JP5768837B2 - 静電潜像現像用トナー及び電子写真画像形成方法 - Google Patents
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Description
当該マトリクスが、酸基を有するビニル系樹脂を含有する非晶性樹脂を含有し、
当該ドメインが、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントとが結合してなる結晶性樹脂を含有し、
当該結晶性樹脂の含有量が、3〜30質量%の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
エステル基濃度M(mmol/g)
=[ポリエステル重合セグメント1モルを形成する多価カルボン酸及び多価アルコールに含まれるエステル基となりうる部分のモル数の平均(mol/mol)]×1000
/[(多価カルボン酸及び多価アルコールのモル質量の合計(g/mol))−(脱水重縮合して分離した水のモル質量(g/mol))×(ポリエステル重合セグメント1モルを形成するエステル基のモル数(mol/mol))]
(一般式(1)中、R1は、炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
本発明の静電潜像現像用トナーは、ドメインマトリクス構造を有するトナー母体粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、当該マトリクスが、酸基を有するビニル系樹脂を含有する非晶性樹脂を含有し、当該ドメインが、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントとが結合してなる結晶性樹脂を含有し、当該結晶性樹脂の含有量が、3〜30質量%の範囲内であることを特徴としている。
マトリクスを構成する樹脂は、酸基を有するビニル系樹脂を含有する非晶性樹脂である。酸基を有するビニル系樹脂は、少なくとも酸基を有する単量体を重合して得られた樹脂を含有する。
ここで、酸基とは、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を表し、酸基を有する単量体としては、カルボキシ基を有するものとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。また、スルホン酸基を有するものとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。さらに、リン酸基を有するものとしてはアシドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
また、本発明に係る酸基を有するビニル系樹脂は、上記酸基を有する単量体の他、下記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル単量体を重合して得られた樹脂を含有することが好ましい。
一般式(1)中、R1は、炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。
酸基を有するビニル系樹脂は、酸基を有する単量体、上記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル単量体以外の他のビニル系単量体を用いてもよく、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸ラウリル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ジエチルアミノエチル、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタアクリル酸エステル誘導体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸又はメタアクリル酸誘導体等のビニル系単量体が挙げられる。
酸基を有するビニル系樹脂の重合方法としては、通常の重合方法が採用できるが、本発明においては、乳化重合法が好ましい。
酸基を有するビニル系樹脂の重合工程において使用される重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤が好適に用いられる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化−tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸−tert−ブチル、過酢酸−tert−ブチル、過安息香酸−tert−ブチル、過フェニル酢酸−tert−ブチル、過メトキシ酢酸−tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸−tert−ブチルなどの過酸化物類;2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミノジプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸及びポリ(テトラエチレングリコール−2,2′−アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。
酸基を有するビニル系樹脂の重合工程においては、ビニル系樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン及びメルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、上記の混合工程において樹脂材料とともに混合させておくことが好ましい。
酸基を有するビニル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、7500〜100000が好ましく、更に好ましくは、10000〜50000の範囲内である。重量平均分子量(Mw)がこの範囲内であると十分な耐熱保管性が得られる。またこの範囲内であると十分な耐高温オフセット性が得られる。
酸基を有するビニル系樹脂の重量平均分子量の測定は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフ)を用いて行う。
装置:HLC−8220(東ソー製)
カラム:TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連(東ソー製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.2ml/min
検出器:屈折率検出器(RI検出器)
試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
酸基を有するビニル系樹脂のガラス転移点(Tg)としては、35〜70℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移点が、この範囲内であると十分な耐熱保管性の効果が得られる。
本発明に係る酸基を有するビニル系樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」((株)パーキンエルマー製)を用いて行うことができる。
ドメインを形成する結晶性樹脂は、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントとが化学結合して形成された結晶性樹脂を含有し、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントは、両反応性単量体を介して結合された結晶性樹脂であることが好ましい。なお、上記ポリエステル重合セグメントは結晶性ポリエステルである。また、ドメイン中に結晶性樹脂以外にワックス等が添加されていてもよい。
結晶性樹脂を構成するビニル系重合セグメントは、ビニル系単量体を重合して得られた樹脂を含有し、ビニル系単量体としては、下記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル単量体を重合して得られたセグメントを含有することが好ましい。
一般式(1)中、R1は炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。
結晶性樹脂を構成するビニル系重合セグメントの重合に用いられる重合開始剤としては、前述の酸基を有するビニル系樹脂の重合に用いられる重合開始剤が使用できる。
また、結晶性樹脂を構成するビニル系重合セグメントの重合においては、ビニル系重合セグメントの分子量を調整することを目的として、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、前述の酸基を有するビニル系重合セグメントの重合に用いられる連鎖移動剤が使用できる。
結晶性樹脂を構成するビニル系重合セグメントの重量平均分子量は、1000〜20000の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲内であると良好なドメインマトリクス構造を形成しやすくなるので好ましい。
本発明に係る結晶性樹脂を構成するポリエステル重合セグメントは、多価カルボン酸化合物と多価アルコール化合物とを触媒の存在下で、重縮合反応を行うことにより製造された結晶性ポリエステル樹脂である。
ポリエステル重合セグメントを形成する多価カルボン酸化合物とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上有する化合物である。多価カルボン酸化合物としては、多価カルボン酸化合物のアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができる。
多価アルコール化合物とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上有する化合物である。多価アルコール化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。本発明においては、結晶性ポリエステル樹脂を形成する多価アルコールとしては、脂肪族多価アルコールが好ましい。
本発明に係る結晶性樹脂を構成するポリエステル重合セグメントのエステル基濃度Mは、3.5〜7.1(mmol/g)の範囲内であることが好ましい。
エステル基濃度M(mmol/g)
=[ポリエステル重合セグメント1モルを形成する多価カルボン酸及び多価アルコールに含まれるエステル基となりうる部分のモル数の平均(mol/mol)]×1000
/[(多価カルボン酸及び多価アルコールのモル質量の合計(g/mol))−(脱水重縮合して分離した水のモル質量(g/mol))×(ポリエステル重合セグメント1モルを形成するエステル基のモル数(mol/mol))]
上記式(I)について以下に説明する。
HOOC−R3−COOH
一般式(3)
HO−R4−OH
一般式(4)
−(−OCO−R3−COO−R4−)n−
m3=(m1+m2)−(水のモル質量)×[(カルボキシ基のモル数とヒドロキシ基のモル数の合計)/2]となり、[(カルボキシ基のモル数とヒドロキシ基のモル数の合計)/2]とは、一般式(4)の括弧内の繰り返し構成単位中のエステル基のモル数に等しい。
エステル基濃度M(mmol/g)=(ポリエステル重合セグメントの繰り返し構成単位におけるエステル基のモル数)×1000/(ポリエステル重合セグメントの繰り返し構成単位のモル質量)
本発明において、両反応性単量体とは、ポリエステル重合セグメントとビニル系重合セグメントとを結合する単量体で、分子内に、ポリエステル重合セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される基とビニル系重合セグメントを形成するエチレン性不飽和基の両方を有する単量体であって、好ましくは、ヒドロキシ基又はカルボキシ基とエチレン性不飽和基の両方を有する単量体が好ましい。更に好ましくは、カルボキシ基とエチレン性不飽和基の両方を有する単量体であることが好ましい。すなわち、ビニル系カルボン酸であることが好ましい。
結晶性樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
(1)ポリエステル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該ポリエステル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ビニル系重合セグメントを形成するための芳香族系ビニル単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体を反応させることにより、結晶性樹脂を形成する方法。
(2)ビニル系重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該ビニル系重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸化合物及び多価アルコール化合物を反応させることにより、ポリエステル重合セグメントを形成する方法。
(3)ポリエステル重合セグメント及びビニル系重合セグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法。
ポリエステル重合セグメントを合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。
トナー母体粒子が着色剤を含有したものとして構成される場合の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができる。
本発明に係るトナー母体粒子には、離型剤としてワックスを添加することができる。ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニルなどのエステルワックス類などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明に係るトナー母体粒子中には、荷電制御剤としては、種々の公知のものを使用することができる。
本発明のトナーは、トナー母体粒子をそのまま用いてもよいし、トナーとしての帯電性能や流動性、あるいはクリーニング性を向上させる観点から、そのトナー母体粒子の表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子や滑材を外添剤として添加することが好ましい。
<トナー母体粒子の製造方法>
本発明のトナー母体粒子は、乳化凝集法で製造することができる。すなわち、酸基を有するビニル系樹脂微粒子の水系分散液とビニル系樹脂と結晶性ポリエステル樹脂からなる結晶性樹脂微粒子の水系分散液と着色剤微粒子の水系分散液とを混合し、それぞれの微粒子を凝集し、次いで融着させることによってドメインマトリクス構造を有するトナー母体粒子とすることができる。
(1)水系媒体中で、非晶性樹脂微粒子の分散液を調製する工程
すなわち、水系媒体中において、酸基を有するビニル系樹脂を含有する非晶性樹脂微粒子を重合により形成して、当該非晶性樹脂微粒子が分散された非晶性樹脂微粒子の水系分散液を調製する工程
(2)水系媒体中で、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントとが結合した結晶性樹脂微粒子の分散液を調製する工程
(3)水系媒体中で、着色剤微粒子の分散液を調製する工程
(4)前記非晶性樹脂微粒子の分散液と、前記結晶性樹脂微粒子の分散液と、前記着色剤微粒子の分散液とを混合し、当該非晶性樹脂微粒子と当該結晶性樹脂微粒子と当該着色剤微粒子とを凝集し、次いで融着する工程
を経てトナー母体粒子を形成することができる。
(5)熱エネルギーにより熟成させて、トナー母体粒子の形状を調整する熟成工程
を経てトナー母体粒子が形成される。
上述のトナー母体粒子を構成する酸基を有するビニル系樹脂を重合する工程において形成させる樹脂微粒子は、単一の構成であってもよいし、また、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成のものとすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した第1樹脂微粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する方法を採用することができる。また、必要に応じて、さらにビニル単量体を加えて、第3段重合を行い3層構成とすることもできる。
水系媒体中には、分散させた微粒子の凝集を防ぐために、分散安定剤が添加されていることが好ましい。
結晶性樹脂を微粒子分散液とする方法としては、機械的方法により粉砕し、界面活性剤を用いて水系媒体中で分散する方法、有機溶媒に溶解した結晶性樹脂溶液を水系媒体中に投入、分散し、水系媒体分散液とする方法、結晶性樹脂を溶融状態で水系媒体中と混合し、機械的分散方法により水系媒体分散液とする方法及び転相乳化法等が挙げられるが、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
着色剤微粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
このトナー母体粒子形成工程においては、酸基を有するビニル系樹脂微粒子、結晶性樹脂微粒子及び着色剤微粒子とともに、必要に応じて、ワックスなどのオフセット防止剤や荷電制御剤などのその他のトナー構成成分の微粒子を凝集させることもできる。
このトナー母体粒子形成工程において使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム及びリチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン及び銅などの二価の金属塩;鉄及びアルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム及び硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に係るトナー母体粒子をコアシェル構造とする場合は、シェル化工程においては、前述のトナー母体粒子の分散液中にシェル層の結着樹脂粒子分散液を添加してコア粒子となるトナー母体粒子の表面にシェル樹脂微粒子を凝集、融着させ、コア粒子の表面にシェル層を被覆させてコアシェル構造のトナー母体粒子を形成する。
上記のトナー母体粒子形成工程における加熱温度の制御によりある程度トナーにおけるトナー粒子の形状の均一化を図ることができるが、さらなる形状の均一化を図るために、熟成工程を経ることが好ましい。
洗浄工程及び乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。すなわち、上記熟成工程にて所望の平均円形度まで熟成した後、例えば遠心分離器などの公知の方法により、固液分離し洗浄を行い、減圧乾燥にて有機溶媒を除去し、さらにフラッシュジェットドライヤー及び流動層乾燥装置など公知の乾燥装置にて水分及び微量の有機溶媒を除去する。乾燥温度は、トナーが融着しない範囲であれば良い。
この外添剤添加工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に必要に応じて外添剤を添加、混合することにより、トナー粒子を調製する工程である。
本発明の「トナー」は、「トナー母体粒子」を含有する。「トナー母体粒子」は、そのままでも「トナー」として使用することができるが、通常この「トナー母体粒子」に、外添剤を添加したものを「トナー粒子」という。「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
本発明に係るトナー粒子の平均粒径は、例えば体積基準のメディアン径(D50)で3〜10μmであることが好ましい。この粒径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
本発明のトナーは、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、転写効率の向上の観点から、下記式(III)で示される円形度の算術平均値が0.850〜0.990であることが好ましい。
ここで、トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定される値である。
本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
本発明の静電潜像現像用現像剤は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの静電潜像担持体(「電子写真感光体」又は単に「感光体」ともいう。)とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置及び静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
<トナー用樹脂微粒子分散液の調製>
〔酸基を有するビニル系樹脂微粒子分散液(1)の調製〕
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、液温75℃とし、
・スチレン 584質量部
・アクリル酸n−ブチル 160質量部
・メタクリル酸 56質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下後、75℃にて2時間加熱、撹拌しながら重合を行うことにより、樹脂微粒子〔b1〕の分散液を調製した。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、80℃に加熱後、上記の樹脂微粒子〔b1〕42質量部(固形分換算)、マイクロクリスタリンワックス「HNP−0190」(日本精蝋社製)70質量部を、
・スチレン 239質量部
・アクリル酸n−ブチル 111質量部
・メタクリル酸 26質量部
・n−オクチルメルカプタン 3質量部
からなる単量体溶液に80℃にて溶解させた溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させることにより、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
上記の樹脂微粒子〔b2〕の分散液に、さらに、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、80℃の温度条件下に、
・スチレン 380質量部
・アクリル酸n−ブチル 132質量部
・メタクリル酸 39質量部
・n−オクチルメルカプタン 6質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却することにより、酸基を有するビニル系樹脂微粒子分散液(1)を得た。
酸基を有するビニル系樹脂微粒子分散液(1)の単量体の構成を表1のようにして、酸基を有するビニル系樹脂微粒子分散液(2)〜(6)を調製した。
イオン交換水1390質量部に、過硫酸カリウム8.5質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、スチレン292質量部、n−ブチルアクリレート86質量部、メタクリル酸42質量部、n−オクチルメルカプタン8.2質量部からなる単量体混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却することにより、シェル用ビニル系樹脂微粒子分散液(1)を得た。
ポリエステル重合セグメントの材料の多価カルボン酸化合物としてのセバシン酸(分子量202.25)259質量部と、多価アルコール化合物としての1,12−ドデカンジオール(分子量202.33)259質量部を窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応容器に入れ160℃に加熱し、溶解させた。あらかじめ混合したビニル系重合セグメントの材料となる、スチレン46質量部、アクリル酸n−ブチル12質量部、ジクミルパーオキサイド4質量部及び両反応性単量体としてアクリル酸3質量部の溶液を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。170℃に保持したまま1時間撹拌を続け、スチレン、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸を重合させた後、2−エチルヘキサン酸スズ(II)2.5質量部、没食子酸0.2質量部を加えて210℃に昇温し8時間反応を行った。さらに8.3kPaにて1時間反応を行い、結晶性樹脂1を得た。
結晶性樹脂1、30質量部を溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」((株)ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性樹脂1の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転することにより、体積基準のメディアン径が200nm、固形分量が30質量部の結晶性樹脂微粒子分散液1を調製した。
各単量体の構成を表2のようにして、結晶性樹脂2〜9を合成し、結晶性樹脂微粒子分散液1と同様にして結晶性樹脂微粒子分散液2〜9を調製した。
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子分散液〔Bk〕を調製した。
(トナー母体粒子〔1〕の作製)
(凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ビニル系樹脂微粒子分散液1の分散液300質量部(固形分換算)と、結晶性樹脂微粒子分散液1の分散液60質量部(固形分換算)と、イオン交換水1100質量部と、着色剤微粒子分散液〔Bk〕40質量部(固形分換算)とを仕込み、液温を30℃に調整した後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間保持した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま凝集し粒子成長反応を継続した。この状態で、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準のメディアン径が6μmになった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水160質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、熟成工程として液温度80℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより粒子間の融着を進行させ、これにより、トナー母体粒子1の分散液を調整した。
生成したトナー母体粒子をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40+M」(松本機械(株)製)で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」((株)セイシン企業製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥することにより、トナー母体粒子〔1〕を作製した。
トナー母体粒子〔1〕に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合することにより、トナー1を作製した。
トナー1の作製において、非晶性樹脂と結晶性樹脂を表3に示した構成にした他は同様にしてトナー2〜14及び16〜17を作製した。トナー15は、結晶性樹脂がトナーにうまく取り込めなかったためトナーを作製することができなかった。
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ビニル系樹脂微粒子分散液6の分散液270質量部(固形分換算)と、結晶性樹脂微粒子分散液1の分散液60質量部(固形分換算)と、イオン交換水1100質量部と、着色剤微粒子の分散液〔Bk〕40質量部(固形分換算)とを仕込み、液温を30℃に調整した後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間保持した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま凝集し粒子成長反応を継続した。この状態で、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準のメディアン径が5.5μmになった時点で、シェル材としてシェル用ビニル系樹脂微粒子分散液(1)を30質量部(固形分換算)添加した。
上記トナー1〜14及び16〜19について、体積平均粒径60μmのフェライトキャリアとトナー濃度が6質量%となるようにして混合し現像剤1〜14及び16〜19を作製し以下の評価に用いた。混合機は、V型混合機を用いて、30分間混合した。
上記のようにして作製した現像剤1〜14及び16〜19を用いて、トナー1〜14及び16〜19の評価を以下のようにして行った。
低温定着性の評価の指標として、以下のようにして低温オフセット性を評価した。
上記評価サンプルについて、折り目定着性を測定し、折り目の定着率が80%を超えた時点の温度を最低定着温度とする。最低定着温度は、140℃以下を合格とする。
定着率(%)={(折り曲げ後の画像濃度)/(折り曲げ前の画像濃度)}×100
なお、定着率が高いほど折り目定着性は良好、すなわちトナー画像の強度が高いといえる。
トナー耐熱保管性の指標として、トナー凝集率を評価した。
トナー凝集率(質量%)={残存トナー量(g)/0.5(g)}×100
なお、トナー凝集率が15質量%未満である場合が優良、15質量%以上20質量%以下である場合が良好として判断され、20質量%を超える場合は、実用上使用不可であり、不合格と判断される。
Claims (7)
- ドメインマトリクス構造を有するトナー母体粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、
当該マトリクスが、酸基を有するビニル系樹脂を含有する非晶性樹脂を含有し、
当該ドメインが、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントとが結合してなる結晶性樹脂を含有し、
当該結晶性樹脂の含有量が、3〜30質量%の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。 - 前記結晶性樹脂中のポリエステル重合セグメントが下記式(I)で表されるエステル基濃度Mが、3.5〜7.1(mmol/g)の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
式(I):
エステル基濃度M(mmol/g)
=[ポリエステル重合セグメント1モルを形成する多価カルボン酸及び多価アルコールに含まれるエステル基となりうる部分のモル数の平均(mol/mol)]×1000
/[(多価カルボン酸及び多価アルコールのモル質量の合計(g/mol))−(脱水重縮合して分離した水のモル質量(g/mol))×(ポリエステル重合セグメント1モルを形成するエステル基のモル数(mol/mol))] - 前記結晶性樹脂におけるビニル系重合セグメントの含有量が、5〜30質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記トナー母体粒子がワックスを含有し、前記結晶性樹脂とは異なるドメインを形成することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記酸基を有するビニル系樹脂及び前記結晶性樹脂中のビニル系重合セグメントが、下記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル単量体を重合して得られた樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
一般式(1): H2C=CH−COOR1
(一般式(1)中、R1は、炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。) - 前記トナー母体粒子が、コア粒子をシェル層で被覆したコアシェル構造を有するトナー母体粒子であって、当該コア粒子が、前記非晶性樹脂を含有するマトリクスと、前記結晶性樹脂を含有するドメインとを含有するドメインマトリクス構造を有するコア粒子であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 少なくとも、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程及び定着工程の各工程を経て画像を形成する電子写真画像形成方法であって、当該現像工程において、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナーを用いることを特徴とする電子写真画像形成方法。
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