JP2007171577A - フィルム、偏光子保護フィルムおよび表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】
従来の偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を使用した液晶ディスプレイでは、コントラスト値が十分に大きく出来ず、黒表示時に光漏れがある、あるいは白表示時の輝度が不足するという問題があった。これに対し、本発明の目的は、偏光解消性が小さく、偏光子保護フィルムとして使用した場合に、コントラストの大きな偏光板を得ることである。
【解決手段】
(i)〜(iv)を満足するフィルム。
(i)下式1で示すコントラスト値が5500以上である場所および方向が少なくとも1つ存在する
・コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度)・・・(1)
(ii)全光線透過率が90%以上
(iii)ヘイズが1.5%以下
(iv)ガラス転移温度が120℃以上
【選択図】なし
従来の偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を使用した液晶ディスプレイでは、コントラスト値が十分に大きく出来ず、黒表示時に光漏れがある、あるいは白表示時の輝度が不足するという問題があった。これに対し、本発明の目的は、偏光解消性が小さく、偏光子保護フィルムとして使用した場合に、コントラストの大きな偏光板を得ることである。
【解決手段】
(i)〜(iv)を満足するフィルム。
(i)下式1で示すコントラスト値が5500以上である場所および方向が少なくとも1つ存在する
・コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度)・・・(1)
(ii)全光線透過率が90%以上
(iii)ヘイズが1.5%以下
(iv)ガラス転移温度が120℃以上
【選択図】なし
Description
本発明は、コントラスト値が大きく、偏光子保護フィルムとして使用した場合に、コントラストの大きな偏光板および表示装置を得ることができるフィルムに関する。
従来、偏光子保護フィルムとしてはトリアセチルセルロース(以下「TAC」)などセルロース系材料が主に使用されてきた。しかし、TACは下式1で示す偏光解消性試験におけるコントラスト値(以下コントラスト値)が小さい問題がある。このため、TACを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を使用した液晶ディスプレイでは、コントラスト値が十分に大きく出来ず、黒表示時に光漏れがある、あるいは白表示時の輝度が不足するという問題があった。
コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度) ・・・(1)。
コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度) ・・・(1)。
コントラスト値はフィルム内部の微小異物、フィルムの位相差などによって低下する事が知られている。これらの特性に優れた、すなわちフィルム内部の微小異物が少なく、フィルムの位相差が小さいフィルムとして、下記一般式(2)で示されるグルタル酸無水物単位を有するフィルムが開示されている。(特許文献1)
特許文献1では機械特性改良のためにゴム質重合体を添加しており、樹脂とゴム質重合体の屈折率差を0.02以下とすることで、ゴム質重合体を添加することによるコントラスト値低下を防止している。しかしながら、ゴム質重合体全部の屈折率を樹脂との屈折率差0.02以下とすることは技術的に困難であり、屈折率差が0.02を超えた一部のゴム質重合体は、微小異物としてコントラスト値低下に寄与する可能性がある。
特開2004−292812号公報
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明の目的は、偏光解消性が小さく、偏光子保護フィルムとして使用した場合に、コントラストの大きな偏光板を得ることである。
上記した目的を達成するための本発明のフィルムは以下の構成を有するものである。すなわち、本発明のフィルムは以下の(i)〜(iv)を満足するフィルムである。
(i)式(1)で示すコントラスト値が5500以上となる方向をもつ点が、フィルム面内に1個以上存在する。
コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度) ・・・(1)
(ii)全光線透過率が90%以上。
(iii)ヘイズが1.5%以下。
(iv)ガラス転移温度が120℃以上。
(i)式(1)で示すコントラスト値が5500以上となる方向をもつ点が、フィルム面内に1個以上存在する。
コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度) ・・・(1)
(ii)全光線透過率が90%以上。
(iii)ヘイズが1.5%以下。
(iv)ガラス転移温度が120℃以上。
また、本発明の偏光子保護フィルムは、上記フィルムを1層以上使用した偏光子保護フィルムである。
また、本発明の表示装置は上記偏光子保護フィルムを使用した表示装置である。
また、本発明の表示装置は上記偏光子保護フィルムを使用した表示装置である。
本発明により、偏光解消性が小さく、偏光子保護フィルムとして使用した場合に、コントラストの大きな偏光板を得ることが出来る。
以下に本発明の好ましい実施の形態を説明する。
本発明のフィルムは(i)〜(iv)を満足する事が必要である。なお、これらの特性を満足するためにはフィルムに用いる樹脂の構造の制御が必要である。これについては後で詳述する。
(i)式(1)で示すコントラスト値が5500以上となる方向をもつ点が、フィルム面内に1個以上存在する。
・コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度)・・・(1)。
・コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度)・・・(1)。
コントラスト値がいずれの場所、方向においても5500未満のフィルムを偏光子保護フィルムとして使用すると、コントラスト値が十分に大きく出来ず、黒表示時に光漏れがある、あるいは白表示時の輝度が不足するという問題が生じる。コントラスト値はより好ましくは6000以上、さらに好ましくは6500以上、さらに好ましくは7000以上、最も好ましくは8000以上である。コントラスト値は大きければ大きいほど良く、上限は無いが、10万程度が測定上の上限となる。
また、前記コントラスト値が5500以上となる方向の中の少なくとも1つの方向と面内で45度の角度で交わる方向において、前記式(1)で示すコントラスト値が4000以上となる点が、フィルム面内に1個以上存在することも好ましい。特に45度の角度で交わる方向のコントラスト値を向上することは従来のフィルムでは困難であった。45度の角度で交わる方向のコントラスト値は好ましくは4500以上、より好ましくは5000以上、さらに好ましくは5500以上、最も好ましくは6000以上である。45度の角度で交わる方向のコントラスト値が4000未満の場合、偏光子保護フィルムとした時に斜め方向のコントラストが悪くなることがある。さらに、コントラスト値が5500以上である点と、45度の角度で交わる方向のコントラスト値が4000以上である点が同一である事が好ましい様態である。
コントラスト値が5500以上となる方向をもつ点が、フィルム面内に5個以上存在し、その中の少なくとも5個の点が10mm間隔で直線状に並んでいることも好ましい。コントラスト値は好ましくは6000以上、より好ましくは6500以上、さらに好ましくは7000以上、最も好ましくは7500以上である。また、コントラスト値が5500以上となる方向をもつ点が、フィルム面内に5個以上存在し、その中の少なくとも5個の点が10mm間隔で直線状に並んでいる方向が製膜方向であることも好ましい。製膜方向に10mm間隔に並んだ5個の点は製膜方向のコントラスト斑を代表した値であり、これが5500以上であると、そのフィルムロール全体の特性として5500以上である可能性が大きい。
好ましくはフィルムロール全長について、製膜方向に10mm間隔で直線状に並んでいる点全てのコントラスト値が5500以上である。
コントラスト値について、最も好ましくはフィルム上の任意の点の任意の方向におけるコントラスト値が5500以上である。好ましくは6000以上、より好ましくは6500以上、さらに好ましくは7000以上、最も好ましくは7500以上である。
(ii)全光線透過率が90%以上および(iii)ヘイズが1.5%以下
本発明のフィルムは特に偏光子保護フィルムなど表示装置用光学フィルムとして最適である。ここで、偏光子保護フィルムは入射光をそのまま出射することが望ましい。具体的には全光線透過率が90%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95%以上である。最も好ましくは理論上の上限である100%である。また、全光線透過率が高い場合でもフィルムに濁りがあると光が曲がってしまい、意図する表示が得られないため好ましくない。このためヘイズが1.5%以下であることが必要である。さらに好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。最も好ましくは理論上の下限である0%である。
本発明のフィルムは特に偏光子保護フィルムなど表示装置用光学フィルムとして最適である。ここで、偏光子保護フィルムは入射光をそのまま出射することが望ましい。具体的には全光線透過率が90%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95%以上である。最も好ましくは理論上の上限である100%である。また、全光線透過率が高い場合でもフィルムに濁りがあると光が曲がってしまい、意図する表示が得られないため好ましくない。このためヘイズが1.5%以下であることが必要である。さらに好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。最も好ましくは理論上の下限である0%である。
(iv)ガラス転移温度が120℃以上
本発明のフィルムは特に偏光子保護フィルムなど表示装置用光学フィルムとして最適である。偏光子保護フィルムは液晶ディスプレイなどの表示機器に組み込まれて使用されるが、ここで、製造プロセスおよび使用環境下での耐熱性が必要となる。具体的にはガラス転移温度が120℃以上であることが必要である。より好ましくはガラス転移温度は125℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上である。ガラス転移温度に上限は無いが、200℃を超えると加工が困難になることがある。また、一般に500℃程度が上限である。
本発明のフィルムは特に偏光子保護フィルムなど表示装置用光学フィルムとして最適である。偏光子保護フィルムは液晶ディスプレイなどの表示機器に組み込まれて使用されるが、ここで、製造プロセスおよび使用環境下での耐熱性が必要となる。具体的にはガラス転移温度が120℃以上であることが必要である。より好ましくはガラス転移温度は125℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上である。ガラス転移温度に上限は無いが、200℃を超えると加工が困難になることがある。また、一般に500℃程度が上限である。
本発明のフィルムは、波長550nmの光線に対する位相差が10nm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは2nm以下である。波長550nmの光線に対する位相差が10nm以下であると、光学用等方性フィルムとして偏光板や光ディスクなどの保護フィルム用途で好適に用いることができる。光学等方性が要求される用途において、波長550nmの光線に対する位相差は小さい方が好ましいが、現実的に下限は0.01nm程度と考えられる。このような光学等方性のフィルムを得るためには、位相差を発現させる添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、製膜時の延伸倍率を低くすることなどが有効である。
なお本発明の波長550nmの光線に対する位相差は、王子計測(株)社製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH)を用い、波長分散測定モードにおいて、波長480.4nmの光線に対する位相差、波長548.3nmの光線に対する位相差、波長628.2nmの光線に対する位相差、波長752.7nmの光線に対する位相差を測定し、各波長における位相差(R)および測定波長(λ)からコーシーの波長分散式(R(λ)=a+b/λ2+c/λ4+d/λ6)の各a〜dの係数を求め、このコーシーの波長分散式に波長550nm(λ=550)を代入して求められる値とする。
また本発明のフィルムは、波長590nmの光線に対するフィルム面内の直交軸方向の屈折率をそれぞれnx、ny(ただしnx≧ny)とし、波長590nmの光線に対するフィルムの厚み方向の屈折率をnz、フィルムの厚みをd(nm)とした時に、下式と定義する厚み方向の位相差Rthが10nm以下であることが好ましく、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは5nm以下、最も好ましくは2nm以下である。フィルムの厚み方向の位相差Rthが10nm以下であると、フィルム面内の光学等方性のみならず厚み方向の光学等方性にも優れたフィルムとなるため、偏光板や光ディスクなどの保護フィルム用途でより一層好適に用いることができる。厚み方向の光学等方性が要求される用途において、厚み方向の位相差Rthは小さい方が好ましいが、現実的に下限は0.01nm程度と考えられる。このような厚み方向の位相差Rthが小さいフィルムを得るためには、厚み方向の位相差を発現させる添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、フィルム面内あるいは厚み方向の製膜時の延伸倍率を低くすることなどが有効である。
・厚み方向の位相差Rth(nm)=d×{(nx+ny)/2−nz}。
・厚み方向の位相差Rth(nm)=d×{(nx+ny)/2−nz}。
本発明のフィルムは光弾性係数が−2×10−12/Pa〜2×10−12/Paであることが好ましい。光弾性係数が−2×10−12/Pa〜2×10−12/Paである事により、大画面の液晶テレビに用いたとき、フィルムと貼り合わされた他の部材の熱膨張、あるいは残留応力等に起因して、フィルムが応力を与えられた場合にも位相差の変化が小さいため好ましい。光弾性係数は小さいほど、応力に対する位相差変化が小さいため好ましく、より好ましくは−1×10−12/Pa〜1×10−12/Paである。光弾性係数を小さくするためには脂肪族高分子を用いることが好ましく、耐熱性との両立のため、環状アクリルや、環状ポリオレフィンなどの脂環構造を持つ高分子が好ましい。アクリル樹脂フィルムの光弾性係数は一般的に小さいが、耐熱性向上のために、芳香族マレイミドを共重合したり、芳香族置換基を導入すると、光弾性係数も大きくなってしまう。本発明のフィルムは、たとえばグルタル酸無水物構造を導入することにより耐熱性向上と低光弾性係数を両立出来る。芳香族の中でも例外として負の複屈折を有するスチレンを0.1〜10質量%共重合する事で主たるポリマーの光弾性係数をうち消し、光弾性係数を小さく出来る事がある。
また、本発明のフィルムはフィルム厚みが5μm以上100μm以下であることが好ましい。偏光子保護フィルムとして使用する場合、厚みが5μm未満ではカールが生じたり、偏光子を水分などから保護することが困難となることがある。一方、厚みが100μmを越えると、偏光板全体の厚みが大きくなる問題があり、好ましくない。フィルム厚みはより好ましくは15μm以上80μm以下であり、最も好ましくは20μm以上40μm以下である。
本発明のフィルムの構造について説明する。本発明のフィルムはアクリル系樹脂から成ることが好ましい。アクリル系樹脂は位相差が小さく、また光弾性係数が小さいため、製造工程などの応力で位相差が生じにくく、さらに1〜5%と適度な吸湿率を有するため、偏光子との接着性に優れる。アクリル系樹脂は市販のもの、公知のものであっても、新たに重合したものであっても構わない。市販のもの、公知のものについては従来、樹脂あるいはフィルムとしては知られていたが、その樹脂あるいはフィルムを偏光板保護フィルムに用いることによって、著しくコントラストが向上した偏光板を得られることは知られておらず、偏光子保護フィルムに応用されることは無かった。
さらにアクリル系樹脂としては、ガラス転移温度を120℃以上とするために、環構造を有するものが好ましい。環構造は主鎖に導入しても側鎖に導入しても構わない。
主鎖に環構造を導入する例として、化学式(I)、(II)あるいは(III)が例示できる。
R1:水素、炭素数1〜10の炭化水素基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基
R2:水素、炭素数1〜10の炭化水素基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基
R3:−CH2−、−(C=O)−、
R2:水素、炭素数1〜10の炭化水素基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基
R3:−CH2−、−(C=O)−、
R4:水素、炭素数1〜10の炭化水素基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基
R5:水素、炭素数1〜10の炭化水素基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基
R6:−CH2−、−(C=O)−、
R7:任意の基
R5:水素、炭素数1〜10の炭化水素基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基
R6:−CH2−、−(C=O)−、
R7:任意の基
R8:任意の基
上記化学式(I)は化学式(V)で示されるいずれかの構造単位であることがより好ましい。
上記化学式(I)は化学式(V)で示されるいずれかの構造単位であることがより好ましい。
さらに好ましくは、化学式(I)は化学式(VII)で示される構造単位である。
化学式(I)においてR3が−(C=O)−の場合、さらに詳しくは化学式(VII)で示される構造単位は一般にグルタル酸無水物単位と呼ばれるが、本発明のアクリル系樹脂はグルタル酸無水物単位を含有することにより、耐熱性を著しく向上する事が出来る。また、光学等方用途では位相差が小さいことが要求される。ここでπ電子を多く持つ芳香環を導入すると、耐熱性は脂環構造を導入する以上に向上するが、同時に複屈折が大きくなり、位相差が発現しやすくなる問題がある。このため、光学等方を保ったまま、耐熱性を向上させるためには脂環構造を含有する事が最も好ましい。脂環構造としては化学式(V)で示されるグルタル酸無水物構造、ラクトン環構造あるいは、ノルボルネン構造、シクロペンタン構造などが挙げられる。光学等方と耐熱性については、どの構造を用いても同様の効果が得られるが、ノルボルネン構造、シクロペンタン構造などの主鎖への導入にはこれら構造を有する高価な原料を使用するか、またはこれら構造の前駆体となる高価な原料を使用し、数段階の反応を経て、目的の構造にする必要があるため、工業的に不利である。一方、グルタル酸無水物単位は一般的なアクリル原料から1段階の脱水および/または脱アルコール反応により得られるため工業的に非常に有利である。また、ラクトン環構造は特殊な原料を必要とするものの、1段階の環化反応により得られるため好ましい。
グルタル酸無水物単位を含有するアクリル系樹脂の製造方法を詳述する。後の加熱工程により化学式(I)で表されるグルタル酸無水物単位を与える不飽和カルボン酸単量体(i)および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)と、その他のビニル系単量体単位を含む場合には該単位を与えるビニル系単量体(iii)とを重合させ、共重合体(a)とした後、かかる共重合体(a)を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコールおよび/または脱水による分子内環化反応を行わせることにより製造することが出来る。この場合、典型的には共重合体(a)を加熱することにより2単位の不飽和カルボン酸単位のカルボキシル基が脱水されて、あるいは隣接する不飽和カルボン酸単位と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位からアルコールの脱離により1単位の前記グルタル酸無水物単位が生成される。
この際用いられる不飽和カルボン酸単量体(i)としては、特に限定はなく、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)と共重合させることが可能な、不飽和カルボン酸単量体が使用できる。特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種、または2種以上用いることが出来る。
また、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(ii)としてはメタクリル酸メチルが、得られるフィルムの透明性、耐候性の点から好ましい。さらに他の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体をメタクリル酸メチルと共に1種または2種以上を用いることができる。他の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては特に制限はないが、好ましい例として、は、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。
グルタル酸無水物単位を含有するアクリル系樹脂の重合方法については、基本的にはラジカル重合による、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができるが、不純物がより少ない点で溶液重合、塊状重合、懸濁重合が特に好ましい。
重合温度については、特に制限はないが、色調の観点から、不飽和カルボン酸単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体を含む単量体混合物を95℃以下の重合温度で重合することが好ましい。さらに加熱処理後の着色をより抑制するために好ましい重合温度は85℃以下であり、特に好ましくは75℃以下である。また、重合温度の下限は、重合が進行する温度であれば、特に制限はないが、重合速度を考慮した生産性の面から、通常50℃以上、好ましくは60℃以上である。重合収率あるいは重合速度を向上させる目的で、重合進行に従い重合温度を昇温することも可能であるが、この場合も昇温する上限温度は95℃以下に制御することが好ましく、重合開始温度も75℃以下の比較的低温で行うことが好ましい。また重合時間は、必要な重合度を得るのに十分な時間であれば特に制限はないが、生産効率の点から60〜360分間の範囲が好ましく、90〜180分間の範囲が特に好ましい。
グルタル酸無水物単位を含有するアクリル系樹脂は、重量平均分子量が5万〜15万であることが好ましい。このような分子量を有するアクリル系樹脂(A)は、共重合体(a)の製造時に、共重合体(a)を所望の分子量、すなわち重量平均分子量で5万〜15万に予め制御しておくことにより、達成することができる。重量平均分子量が、15万を越える場合、後工程の加熱脱気時に着色する傾向が見られる。一方、重量平均分子量が、5万未満の場合、アクリル系樹脂フィルムの機械的強度が低下する傾向が見られる。
共重合体(a)の分子量制御方法については、特に制限はなく、例えば通常公知の技術を適用することができる。例えば、アゾ化合物、過酸化物等のラジカル重合開始剤の添加量、あるいはアルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤の添加量等により、制御することができる。特に、重合の安定性、取り扱いの容易さ等から、連鎖移動剤であるアルキルメルカプタンの添加量を制御する方法が好ましく使用することができる。
本発明に使用されるアルキルメルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでもt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
これらアルキルメルカプタンの添加量としては、本発明の特定の分子量に制御するものであれば、特に制限はないが、通常、単量体混合物の全量100質量部に対して、0.2〜5.0質量部であり、好ましくは0.3〜4.0質量部、より好ましくは0.4〜3.0質量部である。
本発明における共重合体(a)を加熱し、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応を行いグルタル酸無水物単位を含有する熱可塑性重合体を製造する方法は、特に制限はないが、ベントを有する加熱した押出機に通して製造する方法や不活性ガス雰囲気または真空下で加熱脱揮できる装置内で製造する方法が生産性の観点から好ましい。中でも、酸素存在下で加熱による分子内環化反応を行うと、黄色度が悪化する傾向が見られるため、十分に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。特に好ましい装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機などを用いることができ、とりわけ二軸押出機が好ましく使用することができる。また、これらに窒素などの不活性ガスが導入可能な構造を有した装置であることがより好ましい。例えば、二軸押出機に、窒素などの不活性ガスを導入する方法としては、ホッパー上部および/または下部より、10〜100リットル/分程度の不活性ガス気流の配管を繋ぐ方法などが挙げられる。
なお、上記の方法により加熱脱揮する温度は、(イ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、好ましくは180〜300℃の範囲、特に200〜280℃の範囲が好ましい。
また、この際の加熱脱揮する時間も特に限定されず、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間、好ましくは2分間〜30分間、とりわけ3〜20分間の範囲が好ましい。特に、押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機スクリューの長さ/直径比(L/D)が40以上であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位が多量に残存するため、加熱成形加工時に反応が再進行し、成形品にシルバーや気泡が見られる傾向や成形滞留時に色調が大幅に悪化する傾向がある。
さらに本発明では、共重合体(a)を上記方法等により加熱する際にグルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は特に制限はなく、共重合体(a)100質量部に対し、0.01〜1質量部程度が適当である。また、これら酸、アルカリ、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。ただし、その触媒保有の色が熱可塑性重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。中でも、アルカリ金属を含有する化合物が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムが好ましく使用することができる。
グルタル酸無水物単位を含有するアクリル系樹脂中の前記化学式(VII)で表されるグルタル酸無水物単位の含有量は、アクリル系樹脂100質量部に対して10〜50質量部、より好ましくは15〜45質量部、最も好ましくは20〜25質量部である。グルタル酸無水物単位が10質量部未満である場合、耐熱性向上効果が小さくなる事がある。また、グルタル酸無水物単位が50質量部を越えると靱性が悪くなる事がある。耐熱性向上と靱性向上はトレードオフの関係にあり、グルタル酸無水物単位の含有量で調整可能である。このためグルタル酸無水物単位の含有量は用途に応じて10〜50質量部の中で任意の値を採用すべきである。ここで、グルタル酸無水物単位以外の構造はメタクリル酸メチル単位50〜90質量部であることが好ましい。
グルタル酸無水物単位を含有するアクリル系樹脂における各成分単位の定量には、一般に赤外分光光度計やプロトン核磁気共鳴(1H−NMR)測定機が用いられる。赤外分光法では、グルタル酸無水物単位は、1800cm−1及び1760cm−1の吸収が特徴的であり、不飽和カルボン酸単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単位から区別することができる。また、1H−NMR法では、例えば、グルタル酸無水物単位、メタクリル酸、メタクリル酸メチルからなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中でのスペクトルの帰属を、0.5〜1.5ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素と、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。また、上記に加えて、他の共重合成分としてスチレンを含有する共重合体の場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
化学式(I)で示すグルタル酸無水物構造はアンモニアおよび/またはアミンと反応せしめることで、化学式(II)に示すグルタルイミド構造に転化せしめることが出来る。化学式(II)に示すグルタルイミド構造は化学式(I)で示すグルタル酸無水物構造に対し、加水分解性などの点で上回る一方、残留アミンによる着色の問題が生じることがある。
主鎖に環構造を導入する他の例として公知の方法で化学式(III)に示すまれイミド構造を導入しても良い。
側鎖に環構造を導入する例として、化学式(IV)が例示できる。
R9:任意の脂肪族環の基
化学式(IV)においてR9は化学式(VI)で示されるいずれかの構造単位を有することが好ましい。
化学式(IV)においてR9は化学式(VI)で示されるいずれかの構造単位を有することが好ましい。
これらはR9に置換基を有するモノマーを重合することによって得る。
本発明においては、アクリル系樹脂に対し、20質量%未満の弾性体粒子を添加しても構わない。アクリル系樹脂に弾性体粒子を分散せしめることにより、アクリル系樹脂の優れた特性を大きく損なうことなく耐衝撃性を向上することができる。弾性体粒子の添加量は好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは1質量%未満である。添加する弾性体粒子は以下に記載するとおり、粒径、屈折率を正確に制御する必要があるが、すべての粒子について、完全に粒径、屈折率を制御することは技術的に困難である。このため、粒径および/または屈折率が設計値から外れた弾性体粒子が異物として関与し、コントラストを低下せしめる。すなわち、弾性体粒子の添加量の上限は弾性体粒子の品質によって左右されるが、現在の技術では20質量%を超えて弾性体粒子を添加すると、コントラスト値が5500未満になることがある。
アクリル弾性体粒子としては、1以上のゴム質重合体を含む層と、それとは異種の重合体から構成される1以上の層から構成され、かつ、これらの各層が隣接し合った構造の、いわゆるコアシェル型と呼ばれる多層構造重合体や、ゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体などからなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体等が好ましく使用できる。
弾性体粒子の重量平均粒子径としては、50〜400nmとすることが好ましく、より好ましくは100〜200nmである。重量平均粒径が50nm未満の場合は靱性の向上が十分でないことがあり、400nmを超える場合はコントラスト値が低下することがある。
弾性体粒子としては、上述した条件を満たす市販品を用いてもよく、また公知の方法により作製して用いることもできる。
多層構造重合体の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製”メタブレン”、鐘淵化学工業社製”カネエース”、呉羽化学工業社製”パラロイド”、ロームアンドハース社製”アクリロイド”、ガンツ化成工業社製”スタフィロイド”およびクラレ社製”パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
なお、ゴム質重合体の重量平均粒子径は「Rubber Age, Vol.88, p.484−490 (1960), by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
本発明において、弾性体粒子を添加する場合はアクリル系樹脂と弾性体粒子のそれぞれの屈折率が近似している必要がある。それぞれの屈折率が近似している場合、アクリル系樹脂フィルムにおいて透明性を得ることができる。具体的には、屈折率の差が0.05以下であることが必要であり、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。このような屈折率条件を満たすためには、アクリル系樹脂の各単量体単位組成比を調整する方法、および/またはアクリル弾性体粒子に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成比を調製する方法などにより、屈折率差を小さくすることができ、透明性に優れたアクリル系樹脂フィルムを得ることができる。具体的にはコア層がアクリル酸ブチル/スチレン重合体で、最外層がメタクリル酸メチル/化学式(VII)で表されるグルタル酸無水物単位からなる共重合体、またはメタクリル酸メチル/化学式(VII)で表されるグルタル酸無水物単位/メタクリル酸重合体である。ここで、アクリル系樹脂にアクリル弾性体粒子やその他の添加剤を配合する方法としては例えば、アクリル系樹脂またはアクリル系樹脂とその他の添加成分を予めブレンドした後、通常200〜350℃にて、一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法を用いることができる。
溶融混練において、アクリル弾性体粒子に付与したシェル部分などの不飽和カルボン酸単量体単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位の環化反応も同時に行うことができる。
尚、ここで言う屈折率差とは、アクリル系樹脂(A)が可溶な溶媒に、本発明のアクリル系樹脂フィルムを適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(アクリル系樹脂(A))と不溶部分(アクリル弾性体粒子(B))をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
また、実質的なアクリル系樹脂フィルム中でのアクリル系樹脂(A)とアクリル弾性体粒子(B)の共重合組成は、上記の溶媒による可溶成分と不溶成分の分離操作により、各成分を個別に分析可能である。
弾性体粒子の添加量は好ましくは5質量%以下、より好ましくは0質量%である。すべての弾性体粒子とアクリル系樹脂の屈折率差が0.00の場合、弾性体粒子の添加によって、コントラスト値は影響を受けないが、一般に弾性体粒子は粒径や分子構造、物性にバラツキがあり、すべての屈折率差を0.00にすることは困難である。このため、弾性体粒子を添加するとコントラストが低下することがある。
本発明のフィルムの製造方法には、公知の方法を使用することができる。すなわち、インフレーション法、溶融押し出し法、溶液製膜法(流延法)、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、好ましくは、溶融押し出し法、溶液製膜法(流延法)が使用できる。
溶液製膜法で製膜する場合、残揮発分を含むフィルム100質量部中の残存揮発分を1質量部以下とすることが好ましい。残存揮発分が3質量部を越えると、見かけのTgが低下したり、ブロッキングによりフィルムの巻き取り性が悪化したり、有機溶媒が経時でブリードアウトして他部材との接着性を低下させるなどの問題が生じ易くなる。
本発明においてはフィルムの残存揮発分は次の評価方法によって求められるものと定義する。熱質量測定装置を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度10℃/分の条件下でアクリル系樹脂フィルムの熱減量を測定し、25℃での質量と200℃での質量から以下の式で残存揮発分を求める。
・フィルムの残存揮発分(質量部)=((25℃での質量−200℃での質量)/25℃での質量)×100。
残存揮発分は、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下、最も好ましくは0.1質量部以下である。フィルム中の残存揮発分は低いほど好ましいが現実的には100ppm程度と考えられる。
・フィルムの残存揮発分(質量部)=((25℃での質量−200℃での質量)/25℃での質量)×100。
残存揮発分は、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下、最も好ましくは0.1質量部以下である。フィルム中の残存揮発分は低いほど好ましいが現実的には100ppm程度と考えられる。
次に、本発明の好ましい製膜方法の一つである溶液製膜法について説明する。樹脂を溶解する溶媒としては特に限定は無く、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系有機溶媒、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒を例示出来る。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なおアクリル系樹脂を溶液重合により調製した場合には、この重合溶液をそのまま製膜用のアクリル溶液としてもよいし、一旦単離したアクリル系樹脂を上記有機溶媒に溶解させて製膜用のアクリル系樹脂溶液としてもよい。
また溶媒には、上記溶媒以外に、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、シクロペンタンなどの炭化水素系有機溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール系有機溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−nーブチルなどのエステル系有機溶媒、エチルセロソルブ、酢酸セロソルブ、tert−ブチルセロソルブなどの多価アルコール系有機溶媒などから選ばれる1種あるいは2種以上を混合して用いてもよい。これらの有機溶媒を混合することで、アクリル系樹脂溶液の粘弾性や表面張力が変化して、フィルムの表面性や乾燥特性、支持体からの剥離性などの改質を図れることがある。ただし樹脂の溶解性が悪い有機溶媒を多量に混合すると樹脂溶液の安定性が悪くなり、樹脂が析出することがあるため注意が必要である。
樹脂溶液の濃度は、溶媒の種類や樹脂の目的とする塗布厚みに応じて適宜調整されるものであるが、樹脂溶液100質量部に対し、樹脂が5〜60質量部の範囲内であることが好ましく、10〜40質量部の範囲内であることがより好ましい。樹脂溶液の濃度が5質量部未満であると粘度が低く、樹脂塗膜の初期乾燥段階で有機溶媒の対流によりフィルムの平面性が悪くなったり、有機溶媒の乾燥に長時間を要するなど生産性が低下するために好ましくない。逆に樹脂溶液の濃度が60質量部を越えると粘度が高く、ハンドリング性が悪くなり、高精度濾過を行い難くなるなどの問題が生じるため好ましくない。
樹脂溶液はフィルム欠点やヘイズ値を良好なものとするため、濾過により異物を除去することが好ましい。このような濾過に用いるフィルターとしては、例えば、金網、焼結金属、多孔質セラミック、ガラス、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などポリマーからなるフィルター、あるいは上記素材の2種類以上を組み合わせたフィルターが挙げられる。
この樹脂溶液の濾過精度は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。アクリル系樹脂溶液の濾過精度を小さいほど好ましいが、あまり小さ過ぎると目詰まりによるフィルター交換頻度が多くなり、生産性が低下するため好ましくない。樹脂溶液の濾過制度の下限は0.1μm程度が適切と考えられる。
支持体に樹脂溶液を塗布する方法としては、樹脂溶液の粘弾性、樹脂フィルムの塗布厚み、支持体の種類、使用する有機溶媒などにより適宜選択されるが、正回転ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、カーテンコーター、ファウンテンコーター、キスコーター、スクリーンコーター、コンマコーター、スリットダイコーターなどの塗布方式が挙げられる。
樹脂溶液を塗布する支持体として、ポリマーフィルム、ドラム、エンドレスベルトなどいずれを用いてもよいが、乾燥後のフィルムと支持体の剥離性が良好であることから、ポリマーフィルムを支持体とすることが好ましい。このようなポリマーフィルムの支持体としては、樹脂溶液で使用している有機溶媒に耐性があれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられ、これらの中では剛性、厚みムラ、無欠点性、コストなどのバランスに優れたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
樹脂溶液は、支持体上に塗布、乾燥および支持体からの剥離を行いフィルムを得る。乾燥工程の前に溶液を凝固液で固化する湿式法等を用いることも好ましい。
支持体としてポリマーフィルムを用いる場合は、支持体のフィルム厚みは20〜200μmが好ましく、70〜150μmがより好ましい。支持体のフィルム厚みが20μm未満の場合はフィルムの剛性が低く、塗布あるいは乾燥段階でシワが入り易いためフィルムの平面性が悪化するなどの問題が生じ易い。また支持体のフィルム厚みが200μmを越える場合は経済的でなく、フィルムに熱が伝わり難いなどの問題が生じるため好ましくない。
本発明のフィルムは、支持体上に塗布した樹脂溶液の乾燥工程において、初期乾燥、中間乾燥、最終乾燥の少なくとも3段階以上の工程からなることが好ましい。
乾燥工程は上記初期乾燥、中間乾燥、最終乾燥の3段階からなる乾燥工程をさらに増やしてもよい。その場合の乾燥温度は、発泡抑制の観点から段階的あるいは連続的に昇温することが好ましい。また各乾燥段階の乾燥時間は、1〜120分程度で行うことが好ましい。
フィルムの乾燥方式は、使用する有機溶媒、樹脂溶液の粘弾性、樹脂のガラス転移温度、フィルムの厚みなどによって適切な方式が選択されるべきであるが、熱風噴射、ドラム式、赤外線、マイクロ波(誘導加熱)、電磁誘導加熱、紫外線、電子線などの乾燥方式が挙げられる。
フィルムの乾燥は、支持体上で最終乾燥まで行ってもよいし、乾燥途中で支持体とフィルムを剥離して再度乾燥させてもよい。剥離後、乾燥する場合は乾燥収縮による平面性悪化を防止する目的でフィルム端部を保持する事が好ましい。
本発明のフィルムは単層フィルムでも、積層フィルムでもよく、積層フィルムとする場合には、例えば、一旦1層を形成しておいてその上に他の層を形成する方法や、口金内や複合管で積層する方法などを用いればよい。
インフレーション法やT−ダイ法による製造法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。好ましくはL/D=25以上120以下の二軸混練押出機が着色を防ぐために好ましい。本発明のフィルムを製造するための溶融押出温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。溶融剪断速度は1000S−1以上5000S−1以下が好ましい。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。キャスト方法は溶融した樹脂をギアーポンプで計量した後にTダイ口金から吐出させ、冷却されたドラム上に、それ自体公知の密着手段である静電印加法、エアーチャンバー法、エアーナイフ法、プレスロール法などでドラムなどの冷却媒体に密着冷却固化させて室温まで急冷し、未延伸のフィルムを得ること好ましい。
耐折回数を向上するためには、得られた未延伸のフィルムを、さらに二軸延伸する事が好ましい。 二軸延伸の延伸方式は特には限定されず、逐次二時延伸方式、同時二軸延伸方式などの方法を用いることができる。
同時二軸延伸法により延伸する場合は、リニアモーターを利用した駆動方式(特公昭63−12772号公報等)によるテンターを用いて同時二軸延伸する方法が好ましいが、特に限定されず、フィルム把持クリップの駆動方式には、チェーン駆動方式、スクリュー方式、パンタグラフ方式、などを採用することもできる。同時二軸延伸の温度としては、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg以上、(ガラス転移温度Tg+50℃)以下であることが好ましい。延伸温度がこの範囲を大きくはずれると、均一延伸ができなくなり、厚みむらやフィルム破れが生じ好ましくない。延伸倍率は、縦方向、横方向それぞれ1.1〜5倍とすればよい。耐折回数を向上させるために1.1〜2.5倍が特に好ましい。延伸速度としては特に限定されないが、100〜50000%/分が好ましい。
また、逐次二軸延伸により延伸する場合は、得られた未配向のフィルムをアクリル系樹脂の(ガラス転移温度Tg−30℃)以上、(ガラス転移温度Tg+50℃)以下に加熱されたロール群上で接触昇温させて、長手方向に1.1〜2.5倍延伸し、これをいったん冷却した後に、テンタークリップに該フィルムの端部を噛ませて幅方向に樹脂の(ガラス転移温度Tg+5℃)以上、(ガラス転移温度Tg+50℃)以下の温度雰囲気下の中で1.1〜2.5倍延伸し、二軸配向したフィルムを得るのである。
逐次二軸延伸により延伸する場合、ロールとフィルムの接触による傷を低減する目的でカバーフィルムを少なくとも1方の面に貼り合わせて延伸することが好ましい。カバーフィルムは、公知の樹脂のフィルムを使用することができる。カバーフィルムの具体例としては、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。特に好ましくは、ポリプロピレンフィルムおよび/またはポリエチレンナフタレートフィルムである。
次に、熱収縮率の低減および平面性を付与するために、必要に応じて熱処理を行う。本発明の効果である低い熱収縮率を得るために、熱処理条件としては、定長下、微延伸下、弛緩状態下のいずれかで、(ガラス転移温度Tg)〜(ガラス転移点+130℃)の範囲で0.5〜60秒間行うことが好適であり、(ガラス転移温度Tg+40℃)〜(ガラス転移点+80℃)の範囲で0.5〜10秒間行うことがもっとも好適である。上記範囲以下では熱収縮率が大きくなり、上記した範囲以上ではヘイズが高く、耐衝撃性が低下する場合がある。
このようにそれぞれの方法で二軸配向し熱処理を施したフィルムを、室温まで徐冷しワインダーにて巻き取る。冷却方法は、二段階以上に分けて室温まで徐冷するのが好ましい。このとき、長手方向、幅方向に0.5〜10%程度のリラックス処理を行うことは、熱収縮率を低減するのに有効である。冷却温度としては、一段目が(熱処理温度−20℃)〜(熱処理温度−80℃)、二段目が(一段目の冷却温度−30℃)〜(一段目の冷却温度−40℃)の範囲が好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明のフィルムは少なくとも1面にハードコート層が形成されていても良い。ハードコート形成方法に特に限定は無く、公知の方法を用いることが出来るが、多官能アクリレートを用いる方法などが例示出来る。多官能アクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトレエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコーリジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジメタクリレートの如きジアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレートのようなトリアクリレート類;ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジ‐トリメチロールプロパンテトラアクリレートの如きテトラアクリレート類;並びにペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレートのようなペンタアクリレート類を挙げることができる。
また、本発明のフィルムは少なくとも1面に反射防止膜を形成しても良い。反射防止膜についても限定は無く、公知の方法を用いることが出来る。反射防止膜は無機化合物を用いた乾式でも有機化合物を用いた湿式でも好ましく、低屈折率層を1層用いた単層形でも、高屈折率層、低屈折率層、中屈折率層を任意の層用いた多層形でも好ましく用いられる。
かくして得られるフィルムは、その優れたコントラスト値、透明性、耐熱性を活かして、電気・電子部品、光学部材、自動車、航空機など運輸機器部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
上記部品、部材の具体的用途としては、例えば、窓、各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、光ファイバー、光導波路、光スイッチ、光コネクター等が挙げられる。
さらに、光学部材とは主にディスプレイ機器用の部材であり、特に液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどフラットパネルディスプレイに用いられる部材を示す。例えば、プラスチック基板、レンズ、偏光板、偏光子保護フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、電磁波シールドフィルム、プリズムシート、プリズムシート基材、フレネルレンズ、光ディスク基板、光ディスク基板保護フィルム、導光板、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、タッチパネル用導電フィルムが例示出来る。
本発明のフィルムは特に偏光子保護フィルムとして有用である。
[物性の測定法]
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で採用した各種物性の測定方法を記載する。
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で採用した各種物性の測定方法を記載する。
(1)コントラスト
テーブルと水平なステージに下から順に偏光板、試料、偏光板を設置する。ここで下側の偏光板は回転可能とする。
テーブルから垂直上向きに光源から出た出射光を上記偏光板、試料、偏光板を通過せしめ、トプコン社製色彩輝度計BM−5Aで輝度を測定した。ここで偏光板は日東電工社製偏光フィルム G1220DUを用いた。また、光源は蛍光管 FL6AEX規格を用いた。
測定はまず、上下の偏光板の吸収軸が並行になるようにし、試料を0.1°ピッチで±2°回転せしめる。この測定の中で最大の輝度となった値を「並行時の最大輝度」とする。次に下側の偏光板を時計回りに90°回転させ、試料を0.1°ピッチで±2°回転せしめる。この測定の中で最小の輝度となった値を「偏光板直交時の最小輝度」とする。次に式(1)に従いコントラスト値を算出した。測定は5回行い、平均値をとった。
・コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度)・・・(1)。
テーブルと水平なステージに下から順に偏光板、試料、偏光板を設置する。ここで下側の偏光板は回転可能とする。
テーブルから垂直上向きに光源から出た出射光を上記偏光板、試料、偏光板を通過せしめ、トプコン社製色彩輝度計BM−5Aで輝度を測定した。ここで偏光板は日東電工社製偏光フィルム G1220DUを用いた。また、光源は蛍光管 FL6AEX規格を用いた。
測定はまず、上下の偏光板の吸収軸が並行になるようにし、試料を0.1°ピッチで±2°回転せしめる。この測定の中で最大の輝度となった値を「並行時の最大輝度」とする。次に下側の偏光板を時計回りに90°回転させ、試料を0.1°ピッチで±2°回転せしめる。この測定の中で最小の輝度となった値を「偏光板直交時の最小輝度」とする。次に式(1)に従いコントラスト値を算出した。測定は5回行い、平均値をとった。
・コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度)・・・(1)。
(2)ヘイズ値、全光線透過率
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、23℃でのヘイズ値(%)と全光線透過率(%)を測定した。測定は3回行い、平均値をとった。
全光線透過率およびヘイズは、JIS−K7361およびJIS−K7136に従い、測定した値である。
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、23℃でのヘイズ値(%)と全光線透過率(%)を測定した。測定は3回行い、平均値をとった。
全光線透過率およびヘイズは、JIS−K7361およびJIS−K7136に従い、測定した値である。
(3)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。測定は1回行った。なおガラス転移温度(Tg)としてはJIS K7121−1987の中間点ガラス転移温度(Tmg)を採用する。
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定した。測定は1回行った。なおガラス転移温度(Tg)としてはJIS K7121−1987の中間点ガラス転移温度(Tmg)を採用する。
(4)波長550nmでの位相差
王子計測(株)社製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH)を用い、波長分散測定モードにおいて、波長480.4nmの光線に対する位相差、波長548.3nmの光線に対する位相差、波長628.2nmの光線に対する位相差、波長752.7nmの光線に対する位相差を測定し、各波長における位相差(R)および測定波長(λ)からコーシーの波長分散式(R(λ)=a+b/λ2+c/λ4+d/λ6)の各a〜dの係数を求め、このコーシーの波長分散式に波長550nm(λ=550)を代入して求めた。測定は1回行った。
王子計測(株)社製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH)を用い、波長分散測定モードにおいて、波長480.4nmの光線に対する位相差、波長548.3nmの光線に対する位相差、波長628.2nmの光線に対する位相差、波長752.7nmの光線に対する位相差を測定し、各波長における位相差(R)および測定波長(λ)からコーシーの波長分散式(R(λ)=a+b/λ2+c/λ4+d/λ6)の各a〜dの係数を求め、このコーシーの波長分散式に波長550nm(λ=550)を代入して求めた。測定は1回行った。
(5)厚み方向の位相差Rth
王子計測(株)社製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH)を用い、波長590nmの光線に対するアクリル系樹脂フィルム面内の直交軸方向の屈折率、nx、ny(ただしnx≧ny)、波長590nmの光線に対するアクリル系樹脂フィルムの厚み方向の屈折率nzを測定し、アクリル系樹脂フィルムの厚みをd(nm)とした時に下記式から求めた。測定は1回行った。
・厚み方向の位相差Rth(nm)=d×{(nx+ny)/2−nz}。
王子計測(株)社製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH)を用い、波長590nmの光線に対するアクリル系樹脂フィルム面内の直交軸方向の屈折率、nx、ny(ただしnx≧ny)、波長590nmの光線に対するアクリル系樹脂フィルムの厚み方向の屈折率nzを測定し、アクリル系樹脂フィルムの厚みをd(nm)とした時に下記式から求めた。測定は1回行った。
・厚み方向の位相差Rth(nm)=d×{(nx+ny)/2−nz}。
(6)光弾性係数(10−12/Pa)
短辺1cm長辺7cmのサンプルを切り出した。このサンプルを島津(株)社製TRANSDUCER U3C1−5Kを用いて、上下1cmずつをチェックに挟み長辺方向に1kg/mm2(9.81×106Pa)の張力(F)をかけた。この状態で、ニコン(株)社製偏光顕微鏡5892を用いてRe(nm)を測定した。光源としてはナトリウムD線(589nm)を用いた。これらの数値を光弾性係数=Re/(d×F)にあてはめて光弾性係数を計算した。測定は1回行った。
短辺1cm長辺7cmのサンプルを切り出した。このサンプルを島津(株)社製TRANSDUCER U3C1−5Kを用いて、上下1cmずつをチェックに挟み長辺方向に1kg/mm2(9.81×106Pa)の張力(F)をかけた。この状態で、ニコン(株)社製偏光顕微鏡5892を用いてRe(nm)を測定した。光源としてはナトリウムD線(589nm)を用いた。これらの数値を光弾性係数=Re/(d×F)にあてはめて光弾性係数を計算した。測定は1回行った。
(実施例1)
メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部およびイオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保った。単量体が完全に、重合体に転化するまで反応を続け、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体の水溶液を得た。得られた水溶液を懸濁剤として使用した。容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、前記のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体懸濁剤0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体を得た。この共重合体の重合率は98%であり、重量平均分子量は13万であった。
メタクリル酸 27重量部
メタクリル酸メチル 73重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.4重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.2重量部。
メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部およびイオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保った。単量体が完全に、重合体に転化するまで反応を続け、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体の水溶液を得た。得られた水溶液を懸濁剤として使用した。容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、前記のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体懸濁剤0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体を得た。この共重合体の重合率は98%であり、重量平均分子量は13万であった。
メタクリル酸 27重量部
メタクリル酸メチル 73重量部
n−ドデシルメルカプタン 0.4重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.2重量部。
得られた共重合体を38mmφ二軸・単軸複合型連続混練押出機(HTM38(CTE社製、L/D=47.5)に供給した。ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら、スクリュー回転数75rpm、原料供給量10kg/h、シリンダ温度290℃で分子内環化反応を行い、アクリル系樹脂を得た。このアクリル系樹脂のグルタル酸無水物単位の組成比は23モル%であった。
攪拌機を備えた300mlセパラブルフラスコに得られたアクリル樹脂50g、2−ブタノン150gを入れ、ダブルヘリカルリボン撹拌翼で24時間撹拌した。得られた溶液を1μmカットのガラスフィルターで濾過し、アクリル系樹脂溶液を得た。
アクリル系樹脂溶液の一部を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm)を固定したガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを50℃で10分間加熱し、自己支持性のフィルムを得た。得られたフィルムをポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がして金枠に固定して、さらに100℃で10分間、120℃で20分間、140℃で20分間、170℃で40分間加熱し、フィルムを得た。物性を表1および表2にまとめた。
(参考例1)弾性体粒子の合成
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部、過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル53重量部、スチレン17重量部、メタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部、過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は155nmであった。
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部、過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル53重量部、スチレン17重量部、メタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部、過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の数平均粒子径は155nmであった。
(比較例1、2)
参考例1で得たアクリル系樹脂および参考例1で得た弾性体粒子を表1に示した組成比で配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状のアクリル系樹脂を得た。実施例1と同様に溶解、製膜してフィルムを得た。比較例1の物性を表1および表2に、比較例2の物性を表1および表3にまとめた。
参考例1で得たアクリル系樹脂および参考例1で得た弾性体粒子を表1に示した組成比で配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてスクリュー回転数150rpm、シリンダ温度280℃で混練し、ペレット状のアクリル系樹脂を得た。実施例1と同様に溶解、製膜してフィルムを得た。比較例1の物性を表1および表2に、比較例2の物性を表1および表3にまとめた。
(比較例3)
攪拌機を備えた300mlセパラブルフラスコに得られたトリアセチルセルロース10g、ジクロロメタン72g、メタノール18を入れ、ダブルヘリカルリボン撹拌翼で24時間撹拌した。得られた溶液を1μmカットのガラスフィルターで濾過し、トリアセチルセルロース溶液を得た。
攪拌機を備えた300mlセパラブルフラスコに得られたトリアセチルセルロース10g、ジクロロメタン72g、メタノール18を入れ、ダブルヘリカルリボン撹拌翼で24時間撹拌した。得られた溶液を1μmカットのガラスフィルターで濾過し、トリアセチルセルロース溶液を得た。
トリアセチルセルロース溶液の一部を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm)を固定したガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを50℃で5分間加熱し、自己支持性のフィルムを得た。得られたフィルムをポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がして金枠に固定して、さらに80℃で10分間、120℃で10分間加熱し、厚み40μmのフィルムを得た。物性を表1および表3にまとめた。
(比較例4)
フィルムの厚みを80μmにする以外は比較例2と同様にしてフィルムを得た。物性を表1および表3にまとめた。
フィルムの厚みを80μmにする以外は比較例2と同様にしてフィルムを得た。物性を表1および表3にまとめた。
なお、表2,3において、試料方向の角度は装置上側偏光板の吸収軸と試料の製膜方向の成す角度を示す。また、各測定に於いて、測定場所は任意に選ばれた点である。
かくして得られるフィルムは、その優れたコントラスト値、透明性、耐熱性を活かして、電気・電子部品、光学部材、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。特に偏光子保護フィルムとして有用である。
Claims (17)
- 下記(i)〜(iv)を満足するフィルム。
(i)式(1)で示すコントラスト値が5500以上となる方向をもつ点が、フィルム面内に1個以上存在する。
コントラスト値=(偏光板並行時の最大輝度)/(偏光板直交時の最小輝度) ・・・(1)
(ii)全光線透過率が90%以上。
(iii)ヘイズが1.5%以下。
(iv)ガラス転移温度が120℃以上。 - 前記コントラスト値が5500以上となる方向の中の少なくとも1つの方向と面内で45度の角度で交わる方向において、前記式(1)で示すコントラスト値が4000以上となる点が、フィルム面内に1個以上存在する請求項1に記載のフィルム。
- 前記式(1)で示すコントラスト値が5500以上となる方向をもつ点が、フィルム面内に5個以上存在し、その中の少なくとも5個の点が10mm間隔で直線状に並んでいる請求項1または2に記載のフィルム。
- 前記直線状に並んでいる方向が製膜方向である請求項3に記載のフィルム。
- 波長550nmの光に対するフィルム面内の位相差が10nm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
- 波長590nmの光に対するフィルム厚み方向の位相差が10nm以下である請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。
- 波長550nmの光に対する光弾性係数が−2×10−12/Pa以上、2×10−12/Pa以下である請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム。
- フィルム厚みが5μm以上100μm以下である請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
- フィルムがアクリル系樹脂フィルムである請求項1〜8のいずれかに記載のフィルム。
- フィルムが環構造を有するアクリル系樹脂フィルムである請求項9に記載のフィルム。
- フィルムがフィルム全体を100質量部としてメタクリル酸メチル単位50〜90質量部および化学式(VII)で示される構造単位10〜50質量部を用いてなる、請求項14に記載のフィルム。
- 請求項1〜15のいずれかに記載のフィルムを少なくとも1層使用した偏光子保護フィルム
- 請求項1〜16のいずれかに記載のフィルムまたは偏光子保護フィルムを使用した表示装置。
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