JP6028414B2 - 静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
一般式(A):HOOC−(CR1=CR2)n−COOH
(式中、R1、R2は水素原子、メチル基又はエチル基であって、互いに同じであっても異なっていてもよい。nは1又は2の整数である。)
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)及び(2)を構成するスチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを、
多価カルボン酸モノマー又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有する両反応性モノマー、及び未変性のポリエステル樹脂の存在下で重合させる工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
次にコア粒子の結着樹脂(コア用樹脂ともいう。)とシェル層に用いられるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂について説明する。
一般式(A):HOOC−(CR1=CR2)n−COOH
(式中、R1、R2は水素原子、メチル基又はエチル基であって、互いに同じであっても異なっていてもよい。nは1又は2の整数である。)
このような不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来の構造単位が含有されていることにより、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を一層確実に形成することができる。また、本発明においては、一般式(A)で表される不飽和脂肪族ジカルボン酸を重合反応に用いる場合は無水物の形態で用いることもできる。
以上のようなシェル樹脂に含有されるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の4つが挙げられる。
(A)ポリエステルセグメントを予め重合しておき、当該ポリエステルセグメントに両反応性モノマーを反応させ、さらに、スチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを反応させることにより、スチレン−アクリル系重合セグメントを形成する方法。すなわち、スチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを、ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有する両反応性モノマー、及び未変性のポリエステル樹脂の存在下で重合させる方法。
(B)スチレン−アクリル系重合体セグメントを予め重合しておき、当該スチレン−アクリル系重合体セグメントに両反応性モノマーを反応させ、さらに、ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを反応させることにより、ポリエステルセグメントを形成する方法。
(C)ポリエステルセグメント及びスチレン−アクリル系重合体セグメントをそれぞれ予め重合しておき、これらに両反応性モノマーを反応させることにより、両者を結合させる方法。
(D)ポリエステルセグメントを予め重合し、そのポリエステルセグメントの重合性不飽和基にスチレン−アクリル系重合性モノマーを付加重合、あるいはスチレン−アクリル系重合体セグメント中のビニル基と反応させ両者を結合する方法。
(1)ポリエステルセグメントを形成するための未変性のポリエステル樹脂と、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、両反応性モノマーとを混合する混合工程、
(2)芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを、両反応性モノマーと未変性のポリエステル樹脂の存在下で重合させる重合工程を経ることにより、ポリエステルセグメントの末端にスチレン−アクリル系重合体セグメントを形成させることができる。この場合、ポリエステルセグメントの末端のヒドロキシ基と両反応性モノマーのカルボキシ基とがエステル結合を形成し、両反応性モノマーのビニル基が芳香族系ビニルモノマー又は(メタ)アクリル酸系モノマーのビニル基と結合することによってスチレン−アクリル系重合体セグメントが結合される。上記合成法の中で(A)の方法が最も好ましい。
なお、本明細書においては、両反応性モノマーはガラス転移点の計算に用いないものとする。
スチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、ラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するものである。
スチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための両反応性モノマーとしては、ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び/又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有するモノマーであればよく、具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などを用いることができる。本発明においては両反応性モノマーとして、アクリル酸、又はメタクリル酸を用いることが好ましい。
本発明に係るスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を作製するために用いるポリエステル樹脂は、多価カルボン酸モノマー(誘導体)及び多価アルコールモノマー(誘導体)を原料として適宜の触媒の存在下で重縮合反応によって製造されたものである。
多価アルコールモノマーとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、及びテトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
前述の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合させる重合工程においては、ラジカル重合開始剤の存在下で重合を行うことが好ましく、ラジカル重合開始剤の添加の時期は特に制限されないが、ラジカル重合の制御が容易であるという点で、混合工程の後で添加することが好ましい。
前述の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合させる重合工程においては、スチレン−アクリル系重合体セグメントの分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、及びメルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
本発明のトナーを構成するシェル層は、前述のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含むシェル樹脂よりなるものである。
本発明において、コア粒子は少なくとも結着樹脂を含有し、必要に応じて着色剤、ワックス(離型剤ともいう)、荷電制御剤を含有してもよく、コア粒子を構成する結着樹脂はスチレン−アクリル系樹脂とスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含有する。スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は結着樹脂全量の5質量%から30質量%含有されることが好ましい。この範囲であると、低温定着性と定着分離性能を両立させることができる。
コア粒子を構成するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、前述のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が用いられる。
本発明のコア粒子を構成するスチレン−アクリル系樹脂に用いられる重合性モノマーとしては、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーであり、ラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するものが好ましい。例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレンなど及びその誘導体が挙げられる。これらの芳香族系ビニルモノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のコア粒子を構成するスチレン−アクリル系樹脂は乳化重合法で用いられることが好ましい。乳化重合は、水系媒体中にスチレン、アクリル酸エステルなどの重合性モノマーを分散し重合することによって得ることができる。水系媒体に重合性モノマーを分散するためには界面活性剤を用いることが好ましく、また重合には重合開始剤、連鎖移動剤を用いることができる。
スチレン−アクリル系樹脂の重合に使用される重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができ、前述のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のスチレン−アクリル系重合体セグメントの重合に用いられる重合開始剤が使用できる。重合に使用される重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤が好適に用いられる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化−tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸−tert−ブチル、過酢酸−tert−ブチル、過安息香酸−tert−ブチル、過フェニル酢酸−tert−ブチル、過メトキシ酢酸−tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸−tert−ブチル等の過酸化物類;2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミノジプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、及びポリ(テトラエチレングリコール−2,2′−アゾビスイソブチレート)等のアゾ化合物等が挙げられる。
本発明のスチレン−アクリル系樹脂の製造においては、上記の重合性モノマーとともに連鎖移動剤を添加しても良い。連鎖移動剤を添加することによって重合体の分子量を制御できる。連鎖移動剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、前述のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のスチレン−アクリル系重合体セグメントの重合に用いられる連鎖移動剤を使用することができ、アルキルメルカプタン、及びメルカプト脂肪酸エステルが挙げられる。連鎖移動剤の添加量は、所望する分子量や分子量分布によって異なるが、具体的には重合性モノマーに対して、0.1〜5質量%の範囲で添加するのが好ましい。
スチレン−アクリル系樹脂を水系媒体中に分散し乳化重合法により重合する場合は、分散した液滴の凝集を防ぐために通常、分散安定剤が添加される。分散安定剤としては、公知の界面活性剤が使用可能であり、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の中から選択される分散安定剤を用いることができる。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。なお、分散安定剤は着色剤やオフセット防止剤等の分散液にも使用できる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、及びモノデカノイルショ糖などが挙げられる。
本発明のトナーに使用される着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、又はランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、又はコバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、又はマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などを用いることができる。
本発明のトナーにはワックスを含有させることができる。ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、及びクエン酸ベヘニルなどのエステルワックス類などが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
荷電制御剤粒子を構成する荷電制御剤としては種々の公知のもので、かつ水系媒体中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩、あるいはその金属錯体などが挙げられる。
次に本発明で用いられるトナー母体粒子について説明する。なお、本発明で言う「トナー母体粒子」とは、コア粒子表面にシェル層を有して成るコア・シェル構造を有する粒子のことである。トナー母体粒子は、そのままでもトナー粒子として使用することができるが、通常、外添剤を添加して使用することが好ましい。
また平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
次に、本発明で用いられるトナー粒子の粒径について説明する。本発明で用いられるトナー粒子の粒径は、体積基準メディアン径(D50)で3μm以上10μm以下のものであることが好ましい。
本発明のトナーの軟化点は、90〜115℃が好ましい。トナーの軟化点がこの範囲である時に、好ましい低温定着性が得られる。
本発明のトナーは、結着樹脂と必要に応じて着色剤と、ワックスなどの内添剤とを用いてトナー母体粒子を得、このトナー母体粒子に対して必要に応じて外添剤を添加することによってトナーを製造することができる。
(1)水系媒体中に着色剤粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)着色剤粒子の分散液と結着樹脂粒子の分散液とを混合して、着色剤粒子及び結着樹脂粒子を凝集、融着させてトナー粒子を形成する工程
(4)トナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(5)トナー粒子を乾燥する工程
(6)トナー粒子に外添剤を添加する工程
上記(2)の工程において結着樹脂粒子を分散する手法としては、乳化重合により得られる乳化重合粒子分散液を用いることが好ましい。また、結着樹脂粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよい。このような構成の結着樹脂粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調製し、この分散液に重合開始剤と重合性モノマーとを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。
コア粒子の形成方法としては、公知の方法で製造することができるが、水系媒体に分散した樹脂粒子と着色粒子などを凝集させてコア粒子を形成する乳化凝集法が好ましく用いられる。
コア粒子表面に均一にシェル層を形成させる場合、乳化凝集法を採用するのが好ましい。乳化凝集法を採用する場合、コア粒子の水分散液中に、シェル粒子の乳化分散液を添加し、コア粒子の表面にシェル粒子を凝集/融着させてシェル層を形成させることができる。
水系媒体中には、分散した液滴の凝集を防ぐために通常、分散安定剤が添加される。分散安定剤としては、公知の界面活性剤が使用可能であり、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤等の中から選択される分散安定剤を用いることができる。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。なお、分散安定剤は着色剤やオフセット防止剤等の分散液にも使用できる。
着色剤粒子の分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理においては、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機は公知の分散機を用いることができる。また、使用することのできる界面活性剤としては、公知のものを用いることができる。
着色剤粒子の水系媒体中における分散粒径は体積平均粒径、すなわち体積基準におけるメディアン径であり、このメディアン径は、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)を用いて測定した値である。
(1)サンプル屈折率:1.59
(2)サンプル比重:1.05(球状粒子換算)
(3)溶媒屈折率 :1.33
(4)溶媒粘度 :30℃にて0.797
20℃にて1.002
測定セルにイオン交換水を入れ、ゼロ点調節を行って測定を行う。
次に、乳化凝集法において樹脂粒子と着色剤粒子を凝集会合させる工程について説明する。
本発明ではトナーの流動性や帯電特性を改善する目的で、外添剤を添加することができる。
本発明のトナーは、キャリアとトナーより構成される二成分現像剤として、又、トナーのみから構成される非磁性一成分現像剤として使用することが可能である。
本発明のトナーが用いられる画像形成装置は、静電潜像担持体(代表的には電子写真感光体であり、以下、単に感光体と述べる)上に、帯電手段、露光手段、トナーを含む現像剤による現像手段、現像手段により形成したトナー像を中間転写体を介して転写材に転写する転写手段とを有するものである。特に、感光体上のトナー像を中間転写体に順次転写するカラー画像形成装置、各色毎の複数の感光体を中間転写体上に直列配置させたタンデム型カラー画像形成装置等に用いるのが有効である。
(1)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B〕の合成
(2)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂分散液(B)の作製
(3)コア用樹脂粒子分散液(A)の作製
(4)着色剤粒子分散液(1)の作製
(5)凝集・融着〜外添剤処理工程
以下順を追って説明する。
(1−1)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕の合成
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 117質量部
フマル酸 82質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 2質量部
を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した後、
アクリル酸 10質量部
スチレン 30質量部
ブチルアクリレート 7質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、アクリル酸、スチレン、ブチルアクリレートを除去することにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕を得た。このスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕のガラス転移点は60℃、軟化点は105℃であった。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕の合成において、モノマーの構成を表1のように変更した以外は同様にして、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B2〕〜〔B10〕を合成した。
(ポリエステル樹脂(a)の合成)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物360質量部、テレフタル酸80質量部、フマル酸55質量部、及び重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出した。これをポリエステル(a)とする。ポリエステル(a)は、Tgは65℃、数平均分子量は4500、重量平均分子量は13500であった。
温度計及び撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン430質量部及び上記で合成したポリエステル樹脂(a)を入れて溶解し、窒素置換後、スチレン100質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル24質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.88質量部、及びキシレン100質量部の混合溶液を170℃で3時間滴下重合し、さらにこの温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B11〕を得た。
上記(1−1)のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕の合成において、アクリル酸、スチレン、ブチルアクリレート及び重合開始剤を添加しなかった他は同様にして未変性のポリエステル樹脂〔B12〕を合成した。
(2−1)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B1〕の調製
得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメディアン径(D50)が250nmであるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕が分散された「スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B1〕」を調製した。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B1〕の調製で用いたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕をスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B2〕〜〔B10〕に変更した他は同様にしてスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B2〕〜〔B11〕を調製した。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B1〕の調製で用いたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕を未変性のポリエステル樹脂〔B12〕に変更した他は同様にして、未変性のポリエステル樹脂粒子分散液〔B12〕を得た。
(ポリエステル樹脂(b)の合成)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物500質量部、テレフタル酸117質量部、マレイン酸82質量部、及び重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出した。これをポリエステル樹脂(b)とする。ポリエステル樹脂(b)は、ガラス転移点は60℃、数平均分子量は5000、重量平均分子量は13000であった。
温度計及び撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン430質量部及び上記で合成したポリエステル樹脂(b)を入れて溶解し、窒素置換後、アクリル酸2−エチルヘキシル78質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.88質量部、及びキシレン100質量部の混合溶液を170℃で3時間滴下重合し、さらにこの温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い、スチレン成分を含まないアクリル変性ポリエステル樹脂〔B13〕を得た。このアクリル変性ポリエステル樹脂〔B13〕のガラス転移点は63℃、軟化点は109℃であった。
(3−1)第1段重合(「樹脂微粒子(a1)」分散液の調製)
撹拌装置、温度センサ、温度制御装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に予めアニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
モノマー溶液(1)
スチレン 540質量部
n−ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
n−オクチルメルカプタン 17質量部
からなるモノマー溶液(1)を3時間かけて滴下し、滴下終了後、78℃において1時間にわたって加熱・撹拌することで重合(第1段重合)を行い「樹脂微粒子(a1)」の分散液を調製した。
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、
スチレン 94質量部
n−ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n−オクチルメルカプタン 5質量部
からなるモノマー溶液に、離型剤としてパラフィンワックス(融点:73℃)51質量部を添加し、85℃に加温して溶解させてモノマー溶液(2)を調製した。
上記の「樹脂微粒子(a11)」の分散液に、重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、80℃の温度条件下において、
モノマー溶液(3)
スチレン 230質量部
n−ブチルアクリレート 100質量部
n−オクチルメルカプタン 5.2質量部
からなるモノマー溶液(3)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第3段重合)を行った。その後、28℃まで冷却し、アニオン性界面活性剤溶液中にスチレン−アクリル系樹脂を含有するコア用樹脂粒子(A)が分散した「コア用樹脂粒子分散液(A)」を調製した。
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤の粒子を分散して有する「着色剤分散液(1)」を調製した。この分散液の粒子径を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)を用いて測定したところ、117nmであった。
≪トナーの作製≫
(5−1)トナー1の作製
(凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサ、冷却管を取り付けた反応容器に、コア用樹脂粒子分散液として「コア用樹脂粒子分散液(A)」を固形分換算で288質量部、同じくコア用樹脂粒子分散液として「スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B3〕」(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1))を固形分換算で15.2質量部、イオン交換水2000質量部を投入後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
凝集・融着工程にて生成した粒子(「トナー母体粒子1の分散液」)を遠心分離機で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「トナー母体粒子〔1〕」を作製した。
上記の「トナー母体粒子〔1〕」に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー1」を作製した。
前記「(5−1)トナー1の作製」において、コア用樹脂粒子分散液とシェル用樹脂粒子分散液の種類と添加量を表2のように変更した以外は同様にして「トナー2〜トナー28」を作製した。
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子を5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成し、体積基準メディアン径50μmのキャリアを得た。
(1)低温定着特性
画像評価は、市販のカラー複写機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)の現像装置に、上記で作製した現像剤を順次装填して評価を行った。なお、定着温度、トナー付着量、システム速度を自由に設定できるように改造した。評価紙としてNPi上質紙128g/m2(日本製紙製)を用い、トナー付着量11.3g/m2のベタ画像を定着速度300mm/secで定着上ベルト150〜200℃、定着下ローラは上ベルトより20℃低く設定し5℃毎の水準で定着させた時に、コールドオフセットが発生しない定着下限温度を評価した。この定着下限温度が低ければ低い程、定着性が優れている。
◎:定着下限温度が150℃未満
○:定着下限温度が150℃以上165℃未満
×:定着下限温度が165℃以上
(2)定着分離性
定着用ヒートローラの表面温度を180℃とし、搬送方向に対して垂直方向に5cm幅のベタ黒帯状画像を有するA4サイズの画像を縦送りで搬送した際における画像側の定着ローラ(加熱ローラ)と紙との分離性を下記の基準により判定した。
◎:紙がカールすること無く定着ローラと分離する。
常温常湿(20℃、50%RH)環境条件で、A4版の上質紙(65g/m2)上にテスト画像として印字率5%の帯状ベタ画像を形成する印刷を10万枚行い、印刷初期と10万枚印刷後のトナーの帯電量を測定し、下記評価基準にしたがって評価した。帯電量は現像器内の二成分現像剤をサンプリングし、ブローオフ帯電量測定装置「TB−200」(東芝ケミカル(株)製)を用いて測定した。
◎:印刷初期と10万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが4μC/g未満
○:印刷初期と10万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが4μC/g以上6μC/g未満
△:印刷初期と10万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが6μC/g以上8μC/g未満
×:印刷初期と10万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが8μC/g以上
以上の評価結果を表3に示した。
Claims (7)
- 少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けて成るコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、該コア粒子を構成する結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂とスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)を含有し、該シェル層がスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(2)を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 前記コア粒子を構成する結着樹脂が、前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)を5質量%以上30質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)又は(2)におけるスチレン−アクリル系重合体セグメントの含有割合が、5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)及び(2)におけるスチレン−アクリル系重合体セグメントの含有割合が、5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)及び(2)を構成するための多価カルボン酸成分中における不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構造単位の含有割合が、25モル%以上75モル%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記不飽和脂肪族ジカルボン酸が、下記一般式(A)で表されることを特徴とする請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
一般式(A):HOOC−(CR1=CR2)n−COOH
(式中、R1、R2は水素原子、メチル基又はエチル基であって、互いに同じであっても異なっていてもよい。nは1又は2の整数である。) - 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)及び(2)を構成するスチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを、
多価カルボン酸モノマー又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有する両反応性モノマー、及び未変性のポリエステル樹脂の存在下で重合させる工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
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