JP4432551B2 - 熱可塑性樹脂組成物、成形品およびフィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、成形品およびフィルム Download PDF

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Description

本発明は、耐熱性、無色性、流動性、機械特性に極めて優れ、さらに好ましい態様においては透明性にも優れた熱可塑性樹脂組成物および該熱可塑性樹脂組成物を含む成形品およびフィルムに関するものである。
ポリメタクリル酸メチル(以下PMMAと称する)やポリカーボネート(以下PCと称する)といった非晶性樹脂は、その透明性や寸法安定性を活かし、光学材料、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。
近年、これらの樹脂は、特に光学レンズ、プリズム、ミラー、光ディスク、光ファイバー、液晶ディスプレイ用シートまたはフィルム、導光板などの、より高性能な光学材料にも幅広く使用されるようになっており、樹脂に要求される光学特性や成形加工性、耐熱性もより高度なものになっている。
また現在、これらの透明樹脂は、テールランプやヘッドランプといった自動車等の灯具部材としても使用されている。近年、車内空間を大きくするためやガソリン燃費を改良するために、テールランプレンズやインナーレンズ、ヘッドランプ、シールドビーム等の各種レンズと光源の間隔を小さくすること、あるいは部品の薄肉化が図られる傾向にあり、優れた成形加工性が要求されるようになっている。また、車両は過酷な条件下で使用されるため、高温多湿下での形状変化が小さいことや、優れた耐傷性、耐候性および耐油性も要求される。
しかしながら、PMMA樹脂は、優れた透明性、耐候性を有するものの、耐熱性、耐衝撃性が十分ではないといった問題があった。一方、PC樹脂は、耐熱性、耐衝撃性に優れるものの、光学的歪みである複屈折率が大きく、成形物に光学的異方性が生じること、成形加工性、耐傷性、耐溶剤性に著しく劣るといった問題があった。
そのため、PMMAの耐熱性を改良する目的で、耐熱性付与成分としてマレイミド単量体あるいは無水マレイン酸単量体等を導入した樹脂が開発されている。しかし、マレイミド単量体は高価であると同時に反応性が低く、無水マレイン酸は熱安定性が悪いという問題があった。
これらの問題点を解決する方法として、不飽和カルボン酸単量体単位を含有する共重合体を押出機を用いて加熱して環化反応させることにより得られるグルタル酸無水物含有単位を含有する共重合体が開示されている(特許文献1,2参照)。また、耐衝撃性などの機械特性を改良する方法として、グルタル酸無水物含有単位を含有する共重合体に、ゴム質含有重合体を添加する方法が開示されている(特許文献3〜6参照)。しかしながら、これら特許文献に開示された方法においては、耐衝撃性などの機械特性はある程度改良される場合もあるが、耐衝撃性、引張破断伸度等の機械特性、耐熱性、流動性、色調(無色性)、耐溶剤性等に均衡して優れる組成物は得られなかった。さらに、樹脂組成物の透明性が著しく低下するといった問題点や、樹脂組成物の光弾性係数(複屈折)、すなわち光学異方性が大きいという問題点もあり、近年要求されるより高度な光学特性(透明性や光学等方性)を有しながら、良好な耐衝撃性などの機械特性が兼備する材料も得られていなかった。
特開昭49−85184号公報(第1−2頁、実施例) 特開平1−103612号公報(第1−2頁、実施例) 特開昭60−67557号公報(第1−2頁、実施例) 特開昭60−120734号公報(第1−2頁、実施例) 特開平4−277546号公報(第1−2頁、実施例) 特開平5−186659号公報(第1−2頁、実施例)
したがって本発明は、高度な耐熱性、機械特性を有すると同時に、成形性(流動性)、無色性、耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供すること、さらには、これらに加えて近年要求されている高度な無色透明性、光学等方性をも有する熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明は、(A)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有し、重量平均分子量が3万〜15万である熱可塑性重合体、
Figure 0004432551
(上記式中、R1、R2は、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す。)
および(B)ゴム質含有重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
(B)ゴム質含有重合体が内部に1層以上のゴム質層を有する多層構造重合体(B−1)であり、
該(B−1)多層構造重合体の最外殻層を構成する重合体が下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有し、
該熱可塑性樹脂組成物の厚み2mmあたりの全光線透過率が90%以上を満たす熱可塑性樹脂組成物である。
また、本発明は、該熱可塑性樹脂組成物を含む成形品およびフィルムである。
本発明により、高度な耐熱性、機械特性を有すると同時に、成形性(流動性)、無色性、耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂組成物、さらに好ましい態様においては、これらに加えて近年要求されている高度な無色透明性、光学等方性をも有する熱可塑性樹脂組成物が得られる。
以下、本発明の熱可塑性重合体について具体的に説明する。
本発明で用いる熱可塑性重合体(A)とは、上記のごとく、下記一般式(1)
Figure 0004432551
(上記式中、R1、R2は、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す。)
で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有する熱可塑性重合体である。
中でも(i)上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位および(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有する共重合体が好ましい。
本発明の熱可塑性重合体(A)中の前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位(i)の含有量は、好ましくは熱可塑性重合体(A)100重量%中に25〜50重量%、より好ましくは30〜45重量%である。グルタル酸無水物含有単位が25重量%未満である場合、耐熱性向上効果が小さくなるだけでなく、複屈折特性(光学等方性)や耐溶剤性が低下する傾向がある。
また、本発明の熱可塑性重合体(A)中の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)の含有量は、熱可塑性重合体(A)100重量%中に好ましくは50〜75重量%、より好ましくは55〜70重量%である。
本発明の熱可塑性重合体(A)における各成分単位の定量には、一般に赤外分光光度計やプロトン核磁気共鳴(1H−NMR)測定機が用いられる。赤外分光法では、グルタル酸無水物含有単位は、1800cm-1および1760cm-1の吸収が特徴的であり、不飽和カルボン酸単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単位から区別することができる。また、1H−NMR法では、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。例えば、グルタル酸無水物含有単位、メタクリル酸単位、およびメタクリル酸メチル単位からなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5〜1.5ppmのピークはメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、上記に加えて、他の共重合成分としてスチレンを含有する共重合体の場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
また、本発明の熱可塑性重合体は、上記(i)、(ii)の単位に加えて、さらに不飽和カルボン酸単位(iii)および/または、(iv)その他のビニル単量体単位を含有することができる。ここで、(iv)その他のビニル単量体単位とは、上記(i)〜(iii)のいずれにも属さない共重合可能なビニル単量体単位である。
本発明の熱可塑性重合体(A)100重量%中に含有される不飽和カルボン酸単位(iii)の含有量は10重量%以下、すなわち0〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5重量%、最も好ましくは0〜1重量%である。不飽和カルボン酸単位(iii)が10重量%を超える場合には、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、その他のビニル単量体単位(iv)の含有量は、熱可塑性重合体(A)100重量%中、10重量%以下、すなわち0〜10重量%の範囲であることが好ましい。また、その他のビニル単量体単位(iv)としては、芳香環を含まないビニル単量体単位が好ましい。スチレンなどの芳香族ビニル単量体単位の場合、含有量が高いと、無色透明性、光学等方性、耐溶剤性が低下する傾向があるので、5重量%以下、すなわち0〜5重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜3重量%である。
前記不飽和カルボン酸単位(iii)としては、下記一般式(2)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 0004432551
(ただし、R3は水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す)
前記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)としては、下記一般式(3)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 0004432551
(ただし、R4は水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表し、R5は炭素数1〜6の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または1個以上炭素数以下の数の水酸基もしくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基を示す)
また熱可塑性重合体(A)は、重量平均分子量が3万〜15万であり、より好ましくは5万〜13万、特に7万〜11万が好ましい。重量平均分子量が、この範囲にあることにより、後工程の加熱脱気時の着色を低減でき、黄色度の小さい重合体を得ることができるとともに、成形品の機械的強度も高くすることができる。なお、本発明でいう重量平均分子量とは、多角度光散乱ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC−MALLS)で測定した絶対分子量での重量平均分子量を示す。
また、熱可塑性重合体(A)はガラス転移温度(Tg)が130℃以上であることが耐熱性の面で好ましい。ガラス転移温度は、140℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。また、上限としては、通常、170℃程度である。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定したガラス転移温度(Tg)である。
かくして得られる熱可塑性重合体(A)は、黄色度(Yellowness Index)の値が5以下と着色が極めて抑制され、さらに好ましい態様においては4以下、最も好ましい態様においては、3以下と極めて優れた無色性を有する。これによって、熱可塑性重合体(A)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物の黄色度も、5以下、より好ましくは4以下、最も好ましくは3以下とすることができ、極めて優れた無色性を有する成形品やフィルムを得ることができるため好ましい。また、熱可塑性重合体(A)の黄色度の値が大きい場合は、熱可塑性重合体(A)の一部が熱分解を起こしており、熱可塑性重合体(A)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械物性が低下する傾向にある。この点でも、熱可塑性重合体(A)の黄色度が上記の範囲にあることが好ましい。なお、ここでいう黄色度(Yellowness Index)とは、熱可塑性重合体(A)もしくは本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出成形し、得られた厚さ2mm成形品をJIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定したYI値である。
このような本発明の上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有する熱可塑性重合体(A)は、基本的には以下に示す方法により製造することができる。すなわち、後の加熱工程により上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位(i)を与える不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を共重合させ、共重合体(a)を得る。その際、前記その他のビニル単量体単位(iv)を含む場合には該単位を与えるビニル単量体を共重合させてもよい。得られた共重合体(a)を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコールおよび/または脱水による分子内環化反応を行わせることにより、熱可塑性重合体(A)を製造することができる。この場合、典型的には、共重合体(a)を加熱することにより、隣接する2単位の不飽和カルボン酸単位(iii)のカルボキシル基の間の脱水反応により、あるいは、隣接する不飽和カルボン酸単位(iii)と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)の間の脱アルコール反応により、1単位の前記(i)グルタル酸無水物含有単位が生成される。
この際に用いられる不飽和カルボン酸単量体としては、他のビニル化合物と共重合させることが可能ないずれの不飽和カルボン酸単量体も使用可能である。好ましい不飽和カルボン酸単量体として、下記一般式(4)で表される化合物、マレイン酸、および無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。なお、上記一般式(4)で表される不飽和カルボン酸単量体は、共重合すると上記一般式(2)で表される構造の不飽和カルボン酸単位(iii)を与える。
Figure 0004432551
(ただし、R3は水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す)
また不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の好ましい例として、下記一般式(5)で表されるものを挙げることができる。
Figure 0004432551
(ただし、R4は水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表し、R5は炭素数1〜6の脂肪族基もしくは脂環式炭化水素基を示す。ここで、R5は1個以上炭素数以下の数の水酸基もしくはハロゲンで置換されていてもよい。)
これらのうち、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが特に好適である。なお、上記一般式(5)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は、共重合すると上記一般式(3)で表される構造の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)を与える。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の好ましい具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−へキシル、メタクリル酸n−へキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルおよびメタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
また、本発明で用いる共重合体(a)の製造においては、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のビニル単量体を用いてもかまわない。このその他のビニル単量体は、共重合すると前記のその他のビニル単量体単位(iv)を与える。その他のビニル単量体の好ましい具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができる。透明性、光学等方性、耐溶剤性の点で芳香環を含まない単量体がより好ましく使用できる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
共重合体(a)の重合方法については、基本的にはラジカル重合による、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができる。不純物がより少ない点で溶液重合、塊状重合、懸濁重合が特に好ましい。
重合温度については、色調の観点から、95℃以下の重合温度で重合することが好ましい。さらに加熱処理後の着色をより抑制するために、好ましい重合温度は85℃以下であり、特に好ましくは75℃以下である。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、50℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上である。重合収率あるいは重合速度を向上させる目的で、重合進行に従い重合温度を昇温することも可能である。この場合も昇温する上限温度は95℃以下に制御することが好ましく、重合開始温度も75℃以下の比較的低温で行うことが好ましい。また重合時間は、必要な重合度を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から60〜360分間の範囲が好ましく、90〜180分間の範囲が特に好ましい。
本発明において、共重合体(a)の製造時に用いられるこれらの単量体混合物の好ましい割合は、該単量体混合物全体を100重量%として、不飽和カルボン酸単量体が15〜50重量%、より好ましくは20〜45重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は50〜85重量%、より好ましくは55〜80重量%である。これらに共重合可能な他のビニル単量体を用いる場合、その好ましい割合は0〜10重量%である。他のビニル単量体が、芳香族ビニル単量体である場合、その好ましい割合は0〜5重量%であり、より好ましい割合は0〜3重量%である。
不飽和カルボン酸単量体の含有量が15重量%未満の場合には、共重合体(a)の加熱により、熱可塑性重合体(A)を製造する際に、上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位(i)の生成量が少なくなり、熱可塑性重合体(A)の耐熱性向上効果が小さくなる傾向がある。一方、不飽和カルボン酸単量体(iii)の含有量が50重量%を超える場合には、共重合体(a)の加熱により、熱可塑性重合体(A)を製造する際に、不飽和カルボン酸単位(iii)が多量に残存する傾向があり、熱可塑性重合体(A)の無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、前記のように、本発明の熱可塑性重合体(A)は、重量平均分子量が3万〜15万である。このような分子量を有する熱可塑性重合体(A)は、共重合体(a)の製造時に、共重合体(a)を重量平均分子量で3万〜15万に予め制御しておくことにより、達成することができる。
共重合体(a)の分子量制御方法については、例えば、アゾ化合物、過酸化物等のラジカル重合開始剤の添加量、あるいはアルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤の添加量等により、制御することができる。特に、重合の安定性、取り扱いの容易さ等から、連鎖移動剤であるアルキルメルカプタンの添加量を制御する方法が好ましく使用することができる。
本発明に使用されるアルキルメルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでもt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
これらアルキルメルカプタンの添加量としては、本発明の特定の分子量に制御するものであれば、特に制限はなく、共重合する単量体種により、その添加量は異なるいが、通常、単量体混合物の全量100重量部に対して、0.3〜5.0重量部であり、好ましくは、0.8〜5.0重量部であり、さらに好ましくは0.9〜4.0重量部、より好ましくは1.0〜3.0重量部である。例えば、t−ドデシルメルカプタンを使用する場合には、1.0〜3.0重量部の範囲で特に有効であり、n−ドデシルメルカプタンを使用する場合には、0.6〜2.0重量部の範囲で特に有効である。
本発明における共重合体(a)を加熱し、脱水および/または脱アルコールにより分子内環化反応を行い、グルタル酸無水物含有単位を含有する熱可塑性重合体(A)を製造する方法は、特に制限はないが、共重合体(a)をベントを有する加熱した押出機に通す方法や不活性ガス雰囲気または真空下で加熱脱揮する方法が好ましい。酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、系内を窒素などの不活性ガスで十分に置換することが好ましい。特に好ましい装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機などを用いることができ、とりわけ二軸押出機が好ましく使用することができる。また、窒素などの不活性ガスが導入可能な構造を有した装置が、より好ましい。例えば、二軸押出機に、窒素などの不活性ガスを導入する方法としては、ホッパー上部および/または下部より、10〜100リットル/分程度の不活性ガス気流の配管を繋ぐ方法などが挙げられる。
なお、上記の方法により加熱脱揮する温度は、脱水および/または脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜300℃の範囲、特に好ましくは200〜280℃の範囲である。
また、この際の加熱脱揮する時間は、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間が好ましく、より好ましくは2分間〜30分間、とりわけ好ましくは3〜20分間の範囲である。押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機スクリューの長さ/直径比(L/D)が40以上であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位が多量に残存するため、加熱成形加工時に反応が再進行し、成形品にシルバーや気泡が見られる傾向や成形滞留時に色調が悪化する傾向がある。
さらに本発明では、共重合体(a)を上記方法等により加熱する際にグルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリおよび塩化合物から選ばれた1種以上を添加することができる。その添加量は、共重合体(a)100重量部に対し、0.01〜1重量部程度が好ましい。酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩化合物触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。ただし、その触媒の色が熱可塑性重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。中でも、アルカリ金属を含有する化合物が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられる。とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、および酢酸ナトリウムが好ましく使用することができる。
本発明においては、上記の(A)熱可塑性重合体に(B)ゴム質含有重合体を含有せしめることにより、(A)熱可塑性重合体の優れた特性を大きく損なうことなく優れた耐衝撃性を付与することができる。(B)ゴム質含有重合体としては、1以上のゴム質重合体を含む層と、それとは異種の重合体から構成される1以上の層から構成され、かつ、内部に1層以上のゴム質重合体を含む層を有する構造の、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体(B−1)を使用する
本発明に使用されるコアシェル型の多層構造重合体(B−1)を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に1層以上のゴム層(コア層)を有する多層構造重合体であることが好ましい。
本発明の多層構造重合体(B−1)において、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分から構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせたものから構成されるゴムも好ましい。例えば、(1)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分から構成されるゴム、(2)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分から構成されるゴム、(3)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分から構成されるゴム、および(4)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分から構成されるゴムなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有するゴムが、透明性および機械特性の点から、最も好ましい。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、アリルアクリレート単位およびブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋性成分から構成される共重合体を架橋させたゴムも好ましい。
本発明の多層構造重合体(B−1)において、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分であることが好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、不飽和カルボン酸単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位、脂肪族ビニル単位、芳香族ビニル単位、シアン化ビニル単位、マレイミド単位、不飽和ジカルボン酸単位およびその他のビニル単位などから選ばれる1種以上の単位を含有する重合体が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を含有する重合体が好ましく、それに加えて不飽和グリシジル基含有単位、不飽和カルボン酸単位および不飽和ジカルボン酸無水物単位から選ばれる1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
上記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではないが、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はなく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
上記不飽和グリシジル基含有単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではなく、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルおよび4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和ジカルボン酸無水物単位の原料となる単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸および無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、上記脂肪族ビニル単位の原料となる単量体としては、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどを用いることができる。上記芳香族ビニル単位の原料となる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンおよびハロゲン化スチレンなどを用いることができる。上記シアン化ビニル単位の原料となる単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどを用いることができる。上記マレイミド単位の原料となる単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドおよびN−(クロロフェニル)マレイミドなどを用いることができる。上記不飽和ジカルボン酸単位の原料となる単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸およびフタル酸などを用いることができる。上記その他のビニル単位の原料となる単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを用いることができる。これらの単量体は単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明では、上記の多層構造重合体(B−1)における最外層が不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体である場合、加熱することにより、前述した本発明の熱可塑性共重合体(A)の製造時と同様に、分子内環化反応が進行し、前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位が生成することを見出した。従って、最外層に不飽和カルボン酸アルキルエステル単位および不飽和カルボン酸単位を含有する重合体を有する多層構造重合体(B−1)を熱可塑性共重合体(A)に配合し、適当な条件で、加熱溶融混練することにより、最外層に前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有する多層構造重合体(B−1)が得られる。これにより、連続相(マトリックス相)となる熱可塑性共重合体(A)中に、多層構造重合体(B−1)が、凝集することなく、良好に分散することが可能となり、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等の機械特性向上とともに、極めて高度な透明性が発現しうるものと考えられる。
ここでいう不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の原料となる単量体としては、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらにはアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルがより好ましく使用される。
また、不飽和カルボン酸単位の原料となる単量体としては、アクリル酸またはメタクリル酸が好ましく、さらにはメタクリル酸がより好ましく使用される。
本発明の多層構造重合体(B−1)の好ましい例としては、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸共重合体であるものなどが挙げられる。ここで、“/”は共重合を示す。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体であるものも好ましい例として挙げられる。中でも、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位からなる共重合体であるもの、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン共重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位/メタクリル酸重合体であるものが、連続相(マトリックス相)である熱可塑性共重合体(A)との屈折率を近似させること、および樹脂組成物中での良好な分散状態を得ることが可能となり、近年より高度化する要求を満足しうる透明性が発現するため、好ましく使用することができる。
本発明の多層構造重合体(B−1)の数平均粒子径については、得られる熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度の点から0.01μm以上、透明性の点から1000μm以下であることが好ましく、さらに、0.02μm以上、100μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上、10μm以下であることがさらに好ましく、0.05μm以上、1μm以下であることが最も好ましい。
本発明の多層構造重合体(B−1)において、コアとシェルの重量比は、多層構造重合体全体に対して、コア層が50重量%以上、90重量%以下であることが好ましく、さらに、60重量%以上、80重量%以下であることがより好ましい。
本発明の多層構造重合体としては、上述した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもできる。
多層構造重合体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン(登録商標)”、鐘淵化学工業社製”カネエース(登録商標)”、呉羽化学工業社製”パラロイド(登録商標)”、ロームアンドハース社製”アクリロイド(登録商標)”、ガンツ化成工業社製”スタフィロイド(登録商標)”およびクラレ社製”パラペット(登録商標)SA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
また、(A)熱可塑性重合体および(B)ゴム質含有重合体のそれぞれの屈折率が近似している場合、透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができるため、好ましい。具体的には、両者の屈折率の差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。このような屈折率条件を満たすためには、(A)熱可塑性重合体の各単量体単位組成比を調整する方法、および/または(B)ゴム質含有重合体に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成比を調製する方法などが挙げられる。
なお、ここで言う屈折率差とは、(A)熱可塑性重合体が可溶な溶媒に、本発明の熱可塑性樹脂組成物を適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分((A)熱可塑性重合体)と不溶部分((B)ゴム質含有重合体)をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
また、樹脂組成物中での(A)熱可塑性重合体と(B)ゴム質含有重合体の共重合組成は、上記の溶媒による可溶成分と不溶成分の分離操作の後に、各成分を個別に分析可能である。
本発明において、(A)熱可塑性重合体と(B)ゴム質含有重合体との重量比は、99/1〜50/50の範囲であることが好ましく、さらに、99/1〜60/40の範囲であることがより好ましく、特に99/1〜70/30の範囲であることが最も好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その全光線透過率が90%以上であり、好ましくは92%以上である。これにより極めて優れた透明性を有する。また、全光線透過率の上限としては通常、94%程度である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性を表す指標の1つであるヘイズ値(濁度)が、3%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。これにより高度な透明性を有する。また、ヘイズ値の下限としては通常、0.5%程度である。
なお、上記熱可塑性樹脂組成物の全光線透過率およびヘイズは、いずれも射出成形により得た厚さ2mm成形品を、JIS−K7361およびJIS−K7136に従い、測定した値である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その光弾性係数が、5×10-12Pa-1以下であることが好ましく、より好ましくは、4×10-12Pa-1以下である。これにより極めて優れた光学等方性を有する。また、光弾性係数の下限としては通常、2×10-12Pa-1程度である。なお、ここで言う光弾性係数とは、流延法により得た厚さ約100μm(100±5μm)の無配向フィルムを1.5倍に一軸延伸を行った際の応力(σ)と、この延伸フィルムをエリプソメーター(大塚電子株式会社製、LCDセルギャップ検査装置 RETS−1100)を用いて23℃で、レーザー光をフィルムサンプル面に対して90°の角度で照射し、透過光の633nmで測定したリターデーション(Re)および上記延伸フィルムの23℃での厚み(d)を基に下記式により算出される値である。
光弾性係数=Re(nm)/d(nm)/σ(Pa)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その熱変形温度が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは115℃以上である。これにより極めて優れた耐熱性を有する。また、熱変形温度の上限としては通常、140℃程度である。なお、ここで言う熱変形温度とは、射出成形により得た厚さ6.4mm成形品を、ASTM D648に従い測定した値を示す。
また、本発明の熱可塑性重合体、熱可塑性樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど、熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など、から選ばれた一種以上をさらに含有させることができる。また、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。
本発明において(A)熱可塑性重合体と(B)ゴム質含有重合体を配合する方法としては、(A)熱可塑性重合体とその他の任意成分を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法が好ましく用いられる。また、(A)、(B)成分を両者を溶解する溶媒の溶液中で混合した後に溶媒を除く方法も用いることができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法として、前述の共重合体(a)と(B)ゴム質含有重合体を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練することにより、前述した環化反応による共重合体(a)の熱可塑性重合体(A)への変換を行うと同時に、(B)成分の配合を行うことができる。また、この際、(B)成分の一部に不飽和カルボン酸単量体単位および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位からなる共重合体を含む場合の環化反応も同時に行うことができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的特性、成形加工性にも優れており、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、フィルム、シート、管、ロッド、その他の希望する任意の形状と大きさを有する成形品に成形して使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムの製造方法には、公知の方法を使用することができる。すなわち、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルション法、ホットプレス法等の製造方法が使用できる。好ましくは、インフレーション法、T−ダイ法、キャスト法またはホットプレス法が使用できる。インフレーション法やT−ダイ法による製造法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明のフィルムを製造するための溶融押出温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。また、流延法により本発明のフィルムを製造する場合、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の溶剤が使用可能である。好ましい溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン等である。該フィルムは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を前記の1種以上の溶剤に溶かし、その溶液をバーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ダイ・コートなどを用いて、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱フィルム、スチールベルト、金属箔などの平板または曲板(ロール)上に流延し、溶剤を蒸発除去する乾式法あるいは溶液を凝固液で固化する湿式法等を用いることにより製造できる。
かくして得られる成形品またはフィルムは、その優れた耐熱性を活かして、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
特に、透明性および耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等の撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等、光記録または光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクター等、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導電フィルム、カバー等、自動車等の輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージング等、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セル等、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、バスタブ用材料等、の用途にとって極めて有用である。
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で使用した各種物性の測定方法を記載する。
(1)重量平均分子量(絶対分子量)
熱可塑性重合体(A)をジメチルホルムアミドに溶解して、測定サンプルとした。ジメチルホルムアミドを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて、重量平均分子量(絶対分子量)を測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。
(3)熱変形温度
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、127mm×12.7mm×6.4mmの板状試験片を得た。得られた板状試験片を用い、ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い荷重たわみ温度を測定し、耐熱性を評価した。
(4)透明性(全光線透過率、ヘイズ)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、70mm×70mm×2mmの成形品を得た。東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、得られた成形品の23℃での全光線透過率(%)、ヘイズ(曇度)(%)を測定し、透明性を評価した。
なお、厚さが2mmでない成形品について測定をする際には、該成形品をいったん粉砕し、上記の条件で70mm×70mm×2mmの成形品を成形し、測定すればよい。
(5)アイゾッド衝撃強度(Izod衝撃値)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、ASTM D−256に従い、厚み12.7mmのノッチ付試験片を得た。得られた試験片を用いてASTM D−256に従い、23℃にてアイゾッド衝撃強度を測定し、衝撃特性を評価した。
(6)破断伸度
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、幅200mmのフィルム製造用T−ダイを備えた40mm直径のベント付き単軸押出機に供し、280℃で10kg/hの速度で押出し、厚みが0.1mmのフィルムを得た。得られたフィルムからASTM−1号ダンベルを打ち抜いて試験片を作成し、JIS K−7113に従い、引張破断伸度を測定した。
(7)光弾性係数
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、メチルエチルケトンに溶解させ、25重量%濃度の溶液を得た。得られた溶液を用いて、流延法により、厚さ約100μm(100±5μm)の無配向フィルムを得た。該無配向フィルムを熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度+5℃で1.5倍に0.5mm/secの速度で一軸延伸を行い、応力(σ)の測定を行った。この延伸フィルムをASTM D542に準じて、エリプソメーター(大塚電子株式会社製、LCDセルギャップ検査装置 RETS−1100)を用いて23℃で、レーザー光をフィルムサンプル面に対して90°の角度で照射し、透過光の633nmでのリターデーション(Re)を測定した。また、ミツトヨ製デジマティックインジケーターを用いて、上記延伸フィルムの23℃での厚み(d)を測定し、これらを基に下記式により光弾性係数を算出した。
光弾性係数=Re(nm)/d(nm)/σ(Pa)
(8)屈折率、屈折率差
本発明の熱可塑性樹脂組成物にアセトンを加え、4時間還流した後、9,000rpmで30分間遠心分離することにより、アセトン可溶分(A成分)と不溶分(B成分)に分離した。これらを、それぞれ60℃で5時間減圧乾燥した。得られたそれぞれの固形物を250℃でプレス成形し、厚さ0.1mmのフィルムとした後、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製、DR−M2)によって、23℃、550nm波長における屈折率を測定した。A成分の屈折率とB成分の屈折率の差の絶対値を屈折率差とした。
(9)各成分組成
上記(8)で分離抽出したアセトン可溶分(A成分)については、重ジメチルスルフォキシド中、30℃で1H−NMRを測定し、各共重合単位の組成決定を行った。また、上記(8)で分離抽出したアセトン不溶分(B成分)は、赤外分光法で、グルタル酸無水物含有単位の特徴的ピークである1800cm-1および1760cm-1の吸収ピークの有無により、グルタル酸無水物含有単位の生成を確認した。
(10)黄色度(Yellowness Index)(YI)
熱可塑性重合体(A)、もしくは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、70mm×70mm×2mm成形品を得た。得られた成形品のYI値を、JIS−K7103に従い、SMカラーコンピューター(スガ試験機社製)を用いて測定した。
なお、厚さが2mmでない成形品について測定をする際には、該成形品をいったん粉砕し、上記の条件で70mm×70mm×2mmの成形品を成形し、測定すればよい。
(11)流動性
本発明の熱可塑性樹脂組成物について、温度:熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃、荷重:37.3Nでのメルトインデックス(MI値)をISO−R1133法に従い測定した。
(12)耐溶剤性
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃で射出成形して、試験片として、図1に示す12.5mm×125mm×1.6mmの板状成形品1を得た。該成形品を、図1に示すように、1/4楕円治具2の湾曲面3に沿わして固定後、薬液としてワックスリムーバー(ユシロ化学社製、「ワックスリムーバーCPC」)、またはトルエン/メチルイソブチルケトン(MIBK)=50/50重量%混合溶媒を成形品表面全体に塗布した。23℃環境下で24時間放置後、クラックの発生有無およびその位置を確認した。図1はこの評価における1/4楕円治具および板状成形品の概略図である。そのクラック発生位置の最短長軸方向長(X)を測定し、下式により臨界歪みτ(%)を算出し、0.6%以上のものを○、0.6%未満のものを×と判定した。
τ= b / 2a2 [1-(a2-b2)X2/ a4 ]-3/2× t × 100
τ:臨界歪み(%)
a:治具の長軸(127mm)
b:治具の短軸(38.1mm)
t:試験片の厚み(1.6mm)
X:クラック発生位置の最短長軸方向長(mm)。
<参考例(1)共重合体(a)の合成>
(a−1)
メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部およびイオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保った。単量体が完全に、重合体に転化するまで反応を続け、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体の水溶液を得た。得られた水溶液を懸濁剤として使用した。容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、前記のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体懸濁剤0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体(a−1)を得た。この共重合体(a−1)の重合率は98%であり、重量平均分子量は9万であった。
メタクリル酸 27重量部
メタクリル酸メチル 73重量部
t−ドデシルメルカプタン 1.5重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
(a−2)
連鎖移動剤であるt−ドデシルメルカプタンの添加量を2.0重量部に変更した以外は、(a−1)と同様の製造方法で共重合体(a−2)を得た。重合率は、97%、重量平均分子量は7万であった。
(a−3)
連鎖移動剤であるt−ドデシルメルカプタンの添加量を1.2重量部に変更した以外は、(a−1)と同様の製造方法で共重合体(a−3)を得た。重合率は、97%、重量平均分子量は13万であった。
(a−4)
単量体混合物および連鎖移動剤の仕込み組成を下記に変更した以外は(a−1)と同様の製造方法で共重合体(a−4)を得た。重合率は95%、重量平均分子量は10万であった。
メタクリル酸 15重量部
メタクリル酸メチル 75重量部
スチレン 10重量部
n−ドデシルメルカプタン 1.5重量部
(a−5)
連鎖移動剤であるt−ドデシルメルカプタンの添加量を0.4重量部に変更した以外は、(a−1)と同様の製造方法で共重合体(a−5)を得た。重合率は、97%、重量平均分子量は22万であった。
<参考例(2)熱可塑性共重合体(A)の製造>
参考例(1)で得られた各種共重合体(a)100重量部に表1に示した添加剤を配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数100rpm、原料供給量5kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性共重合体(A)を得た。
次いで、100℃で3時間乾燥したペレットを射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:ガラス転移温度+150℃、金型温度:80℃、射出速度:90cm3/秒、射出時間:10秒、冷却時間:30秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。
1H−NMRにより、定量した各共重合成分組成および各種特性評価結果を表1に示す。
Figure 0004432551
<参考例(3)ゴム質含有重合体(B)>
(B−1−1)
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部、過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル53重量部、スチレン17重量部、メタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部、過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(B−1−1)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は155nmであった。
(B−1−2)
シェルの仕込み混合物組成を、メタクリル酸メチル30重量部、過硫酸カリウム0.005重量部とした以外は、上記(B−1−1)と同様にして、2層構造のゴム質含有重合体(B−1−2)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は150nmであった。
(B−1−3)
三菱レイヨン社製”メタブレン(登録商標)W377”(コア;アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)を使用した。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は150nmであった。
(B−2)
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm) 50重量部(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、スチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合物50重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(B−2)を得た。このグラフト共重合体(B−2)のグラフト率は45%、アセトン可溶分のメチルエチルケトン溶媒、30℃での極限粘度は0.36dl/gであった。
〔実施例1〜、比較例1〜
上記の参考例(2)で得られた熱可塑性重合体(A)および参考例(3)で得られたゴム質重合体(B)を表2に示した組成比で配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、100℃で3時間乾燥したペレットを射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度+150℃、金型温度:80℃、射出速度:90cm3/秒、射出時間:10秒、冷却時間:30秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。
なお、比較例およびには、熱可塑性重合体(A)の代わりに、それぞれPMMA(「デルペット(登録商標)80N」(旭化成社製))を使用し、また比較例4にはPC(「ユーピロン(登録商標)S3000」(三菱エンジニアプラスチックス社製)を使用して、上記と同様の成形条件で射出成形して得た試験片について、評価した結果を表3に示す。
Figure 0004432551
Figure 0004432551
実施例1〜および比較例1〜の結果より、本発明の熱可塑性樹脂組成物は高度な耐熱性、機械特性を有すると同時に、無色透明性に優れ、かつ高度な光学等方性、耐溶剤性を有していることが分かる。中でも、特定のグルタル酸無水物含有単位を有した(B)ゴム質含有重合体を含有させることにより、より高度な透明性と耐衝撃性などの機械特性の兼備が可能となることがわかる。
また、(A)熱可塑性共重合体と(B)ゴム質含有重合体の屈折率が近似しない場合や(比較例3)、(A)熱可塑性共重合体中に相当量のスチレン等の芳香族基含有成分が含まれる場合には(比較例4)、透明性が低下するが、機械特性、耐熱性、流動性、無色性、耐溶剤性を均衡して備えた特性を有する組成物が得られることがわかる。
一方、(A)熱可塑性共重合体の分子量が極めて高い場合には(比較例5)、流動性に劣り、加熱溶融時の色調悪化が著しく、それに伴う透明性低下が見られ、高度な無色透明性が得られない。
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物は、PMMA(比較例6、7)やPC(比較例8)と比較しても、高度な無色透明性を有し、かつ優れた耐熱性、耐衝撃性、光学等方性、耐溶剤性を併せ持つ材料となりうることがわかる。
本発明により、高度な耐熱性、機械特性を有すると同時に、近年要求されている高度な無色透明性、光学等方性、成形性(流動性)を有し、耐溶剤性をも有する熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品およびフィルムは、透明性および耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品、光記録または光通信関連部品、情報機器関連部品、自動車等の輸送機器関連部品、医療機器関連部品、建材関連部品等の用途にとって極めて有用である。
図1は、実施例の耐溶剤性評価における1/4楕円治具と板状成型品の概略図である。

Claims (15)

  1. (A)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有し、重量平均分子量が3万〜15万である熱可塑性重合体、および(B)ゴム質含有重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
    (B)ゴム質含有重合体が内部に1層以上のゴム質層を有する多層構造重合体(B−1)であり、
    該(B−1)多層構造重合体の最外殻層を構成する重合体が下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位を含有し、
    該熱可塑性樹脂組成物の厚み2mmあたりの全光線透過率が90%以上を満たす熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 0004432551
    (上記式中、R1、R2は、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す。)
  2. (A)熱可塑性共重合体と(B)ゴム質含有重合体との重量比が、99/1〜50/50の範囲である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 熱可塑性重合体(A)のガラス転移温度が130℃以上である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 厚み2mmあたりのヘイズが3%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 熱変形温度が100℃以上である請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 熱可塑性重合体(A)が、(i)上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物含有単位25〜50重量%、および(ii)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜75重量%を含有する共重合体である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 熱可塑性重合体が、上記(i)、(ii)の単位に加えて、さらに(iii)不飽和カルボン酸単位を10重量%以下、および/または、(iv)その他のビニル単量体単位を10重量%以下、含有する共重合体である請求項6記載の熱可塑性樹脂組成物
  8. (iv)その他のビニル単量体単位のうち、芳香族ビニル単量体単位の含有量が5重量%以下である請求項7記載の熱可塑性樹脂組成物
  9. (A)熱可塑性重合体および(B)ゴム質含有重合体の屈折率差が0.02以下である請求項1〜8いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  10. (A)熱可塑性重合体および(B)ゴム質含有重合体の屈折率差が0.01以下である請求項9に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  11. (B−1)多層構造重合体の数平均粒子径が0.05〜1μmである請求項1〜10いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  12. (B−1)多層構造重合体のゴム質層を構成する重合体がアクリル酸アルキルエステル単位、および、置換または無置換のスチレン単位を含有する請求項1〜11いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  13. 光弾性係数が5×10−12Pa−1以下である請求項1〜12のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含むフィルム。
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