JP6028414B2 - 静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は静電荷像現像用トナーに関し、更に詳しくは電子写真方式の画像形成装置に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
近年、静電荷像現像用トナーの分野では、市場からの要求に応じてそれに適した電子写真装置、及びこれに使用可能なトナーの開発が急ピッチで進められている。例えば、高画質化に対応したトナーとしては、粒径分布がシャープであることが求められる。トナーの粒径が揃い、粒径分布をシャープにすると個々のトナー粒子毎の現像挙動が揃うことにより、微小ドットの再現性が著しく向上する。しかしながら、従来の粉砕法によるトナー製造方法では、トナーの粒径分布をシャープにすることは容易ではなかった。
これに対して、トナー粒子の形状や粒度分布を任意に制御可能な製造方法として乳化凝集法が提案されている。この方法は樹脂粒子の乳化分散液に着色剤粒子分散液や必要に応じてワックス分散液を混合し、撹拌しながら、凝集剤添加、pH制御等により、それぞれの粒子を凝集させ、さらに加熱によって粒子を融着させてトナー粒子を得るものである。
また、省エネルギーの観点から少ないエネルギーで定着できる低温定着トナーの開発が進められている。トナーの定着温度を下げるためには、結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げることが必要である。しかしながら、結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げるため、結着樹脂のガラス転移点や分子量を下げるとトナーの耐熱保管性や定着分離性能が低下するなど新たな問題が生じる。
低温定着性と耐熱保管性を両立させるためにトナーをコア・シェル型の構造に制御する技術が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、低温定着性に優れたコア粒子表面に軟化点が高く耐熱性に優れた樹脂から成るシェル層を形成することで、低温定着性と耐熱保管性を両立させることが可能となる。特に乳化凝集法によるトナー製造においては、この様な形状制御が容易に行えるといった利点がある。しかし近年プロダクションプリント領域において、複写機、プリンターの高速化及び対応紙種の拡大が進む中、前記のコア・シェル型トナーでは更なる低温定着化と耐熱保管性の両立が困難になってきている。
この問題を解決するため、シェル層にポリエステル樹脂を用いたトナーが開発されている(例えば、特許文献2参照。)。ポリエステル樹脂は、スチレン−アクリル系樹脂と比較して高いガラス転移点を維持したまま低軟化点設計が容易に行えるという利点があり、シェル層にポリエステル樹脂を用いることで、低温定着性・耐熱保管性の良好なトナーを得ることができる。
しかし、スチレン−アクリル系樹脂とポリエステル樹脂は親和性が乏しく、コアにスチレン−アクリル系樹脂を用い、シェル層にポリエステル樹脂を用いた場合、薄層で均一なシェル層の形成が困難であるため、十分な耐熱保管性を得ることができなかった。また、コアとシェルの融着が起こりにくいためにトナーの形状制御が困難で、シェル層の表面が均一で、緻密かつ平滑なトナーを作ることが難しく、耐破砕性が劣るため、連続プリント時に現像機内でトナーが撹拌されることによってシェル層の剥離が起こり、その結果、帯電量が大きく変動し、そのため画像ノイズが生じ画質が低下するという課題もあった。
これらの課題を解決するため、シェル層にウレタン変性ポリエステル樹脂又は/及びアクリル変性ポリエステル樹脂を用いたコア・シェル構造トナーが提案されている(例えば特許文献3参照。)。また、ラジカル重合体ユニットを2価の架橋基を介してポリエステル樹脂に結合させた樹脂をトナー樹脂に用いて、低温定着性、オフセット性、帯電量の湿度依存性を改良する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
特開2005−221933号公報 特開2005−338548号公報 特開2005−173202号公報 特開2011−28257号公報
スチレン−アクリル系樹脂とポリエステル樹脂との親和性を改善するため、ウレタン変性ポリエステル樹脂、又はアクリル変性ポリエステル樹脂をシェル層を構成する樹脂として用いることによって、コアにスチレン−アクリル系樹脂を用いた場合でもある程度均一なシェル層を形成することができる。しかし、シェル層にスチレン成分が存在しないため、シェル層の樹脂のガラス転移点が高くなり、低温定着性能が損なわれてしまう。そのため低温定着性を高めるためにコア樹脂の軟化点を下げるなどさらに低温定着性を付与した場合、定着分離性が劣る結果となり、低温定着性と定着分離性、耐破砕性及び帯電安定性を両立させるという点において未だ十分とは言えないものであった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、その解決課題は、コア粒子の表面に薄層で均一なシェル層を設けることによってプロダクションプリント領域に使用される高速機においても十分な低温定着性を有しながら定着分離性にも優れ、かつ耐破砕性に優れ、その結果として帯電安定性にも優れたコア・シェル構造の静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することである。
本発明の上記課題は以下の構成により解決される。
1.少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けて成るコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、該コア粒子を構成する結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂とスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)を含有し、該シェル層がスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(2)を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
2.前記コア粒子を構成する結着樹脂が、前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)を5質量%以上30質量%以下含有することを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
3.前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)又は(2)におけるスチレン−アクリル系重合体セグメントの含有割合が、5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
4.前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)及び(2)におけるスチレン−アクリル系重合体セグメントの含有割合が、5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
5.前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)及び(2)を構成するための多価カルボン酸成分中における不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構造単位の含有割合が、25モル%以上75モル%以下であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
6.前記不飽和脂肪族ジカルボン酸が、下記一般式(A)で表されることを特徴とする第5項に記載の静電荷像現像用トナー。
一般式(A):HOOC−(CR=CR−COOH
(式中、R、Rは水素原子、メチル基又はエチル基であって、互いに同じであっても異なっていてもよい。nは1又は2の整数である。)
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)及び(2)を構成するスチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを、
多価カルボン酸モノマー又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有する両反応性モノマー、及び未変性のポリエステル樹脂の存在下で重合させる工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
本発明は上記の構成とすることによって、低温定着性と定着分離性、耐破砕性及び帯電安定性に優れた静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明は、静電荷像現像用トナーに関するもので、トナーとしてはコア粒子表面にシェル層を有して成るコア・シェル構造の静電荷像現像用トナーに関するものであり、少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子表面にシェル層を設けて成るコア・シェル構造の静電荷像現像用トナーにおいて、該コア粒子を構成する結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂と、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)を含有し、該シェル層がスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(2)を含有することを特徴としている。
本発明の静電荷像現像用トナーのシェル層はスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(2)が用いられる。ここで、シェル層の樹脂として、スチレン−アクリル変性ポリエステル複合樹脂を用いるのは以下の理由による。すなわち、一般にトナー樹脂としてのポリエステル樹脂の利点は、スチレン−アクリル系樹脂に比べて高いガラス転移点を維持したまま低軟化点設計が容易に行えることにある。このためポリエステル樹脂は低温定着性と定着分離性とを両立するために好ましい樹脂である。しかし、前述したようにシェル層を構成するポリエステル樹脂とコア粒子に主成分として用いられるスチレン−アクリル系樹脂とは親和性が乏しく、薄層で均一なシェル層を形成することが難しい。また、このようなトナーはシェル層の被膜が脆いために破砕されやすいという問題があった。すなわち、現像器内で攪拌等のストレスを受けることでシェル層の被膜が剥がれ、そのため長期間プリントした場合に帯電量が安定せずかぶり等の画像汚れが発生してしまう。そこで、シェル層に用いられるポリエステル樹脂にスチレン−アクリル系樹脂を結合させたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(2)とすることでポリエステル樹脂の高いガラス転移点と低軟化点を維持したままコア粒子のスチレン−アクリル系樹脂との親和性を高めることにより、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することが可能となり耐破砕性が向上し、耐破砕性が向上したことによって、帯電安定性が向上した。
さらにコア粒子を構成する結着樹脂にスチレン−アクリル系樹脂とスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)とを併用することによって、低温定着性と定着分離性を両立させることが可能となったものである。
すなわち、ポリエステル樹脂は高いガラス転移点を有している一方で、高いシャープメルト性を有している。そのため、定着時に瞬時に溶融して紙などの記録媒体に浸透し強固な定着性を与えることが可能となる。このスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂をコア粒子とシェル層の両方に用いることで更に大幅な低温定着性を得ることが可能となった。
また、コア粒子とシェル層の両方にスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を用いることで、コア粒子に用いるスチレン−アクリル系樹脂の軟化点を高く設定することが可能となった。その結果、コア粒子の弾性が高くなり、トナーの定着分離性を向上させることが可能となった。また薄層で均一なシェル層の被膜形成ができることでトナーの耐破砕性が向上し、その結果、帯電量が安定し、画像汚れの発生しない高画質のトナーを得ることが可能となった。
これにより、低温定着性と定着分離性との相反する性能を両立させること可能となり、低温定着性と定着分離性能及び帯電性を安定化しうる耐破砕性に優れた静電荷像現像用トナーが得られるようになったものである。
≪スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂≫
次にコア粒子の結着樹脂(コア用樹脂ともいう。)とシェル層に用いられるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂について説明する。
本発明において、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とは、ポリエステル樹脂から構成されるポリエステルセグメントとスチレン−アクリル系重合体から構成されるスチレン−アクリル系重合体セグメントとが、両反応性モノマーを介して結合した樹脂をいう。スチレン−アクリル系重合体セグメントとは、芳香族ビニル系モノマーと(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合して得られる重合体部分をいう。
本発明においては、コア粒子の結着樹脂に用いられるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)とシェル層に用いられるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(2)は同じであっても異なっていてもよく、以下の構成のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
本発明において用いられるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂におけるスチレン−アクリル系重合体セグメントの含有割合(以下、「スチレン−アクリル変性量」ともいう。)は、5質量%以上30質量%以下とされており、特に、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂におけるスチレン−アクリル系重合体セグメントの含有割合、すなわちスチレン−アクリル変性量は、具体的には、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、ポリエステルセグメントとなる未変性のポリエステル樹脂を構成する重合性モノマーと、スチレン−アクリル系重合体セグメントとなる芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、これらを結合させるための両反応性モノマーを合計した全質量に対する、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの質量の割合をいう。
スチレン−アクリル変性量が上記の範囲にあることにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とコア粒子との親和性が適正に制御され、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することができる。
また、本発明のトナーにおいては、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のポリエステルセグメントを形成するために多価カルボン酸モノマーとして不飽和脂肪族ジカルボン酸が用いられて、このポリエステルセグメントに当該不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来の構造単位が含有されることが好ましい。不飽和脂肪族ジカルボン酸とは、分子内にビニレン基を有する鎖状のジカルボン酸をいう。ここで、構造単位とは、樹脂中におけるモノマー由来の分子構造の単位のことをいう。
不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来の構造単位を有するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂をシェル層に用いることによって、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を確実に形成することができる。また、この不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来の構造単位を有するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂をコア粒子に含有させることによって、直鎖構造が分子内に存在することにより、ワックスとの親和性が高まり、コア粒子中へワックスの取り込みがよくなり、表面の平滑性が保てるようになったものと考えられる。
このスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のポリエステルセグメントを構成する多価カルボン酸モノマーに由来の構造単位における、不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来の構造単位の含有割合(以下、「特定の不飽和ジカルボン酸含有割合」ともいう。)が25モル%以上75モル%以下とされることが好ましく、18モル%以上60モル%以下であることがより好ましく、特に30モル%以上60モル%以下であることがより好ましい。
特定の不飽和ジカルボン酸含有割合が上記の範囲にあることにより、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を一層確実に形成することができる。
不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来の構造単位としては、下記一般式(A)で表されるものに由来の構造単位であることが好ましい。
一般式(A):HOOC−(CR=CR−COOH
(式中、R、Rは水素原子、メチル基又はエチル基であって、互いに同じであっても異なっていてもよい。nは1又は2の整数である。)
このような不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来の構造単位が含有されていることにより、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を一層確実に形成することができる。また、本発明においては、一般式(A)で表される不飽和脂肪族ジカルボン酸を重合反応に用いる場合は無水物の形態で用いることもできる。
すなわち、一般にポリエステル樹脂は疎水性の性質を有し、後述する乳化凝集法でトナー粒子を製造する場合に、スチレン−アクリル樹脂から成るコア粒子の存在下では、ポリエステル樹脂粒子同士が凝集してしまう所謂ホモ凝集が起こってしまう。しかし、ポリエステル分子中に炭素−炭素二重結合が存在するとポリエステル樹脂の親水性が増大し、ホモ凝集が起こりにくくなる。また、ポリエステル樹脂の親水性が増大することで、水系媒体中における乳化凝集法でトナー粒子を製造する場合に、ポリエステル樹脂セグメントがコア粒子に対して外側、すなわち水系媒体側へ配向する効果が大きくなり、薄層で、均一かつ緻密なシェル層を形成することができるようになる。
したがって、前述したごとく、シェル層を構成する樹脂をスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とすることによって、シェル層を構成するスチレン−アクリル変性樹脂のスチレン−アクリル成分がコアを構成するスチレン−アクリル樹脂との親和性を保ちながら、コア粒子表面に配向し、ポリエステル樹脂セグメント中の炭素−炭素二重結合による親水性化効果により、より一層の薄層均一、かつ緻密なシェル層の形成が可能になるものと推察される。
本発明のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂をシェル層に用いる場合は、シェル樹脂として低温定着性及び定着分離性などの定着性、並びに、耐熱保管性及び耐ブロッキング性などの耐熱性を確実に得る観点から、ガラス転移点が50〜70℃であることが好ましく、より好ましくは50〜65℃であり、かつ、軟化点が80〜110℃であることが好ましい。コア粒子の結着樹脂に用いた場合のガラス転移点は、40〜60℃であることが好ましく、軟化点は80〜110℃であることが好ましい。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のガラス転移点は、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82に規定された方法(DSC法)によって測定された値である。
具体的には、試料4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、示差走査カロリメーター「DSC8500」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットした。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度−0℃〜120℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行った。第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間における最大傾斜を示す接線との交点の値をガラス転移温度とする。
また、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の軟化点は、以下のように測定されるものである。
まず、20℃±1℃・50%±5%RHの環境下において、樹脂1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、24℃±5℃・50%±20%RHの環境下において、フローテスター「CFT−500D」(島津製作所製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、樹脂の軟化点とされる。
トナーを構成する結着樹脂におけるシェル樹脂の含有割合は、結着樹脂全量の5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
トナー中の結着樹脂におけるシェル樹脂の含有割合が上記範囲内であると低温定着性と耐熱保管性を両立させることができるので好ましい。
(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の作製方法)
以上のようなシェル樹脂に含有されるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の4つが挙げられる。
(A)ポリエステルセグメントを予め重合しておき、当該ポリエステルセグメントに両反応性モノマーを反応させ、さらに、スチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを反応させることにより、スチレン−アクリル系重合セグメントを形成する方法。すなわち、スチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを、ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有する両反応性モノマー、及び未変性のポリエステル樹脂の存在下で重合させる方法。
(B)スチレン−アクリル系重合体セグメントを予め重合しておき、当該スチレン−アクリル系重合体セグメントに両反応性モノマーを反応させ、さらに、ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを反応させることにより、ポリエステルセグメントを形成する方法。
(C)ポリエステルセグメント及びスチレン−アクリル系重合体セグメントをそれぞれ予め重合しておき、これらに両反応性モノマーを反応させることにより、両者を結合させる方法。
(D)ポリエステルセグメントを予め重合し、そのポリエステルセグメントの重合性不飽和基にスチレン−アクリル系重合性モノマーを付加重合、あるいはスチレン−アクリル系重合体セグメント中のビニル基と反応させ両者を結合する方法。
本発明において、両反応性モノマーとは、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び/又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と、重合性不飽和基とを有するモノマーである。
(A)の方法について具体的に説明すると、
(1)ポリエステルセグメントを形成するための未変性のポリエステル樹脂と、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、両反応性モノマーとを混合する混合工程、
(2)芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを、両反応性モノマーと未変性のポリエステル樹脂の存在下で重合させる重合工程を経ることにより、ポリエステルセグメントの末端にスチレン−アクリル系重合体セグメントを形成させることができる。この場合、ポリエステルセグメントの末端のヒドロキシ基と両反応性モノマーのカルボキシ基とがエステル結合を形成し、両反応性モノマーのビニル基が芳香族系ビニルモノマー又は(メタ)アクリル酸系モノマーのビニル基と結合することによってスチレン−アクリル系重合体セグメントが結合される。上記合成法の中で(A)の方法が最も好ましい。
この方法によれば、鎖状のポリエステルセグメントの末端にスチレン−アクリル系重合体セグメントを付加させることができ、このスチレン−アクリル系重合体セグメントが、コア粒子のスチレン−アクリル系樹脂と親和性を持って配向し、ポリエステルセグメントが、トナーの表面に露出する形となって、薄層で均一なシェル層を有するコア・シェル構造のトナーを形成することができるものと考えられる。
上記(1)の混合工程においては、加熱することが好ましい。加熱温度としては、未変性のポリエステル樹脂、芳香族系ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及び両反応性モノマーを混合させることができる範囲であればよく、良好な混合が得られると共に、重合制御が容易となることから、例えば80〜120℃とすることができ、より好ましくは85〜115℃、さらに好ましくは90〜110℃である。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂におけるスチレン−アクリル系重合体セグメントの含有割合とは、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量を100質量%としたときの芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの合計の占める割合であり、5質量%以上30質量%以下が好ましく、特に5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
用いられる樹脂材料の全質量に対する芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの合計の割合が上記の範囲にあることにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とコア粒子との親和性が適正に制御され、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することができる。
また、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの相対的な割合は、下記式(i)で表されるFOX式で算出されるガラス転移点(Tg)が35〜80℃、好ましくは40〜60℃の範囲となるような割合とされることが好ましい。
式(i):1/Tg=Σ(Wx/Tgx)(式(i)において、Wxはモノマーxの重量分率、Tgxはモノマーxの単独重合体のガラス転移点である。)
なお、本明細書においては、両反応性モノマーはガラス転移点の計算に用いないものとする。
未変性のポリエステル樹脂、芳香族系ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及び両反応性モノマーのうち、両反応性モノマーの使用割合は、用いられる樹脂材料の全質量、すなわち前記の4者の全質量を100質量%としたときの両反応性モノマーの割合が0.1質量%以上5.0質量%以下とされ、特に、0.5質量%以上3.0質量%以下とされることが好ましい。
(芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー)
スチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、ラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するものである。
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレンなど及びその誘導体が挙げられる。
これらの芳香族系ビニルモノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、及びメタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
スチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、優れた帯電性、画質特性などを得る観点から、スチレン又はその誘導体を多く用いることが好ましい。具体的には、スチレン又はその誘導体の使用量が、スチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するために用いられる全モノマー(芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー)中の50質量%以上であることが好ましい。
(両反応性モノマー)
スチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための両反応性モノマーとしては、ポリエステルセグメントを形成するための多価カルボン酸モノマー及び/又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有するモノマーであればよく、具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などを用いることができる。本発明においては両反応性モノマーとして、アクリル酸、又はメタクリル酸を用いることが好ましい。
(ポリエステル樹脂)
本発明に係るスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を作製するために用いるポリエステル樹脂は、多価カルボン酸モノマー(誘導体)及び多価アルコールモノマー(誘導体)を原料として適宜の触媒の存在下で重縮合反応によって製造されたものである。
多価カルボン酸モノマー誘導体としては、多価カルボン酸モノマーのアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができ、多価アルコールモノマー誘導体としては、多価アルコールモノマーのエステル化合物及びヒドロキシカルボン酸を用いることができる。
多価カルボン酸モノマーとしては、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、及びピレンテトラカルボン酸などの3価以上のカルボン酸などを挙げることができる。
多価カルボン酸モノマーとしては、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、特に、上記一般式(A)で表される不飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。また、本発明においては無水マレイン酸などのジカルボン酸の無水物を用いることもできる。
不飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が、確実に、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することができるものとなる。特に、上記一般式(A)で表される不飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が、一層確実に、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することができるものとなる。
用いる全多価カルボン酸モノマーにおける不飽和脂肪族ジカルボン酸の割合は、25モル%以上75モル%以下とされることが好ましく、特に30モル%以上60モル%以下であることがより好ましい。用いる不飽和脂肪族ジカルボン酸の割合が上記の範囲にあることにより、得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が、より一層確実に、薄層でありながらより均一な膜厚でかつ平滑なシェル層を形成することができるものとなる。
多価アルコールモノマーとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、及びテトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
上記の多価カルボン酸モノマーと多価アルコールモノマーの比率は、多価アルコールモノマーのヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。
ポリエステル樹脂を合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を得るための未変性のポリエステル樹脂は、ガラス転移点が40℃以上70℃以下であることが好ましく、より好ましくは50℃以上65℃以下の範囲である。未変性のポリエステル樹脂のガラス転移点が40℃以上であることにより、当該ポリエステル樹脂について高温領域における凝集力が適切なものとなり、定着の際にホットオフセット現象を生じることが抑制される。また、未変性のポリエステル樹脂のガラス転移点が70℃以下であることにより、定着の際に十分な溶融を得ることができて十分な最低定着温度を確保することができる。
また、当該未変性のポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,500以上60,000以下であることが好ましく、より好ましくは3,000以上40,000以下の範囲である。
重量平均分子量が1,500以上であることにより、結着樹脂全体として好適な凝集力が得られ、定着の際にホットオフセット現象を生じることが抑制される。また、重量平均分子量が60,000以下であることにより、十分な溶融を得ることができて十分な最低定着温度を確保することができながら、定着の際にホットオフセット現象を生じることが抑制される。
当該未変性のポリエステル樹脂は、用いる多価カルボン酸モノマー及び/又は多価アルコールモノマーとして、カルボン酸価数又はアルコール価数を選択することなどによって、一部枝分かれ構造や架橋構造などが形成されていてもよい。
(重合開始剤)
前述の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合させる重合工程においては、ラジカル重合開始剤の存在下で重合を行うことが好ましく、ラジカル重合開始剤の添加の時期は特に制限されないが、ラジカル重合の制御が容易であるという点で、混合工程の後で添加することが好ましい。
重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤が好適に用いられる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化−tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸−tert−ブチル、過酢酸−tert−ブチル、過安息香酸−tert−ブチル、過フェニル酢酸−tert−ブチル、過メトキシ酢酸−tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸−tert−ブチルなどの過酸化物類;2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミノジプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、及びポリ(テトラエチレングリコール−2,2′−アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。
(連鎖移動剤)
前述の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合させる重合工程においては、スチレン−アクリル系重合体セグメントの分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、及びメルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
連鎖移動剤は、上記の混合工程において樹脂形成材料と共に混合させておくことが好ましい。
連鎖移動剤の添加量は、所望するスチレン−アクリル系重合体セグメントの分子量や分子量分布によって異なるが、具体的には芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、並びに両反応性モノマーの合計量に対して、0.1〜5質量%の範囲で添加することが好ましい。
前述の芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合させる重合工程における重合温度は、特に限定されず、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー間の重合及びポリエステル樹脂への結合が進行する範囲において適宜選択することができる。重合温度としては、例えば、85℃以上125℃以下であることが好ましく、90℃以上120℃以下であることがより好ましく、95℃以上115℃以下であることがさらに好ましい。
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の作製においては、重合工程後の残留モノマー量など乳化物からの揮発性有機物質が、1,000ppm以下に抑制されることが実用上好ましく、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下である。
≪シェル層≫
本発明のトナーを構成するシェル層は、前述のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含むシェル樹脂よりなるものである。
シェル樹脂において、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂と共に含有させることのできる樹脂としては、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂などが挙げられる。
シェル樹脂におけるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の含有割合は、シェル樹脂100質量%中において70〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましい。
シェル樹脂中におけるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の含有割合が、上記範囲内であるとコア粒子とシェル層との十分な親和性が得られることにより、薄層で均一なシェル層を形成することができるので、耐熱保管性、耐破砕性が良好となり、帯電性が良好となる。
トナーを構成するシェル樹脂にスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を用いることにより、以下の効果が得られる。
すなわち、一般に、トナー粒子の設計においてポリエステル樹脂を結着樹脂として用いることの利点は、ポリエステル樹脂がスチレン−アクリル系樹脂に比べて高いガラス転移点(Tg)を維持したまま低軟化点化の設計が容易に行えることにある。つまり、ポリエステル樹脂は低温定着性と耐熱保管性との両方を満足するために好適な樹脂である。そして、シェル層に用いられるポリエステル樹脂にスチレン−アクリル系重合体セグメントを導入することによって、ポリエステル樹脂の高いガラス転移点と低い軟化点を維持したままコア粒子のスチレン−アクリル系樹脂との親和性が高められ、これにより、薄層でありながらより均一な膜厚でかつその表面が平滑なシェル層を形成することができる。したがって、本発明のトナーによれば、低温定着性と耐熱保管性との両方を満足すると共に優れた帯電性が得られ、さらに、シェル層が剥がれ難くなったことにより、現像器内において撹拌されてストレスを受けても破砕されることのない耐破砕性が十分に得られ、その結果、例えば高速機などの高機能機においても画像ノイズのない高い画質の画像が得られる。
≪コア粒子≫
本発明において、コア粒子は少なくとも結着樹脂を含有し、必要に応じて着色剤、ワックス(離型剤ともいう)、荷電制御剤を含有してもよく、コア粒子を構成する結着樹脂はスチレン−アクリル系樹脂とスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含有する。スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は結着樹脂全量の5質量%から30質量%含有されることが好ましい。この範囲であると、低温定着性と定着分離性能を両立させることができる。
(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂)
コア粒子を構成するスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂は、前述のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂が用いられる。
(スチレン−アクリル系樹脂)
本発明のコア粒子を構成するスチレン−アクリル系樹脂に用いられる重合性モノマーとしては、芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーであり、ラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するものが好ましい。例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレンなど及びその誘導体が挙げられる。これらの芳香族系ビニルモノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、及びメタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でもスチレン系モノマーとアクリル酸エステル系モノマー、及び/又はメタクリル酸エステル系モノマーとを組み合わせて使用することが好ましい。
重合性モノマーとしては、第三のビニル系モノマーを使用することもできる。第三のビニル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ビニル酢酸等の酸モノマー、及びアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン塩化ビニル、N−ビニルピロリドン、及びブタジエン等が挙げられる。
重合性モノマーとしては、さらに多官能ビニルモノマーを使用してもよい。多官能ビニルモノマーとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキしレングリコール等のジアクリレート、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三級以上のアルコールのジメタクリレート及びトリメタクリレート等が挙げられる。多官能ビニル系モノマーの重合性モノマー全体に対する共重合比は通常、0.001〜5質量%、好ましくは0.003〜2質量%、より好ましくは、0.01〜1質量%である。多官能ビニル系モノマーの使用により、テトラヒドロフランに不溶のゲル成分が生成するが、ゲル成分の重合物全体に占める割合は通常40質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
スチレン−アクリル系樹脂とスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂とから構成されるコア粒子を構成する結着樹脂のガラス転移点(Tg)は40℃〜60℃が好ましい。
同じく、コア粒子を構成する結着樹脂の軟化点は、80℃から110℃が好ましい。コア粒子を構成する結着樹脂のガラス転移点と軟化点が上記範囲であると、トナーの粘性と弾性を好ましい範囲にすることができるので、低温定着性と定着分離性能の両方を満足することができる。
コア粒子を構成する結着樹脂のガラス転移点(Tg)と軟化点の測定方法は、前述のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂の測定方法と同じ方法で行うことができる。
(スチレン−アクリル系樹脂の製造方法)
本発明のコア粒子を構成するスチレン−アクリル系樹脂は乳化重合法で用いられることが好ましい。乳化重合は、水系媒体中にスチレン、アクリル酸エステルなどの重合性モノマーを分散し重合することによって得ることができる。水系媒体に重合性モノマーを分散するためには界面活性剤を用いることが好ましく、また重合には重合開始剤、連鎖移動剤を用いることができる。
(重合開始剤)
スチレン−アクリル系樹脂の重合に使用される重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができ、前述のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のスチレン−アクリル系重合体セグメントの重合に用いられる重合開始剤が使用できる。重合に使用される重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤が好適に用いられる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化−tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸−tert−ブチル、過酢酸−tert−ブチル、過安息香酸−tert−ブチル、過フェニル酢酸−tert−ブチル、過メトキシ酢酸−tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸−tert−ブチル等の過酸化物類;2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミノジプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、及びポリ(テトラエチレングリコール−2,2′−アゾビスイソブチレート)等のアゾ化合物等が挙げられる。
(連鎖移動剤)
本発明のスチレン−アクリル系樹脂の製造においては、上記の重合性モノマーとともに連鎖移動剤を添加しても良い。連鎖移動剤を添加することによって重合体の分子量を制御できる。連鎖移動剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、前述のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂のスチレン−アクリル系重合体セグメントの重合に用いられる連鎖移動剤を使用することができ、アルキルメルカプタン、及びメルカプト脂肪酸エステルが挙げられる。連鎖移動剤の添加量は、所望する分子量や分子量分布によって異なるが、具体的には重合性モノマーに対して、0.1〜5質量%の範囲で添加するのが好ましい。
(界面活性剤)
スチレン−アクリル系樹脂を水系媒体中に分散し乳化重合法により重合する場合は、分散した液滴の凝集を防ぐために通常、分散安定剤が添加される。分散安定剤としては、公知の界面活性剤が使用可能であり、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の中から選択される分散安定剤を用いることができる。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。なお、分散安定剤は着色剤やオフセット防止剤等の分散液にも使用できる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、及びモノデカノイルショ糖などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
本発明のトナーには、必要に応じて着色剤、ワックス、荷電制御剤を添加することができる。
(着色剤)
本発明のトナーに使用される着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、又はランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、又はコバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、又はマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などを用いることができる。
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などを用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4、又は同60などを用いることができ、これらの混合物も用いることができる。数平均一次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
(ワックス)
本発明のトナーにはワックスを含有させることができる。ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、及びクエン酸ベヘニルなどのエステルワックス類などが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ワックスの含有割合は、樹脂粒子全質量の2〜20質量%、好ましくは3〜18質量%、さらに好ましくは4〜15質量%である。
また、ワックスの融点としては、電子写真におけるトナーの低温定着性と離型性との観点から、50〜95℃であることが好ましい。
(荷電制御剤)
荷電制御剤粒子を構成する荷電制御剤としては種々の公知のもので、かつ水系媒体中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩、あるいはその金属錯体などが挙げられる。
この荷電制御剤粒子は、分散した状態で数平均一次粒子径が10〜500nm程度とすることが好ましい。
≪トナー母体粒子の説明≫
次に本発明で用いられるトナー母体粒子について説明する。なお、本発明で言う「トナー母体粒子」とは、コア粒子表面にシェル層を有して成るコア・シェル構造を有する粒子のことである。トナー母体粒子は、そのままでもトナー粒子として使用することができるが、通常、外添剤を添加して使用することが好ましい。
尚、トナーとはトナー粒子の集合体のことである。
先ず、本発明で用いられるトナー粒子の平均円形度について説明する。本発明で用いられるトナー粒子の平均円形度は0.850以上0.990以下が好ましい。
ここで、トナー粒子の平均円形度は「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。
具体的には、トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、「FPIA−2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。円形度は下記式で計算される。
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
(トナー粒子の粒径)
次に、本発明で用いられるトナー粒子の粒径について説明する。本発明で用いられるトナー粒子の粒径は、体積基準メディアン径(D50)で3μm以上10μm以下のものであることが好ましい。
体積基準メディアン径を上記範囲とすることにより、例えば、1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)レベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することも可能になる。
トナー粒子の体積基準メディアン径(D50)は、例えば、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用のコンピュータシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
測定手順としては、トナー粒子0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を作製する。このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを25000個に設定して測定する。なお、マルチサイザー3のアパチャー径は100μmのものを使用する。測定範囲1〜30μmの範囲を256分割しての頻度数を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メディアン径(D50)とする。
(トナーの軟化点)
本発明のトナーの軟化点は、90〜115℃が好ましい。トナーの軟化点がこの範囲である時に、好ましい低温定着性が得られる。
軟化点の測定は、前述の方法、すなわち、「フローテスター CFT−500D」(島津製作所製)により測定することができる。
(トナー母体粒子の製造方法)
本発明のトナーは、結着樹脂と必要に応じて着色剤と、ワックスなどの内添剤とを用いてトナー母体粒子を得、このトナー母体粒子に対して必要に応じて外添剤を添加することによってトナーを製造することができる。
本発明で用いられるトナー母体粒子の製造方法について説明する。
本発明で用いられるトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有してなる粒子で、電子写真方式の画像形成に使用されるトナー粒子の母体を構成するもので、一般に、母体粒子あるいは着色粒子と呼ばれるものである。
本発明のトナー母体粒子を製造する方法としては、例えば、懸濁重合法、乳化凝集法、その他の公知の方法などを挙げることができるが、乳化凝集法を用いることが好ましい。この乳化凝集法によれば、製造コスト及び製造安定性の観点から、トナー粒子の小粒径化を容易に図ることができる。
ここに、乳化凝集法とは、乳化によって製造された結着樹脂の粒子(以下、「結着樹脂粒子」ともいう)の分散液を、必要に応じて、着色剤の粒子(以下、「着色剤粒子」ともいう)の分散液と混合し、所望のトナー粒子径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂の粒子は、任意に離型剤、荷電制御剤などを含有していてもよい。
トナーの製造方法として、乳化凝集法を用いる場合の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に着色剤粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)着色剤粒子の分散液と結着樹脂粒子の分散液とを混合して、着色剤粒子及び結着樹脂粒子を凝集、融着させてトナー粒子を形成する工程
(4)トナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(5)トナー粒子を乾燥する工程
(6)トナー粒子に外添剤を添加する工程
上記(2)の工程において結着樹脂粒子を分散する手法としては、乳化重合により得られる乳化重合粒子分散液を用いることが好ましい。また、結着樹脂粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよい。このような構成の結着樹脂粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調製し、この分散液に重合開始剤と重合性モノマーとを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。
また、乳化凝集法においては、コア・シェル構造を有するトナー粒子を得ることもでき、具体的にコア・シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
(コア粒子の製造方法)
コア粒子の形成方法としては、公知の方法で製造することができるが、水系媒体に分散した樹脂粒子と着色粒子などを凝集させてコア粒子を形成する乳化凝集法が好ましく用いられる。
コア粒子がスチレン−アクリル系樹脂とスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂粒子等を凝集/融着して成る構成を有する場合、当該コア粒子は通常、乳化凝集法によって形成される。乳化凝集法を採用する場合、詳しくは重合性モノマーを水系媒体中に乳化分散させて重合させた樹脂粒子及び着色剤粒子を必要に応じてワックスなどのオフセット防止剤、荷電制御剤、磁性粉等の添加剤と共に水系媒体中、凝集/融着させてコア粒子を形成させても良いし、又は乳化させたオフセット防止剤や荷電制御剤の添加剤の存在下で重合性モノマーを水系媒体中、シード乳化重合させてコア粒子を形成させてもよい。樹脂粒子の粒子径は通常、重量平均粒径で50〜500nmの範囲であることが好ましい。
(シェル層の形成方法)
コア粒子表面に均一にシェル層を形成させる場合、乳化凝集法を採用するのが好ましい。乳化凝集法を採用する場合、コア粒子の水分散液中に、シェル粒子の乳化分散液を添加し、コア粒子の表面にシェル粒子を凝集/融着させてシェル層を形成させることができる。
特に、本発明のトナーは、水系媒体中に着色剤粒子が分散されてなる分散液と、水系媒体中に結着樹脂粒子が分散されてなる分散液とを混合して、着色剤粒子及び結着樹脂粒子を凝集、融着させる工程を経ることにより得られるものであること、すなわち乳化凝集法などの製造方法により得られるものであることが好ましい。
本発明において、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
(界面活性剤)
水系媒体中には、分散した液滴の凝集を防ぐために通常、分散安定剤が添加される。分散安定剤としては、公知の界面活性剤が使用可能であり、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤等の中から選択される分散安定剤を用いることができる。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。なお、分散安定剤は着色剤やオフセット防止剤等の分散液にも使用できる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、及びヘキサデイシルトリメチルアンオニウムブロマイドなどが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、及びモノデカノイルショ糖などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げることができる。
(着色剤の分散)
着色剤粒子の分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理においては、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機は公知の分散機を用いることができる。また、使用することのできる界面活性剤としては、公知のものを用いることができる。
前記(1)の分散液を調製する工程における着色剤粒子の粒子径としては、体積基準のメディアン径で10〜300nmであることが好ましい。
(着色剤分散液中の分散粒径の測定)
着色剤粒子の水系媒体中における分散粒径は体積平均粒径、すなわち体積基準におけるメディアン径であり、このメディアン径は、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)を用いて測定した値である。
(測定条件)
(1)サンプル屈折率:1.59
(2)サンプル比重:1.05(球状粒子換算)
(3)溶媒屈折率 :1.33
(4)溶媒粘度 :30℃にて0.797
20℃にて1.002
測定セルにイオン交換水を入れ、ゼロ点調節を行って測定を行う。
(凝集・融着工程)
次に、乳化凝集法において樹脂粒子と着色剤粒子を凝集会合させる工程について説明する。
凝集工程においては、樹脂粒子の水分散液と、着色剤粒子や必要に応じてワックス粒子、荷電制御剤粒子、その他トナー構成成分の粒子の分散液とを混合して凝集用分散液を調製し、水系媒体中で凝集・融着させ、着色粒子の分散液を形成させる。
本発明に用いられる凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属の塩から選択されるものが好適に使用される。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属の塩、例えばカルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属の塩、鉄、アルミニウムなどの三価の金属の塩などが挙げられ、具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、及び硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で特に好ましくは二価の金属の塩である。二価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
凝集工程においては、凝集剤を添加した後に放置する放置時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。すなわち、凝集剤を添加した後、凝集用分散液の加熱をできるだけ速やかに開始し、樹脂組成物のガラス転移点以上とすることが好ましい。この理由は明確ではないが、放置時間の経過によって粒子の凝集状態が変動して、得られるトナー粒子の粒径分布が不安定になったり、表面性が変動したりする問題が発生するおそれがあるからである。放置時間は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内である。
また、凝集工程においては、加熱により速やかに昇温させることが好ましく、昇温速度は1℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、凝集用分散液がガラス転移点温度以上の温度に到達した後、当該凝集用分散液の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、着色粒子の成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナー粒子の耐久性を向上することができる。
(外添剤)
本発明ではトナーの流動性や帯電特性を改善する目的で、外添剤を添加することができる。
本発明で用いられる外添剤としては、例えばシリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいはチタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。
これら無機微粒子は、耐熱保管性及び環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、又はシリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであることが好ましい。
外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて用いてもよい。
外添剤の添加方法としては、乾燥済みのトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、及びコーヒーミル等の機械式の混合装置が挙げられる。
(現像剤)
本発明のトナーは、キャリアとトナーより構成される二成分現像剤として、又、トナーのみから構成される非磁性一成分現像剤として使用することが可能である。
二成分現像剤として使用する際に用いられる磁性粒子であるキャリアは、例えば、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を使用することが可能である。これらの中ではフェライト粒子が好ましい。又、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。キャリアの体積平均粒径は15〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。
(画像形成装置)
本発明のトナーが用いられる画像形成装置は、静電潜像担持体(代表的には電子写真感光体であり、以下、単に感光体と述べる)上に、帯電手段、露光手段、トナーを含む現像剤による現像手段、現像手段により形成したトナー像を中間転写体を介して転写材に転写する転写手段とを有するものである。特に、感光体上のトナー像を中間転写体に順次転写するカラー画像形成装置、各色毎の複数の感光体を中間転写体上に直列配置させたタンデム型カラー画像形成装置等に用いるのが有効である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のトナーは以下の手順で作製した。
(1)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B〕の合成
(2)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂分散液(B)の作製
(3)コア用樹脂粒子分散液(A)の作製
(4)着色剤粒子分散液(1)の作製
(5)凝集・融着〜外添剤処理工程
以下順を追って説明する。
(1)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B〕の合成
(1−1)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕の合成
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 117質量部
フマル酸 82質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 2質量部
を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した後、
アクリル酸 10質量部
スチレン 30質量部
ブチルアクリレート 7質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、アクリル酸、スチレン、ブチルアクリレートを除去することにより、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕を得た。このスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕のガラス転移点は60℃、軟化点は105℃であった。
(1−2)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B2〕〜〔B10〕の合成
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕の合成において、モノマーの構成を表1のように変更した以外は同様にして、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B2〕〜〔B10〕を合成した。
(1−3)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B11〕の合成
(ポリエステル樹脂(a)の合成)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物360質量部、テレフタル酸80質量部、フマル酸55質量部、及び重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出した。これをポリエステル(a)とする。ポリエステル(a)は、Tgは65℃、数平均分子量は4500、重量平均分子量は13500であった。
(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B11〕の合成)
温度計及び撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン430質量部及び上記で合成したポリエステル樹脂(a)を入れて溶解し、窒素置換後、スチレン100質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル24質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.88質量部、及びキシレン100質量部の混合溶液を170℃で3時間滴下重合し、さらにこの温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B11〕を得た。
(1−4)ポリエステル樹脂〔B12〕の合成
上記(1−1)のスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕の合成において、アクリル酸、スチレン、ブチルアクリレート及び重合開始剤を添加しなかった他は同様にして未変性のポリエステル樹脂〔B12〕を合成した。
(2)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B〕の調製
(2−1)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B1〕の調製
得られたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメディアン径(D50)が250nmであるスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕が分散された「スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B1〕」を調製した。
(2−2)スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B2〕〜〔B11〕の調製
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B1〕の調製で用いたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕をスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B2〕〜〔B10〕に変更した他は同様にしてスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B2〕〜〔B11〕を調製した。
(2−3)未変性のポリエステル樹脂粒子分散液〔B12〕の調製
スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B1〕の調製で用いたスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂〔B1〕を未変性のポリエステル樹脂〔B12〕に変更した他は同様にして、未変性のポリエステル樹脂粒子分散液〔B12〕を得た。
(2−4)アクリル変性ポリエステル樹脂〔B13〕の合成
(ポリエステル樹脂(b)の合成)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物500質量部、テレフタル酸117質量部、マレイン酸82質量部、及び重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出した。これをポリエステル樹脂(b)とする。ポリエステル樹脂(b)は、ガラス転移点は60℃、数平均分子量は5000、重量平均分子量は13000であった。
(アクリル変性ポリエステル樹脂〔B13〕の合成)
温度計及び撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン430質量部及び上記で合成したポリエステル樹脂(b)を入れて溶解し、窒素置換後、アクリル酸2−エチルヘキシル78質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.88質量部、及びキシレン100質量部の混合溶液を170℃で3時間滴下重合し、さらにこの温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い、スチレン成分を含まないアクリル変性ポリエステル樹脂〔B13〕を得た。このアクリル変性ポリエステル樹脂〔B13〕のガラス転移点は63℃、軟化点は109℃であった。
Figure 0006028414
(3)コア用樹脂粒子分散液(A)の調製
(3−1)第1段重合(「樹脂微粒子(a1)」分散液の調製)
撹拌装置、温度センサ、温度制御装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に予めアニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
この界面活性剤溶液に重合開始剤「過硫酸カリウム(KPS)」9.0質量部を添加し、内温を78℃とさせた後、
モノマー溶液(1)
スチレン 540質量部
n−ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
n−オクチルメルカプタン 17質量部
からなるモノマー溶液(1)を3時間かけて滴下し、滴下終了後、78℃において1時間にわたって加熱・撹拌することで重合(第1段重合)を行い「樹脂微粒子(a1)」の分散液を調製した。
(3−2)第2段重合:中間層の形成(「樹脂微粒子(a11)」分散液の調製)
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、
スチレン 94質量部
n−ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n−オクチルメルカプタン 5質量部
からなるモノマー溶液に、離型剤としてパラフィンワックス(融点:73℃)51質量部を添加し、85℃に加温して溶解させてモノマー溶液(2)を調製した。
一方、アニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2質量部をイオン交換水1100質量部に溶解させた界面活性剤溶液を90℃に加温し、この界面活性剤溶液に「樹脂微粒子(a1)」の分散液を、「樹脂微粒子(a1)」の固形分換算で28質量部添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記モノマー溶液(2)を4時間混合・分散させ、分散粒子径350nmの乳化粒子を含有する分散液を調製し、この分散液に重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、この系を90℃において2時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第2段重合)を行って「樹脂微粒子(a11)」の分散液を調製した。
(3−3)第3段重合:外層の形成(「コア用樹脂粒子分散液(A)」の調製)
上記の「樹脂微粒子(a11)」の分散液に、重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し、80℃の温度条件下において、
モノマー溶液(3)
スチレン 230質量部
n−ブチルアクリレート 100質量部
n−オクチルメルカプタン 5.2質量部
からなるモノマー溶液(3)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第3段重合)を行った。その後、28℃まで冷却し、アニオン性界面活性剤溶液中にスチレン−アクリル系樹脂を含有するコア用樹脂粒子(A)が分散した「コア用樹脂粒子分散液(A)」を調製した。
(4)着色剤粒子分散液(1)の調製
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤の粒子を分散して有する「着色剤分散液(1)」を調製した。この分散液の粒子径を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)を用いて測定したところ、117nmであった。
(5)凝集・融着〜外添剤処理工程
≪トナーの作製≫
(5−1)トナー1の作製
(凝集・融着工程)
撹拌装置、温度センサ、冷却管を取り付けた反応容器に、コア用樹脂粒子分散液として「コア用樹脂粒子分散液(A)」を固形分換算で288質量部、同じくコア用樹脂粒子分散液として「スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B3〕」(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1))を固形分換算で15.2質量部、イオン交換水2000質量部を投入後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
その後、「着色剤分散液(1)」を固形分換算で40質量部投入した。次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメディアン径(D50)が6.0μmになった時点で、シェル用樹脂粒子分散液として「スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂粒子分散液〔B3〕」(シチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(2))を固形分換算で75.8質量部質量部を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で30℃に冷却し、「トナー母体粒子1の分散液」を調製した。
(洗浄・乾燥工程)
凝集・融着工程にて生成した粒子(「トナー母体粒子1の分散液」)を遠心分離機で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「トナー母体粒子〔1〕」を作製した。
(外添剤処理工程)
上記の「トナー母体粒子〔1〕」に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー1」を作製した。
(5−2)トナー2〜28の作製
前記「(5−1)トナー1の作製」において、コア用樹脂粒子分散液とシェル用樹脂粒子分散液の種類と添加量を表2のように変更した以外は同様にして「トナー2〜トナー28」を作製した。
ここで、トナー1〜トナー25は本発明のトナーであり、トナー26〜トナー28は比較用のトナーとした。
Figure 0006028414
≪現像剤の作製≫
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子を5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成し、体積基準メディアン径50μmのキャリアを得た。
キャリアの体積基準メディアン径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定した。
上記キャリアにトナー1〜28をそれぞれトナー濃度が6質量%になるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器株式会社)に投入し、回転速度45rpmで30分間混合し現像剤を作製した。
≪評価方法≫
(1)低温定着特性
画像評価は、市販のカラー複写機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)の現像装置に、上記で作製した現像剤を順次装填して評価を行った。なお、定着温度、トナー付着量、システム速度を自由に設定できるように改造した。評価紙としてNPi上質紙128g/m(日本製紙製)を用い、トナー付着量11.3g/mのベタ画像を定着速度300mm/secで定着上ベルト150〜200℃、定着下ローラは上ベルトより20℃低く設定し5℃毎の水準で定着させた時に、コールドオフセットが発生しない定着下限温度を評価した。この定着下限温度が低ければ低い程、定着性が優れている。
判定基準
◎:定着下限温度が150℃未満
○:定着下限温度が150℃以上165℃未満
×:定着下限温度が165℃以上
(2)定着分離性
定着用ヒートローラの表面温度を180℃とし、搬送方向に対して垂直方向に5cm幅のベタ黒帯状画像を有するA4サイズの画像を縦送りで搬送した際における画像側の定着ローラ(加熱ローラ)と紙との分離性を下記の基準により判定した。
判定基準
◎:紙がカールすること無く定着ローラと分離する。
○:紙が定着ローラと分離爪で分離するが、画像上に分離爪痕はほとんど残らない。
△:紙が定着ローラと分離爪で分離するが、画像上に分離爪痕が残る。
×:紙が定着ローラに巻き付き定着ローラと分離できない。
(3)帯電安定性
常温常湿(20℃、50%RH)環境条件で、A4版の上質紙(65g/m)上にテスト画像として印字率5%の帯状ベタ画像を形成する印刷を10万枚行い、印刷初期と10万枚印刷後のトナーの帯電量を測定し、下記評価基準にしたがって評価した。帯電量は現像器内の二成分現像剤をサンプリングし、ブローオフ帯電量測定装置「TB−200」(東芝ケミカル(株)製)を用いて測定した。
判定基準
◎:印刷初期と10万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが4μC/g未満
○:印刷初期と10万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが4μC/g以上6μC/g未満
△:印刷初期と10万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが6μC/g以上8μC/g未満
×:印刷初期と10万枚印刷後で、トナーの帯電量の変動値Δが8μC/g以上
以上の評価結果を表3に示した。
Figure 0006028414
表3の結果から明らかなように、本発明のトナーは比較用トナーに比べて、低温定着性、定着分離性、帯電安定性とも優れたものであり、一方、比較用のトナーはいずれかの特性において劣っていることが分かる。

Claims (7)

  1. 少なくとも結着樹脂を含有するコア粒子の表面にシェル層を設けて成るコア・シェル構造のトナー粒子を含有する静電荷像現像用トナーであって、該コア粒子を構成する結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂とスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)を含有し、該シェル層がスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(2)を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  2. 前記コア粒子を構成する結着樹脂が、前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)を5質量%以上30質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)又は(2)におけるスチレン−アクリル系重合体セグメントの含有割合が、5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)及び(2)におけるスチレン−アクリル系重合体セグメントの含有割合が、5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
  5. 前記スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)及び(2)を構成するための多価カルボン酸成分中における不飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構造単位の含有割合が、25モル%以上75モル%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
  6. 前記不飽和脂肪族ジカルボン酸が、下記一般式(A)で表されることを特徴とする請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
    一般式(A):HOOC−(CR=CR−COOH
    (式中、R、Rは水素原子、メチル基又はエチル基であって、互いに同じであっても異なっていてもよい。nは1又は2の整数である。)
  7. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
    スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂(1)及び(2)を構成するスチレン−アクリル系重合体セグメントを形成するための芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを、
    多価カルボン酸モノマー又は多価アルコールモノマーと反応し得る基と重合性不飽和基とを有する両反応性モノマー、及び未変性のポリエステル樹脂の存在下で重合させる工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
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