JP2008239741A - アクリル樹脂フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 透明性、耐熱性、無欠点性および加工特性にともに、優れた特性を有する新規かつ工業上有用なアクリル樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】 グルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂に、アクリル弾性体粒子を配合したアクリル樹脂フィルムであって、全光線透過率が91%以上、ヘイズが1.5%以下、Tgが120℃以上、気泡欠点が10個/m2以下かつ突沸欠点が1個/100m2以下であるアクリル樹脂フィルムとする。
【選択図】 なし
【解決手段】 グルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂に、アクリル弾性体粒子を配合したアクリル樹脂フィルムであって、全光線透過率が91%以上、ヘイズが1.5%以下、Tgが120℃以上、気泡欠点が10個/m2以下かつ突沸欠点が1個/100m2以下であるアクリル樹脂フィルムとする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、工業上有用な透明性、耐熱性および靱性に優れたアクリル樹脂フィルムに関する。
ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂に代表される非晶性透明樹脂は電気・電子分野をはじめ広く利用されている(非特許文献1、非特許文献2)。特にポリカーボネート樹脂はコンパクトディスク等の記録メディア用基材として利用されているが、光弾性係数が大きく、複屈折が大きいという課題を有している。一方、ポリメタクリル酸メチル樹脂は、複屈折が小さく、光学特性に優れるものの、耐熱性が十分ではなく、レーザー追記型光学ディスクのような耐熱性が必要とされる用途に使用するには問題がある。
しかし近年、光学部品に用いられるアクリル系熱可塑性樹脂フィルムには、その要求が高度化、多様化し、上記耐熱性等に加えて、極めて高い透明性や無欠点性が求められるようになってきた。
特許文献1には、アクリル系熱可塑性樹脂フィルムの耐熱性改善に加え、透明性向上の記載があるが、該特許文献1はポリマー分を溶媒に溶かして製膜する、いわゆる溶液製膜法を用いているため、品質・物性面で、溶媒除去時の突沸欠点、残存溶媒による物性低下が生じるといった問題があった。
「プラスチックフィルム・シートの現状と将来展望」、株式会社富士キメラ総研(発行人:表良吉)、2004年6月4日、p165−p168 「光学用透明樹脂」、株式会社技術情報協会(発行人:高薄一弘)、2001年12月17日、p59 特開2006−206881号公報
「プラスチックフィルム・シートの現状と将来展望」、株式会社富士キメラ総研(発行人:表良吉)、2004年6月4日、p165−p168 「光学用透明樹脂」、株式会社技術情報協会(発行人:高薄一弘)、2001年12月17日、p59
本発明の目的は、ポリメタクリル酸メチルに匹敵する優れた光学特性を有し、優れた耐熱性、透明性、光学等方性、無欠点性および加工特性を有するアクリル樹脂フィルムおよびその製造方法(溶液製膜)を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、以下の特徴を有している。
<1>下記構造式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂(A)とアクリル弾性体粒子(B)とを含み、アクリル樹脂(A)およびアクリル弾性体粒子(B)
の合計を100質量部として、アクリル樹脂(A)の含有量が50〜95質量部、アクリル弾性体粒子(B)の含有量が5〜50質量部であり、かつ下記(i)〜(v)を満足するアクリル樹脂フィルム。
の合計を100質量部として、アクリル樹脂(A)の含有量が50〜95質量部、アクリル弾性体粒子(B)の含有量が5〜50質量部であり、かつ下記(i)〜(v)を満足するアクリル樹脂フィルム。
(i)アクリル樹脂(A)がアクリル樹脂(A)全体を100質量部として、メタクリル酸メチル単位50〜90質量部およびグルタル酸無水物単位10〜50質量部からなる
(ii)全光線透過率が91%以上
(iii)ヘイズが1.5%以下
(iv)ガラス転移温度が120℃以上
(v)1m2あたりにおける最大径20μm以上の大きさの気泡欠点個数が10個以下
(ii)全光線透過率が91%以上
(iii)ヘイズが1.5%以下
(iv)ガラス転移温度が120℃以上
(v)1m2あたりにおける最大径20μm以上の大きさの気泡欠点個数が10個以下
(上記式中、R1、R2は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
<2>100m2あたりにおける最大径2mm以上の突沸欠点が1個以下である、上記<1>に記載のアクリル樹脂フィルム。
<2>100m2あたりにおける最大径2mm以上の突沸欠点が1個以下である、上記<1>に記載のアクリル樹脂フィルム。
<3>破断点伸度が50%以上である、上記<1>または<2>に記載のアクリル樹脂フィルム。
<4>波長590nmの光に対するフィルム面内の位相差が10nm以下である、上記<1>〜<3>のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
<5>波長590nmの光に対するフィルム厚み方向の位相差が10nm以下である、上記<1>〜<4>のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
<6>波長589nmの光に対する光弾性係数が−2×10−12/Pa以上、2×10−12/Pa以下である、上記<1>〜<5>のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
<7>アクリル弾性体粒子(B)の粒子径が50nm以上400nm以下である、上記<1>〜<6>のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
<8>アクリル弾性体粒子(B)が、内層がアクリル酸アルキルエステル単位および/または芳香族ビニルを含有するゴム弾性体であり、外層がグルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂を含有する重合体であり、アクリル弾性体粒子(B)とアクリル樹脂(A)の屈折率差が0.01以下である、上記<1>〜<7>のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
<9>残存する揮発分がアクリル樹脂フィルム100質量部に対して2質量部以下である、上記<1>〜<8>のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
<10>溶液キャスト法を用いてアクリル樹脂フィルムを製造するに際し、支持体としてポリマーフィルムを用い、このポリマーフィルム上にアクリル樹脂溶液を塗布し、次いで乾燥せしめた後、前記ポリマーフィルムを除去する、上記<1>〜<9>のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
<11>下記構造式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂(A)とアクリル弾性体粒子(B)とを含み、アクリル樹脂(A)およびアクリル弾性体粒子(B)の合計を100質量部として、アクリル樹脂(A)の含有量が50〜95質量部、アクリル弾性体粒子(B)の含有量が5〜50質量部であり、かつアクリル樹脂(A)がアクリル樹脂(A)全体を100質量部として、メタクリル酸メチル単位50〜90質量部およびグルタル酸無水物単位10〜50質量部からなるアクリル樹脂を、アクリル樹脂溶液100質量部に対し、5〜40質量部の範囲内で含むアクリル樹脂溶液を用いる、上記<10>に記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
(上記式中、R1、R2は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
<12>乾燥を少なくとも3段の多段階で行うとともに、前段の乾燥が終了してから後段の乾燥を始めるまでの時間を240時間以上とする、上記<10>または<11>に記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
<12>乾燥を少なくとも3段の多段階で行うとともに、前段の乾燥が終了してから後段の乾燥を始めるまでの時間を240時間以上とする、上記<10>または<11>に記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
本発明により、優れた透明性、耐熱性を有するとともに無欠点性ならびに加工特性を有する新規かつ工業上有用なアクリル樹脂フィルムを得ることができる。特に具体的には、例えば、全光線透過率が91%以上、ヘイズが1.5%以下、ガラス転移温度が120℃以上、破断点伸度が50%以上、1m2あたりの最大径20μm以上の気泡欠点が10個以下と飛躍的に向上したアクリル樹脂フィルムを実現できたものである。
そして、本発明で得られるアクリル樹脂フィルムは、高温での加工工程を必要とする光学フィルターなどの工業材料として好ましく使用することができる。さらに、このようにして得られたフィルムは、厚み均一性、および表面接着性も良好であり、光学フィルター以外の各種用途にも好適に用いることができる。
以下に本発明の好ましい実施の形態を説明する。
本発明に用いられるアクリル樹脂(A)は、分子中に下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有している。
(上記式中、R1、R2は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
ガラス転移温度(Tg)や熱変形温度など、樹脂フィルムの耐熱性は樹脂構造の自由度により決まり、自由度の小さいもの、例えば、剛直なベンゼン環が、剛直なイミド結合で結合された芳香族ポリイミドは400℃を超えるTgを持つ。一方、自由度の大きい柔軟な脂肪族の重合体であるポリメタクリルメチル(PMMA)のTgは100℃に満たない。本発明のアクリル樹脂は脂環構造を有し、グルタル酸無水物単位を含有することにより、耐熱性を著しく向上せしめることができる。また、光学等方用途では位相差が小さいことが要求される。ここでπ電子を多く持つ芳香環を導入すると、耐熱性は脂環構造を導入する以上に向上するが、同時に複屈折が大きくなり、位相差が発現しやすくなる問題がある。このため、光学等方性を保ったまま、耐熱性を向上させるためには脂環構造を含有することが最も好ましい。脂環構造としてはグルタル酸無水物構造、ラクトン環構造、ノルボルネン構造、シクロペンタン構造などが挙げられる。光学等方と耐熱性については、どの構造を用いても同様の効果が得られるが、ラクトン環構造、ノルボルネン構造、シクロペンタン構造などの導入にはこれら構造を有する高価な原料を使用するか、またはこれら構造の前駆体となる高価な原料を使用し、数段階の反応を経て、目的の構造にする必要があるため、工業的に不利である。一方、グルタル酸無水物単位は一般的なアクリル原料から1段階の脱水および/または脱アルコール反応により得られるため工業的に非常に有利である。
ガラス転移温度(Tg)や熱変形温度など、樹脂フィルムの耐熱性は樹脂構造の自由度により決まり、自由度の小さいもの、例えば、剛直なベンゼン環が、剛直なイミド結合で結合された芳香族ポリイミドは400℃を超えるTgを持つ。一方、自由度の大きい柔軟な脂肪族の重合体であるポリメタクリルメチル(PMMA)のTgは100℃に満たない。本発明のアクリル樹脂は脂環構造を有し、グルタル酸無水物単位を含有することにより、耐熱性を著しく向上せしめることができる。また、光学等方用途では位相差が小さいことが要求される。ここでπ電子を多く持つ芳香環を導入すると、耐熱性は脂環構造を導入する以上に向上するが、同時に複屈折が大きくなり、位相差が発現しやすくなる問題がある。このため、光学等方性を保ったまま、耐熱性を向上させるためには脂環構造を含有することが最も好ましい。脂環構造としてはグルタル酸無水物構造、ラクトン環構造、ノルボルネン構造、シクロペンタン構造などが挙げられる。光学等方と耐熱性については、どの構造を用いても同様の効果が得られるが、ラクトン環構造、ノルボルネン構造、シクロペンタン構造などの導入にはこれら構造を有する高価な原料を使用するか、またはこれら構造の前駆体となる高価な原料を使用し、数段階の反応を経て、目的の構造にする必要があるため、工業的に不利である。一方、グルタル酸無水物単位は一般的なアクリル原料から1段階の脱水および/または脱アルコール反応により得られるため工業的に非常に有利である。
ここで、光学等方用途とは、その素材の内部で光学的等方性が求められる用途で、具体的には偏光板保護フィルム、レンズ、光導波路コアなどが例示できる。液晶テレビにおいて、偏光板は2枚を直交または平行して使用されるが、偏光板保護フィルムが存在しないか、光学等方である場合、偏光板2枚を直交した状態では黒が表示され、偏光板2枚を平行した状態では白が表示される。一方、偏光板保護フィルムが光学等方でない場合、偏光板2枚を直交した状態では黒ではなく例えば濃い紫が表示され、偏光板2枚を平行した状態では白ではなく例えば黄色が表示される。この着色は偏光板保護フィルムの異方性によって異なる。偏光板保護フィルムは光学的には存在しないことが理想であるが、外からの応力および水分から偏光子を保護する目的で必要不可欠である。また、レンズの場合、レンズはその界面で光を屈折することを目的とするが、レンズ内は均一に光が進むことが必要である。レンズ内が光学等方でないと、像が歪むなどの問題がある。光導波路コアの場合、光学等方でないと例えば、横方向の波と、縦方向の波の信号の伝達速度に差が生じるため、ノイズ、混信の問題を起こす原因となる。他の光学等方用途としては、プリズムシート基材、光ディスク基板、フラットパネルディスプレイ基板などが挙げられる。
以下、グルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂の製造方法を詳述する。
後の加熱工程により上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を与える不飽和カルボン酸単量体(i)および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)と、その他のビニル系単量体単位を含む場合には該単位を与えるビニル系単量体(iii)とを重合させ、共重合体(a)とした後、かかる共重合体(a)を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコールおよび/または脱水による分子内環化反応を行わせることにより製造することができる。この場合、典型的には共重合体(a)を加熱することにより2単位の不飽和カルボン酸単位のカルボキシル基が脱水されて、あるいは隣接する不飽和カルボン酸単位と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位からアルコールの脱離により1単位の前記グルタル酸無水物単位が生成される。
この際用いられる不飽和カルボン酸単量体(i)としては、特に限定はなく、他のビニル化合物(iii)と共重合させることが可能な、一般式(i)の不飽和カルボン酸単量体が使用できる。
(ただし、R3は水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す)
特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種、または2種以上用いることができる。なお、上記一般式(i)で表される不飽和カルボン酸単量体(i)は共重合すると下記一般式(i−2)で表される構造の不飽和カルボン酸単位を与える。
特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種、または2種以上用いることができる。なお、上記一般式(i)で表される不飽和カルボン酸単量体(i)は共重合すると下記一般式(i−2)で表される構造の不飽和カルボン酸単位を与える。
(ただし、R3は水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す)
また、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)としてはメタクリル酸メチルが、得られるフィルムの透明性、耐候性の点から好ましい。さらに他の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体をメタクリル酸メチルと共に1種または2種以上を用いることができる。他の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては特に制限はないが、好ましい例として、下記一般式(ii)で表される単量体を挙げることができる。
また、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)としてはメタクリル酸メチルが、得られるフィルムの透明性、耐候性の点から好ましい。さらに他の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体をメタクリル酸メチルと共に1種または2種以上を用いることができる。他の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては特に制限はないが、好ましい例として、下記一般式(ii)で表される単量体を挙げることができる。
(ただし、R4は水素または炭素数1〜5の脂肪族、もしくは脂環式炭化水素基を示し、R5は水素以外の任意の置換基を示す。)
これらのうち、R5として、炭素数1〜6の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または置換基を有する該炭化水素基をもつアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが特に好適である。なお、上記一般式(ii)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は、共重合すると下記一般式(ii−2)で表される構造の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を与える。
これらのうち、R5として、炭素数1〜6の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または置換基を有する該炭化水素基をもつアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが特に好適である。なお、上記一般式(ii)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は、共重合すると下記一般式(ii−2)で表される構造の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を与える。
(ただし、R4は水素または炭素数1〜5の脂肪族、もしくは脂環式炭化水素基を示し、R5は水素以外の任意の置換基を示す。)
メタクリル酸メチル以外の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。
メタクリル酸メチル以外の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。
また、本発明で用いるアクリル樹脂(A)の製造においては、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のビニル系単量体(iii)を用いてもかまわない。その他のビニル系単量体(iii)の好ましい具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができるが、透明性、複屈折率、耐薬品性の点で芳香環を含まない単量体がより好ましく使用できる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
アクリル樹脂(A)の重合方法については、基本的にはラジカル重合による、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができるが、不純物がより少ない点で溶液重合、塊状重合、懸濁重合が特に好ましい。
重合温度については、特に制限はないが、色調の観点から、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を含む単量体混合物を95℃以下の重合温度で重合することが好ましい。さらに加熱処理後の着色をより抑制するために好ましい重合温度は85℃以下であり、特に好ましくは75℃以下である。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、通常50℃以上、好ましくは60℃以上である。重合収率あるいは重合速度を向上させる目的で、重合進行に従い重合温度を昇温することも可能であるが、この場合も昇温する上限温度は95℃以下に制御することが好ましく、重合開始温度も75℃以下の比較的低温で行うことが好ましい。また重合時間は、必要な重合度を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から60〜360分間の範囲が好ましく、90〜180分間の範囲が特に好ましい。
本発明のアクリル樹脂フィルムに使用するアクリル樹脂(A)は、重量平均分子量が8万〜15万であることが好ましい。このような分子量を有するアクリル樹脂(A)は、共重合体(a)の製造時に、共重合体(a)を所望の分子量、すなわち重量平均分子量で5万〜15万に予め制御しておくことにより、達成することができる。重量平均分子量が、15万を超える場合、後工程の加熱脱揮時に着色する傾向が見られる。一方、重量平均分子量が、5万未満の場合、アクリル樹脂フィルムの機械的強度が低下する傾向が見られる。
共重合体(a)の分子量制御方法については、特に制限はなく、例えば通常公知の技術を適用することができる。例えば、アゾ化合物、過酸化物等のラジカル重合開始剤の添加量、あるいはアルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤の添加量等により、制御することができる。特に、重合の安定性、取り扱いの容易さ等から、連鎖移動剤であるアルキルメルカプタンの添加量を制御する方法が好ましく使用することができる。
本発明に使用されるアルキルメルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでもt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
これらアルキルメルカプタンの添加量としては、本発明の特定の分子量に制御するものであれば、特に制限はないが、通常、単量体混合物の全量100質量部に対して、0.2〜5.0質量部であり、好ましくは0.3〜4.0質量部、より好ましくは0.4〜3.0質量部である。
本発明における共重合体(a)を加熱し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応を行いグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体を製造することが好ましく、その方法は、特に制限はないが、ベントを有する加熱した押出機に通して製造する方法や不活性ガス雰囲気または減圧下で加熱脱揮できる装置内で製造する方法が生産性の観点から好ましい。中でも、酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、十分に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。特に好ましい装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機などを用いることができ、とりわけ二軸押出機が好ましく使用することができる。また、これらに窒素などの不活性ガスが導入可能な構造を有した装置であることがより好ましい。例えば、二軸押出機に、窒素などの不活性ガスを導入する方法としては、ホッパー上部および/または下部より、10〜100リットル/分程度の不活性ガス気流の配管を繋ぐ方法などが挙げられる。
なお、上記の方法により加熱脱揮する温度は、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜300℃の範囲、特に200〜280℃の範囲が好ましい。
また、この際の加熱脱揮する時間も特に限定されず、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間、好ましくは2分間〜30分間、とりわけ3〜20分間の範囲が好ましい。特に、押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機スクリューの長さ/直径比(L/D)が40以上であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位が多量に残存するため、加熱成形加工時に反応が再進行し、成形品にシルバーや気泡が見られる傾向や成形滞留時に色調が大幅に悪化する傾向がある。
さらに本発明では、共重合体(a)を上記方法等により加熱する際にグルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は特に制限はなく、共重合体(a)100質量部に対し、0.01〜1質量部程度が適当である。また、これら酸、アルカリ、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。ただし、その触媒保有の色が熱可塑性重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが重要である。中でも、アルカリ金属を含有する化合物が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムが好ましく使用することができる。
本発明に用いられるアクリル樹脂(A)中の前記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位の含有量は、アクリル樹脂(A)100質量部に対して10〜50質量部、より好ましくは15〜45質量部、最も好ましくは20〜25質量部である。グルタル酸無水物単位が10質量部未満である場合、耐熱性向上効果が小さくなることがある。また、グルタル酸無水物単位が50質量部を超えると靱性が悪くなることがある。耐熱性向上と靱性向上はトレードオフの関係にあり、グルタル酸無水物単位の含有量で調整可能である。このためグルタル酸無水物単位の含有量は用途に応じて10〜50質量部の中で任意の値を採用することができる。例えば、偏光板保護膜には120℃以上のTgが要求されるが、弾性体粒子添加によるTg低下を考慮すると、グルタル酸無水物単位の含有量は20〜25質量部が最も好ましい。グルタル酸無水物単位の含有量は20〜25質量部であれば、弾性体粒子添加後に120〜130℃のTgを持ち、かつ十分な靱性を有する。
アクリル樹脂(A)に含まれる他の成分としてはメタクリル酸メチル単位および、メタクリル酸単位等が挙げられるが、メタクリル酸メチル単位を含有することが重要である。アクリル樹脂(A)100質量部からグルタル酸無水物単位の含有量を除した量がメタクリル酸メチル単位の含有量であることが好ましい。すなわち、メタクリル酸メチル単位の含有量は50〜90質量部が好ましい。
グルタル酸無水物単位とメタクリル酸メチル単位以外にグルタル酸無水物単位の前駆体である、メタクリル酸単位が含まれていても構わない。メタクリル酸単位にメタクリル酸単位またはメタクリル酸メチル単位が隣接した場合、製膜や、延伸などの工程での加熱時に脱水または脱アルコール反応が起こり、発泡の原因となることがあるが、グルタル酸無水物単位が隣接していれば、脱水または脱アルコール反応は起こり得ないので、メタクリル酸単位が含まれていても構わない。
本発明に用いられるアクリル樹脂(A)における各成分単位の定量には、プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)測定機が用いられる。1H−NMR法では、例えば、グルタル酸無水物単位、メタクリル酸、メタクリル酸メチルからなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中でのスペクトルの帰属を、0.5〜1.5ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素と、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。また、上記に加えて、他の共重合成分としてスチレンを含有する共重合体の場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
また、本発明に用いられるアクリル樹脂(A)は、アクリル樹脂(A)中に不飽和カルボン酸単位および/または、共重合可能な他のビニル系単量体単位を含有することができる。
本発明に用いられる不飽和カルボン酸単位量はアクリル樹脂(A)100質量部に対して10質量部以下、すなわち0〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量部、最も好ましくは0〜1質量部である。不飽和カルボン酸単位が10質量部を超える場合には、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向がある。
また、アクリル樹脂(A)に共重合可能な他のビニル系単量体単位量はアクリル樹脂(A)100質量部に対して、5質量部以下、すなわち0〜5質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜3質量部である。特に、スチレンなどの芳香族ビニル系単量体単位を含有する場合、含有量が上記範囲を超えると、無色透明性、光学等方性、耐薬品性が低下する傾向がある。
本発明においては、上記のアクリル樹脂(A)にアクリル弾性体粒子(B)を分散(含有)せしめることにより、アクリル樹脂(A)の優れた特性を大きく損なうことなく優れた耐衝撃性を付与することができる。アクリル弾性体粒子(B)としては、1以上のゴム質重合体を含む層と、それとは異種の重合体から構成される1以上の層から構成され、かつ、これらの各層が隣接し合った構造の、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体(B−1)や、ゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体などからなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体(B−2)等が好ましく使用できる。
本発明に使用されるコアシェル型の多層構造重合体(B−1)としては、これを構成する層の数は、特に限定されるものではなく、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよいが、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有する多層構造重合体であることが好ましい。
多層構造重合体(B−1)において、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレン成分、プロピレン成分、イソブテン成分などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分から構成されるゴムである。また、これらの成分を2種以上組み合わせたものから構成されるゴムも好ましく、例えば、(1)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分から構成されるゴム、(2)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分から構成されるゴム、(3)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分およびブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分から構成されるゴム、および(4)アクリル酸エチル単位やアクリル酸ブチル単位などのアクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分およびスチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分から構成されるゴムなどが挙げられる。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、アリルアクリレート単位およびブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋性成分から構成される共重合体を架橋させたゴムも好ましい。
多層構造重合体(B−1)において、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分であることが好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和カルボン酸系単位、不飽和グリシジル基含有単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位およびその他のビニル系単位などから選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が挙げられ、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和グリシジル基含有単位および不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が好ましく、さらには不飽和グリシジル基含有単位および不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
上記不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はなく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられるが、特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
上記不飽和グリシジル基含有単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルおよび4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
上記不飽和ジカルボン酸無水物系単位の原料となる単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸および無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、上記脂肪族ビニル系単位の原料となる単量体としては、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどを、上記芳香族ビニル系単位の原料となる単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンおよびハロゲン化スチレンなどを、上記シアン化ビニル系単位の原料となる単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどを、上記マレイミド系単位の原料となる単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドおよびN−(クロロフェニル)マレイミドなどを、上記不飽和ジカルボン酸系単位の原料となる単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸およびフタル酸などを、上記その他のビニル系単位の原料となる単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを、それぞれ挙げることができ、これらの単量体は単独ないし2種以上を用いることができる。
ゴム質重合体を含有する多層構造重合体(B−1)において、最外層の種類は、特に限定されるものではなく、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和カルボン酸系単位、不飽和グリシジル基含有単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位およびその他のビニル系単位などを含有する重合体などから選ばれた少なくとも1種が挙げられ、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和カルボン酸系単位、不飽和グリシジル基含有単位および不飽和ジカルボン酸無水物系単位を含有する重合体から選ばれた少なくとも1種が好ましく、さらには不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和カルボン酸系単位を含有する重合体がより好ましい。
さらに、本発明では、上記の多層構造重合体(B−1)における最外層が不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位および不飽和カルボン酸系単位を含有する重合体である場合、加熱することにより、前述した本発明の熱可塑性共重合体(A)の製造時と同様に、分子内環化反応が進行し、上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位が生成することを見出した。従って、最外層に不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位および不飽和カルボン酸系単位を含有する重合体を有する多層構造重合体(B−1)を熱可塑性共重合体(A)に配合し、適当な条件で、加熱溶融混練することにより、実質的には、連続相(マトリックス相)となる熱可塑性共重合体(A)中に、最外層に上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有してなる重合体を有する多層構造重合体(B−1)が分散することにより、凝集することなく、良好な分散状態が可能となり、耐衝撃性等の機械特性向上とともに、極めて高度な透明性が発現しうるものと考えられる。
ここでいう不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらには(メタ)アクリル酸メチルがより好ましく使用される。
また、不飽和カルボン酸系単位の原料となる単量体としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸が好ましく、さらにはメタクリル酸がより好ましく使用される。
多層構造重合体(B−1)の好ましい例としては、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位からなる共重合体、またはメタクリル酸メチル/上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位/メタクリル酸重合体であるもの、コア層がジメチルシロキサン/アクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、コア層がブタンジエン/スチレン重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるもの、およびコア層がアクリル酸ブチル重合体で最外層がメタクリル酸メチル重合体であるものなどが挙げられる(“/”は共重合を示す)。さらに、ゴム層または最外層のいずれか一つもしくは両方の層がメタクリル酸グリシジル単位を含有する重合体であるものも好ましい例として挙げられる。中でも、コア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位からなる共重合体、またはメタクリル酸メチル/上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位/メタクリル酸重合体であるものが、連続相(マトリックス相)であるアクリル樹脂(A)との屈折率を近似させること、および樹脂組成物中での良好な分散状態を得ることが可能となり、近年より高度化する要求を満足しうる透明性が発現するため、好ましく使用することができる。
多層構造重合体(B−1)の重量平均粒子径としては、50〜400nmとすることが好ましく、より好ましくは100〜200nmである。重量平均粒子径が50nm未満の場合は靱性の向上が十分でないことがあり、400nmを超える場合はTgが低下することがある。
多層構造重合体(B−1)において、コアとシェルの重量比は、特に限定されるものではないが、多層構造重合体全体100質量部に対して、コア層が50質量部以上、90質量部以下であることが好ましく、さらに、60質量部以上、80質量部以下であることがより好ましい。
本発明の多層構造重合体としては、上述した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもできる。
多層構造重合体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン”、鐘淵化学工業社製”カネエース”、呉羽化学工業社製”パラロイド”、ロームアンドハース社製”アクリロイド”、ガンツ化成工業社製”スタフィロイド”およびクラレ社製”パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
また、アクリル弾性体粒子(B)として使用することができるゴム質含有グラフト共重合体(B−2)の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、芳香族ビニル系単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
グラフト共重合体(B−2)に用いられるゴム質重合体には特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
本発明におけるグラフト共重合体(B−2)を構成するゴム質重合体の重量平均粒子径としては、50〜400nmとすることが好ましく、より好ましくは100〜200nmである。平均粒径が50nm未満の場合は靱性の向上が十分でないことがあり、400nmを超える場合はTgが低下することがある。
なお、ゴム質重合体の重量平均粒子径は「Rubber Age, Vol.88, p.484−490 (1960), by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
本発明におけるグラフト共重合体(B−2)は、グラフト共重合体(B−2)100質量部に対してゴム質重合体10〜80質量部、好ましくは20〜70質量部、より好ましくは30〜60質量部の存在下に、上記の単量体(混合物)20〜90質量部、好ましくは30〜80質量部、より好ましくは40〜70質量部を共重合することによって得られる。ゴム質重合体の割合が上記の範囲未満、または上記の範囲を超える場合には、衝撃強度や表面外観が低下する場合がある。
なお、グラフト共重合体(B−2)は、ゴム質重合体に単量体混合物をグラフト共重合させる際に生成するグラフトしていない共重合体を含んでいてもよい。ただし、衝撃強度の観点からは、グラフト率は10〜100%であることが好ましい。ここで、グラフト率とは、ゴム質重合体に対するグラフトした単量体混合物の重量割合である。また、グラフトしていない共重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度には特に制限はないが、0.1〜0.6dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられる。
本発明におけるビニル系共重合体(B−2)のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度には、特に制限はないが、0.2〜1.0dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられ、より好ましくは0.3〜0.7dl/gのものである。
本発明におけるグラフト共重合体(B−2)の製造方法には、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などの公知の重合法により得ることができる。
また、アクリル樹脂(A)およびアクリル弾性体粒子(B)のそれぞれの屈折率が近似している場合、本発明のアクリル樹脂フィルムにおいて透明性を得ることができるため、好ましい。具体的には、屈折率の差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。このような屈折率条件を満たすためには、アクリル樹脂(A)の各単量体単位組成比を調整する方法、および/またはアクリル弾性体粒子(B)に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成比を調製する方法などにより、屈折率差を小さくすることができ、透明性に優れたアクリル樹脂フィルムを得ることができる。具体的にはコア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位からなる共重合体、またはメタクリル酸メチル/上記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位/メタクリル酸重合体である。ここで、アクリル樹脂にアクリル弾性体粒子やその他の添加剤を配合する方法としては例えば、アクリル樹脂またはアクリル樹脂とその他の添加成分を予めブレンドした後、通常200〜350℃にて、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法を用いることができる。
溶融混練において、アクリル弾性体粒子に付与したシェル部分などの不飽和カルボン酸単量体単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位の環化反応も同時に行うことができる。
尚、ここでいう屈折率差とは、アクリル樹脂(A)が可溶な溶媒に、本発明のアクリル樹脂フィルムを適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(アクリル樹脂(A))と不溶部分(アクリル弾性体粒子(B))をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
また、実質的なアクリル樹脂フィルム中でのアクリル樹脂(A)とアクリル弾性体粒子(B)の共重合組成は、上記の溶媒による可溶成分と不溶成分の分離操作により、各成分を個別に分析可能である。
尚、ここでいう屈折率差とは、アクリル樹脂(A)が可溶な溶媒に、本発明のアクリル樹脂フィルムを適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(アクリル樹脂(A))と不溶部分(アクリル弾性体粒子(B))をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
また、実質的なアクリル樹脂フィルム中でのアクリル樹脂(A)とアクリル弾性体粒子(B)の共重合組成は、上記の溶媒による可溶成分と不溶成分の分離操作により、各成分を個別に分析可能である。
本発明のアクリル樹脂フィルムは、ここまで述べた構成を有することにより、その全光線透過率が91%以上、ヘイズ1.5%以下の特性を満たすことができる。
全光線透過率は大きければ大きいほど好ましく、ヘイズは小さければ小さいほど好ましいことはいうまでもない。
本発明のアクリル樹脂フィルムは、光学等方用途で好適に使用されることを説明した。光学等方用途においては、入射された光に対し、その素材の中では光学的には全く影響を与えること無く、被保護体を外部からの応力、熱、薬品などから保護することが求められる。すなわち、光学特性については全光線透過率は100%であることが理想である。全光線透過率が低いと、偏光板保護フィルムや、プリズムシートあるいはレンズとした場合は暗くなる問題があり、光導波路や光ファイバーのコアとした場合には信号減衰の問題がある。本発明において、全光線透過率は91%以上であり、好ましくは92%以上である。全光線透過率に上限は無いが、界面反射による損失が避けられないため一般的には上限は99%程度である。
全光線透過率を100%に近づけるためにはこれを阻害する因子を小さくする必要がある。このため濁度、すなわちヘイズは小さいことが求められ、理想的には0である。本発明においてはヘイズは1.5%以下である。ヘイズが1.5%を超えると全光線透過率が91%未満となることがある。ヘイズは好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.5%以下である。
本発明のアクリル樹脂フィルムは、少なくとも一方向の破断点伸度が50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。また上記一方向と直交する方向の破断点伸度も50%以上であることがさらに好ましい。アクリル樹脂フィルムの破断点伸度が50%以上であるとアクリル樹脂フィルムが適度な柔軟性を有し、製膜時や加工時のフィルム破れが低減し、スリット性などの加工性が向上するため好ましい。このようなアクリル樹脂フィルムの破断点伸度はJIS−C2318(1997)に準拠した方法で測定される。なおアクリル樹脂フィルムの破断点伸度の上限については、特に限定されるものではないが、現実的には120%程度であると考えられる。このような破断点伸度のアクリル樹脂フィルムを得るためには、アクリル樹脂の分子量や環状単位の含有量、アクリル弾性体粒子の組成、粒子径、添加量、アクリル樹脂フィルム中の分散状態などを適宜調節するとよい。
本発明のアクリル樹脂フィルムは、波長590nmの光線に対するフィルム面内の位相差が10nm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは2nm以下である。波長590nmの光線に対するフィルム面内の位相差が10nm以下であると、光学用等方性フィルムとして偏光板や光ディスクなどの保護フィルム用途で好適に用いることができる。光学等方性が要求される用途において、波長590nmの光線に対する位相差は小さい方が好ましいが、現実的に下限は0.1nm程度と考えられる。このような光学等方性のアクリル樹脂フィルムを得るためには、位相差を発現させる添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、製膜時の延伸倍率を低くすることなどが有効である。例えば、本発明においてグルタル酸無水物単位:メタクリル酸メチル単位:メタクリル酸=32:66:2質量部である重合体に粒径155μmの2層粒子を20質量部添加し、溶液製膜法で製膜することにより厚み41μm、位相差0.1nmのフィルムを得ることができる。
また本発明のアクリル樹脂フィルムは、厚み方向の位相差Rthが10nm以下であることが好ましく、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは5nm以下、最も好ましくは2nm以下である。アクリル樹脂フィルムの厚み方向の位相差Rthが10nm以下であると、フィルム面内の光学等方性のみならず厚み方向の光学等方性にも優れたアクリル樹脂フィルムとなるため、偏光板や光ディスクなどの保護フィルム用途でより一層好適に用いることができる。厚み方向の光学等方性が要求される用途において、厚み方向の位相差Rthは小さい方が好ましいが、現実的に下限は0.1nm程度と考えられる。このような厚み方向の位相差Rthが小さいアクリル樹脂フィルムを得るためには、厚み方向の位相差を発現させる添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、フィルム面内あるいは厚み方向の製膜時の延伸倍率を低くすることなどが有効である。例えば本発明においてグルタル酸無水物単位:メタクリル酸メチル単位:メタクリル酸=32:66:2質量部である重合体に粒径155μmの2層粒子を20質量部添加し、溶液製膜法で製膜することにより厚み41μm、厚み方向の位相差0.4nmのフィルムを得ることができる。
本発明のアクリル樹脂フィルムは波長589nmの光に対する光弾性係数が−2×10−12/Pa〜2×10−12/Paであることが好ましい。光弾性係数が−2×10−12/Pa〜2×10−12/Paであることにより、大画面の液晶テレビに用いたとき、アクリル樹脂フィルムと貼り合わされた他の部材の熱膨張、あるいは残留応力等に起因して、アクリル樹脂フィルムが応力を与えられた場合にも位相差の変化が小さいため好ましい。光弾性係数は小さいほど、応力に対する位相差変化が小さいため好ましく、より好ましくは−1×10−12/Pa〜1×10−12/Paである。アクリル樹脂フィルムの光弾性係数は一般的に小さいが、耐熱性向上のために、スチレンや、マレイミドを共重合したり、芳香族置換基を導入すると、光弾性係数も大きくなってしまう。本発明のアクリル樹脂フィルムは、グルタル酸無水物構造により耐熱性向上と低光弾性係数を両立できる。
また、本発明のアクリル樹脂フィルムには本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。
本発明においてアクリル樹脂(A)にアクリル弾性体粒子(B)あるいはその他の添加剤などの任意成分を配合する方法には、特に制限はなく、アクリル樹脂(A)とその他の任意成分を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法が好ましく用いられる。また、アクリル弾性体粒子(B)を配合する場合には、(A)、(B)両成分を溶解する溶媒の溶液中で混合した後に溶媒を除く方法を用いることができる。
また、本発明のアクリル樹脂フィルムに使用するアクリル樹脂の製造方法として、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を含む単量体混合物を共重合して共重合体(a)を得、次いでこの共重合体(a)とアクリル弾性体粒子(B)を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練することにより、前述した(a)成分の環化反応を行うと同時に、(B)成分の配合を行うことができる。また、この際、(B)成分の一部に不飽和カルボン酸単量体単位および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位からなる共重合体を含む場合の環化反応も同時に行うことができる。
本発明のアクリル樹脂フィルムに使用するアクリル樹脂は異物を取り除く目的で、濾過することが好ましい。異物を除去することにより、光学用途フィルムとして有用に使用できる。濾過は公知の方法を使用することができるが、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解した樹脂を25℃以上100℃以下の温度で適宜フィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網等で濾過することが樹脂の着色を防ぐために好ましい。
本発明のアクリル樹脂フィルムは、その熱変形温度が110℃以上の優れた耐熱性を有する。熱変形温度の上限は特にないが、130℃以上であることが好ましく、靱性や、破断点伸度との兼ね合いから、200℃程度が上限となる。
本発明のアクリル樹脂フィルムの製造方法には、公知の方法を使用することができる。すなわち、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、溶液製膜法(流延法)、エマルション法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、好ましくは、溶液製膜法(流延法)が使用できる。
溶液製膜法で製膜する場合、残揮発分を含むアクリル樹脂フィルム100質量部に対して残存揮発分を2質量部以下とすることが好ましい。残存揮発分が2質量部を超えると、見かけのTgが低下したり、ブロッキングによりフィルムの巻き取り性が悪化したり、有機溶媒が経時でブリードアウトして他部材との接着性を低下させるなどの問題が生じ易くなる。
本発明においてはアクリル樹脂フィルムの残存揮発分は次の評価方法によって求められるものと定義する。熱質量測定装置を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分の条件下でアクリル樹脂フィルムの熱減量を測定し、35℃での質量と200℃での質量から以下の式で残存揮発分を求める。
アクリル樹脂フィルムの残存揮発分(質量部)=((35℃での質量−200℃での質量)/35℃での質量)×100
残存揮発分は、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.8質量部以下、最も好ましくは0.5質量部以下とする。とする。アクリル樹脂フィルム中の残存揮発分は低いほど好ましいが現実的には100ppm程度と考えられる。
残存揮発分は、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.8質量部以下、最も好ましくは0.5質量部以下とする。とする。アクリル樹脂フィルム中の残存揮発分は低いほど好ましいが現実的には100ppm程度と考えられる。
次に、本発明の好ましい製膜方法である溶液製膜法について説明する。
本発明のアクリル樹脂フィルムは、溶液キャスト法を用いて製造することが好ましく、その際、支持体としてポリマーフィルムを用い、このポリマーフィルム上にアクリル樹脂溶液を塗布し、次いで乾燥せしめた後、前記ポリマーフィルムを除去することが好ましい。
上記のおいて、用いるアクリル樹脂溶液としては、下記構造式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂(A)とアクリル弾性体粒子(B)とを含み、アクリル樹脂(A)およびアクリル弾性体粒子(B)の合計を100質量部として、アクリル樹脂(A)の含有量が50〜95質量部、アクリル弾性体粒子(B)の含有量が5〜50質量部であり、かつアクリル樹脂(A)がアクリル樹脂(A)全体を100質量部として、メタクリル酸メチル単位50〜90質量部およびグルタル酸無水物単位10〜50質量部からなるアクリル樹脂を、アクリル樹脂溶液100質量部に対し、5〜40質量部の範囲内で含むアクリル樹脂溶液を用いることが好ましい。
(上記式中、R1、R2は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
さらに、乾燥を少なくとも3段の多段階で行うとともに、前段の乾燥が終了してから後段の乾燥を始めるまでの時間を240時間以上とすることも好ましい。
さらに、乾燥を少なくとも3段の多段階で行うとともに、前段の乾燥が終了してから後段の乾燥を始めるまでの時間を240時間以上とすることも好ましい。
上記において、アクリル樹脂を溶解する溶媒としては特に限定はなく、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系有機溶媒、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒を例示できる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なおアクリル樹脂を溶液重合により調製した場合には、この重合溶液をそのまま製膜用のアクリル溶液としてもよいし、一旦単離したアクリル樹脂を上記有機溶媒に溶解させて製膜用のアクリル樹脂溶液としてもよい。
また溶媒には、上記溶媒以外に、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、シクロペンタンなどの炭化水素系有機溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール系有機溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチルなどのエステル系有機溶媒、エチルセロソルブ、酢酸セロソルブ、tert−ブチルセロソルブなどの多価アルコール系有機溶媒などから選ばれる1種あるいは2種以上を混合して用いてもよい。これらの有機溶媒を混合することで、アクリル樹脂溶液の粘弾性や表面張力が変化して、アクリル樹脂フィルムの表面性や乾燥特性、支持体からの剥離性などの改質を図れることがある。ただしアクリル樹脂の溶解性が悪い有機溶媒を多量に混合するとアクリル樹脂溶液の安定性が悪くなり、アクリル樹脂が析出することがあるため注意が必要である。
アクリル樹脂溶液の濃度は、溶媒の種類やアクリル樹脂の目的とする塗布厚みに応じて適宜調整されるものであるが、アクリル樹脂溶液100質量部に対し、アクリル樹脂(A)とアクリル弾性体粒子(B)の合計が5〜40質量部の範囲内であることが好ましく、10〜30質量部の範囲内であることがより好ましい。なお本発明においてアクリル樹脂溶液の濃度とは、アクリル樹脂溶液全体に対するアクリル樹脂の濃度である。アクリル樹脂溶液の濃度が5質量部未満であると粘度が低く、アクリル樹脂塗膜の初期乾燥段階で有機溶媒の対流によりアクリル樹脂フィルムの平面性が悪くなったり、有機溶媒の乾燥に長時間を要するなど生産性が低下することがある。逆にアクリル樹脂溶液の濃度が40質量部を超えると粘度が高く、ハンドリング性が悪くなり、高精度濾過を行い難くなるなどの問題が生じる傾向にある。
アクリル樹脂溶液はフィルム欠点やヘイズ値を良好なものとするため、濾過により異物を除去することが好ましい。このような濾過に用いるフィルターとしては、例えば、金網、焼結金属、多孔質セラミック、ガラス、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などポリマーからなるフィルター、あるいは上記素材の2種類以上を組み合わせたフィルターが挙げられる。
このアクリル樹脂溶液の濾過精度は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。アクリル樹脂溶液の濾過精度を小さいほど好ましいが、あまり小さ過ぎると目詰まりによるフィルター交換頻度が多くなり、生産性が低下するため好ましくない。アクリル樹脂溶液の濾過制度の下限は0.1μm程度が適切と考えられる。
支持体にアクリル樹脂溶液を塗布する方法としては、アクリル樹脂溶液の粘弾性、アクリル樹脂フィルムの塗布厚み、支持体の種類、使用する有機溶媒などにより適宜選択されるが、正回転ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、カーテンコーター、ファウンテンコーター、キスコーター、スクリーンコーター、コンマコーター、スリットダイコーターなどの塗布方式が挙げられる。
アクリル樹脂溶液を塗布する支持体として、ポリマーフィルム、ドラム、エンドレスベルトなどいずれを用いてもよいが、乾燥後のアクリル樹脂フィルムと支持体の剥離性が良好であることから、ポリマーフィルムを支持体とすることが好ましい。このようなポリマーフィルムの支持体としては、アクリル樹脂溶液で使用している有機溶媒に耐性があれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられ、これらの中では剛性、厚みムラ、無欠点性、コストなどのバランスに優れたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
アクリル樹脂溶液は、支持体上に塗布、乾燥および支持体からの剥離を行いアクリル樹脂フィルムを得る。乾燥工程の前に溶液を凝固液で固化する湿式法等を用いることも好ましい。
支持体としてポリマーフィルムを用いる場合は、フィルム厚みは50〜200μmが好ましく、100〜150μmがより好ましい。支持体のフィルム厚みが50μm未満の場合はフィルムの剛性が低く、塗布あるいは乾燥段階でシワが入り易いためアクリル樹脂フィルムの平面性が悪化するなどの問題が生じ易い。また支持体のフィルム厚みが200μmを超える場合は経済的でなく、アクリル樹脂フィルムに熱が伝わり難いなどの問題が生じやすい。ポリマーフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)が好適である。
アクリル樹脂フィルムを光学用途に使用する場合などは、品位として無欠点であることが好ましい。上記アルカリ樹脂溶液内異物の他に、塗布、乾燥工程でも欠点が発生する可能性があるため、乾燥条件などの適正化を行い、フィルム1m2あたりにおける最大径20μm以上の大きさの気泡欠点個数として好ましくは10個/m2以下、より好ましくは5個/m2以下、さらに好ましくは2個/m2以下である。
また、得られたアクリル樹脂フィルムを工程内で走行させる際、工程へのダメージやフィルムの破断などの発生の原因となるフィルム変形がないことが好まれる。乾燥工程条件の適正化を行い、100m2あたりの突沸欠点(フィルム変形個数)として好ましくは1個/100m2以下、より好ましくは0.5個/100m2以下、さらに好ましくは0.2個/100m2以下である。
本発明のアクリル樹脂フィルムは、支持体上に塗布したアクリル樹脂フィルムの乾燥工程において、初期乾燥、中間乾燥、最終乾燥の少なくとも3段階以上の工程からなることが好ましい。
支持体に塗布したアクリル樹脂フィルムの乾燥条件は、乾燥方式や使用する有機溶媒、アクリル樹脂溶液の粘弾性、アクリル樹脂のガラス転移温度などによって適切な条件が設定されるべきものであるが、初期乾燥温度が使用する有機溶媒の沸点を超えると発泡によるアクリル樹脂フィルムの欠点が生じ易いため溶媒の沸点以下であることが好ましい。あまり低すぎるとアクリル樹脂フィルムの乾燥に長時間を要し生産性が悪いため、下限は0℃程度と考えられる。
乾燥工程は上記初期乾燥、中間乾燥、最終乾燥の少なくとも3段階以上からなる乾燥工程をさらに増やしてもよい。その場合の乾燥温度は、フィルム内泡、フィルム膨らみ状変形などの発泡抑制の観点から段階的あるいは連続的に昇温することが好ましい。また各乾燥段階の乾燥時間は、1〜120分程度で行うことが好ましい。また、乾燥の際に発泡抑制のために、残存揮発分が3〜10質量部の段階まで乾燥を行った後、一度フィルムを保管し厚み方向残存揮発分を均一化させ、その後に再乾燥を実施するのがより好ましい。なお、フィルムの保管時間は240時間以上であることがさらに好ましい。以上のようなプロセスを採用することにより、上記した気泡欠点や突沸欠点を本願規定の値とすることが可能となる。
アクリル樹脂フィルムの乾燥方式は、使用する有機溶媒、アクリル樹脂溶液の粘弾性、アクリル樹脂のガラス転移温度、アクリル樹脂フィルムの厚みなどによって適切な方式が選択されるべきであるが、熱風噴射、ドラム式、赤外線、マイクロ波(誘導加熱)、電磁誘導加熱、紫外線、電子線などの乾燥方式が挙げられる。
アクリル樹脂フィルムの乾燥は、支持体上で最終乾燥まで行ってもよいし、乾燥途中で支持体とアクリル樹脂フィルムを剥離して再度乾燥させてもよい。剥離後、乾燥する場合は乾燥収縮による平面性悪化を防止する目的でフィルム端部を保持することが好ましい。
本発明のアクリル樹脂フィルムは単層フィルムでも、積層フィルムでもよく、積層フィルムとする場合には、例えば、一旦1層を形成しておいてその上に他の層を形成する方法や、口金内や複合管で積層する方法などを用いればよい。
かくして得られるフィルムは、その優れた透明性、耐熱性、無欠点性、加工特性を活かして、電気・電子部品、光学フィルター、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
ここで、光学フィルターとはディスプレイ機器用の部材であり、特に液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどフラットパネルディスプレイに用いられる部材を示す。例えば、プラスチック基板、レンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、電磁波シールドフィルムや、プリズムシート、プリズムシート基材、フレネルレンズ、光ディスク基板、光ディスク基板保護フィルム、導光板、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、タッチパネル用導電フィルムが例示できる。
上記成形品の具体的用途としては、例えば、各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、また、透明性、耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板保護フィルム、光スイッチ、光コネクター等、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、タッチパネル用導電フィルム、カバー等、これら各種の用途にとって極めて有用であり、特に偏光子保護膜として有用である。
[物性の測定法]
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で採用した各種物性の測定方法を記載する。
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で採用した各種物性の測定方法を記載する。
(1)各成分組成
アクリル樹脂フィルムをアセトンに溶解し、この溶液を9,000rpmで30分間遠心分離して、アセトン可溶成分とアセトン不溶成分とに分離した。アセトン可溶成分を60℃で5時間減圧乾燥し、各成分単位を定量してアクリル樹脂の各成分組成を特定した。
アクリル樹脂フィルムをアセトンに溶解し、この溶液を9,000rpmで30分間遠心分離して、アセトン可溶成分とアセトン不溶成分とに分離した。アセトン可溶成分を60℃で5時間減圧乾燥し、各成分単位を定量してアクリル樹脂の各成分組成を特定した。
各成分単位の定量は、プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)法により行った。1H−NMR法では、例えば、グルタル酸無水物単位、メタクリル酸、メタクリル酸メチルからなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中でのスペクトルの帰属を、0.5〜1.5ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素と、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。また上記に加えて、他の共重合成分としてスチレンを含有する共重合体の場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
ゴム質重合体の重量平均粒子径は「Rubber Age, Vol.88, p.484−490 (1960), by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
(2)ヘイズ値、全光線透過率
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、23℃でのヘイズ値(%)と全光線透過率(%)を測定した。測定は3回行い、平均値をとった。
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、23℃でのヘイズ値(%)と全光線透過率(%)を測定した。測定は3回行い、平均値をとった。
全光線透過率およびヘイズは、JIS−K7361−1(1997)およびJIS−K7136(2000)に従い、測定した値である。
(3)破断点伸度
オリエンテック(株)製のフィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”を用いて、次の条件で測定した。
オリエンテック(株)製のフィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”を用いて、次の条件で測定した。
試料サイズ:幅10mm、長さ150mm
チャック間距離:50mm
引張速度:200mm/分
測定環境:23℃、65%RH、大気圧下
得られた荷重−伸び曲線の立ち上がり部の接線から引張りヤング率を求めた。またフィルム破断時の長さからチャック間距離を減じたものをチャック間距離で除したものに100を乗じて破断点伸度とした。測定は5回行い、平均値をとった。
チャック間距離:50mm
引張速度:200mm/分
測定環境:23℃、65%RH、大気圧下
得られた荷重−伸び曲線の立ち上がり部の接線から引張りヤング率を求めた。またフィルム破断時の長さからチャック間距離を減じたものをチャック間距離で除したものに100を乗じて破断点伸度とした。測定は5回行い、平均値をとった。
(4)波長590nmでの面内位相差(Δnd)、厚み方向位相差(Rth)
王子計測(株)社製の楕円偏光測定装置(KOBRA−WPR)と位相差測定装置KOBRA−RE(KOBRA−WR用ソフトウェア)Ver.1.21を用いた。測定は、入射角依存性測定の単独N計算モードにて、低位相差測定法を用い、遅相軸を傾斜中心軸とし、入射角40°(波長590nm)の条件にて行い、面内位相差(Δnd)および厚み方向位相差(Rth)を得た。なお、入射角0°の時の位相差であるR0値を面内位相差(Δnd)とした。また、測定はデシケーター中にて24時間保管したサンプルにて行い、N=5回の平均値を面内位相差(Δnd)および厚み方向位相差(Rth)とした。
王子計測(株)社製の楕円偏光測定装置(KOBRA−WPR)と位相差測定装置KOBRA−RE(KOBRA−WR用ソフトウェア)Ver.1.21を用いた。測定は、入射角依存性測定の単独N計算モードにて、低位相差測定法を用い、遅相軸を傾斜中心軸とし、入射角40°(波長590nm)の条件にて行い、面内位相差(Δnd)および厚み方向位相差(Rth)を得た。なお、入射角0°の時の位相差であるR0値を面内位相差(Δnd)とした。また、測定はデシケーター中にて24時間保管したサンプルにて行い、N=5回の平均値を面内位相差(Δnd)および厚み方向位相差(Rth)とした。
(5)光弾性係数(10−12/Pa)
短辺1cm長辺7cmのサンプル(フィルム厚み(d(nm)))を切り出した。このサンプルを島津(株)社製TRANSDUCER U3C1−5Kを用いて、上下1cmずつをチャックに挟み長辺方向に1kg/mm2(9.81×106Pa)の張力(F)をかけた。この状態で、ニコン(株)社製偏光顕微鏡5892を用いてRe(nm)を測定した。光源としてはナトリウムD線(589nm)を用いた。これらの数値を光弾性係数=Re/(d×F)にあてはめて光弾性係数を計算した。測定は1回行った。
短辺1cm長辺7cmのサンプル(フィルム厚み(d(nm)))を切り出した。このサンプルを島津(株)社製TRANSDUCER U3C1−5Kを用いて、上下1cmずつをチャックに挟み長辺方向に1kg/mm2(9.81×106Pa)の張力(F)をかけた。この状態で、ニコン(株)社製偏光顕微鏡5892を用いてRe(nm)を測定した。光源としてはナトリウムD線(589nm)を用いた。これらの数値を光弾性係数=Re/(d×F)にあてはめて光弾性係数を計算した。測定は1回行った。
(6)残存揮発分
島津製作所(株)製の熱質量測定装置(TGA−50H)と解析装置サーマルアナライザー(TA−50)に、データ処理用のパーソナルコンピューターを組み合わせた装置を用いて測定を行った。支持体から剥離したアクリル樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム約7mgを炉内にセットして、炉内を窒素雰囲気下とし、昇温速度10℃/分で室温から220℃まで加熱した。得られた熱質量曲線から下式により、アクリル樹脂フィルムおよびアクリル樹脂フィルムの残存揮発分を求めた。なお測定は1サンプルにつき2回の測定を行い、その平均値を残存揮発分として用いた。測定は1回行った。
島津製作所(株)製の熱質量測定装置(TGA−50H)と解析装置サーマルアナライザー(TA−50)に、データ処理用のパーソナルコンピューターを組み合わせた装置を用いて測定を行った。支持体から剥離したアクリル樹脂フィルムまたはアクリル樹脂フィルム約7mgを炉内にセットして、炉内を窒素雰囲気下とし、昇温速度10℃/分で室温から220℃まで加熱した。得られた熱質量曲線から下式により、アクリル樹脂フィルムおよびアクリル樹脂フィルムの残存揮発分を求めた。なお測定は1サンプルにつき2回の測定を行い、その平均値を残存揮発分として用いた。測定は1回行った。
残存揮発分(質量部)=
((35℃での質量−200℃での質量)/35℃での質量)×100
(7)屈折率、屈折率差
本発明のアクリル樹脂フィルムにアセトンを加え、4時間還流し、この溶液を9,000rpmで30分間遠心分離により、アセトン可溶分((A)成分)と不溶分((B)成分)に分離した。これらを60℃で5時間減圧乾燥した。得られたそれぞれの固形物を250℃でプレス成形し、厚さ0.1mmのフィルムとした後、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製、DR−M2)によって、23℃、550nm波長における屈折率を測定した。尚、(A)成分と(B)成分の屈折率差については、その絶対値を用いた。測定は1回行った。
((35℃での質量−200℃での質量)/35℃での質量)×100
(7)屈折率、屈折率差
本発明のアクリル樹脂フィルムにアセトンを加え、4時間還流し、この溶液を9,000rpmで30分間遠心分離により、アセトン可溶分((A)成分)と不溶分((B)成分)に分離した。これらを60℃で5時間減圧乾燥した。得られたそれぞれの固形物を250℃でプレス成形し、厚さ0.1mmのフィルムとした後、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製、DR−M2)によって、23℃、550nm波長における屈折率を測定した。尚、(A)成分と(B)成分の屈折率差については、その絶対値を用いた。測定は1回行った。
(8)重量平均分子量(絶対分子量)
得られた熱可塑性重合体をジメチルホルムアミドを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて、重量平均分子量(絶対分子量)を測定した。
得られた熱可塑性重合体をジメチルホルムアミドを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて、重量平均分子量(絶対分子量)を測定した。
(9)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。測定は1回行った。なおガラス転移温度(Tg)としてはJIS K7121−1987の中間点ガラス転移温度(Tmg)を採用する。
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。測定は1回行った。なおガラス転移温度(Tg)としてはJIS K7121−1987の中間点ガラス転移温度(Tmg)を採用する。
(10)気泡欠点検査
フィルムサンプルを1m2黒いシートの上に敷き、暗室内で蛍光灯1本の反射光でフィルム外観欠点検査を目視で行う。見つかった外観欠点について顕微鏡などで全数分類ならびに大きさの確認を行い、最大径20μm以上のフィルム内気泡欠点の個数をカウントする。
フィルムサンプルを1m2黒いシートの上に敷き、暗室内で蛍光灯1本の反射光でフィルム外観欠点検査を目視で行う。見つかった外観欠点について顕微鏡などで全数分類ならびに大きさの確認を行い、最大径20μm以上のフィルム内気泡欠点の個数をカウントする。
(11)突沸欠点検査
乾燥工程後のフィルムを巻き取り機などを使用して低速(2m/分以下)で走行させ、目視で突沸欠点(フィルム膨らみ状変形)を確認、サンプリングを行い、全数金尺などにて大きさを確認、最大径2mm以上の突沸欠点の個数をカウントする。
乾燥工程後のフィルムを巻き取り機などを使用して低速(2m/分以下)で走行させ、目視で突沸欠点(フィルム膨らみ状変形)を確認、サンプリングを行い、全数金尺などにて大きさを確認、最大径2mm以上の突沸欠点の個数をカウントする。
参考例(1)アクリル樹脂(A1)
容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体系懸濁剤(以下の方法で調整した。メタクリル酸メチル20質量部、アクリルアミド80質量部、過硫酸カリウム0.3質量部、イオン交換水1,500質量部を反応器中に仕込み反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保つ。反応は単量体が完全に、重合体に転化するまで続け、アクリル酸メチルとアクリルアミド共重合体の水溶液として得る。得られた水溶液を懸濁剤として使用した)0.05質量部をイオン交換水165質量部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体(a−1)を得た。この共重合体(a−1)の重合率は98%であり、重量平均分子量は9万であった。
容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体系懸濁剤(以下の方法で調整した。メタクリル酸メチル20質量部、アクリルアミド80質量部、過硫酸カリウム0.3質量部、イオン交換水1,500質量部を反応器中に仕込み反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保つ。反応は単量体が完全に、重合体に転化するまで続け、アクリル酸メチルとアクリルアミド共重合体の水溶液として得る。得られた水溶液を懸濁剤として使用した)0.05質量部をイオン交換水165質量部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体(a−1)を得た。この共重合体(a−1)の重合率は98%であり、重量平均分子量は9万であった。
メタクリル酸 :27質量部
メタクリル酸メチル :73質量部
t−ドデシルメルカプタン :1.5質量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:0.4質量部
これに添加剤(NaOCH3)を配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いて、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数100rpm、原料供給量5kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、ペレット状のアクリル樹脂(A1)を得た。このアクリル樹脂(A1)100質量部中のグルタル酸無水物単位の組成比は31質量部であった。
メタクリル酸メチル :73質量部
t−ドデシルメルカプタン :1.5質量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:0.4質量部
これに添加剤(NaOCH3)を配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いて、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数100rpm、原料供給量5kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、ペレット状のアクリル樹脂(A1)を得た。このアクリル樹脂(A1)100質量部中のグルタル酸無水物単位の組成比は31質量部であった。
参考例(2)アクリル樹脂(A2)
アクリル樹脂として、懸濁重合法で得たポリメタクリルメチルーポリメタクリル共重合体(MMA/MAA = 72/28)を用いた以外は参考例1と同様にしてアクリル樹脂(A2)を得た。このアクリル樹脂のグルタル酸無水物単位の組成比は23モル%であった。
アクリル樹脂として、懸濁重合法で得たポリメタクリルメチルーポリメタクリル共重合体(MMA/MAA = 72/28)を用いた以外は参考例1と同様にしてアクリル樹脂(A2)を得た。このアクリル樹脂のグルタル酸無水物単位の組成比は23モル%であった。
参考例(3)アクリル弾性体粒子(B1)
下記により得られたコアシェル重合体を用いた。
下記により得られたコアシェル重合体を用いた。
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120質量部、炭酸カリウム0.5質量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5質量部、過硫酸カリウム0.005質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル53質量部、スチレン17質量部、メタクリル酸アリル(架橋剤)1質量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21質量部、メタクリル酸9質量部、過硫酸カリウム0.005質量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、更に90分間保持して、シェル層を重合させ、この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のアクリル弾性体粒子(B)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の平均粒子径は155nmであった。
得られたアクリル弾性体粒子(B1)とアクリル樹脂(A1)の屈折率差は0.002であった。
(実施例1)
上記の参考例(1)で得られたアクリル樹脂(A1)80質量部および参考例(3)で得られたアクリル弾性体粒子(B1)を20質量部の組成比で配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状のアクリル樹脂を得た。
上記の参考例(1)で得られたアクリル樹脂(A1)80質量部および参考例(3)で得られたアクリル弾性体粒子(B1)を20質量部の組成比で配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状のアクリル樹脂を得た。
次いで、ペレットをメチルエチルケトン溶媒に溶解し、アクリル樹脂濃度が25質量部の溶液とし、アクリル樹脂溶液を1μmカットフィルターにて濾過を行い、異物を除去したアクリル樹脂溶液を得た。このアクリル樹脂溶液をポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、気泡、表面欠点などの発生を抑えるために60℃から145℃までの段階昇温で乾燥を行い、1回目の乾燥後の残存揮発分が5.2質量部のフィルムとした。このアクリル樹脂フィルムを490時間保管した後、148℃から176℃までの段階昇温で再乾燥を行い、残存揮発分0.9質量部で厚み31μmのフィルムを得た。
かくして得られたアクリル樹脂フィルムは耐熱性、透明性、無欠点性に優れており、また加工特性も優れていた。フィルムの特性は次の通りである。
突沸欠点個数(個/100m2) :0.0
気泡欠点個数(個/m2) :0.0
残存揮発分(質量部) :0.9
破断点伸度(%) (MD/TD) :106/123
ガラス転移温度(Tg) :129
全光線透過率(%) :92
ヘイズ(%) :0.6
(比較例1)
再乾燥までの保管時間が6時間である以外は実施例1と同様に実施したアクリル樹脂フィルムを得た。
気泡欠点個数(個/m2) :0.0
残存揮発分(質量部) :0.9
破断点伸度(%) (MD/TD) :106/123
ガラス転移温度(Tg) :129
全光線透過率(%) :92
ヘイズ(%) :0.6
(比較例1)
再乾燥までの保管時間が6時間である以外は実施例1と同様に実施したアクリル樹脂フィルムを得た。
かくして得られたアクリル樹脂フィルムは耐熱性、透明性、無欠点性は優れているが、突沸欠点個数が多く加工特性が不適当である。フィルムの特性は次の通りである。
突沸欠点個数(個/100m2) :4.2
気泡欠点個数(個/m2) :0.0
残存揮発分(質量部) :1.0
破断点伸度(%) (MD/TD) :106/123
ガラス転移温度(Tg) :129
全光線透過率(%) :92
ヘイズ(%) :0.5
(比較例2)
1回目の乾燥後の残存揮発分が5.9質量部、保管時間が330時間である以外は実施例1と同様に実施したアクリル樹脂フィルムを得た。
気泡欠点個数(個/m2) :0.0
残存揮発分(質量部) :1.0
破断点伸度(%) (MD/TD) :106/123
ガラス転移温度(Tg) :129
全光線透過率(%) :92
ヘイズ(%) :0.5
(比較例2)
1回目の乾燥後の残存揮発分が5.9質量部、保管時間が330時間である以外は実施例1と同様に実施したアクリル樹脂フィルムを得た。
かくして得られたアクリル樹脂フィルムは耐熱性、透明性は優れているが、気泡欠点個数が多く無欠点性が不適当である。フィルムの特性は次の通りである。
突沸欠点個数(個/100m2) :0.1
気泡欠点個数(個/m2) :6.5
残存揮発分(質量部) :0.9
破断点伸度(%) (MD/TD) :106/123
ガラス転移温度(Tg) :129
全光線透過率(%) :92
ヘイズ(%) :0.5
気泡欠点個数(個/m2) :6.5
残存揮発分(質量部) :0.9
破断点伸度(%) (MD/TD) :106/123
ガラス転移温度(Tg) :129
全光線透過率(%) :92
ヘイズ(%) :0.5
かくして得られるフィルムは、その優れた透明性、耐熱性、耐光性、靱性を活かして、電気・電子部品、光学フィルター、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
上記成形品の具体的用途としては、例えば、各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、また、透明性、耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等、光記録・光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板保護フィルム、光スイッチ、光コネクター等、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、タッチパネル用導電フィルム、カバー等、これら各種の用途にとって極めて有用である。
Claims (12)
- 下記構造式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂(A)とアクリル弾性体粒子(B)とを含み、アクリル樹脂(A)およびアクリル弾性体粒子(B)
の合計を100質量部として、アクリル樹脂(A)の含有量が50〜95質量部、アクリル弾性体粒子(B)の含有量が5〜50質量部であり、かつ下記(i)〜(v)を満足するアクリル樹脂フィルム。
(i)アクリル樹脂(A)がアクリル樹脂(A)全体を100質量部として、メタクリル酸メチル単位50〜90質量部およびグルタル酸無水物単位10〜50質量部からなる
(ii)全光線透過率が91%以上
(iii)ヘイズが1.5%以下
(iv)ガラス転移温度が120℃以上
(v)1m2あたりにおける最大径20μm以上の大きさの気泡欠点個数が10個以下
- 100m2あたりにおける最大径2mmの突沸欠点が1個以下である、請求項1に記載のアクリル樹脂フィルム。
- 破断点伸度が50%以上である、請求項1または2に記載のアクリル樹脂フィルム。
- 波長590nmの光に対するフィルム面内の位相差が10nm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
- 波長590nmの光に対するフィルム厚み方向の位相差が10nm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
- 波長589nmの光に対する光弾性係数が−2×10−12/Pa以上、2×10−12/Pa以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
- アクリル弾性体粒子(B)の粒子径が50nm以上400nm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
- アクリル弾性体粒子(B)が、内層がアクリル酸アルキルエステル単位および/または芳香族ビニルを含有するゴム弾性体であり、外層がグルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂を含有する重合体であり、アクリル弾性体粒子(B)とアクリル樹脂(A)の屈折率差が0.01以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
- 残存する揮発分がアクリル樹脂フィルム100質量部に対して2質量部以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルム。
- 溶液キャスト法を用いてアクリル樹脂フィルムを製造するに際し、支持体としてポリマーフィルムを用い、このポリマーフィルム上にアクリル樹脂溶液を塗布し、次いで乾燥せしめた後、前記ポリマーフィルムを除去する、請求項1〜9のいずれかに記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
- 下記構造式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂(A)とアクリル弾性体粒子(B)とを含み、アクリル樹脂(A)およびアクリル弾性体粒子(B)の合計を100質量部として、アクリル樹脂(A)の含有量が50〜95質量部、アクリル弾性体粒子(B)の含有量が5〜50質量部であり、かつアクリル樹脂(A)がアクリル樹脂(A)全体を100質量部として、メタクリル酸メチル単位50〜90質量部およびグルタル酸無水物単位10〜50質量部からなるアクリル樹脂を、アクリル樹脂溶液100質量部に対し、5〜40質量部の範囲内で含むアクリル樹脂溶液を用いる、請求項10に記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
- 乾燥を少なくとも3段の多段階で行うとともに、前段の乾燥が終了してから後段の乾燥を始めるまでの時間を240時間以上とする、請求項10または11に記載のアクリル樹脂フィルムの製造方法。
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JP2007080993A JP2008239741A (ja) | 2007-03-27 | 2007-03-27 | アクリル樹脂フィルムおよびその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014063031A (ja) * | 2012-09-21 | 2014-04-10 | Konica Minolta Inc | 光学フィルム及び光学フィルムの製造方法 |
WO2015098095A1 (ja) * | 2013-12-24 | 2015-07-02 | 株式会社カネカ | 光学フィルムの製造方法 |
JP2019214652A (ja) * | 2018-06-11 | 2019-12-19 | 株式会社日本触媒 | アクリル系ポリマーの製造方法 |
KR20220007208A (ko) * | 2020-07-10 | 2022-01-18 | (주)다산디텍 | 아크릴 스크랩 재활용 방법 |
-
2007
- 2007-03-27 JP JP2007080993A patent/JP2008239741A/ja active Pending
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