以下に、本発明に係る難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品について具体的に説明する。
本発明におけるゴム変性スチレン系樹脂(A)とは、ゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル単量体および必要に応じこれと共重合可能なビニル単量体を加えた単量体混合物を、公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合に供することにより得られるものである。
このようなゴム変性スチレン系樹脂の具体例としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)およびAES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)などが挙げられる。
そして、このようなゴム変性スチレン系樹脂としては、スチレン単量体を含有する重合体または共重合体(以下、(共)重合体と表記することもある。)がゴム質重合体にグラフトした構造をとったものと、スチレン単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体に非グラフトした構造をとったものとを含むものである。
具体的には、ゴム質重合体5〜80重量部に対し、芳香族ビニル系単量体を20重量%以上含有する単量体または単量体混合物95〜20重量部をグラフト重合して得られるグラフト(共)重合体(A−1)10〜100重量%と、芳香族ビニル系単量体を20重量%以上含有する単量体または単量体混合物を重合して得られるビニル系(共)重合体(A−2)0〜90重量%とからなるものが好適である。
上記ゴム質重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、ジエン系ゴムが好ましく用いられる。具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、ポリイソプレン、およびエチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体などが挙げられる。なかでもポリブタジエンまたはブタジエン共重合体の使用が好ましい。
ゴム質重合体のゴム粒子径は特に制限されないが、ゴム粒子の重量平均粒子径が0.15〜0.6μm、特に0.2〜0.55μmである場合が、耐衝撃性にすぐれることから好ましい。中でも重量平均粒子径0.20〜0.25μmのものと、0.50〜0.65μmのものとの重量比が、90:10〜60:40のものが、耐衝撃性および薄肉成形品の落錘衝撃が著しくすぐれることから好ましい。
なお、ゴム粒子の平均重量粒子径は、「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法(アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合と、アルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率とより累積重量分率50%の粒子径を求める)により測定することができる。
芳香族ビニル系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンの使用が好ましい。
芳香族ビニル系単量体以外の単量体としては、一層の耐衝撃性、耐薬品性向上を目的とする場合にはシアン化ビニル系単量体が、また靭性および色調の向上を目的とする場合には(メタ)アクリル酸エステル系単量体が、それぞれ好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく用いられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、アクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
また、必要に応じて他のビニル系単量体、例えばマレイミド、N−メチルマレイミド、およびN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体などを使用することもできる。
上記のグラフト(共)重合体(A−1)において用いる単量体または単量体混合物は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、芳香族ビニル系単量体が20重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上である。シアン化ビニル系単量体を混合する場合には、樹脂組成物の成形加工性の観点から、60重量%以下であることが好ましく、特に50重量%以下が好ましく用いられる。また(メタ)アクリル酸エステル系単量体を混合する場合には、靱性および耐衝撃性の観点から、80重量%以下であることが好ましく、特に75重量%以下が好ましく用いられる。単量体また単量体混合物における芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の配合量の総和は、95〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは90〜30重量%である。
グラフト(共)重合体(A−1)を得る際のゴム質重合体と単量体混合物との配合割合は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、全グラフト共重合体100重量部中に、ゴム質重合体が5重量部以上であることが好ましく、より好ましくは10重量部以上である。また、樹脂組成物の耐衝撃性および成形品の外観の観点からは、80重量部以下であることが好ましく、より好ましくは70重量部以下である。また、単量体または単量体混合物の配合割合は、は95重量部以下、好ましくは90重量部以下、あるいは20重量部以上、好ましくは30重量部以上である。
グラフト(共)重合体(A−1)は、公知の重合法で得ることができる。例えば、ゴム質重合体ラテックスの存在下に単量体および連鎖移動剤の混合物と乳化剤に溶解したラジカル発生剤の溶液を連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法などによって得ることができる。
グラフト(共)重合体(A−1)は、ゴム質重合体に単量体または単量体混合物がグラフトした構造をとったグラフト共重合体の他に、グラフトしていない共重合体を含有したものである。グラフト(共)重合体のグラフト率は特に制限がないが、耐衝撃性および光沢が均衡してすぐれる樹脂組成物を得るためには、20〜80重量%、特に25〜50重量%の範囲であることが好ましい。ここで、グラフト率は次式により算出される値である。
グラフト率(%)=[<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/<グラフト共重合体のゴム含有量>]×100
グラフトしていない(共)重合体の特性は特に制限されないが、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η](30℃で測定)が、0.25〜0.6dl/g、特に0.25〜0.5dl/gの範囲であることが、すぐれた耐衝撃性の樹脂組成物を得るために好ましい条件である。
ビニル系(共)重合体(A−2)とは芳香族ビニル系単量体を必須とする共重合体である。芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエンおよびo−エチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく使用される。これらは1種または2種以上を用いることができる。
芳香族ビニル系単量体以外の単量体としては、一層の耐衝撃性、耐薬品性向上を目的とする場合にはシアン化ビニル系単量体が、また靭性および色調の向上を目的とする場合には(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく使用される。(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、アクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく使用される。
また、必要に応じて使用されるこれらと共重合可能な他のビニル系単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体が挙げられる。
本発明において、マレイミド系単量体を共重合したビニル系共重合体、即ち、マレイミド基変性ビニル系共重合体は、ポリスチレン系樹脂中に含有させて使用することにより、樹脂組成物の耐熱性を向上でき、さらに難燃性も特異的に向上できるため、好ましく使用することができる。
ビニル系(共)重合体(A−2)の構成成分である芳香族ビニル系単量体の割合は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、全単量体に対し20重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上の範囲である。シアン化ビニル系単量体を混合する場合には、耐衝撃性、流動性の観点から、60重量%以下が好ましく、さらに好ましくは50重量%以下の範囲である。また、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を混合する場合には、靭性、耐衝撃性の観点から、80重量%以下が好ましく、さらに好ましくは75重量%以下の範囲である。更に、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を混合する場合には、60重量%以下が好ましく、特に50重量%以下の範囲が好ましい。
ビニル系(共)重合体(A−2)の特性には制限はないが、メチルエチルケトン溶媒を用いて、30℃で測定した極限粘度[η]が、0.4〜0.65dl/g、特に0.45〜0.55dl/gの範囲のものが、またN,N−ジメチルホルムアミド溶媒を用いて、30℃で測定した場合には、0.35〜0.85dl/g、特に0.45〜0.7dl/gの範囲のものが、すぐれた耐衝撃性および成形加工性を有する樹脂組成物が得られることから好ましい。
ビニル系(共)重合体(A−2)の製造法には特に制限がなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状−懸濁重合法および溶液−塊状重合法など通常の方法を用いることができる。
また、本発明においては、必要に応じてカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基から選ばれた少なくとも一種の官能基を含有する変性ビニル系重合体(以下、変性ビニル系重合体と略称する。)を用いることもできる。
この変性ビニル系重合体としては、一種または二種以上のビニル系単量体を重合または共重合して得られる構造を有し、かつ分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基から選ばれた少なくとも一種の官能基を含有する重合体である。これらの官能基を含有する化合物の含有量については制限されないが、特に変性ビニル系重合体100重量部当たり0.01〜20重量%の範囲であることが好ましい。
変性ビニル系重合体中にカルボキシル基を導入する方法には特に制限はないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単量体を所定のビニル系単量体と共重合する方法、γ,γ´−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)、α,α´−アゾビス(α−シアノエチル)−p−安息香酸および過酸化サクシン酸などのカルボキシル基を有する重合開始剤および/またはチオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプト−イソ酪酸および2,3または4−メルカプト安息香酸などのカルボキシル基を有する重合度調節剤を用いて、所定のビニル系単量体を(共)重合する方法、およびメタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体と芳香族ビニル系単量体、必要に応じてシアン化ビニル系単量体との共重合体をアルカリによってケン化する方法などを用いることができる。
上記ヒドロキシル基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体を、所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
上記エポキシ基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体を、所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。中でも、メタクリル酸グリシジルを共重合させることによりエポキシ基を導入したエポキシ変性ビニル系共重合体は、ポリスチレン系樹脂中に含有させて使用した場合、本発明の樹脂組成物の難燃性、衝撃強度を向上することができる。
上記アミノ基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基およびその誘導体を有するビニル系単量体を、所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
上記オキサゾリン基を導入する方法についても特に制限はないが、例えば2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体を所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
この変性ビニル系重合体の特性には制限はないがメチルエチルケトン溶媒を用いて、30℃で測定した極限粘度[η]が、0.2〜0.65dl/g、特に0.35〜0.6dl/gの範囲のものが、またN,N−ジメチルホルムアミド溶媒を用いて、30℃で測定した場合には、0.3〜0.9dl/g、特に0.4〜0.75dl/gの範囲のものが、すぐれた難燃性、耐衝撃性、成形加工性の樹脂組成物が得られることから好ましい。
本発明において使用される燐系難燃剤(B)とは、燐を含有する有機または無機化合物であれば特に制限はなく、例えば、ポリ燐酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネートおよびホスフィンオキシドなどが挙げられる。中でも、ポリホスファゼンおよびホスフェートが好ましく、芳香族ホスフェートが特に好ましく使用できる。
本発明で使用される燐系難燃剤(B)の内、芳香族ホスフェートとは、下記一般式(3)で表されるものである。
まず前記式(3)で表される難燃剤の構造について説明する。前記式(3)の式中、nは0以上の整数であり、異なるnの混合物でもよい。またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
また、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などが挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
また、前記式(3)のXにおいて、R4〜R11は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。またYは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
上記芳香族ホスフェートの使用量は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して、通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部である。添加量が1重量部未満の場合は高度な難燃性付与効果が見られないため好ましくない。また30重量部を超える場合は、耐衝撃性の低下や成形品の表面外観を損なうため好ましくない。
本発明において使用される変性フェノール系樹脂(C)とは、下記一般式(1)で表され、さらに以下の条件を満たすもののうち、前述の如く、とくに前述の一般式(2)で表されるものとされている。
(a)50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度が、30〜100mm2/s
(上記式中、R
1は炭素数1〜10の有機残基を表す。また、R
2は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
前記式(1)の構造について説明する。上記式中、R1は炭素数1〜10の任意の有機残基を表し、好ましくはアルキル基、アリール基、グリシジル基、−C(=O)Rが挙げられる。ここでR1は炭素数1〜9のアルキル基、アリール基を表す。すなわち、フェノール系樹脂のフェノール性水酸基をエーテル化あるいはエステル化したものを好ましく使用することができる。また、R2は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を表す。
前記式(1)に示す変性フェノール系樹脂の製造方法については、特に制限はなく、例えば公知公用のフェノール系樹脂を、エーテル化、エステル化することで得ることができる。
前記式(1)に示す変性フェノール系樹脂を製造する際に用いるフェノール系樹脂としては、特に制限はなく、ノボラック型、レゾール型および熱反応型の市販されているものなどを用いることができるが、ノボラック型が難燃性、流動性の面で好ましい。
上記フェノール系樹脂を得る方法として、ノボラック型フェノール樹脂の場合を例示すると、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.1〜1:0.9となるような比率で反応槽に仕込み、酸、金属塩、金属酸化物等の触媒存在下で加熱し、反応させ、生成した縮合水および未反応原料等の低沸点物を蒸留等により除去する方法を適用することができる。その場合、触媒が酸として残留する場合は塩基性物質で中和するのが好ましい。
これらのフェノール系樹脂を得るために用いるフェノール類としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は単独で用いても2種以上を併用してもよい。一方、アルデヒド類とはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類は必要に応じて1種または2種以上用いることができる。
上述の反応に用いる触媒としては、特に制限はないが、例えば、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸等のスルホン酸類、シュウ酸、サリチル酸等のカルボン酸類、酢酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等の金属塩類、酸化亜鉛等の金属酸化物類が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
次に、前記式(1)に示す変性フェノール樹脂を得る方法について説明する。前述のフェノール系樹脂を原料に用い、任意のハロゲン化アルキル、エピハロヒドリン等を塩基性触媒下で反応させてエーテル化する方法や、任意の酸ハロゲン化物または酸無水物を反応させてエステル化する方法等が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
上記一般式(1)で表される変性フェノール系樹脂を製造する方法として、得られる変性フェノール樹脂の50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度が、30〜100mm2/sであること以外は特に制限がない。フェノール系樹脂をエピハロヒドリンを用いてエーテル化す方法を例示すると、50%n−ブタノール溶液の25℃における溶液粘度が110〜440mm2/sであるフェノール系樹脂と、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンの溶解混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を添加し、または添加しながら20〜120℃で1〜10時間反応させることにより得ることができる。エピハロヒドリンの添加量は、原料の該フェノール樹脂中の水酸基1当量に対して、通常0.3〜20当量の範囲が用いられる。エピハロヒドリンが2.5当量よりも少ない場合、エポキシ基と未反応水酸基が反応しやすくなるため、エポキシ基と未反応水酸基が付加反応して生成する基(-CH2CR(OH)CH2-、R:水素原子又は有機炭素基)を含んだ高分子量物が得られる。一方、2.5当量よりも多い場合、理論構造物の含有量が高くなる。所望の特性によってエピハロヒドリンの量を適宜調節すればよい。
上記反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。また、該多価フェノール化合物とエピハロヒドリンの溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で1〜5時間反応させて得られる該フェノール樹脂のハロヒドリンエーテル化物にアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び20〜120℃で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。
更に、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。溶媒を使用する場合のその使用量は、エピハロヒドリンの量に対し通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの量に対し通常5〜100重量%、好ましくは10〜60重量%である。これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、110〜250℃、圧力10mmHg以下でエピハロヒドリンや他の添加溶媒などを除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、エピハロヒドリン等を回収した後に得られる粗エポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて更に反応させて閉環を確実なものにすることもできる。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は粗エポキシ樹脂中に残存する加水分解性塩素1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは1.2〜5.0モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜3時間である。反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量は、粗変性フェノール樹脂に対して0.1〜3.0重量%の範囲が好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより、本発明の変性フェノール樹脂が得られる。
上記一般式(1)で表される変性フェノール系樹脂の中でも、下記一般式(2)で表されるグリシジル基でエーテル化された変性フェノール系樹脂がとりわけ難燃性、耐光性の面で好ましいことから、本発明では、これを使用することとしている。
(上記式中、R
3は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
本発明の(C)変性フェノール系樹脂の50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度は、30〜100mm2/sであり、好ましくは35〜90mm2/s、特に40〜80mm2/sのものが難燃性に優れ好ましい。ここで、50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度とは、一般式(1)で表される変性フェノール系樹脂の1,4−ジオキサンを溶媒とした当該樹脂50重量%溶液を、JISK2283に準拠し、キャノン−フェンスケ粘度計を用い測定した25±0.01℃における動粘度である。
また(C)変性フェノール系樹脂の空気雰囲気下、40℃/分で昇温した場合のTGA測定による600℃残留炭化物量が30%以上であり、好ましくは33%以上、特に35%以上のものが難燃性に優れ好ましい。
上記の変性フェノール系樹脂は必要に応じ、1種または2種以上使用することができる。形状については特に制限されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状などいずれも使用できる。
変性フェノール系樹脂(C)の添加量は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜18重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。変性フェノール系樹脂(C)の添加量が0.1重量部未満の場合は高度な難燃性付与効果が見られないため好ましくない。また20重量部を越える場合は耐衝撃性や耐熱性の低下、さらには成形品の表面外観を損なうので好ましくない。
また、本発明の難燃性樹脂組成物にさらにシリコーン系化合物(D)を添加すると、燃焼時の液滴の落下(ドリップ)抑制、燃焼時の延燃抑制、耐衝撃性の向上効果を付与することができる。
本発明に使用されるシリコーン系化合物(D)とは、シリコーン樹脂および/またはシリコーンオイルのことである。
本発明に使用されるシリコーン樹脂とは、下記一般式(4)〜(7)で表される単位およびこれらの混合物から選ばれる化学的に結合されたシロキサン単位(ここで、Rはそれぞれ飽和または不飽和一価炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、ビニルまたはアリル基から選ばれる基を表す。)からなるポリオルガノシロキサンであり、室温で約200〜300000000センチポイズの粘度のものが好ましいが、上記のシリコーン樹脂である限り、それに限定されるものではない。
本発明に使用されるシリコーンオイルとは、下記一般式(8)で表されるものである(ここで、Rはアルキル基またはフェニル基を表し、nは1以上の整数である。)。使用するシリコーンオイルは、0.65〜100000センチトークスの粘度のものが好ましいが、上記のシリコーンオイルである限り、それに限定されるものではない。
本発明に使用されるシリコーン系化合物として、シリコーン樹脂および/またはシリコーンオイルを使用することができるが、難燃性、耐衝撃性向上の面からシリコーンオイルが好ましい。
上記シリコーン系化合物(D)の添加量はゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜8重量部、更に好ましくは0.1〜5重量部である。
さらに本発明の難燃性樹脂組成物は、必要に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化アルミニウムなどの充填材などを配合することができる。中でもガラス繊維、炭素繊維、金属繊維が好ましく使用することができ、最も好ましいものとしては炭素繊維が用いられる。これら繊維状充填材の種類は、一般に樹脂の強化用に用いられているものならば特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョプドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。
なお、本発明に使用する上記の繊維状、紛状、粒状あるいは板状充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
また、ガラス繊維、炭素繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物に対して本発明の目的を損なわない範囲で紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、酸化防止剤(例えばフェノール系、ホスファイト系、イオウ系、チオエーテル系など)、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステラアマイドおよびエチレンワックスなど)、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、滴下防止剤(フッ素系樹脂、GPCで測定した重量平均分子量が5〜1000×104の高分子量ビニル系共重合体および/またはアクリル系共重合体など)、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、および染料・顔料を含む着色剤(硫化カドミウム、フタロシアニン、酸化チタンなど)などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。
また、本発明の難燃性樹脂組成物は通常公知の方法で製造される。例えば、ゴム強化スチレン系樹脂(A)、燐系難燃剤(B)、変性フェノール系樹脂(C)、およびその他の必要な添加剤を予備混合してまたはせずに押出機などに供給して、150℃〜350℃の温度範囲において十分溶融混練することにより調製される。この場合例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いることができ、特にアスペクト比をコントロールすることから、スクリューにニーディングエレメントを数個挿入あるいは未挿入にすることにより使用することが好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物は難燃性だけでなく、機械特性、耐熱性、滞留安定性さらに成形加工性にも優れ、溶融成形可能であるため押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、フィルム、管、ロッドや希望する任意の形状と大きさを持った成形品に成形し使用することができる。さらに難燃性を活かして電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類など種々の用途に用いることができる。
例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、パソコン、プリンター、ディスプレイ、CRTディスプレイ、ファックス、コピー、ワープロ、ノートパソコン、携帯電話、PHS、DVDドライブ、PDドライブ、フレキシブルディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、シャーシ、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品、その他各種用途に有用である。
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明する。なお、実施例中の部数および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
参考例1
(A)ゴム強化スチレン系樹脂
<A−1>グラフト(共)重合体
以下にグラフト共重合体の調製方法を示す。なおグラフト率は次の方法で求めたものである。グラフト共重合体の所定量(m)にアセトンを加え4時間還流した。この溶液を8000rpm(遠心力10,000G(約100×103 m/s2 ))30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここでLはグラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
ポリブタジエンラテックス(平均ゴム粒子径0.3μm、ゲル含率85%)60部(固形分換算)の存在下でスチレン70%、アクリロニトリル30%からなる単量体混合物40部を加えて乳化重合した。得られたグラフト共重合体は硫酸で凝固した後、乾燥してパウダー状として得た。
得られたグラフト共重合体のグラフト率は36%であり、スチレン構造単位70%およびアクリロニトリル30%からなる非グラフト性の共重合体を18.1%含有するものであった。またメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.34dl/gであった。
<A−2>ビニル系共重合体の調製
<A−2−1>
スチレン70%、アクリロニトリル30%からなる単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体<A−2−1>を調製した。得られたビニル系共重合体<A−2−1>はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.53dl/gであった。
<A−2−2>
スチレン69.7%、アクリロニトリル30%、グリシジルメタクリレート0.3%からなる単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体<A−2−2>を調製した。得られたビニル系共重合体<A−2−2>はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.54dl/gであった。
<A−2−3>
スチレン51%、アクリロニトリル9%、N−フェニルマレイミド40%からなる単量体混合物をシクロヘキサノン溶媒中で溶液重合してビニル系共重合体<A−2−3>を調製した。得られたビニル系共重合体<A−2−3>はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.59dl/gであった。
参考例2
(B)燐系難燃剤
<B−1>芳香族ビスホスフェート“PX−200”(大八化学社製)を使用した。
<B−2>オリゴマー型芳香族ビスホスフェート”CR733S”(大八化学社製)を使用した。
参考例3
(C)変性フェノール系樹脂
<C−1>製造方法−1−
温度計,滴下ロート,冷却管,撹拌機を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら,50重量%n−ブタノール溶液の25℃における溶液粘度が205mm2/sのフェノールノボラック樹脂104部(水酸基1.0当量),エピクロルヒドリン370部(4.0モル),n−ブタノール42部,テトラエチルベンジルアンモニウムクロライド2.3部を仕込み溶解させた。65℃に昇温した後に,共沸する圧力までに減圧して,49%水酸化ナトリウム水溶液82部(1.0モル)を5時間かけて滴下した,次いで同条件下で0.5時間撹拌を続けた。この間,共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して,水層を除去し,油層を反応系内に戻しながら反応した。その後,未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン550部とn−ブタノール55部とを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液15部を添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水100部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し,精密濾過を経た後に,溶媒を減圧下で留去して目的の変性フェノール樹脂<C−1>144部を得た。得られた変性フェノール樹脂のエポキシ当量は185g/eqであり、50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度は48mm2/s(粘度計番号:200番を用い測定)、また空気雰囲気下、40℃/分で昇温した場合のTGA測定による600℃残留炭化物量は37%であった。
<C−2>製造方法−2−
温度計,滴下ロート,冷却管,撹拌機を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら,50重量%n−ブタノール溶液の25℃における溶液粘度が300mm2/sのフェノールノボラック樹脂104部(水酸基1.0当量),エピクロルヒドリン370部(4.0モル),n−ブタノール42部,テトラエチルベンジルアンモニウムクロライド2.3部を仕込み溶解させた。65℃に昇温した後に,共沸する圧力までに減圧して,49%水酸化ナトリウム水溶液82部(1.0モル)を5時間かけて滴下した,次いで同条件下で0.5時間撹拌を続けた。この間,共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して,水層を除去し,油層を反応系内に戻しながら反応した。その後,未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン550部とn−ブタノール55部とを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液15部を添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水100部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し,精密濾過を経た後に,溶媒を減圧下で留去して目的の変性フェノール樹脂<C−2>144部を得た。得られた変性フェノール樹脂のエポキシ当量は186g/eqであり、50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度は64mm2/s(粘度計番号:200番を用い測定)、また空気雰囲気下、40℃/分で昇温した場合のTGA測定による600℃残留炭化物量は39%であった。
<C−3>比較例としてグリシジル基変性ノボラックフェノール樹脂”EPPN−201H”(日本化薬社製)を使用した。該変性フェノール系樹脂<C−3>の50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度は110mm2/s(粘度計番号:300番を用い測定)、また空気雰囲気中、40℃/分で昇温した場合のTGA測定による600℃残留炭化物量は43%であった。
<C−4>比較例としてグリシジル基変性ノボラックフェノール樹脂”N−730−S”(大日本インキ化学工業社製)を使用した。該変性フェノール系樹脂<C−4>の50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度は13mm2/sであり(粘度計番号:150番を用い測定)、また空気雰囲気下、40℃/分で昇温した場合のTGA測定による600℃残留炭化物量は15%であった。
<C−5>比較例としてビスフェノールA型エポキシ樹脂“EPICLON AM−040−P”(大日本インキ化学工業社製)を使用した。該エポキシ樹脂<C−5>の50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度は538mm2/s(粘度計番号:400番を用い測定)、また空気雰囲気下、40℃/分で昇温した場合のTGA測定による600℃残留炭化物量は7%であった。
<C−6>比較例としてノボラック型エポキシ樹脂(アルドリッチ(株)製)を使用した。該エポキシ樹脂<C−6>の50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度は14mm2/s(粘度計番号:150番を用い測定)、また空気雰囲気下、40℃/分で昇温した場合のTGA測定による600℃残留炭化物量は18%であった。
<C−7>比較例としてノボラック型エポキシ樹脂(アルドリッチ(株)製)を使用した。該エポキシ樹脂<C−7>の50重量%1,4−ジオキサン溶液の25℃における溶液粘度は25mm2/s(粘度計番号:150番を用い測定)、また空気雰囲気下、40℃/分で昇温した場合のTGA測定による600℃残留炭化物量は32%であった。
参考例4
(D)シリコーン系化合物
<D−1>シリコーン樹脂である”DC4−7081”(東レダウコーニングシリコーン社製)を使用した。
<D−2>シリコーンオイルである“SH200(1000cs)”(東レダウコーニングシリコーン社製)を使用した。
参考例5
酸化防止剤
チオエーテル系酸化防止剤である”アデカスタブAO−412S”(旭電化工業社製)を使用した。
[実施例1〜7、比較例1〜11]
参考例で調製した(A)ゴム強化スチレン系樹脂、(B)燐系難燃剤、(C)変性フェノール系樹脂、およびその他の必要な添加剤を表に示した配合比で混合し、ベント付き30mmφ2軸押出機(池貝鉄工社製、PCM−30)を使用し、220〜270℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状のポリマーを製造した。次いで射出成形機(住友重機社製、プロマット40/25)により、射出圧を下限圧+1MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定した。
(1)難燃性:射出成形により得た1.6mm厚みの難燃性評価用試験片についてUL94に定められている評価基準に従い、5本の試験片について難燃性を評価した。難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
(2)耐衝撃性:ASTM D256−56Aに従い耐衝撃性を評価した。
(3)耐熱性:ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い耐熱性を評価した。
(4)色調:試験片の色調を目視判断した。(○:白色、△:淡黄色、×:黄色)
各サンプルの難燃性、耐衝撃性、耐熱性、および色調の測定結果を表1にまとめて示す。
実施例1からわかるように、ABS樹脂の一部をエポキシ基変性ビニル系共重合体、およびマレイミド基変性ビニル系共重合体にすることにより、燃焼時間の短縮が可能となるばかりでなく、耐衝撃性が大幅に向上し、かつ耐熱性も向上することがわかる。
比較例1〜3の測定結果よりABS樹脂に燐系難燃剤を添加したのみでは難燃性は全く得られない。
一方、実施例1〜4の測定結果より、ABS樹脂に対して、燐系難燃剤<B−1>または<B−2>とともに本発明の変性フェノール系樹脂<C−1>、<C−2>を添加することにより難燃性が向上し、かつ耐衝撃性、耐熱性、色調が良好な樹脂組成物が得られる。
実施例1および実施例5の比較から、ABS樹脂に対して、燐系難燃剤<B−1>とともに変性フェノール系樹脂<C−1>からなる難燃性樹脂組成物へ、さらにシリコーン樹脂(D−1)を添加すると、燃焼時間が短縮されるばかりでなく、耐衝撃性も向上することがわかる。さらに実施例7との比較より、シリコーンオイル(D−2)を添加すると燃焼時間の短縮は小さいが、耐衝撃性が大幅に向上することが分かる。
さらに実施例1および実施例7の比較から、ABS樹脂に対して、燐系難燃剤<B−1>とともに変性フェノール系樹脂<C−1>からなる難燃性樹脂組成物へ、さらに酸化防止剤を添加することにより、大幅に燃焼時間が短縮されることがわかる。
実施例1と比較例4の比較により、本発明の範囲外の溶液粘度である変性フェノール系樹脂<C−3>を使用した場合には、燃焼時間が大幅に延長するばかりでなく、耐衝撃性も低下することがわかる。
さらに実施例1と比較例5〜7の比較により、本発明の範囲外の溶液粘度であり、600℃残差量も30%以下である変性フェノール系樹脂<C−4>〜<C−6>を使用した場合には、燃焼時に試験片が滴下し難燃性が大幅に低下するばかりか、著しく耐熱性を低下することがわかる。
また実施例1と比較例8の比較により、600℃残差量は30%以上であるが、溶液粘度が本発明の範囲外である変性フェノール系樹脂<C−7>を使用した場合も、燃焼時の試験片滴下を抑制することができないばかりか、耐熱性を低下することがわかる。
実施例1と比較例9の比較により、変性フェノール系樹脂<C−1>を多量に添加した場合も同様に、試験片が滴下し難燃性が低下するばかりか、機械特性を著しく低下することがわかる。
実施例1と比較例10の比較により、燐系難燃剤を添加しない場合には難燃性は得られず、比較例11のように多量の燐系難燃剤を添加した場合には難燃性は大幅に向上するが、機械特性が著しく低下し実用性のない材料となることがわかる。