以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。また、図面中の符号Yはインクヘッドの走査方向を示し、符号Xは走査方向Yと直交する記録媒体の搬送方向を示す。ここでは、走査方向Yは左右方向に一致し、搬送方向Xは前後方向に一致する。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
図1は、一実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を搬送方向Xに移動させるとともに、走査方向Yに移動するキャリッジ70に搭載された記録ヘッド75からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体11と、プリンタ本体11を支える脚12を備えている。プリンタ本体11は、走査方向Yに延びている。
図2は、プラテン30付近の模式的な縦断面図である。また、図3は、プラテン30を上方から見た模式的な一部破断平面図である。図2に示すように、プリンタ本体11の内部には、支持部材20が設けられている。支持部材20は、プラテン30と、上流側ガイド40と、下流側ガイド45とを下方から支持している。支持部材20は、ここでは、プリンタ本体11の下部の骨格を形成する部材である。プラテン30は、支持部材20の前後方向の中央部で支持部材20に支持されている。上流側ガイド40は、プラテン30の後方で支持部材20に支持されている。下流側ガイド45は、プラテン30の前方で支持部材20に支持されている。記録媒体5は、上流側ガイド40によって案内されてプラテン30上に送られる。プラテン30では、記録媒体5に対して印刷が行われる。記録媒体5は、さらに、プラテン30上から下流側ガイド45に送られる。本実施形態では、前後方向は、記録媒体5の搬送方向である。搬送方向Xのうち後方は、搬送方向Xの上流X1側である。前方は、搬送方向Xの下流X2側である。上流側ガイド40は、プラテン30に対し、記録媒体5の搬送方向Xの上流X1側に設けられている。下流側ガイド45は、プラテン30に対し、記録媒体5の搬送方向Xの下流X2側に設けられている。
プラテン30は、記録媒体5が載置される載置台である。図1~図3に示すように、プラテン30は、走査方向Yおよび搬送方向Xに延びている。プラテン30の走査方向Yの長さは、搬送方向Xの長さよりも長い。プラテン30は、下方が開口した箱状に構成されている。
図2に示すように、プラテン30は、記録媒体5が載置される載置面30aを有している。載置面30aは、プラテン30の上面である。プラテン30は、載置面30aが略水平になるように支持部材20に支持されている。また、プラテン30は、上下方向に貫通する複数の吸着孔31を有している。吸着孔31は、載置面30aから載置面30aの裏面30bまで貫通している。吸着孔31からは、後述する吸着ファン111および112の駆動によって空気が吸い込まれる。吸着孔31は、記録媒体5を吸着するための孔である。記録媒体5は、吸着ファン111および112がプラテン30の裏面30bの下方の空間に形成する負圧によって吸着孔31に吸着される。複数の吸着孔31の配置の詳細については後述する。
上流側ガイド40は、ロール5aから引き出された記録媒体5をプラテン30に案内している。上流側ガイド40は、下方が開口した箱状に構成されている。上流側ガイド40は、記録媒体5が載置されるガイド面40aを有している。ガイド面40aは、上流側ガイド40の上面である。図2に示すように、ガイド面40aは、左右方向から見ると、搬送方向Xの上流X1側に向かって下降傾斜するように湾曲している。ガイド面40aは、円弧を描くようにして下降傾斜している。上流側ガイド40は、プラテン30よりも後方かつ下方に配置されたロール5aから引き出された記録媒体5を、後方に向かって下降傾斜したガイド面40aに沿ってプラテン30に案内する。
上流側ガイド40は、ガイド面40aの後端から前方に向かって屈折している。ガイド面40aの後端から屈折した部分は、前方に向かって下降傾斜するオーバーハング部40bを構成している。以下では、ガイド面40aとオーバーハング部40bとの境界の屈折した部分を第1屈折部40cと呼ぶ。上流側ガイド40は、オーバーハング部40bの前端からさらに屈折して、下方に向かって延びている。上流側ガイド40のオーバーハング部40bの前端から下方に延びる部分は、背面部40dを構成している。支持部材20の背面20aの上端は、背面部40dとオーバーハング部40bとの境界である第2屈折部40eと概ね同じ高さに設けられている。背面部40dは、支持部材20の背面20aよりも後方に配置されている。よって、上流側ガイド40の背面部40dと支持部材20の背面20aとの間には隙間が形成されている。この隙間は、走査方向Yに長く、記録媒体5の搬送方向Xに短く形成されている。
上流側ガイド40は、背面部40dの下端でさらに前方に向かって屈折している。上流側ガイド40の背面部40dの下端から前方に向かって延びる部分は、底部40fを構成している。底部40fの前端は、支持部材20の背面20aに接している。つまり、上流側ガイド40は、底部40fの前端で支持部材20に接している。底部40fは、上流側ガイド40の左右方向の幅全体にわたって構成されている。
底部40fには、排気口41が形成されている。排気口41は、走査方向Yに長く形成された開口部である。排気口41は、走査方向Yに延びている。ここでは、排気口41は、底部40fの左端部から右端部まで、ほぼ底部40fの幅全体にわたって延びている。排気口41は、吸着ファン111および112からの排気をプリンタ本体11の外部に排出するための開口である。排気口41は、上流側ガイド40のガイド面40aの裏面40gと対向するように設けられている。ここでは、排気口41は上方を向いており、上流側ガイド40の裏面40gは下方を向いている。
図2に示すように、下流側ガイド45も、下方が開口した箱状に形成され、湾曲した上面を有している。下流側ガイド45は、左右方向から見ると、搬送方向Xの下流X2側に向かって下降傾斜するように湾曲している。下流側ガイド45の上面は、円弧を描くようにして下降傾斜している。下流側ガイド45は、プラテン30よりも下方に配置された巻取機構90の方に記録媒体5を案内している。下流側ガイド45のプラテン30と逆側の端部は、支持部材20と接続されている。図示は省略するが、プラテン30、上流側ガイド40、および下流側ガイド45と支持部材20とは、それぞれ左右方向でも接している。よって、左右方向でも、プラテン30、上流側ガイド40、および下流側ガイド45と支持部材20との境界は閉じられている。支持部材20、プラテン30、上流側ガイド40、および下流側ガイド45によって、内部空間S1が形成されている。内部空間S1は、複数の吸着孔31と排気口41とを除いて、ほぼ密閉されている。排気口41は、内部空間S1と内部空間S1の外部とを連通させている。
記録媒体5は、ロール5aから引き出されている。ロール5aは、シート状の長尺の記録媒体5が捲回されたものである。記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やゴム製などのシートであってもよい。また、布帛であってもよい。
ロール5aは、供給機構50によって保持されている。供給機構50は、上流側ガイド40よりも後方に配置されている。また、供給機構50は、上流側ガイド40よりも下方に配置されている。図4は、プリンタ10を後方から見た背面図である。なお、図4では、上流側ガイド40は取り外されている。図4に示すように、供給機構50は、一対の供給軸51aおよび51bを備えている。左側供給軸51aおよび右側供給軸51bは、それぞれ走査方向Yに延びる円柱形状に形成され、互いに向かい合っている。左側供給軸51aおよび右側供給軸51bは、走査方向Yに延びる軸を中心にして回転可能に構成されている。左側供給軸51aおよび右側供給軸51bは、それぞれ、記録媒体5のロール5aの左端および右端を保持している。ロール5aは、左側供給軸51aおよび右側供給軸51bによって前後方向に回転可能に保持されている。
なお、記録媒体5の走査方向Yの幅は様々であり、右方を基準にセットされる。一対の供給軸51a、51bのうち右側供給軸51bは、左右方向に不動に構成されている。一方、左側供給軸51aは、左右方向に移動可能に構成されている。このような構成により、供給機構50は、様々な幅の記録媒体5を保持することができる。ロール5aから引き出された記録媒体5は、上流側ガイド40のガイド面40aに載置される。
プラテン30の後端部付近には、搬送機構60が設けられている。搬送機構60は、プラテン30の載置面30aに載置された記録媒体5を前後方向に搬送する。搬送機構60に送られることにより、記録媒体5は、ロール5aから引き出され、上流側ガイド40上を移動する。
搬送機構60は、ピンチローラ61と、グリットローラ62と、図示しないフィードモータとを備えている。ピンチローラ61はプラテン30の上方に設けられ、記録媒体5を上から押下する。プラテン30には、グリットローラ62が設けられている。グリットローラ62は、ピンチローラ61の下方に配置されている。グリットローラ62は、ピンチローラ61と対向する位置に設けられている。グリットローラ62は、フィードモータに連結されている。ピンチローラ61とグリットローラ62との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ62が回転すると、記録媒体5は搬送方向Xに搬送される。グリットローラ62は、フィードモータの駆動力を受けて回転可能に形成されている。グリットローラ62の一部およびフィードモータは、プラテン30に収容されている。フィードモータは、制御装置150と電気的に接続されている。フィードモータは、制御装置150によって制御される。
キャリッジ70は、プラテン30の上方に設けられている。キャリッジ70は、キャリッジ移動機構80により、プラテン30の上方を走査方向Yに移動される。キャリッジ70は、ピンチローラ61よりも搬送方向Xの下流X2側に配置されている。キャリッジ70は、記録ヘッド75を搭載している。
記録ヘッド75は、キャリッジ70の下面に設けられている。記録ヘッド75は、キャリッジ70とともに走査方向Yに移動しながらインクを吐出することによって記録媒体5に印刷を行う。図1に示すように、記録ヘッド75は、複数のインクヘッド76を備えている。複数のインクヘッド76は、プラテン30の載置面30aと対向するように設けられている。複数のインクヘッド76は、記録ヘッド75において走査方向Yに並んでいる。図示は省略するが、各インクヘッド76のプラテン30と対向する面には、インクを吐出するノズルが複数形成されている。ノズルは、インクが吐出される微細な孔である。各インクヘッド76において、複数のノズルは前後方向に並んでノズル列を形成している。なお、ここでは、インクヘッド76は4つ図示されているが、記録ヘッド75が備えるインクヘッド76の数は限定されない。
複数のインクヘッド76の内部には、それぞれ、圧電素子を備えたアクチュエータが設けられている。アクチュエータは、ノズルごとに設けられている。各アクチュエータが駆動することによって、各ノズルはインクを吐出する。各アクチュエータは、ノズルと連通しインクが貯留される圧力室と、圧力室に接する圧電素子とを備えている。圧電素子に印加される電圧を変化させると圧電素子は膨張・収縮し、その変位によって圧力室の体積が変化する。この圧力室の体積の変化によってインクがノズルから吐出される。複数のアクチュエータは、制御装置150に電気的に接続され、制御装置150によって制御されている。
複数のインクヘッド76には、それぞれ図示しないインクカートリッジが接続されている。インクヘッド76とインクカートリッジとは、例えば、可撓性のチューブで接続されている。1つのインクカートリッジには、1つの種類のインクが貯留されている。インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。ここでは、加熱によって溶剤が揮発して乾燥が促進される溶剤インクや水性レジンなどがインクとして使用されている。
キャリッジ移動機構80は、キャリッジ70を走査方向Yに移動させるように構成されている。キャリッジ移動機構80は、ガイドレール81と、ベルト82と、左右のプーリ83aおよび83bと、スキャンモータ84とを備えている。ガイドレール81には、キャリッジ70が摺動自在に係合している。ガイドレール81は、プリンタ本体11に固定され、走査方向Yに延びている。ガイドレール81は、プラテン30の上方に配置されている。ガイドレール81は、キャリッジ70の走査方向Yへの移動をガイドする。ベルト82は、キャリッジ70に固定されている。ベルト82は、無端状のベルトである。ベルト82は、ガイドレール81の左側に設けられたプーリ83aおよび右側に設けられたプーリ83bに巻き掛けられている。右側のプーリ83bにはスキャンモータ84が取り付けられている。スキャンモータ84は、制御装置150と電気的に接続されている。スキャンモータ84は、制御装置150によって制御される。スキャンモータ84が駆動するとプーリ83bが回転し、ベルト82が走行する。それにより、キャリッジ70がガイドレール81に沿って走査方向Yに移動する。
プリンタ10の前面には、巻取機構90が設けられている。巻取機構90は、印刷後の記録媒体5を再度ロール状に捲回する機構である。巻取機構90は、下流側ガイド45よりも前方に設けられている。また、巻取機構90は、下流側ガイド45よりも下方に設けられている。下流側ガイド45は、印刷後の記録媒体5を巻取機構90に案内している。記録媒体5は、巻取機構90に巻き取られることによって、プラテン30上および下流側ガイド45上を移動する。図1に示すように、巻取機構90は、テンションバー91と、支持アーム92a、92bと、巻取軸93と、巻取モータ94とを備えている。
テンションバー91は、記録媒体5のうち下流側ガイド45と巻取軸93との間に位置する部分に対して張力を与えている。テンションバー91は、自重を利用して記録媒体5を前斜め下方に押すことにより、記録媒体5に対して張力を与えている。テンションバー91は、走査方向Yに延びる円筒形状または円柱形状に形成されている。テンションバー91は、支持アーム92a、92bに揺動可能に支持されている。
図1に示すように、巻取軸93は、下流側ガイド45よりも前方かつ下方に配置されている。巻取軸93は、走査方向Yに延びる円筒形状または円柱形状に形成されている。巻取軸93は、印刷後の記録媒体5を巻き取る。巻取モータ94は、巻取軸93に連結されている。巻取モータ94は、巻取軸93を回転させる。巻取モータ94は、制御装置150に電気的に接続され、制御装置150によって制御されている。巻取モータ94が駆動され、巻取軸93が回転することにより記録媒体5が巻取軸93に巻き取られ、ロール状に形成される。
支持部材20、プラテン30、上流側ガイド40、および下流側ガイド45によって形成される内部空間S1には、プラテンヒータ100と、アフターヒータ105と、2つの吸着ファン111、112とが収容されている。プラテンヒータ100は、プラテン30を加熱している。アフターヒータ105は、下流側ガイド45を加熱している。2つの吸着ファン111および112は、記録媒体5を吸着してプラテン30の載置面30aに密着させるための部材である。
プラテンヒータ100は、プラテン30の裏面30bに接して設けられている。プラテンヒータ100は、記録ヘッド75の移動経路の下方に配置されている。プラテンヒータ100は、プラテン30を加熱している。プラテンヒータ100は、制御装置150に電気的に接続されている。制御装置150は、プラテンヒータ100を、例えば、45℃付近の温度に制御している。プラテンヒータ100により、プラテン30のうち記録ヘッド75の移動経路の下方にあたる部分は、プラテンヒータ100の制御温度と概ね等しい温度に維持されている。
複数の吸着孔31は、プラテン30のうちプラテンヒータ100が接している部分を避けて形成されている。図3に示すように、複数の吸着孔31は、プラテンヒータ100よりも上流X1側に設定された第1吸着孔列31aに属するものと、プラテンヒータ100よりも下流X2側に設定された第2吸着孔列31bに属するものと、第2吸着孔列31bよりもさらに下流X2側に設定された第3吸着孔列31cに属するものとから構成されている。図3に示すように、第1吸着孔列31a、第2吸着孔列31b、および第3吸着孔列31cは、それぞれ、走査方向Yに並んだ複数の吸着孔31を含んでいる。
図2および図3に示すように、2つの吸着ファン111および112は、いずれも、プラテン30の裏面30b側の空間、すなわち内部空間S1に設けられている。2つの吸着ファン111および112は、プラテンヒータ100よりも下方に設けられている。プラテンヒータ100は、プラテン30の裏面30bに接して設けられている。よって、プラテンヒータ100は、プラテン30と2つの吸着ファン111、112との間に設けられている。
2つの吸着ファン111および112は、走査方向Yに並んで設けられている。図4に示すように、そのうち左側吸着ファン111は、走査方向Yに関して、プラテン30の中央部に設けられている。また、右側吸着ファン112は、走査方向Yに関して、プラテン30の右端部に設けられている。記録媒体5の幅によってプラテン30の左側部分には記録媒体5が載置されない場合があるため、2つの吸着ファン111および112は、右方に片寄って配置されている。
図3に示すように、左側吸着ファン111は、吸着孔31を通して内部空間S1に空気を吸引する吸引部111aと、吸引した空気を排出する排出部111bとを備えている。吸引部111aは、空気を吸い込むための開口である。吸引部111aは、プラテン30の方(ここでは上方)に向けられている。排出部111bは、吸引部111aから吸引された空気を排出するための開口である。排出部111bは、記録媒体5の搬送方向Xの上流X1側に向けられている。排出部111bは、上流側ガイド40の側に向けて吸引した空気を排出している。排出部111bは、吸引した空気を水平方向に排出している。左側吸着ファン111は、内部に図示しないモータと、ファンと、内部流路を備えている。左側吸着ファン111は、モータでファンを回転させることによって吸引部111aから空気を吸引し、また、排出部111bから吸引した空気を排出する。吸引部111aと排出部111bとは、内部流路で接続されている。右側吸着ファン112も、左側吸着ファン111と同じ構成を備えている。右側吸着ファン112は、プラテン30の方を向いた吸引部112aと、後方を向いた排出部112bとを備えている。
吸着ファン111および112は、プリンタ10の正面または背面から見たときに、上流側ガイド40のガイド面40aとオーバーハング部40bとの境界(第1屈折部40c)と重なるような高さに設けられている。また、吸着ファン111および112の下面は、上流側ガイド40のオーバーハング部40bと背面部40dとの境界(第2屈折部40e)よりもわずかに上方に位置している。また、吸着ファン111および112の走査方向Yの幅は、いずれも排気口41の幅よりも狭く、両者の幅を合わせても排気口41の幅よりも狭い。
吸着ファン111および112と排気口41との間には、吸着ファン111および112から排出された空気が流れる流路R1が形成されている。排気口41は、左側吸着ファン111の排出部111bおよび右側吸着ファン112の排出部112bが空気を排出する排出方向(X1方向)に関して、排出部111bおよび排出部112bよりも上流側ガイド40の側に設けられている。よって、流路R1は、排出部111bおよび112bから上流側ガイド40の側に向かって形成されている。流路R1は、排気口41と同様、走査方向Yに延びるとともに、走査方向Yの幅が吸着ファン111および112の排出部111bおよび112bよりも広く構成されている。ここでは、流路R1の走査方向Yの幅は、支持部材20の幅と概ね同じに構成されている。
吸着ファン111および112から排出された排気は、記録媒体5の搬送方向Xの上流X1側に向かって概ね水平に流れる。その後、排気は、吸着ファン111、112よりも下方に設けられた排気口41に向かって、支持部材20の背面20aと上流側ガイド40の背面部40dとの間の隙間を下方に流れる。流路R1は、吸着ファン111および112から後方に向かって水平に延びる水平流路R1aと、水平流路R1aの後端部から下方に向かって延びる鉛直流路R1bとから構成されている。水平流路R1aは、吸着ファン111および112の後方の空間である。鉛直流路R1bは、支持部材20の背面20aと上流側ガイド40の背面部40dとの間の隙間である。鉛直流路R1bは、排気口41に面するように形成されている。
流路R1上には、2つの遮蔽部材121および122が設けられている。遮蔽部材121および122は、流路R1を流れる風の一部が排気口41から排出されることを妨げる部材である。ここでは、遮蔽部材121および122は、樹脂で形成されている。遮蔽部材121および122の材料としては、樹脂のような熱伝導率の低い材料が好適に利用できる。遮蔽部材121および122は、水平流路R1aと鉛直流路R1bとの境界に設けられている。遮蔽部材121および122は、支持部材20の上面20bの後端部に固定されている。遮蔽部材121および122は、支持部材20の上面20bから記録媒体5の搬送方向Xの上流X1側に向かって略水平に延びている。遮蔽部材121および122は、平板状の部材である。遮蔽部材121および122は、それぞれ、上流側ガイド40の裏面40gの方を向いた遮蔽面121aおよび122aを有している。遮蔽面121aおよび122aは、それぞれ、遮蔽部材121および122の上面である。吸着ファン111および112からの排気の一部は、遮蔽面121aおよび122aに当たることによって内部空間S1に戻される。
遮蔽部材121および122は、支持部材20の上面20bと上流側ガイド40の第2屈折部40eとの間に架橋されている。遮蔽部材121および122の支持部材20と逆側の端部121bおよび122bは、第2屈折部40eに接している。遮蔽部材121および122は、支持部材20と上流側ガイド40とによって両端を支持されている。
図3に示すように、2つの遮蔽部材121と122とは、走査方向Yに並んで設けられている。そのうち左側遮蔽部材121は、左側吸着ファン111の排出部111bと記録媒体5の搬送方向Xに並んで設けられている。すなわち、左側遮蔽部材121は、搬送方向X視において、排出部111bと重なるように配置されている。具体的には、左側遮蔽部材121は、左側吸着ファン111の排出部111bの真後ろに設けられている。右側遮蔽部材122は、右側吸着ファン112の排出部112bと記録媒体5の搬送方向Xに並んで設けられている。すなわち、右側遮蔽部材122は、搬送方向X視において、排出部112bと重なるように配置されている。具体的には、右側遮蔽部材122は、右側吸着ファン112の排出部112bの真後ろに設けられている。遮蔽部材121および122は、走査方向Yに関して、それぞれ、吸着ファン111および112の真後ろを遮蔽している。前述のように、遮蔽部材121および122は、それぞれ端部121bおよび122bで上流側ガイド40の第2屈折部40eに接している。そこで、遮蔽部材121および122は、鉛直流路R1bの短手方向(ここでは、記録媒体5の搬送方向X)に関して鉛直流路R1bの全部を遮蔽し、鉛直流路R1bの長手方向(ここでは、走査方向Y)に関して鉛直流路R1bの一部を遮蔽している。遮蔽部材121および122の走査方向Yの幅は、吸着ファン111および112の幅と同じか、または広い方が好ましい。ただし、遮蔽部材121および122の幅は特に限定されるわけではない。
下流側ガイド45の下方には、アフターヒータ105が設けられている。アフターヒータ105は、下流側ガイド45の裏面45bに接して設けられている。アフターヒータ105は、下流側ガイド45を加熱している。アフターヒータ105は、制御装置150に電気的に接続されている。制御装置150は、アフターヒータ105を、例えば、50℃付近の温度に制御している。プラテン30上の記録媒体5に着弾したインクは、アフターヒータ105により完全に乾燥される。
図1に示すように、プリンタ10の右端部には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置150が収容されている。制御装置150は、フィードモータ、インクヘッド76、スキャンモータ84、巻取モータ94、プラテンヒータ100、アフターヒータ105、左側吸着ファン111、および右側吸着ファン112に電気的に接続され、それらの動作を制御している。
制御装置150の構成は特に限定されない。制御装置150は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。
以下、記録媒体5の加熱を中心に、本実施形態に係るプリンタ10による印刷プロセスについて説明する。本実施形態では、記録媒体5は、ロール5aから供給され、上流側ガイド40に案内されてプラテン30上に載置される。印刷は、記録媒体5のうちプラテン30上に載置された部分に対して行われる。印刷において、キャリッジ70は、キャリッジ移動機構80により、走査方向Yに移動される。記録ヘッド75は、キャリッジ70の移動に同期させてノズルからインクを吐出する。それにより、1ライン分の印刷が完成する。1ライン分の印刷が完成するまでに、キャリッジ70は、1回または複数回、走査方向Yに往復される。1ライン分の印刷が完成すると、記録媒体5は、搬送機構60によって搬送方向Xの下流X2側に搬送される。この位置において、再び1ライン分の印刷が行われる。これが繰り返されて画像全体が完成する。なお、1ライン分の印刷が完成するまでに、記録媒体5は、下流X2側に複数回搬送されてもよい。
プラテン30上の記録媒体5は、吸着ファン111および112によってプラテン30に吸着されている。記録媒体5は、印刷中に弛んだり、プラテン30から浮いたりしないように吸着ファン111および112によってプラテン30に密着される。また、プラテン30上の記録媒体5は、プラテンヒータ100によって加熱されたプラテン30によって加熱される。この加熱により、記録媒体5に着弾したインクの乾燥が促進される。
プラテン30上で画像が印刷された記録媒体5は、巻取機構90によって引っ張られ、下流側ガイド45上に載置される。下流側ガイド45上の記録媒体5は、アフターヒータ105によって加熱された下流側ガイド45によって加熱される。この加熱により、記録媒体5上に着弾したインクは、完全に乾燥する。その後、記録媒体5は、巻取機構90によって巻き取られる。
本実施形態では、上流側ガイド40を加熱するためのヒータ等は設けられていない。しかし、上流側ガイド40は、プラテンヒータ100の熱により加熱されている。本実施形態に係るプリンタ10に想到する前から、本願発明者らが製作するインクジェットプリンタは、上流側ガイドを加熱するヒータを備えていなかった。また、上記従前のプリンタも、プラテンに形成された吸着孔と、吸着ファンと、プラテンヒータと、アフターヒータと、記録媒体の搬送方向の上流側に設けられた排気口とを備えていた。上記従前のインクジェットプリンタでは、排気口は、プラテンの裏側の内部空間を負圧にし、記録媒体を吸着するために設けられていたものであり、その他の事項は特に考慮されていなかった。
上記従前のインクジェットプリンタについて、本願発明者は、吸着ファンの排気により下流側ガイドが冷却され、加熱効率が低下していることを見出した。吸着ファンの排気は、排気口に向かって排出されていたが、排気口の開口面積が十分でないために排気の一部は押し戻され、プラテンの裏側の内部空間を流れていた。その戻された排気により下流側ガイドが冷却されていることを、本願発明者は突き止めた。
本願発明者は、そこで、排気口の開口面積を大きくする変更を行った。これにより、インクジェットプリンタの内部空間を流れる吸着ファンの排気は減少し、下流側ガイドの冷却の問題は改善された。しかし、代わりに記録媒体に皺が発生する等の不具合が見られるようになった。本願発明者は、この不具合の原因を調査し、排気口の開口面積を大きくする変更の前に比べて、変更後の上流側ガイドの温度が低いことがその原因であることを突き止めた。
インクジェットプリンタによる印刷では、記録媒体はプラテンに載置される前に予め加熱されている方が望ましい。加熱されたプラテンに加熱されていない記録媒体がいきなり載置されると、急激な加熱によって記録媒体に皺などの不具合が発生する場合がある。
本願発明者は、排気口の変更によって上流側ガイドの温度が低下した理由について調査を行った。その結果、従前のインクジェットプリンタにおいては、排気口の開口面積が小さいためにインクジェットプリンタの内部空間を流れていた排気が上流側ガイドを暖めていたことを見出した。吸着ファンの排気はプラテンヒータによって暖められており、それが内部空間を流れることにより、上流側ガイドが暖められていた。
本願発明者は、上記の知見を利用して上流側ガイド40を加熱し、さらに下流側ガイド45の温度低下も抑えることを考えた。本実施形態に係るプリンタ10は、プリンタ10の内部空間S1において吸着ファン111、112から排出された空気が排気口41に向かって流れる流路R1上に設けられ、流路R1を流れる風の一部が排気口41から排出されることを一時的に妨げる遮蔽部材121、122を備えている。この遮蔽部材121および122によって、上流側ガイド40が暖められる。以下に、その仕組みについて説明する。
図2の矢印F1、F2、F3、およびF4は、それぞれ、左側吸着ファン111が吸い込む空気の流れ、左側吸着ファン111から排出され流路R1を流れる排気の流れ、右側遮蔽部材122に当たった排気の流れ、および排気口41から排出される排気の流れを示している。図2の矢印F1に示すように、左側吸着ファン111は、吸着孔31を通して外部の空気を吸引している。外部の空気は、吸引される前および途中で、プラテン30の下方に設けられたプラテンヒータ100によって暖められる。
図2の矢印F2に示すように、右側吸着ファン112に吸い込まれた加熱された空気は、記録媒体5の搬送方向Xの上流X1側に向かって排出される。矢印F2に示す空気の流れは、排気口41の方、ここでは下方に向かって曲がっている。そこで、矢印F2に示す空気の流れの多くは、鉛直流路R1bの入口に設けられた遮蔽部材121および122の遮蔽面121aおよび122aに当たって遮られる。遮蔽部材121、122の遮蔽面121a、122aに当たった空気は、矢印F3のように、まず遮蔽面121a、122aに沿って流れ、その後、遮蔽面121a、122aに接する上流側ガイド40の裏面40gに沿って流れる。これにより、上流側ガイド40が暖められる。
上流側ガイド40の裏面40gに沿って流れる空気は、一部はプリンタ10の内部空間S1を巡り、一部は矢印F4のように、排気口41から排出される。遮蔽部材121および122は、鉛直流路R1bの一部しか遮蔽していない。よって、吸着ファン111および112から排出された排気の一部は、遮蔽部材121および122に遮られて内部空間S1を巡った後、排気口41から排出される。これにより、内部空間S1は負圧に保たれ、吸着ファン111および112の吸着力が確保される。また、従前のプリンタのように排気口の開口面積そのものが不足しているわけではないため、必要以上に内部空間S1内を空気が流れない。そこで、内部空間S1を流れる空気が下流側ガイド45を冷却する程度も小さい。
このように、本実施形態に係るプリンタ10によれば、吸着ファン111および112から排出された空気の一部は、遮蔽部材121および122によって排気口41からの排出が妨げられる。詳しくは、プラテンヒータ100によって暖められた空気は、吸着ファン111および112によって遮蔽部材121および122の方に排気されるが、その一部は、遮蔽部材121および122に遮られ、遮蔽部材121および122に沿って流れる。よって、遮蔽部材121および122に遮られた空気を内部空間S1の上流側ガイド40側に確実に滞留させることができる。これにより、上流側ガイド40を加熱するヒータを設けなくても、プラテンヒータ100によって暖められた空気によって上流側ガイド40を温めることができ、上流側ガイド40上の記録媒体5を加熱することができる。また、吸着ファン111および112から排出された空気が排気口41に向かって流れる流路R1のうち遮蔽部材121および122が設けられていない部分では、遮蔽部材121および122によって排気口41への空気の流れが妨げられていないため、この部分を通って排気が十分にされる。このため、遮蔽部材121により排気口41を遮蔽していても、吸着ファン111および112の吸着力を確保することができる。
本実施形態では、排気口41は、上流側ガイド40の裏面40gに対向するように設けられている。また、遮蔽部材121および122は、それぞれ、上流側ガイド40の裏面40gの方を向いた遮蔽面121aおよび122aを有している。かかる構成によれば、吸着ファン111および112からの排気を上流側ガイド40の方に向かって流すことができる。よって、上流側ガイド40の加熱効率が高い。
本実施形態では、排気口41は、搬送方向Xと直交する走査方向Yに延びるとともに、走査方向Yの幅が吸着ファン111、112の排出部111b、112bの幅よりも広く構成されている。また、遮蔽部材121、122は、それぞれ、排出部111b、112bと搬送方向Xに並んで設けられている。即ち、遮蔽部材121および122は、それぞれ吸着ファン111および112の排気の進行方向正面にだけ設けられている。走査方向Yに長い流路R1のその他の部分は、遮蔽されていない。かかる構成によれば、吸着ファン111および112からの排気の多くは、遮蔽部材121および122に当たって一度内部空間S1内に戻される。よって、効率よく上流側ガイド40を加熱することができる。かつ、最終的に吸着ファン111および112からの排気が排出される排気口41の面積は確保され、吸着ファン111および112の吸着力が確保される。
本願発明者は、それぞれ吸着ファン111および112の排気の進行方向正面にだけ設けられた遮蔽部材121および122によって上記した効果が達成されることを確認している。さらに、本願発明者は、それぞれ吸着ファン111および112の排気の進行方向正面にだけ設けられた遮蔽部材121および122によって、上流側ガイド40の各部を大きな温度差なく加熱することができることを確認している。
また、本実施形態では、遮蔽部材121および122は、それぞれ、端部121bおよび122bで上流側ガイド40に接している。そこで、遮蔽部材121および122に当たった排気は、上流側ガイド40との接触部分に沿って上流側ガイド40の裏面40gに流れる。そのことによっても、上流側ガイド40の加熱効率を向上させることができる。ここでは、排気は、遮蔽部材121、122から上流側ガイド40のオーバーハング部40bに沿って流れ、さらにガイド面40aの裏面40gに沿って流れるので、上流側ガイド40をプラテンヒータ100によって暖められた空気により加熱することができる。
さらに、本実施形態では、遮蔽部材121および122は、熱伝導率の低い樹脂で形成されている。これにより、遮蔽部材121および122が放熱板の役割をすることを防ぎ、上流側ガイド40の加熱効率を向上させている。
本実施形態では、プラテン30の加熱は、プラテン30と吸着ファン111、112との間に設けられたプラテンヒータ100によって行われている。プラテン30の加熱は、このような構成によるものに限られない(例えば、プラテン30を上方その他の方向からの熱風により加熱することも可能である。)が、プラテンヒータ100がプラテン30と吸着ファン111、112との間に設けられていることにより、吸着ファン111、112によって吸引される空気が効率よく加熱される。よって、ここに開示する技術は、かかる構成のプリンタにおいて効果が高い。
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、上記の実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では、排気口41は、上流側ガイド40に設けられていた。しかし、排気口が設けられる部材は特に限定されない。排気口は、例えば、支持部材に設けられてもよく、支持部材と上流側ガイドの両方によって形成されていてもよい。
上記した実施形態では、排気の流路R1は途中で1回屈折していた。しかし、排気の流路は、屈折していなくてもよい。また、複数回屈折していてもよい。あるいは、曲線的に曲がっていてもよい。吸着ファンから排気口までの排気の流路の構成は、特に限定されない。
上記した実施形態では、遮蔽部材121および122は、吸着ファン111および112から排気口41に流れる空気の流れ方向に対して略垂直に設けられていたが、そうでなくてもよい。例えば、遮蔽部材121および122は、上記空気の流れ方向に対して傾いて設けられていてもよい。遮蔽部材121および122は、上流側ガイド40の裏面40gと向かい合っていたが、そうでなくてもよい。遮蔽部材は、排気の一部を遮ることによりプリンタの内部空間に排気の一部をいったん滞留させることができれば足り、その形状、大きさ、設置の向き、他の部材との位置関係等は特に限定されない。
上記した実施形態では、上流側ガイド40のガイド面40aは、記録媒体5の搬送方向Xの上流X1側に向かって下降傾斜する曲面に形成されていたが、上流側ガイド40の形状は限定されない。
その他、インクジェットプリンタの構成については、特に言及がない限りにおいて限定されない。例えば、ここに開示する技術は、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタなどのように、その一部にインクジェットプリンタが組み込まれた装置にも利用できる。