JP2006265543A - 共重合体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ハンドリング性、熱安定性に優れるカルボキシル基含有アクリル系単量体を含有する共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記、重合工程(I)および洗浄工程(II)の2つの工程を含むことを特徴とする熱可塑性共重合体の製造方法。
(I)重合工程:芳香族基を含有しない有機溶媒であって、かつ、カルボキシル基含有アクリル系単量体およびこれと共重合可能なその他のアクリル系単量体を含む単量体混合物は溶解し、カルボキシル基含有共重合体(A)の溶解度が1g/100g以下である有機溶媒(B)中で前記単量体混合物を共重合し、共重合体スラリーを得る重合工程
(II)洗浄工程:前記重合工程(I)で得られた共重合体スラリーを固液分離した後、水を添加し、50〜120℃の温度で洗浄し、50〜120℃にて再度固液分離を行い、共重合体(A)得る洗浄工程(II)
【選択図】 なし

Description

本発明は、特定の重合溶媒中で精密に制御された共重合組成および分子量分布を有するカルボキシル基含有アクリル系単量体単位を含む共重合体を製造し、引き続いて、特定の溶媒中、特定温度で洗浄操作を実施し、該共重合体をハンドリング性に優れた粒子として取り出す製造方法およびそれにより得られた共重合体を用いて、耐熱性、成形加工特性、無色透明性に優れるグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体を製造する方法に関するものである。
ポリメタクリル酸メチル(以下PMMA樹脂とも言う)や(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合物(AC樹脂とも言う)、ポリスチレン(以下PS樹脂とも言う)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(以下AS樹脂とも言う)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂(以下ABS樹脂とも言う)などは、一般に、工業的に製造される場合には、その大部分が塊状重合、懸濁重合、乳化重合で製造され、ごく一部が溶液重合で製造されている。
塊状重合、懸濁重合、乳化重合は、大量に生産する場合には好都合の製造方法であるが、重合形式から容易に推察されるとおり、共重合組成、分子量分布の制御が困難である場合が多い。さらに言えば、懸濁重合、乳化重合のように、水を媒体とする重合方法では、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有する不飽和単量体を共重合することが困難であり、ポリマーに機能性や他ポリマーとの相溶性を付与することができず、機能性ポリマーとしての展開やポリマーアロイとして物理的な性質、化学的な性質を改善することを困難としていた。さらに、塊状重合、懸濁重合、乳化重合では、重合速度の制御がきわめて難しく、巨大分子量ポリマーの生成を抑制することが困難である。このため、ポリマー中には異物としてこれら巨大分子量ポリマーが混在し、膜や成形物としたとき、この巨大分子量ポリマーを核とする欠点(ブツ、フィッシュアイなど)が発生することがある。したがって、塊状重合、懸濁重合、乳化重合で製造されたポリマーは、透明性、均一性が高度に要求される光学用途では使用が制限されるといった問題点があった。
一方、溶液重合では、共重合組成および分子量分布の制御が比較的容易であり、前記水溶性官能基を有する不飽和単量体の共重合も可能となるが、生成した共重合体を有機溶剤溶液から分離、回収するのがきわめて困難であり、多大な労力とエネルギーが必要になるといった問題点があった。
このような問題点を解決する方法として、沈殿重合で製造される重合体を含有する架橋性光学材料に関する技術が知られている(特許文献1参照)。この特許文献によれば、透明で、高屈折率かつ軽量な架橋性の光学材料が提供できるとされ、沈殿重合が「その前駆体である重合性単量体を溶解するが重合体は溶解しない溶剤に該重合性単量体を溶解し、その溶液を重合することにより、一定の重合度に達した重合体を析出物として回収する重合方法」と定義されている。
しかしながら、特許文献1に具体的に記載された方法を単純にカルボキシル基含有アクリル系単量体を含む単量体混合物の沈殿重合に単に適用するのみでは、必ずしも共重合組成を精密に制御できるものではないことが判明した。
非特許文献1、2には、カルボキシル基含有アクリル系モノマーの共重合に関して、ベンゼンやトルエンといった芳香族基を含有する溶媒を用いた沈殿重合法が開示されている。しかしながら、上記溶媒を用いてカルボキシル基含有アクリル系単量体を含む単量体混合物を共重合する際、単量体混合物中でのカルボキシル基含有アクリル系単量体の二量化が顕著に起こり、部分的に不均一な相を形成することや、溶媒への連鎖移動が避けられないため、生成する共重合体の共重合組成および分子量を精密に制御することが困難であり、とりわけ分子量分布が極端に大きくなるといった問題点があった。
さらに、分散重合法で製造される重合体微粒子の製造方法が知られている(特許文献2参照)が、かかる方法をカルボキシル基含有アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合に単純に適用するのみでは、必ずしも共重合組成を精密に制御できるものではなかった。
以上の通り、従来の製造技術では、機能性ポリマーとしての用途や光学用途などのパフォーマンスの高い用途に適用できる共重合体の製造は困難であった。
特開平8−217824号公報(第1−2頁、実施例) 特開平10−218935号公報(第1−2頁、実施例) Die Angewandte Makromolekuare Chemie 11(1970)p53−62 Journal of Polymer Science:Polymer Letters Edition, Vol.18(1980), p241−248
したがって、本発明の課題は、ハンドリング性、熱安定性に優れるカルボキシル基含有アクリル系単量体を含有する共重合体の製造方法を提供することである。
また本発明の別の課題は高度な耐熱性、無色透明性、熱安定性に優れた成形加工特性を有すると同時に、共重合体中に存在する異物を低減し、光学材料に要求されている高度な無色透明性、低異物を満足するグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体を与え得る上記共重合体の製造方法を提供すること、およびその方法により得られる共重合体を用いた、上記効果を有するグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、カルボキシル基含有アクリル系単位を含有する共重合体を製造するに際し、特定の重合溶媒によって得られた共重合体を特定温度の水中で洗浄することにより、従来の知見では成し得ることができなかった、共重合組成と分子量の精密制御が可能であり、ハンドリング性、成形加工特性、低異物を満足する高品質と、共重合体の溶媒との分離が容易で経済的にも優位なカルボキシル基含有アクリル系単量体単位を含む共重合体を製造可能であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
〔1〕(i)カルボキシル基含有アクリル系単量体およびこれと共重合可能なその他のアクリル系単量体を含む単量体混合物を共重合し、(i)カルボキシル基含有アクリル系単量体単位を含む共重合体(A)を製造するに際し、下記重合工程(I)および洗浄工程(II)の2つの工程を含むことを特徴とする熱可塑性共重合体の製造方法。
(I)重合工程
芳香族基を含有しない有機溶媒であって、カルボキシル基含有アクリル単量体およびこれと共重合可能なその他のアクリル系単量体を含む単量体混合物は溶解し、かつ、(i)カルボキシル基含有アクリル単量体単位を含む共重合体(A)の溶解度が1g/100g以下である有機溶媒(B)中で共重合し、共重合体スラリーを得る重合工程
(II)洗浄工程
前記重合工程(I)で得られた共重合体(A)のスラリーを固液分離した後、得られた共重合体(A)に水を添加し、50〜120℃の温度で洗浄し、該洗浄液から、50〜120℃にて再度固液分離を行い、共重合体(A)得る洗浄工程
〔2〕前記洗浄工程(II)における洗浄液中の共重合体(A)の濃度が1〜50重量%であることを特徴とする前記〔1〕記載の熱可塑性共重合体の製造方法、
〔3〕前記重合工程(I)を、共重合体(A)の溶解度パラメーターと有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値(ΔSP)が、1.0以上である条件下で行うことを特徴とする前記〔1〕または〔2〕記載の共重合体の製造方法、
〔4〕前記重合工程(I)で用いる有機溶媒(B)が、脂肪族炭化水素、カルボン酸エステル、ケトンから選ばれる1種以上であることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の熱可塑性共重合体の製造方法、
〔5〕前記重合工程(I)で用いる有機溶媒(B)が、脂肪族炭化水素およびカルボン酸エステルの混合物であることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕いずれかに記載の熱可塑性共重合体の製造方法、
〔6〕前記重合工程(I)で用いる有機溶媒(B)が、脂肪族炭化水素およびカルボン酸エステルの混合物であり、その重量比が5/95〜70/30であることを特徴とする前記〔5〕記載の熱可塑性共重合体の製造方法、
〔7〕前記共重合体(A)が(i)下記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有アクリル系単量体単位および(ii)下記一般式(2)で表されるアクリル系単量体単位を含む共重合体であることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕いずれかに記載の熱可塑性共重合体の製造方法、
Figure 2006265543
(ただし、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す)
Figure 2006265543
(ただし、Rは水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表し、Rは無置換または水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基および炭素数3〜6の脂環式炭化水素基から選ばれるいずれかを示す)
〔8〕前記共重合体(A)中に、(i)上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有アクリル系単量体単位を15〜50重量%含有する前記〔7〕記載の熱可塑性共重合体の製造方法、
〔9〕前記〔7〕または〔8〕記載の共重合体の製造方法により共重合体(A)を製造(第一工程)した後、引き続いて、該共重合体(A)を加熱処理し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコール反応よる分子内環化反応を行う工程(第二工程)により、(iii)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位および(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を含むグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)を製造することを特徴とするグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体の製造方法、
Figure 2006265543
(ただし、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す)
〔10〕前記第二工程における加熱処理を、連続混練押出装置を用いて行うことを特徴とする前記〔9〕記載のグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体の製造方法、
〔11〕連続混練押出装置が、ケーシング内に、スクリュー部を形成した第1軸および第2軸が並列に配置された二軸スクリュー部、および二軸スクリュー部より延長された第1軸が配置された単軸スクリュー部を有し、かつ前記二軸スクリュー部と単軸スクリュー部の連通部に流量調節機構を備え、前記ケーシングに二軸スクリュー部に連通する原料供給口を備えるとともに、前記延長された第1軸の端部に連通する吐出口を備えた二軸・単軸複合型連続混練押出装置であることを特徴とする前記〔10〕記載のグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体の製造方法。
本発明によれば、カルボキシル基含有アクリル系単量体単位を含む共重合体(A)(以下カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)という場合もある)の分子量分布や組成分布が溶液重合法と同様にコントロール可能であり、異物(不溶不融の巨大分子量ポリマーや、原料モノマーの単独重合体など)の混入を最小限に押さえることが可能であり、さらには、得られる共重合体(A)はハンドリング性に優れるため、光学用途、感光性ポリマー用途などポリマーのクリーン度が要求される分野に好適に適用できる。
また、本発明で製造するカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)を用い、環化反応を行うことにより得られるグルタル酸無水物単位含有共重合体(C)は、高度な耐熱性、無色透明性、熱安定性に優れた成形加工特性を有すると同時に、共重合体中に存在する異物を低減し、光学材料に要求されている高度な無色透明性、低異物を実現することが可能となった。
以下、本発明のカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の製造方法について具体的に説明する。
本発明においてカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)は該共重合体を含む有機溶媒スラリーを製造する重合工程(I)と該スラリーを固液分離し、特定温度の水中で洗浄し、再度固液分離を行い共重合体(A)粒子を得る洗浄工程(II)により製造することができる。
本発明で製造するカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)とは、カルボキシル基含有アクリル系単量体を共重合して得られるものであれば特に制限はなく、該カルボキシル基含有アクリル系単量体は、その他のアクリル系単量体と共重合させることが可能ないずれのカルボキシル基含有アクリル系単量体も使用可能である。好ましいカルボキシル基含有アクリル系単量体としては、下記一般式(4)
Figure 2006265543
(ただし、Rは水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す)
で表される化合物、マレイン酸、及びさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられるが、特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
本発明で使用されるカルボキシル基含有アクリル系単量体と共重合可能なその他のアクリル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシル、トリフルオロエチルメタクリレート、などのアクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルあるいはそれらの(フルオロ)アルキルエステル単量体が例示できる。中でも、光学特性、熱安定性に優れる点で、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルがさらに好ましく、とりわけメタクリル酸メチルが好ましい。これらは単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
また、必要であれば、上記アクリル系単量体以外に、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリルなどの共重合可能なその他のビニル系単量体を使用してもよい。該その他の不飽和単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)は、通常のアクリル重合体の顔料分散性を改善し、ナイロン(以下NYとも言う)、ポリカーボネート(以下PCとも言う)などのポリマーとの相溶性を向上し、機能ポリマーアロイの実現を可能とする。さらには、カルボキシル基を利用した高分子反応により、アクリル重合体に感光性や現像性を付与するために有効な官能基として機能する。また、アクリル重合体の分子内反応を利用し耐熱性の向上や屈折率の調整が可能となる。
カルボキシル基含有アクリル系単量体は、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の酸価が、好ましくは、5〜300mgKOH、より好ましくは5〜250mgKOHとなるような量で共重合されるのが望ましい。
本発明の製造方法における(I)重合工程は、芳香族基を含有しない有機溶媒であって、かつ原料である不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体および不飽和カルボン酸単量体を含む単量体混合物は溶解し、共重合体(A)の溶解度が1g/100g以下である有機溶媒(B)中で、前記単量体混合物を共重合し、共重合体スラリーを得るものである。共重合は、重合開始剤の存在下あるいは非存在下で行うことができる。上記重合工程は、原料であるカルボキシル基含有アクリル系単量体を含む単量体混合物は溶解し、(i)カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の溶解度が1g/100g以下であることを特徴とする有機溶媒(B)を用いることを特徴とするカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)を沈殿させる、いわゆる「沈殿重合法」で行うものである。この場合、重合後のスラリー溶液を濾過および乾燥することにより、該カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)を単離することができる。尚、ここで、「カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の溶解度」とは、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の有機溶媒(B)100gに対する、23℃で24時間、攪拌した後の溶解量を意味する。
本発明に使用される有機溶媒(B)としては、前述の沈殿重合法を可能とし、さらに芳香族を含まないことが必要である。具体的には、脂肪族炭化水素、カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、アルコール類から選ばれる1種以上などを挙げることができる。中でも、脂肪族炭化水素、カルボン酸エステル、ケトンから選ばれる1種以上が好ましい。特に、脂肪族炭化水素、カルボン酸エステルから選ばれる1種以上が好ましい。
本発明に使用される脂肪族炭化水素としては、炭素数が5〜10の直鎖状炭化水素、側鎖を有する脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素を挙げることができる。具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカンおよびそれらの種々の異性体を挙げることができる。
本発明に好ましく使用されるカルボン酸エステルとしては、飽和脂肪族カルボン酸および飽和アルコールからなるエステルが挙げることができ、飽和カルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などを、また飽和アルコールとしては炭素数1〜10で直鎖状および分岐状のものを挙げることができる。好ましいカルボン酸エステルとしては、ギ酸−n−プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸−n−ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸−n−ペンチル、ギ酸−n−ヘキシル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−n−ペンチル、酢酸−n−ヘキシル、酢酸−n−ヘプチル、酢酸−n−オクチル、酢酸−n−ノニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸−n−ペンチル、プロピオン酸−n−ヘキシル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸−n−ブチル、酪酸イソブチル、酪酸−n−ペンチル、酪酸−n−ヘキシルなどの種々の異性体を挙げることができる。
本発明に使用されるケトンとしては、炭素数1〜10で直鎖状および分岐状の飽和脂肪族基からなるケトンであり、具体例としては、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトンなどを挙げることができる。
中でも、本発明では、脂肪族炭化水素およびカルボン酸エステルの混合物が好ましく使用することができる。この場合、脂肪族炭化水素とカルボン酸エステルの好ましい混合比は、特に制限はないが、重量比で5/95〜70/30の範囲が好ましく、10/90〜50/50の範囲がより好ましく、とりわけ20/80〜40/60の範囲が好ましい。混合比が5/95より小さいと、重合中に生成した共重合体が反応槽へ固着する傾向が見られる。また、混合比が70/30より大きいと、共重合組成を精密に制御しにくくなる傾向が見られる。
なお、本発明の製造方法において沈殿重合する際、その重合反応系に水を用いると共重合組成を精密に制御しにくくなる場合があり、水は共重合組成の制御が可能な範囲にとどめるべきであり、有機溶媒等重合反応系に用いる成分が不純物として水を極く少量含む場合を除き、水は積極的に添加しないことが最も好ましい。
重合温度については、任意に設定することが可能であるが、好ましくは使用する有機溶媒の沸点以下の温度が好ましい。中でも、100℃以下の重合温度で重合することが好ましく、90℃以下の重合温度で重合することことがより好ましい。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、通常50℃以上、好ましくは60℃以上である。また重合時間は、必要な重合率を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から60〜360分間の範囲が好ましく、90〜240分間の範囲が特に好ましい。
また、重合液中の溶存酸素濃度を5ppm以下に制御することが、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の熱安定性を向上させる点で好ましい。さらに好ましい溶存酸素濃度の範囲は0.01〜3ppmであり、さらに好ましくは0.01〜1ppmである。ここで、本発明における、溶存酸素濃度は、重合液中の溶存酸素を溶存酸素計(例えばガルバニ式酸素センサである飯島電子工業株式会社製、DOメーターB−505)を用いて測定した値である。溶存酸素濃度を5ppm以下にする方法については、重合容器中に窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを通じる方法、重合液に直接不活性ガスをバブリングする方法、重合開始前に不活性ガスを重合容器に加圧充填した後、放圧を行う操作を1回若しくは2回以上行う方法、単量体混合物を仕込む前に密閉重合容器内を脱気した後、不活性ガスを充填する方法、重合容器中に不活性ガスを通じる方法を例示することができる。
カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の製造時に用いられるこれらの単量体混合物の好ましい割合は、該単量体混合物を100重量%として、カルボキシル基含有アクリル系単量体が15〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%である。カルボキシル基含有アクリル系単量体の共重合量が15重量%未満の場合には、共重合による改質や、高分子反応他への展開が困難となる場合がある。カルボキシル基含有アクリル系単量体の共重合量が50重量%を超える場合には、共重合組成のコントロールや、分子量分布のコントロールが所望するものからはずれやすくなる傾向にある。また、高分子反応を実施し感光性樹脂として使用することを考えた場合、顔料との間で親和性や水素結合性などが強くなりすぎ、顔料のシーディング(凝集)が起こりやすくなる場合がある。また、露光部、未露光部の現像液に対する感度差が小さくなり、微細で明瞭な現像パターンが形成され難くなる傾向にある。
また、これらの単量体混合物は、有機溶媒中に一括で仕込んで共重合しても良く、分割添加、逐次添加しながら共重合しても良い。より好ましくは、生成するカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)を構成する単量体単位の組成分布を低減する目的で、単量体混合物中の重量組成比を任意に設定して、分割添加あるいは逐次添加する方法が挙げられる。
共重合は重合開始剤の存在下あるいは非存在下で行うことができるが、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤を使用することが好ましく、ラジカル重合開始剤としては、通常使用されるあらゆる開始剤が使用できるが、中でも、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどのアゾ系化合物、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が好適に使用することができる。
使用される重合開始剤の量は、共重合に用いられる単量体混合物100重量部に対して、0.001〜2.0重量部が好ましく、とりわけ0.01〜1.0重量部が好ましい。
また、本発明においては、分子量を制御する目的で、アルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤を添加することができる。
本発明においては、容易にカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)を沈殿・析出させるため、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)と有機溶媒(B)に対する溶解度のバランスを考慮する必要がある。その観点から、各成分の溶解度パラメーターを考慮し、共重合種、共重合組成、反応溶媒等重合条件の設計を行うことが好ましい。
カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の溶解度パラメーターδpは、7.0〜12.0の範囲にあることが好ましく、7.5〜10.5であることがより好ましい。δpが7.0未満の場合には、耐ガソリン性や耐油性が劣るものとなり、実用上多くの制限を受ける場合がある。δpが12.0を超える場合には、ポリマーの凝集力が強くなりすぎ、成形品に加工したり、溶解して使用する際に粘度が高くなりすぎて取り扱い性が悪化する傾向にある。
ここで言う溶解度パラメーターは、「塗料用合成樹脂入門」、北岡協三著、p23−p31、高分子刊行会(1986)、表2−8、表2−9を参考に、Smallの方法で算出したものである。
すなわち、smallの方法により与えられた特定の原子及び原子団の凝集エネルギー定数F(cal1/2cc1/2/mol)、密度をs(g/cc)、基本分子量をMとし、δ=(sΣF)/Mで算出される値を溶解度パラメーターδとする。なお、本発明において凝集エネルギーFはsmallの数値を用いるものとする。
(1)単量体の溶解度パラメーター
一例として、メタクリル酸メチル(密度 0.944 g/cc)の算出例を示す。
メタクリル酸メチルを構成する各成分のFは
Figure 2006265543
となる。したがって、メタクリル酸メチルの溶解度パラメーターδmは、
δm=0.944×947÷100=8.94
となる。
本算出方法により求めた代表的な単量体の溶解度パラメーターは
Figure 2006265543
である。
(2)カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の溶解度パラメーターδp
本発明では、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の溶解度パラメーターδpを以下の式に従い算出した。すなわち、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)中の各単量体のモル分率Xi(%)、各単量体の溶解度パラメーターδiから、下記式により、算出されるものである。
δp=Σ(δi × Xi/100)
従って、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の溶解度パラメーターδpを上記範囲にするためには、使用する単量体の溶解度パラメーターを考慮して組成を調整すればよい。
(3)有機溶媒(B)の溶解度パラメーターδs
有機溶媒(B)の溶解度パラメーターδsは、前記カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の溶解度パラメーターδpの算出方法と同様にして求められる。n−ヘプタンの例を以下に示す。
Figure 2006265543
δs=0.676×1093÷100=7.39
また、有機溶媒(B)が2種類以上の混合物である場合の溶解度パラメーターδsは、混合有機溶媒中の各溶媒成分のモル分率Xi(%)、各溶媒成分の溶解度パラメーターδiから、下記式により算出されるものである。
δp=Σ(δi × Xi/100)
本発明においては、カルボキシル基含有アクリル系単量体を共重合する際、上記のカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の溶解度パラメーターと有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値(ΔSP)が、1.0以上となるような共重合組成、溶媒種を選択することが好ましい。より好ましくは1.1以上であり、特に1.2以上の条件で重合を行うことが、重合中の重合槽壁面への付着がなく、さらに生成する共重合体を粉体として容易に取り出す上で好ましい。また、上記のΔSPが1.0〜1.9の範囲、より好ましくは、1.2〜1.8の範囲、さらに好ましくは1.5〜1.7の範囲で重合条件を設計することにより、重合開始前の仕込み単量体混合物組成と生成する共重合体の共重合組成に大きなずれを生じさせない精密な制御を行うこと、および分子量分布のより狭い、均一性の高い分子量制御を行うことができる点でより望ましい。
本発明においては、(I)重合工程において得られた、特定の重合溶媒で重合したカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)を含む有機溶媒スラリー(以下共重合体(A)スラリーと呼ぶ)を、以下の(II)洗浄工程において精製することが必要である。すなわち、前記重合工程(I)で得られた共重合体(A)のスラリーを固液分離(以下、第一ろ過と呼ぶ)した後、得られた共重合体(A)に水を添加し、50〜120℃の温度で洗浄し、該洗浄液から、50〜120℃にて再度固液分離(以下、第二ろ過と呼ぶ)を行い、共重合体(A)得る洗浄工程である。このような(II)洗浄工程を経ることにより揮発成分が少なく、ハンドリング性に優れる共重合体(A)粒子を得ることができ、さらには、第二工程を経て得られる熱可塑性共重合体(B)の熱安定性および無色透明性を大幅に向上させる効果が発現するのである
第一ろ過における共重合体(A)スラリーの固液分離の方法については、特に制限はなく、通常の遠心分離機、加圧ろ過機、吸引ろ過機、ベルトフィルターなどを好ましく用いることにより、共重合体ケークを得ることができる。固液分離後の共重合体ケーク中の揮発分含有量は、特に制限はなく、通常50〜90重量%である。
次に、第一ろ過によって分離・分別されて得られた共重合体(A)のケークに水を添加し、攪拌下加熱することにより、共重合体(A)を洗浄するとともに、ポリマー粒子を凝集させる。洗浄時に添加する水の量は前記第一ろ過で得られたケーク100重量部に対して、200〜2,000重量部であり、好ましくは200〜1,000重量部、最も好ましくは200〜600重量部である。水の添加量が200重量部以下の場合、十分な洗浄効果が得られないだけでなく、粒子の凝集が不十分となり、ハンドリング性が低下し好ましくない。水の添加量が2,000重量部を超える場合、廃水処理負荷が大きくなるため、好ましくない。
第一ろ過によって得られた共重合体ケークと水の比率を上記範囲とすることにより、洗浄液中の共重合体(A)の濃度を0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%とすることができる。ここで、洗浄液中の共重合体(A)の濃度は以下のように計算される。
洗浄液中の共重合体(A)の濃度(重量%)
=100×(1−α/100)×(共重合体ケーク量(重量部))/(共重合体ケーク量(重量部)+水添加量(重量部))。
α:共重合体ケークの揮発分含有量(重量%)
なお、共重合体ケーク中の揮発分含有量(重量%)は該ケークを真空乾燥機中、80℃にて12時間加熱した時の重量変化より、下式にて算出した値である。
共重合体ケーク中の揮発分含有量(重量%)=重量減少率(%)=[(加熱処理前重量−加熱処理後重量)/加熱処理前重量]×100。
また、本発明においては、洗浄時に、共重合体(A)の濃度が上記を満たす範囲において、共重合体(A)を溶解しない溶媒を添加しても良い。
本発明においては、洗浄温度および、それに続く第二ろ過温度を50〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは60〜90℃の範囲で行う。洗浄温度および第二ろ過温度が50℃未満の温度の場合は、洗浄効果が十分でなく、得られる共重合体(A)の熱安定性が低下する傾向にあり、好ましくない。また、粒子の凝集が不十分であるため、得られる共重合体(A)が微粉末状となり、ハンドリング性に劣る傾向にある。また、120℃を越える場合、共重合体粒子同士が合着し、塊状となるため、粒子としての取り出しが困難となり、いずれの場合も、本発明の目的を達成できない。
上記洗浄操作を実施する装置については、洗浄温度を上記範囲内に制御できるものであれば、特に制限はなく、通常の攪拌機を備えたオートクレーブ等を使用することができる。なお、洗浄に際しては共重合体(A)のスラリー及び/またはそれに添加する水を予熱しておくことも可能である。
上記洗浄操作により得られた水スラリーの固液分離(第二ろ過)の方法については、上記温度にてろ過が可能なものであれば、特に制限はなく、通常の遠心分離機、加圧ろ過機、吸引ろ過機、ベルトフィルターなどを好ましく用いることができる。本発明の洗浄方法を実施することにより、第二ろ過後の共重合体の揮発分含有量を10〜80重量%、好ましくは20〜50重量%することができ、その後の乾燥工程の負荷を低減することが可能となる。
さらに必要であれば、上記洗浄操作によって得られた水および有機溶媒(B)を数%程度含有するカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)ケークを棚段式乾燥機、コニカルドライヤー、遠心式乾燥機などにより乾燥することにより、有機溶媒(B)を含有しないカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)を製造することも可能である。
かくして得られる本発明で製造するカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の数平均粒子径は、150μm以上、50,000μm以下であり、好ましい態様においては、数平均粒子径は、150μm以上、10,000μm以下であり、より好ましい態様においては、数平均粒子径は250μm以上、10,000μm以下である。上記の範囲にある数平均粒子径を有するカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)粒子は、ハンドリング性に優れる傾向にあり、また、粒子の残存揮発成分が低減することから、好ましく使用することができる。尚、ここで言う数平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、150倍または1万倍で観察し、1次粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径を表す。
また、本発明で得られるカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)は、前記好ましい態様の製造方法において、重量平均分子量(以下Mwとも言う)が2,000〜1,000,000範囲にあるものを得ることができ、より好ましい様態においては、5,000〜500,000の範囲にあるものを得ることが可能である。Mwが2,000未満の場合には、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)を有機溶媒(B)中に分散質として沈殿、析出できない場合があり、本発明の目的に沿わないことがある。また、重合体が脆く、機械的な性質が劣悪になる傾向にある。Mwが1,000,000を超える場合には、溶融成形や溶液塗工した製品に十分に溶融、または溶解しない高分子量物が異物として残りやすくなる傾向にありフィッシュアイやハジキの欠点が出やすくなる傾向にある。
特に本発明のカルボキシルキ含有アクリル共重合体(A)を後述する分子内環化反応によりグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)を製造する場合には、グルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体の流動性および機械特性の観点から、Mwの上限は90000であることがより好ましく、更に好ましくは上限が80000であり、特に好ましくは上限が70000である。また、Mwの下限は、耐衝撃性と溶融滞留安定性の観点から3000であることがより好ましく、更に好ましくは5000であり、特に好ましくは10000である。尚、本発明でいう重量平均分子量とは、多角度光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC−MALLS)で測定した絶対分子量での重量平均分子量を示す。本発明のカルボキシルキ含有アクリル共重合体(A)の分子量を上記好ましい範囲に制御する方法は、前述の通り、アルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤を添加する方法を好適に用いることができる。これら連鎖移動剤の中でもアルキルメルカプタンを好適に用いることができ、さらにはアルキルメルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等が挙げられる。また、最も好ましい態様においては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンが用いられる。これらアルキルメルカプタンの添加量としては、好ましい分子量に制御するために、単量体混合物の全量100重量部に対して、0.2〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.3〜4.0重量部、さらに好ましくは0.4〜3.0重量部である。
また、本発明では、特定の共重合組成、溶媒種を選択することにより、均質な分子量分布を有するカルボキシル基含有アクリル共重合体が得られる。カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、前記好ましい態様の製造方法によれば、1.5〜5.0の範囲にあるものを得ることができ、より好ましい態様においては、1.7〜4.0の範囲にあるものを得ることができ、とりわけ好ましい態様においては、2.0〜3.5の範囲の範囲にあるものを得ることが可能である。このような分子量分布を有するカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)は、成形加工性に優れる傾向があり、好ましく使用することができる。
また、本発明においては、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)が、下記一般式(1)で表される(i)カルボキシル基含有アクリル系単位および(ii)下記一般式(2)で表されるアクリル系単量体単位を含む共重合体(A)である場合、続いて、かかる共重合体(A)を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し(イ)脱水及び/又は(ロ)脱アルコールによる分子内環化反応を行わせる工程(第二工程)を経ることにより、無色透明性と熱安定性に優れるグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)を製造することが可能であることを見出した。
Figure 2006265543
(上記式中、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す)
Figure 2006265543
(ただし、Rは水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表し、Rは無置換または水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基および炭素数3〜6の脂環式炭化水素基から選ばれるいずれかを示す)。
なお、前記一般式(1)で表される(i)カルボキシル基含有アクリル系単位は下記一般式(4)でで表されるカルボキシル基含有アクリル系単量体を共重合することにより得られる。
Figure 2006265543
(上記式中、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す)。
また、前記(2)で表されるアクリル系単量体単位は下記一般式(5)で表されるアクリル系単量体を共重合することにより得ることができる。
Figure 2006265543
(ただし、Rは水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表し、Rは無置換または水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基および炭素数3〜6の脂環式炭化水素基から選ばれるいずれかを示す)。
本発明におけるグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)とは、(iii)下記一般式(3)で表されるグルタル酸無水物単位および(ii)上記一般式(2)で表されるアクリル系単量体単位を含む熱可塑性共重合体であり、これらは一種または二種以上で用いることができる。
Figure 2006265543
(上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す)
この場合、典型的には、共重合体(A)を加熱することにより2単位の(i)カルボキシル基含有アクリル系単量体単位のカルボキシル基が脱水され、あるいは、隣接する(i)カルボキシル基含有アクリル系単量体単位と(ii)アクリル系単量体単位からアルコールの脱離により1単位の前記グルタル酸無水物単位が生成される。
本発明における第二工程、すなわち共重合体(A)を加熱し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応を行いグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性共重合体を製造する方法は、特に制限はないが、ベントを有する加熱した押出機に通して製造する方法や窒素気流中などの不活性ガス雰囲気で、または真空下で加熱脱揮できる装置内で製造する方法が好ましい。中でも、酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、十分に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。特に好ましい装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機などを用いることができ、とりわけ二軸押出機を好ましく使用することができる。
なお、上記の方法により加熱脱揮する温度は、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜320℃の範囲、特に200〜310℃の範囲が好ましい。
また、この際の加熱脱揮する時間も特に限定されず、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間、好ましくは2分間〜30分間、とりわけ3〜20分間の範囲が好ましい。特に、押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機のスクリュー直径(D)とスクリューの長さ(L)の比(L/D)が40以上であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位が多量に残存するため、加熱成形加工時に反応が再進行し、成形品にシルバーや気泡が見られる傾向や成形滞留時に色調が大幅に悪化する傾向がある。
また、押出機の中でも、二軸・単軸複合型連続混練押出機を用いることにより、極めて無色透明性、機械特性に優れる熱可塑性共重合体が得られる傾向があるため、好ましく使用することができる。ここで、二軸・単軸複合型連続混練押出機とは、押出機ケーシング内に、スクリュー部を形成した第1軸および第2軸が並列に配置された二軸スクリュー部、および二軸スクリュー部より延長された第1軸が配置された単軸スクリュー部を有し、かつ前記二軸スクリュー部と単軸スクリュー部の連通部に流量調節機構を備え、前記ケーシングに二軸スクリュー部に連通する原料供給口を備えるとともに、前記延長された第1軸の端部に連通する吐出口を備えた二軸・単軸複合型連続混練押出機を言い、市販されているこのタイプの押出機としては、CTE社製の「HTM型押出機」が挙げられる。原料となる共重合体(A)を、連続式で加熱処理し環化反応を進行させる際、反応の進行に従い、溶融粘度が高くなることに起因し、押出装置のせん断による発熱が大きくなり、分子主鎖の熱分解による着色が大きくなる傾向が見られる。また、該せん断発熱は、単軸スクリューよりも二軸スクリューで溶融混練した場合に大きくなる。一方、反応速度の観点からは、二軸スクリューで溶融混練することが好ましい。以上のことから、特定の二軸・単軸複合型連続混練押出機を用いることにより、溶融粘度が比較的低い反応初期段階では、二軸スクリューで、十分な反応速度を確保しながら、溶融粘度が比較的高くなる反応後期段階では、せん断発熱を抑制した単軸スクリュー部で加熱処理することにより、分子主鎖の熱分解が抑制されるため、得られるグルタル酸無水物含有単位を含有するグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)は特に色調、機械特性に優れるものと推察される。
押出機を用いて共重合体(A)を加熱する際の押出機のシリンダー温度は200〜320℃に設定することが好ましく、220〜310℃に設定することが好ましい。
さらに本発明では、共重合体(A)を上記方法等により加熱する際にグルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は特に制限はなく、共重合体(A)100重量部に対し、0.01〜1重量部程度が適当である。また、これら酸、アルカリ、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩、各種アルキルアンモニウム塩を含むアンモニウム塩等が挙げられる。ただし、その触媒保有の色が熱可塑性共重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。中でも、アルカリ金属を含有する化合物(アルカリ金属化合物)が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムを好ましく使用することができる。
本発明で製造するグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)中の前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位の含有量は、特に制限はないが、好ましくは熱可塑性共重合体100重量%中に好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜50重量%、更に好ましくは25〜50重量%、とりわけ30〜45重量%が好ましい。
また、本発明で製造するグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体における各成分単位の定量には、一般に赤外分光光度計やプロトン核磁気共鳴(H−NMR)測定機が用いられる。赤外分光法では、グルタル酸無水物単位は、1800cm−1及び1760cm−1の吸収が特徴的であり、不飽和カルボン酸単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単位から区別することができる。また、H−NMR法では、例えば、グルタル酸無水物単位、メタクリル酸、メタクリル酸メチルからなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中でのスペクトルの帰属を、0.5〜1.5ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素と、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。また、上記に加えて、他の共重合成分として、スチレンを含有する場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
また、本発明で製造するグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)には、上記(i)および(ii)成分の他にカルボキシル基含有アクリル系単量体単位および/または、共重合可能な他のビニル系単量体単位を含有することができる。
本発明においては、共重合体(A)の(イ)脱水及び/又は(ロ)脱アルコール反応を十分に行うことにより熱可塑性共重合体中に含有されるカルボキシル基含有アクリル系単量体単位量は10重量%以下、すなわち0〜10重量%とすることが好ましく、より好ましくは0〜5重量%である。カルボキシル基含有アクリル系単量体単位が10重量%を超える場合には、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、共重合可能な他のビニル系単量体単位量は0〜35重量%であることが好ましいが、より好ましくは10重量%以下、すなわち0〜10重量%であり、さらに好ましくは0〜5重量%である。特に、スチレンなどの芳香族ビニル系単量体単位を含有する場合、含有量が多すぎると、無色透明性、光学等方性、耐薬品性が低下する傾向がある。
また、本発明の熱可塑性重合体(C)は、重量平均分子量(以下Mwとも呼ぶことがある)が、好ましくは2000〜1000000であり、より好ましくは2000〜200000であるが、本発明の共重合体フィルムを溶融製膜により効果的に作製する観点と、流動性の観点から、Mwの上限としては90000であることがより好ましく、更に好ましくは上限が80000であり、特に好ましくは上限が70000である。また、Mwの下限は、耐衝撃性と溶融滞留安定性の観点から3000であることがより好ましく、更に好ましくは5000であり、特に好ましくは10000である。
なお、本発明でいう重量平均分子量とは、多角度光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC−MALLS)で測定した絶対分子量での重量平均分子量を示す。
かくして得られるグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)は、ガラス転移温度が120℃以上と優れた耐熱性を有し、実用耐熱性の面で好ましい。また、好ましい態様においてはガラス転移温度が130℃以上の極めて優れた耐熱性を有する。また、上限としては、通常160℃程度である。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて昇温速度20℃/分で測定したガラス転移温度である。
また、本発明の製造方法により製造されるグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)は、好ましい態様において、黄色度(Yellowness Index)の値が3以下と着色が抑制され、さらに好ましい態様においては2以下と極めて高度な無色透明性を有する。上記において黄色度はガラス転移温度+140℃で射出成形した厚さ1mm成形品のYI値をJIS−K7103に従い、測定した値である。黄色度の下限は、特に制限はなく、低いほど好ましいが、通常1程度である。
さらに、本発明のグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)の製造時には、本発明の目的を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、その添加剤保有の色が本発明で製造するグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。
本発明により製造されたグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)は、その優れた耐熱性、無色透明性および滞留安定性を活かして、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
本発明により製造されたグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体(C)からなる成形品の具体的用途としては、例えば、電気機器のハウジング、OA機器のハウジング、各種カバー、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルターおよび点火装置ケースなどが挙げられる。また、透明性、耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品として、カメラ、VTR、プロジェクションTVなどの撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなど、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクターなど、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導光フィルム、カバーなど、自動車などの輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージングなど、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セルなど、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、バスタブ用材料などにも適用することができ、これら各種の用途にとって極めて有用である。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、各測定および評価は次の方法で行った。
(1)重量平均分子量・分子量分布
得られた共重合体をテトラヒドロフランに溶解して、測定サンプルとした。テトラヒドロフランを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて、重量平均分子量(絶対分子量)、数平均分子量(絶対分子量)を測定した。分子量分布は、重量平均分子量(絶対分子量)/数平均分子量(絶対分子量)で算出した。
(2)各成分組成
重ジメチルスルフォキシド中、30℃でH−NMRを測定し、各共重合単位の組成決定を行った。
(3)溶解度パラメータ差(ΔSP値)
「塗料用合成樹脂入門」、北岡協三著、p23−p31、高分子刊行会(1986)、表2−8、表2−9を参考に、Smallの方法で、下記(a)、(b)に従い、共重合体(A)の溶解度パラメーターδpおよび有機溶媒(B)の溶解度パラメーターδs算出し、その差の絶対値を溶解度パラメータ差として求めた。
(a)共重合体(A)の溶解度パラメーターδp
共重合体(A)中の各単量体単位のモル分率Xi、各単量体の溶解度パラメーターδiから、下記式により、算出した。
δp=Σ(δi × Xi/100)
(b)有機溶媒(B)の溶解度パラメーターδs
前記共重合体(A)の溶解度パラメーターδpの算出方法と同様にして算出した。また、有機溶媒(B)が2種類以上の混合物である場合の溶解度パラメーターδsは、混合有機溶媒中の各溶媒成分のモル分率Xi(%)、各溶媒成分の溶解度パラメーターδiから、下記式により算出した。
δp=Σ(δi × Xi/100)
(4)溶解度
得られた共重合体(A)を共重合に使用した有機溶媒(B)100gに添加し、23℃で24時間攪拌して溶解試験を行った後の溶液状態を目視観察し、溶解する共重合体(A)の重量を評価した。
(5)ケーク中の揮発分含有量
第一ろ過の共重合体ケークおよび第二ろ過後の共重合体ケークをそれぞれ真空乾燥機中80℃にて12時間加熱した時の重量変化を測定し、下式より算出した重量減少率を揮発分含有量として評価した。
共重合体ケーク中の揮発分含有量(重量%)
=重量減少率(重量%)=[(加熱処理前重量−加熱処理後重量)/加熱処理前重量]×100。
(6)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。
(7)透明性(全光線透過率、ヘイズ)
得られた熱可塑性共重合体を、ガラス転移温度+140℃で射出成形し、得た厚さ1mm成形品の23℃での全光線透過率(%)、ヘイズ(曇度)(%)を東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて測定し、透明性を評価した。
(8)黄色度(Yellowness Index(YI値))
得られた熱可塑性共重合体を、ガラス転移温度+140℃で射出成形し、得た厚さ1mm成形品のYI値をJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
(9)滞留時のガス発生量
得られた熱可塑性共重合体ペレットを80℃で12時間予備乾燥し、280℃に温調した加熱炉内で15分間加熱処理した前後での重量を測定し、下式により算出した重量減少率を滞留時の発生ガス量として評価した。
重量減少率(%)=[(加熱処理前重量−加熱処理後重量)/加熱処理前重量]×100。
共重合体(A)の製造(第一工程)
(a)重合工程:共重合体スラリー(a−1)〜(a−8)の合成
製造例1:共重合体スラリー(a−1)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記混合物質を供給し、250rpmで撹拌しながら、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点を重合開始とし、内温を80℃に90分間保ち、95℃に昇温した後、さらに90分間保ち、重合を終了し、共重合体スラリー(a−1)を得た。
重合は、重合初期から共重合体が分散質としてスラリー状に分散した不均一系で、重合槽壁面への付着なども見られず、良好に重合が進行した。重合率は75%であった。
得られたスラリー少量を定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過し、80℃で12時間乾燥を行い、パウダー状の共重合体(a’−1)を得た。得られた共重合体(a’−1)を走査型電子顕微鏡(以下SEMとも言う)を用い、1万倍で観察し、1次粒子径を画像解析(使用ソフト:Scion Corporation社製画像解析ソフト「Scion Image」)して算出した結果、数平均粒子径が2.0μmであった。また、GPC測定によるMwは150,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.49であった。共重合体(a’−1)の共重合組成はメタクリル酸メチル単位(MMA)/メタクリル酸単位(MAA)(重量比)=72/28であった。尚、共重合体(a’−1)(δp=9.21)と有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSPは、1.82であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
n−ヘプタン 900重量部
ラウロリルパーオキサイド 0.8重量部。
製造例2:共重合体スラリー(a−2)
重合溶媒を酢酸ブチル(δs=7.60)に変更した以外は、(a−1)と同様の製造方法で共重合体スラリー(a−2)を得た。重合率は77%であった。(a−1)と同様に吸引ろ過して得られた共重合体(a’−2)はSEM観察の結果、数平均粒子径が8.0μmであった。Mwは120,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.19であった。共重合体(a’−2)の共重合組成はMMA/MAA(重量比)=72/28であった。尚、共重合体(a’−2)(δp=9.20)と有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSPは、1.60であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 900重量部
ラウロリルパーオキサイド 0.8重量部。
製造例3:共重合体スラリー(a−3)
連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン1.0重量部を添加した以外は、(a−2)と同様の製造方法で共重合体スラリー(a−3)を得た、重合率は70%であった。得られた共重合体(a‘−3)はSEM観察の結果、数平均粒子径が8.0μmであった。Mwは68000、分子量分布(Mw/Mn)は3.11であった。共重合体(a’−2)の共重合組成はMMA/MAA(重量比)=72/28であった。尚、共重合体(a’−3)(δp=9.20)と有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSPは、1.60であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
酢酸ブチル 900重量部
ラウロリルパーオキサイド 0.8重量部、
n−ドデシルメルカプタン 1.0重量部。
製造例4:共重合体スラリー(a−4)
重合溶媒をn−ヘプタン25重量%および酢酸ブチル75重量%の混合物(δs=7.55)に変更した以外は、(a−1)と同様の製造方法で共重合体(a−4)を得た。得られた共重合体(a’−4)はSEM観察の結果、数平均粒子径が5.5μmであった。重合率は77%であった。Mwは120,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.11であった。共重合体(A−4)の共重合組成はMMA/MAA(重量比)=72/28であった。尚、共重合体(A−4)(δp=9.20)と有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSPは、1.65であった。
メタクリル酸 25重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
n−ヘプタン 225重量部
酢酸ブチル 675重量部
ラウロリルパーオキサイド 0.8重量部。
製造例5:共重合体スラリー(a−5)
容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、下記(イ)の混合物質を供給して、250rpmで撹拌しながら溶解し、系内を10L/分の窒素ガスで15分間バブリングした。次に、窒素ガスを5L/分の流量でフローし、反応系を撹拌しながら95℃に昇温した。下記(ロ)の混合物質を40分間で逐次添加し、さらに60分間保った後、重合を終了し、共重合体スラリー(a−5)を得た。重合率は62%であった。得られたスラリー少量を定性濾紙No.1を用いて吸引ろ過し、80℃で12時間乾燥を行い、パウダー状の共重合体(a’−5)を得た。得られた共重合体(a’−5)はSEM観察の結果、数平均粒子径が5.0μmであった。Mwは、120,000、分子量分布(Mw/Mn)は、3.03であった。共重合体(A−5)の共重合組成はMMA/MAA(重量比)=72/28であった。尚、共重合体(A−5)(δp=9.20)と有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSPは、1.65であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 20重量部、
メタクリル酸メチル 80重量部、
n−ヘプタン 175重量部、
酢酸ブチル 525重量部、
混合物質(ロ):
n−ヘプタン 25重量部、
酢酸ブチル 75重量部、
ラウロリルパーオキサイド 0.8重量部。
製造例6:共重合体スラリー(a−6)
連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン1.0重量部を添加し、下記に示す単量体混合物質(イ)および開始剤混合物質(ロ)を(a−5)と同様の製造方法にて重合し、共重合体スラリー(a−6)を得た。重合率は60%であった。得られた共重合体(a‘−6)はSEM観察の結果、数平均粒子径が5.5μmであった。Mwは65000、分子量分布(Mw/Mn)は3.01であった。共重合体(a’−6)の共重合組成はMMA/MAA(重量比)=72/28であった。尚、共重合体(a’−6)(δp=9.20)と有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSPは、1.60であった。
混合物質(イ):
メタクリル酸 20重量部、
メタクリル酸メチル 80重量部、
n−ヘプタン 129重量部、
酢酸ブチル 388重量部、
混合物質(ロ):
n−ヘプタン 12.5重量部、
酢酸ブチル 37.5重量部、
ラウロリルパーオキサイド 0.8重量部、
n−ドデシルメルカプタン 1.0重量部。
製造例7:共重合体スラリー(a−7)
窒素ガス導入管、温度計、攪拌機を有する重合装置に有機溶媒としてトルエン(δs=8.29)を仕込み、次いで、撹拌しながらMMAとMAA(MMA/MAA(重量比)=73/27)の混合モノマーをモノマー濃度が10重量%となるように仕込んだ。さらに、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイドをモノマーに対し0.8重量%の濃度となるよう仕込み、90℃に昇温して6時間重合を行った。重合初期から溶媒不溶の膨潤・ゲル状物が生成し、攪拌不能となったため、重合反応を完結することができなかった。生成した膨潤・ゲル状ポリマー(a’−7)を各種分析した結果、Mwは150、000、分子量分布(Mw/Mn)は6.88、共重合組成はMMA/MAA(重量比)=65/35であった。尚、共重合体(a’−7)(δp=9.23)と有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSPは、0.94であった。
製造例8:共重合体スラリー(a−8)
窒素ガス導入管、温度計、攪拌機を有する重合装置に有機溶媒としてベンゼン(δs=8.29)を仕込み、次いで、撹拌しながらMMAとMAA(MMA/MAA(重量比)=73/27)の混合モノマーをモノマー濃度が10重量%となるように仕込んだ。さらに、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイドをモノマーに対し0.8重量%の濃度となるよう仕込み、90℃に昇温して6時間重合を行った。製造例5と同様に重合初期から溶媒不溶の膨潤・ゲル状物が生成し、攪拌不能となったため、重合反応を完結することができなかった。生成した膨潤・ゲル状ポリマー(a’−8)を各種分析した結果、Mwは150,000、分子量分布(Mw/Mn)は6.56、共重合組成はMMA/MAA(重量比)=65/35であった。尚、共重合体(a’−8)(δp=9.23)と有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSPは、0.94であった。
製造例1〜6の重合結果を纏めたものを表4に示す。尚、表中の粒子形成性について、重合中に共重合体粒子の塊状化がなく、重合終了後、共重合体(A)が固体として、スラリー状で溶媒中に分散し、遠心分離操作により、容易に粉体として取り出せるものを○、それ以外の重合終了後の状態が膨潤・ゲル状物であるものについては×で記載した。
Figure 2006265543
製造例1〜4、および製造例5、6の比較から、本発明で用いる特定の溶媒を用いることにより、重合開始前の仕込み単量体混合物組成と生成する共重合体の共重合組成に大きなずれを生じさせない精密な共重合組成制御および分子量分布のより狭い、均一性の高い分子量制御を行うことができることがわかる。
(b)洗浄工程
実施例1〜11および比較例1〜3;共重合体(A)の製造
実施例1:(A−1)
製造例1で得られた共重合体スラリー(a−1)を加圧ろ過機(三菱化工機械社製)にて25℃で固液分離し(第一ろ過)、共重合体ケークを得た。得られたケークを真空乾燥機中、80℃、12時間乾燥し、揮発分含有量を求めた結果、78重量%であった。続いて、得られたケークをバッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製の洗浄槽に供給し、ケーク100部に対して400部のイオン交換水を添加し、25℃、回転速度250rpmにて攪拌を開始した。この混合物を引き続き250rpmにて攪拌しながら、60分間かけて80℃に昇温し、内温が80℃に到達した時点から60分間洗浄操作を行った。続いて、得られたスラリーを80℃に保ったまま、加圧ろ過機に移送し、80℃にて固液分離し(第二ろ過)、さらに80℃で12時間乾燥を行い、粒子状の共重合体(A−1)を得た。
得られた共重合体(A−1)の揮発分含有量は23重量%であり、SEMにて、150倍で観察し、1次粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径は520μmであった。また、GPC測定によるMwは120,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.14であった。共重合体(A−1)の共重合組成はMMA/MAA(重量比)=72/28であり、洗浄前と同一であった。
実施例2〜5:(A−2)〜(A−5)
製造例2〜5で得られた共重合体スラリー(a−2〜a−5)について、実施例1と同様の方法で共重合体(A)の洗浄操作を実施し、共重合体(A−2)〜(A−5)を得た。結果を表5に示す。
実施例6:(A−6)
製造例5で得られた共重合体スラリー(a−5)を、洗浄温度および第二ろ過温度を90℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で共重合体(A)の洗浄操作を実施し、共重合体(A−6)を得た。
実施例7:(A−7)
製造例5で得られた共重合体スラリー(a−5)について、第一ろ過後のケーク100部に対して300部の水を添加して洗浄を行う以外は実施例1と同様の方法で共重合体(A)の洗浄操作を実施し、共重合体(A−7)を得た。
実施例8:(A−8)
製造例5で得られた共重合体スラリー(a−5)について、第一ろ過後のケーク100部に対して500部の水を添加して洗浄を行う以外は実施例1と同様の方法で共重合体(A)の洗浄操作を実施し、共重合体(A−8)を得た。
実施例9:(A−9)
製造例5において、重合が終了したスラリーを80℃に保ったまま、遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)社製)に供給し、窒素ガスを5L/分の流量でフローしながら、80℃にて2時間処理し、第一ろ過を実施した。得られたケークの揮発分含有量は50重量%であった。得られたケークに下記の物質を供給した以外は、実施例1と同様の方法で洗浄操作を行い、共重合体(A−10)を得た。
共重合体(A)ケーク 100部
イオン交換水 1000部
実施例10:(A−10)
製造例5で得られた共重合体スラリー(a−5)を、第二ろ過温度を40℃に変更した以外は実施例9と同様の方法で共重合体(A)の洗浄操作を実施し、共重合体(A−12)を得た。
実施例11:(A−11)
製造例6で得られた共重合体スラリー(a−6)を、第二ろ過温度を40℃に変更した以外は実施例9と同様の方法で共重合体(A)の洗浄操作を実施し、共重合体(A−12)を得た。
比較例1:(A−12)
実施例5で得られた共重合体スラリー(a−5)を遠心分離機「LAC−21」(松本機械販売(株)社製)に供給し、窒素ガスを5L/分の流量でフローしながら、80℃にて2時間処理し、第一ろ過を実施し、80℃で12時間乾燥を行い、パウダー状の共重合体(A−12)を得た。得られた共重合体(A−12)は走査型電子顕微鏡(以下SEMとも言う)を用い、1万倍で観察し、1次粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径が2.0μmであった。また、GPC測定によるMwは120,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.52であった。共重合体(A−10)の共重合組成はMMA/MAA(重量比)=72/28であった。
比較例2:(A−13)
製造例5で得られた共重合体スラリー(a−5)を、洗浄温度および第二ろ過温度を25℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で共重合体(A)の洗浄操作を実施し、共重合体(A−13)を得た。
比較例3:(A−14)
製造例5で得られた共重合体スラリー(a−5)を、実施例1と同様に加圧ろ過機にて第一ろ過を実施し、得られたケーク100部に対して、400部の酢酸ブチルを添加し、洗浄温度および第二ろ過温度80℃にて、実施例1と同様に共重合体(A)の洗浄操作を実施し、共重合体(A−14)を得た。得られた共重合体(A−14)は走査型電子顕微鏡(以下SEMとも言う)を用い、1万倍で観察し、1次粒子径を画像解析して算出した数平均粒子径が5.0μmであった。また、GPC測定によるMwは120,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.52であった。共重合体(A−14)の共重合組成はMMA/MAA(重量比)=72/28であった。
実施例1〜11および比較例1〜3の結果を纏めたものを表5に示す。
Figure 2006265543
実施例1〜11、および比較例1〜3の比較から、特定温度の水中で洗浄を実施することにより、生成するカルボキシル基含有アクリル共重合体(A)は粒子径が十分大きく、ハンドリング性に優れる粒子として容易に取り出しが可能となることがわかる。また、第二ろ過における揮発分含有量が低くなるため、後の乾燥工程にかかる負荷が小さい、カルボキシル基含有アクリル共重合体(A)を製造することができる。
実施例12〜22および比較例4〜6:グルタル酸無水物含有熱可塑性共重合体(C)の製造(第二工程)、(D−1)〜(D−14)
実施例1〜11および比較例1〜3で得られた共重合体(A−1〜A−14)100重量部に、触媒として酢酸リチウム0.2重量部を配合し、を38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5、ベント部:2箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量10kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、ペレット状のグルタル酸無水物含有熱可塑性共重合体<D>((D−1)〜(D−14))を得た。
(D−15)〜(D−19):実施例23、24および比較例7〜9
実施例5〜6および比較例1〜3で得られた共重合体(A−5、6およびA−12〜A−14)100重量部に、酢酸リチウム0.2重量部重量部を配合し、これを44mmφ二軸押出機(TEX−44(日本製鋼所社製、L/D=28.0、ベント部:3箇所)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量5kg/h、シリンダ温度280℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性共重合体(D−15)〜(D−19)を得た。
実施例12〜24および比較例4〜9の結果を纏めたものを表6に示す。
Figure 2006265543
実施例12〜24および比較例4〜9から、本発明の製造方法は、第一工程において、原料である単量体混合物は溶解し、共重合体(A)は溶解しない特定の有機溶媒中で重合した後、特定温度で洗浄した共重合体(A)を用いて環化反応を行うことにより、滞留時も発生ガス量の少ない高度な耐熱性、熱安定性を有しながら、とりわけ無色透明性に優れたグルタル酸無水物含有熱可塑性共重合体(C)を製造することができることがわかる。
一方、本発明範囲外の方法で重合を行った場合、他のいずれの条件においても、加熱処理後の熱可塑性共重合体の色調、発生ガス量の点で劣ることがわかる。

Claims (11)

  1. (i)カルボキシル基含有アクリル系単量体およびこれと共重合可能なその他のアクリル系単量体を含む単量体混合物を共重合し、(i)カルボキシル基含有アクリル系単量体単位を含む共重合体(A)を製造するに際し、下記重合工程(I)および洗浄工程(II)の2つの工程を含むことを特徴とする共重合体の製造方法。
    (I)重合工程
    芳香族基を含有しない有機溶媒であって、カルボキシル基含有アクリル単量体およびこれと共重合可能なその他のアクリル系単量体を含む単量体混合物は溶解し、かつ、(i)カルボキシル基含有アクリル単量体単位を含む共重合体(A)の溶解度が1g/100g以下である有機溶媒(B)中で共重合し、共重合体スラリーを得る重合工程
    (II)洗浄工程
    前記重合工程(I)で得られた共重合体(A)のスラリーを固液分離した後、得られた共重合体(A)に水を添加し、50〜120℃の温度で洗浄し、該洗浄液から、50〜120℃にて再度固液分離を行い、共重合体(A)を得る洗浄工程
  2. 前記洗浄工程(II)における洗浄液中の共重合体(A)の濃度が1〜50重量%であることを特徴とする請求項1記載の共重合体の製造方法。
  3. 前記重合工程(I)を、共重合体(A)の溶解度パラメーターと有機溶媒(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値(ΔSP)が、1.0以上である条件下で行うことを特徴とする請求項1または2記載の共重合体の製造方法。
  4. 前記重合工程(I)で用いる有機溶媒(B)が、脂肪族炭化水素、カルボン酸エステル、ケトンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の共重合体の製造方法。
  5. 前記重合工程(I)で用いる有機溶媒(B)が、脂肪族炭化水素およびカルボン酸エステルの混合物であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の共重合体の製造方法。
  6. 前記重合工程(I)で用いる有機溶媒(B)が、脂肪族炭化水素およびカルボン酸エステルの混合物であり、その重量比が5/95〜70/30であることを特徴とする請求項5記載の共重合体の製造方法。
  7. 前記共重合体(A)が(i)下記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有アクリル系単量体単位および(ii)下記一般式(2)で表されるアクリル系単量体単位を含む共重合体であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の共重合体の製造方法。
    Figure 2006265543
    (ただし、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す)
    Figure 2006265543
    (ただし、Rは水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表し、Rは無置換または水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基および炭素数3〜6の脂環式炭化水素基から選ばれるいずれかを示す)
  8. 前記共重合体(A)中に、(i)上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有アクリル系単量体単位を15〜50重量%含有する請求項7記載の共重合体の製造方法。
  9. 請求項7または8記載の共重合体の製造方法により共重合体(A)を製造(第一工程)した後、引き続いて、該共重合体(A)を加熱処理し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコール反応よる分子内環化反応を行う工程(第二工程)により、(iii)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位および(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を含む熱可塑性共重合体(C)を製造することを特徴とするグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体の製造方法。
    Figure 2006265543
    (ただし、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す)
  10. 前記第二工程における加熱処理を、連続混練押出装置を用いて行うことを特徴とする請求項9記載のグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体の製造方法。
  11. 連続混練押出装置が、ケーシング内に、スクリュー部を形成した第1軸および第2軸が並列に配置された二軸スクリュー部、および二軸スクリュー部より延長された第1軸が配置された単軸スクリュー部を有し、かつ前記二軸スクリュー部と単軸スクリュー部の連通部に流量調節機構を備え、前記ケーシングに二軸スクリュー部に連通する原料供給口を備えるとともに、前記延長された第1軸の端部に連通する吐出口を備えた二軸・単軸複合型連続混練押出装置であることを特徴とする請求項10記載のグルタル酸無水物単位含有熱可塑性共重合体の製造方法。
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