WO2010087181A1 - インクジェットプリンタ - Google Patents

Abstract

　ヒータの加熱により印刷媒体に発生する皺をプリンタヘッドの下面に到達させないことにより、印刷品質の劣化を防止するインクジェットプリンタを提供する。　プラテンを加熱してプラテンの載置面上に載置された印刷媒体を昇温させるヒータ（８１，８２，８３）と、印刷媒体（Ｍ）にインク吐出を行って印刷を施すプリンタヘッド（５０）を有し、プリンタヘッド（５０）を印刷媒体Ｍに対して相対移動させながらインク吐出を行って印刷媒体に印刷を施すキャリッジ（３０）およびキャリッジ移動機構と、印刷媒体（Ｍ）を送出するメディア移動機構とを備えたインクジェットプリンタにおいて、プリンタヘッド（５０）によりインクが吐出された印刷対象領域から送出側に所定長さだけ延びた部分の印刷媒体（Ｍ）がヒータ（８１，８２，８３）により加熱されないようにする溝部（１００）を備える。

Description

インクジェットプリンタ

　本発明は、加熱により大きくなる皺をプリンタヘッドの下面に発生させないための昇温防止部を備えたインクジェットプリンタに関する。

　印刷媒体に印刷を施すプリンタ装置の一例として、シート状の印刷媒体をプラテン上で支持し、プラテンの上面において印刷媒体に対向させたプリンタヘッドを設け、プリンタヘッドから印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行う構成のインクジェットプリンタが知られている。このような構成のインクジェットプリンタで印刷を行う時には、プリンタヘッドを例えば左右に往復移動させるとともに、印刷媒体をこれに対して直角な方向（送り方向）に送りながら、プリンタヘッドの下面に形成されたノズル開口からインクを吐出させて、所望のパターンでプリンタヘッドの下面と対向した面に付着させるようになっている（例えば、特許文献１を参照）。

　上述したようなインクジェットプリンタは、液体のインク微粒子を印刷媒体に吐着させて高精細な印刷を行うため、印刷媒体に吐出されたインクをできる限り速やかに定着、乾燥させ、また高い生産性を確保する必要がある。このため、プリンタヘッドによりインクが吐出された後の印刷媒体の温度管理が重要な問題となっている。

　従って、前述したようなインクジェットプリンタには、プラテンを加熱して印刷媒体を昇温させるヒータが設けられており、使用する印刷媒体およびインクの種類等に応じて所定の設定温度にプラテンを加熱することにより、印刷媒体を所定の温度に昇温させることが可能になっている。

特開２００４－３３８１１９

　ところで、上記のようなインクジェットプリンタを用いて印刷を行う場合、印刷媒体にインクが吐出された時点で、微細な皺が発生し印刷媒体が波打つコックリング現象が発生する。そして、この微細な皺が発生している印刷媒体がヒータにより加熱されると皺が大きくなり、この加熱により大きくなった皺がプリンタヘッドの下面に到達すると、プリンタヘッドと干渉することにより印刷品質が劣化するという課題がある。

　本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、ヒータの加熱により印刷媒体に発生する皺をプリンタヘッドの下面に到達させないことにより、印刷品質の劣化を防止するインクジェットプリンタを提供することを目的とする。

　上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェットプリンタは、長尺シート状の印刷媒体を保持する載置面を有したプラテンと、プラテンの載置面に対向して配置され印刷媒体の印刷対象領域にインク吐出を行って印刷を施すプリンタヘッドを有し、プリンタヘッドをプラテンの載置面上に載置された印刷媒体に対して相対移動させながらインク吐出を行って印刷媒体に印刷を施す印刷手段（例えば、実施形態におけるキャリッジ３０およびキャリッジ移動機構４０）と、プラテンの載置面に載置された印刷媒体を印刷手段による印刷に応じてプラテンから送出する印刷媒体送出手段(例えば、実施形態におけるメディア移動機構２０)と、プラテンの印刷媒体が送出される送出側に設けられ、プラテンの載置面から送出された印刷媒体を載置保持するガイド面を有したガイド部（例えば、実施形態におけるフロントプラテン７３）と、ガイド面を加熱してガイド面上に載置された印刷媒体を昇温させる印刷媒体昇温手段（例えば、実施形態におけるアフターヒータ８３）と、プラテンの印刷対象領域に対向する位置の載置面とガイド部のガイド面との間に設けられ、プリンタヘッドによりインクが吐出された印刷対象領域から送出側に所定長さだけ延びた部分の印刷媒体が印刷媒体昇温手段により加熱されることを防止する昇温防止部を備えることを特徴とする。

　また、本発明に係るインクジェットプリンタにおいて、昇温防止部は、プラテンの載置面と同一平面上に開口面を有し印刷媒体が送出される方向と直交する方向に延びて形成される凹部（例えば、実施形態における溝部１００）であることが好ましく、さらには、ガイド部からプラテンへの熱伝導が遮断されていることが好ましい。

　本発明に係るインクジェットプリンタにおいては、印刷媒体のプリンタヘッドの下面に対向する印刷対象領域から送出側に所定長さだけ延びた部分を昇温防止部により昇温させないようにすることにより、印刷媒体が昇温することにより発生する大きな皺がプリンタヘッドの下面に到達して印刷品質が劣化する事態を確実に防止することができる。そして、ガイド部からプラテンへの熱伝導が遮断されていれば、ヘッド近傍へ熱が伝わらなくなるため、ヘッド下面付近の印刷媒体に皺が到達することを確実に防止することができる。

本発明の適用例として示したプリンタ装置の斜め前方からの外観斜視図である。 上記プリンタ装置の斜め後方からの外観斜視図である。 上記プリンタ装置における装置本体の要部構成を示す正面図である。 図１中のＶ矢視方向に見た上記プリンタ装置の概略側断面図である。 上記プリンタ装置におけるメインプラテンとフロントプラテンの間に設けられた溝部１００を斜め前方から見た外観斜視図である。 本発明の目的を達成するために代替可能なメインプラテン及びフロントプラテンの変形例を示した図である。（ａ）はメインプラテンとフロントプラテンを物理的に分離させた図、（ｂ）はメインプラテンとフロントプラテンの間に断熱部材を介在させた図、（ｃ）はメインプラテンとフロントプラテンの間に冷却パイプを介在させた図、（ｄ）はメインプラテンとフロントプラテンの間に放熱手段及び冷却ファンを介在させた図、をそれぞれ示している。 本発明の目的を達成するため、メインプラテンとフロントプラテンとを物理的に分離させ、メインプラテンとフロントプラテンの間にローラ及び冷却ファンを介在させた状態を示す図である。

　以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明を適用したインクジェットプリンタの一例として、Ｘ－Ｙ二軸のうち、一軸を印刷媒体の移動、他の一軸をプリンタヘッドの移動としたタイプのプリンタ装置Ｐについて説明する。プリンタ装置Ｐを斜め前方から見た斜視図および斜め後方から見た斜視図をそれぞれ図１および図２に示すとともに、このプリンタ装置Ｐにおける装置本体１の要部構成を図３に示しており、まず、これらの図面を参照してプリンタ装置Ｐの全体構成について説明する。なお、以降の説明においては、図１中に付記する矢印Ｆ，Ｒ，Ｕの指す方向を、それぞれ前方、右方、上方と称して説明する。

　プリンタ装置Ｐは、多数のノズルが形成されたプリンタヘッド５０（図３参照）を、塩ビシートやターポリン、ポリエステルフィルム等のシート状の印刷媒体Ｍ（メディアとも称される）に対して相対移動させながらノズルからインクの微粒子を吐出して、印刷対象面に文字や図形、模様、写真等の情報を印刷する装置である。このプリンタ装置Ｐは、図１に示すように、描画機能を果たす横長矩形箱状の装置本体１と、装置本体１を作業容易な高さ位置に支持する支持部２とからなり、支持部２を構成する左右の脚部２ａの前後には、ロール状に巻かれた未印刷状態の印刷媒体Ｍを装置本体１に供給する印刷媒体供給機構３と、印刷が終了した印刷媒体Ｍを巻き取る印刷媒体巻き取り機構４とが設けられている。

　装置本体１は、図１および図３に示すように、各機構の取り付けベースとなるボディ１０と、印刷媒体Ｍを載置させるプラテン７０と、プラテン７０に載置された印刷媒体Ｍを前後方向に移動可能なメディア移動機構２０と、プラテン７０の上方に位置して左右に移動自在な状態で支持されたキャリッジ３０と、プラテン７０に載置された印刷媒体Ｍに対してキャリッジ３０を左右に相対移動させるキャリッジ移動機構４０と、印刷媒体Ｍと所定間隔空けた状態でキャリッジ３０に保持された複数のプリンタヘッド５０と、メディア移動機構２０による印刷媒体Ｍの前後方向への移動、キャリッジ移動機構４０によるキャリッジ３０の左右方向への移動、およびプリンタヘッド５０の各ノズルからのインクの吐出等、プリンタ装置Ｐの各部の作動を制御するコントロールユニット６０等から構成される。

　ボディ１０は、図３に示すように、プラテン７０等が設けられる下部フレーム１１Ｌと、キャリッジ３０等が設けられる上部フレーム１１Ｕとからなる本体フレーム１１を備え、上部フレーム１１Ｕと下部フレーム１１Ｌとの間に印刷媒体Ｍが前後に挿通可能な横長窓状のメディア挿通部１５が形成されている。ボディ１０は、本体フレーム１１の中央部を覆うフロントカバー１３ａおよび左右を覆うサイドカバー１３ｂに囲まれて全体として横長矩形の箱状に構成されている。

　メディア移動機構２０は、左右に延びる回転軸廻りに回動可能に設けられ上部周面がプラテン７０の支持面に露出して配設された円筒状の送りローラ２１と、送りローラ２１を回転駆動させるサーボモータ２３と、送りローラ２１の軸端に結合された従動プーリとサーボモータ２３の軸端に結合された駆動プーリとの間に巻き掛けられたタイミングベルト２２と、各々前後に回動自在なピンチローラ２６を有し送りローラ２１の上方に左右所定間隔をおいて配設された複数のローラアッセンブリ２５等から構成されている。ローラアッセンブリ２５は、ピンチローラ２６を送りローラ２１に弾性的に係合させたクランプ位置と、ピンチローラ２６を送りローラ２１の上方に離隔させたアンクランプ位置とに変位可能に構成され、ローラアッセンブリ２５をクランプ位置にして印刷媒体Ｍを上下のローラ２６，２１間に挟みこんだ状態で送りローラ２１を回動させることにより印刷媒体Ｍが送りローラ２１の回転角度に応じた送り量で前後方向に搬送されるようになっている。

　キャリッジ移動機構４０は、上部フレーム１１Ｕに取り付けられたガイドレール３５の左右の側端近傍に設けられた駆動プーリ４１および従動プーリ４２と、駆動プーリ４１を回転駆動させるサーボモータ４３と、駆動プーリ４１と従動プーリ４２とに巻き掛けられた無端ベルト状のタイミングベルト４５等から構成されており、キャリッジ３０は、タイミングベルト４５に連結固定されている。

　コントロールユニット６０は、ボディ１０の右側上部に設けられ、メディア移動機構２０による印刷媒体Ｍの前後移動、キャリッジ移動機構４０によるキャリッジ３０の左右移動、プリンタヘッド５０の各ノズルからのインク吐出等、プリンタ装置Ｐの各部の作動を制御する制御装置である。コントロールユニット６０は、メディア移動機構２０による印刷媒体Ｍの前後移動と、キャリッジ移動機構４０によるキャリッジ３０の左右移動とを組み合わせて印刷媒体Ｍとプリンタヘッド５０とを相対移動させ、プリンタヘッド５０の各ノズルから印刷媒体Ｍにインクを吐出させて印刷媒体Ｍに印刷を行うようになっている。操作パネル６５は、図１に示すように、ボディ１０の右側上部に設けられ、各種の情報を表示するディスプレイ等が設けられている。オペレータは、当該ディスプレイの表示内容を確認しながら印刷条件を設定し、印刷を実行することができるようになっている。

　プラテン７０は、ボディ１０の左右中央部に位置しメディア挿通部１５の前後にわたって設けられている。図１中Ｖ～矢視方向に見たプリンタ装置Ｐの概略断面図である図４に示すように、プラテン７０は、プリンタヘッド５０が左右に移動して印刷するプリント部（描画領域）に印刷媒体Ｍを水平に支持する支持面が形成されたメインプラテン７２と、メインプラテン７２から後方に延びてボディ１０の後面側に設けられたリアプラテン７１と、メインプラテン７２から前方に延びてボディ１０の前面側に設けられたフロントプラテン７３等から構成され、リアプラテン７１の後端側およびフロントプラテン７３の前端側がそれぞれ滑らかな曲線を描いて下方に延び、印刷媒体供給機構３からプラテン７０に供給された印刷媒体Ｍはリアプラテン７１～メインプラテン７２～フロントプラテン７３の上面を滑らかに移動して印刷媒体巻き取り機構４に巻き取られるようになっている。

　フロントプラテン７３の前方下部には、印刷媒体Ｍに外気を吹き付けて印刷媒体Ｍに吐着されたインクの乾燥を促進させるファン７４が複数並んで設けられている。なお、印刷媒体Ｍを支持するメインプラテン７２の支持面には吸着孔（図示せず）が、そして、その吸着孔の下部には負圧に設定可能な減圧室（図示せず）が設けられており、減圧室により負圧を発生させることにより、印刷媒体Ｍを吸着孔を介してメインプラテン７２の支持面に吸着保持することが可能になっている。

　ところで、プラテン７０（７１，７２，７３）は、熱伝導率の小さい材料で構成されており、温度変化の影響を受けにくい状態になっているが、画像品質を向上させたり、吐出されたインクを乾燥させたりするためにプラテン７０（７１，７２，７３）の上面の温度は調整可能になっている。このようにプラテン７０（７１，７２，７３）の上面の温度を調整するためにプラテン７０（７１，７２，７３）の背面には、図４に示すように、未印刷状態の印刷媒体Ｍを温めるプレヒータ８１と、プリンタヘッド５０から吐出されたインク微粒子の吐着性を向上させて画像品質を向上させるプリントヒータ８２と、吐着されたインクの乾燥を促進させるアフターヒータ８３とが設けられている。プレヒータ８１、プリントヒータ８２、およびアフターヒータ８３は、ボディ１０の右側上部に設けられたヒータスイッチ（図示せず）によりオン／オフ操作することが可能になっており、プレヒータ８１、プリントヒータ８２、アフターヒータ８３の各ヒータの設定温度は、操作パネル６５によりそれぞれ調整可能となっており、それぞれのヒータ８１，８２，８３は互いに独立しており他のヒータの影響を受けないようになっている。また、リアプラテン７１、メインプラテン７２、およびフロントプラテン７３の温度は、それぞれのプラテン７１，７２，７３に設けられた温度検出センサ９１，９２，９３（図４参照）によりそれぞれ検出可能となっている。

　また、メインプラテン７２の前方（メインプラテン７２とフロントプラテン７３の間）に設けられたアフターヒータ８３の側端部に、左右方向（印刷媒体の移動方向と直交する方向）に延びるように、前後方向（印刷媒体の移動方向）の長さが１０ｃｍ、深さが１０ｃｍの溝部１００が設けられている。プリンタヘッド５０の下面からインクが吐出された印刷媒体Ｍは溝部１００の上面に移動し、この溝部１００の上面にある印刷媒体Ｍに、メインプラテン７２の載置面を昇温させるプリントヒータ８２およびフロントプラテン７３の載置面を昇温させるアフターヒータ８３の熱が及ばないようになっている。

　以上のように構成されたプリンタ装置Ｐを用いて印刷媒体Ｍに印刷を行う方法について説明する。まず、未印刷状態のロール状になった印刷媒体Ｍを印刷媒体供給機構３にセットした後、ロール状になっている印刷媒体Ｍの先端をリアプラテン７１およびメインプラテン７２の上面に引き上げる。また、印刷媒体巻き取り機構４に、印刷後の印刷媒体を巻き取るための巻管（図示せず）をセットし、セットした巻管に上記印刷媒体Ｍの先端を貼り付ける。この状態で印刷を開始すると、メインプラテン７２上部にある印刷媒体Ｍへの印刷が始まり、印刷が終了した印刷媒体Ｍは、メディア移動機構２０によりプラテン７０の前方に送出され、アフターヒータ８３およびファン７４が当該送出された印刷媒体Ｍの印刷を施した面を乾燥させる。その際、印刷媒体巻き取り機構４に内蔵されている緊張力付与手段（図示せず）により、巻管を印刷媒体Ｍの巻き取り方向に回転させるための回転開始トルクが加えられ、印刷媒体Ｍが巻管周囲に、印刷を施した面が巻管の外面に接する状態で巻き取られ始める。このように、印刷が終了した印刷媒体Ｍが送出される度に、緊張力付与手段（図示せず）によりトルクが加えられ、印刷が終了した印刷媒体Ｍが徐々に、巻管周囲に巻き取られていく。

　ここで、上記のように印刷を行う場合において、インクが吐出された印刷媒体には微細な皺が形成され紙面が波打つコックリング現象が発生し、コックリング現象が発生している部分を温めると当該皺が大きくなる事象が発生する。この事象の発生自体は皺が大きくなっても肉眼で見えない程度であるため問題ないが、温められて大きくなった皺がプリンタヘッド５０の下面に発生しこの部分にインクが吐出されると印刷品質を低下させる虞がある。そこで、温められて大きくなった皺がプリンタヘッドの下面に発生しないようにするため、プリンタヘッド５０の下面に対向するメインプラテン７２の載置面の温度を低くする必要がある。

　また、メインプラテン７２の先にあるフロントプラテン７３の載置面の温度は、印刷後の印刷媒体を完全に乾燥させるためある程度の高温状態を維持する必要がある。ところで、上述した事象と同じように、フロントプラテン７３の載置面がアフターヒータ８３により温められると印刷媒体Ｍに発生したコックリング現象による皺が大きくなる。そこで、従来のプリンタ装置のように、フロントプラテン７３がメインプラテン７２のすぐ先にある場合、上記の皺が波打つことにより皺が大きくなった部分がプリンタヘッドの下面に対向するインク吐出部分まで延びることがある。このように、皺が大きくなった部分がインク吐出部分まで延び、その部分にインクが吐出されると印刷品質が劣化する問題が発生する。

　上記問題に対応するため、本実施形態におけるプリンタ装置Ｐでは、前述した溝部１００を備えることにより、インクが吐出された直後の印刷媒体Ｍがフロントプラテン７３に載置されアフターヒータ８３により温められないようにしている。具体的には、オペレータが操作パネル６５を介してメインプラテン７２およびフロントプラテン７３の載置面の温度調整をした後に印刷を開始し、印刷媒体Ｍがメインプラテン７２の載置面に載置されプリンタヘッド５０によりインクが吐出された後に微細な皺が発生するが、皺が発生した印刷媒体Ｍは、直ぐにはフロントプラテン７３の載置面に移動せず、溝部１００の上面に移動する。そして、溝部１００の上面を約１０ｃｍ移動した後にフロントプラテン７３の載置面に移動する。

　このように、メインプラテン７２とフロントプラテン７３の間に溝部１００を設け、メインプラテン７２とフロントプラテン７３を溝部１００の間隔（約１０ｃｍ）だけ空けることにより、アフターヒータ８３により温められて発生する大きな皺がプリンタヘッド５０の下面に対向するインク吐出部分に及ばなくなるため、上述した印刷品質の劣化を確実に防止することが可能になる。

　以上、本実施形態においては、メインプラテン７２の前方に溝部１００を設け、印刷媒体Ｍのインクが吐出された部分が、直ちにフロントプラテン７３の載置面に移動し印刷媒体Ｍを乾燥させるためのアフターヒータ８３に温められないようにすることにより、プリンタヘッド５０直下の描画部分に大きくなった皺が発生し印刷品質が低下する事態を確実に防止することができる。

　そして、本実施形態においては、前後方向の長さが１０ｃｍ、深さが１０ｃｍの溝部１００がプリンタ装置Ｐに設けられている例について説明したが、溝部の長さまたは深さはこれに限定されることはない。

　さらに、本実施形態では、インクが吐出された直後の印刷媒体Ｍがアフターヒータ８３により温められないようにするために溝部１００を用いた例について説明したが、印刷媒体Ｍがアフターヒータ８３により温められないようにするための構成は上記に限定されることはない。以下で、インクが吐出された直後の印刷媒体Ｍを昇温させない構成の変形例について、実施例１～５を挙げて説明する。

　まず、実施例１では、図６（ａ）に示すように、上述したメインプラテン７２、フロントプラテン７３、アフターヒータ８３及び溝部１００と同様の構成要素であるメインプラテン１７２、フロントプラテン１７３、アフターヒータ１８３及び溝部２００が設けられるが、メインプラテン１７２とフロントプラテン１７３とが段差を有し、さらに物理的に分離している点が上記と異なる。このように物理的に分離させることにより、確実にアフターヒータ１８３の熱がメインプラテン１７２に及ばないようにすることが可能となり、インク吐出直後の印刷媒体Ｍに対する熱の供給をより効果的に遮断することができる。

　実施例２は、図６（ｂ）に示すように、メインプラテン７２、フロントプラテン７３、及びアフターヒータ８３と同様の構成要素であるメインプラテン２７２、フロントプラテン２７３、及びアフターヒータ２８３が設けられるが、実施例１のようにメインプラテン２７２とフロントプラテン２７３とが段差を有し物理的に分離されていることに加え、さらに、メインプラテン２７２とフロントプラテン２７３との間に熱伝導率が低い材質により構成される断熱部材３００が設けられている。この断熱部材３００により、アフターヒータ２８３の熱がメインプラテン２７２に及ばないようにすることが可能となり、効果的にインク吐出直後の印刷媒体Ｍへの熱を遮断することができる。

　実施例３は、図６（ｃ）に示すように、メインプラテン７２、フロントプラテン７３、及びアフターヒータ８３と同様の構成要素であるメインプラテン３７２、フロントプラテン３７３、及びアフターヒータ３８３が設けられるが、実施例１のようにメインプラテン３７２とフロントプラテン３７３とが段差を有し物理的に分離されていることに加え、さらに、メインプラテン３７２とフロントプラテン３７３との間に冷却パイプ４００が設けられている。冷却パイプ４００の内部には、冷却水４０１を流通させることができるようになっているが、この冷却パイプ４００により、アフターヒータ３８３から生じた熱が確実に冷却され、メインプラテン３７２にアフターヒータ３８３の熱が及ばないようになっている。このように、実施例３では、実施例１及び２と異なり積極的に印刷媒体Ｍの冷却を行うため、さらに効果的にインク吐出直後の印刷媒体Ｍへの熱を遮断することができる。

　実施例４は、図６（ｄ）に示すように、メインプラテン７２、フロントプラテン７３、及びアフターヒータ８３と同様の構成要素であるメインプラテン４７２、フロントプラテン４７３、及びアフターヒータ４８３が設けられるが、メインプラテン４７２とフロントプラテン４７３との間に、アフターヒータ４８３の熱を放熱させる放熱手段５００が設けられている。放熱手段５００は、アルミ等放熱性が高い材料により構成される放熱部材５０１と、放熱部材５０１の下方に設けられる冷却ファン５０２とを備えて構成される。放熱部材５０１は、その下面に凹凸を多数有する形状となっている。このように表面積を増大させることにより、放熱性をより高めることが可能になり、アフターヒータ４８３から生じた熱は放熱手段５００により放熱され、メインプラテン４７２へ伝わらないようにすることができるようになっている。

　実施例５においては、図７に示すように、メインプラテン７２、フロントプラテン７３、及びアフターヒータ８３に相当するメインプラテン５７２、フロントプラテン５７３、及びアフターヒータ５８３が設けられるが、まず、フロントプラテン５７３が下方に延びて設けられる点が実施例１～４と異なる。さらに、メインプラテン５７２とフロントプラテン５７３との間にはローラ５７５が設けられ、メインプラテン５７２から送出された印刷媒体Ｍは、ローラ５７５を経て方向転換されてフロントプラテン５７３に導かれるようになっている。

　また、実施例５においては、メインプラテン５７２から送出された印刷媒体Ｍから見て上方向に第１冷却ファン６０１が、印刷媒体Ｍから見て下方向に第２冷却ファン６０２がそれぞれ設けられている。これらの冷却ファン６０１，６０２により、インク吐出直後の印刷媒体Ｍにアフターヒータ５８３の熱が到達しないようにすることができる。更にローラ５７５の内部には、実施例３の冷却パイプ４００同様に、内部に冷却水５７４を流通させることが可能となっており、冷却水５７４により冷却されたローラ５７５の表面に印刷媒体Ｍを当てることにより、より効果的にアフターヒータ５８３の熱を吸熱し、メインプラテン５７２への熱の供給を遮断することができる。

　以上、上記実施例１～５を含む本実施形態においては、一軸印刷媒体移動、一軸プリンタヘッド移動タイプのインクジェットプリンタを例に挙げて説明したが、このタイプのインクジェットプリンタに限定されることなく、例えば、二軸プリンタヘッド移動タイプのインクジェットプリンタや、二軸印刷媒体移動タイプのインクジェットプリンタ等、他のタイプのインクジェットプリンタに対しても、上述した溝部１００，２００、断熱部材３００、冷却パイプ４００、放熱手段５００、冷却ファン６０１，６０２、またはローラ５７５を設けることが可能であり、上記と同様の効果を得ることができる。

　　　　Ｍ　　　　　印刷媒体
　　　　Ｐ　　　　　プリンタ装置
　　　２０　　　　　メディア移動機構（印刷媒体送出手段）
　　　３０　　　　　キャリッジ（印刷手段）
　　　４０　　　　　キャリッジ移動機構（印刷手段）
　　　５０　　　　　プリンタヘッド
　　　７０　　　　　プラテン
　　　７３　　　　　フロントプラテン（ガイド部）
　　　８３　　　　　アフターヒータ（印刷媒体昇温手段）
　　１００，２００　溝部（昇温防止部、凹部）
　　３００　　　　　断熱部材（昇温防止部）
　　４００　　　　　冷却パイプ（昇温防止部）
　　５００　　　　　放熱手段（昇温防止部）
　　５７５　　　　　ローラ（昇温防止部）
　　６０１　　　　　第１冷却ファン（昇温防止部）
　　６０２　　　　　第２冷却ファン（昇温防止部）

Claims (3)

1. 　長尺シート状の印刷媒体を保持する載置面を有したプラテンと、
   　前記プラテンの載置面に対向して配置され印刷媒体の印刷対象領域にインク吐出を行って印刷を施すプリンタヘッドを有し、前記プリンタヘッドを前記プラテンの載置面上に載置された印刷媒体に対して相対移動させながらインク吐出を行って前記印刷媒体に印刷を施す印刷手段と、
   　前記プラテンの載置面に載置された印刷媒体を前記印刷手段による印刷に応じて前記プラテンから送出する印刷媒体送出手段と、
   　前記プラテンの前記印刷媒体が送出される送出側に設けられ、前記プラテンの載置面から送出された印刷媒体を載置保持するガイド面を有したガイド部と、
   　前記ガイド面を加熱して前記ガイド面上に載置された印刷媒体を昇温させる印刷媒体昇温手段と、
   　前記プラテンの前記印刷対象領域に対向する位置の載置面と前記ガイド部のガイド面との間に設けられ、前記プリンタヘッドによりインクが吐出された印刷対象領域から前記送出側に所定長さだけ延びた部分の印刷媒体が前記印刷媒体昇温手段により加熱されることを防止する昇温防止部を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
2. 　前記昇温防止部は、前記プラテンの載置面と同一平面上に開口面を有し前記印刷媒体が送出される方向と直交する方向に延びて形成される凹部であることを特徴とする請求項１に記載のインクジェットプリンタ。
3. 　前記ガイド部から前記プラテンへの熱伝導が遮断されていることを特徴とする請求項１または２に記載のインクジェットプリンタ。

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