明 細 書
トナー用バインダー樹脂、トナー、およびトナー用バインダー樹脂の製造 方法
技術分野
[0001] 本発明は、トナー用バインダー榭脂、トナー、およびトナー用バインダー榭脂の製 造方法に関する。
背景技術
[0002] 電子写真等において用いられるトナーの定着性と耐オフセット性は互いにトレード オフの関係にある。従って、いかに両者を両立させるかがトナー用バインダー榭脂を 設計する際の課題となる。また、トナーには保存性、すなわち定着装置内でトナー粒 子が凝集すなわちブロッキングしない特性も同時に要求される。
[0003] このような要求に対して、非晶性榭脂より構成されるバインダー榭脂中に結晶性成 分を導入することで低温での定着性を改良させる技術が知られて ヽる。結晶性榭脂 はその融点を介して急激に溶融'低粘度化するため、少ない熱エネルギーで榭脂の 粘度を下げることが可能であり、定着性の改善が期待される。
[0004] 非晶性榭脂より構成されるバインダー榭脂中に結晶性榭脂を導入する公知の技術 として、
(A)ブロック共重合体、グラフト共重合体という形で、非晶性榭脂と結晶性榭脂とを分 子鎖レベルでハイブリッドする方法 (たとえば、特許文献 1参照)、
(B)相容性の良い非晶性榭脂と結晶性榭脂との組合せを、溶融ブレンド、紛体ブレ ンド等の物理的な混練方法でブレンドする方法 (たとえば、特許文献 2参照)、そして
(C)相容性の悪い非晶性榭脂と結晶性榭脂との組合せを、溶融ブレンド、紛体ブレ ンド等の物理的な混練方法でブレンドする方法 (たとえば特許文献 3、特許文献 4参 照)等が提案されている。
[0005] しかし、上記 (A)、 (B)の方法では、非晶質部 Z結晶質部の相容性が良好であり、 結晶に成長できない結晶性ポリマー鎖が非晶質部に多く残存し、十分な保存性を維
持することが難しいという問題があった。そのため、一定時間の熱処理を施す等して
、結晶の成長を促進、制御する工程を要する場合がある (特許文献 5参照)。
[0006] また、 (C)の方法では、非晶質部と結晶質部の相容性が乏しぐ結晶性榭脂の分 散径が大きくなり、トナー特性の安定性を確保することが困難となるという問題があつ た。また、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルのモノマー組成を適度に調整す ることで、両成分の相容性を制御し、結晶性ポリエステルを分散径 0. 1〜2 /ζ πιで分 散させる方法も知られている(たとえば、特許文献 6参照)。しかしながら、その場合で も、バインダー榭脂製造時、およびトナー製造時の冷却条件によって結晶のサイズ、 分布が変動してしまうため、トナー特性の安定性を確保することにおいて課題が残る 。カロえて、使用できるモノマーの種類、組成が限定されてしまう。
[0007] また、特許文献 7には、分子末端に不飽和二重結合を有する結晶性ポリエステル の存在下でビニル単量体を重合し、バインダー榭脂を製造する技術が記載されて 、 る。
特許文献 1:特開平 4— 26858号公報
特許文献 2:特開 2001— 222138号公報
特許文献 3:特開昭 62— 62369号公報
特許文献 4:特開 2003— 302791号公報
特許文献 5:特開平 1 35456号公報
特許文献 6:特開 2002 - 287426号公報
特許文献 7:特開平 3— 6572号公報
発明の開示
[0008] しかし、特許文献 7に記載の技術では、バインダー榭脂中の結晶性ポリエステルの 含有量が多くなり、耐オフセット性やトナーの保存性が悪いという課題が生じる。
[0009] 本発明は、トナーにおいて、優れた低温定着性と耐オフセット性を両立させる技術 を提供することを目的とする。
[0010] 本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明を完成した。
本発明によれば、結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Υ)とのハイブリッド榭脂であって ピーク分子量が 3万以上のハイブリッド榭脂と、ピーク分子量が 3万未満の非晶性榭
脂 (z)とを含むトナー用ノインダー榭脂が提供される。
[0011] 本発明によれば、結晶性榭脂と非晶性榭脂とのハイブリッド榭脂と非晶性榭脂との 混合物によりトナー用バインダー榭脂が構成されるので、耐オフセット性、熱雰囲気 下での流動性、保存性を良好にすることができる。
[0012] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、前記ハイブリッド榭脂は、二重結合を 有する前記結晶性榭脂 (X)存在下で前記非晶性榭脂 (Y)を合成して得られるものと することができる。
[0013] ここで、ハイブリッド榭脂は、たとえば以下の手順により得ることができる。まず、水酸 基またはカルボキシル基と反応する基 (たとえばマレイン酸基)を有するとともに不飽 和結合を有する化合物と結晶性榭脂 (たとえば結晶性ポリエステル)とを反応させて 結晶性榭脂分子中に不飽和二重結合を導入して二重結合を有する結晶性榭脂 (X) を得る。次いで、二重結合を有する結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Y) (たとえばビニ ルモノマー)とを重合させて共重合体であるノ、イブリツド榭脂を得る。ビュルモノマーと しては複数種のモノマーを用いることができる。
[0014] ここで、ピーク分子量は、後述する測定方法により算出したものとすることができる。
また、ここでいうピーク分子量は、複数のピーク分子量が観測される場合、最も存在 量の大き 、ピーク分子量とすることができる。
[0015] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、前記結晶性榭脂 (X)は、結晶性ポリ エステル系榭脂であってよぐ前記非晶性榭脂 (Y)および非晶性榭脂 (Z)は、スチレ ンアクリル系榭脂であってよ 、。
[0016] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、前記結晶性榭脂 (X)は、前記非晶性 樹脂 (Z)と非相容であり、前記非晶性榭脂 (Y)は、前記非晶性榭脂 (Z)と相容であつ てよい。
[0017] ここで、相容とは、 2種類の榭脂各所定量、溶剤に溶解混合し、脱溶剤した時に分 離が観察されない、または分離した島相の大きさが 50 m以下となる状態とすること ができる。たとえば、上記 2種類の榭脂各 50gをキシレン 170gに溶解混合し、脱溶剤 した時に分離が観察されない、または分離した島相の大きさが 50 m以下となる状 態とすることができる。非相容とは、同様の操作を行った際に分離し、分離した島相
の大きさが 50 μ m以上である状態とすることができる。
[0018] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、前記ハイブリッド榭脂は THF不溶で あってクロ口ホルム可溶であってよぐ前記非晶性榭脂(Z)は THF可溶であってよい
[0019] 本発明のトナー用バインダー榭脂は、後述するように、ノ、イブリツド榭脂の粒子が連 結したネットワーク構造を有することができる。ここで、ネットワーク構造は、ハイブリツ ド榭脂の粒子が化学的に結合して形成されるのではなぐ相分離現象により高分子 鎖間が相互作用して形成される。そのため、ハイブリッド榭脂は、クロ口ホルムに可溶 とすることができる。
[0020] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、前記ハイブリッド榭脂をマトリックス、前 記非晶性榭脂 (Z)をドメインとする海島構造を有することができる。
[0021] このような構成とすることにより、結晶性榭脂 (X)の量を少なくしても、トナー用バイ ンダー榭脂を含むトナーを溶融した際に、マトリックスを構成する結晶性榭脂 (X)が 本来有する溶融特性が支配的に寄与するようにすることができる。そのため、結晶性 榭脂 (X)の量を少なくしても、低温定着性を良好に保つことができる。また、結晶性 榭脂 (X)の量を少なくできるので、保存性ゃ耐オフセット性を良好にすることができる
[0022] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、前記マトリックスの部分面積比が 60% 以下であって、前記ドメインの平均粒径が 2 μ m以下であってよい。
[0023] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、海島構造のマトリックス部分の面積を 少なくすることができる。このような構成としても、低温定着性を良好に保つことができ るとともに、保存性ゃ耐オフセット性を良好にすることができる。また、ドメインの平均 粒径がこの程度となるようにすることにより、低温定着性を高めることができ、安定なト ナー特性を得ることができる。
[0024] 本発明のトナー用バインダー榭脂は、前記ハイブリッド榭脂の前記結晶性榭脂 (X) 部分が内側に向けて配合するとともに、前記非晶性榭脂 (Y)部分が外側に向けて配 合したミセルを含むことができる。
[0025] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、ハイブリッド榭脂がこのようなミセルを
形成することにより、後述するネットワーク構造を形成しやすくすることができ、低温定 着性を高めることができる。
[0026] 本発明のトナー用バインダー榭脂は、前記ミセルが連結したネットワーク構造を有 することができる。
[0027] また、上記のようにハイブリッド榭脂と非晶性榭脂 (Z)との分子量を制御することによ り、トナー用バインダー榭脂がネットワーク構造を形成するようにすることができる。
[0028] 本発明のトナー用バインダー榭脂は、前記ハイブリッド榭脂の粒子が連結したネット ワーク構造を有することができる。
[0029] ここで、ネットワーク構造は、ハイブリッド榭脂の粒子の連続相または部分的な連続 相とすることができる。ハイブリッド榭脂の粒子がネットワーク構造を有することにより、 熱応答性を高めることができ、少な 、熱エネルギーで榭脂全体の粘度を下げることが できる。
[0030] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、前記非晶性榭脂 (Z)が前記ネットヮー ク構造中に分散されてよい。
[0031] これにより、ノ、イブリツド榭脂の粒子により形成されたネットワーク構造がほどけた際 に、非晶性榭脂 (Z)も容易に分散する。そのため、結晶性榭脂 (X)の含有量を少なく しても、トナーの低温定着性を向上させることができる。
[0032] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、 100°Cでの貯蔵弾性率力 2. 0 X 10
5Pa以下であってよい。
[0033] 本発明のトナー用バインダー榭脂において、酸価が lmgKOHZg以上 20mgKO
HZg以下であってよい。
[0034] 本発明によれば、上記いずれかに記載のトナー用バインダー榭脂と、着色剤と、を 含むトナーが提供される。
[0035] これにより、トナーにおいて、優れた低温定着性と耐ォフセット性を両立させることが できる。
[0036] 本発明によれば、二重結合を有する結晶性榭脂 (X)存在下で、非晶性榭脂 (Y)を 合成して、前記結晶性榭脂 (X)と前記非晶性榭脂 (Y)とのハイブリッド榭脂であって ピーク分子量が 3万以上のハイブリッド榭脂を形成する工程と、前記ハイブリッド榭脂
とピーク分子量が 3万未満の非晶性榭脂 (Z)とを混合してトナー用ノインダー榭脂を 形成する工程と、を含むトナー用ノ インダー榭脂の製造方法が提供される。
[0037] 本発明のトナー用バインダー榭脂の製造方法において、前記トナー用バインダー 榭脂を形成する工程は、前記非晶性榭脂 (Z)を溶解する溶剤中で前記ハイブリッド 榭脂および前記非晶性榭脂 (Z)を混合した榭脂混合物を生成する工程と、前記榭 脂混合物から前記溶剤を脱溶剤する工程と、を含むことができる。
[0038] 本発明によれば、トナーにお 、て、優れた低温定着性と耐ォフセット性を両立させ ることがでさる。
図面の簡単な説明
[0039] 上述した目的、およびその他の目的、特徴及び利点は、以下に述べる好適な実施 の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
[0040] [図 1]実施例 4で使用したトナー用バインダー榭脂の走査型電子顕微鏡写真の一例 を示す図である。
[図 2]実施例 4で使用したトナー用バインダー榭脂から抽出された、 THF不溶部の電 子顕微鏡写真の一例を示す図である。
[図 3]ハイブリッド榭脂 (H)の粒子が連結したネットワーク構造を有する構成を模式的 に示す図である。
[図 4]ハイブリッド榭脂 (H)を詳細に示す模式図である。
[図 5]図 3の一つの網目部分を詳細に示す模式図である。
発明を実施するための最良の形態
[0041] 本発明のトナー用バインダー榭脂は、結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Y)とのハイブ リツド榭脂であってピーク分子量が 3万以上のノ、イブリツド榭脂 (H)と、ピーク分子量 力^万未満の非晶性榭脂 (Z)と含む。なお、トナー用バインダー榭脂は、結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Y)とのハイブリッド榭脂 (H)と、ハイブリッドされて ヽな ヽ結晶性 榭脂 (X)との混合物である榭脂混合物と、非晶性榭脂 (Z)とを含むことができる。この 榭脂混合物は、ハイブリッドされて ヽな ヽ非晶性榭脂 (Y)を含むこともできる。
[0042] (海島構造)
本発明において、トナー用バインダー榭脂は、ハイブリッド榭脂 (H)をマトリックス、
非晶性榭脂 (z)をドメインとする海島構造を有することができる。
[0043] また、本発明のトナー用バインダー榭脂において、マトリックスの部分面積比は、 60 %以下とすることができる。マトリックスの含有量がこの程度となるようにすることにより 、トナー用バインダー榭脂の保存性を良好にすることができる。
[0044] また、本発明のトナー用バインダー榭脂にぉ 、て、ドメインの平均粒径は、 2 m以 下とすることができる。ドメインの平均粒径カこの程度となるようにすることにより、低温 定着性を高めることができ、安定なトナー特性を得ることができる。
[0045] 一般的に、トナーにおいて、結晶性榭脂 (X)の含有量が多いほど、低温定着性が 向上する。本発明のトナー用バインダー榭脂によれば、結晶性榭脂 (X)を含むハイ ブリツド榭脂 (H)により構成されるマトリックス中に、非晶性榭脂 (Z)により構成される ドメインが微少な粒径で分散される。そのため、トナー定着時のトナーへの加熱により ノ、イブリツド榭脂 (H)が溶融すると、ハイブリッド榭脂 (H)により構成されたマトリックス がほどけ、その間に微少な粒径で分散されて ヽる非晶性榭脂 (Z)も容易に分散する 。これにより、結晶性榭脂 (X)の含有量を少なくしても、トナーの低温定着性を向上さ せることができる。
[0046] (ネットワーク構造)
本発明において、トナー用バインダー榭脂は、ハイブリッド榭脂 (H)の粒子が連結 したネットワーク構造 (網目構造)を有することができる。本発明のトナー用バインダー 榭脂の構造は、透過型電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡で観察することができる
[0047] 図 3は、ハイブリッド榭脂 (H)の粒子が連結したネットワーク構造を有する構成を模 式的に示す図である。
ここで、トナー用バインダー榭脂 10において、ハイブリッド榭脂 (H)により構成され た粒子 100が連結してネットワーク構造を形成して!/、る。ここでは図示して!/、な!/、が、 非晶性榭脂 (Z)は、粒子 100のネットワーク構造の網目 110中に配置される。つまり 、トナー用バインダー榭脂 10は、ハイブリッド榭脂 (H)のネットワーク構造により構成 されるマトリックス中に非晶性榭脂 (Z)により構成されるドメインが分散された海島構 造を有する。
[0048] 本発明者らは、ハイブリッド榭脂 (H)が、結晶性榭脂 (X)部分が内側に向けて配合 するとともに、非晶性榭脂 (Y)部分が外側に向けて配合したミセルを形成し、これ〖こ よりハイブリッド榭脂 (H)の粒子 100が構成されるように、本発明のトナー用バインダ ー榭脂の材料を調整する検討を行った。図 4 (a)は、ハイブリッド榭脂 (H) 105を詳 細に示す模式図である。ここでは、結晶性榭脂 (X)が結晶性ポリエステル系榭脂(C -Pes)であり、非晶性榭脂 (Y)がスチレンアクリル系榭脂(St— Mac)である場合の ノ、イブリツド榭脂 (H) 105を示す。ハイブリッド榭脂 105形成前において、結晶性榭 脂 (X)は、たとえば無水マレイン酸二重結合を有する構成とすることができる。ハイブ リツド榭脂 105は、このような二重結合由来の単結合を有する。ここで、非晶性榭脂( Y)は、結晶性榭脂 (X)に比べてピーク分子量が大き 、ことが好ま 、。
[0049] たとえば、結晶性榭脂 (X)は、ピーク分子量が 3000以上 20000以下とすることが できる。また、結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Y)とのハイブリッド榭脂は、ピーク分子 量が 3万以上 100万未満とすることができる。
[0050] このような構成のハイブリッド榭脂 (H) 105を含む榭脂混合物と非晶性榭脂 (Z)とを 混合すると、図 4 (b)に示すように、ハイブリッド榭脂 (H)が、結晶性榭脂 (X) 102部 分が内側に向けて配合して結晶性榭脂 (X) 102が榭脂混合物中の未反応の結晶性 榭脂 (未反応物 106)を取り込むとともに、非晶性榭脂 (Y) 104部分が外側に向けて 配合したミセルを形成すると考えられる。これにより、粒子 100が形成される。なお、 図 3に示した粒子 100も、このような構成を有する。
[0051] 図 5 (a)は、図 3の一つの網目 110部分を詳細に示す模式図である。非晶性榭脂 ( ∑) 112は、網目 110中に配置されている。ハイブリッド榭脂(H) 105が図 4 (b)に示し たようなミセルを形成することにより、結晶性榭脂 (X) 102をトナー粒径に対して十分 に小さなサイズで非晶性榭脂 (Y) 104および非晶性榭脂 (Z) 112中に均一に分散さ せることができる。ここで、粒子 100における結晶性榭脂 (X) 102部分の粒径は、たと えば 0. 01 μ m以上とすることができる。また、粒子 100における結晶性榭脂 (X) 102 部分の粒径は、 1 μ m以下、好ましくは 0. 1 μ m以下とすることができる。図 5 (b)は、 非晶性榭脂 (Z) 112が除去された構成を示す。後述するように、トナー用バインダー 榭脂 10を THFに浸漬させると、非晶性榭脂 (Z) 112は THFに溶解し、網目 110が
空孔となる。
[0052] 本発明にお ヽて、溶剤中でハイブリッド榭脂 (H)を含む榭脂混合物と非晶性榭脂( Z)とを混合すると、溶剤中で図 4 (b)に示したようなミセルが形成されると考えられる。 この後、脱溶剤を行うと、溶剤の除去に伴!ヽ、結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Y)との ハイブリッド榭脂が非晶性榭脂 (Z)に対して相分離を起こす。ここで、非晶性榭脂 (Y )は、非晶性榭脂 (Z)に対して分子量が大きく両成分間に大きな粘度ギャップがある 。そのため、相分離が生じ、分子量の大きい非晶性榭脂 (Y)の影響で、結晶性樹脂 (X)の相分離が適度に抑制され、溶剤に溶解しやすく分子量の小さい非晶性榭脂( Z)は、選択的に核として生成される。その結果、分子量の大きいハイブリッド榭脂 (H )が連結したネットワーク構造が形成される。
[0053] 本発明のトナー用バインダー榭脂によれば、結晶性榭脂 (X)を含むハイブリッド榭 脂 (H)により構成されるネットワーク構造中に、非晶性榭脂 (Z)が分散される。また、 ネットワーク構造は、ハイブリッド榭脂 (H)のミセルにより構成される粒子が連結して 形成される。そのため、トナー定着時のトナーへの加熱によりハイブリッド榭脂 (H)が 溶融すると、ハイブリッド榭脂 (H)により構成されたネットワーク構造が容易にほどけ、 その間に分散されている非晶性榭脂 (Z)も容易に分散すると考えられる。これにより、 結晶性榭脂 (X)の含有量を少なくしても、トナーの低温定着性を向上させることがで きる。
[0054] 以下、本発明で用いる好ましい材料を説明する。
(結晶性樹脂 (X) )
本発明において、結晶性榭脂 (X)は、たとえば、ポリエステル系榭脂、ポリオレフィ ン系榭脂、およびそれらを複合化させたハイブリッド榭脂 (H)とすることができる。また 、結晶性榭脂 (X)は、 THF不溶分とすることができる。
[0055] 結晶性榭脂 (X)は、たとえば、結晶性ポリエステル系榭脂とすることができる。これ により、融点を容易に制御することができる。ここで、結晶性ポリエステル系榭脂は、 融解ピーク温度が 50°C以上、好ましくは 80°C以上となるようにすることができる。融 解ピーク温度が 50°C以上となるようにすることにより、保存性を良好にすることができ る。また、結晶性ポリエステル系榭脂は、融解ピーク温度が 170°C以下、好ましくは 1
10°C以下となるようにすることができる。融解ピーク温度が 170°C以下となるようにす ることにより、低温定着性を良好にすることができる。
[0056] また、結晶性ポリエステル系榭脂は、ピーク分子量が 1000以上となるようにすること ができる。ピーク分子量が 1000以上となるようにすることにより、保存性を良好にする ことができる。さらに、結晶性ポリエステル系榭脂は、ピーク分子量が 10万以下となる ようにすることができる。ピーク分子量が 10万以下となるようにすることにより、結晶化 速度の低下を防ぎ、生産性を良好にすることができる。
[0057] 該結晶性ポリエステル系榭脂は、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを重縮 合させて得られた榭脂とすることができる。ここで、脂肪族ジオールの炭素数は 2〜6 であることが好ましぐさらに好ましくは 4〜6である。脂肪族ジカルボン酸の炭素数は 2〜22であることが好ましぐさらに好ましくは 6〜20である。
[0058] 炭素数が 2〜6の脂肪族ジオールとしては、 1、 4 ブタンジオール、エチレングリコ ール、 1、 2 プロピレングリコール、 1、 3 プロピレングリコール、 1、 6 へキサンジ オール、ネオペンチルグリコール、 1、 4ーブテンジオール、 1、 5 ペンタンジオール 等が挙げられる。
[0059] 炭素数が 2〜22の脂肪族ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン 酸、ィタコン酸、ダルタコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、シユウ酸、マロン酸、 コハク酸、アジピン酸、デカンジオール酸、ゥンデカンジオール酸、ドデカンジカルボ ン酸、へキサデカンジオン酸、ォクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の飽和 脂肪族ジカルボン酸およびこれらの酸の無水物、アルキル (炭素数 1〜3)エステル 等が挙げられる。
[0060] 結晶性ポリエステル系榭脂は、たとえばアルコール成分とカルボン酸成分を、不活 性ガス雰囲気中にて、好ましくは 120〜230°Cの温度で反応させること等により得る ことができる。この反応において、必要に応じて公知のエステル化触媒や重合禁止 剤を用いても良い。また、重合反応の後半に反応系を減圧することにより、反応を促 進させてもよい。
[0061] (非晶性榭脂)
本発明にお ヽて、非晶性榭脂 (Y)および非晶性榭脂 (Z)は、たとえば、スチレンァ
クリル系榭脂、ポリエステル系榭脂、ポリエステルポリアミド系榭脂、およびそれらを複 合化させたハイブリッド榭脂とすることができる。また、非晶性榭脂 (Y)および非晶性 榭脂 (Z)は、 THF可溶分とすることができる。
[0062] また、非晶性榭脂 (Y)と非晶性榭脂 (Z)とは、同種の榭脂とすることが好ま 、。
[0063] 非晶性榭脂 (Y)および非晶性榭脂 (Z)は、たとえば、スチレンアクリル系榭脂とする ことができる。スチレンアクリル系榭脂は、吸水性が極めて低ぐ環境安定性に優れて
V、るため、本発明の非晶性榭脂 (Y)および非晶性榭脂 (Z)として好ましく使用できる
[0064] 本発明にお!/、て、スチレンアクリル系榭脂は、スチレン系モノマーとアクリル系モノ マーとの共重合体とすることができる。スチレンアクリル系榭脂に用いられるスチレン 系モノマー、アクリル系モノマーはとくに限定されないが、たとえば以下のものとするこ とがでさる。
[0065] スチレン系モノマーは、たとえば、スチレン、 α—メチノレスチレン、 ρ—メトキシスチレ ン、 ρ—ヒドロキシスチレン、 ρ—ァセトキシスチレン等とすることができる。
[0066] アクリル系モノマーは、たとえば、アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル、アタリ ル酸ェチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸 2—ェチルへキシル、アクリル酸ラウリル、 アクリル酸ステアリル等のアルキル基の炭素数が 1〜18のアルキルアタリレート;メタク リル酸メチル、メタクリル酸ェチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸 2—ェチルへキシ ル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のアルキル基の炭素数が 1〜 18の アルキルメタタリレート;ヒドロキシェチルアタリレート等のヒドロキシル基含有アタリレー ト;ヒドロキシェチルメタタリレート等のヒドロキシル基含有メタタリレート;ジメチルァミノ ェチルアタリレート、ジェチルアミノエチルアタリレート等のアミノ基含有アタリレート; ジメチルアミノエチルメタタリレート、ジェチルアミノエチルメタタリレート等のアミノ基含 有メタタリレート;アクリル酸グリシジル、アクリル酸 ーメチルダリシジル等のダリシジ ル基含有アタリレート;メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸 j8—メチルダリシジル等の グリシジル基含有メタタリレート等とすることができる。
[0067] その他、上記モノマーと共重合可能なモノマーとしてアクリロニトリル、メタタリロニトリ ル等の-トリル系モノマー、酢酸ビュル等のビュルエステル類;ビュルェチルエーテ
ル等のビュルエーテル類;マレイン酸、ィタコン酸、マレイン酸のモノエステル等の不 飽和カルボン酸もしくはその無水物等を用いてもよ!、。
[0068] これらのうちスチレン系モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、アルキル基の炭素数が 1 〜18のアルキルアタリレート、アルキル基の炭素数が 1〜18のアルキルメタタリレート 、不飽和カルボン酸を用いることが好ましぐスチレン、アクリル酸、アクリル酸メチル、 アクリル酸ェチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸 2—ェチルへキシル、アクリル酸ラ ゥリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ェチル、メタクリル酸ブチル、メタ クリル酸 2—ェチルへキシル、メタクリル酸ラウリルを用いることがさらに好ましい。
[0069] 非晶性榭脂 (Y)および非晶性榭脂 (Z)として好ま 、個々の性質にっ 、ては、そ れぞれ後述する。
(非晶性榭脂 (Y) )
非晶性榭脂 (Y)としては、上述したように、スチレンアクリル系榭脂を用いることがで きる。これにより、容易に物性制御を行うことができる。さらに、非晶性榭脂 (Y)として は、ブチルアタリレート(BA)を含むものを用いることができる。これにより、ハイブリツ ド榭脂 (H)のガラス転移温度 (Tg)を低くすることができ、低温定着性を高めることが できる。
[0070] (ハイブリッド榭脂 (H)の製造)
結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Y)とのハイブリッド榭脂 (以下、単に「ハイブリッド榭 脂 (H)」ともいう)は、たとえば結晶性榭脂 (X)に二重結合を導入し、当該二重結合を 導入した結晶性榭脂 (X)の存在下で、非晶性榭脂 (Y)を合成することで調製するこ とがでさる。
[0071] 結晶性榭脂 (X)への二重結合の導入量は、たとえば、一本の結晶性ポリマー鎖当 たり平均 0. 05個以上、より好ましくは 0. 2個以上とすることができる。二重結合の導 入量を 0. 05個以上とすることにより、十分量のハイブリッド榭脂 (H)が得られ、結晶 性榭脂 (X)を良好に分散することができ安定なトナー特性が得られる。また、結晶性 榭脂 (X)への二重結合の導入量は、たとえば、一本の結晶性ポリマー鎖当たり平均 1. 5個未満、より好ましくは 1個未満とすることができる。二重結合の導入量を 1. 5個 未満とすることにより、ハイブリッドされていない未反応の結晶性榭脂 (X)の含有量を
ある程度保つことができ、結晶化を良好にすることができ、保存性を良好にすることが できる。
[0072] 結晶性榭脂 (X)は、末端に、水酸基やカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソ シァネート基等の官能基を有する構成とすることができる。結晶性榭脂 (X)への二重 結合の導入は、たとえば結晶性榭脂 (X)の末端官能基に、該官能基との反応性を有 する官能基を有するビュルモノマーを反応させることにより行うことができる。このよう な該官能基との反応性を有する官能基を有したビュルモノマーとしては、(メタ)アタリ ル酸、無水マレイン酸、無水ィタコン酸、ヒドロキシルェチル (メタ)アタリレート、グリシ ジル (メタ)アタリレート等が挙げられる。これらのうち、たとえば、末端水酸基を有する 結晶性榭脂 (X)に無水マレイン酸を付加させることにより、結晶性榭脂 (X)への二重 結合の導入を行うことができる。これにより、容易に物性制御を行うことができる。この 場合、結晶性榭脂(X) 100グラム中のビュルモノマーの含量が lmmol以上 200mm ol以下とすることができる。
[0073] 末端水酸基を有する結晶性榭脂 (X)に無水マレイン酸を付加させる処理は、たとえ ば不活性ガス雰囲気中にて、原材料を、好ましくは 120〜180°Cの温度で反応させ ることにより行うことができる。ここで、無水マレイン酸の仕込み量は、結晶性榭脂 (X) の水酸基当量に対して 0. 05%以上、好ましくは 0. 2%以上とすることができる。無 水マレイン酸の仕込み量を結晶性榭脂 (X)の水酸基当量に対して 0. 05%以上とす ることにより、十分量のハイブリッド榭脂 (H)を得ることができる。これにより、結晶性榭 脂 (X)が分散しやすくなり安定なトナー特性が得られる。また、無水マレイン酸の仕 込み量は、結晶性榭脂 (X)の水酸基当量に対して 75%未満、好ましくは 50%未満 とすることができる。無水マレイン酸の仕込み量を結晶性榭脂 (X)の水酸基当量に対 して 75%未満とすることにより、ハイブリッドされていない未反応の結晶性榭脂 (X)の 含有量をある程度保つことができ、結晶化を良好にすることができる。また、保存性を 良好にすることができる。
[0074] また、本発明者らは、以下のことを見出した。
マレインィ匕により結晶性榭脂 (X)に二重結合を導入する場合、マレインィ匕時間を長 くするほど、マレインィ匕収率がよぐ図 4 (b)に示したようなミセルの形成収率が高くな
る。また、非晶性榭脂 (Z)により構成されるドメイン(図 3の網目 110に対応)の平均粒 径は、ハイブリッド榭脂 (H)のミセルの形成状態の影響を受ける。つまり、ミセルの形 成収率が悪いと、ネットワーク構造が形成されにくくなり、ドメインの平均粒径が大きく なってしまう。ミセル形成収率は、ポリエステル榭脂のマレイン化時間に影響されると 考えられる。たとえば、ハイブリッド榭脂 (H)として、結晶性ポリエステル系榭脂とスチ レンアクリル系榭脂とのハイブリッド榭脂を用いた場合、マレインィ匕時間を 1時間とし た場合、ドメインの平均粒径は、 3〜4 /ζ πιとなる力 マレインィ匕時間を 3時間とした場 合、ドメインの平均粒径は、 0. 1〜2 /ζ πιとすることができる。この原因は明らかではな いが、マレインィ匕の時間をある程度長くすると、結晶性榭脂 (X)が二量化され、これ によりミセルが形成されやすくなると考えられる。
[0075] また、ミセルの形成収率は、結晶性榭脂 (X)に対するマレイン酸の仕込み量を制御 することによつても調整することができる。ここで、マレイン酸:一本の結晶性ポリマー 鎖 = 1 : 2モル比とすることができる。また、トナー用バインダー榭脂の酸価が lmgKO HZg以上 20mgKOHZg以下となるようにすることができる。これにより、ミセルの形 成収率を高めることができ、ネットワーク構造を形成しやすくすることができる。これに より、ドメインの平均粒径も小さくすることができ、低温定着性の効果を高めることもで きる。
[0076] 二重結合を導入した結晶性榭脂 (X)の存在下で、非晶性榭脂 (Y)を合成する処理 は、たとえば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合と溶液重合の 組合せ等、任意の方法を選択して行うことができる。これらの重合法のうち、重合制御 のしやすさという観点から、溶液重合が好ましい。
[0077] 二重結合を導入した結晶性榭脂 (X)の存在下で、非晶性榭脂 (Y)を合成する際の 結晶性樹脂 (X) Z非晶性榭脂 (Y)の構成質量比は、結晶性樹脂 (X)を基準として、 たとえば、 20Z80以上 80Z20未満、より好ましくは 30Z70以上 70Z30未満とする ことができる。結晶性樹脂 (X)Z非晶性榭脂 (Y)の構成質量比を、結晶性樹脂 (X) を基準として、 20/80以上とすることにより、定着性を良好に改善することができる。 また、結晶性樹脂 (X) Z非晶性榭脂 (Y)の構成質量比を、結晶性樹脂 (X)を基準と して、 80Z20未満とすることにより、結晶性榭脂 (X)の分散径を抑えて安定なトナー
特性を発現することができる。
[0078] 結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Y)とのハイブリッド榭脂 (H)のピーク分子量は、たと えば、 3万以上、好ましくは 7万以上とすることができる。該ハイブリッド榭脂 (H)のピ ーク分子量を 3万以上とすることにより、保存性を良好にすることができる。また、結晶 性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Y)とのノ、イブリツド榭脂 (H)のピーク分子量は、たとえば、 100万未満、好ましくは 80万未満、さらに好ましくは 50万未満とすることができる。該 ノ、イブリツド榭脂 (H)のピーク分子量を 100万未満とすることにより、定着性改善効果 を良好にすることができる。
[0079] (非晶性榭脂 (Z) )
非晶性榭脂 (Z)は、ピーク分子量が 1000以上、好ましくは 3000以上となるように することができる。非晶性榭脂 (Z)のピーク分子量が 1000以上となるようにすることに より、十分な榭脂強度を得ることができる。また、ピーク分子量が好ましくは 3万未満と なるようにすることができる。ピーク分子量が 3万未満となるようにすることにより、十分 な定着性改善効果を得ることができる。
[0080] 非晶性榭脂 (Z)として、上述したように、スチレンアクリル系榭脂を用いることができ る。この場合、スチレンアクリル系榭脂は、ピーク分子量が 1000以上、好ましくは 300 0以上となるようにすることができる。ピーク分子量が 1000以上となるようにすることに より、十分な榭脂強度を得ることができる。さらに、スチレンアクリル系榭脂は、ピーク 分子量が 3万未満となるようにすることができる。ピーク分子量が 3万未満となるように することにより、十分な低温定着性を発現することができる。
[0081] また、スチレンアクリル系榭脂は、ガラス転移温度が 10°C以上となるようにすること ができる。ガラス転移温度が 10°C以上となるようにすることにより、保存性を良好にす ることができる。また、スチレンアクリル系榭脂は、ガラス転移温度が 140°C以下となる ようにすることができる。ガラス転移温度が 140°C以下となるようにすることにより、十 分な低温定着性を発現することができる。
[0082] スチレンアクリル系榭脂の重合方法としては、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳 化重合、塊状重合と溶液重合の組合せ等、任意の方法を選択できる。これらの重合 法のうち、溶液重合を用いることが好ましい。溶液重合を用いることにより、多くの官
能基を導入した榭脂ゃ比較的分子量の小さい榭脂を得やすくなる。
[0083] (トナー用バインダー榭脂)
トナー用バインダー榭脂は、ハイブリッド榭脂 (H)を含む榭脂混合物と非晶性榭脂 (Z)とを混合することにより得られる。ノ、イブリツド榭脂 (H)を含む榭脂混合物と非晶 性榭脂 (Z)とを混合する処理は、溶剤を用いて混合する方法等により行うことができ る。溶剤を用いて混合する方法を用いる場合、溶剤としては、非晶性榭脂 (Z)を溶解 させるものを用いることができる。非晶性榭脂 (Z)を溶解させる溶剤としては、キシレ ン、酢酸ェチル、トルエン、 THF等を用いることができる。溶剤を用いて混合する方 法を用いる場合、本発明のトナー用バインダー榭脂は、該榭脂溶液を脱溶剤するこ とで製造される。
[0084] ハイブリッド榭脂 (H)を含む榭脂混合物と非晶性榭脂 (Z)とを混合する際の榭脂混 合物 Z非晶性榭脂 (Z)の構成質量比は、榭脂混合物を基準として、たとえば、 10Z 90より多く 70Z30以下、好ましくは 30Z70より多く 60Z40以下とすることができる。 樹脂混合物 Z非晶性榭脂 (Z)の構成質量比を、樹脂混合物を基準として、 70/30 以下とすることにより、安定なトナー特性を発現することができる。また、榭脂混合物 Z非晶性榭脂 (Z)の構成質量比を、榭脂混合物を基準として、 10Z90より多くする ことにより、十分な耐オフセット性を発現することができる。
[0085] 以上の製造方法で得られたトナー用ノ インダー榭脂は、結晶性榭脂 (X)の融点以 上の温度で好ましくは透明な溶液を与え、さらに好ましくは青光りを呈したほぼ透明 な溶液を与える。
[0086] 次に、本発明のネットワーク構造について詳細に説明する。以下、図 3に示したよう な粒子 100の網目構造を「結晶性榭脂 (X)を一成分とするネットワーク構造」 t 、う。 本発明において、結晶性榭脂 (X)を一成分とするネットワーク構造とは、結晶性榭脂 (X)と未反応の結晶性榭脂とを骨格成分に有するネットワーク構造を表す。
[0087] この構造をとることで、融点を介して急激に低粘度化する結晶性榭脂の特性を活用 することができる。すなわち、本発明の結晶性榭脂 (X)を一成分とするネットワーク構 造は公知の 3次元網目構造であるネットワーク構造よりも熱応答性が高ぐ少ない熱 エネルギーで榭脂全体の粘度を下げることが可能である。さらに、溶融状態における
榭脂粘度の低下を抑制することができる。そのため、十分な耐オフセット性を維持し たまま、従来のトナー用ノインダー榭脂よりも優れた定着性を発現することができる。 上述したように、本発明のトナー用バインダー榭脂において、ハイブリッド榭脂 (H)の ミセルが形成されるため、ハイブリッド榭脂 (H)をトナーよりも十分に小さな大きさで、 トナー粒子中に均一に形成させることができる。これにより、トナー粒子間の品質差が 少ない、安定なトナー特性を発現することができる。
[0088] また、当該結晶性榭脂 (X)を一成分とするネットワーク構造は、公知の結晶性榭脂 導入技術に対して以下の特徴を有する。
(a)結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂とは溶融状態で非相容の関係にあり、両成分は混 ざり合わない、
(b)保存性を悪化させる懸念のある結晶性榭脂 (X)が、保存性改善効果のある高分 子量、もしくは高ガラス転移温度 (Tg)の榭脂中に 0. 1 m以下のサイズで分布して いる、
(c)結晶性榭脂 (X)がランダムに分散して 、るのではなぐ連続相または部分的な連 続相を構成する成分の 1つとして存在している。
[0089] (a)の特徴によって、結晶に成長できない結晶性榭脂が非晶質部へ残存する可能 性が低下するため、十分な保存性を維持することが可能となる。さらに、(b)の特徴に よって結晶性榭脂と非晶性榭脂の界面が保存性改善効果のある高分子量、もしくは 高 Tgの榭脂によって保護されるため十分な保存性を維持することが可能となる。
[0090] また、 (b)の特徴によって、結晶性榭脂は 0. 1 μ m以下のサイズで分散するためト ナー特性の安定性を確保することが可能となる。また、一般的に複数成分より構成さ れるポリマーブレンドにおいては、そのブレンド物が固体から高粘度溶融物、そして 低粘度溶融物へと溶融する特性 (溶融特性)は、とくに高粘度の溶融状態において、 連続相を構成する成分が本来有する溶融特性が支配的に寄与する。
[0091] そのため、(c)の特長によって、少ない結晶性榭脂導入量で榭脂全体の溶融特性 を改良することができ、定着性を改善することができる。結果的には、結晶性榭脂の 導入量が少量となるため、十分な保存性を維持することおよびトナー特性の安定性 を確保することを解決できる。
[0092] このネットワーク構造は、たとえば走査型プローブ顕微鏡 (SPM)観察を行うことで、 THFによる抽出を行うことなぐ直接観察することができる。 SPMは、粘弾性等の物 理情報をナノスケールの分解能で検出することができる測定装置であり、ネットワーク 成分とそれ以外の成分とをコントラストをつけて画像ィ匕することができる。
[0093] また、本発明の製造方法で得られたトナー用バインダー榭脂は、好ましくは以下の 要件を満足する。
(1) DSC測定において測定される結晶融解熱量が 5jZg以上であり、かつ融解ピー ク温度が 60°C以上 120°C以下である、また、 DSC測定において測定される結晶融 解熱量は、 40jZg以下とすることができる。この要件は、トナー用バインダー榭脂中 に結晶性榭脂が含有されて 、ることを示す。
(2— 1) 180°Cでの貯蔵弾性率 (G,)が 1. 0 X 102Pa以上である。この要件は、トナ 一用バインダー榭脂中に、溶融した榭脂の粘度が低下することを抑制する成分が存 在することを示す。これにより、耐高温オフセット性を有することが示される。ここで、 1 80°Cでの貯蔵弾性率 (G' )は、 1. O X 106Pa以下とすることができる。
(2— 2) 100°Cでの貯蔵弾性率 (G' )が 2. 0 X 105Pa以下である。この要件は、結晶 性榭脂 (X)の融点 (約 80°C)をこえた高温で榭脂が低粘度化して ヽることを示す。こ れにより、定着性に優れることが示される。ここで、 100°Cでの貯蔵弾性率 (G' )は、 1 . 0 X 103Pa以上とすることができる。また、 60°Cでの貯蔵弾性率 (G' )が 5. O X 106 Pa以上 3. 0 X 107Pa以下とすることができる。
(3) Carr Purcel Meiboom Gill (CPMG)法により、測定温度 160°C、観測パル ス幅 2. 0 /z sec、繰り返し時間 4secで行うパルス NMR測定において、求められるな 核の自由誘導減衰曲線 (FID)の初期シグナル強度を 100%としたとき、 20msの相 対シグナル強度が 30%以下で、かつ 80msの相対シグナル強度が 20%以下である 。この要件は、トナー用バインダー榭脂中に含有される結晶性榭脂が、トナー粒子よ りも十分小さなサイズで非晶性榭脂中に導入されており、かつ溶融状態にあるバイン ダー榭脂中では、結晶性榭脂のポリマー鎖が非晶性榭脂のポリマー鎖との相互作用 によって、自由に運動できない状態であることを示す。
[0094] 上記の要件を満たすことによって、
(A)結晶性榭脂は十分に小さなスケールで、かつ結晶化できる状態で非晶性榭脂 中に導人されている、
(B)結晶性榭脂はバインダー榭脂が溶融した状態にあっても、非晶性榭脂が障害と なって自由に運動できな 、状態である、
(C)バインダー榭脂中には溶融した榭脂の粘度低下を抑制する成分が存在する、 ことが示される。
[0095] つまりは、当該結晶性榭脂を一成分とするネットワーク構造の特徴である (b)「保存 性を悪化させる懸念のある結晶性榭脂 (X)が、保存性改善効果のある高分子量、も しくは高ガラス転移温度 (Tg)の榭脂中に 0. 1 m以下のサイズで分布して 、る」こと 力 S (A)、(B)、および原料となる榭脂物性力も示され、(c)「結晶性榭脂がランダムに 分散しているのではなぐ連続相もしくは部分的な連続相を構成する成分の 1つとし て存在している」ことが (B)、(C)、および原料となる榭脂物性力も示される。また、 (a )「溶融状態で結晶性榭脂と非晶性榭脂とは非相容の関係にあり、両成分は混ざり合 わな 、」につ 、ては原料となる榭脂物性力も示される。
[0096] (示差走査熱量測定 (DSC) )
上記の要件(1)は示差走査熱量測定 (DSC)を用いて評価される。その測定方法 は以下の通りである。 10°CZminで 20°Cから 170°Cまで昇温後、 10°CZminで 0°C まで降温して、再度 10°C/minで 170°Cまで昇温する。ここで、本発明のトナー用バ インダー榭脂は、 2度目の昇温時に測定される結晶融解熱量が UZg以上 50jZg未 満、好ましくは 5jZg以上 40jZg未満、さらに好ましくは lOjZg以上 30jZg未満で ある。また、このとき、融解ピーク温度が 50°C以上 130°C未満、好ましくは 60°C以上 120°C未満、さらに好ましくは 70°C以上 110°C未満である。結晶融解熱量が UZg 以上となる場合、定着性改善効果が得られる。また、結晶融解熱量が 50jZg未満と なる場合、トナー特性が安定となる。また、融解ピーク温度が 50°C以上の場合、保存 性が良好になる。融解ピーク温度が 130°C未満の場合、定着性改善効果が得られる
[0097] (粘弾性測定)
本発明にお 、て要件(2—1)および (2— 2)は粘弾性測定装置を用いて評価される
。ギャップ長 lmm、周波数 1Hzで 50°Cから 200°Cまで 2°CZminで行う。ここで、 本発明のトナー用バインダー榭脂は、 180°Cでの貯蔵弾性率 (G,)が 50Pa以上 1. 0 X 104Pa以下、好ましくは 1. 0 X 102Pa以上 9. 0 X 103Pa以下、さらに好ましくは 3 . 0 X 102Pa以上 8. 0 X 103Pa以下である。 G'が 50Pa以上となるようにした場合、十 分な耐オフセット性が得られる。 G'が 1. 0 X 104Pa以下となるようにした場合、定着 性が良好になる。また、 100°Cでの貯蔵弾性率 (G' )が 1. 0 X 103Pa以上 2. 0 X 105 Pa以下、好ましくは 2. 0 10¥&以上1. 8 X 105Pa以下、さらに好ましくは 3. 0 X 1 03Pa以上 1. 5 X 105Pa以下である。
[0098] (パノレス NMR)
本発明において要件(3)はパルス NMRを用いて評価される。パルス NMRはポリ マー分子鎖の運動性ゃ異成分間の相互作用状態を評価する方法として一般的に行 われている分析であり、榭脂を構成する全成分の 1H横緩和時間を測定することで評 価される。ポリマー鎖の運動性が低いほど緩和時間は短くなるため、シグナル強度の 減衰は早くなり、初期シグナル強度を 100%としたときの相対シグナル強度は少な 、 時間で低下する。また、ポリマー鎖の運動性が高いほど緩和時間は長くなるため、シ グナル強度の減衰は遅くなり、初期シグナル強度を 100%としたときの相対シグナル 強度は長時間かけて緩やかに低下する。パルス NMR測定は、 Carr Purcel Mei boom Gill (CPMG)法により、測定温度 160°C、観測パルス幅 2. 0 μ sec、繰り返 し時間 4secで行う。このパルス NMR測定において、本発明のトナー用バインダー榭 脂は、求められる 1H核の自由誘導減衰曲線 (FID)の初期シグナル強度を 100%と したとき、 20msの相対シグナル強度が 3%以上 40%未満、好ましくは 3%以上 30% %未満、さらに好ましくは 3%以上 20%未満であり、かつ 80msの相対シグナル強度 が 0. 5%以上 30%未満、好ましくは 0. 5%以上 20%未満、さらに好ましくは 0. 5% 以上 10%未満である。
20msの相対シグナル強度が 3%以上、かつ 80msの相対シグナル強度が 0. 5% 以上の場合、定着性改善効果が見られる。 20msの相対シグナル強度が 40%未満、 かつ 80msの相対シグナル強度が 30%未満の場合、トナー特性が安定となる。
[0099] 本発明のトナー用バインダー榭脂は、たとえばテトラヒドロフラン (THF)等の溶剤を
用いて抽出試験を行うときに、可溶分と不溶分に分けることができる。該 THF不溶部 の含有量は、ノインダー榭脂中に 10質量%以上 90質量%以下、好ましくは 15質量 %以上 85質量%以下である。 THF不溶部の含有量を上記の範囲内とすることで、 良好な耐オフセット性が得られる。
[0100] 当該 THF抽出試験は、榭脂固形物を THFに浸漬した後、常温減圧乾燥すること で行われる。当該 THF不溶部は、 THFに浸漬した状態において、一般に形状が崩 れるが、 THF不溶性の結晶部力 なるハイブリッド榭脂のネットワークがあれば、ハイ ブリツド榭脂が THFに溶出せずに、図 2に示すようにハイブリッド榭脂のネットワーク が観察される。また、前記非晶性榭脂 (Z)は THF浸漬で溶出するので、図 2に示す ように空孔となる。
[0101] 結晶性榭脂が非晶性榭脂 (Z)中にネットワークを形成せずに、ランダムに分散させ た場合、非晶性榭脂 (Z)が THF溶出し、結晶性榭脂は THF不溶であるので、粒子 のまま THF溶液中に存在する。
[0102] 非晶性榭脂 (Z)よりなる当該 THF可溶部は、一般に走査型電子顕微鏡 (SEM)に よって平均孔径が 0. 05以上 2 μ m以下、好ましくは 0. 1以上 1 μ m以下の多孔質構 造として観察される。平均孔径が 0. 05 m以上とすること〖こより、保存性を良好にす ることができ、 2 m以下とすることにより、トナー特性を安定にすることができる。
[0103] THFに溶解させて、不溶物を観察することにより、「非晶性榭脂 (Z)である THF可 溶分が孔構造となり、かつハイブリッド榭脂が THF不溶分のネットワーク構造をとる」 ことをより確かなものとして確認できる。
[0104] また、本発明のトナー用バインダー榭脂は、クロ口ホルムに可溶である。この特徴に より、ハイブリッド榭脂 (H)が化学結合により結合された通常の 3次元網目構造を有 するのではなぐミセルが連結したネットワーク構造を有することが確認できる。また、 ミセルを形成できることから、ハイブリッド榭脂 (H)が非晶性榭脂 (Y)を含むことも確 認できる。
[0105] (電子写真用トナー)
本発明のトナー用バインダー榭脂は、着色剤、必要に応じて帯電制御剤、ワックス 、顔料分散剤と共に、公知の方法で電子写真用トナーとすることができる。
[0106] 本発明の電子写真用トナーを作る方法としては、公知の方法が採用できる。たとえ ば、本発明のトナー用バインダー榭脂、着色剤、荷電調整剤、ワックス等を予めプレ ミックスした後、 2軸混練機を用いて加熱溶融状態で混練し、冷却後微粉砕機を用い て微粉砕し、さらに空気式分級器により分級し、通常 8〜20 mの範囲の粒子^^ めて電子写真用トナーが得られる。この場合、 2軸混練機での加熱溶融条件は、 2軸 混練機吐出部の榭脂温度は 165°C未満で、滞留時間 180秒未満であることが好まし い。上記により得られた電子写真用トナー中のトナー用ノインダー榭脂の含有量は 目的に応じて調整できる。含有量は、好ましくは 50質量%以上、さらに好ましくは 60 質量%以上である。含有量の上限は、好ましくは 99質量%である。
[0107] 着色剤としては、たとえばカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、マ グネタイト等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイェロー G、キノリンイエローレ ーキ、パーマネントイェロー NCG、シスァゾイェロー、モリブデンオレンジ、バルカン オレンジ、インダンスレン、ブリリアントオレンジ GK、ベンガラ、キナクリドン、ブリリアン トカーミン 6B、フリザリンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ファストバイオレット B、コ バルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー 、ビグメントグリーン B、マラカイトグリーンレーキ、酸化チタン、亜鉛華等の公知の有 機および無機顔料が挙げられる。その量は通常、本発明のトナー用バインダー榭脂 100質量部に対して 5〜250質量部である。
[0108] また、ワックスとして、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲において、たと えばポリ酢酸ビュル、ポリオレフイン、ポリエステル、ポリビュルプチラール、ポリウレタ ン、ポリアミド、ロジン、変性ロジン、テルペン榭脂、フエノール榭脂、脂肪族炭化水素 榭脂、芳香族石油榭脂、パラフィンワックス、ポリオレフインワックス、脂肪酸アミドヮッ タス、塩ビ榭脂、スチレン一ブタジエン榭脂、クロマン一インデン榭脂、メラミン榭脂等 を一部添加使用してもよい。
[0109] また、ニグ口シン、 4級アンモ-ゥム塩ゃ含金属ァゾ染料をはじめとする公知の荷電 調整剤を適宜選択して使用でき、使用量は本発明のトナー用ノインダー榭脂 100質 量部に対し、好ましくは 0. 1〜: LO質量部である。
実施例
[0110] 以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
[0111] 製造方法
(結晶性樹脂 (X)の製造例)
表 1に示す原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 1リットル容の 四つ口フラスコに入れ、 150°Cで 1時間反応させた。次に、モノマー総量に対して 0. 16質量0 /0のチタンラタテート (松本製薬工業 (株)製、 TC— 310)を加え、 200°Cまで 緩やかに昇温して 5〜: LO時間反応させた。さらに 8. OkPa以下の減圧下で約 1時間 反応させ、酸価が 2 (mgKOHZg)以下となることで反応を完結させた。得られた結 晶性榭脂を原榭脂 a、 b、 b'とした。
[0112] [表 1] 表 1 (結晶性樹脂 (X ) )
[0113] (ハイブリッド榭脂 (H)の製造)
(例 l : a - 1)
窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 4リットル容の四つ口フラスコに、上記原榭 脂 a 500gと無水マレイン酸 7. 2gを入れ、 150°Cで 2時間反応させ、マレイン酸付加 物を得た。次いで、キシレン 500g、スチレン 490g、メタアクリル酸 10gを入れ、 85°C まで昇温後、 t—ブチルパーォキシォクトエート 3gを投入して 4時間反応させた。さら に、 t—ブチルパーォキシォタトエート lgを入れて 2時間反応し、これを 3回繰り返す ことで、ノ、イブリツド榭脂 (H) a— 1を製造した。ハイブリッド榭脂 (H) a— 1 (St— MAC
-MPES)のピーク分子量は 15万であった。
[0114] (例 2 : a— 2)
窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 4リットル容の四つ口フラスコに、上記原榭 脂 a 500gと無水マレイン酸 8. 9gを入れ、 150°Cで 2時間反応させ、マレイン酸付加 物を得た。別に、キシレン 500gを窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 2リットル 容の四つ口フラスコに入れ、キシレン還流温度 (約 138°C)まで昇温し、そこにスチレ ン 490g、メタクリル酸 10g、 t—ブチルパーォキシォクトエート lgの混合溶液と、前 記マレイン酸付加物 500gを、 5時間かけて滴下し、さらに、 1時間反応を継続させた 。次いで、 90°Cまで降温し、 t—ブチルパーォキシォクトエート lgを入れて 2時間反 応を行い、これを 2回繰り返すことでハイブリッド榭脂 (H) a— 2を製造した。ハイブリツ ド榭脂(H) a— 2 (St-MAC-MPES)のピーク分子量は 7万であった。
[0115] (例 3 :b)
窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 4リットル容の四つ口フラスコに、上記原榭 脂 b 500gと無水マレイン酸 8. 9gを入れ、 150°Cで 2時間反応させ、マレイン酸付 加物を得た。別に、キシレン 500gを窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 2リット ル容の四つ口フラスコに入れ、キシレン還流温度 (約 138°C)まで昇温し、そこにスチ レン 490g、メタクリル酸 10g、 t—ブチルパーォキシォクトエート lgの混合溶液と、 前記マレイン酸付加物 500gを、 5時間かけて滴下し、さらに、 1時間反応を継続させ た。次いで、 90°Cまで降温し、 t—ブチルパーォキシォクトエート lgを入れて 2時間反 応を行い、これを 2回繰り返すことでハイブリッド榭脂 (H) bを製造した。ハイブリッド榭 脂(H) b (St— MAC— MPES)のピーク分子量は 7万であった。
(例 4 :b,)
窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 4リットル容の四つ口フラスコに、上記原榭 脂 b, 500gと無水マレイン酸 10. 8gを入れ、 165°Cで 3時間反応させ、マレイン酸 付加物を得た。別に、キシレン 500gを窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 2リツ トル容の四つ口フラスコに入れ、キシレン還流温度 (約 135°C)まで昇温し、そこにス チレン 490g、メタクリル酸 10g、ァセチル酸ブチル lg、 t ブチルパーォキシオタトェ ート lgの混合溶液と、前記マレイン酸付加物 500gを、 5時間かけて滴下し、さらに、
1時間反応を継続させた。次いで、 98°Cまで降温し、 t—ブチルパーォキシオタトェ ート lgを入れて 6時間反応を行い、ハイブリッド榭脂 (H) b,を製造した。ハイブリッド 榭脂(H) b,(St— MAC - MPES - BA)のピーク分子量は 10万であった。
[0116] (非晶性榭脂 (Z)の製造)
窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 2リットル容の四つ口フラスコに、キシレン 5 OOgを加え、キシレン還流温度 (約 138°C)まで昇温して、表 2に示す原料モノマー、 反応開始剤を 5時間かけて反応フラスコ内に滴下させた。さらに 1時間そのまま反応 を継続し、その後、 98°Cに降温して t—ブチルパーォキシォクトエート 2. 5gをカ卩えて 2時間反応を行った。得られた重合液は、 195°Cに昇温して 1時間、 8. OkPa以下の 減圧下で溶剤を除去した。得られた榭脂を原榭脂 c、 dとした。
[0117] また、原榭脂 eについては以下の方法で製造した。攪拌器を装備したオートクレー ブに、キシレン 504g、表 2に示す原料モノマー、反応開始剤を仕込み、 208°Cまで 加圧加熱し、ピーク分子量 5000のポリスチレン重合液を得た。得られた重合液は、 1 95°Cに昇温して 1時間、 8. OkPa以下の減圧下で溶剤を除去した。得られた榭脂を 原榭脂 eとした。
[0118] [表 2]
表 2 (非晶性樹脂 (Z ) )
[0119] (トナー用バインダー榭脂の製造 (ハイブリッド榭脂 (H)と非晶性榭脂 (Z)との混合' 脱溶剤))
窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 2リットル容の四つ口フラスコに、表 3に示 す組成の原榭脂を加え、 190°Cまで昇温し、 8. OkPa以下の減圧下で 1時間、脱溶 剤を行った。得られた榭脂を榭脂 A Dとした。ここで、溶剤としては、キシレンを用い た。
[0120] (実施例 1 4)
表 3に示す榭脂 A Dそれぞれ 100質量部、カーボンブラック(CABOT CORPO RATION製、 REGAL 330r) 6質量部、荷電制御剤 (オリエント化学工業製、ポント ロン S34) 1質量部をヘンシェルミキサーで十分に混合した後、 2軸混鍊機 (池貝機械 製、 PCM— 30型)にて設定温度 110°C、滞留時間 60秒で溶融混鍊させ、冷却、粗 粉砕した。その後、ジェットミルにより粉砕'分級して、体積平均粒子径が 8. 5 mの 粉体を得た。得られた粉体 100質量部に、外添材(日本ァエロジル製、 AEROSIL r972) 0. 5質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、電子写真用ト ナーを得た。榭脂 A D力 調製された電子写真用トナーをそれぞれ実施例 1 4と する。表 5および表 6に実施例 1 4の諸特性を示す。
[0121] [表 3]
表 3に示す榭脂 Eを用いた以外は、実施例 1と同様にして、トナーを製造した。
[0123] (比較例 2)
無水マレイン酸をカ卩えな力つたという点以外はハイブリッド榭脂 (H)の製造の例 1と 同様の処理で榭脂を製造し、当該榭脂を榭脂 Aのかわりに用いて実施例 1と同様の 処理でトナー用バインダー樹脂を製造した。その後も実施例 1と全く同じ方法にてト ナーを製造した。
[0124] (比較例 3)
比較例 3として、以下の製法により調製される、スチレンアクリル系榭脂を使用した。
[0125] スチレン 57. 4質量部、アクリル酸 n ブチル 11. 9質量部、メタアクリル酸 0. 7質量 部、キシレン 30質量部力もなる溶液に、スチレン 100質量部当たり 0. 6質量部のジ t ブチルパーオキサイドを均一に溶解したものを、内温 190°C、内圧 0. 59MPa に保持した 51の反応器に 750ccZhで連続的に供給して重合し、低分子量重合液 ( ピーク分子量 5000)を得た。
[0126] 別にスチレン 75質量部、アクリル酸 n ブチル 23. 5質量部、メタクリル酸 1. 5質量 部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温 120°Cに昇温後、同温度で 10時間、バル ク重合を行った。次いでキシレン 50部をカ卩え、予め混合溶解しておいたジ— t ブチ ルパーオキサイド 0. 1部、キシレン 50質量部を 130°Cに保ちながら 8時間かけて連 続添加し、さらに 2時間、継続して重合し、高分子量重合液 (ピーク分子量 35万)を 得た。
[0127] 次いで上記低分子重合液 100質量部と高分子重合液 100質量部とを混合した後、 160°C、 1. 33kPaのベッセル中にフラッシュして溶剤等を除去し、トナー用バインダ 一榭脂を製造した。
[0128] その後、実施例 1と全く同じ方法にてトナーを製造した。
[0129] (比較例 4)
比較例 4として、以下の製法により調製される、架橋反応を施したスチレンアクリル 系榭脂を使用した。
[0130] キシレン 75質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、キシレン還流温度 (約 138°C
)まで昇温させた。予め混合溶解しておいたスチレン 65質量部、アクリル酸 n—プチ ル 30質量部、メタクリル酸グリシジル 5質量部、ジー t ブチルパーオキサイド 1質量 部を 5時間かけてフラスコ中に連続滴下し、さらに 1時間、反応を継続させた。その後 、内温を 130°Cに保ち、 2時間反応を行うことで、重合を完結させた。これを 160°C、 1. 33kPaのベッセル中にフラッシュして溶剤等を除去し、グリシジル基含有ビュル榭 脂を得た。
[0131] 比較例 3と同様にして得られた低分子重合液 100質量部(ピーク分子量 5000)と、 高分子重合液 (ピーク分子量 35万) 60質量部を混合した後、 160°C、 1. 33kPaの ベッセル中にフラッシュして溶剤等を除去した。該榭脂混合物 97質量部と、上記のグ リシジル基含有ビニル榭脂 3質量部とをヘンシェルミキサーにて混合後、 2軸混鍊機 ( 栗本鉄工所製、 KEXN S—40型)にて吐出部榭脂温度 170°C、滞留時間 90秒で 混鍊反応させた。
[0132] その後、実施例 1と全く同じ方法にてトナーを製造した。
[0133] (比較例 5)
比較例 5として、以下の製法により調製される、非晶性ポリエステルと結晶性ポリエ ステルとを溶融ブレンドさせたトナー用バインダー榭脂を使用した。
[0134] 1、 4 ブタンジオール 1013g、 1、 6 へキサンジオール 143g、フマル酸 1450g、 ノ、イドロキノン 2gを窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した 5リットル容の四つロフラ スコに入れ、 160°Cで 5時間反応させた後、 200°Cに昇温して 1時間反応させ、さらに 8. 3kPaにて 1時間反応させ結晶性ポリエステルを得た。
[0135] 表 4に示す原料モノマー、および酸ィ匕ジブチル錫 4gを、窒素導入管、脱水管、攪 拌器、熱伝対を装備した 5リットル容の四つ口フラスコに入れ、 220°Cで 8時間かけて 反応を行った。さらに 8. 3kPaで約 1時間、反応を行い、非晶性ポリエステルを得た。
[0136] 以下、結晶性ポリエステル 20質量部、非晶性ポリエステル A60質量部、非晶性ポリ エステル B20質量部をキシレン 70質量部中でブレンドし、脱溶剤してトナー用バイン ダー榭脂を製造した。その後、実施例 1と同様にトナーを作成した。
[0137] [表 4]
非晶性ポリエステル A 非晶性ポリエステル B
B P A - P 0 (g) 2000
B P A - B 0 (g) 800
エチレングリコール ( ε ) 400 ネオベンチルグリコール 〔g〕 1200
テレフ ル酸 (g) 600 謂
ドデセニル無水コハク酸 500
無水トリメリッ ト酸 (g) 700
[0138] (略称: BPA—PO :ビスフエノール Aのプロピレンオキサイド付カ卩物(平均付カ卩モル数 : 2. 2モル)、 BPA— BO:ビスフエノール Aのエチレンオキサイド付カ卩物(平均付加モ ノレ数: 2. 2モル))
(比較例 6)
比較例 6として、以下の製法により調製される、非晶性榭脂と結晶性榭脂とをグラフ ト反応させたトナー用バインダー榭脂を使用した。
[0139] 窒素導入管、脱水管、攪拌器を装備した容量 11のセパラブルフラスコにトルエン 10 Og、スチレン 15g、 n—ブチルアタリレー卜 5g、過酸ィ匕ベンゾィル 0. 04gを加え、 80 °Cで 15時間反応を行った。その後、 40°Cに冷却してスチレン 85g、 n—ブチルメタク リレート 10g、アクリル酸 5g、過酸化ベンゾィル 4gを添カ卩し、 80°Cに再昇温して 8時 間反応を行った。得られた重合液は、 195°Cに昇温して 1時間、 8. OkPa以下の減 圧下で溶剤を除去し、非晶性榭脂を得た。
[0140] 原榭脂 bl5質量部と上記非晶性榭脂 85質量部、 P—トルエンスルホン酸 0. 05質 量部、およびキシレン 100質量部とを容量 31のセパラブルフラスコ内に入れ、 150°C で 1時間還流させ、その後、キシレンをァスピレーターおよび真空ポンプによって除 去することにより、グラフト共重合体を得た。
[0141] その後、実施例 1と全く同じ方法にてトナーを製造した。
[0142] 測定方法
(分子量の測定)
ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(JASCO製、 TWINCLE HPLC)を用い て、以下の条件でテトラヒドロフランに可溶な非晶性榭脂のみより構成されるトナーお
よびバインダー榭脂の分子量分布を測定した。
検出器: RI検出器(SHODEX製、 SE— 31)
カラム: GPCA—80M X 2本+KF—802 X 1本(SHODEX製)
移動層: テトラヒドロフラン
流量: 1. 2mレ mm
単分散標準ポリスチレンより作成した検量線を用いて、榭脂サンプルのピーク分子 量を算出した。
[0143] また、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(昭和電工製、 Shodex GPCSYST EM— 21)を用いて、以下の条件でクロ口ホルムに可溶な結晶性榭脂、およびハイブ リツド榭脂 (H)を含むトナーおよびバインダー榭脂の分子量分布を測定した。
検出器: RI検出器
カラム: GPC K-G + K-806L + K—806L (SHODEX製)
カラム温度: 40°C
移動層: クロ口ホルム
流量: 1. Omレ mm
単分散標準ポリスチレンより作成した検量線を用いて、榭脂サンプルのピーク分子量 を算出した。
[0144] (軟化点の測定)
全自動滴点装置 (メトラー製、 FP5ZFP53)を用いて、以下の条件でバインダー榭 脂の軟ィ匕点を測定した。
[0145] 滴下口径: 6. 35mm
昇温速度: CZmin
昇温開始温度: 100°C
反応器より取り出した溶融状態のサンプルを、サンプリングホルダー内に空気の混 入に注意しながら加え、常温になるまで冷却して力も測定カートリッジにセットした。
[0146] (融解ピーク温度、熱量およびガラス転移温度)
示差走査熱量計 (TA Instruments製、 DSC— Q1000)を用いて、トナーまたは ノ インダー榭脂、およびそれらの THF不溶分の結晶融解ピーク温度、結晶融解熱
量、ガラス転移温度を求めた。 10°CZminで 20°Cから 170°Cまで昇温後、 10°CZm inで 0°Cまで降温して、再度 10°CZminで 170°Cまで昇温する過程において、 2度 目の昇温時における融解ピーク温度、およびガラス転移温度を、 JIS K7121「ブラ スチックの転移温度測定方法」に習い算出した。ガラス転移温度は補外ガラス転移開 始温度をもって測定値とした。また、 2度目の昇温時における結晶融解熱の熱量 ίお I S K7122「プラスチックの転移熱量測定方法」に習い、吸熱ピーク面積から算出し た。
[0147] (粘弾性測定)
粘弾性測定装置(レオロジカ社製、 STRESS TECH)を用い、以下の条件でトナ 一およびバインダー榭脂の粘弾性測定を行った。
ΐ¾定モード: Oscillation StrainControl
ヤップ長: imm
周波数: 1Hz
プレート: パラレルプレート
測定温度: 50°Cから 200°C
昇温速度: 2°C/min
測定は 150°Cの測定ステージ上に、粉体の榭脂サンプルを溶融させ、厚さ lmmの ノ レルプレートサイズに成形した後に、 50°Cまで降温して測定を開始した。上記測 定より、 100°C、および 180°Cでの貯蔵弾性率 (G' )を求めた。
[0148] (パルス NMR測定)
固体 NMR測定装置(日本電子製、 HNM— MU25)を用い、以下の条件でトナー およびバインダー榭脂のパルス NMR測定を行った。
サンプル形状: 粉体
測定手法: Carr Purcel Meiboom Gill (CPMG)法
観察核: 1H
測定温度: 160°C
観測パルス幅: 2. 0 sec
繰り返し時間: 4sec
積算回数: 8回
求められる 1H核の自由誘導減衰曲線 (FID)の初期シグナル強度を 100%とし、 2 Omsおよび 80ms後の相対シグナル強度を求めた。
[0149] (形態観察:ネットワーク、ミセル、マトリックスの部分面積比、ドメインの平均粒径) 走査電子顕微鏡 (日立製作所製、 S 800)を用い、任意の倍率でトナーおよびバ インダー榭脂の THF不溶分を SEM観察に供した。
[0150] また、透過型電子顕微鏡(日立製作所製、 H— 7000)を用い、任意の倍率でトナ 一およびバインダー榭脂の TEM観察を行った。 TEM観察の測定試料は冷却下、ゥ ルトラミクロトームを用いて超薄膜切片を作成し、ルテニウム染色を施して測定に供し た。本染色方法では、ハイブリッド榭脂 (H)が濃ぐ非晶性榭脂 (Z)は薄く着色して観 察される。また、ハイブリッドされない未反応の結晶性榭脂 (X)は白く観察される。
[0151] ここで、粒径約 0. 1 μ m程度以下の黒い粒状成分が存在しているものを「ミセルあり 」とした。このような黒い粒状成分が観察されない場合、または粒径が 100 m程度 の黒 、粒状成分が観察された場合「ミセルなし」とした。
[0152] さらに、粒径約 0. 1 μ m程度以下の黒い粒状成分が連結されて網目構造を形成し ているものを「ネットワークあり」とした。この場合、ネットワークの網目に非晶性榭脂 (Z )が観察された。また、粒径約 0. 1 μ m程度以下の黒い粒状成分が存在していても、 単に分散しているものは、「ネットワークなし」とした。
[0153] マトリックスの部分面積比は、以下のようにして測定した。上記染色処理を施した T EM写真の上に透明シートを重ねて、非晶性榭脂 (Z)に対応する粒をペンでなぞり、 粒を全て書き写した。次いで、画像解析ソフト(プラネトロン社 Image-Pro Plus)で解 祈し、 TEM写真 1枚あたりの非晶性榭脂 (Z)の面積を算出した。残りが、ハイブリッド 榭脂 (H)であるマトリックス (ミセルの集合体によるネットワーク)部分であるとして、面 積を算出した。これらに基づき、マトリックスの部分面積比(%)を算出した。また、ドメ インの平均粒径は、マトリックスで囲まれた非晶性榭脂 (Z)の平均面積を求め、その 平均面積と同じ面積となる円の直径を平均粒径とした。
[0154] (THF不溶部の分取)
トナーまたはバインダー榭脂 lgを、 THFlOOml中に室温で 3日間静置して浸漬さ
せ、ろ過した。不溶解物を取り出し、 IkPa以下、 30°Cの条件で 10時間真空乾燥す ることで THF不溶部を得た。得られた THF不溶分は、 SEM観察に供した。
[0155] [表 5]
[0156] [表 6]
融解ピーク温度 相対 強度 相対ピ一ク強度 酸価
mo
実施例 24 13万 £10 23 9
実施例 万
実體 18 90 万 iao 15 9
実施例 万
比較例 万
比醫 万
比較例 0 万 2800 0.9
比較例 万
比較例 36 ^万
比較例 0 万
[0157] (電子顕微鏡観察)
実施例 4で使用したトナー用バインダー榭脂の走査型電子顕微鏡写真の例を図 1 および図 2に示す。
図 1は、実施例 4で使用したトナー用バインダー榭脂の走査型電子顕微鏡写真で ある。図中、黒く見える部分は、ハイブリッド化された結晶性ポリエステル榭脂のミセ ルが繋がりネットワークとなっている箇所である。また、黒く見える部分の間に分散さ れた薄く着色して見えるドメイン部分は、スチレン系榭脂である。図 2は、図 1に示した トナー用バインダー榭脂から抽出した、 THF不溶部の走査型電子顕微鏡写真を示 す図である。図 1で薄く着色して見える部分は、 THFに溶解して、空孔となっているこ とがわかる。
[0158] (トナーの性能評価)
以下に示す定着性、耐オフセット性、保存性、および安定性の評価を行った。いず れの項目でも Xの評価とならな力つたものを合格とした。
[0159] (定着性)
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した後、この未定 着画像を市販の複写機の定着部の温度と定着速度を任意に制御できる様に改造し た熱ローラー定着装置を用いて定着させた。熱ロールの定着速度は 190mmZsec とし、熱ローラーの温度を 10°Cずつ変化させてトナーの定着を行った。得られた定着 画像を砂消しゴム(トンボ鉛筆社製、プラスチック砂消しゴム" MONO")により、 1. 0 Kg重の荷重をかけ、 10回摩擦させ、この摩擦試験前後の画像濃度をマクベス式反 射濃度計により測定した。各温度での画像濃度の変化率が 60%以上となった最低 の定着温度をもって最低定着温度とし、下記の規定に従って評価した。なお、ここに 用いた熱ローラ定着装置はシリコーンオイル供給機構を有しないものである。即ち、 オフセット防止液は使用しない。また、環境条件は、常温常圧 (温度 22°C、相対湿度 55%)とした。
◎:最低定着温度が 120°C未満
〇:最低定着温度が 120°C以上、 150°C未満
X:最低定着温度が 150°C以上
(耐オフセット性)
コピーした場合にオフセットの発生しな 、温度幅 (耐オフセット温度領域と表す)を 以下の基準で評価した。表 7に一連の結果を示す。耐オフセット性の評価は、上記最 低定着温度の測定に準じて行った。すなわち、上記複写機にて未定着画像を作成し た後、トナー像を転写して上述の熱ローラー定着装置により定着処理を行った。次い で白紙の転写紙を同様の条件下で当該熱ローラー定着装置に送って転写紙上にト ナー汚れが生ずるか否かを目視観察する操作を、前記熱ローラー定着装置の熱口 一ラーの設定温度を順次上昇させた状態で繰り返した。この際、トナーによる汚れの 生じた最低の設定温度をもってホットオフセット発生温度とした。同様に、前記熱ロー ラー定着装置の熱ローラーの設定温度を順次下降させた状態で試験を行!ヽ、トナー による汚れの生じた最高の設定温度をもってコールドオフセット発生温度とした。これ らホットオフセット、コールドオフセット発生温度の温度差をもって耐オフセット温度領 域とし、下記の規定に従って評価した。また、環境条件は、常温常圧 (温度 22°C、相 対湿度 55%)とした。
◎:耐オフセット温度領域が 50°C以上
〇:耐ォフセット温度領域が 50°C未満、 30°C以上
X:耐オフセット温度領域が 30°C未満
[0161] (保存性)
トナーを 50°Cの環境下に 24時間放置した後の、粉体の凝集程度を目視にて以下 のように判定した。表 7に一連の結果を示す。
◎:全く凝集していない
〇:わずかに凝集している。
X:完全に団塊化している。
[0162] (安定性)
トナーの色合を目視で評価することで、トナー粒子の品質確認を行った。顔料分散 性が良好なトナーは黒光りを呈し、不良なものは灰色のトナーを与えた。表 7に一連 の結果を示す。
◎:黒光りを呈するトナー。
〇:光沢のない黒いトナー。
X:灰色のトナー。
[0163] [表 7]
定着性 耐オフセット性 保存性 安定性
実施例 1 © © 〇 〇
実施例 2 ◎ O
実施例 3 ◎ o ©
実施例 4 ◎ © 〇
比較例 1 X 〇 〇 〇
比較例 2 X X X X
比較例 3 X ◎ 〇 ©
比較例 4 X © © ©
比較例 5 O © X ©
比較例 6 ◎ o X 〇
[0164] 表 5において、〇はネットワークが確認されたこと、 Xはネットワークが確認されなか つたことを示す。表 5に示したように、実施例 1〜実施例 4では、ミセルの形成が確認 された。また、実施例 1〜実施例 4では、ネットワーク構造の形成も確認された。実施 例 1〜実施例 4においては、脱溶剤時にこのようなネットワーク構造が形成されたと考 えられる。実施例 1〜実施例 4において、 THF浸食後にもネットワーク構造が確認さ れた。一方、比較例 1においては、ミセルの形成は確認された力 ネットワーク構造の 形成は確認されな力つた。比較例 1では、非晶性榭脂 (Z)のピーク分子量が大きい ため、脱溶剤時の相分離状態が実施例 1〜実施例 4とは異なり、ネットワーク構造が 形成されなかったと考えられる。また、非晶性榭脂 (Z)の分子量が大きいと、トナーに おいて低温定着性が悪化してしまう。比較例 2〜比較例 6では、ミセルの形成もネット ワーク構造も確認されな力つた。
[0165] さらに、表 6に示したように、実施例 1〜実施例 4においては、用いたハイブリッド榭 脂 (H)の融解ピーク温度より高い 100°Cでの貯蔵弾性率 (G,)力 2. 0 X 105Pa以 下であった。このことから、融解ピーク温度をこえた高温で、榭脂が低粘度化している
ことがわかる。これは、実施例 1〜実施例 4において、ノ、イブリツド榭脂 (H)中の結晶 性榭脂 (X)が溶融するとネットワーク構造が崩れ、それに伴いネットワーク構造中に 分散されている非晶性榭脂 (Z)も容易に分散するため、粘度が低下すると考えられる 。これにより、低温定着性が良好になるとともに、ぬれ性を良好にすることができる。
[0166] さらに、本発明のトナー用バインダー榭脂において、分子量の大きいハイブリッド榭 脂 (H)と分子量の小さ ヽ非晶性榭脂 (Z)とを混合して ヽるので、トナー形成時の粉砕 を良好に行うとともに、トナーの摩擦耐電に対する強度を保つことができる。
[0167] さらに、本発明のトナー用バインダー榭脂において、ハイブリッド榭脂 (H)を製造す る際に、結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Y)間の相容性を精度良く制御する必要がな いため、幅広い榭脂選択性、モノマー選択性が可能となる。
[0168] また、本発明のトナー用バインダー榭脂は、ハイブリッド榭脂 (H)および非晶性榭 脂 (Z)に加えて、非晶性榭脂 (Z)よりもピーク分子量の大きい非晶性榭脂をさらに含 むこともできる。このような構成としても、ハイブリッド榭脂 (H)と非晶性榭脂をブレンド する際に、ピーク分子量が比較的小さい非晶性榭脂 (Z)が存在していることにより、 上述したのと同様のネットワーク構造を形成することができる。
[0169] 本発明は、以下の態様も含む。
(1)結晶性榭脂 (X)と非晶性榭脂 (Y)とが化学結合によって結ばれた、ピーク分子 量が 3万以上のハイブリッド榭脂 (H)を含む榭脂混合物を合成する第一のプロセスと 、該榭脂混合物とピーク分子量が 3万未満である非晶性榭脂 (Z)とを混合する第二 のプロセスを含むことを特徴とするトナー用バインダー榭脂の製造方法。
(2)二重結合を導入した結晶性榭脂 (X)の存在下、非晶性榭脂 (Y)を合成すること で前記榭脂混合物を合成することを特徴とする(1)記載の製造方法。
(3) (1)記載の方法によって得られ、結晶性榭脂を一成分とするネットワーク構造を 含むことを特徴とするトナー用ノインダー榭脂。
(4) (1)記載の方法によって得られ、以下の(a)〜(c)の要件をすベて満たすことを 特徴とするトナー用ノ インダー榭脂。
(a) DSC測定において測定される結晶融解熱量が 5jZg以上であり、かつ融解ピー ク温度が 60〜 120°Cである。
(b) 180°Cでの貯蔵弾性率 (G,)が lOOPa以上である。
(c) Carr Purcel Meiboom Gill (CPMG)法を用いて行うパルス NMR測定にお いて、求められる 1H核の自由誘導減衰曲線 (FID)の初期シグナル強度を 100%と したとき、 20msの相対シグナル強度が 30%以下で、かつ 80msの相対シグナル強 度が 20%以下である。
(5) (1)記載の方法によって得られ、テトラヒドロフラン (THF)可溶分と THF不溶分 からなり、塊状の当該榭脂を THFに浸漬した際、塊状の榭脂全体が膨潤することを 特徴とするトナー用ノ インダー榭脂。
(6) (1)記載の方法によって得られるトナー用バインダー榭脂を含むことを特徴とす るトナー。