JP4779200B2 - 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents
難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4779200B2 JP4779200B2 JP2000386250A JP2000386250A JP4779200B2 JP 4779200 B2 JP4779200 B2 JP 4779200B2 JP 2000386250 A JP2000386250 A JP 2000386250A JP 2000386250 A JP2000386250 A JP 2000386250A JP 4779200 B2 JP4779200 B2 JP 4779200B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- resin composition
- weight
- flame retardant
- polymer
- parts
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性樹脂本来の機械的特性(耐衝撃性、耐熱性)を損なうことなく難燃性、耐光性、滞留安定性、流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリカーボネート樹脂(以下PCと略す)とゴム強化スチレン系樹脂とを含有する樹脂組成物はすぐれた機械的性質、成形加工性、電気絶縁性によって家庭電気機器、OA機器、自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。しかしながら、用途によっては安全性の問題で、難燃性が必要になり、この難燃化に対し種々の技術が提案されてきた。
【0003】
一般的には、難燃化効率の高い臭素化合物などのハロゲン系難燃剤と酸化アンチモンを樹脂に配合して難燃化する方法が採用されている。しかしながら、この方法は燃焼の際の発煙量が多い等の問題点を有している。
【0004】
そこで、近年これらのハロゲン系難燃剤の欠点を克服するためにハロゲンを全く含まない難燃性樹脂が強く望まれるようになった。
【0005】
塩素および臭素系難燃剤を使わずに熱可塑性樹脂を難燃化する方法としては、特開平2−115262号公報に記載の、PC/ABSアロイに燐酸エステルを配合する方法、特開平8−302175号公報に記載の、グラフト(共)重合体中に残存する金属量を低減したPC/ABSアロイに燐化合物およびフェノール樹脂などを配合する方法等が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平2−115262号公報記載の組成物では、高度な難燃性レベルを達成するためには、PC樹脂あるいは燐酸エステルを多量に添加しなければならず、流動性や耐熱性の低下、衝撃強度の厚み依存性の増加等の問題点を有していた。さらに該組成物は滞留安定性に劣るため、リサイクル使用が困難であるといった問題点を有していた。また、特開平8−302175号公報記載の組成物では、難燃性の向上効果は見られるが、とりわけフェノール樹脂を併用した場合、滞留時にポリマーがゲル化し、著しく滞留安定性に劣るだけでなく、耐光性が著しく劣るといった問題も有していた。
【0007】
本発明はかかる問題点を解決し、熱可塑性樹脂に高度な難燃性を付与すると同時に、機械特性、耐熱性、流動性、滞留安定性、耐光性に優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化スチレン系樹脂および燐系難燃剤を含有する樹脂組成物において、変性フェノール系樹脂を配合することにより、優れた難燃性が付与できることに加え、耐光性が改善できることを見い出した。さらに、該樹脂組成物のpHを制御することにより、滞留安定性も改善され、かつ機械特性、耐衝撃性、耐熱性に優れることを見い出したものである。
【0009】
すなわち本発明は、「(A)ポリカーボネート樹脂10〜98重量%、(B)ゴム強化スチレン系樹脂90〜2重量%からなる樹脂組成物(イ)100重量部に対して、(C)燐系難燃剤1〜30重量部、(D)下記一般式(1)で表される変性フェノール系樹脂0.1〜20重量部含有する難燃性樹脂組成物であって、さらに難燃性樹脂組成物のpH値(ここで、pH値は難燃性樹脂組成物をその10倍量の水で抽出後、pHメーターで測定した値を示す)が7.5以下であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。」である。
【0010】
【化3】
(上記式中、R1 はグリシジル基を表す。また、R2は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の樹脂組成物について具体的に説明する。
【0012】
本発明に使用される(A)ポリカーボネート樹脂は、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、または炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる。該芳香族ホモまたはコポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量が10000〜1000000の範囲が好ましい。
【0013】
ここで芳香族二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。
【0014】
また、炭酸ジエステルとしては、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、炭酸ジシクロヘキシル等が挙げられ、これらは単独あるいは混合物として使用することができる。
【0015】
本発明に使用される(B)ゴム強化スチレン系樹脂とは、ビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が微粒子状に分散してなるグラフト重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体または必要に応じてこれと共重合可能な他のビニル系単量体を加えた単量体混合物を、公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合に供することにより得られる。
【0016】
このようなゴム強化スチレン系樹脂としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、およびAES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)などが挙げられる。
【0017】
このようなゴム強化スチレン系樹脂としては、スチレン単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体にグラフトした構造をとったものと、スチレン単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体に非グラフトした構造をとったものを含むものである。
【0018】
具体的には、(B−1)ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物をグラフト重合してなるグラフト(共)重合体からなるゴム強化スチレン系樹脂であり、さらに必要に応じ、(B−2)芳香族ビニル系単量体または単量体混合物を重合して得られるビニル系(共)重合体を含有してなるものが用いられる。より好ましくは(B)ゴム強化スチレン系樹脂が(B−1)ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物をグラフト重合してなるグラフト(共)重合体10〜100重量%と、(B−2)芳香族ビニル系単量体または単量体混合物を重合して得られるビニル系(共)重合体90〜0重量%からなるものが好ましく用いられる。
【0019】
上記ゴム質重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、ジエン系ゴムが好ましく用いられる。具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体などが挙げられる。なかでもポリブタジエンまたはブタジエン共重合体が好ましい。
【0020】
ゴム質重合体のゴム粒子径は特に制限されないが、ゴム粒子の重量平均粒子径が0.15〜0.6μm、特に0.20〜0.55μmのものが耐衝撃性に優れ好ましい。中でも、0.20〜0.25μmと0.50〜0.65μmとの重量比が90:10〜60:40のものが耐衝撃性、薄肉成形品の落錘衝撃が著しく優れ好ましい。
【0021】
なお、ゴム粒子の重量平均粒子径は「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法(アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める)により測定することができる。
【0022】
また、(B−1)グラフト(共)重合体中の芳香族ビニル系単量体としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましい。
【0023】
芳香族ビニル系単量体以外の単量体としては、一層の耐衝撃性向上の目的で、シアン化ビニル系単量体が、靭性、色調の向上の目的で、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく用いられる。シアン化ビニル系単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてはアクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチルによるエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましい。
【0024】
また必要に応じて(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリン等を使用することもできる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0025】
本発明における(B−1)グラフト(共)重合体はゴム質重合体10〜80重量部、好ましくは20〜70重量部、より好ましくは30〜60重量部の存在下に、上記の単量体または単量体混合物20〜90重量部、好ましくは30〜80重量部、より好ましくは40〜70重量部を(共)重合することによって得られる。ゴム質重合体の割合が10重量部未満でも、80重量部を超えても衝撃強度や表面外観が低下する場合があり好ましくない。
【0026】
また、(B−1)グラフト(共)重合体に用いられる単量体または単量体混合物中の、芳香族ビニル単量体は10〜85重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜80重量%である。シアン化ビニル系単量体を混合する場合には、樹脂組成物の成形加工性の観点から50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは40重量%以下である。また、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を混合する場合には、靱性、耐衝撃性の観点から80重量%以下、さらには75重量%以下で混合することが好ましい。また、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を混合する場合には、60重量%以下が好ましく、さらに50重量%以下が好ましい。単量体また単量体混合物における芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体および共重合可能な他の単量体の配合量の総和が95〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは90〜30重量%である。
【0027】
なお、(B−1)グラフト(共)重合体はゴム質重合体に単量体または単量体混合物をグラフト(共)重合させる際に生成するグラフトしていない(共)重合体を含んでいてもよい。下記式により算出されるグラフト率については特に制限はないが、衝撃強度の観点からグラフト率は10〜100%であることが好ましい。ここで、グラフト率は次式により算出される。
グラフト率(%)=<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系(共)重合体量>/<グラフト(共)重合体のゴム含有量>×100
また、グラフトしていない(共)重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は特に制限はないが、0.1〜0.6dl/gのものが衝撃強度と成形加工性のバランスの観点から好ましく用いられる。
【0028】
本発明における(B−2)ビニル系(共)重合体中の芳香族ビニル系単量体としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましい。
【0029】
芳香族ビニル系単量体以外の単量体としては、一層の耐衝撃性向上の目的で、シアン化ビニル系単量体が、靭性、色調の向上の目的で、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく用いられる。シアン化ビニル系単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてはアクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチルによるエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましい。
【0030】
また必要に応じて(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリン等を使用することもできる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0031】
また、(B−2)ビニル系(共)重合体に用いられる単量体または単量体混合物中の、芳香族ビニル単量体は10〜85重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜80重量%である。シアン化ビニル系単量体を混合する場合には、樹脂組成物の成形加工性の観点から50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは40重量%以下である。また、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を混合する場合には、靱性、耐衝撃性の観点から80重量%以下、さらには75重量%以下で混合することが好ましい。また、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を混合する場合には、60重量%以下が好ましく、さらに50重量%以下が好ましい。
【0032】
本発明における(B−2)ビニル系(共)重合体のメチルエチルケトン溶媒、30℃で測定した極限粘度は特に制限はないが、0.2〜1.0dl/gのものが衝撃強度と成形加工性のバランスの観点から好ましく用いられ、より好ましくは0.3〜0.7dl/gのものである。
【0033】
本発明の(B−1)グラフト(共)重合体と(B−2)ビニル系(共)重合体との混合比は、(B−1)グラフト(共)重合体10〜100重量部、好ましくは20〜60重量部、(B−2)ビニル系(共)重合体は0〜90重量部、好ましくは40〜80重量部である。(B−1)グラフト(共)重合体が10重量部未満では熱可塑性樹脂の耐衝撃性が不足する場合があり好ましくない。さらに、(B−1)グラフト(共)重合体と(B−2)ビニル系(共)重合体との合計中に含まれるゴム質重合体の含有量は5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である。ゴム質重合体が5重量%未満では耐衝撃性が不足し、30重量%を超えると成形加工性を損なう場合があり好ましくない。
【0034】
(A)ポリカーボネート樹脂、(B)ゴム強化スチレン系樹脂の配合割合は、(A)成分:(B)成分=10〜98:90〜2(重量%)が好ましく、さらに好ましくは15〜95:85〜5(重量%)である。
【0035】
本発明に使用される(C)燐系難燃剤とは、燐を含有する有機または無機化合物であれば特に制限はなく、例えば、ポリ燐酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネートおよびホスフィンオキシドなどが挙げられる。中でも、ポリホスファゼンおよびホスフェートが好ましく、芳香族ホスフェートが特に好ましく使用できる。
【0036】
本発明で使用される(C)燐系難燃剤の内好ましく用いられる、芳香族ホスフェートとは、下記一般式(2)で表されるものである。
【0037】
【化4】
まず前記式(2)で表される難燃剤の構造について説明する。前記式(2)の式中nは0以上の整数であり、異なるnの混合物でもよい。またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0038】
また前記式(2)の式中、R3〜R10は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0039】
またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などが挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
【0040】
またYは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
【0041】
本発明に使用される燐系難燃剤の使用量は(A)ポリカーボネート樹脂、(B)ゴム強化スチレン系樹脂からなる樹脂組成物(イ)100重量部に対して、通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部である。
【0042】
本発明に使用される(D)変性フェノール系樹脂とは、下記一般式(1)で表されるものである。
【0043】
【化5】
(上記式中、R1 はグリシジル基を表す。また、R2は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
すなわち、フェノール系樹脂のフェノール性水酸基をグリシジル基によりエーテル化したものを好ましく使用することができる。
【0044】
前記式(1)に示す変性フェノール系樹脂の製造方法については、特に制限はないが、ノボラック型、レゾール型および熱反応型のフェノール系樹脂とエピハロヒドリン等を塩基性触媒下で反応させて製造する方法等が挙げられる。また、形状については特に制限されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状などいずれも使用できる。
【0045】
上記の変性フェノール系樹脂は必要に応じ、1種または2種以上使用することができる。
【0046】
前駆体となるフェノール系樹脂は特に限定するものではなく市販されているものなどが用いられる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるような比率で反応槽に仕込み、更にシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後、加熱し、所定の時間還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、更に残っている水と未反応のフェノール類を除去する方法により得ることができる。これらの樹脂あるいは複数の原料成分を用いることにより得られる共縮合フェノール樹脂は単独あるいは2種以上用いることができる。
【0047】
また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるような比率で反応槽に仕込み、水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の反応および処理をして得ることができる。
【0048】
ここで、フェノール類とはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は一種または二種以上用いることができる。一方、アルデヒド類とはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類は必要に応じて1種または2種以上用いることができる。
【0049】
上記変性フェノール樹脂の分子量は特に限定されないが、好ましくは数平均分子量200〜2,000であり、特に400〜1,500の範囲のものが機械的物性、流動性、経済性に優れ好ましい。なお変性フェノール系樹脂の数平均分子量はテトラヒドラフラン溶液、ポリスチレン標準サンプルを使用することによりゲルパーミエションクロマトグラフィ法で測定できる。
【0050】
(D)変性フェノール系樹脂の添加量は、(A)ポリカーボネート樹脂、(B)ゴム強化スチレン系樹脂からなる樹脂組成物(イ)100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部である。(D)変性フェノール系樹脂の添加量が0.1重量部未満の場合は高度な難燃性付与効果が見られないため好ましくない。また20重量部を越える場合は耐衝撃性の低下や成形品の表面外観を損なうので好ましくない。
【0051】
本発明の難燃性樹脂組成物のpH値(ここで、pH値は難燃性樹脂組成物をその10倍量の水で抽出後、pHメーターで測定した値を示す)が7.5以下であることが必要である。難燃性樹脂組成物のpH値が本発明の範囲内である場合、高度な難燃性付与が可能になるだけでなく、滞留によるゲル化が顕著に抑制できる。
【0052】
一方、難燃性樹脂組成物のpH値が7.5を越える場合、十分な難燃性が得られず、さらに滞留安定性が著しく損なわれるため好ましくない。
【0053】
上記のpH値に調整した難燃性樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はないが、難燃性樹脂組成物にさらに(E)酸または酸無水物を添加する方法や例えば公知の方法で得られた(B−1)グラフト(共)重合体を、任意量の酸またはアルカリでpH調整し、水洗浄、濾過、乾燥して得ることができる。
【0054】
ここで、必要に応じて添加することができる(E)酸または酸無水物としては、硫酸、塩酸、炭素数2〜10の有機カルボン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等が好ましく使用できる。その添加量は(A)ポリカーボネート樹脂、(B)ゴム強化スチレン系樹脂からなる樹脂組成物(イ)100重量部に対して、0.01〜1重量部である。
【0055】
また、(B−1)グラフト(共)重合体をpH調整する場合の酸または酸無水物、アルカリとしては、任意のものが使用することができる。例えば酸としては硫酸、塩酸、炭素数2〜10の有機カルボン酸などが好ましく、酸無水物としては、無水マレイン酸や無水フタル酸等が好ましく使用できる。またアルカリとしては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物などが好ましく使用できる。
【0056】
また本発明の難燃性樹脂組成物はさらに(F)フッ素系樹脂および/またはシリコーン系化合物を添加すると、燃焼時の延燃抑制、燃焼時の発熱量の抑制、燃焼時の液滴の落下(ドリップ)抑制、耐熱性向上効果を付与することができる。
【0057】
そのようなフッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。
【0058】
またシリコーン系化合物とは、シリコーン樹脂および/またはシリコーンオイルのことである。
【0059】
本発明に使用されるシリコーン樹脂とは、下記一般式(3)〜(6)で表される単位およびこれらの混合物から選ばれる化学的に結合されたシロキサン単位(ここで、Rはそれぞれ飽和または不飽和一価炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、ビニルまたはアリル基から選ばれる基を表す。)からなるポリオルガノシロキサンであり、室温で約200〜300000000センチポイズの粘度のものが好ましいが、上記のシリコーン樹脂である限り、それに限定されるものではない。
【0060】
【化6】
本発明に使用されるシリコーンオイルとは、下記一般式(7)で表されるものである(ここで、Rはアルキル基またはフェニル基を表し、nは1以上の整数である。)。使用するシリコーンオイルは、0.65〜100000センチトークスの粘度のものが好ましいが、上記のシリコーンオイルである限り、それに限定されるものではない。
【0061】
【化7】
本発明ではシリコーン系化合物として、シリコーン樹脂および/またはシリコーンオイルを使用することができるが、難燃性、耐熱性、耐ブリードアウト特性、耐接点汚染性、湿熱処理後の電気特性低下の面から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0062】
上記(F)フッ素系樹脂および/またはシリコーン系化合物の添加量は(A)ポリカーボネート樹脂、(B)ゴム強化スチレン系樹脂からなる樹脂組成物(イ)100重量部に対して、0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部、更に好ましくは0.1〜1重量部である。
【0063】
さらに本発明の難燃性樹脂組成物は必要に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化アルミニウムなどの充填材などを配合することができる。中でもガラス繊維、炭素繊維、金属繊維が好ましく使用することができ、最も好ましいものとしては炭素繊維が用いられる。これら繊維状充填材の種類は、一般に樹脂の強化用に用いられているものならば特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョプドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。
【0064】
なお、本発明に使用する上記の繊維状、紛状、粒状あるいは板状充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0065】
また、ガラス繊維、炭素繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0066】
さらに本発明の難燃性樹脂組成物に対して本発明の目的を損なわない範囲でヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤などの酸化防止剤や熱安定剤、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステラアマイドおよびエチレンワックスなど)、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、および染料・顔料を含む着色剤(硫化カドミウム、フタロシアニン、酸化チタンなど)などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。
【0067】
また本発明の難燃性樹脂組成物は通常公知の方法で製造される。例えば、(A)ポリカーボネート樹脂、(B)ゴム強化スチレン系樹脂、(C)燐系難燃剤、(D)変性フェノール樹脂およびその他の必要な添加剤を予備混合してまたはせずに押出機などに供給して、150℃〜350℃の温度範囲において十分溶融混練することにより調製される。この場合例えば”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いることができ、特にアスペクト比をコントロールすることから、スクリューにニーディングエレメントを数個挿入あるいは未挿入にすることにより使用することが好ましい。
【0068】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は難燃性だけでなく、機械特性、耐熱性、滞留安定性さらに成形加工性にも優れ、溶融成形可能であるため押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、フィルム、管、ロッドや希望する任意の形状と大きさを持った成形品に成形し使用することができる。さらに難燃性を活かして電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類など種々の用途に用いることができる。
【0069】
例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、パソコン、プリンター、ディスプレイ、CRTディスプレイ、ファックス、コピー、ワープロ、ノートパソコン、携帯電話、PHS、DVDドライブ、PDドライブ、フロッピーディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、シャーシ、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品、その他各種用途に有用である。
【0070】
【実施例】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明する。なお、実施例中の部数および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。 参考例1 (A)ポリカーボネート樹脂
”ユーピロン S3000”(三菱エンジニアプラスチックス社製)を使用した。
【0071】
参考例2 (B−1)グラフト(共)重合体の調整
以下にグラフト(共)重合体の調製方法を示す。なおグラフト率は次の方法で求めたものである。グラフト(共)重合体の所定量(m)にアセトンを加え4時間還流した。この溶液を8000rpm(遠心力10,000G(約100×103 m/s2 ))30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。
【0072】
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここでLはグラフト(共)重合体のゴム含有率を意味する。
【0073】
ポリブタジエンラテックス(平均ゴム粒子径0.3μm、ゲル含率85%)60部(固形分換算)の存在下でスチレン70%、アクリロニトリル30%からなる単量体混合物40部を加えて乳化重合した。得られたグラフト共重合体は硫酸で凝固した後、任意量の水酸化ナトリウムでpH調整し、洗浄、濾過、乾燥してpHの異なる以下の3種のパウダー状グラフト共重合体<B−1a>、<B−1b>、<B−1c>を調整した。ここで、pH値とはグラフト共重合体を10重量%水スラリーとし、pHメーターで測定した値を示す。
【0074】
グラフト共重合体<B−1a>のpH値:3.0
グラフト共重合体<B−1b>のpH値:7.2
グラフト共重合体<B−1c>のpH値:10.4
得られたグラフト共重合体<B−1a>〜<B−1c>はいずれもグラフト率は36%であった。このグラフト共重合体<B−1a>〜<B−1c>は、いずれもスチレン構造単位70%およびアクリロニトリル30%からなる非グラフト性の共重合体を15.8%含有するものであった。またメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.34dl/gであった。
【0075】
参考例3 (B−2)ビニル系(共)重合体の調製
チレン70%、アクリロニトリル30%からなる単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体<B−2>を調製した。得られたビニル系共重合体<B−2>はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.53dl/gであった。
【0076】
参考例4 (C)燐系難燃剤
<D−1>下記式(8)で表される芳香族ビスホスフェート“PX−200”
(大八化学社製)を使用した。
【0077】
【化8】
参考例5(D)変性フェノール系樹脂
<D−1>下記式(9)で表されるエポキシ樹脂“EPPN−201−H”(日本化薬社製)を使用した。
【0078】
【化9】
<D−2>比較例として、下記式(10)で表される変性していないノボラックフェノール樹脂である“スミライトレジン PR53195”(住友デュレス社製)を使用した。
【0079】
【化10】
参考例6(E)酸または酸無水物
<E−1>無水マレイン酸(東京化成社製)を使用した。
参考例7(F)フッ素系樹脂および/またはシリコーン系化合物
<F−1>ポリテトラフルオロエチレンであるポリフロンF201(ダイキン工業(株)製)を使用した。
<F−2>シリコーン樹脂である”DC4−7081”(東レダウコーニングシリコーン社製)を使用した。
【0080】
[実施例1〜6、比較例1〜5
参考例で調製した(A)ポリカーボネート樹脂、(B−1)グラフト(共)重合体、(B−2)ビニル系(共)重合体、(C)燐系難燃剤、(D)変性フェノール系樹脂、およびその他の必要な添加剤を表に示した配合比で混合し、ベント付き30mmφ2軸押出機(池貝鉄工社製、PCM−30)を使用し、250℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状のポリマを製造した。次いで射出成形機(住友重機社製、プロマット40/25)により、射出圧を下限圧+1MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定した。
【0081】
(1)難燃性:射出成形により得た1.6mm厚み難燃性評価用試験片についてUL94に定められている評価基準に従い、5本の試験片について難燃性を評価した。難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
【0082】
(2)耐衝撃性:ASTM D256−56Aに従い耐衝撃性を評価した。
【0083】
(3)耐熱性:ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い耐熱性を評価した。
【0084】
(4)耐光性:キセノン耐光試験機Ci35W型(アトラス社製)を用いて、55℃、0.7W/m2 、フィルター(内側:石英、外側:ソーダライム)の条件で100時間照射した。照射前後の色相を色相色差計(スガ試験機社製)にて測定し、ΔΔE*(照射後のΔE*−照射前のΔE*)を求めた。このΔΔE*が小さいほど耐光性に優れることを示す。
【0085】
(5)流動性:メルトインデクサー(東洋精機社製)を用いて、250℃、98N荷重条件での10分間流出量MI値(g/10分)を測定した。このMI値が大きいほど流動性に優れることを示す。
【0086】
(6)滞留安定性:上記メルトインデクサー中に250℃で60分間滞留させた後、上記(4)項と同条件でMI値(g/10分)を測定し、下記式によりMI保持率を求め、滞留安定性の指標とした。
【0087】
MI保持率(%)=(滞留後のMI値)/(滞留なしでのMI値)×100
MI保持率が100%に近い程、滞留安定性に優れることを示し、MI保持率が100%以上の場合は滞留によりポリマーが分解して低分子量化していることを表し、逆にMI保持率が100%以下の場合は滞留によりポリマーがゲル化していることを示している。
【0088】
(7)難燃性樹脂組成物のpH測定法:難燃性樹脂組成物をその10倍量のメチルエチルケトン溶液中で加熱溶解後、メチルエチルケトンの2倍量の蒸留水を加え、その溶液をpHメーターで測定した値を示している。
【0089】
表1に配合処方を、表2にその試験片の物性測定値を示した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
実施例1〜6、比較例1〜5の測定結果より、以下のことが明らかである。
【0092】
実施例1〜6と比較例3との比較から、フェノール系樹脂の替わりに変性フェノール系樹脂を用いることにより、耐光性が大きく改善できると共に、耐衝撃性、耐熱性、流動性が良好な樹脂組成物が得られることが分かる。
【0093】
実施例1〜6と比較例1との比較から、変性フェノール系樹脂を添加することにより、高度な難燃性付与が可能となることが分かる。
【0094】
実施例1〜6と比較例2との比較から、変性フェノール系樹脂の添加量が20重量部を超えると、耐熱性や耐衝撃性が低下することが分かる。
【0095】
実施例1〜6と比較例4、5との比較から、pHが7.5以下である難燃性樹脂組成物を使用することにより、滞留安定性、難燃性、耐衝撃性の低下を抑制できることが分かる。
【0096】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂の機械的特性を損なうことなく、優れた難燃性を示し、とりわけ耐光性に優れる。
Claims (7)
- (A)ポリカーボネート樹脂10〜98重量%、(B)ゴム強化スチレン系樹脂90〜2重量%からなる樹脂組成物(イ)100重量部に対して、(C)燐系難燃剤1〜30重量部、(D)下記一般式(1)で表される変性フェノール系樹脂0.1〜20重量部含有する難燃性樹脂組成物であって、さらにその難燃性樹脂組成物のpH値(ここで、pH値は難燃性樹脂組成物をその10倍量のメチルエチルケトン溶液中で加熱溶解後、メチルエチルケトンの2倍量の蒸留水を加え、その溶液をpHメーターで測定した値を示す)が7.5以下であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- 請求項1に記載の樹脂組成物に、さらに(E)酸および/または酸無水物0.01〜1重量部を配合してなる難燃性樹脂組成物。
- (B)ゴム強化スチレン系樹脂が(B−1)ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物をグラフト重合してなるグラフト(共)重合体10〜100重量%と、(B−2)芳香族ビニル系単量体または単量体混合物を重合して得られるビニル系(共)重合体90〜0重量%とからなる請求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物。
- (B−1)グラフト(共)重合体を任意量の酸またはアルカリでpH調整し、pH値(ここで、pH値はグラフト(共)重合体を10重量%水スラリーとし、pHメーターで測定した値を示す)を7.5以下とすることを特徴とする請求項3に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜5いずれかに記載の難燃性樹脂組成物に、樹脂組成物(イ)100重量部に対して、(F)フッ素系樹脂および/またはシリコーン系化合物0.01〜3重量部をさらに配合してなる難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜6いずれかに記載の難燃性樹脂組成物からなる成形品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000386250A JP4779200B2 (ja) | 2000-12-20 | 2000-12-20 | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000386250A JP4779200B2 (ja) | 2000-12-20 | 2000-12-20 | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002188001A JP2002188001A (ja) | 2002-07-05 |
JP4779200B2 true JP4779200B2 (ja) | 2011-09-28 |
Family
ID=18853373
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000386250A Expired - Fee Related JP4779200B2 (ja) | 2000-12-20 | 2000-12-20 | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4779200B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101143387B1 (ko) | 2010-08-12 | 2012-05-18 | 한국화학연구원 | 옥사졸리논 유도체가 포함된 유기 인-질소계 화합물, 이의 제조방법 및 이를 포함하는 난연제 조성물 |
JP5756269B2 (ja) * | 2010-09-27 | 2015-07-29 | 日本エイアンドエル株式会社 | 熱可塑性樹脂組成物及び成形体 |
JP5736223B2 (ja) * | 2010-12-14 | 2015-06-17 | 出光興産株式会社 | 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH08295796A (ja) * | 1995-04-26 | 1996-11-12 | Denki Kagaku Kogyo Kk | 難燃性樹脂組成物 |
JPH08319406A (ja) * | 1995-05-26 | 1996-12-03 | Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd | 難燃性樹脂組成物 |
JP3934732B2 (ja) * | 1997-03-28 | 2007-06-20 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | 難燃性樹脂組成物 |
JP3688905B2 (ja) * | 1998-09-29 | 2005-08-31 | 出光興産株式会社 | 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及び射出成形品 |
JP4316033B2 (ja) * | 1998-11-11 | 2009-08-19 | 出光興産株式会社 | ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法 |
-
2000
- 2000-12-20 JP JP2000386250A patent/JP4779200B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002188001A (ja) | 2002-07-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100753930B1 (ko) | 난연성 수지 조성물, 그 성형품 및 그 난연제 | |
JP4779200B2 (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP4029598B2 (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2000103973A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP3899899B2 (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2000256564A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP4788080B2 (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2001200130A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2001316543A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
US6441069B1 (en) | Flame-retardant resin composition and molding product formed of the same | |
JP4576666B2 (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2002020611A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2005105189A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2002356600A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびその製造方法と、該組成物からなる成形品 | |
JP4331535B2 (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP4934891B2 (ja) | 難燃性樹脂組成物、その製造方法および難燃性成形品 | |
JP2004027061A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2000103972A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2005263891A (ja) | 着色難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2002206039A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2000234065A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2001146554A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2001200131A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2005105186A (ja) | 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 | |
JP2003213116A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20070702 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20100615 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20100831 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20101028 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20110215 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20110414 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20110426 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20110607 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20110620 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140715 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140715 Year of fee payment: 3 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |