した後、遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)社製)に供給して、回転速度1000rpm、30℃で遠心分離を行った。得られた原共重合体(b−1)ケークの揮発分含有量は50重量%であり、さらに130℃で12時間乾燥を行い、揮発分を完全に留去し、粒子状の原共重合体(b−1)を得た。SEMにて、150倍で観察し、粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径は230μmであった。また、GPC測定によるMwは71000、分子量分布(Mw/Mn)は2.11であった。原共重合体(b−1)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であった。尚、熱水洗浄開始時の系内液中の溶存酸素濃度は重合開始時点、重合終了時点ともに9.0ppmであり、系内気相中の酸素濃度は重合開始時点、重合終了時点ともに100000ppmを超えた。
参考例18:原共重合体(B)(b−2)
参考例1で得られた原共重合体(a−1)のスラリーを加圧ろ過機(三菱化工機械社製)にて40℃で固液分離し、原共重合体(a−1)のケークを得た。得られたケークを真空乾燥機中、130℃、12時間乾燥し、揮発分含有量を求めた結果、75重量%であった。続いて、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製の洗浄槽内を窒素雰囲気とした後に、固液分離後に得られたケークを前記洗浄槽内に供給し、ケーク100重量部に対して400重量部のイオン交換水を添加し、25℃、回転速度250rpmにて攪拌しながら系内を10L/分の窒素ガスで30分間バブリングした。次に、この混合物を引き続き250rpmにて攪拌しながら、窒素ガスを5L/分の流量でフローしつつ、60分間かけて80℃に昇温し、内温が80℃に到達した時点から90分間洗浄操作を行った。続いて、得られたスラリーを40℃まで冷却した後、遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)社製)に供給して、回転速度1000rpm、30℃で遠心分離を行った。得られた原共重合体(a’−1)ケークの揮発分含有量は50重量%であり、さらに130℃で12時間乾燥を行い、揮発分を完全に留去し、粒子状の原共重合体(b−2)を得た。SEMにて、150倍で観察し、粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径は250μmであった。また、GPC測定によるMwは71000、分子量分布(Mw/Mn)は2.10であった。原共重合体(b−2)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であった。尚、熱水洗浄開始時の系内液中の溶存酸素濃度は洗浄開始時点で3.8ppm、重合終了時点で4.5ppmであり、系内気相中の酸素濃度は重合開始時点で864.2ppm、重合終了時点で860.0ppmであった。
参考例1で得られた原共重合体(a−1)のスラリーを加圧ろ過機(三菱化工機械社製)にて40℃で固液分離し、原共重合体(a−1)のケークを得た。得られたケークを真空乾燥機中、130℃、12時間乾燥し、揮発分含有量を求めた結果、75重量%であった。続いて、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製の洗浄槽内を窒素雰囲気とした後に、固液分離後に得られたケークを前記洗浄槽内に供給し、ケーク100重量部に対して400重量部のイオン交換水を添加し、25℃、回転速度250rpmにて攪拌しながら系内を10L/分の窒素ガスで30分間バブリングした。次に、この混合物を引き続き250rpmにて攪拌しながら、窒素ガスを5L/分の流量でフローしつつ、60分間かけて80℃に昇温し、内温が80℃に到達した時点から90分間洗浄操作を行った。続いて、得られたスラリーを40℃まで冷却した後、遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)社製)に供給して、回転速度1000rpm、30℃で遠心分離を行った。得られた原共重合体(a’−1)ケークの揮発分含有量は50重量%であり、さらに130℃で12時間乾燥を行い、揮発分を完全に留去し、粒子状の原共重合体(b−2)を得た。SEMにて、150倍で観察し、粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径は250μmであった。また、GPC測定によるMwは71000、分子量分布(Mw/Mn)は2.10であった。原共重合体(b−2)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であった。尚、熱水洗浄開始時の系内液中の溶存酸素濃度は洗浄開始時点で3.8ppm、重合終了時点で4.5ppmであり、系内気相中の酸素濃度は重合開始時点で864.2ppm、重合終了時点で860.0ppmであった。
参考例19:比較例用の原共重合体(b−3)
参考例12で得られた比較例用の原共重合体(a−13)のスラリーを加圧ろ過機(三菱化工機械社製)にて40℃で固液分離し(第一ろ過)、比較例用の原共重合体(a−13)のケークを得た。得られたケークを真空乾燥機中、130℃、12時間乾燥し、揮発分含有量を求めた結果、78重量%であった。続いて、得られたケークをバッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製の洗浄槽に供給し、ケーク100重量部に対して400重量部のイオン交換水を添加し、25℃、回転速度250rpmにて攪拌を開始した。この混合物を引き続き250rpmにて攪拌しながら、60分間かけて80℃に昇温し、内温が80℃に到達した時点から90分間洗浄操作を行った。続いて、得られた原共重合体(b−3)のスラリーを40℃まで冷却した後、遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)社製)に供給して回転速度1000rpm、30℃で遠心分離を行った。得られた原共重合体(b−3)ケークの揮発分含有量は57重量%であった。このケークをさらに真空下、130℃で12時間乾燥を行ったところ、酢酸ブチルが2.2wt%残存していたため、さらに、130℃で12時間真空乾燥を行い、粒子状の原共重合体(b−3)を得た。SEMにて、150倍で観察し、粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径は650μmであった。また、GPC測定によるMwは141000、分子量分布(Mw/Mn)は3.25であった。原共重合体(b−3)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であった。尚、熱水洗浄開始時の系内液中の溶存酸素濃度は重合開始時点、重合終了時点ともに9.0ppmであり、系内気体中の酸素濃度は重合開始時点、重合終了時点ともに100000ppmを超えるものであった。
参考例12で得られた比較例用の原共重合体(a−13)のスラリーを加圧ろ過機(三菱化工機械社製)にて40℃で固液分離し(第一ろ過)、比較例用の原共重合体(a−13)のケークを得た。得られたケークを真空乾燥機中、130℃、12時間乾燥し、揮発分含有量を求めた結果、78重量%であった。続いて、得られたケークをバッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製の洗浄槽に供給し、ケーク100重量部に対して400重量部のイオン交換水を添加し、25℃、回転速度250rpmにて攪拌を開始した。この混合物を引き続き250rpmにて攪拌しながら、60分間かけて80℃に昇温し、内温が80℃に到達した時点から90分間洗浄操作を行った。続いて、得られた原共重合体(b−3)のスラリーを40℃まで冷却した後、遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)社製)に供給して回転速度1000rpm、30℃で遠心分離を行った。得られた原共重合体(b−3)ケークの揮発分含有量は57重量%であった。このケークをさらに真空下、130℃で12時間乾燥を行ったところ、酢酸ブチルが2.2wt%残存していたため、さらに、130℃で12時間真空乾燥を行い、粒子状の原共重合体(b−3)を得た。SEMにて、150倍で観察し、粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径は650μmであった。また、GPC測定によるMwは141000、分子量分布(Mw/Mn)は3.25であった。原共重合体(b−3)の共重合組成はMMA/MAA(重量%比)=72/28であった。尚、熱水洗浄開始時の系内液中の溶存酸素濃度は重合開始時点、重合終了時点ともに9.0ppmであり、系内気体中の酸素濃度は重合開始時点、重合終了時点ともに100000ppmを超えるものであった。
実施例用の参考例17、18および比較例用の参考例19の洗浄結果をまとめたものを表2に示す。
表2中の洗浄後の粒子の分散性について、洗浄後、原共重合体を含むスラリーを遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)社製)に供給し、窒素雰囲気下、80℃の温度かつ回転速度1000rpmで遠心分離を行って得られるケークのうち、全て粉体として取り出すことができ、分散性に優れるものを○とした。また、原共重合体を含むスラリーを遠心分離した後に得られるケークのうち、粉体で取り出せない部分が少なくとも一部あるが、全ケークの重量中、5重量%未満である場合を△、原共重合体を含むスラリーを遠心分離した後に得られるケークのうち、粉体で取り出せない部分が全ケークの重量中、5重量%以上である場合を×で記載した。
また、表2中の洗浄後の乾燥効率(乾燥速度)について、遠心分離後の原共重合体のケーク300gをステンレス製のバット上に厚さ8mmで敷き詰め、真空乾燥機(ヤマト科学社製 DP−32)を用いて、5Torrの圧力下、23℃から130℃まで30分で昇温し、130℃に達した後に7時間熱処理を実施した際に、バット底部に接していたケーク中に残存する有機溶媒量が2.0重量%未満である場合を○、ケーク中に残存する有機溶媒量が2.0重量%以上5.0重量%未満である場合を△、ケーク中に残存する有機溶媒量が5.0重量%以上である場合を×とした。
表2中の乾燥後の粒子の分散性について、前記と同様の条件にて真空乾燥処理を実施して得た乾燥後の粒子について乾燥後の粒子において、粒子同士の合着や乾燥容器への付着が生じず、乾燥前の粒子径で全て回収できるものを○、粒子同士の合着や乾燥容器への付着が生じるが、粒子同士の合着量や乾燥容器への付着量が5.0重量%未満のものを△、粒子同士の合着量や乾燥容器への付着量が5.0重量%以上のものを×とした。
表2より、参考例17、18および比較例用の参考例19の比較から、有機溶媒(A)中で高い仕込みモノマー濃度で重合を行って得た原共重合体は、水中で洗浄を実施した後に、粒子径が特定の範囲に制御され、かつハンドリング性に優れ、また、固液分離後の粒子の再分散性に優れ、更に乾燥時に粒子乾燥効率に優れ、乾燥後の取り出しや乾燥後の粒子のハンドリング性にも優れることがわかる。また、参考例12と参考例13の比較から、洗浄時の系内液中、系内気相中の残存酸素濃度を低減させることによって、空気雰囲気下および高温下での溶融滞留安定性が向上することがわかった。
参考例20:ゴム質含有重合体(c−1)の製造
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内にイオン交換水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部および過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル51重量部、スチレン19重量部およびメタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部および過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(c−1)を得た。この重合体粒子の窒素中での1%分解温度は295℃であった。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は150nmであった。
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内にイオン交換水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部および過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル51重量部、スチレン19重量部およびメタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部および過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(c−1)を得た。この重合体粒子の窒素中での1%分解温度は295℃であった。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は150nmであった。
実施例1〜7、12、13:熱可塑性重合体の製造(第二工程)、(d−1)〜(d−7)、(d−12)、(d−13)
参考例で得られた原共重合体(a−1)〜(a−7)、原共重合体(B)(b−1)、(b−2)の各々100重量部に対して、触媒として酢酸リチウム(無水物)0.13重量部を配合し、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10リットル/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量15kg/h、シリンダ温度340℃で分子内環化反応を行い、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(d−1)〜(d−7)、(d−12)、(d−13)を得た。これらの結果を表3に示した。
参考例で得られた原共重合体(a−1)〜(a−7)、原共重合体(B)(b−1)、(b−2)の各々100重量部に対して、触媒として酢酸リチウム(無水物)0.13重量部を配合し、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10リットル/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量15kg/h、シリンダ温度340℃で分子内環化反応を行い、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(d−1)〜(d−7)、(d−12)、(d−13)を得た。これらの結果を表3に示した。
実施例8〜11:熱可塑性重合体の製造(第二工程)、(d−8)〜(d−11)
参考例で得られた原共重合体(a−8)〜(a−11)100重量部に対して、触媒として酢酸リチウム(無水物)0.065重量部を配合し、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10リットル/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量15kg/h、シリンダ温度340℃で分子内環化反応を行い、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(d−8)〜(d−11)を得た。これらの結果を表3に示した。
参考例で得られた原共重合体(a−8)〜(a−11)100重量部に対して、触媒として酢酸リチウム(無水物)0.065重量部を配合し、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10リットル/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量15kg/h、シリンダ温度340℃で分子内環化反応を行い、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(d−8)〜(d−11)を得た。これらの結果を表3に示した。
実施例14、15:熱可塑性重合体の製造(第二工程)、(d−14)、(d−15)
参考例2、参考例5で得られた原共重合体(a−2)、(a−5)の各々100重量部に対して、触媒として酢酸リチウム(無水物)0.13重量部を配合し、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10リットル/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量10kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(d−14)、(d−15)を得た。これらの結果を表3に示した。
参考例2、参考例5で得られた原共重合体(a−2)、(a−5)の各々100重量部に対して、触媒として酢酸リチウム(無水物)0.13重量部を配合し、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10リットル/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量10kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性重合体(d−14)、(d−15)を得た。これらの結果を表3に示した。
比較例1〜6:比較例用の熱可塑性重合体の製造(第二工程)、(e−1)〜(e−6)
比較例用の原共重合体(a−12)〜(a−16)、比較例用の原共重合体(b−3)の各々100重量部に、触媒として酢酸リチウム(無水物)0.13重量部を配合し、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10リットル/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量15kg/h、シリンダ温度340℃で分子内環化反応を行い、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の比較例用の熱可塑性重合体(e−1)〜(e−6)を得た。これらの結果を表3に示した。
比較例用の原共重合体(a−12)〜(a−16)、比較例用の原共重合体(b−3)の各々100重量部に、触媒として酢酸リチウム(無水物)0.13重量部を配合し、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10リットル/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量15kg/h、シリンダ温度340℃で分子内環化反応を行い、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の比較例用の熱可塑性重合体(e−1)〜(e−6)を得た。これらの結果を表3に示した。
比較例7:比較例用の熱可塑性重合体の製造(第二工程)、(e−7)
比較例用の原共重合体(a−13)100重量部に、触媒として酢酸リチウム(無水物)0.13重量部を配合し、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量10kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の比較例用の熱可塑性重合体(e−7)を得た。この結果を表3に示した。
比較例用の原共重合体(a−13)100重量部に、触媒として酢酸リチウム(無水物)0.13重量部を配合し、38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量10kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の比較例用の熱可塑性重合体(e−7)を得た。この結果を表3に示した。
実施例1〜15と比較例1〜7の比較から、(X)/(Y)の値が本発明で規定した特定の範囲に制御された原共重合体を分子内環化して得た実施例1〜15の熱可塑性重合体は、高度な無色透明性、耐熱性および剛性を有しながら、比較例1〜7の熱可塑性重合体比、耐湿熱性に優れることがわかった。また、比較例1〜6の熱可塑性重合体は、290℃の温度で分子内環化反応を行った比較例7の熱可塑性重合体と比較して、340℃の高温で分子内環化反応を行っているため、原料供給量を1.5倍としても、ほぼ同等の組成の熱可塑性重合体を得ることができ、これにより、時間当たりの生産量が1.5倍となり、生産性が向上するが、一方で溶融混練後の色調が大きく低下する。しかし、実施例1〜13の熱可塑性重合体は、(X)/(Y)の値が特定の範囲に制御された原共重合体を用いて分子内環化しているため、340℃の高温で溶融混練し、生産性と透明性を向上させつつ、優れた色調(黄色度)を有することがわかった。また、有機溶媒(A)が脂環式炭化水素を含み、かつ仕込みモノマー濃度を17.0〜40.0%の範囲として共重合して得た原共重合体を分子内環化反応せしめて得た熱可塑性重合体が特に耐湿熱性に優れることがわかった。実施例16〜28:熱可塑性樹脂組成物の製造
熱可塑性重合体(d−1)〜(d−13)およびゴム質含有重合体(c−1)を表4の割合で配合し、2軸押出機TEX30(L/D=44.5、日本製鋼社製)を用いて設定温度280℃、スクリュー回転数100rpmで混練し、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。これら熱可塑性樹脂組成物について、テトラヒドロフラン中に分散させ、遠心分離を行うことによりゴム質重合体を単離したのち、赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、ゴム質重合体中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。
熱可塑性重合体(d−1)〜(d−13)およびゴム質含有重合体(c−1)を表4の割合で配合し、2軸押出機TEX30(L/D=44.5、日本製鋼社製)を用いて設定温度280℃、スクリュー回転数100rpmで混練し、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。これら熱可塑性樹脂組成物について、テトラヒドロフラン中に分散させ、遠心分離を行うことによりゴム質重合体を単離したのち、赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、ゴム質重合体中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。
比較例8〜13:比較例用の熱可塑性樹脂組成物の製造
熱可塑性重合体(e−1)〜(e−6)、およびゴム質含有重合体(c−1)を表4の割合で配合し、2軸押出機TEX30(L/D=44.5、日本製鋼社製)を用いて設定温度280℃、スクリュー回転数100rpmで混練し、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の比較例用の熱可塑性樹脂組成物を得た。これら比較例用の熱可塑性樹脂組成物をテトラヒドロフラン中に分散させ、遠心分離を行うことによりゴム質重合体を単離したのち、赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、ゴム質重合体中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。
熱可塑性重合体(e−1)〜(e−6)、およびゴム質含有重合体(c−1)を表4の割合で配合し、2軸押出機TEX30(L/D=44.5、日本製鋼社製)を用いて設定温度280℃、スクリュー回転数100rpmで混練し、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の比較例用の熱可塑性樹脂組成物を得た。これら比較例用の熱可塑性樹脂組成物をテトラヒドロフラン中に分散させ、遠心分離を行うことによりゴム質重合体を単離したのち、赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、ゴム質重合体中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。
実施例29
参考例1で得られた原共重合体(a−1)100重量部、酢酸リチウム(無水物)0.13重量部を2軸押出機TEX30(L/D=44.5、日本製鋼社製)を用いて設定温度285℃、スクリュー回転数100rpmで分子内環化反応を行い、加熱処理途中の段階である中間位置からサイドフィーダーを用いゴム質含有重合体(c−1)25重量部を添加混練し、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物をテトラヒドロフラン中に分散させ、遠心分離を行うことによりゴム質重合体を単離したのち、赤外分光光度計を用いて分析した結果、1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、ゴム質重合体中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。
参考例1で得られた原共重合体(a−1)100重量部、酢酸リチウム(無水物)0.13重量部を2軸押出機TEX30(L/D=44.5、日本製鋼社製)を用いて設定温度285℃、スクリュー回転数100rpmで分子内環化反応を行い、加熱処理途中の段階である中間位置からサイドフィーダーを用いゴム質含有重合体(c−1)25重量部を添加混練し、得られたペレットを80℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物をテトラヒドロフラン中に分散させ、遠心分離を行うことによりゴム質重合体を単離したのち、赤外分光光度計を用いて分析した結果、1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、ゴム質重合体中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。
実施例16〜29および比較例8〜13の結果をまとめたものを表4に示す。
実施例16〜29と比較例8〜13の比較から、本発明の熱可塑性重合体にゴム質含有重合体(C)を添加した実施例16〜29の熱可塑性樹脂組成物は、高度な耐熱性、無色透明性および剛性をを有しながら、更に耐湿熱性にも優れることがわかった。また、実施例16〜29の熱可塑性樹脂組成物のペレットの各々について80℃で15時間真空乾燥し、スクリュウ径25mmの同方向回転2軸押出機(パーカーコーポレーション社製 HK−25D(41D))を用いてスリット間隙0.5mmのTダイ(溶融混練温度は用いた熱可塑性重合体のガラス転移温度+130℃の温度に設定、熱可塑性樹脂組成物の場合、マトリックスである熱可塑性重合体のガラス転移温度+130℃)を介して押出し、引き取りロールの温度を120℃として冷却して、作成した厚さ40μmのフィルムは、何れも、TD方向とMD方向のそれぞれに手で折り曲げても割れず、ゴム質含有重合体(C)を含有することにより、剛性および耐湿熱性を良好に維持しつつ、耐折り曲げ性に優れることがわかった。
本発明の熱可塑性重合体および熱可塑性樹脂組成物を溶融加工して得られる成形品またはフィルムは、前記の優れた特性を生かして、特に光学フィルム等の光学材料を始めとして、電気電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に好適に用いることができる。
(Z) 化学シフト171.8〜172.0ppmの範囲に観測されるピークの高さ
(W) 化学シフト172.7〜172.9ppmの範囲に観測されるピークの高さ
(W) 化学シフト172.7〜172.9ppmの範囲に観測されるピークの高さ
Claims (12)
- ガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性重合体。
- (i)不飽和カルボン酸エステル単位および(ii)不飽和カルボン酸単位を含み、かつ重水素化ピリジン中、25℃で測定した13C−NMRスペクトルにおいて、化学シフト179.15〜179.43ppmの範囲に観測されるピークの積分値(X)と、化学シフト181.12〜181.50ppmの範囲に観測されるピークの積分値(Y)の比である(X)/(Y)の値が、0.21以上であることを特徴とする原共重合体。
- 不飽和カルボン酸エステル単量体および不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物を溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)中で共重合することを特徴とする原共重合体の製造方法であって、前記有機溶媒(A)が脂環式炭化水素を含む有機溶媒、および/または[(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量)/(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量)]×100で算出される仕込みモノマー濃度が17.0%以上であることを特徴とする原共重合体の製造方法。
- 不飽和カルボン酸エステル単量体および不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物を溶解度パラメーターが11.9〜17.6MPa1/2の範囲にある有機溶媒(A)中で、[(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量)/(重合系内に仕込んだ全モノマーの質量+重合系内の有機溶媒(A)の質量)]×100で算出される仕込みモノマー濃度が17.0〜40.0%の範囲で共重合することを特徴とする請求項4に記載の原共重合体の製造方法。
- 請求項5に記載の有機溶媒(A)が脂環式炭化水素を含むことを特徴とする請求項5に記載の原共重合体の製造方法。
- 請求項3に記載の原共重合体または請求項4〜6のいずれか1項に記載の原共重合体の製造方法で得られた原共重合体に(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコール反応による分子内環化反応せしめることにより得られるものであることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性重合体の製造方法。
- 請求項3に記載の原共重合体または請求項4〜6のいずれか1項に記載の原共重合体の製造方法で得られた原共重合体のスラリーを固液分離した後、得られた原共重合体のケークに水および/または有機溶媒を添加し、5〜200℃の温度で洗浄し、該洗浄液から、5〜200℃にて再度固液分離を行った後に、分子内環化反応を行うことを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性重合体の製造方法。
- 洗浄系内気相中の酸素濃度を100000ppm以下として洗浄を行うことを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性重合体の製造方法。
- 請求項1あるいは2に記載の熱可塑性重合体または請求項3に記載の原共重合体に更にゴム質含有重合体(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1あるいは2に記載の熱可塑性重合体、請求項3に記載の原共重合体または請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
- 成形品がフィルムである請求項11記載の成形品。
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JP2007110088A JP2008088401A (ja) | 2006-04-27 | 2007-04-19 | 原共重合体および熱可塑性重合体ならびにそれらの製造方法 |
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WO2014173253A1 (en) * | 2013-04-26 | 2014-10-30 | The Procter & Gamble Company | A glossy container |
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