JP3934732B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂、ゴム強化樹脂、難燃剤及びフッ素系樹脂等からなり、高い難燃性と熱安定性を有する樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
難燃化規制の強化に伴い、樹脂の難燃化技術は各分野で重要な技術となってきており、特にコンピュータやワープロ、複写機等のOA分野や、テレビ、ゲーム機等の一般家電分野で欠くことのできない特性の一つとなりつつある。
アンダーライターラボラトリーズ(Underwriter Laboratories)規制によるUL燃焼試験(UL94)において樹脂が高い難燃レベルにランク付けされるには、試験片がUL燃焼試験の過程で滴下しないことが重要であり、実際の火災時における延焼を防ぐためにも、樹脂の滴下防止は重要な課題である。
【0003】
こうした要請を受けて、熱可塑性樹脂においては、燃焼時における樹脂の滴下を防ぐ目的で滴下防止剤を添加している。例えば、特公昭59−36657号公報、特開昭60−13844号公報に記載されている樹脂組成物はポリテトラフルオロエチレン、特開平3−190958号公報に記載の樹脂組成物では、シリコン樹脂を滴下防止の目的で添加しているが、これらは本来樹脂との相溶性に劣るため、分散が悪く、機械的特性を低下させたり、押し出し加工時にストランド切れを起こしたり、スクリーンメッシュの目詰まりの原因となったりする等の問題点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、滴下防止効果に卓越した効果を示し、難燃性と熱安定性に優れた、特に射出成形用熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、以上の課題を解決するにあたって、鋭意検討の結果、フッ素系樹脂を特定の形態に制御することにより、滴下防止性能が大幅に改良され、難燃性が優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造されたポリカーボネート系樹脂5〜98重量部、(B)ゴム状重合体に、該ゴム状重合体と共重合可能な1種以上のビニル化合物をグラフト重合して得られるグラフト重合体と、ビニル重合体を含むゴム強化樹脂95〜2重量部、及び(A)と(B)の合計100重量部に対して、(C)フッ素系樹脂0.01〜5重量部と(D)難燃剤0.1〜30重量部を配合した樹脂組成物において、該樹脂組成物中のフッ素系樹脂が、主に0.5ミクロン以下の太さのフィブリル状の形態をなし、フィブリルがネットワーク構造、及び/または、分岐構造で存在し、該フッ素系樹脂を混合する方法が、下記a.および/またはb.の方法であることを特徴とする樹脂組成物に関する。
a.−20℃以上にならない状態で粉砕したフッ素系樹脂と、冷却した原料樹脂をブレンドし、溶融混練する方法。
b.フッ素系樹脂を除く原料を溶融させ、フッ素系樹脂をその溶融した原料に配合して混練する方法。
【0006】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明に用いられるポリカーボネート系樹脂(A)は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造されたポリカーボネートであり、実質的に塩素原子を含まないものである。
本発明において、芳香族ジヒドロキシ化合物とは、HO−Ar−OHで示される化合物である。(式中、Arは2価の芳香族基を表す。)
芳香族基Arは、好ましくは例えば、−Ar1 −Y−Ar2 −で示される2価の芳香族基である(式中、Ar1 及びAr2 は、各々独立にそれぞれ炭素数5〜70を有する2価の炭素環式又は複素環式芳香族基を表し、Yは炭素数1〜30を有する2価のアルカン基を表す。)
【0007】
2価の芳香族基Ar1 、Ar2 において、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであっても良い。
複素環式芳香族基の好ましい具体例としては、1ないし複数の環形成窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する芳香族基を挙げる事ができる。
2価の芳香族基Ar1 、Ar2 は、例えば、置換又は非置換のフェニレン、置換又は非置換のビフェニレン、置換または非置換のピリジレンなどの基を表す。ここでの置換基は前述のとおりである。
2価のアルカン基Yは、例えば、下記一般式で示される有機基である。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 は、各々独立に水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基、環構成炭素数5〜10の炭素環式芳香族基、炭素数6〜10の炭素環式アラルキル基を表す。kは3〜11の整数を表し、R5 およびR6 は、各X1 について個々に選択され、お互いに独立に、水素または炭素数1〜6のアルキル基を表し、X1 は炭素を表す。また、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 において、一つ以上の水素原子が反応に悪影響を及ぼさない範囲で他の置換基、例えばハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基等によって置換されたものであっても良い。)
このような2価の芳香族基Arとしては、例えば、下記一般式で示されるものが挙げられる。
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R7 、R8 は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基またはフェニル基であって、mおよびnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各R7 はそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合には各R8 はそれぞれ同一でも異なるものであってもよい。)。
【0012】
さらに、2価の芳香族基Arは、−Ar1 −Z1 −Ar2 −で示されるものであっても良い。(式中、Ar1 、Ar2 は前述の通りで、Z1 は単結合又は−O−、−CO−、−S−、−SO2 −、−SO−、−COO−、−CON(R1 )−などの2価の基を表す。ただし、R1 は前述のとおりである。)
このような2価の芳香族基Arとしては、例えば、下記一般式で示されるものが挙げられる。
【0013】
【化3】
(式中、R7 、R8 、mおよびnは、前述のとおりである。)
【0014】
本発明で用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物は、単一種類でも2種類以上でもかまわない。芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的な例としてはビスフェノールAが挙げられる。また、これら芳香族ジヒドロキシ化合物は、塩素原子とアルカリまたはアルカリ土類金属の含有量が少ない方が好ましく、出来れば実質的に含有していないことが好ましい。
本発明で用いられる炭酸ジエステルは、下記一般式で表される。
【0015】
【化4】
(式中、Ar3 、Ar4 はそれぞれ1価の芳香族基を表す。)
Ar3 及びAr4 は、1価の炭素環式又は複素環式芳香族基を表すが、このAr3 、Ar4 において、1つ以上の水素原子が、反応に悪影響を及ぼさない他の置換基、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ビニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、ニトロ基などによって置換されたものであっても良い。Ar3 、Ar4 は同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。
【0016】
1価の芳香族基Ar3 及びAr4 の代表例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ピリジル基を挙げる事ができる。これらは、上述の1種以上の置換基で置換されたものでも良い。
好ましいAr3 及びAr4 としては、それぞれ例えば、下記一般式などが挙げられる。
【0017】
【化5】
【0018】
炭酸ジエステルの代表的な例としては、下記一般式で示される置換または非置換のジフェニルカーボネート類を挙げる事ができる。
【0019】
【化6】
(式中、R9 及びR10は、各々独立に水素原子、炭素数1〜10を有するアルキル基、炭素数1〜10を有するアルコキシ基、環構成炭素数5〜10のシクロアルキル基又はフェニル基を示し、p及びqは1〜5の整数で、pが2以上の場合には、各R9 はそれぞれ異なるものであっても良いし、qが2以上の場合には、各R10は、それぞれ異なるものであっても良い。)
【0020】
このジフェニルカーボネート類の中でも、非置換のジフェニルカーボネートや、ジトリルカーボネート、ジ−t−ブチルフェニルカーボネートのような低級アルキル置換ジフェニルカーボネートなどの対称型ジアリールカーボネートが好ましいが、特にもっとも簡単な構造のジアリールカーボネートであるジフェニルカーボネートが好適である。
これらの炭酸ジエステル類は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、これらジアリールカーボネートは、塩素原子とアルカリまたはアルカリ土類金属の含有量が少ない方が好ましく、出来れば実質的に含有していないことが好ましい。
【0021】
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの使用割合(仕込比率)は、用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートの種類や、重合温度その他の重合条件及び得ようとするポリカーボネートの分子量や末端比率によって異なり、特に限定されない。ジアリールカーボネートは芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、通常0.9〜2.5モル、好ましくは0.95〜2.0モル、より好ましくは0.98〜1.5モルの割合で用いられる。
【0022】
また、本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、分岐構造を導入するための芳香族多価ヒドロキシ化合物を併用してもよいし、末端変換や分子量調節のために芳香族モノヒドロキシ化合物を併用してもよい。
本発明のポリカーボネートの分子量は特に限定されないが、一般に重量平均分子量で通常1000〜300000の範囲であり、好ましくは5000〜100000の範囲であり、特に好ましくは12000〜80000の範囲にある。また、末端構造も特に限定されない。
【0023】
本発明のポリカーボネート系樹脂(A)は実質的に塩素原子を含まないものであり、具体的には、▲1▼硝酸銀溶液を用いた電位差滴定法もしくはイオンクロマト法による塩素イオンの測定方法で、塩素イオンが0.5ppm以下であり、同時に▲2▼燃焼法による塩素原子の測定方法で、塩素原子が検出限界の10ppm以下である。好ましくは、▲1▼塩素イオンが、上記測定法の検出限界以下の0.1ppm以下であり、同時に、▲2▼塩素原子が10ppm以下である。塩素原子が上記範囲より多い場合、成形機素材を腐食しやすい傾向にあり、そのため鉄イオンが本発明樹脂組成物に混入し、溶融時の着色が増加する傾向にあり好ましくない。
【0024】
本発明において、エステル交換法とは、上記化合物を触媒の存在もしくは非存在下で、減圧下もしくは/及び不活性ガスフロー下で加熱しながら溶融状態でエステル交換反応にて重縮合する方法をいい、その重合方法、装置等には制限はない。例えば、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等を用い、これらを単独もしくは組み合わせることで容易に製造できる。また、溶融状態でエステル交換反応を行いプレポリマーを製造した後、固相状態で減圧下もしくは/及び不活性ガスフロー下で重合度を高める固相重合法でも製造できる。
【0025】
エステル交換の反応の温度は、通常50〜350℃、好ましくは100〜300℃の温度の範囲で選ばれ特に制限はない。一般に、上記範囲より高い温度では、得られるポリカーボネートの着色が大きく且つ熱安定性にも劣る傾向にある。また、上記範囲より低い温度では、重合反応が遅く実用的でない。反応圧力は、溶融重合中のポリカーボネートのの分子量によっても異なり、数平均分子量が1000以下の範囲では、50mmHg〜常圧の範囲が一般に用いられ、数平均分子量が1000〜2000の範囲では、3mmHg〜80mmHgの範囲が、数平均分子量が2000以上の範囲では、10mmHg以下、特に5mmHg以下が用いられる。
【0026】
また、エステル交換法による重合は、触媒を加えずに実施する事ができるが、重合速度を高めるため、必要に応じて触媒の存在下で行われる。重合触媒としては、この分野で用いられているものであれば特に制限はないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物類;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウムなどのホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化合物類;
【0027】
リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムメトキシドなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシド、LiO−Ar5 −OLi、NaO−Ar5 −ONa(Ar5 はアリール基)などのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアリーロキシド類;酢酸リチウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の有機酸塩類;酸化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜鉛化合物類;
【0028】
酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、(R1 R2 R3 R4 )NB(R1 R2 R3 R4 )または(R1 R2 R3 R4 )PB(R1 R2 R3 R4 )で表されるアンモニウムボレート類またははホスホニウムボレート類(R1 、R2 、R3 、R4 は前述の説明通り)などのホウ素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テトラアルキルケイ素、テトラアリールケイ素、ジフェニル−エチル−エトキシケイ素などのケイ素の化合物類;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムフェノキシドなどのゲルマニウムの化合物類;
【0029】
酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズカルボキシレート、酢酸スズ、エチルスズトリブトキシドなどのアルコキシ基またはアリーロキシ基と結合したスズ化合物、有機スズ化合物などのスズの化合物類;酸化鉛、酢酸鉛、炭酸鉛、塩基性炭酸塩、鉛及び有機鉛のアルコキシドまたはアリーロキシドなどの鉛の化合物;第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アルソニウム塩などのオニウム化合物類;酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモンの化合物類;酢酸マンガン、炭酸マンガン、ホウ酸マンガンなどのマンガンの化合物類;酸化チタン、チタンのアルコキシドまたはアリーロキシドなどのチタンの化合物類;酢酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ジルコニウムのアルコキシド又はアリーロキシド、ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウムの化合物類などの触媒を挙げる事ができる。
【0030】
触媒を用いる場合、これらの触媒は1種だけで用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、これらの触媒の使用量は、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常10-8〜1重量%、好ましくは10-7〜10-1重量%の範囲で選ばれる。
【0031】
本発明のゴム強化樹脂(B)の組成および製造方法について述べる。本ゴム強化樹脂はゴム状重合体にグラフト重合可能なビニル化合物をグラフト重合させて得ることができるが、この重合過程において同時に重合されるビニル重合体が含まれてもかまわない。また、ビニル重合体を同時または別に重合して配合してもよい。
本発明に使用するゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などの共役ジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴムなどであるが、好ましくは共役ジエン系ゴムのポリブタジエンとブタジエン−スチレン共重合体およびブタジエン−アクリロニトリル共重合体である。また、これらは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
ゴム強化樹脂中のゴム状重合体の含有量は5〜60重量%で、好ましくは10〜50重量%である。5重量%未満では耐衝撃性が得られず、また60重量%を越えると成形加工時の流動性や光沢が低下し好ましくない。
ゴム強化樹脂組成物中のゴム状重合体の好ましい粒子径については、マトリックスになるビニル重合体の種類により異なるため特に限定されないが、例えばABS樹脂の場合、粒子径が150〜600nmで、好ましくは200〜500nm、さらに好ましくは250〜450nmである。粒子径が150nmより小さいと耐衝撃性が得られず、また600nmを越えると光沢値が低下する。
【0033】
本発明に用いるゴム状重合体粒子にグラフト重合可能なビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヒキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有化合物があげられるが、好ましくは芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート類、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物であり、さらに好ましくは、スチレン、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ブチルアクリレートである。これらのビニル化合物は単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
ゴム強化樹脂(B)に含むことのできるビニル重合体とは、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヒキシルマレイミド等のマレイミド系化合物、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有化合物があげられるが、好ましくは、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート類、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物であり、さらに好ましくは、スチレン、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ブチルアクリレートからなる重合体である。 これらのビニル化合物は単独あるいは2種以上を組み合わせたり、共重合して用いることができる。
【0035】
本発明におけるゴム強化樹脂の製造方法としては、特に限定はされないが、乳化重合で製造されたゴム状重合体ラテックスにビニル化合物をグラフト重合させる乳化グラフト重合方式、および、乳化グラフト重合と溶液重合や懸濁重合を組み合わせた、二段重合法などが例示される。これらは、連続式、バッチ式、セミバッチ式いずれも可能である。また、上記の方法であらかじめ高ゴム含量のグラフト重合体をつくり、後に塊状重合、乳化重合や懸濁重合で製造したグラフト重合時に用いたビニル化合物を主成分とする熱可塑性樹脂を配合して目的のゴム含有量にする方法もとられる。
【0036】
本発明においては、乳化重合で製造されたゴム状重合体にビニル化合物を開始剤、分子量調節剤等とともに連続的に添加する乳化グラフト方式が好ましい。 また、重合時のpHにも特に限定はないが、中性付近(pH7〜9)がグラフト反応の面から好ましい。
本発明で好ましく用いられる、分子内にラジカル重合可能な二重結合を有する乳化剤(以下、重合性乳化剤と略す)とは、化合物中に親水基および疎水基を有し、気−液、液−液、固−液界面張力を低下させる能力のある化合物のうち、化合物中に二重結合を1つ以上有し、特に、共役ジエン系ゴム、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および/または(メタ)アクリル酸エステル化合物とラジカル重合可能なものを言う。重合性乳化剤の親水基はアニオン性、ノニオン性、カチオン性のいずれでも良いが、好ましくはアニオン性、さらに好ましくはノニオン性、アニオン性両方の性質を有するものである。
【0037】
乳化グラフト重合時に重合性乳化剤とともに非重合性乳化剤を用いても良いが、使用量はゴム由来の非重合性乳化剤の合計が共役ジエン系ゴム100重量部に対し4.0重量部以下にすべきである。4.0重量部を越えると、ゴム強化樹脂組成物の耐衝撃性の低下、剛性の低下、高温成形時の光沢の低下、成形時の金型汚染や樹脂の着色の原因となり好ましくない。ここで言う非重合性乳化剤とは、一般に乳化重合用として用いられる乳化剤でよく、ロジン酸塩、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性乳化剤があげられる。
【0038】
本発明に使用する重合性乳化剤の例としては、以下のものがあげられるが、これらにより限定されるものではない。
下記(1)式で表される、重合性乳化剤。
【0039】
【化7】
(式中、X2 は(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基または(1−プロペニル)ビニル基を示す。Y1 は水素、または−SO3 M(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)で表される硫酸エステル塩、または−CH2 COOM(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)で表されるカルボン酸塩、または下記(1’)式で表されるリン酸モノエステル塩を示す。R11は炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基もしくはアラルキル基、R12は水素または炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基もしくはアラルキル基、R13は水素またはプロペニル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、nは1〜200の整数を示す。)
【0040】
【化8】
(式中、M1 及びM2 は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムであり、M1 、M2 は異なるものでも同一のものでもよい。)
(1)式で表される重合性乳化剤の具体例としては、下記(5)〜(8)式があげられる。
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
下記(2)式で表される(メタ)アリルグリシジルエーテル誘導体および(メタ)アクリルグリシジルエステル誘導体
【0044】
【化11】
(式中、X3 は(メタ)アリル基または(メタ)アクリロイル基を示す。Y2 は水素、または−SO3 M(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)で表される硫酸エステル塩、または−CH2 COOM(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属)で表されるカルボン酸塩、または前記(1’)式で表されるリン酸モノエステル、または下記(1”)式で表される化合物を示す。Z2 は炭素数8〜30のアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキルアリール基、置換アルキルアリール基、アラルキルアリール基、置換アラルキルアリール基、アシル基または置換アシル基を示す。Aは炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、mは0〜100、nは0〜50の整数を示す。)
【0045】
【化12】
(M5 は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムまたは炭素数2〜4のアルキレンオキサイド基を有してもよい炭素数8〜30のアルキル基であり、M1 は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムである。)
(2)式の例として下記(9)〜(15)式があげられる。
【0046】
【化13】
【0047】
【化14】
【0048】
【化15】
(R15は炭素数2〜4のアルキレンオキサイド基を有してもよい炭素数8〜30のアルキル基であり、M3 はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムである。)
下記(3)式で表されるコハク酸誘導体
【0049】
【化16】
(式中、X3 は(メタ)アリル基または(メタ)アクリロイル基を示し、B1 、B2 は次に表されるY4 またはZ4 を示し、B1 、B2 は異なるものである。Y4 は、Mまたは−SO3 M(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)を示し、Z4 は、炭素数8〜30のアルキル基またはアルケニル基を示す。Aは炭素数2〜4のアルキレン基、置換基を有するアルキレン基であり、m、nは0〜50の整数である。)
(3)式の具体例としては、下記式(16)〜(19)があげられる。
【0050】
【化17】
【0051】
下記(4)式で表される化合物
【0052】
【化18】
(式中、X3 は(メタ)アリル基または(メタ)アクリロイル基を示す。Y5 は水素、または−SO3 M(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)で表される硫酸エステル塩、または−CH2 COOM(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)で表されるカルボン酸塩を示す。R16、R18は水素、または炭素数1〜25のアルキル基でそれぞれ同一であっても異なってもよく、R17、R19は炭素数1〜25のアルキル基、ベンジル基、またはスチリル基を示し、それぞれ同一であっても異なってもよく、pは0〜2の整数を示す。Aは炭素数2〜4のアルキレン基、置換基を有するアルキレン基であり、m、nは0〜50の整数を示す。)
(4)式の具体例としては、下記式(20)、(21)があげられる。
【0053】
【化19】
【0054】
下記(22)式で表される(メタ)アリルエーテル誘導体および(メタ)アクリルエステル誘導体
【0055】
【化20】
(式中、X3 は(メタ)アリル基または(メタ)アクリロイル基を示す。Y6 は水素、またはメチル基、または−SO3 M(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)で表される硫酸エステル塩、または−CH2 COOM(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)で表されるカルボン酸塩、または式(1’)で表されるリン酸モノエステル塩を示す。Z5 は、炭素数8〜30のアルキル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、mは0〜20、nは0〜50の整数を示す。)
式(22)の具体例としては下記式(23)、(24)があげられる。
【0056】
【化21】
【0057】
下記式(25)で表されるジオール化合物
【0058】
【化22】
(式中、A2 は炭素数2〜4のアルキレン基であり、R20は炭素数8〜24の炭化水素基であり、R21は水素またはメチル基であり、mおよびnはm+nが0〜100の間の値となるようなそれぞれ0〜100の数であり、M1 は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムである。)
式(25)の具体例として、下記式(26)があげられる。
【0059】
【化23】
(式中、M1 は水素原子、アルキル金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウムである。)
下記式(27)で表せる化合物
【0060】
【化24】
(式中、X4 は(メタ)アリル基、(メタ)アリロキシ基または(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基または下記式(27’)を示す。Y2 は水素、または−SO3 M(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)で表される硫酸エステル塩、または−CH2 COOM(Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは炭素数1〜4のヒドロキシアルキルアンモニウム)で表されるカルボン酸塩、または前記の式(1’)で表されるリン酸モノエステル、または、前記の式(1”)で表されるスルホコハク酸モノエステル塩を示す。Z6 は炭素数6〜30の置換基を有してもよいアルキレン基を示す。Aは炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、n、mは0〜50の整数を示す。)
【0061】
【化25】
【0062】
式(27)の具体例として、下記式(28)〜(30)があげられる。
【0063】
【化26】
【0064】
これらの重合性乳化剤のうち、好ましくは(1)式、(2)式、(3)式、(4)式で表される重合性乳化剤であり、特に好ましくは(1)式で表される重合性乳化剤である。
(2)式で表される重合性乳化剤のうち、好ましい構造は(9)式および(11)式で表される重合性乳化剤であり、(9)式の更に好ましい具体例としては(31)〜(34)式が、(11)式の更に好ましい具体例としては(35)式、(36)式が例示できる。
【0065】
【化27】
【0066】
また(1)式で表される重合性乳化剤は、特に好ましく、具体例としては下記(37)〜(41)式が特に好ましい。
【0067】
【化28】
【0068】
本発明によって得られた重合体ラテックスは、通常無機系塩析剤により凝析し脱水回収される。用いられる塩析剤に制限はないが、具体的には硫酸アルミ、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸等があげられる。脱水回収後に樹脂中に含まれる残留塩析剤由来成分が少ないほど好ましい。
【0069】
本発明において使用されるフッ素系樹脂(C)とは、一般にテトラフルオロエチレン(TFE)樹脂、パーフロロアルコキシ(PFA)樹脂、フッ化エチレンプロピレン(FEP)樹脂のことを示し、特にTFE樹脂が好ましく、樹脂組成物中において、主に0.5ミクロン以下の太さのフィブリル状の形態をなし、フィブリルがネットワーク構造、及び/または、分岐状で存在する必要がある。 フッ素系樹脂のの添加量は、(A)と(B)の合計100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい、0.01部未満の場合、滴下防止の効果が十分でなく、5重量部を越える場合、樹脂の機械的強度および加工流動性が低下する。より好ましくは0.02〜2重量部で、特に好ましくは0.1〜1重量部である。
【0070】
本発明のフッ素系樹脂の形態は具体的には以下の方法で観察される。すなわち、樹脂組成物のUL94燃焼試験用テストピースを射出成形で成形し、その引っ張り破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察することにより、上記記載のフィブリルの存在を測定する。本発明において、他の条件は特に限定されないが、下記の条件で測定した。
【0071】
射出成形
成型機 :M−JEC10(モダンマシナリー社製)
成形温度 :240℃
金型温度 :50℃
射出速度 :500(設定値)
テストピース:1/2×5×1/16inch
【0072】
SEM観察用サンプルの作成
上記のテストピースを引っ張り試験器(オートグラフ5000D、島津製作所製)を用いて、速度5mm/分で破断するまで引っ張る。
SEM観察
前処理 :サンプルに金蒸着を行う。
SEM :JSM−5300(日本電子社製)
加速電圧:15kV
【0073】
本発明で言う、ネットワーク構造、及び/または、分岐構造で存在するフッ素系樹脂の一例を以下に図1〜5で例示し、説明する。なお、図1はフッ素系樹脂の形態を示す模式図であり、図2〜5はSEM写真である。
フッ素系樹脂の形態は、UL94試験用テストピースの引っ張り破断面の7ミクロン×7ミクロンの範囲を観察して、次の条件を満たされる部分が観察されることが必要である。
【0074】
フッ素系樹脂は、図1では黒い実線で示した部分であり、図2〜5では白く見える部分である。
フッ素系樹脂のフィブリルは、0.5ミクロン以下の太さのものが主に存在する必要がある。0.5ミクロン以上の太さのフィブリルの存在は可能であるが、例えば図2に見られるように、7ミクロン×7ミクロンの範囲に観察されるフィブリルの総延長の70%以上、好ましくは90%以上が0.5ミクロン以下で存在している部分が存在する必要がある。
【0075】
また、本発明においては、図1の模式図で示したaの部分で例示した様な2本以上のフィブリルが重なって観察される部分、及び、フィブリルが相互に連結した系をネットワーク構造と呼び、bの部分で例示した1点より2本以上のフィブリルが分かれた部分を分岐構造と呼ぶ。ネットワーク構造、分岐構造とも3次元の広がりを持つ。さらに、これらネットワーク構造及び/または分岐構造は、7ミクロン×7ミクロンの範囲に合わせて10箇所以上存在する部分が観察される必要がある。
【0076】
すなわち、SEMで観察されたネットワーク構造、分岐構造は必ずしも樹脂組成物中のネットワーク構造、分岐構造を示すものではないが、樹脂組成物中のフィブリルの密な存在を反映しており、SEM観察におけるネットワーク構造及び分岐構造の存在をもって、樹脂組成物中のネットワーク構造及び分岐構造の存在とする。
フッ素系樹脂のこの様な密なフィブリル形態の存在により、燃焼時のフィブリルの収縮が3次元的に生起し、効果的な滴下防止が達成されると推定される。
【0077】
本発明における難燃剤(D)とは、いわゆる一般の難燃剤であり、リン系化合物やハロゲン系有機化合物の他、メラミン等の窒素含有有機化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物、赤リン、ホスフィン、次亜リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、無水リン酸などの無機系リン化合物、カーボンファイバー、グラスファイバー、などの繊維、膨張黒鉛、シリカ、シリカ系ガラス溶融物などが用いられるが、好ましくはリン系化合物、またはハロゲン系有機化合物および、ハロゲン系有機化合物と酸化アンチモンの併用である。
【0078】
ハロゲン系有機化合物としては、一般のハロゲン系難燃剤および含ハロゲンリン酸エステル全般を指す。例えば、ハロゲン系有機化合物としては、ヘキサクロロペンタジエン、ヘキサブロモジフェニル、オクタブロモジフェニルオキシド、トリブロモフェノキシメタン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルオキシド、オクタブロモジフェニルオキシド、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモブテン、ヘキサブロモシクロドデカン等があるが好ましくは、下記(42)の構造を有するハロゲン系有機化合物であり、特に好ましいのは下記(43)のハロゲン系有機化合物である。
【0079】
【化29】
【0080】
【化30】
【0081】
一方、含ハロゲンリン酸エステルとしては、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・β−クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチルホスフェート)およびこれらの縮合リン酸エステル等があるが、好ましくは、トリス(トリブロモネオペンチルホスフェート)、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェートである。これらのハロゲン系有機化合物は1種類でも、2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0082】
リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルポスフェートなどのリン酸エステルやこれらを各種置換基で変成した化合物がある。
本発明の組成物中における縮合リン酸エステル系難燃剤は、一般式(46)
【0083】
【化31】
(式中、nは1〜10の整数であり、Ar6 〜Ar9 は各々独立に、フェニル基、トリル基またはキシリル基である。また、nが2以上の場合、複数あるAr9 は各々同一でも異なってもよい。)
で表され、好ましくは、
【0084】
【化32】
(式中、Ar10〜Ar12は各々同一または異なっており、フェニル基、トリル基、又は2,6−キシリル基以外のキシリル基であり、R=前記のA4である。)で表されるリン酸エステル化合物であり、このリン酸エステル化合物は難燃化効果、および、耐熱性が特によい。
これらは単独または2種類以上を併用して用いることができる。
【0085】
難燃剤の配合量は必要な難燃性のレベルに応じて決められるが、(A)と(B)の合計100重量部に対して、0.1〜30重量部であることが必要である。0.1重量部未満では必要な難燃効果が発揮されない。30重量部を超えると樹脂の機械的強度を低下させる。好ましくは1〜25重量部の範囲であり、特に好ましい範囲としては3〜22重量部である。難燃剤としてハロゲン系化合物を用いる場合、難燃効果を高める為に難燃助剤を用いることが出来る。
【0086】
難燃助剤として好ましくは、元素周期律表におけるVBに属する元素を含む化合物で、具体的には、窒素含有化合物、リン含有化合物、酸化アンチモン、酸化ビスマス、または、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物も効果的である。この中でも特に好ましくは、酸化アンチモンであり、具体的には三酸化アンチモン、五酸化アンチモンがあげられる。これらの難燃助剤は樹脂中への分散を改善する目的および/または樹脂の熱的安定性を改善する目的で表面処理を施されているものを用いてもよい。
【0087】
難燃助剤の添加量は、0.5〜20重量部が好ましい、0.5部未満の場合、難燃助剤の効果が十分でなく、20重量部を越える場合、樹脂の機械的強度および加工流動性が低下する。より好ましくは1〜15重量部で、特に好ましくは1〜10重量部である。
【0088】
本発明の樹脂組成物を製造する方法は、例えば、フッ素系樹脂としてファインパウダーを用いる場合、−20℃以上にならない状態で粉砕したフッ素系樹脂と、冷却した原料樹脂をブレンドし、溶融混練する。または、ファインパウダー、ディスパージョン等のフッ素系樹脂を除く原料を溶融させ、フッ素系樹脂をその溶融した原料に配合して混練する等の製造方法をとるのが好ましく、これらの条件を満たすなら、従来から公知の方法で行うことが出来、特に限定されない。例えば、各成分をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ターンブルミキサー、リボンブレンダー等で均一に混合した後、単軸押出機や二軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法等がある。また、その際、本発明の趣旨を妨げない範囲で、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤等の添加剤を加えることは任意である。
【0089】
さらに、これらの熱可塑性樹脂組成物からなる成形品の成型方法は、押し出し成形、圧縮成型、射出成形、ガスアシスト成形等があり、特に限定されない。成形品の例としては、ホイールキャップ、スポイラー、自動車のインパネ等が挙げられる。
【0090】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例における測定方法は以下の通りである。
(ポリカーボネート樹脂の特性)
(1)重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。
カラム:ポリスチレンゲル、溶媒:THF
(2)形態観察方法
明細書に記載の方法で観察した。その結果、明細書記載のネットワーク構造、及び/または、分岐状で存在するフッ素系樹脂の形態が観察された樹脂組成物は○で示し、観察されなかった樹脂組成物は×で示した。
【0091】
(3)滞留着色度
ペレットを成形温度260℃、金型温度65℃で成形し、参照試験片とした。続いて、260℃で成形機内に40分滞留させ、同様に成形し試験片を得た。
試験片: 縦216mm×横12.6mm×厚さ3.2mm
試験は、スガ試験機社製SMカラーコンプューター、モデルSM−5を用い、参照試験片に対する該試験片のイエローインデックス(滞留前のサンプルのYI)−(滞留後のサンプルのYI)(ΔYI)の測定を行った。サンプルの測定位置は中央部とした。
【0092】
以下に実施例に用いる配合剤を説明する。なお、部数は重量部とする。
(ポリカーボネート樹脂の製法)
(PC−1)
芳香族ジヒドロキシ化合物として塩素原子を実質的に含有しないビスフェノールAを、炭酸ジエステルとして塩素原子を実質的に含有しないジフェニルカーボネート(対ビスフェノールAモル比1.10)を、触媒としてビスフェノールAのジナトリウム塩(対ビスフェノールAモル比2.8×10-8)を用いて、溶融エステル交換法でポリカーボネートを製造した。製造は、攪拌槽型反応器3基とワイヤー付き多孔板型反応器2基からなる連続重合装置を用い、段階的に温度と減圧度を上げながら実施した。最高重合温度は250℃であった。
得られた芳香族ポリカーボネートには実質的に塩素原子は含まれておらず、塩素イオン及び塩素原子共に検出限界以下であり、重量平均分子量が24800であった。
(PC−2)
ホスゲン法で製造した、重量平均分子量22,500のビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂。
【0093】
(共役ジエン系ゴムS−1の製法):
(ゴムラテックス(S−1))
1,3−ブタジエン97.0部、アクリロニトリル3.0部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、ロジン酸カリウム0.7部、牛脂ケン化石ケン0.3部、過硫酸ナトリウム0.25部、水酸化ナトリウム0.1部、炭酸水素ナトリウム0.35部、脱イオン水60.0部(固形分基準)を、内部を真空に脱気した50リットルオートクレーブに投入し、65℃にて重合を行った。
重合開始後10時間目から20時間目の間に、ロジン酸カリウム0.3部、牛脂ケン化石ケン0.1部、過硫酸ナトリウム0.1部、水酸化ナトリウム0.05部、炭酸水素ナトリウム0.15部、脱イオン水50.0部の溶液をオートクレーブに連続添加しながら重合を継続した。この組成の合計を表1に(S−1)として示した。
連続添加終了後、重合系を80℃に昇温し、重合開始後26時間目に冷却し重合を終了した。重合後、未反応ブタジエンを除去した。電子顕微鏡写真により求めたラテックスの重量平均粒子径は0.28ミクロンであった。また、ラテックスのpHは10.1であった。
【0094】
(R−1)
ゴムラテックスS−1(固形分)40部、イオン交換水100部、ロジン酸カリウム0.3部を10リットル反応器に入れ、気相部を窒素置換した後、この初期溶液を70℃に昇温した。次に以下に示す組成からなる水溶液(C)と単量体混合液(E)、さらに式(38)で表される重合性乳化剤を含んだ水溶液(D)を反応器に5時間にわたり連続的に添加した。添加終了後、1時間温度を保ち、反応を完結させた。
表2中の略語は次の通りである。
SFS:ソジウムフォルムアルデヒドスルホキシレート、EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、t−DM:ドデシルメルカプタン、CHP:クメンハイドロパーオキサイド
次に、作成したグラフト重合体ラテックスに、酸化防止剤を添加した後、硫酸を加え凝固させ、水洗浄、脱水した後、加熱乾燥し、グラフト共重合体粉末(GRCと称す)を得た。
【0095】
(R−2)
R−1で水溶液(D)中に含まれる重合性乳化剤を表2に記したものにした以外は、R−1と同様に重合した。
(R−3)
表2に示した組成を10リットル反応器に入れ、気相部を窒素置換した後、この初期溶液を70℃に昇温した。次に水溶液(C)と単量体混合液(E)、水溶液(D)を反応器に5時間にわたり連続的に添加した。添加終了後、1時間温度を保ち、反応を完結させた。
【0096】
(ビニル重合体B−1)
共重合体B−1中の組成は、IRスペクトルより、アクリロニトリル25重量%、スチレン75重量%、またメチルエチルケトン中で測定した還元粘度(0.617重量%中、30℃)は0.41であった。
【0097】
(難燃剤FR−1)
明細書記載の式(43)で表され、n=0又は自然数、R25とR26は式(45)に記載の基で表される化合物であって、軟化温度が105℃である難燃剤。
(難燃剤FR−2)
トリフェニルホスフェート
【0098】
(難燃剤FR−3)
以下の方法で合成した、式(48)と(49)の混合物を主成分とする縮合リン酸エステル系難燃剤。
ビスフェノールA114g(0.5モル)、オキシ塩化リン192g(1.25モル)、及び無水塩化マグネシウム1.4g(0.015モル)を攪拌機・還流管付きの500ml四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下70〜140℃にて4時間反応させた。反応終了後、反応温度を維持しつつ、フラスコを真空ポンプにて200mmHg以下に減圧し、未反応のオキシ塩化リンをトラップにて回収した。
【0099】
ついでフラスコを室温まで冷却し、2,6キシレノール122g(1.0モル)、及び無水塩化アルミニウム2.0g(0.015モル)を加え、100〜150℃に加熱して4時間反応させた。
ついでフラスコを室温まで冷却し、フェノール94g(1.0モル)を加え、100〜150℃に加熱して4時間保持し、反応を完結させた。そのままの温度で1mmHgまで減圧し、未反応のフェノール類を溜去した。反応時に発生する塩化水素ガスは水酸化ナトリウム水溶液にて捕集し、中和滴定によりその発生量を測定して反応の進行をモニターした。生成した粗リン酸エステルを蒸留水で洗浄した後、濾紙(アドバンテック社製#131)により固形分を除去した。真空乾燥して淡黄色透明な精製物を得た。
GPC測定(島津製LC−10A、カラム:東ソーTSKgel ODS−80T、溶媒:メタノール/水 90/10)の結果、式(48)と(49)成分の合計の純度は75重量%であった。
【0100】
(フッ素系樹脂TFE−1)
三井デュポンフロロケミカル社製、テフロン30J(ディスパージョン)
(フッ素系樹脂TFE−2)
ダイキン工業社製、ダイフロンF−201L
(フッ素系樹脂TFE−3)
三井デュポンフロロケミカル社製、テフロン62−J
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【実施例】
実施例1〜9、比較例1、12〜14
以上のように調製したフッ素系樹脂を除く樹脂を、表3、5、6に記載した組成(単位は重量部)でブレンドし、シリンダー温度が250℃に設定された2軸押出機(ZSK−25、W&P社製)で混練し、押出機の途中から冷却(3℃)したフッ素系樹脂(TFE−1)を溶融した樹脂中に添加し造粒し、ペレットを得て、評価を行った。
【0104】
実施例10〜18、比較例2〜7、15、16
以上のように調製したフッ素系樹脂を除く樹脂を冷却(3℃)し、ドライアイスとともに粉砕(サンプルミル、SK−M10型、協立理工社製)したフッ素系樹脂(TFE−2、TFE−3)を、表4〜6に記載した組成(単位は重量部)でブレンドし、シリンダー温度が250℃に設定された2軸押出機(ZSK−25、W&P社製)で混練造粒し、ペレットを得て、評価を行った。
【0105】
比較例8〜11
以上のように調製した樹脂を表5、6に記載した組成(単位は重量部)で一括ブレンド(室温、25℃)し、シリンダー温度が250℃に設定された2軸押出機(ZSK−25、W&P社製)で混練造粒し、ペレットを得て、評価を行った。これらの結果を表3〜6に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
【表5】
【0109】
【表6】
【0110】
実施例および比較例より、実施例の樹脂組成物は、いずれも難燃性と熱安定性に優れていることが明らかである。
【0111】
【発明の効果】
樹脂組成物にフッ素樹脂を少量配合することで、フッ素系樹脂が、樹脂組成物中でネットワーク構造、及び/または、分岐状で存在し、高い難燃性を得ることが出来、且つエステル交換法で製造されたポリカーボネート系樹脂を使用することにより、熱安定性に優れたリサイクル性の良い樹脂組成物を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】樹脂組成物成型品の破断面のフッ素系樹脂のフィブリル形態を表す模式図である。なお、図1において黒い実線で示した部分がフッ素系樹脂である。
【図2】実施例3の樹脂組成物成型品の破断面のフッ素系樹脂のフィブリル形態を観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例9の樹脂組成物成型品の破断面のフッ素系樹脂のフィブリル形態を観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例12の樹脂組成物成型品の破断面のフッ素系樹脂のフィブリル形態を観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】比較例9の樹脂組成物成型品の破断面のフッ素系樹脂のフィブリル形態を観察した走査型電子顕微鏡写真である。なお、写真の図2〜5において、白く観察される部部がフッ素系樹脂である。
【符号の説明】
a ネットワーク構造
b 分岐構造
Claims (6)
- (A)芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造されたポリカーボネート系樹脂5〜98重量部、(B)ゴム状重合体に、該ゴム状重合体と共重合可能な1種以上のビニル化合物をグラフト重合して得られるグラフト重合体と、ビニル重合体を含むゴム強化樹脂95〜2重量部、及び(A)と(B)の合計100重量部に対して、(C)フッ素系樹脂0.01〜5重量部と(D)難燃剤0.1〜30重量部を配合した樹脂組成物において、該樹脂組成物中のフッ素系樹脂が、主に0.5ミクロン以下の太さのフィブリル状の形態をなし、フィブリルが、ネットワーク構造、及び/または、分岐構造で存在し、該フッ素系樹脂を混合する方法が、下記a.および/またはb.の方法であることを特徴とする樹脂組成物。
a.−20℃以上にならない状態で粉砕したフッ素系樹脂と、冷却した原料樹脂をブレンドし、溶融混練する方法。
b.フッ素系樹脂を除く原料を溶融させ、フッ素系樹脂をその溶融した原料に配合して混練する方法。 - 樹脂組成物のUL燃焼試験片の引っ張り破断面の7ミクロン×7ミクロンの範囲の観察で、フィブリルの総延長の70%以上が0.5ミクロン以下の太さであり、図1中aで示した2本以上のフィブリルが重なって観察される部分、及び、フィブリルが相互に連結したネットワーク構造、bで示した1点より2本以上のフィブリルが分かれた分岐構造が、合わせて10箇所以上存在する部分が観察されうることを特徴とする、請求項1記載の樹脂組成物。
- (C)フッ素系樹脂が、テトラフルオロエチレン(TFE)樹脂である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
- (B)ゴム強化樹脂が、ゴム状重合体に、該ゴム状重合体と重合可能な1種以上のビニル化合物をグラフト重合して得られるグラフト重合体の製造過程において、該ゴム状重合体にグラフト重合する該ビニル化合物の内、少なくとも一種類が分子内にラジカル重合可能な二重結合を有する乳化剤であるグラフト重合体と、ビニル重合体とからなるゴム強化樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- (D)難燃剤が縮合リン酸エステル系難燃剤である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物からなることを特徴とする成形品。
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