(1−1 静電荷像現像用黒色トナー)
本発明は、カーボンブラックおよび結着樹脂を含むトナー母体粒子と、外添剤とを含む、乳化凝集法によって作製されてなる、静電荷像現像用黒色トナーであって、前記トナー母体粒子における前記カーボンブラックの含有量が、7〜15質量%であり、前記結着樹脂が、結晶性樹脂および非晶性樹脂を含み、前記結着樹脂における前記結晶性樹脂の含有量が、8〜33質量%であり、温度25℃相対湿度50%RHの環境下における誘電正接tanδが、周波数100Hzおよび100kHzでの測定において、以下の式を満たす、静電荷像現像用黒色トナーである。
本発明においては、トナー母体粒子中、カーボンブラックの含有量を7〜15質量%と比較的高充填にする。このように高充填にするが、本発明においては、カーボンブラックと結晶性樹脂および非晶性樹脂とを、結着樹脂においてバランスよく所定の割合で存在させることによって、カーボンブラックの凝集を抑制し、分散を維持させる。
特に、カーボンブラックは導電性があることから、カーボンブラックの凝集体は電気的リークポイントになりうるが、本発明の構成によれば、カーボンブラックの凝集を抑制することができ、帯電性の悪化を抑制し、現像や転写不良を抑制する。
なお、カーボンブラックの分散性と、帯電安定性と、誘電正接tanδとは相関があると考えられ、カーボンブラックの分散性を向上させることによって誘電正接tanδの値も低くなる。誘電正接tanδの値が低い方が、帯電安定性が高く、耐久性にも優れる。
本発明の構成によれば、カーボンブラックを高充填しても、帯電性を安定・保持することができ、同じ付着量でも高い濃度を出力することができ、さらに安定して出力を継続することができる。すなわち、必要な濃度を出力し、かつ、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現できる、静電荷像現像用黒色トナーを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。本明細書中、本発明の静電荷像現像用黒色トナーを、単に「本発明のトナー」または「トナー」とも称する場合がある。
以下、本発明のトナーの構成要素について説明する。
<<トナー母体粒子>>
トナー母体粒子とは、少なくとも着色剤(カーボンブラック)および結着樹脂を含む粒子であって、必要に応じて、その他の添加剤(内添剤)を含有する粒子である。トナー母体粒子に外添剤が添加されることによって、トナーが完成される。
<着色剤>
本発明においては、静電荷像現像用黒色トナーを製造するために、着色剤(黒色)を使用する。黒色の着色剤としては、着色性、色調の観点から、カーボンブラックを使用する。
カーボンブラックとしては、特に制限されないが、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが好適である。
ここで、トナー付着量削減によるCO2排出規制案(CPP)削減、低温定着化、ベタ部の画像濃度向上のために、トナー中の着色剤を増やす方法が検討される。特に、トナー中の着色剤含有量を増加させると、紙面上に同一質量のトナーで画像形成した場合と比較した場合、画像濃度を高くすることができる。ゆえに、コピー1枚あたりのトナーコスト、画像のレリーフ性(画像の凹凸)を低減すべく、トナーへの着色剤高充填が望まれる。
しかしながら、ただ闇雲に着色剤(カーボンブラック)の充填量を高くするとトナー中で着色剤粒子の凝集体が生成しやすくなることに本発明者らは着目した。凝集体が形成されることで、トナーの帯電性が悪化し画像不良の原因になるばかりでなく、画像中の着色剤(カーボンブラック)の存在が不均一になることから画像濃度が低下する。
これに対して、本発明の構成によれば、カーボンブラックと結晶性樹脂とを、結着樹脂中において所定の割合で存在させる。このことによって、トナー母体粒子中のカーボンブラックと結晶性樹脂、非晶性樹脂との間の表面張力が制御され、凝集せずに分散を維持することができ、誘電正接tanδを低くし、必要な濃度を出力し、かつ、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現できる。
本発明によれば、前記トナー母体粒子における前記カーボンブラックの含有量(固形分換算)が、7〜15質量%である。7質量%未満であると、画像中の着色剤(カーボンブラック)の存在が過少であり画像濃度が低下する。一方で、15質量%超であると、カーボンブラックの分散性を確保することができず、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現することができない。
<結着樹脂>
結着樹脂は、結晶性樹脂および非晶性樹脂を含む。
上記のように、カーボンブラックと親和性のよい結晶性樹脂を、結着樹脂中において所定の割合で存在させることによって、トナー母体粒子中のカーボンブラックが凝集せずに分散を維持し、誘電正接tanδを所定の範囲に収める。
前記結着樹脂における前記結晶性樹脂の含有量は、8〜33質量%である。8質量%未満であると、カーボンブラックの分散性が悪くなり、必要な濃度を出力し、かつ、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現できない。他方で、親和性のよい結晶性樹脂の含有量が多ければ多い程よいとも考えられるが、33質量%超であると、却って分散性を崩し、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現することは困難である。よって、前記結着樹脂における前記結晶性樹脂の含有量は、画像濃度、定着性の観点から、好ましくは8〜30質量%であり、より好ましくは8〜15質量%であり、さらに好ましくは8〜13質量%である。
[結晶性樹脂]
本発明において、結晶性樹脂とは、上記の示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定されるDSC曲線において、明確な吸熱ピークを有するものをいう。結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂などが挙げられるが、帯電性や低温定着性の観点から、特に、結晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。よって、本発明の好ましい形態によれば、前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂である。以下、結晶性ポリウレタン樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂について説明する。
〔結晶性ポリウレタン樹脂〕
結晶性ポリウレタン樹脂は、2価以上のイソシアネートと、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)との重縮合反応によって得られる公知のポリウレタン樹脂であって、結晶性を有する樹脂をいう。以下、2価以上のイソシアネートとして、ジイソシアネート成分につき説明する。
結晶性ポリウレタン樹脂を得るためのジイソシアネート成分としては、炭素数6〜20(ただしNCO基中の炭素は除く)の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート、およびこれらのジイソシアネートの変性物などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
結晶性ポリウレタン樹脂を得るためのジイソシアネート成分としては、上記のジイソシアネートと共に3価以上のポリイソシアネートを用いてもよい。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α、α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
ジイソシアネートの変性物としては、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレシイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基による変性物などが挙げられる。具体的には、ウレタン変性MDI、ウレタン変性TDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなどが挙げられ、これらは1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、炭素数6〜15の芳香族ジイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネートを用いることが好ましく、特に好ましくはTDI、MDI、HDI、水添MDI、IPDIである。
なお、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)については、以下で説明する。
〔結晶性ポリエステル樹脂〕
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂であって、結晶性を有する樹脂をいう。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は55℃以上90℃以下であることが好ましく、より好ましくは70℃以上85℃以下である。結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記範囲であることにより、十分な低温定着性が得られる。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000であると好ましく、10,000〜80,000であるとより好ましく、15,000〜50,000であると特に好ましい。数平均分子量(Mn)は、2,000〜20,000であると好ましく、3,000〜15,000であるとより好ましい。
多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、一種類のものに限定されるものではなく、二種類以上を混合して用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられる。
上記の脂肪族ジカルボン酸の中でも、上述のとおり本発明の効果が得られやすいことから、炭素数6〜14の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸と共に用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性および乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、および上記のカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1〜3のアルキルエステルなども用いうる。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、さらに好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジカルボン酸成分における脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を十分に確保することができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを含有させてもよい。脂肪族ジオールとしては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジオール成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上用いてもよい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ネオペンチルグリコール、などが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、さらに好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られると共に最終的に形成される画像に光沢性が得られる。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシル基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、2/1.0〜1.0/2.0であると好ましい。
また、本発明においては、結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、好ましくは4.0mgKOH/g以上、より好ましくは6.0mgKOH/g以上、さらに好ましくは、15mgKOH/g以上、また好ましくは33mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下である。つまり、本発明の好ましい形態では、前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価が、15〜30mgKOH/gである。かような範囲であると、非晶性樹脂と、結晶性樹脂と、カーボンブラックとの親和性が確保され、必要な濃度を出力し、かつ、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現できる。
なお、酸価は、ジオール成分やジカルボン酸成分の種類や組成比、重縮合反応の際に用いる触媒量や重合開始剤の調整、反応温度や時間等、反応条件によって制御することができる。なお、反応時間が長いほど、分子量が高くなる傾向があり、それによって酸価が低くなる傾向にある。酸価は、実施例に記載の方法で算出することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸および多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことによりを製造することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;およびアミン化合物等が挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられ、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではなく、目的物を得るために適宜調整可能であり、70〜250℃であることが好ましい。また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間とすると好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)
本発明においては、トナー母体粒子中、カーボンブラックの含有量を7〜15質量%と比較的高充填にする。本発明においては、かようなカーボンブラックと親和性のよい結晶性樹脂を、結着樹脂中において所定の割合で存在させることによって、トナー母体粒子中のカーボンブラックが凝集せずに分散を維持することができる。
特に、本発明においては、非晶性樹脂の構造を一部含有する結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)を使用することが好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、カーボンブラックの親和性が特に高く、隣接しても安定して存在できる。そのため、トナー(母体粒子)作製時に、各構成成分がドメイン、凝集体になりづらいと考えられる。つまり、本発明によれば、結晶性ポリエステル樹脂が、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
本発明の好ましい形態においては、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂ユニット(結晶性ポリエステル樹脂セグメントとも称する)と、非晶性樹脂ユニット(非晶性樹脂セグメントとも称する)とが化学的に結合した樹脂である。よって、本発明の好ましい形態によれば、前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと、非晶性樹脂ユニットとが化学的に結合している構造を有する。かような形態とすることにより、トナー内で非晶性樹脂(メインバインダー)との親和性が向上し、結晶性ポリエステル樹脂の偏在化が抑制される。また、結晶性が制御できることにより、環境安定性が向上する技術的効果を有すると推測される。なお、本明細書中、「結晶性ポリエステル樹脂ユニット」と、「結晶性ポリエステル樹脂セグメント」とは同義である。また、「非晶性樹脂ユニット」と、「非晶性樹脂セグメント」とは同義である。
化学的に結合している構造についても特に制限はないが、結晶性ポリエステル樹脂ユニットが、非晶性樹脂ユニットを主鎖として、グラフト化されていると好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖として前記非晶性樹脂ユニットを有し、側鎖として前記結晶性ポリエステル樹脂ユニットを有するグラフト共重合体であると好ましい。よって、本発明の好ましい形態によれば、前記結晶性樹脂が、主鎖として前記非晶性樹脂ユニットを有し、側鎖として前記結晶性ポリエステル樹脂ユニットを有するグラフト共重合体である。かような形態とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向をより高めることができ、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の結晶性をより向上させることができ、また、カーボンブラックの分散性を向上させるという観点でも好ましい。
より具体的には、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂としては、スチレンアクリル樹脂ユニットの主鎖に結晶性ポリエステル樹脂ユニットの側鎖が結合したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
〈結晶性ポリエステル樹脂ユニット〉
結晶性ポリエステル樹脂ユニットとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000〜100000であると好ましく、7000〜50000であるとより好ましく、8000〜40000であると特に好ましい。数平均分子量(Mn)は、100〜50000であると好ましく、1000〜10000であるとより好ましい。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の融点は、55℃以上90℃以下であることが好ましく、より好ましくは65℃以上85℃以下である。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットは、上記した結晶性ポリエステル樹脂と同様であり、同様の多価カルボン酸と、多価アルコールとの重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分である。結晶性ポリエステル樹脂ユニットを構成する多価カルボン酸成分および多価アルコール成分については、上記の結晶性ポリエステル樹脂と同様であるため、説明を省略する。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の全量に対して80質量%以上98質量%未満であると好ましい。さらに、上記含有量は、90質量%以上95質量%未満であるとより好ましく、91質量%以上93質量%未満であるとさらに好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中の各ユニットの構成成分および含有割合は、たとえばNMR測定、メチル化反応P−GC/MS測定により特定することができる。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットの他に、非晶性樹脂ユニットを含む。グラフト共重合体とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向を制御しやすくなり、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
〈非晶性樹脂ユニット〉
非晶性樹脂ユニットとは、非晶性樹脂に由来する部分を指す。すなわち、非晶性樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。非晶性樹脂ユニットは、本発明における結着樹脂に含まれる非晶性樹脂と、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂との親和性に寄与し得る。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が非晶性樹脂ユニットを含有することは、たとえばNMR測定、メチル化反応P−GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
また、非晶性樹脂ユニットは、当該ユニットと同じ化学構造および分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂ユニットである。
非晶性樹脂ユニットの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中5〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%がより好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
非晶性樹脂ユニットは、本発明における結着樹脂に含まれる非晶性樹脂と同種の樹脂で構成されると好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂とマトリックスとなる結着樹脂との親和性がより向上する。
ここで、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合が共通に含まれていることを意味する。ここで、「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニルおよびその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を指す。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体中を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
例えば、スチレン、ブチルアクリレートおよびアクリル酸によって形成される樹脂(または樹脂ユニット)と、スチレン、ブチルアクリレートおよびメタクリル酸によって形成される樹脂(または樹脂ユニット)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。
非晶性樹脂ユニットを構成する樹脂成分は特に制限されないが、例えば、ビニル樹脂ユニット、ウレタン樹脂ユニット、ウレア樹脂ユニットなどが挙げられる。なかでも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル樹脂ユニットが好ましい。
ビニル樹脂ユニットとしては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂ユニット、スチレンアクリル酸エステル樹脂ユニット、エチレン−酢酸ビニル樹脂ユニットなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂ユニットのなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレンアクリル酸エステル樹脂ユニット(スチレンアクリル樹脂ユニット)が好ましい。したがって、以下では、非晶性樹脂ユニットとしてのスチレンアクリル樹脂ユニットについて説明する。
スチレンアクリル樹脂ユニットは、少なくとも、スチレン単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
以下に、スチレンアクリル樹脂ユニットの形成が可能なスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるスチレンアクリル樹脂ユニットの形成に使用可能なものは以下に限定されない。
先ず、スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらのうち、長鎖アクリル酸エステルモノマーを使用することが好ましい。具体的には、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」とを総称したもので、たとえば、「(メタ)アクリル酸メチル」は「アクリル酸メチル」と「メタクリル酸メチル」とを総称したものである。
これらのアクリル酸エステル単量体またはメタクリル酸エステル単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。すなわち、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、あるいは、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
非晶性樹脂ユニット中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂ユニットの全量に対し、40〜90質量%であると好ましい。また、非晶性樹脂ユニット中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂ユニットの全量に対し、10〜60質量%であると好ましい。
さらに、非晶性樹脂ユニットは、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットに化学的に結合するための化合物が付加重合されてなると好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットに含まれる、多価アルコール由来のヒドロキシル基[−OH]または多価カルボン酸由来のカルボキシル基[−COOH]とエステル結合する化合物を用いると好ましい。したがって、非晶性樹脂ユニットは、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシル基[−COOH]またはヒドロキシル基[−OH]を有する化合物をさらに重合してなると好ましい。
かような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。
非晶性樹脂ユニット中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂ユニットの全量に対し、0.5〜20質量%であると好ましい。
スチレンアクリル樹脂ユニットの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素等が挙げられる。
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明に係る結着樹脂に含まれるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットと、非晶性樹脂ユニットとを分子結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
(a)非晶性樹脂ユニットを予め重合しておき、当該非晶性樹脂ユニットの存在下で結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する重合反応を行ってハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法
この方法では、先ず、上述した非晶性樹脂ユニットを構成する単量体(好ましくは、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体といったビニル単量体)を付加反応させて非晶性樹脂ユニットを形成する。次に、非晶性樹脂ユニットの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールとを重合反応させて結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する。このとき、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させると共に、非晶性樹脂ユニットに対し、多価カルボン酸または多価アルコールを付加反応させることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が形成される。
上記方法において、結晶性ポリエステル樹脂ユニットまたは非晶性樹脂ユニット中に、これらユニットが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。具体的には、非晶性樹脂ユニットの形成時、非晶性樹脂ユニットを構成する単量体の他に、結晶性ポリエステル樹脂ユニットに残存するカルボキシ基[−COOH]またはヒドロキシル基[−OH]と反応可能な部位および非晶性樹脂ユニットと反応可能な部位を有する化合物も使用する。すなわち、この化合物が結晶性ポリエステル樹脂ユニット中のカルボキシ基[−COOH]またはヒドロキシル基[−OH]と反応することにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットは非晶性樹脂ユニットと化学的に結合することができる。
もしくは、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの形成時、多価アルコールまたは多価カルボン酸と反応可能であり、かつ、非晶性樹脂ユニットと反応可能な部位を有する化合物を使用してもよい。
上記の方法を用いることにより、非晶性樹脂ユニットに結晶性ポリエステル樹脂ユニットが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
(a)の方法は非晶性樹脂鎖に結晶性ポリエステル樹脂鎖をグラフト化した構造のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成し易いことや生産工程を簡素化できるため好ましい。また、(a)の方法は、非晶性樹脂ユニットを予め形成してから結晶性ポリエステル樹脂ユニットを結合させるため、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向が均一になりやすい。したがって、本発明で規定するトナーに適したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を確実に形成することができるので好ましい。
その他、(b)結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法であってもよいし、(c)結晶性ポリエステル樹脂ユニットを予め形成しておき、当該結晶性ポリエステル樹脂ユニットの存在下で非晶性樹脂ユニットを形成する重合反応を行ってハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法であってもよい。
上記の方法を用いることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットに非晶性樹脂ユニットが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
[非晶性樹脂]
非晶性樹脂は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の非晶性樹脂ユニットと同種の樹脂または非晶性ポリエステル樹脂で構成されると好ましい。ここで、「同種の樹脂で構成される」とは、同種の樹脂のみからなる形態であってもよいし、または、同種の樹脂のみならず、他の非晶性樹脂を含む形態であってもよい。ただし、同種の樹脂と他の非晶性樹脂とを含む形態の場合、当該同種の樹脂の含有量は、非晶性樹脂全量に対して15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であるとより好ましい。
非晶性樹脂としては、中でも、ビニル樹脂またはスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂であると好ましく、ビニル樹脂であると特に好ましい。よって、本発明の好ましい形態によれば、前記非晶性樹脂が、ビニル樹脂である。ビニル樹脂およびスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂は、特にハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の非晶性樹脂ユニットがビニル樹脂ユニットである場合において、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂との相溶性を制御しやすい。
非晶性樹脂または非晶性ポリエステル樹脂は、その可塑性を制御しやすいという観点から、重量平均分子量(Mw)が、5000〜150000であると好ましく、10000〜90000であるとより好ましい。
また、非晶性樹脂または非晶性ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が、3,000〜30,000であると好ましく、5,000〜25,000であるとより好ましい。非晶性樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が25〜70℃であることが好ましく、35〜65℃であることが好ましい。また、軟化点温度は75〜130℃であることが好ましく、85〜115℃であることがより好ましい。
〔ビニル樹脂〕
ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレンアクリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のビニル樹脂のなかでも、乳化凝集法における製造性(つまり、均一な凝集性を持つラテックスが作られることで、粒度分布のシャープなトナーが得られる)や、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレンアクリル共重合体が好ましい。このように、本発明の非晶性樹脂がスチレンアクリル共重合体である場合で、結着樹脂中における結晶性樹脂(特には、結晶性ポリエステル樹脂)の含有量、カーボンブラックのトナー中の含有量をある範囲の比率にすることで、カーボンブラックの分散性を向上させることができ、カーボンブラックが高充填されたトナーであっても優れた帯電性、転写性を確保することができる。
(スチレンアクリル共重合体)
本発明でいうスチレンアクリル共重合体とは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを用いて、重合を行うことにより形成されるものである。ここで、スチレン単量体とは、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれるものである。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有するものである。具体的には、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH2=C(CH3)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体等のビニル系エステル化合物が含まれる。
以下に、スチレンアクリル共重合体を形成することが可能なスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、以下に示すものに限定されるものではない。
スチレン単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、以下に示すアクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体が代表的なもので、アクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレートフェニル等が挙げられる。メタクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
これらのスチレン単量体、アクリル酸エステル単量体、またはメタクリル酸エステル単量体は、1種類単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
また、スチレンアクリル共重合体には、上述したスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体のみで形成された共重合体の他に、これらスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体に加えて、一般のビニル単量体を併用して形成されるものもある。以下に、本発明でいうスチレンアクリル共重合体を形成する際に併用可能なビニル単量体を例示するが、併用可能なビニル単量体は以下に示すものに限定されるものではない。
(1)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(2)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(3)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(4)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(5)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
(6)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等。
また、多官能性ビニル単量体を使用して、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。さらに、側鎖にイオン性解離基を有するビニル単量体を使用することも可能である。イオン性解離基の具体例としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。以下に、これらイオン性解離基を有するビニル単量体の具体例を示す。
カルボキシ基を有するビニル単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。
スチレンアクリル共重合体の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤または水溶性の重合開始剤の具体的な例は、上記で説明した内容と同様であるので、ここでは説明を省略する。必要に応じて例えばn−オクチル−3−メルカプトプロピオネートなどの公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
本発明に使用されるスチレンアクリル共重合体を形成する場合、スチレン単量体およびアクリル酸エステル単量体の含有量は特に限定されるものではなく、結着樹脂の軟化点温度やガラス転移温度を調整する観点から適宜調整することが可能である。具体的には、スチレン単量体の含有量は、単量体全体に対し40〜95質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましい。また、アクリル酸エステル単量体の含有量は、単量体全体に対し5〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
スチレンアクリル共重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)で2,000〜1,000,000が好ましい。また、数平均分子量(Mn)は1,000〜100,000が好ましい。また、分子量分布(Mw/Mn)は1.5〜100が好ましく、1.8〜70がより好ましい。スチレンアクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲にすることにより、作製したトナーを用いてプリント作製を行ったときに定着工程でオフセット現象の発生の抑止に効果がある。また、スチレンアクリル共重合体のガラス転移温度は30〜70℃が好ましく、また、軟化点温度は80〜170℃が好ましい。ガラス転移温度および軟化点温度が上記の範囲であることによって、良好な定着性が得られる。
また、本発明の好ましい形態において、非晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸モノマー(誘導体)および多価アルコールモノマー(誘導体)を原料として重縮合反応によって得られたものであって、明瞭な融点を有さないものをいう。
多価カルボン酸モノマー誘導体としては、多価カルボン酸モノマーのアルキルエステル、酸無水物および酸塩化物を用いることができ、多価アルコールモノマー誘導体としては、多価アルコールモノマーのエステル化合物およびヒドロキシカルボン酸を用いることができる。
多価カルボン酸モノマーとしては、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸、メサコン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの2価以上のカルボン酸などを挙げることができる。
多価アルコールモノマーとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
非晶性ポリエステル樹脂を合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。
なお、トナーを構成する結着樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は分子量測定方法により算出することができる。以下に、分子量測定方法の代表例の1つであるテトラヒドロフラン(THF)をカラム溶媒として用いるゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)による分子量測定手順を説明する。
具体的には、測定試料を1mgに対してTHF(脱気処理したものを使用)を1ml添加し、室温下にてマグネチックスターラを用いて攪拌処理して充分に溶解させる。次に、ポアサイズ0.45μm〜0.50μmのメンブランフィルタで処理した後、GPC装置に注入する。
GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。たとえば、昭和電工株式会社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組み合せや、東ソー株式会社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、GMHXL、TSK guard columnの組み合せ等がある。
検出器としては、屈折率検出器(RI検出器)、あるいはUV検出器が好ましく用いられる。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いることが好ましい。
分子量測定は、例えば、下記の測定条件の下で行うことができる。
(測定条件)
装置:HLC−8020(東ソー株式会社製)
カラム:GMHXL×2、G2000HXL×1
検出器:RIおよびUVの少なくとも一方
溶出液流速:1.0ml/分
試料濃度:0.01g/20ml
試料量:100μl
検量線:標準ポリスチレンにて作製。
なお、本発明のトナーは、単層構造であってもよいしコアシェル構造であってもよい。コアシェル構造の製造方法も従来公知の知見が適宜適用される。
本発明の好ましい形態において、トナー母体粒子中における結晶性樹脂の含有量は、低温定着性とトナーの粉体特性の観点から、2〜45質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、7〜30質量%であることがさらに好ましい。また、本発明の好ましい形態において、トナー母体粒子中における非晶性樹脂の含有量は、帯電性と定着性との観点から、40〜90質量%であることが好ましく、48〜82質量%であることがより好ましく、53〜80質量%であることがさらに好ましい。
<その他の添加剤(内添剤)>
[離型剤]
本発明のトナー母体粒子は、その内部に離型剤(ワックス)を含有することが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態によれば、離型剤をさらに含む、静電荷像現像用黒色トナーであることが好ましい。離型剤(オフセット防止剤)としては、炭化水素系ワックス類、エステル系ワックス類、天然物系ワックス類、アミド系ワックス類等が挙げられる。本発明のトナーでは、離型剤が、エステル系ワックスまたは炭化水素系ワックスを含有することが好ましい。これらの離型剤は本発明のトナーに好適であり、これらを使用することにより、トナーの定着分離性を向上させ得る。
炭化水素系ワックス類としては、低分子量のポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスの他、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。
エステル系ワックス類としては、ベヘン酸ベヘニル、エチレングリコールステアリン酸エステル、エチレングリコールベヘン酸エステル、ネオペンチルグリコールステアリン酸エステル、ネオペンチルグリコールベヘン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールステアリン酸エステル、1,6−ヘキサンジオールベヘン酸エステル、グリセリンステアリン酸エステル、グリセリンベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル、クエン酸ステアリル、クエン酸ベヘニル、リング酸ステアリル、リング酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコール類とのエステル等を挙げることができる。中でも、帯電性や定着性の観点から、ベヘン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル、脂肪酸ポリグリセリンエステル、グリセリンベヘン酸エステル、ベヘン酸ステアリルなどが好ましい。これら離型剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
離型剤の融点は、好ましくは40〜160℃であり、より好ましくは60〜100℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセット等を起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー母体粒子中の離型剤の含有量は、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
なお、トナー母体粒子への離型剤の含有のさせ方にも特に制限はなく、離型剤粒子分散溶液を別途作製し、その他のトナー母体粒子の構成成分の分散液と混合することによって含有させてもよいし、結着樹脂の原料成分を重合する際に、一緒に含有させてもよい。前者の方法であると、定着性向上への技術的効果があり、後者であると帯電性向上への技術的効果がある。
[荷電制御剤]
本発明のトナー母体粒子は、荷電制御剤を含有してもよい。
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩など、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の添加量は、最終的に得られるトナー粒子中における結着樹脂100質量%に対して通常0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%となる量とされる。
荷電制御剤粒子の大きさとしては、数平均一次粒子径で10〜1000nm、50〜500nmが好ましく、さらには80〜300nmが特に好ましい。
その他の添加剤としては、他に、ローダミン系染料、トリフェニルメタン系染料、アルキルアミンなどが挙げられる。
<トナー母体粒子の粒径>
本発明のトナー母体粒子の粒径は、メジアン径(D50)で3〜8μmであることが好ましい。この粒径は、後述する製造方法において、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、または融着時間、さらには重合体自体の組成によって制御することができる。体積基準のメジアン径(D50)が3〜8μmであることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できると共に、トナーの消費量を、大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。なお、体積基準のメジアン径(D50)は、例えば、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)により測定できる。
<トナー母体粒子の平均円形度>
本発明のトナー母体粒子は、乳化凝集法によって作製される。よって、作製されるトナー母体粒子(トナー)の形状は、真球に近くなる。本発明のトナー母体粒子の下記数式1で示される平均円形度(単に、円形度とも称する)は、通常、0.91以上である。よって、本発明の好ましい形態によれば、円形度が、0.91以上である。転写効率の向上や帯電安定性の観点から、0.920〜0.995であることが好ましく、より好ましくは0.930〜0.975である。
なお、平均円形度は、例えば、平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(シスメックス株式会社製)を用いて測定することができる。
上記のように、トナーは、上述のトナー母体粒子に、外添剤を添加することによりなる。
<<外添剤>>
外添剤としては特に制限されないが、数平均一次粒径が2〜800nm程度、数平均二次粒径が10〜1000nm程度の無機微粒子が好ましい。外添剤の種類は特に限定されるものではなく、例えば、以下に例示する公知の無機微粒子、および、滑剤等が挙げられる。これら外添剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することが可能で、例えば、シリカ、チタニア(二酸化チタン)、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子、ハイドロタルサイト等が好ましい。また、必要に応じてこれらの無機微粒子を疎水化処理したものも使用することができる。
シリカ微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル株式会社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
チタニア微粒子としては、例えば、日本アエロジル株式会社製の市販品T−805、T−604、テイカ株式会社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン工業株式会社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産株式会社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル株式会社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業株式会社製の市販品TTO−55等がある。
また、クリーニング性や転写性をさらに向上させるために滑剤を使用することも可能である。例えば、以下の様な高級脂肪酸の金属塩がある。すなわち、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩が挙げられる。
外添剤の添加量(二種以上使用する場合は、その合計量)は、トナー母体粒子に対して0.1〜10.0質量%添加させることが好ましい。
<<トナーの誘電正接tanδ>>
本発明の静電荷像現像用黒色トナーは、温度25℃相対湿度50%RHの環境下における誘電正接tanδが、周波数100Hzおよび100kHzでの測定において、以下の式を満たす。なお、周波数100Hzは、1頁目のプリントの外的環境を想定しており、100kHzは、500頁目のプリントの外的環境を想定している。誘電正接tanδの測定方法は、実施例に記載の方法による。
本発明においては、カーボンブラックの分散性を向上させることによって誘電正接tanδの値も低くなると考えられる。本発明のトナーは誘電正接tanδが上記所望の範囲に制御されている。よって、式(1)を満たすことにより、カーボンブラックを高充填しても、帯電性を安定・保持することができ、同じ付着量でも高い濃度を出力することができ、さらに式(2)を満たすことによって安定して出力を継続することができる。
本発明の好ましい形態によれば、前記誘電正接tanδが、以下の式を満たす。かような式を満たすことによって、効率的に、必要な濃度を出力し、かつ、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現できる。
また、本発明の好ましい形態においては、(tanδ100kHz)/(tanδ100Hz)は、環境安定性(依存性が低い)や耐久性の観点から、1.10〜1.96であることが好ましく、1.12〜1.60であることがより好ましく、1.18〜1.50であることがさらに好ましい。
<<トナーの構成成分のバランス>>
本発明においては、上述もしたが、分散性を確保するために、トナーの構成成分の親和性を制御することが重要であり、カーボンブラックの含有量を一定の範囲に制御すること、および、結着樹脂中における結晶性樹脂の含有量を一定の範囲に制御することが特徴である。ただし、分散性を向上させるという観点から、(i)結晶性樹脂と、カーボンブラックとの比(固形分換算の質量比)、ならびに、(ii)結晶性樹脂およびカーボンブラックの総和と、非晶性樹脂との比(固形分換算の質量比)が一定の範囲内であることが好ましい。(i)結晶性樹脂:カーボンブラック(結晶性樹脂/カーボンブラック)は、好ましくは0.49〜5.00であり、より好ましくは0.7〜3.7である。この範囲外では、カーボンブラックの分散性が低下し、トナーの静電的特性が悪化する虞がある。またカーボンブラックの含有量が少ない場合であったとしても、トナーの製造における凝集工程で、凝集性が充分に制御できないことから分散性が悪化し、画像濃度が著しく低下する虞がある。
また、(ii)(結晶性樹脂+カーボンブラック):非晶性樹脂((結晶性樹脂+カーボンブラック)/非晶性樹脂)の範囲は、好ましくは0.16〜1.09、より好ましくは0.2〜0.7である。この範囲外では、トナー中のカーボンブラックの分散性が悪化し、トナーの帯電性、定着性、画像濃度の全てを満たすことができない虞がある。
よって、本発明の特に好ましい形態においては、トナー母体粒子における前記カーボンブラックの含有量が、7〜15質量%とし、結着樹脂における前記結晶性樹脂の含有量が、8〜33質量を満たすことを前提とし、さらに、この(i)「結晶性樹脂:カーボンブラック」および(ii)「(結晶性樹脂+カーボンブラック):非晶性樹脂」を所定の範囲に収めることが非常に重要である。
(1−2 静電荷像現像用黒色トナーの製造方法)
次に、本発明のトナーの製造方法について説明する。本発明のトナー母体粒子の製造方法は、乳化凝集法である。乳化凝集法を採用することによって、トナー母体粒子の小粒径化が図れ、微粉成分の発生を抑制できることで粒度分布がシャープなトナー粒子を得られる利点がある。また、製造時の所要エネルギーが少ないという利点もある。
乳化凝集法によるトナー製造では、粒子表面性すなわち凝集安定性の異なる複数種の微粒子(着色剤、結着樹脂、離型剤等)を用いて粒径成長させる。
トナー母体粒子内のカーボンブラックの分散状態を制御するためには粒径成長の反応場における微粒子の存在比によって調整することが可能とも考えられる。つまり、成長反応の条件、例えば凝集剤、撹拌数、反応温度、界面活性剤、pH等で制御することもできるとも考えられる。しかしながら、製造性が低下したり、粒度分布が悪化したりするなどの可能性がある。これに対し本発明の構成によれば、カーボンブラックの含有量を所定の量とし、また、結着樹脂中における前記結晶性樹脂の含有量も所定の量としているので、カーボンブラックを高充填しても、帯電性を安定・保持することができ、同じ付着量でも高い濃度を出力することができ、さらに安定して出力を継続することができる。
乳化凝集法は、乳化重合などによって製造された結着樹脂を含む結着樹脂微粒子の分散液(結晶性樹脂分散液および非晶性樹脂分散液)と、カーボンブラック微粒子などのトナー母体粒子を構成する成分の分散液とを、水系の環境下にて混合し、凝集剤の添加によってこれらを凝集させ、必要に応じて凝集停止剤を添加して粒径制御を行い、さらに結着樹脂微粒子間の融着によって形状制御を行ない、トナー母体粒子を製造する方法である。結晶性樹脂分散液としては、ハイブリッド結晶性ポリエステルの分散液であることが好ましく、その製造方法は上述の通りである。
乳化凝集法では、上記のように、まず従来公知の乳化重合などにより結着樹脂の樹脂微粒子を形成し、この樹脂微粒子を凝集、融着させてトナー母体粒子を形成する。より具体的には、結着樹脂を構成する単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることにより、結着樹脂微粒子の分散液を作製する。この際、必要に応じ、結着樹脂(結晶性樹脂または非晶性樹脂)には離型剤を予め含有させておいてもよい。また、分散のために、適宜公知の界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤)の存在下で重合させることも好ましい。
結着樹脂微粒子の粒径(体積基準のメジアン径)は、100〜300nmであることが好ましい。なお、単量体の重合は、複数段階に分けて行うことで、例えば、非晶性樹脂を、組成の異なる樹脂(あるいは組成の同じ樹脂)よりなる2層以上の構成とする複数層の形態とすることも好ましい。このように複数層の形態にすることによって、乳化凝集法でトナーを製造する際に、粒度分布がよりシャープなトナーを得ることができる。
また、別途、水系媒体中にカーボンブラック微粒子を分散させ、カーボンブラック微粒子分散液を作製する。分散液中の着色剤微粒子の粒径(体積基準のメジアン径)は、80〜200nmが好ましい。
次いで、水系媒体中で前述の結着樹脂微粒子と、着色剤微粒子とを凝集させ、これら粒子を融着させてトナー母体粒子を作製する。すなわち、上記の樹脂微粒子分散液と、着色剤微粒子分散液とを混合した水系媒体中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類(第2属)金属塩の等を凝集剤として添加した後、樹脂微粒子のガラス転移温度以上の温度で加熱して凝集を進行させ、樹脂微粒子同士を融着させる。そして、トナー母体粒子の大きさが目標の大きさになった時に、塩を添加して凝集を停止させる。その後、反応系を加熱処理することにより、トナー母体粒子の形状を所望の形状にするまで熟成を行い、トナー母体粒子を完成させる。
さらに、凝集用分散液がガラス転移温度以上の温度に到達した後、分散液の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させる。これにより、トナー母体粒子の成長(結着樹脂微粒子および着色剤微粒子の凝集)と、融着(粒子間の界面の消失)とを効果的に進行させることができる。
凝集剤の使用量は、結着樹脂微粒子および着色剤微粒子の固形分全量に対して、5〜20質量%が適当である。なお、本発明の実施例では、8〜10質量%であった。その後、1〜6分放置し、30〜90分かけて70〜95℃まで昇温し(なお、本発明の実施例では、85〜95℃であった)、凝集した樹脂微粒子および着色剤微粒子を融着させることができる。このとき、融着したトナー母体粒子の体積基準のメジアン径を測定し4.5〜10μmになったときに塩化ナトリウム水溶液等を添加して粒子の成長を停止させる。
さらに、熟成処理として液温を90〜100℃にして、0.5〜6時間、加熱撹拌を行い、平均円形度を通常、0.91以上好ましくは0.920〜0.995になるまで粒子の融着を進行させるとよい。
メジアン径は、例えば、ベックマン・コールター社製コールターマルチサイザー3によって測定できる。平均円形度は、後述する実施例で使用した方法により測定できる。なお、熟成工程では熱および撹拌によるせん断をトナー粒子に加えることにより、凝集粒子中の樹脂微粒子同志を融着させるとともに粒子の円形度および表面性を制御することができる。
<水系溶媒>
本発明において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
<凝集剤>
凝集粒子形成工程において使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、電荷中和反応と架橋作用を使い粒子を成長させるものとして金属塩から選択されるものが好適である。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、酢酸亜鉛などを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<凝集停止剤>
凝集粒子の成長を停止させる凝集停止剤としては凝集作用を緩和させる塩が用いられる。例えば塩化ナトリウム、多価有機酸またはその塩が、アミノ酸、ポリホスホン酸またはこれらの塩を使用することができる。また系内のpHを変化させることによって凝集作用を緩和させる方法も用いることができる。pHを調整するためにはフマル酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、塩酸などを用いることができる。さらにはpHを調整するとともにキレート剤を併用し金属イオンによる架橋作用を緩和させることも有効である。キレート剤としてはHIDA(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)、HEDP(ヒドロキシエチリデンジホスホン酸)、HIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)が挙げられる。
なお、重合開始剤、連鎖移動剤の説明は、上述したものが同様に妥当できる。
以上より、静電荷像現像用黒色トナーの製造方法の一形態によれば、以下の工程を含む。
(1)水系媒体中に着色剤(カーボンブラック)微粒子が分散されてなる分散液を調製する着色剤微粒子分散液調製工程、
(2)水系媒体中に、必要に応じて離型剤、荷電制御剤などの内添剤を含有した、結着樹脂微粒子(結晶性樹脂微粒子、非晶性樹脂微粒子)が分散されてなる分散液を調製する、結着樹脂微粒子分散液調製工程、
(3)結着樹脂微粒子および着色剤微粒子、ならびに必要に応じてその他のトナー構成成分の微粒子を、水系媒体中において、凝集、融着させて凝集粒子を成長させる凝集、融着工程、
(4)水系媒体中に特定の凝集停止剤を添加して凝集を停止させて凝集粒子の成長を停止させる凝集停止剤添加工程、
(5)凝集粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御し、トナー母体粒子を得る熟成工程、
を含む。
また、静電荷像現像用黒色トナーの製造方法の一形態によれば、さらに以下の工程を含む。
(6)水系媒体からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から凝集剤、凝集停止剤、界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程、
(7)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程、
を含む。
続いて、
(8)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
を経て、静電荷像現像用黒色トナーを作製することができる。
(2.現像剤)
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
キャリアとしては、その体積平均粒径としては15〜100μmのものが好ましく、25〜60μmのものがより好ましい。
キャリアとしては、さらに樹脂により被覆されているもの、または樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、シクロヘキシルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、シリコーン樹脂、エステル樹脂あるいはフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂など使用することができる。
以下、本発明の代表的な実施形態を示し、本発明につきさらに説明するが、無論、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
<実施例1>
〔離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子〔M1〕の分散液〔MD1〕の調製〕
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8gをイオン交換水3Lに溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた後、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃とし、
スチレン 480g
n−ブチルアクリレート 250g
メタクリル酸 68g
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下後、80℃で2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子〔a1〕が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔A1〕を調製した。
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム6gをイオン交換水1850mlに溶解させた溶液を仕込み、80℃に加熱後、上記の樹脂微粒子分散液〔A1〕260gを加えた。
さらに
スチレン 175g
n−ブチルアクリレート 80g
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 3.8g
離型剤:ベヘン酸ベヘニル(融点73℃) 86.5g
を80℃で溶解、混合させた単量体溶液を、循環経路を有する機械式分散機「CREARMIX」(エム・テクニック社製)により15分混合分散させて、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
次いで、反応容器に、過硫酸カリウム5gをイオン交換水100mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃で1時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子〔a2〕が分散されてなる樹脂微粒子分散液〔A2〕を調製した。
(第3段重合)
上記の樹脂微粒子分散液〔A2〕に、過硫酸カリウム5gをイオン交換水100mlに溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、
スチレン 340g
n−ブチルアクリレート 120g
メタクリル酸 32g
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8g
からなる単量体混合液を90分かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、これにより、ビニル単量体を主成分とし、離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子〔M1〕の分散液〔MD1〕を調製した。
この分散液〔MD1〕について、非晶性樹脂微粒子〔M1〕の体積基準のメジアン径を測定したところ、230nmであった。また、当該非晶性樹脂微粒子〔M1〕を構成する樹脂(md1)の分子量を測定したところ、重量平均分子量が83,000であった。
〔ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液[C1]の調製〕
ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の合成
下記の付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマーおよびラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 35質量部
n−ブチルアクリレート 9質量部
アクリル酸 4質量部
重合開始剤(ジーt−ブチルパーオキサイド) 7質量部
さらに、下記の重縮合系の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
ドデカン二酸 318質量部
1,6−ヘキサンジオール 196質量部
次いで、撹拌下で付加重合系樹脂の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。次に200℃まで冷却した後、減圧下(20KPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c1)を得た。
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c1)30質量部を溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c1)の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した。濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換器で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が200nm、固形分量が30質量部のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液[C1](結晶性樹脂微粒子分散液[C1])を調製した。
〔着色剤微粒子分散液〔Bk〕の調製〕
ドデシル硫酸ナトリウム90gをイオン交換水1600gに撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック(ファーネスブラック)「リーガル330R」(キャボット社製)420gを徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子〔Bk〕が分散されてなる着色剤微粒子分散液〔Bk〕を調製した。着色剤微粒子分散液〔Bk〕における着色剤微粒子〔Bk〕の体積基準のメジアン径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、120nmであった。
〔トナーの製造例1〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けたフラスコに、
・イオン交換水400質量部と、
・離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子〔M1〕の分散液〔MD1〕492質量部(固形分換算)と、
・着色剤微粒子分散液〔Bk〕435質量部と、
を仕込み、液温を25℃に調製した後、濃度25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.5に調製した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物50質量部をイオン交換水50質量部に溶解させた水溶液を添加し、その後、
・結晶性樹脂微粒子分散液[C1]54質量部(固形分換算)で添加した。
さらに系の温度を93℃にまで昇温することによって各樹脂微粒子と着色剤微粒子との凝集反応を開始した。なお、本発明では、分散液〔MD1〕と、カーボンブラック分散液と、結晶性樹脂微粒子分散液[C1]と、塩化マグネシウムと、の添加順番は特には制限されない。以下、同様である。
この凝集反応の開始後、定期的にサンプリングを行い、粒度分布測定装置「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用いて粒子の体積基準のメジアン径を測定し、体積基準のメジアン径が7.0μmになるまで撹拌を継続しながら凝集させた。
その後、塩化ナトリウム120質量部をイオン交換水600質量部に溶解させた水溶液を添加し、系の温度を90℃として4時間撹拌を継続し、フロー式粒子像解析装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)による測定で円形度が0.940に達した時点で、6℃/分の条件で30℃にまで冷却して反応を停止させることにより、トナー母体粒子の分散液を得た。冷却後のトナー母体粒子の粒径(体積基準のメジアン径)は6.9μm、円形度は0.940であった。なお、他の実施例、比較例において、粒径、円形度は、いずれも実施例1と同じであった。
このようにして得られたトナー母体粒子の分散液をバスケット型遠心分離機「MARK III 型式番号60×40」(松本機械(株)製)を用いて固液分離し、ウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が15μS/cmになるまで洗浄と固液分離を繰り返し、その後、「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)を用い、温度40℃および相対湿度20%RHの気流を吹き付けることによって水分量が0.5質量%となるまで乾燥処理し、24℃に冷却することにより、トナー母体粒子〔1X〕を得た。
得られたトナー母体粒子〔1X〕に対して、疎水性シリカ粒子(数平均二次粒径:30μm、数平均一次粒径:50〜200nm)1質量%と疎水性酸化チタン粒子(数数平均二次粒径:20μm、数平均一次粒径:50〜200nm)1.2質量%とを添加し、ヘンシェルミキサーを用い、回転翼の周速24m/sの条件で20分間かけて混合し、さらに400メッシュの篩を通過させることによって外添剤を添加し、トナー〔1〕を得た。
なお、以下に、実施例1におけるトナーの構成成分(一部抜粋)の製造時の固形換算重量を示す。なお、離型剤の製造時の固形分含有量については、表1に示される、トナー母体粒子の含有率になるように設定されている(以下、同様である)。
<実施例2〜4および6>
〔トナーの製造例1〕において、トナーの構成成分の製造時の固形換算重量を以下になるように変更した以外は、実施例1と同様にすることによって、トナー〔2〕〜〔4〕および〔6〕を作製した。
<実施例5>
〔トナーの製造例1〕において、結晶性樹脂微粒子分散液[C1]54質量部(固形分換算)に代えて、下記結晶性ポリウレタン樹脂微粒子分散液[C2]54質量部(固形分換算)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、トナー〔5〕を作製した。
〔結晶性ポリウレタン樹脂微粒子分散液[C2]の調製〕
攪拌棒および温度計をセットした反応容器に、1,4−ブタンジオール40部、1,6−ヘキサンジオール58部、メチルエチルケトン50部を仕込んだ。この溶液にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)160部を投入し82℃で5時間反応させ、結晶性ポリウレタン樹脂[c2]のMEK溶液を得た。
この結晶性ポリウレタン樹脂[c2]を用い、実施例1に記載の方法と同様にして、結晶性ポリウレタン樹脂微粒子分散液[C2]を調製した。
<実施例7>
〔トナーの製造例1〕において、結晶性樹脂微粒子分散液[C1]54質量部(固形分換算)に代えて、結晶性樹脂微粒子分散液[C3]54質量部(固形分換算)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、トナー〔7〕を作製した。
〔結晶性樹脂微粒子分散液[C3]の調製〕
〔ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液[C1]の調製〕において、常圧下(101.3kPa)における反応時間を、5時間から10時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、結晶性樹脂微粒子分散液[C3]を調製した。
<実施例8>
〔トナーの製造例1〕において、分散液〔MD1〕492質量部(固形分換算)を、分散液〔MD2〕492質量部(固形分換算)に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー〔8〕を作製した。
〔離型剤を含有した非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔MD2〕の調製〕
(非晶性ポリエステル樹脂の合成)
テレフタル酸123質量部、トリメリット酸9質量部、フマル酸30質量部、ドデセニルコハク酸無水物120質量部、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物570質量部、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物93質量部を、撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、チタンテトラブトキサイド0.2質量部を添加し、窒素ガス気流下において180℃で撹拌しながら8時間重合反応を行った。さらにチタンテトラブトキサイド0.3質量部を添加し、温度を220℃に上げて撹拌しながら6時間重合反応を行った後、反応容器内を10mmHgまで減圧し、減圧下で反応を行うことにより、淡黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂(md2)を得た。この非晶性ポリエステル樹脂(md2)のガラス転移点(Tg)は58℃、重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けたフラスコに、メチルエチルケトン600部を投入し、撹拌しながら、上記で作製した非晶性ポリエステル樹脂(md2)600部を徐々に投入した後、40℃に加熱し、完全に溶解させ油相を得た。油相に15%NH4OH水溶液10部を滴下し、さらにイオン交換水を滴下して転相乳化させた。ついでエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔MD2〕を得た。非晶性ポリエステル樹脂による微粒子の体積基準のメジアン径は200nmであった。
これにイオン交換水を用いて分散液濃度を調整し、固形分濃度30質量%の非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔MD2−1〕を調製した。
(離型剤粒子分散液の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けたフラスコに、ベヘン酸ベヘニル(融点73℃) 90質量部、アニオン性界面活性剤 0.5質量部、イオン交換水 210質量部を投入、混合して95℃に加熱し、ホモジナイザを用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザで分散処理し、離型剤を分散させてなる離型剤粒子分散液〔MD2−2〕を調製した。離型剤の体積平均粒径は230μmであった。
(〔MD2〕非晶性樹脂+離型剤 分散液の調製)
非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔MD2−1〕 1804.8質量部と、離型剤粒子分散液〔MD2−2〕 195.2質量部を混合し、離型剤を含有した非晶性樹脂微粒子分散液〔MD2〕を得た。
<実施例9>
〔トナーの製造例1〕において、結晶性樹脂微粒子分散液[C1]54質量部(固形分換算)に代えて、下記結晶性樹脂微粒子分散液[C4]54質量部(固形分換算)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、トナー〔9〕を作製した。
〔結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液[C4]の調製例〕
加熱乾燥したフラスコ内を窒素雰囲気下とし、ドデカン二酸320質量部と、1,6−ヘキサンジオール197質量部と、ジメチルスルホキシド25質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.03質量部と、を投入し180℃に加熱した後、減圧操作および機械撹拌を4時間行った。減圧下、ジメチルスルホキシドを留去し、その後、圧力を保持したまま220℃まで徐々に昇温を行い2.0時間撹拌した後、空冷して反応を停止させ結晶性ポリエステル樹脂[C4]を合成した。
この結晶性ポリエステル樹脂[C4]を用い、実施例1に記載の方法と同様にして、結晶性樹脂微粒子分散液[C4]を調製した。
<比較例1>
〔トナーの製造例1〕において、結晶性樹脂微粒子分散液[C1]を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、トナー〔比1〕を作製した。
<比較例2〜6および9>
〔トナーの製造例1〕において、トナーの構成成分の製造時の固形換算重量を以下になるように調製した以外は、実施例1と同様にすることによって、トナー〔比2〕〜〔比6〕および〔比9〕を作製した。
<比較例7>
〔トナーの製造例1〕において、結晶性樹脂微粒子分散液[C1]に代えて、結晶性樹脂微粒子分散液[C3]を添加し、トナーの構成成分の製造時の固形換算重量を以下になるように調製した以外は、実施例1と同様にすることによって、トナー〔比7〕を作製した。
<比較例8>
〔トナーの製造例1〕において、結晶性樹脂微粒子分散液[C1]に代えて、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液[C4]を添加し、トナーの構成成分の製造時の固形換算重量を以下になるように調製した以外は、実施例1と同様にすることによって、トナー〔比8〕を作製した。
なお、以下に、結晶性樹脂微粒子分散液[C1]〜[C4]における、結晶性樹脂微粒子[c1]〜[c4]の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および融点(mp(℃))を示す。
また、非晶性樹脂微粒子を構成する樹脂〔md1〕および〔md2〕の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、ガラス転移温度(Tg(℃))および軟化点(Tsp(℃))を示す。
<評価方法>
市販の複合プリンタ「bizhub Pro C500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を改造して、温度20℃、相対湿度50%RHの環境下において、コニカミノルタ社製CFペーパー上に出力した。現像バイアスを調整することにより、紙面上のトナーを4.5g/m2に合わせ、画像濃度を測定した。この出力動作を500枚繰り返し、1枚目と500枚目との画像濃度を比較した。
画像濃度は、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用い、光源としてD65光源、反射測定アパーチャとしてφ4mmのものを用い、測定波長域380〜730nmを10nm間隔で、視野角を2°とし、基準合わせには専用白タイルを用いた条件において測定するものとした。1枚目と500枚目とで画像濃度の変化がない、または小さいトナーは帯電安定性に優れていることが示唆される。本発明においては、カーボンブラックのトナー中の分散性が優れていることにより帯電安定性が確保されることを示す。
<測定方法>
(tanδ):誘電正接tanδは、WITNESS−6000 WayneKerr LCR(東陽テクニカ社製)を用いて、温度25℃相対湿度50%RHの環境下における、周波数100Hzおよび100kHzにおける複素誘電率の測定値より算出した。測定試料には、トナー2gを200kgf/cm2の荷重を1分間かけて成形し、40φの円盤状としたものを使用した。
(酸価):酸価は、樹脂1gに含まれる酸を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmgで表したものである。樹脂の酸価は、JIS K0070−1966に準じて測定される。具体的には、以下の手順に従って測定した。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mlに溶解し、イオン交換水を加えて100mlとし、「フェノールフタレイン溶液」を作製した。JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mlに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとした。炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、「水酸化カリウム溶液」を作製する。標定はJIS K0070−1966の記載に従った。
(2)操作
(a)本試験
粉砕したトナー2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解した。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定した。なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時とした。
(b)空試験
試料を用いない(即ち、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする以外は、上記操作と同様の操作を行った。
酸価の算出
得られた結果を下記式(1)に代入して酸価を算出した。
式(1)
A=〔(C−B)×f×5.6〕/S
ここで、
A:酸価(mgKOH/g)、
B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、
C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、
f:0.1mol/リットルの水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、
S:試料(トナー)(g)である。
上記結果より、すべての実施例のトナーは、画像濃度が1〜500頁まで1.0以上であるので、必要な濃度を出力していることが分かる。また、Δ(1−0.5k)が、0.16以下であり、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現できていることが示唆される。他方で、比較例1のトナーは、結晶性樹脂を含んでいないので、定着不良が起こってしまい、画像濃度の値さえ導き出すことができなかった。また、比較例2では、結晶性樹脂が過剰であるので、環境依存性が悪く、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現できないことが示唆される。また、比較例3では、カーボンブラックが過少であるため、濃度が不足していることが示唆される。また、比較例4では、結晶性樹脂とのバランスが悪く、分散性を示すtanδが高くなってしまい、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現できないことが示唆される。また、比較例5では、分散性が悪く、環境安定性が悪く、連続印字時に、長期に亘り安定した画像濃度を実現できないことが示唆される。また、比較例6では、結晶性樹脂が過少のため、分散性が悪く、また濃度も不足していることが示唆される。また、比較例7では、結晶性樹脂が過少であるため、濃度が不足していることが示唆される。また、比較例8では、結晶性樹脂が過少のため、定着不良が起こってしまっている。また、比較例9では、カーボンブラックが過少で、濃度が不足してしまっている。