以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
本発明に係る静電荷像現像用トナー(以下、「本発明に係る静電荷像現像用トナー」を、単に「本発明に係るトナー」または「本発明のトナー」とも称する)は、結晶性樹脂および非晶性樹脂を含むバインダー、ならびに離型剤を含む。そして、示差走査熱量分析における前記結晶性樹脂単独の融点をTmC(O)(℃)、前記離型剤単独の融点をTmW(O)(℃)、前記トナー中の前記結晶性樹脂由来の融点をTmC(T)(℃)、前記トナー中の前記離型剤由来の融点をTmW(O)(℃)とし、前記結晶性樹脂の酸価をAVc(mgKOH/g)、前記非晶性樹脂の酸価をAVa(mgKOH/g)としたとき、下記式(1)〜(4)を満たす。
上記のような構成を有する本発明に係る静電荷像現像用トナーは、低温定着性、定着分離性、および耐ドキュメントオフセット性に優れる。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、これは、以下のメカニズムによるものと推測される。なお、以下のメカニズムは推測であり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
すなわち、バインダーに含まれる結晶性樹脂および離型剤は、通常、共に疎水性のアルキル基を有するため、互いに馴染み易い。また、特に融点の低い離型剤の場合、非晶性樹脂との相溶は起こらないものの、結晶性樹脂との相溶が起こる。その結果、トナーの低温定着性はある程度維持されるが、定着分離性および耐ドキュメントオフセット性が低下するという問題があった。
これに対し、本発明者らは、静電荷像現像用トナーを示差走査熱量分析(DSC)により測定した場合に、前記結晶性樹脂単独の融点TmC(O)(℃)、前記離剤単独の融点TmW(O)(℃)、前記トナー中の前記結晶性樹脂由来の融点TmC(T)(℃)、前記トナー中の前記離型剤由来の融点TmW(O)(℃)、前記結晶性樹脂の酸価AVc(mgKOH/g)、および前記非晶性樹脂の酸価AVa(mgKOH/g)が、上記式(1)〜(4)を満たす、静電荷像現像用トナーによって上記の問題が解決されることを見出した。
上記式(1)〜(4)を満たすトナーにおいては、結晶性樹脂と離型剤とがほとんど相溶しないか全く相溶しない。したがって、離型剤の染み出し量が多くなり、離型剤の添加効果が発揮され、低温定着性とともに定着分離性および耐ドキュメントオフセット性に優れたトナーとなる。また、特に上記式(4)を満たす本発明に係るトナーは、乳化重合凝集法で製造した際、非晶性樹脂の凝集速度が結晶性樹脂の凝集速度よりも速くなるため、非晶性樹脂がトナーの表面に存在するようになる。これにより、優れた低温定着性とともに、優れた定着分離性および耐ドキュメントオフセット性を有する本発明のトナーが得られることになる。
以下、本発明の静電荷像現像用トナーの構成について、より詳細に説明する。
[示差走査熱量分析]
上記式(1)〜(3)における結晶性樹脂単独の融点TmC(O)(℃)、離型剤単独の融点TmW(O)(℃)、トナー中の結晶性樹脂由来の融点をTmC(T)(℃)、およびトナー中の離型剤由来の融点をTmW(O)(℃)は、示差走査熱量分析によって測定される。
より具体的には、示差走査熱量分析の測定は、以下のようにして行う。すなわち、ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いて、0℃から200℃まで10℃/minの昇温速度で第一の昇温過程を行い、200℃で1分間保持する。その後、10℃/minの冷却速度で0℃まで冷却する冷却工程を行い、0℃で1分間保持を行う。さらに、第二の昇温過程として、0℃から200℃まで10℃/minの速度で昇温を行う。
なお、本明細書においては、特に言及しない限り、結晶性樹脂単独の融点TmC(O)(℃)は、結晶性樹脂を用いて測定される値である。離型剤単独の融点TmW(O)(℃)は、離型剤を用いて測定される値である。トナー中の結晶性樹脂由来の融点をTmC(T)(℃)、およびトナー中の離型剤由来の融点をTmW(O)(℃)は、静電荷像現像用トナーを用いて測定される値である。
結晶性樹脂を用いて上記測定方法で測定した際、第二の昇温過程で測定される吸熱ピークのピークトップを、融点(TmC(O))(℃)とする。離型剤を用いて上記測定した際、第二の昇温過程で測定される吸熱ピークのピークトップを、融点(TmW(O))(℃)とする。静電荷像現像用トナーを用いて上記測定方法で測定した際、第二の昇温過程で測定される結晶性樹脂に由来する吸熱ピークのピークトップを、融点(TmC(T))(℃)とする。静電荷像現像用トナーを用いて上記測定方法で測定した際、第二の昇温過程で測定される離型剤に由来する吸熱ピークのピークトップを、融点(TmW(T))(℃)とする。
なお、融点(TmC(T))(℃)が結晶性樹脂由来であることは、結晶性樹脂単独の融点(TmC(O)と対応させることや、トナーに含まれる結晶性樹脂の構造確認等を組み合わせることにより、確認することができる。また、融点(TmW(T)(℃))が離型剤由来であることは、離型剤単独の融点(TmW(O))(℃)と対応させることや、トナーに含まれる離型剤の構造確認等を組み合わせることにより、確認することができる。
さらに、上記式(3)の関係は、例えば、用いる結晶性樹脂および離型剤の種類、結晶性樹脂の融点、離型剤の融点、結晶性樹脂の粒径、温度履歴等を調整することにより、任意に設定できる。
[バインダー]
本発明に係るトナーに含まれるバインダーは、融点TmC(O)が50〜85℃である結晶性樹脂と、非晶性樹脂とを含む。
融点TmC(O)が50〜85℃である結晶性樹脂の含有量は、バインダー全体に対し、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは15〜45質量%である。
非晶性樹脂の含有量は、バインダー全体に対し、好ましくは50〜90質量%であり、より好ましくは55〜85質量%である。
低温定着性、および定着分離性の観点から、好ましくは、本発明に係るトナーに含まれるバインダーは、融点TmC(O)が50〜85℃である結晶性樹脂と、非晶性樹脂とからなる。より好ましくは、本発明に係るトナーに含まれるバインダーは、融点TmC(O)が50〜85℃である結晶性樹脂の含量が10〜35質量%であり、非晶性樹脂の含量が65〜90質量%である(ただし、前記融点TmC(O)が50〜85℃である結晶性樹脂と、前記非晶性樹脂との合計量は、100質量%である)。さらに好ましくは、本発明に係るトナーに含まれるバインダーは、融点TmC(O)が50〜85℃である結晶性樹脂の含量が15〜35質量%であり、非晶性樹脂の含量が65〜85質量%である(ただし、前記融点TmC(O)が50〜85℃である結晶性樹脂と、前記非晶性樹脂との合計量は、100質量%である)。
本発明に係るトナーに含まれるバインダーの調製に用いられる結晶性樹脂と非晶性樹脂との組み合わせとしては、特に制限されないが、例えば、結晶性ポリエステル樹脂/(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体);結晶性ポリエステル樹脂/(スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体);結晶性ポリエステル樹脂/非晶性ポリエステル樹脂;結晶性ポリウレタン樹脂/(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体);結晶性ポリウレタン樹脂/(スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体);結晶性ポリウレタン樹脂/非晶性ポリエステル樹脂;結晶性ポリウレア樹脂/(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体);結晶性ポリウレア樹脂/(スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体);結晶性ポリウレア樹脂/非晶性ポリエステル樹脂;結晶性ポリアミド樹脂/(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体);結晶性ポリアミド樹脂/(スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体);結晶性ポリアミド樹脂/非晶性ポリエステル樹脂;結晶性ポリエーテル樹脂/(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体);結晶性ポリエーテル樹脂/(スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体);結晶性ポリエーテル樹脂/非晶性ポリエステル樹脂、等が例示できる。
<結晶性樹脂>
本発明に係るトナーに含まれるバインダーには、融点が50〜85℃である結晶性樹脂が含まれる。本明細書において、「結晶性」とは、示差走査熱量分析において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを意味する。この際、明確な吸熱ピークとは、具体的には、実施例に記載の示差走査熱量分析において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
本明細書において、結晶性樹脂の融点は、バインダーに含まれる結晶性樹脂全体としての融点をいう。すなわち、「結晶性樹脂単独の融点TmC(O)が50〜85℃である」とは、バインダーに用いられる結晶性樹脂全体を、トナーに含まれない状態で示差走査熱量分析により測定した融点が50〜85℃であることをいう。TmC(O)が50℃未満であると、非晶性樹脂との相溶が大きくなり耐熱保管性等の悪化の原因となる。一方、TmC(O)が85℃を超えると、定着時の溶融温度が高くなり低温定着性を確保できなくなる。低温定着性および耐熱保管性の観点から、TmC(O)は、55〜85℃であることが好ましく、60〜80℃であることがより好ましい。
本発明に用いられる結晶性樹脂としては、特に制限されず、例えば、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂等が例示できるが、低温定着性およびシャープメルト性の観点から、好ましくは結晶性ポリエステル樹脂を含む。結晶性樹脂は、未変性のものであってもよく、また、ウレタン変性結晶性樹脂、スチレンアクリル変性結晶性樹脂、およびウレア変性樹脂等の変性結晶性樹脂であってもよいが、好ましくはウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂である。ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂は、ウレタンユニット同士の相互作用により粘弾性の低下が起こりにくいため、耐ドキュメントオフセット性に優れ、定着画像の光沢が上昇することを防止できる。
(結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性樹脂として好適な結晶性ポリエステル樹脂はラクトンの開環重合物や、ポリヒドロキシカルボン酸の脱水縮合物を用いることもできるが、2価のアルコール成分(ジオール成分)と2価のカルボン酸成分(ジカルボン酸成分)との重縮合物であることが好ましい。ジオール成分およびジカルボン酸成分を用いる場合、常法に従い、ジブチル錫オキシド、またはテトラブトキシチタネート等の重合触媒存在下で、重縮合反応を行って合成すればよい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためのジオール成分としては、結晶性が高く耐熱保管性に優れるため、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、特に炭素数2〜12の脂肪族ジオールを用いることが好ましい。直鎖型の脂肪族ジオールを用いることが好ましいが、分岐型の脂肪族ジオールや脂環式の脂肪族ジオールを用いることもできる。
直鎖型の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,2−エイコサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、および1,9−ノナンジオールからなる群から選択されるジオール成分を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためのジオール成分としては、上記のもの以外にも、必要に応じてその他のジオールを用いることができる。その他のジオールとしては、1,2−プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどの炭素数2〜14の分岐型脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−アダマンチルジメタノールなどの炭素数4〜12の脂環式ジオール;これらの脂環式ジオールのエチレンオキサイド(EO)付加物、プロピレンオキサイド(PO)付加物、ブチレンオキサイド(BO)付加物(付加モル数1〜3)などのアルキレンオキサイド(AO)付加物;ポリε−カプロラクトンジオールなどのポリラクトンジオール;ポリブタジエンジオールなどが挙げられる。
これらのジオール成分は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂を得るためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、特に直鎖型の脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)などの炭素数4〜12のアルカンジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などの炭素数4〜6のアルケンジカルボン酸などが挙げられる。直鎖型の脂肪族ジカルボン酸としては、結晶性樹脂の結晶性の観点から、アジピン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボン酸からなる群から選択されるジカルボン酸成分を用いることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸とは別に、または脂肪族ジカルボン酸と共に、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸を用いてもよい。
これらのジカルボン酸成分は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、耐ドキュメントオフセット性に優れ、定着画像の光沢が上昇することを防止できることから、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、以下の手法により得ることができる。すなわち、ジオール成分およびジカルボン酸成分の重縮合反応において、ジオール成分の仕込み量を過剰にすることで、分子末端に水酸基を持つ結晶性ポリエステルジオールを得る。ウレタン変性結晶性ポリエステルは、かような手法により得た結晶性ポリエステルジオールと、イソシアネート基を分子末端に有するポリウレタン化合物とを重合させることにより、製造することができる。ウレタン変性結晶性ポリエステルを製造する別の方法としては、上記の結晶性ポリエステルジオールと、ジイソシアネート化合物とを重合反応させて得ることもできる。当該ジイソシアネート化合物としては、後述のジイソシアネート成分を用いることができる。
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂のウレタン変性度は、例えば30〜70モル%であり、好ましくは40〜60モル%である。なお、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂のウレタン変性度は、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂全体におけるウレタンユニット量(モル%)であり、核磁気共鳴(プロトンNMR)等によって測定される。ポリエステル樹脂のウレタン変性度は、結晶性ポリエステルジオールに対するジイソシアネート化合物のモル比を制御することで、任意に設定できる。
この他、スチレンアクリル変性結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、特開2013−195700号公報に開示されるように、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体といったビニル単量体を付加反応させて得られた共重合体と、上記の結晶性ポリエステルジオールとを反応させることにより得ることができる。
(結晶性ポリウレタン樹脂)
結晶性ポリウレタン樹脂は、ジオール成分とジイソシアネート成分とから合成される。
結晶性ポリウレタン樹脂を得るためのジオール成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
結晶性ポリウレタン樹脂を得るためのジイソシアネート成分としては、炭素数6〜20(ただしNCO基中の炭素は除く)の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート、およびこれらのジイソシアネートの変性物などが挙げられる。上記のジイソシアネートと共に、3価以上のポリイソシアネートを用いてもよい。これらは1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
ジイソシアネート成分としては、より具体的には、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、およびp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、等が挙げられる。
ジイソシアネートの変性物としては、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレシイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基による変性物などが挙げられる。
(結晶性ポリアミド樹脂)
結晶性ポリアミド樹脂は、ジアミン成分とジカルボン酸成分との反応から得られる。
結晶性ポリアミド樹脂を得るためのジカルボン酸成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
ジアミン成分としては、脂肪族ジアミン、脂肪族ポリアミン、および芳香族ジアミン等のジアミン成分およびポリアミン成分を用いることもできる。より具体的には、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンシアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、ピペラジン、4−アミノエチルピペラジン、キシリレンジアミン、ポリフェニルポリメチレンポリアミン、ジアミノジフェニルスルホン、チオジアニリン、2,4−トリレンジアミン、および2,6−トリレンジアミン等が例示できる。
(結晶性ポリウレア樹脂)
結晶性ポリウレア樹脂は、ジアミン成分とジイソシアネート成分との反応から得られる。結晶性ポリウレア樹脂を得るためのジアミン成分、およびジイソシアネート成分としては、上述と同様のものを用いることができる。
(結晶性ポリエーテル樹脂)
結晶性ポリエーテル樹脂としては、結晶性ポリオキシアルキレンポリオールなどを用いることができる。
結晶性ポリオキシアルキレンポリオールの製造に用いられるアルキレンオキサイド(AO)としては、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド等が例示できる。結晶性ポリオキシアルキレンポリオールの合成方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。具体的には、特表2001−521957号公報に開示されるバイメタルμ−オキソアルコキサイドとビロキシル化合物とを予め反応させる方法等が用いられる。
(結晶性樹脂の特性)
本発明に係るトナーに含まれるバインダー中の結晶性樹脂は、結晶性樹脂単独の融点TmC(O)が50〜85℃であれば、融点が50℃未満の結晶性樹脂や、融点が85℃を超える結晶性樹脂を使用することを妨げない。
上記のような結晶性樹脂は、(メタ)アクリル酸ユニットを含むスチレンアクリル変性結晶性樹脂等の側鎖に酸性基を有するものを除き、酸性基を有さない。酸性基を有さない結晶性樹脂は、バインダー製造時において結晶性樹脂乳化液の乳化状態が不安定となる。従って、かような酸性基を有さない結晶性樹脂をトナーの製造に用いる場合は、分子構造主鎖の末端等にカルボキシル基やスルホ基等の酸性基を導入して、酸価を調整する。
例えば、ポリエステル樹脂や結晶性ポリオキシアルキレンポリオールのように、主鎖末端に水酸基を有する結晶性樹脂の場合、エステル化触媒の存在下、多価カルボン酸を用いて、定法に従って結晶性樹脂主鎖末端の水酸基をエステル化すればよい。多価カルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、クエン酸、コハク酸、(無水)イタコン酸、(無水)マレイン酸等を挙げることができる。エステル化触媒としては、ジブチル錫オキシド、テトラブトキシチタネート、およびp−トルエンスルホン酸等を挙げることができる。
結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、またはウレタン変性結晶性樹脂のように、重合反応や変性反応にジイソシアネート化合物を用いる結晶性樹脂の場合、ジイソシアネート化合物を用いた反応時において、カルボキシル基を有するジオール化合物をさらに用いることで酸性基を導入することができる。すなわち、結晶性ポリウレタン樹脂および結晶性ポリウレア樹脂については単量体の重合反応時において、また、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂のようなウレタン変性結晶性樹脂の場合には変性反応時において、上記のジイソシアネート成分と、カルボキシル基を有するジオール化合物とでウレタン結合を形成させることにより、カルボキシル基をウレタンユニットに導入する。この場合、カルボキシル基を有するジオール化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメタノールブタン酸等を挙げることができる。
結晶性樹脂の酸価を所望の範囲にするために導入される酸性基としては、カルボキシル基以外に、スルホ基であってもよい。この場合も、上記と同様に、ウレタンユニットに導入する場合にはスルホ基を有するジオール化合物を、分子末端に導入する場合には多価スルホン酸を用いて反応を行えばよい。
ウレタン変性結晶性樹脂等の変性結晶性樹脂については、上記の酸性基導入は、変性反応前に行ってもよく、変性反応後に行ってもよい。
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の場合、ウレタンユニット、および分子末端水酸基の両方に酸性基を導入することもできる。この場合、まず、結晶性ポリエステルジオール、ジイソシアネート化合物、およびカルボキシル基を有するジオール化合物を反応させて、ウレタンユニットにカルボン酸を有するウレタン変性結晶性ポリエステルを得る。その後、エステル化触媒の存在下で、上記のウレタン変性結晶性ポリエステルと多価カルボン酸とでエステル化反応を行い、分子末端にカルボン酸をさらに導入することができる。
これらの酸性基導入の反応に用いる溶媒としては、例えば、ケトン有機溶媒、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。単量体の溶解性および反応温度から、メチルエチルケトンが好ましい。上記の反応溶媒を1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記した結晶性樹脂の酸価AVcと、後述する非晶性樹脂の酸価AVaとは、下記式(4)の関係にある。
上記式(4)で示す酸価の関係にある結晶性樹脂および非晶性樹脂をバインダーとして含む本発明のトナーは、製造時において、結晶性樹脂の凝集速度が非晶性樹脂の凝集速度よりも速くなるため、結晶性樹脂がトナーの内部に存在するようになる一方で、非晶性樹脂はトナーの表面に存在するようになる。また、酸価が高い非晶性樹脂は酸価が低い結晶性樹脂よりも親水性が高く、乳化液中ではより安定な油滴として存在するため、この点kからも、非晶性樹脂はトナーの表面に存在しやすくなる。このように、トナーの内部に結晶性樹脂が存在し、トナーの表面に非晶性樹脂が存在する本発明に係るトナーは、低温定着性に優れ、定着分離性および耐ドキュメントオフセット性にも優れる。
式(4)の関係を満たせば、結晶性樹脂の酸価AVcの値は特に制限されないが、好ましくは10〜20mgKOH/gであり、より好ましくは12〜18mgKOH/gである。結晶性樹脂の酸価は、任意に調整することができ、例えば、上記の酸性基の導入において用いるカルボン酸やスルホン酸の反応当量を増やしたり、酸性基導入の反応時間を長くしたり、多価カルボン酸化合物を用いることによって高くすることができる。反対に、酸性基導入反応において用いるカルボン酸やスルホン酸の反応当量を少なくしたり、酸性基導入の反応時間を短くしたり、添加量を低減し酸性基を含むジオール化合物と併用したりすることによって、結晶性樹脂の酸価を低くすることができる。当業者であれば、上記手段を適宜組み合わせ、結晶性樹脂の酸価を所望の範囲に調整することができる。なお、結晶性樹脂の酸価は、JIS K2501:2003に準拠した方法により測定した値を採用する。
耐ドキュメントオフセット性や製造時の乳化液の安定性等の観点から、結晶性樹脂としては、分子末端およびウレタンユニット中の少なくとも一方にカルボキシル基を有し、かつ酸価AVcが10〜20mgKOH/gの範囲である、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
結晶性樹脂の重量平均分子量は、低温定着性および定着分離性の両立の観点から、好ましくは20000〜60000である。
なお、本明細書において、結晶性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される値である。重量平均分子量の測定においては、濃度が1mg/mlとなるよう、テトラヒドロフラン(THF)に測定試料を加える。測定試料のTHFへの溶解を促進するため、超音波分散機を用いて、20〜30℃で5〜10分間程度処理してから分析に用いてもよい。重量平均分子量の測定は、単分散のポリエチレン標準樹脂(分子量;6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106(Pressure Chemical社製))を用い、少なくとも10点を測定して作成した検量線を用いて定量する。
(重量平均分子量測定条件)
使用機器: HLC−8220(東ソー株式会社製)
カラム: TSKguardcolumn/TSKgel SuperHZMM(3連)(東ソー社製)
カラム温度:40℃
移動相: テトラヒドロフラン
流速: 0.2ml/min
注入量: 10μl
検出器: 屈折率検出器(IR検出器)。
バインダーの製造において、結晶性樹脂は、乳化液の形態で用いることが好ましい。結晶性樹脂の酸価が上記範囲であれば、結晶性樹脂乳化液の乳化状態が安定する。
<非晶性樹脂>
本発明に係るトナーに含まれるバインダー中の非晶性樹脂としては、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、スチレン−(メタ)アクリレート共重合体等のスチレン樹脂、および非晶性ポリエステル樹脂などを例示することができる。これらの非晶性樹脂は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。スチレン−(メタ)アクリレート共重合体としては、スチレン単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリル酸単量体からなる共重合体等を用いることができる。非晶性ポリエステルとしては、2価および3価のカルボン酸と多価アルコール成分とからなる縮合物等を用いることができる。但し、本発明では、これらに何ら制限されるものではなく、従来公知の非晶性樹脂を利用することができる。
なお、本明細書において、「非晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化を示し、明確な吸熱ピークを有さないことを意味する。
好ましくは、本発明のトナーに含まれるバインダー中の非晶性樹脂は、イオン性解離基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構成単位および芳香族ビニル単量体由来構成単位を有する芳香族ビニル樹脂(以下、単に「イオン性解離基を有する芳香族ビニル樹脂」とも称する)を含むことが好ましい。かようなイオン性解離基を有する芳香族ビニル樹脂を用いることにより、トナー粒子形成時において急な凝集が防止され、トナーの粒度分布がシャープとなることに加え、帯電性の付与にも寄与し得る。また、結晶性樹脂との相溶性を抑制する観点からも、イオン性解離基を有する芳香族ビニル樹脂が好ましい。
以下、かようなイオン性解離基を有する芳香族ビニル樹脂について説明する。
イオン性解離基を有する芳香族ビニル樹脂は、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体および芳香族ビニル単量体を重合する際、エチレン性不飽和単量体の少なくとも一種として、イオン性解離基を含むエチレン性不飽和単量体を用いることにより得ることができる。イオン性解離基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構成単位の割合は、芳香族ビニル樹脂の全構成単位中、好ましくは、2〜10モル%である。
イオン性解離基を含むエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホ基を有するエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。これら単量体は、単独でもまたは2種以上組わせて用いてもよい。なかでも、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体およびスルホ基を有するエチレン性不飽和単量体の少なくとも一方を用いることが好ましい。すなわち、上記イオン性解離基は、カルボキシル基およびスルホ基の少なくとも一方が好ましい。
また、上記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、メトキシスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、フェニルスチレン等が挙げられる。これら芳香族ビニル単量体は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
さらに、イオン性解離基を有する芳香族ビニル樹脂は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類等の(メタ)アクリル酸エステル単量体やその誘導体など、他のエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位を有していてもよい。このうち、上記のイオン性解離基を有する芳香族ビニル樹脂は、スチレン−(メタ)アクリレート共重合体、すなわち、(メタ)アクリル酸単量体/スチレン単量体の共重合体、または(メタ)アクリル酸単量体/スチレン単量体/(メタ)アクリル酸エステル単量体やその誘導体の共重合体が好ましい。
イオン性解離基を有する芳香族ビニル樹脂の調製に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等の水溶性アゾ化合物、過酸化水素等を用いることが出来る。これらのラジカル重合開始剤は、所望に応じてレドックス重合開始剤として用いることも出来る。例えば、過硫酸塩とメタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、過酸化水素とアスコルビン酸等の組み合わせが挙げられる。
イオン性解離基を有する芳香族ビニル樹脂の調製に用いられる連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカブタン、n−オクチルメルカプタン等のチオール化合物、テトラプロモメタン、トリブロモクロロメタン等のハロゲン化メタン等が挙げられる。
本発明に係る非晶性樹脂単独のガラス転移温度は、50〜65℃であることが好ましい。当該ガラス転移温度は、非晶性樹脂の示差走査熱量分析によって測定される値である。非晶性樹脂のガラス転移温度が50℃以上であることにより、耐ドキュメントオフセット性が向上する。ガラス転移温度が65℃以下であることにより、非晶性樹脂と結晶性樹脂が定着時の加熱により相溶が促進され低温定着性を確保できるという利点がある。より好ましくは、本発明に係る非晶性樹脂単独のガラス転移温度は、52〜62℃である。
さらに、非晶性樹脂の重量平均分子量は、低温定着性、オフセット防止、光沢度等の観点から、好ましくは15000〜35000であり、より好ましくは17000〜30000である。なお、非晶性樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される値であり、結晶性樹脂の場合と同様の手法により測定される。
式(4)の関係を満たせば、非晶性樹脂の酸価AVaの値は特に制限されないが、好ましくは10〜60mgKOH/gであり、より好ましくは25〜50mgKOH/gである。非晶性樹脂の酸価は、任意に調整することができ、例えば、上記のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体やスルホ基を有するエチレン性不飽和単量体の重合時の使用量、添加方法等を制御することにより調整することができる。なお、非晶性樹脂の酸価は、結晶性樹脂と同様の測定方法により測定することができる。
[離型剤]
本発明に係るトナーは、定着分離性を付与する観点から、離型剤を含む。
本発明に係るトナーに用いる離型剤としては、上記(2)および(3)を満たすものであれば、特に限定されないが、具体的には、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート、クエン酸トリベヘネート、べヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル等の合成エステルワックス;フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の熱分解ワックス、等を用いることができる。低温定着性の観点から、好ましくは、合成エステルワックスおよび炭化水素ワックスの少なくとも一方である。
離型剤単独の融点TmW(O)(℃)は、上記式(2)および(3)を満たす限り、特に制限されないが、オフセット防止の観点から、65〜90℃の範囲であることが好ましく、70〜85℃の範囲であることがより好ましい。
また、トナー中の離型剤由来の融点TmW(T)は、上記式(3)を満たす限り、特に制限されないが、65〜90℃であることが好ましく、70〜85℃であることがより好ましい。
離型剤は、以下の方法により本発明に係るトナーに用いることができる。すなわち、離型剤を融点以上に加熱して溶融させた融液に、離型剤の融点と同じ〜5℃高い温度に調温した界面活性剤溶液(水性媒体溶液)を加え、高速攪拌、超音波照射、圧力式乳化機器(例えば、超高圧式ホモジナイザー ゴーリン等)等により機械的な力を加えて乳化する。乳化後、攪拌を行いつつ、室温まで冷却して離型剤分散液を得る。かような手段により調製した離型剤分散液を、バインダーを凝集・融着させてトナー粒子を形成する工程における反応液に加えて用いることができる。
また別法として、非晶性樹脂と離型剤とが複合体化された粒子(後述の複合体粒子A)として、本発明に係るトナーに用いても良い。非晶性樹脂と離型剤とが複合体化された粒子は、離型剤を含むエチレン性不飽和単量体の溶液を界面活性剤溶液(水性媒体溶液)に加え、同様に乳化を行い、重合開始剤を加えて重合を行うことにより得ることができる。
離型剤分散液や、非晶性樹脂と離型剤との複合体粒子の形成に用いられる界面活性剤としては、後述のアニオン性界面活性剤等が例示できる。
トナー全体に対する離型剤の含有量は、例えば、5〜20質量%であり、好ましくは8〜16質量%である。かような範囲であると極端な流動性が悪化や帯電分布のブロード化などを起こすことなく、定着時に十分な離形効果を得ることができる。
[結晶性樹脂の融点および離型剤の融点の関係]
本発明に係るトナーにおいては、下記式(3)の関係を満たす。
この式(3)は、結晶性樹脂と離型剤との相溶性を表す指標であり、式(3)を満足すればトナー中の結晶性樹脂と離型剤とが相溶していないことを意味する。|TmW(T)−TmC(T)|/|TmW(O)−TmC(O)|が1.2を超える場合、離型剤の融点に変化はないが、結晶性樹脂の融点がより低温側にシフトしていることを表し、離型剤と結晶性樹脂とが相溶していることを表す。離型剤と結晶性樹脂とが相溶していると、離型剤の染み出し量が少なくなり、離型剤本来の機能を発揮しにくくなり、定着分離性や耐ドキュメントオフセット性が低下する。
この|TmW(T)−TmC(T)|/|TmW(O)−TmC(O)|の下限値は、0.95以上であることが好ましい。一方、上限値は、1.15以下であることが好ましい。
なお、上述のように、上記式(3)の関係は、例えば、用いる結晶性樹脂および離型剤の種類、結晶性樹脂の融点、離型剤の融点、結晶性樹脂の粒径、温度履歴等を調整することにより、任意に設定できる。
[内添剤]
(着色剤)
本発明に係るトナーは、カラートナーとするために、着色剤をさらに含んでも良い。
使用できる着色剤としては、公知の無機または有機着色剤が挙げられる。以下、具体的な着色剤を示す。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックや、マグネタイト、フェライトなどの磁性粉が挙げられる。
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238、同269等が挙げられる。
また、オレンジまたはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180、同185等が挙げられる。
さらに、グリーンまたはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、染料としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー2、同6、同14、同15、同16、同19、同21、同33、同44、同56、同61、同77、同79、同80、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等が挙げられる。
これらの着色剤は、必要に応じて単独でもまたは2種以上を併用することも可能である。着色剤を用いる場合の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。
着色剤の体積基準のメジアン径(D50)は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。なお、着色剤の体積基準のメジアン径は、例えば、レーザー式粒度分布測定装置「LA−920」(株式会社堀場製作所製)を使用して測定することができる。
着色剤としては、表面改質されたものを使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などを好ましく用いることができる。
(荷電制御剤)
本発明の静電荷像現像用トナーを構成するトナー粒子中には、必要に応じて荷電制御剤が含有されていてもよい。荷電制御剤としては、種々の公知のもので、かつ水性媒体中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。この荷電制御剤粒子は、分散した状態での数平均一次粒子径が、例えば10〜500nm程度である。
[トナーの粒径]
本発明の静電荷像現像用トナーの粒径は、体積基準におけるメジアン径(D50)で3〜8μmであることが好ましい。この粒径は、後述する製造方法において、凝集剤の濃度の添加量、または粒径成長時間等によって制御することができる。
体積基準におけるメジアン径(D50)が3〜8μmであることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できると共に、トナーの消費量を、大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。なお、メジアン径は、例えば、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)により測定できる。
[トナー粒子の平均円形度]
本発明の静電荷像現像用トナーは、転写効率の向上の観点から、下記数式(T)で示される平均円形度が0.920〜1.000であることが好ましく、0.940〜0.995であることがより好ましい。
なお、平均円形度は、例えば、平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
[外添剤]
本発明に係るトナーには、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、荷電制御剤や種々の無機微粒子、有機微粒子、または滑剤などの外添剤を含有させても良い。外添剤は、トナー粒子の乾燥後、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機、サンプルミルなどの種々の公知の混合装置を用いて、トナー粒子と混合させればよい。また、トナーの粒度分布を適当な範囲とするため、必要に応じ篩分級を行ってもよい。
本発明で用いられる外添剤は特に制限されないが、数平均一次粒径が4〜800nm程度の無機微粒子や数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の有機微粒子等の粒子が好ましい。外添剤の種類は特に限定されるものではなく、例えば、以下に例示する公知の無機微粒子や有機微粒子、および、滑剤等が挙げられる。これら外添剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することが可能で、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等が好ましい。また、必要に応じてこれらの無機微粒子をシリル化剤、シランカップリング剤等によって疎水化処理したものも使用することができる。無機微粒子の疎水化度は、例えば、40〜90程度である。疎水化度は、50mlの純水に0.2gの無機微粒子を加え、撹拌しつつメタノールを滴下し、無機微粒子が全量沈降した時点での水/メタノール混合溶液中のメタノール質量分率の値である。
シリカ微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル株式会社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
チタニア微粒子としては、例えば、日本アエロジル株式会社製の市販品T−805、T−604、テイカ株式会社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン工業株式会社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産株式会社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が亜¥挙げられる。
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル株式会社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等がある。
また、有機微粒子としては、具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
また、クリーニング性や転写性をさらに向上させるために滑剤を使用することも可能である。例えば、以下の様な高級脂肪酸の金属塩がある。すなわち、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩が挙げられる。
これら外添剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。
[現像剤]
本発明の静電荷像現像用トナーは、磁性または非磁性の1成分用現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合した二成分現像剤のトナー(二成分用現像剤)として使用してもよい。本発明の静電荷像現像用トナーを1成分用現像剤として用いる場合は、非磁性一成分用現像剤、またはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させて磁性一成分用現像剤としたものが挙げられ、いずれも使用することができる。また、本発明の静電荷像現像用トナーを二成分用現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、トナーに対し相対的に正帯電性を示すものが好ましく、例えばオレフィン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エステル樹脂、フッ素含有重合体樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
好ましいキャリアとしては、外添剤の離脱防止や耐久性の観点から、被覆樹脂としてアクリル樹脂で被覆したコートキャリアが挙げられる。
キャリアは、その体積基準におけるメジアン径(D50)が20〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。キャリアの体積基準におけるメジアン径(D50)は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
[静電荷像現像用トナーの製造方法]
次に、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。
静電荷像現像用トナーの製造方法としては、予め樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させてトナー粒子を形成する乳化重合凝集法が好ましいものとして挙げられる。本発明の一実施形態では、融点が50〜85℃である結晶性樹脂を水性媒体中で乳化して、結晶性樹脂乳化液を得る工程(1);前記乳化液に離型剤を加えた後、前記乳化剤中で、エチレン性不飽和単量体を重合して、バインダーを調製する工程(2);ならびに、前記バインダーを反応液中で凝集および融着させて、トナー粒子を形成する工程(3)を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。以下、当該製造方法を例に、本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法について説明するが、本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法を限定するものではない。
<工程(1)>
(結晶性樹脂乳化液)
工程(1)においては、融点が50〜85℃である結晶性樹脂(好ましくはウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂)を水性媒体中で乳化して、結晶性樹脂乳化液を得る。本工程においては、まず、融点が50〜85℃である結晶性樹脂を有機溶媒に溶解させる。用いる有機溶媒としては、結晶性樹脂を溶解し、その沸点が結晶性樹脂の融点よりも高いものであればよく、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコールなどを好ましく用いることができる。上記した有機溶媒は、所望に応じて、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
結晶性樹脂を有機溶媒に溶解させる際の温度は、経済性ないし生産コストの観点から、室温(20℃)〜90℃であることが好ましく、40〜70℃であることがより好ましい。
結晶性樹脂溶解液の調製に用いられる結晶性樹脂の使用量は、生産性および溶媒に対する樹脂の溶解度の観点から、結晶性樹脂溶解液全体に対して5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。
次に、上記の結晶性樹脂溶解液を水性媒体中で乳化して、結晶性樹脂乳化液を得る。すなわち、結晶性樹脂の融点以上の温度に水性媒体を加温した後に、当該水性媒体に対して、結晶性樹脂溶解液を添加し、乳化分散して乳化液を調製する。ここで、当該水性媒体の温度は、結晶性樹脂溶解液と同じ温度で乳化を行うことが望ましい。なお、乳化液の調製は、水性媒体を攪拌混合しながら行う。かかる攪拌混合により、乳化分散されて調製される乳化液の中にある油滴(ミセル)を、所望の油滴サイズ(=結晶性樹脂粒子サイズ)になるように調整でき、所望の粒子サイズを有する結晶性樹脂乳化液を得ることができる。
結晶性樹脂乳化液の調製時においては、結晶性樹脂の中和度を調節することで、分散安定性が高まり、平均粒径の制御がしやすくなる。中和度の調節は、例えば、結晶性樹脂溶解液もしくはその調製に用いられる有機溶媒、または水性媒体に、アルカリ(中和剤)を添加すればよい。結晶性樹脂溶解液や有機溶媒に添加するアルカリとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物が用いられる。水性媒体に添加するアルカリとしては、トリメチルアミン等の水溶性アミン化合物の他、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリが用いられる。好ましくは、結晶性樹脂溶解液に対してアミン化合物が用いられ、沸点等の観点から、好ましくはトリエチルアミンが用いられる。中和剤の添加量は、例えば、酸価に対して80〜120モル%となる量である。
本工程(1)の結晶性樹脂乳化液の調製に用いられる「水性媒体」とは、主成分として水を含む媒体であり、例えば、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体である。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができる。好ましくは、水性媒体は、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等の水である。
上記の水性媒体中には、必要に応じて、通常のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などの界面活性剤(乳化剤)が溶解されていてもよい。界面活性剤(乳化剤)としては、結晶性樹脂粒子の分散安定性に優れ、また、温度変化に対する安定性が得られることから、アニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類;ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類;ポリエトキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩、およびその誘導体類などを挙げることができる。以上の界面活性剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
界面活性剤を使用する場合において、界面活性剤の添加量は、結晶性樹脂粒子の分散安定性の観点から、結晶性樹脂乳化液全体に対して0.001〜1質量%であることが好ましい。
上記した乳化液の調製において、乳化分散させる具体的な手段としては、機械的エネルギーを付与することが挙げられる。機械的エネルギーを付与するための分散装置としては、特に限定されるものではなく、例えば高速回転可能なローターを備えた撹拌装置や、超音波分散装置や機械式ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザーなどの装置を用いることができる。
上記した乳化液の調製において、結晶性樹脂溶解液の使用量は、生産性および乳化液の分散安定性の観点から、乳化液全量に対して、30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。
本工程(1)では、乳化液を調製後、減圧により結晶性樹脂溶解液に用いた有機溶媒を除去(留去)してもよい。脱溶媒時における有機溶媒の留去(除去)の圧力は、乳化液の分散安定性保持の観点から、実用的な減圧下であればよく、例えば、0.4〜50kPaであり、好ましくは0.5〜50kPaの範囲である。また、減圧時は、所望により加温してもよい。脱溶媒時における有機溶媒の留去(除去)の温度は、例えば30〜50℃である。有機溶媒の除去は、ロータリーエバポレーター等の薄膜真空蒸発装置等により行えばよい。
結晶性樹脂の粒子径については、例えば、酸価が高い結晶性樹脂を用いると粒子径は小さくなり、酸価が低い結晶性樹脂を用いると粒子径は大きくなる。また、乳化分散させる際に与える機械的エネルギーの大きさにより、粒子径をコントロールすることもできる。
本工程(1)で得られた結晶性樹脂乳化液中の結晶性樹脂粒子の粒径は、トナー性能および製造適合性の観点から、例えば体積基準のメジアン径(D50)で50〜500nmであることが好ましく、より好ましくは100〜300nmの範囲である。この範囲であれば、トナー形成時の凝集制御がより容易になり、粗大トナー粒子の発生を抑制き、また、結晶性樹脂のトナー粒子への取り込みが十分に行われる。なお、後述の複合体粒子Bの粒径の測定方法は、結晶性樹脂粒子の場合と同様である。結晶性樹脂粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、レーザー式粒度分布測定装置「LA−920」(株式会社堀場製作所製)を使用して測定することができる。
(工程(1−2)、工程(1−3))
後の工程(2)においては、上記方法にて調製した結晶性樹脂乳化液をそのまま用いてもよいが、結晶性樹脂乳化液を用いて以下の工程(1−2)、および工程(1−3)により調製した混合乳化液を用いても良い(ミニエマルジョン重合法)。本発明の一実施形態では、離型剤を含む液中でエチレン性不飽和単量体を重合して、非晶性樹脂乳化液を得る工程(1−2);および前記結晶性樹脂乳化液と前記非晶性樹脂乳化液とを混合して、混合乳化液を得る工程(1−3)、をさらに含み、前記工程(2)におけるエチレン性不飽和単量体の重合が、当該混合乳化液中で行われる、静電荷像現像用トナーの製造方法であってもよい。
ミニエマルジョン法では、離型剤を含むエチレン性不飽和単量体の溶液を、界面活性剤溶液(水性媒体溶液)に加えて乳化させた後、重合開始剤をさらに加えて当該エチレン性不飽和単量体を重合させる。これにより、非晶性樹脂と離型剤とが複合体化された粒子(複合体粒子A)が分散した非晶性樹脂乳化液を得ることができる。後述する工程(2)においては、上記複合体粒子Aと上述の結晶性樹脂粒子とを含む混合乳化液に対して、エチレン性不飽和単量体およびラジカル重合開始剤を加えて重合反応させ、バインダーを調製する。これにより、非晶性樹脂と離型剤とが複合した粒子(複合体粒子A)に加えて、非晶性樹脂と結晶性樹脂とが複合体化した粒子(複合体粒子B)をも得ることができる。この方法を用いることにより、結晶性樹脂粒子の表面積と、非晶性樹脂粒子の表面積とが同程度となり、凝集制御が容易となる。ミニエマルジョン法の場合、複合体粒子Bの少なくとも一部は、非晶性樹脂、離型剤、および結晶性樹脂が複合体化した粒子である。
工程(1−2)では、上述のエチレン性不飽和単量体と離型剤とを用いて、非晶性樹脂乳化液を得る。非晶性樹脂乳化液の調製においては、まず、離型剤を含むエチレン性不飽和単量体の溶液を、界面活性剤溶液(水性媒体溶液)に加えて乳化させる。離型剤を含むエチレン性不飽和単量体の溶液は、結晶性樹脂乳化液の調製で例示される有機溶媒に対してエチレン性不飽和単量体と離型剤とを溶解させて調製してもよいが、スチレン等の常温で液体のエチレン性不飽和単量体自体を媒体として、エチレン性不飽和単量体液体に離型剤を加えたものであってもよい。離型剤を含むエチレン性不飽和単量体の溶液を、離型剤の融点以上の温度、経済性ないし生産コストの観点から、好ましくは離型剤の融点と同じ〜5℃高い温度に加熱し、離型剤を溶解させる。離型剤の使用量は、生産性および溶媒に対する樹脂の溶解度の観点から、離型剤を含むエチレン性不飽和単量体の溶液全量に対して、5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。
本工程で用いられるエチレン性不飽和単量体は、非晶性樹脂について上述したものが用いられる。トナー製造時における急な凝集を防止し、トナーの粒度分布をシャープにし、また帯電性を付与する観点から、好ましくは、本工程で用いられるエチレン性不飽和単量体は、イオン性解離基を有するエチレン性不飽和単量体を含む。本発明の一実施形態では、工程(1−2)、および工程(2)におけるエチレン性不飽和単量体全量中、2〜15モル%がイオン性解離基を有するエチレン性不飽和単量体である。
工程(1−2)で使用されるエチレン性不飽和単量体と、工程(2)で使用されるエチレン性不飽和単量体とは、同一であっても異なっていても良い。
こうして得られた離型剤を含むエチレン性不飽和単量体の溶液を、離型剤の融点と同じ〜5℃高い温度に調温した界面活性剤溶液(水性媒体溶液)に加えて乳化させた後、ラジカル重合開始剤、および必要に応じて連鎖移動剤を加えてエチレン性不飽和単量体を重合させる。これによって、非晶性樹脂乳化液が得られる。非晶性樹脂乳化液の調製に用いられる界面活性剤や水性媒体については、結晶性樹脂乳化液の場合と同様である。乳化分散させる具体的な手段も、結晶性樹脂乳化液の場合と同様に、機械的エネルギーを付与すればよい。
重合反応は、特に制限されるものではないが、例えば50〜90℃にて、65〜80時間行う。重合は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
上述の過硫酸カリウム等のラジカル重合開始剤は、単量体100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部となる量で用いられる。上述のチオール化合物等の連鎖移動剤は、単量体100質量部に対して、例えば0.05〜5質量部となる量で用いられる。
工程(1−2)で得られる非晶性樹脂乳化液中の複合体粒子Aの粒径は、結晶性樹脂粒子の粒径と同程度であることが好ましい。例えば、体積基準のメジアン径(D50)で50〜500nmが好ましく、100〜300nmがより好ましい。なお、複合体粒子Aの粒径の測定方法は、結晶性樹脂粒子の場合と同様である。
工程(1−3)では、工程(1)で得た結晶性樹脂乳化液と、工程(1−2)で得た非晶性樹脂乳化液とを混合して、混合乳化液を得る。結晶性樹脂乳化液と非晶性樹脂乳化液との混合割合は特に制限されず、任意に設定することができるが、例えば、結晶性樹脂粒子と複合体粒子Aとの固形分比として、10:90〜40:60(質量比)となる量であり、好ましくは15:85〜35:65(質量比)となる量である。
結晶性樹脂乳化液と非晶性樹脂乳化液との混合方法は特に制限されず、インペラ翼、アンカー翼、タービン翼、またはマックスブレンド翼などの攪拌翼を備えた攪拌装置等によって攪拌すればよい。ミニエマルジョン重合法の場合、こうして得られた混合乳化液を、後の工程(2)に供する。結晶性樹脂乳化液と非晶性樹脂乳化液との混合は、工程(2)におけるエチレン性不飽和単量体の重合温度で行っても良い。
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で得られた結晶性樹脂乳化液に離型剤を加えた後、または工程(1−3)で得られた混合乳化液中で、エチレン性不飽和単量体を重合して、バインダーを調製する。
工程(1)で得られた結晶性樹脂乳化液を用いる場合、別途離型剤を準備し添加する。離型剤はあらかじめ分散液としたものを用いてもよい。分散液とする場合には、離型剤を融点以上に加熱して溶融させ、離型剤の融点と同じ〜5℃高い温度に調温した上述の界面活性剤溶液を加え、高速攪拌、超音波照射、圧力式乳化機器(例えば、超高圧式ホモジナイザー ゴーリン等)等により機械的な力を加えて乳化し、離型剤分散液を得る。
本工程におけるエチレン性不飽和単量体の重合は、離型剤を含む結晶性樹脂乳化液、または混合乳化液を攪拌しつつ、これらの乳化液に対して、ラジカル重合開始剤の存在下、エチレン性不飽和単量体を滴下して行う。これにより、非晶性樹脂と結晶性樹脂とが複合体化した複合体粒子Bが得られる。ミニエマルジョン法の場合、複合体粒子Bの少なくとも一部は、非晶性樹脂、離型剤、および結晶性樹脂が複合体化した粒子である。
離型剤を含む結晶性樹脂乳化液および混合乳化液には、必要に応じて、さらに工程(1)についての説明で例示されるようなドデシル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を、水性媒体に溶解して加えてもよい。界面活性剤の添加量は、臨界ミセル調製濃度(cmc)の1〜5倍の濃度であることが好ましく、cmcの1.5〜4倍の濃度であることがより好ましい。水性媒体も工程(1)の結晶性樹脂乳化液の調製において説明されたものと同様であり、好ましくは、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等の水である。
工程(2)において用いられるエチレン性不飽和単量体、重合開始剤、および連鎖移動剤は、工程(1−3)と同様である。本工程において添加(滴下)するエチレン性不飽和単量体の量は、乳化液中の固形分全量に対して、5〜150質量%となる量であり、好ましくは20〜100質量%となる量である。滴下速度は、乳化液100質量部に対して、例えば0.05〜5質量部(単量体全体量)/分であり、好ましくは0.1〜1質量部(単量体全体量)/分である。
工程(1−3)で得られた混合乳化液を用いる場合、本工程で用いられるエチレン性不飽和単量体は、工程(1−2)で用いられたエチレン性不飽和単量体と同一であってもよく、異なっていてもよい。
トナー製造時における急な凝集を防止し、トナーの粒度分布をシャープにし、また帯電性を付与する観点から、本工程で用いられるエチレン性不飽和単量体は、好ましくは、イオン性解離基を有するエチレン性不飽和単量体を含む。本発明の一実施形態では、工程(1−2)、および工程(2)におけるエチレン性不飽和単量体全量中、2〜15モル%がイオン性解離基を有するエチレン性不飽和単量体である。
重合開始剤や連鎖移動剤の使用量は、上記の工程(1−2)と同様である。重合開始剤や連鎖移動剤は、あらかじめ乳化液に加えておいても良く、またはエチレン性不飽和単量体と同様に滴下しても良いが、好ましくは、重合開始剤を含む乳化液に対して連鎖移動剤を滴下する。
重合反応は、特に制限されるものではないが、例えば50〜80℃にて、3〜10時間行う。重合は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
重合反応により調製された生成物を、工程(3)におけるバインダーとして用いる。
工程(2)で得られる複合体粒子Bの粒径は、例えば、体積基準のメジアン径(D50)で160〜250nmが好ましく、180〜230nmがより好ましい。複合体粒子Bの粒径が160nm以上であることによりトナー形成時の凝集制御が容易となり、粗大トナー粒子の発生を防止できる。一方、複合体粒子Bの粒径が250nm以下であることにより、バインダーのトナー粒子への取り込みが促進される。なお、複合体粒子Bの粒径の測定方法は、結晶性樹脂粒子の場合と同様である。
<工程(3)>
工程(3)では、上記の工程(2)において調製されたバインダーを反応液中で凝集および融着させて、トナー粒子を形成する。バインダーを凝集、融着する具体的な方法としては、まず、工程(2)で得られたバインダーの含有量が5〜25質量%となるように必要に応じて水性媒体、好ましくは水で希釈し、反応液を調製する。
着色剤等の内添剤を用いる場合は、内添剤(好ましくは着色剤)を添加した反応液にすればよい。着色剤の添加量は、例えば、バインダー100質量部に対して、0.5〜30質量部となる量である。
反応液は、必要に応じて、さらに工程(1)についての説明で例示されるようなドデシル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を含んでも良い。界面活性剤は、例えば水性媒体に溶解した水溶液として用いても良い。界面活性剤の量は、反応液全体に対して0.01〜5質量%が好ましい。水性媒体は工程(1)の結晶性樹脂乳化液の調製において説明されたものと同様であり、好ましくは、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等の水である。
上記のように調製した反応液のpHは、樹脂微粒子の凝集制御の観点から、9〜11程度の塩基性とすることが好ましい。pHの調整には、トリメチルアミン等の水溶性アミン化合物の他、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等の無機アルカリが用いられる。
次いで、反応液に凝集剤を加え、複合体粒子B(および、任意に添加される着色剤等の内添剤や離型剤)を凝集および融着させてトナー粒子を形成する。凝集剤を添加する際の当該分散液の温度は、非晶性樹脂粒子のガラス転移温度以下であることが好ましい。
本工程で用いられる凝集剤は、特に制限されるものではないが、金属塩およびその水和物から選択されるものが好適に使用される。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の1価の金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これら凝集剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。凝集剤の添加量としては、水性媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となる量である。
また、凝集剤を添加した後、室温から加熱により速やかに昇温させ、凝集と同時に融着させる。昇温速度は0.8℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。
凝集した粒子の体積基準のメジアン径が3〜8μmになった時に、塩化ナトリウム水溶液等の塩を添加して凝集を停止させる。加える塩としては、塩化ナトリウムの他、キレート剤等が挙げられる。塩の添加量は、0.7倍モルから3倍モルとなる量であればよい。なお、凝集粒子の体積基準のメジアン径は、例えば、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)により測定できる。
融着温度は、例えば、非晶性樹脂のガラス転移温度+5〜30℃が好ましく、非晶性樹脂のガラス転移温度+10〜25℃がより好ましい。融着温度は、離型剤の融点よりも低く設定されることが好ましい。融着温度まで反応液の液温を昇温させた後、平均円形度が0.920〜1.000となるまで温度を保持する。平均円形度は、平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
トナー粒子の平均円形度が所望の範囲となった時点で、反応液の液温が非晶性樹脂のガラス転移温度より低くなるまで冷却し、融着を停止させる。冷却後の温度は、例えば4〜40℃である。冷却処理における冷却速度は、特に制限されないが、結晶性樹脂と非晶性樹脂との相溶を抑える観点から、速やかに冷却することが好ましく、例えば2〜20℃/分である。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる
<その他の工程>
本発明に係る製造方法においては、工程(3)の後に、任意に、以下の工程の少なくとも1つを含んでもよい。
(濾過、洗浄、乾燥工程)
濾過工程では、トナー粒子を含む反応液からトナー粒子を濾別する。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用して行う濾過法などがあり、特に限定されるものではない。
次いで、洗浄工程で洗浄することにより濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する。洗浄処理は、濾液の電気伝導度が、例えば5〜10μS/cmレベルになるまで水洗処理を行うものである。
上記の濾過工程や洗浄工程は、複数回繰り返して行っても良い。
乾燥工程では、洗浄処理されたトナー粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等公知の乾燥機が挙げられ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することも可能である。乾燥処理されたトナー粒子に含有される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下である。
また、乾燥処理されたトナー粒子同士が凝集している場合には、解砕処理を行ってもよい。解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(外添剤処理工程)
この工程は、乾燥処理したトナー粒子表面へ必要に応じて外添剤を添加、混合してトナーを作製する工程である。上述したように、外添剤の添加により、トナーの流動性や帯電性が改良され、また、クリーニング性の向上等が実現され得る。
(現像剤の調製)
本発明の静電荷像現像用トナーから二成分現像剤のトナー(二成分用現像剤)を調製する場合、鉄、フェライト、マグネタイトなどのキャリアと任意の方法により混合すればよい。キャリアの混合量は、現像剤全体に対し、例えば、5〜10質量%である。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
実施例、および比較例における示差走査熱量分析、および分子量の測定は、以下の手法により行った。
(示差走査熱量分析)
ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)に試料をセットし、0℃から200℃まで10℃/minの昇温速度で第一の昇温を行い、200℃で1分間保持した。その後、10℃/minの冷却速度で冷却した後、0℃で1分間保持を行った。さらに、第二の昇温として0℃から200℃まで10℃/minの速度で昇温を行った。第二の昇温過程において、融点(吸熱ピークのピークトップ)を求めた。
(重量平均分子量(Mw)の測定)
使用機器: HLC−8220(東ソー株式会社製)
カラム: TSKguardcolumn/TSKgel SuperHZMM(3連)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相: テトラヒドロフラン
流速: 0.2ml/min
注入量: 10μl
検出器: 屈折率検出器(IR検出器)。
<結晶性樹脂の合成>
(結晶性ポリエステルジオール1の合成)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素導入管および減圧装置を備えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオール(430質量部)、セバシン酸(691質量部)、および重合触媒としてテトラブトキシチタネート(2質量部)を入れ、180℃まで昇温させた。この温度を保持し、窒素気流下で、生成する水を留去しつつ10時間反応させた。次いで、220℃まで徐々に昇温し、窒素気流下で、生成する水を留去しながら5時間反応させた。さらに、0.007〜0.026MPaの減圧下で、水を留去しながら反応を継続し、酸価が0.1mgKOH/gになった時点で生成物を取出し、結晶性ポリエステルジオール1を得た。結晶性ポリエステルジオール1の重量平均分子量[Mw]は8000、融点は67℃であった。
(結晶性ポリエステルジオール2〜4の合成)
ジオールおよびジカルボン酸を表1のように変更した以外は、上記(結晶性ポリエステルジオール1の合成)と同様にして、結晶性ポリエステルジオール2〜4を合成した。結果を表1に示す。
(ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂1の合成)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素導入管および減圧装置を備えた反応容器に、結晶性ポリエステルジオール1(486質量部)、ジメチロールプロピオン酸(15質量部)およびメチルエチルケトン(500質量部)を投入し、60℃で1時間攪拌を行い、溶液を得た。次いで、この溶液にヘキサメチレンジイソシアネート(33質量部)を加え、80℃で12時間反応させた。その後、メチルエチルケトンを留去し、ウレタン変性結晶性ポリエステル1を得た。ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂1の酸価は13mgKOH/g、重量平均分子量は52,000であった。
なお、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定した。
(ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂2〜4の合成)
結晶性ポリエステルジオール1の代わりに、上記表1に記載の結晶性ポリエステルジオール2〜4を用いたこと以外は、上記(ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂1の合成)と同様にしてウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂2〜4を合成した。
(ウレタン変性結晶性ポリエステル5の合成)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素導入管および減圧装置を備えた反応容器に、結晶性ポリエステルジオール1(486質量部)およびメチルエチルケトン(500質量部)を投入し、60℃で1時間攪拌を行い、溶液を得た。次いで、この溶液にヘキサメチレンジイソシアネート(14質量部)を加え、80℃で10時間反応させた。その後、メチルエチルケトンを留去し、ウレタン変性結晶性ポリエステル5を得た。ウレタン変性結晶性ポリエステル5の酸価は0.1mgKOH/g、重量平均分子量[Mw]は35,000であった。
(ウレタン変性結晶性ポリエステル6の合成)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素導入管および減圧装置を備えた反応容器に、結晶性ポリエステルジオール1(479質量部)およびメチルエチルケトン(500質量部)を投入し、60℃で1時間攪拌を行い、溶液を得た。次いで、この溶液にヘキサメチレンジイソシアネート(13質量部)を加え、80℃で10時間反応させた。その後、無水トリメリット酸(8質量部)およびエステル化触媒としてテトラブトキシチタネート(0.5質量部)を投入し、120℃に昇温して5時間反応させた。その後、メチルエチルケトンを留去し、ウレタン変性結晶性ポリエステル6を得た。ウレタン変性結晶性ポリエステル6の酸価は9mgKOH/g、重量平均分子量[Mw]は36,000であった。
(ウレタン変性結晶性ポリエステル7の合成)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素導入管および減圧装置を備えた反応容器に、結晶性ポリエステルジオール1(452質量部)、2,2−ジメチロールプロピオン酸およびメチルエチルケトン(500質量部)を投入し、60℃で1時間攪拌を行い、溶液を得た。次いで、この溶液にヘキサメチレンジイソシアネート(33質量部)を投入し、80℃で9時間反応させた。その後、無水トリメリット酸(8質量部)およびエステル化触媒としてテトラブトキシチタネート(0.5質量部)を投入し、120℃に昇温して5時間反応させた。その後、メチルエチルケトンを留去し、ウレタン変性結晶性ポリエステル7を得た。ウレタン変性結晶性ポリエステル7の酸価は21mgKOH/g、重量平均分子量[Mw]は52,000であった。
ウレタン結晶性ポリエステル1〜7の物性を下記表2に示す。
(ウレタン変性結晶性ポリエステル乳化液1の調製)
ウレタン変性結晶性ポリエステル1(100質量部)をメチルエチルケトン(400質量部)に投入し、60℃で攪拌を行い溶解させ、さらにトリエチルアミン(3.0質量部)を加え、ウレタン変性結晶性ポリエステル溶液1を調製した。純水(400質量部)にドデシル硫酸ナトリウム(0.4質量部)を溶解した水溶液を攪拌しつつ、上記のウレタン変性結晶性ポリエステル溶液1を加え、ホモジナイザーにより高速攪拌を行い、乳化させた。レーザー式粒度分布測定装置「LA−920」を用いて体積基準のメジアン径(D50)を測定し、体積基準のメジアン径(D50)が一定になったところで攪拌を停止した。さらに、乳化液を減圧してメチルエチルケトンを留去し、ウレタン変性結晶性ポリエステル乳化液1を調製した(固形分濃度は20質量%)。レーザー式粒度分布測定装置「LA−920」を用いて測定した、乳化液中の乳化粒子の体積基準のメジアン径(D50)は190nmであった。
(ウレタン変性結晶性ポリエステル乳化液2〜7の調製)
ウレタン変性結晶性ポリエステル1をウレタン変性結晶性ポリエステル2〜7に変更し、さらにトリエチルアミンの添加量を表2に記載の酸価と等モルになるように変更したこと以外は、(ウレタン変性結晶性ポリエステル乳化液1の調製)と同様にしてウレタン変性結晶性ポリエステル乳化液2〜4、および6〜7を調製した。乳化液中の乳化粒子の粒径を下記表3に示す。ただし、ウレタン変性結晶性ポリエステル5を用いた場合、メチルエチルケトンを除去した段階で凝集を起こし、乳化液を得ることができなかった。
<離型剤分散液1>
(離型剤分散液1の調製)
ドデシル硫酸ナトリウム1質量%を含む界面活性剤水溶液 450質量部を85℃に保温した。離型剤であるペンタエリスリトールテトラベヘネート 50質量部(融点:82℃)を溶融し、上記の界面活性剤水溶液に投入し、クレアミックス(登録商標)(エム・テクニック株式会社製)を用い高速攪拌を行い、乳化を行った。その後室温(25℃)まで冷却し、離型剤分散液1を調製した。分散液中の離型剤の体積基準のメジアン径(D50)は175nm、融点は82℃、固形分濃度は20質量%であった。
(離型剤分散液2および3の調製)
ペンタエリスリトールテトラベヘネートをベヘン酸ベヘニル(融点:73℃)およびステアリン酸ステアリル(融点:60℃)に変更したこと以外は、(離型剤分散液1の調製)と同様にして乳化を行い、離型剤分散液2および3を調製した。離型剤分散液2中の離型剤の平均粒径は170nm、融点は73℃、離型剤分散液3中の離型剤の体積基準のメジアン径(D50)は164nm、融点は60℃であった。また、固形分濃度は共に20質量%であった。
<複合体粒子Bを含む乳化液の調製>
(複合体粒子Bを含む乳化液1の調製)
攪拌装置、温度計、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、離型剤分散液1(82.5質量部)、ウレタン変性結晶性ポリエステル乳化液1(90質量部)、ドデシル硫酸ナトリウム(5質量部)および純水(1015質量部)を投入し、窒素気流下で攪拌を行いつつ、80℃まで昇温させた。
次に、過硫酸カリウム(4質量部)を純水(50質量部)に溶解させた重合開始剤水溶液を反応容器に加えた。その後、スチレン(144質量部)、n−ブチルアクリレート(46質量部)、メタクリル酸(10質量部)およびn−オクチルメルカプタン(2.2質量部)を混合した溶液を、80分かけて反応容器に滴下した。滴下終了後、窒素気流下で攪拌を行いつつ、80℃で6時間、その後、内温を85℃に昇温して1時間重合を行った。重合後の液を室温まで冷却し、複合体粒子Bを含む乳化液1(ウレタン変性結晶性ポリエステル1、離型剤、およびスチレンアクリル樹脂からなる複合体粒子B−1を含む分散液)とした。複合体粒子Bを含む乳化液1の固形分濃度は20質量%であった。スチレンアクリル樹脂(スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体)の体積基準のメジアン径(D50)は200nm、重量平均分子量(Mw)は18,000、ガラス転移温度は58℃、酸価は32.6mgKOH/gであった。
(複合体粒子Bを含む乳化液2〜4および6〜7の調製)
ウレタン変性結晶性ポリエステル乳化液1の代わりに、ウレタン変性結晶性ポリエステル乳化液2〜4、および6〜7を用いたこと以外は、上記(複合体粒子Bを含む乳化液1の調製)と同様にして、複合体粒子Bを含む乳化液2〜4、および6〜7を調製した。
(複合体粒子Bを含む乳化液8の調製)
攪拌装置、温度計、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、離型剤分散液1(82.5質量部)、ウレタン変性結晶性ポリエステル乳化液1(90質量部)、ドデシル硫酸ナトリウム(5質量部)、および純水(1015質量部)を投入し、窒素気流下で攪拌を行いつつ、80℃まで昇温させた。
次に、過硫酸カリウム(4質量部)を純水(50質量部)に溶解させた重合開始剤水溶液を反応容器に加えた。その後、スチレン(160質量部)、n−ブチルアクリレート(30質量部)、メタクリル酸(10質量部)およびn−オクチルメルカプタン(2.2質量部)を混合した溶液を、80分かけて反応容器に滴下した。滴下終了後、窒素気流下で攪拌を行いつつ、80℃で6時間、その後、内温を85℃に昇温して1時間重合を行った。重合後の液を室温まで冷却し、複合体粒子Bを含む乳化液8(ウレタン変性結晶性ポリエステル1、離型剤、およびスチレンアクリル樹脂からなる複合体粒子B−8を含む分散液)とした。複合体粒子Bを含む乳化液8の固形分濃度は20質量%であった。スチレンアクリル樹脂(スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体)の体積基準のメジアン径(D50)は215nm、重量平均分子量(Mw)は19,000、ガラス転移温度は76℃、酸価は32.6mgKOH/gであった。
(複合体粒子Bを含む乳化液9の調製)
攪拌装置、温度計、冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に、離型剤分散液1(82.5質量部)、ウレタン変性結晶性ポリエステル乳化液1(250質量部)、ドデシル硫酸ナトリウム(5質量部)、および純水(1015質量部)を投入し、窒素気流下で攪拌を行いつつ、80℃まで昇温させた。
次に、過硫酸カリウム(4質量部)を純水(50質量部)に溶解させた重合開始剤水溶液を反応容器に加えた。その後、スチレン(150質量部)、n−ブチルアクリレート(46質量部)、メタクリル酸(4質量部)およびn−オクチルメルカプタン(2.2質量部)を混合した溶液を、80分かけて反応容器に滴下した。滴下終了後、窒素気流下で攪拌を行いつつ、80℃で6時間、その後、内温を85℃に昇温して1時間重合を行った。重合後の液を室温まで冷却し、複合体粒子Bを含む乳化液9(ウレタン変性結晶性ポリエステル1、離型剤、およびスチレンアクリル樹脂からなる複合体粒子B−9を含む分散液)とした。複合体粒子Bを含む乳化液9の固形分濃度は20質量%であった。スチレンアクリル樹脂(スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体)の体積基準のメジアン径(D50)は230nm、重量平均分子量(Mw)は20,000、ガラス転移温度は59℃、酸価は13.0mgKOH/gであった。
(複合体粒子Bを含む乳化液10〜11の調製)
離型剤分散液1の代わりに、離型剤分散液2および3を用いたこと以外は、上記(複合体粒子Bを含む乳化液1の調製)と同様にして、複合体粒子Bを含む乳化液10〜11を調製した。
複合体粒子Bを含む乳化液に含まれるスチレンアクリル樹脂の物性を、下記表4に示す。
<着色剤乳化液の調製>
銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)(30質量部)を、2質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液(170質量部)に投入し、クレアミックス(登録商標)(エム・テクニック株式会社製)を用いて高速攪拌を行い、着色剤乳化液を調製した。着色剤乳化液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径(D50)は120nm、固形分濃度は15質量%であった。
<トナー粒子の調製と示差走査熱量分析>
(トナー粒子(1)の形成)
攪拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に、複合体粒子Bを含む乳化液1 800質量部、着色剤分散液 33.8質量部、純水500質量部、およびドデシル硫酸ナトリウム 1.7質量部を投入し、攪拌して反応液1を調製した。次いで、0.1N−水酸化ナトリウム水溶液を用い、反応液1のpHを10に調整した。さらに、攪拌を行いつつ、塩化マグネシウム・6水和物 20質量部を純水 20質量部に溶解した水溶液を加え、内温を80℃まで上昇させた。攪拌を継続し内温を80℃に維持し、コールターカウンターIII(ベックマン・コールター株式会社製)を用い粒径を測定しつつ反応を行った。体積基準のメジアン径が6.3μmに達したところで、塩化ナトリウム 1.5質量部を純水 7.5質量部に溶解した塩化ナトリウム水溶液を加え、粒子成長(凝集)を停止させた。その後、攪拌を行いつつ80℃に加温し、上記のコールターカウンターIIIで体積基準のメジアン径を確認し、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2100」(シスメックス株式会社製)を用い、円形度を測定し、円形度が0.96に達した時点で冷却を行った。この粒子を濾過、洗浄を繰り返した後乾燥を行い、トナー粒子(1)を得た。トナー粒子(1)の体積基準のメジアン径は6.23μm、円形度は0.967、ガラス転移温度は57℃であった。また、ウレタン変性結晶性ポリエステル1由来の融点は65℃であった。
(トナー粒子(2)〜(4)の形成)
複合体粒子Bを含む乳化液1を複合体粒子Bを含む乳化液2〜4に変更したこと以外は、上記(トナー粒子(1)の形成)と同様の方法により、トナー粒子(2)〜(4)の形成を行った。
(トナー粒子(5)〜(6)の形成)
複合体粒子Bを含む乳化液1を複合体粒子Bを含む乳化液10および11に変更したこと以外は、上記(トナー粒子(1)の形成)と同様の方法により、トナー粒子(5)〜(6)の形成を行った。
(トナー粒子(7)〜(10)の合成)
複合体粒子Bを含む乳化液1を、複合体粒子Bを含む乳化液6〜9に変更したこと以外は、上記(トナー粒子(1)の形成)と同様の方法により、トナー粒子(7)〜(10)の形成を行った。複合体粒子Bを含む乳化液6を用いた場合には、凝集しない微粒子が存在し、反応液の遠心分離を行って確認したところ、凝集しない微粒子はウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂が主成分であることがわかった。さらに、複合体粒子Bを含む乳化液7を用いた場合には、凝集の制御が困難で、粗粉が大量に発生しトナー粒子が得られなかった。このため、複合体粒子Bを含む乳化液6および7を用いた場合を除き、複合体粒子Bを含む乳化液8および9を用いて合成したトナー粒子(9)および(10)を下記表5に記載した。
(トナー粒子の示差走査熱量分析)
上記で調製したトナー粒子(1)〜(6)、および(10)を用い、上記方法に従って示差走査熱量分析を行った。
トナー粒子の構成を下記表5に、DSCの分析結果を下記表6にそれぞれ示す。
<現像剤の調製>
上記のトナー粒子1〜6、および9〜10に対し、外添剤として疎水性シリカ(数平均一次粒子径=10nm、疎水化度=60)を1質量%(トナー全量中)となるように添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機株式会社製)により混合した。その後、目開き45μmの篩を用い粗大粒子を取り除き、トナーA〜Hを得た。
(現像剤1〜8の調製)
アクリル樹脂で被覆した体積基準のメジアン径(D50)35μmのフェライトキャリアを、トナーA〜Hに対し、トナー濃度が6質量%となるよう添加し、ヘンシェルミキサーにて混合することにより現像剤1〜8を製造した。下記の各種試験は、上記の現像剤1〜8を用いて行った。
<評価>
(低温定着性)
市販の複合機「bizhub PRO(登録商標)C6500」(コニカミノルタ株式会社製)の定着ローラの表面温度を、100〜180℃の範囲で、5℃刻みで変化可能に改造した装置を用い、定着実験を行った。
「bizhub PRO(登録商標)C6500」を2台用い、ここに評価する現像剤を入れ、各温度において、常温(温度20℃、相対湿度50%RH)の環境下で秤量350g/m2の紙を画像支持体とし、11g/m2のトナー付着量で現像し、同様の環境下で定着ローラの表面温度を、100〜180℃の範囲で、5℃刻みで変化させ定着を行った。その後、定着ベタ画像を、折り機を用いて折り、これに0.35MPaの空気を吹き付け、折り目の状態を、限度見本を参照しながら下記の5段階で評価し、ランク3の定着温度を下限定着温度とした。130℃以下なら合格である。
ランク5:全く折れ目に剥離無し
ランク4:一部折れ目に従い剥離有り
ランク3:折り目に従い細い線状の剥離有り
ランク2:折り目に従い太い剥離有り
ランク1:画像に大きな剥離有り。
(定着分離性試験)
定着用ヒートローラの表面温度を最低定着温度+20℃とし、搬送方向に対して垂直方向に、5cm幅のベタ黒帯状画像を有するA4画像を縦送りで搬送した際における、画像側の定着ローラと紙との分離性を下記の評価基準により判定した。△以上が合格である。
◎:紙がカールすることなく分離爪に触れずに定着ローラと分離する
○:紙が定着ローラと分離爪で分離するが、画像上に分離爪の跡はない
△:紙が定着ローラと分離爪で分離するが、画像上の分離爪の跡はほとんど目立たない
×:紙が定着ローラと分離爪で分離し、画像上に分離爪跡が残る、または定着ローラに巻きついてしまい定着ローラと分離できない。
(耐ドキュメントオフセット性)
「bizhub PRO(登録商標)C6500」(コニカミノルタ株式会社製)を用い、トナー付着量9g/m2のベタ画像を二枚出力し、定着温度150℃、定着線速420mm/secで定着を行った。得られた定着画像の画像部同士を重ね、その上に80g/cm2相当の重量の荷重をかけ、温度60℃、相対湿度50%RHの環境に3日間放置した後、重ねた二枚の定着画像を剥離し、画像欠損について下記の評価基準に従って評価した。本発明においては、「G5」または「G4」である場合を合格とした。
評価基準
G1:画像部が定着されている紙ごと剥がれて、画像欠損が激しく、また非画像部への明らかな画像の移行がみられる
G2:画像部のところどころに画像欠損の白抜けが発生している
G3:互いの画像表面に画像のあれやグロスの低下は発生するが、画像としての欠損はほとんど無い。非画像部に若干の画像の移行がみられる
G4:重ねた二枚の定着画像を剥離するときに、パリッという音がし、非画像部にわずかな画像の移行が見られるが、画像欠損はない
G5:画像部、非画像部ともに画像欠損や画像の移行が見られない。
評価結果を表7に示す。
本発明に係るトナーにより、十分な低温定着性、定着分離性、および耐ドキュメントオフセット性が得られる。一方比較例に係るトナーを用いた場合、低温定着性、定着分離性、および耐ドキュメントオフセット性が、本発明に比べて劣っていることが分かる。