JP6168181B2 - 静電荷像現像用トナーおよびその製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナーおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられる静電荷像現像用トナーおよびその製造方法に関する。
従来、電子写真法によって可視画像を形成する電子写真画像形成方法において、紙などの転写媒体上に静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」とも称する。)によって形成されたトナー像を定着する方法としては、トナー像が形成された転写媒体を、加熱ローラーと加圧ローラーの間を通過させて定着する熱ローラー定着方式が広く利用されている。この熱ローラー定着方式における定着性、すなわち、紙などの転写媒体に対するトナーの接着性を確保するために、加熱ローラーには、高い熱容量が必要とされる。
しかし、近年、地球環境の温暖化防止対策の観点から、電子写真画像形成装置に対しても、省エネルギー化の要請が高まっており、そのため、特に熱ローラー定着方式を採用している電子写真画像形成装置においては、トナー画像の定着に必要とされる熱量を低減させる技術、すなわちトナーの低温定着化については多くの検討がなされており、その代表的な検討として、結晶性材料を用いたものが挙げられる。
例えば、結晶性ポリエステル樹脂と非晶質樹脂とを含有するトナーにおいて、トナー母体粒子を構成する結晶性ポリエステル樹脂を糸状の結晶構造として含ませ、そのドメイン径を調整することでさらなるシャープメルト化を促進させ、十分な低温定着性を達成することを謳った技術が提案されている(特許文献1を参照)。また、結晶性ポリエステル樹脂を、3層構造のトナー粒子のコア部にドメイン相の平均径300nm以下で微分散させることでコア内部のドメイン相として存在させ、熱定着時の相溶を進行させること、さらに結晶化の程度が小さい状態となる結果、結晶化度のバラつきが低減され、得られる画像について高い光沢均一性が得られることを謳った技術も提案されている(特許文献2を参照)。さらに、トナーのコア部に存在する結晶性ポリエステル樹脂の最大ドメイン径を規定し、優れた低温定着性を確保しつつ、フィルミングを抑制しうることを謳った技術も提案されている(特許文献3を参照)。
特開2013−257415号公報 特開2014−186194号公報 特開2009−229920号公報
上述したように、トナー母体粒子を構成する結晶性樹脂の結晶構造やドメイン径を制御することで、低温定着性を改善することができる。しかしながら、本発明者らの検討によれば、従来の技術によって提案されているトナーでは、低温定着性は改善されているものの、高速定着性が十分ではない(定着可能な線速(プロセススピード)が遅い)という問題があり、また、定着可能温度幅も十分に広くないという問題もあることが判明した。
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、トナー母体粒子を構成する結着樹脂として結晶性樹脂と非晶性樹脂とが併用されてなる静電荷像現像用トナーにおいて、低温定着性を確保しつつ、高速定着性や定着可能温度幅といった性能を改善しうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、非晶性樹脂および結晶性樹脂を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーを、当該トナー母体粒子の断面にラメラ状結晶構造および糸状結晶構造が分散して存在するように構成することで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、非晶性樹脂および結晶性樹脂を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーが提供される。そして、本形態に係るトナーでは、当該トナー母体粒子の断面にラメラ状結晶構造および糸状結晶構造が分散して存在する点に特徴がある。
本発明によれば、トナー母体粒子を構成する結着樹脂として結晶性樹脂と非晶性樹脂とが併用されてなる静電荷像現像用トナーにおいて、低温定着性を確保しつつ、高速定着性や定着可能温度幅といった性能を改善することが可能となる。
ラメラ構造を形成している結晶性樹脂の一例である、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の分子構造を示す模式図である。 ラメラ状結晶構造を有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を用いて作製されたトナーをルテニウム染色した後、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察した写真である(倍率:50,000倍)。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
<トナー>
本発明の一形態に係る静電荷像現像用トナーは、非晶性樹脂および結晶性樹脂を含有するトナー母体粒子を含むものである。ここで、上記トナー母体粒子の断面には、ラメラ状結晶構造および糸状結晶構造が分散して存在する点に特徴がある。かような構成を有する本発明に係るトナーによれば、トナーの低温定着性を確保しつつ、高速定着性および定着可能温度幅といった性能を改善することができ、しかも、トナーの耐熱保管性および流動性といった性能にも優れるトナーを提供することが可能となる。このような効果が発現するメカニズムについて完全には明らかではないが、以下のように推定している。
すなわち、上述したような構成を有する本発明に係るトナーを構成するトナー母体粒子においては、粒子の内部における結晶性樹脂からなるドメインのサイズが小さく制御され、かつ、粒子の内部に結晶性樹脂からなるドメインが均一に分散した状態が実現できるものと考えられる。これにより、加熱溶融する際の加熱時間が一瞬であっても、結晶性樹脂のうち非晶性樹脂と素早く相溶するものと、結晶構造の形状を保ったまま溶融していてもそれ自体が変形しやすいものとが併存することとなる結果、上述したように、低温定着性を確保しつつ、高速定着性や定着可能温度幅といった性能を改善することができるものと考えられる。
以下、本発明に係るトナーの構成要素について、詳細に説明する。
(トナー母体粒子)
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂(バインダー樹脂)として非晶性樹脂および結晶性樹脂を含有するものである。また、トナー母体粒子は、必要に応じて、離型剤、着色剤、磁性粉、荷電制御剤などの他のトナー構成成分を含有してもよい。また、本発明に係るトナー母体粒子は、水系媒体中で作製される湿式の製造方法(例えば、乳化凝集法など)により得られるものであることが好ましい。
〈結着樹脂(非晶性樹脂および結晶性樹脂)〉
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂(バインダー樹脂)として、非晶性樹脂および結晶性樹脂を含む。
・非晶性樹脂
非晶性樹脂について特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性樹脂が用いられうるが、なかでも非晶性樹脂は非晶性のビニル系樹脂を含むことが好ましい。非晶性樹脂がビニル系樹脂を含むことで、熱定着時の可塑性に優れるトナーが提供されうる。ここで、「ビニル系樹脂」とは、少なくともビニル系単量体を用いた重合により得られる樹脂である。非晶性のビニル系樹脂として、具体的には、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂などが挙げられる。なかでも、非晶性のビニル系樹脂としては、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を用いて形成されるスチレンアクリル共重合体樹脂が好ましい。
非晶性のビニル系樹脂を形成するビニル系単量体としては、下記のものから選択される1種または2種以上が用いられうる。
(1)スチレン系単量体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンおよびこれらの誘導体など。
(2)(メタ)アクリル酸エステル系単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの誘導体など。
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
(6)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど。
(7)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体など。
また、ビニル系単量体としては、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、以下のものがある。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。また、スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。さらに、リン酸基を有する単量体としてはアシドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
さらに、ビニル系単量体として、多官能性ビニル類を使用し、非晶性のビニル系樹脂を、架橋構造を有するものとすることもできる。多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
以上、非晶性樹脂の好ましい形態として、ビニル系樹脂について詳細に説明したが、非晶性樹脂として非晶性ポリエステル樹脂などが用いられてもよい。
非晶性樹脂のガラス転移点(Tg)は、25〜60℃であることが好ましく、より好ましくは35〜55℃である。非晶性樹脂のガラス転移点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性および耐熱保管性が両立して得られる。なお、非晶性樹脂のガラス転移点(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定される値である。測定手順としては、測定試料(非晶性樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行い、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点とする。
また、非晶性樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で10,000〜100,000であることが好ましい。本発明において、非晶性樹脂のGPCによる分子量は、以下のようにして測定される値である。すなわち、装置「HLC−8120GPC」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、測定試料(非晶性樹脂)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
・結晶性樹脂
結晶性樹脂についても特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性樹脂が用いられうるが、なかでも結晶性樹脂は結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ここで、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
多価カルボン酸とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、テトラデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;およびこれらカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1〜3のアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価アルコールとは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂(後述するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂およびノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)の融点(Tm)は、55〜90℃であることが好ましく、より好ましくは70〜85℃である。結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性および優れた耐ホットオフセット性が得られる。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、以下のようにして測定される値である。すなわち、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用い、昇温速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇温速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって測定されるものであり、この測定によって得られるDSC曲線に基づいて、第1昇温過程における結晶性ポリエステル樹脂に由来の吸熱ピークトップ温度を、融点(Tm)とするものである。測定手順としては、測定試料(結晶性ポリエステル樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、ダイヤモンドDSCサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。
また、結晶性ポリエステル樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、重量平均分子量(Mw)で5,000〜50,000、数平均分子量(Mn)で1,500〜25,000であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂のGPCによって測定される分子量は、測定試料として結晶性ポリエステル樹脂を用いたことの他は上記と同様にして測定されるものである。
非晶性樹脂と結晶性樹脂との質量比(非晶性樹脂/結晶性樹脂)は97/3〜70/30であることが好ましく、より好ましくは95/5〜75/25である。質量比(非晶性樹脂/結晶性樹脂)が上記範囲にあることにより、形成されるべきトナー粒子の表面に結晶性樹脂が露出せず、または、露出してもその量が極めて少なく、かつ、低温定着性を図ることができるだけの量の結晶性樹脂をトナー粒子に導入することができる。
結晶性樹脂は、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントとが化学結合して形成された結晶性樹脂(以下、かような複数のセグメントを有する結晶性樹脂を単に「ハイブリッド結晶性樹脂」とも称し、当該複数のセグメントを有さない結晶性樹脂を単に「ノンハイブリッド結晶性樹脂」とも称する。)を含むことが好ましい。この際、ビニル系重合セグメントとポリエステル重合セグメントとは、両反応性単量体を介して結合された結晶性樹脂であることが好ましい。なお、上記ポリエステル重合セグメントは結晶性ポリエステル樹脂から構成される。結晶性樹脂がハイブリッド結晶性樹脂を含むことで、ラメラ状結晶構造の分子鎖折り畳みによる厚さをある程度長くすることができ(すなわち結晶性を高くすることができ)、結晶化時に分子鎖が均一に配列しやすくなる結果、ラメラ状結晶構造が形成されやすくなる。これは、ハイブリッド結晶性樹脂に導入されるビニル系重合セグメントは非晶性樹脂との親和性が高いことに起因して、ハイブリッド結晶性樹脂が非晶性樹脂となじみやすく(固定化されやすく)なり、その結果、結晶性樹脂の分子鎖が配列しやすくなることによるものと考えられる。
・ビニル系重合セグメント
ハイブリッド結晶性樹脂を構成するビニル系重合セグメントは、ビニル系単量体を重合して得られた樹脂から構成される。ここで、ビニル系単量体としては、ビニル系樹脂を構成する単量体として上述したものが同様に用いられうるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、ハイブリッド結晶性樹脂中におけるビニル系重合セグメントの含有量(ハイブリッド化率(後述する実施例に記載の「HB率」))について特に制限はないが、ハイブリッド結晶性樹脂をノンハイブリッド結晶性樹脂と併用する場合、当該ハイブリッド結晶性樹脂のハイブリッド化率は5〜30質量%の範囲内であることがより好ましく、5〜20質量%の範囲内であることがさらに好ましく、5〜10質量%の範囲内であることが特に好ましい。また、ハイブリッド結晶性樹脂をノンハイブリッド結晶性樹脂と併用しない場合、当該ハイブリッド結晶性樹脂のハイブリッド化率は40質量%以上であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましく、45〜50質量%であることがさらに好ましい。ハイブリッド結晶性樹脂におけるハイブリッド化率の値がこの範囲内であると、本発明に係るトナーの特徴的な構成であるラメラ状結晶構造および糸状結晶構造を併存させやすくなるという利点がある。ハイブリッド結晶性樹脂はノンハイブリッド結晶性樹脂に比べて、もともと結晶性セグメント部分が集まっているため、結晶化時にこの結晶性セグメント部分が均一に配列しやすく、ラメラ状に結晶構造が出現しやすい。ハイブリッド結晶性樹脂の中でも、後述の図1に示すような櫛形状のハイブリッド構造を有するものは、特にきれいな結晶配列になりやすく、ラメラ状結晶構造を取りやすい。一方、ノンハイブリッド結晶性樹脂では、結晶性セグメント部分がハイブリッド結晶性樹脂ほど集まっていないため、結晶化時にはおのおのが結晶構造を形成する。このため、層構造にはなりにくく、糸状物質のような単体結晶構造として出現する傾向にある。
・ポリエステル重合セグメント
ハイブリッド結晶性樹脂を構成するポリエステル重合セグメントは、多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒の存在下で、重縮合反応を行うことにより製造された結晶性ポリエステル樹脂から構成される。ここで、多価カルボン酸および多価アルコールの具体的な種類については、上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
・両反応性単量体
「両反応性単量体」とは、ポリエステル重合セグメントとビニル系重合セグメントとを結合する単量体で、分子内に、ポリエステル重合セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基および第2級アミノ基から選択される基と、ビニル系重合セグメントを形成するエチレン性不飽和基との双方を有する単量体である。両反応性単量体は、好ましくはヒドロキシ基またはカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。さらに好ましくは、カルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体であることが好ましい。すなわち、ビニル系カルボン酸であることが好ましい。
両反応性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素原子数1〜3個)のエステルであってもよいが、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸またはフマル酸が好ましい。この両反応性単量体を介してポリエステル重合セグメントとビニル系重合セグメントとが結合される。
両反応性単量体の使用量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性および耐久性を向上させる観点から、ビニル系重合セグメントを構成するビニル系単量体の総量100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、4〜8質量部がより好ましい。
・ハイブリッド結晶性樹脂の製造方法
ハイブリッド結晶性樹脂を製造する方法としては、既存の一般的なスキームを使用することができる。代表的な方法としては、次の三つが挙げられる。
(1)ポリエステル重合セグメントを予め重合しておき、当該ポリエステル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ビニル系重合セグメントを形成するための芳香族系ビニル単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体を反応させることにより、ハイブリッド結晶性樹脂を形成する方法。
(2)ビニル系重合セグメントを予め重合しておき、当該ビニル系重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸および多価アルコールを反応させることにより、ポリエステル重合セグメントを形成する方法。
(3)ポリエステル重合セグメントおよびビニル系重合セグメントをそれぞれ予め重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法。
本発明においては、上記製造方法のうち、いずれも用いることができるが、好ましくは、上記(2)項の方法が好ましい。具体的には、ポリエステル重合セグメントを形成する多価カルボン酸および多価アルコール、並びにビニル系重合セグメントを形成するビニル系単量体および両反応性単量体を混合し、重合開始剤を加えてビニル系単量体と両反応性単量体を付加重合させてビニル系重合セグメントを形成した後、エステル化触媒を加えて、重縮合反応を行うことが好ましい。
ここで、ポリエステル重合セグメントを合成するための触媒としては、従来公知の種々の触媒を使用することができる。また、エステル化触媒としては、酸化ジブチルスズ、2−エチルヘキサン酸スズ(II)等のスズ化合物、チタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。
・結晶性樹脂の存在形態
本発明に係るトナーにおいては、トナー母体粒子の断面に、結晶性樹脂から構成されるラメラ状結晶構造および糸状結晶構造が分散して存在する点に特徴の1つがある。ここで、「ラメラ状結晶構造」とは、結晶性樹脂の分子鎖の折り畳みによる結晶化で生じた層状構造を意味する。また、「糸状結晶構造」とは、結晶性樹脂が分子鎖の折り畳みにより結晶化することなく形成された結晶構造であって、一本または数本の分子鎖からなる糸状の結晶構造を意味する。なお、図1は、ラメラ構造を形成している結晶性樹脂の一例である、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の分子構造を示す模式図である。図1に示すハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂10は、主鎖となるスチレンアクリル樹脂セグメント(ビニル系重合セグメント)11に、結晶性ポリエステル樹脂セグメント(ポリエステル重合セグメント)12が、側鎖として化学的に結合した構造を有している。その結果、図1に示すように、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂10は櫛形状の分子構造を有している。このような櫛形状の分子構造は、結晶性ポリエステル樹脂セグメント12が、例えばポリエステル樹脂とは異なる樹脂中で、折りたたまれて結晶化することによりラメラ状結晶構造を構成することとなる。
本発明において、トナー母体粒子の断面におけるラメラ状結晶構造および糸状結晶構造の有無を確認するには、ルテニウム染色によりトナーを染色した後、トナー粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察する。より詳細には、後述する実施例に記載の方法および条件による。
図2は、ラメラ状結晶構造を有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を用いて作製されたトナーをルテニウム染色した後、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察した写真である(倍率:50,000倍)。図2に示すように、結晶性樹脂からなるドメインにおいて、櫛形状に結合した結晶性ポリエステル樹脂セグメント(ポリエステル系重合セグメント)は、ラメラ状結晶構造を形成している。
本発明に係るトナーでは、トナー母体粒子の断面において、ラメラ状結晶構造のサイズについて特に制限はないが、ラメラ状結晶構造の平均ドメイン径は、好ましくは0.1〜2μmであり、より好ましくは0.6〜2μmである。同様に、糸状結晶構造のサイズについても特に制限はないが、糸状結晶構造のドメイン径の長径(平均値)は、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは0.2〜1μmであり、また、糸状結晶構造のドメイン径の短径(平均値)は、好ましくは0.01〜1μmであり、より好ましくは0.01〜0.5μmである。各結晶構造のサイズがこれらの範囲内の値であると、十分な低温定着性と高速定着性との両立が可能となり、さらには定着可能温度幅の制御も可能となる。また、トナー表面の露出が制御されることで保管性や帯電性、流動性の悪化、画質欠陥を抑制することもできるため、好ましい。なお、ラメラ状結晶構造および糸状結晶構造のサイズの測定方法は、後述する実施例に記載の通りである。本発明においては、上記の方法でトナー母体粒子100個の断面を観察した際、その断面において、上記の規定を満たすトナー母体粒子が全体の60%(60個)以上存在していればよく、80%(80個)以上存在していることが好ましい。上記の規定(ラメラ状結晶構造と糸状結晶構造との併存)を満たすトナー母体粒子が全体の60%以上であれば、本発明の所期の効果である、低温定着性、高速定着性、定着可能温度幅、耐熱保管性および流動性といった各種性能の向上が達成される。
トナー母体粒子の断面における、ラメラ状結晶構造や糸状結晶構造の存在位置について特に制限はないが、少なくともラメラ状結晶構造はトナー母体粒子の所定の領域、すなわちトナー母体粒子の粒径(体積基準のメジアン径)の0.1倍の深さよりも浅い領域に存在しないことが好ましい。言い換えると、本発明に係るトナーの好ましい一実施形態は、ラメラ状結晶構造がトナー母体粒子の表面からトナー母体粒子の粒径の0.1倍の深さ以深の領域に存在し、糸状結晶構造がトナー母体粒子の全体に分散している形態である。また、トナーの耐熱保管性や流動性をよりいっそう向上させるという観点からは、ラメラ状結晶構造および糸状結晶構造の双方について、トナー母体粒子の上記所定の領域に存在しない(つまり、これらの双方がトナー母体粒子の表面からトナー母体粒子の粒径の0.1倍の深さ以深の領域にのみ存在する)ことがより好ましい実施形態である。なお、各結晶構造の存在位置の確認は、後述する実施例に記載の手法により行うことができる。
また、トナー母体粒子の断面の断面積に対するラメラ状結晶構造および糸状結晶構造の総断面積比率は、好ましくは1〜50%であり、より好ましくは1〜30%であり、さらに好ましくは5〜20%である。総断面積比率の値がかような範囲内の値であると、十分な低温定着性と高速定着性との両立が可能となり、さらには定着可能温度幅の制御も可能となる。上記総断面積比率の測定についても、後述する実施例に記載の手法により行うことができる。
〈離型剤(オフセット防止剤)〉
本発明に係るトナーにおいて、トナー母体粒子が離型剤を含有するものとして構成される場合においては、離型剤はマトリクス相(非晶性樹脂相)およびドメイン相(結晶性樹脂相)のいずれに含有されていてもよいが、定着時の離型剤の表面染み出しの観点から特にマトリクス相(非晶性樹脂相)に含有されている方が好ましい。
ワックスとしては、特に低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型のポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックス、およびベヘン酸ベヘニルなどのエステル系ワックスを好適に用いることができる。
具体的には、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。これらのうちでも、低温定着時の離型性の観点から、融点の低いもの、具体的には、融点が40〜90℃のものを用いることが好ましい。離型剤の含有割合は、トナー母体粒子中に1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。
〈着色剤〉
本発明に係るトナーにおいて、トナー母体粒子が着色剤を含有するものとして構成される場合においては、着色剤はマトリクス相(非晶性樹脂相)およびドメイン相(結晶性樹脂相)のいずれに含有されていてもよいが、着色剤の分散性の観点から特にマトリクス相(非晶性樹脂相)に含有されている方が好ましい。着色剤としては、カーボンブラックや染料、顔料などが用いられうる。
カーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられ、黒色酸化鉄としては、例えばマグネタイト、ヘマタイト、三酸化チタン鉄などが挙げられる。
染料としては、例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などが挙げられる。
顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同150、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60などが挙げられる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。着色剤の含有割合は、トナー母体粒子中に1〜10質量%とされることが好ましく、より好ましくは2〜8質量%である。
〈荷電制御剤〉
本発明に係るトナーにおいて、トナー母体粒子が荷電制御剤を含有するものとして構成される場合においては、荷電制御剤はマトリクス相(非晶性樹脂相)およびドメイン相(結晶性樹脂相)のいずれに含有されていてもよいが、帯電制御剤の分散性の観点から特にマトリクス相(非晶性樹脂相)に含有されている方が好ましい。
荷電制御剤の含有割合は、最終的に得られる結着樹脂100質量部に対して通常0.1〜10質量部とされ、好ましくは0.5〜5質量部とされる。
(外添剤粒子)
本発明に係るトナーは、トナー母体粒子に加えて、外添剤粒子を含んでもよい。外添剤粒子としては、従来公知の外添剤粒子が用いられうる。かような外添剤粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子などからなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、光沢処理が行われていることが好ましい。
(トナーのガラス転移点)
本発明に係るトナーのガラス転移点(Tg)は、25〜65℃であることが好ましく、より好ましくは35〜55℃である。本発明のトナーのガラス転移点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性および耐熱保管性が両立して得られる。トナーのガラス転移点は、測定試料としてトナーを用いたことの他は上記と同様にして測定されるものである。
(トナーの粒径)
本発明に係るトナーの平均粒径は、例えば体積基準のメジアン径で3〜8μmであることが好ましく、より好ましくは5〜8μmである。この平均粒径は、製造時において使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂(バインダー樹脂)の組成などによって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することなどができる。トナーの体積基準のメジアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「SoftwareV3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とされる。
(トナーの平均円形度)
本発明に係るトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、0.950〜0.995であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。トナーの平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出した値である。HPF検出数が上記の範囲であれば、再現性が得られる。
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
<トナーの製造方法>
〈トナー母体粒子の製造方法〉
本発明に係るトナー母体粒子は、例えば、乳化凝集法で製造することができる。本発明に係るトナー母体粒子を乳化凝集法によって製造する場合の製造方法は、例えば、非晶性樹脂微粒子を含む分散液(a)および結晶性樹脂微粒子を含む分散液(b)を水系媒体に添加して混合分散液を調製する工程と、前記混合分散液を昇温して前記非晶性樹脂微粒子および前記結晶性樹脂微粒子を凝集させてトナー母体粒子を形成する工程と、を含むものである。なお、本明細書において、「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
上記製造方法は、例えば、以下の各工程を含むものとして構成することができる。ここで、以下の例は、非晶性樹脂微粒子が離型剤を含有するものであり、結晶性樹脂微粒子が結晶性ポリエステル樹脂微粒子であり、さらにトナー母体粒子が着色剤を含有するものである場合について記載したものであり、本発明の技術的範囲がこれらの形態に限定されるわけではない。
(1)離型剤を含有する非晶性樹脂微粒子を含む分散液(a)を調製する、分散液(a)の調製工程、
(2)結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解し、水系分散媒中に乳化分散させ、有機溶媒を除去することにより結晶性ポリエステル樹脂微粒子を含む分散液(b)を調製する、分散液(b)の調製工程、
(3)上記(1)で調製した分散液(a)および上記(2)で調製した分散液(b)を水系媒体に添加して混合分散液を調製する、混合分散液の調製工程、
(4)上記(3)で調製した混合分散液を昇温して非晶性樹脂微粒子および結晶性樹脂微粒子を凝集させてトナー母体粒子を形成する凝集粒子形成工程、
(5)上記(4)で形成された凝集粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御し、トナー母体粒子を得る熟成工程、
(6)トナー母体粒子の分散液を冷却する冷却工程、
(7)水系媒体からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤などを除去する濾過・洗浄工程、
(8)洗浄されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程。
このように、本発明に係るトナー母体粒子は、必須の(1)〜(4)の工程に、必要に応じて加えることができる(5)〜(8)の工程からなるものを挙げることができる。
上述した各工程を実施するにあたっては、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、上述した非晶性樹脂微粒子を含む分散液(a)や結晶性樹脂微粒子を含む分散液(b)については、機械的せん断力によって乳化させる方法などの種々の乳化方法を用いて調製することができるが、転相乳化法と称される手法を用いて調製することが好ましい。特に、分散液(b)については、転相乳化法により調製されたものを用いると、ポリエステルのカルボキシル基の安定性を変化させることによって油滴を均一分散させることができ、機械乳化法のように無理矢理せん断力で分散させない点で優れている。「転相乳化法」では、有機溶媒に樹脂を溶解し、樹脂溶解液を得る溶解工程と、樹脂溶解液に中和剤を投入する中和工程と、中和後の樹脂溶解液を水系分散媒中に乳化分散させ、樹脂乳化液を得る乳化工程と、樹脂乳化液から有機溶媒を除去する脱溶媒工程と、を経ることで、樹脂微粒子の分散液が得られる。なお、分散液中の樹脂微粒子の粒径は、中和剤添加量を変更することによって制御可能である。
ここで、上述したような本発明に特徴的な「トナー母体粒子の断面にラメラ状結晶構造および糸状結晶構造が分散して存在する」という構成を実現するための方法としては、例えば、上述した製造方法の上記(2)において用いられる結晶性樹脂としてハイブリッド結晶性樹脂とノンハイブリッド結晶性樹脂との双方を用いる方法が例示される(後述の実施例1〜10)。また、上記構成を実現するための別の方法として、上述した製造方法の上記(2)において用いられる結晶性樹脂としてハイブリッド結晶性樹脂のみを用いるが、当該ハイブリッド結晶性樹脂のハイブリッド化率を40質量%以上とする方法も例示される(後述の実施例11)。これらの方法を採用することで、ノンハイブリッド結晶性樹脂をハイブリッド結晶性樹脂と併用する場合には、当該ハイブリッド結晶性樹脂がラメラ状結晶構造を取る傾向にある一方で、当該ノンハイブリッド結晶性樹脂が糸状結晶構造を取る傾向にあることから、上記構成の実現が容易となる。また、ノンハイブリッド結晶性樹脂をハイブリッド結晶性樹脂と併用しない場合であっても、当該ハイブリッド結晶性樹脂としてハイブリッド化率が比較的大きいものを用いることで、ハイブリッド結晶性樹脂が結晶性の高いラメラ状結晶構造を取りにくくなり、糸状結晶構造を取りやすくなる結果、やはり上記構成の実現が可能となる。
また、前記トナー母体粒子をコアとして、その表面にシェル層を設けることによって、コアシェル構造のトナー母体粒子とすることもできる。コアシェル構造とすることによって、耐熱保管性と低温定着性をさらに向上させることができる。コアシェル構造のトナー母体粒子を製造するには、例えば、上述した製造方法において、上記(4)の凝集粒子形成工程の後に、以下の工程:
(4’)上記(4)で調製したトナー母体粒子をコア粒子として用い、非晶性樹脂微粒子を含むシェル用分散液(c)を混合分散液に添加して、上記コア粒子の表面にシェルを形成する工程、
を実施し、次いで上記(5)以降の工程を実施することとすればよい。
〈トナー粒子の製造方法〉
(外添剤添加工程)
外添剤添加工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に外添剤粒子を添加、混合することにより、トナー粒子を調製する工程である。外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサーおよびコーヒーミルなどの機械式の混合装置が挙げられる。
<静電荷像現像用現像剤>
本発明に係るトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリアなど用いてもよい。
キャリアの体積基準のメジアン径としては20〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは25〜80μmとされる。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
なお、本発明に係る「トナー」は、上述したように「トナー母体粒子」を含有する。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
<電子写真画像形成方法>
本発明に係る静電荷像現像用現像剤は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの静電荷像担持体(「電子写真感光体」または単に「感光体」とも称する。)とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置および静電荷像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
電子写真画像形成方法としては、具体的には、本発明に係る静電荷像現像用現像剤を使用して、例えば静電荷像担持体上に帯電装置にて帯電(帯電工程)し、像露光することにより静電的に形成された静電荷像(露光工程)を、現像装置において本発明に係る静電荷像現像用現像剤中のキャリアでトナーを帯電させて現像することにより顕像化させてトナー画像を得る(現像工程)。そして、このトナー画像を用紙に転写(転写工程)し、その後、用紙上に転写されたトナー画像を接触加熱方式の定着処理によって用紙に定着(定着工程)させることにより、可視画像が得られる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。以下の実施例においては、特記しない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味し、各操作は、室温(25℃)で行われる。なお、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
<トナーの作製>
(製造例1:ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成)
両反応性モノマーを含む、下記に示す組成の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂:StAc1)セグメントの原料モノマーおよびラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 34質量部
n−ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部。
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs1)セグメントの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
テトラデカン二酸 271質量部
1,6−ヘキサンジオール 118質量部。
次いで、フラスコの内容物を攪拌しながら、付加重合系樹脂(StAc1)の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合系樹脂の原料モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー比に対してごく微量であった。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に200℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)の全量100質量%に対するCPEs以外の樹脂(StAc1)セグメントの含有量(HB率)は10質量%であり、また、StAcセグメントにCPEsセグメントがグラフト化した形態の樹脂であった。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)の数平均分子量(Mn)は6400、融点(Tc)は75.2℃であった。
(製造例2:ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(2)の合成)
下記に示す組成の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂:StAc2)セグメントの原料モノマーおよびラジカル重合開始剤を用いたこと以外は、上記製造例1と同様にしてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(2)を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(2)の数平均分子量(Mn)を下記の表1に示す。
スチレン 32質量部
n−ブチルアクリレート 11質量部
アクリル酸 5質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部。
(製造例3:ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(3)の合成)
下記に示す組成の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs2)セグメントの原料モノマーを用いたこと以外は、上記製造例1と同様にしてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(3)を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(3)の数平均分子量(Mn)を下記の表1に示す。
ドデカン二酸 311.7質量部
エチレングリコール 80.0質量部。
(製造例4:ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(4)および(5)の合成)
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の全量100質量%に対するCPEs以外の樹脂(StAc1)セグメントの含有量(HB率)を下記の表1に示すように変更したこと以外は、上記製造例1と同様にしてハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(4)および(5)を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(4)および(5)の数平均分子量(Mn)を下記の表1に示す。
(製造例5:ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、テトラデカン二酸281質量部および1,6−ヘキサンジオール206質量部を仕込み、この系を撹拌しながら1時間かけて内温を190℃まで昇温させた。均一に撹拌された状態であることを確認した後、触媒としてのTi(OBu)を、テトラデカン二酸の仕込み量100質量%に対して0.003質量%の量で投入した。その後、生成する水を留去しながら、6時間かけて内温を190℃から240℃まで昇温させ、さらに温度240℃の条件で6時間かけて脱水縮合反応を継続することによって重合を行うことにより、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)の数平均分子量(Mn)を下記の表1に示す。
(製造例6:ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(2)の合成)
原料モノマー組成を、ドデカン二酸241.5質量部およびエチレングリコール62.1質量部に変更したこと以外は、上記製造例5と同様にしてノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(2)を得た。
(製造例7:ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(3)の合成)
原料モノマー組成を、ドデカン二酸267質量部および1,9−ノナンジオール160質量部に変更したこと以外は、上記製造例5と同様にしてノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(3)を得た。ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(3)の数平均分子量(Mn)を下記の表1に示す。
(製造例8:ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)の調製)
上記製造例1で得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)30質量部を溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換器で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転することにより、固形分量30質量部のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)を調製した。上記分散液(H1)に含まれる樹脂微粒子の体積基準のメジアン径を下記の表1に示す。
(製造例9:ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H2)〜(H5)の調製)
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)に代えて、上記製造例2〜4で得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(2)〜(5)のいずれかを用いたこと以外は、上記製造例8と同様にして、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H2)〜(H5)をそれぞれ調製した。上記分散液(H2)〜(H5)に含まれる樹脂微粒子の体積基準のメジアン径を下記の表1に示す。
(製造例10:ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)〜(N3)の調製)
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)に代えて、上記製造例5〜7で得られたノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(1)〜(3)のいずれかを用いたこと以外は、上記製造例8と同様にして、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)〜(N3)をそれぞれ調製した。上記分散液(N1)〜(N3)に含まれる樹脂微粒子の体積基準のメジアン径を下記の表1に示す。
(製造例11:非晶性樹脂微粒子の水系分散液(X1)の調製)
≪第1段重合≫
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部およびイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、再度液温80℃とし、
スチレン 480質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
からなる単量体を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液(x1)を調製した。
≪第2段重合≫
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、樹脂微粒子の分散液(x1)260質量部と、
スチレン 284質量部
n−ブチルアクリレート 92質量部
メタクリル酸 13質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 1.5質量部
離型剤:ベヘン酸ベヘニル(融点73℃) 190質量部
からなる単量体混合液(離型剤を含む)を90℃にて溶解させた溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液(x2)を調製した。
≪第3段重合≫
さらに、樹脂微粒子の分散液(x2)にイオン交換水400質量部を添加し、よく混合した後、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、
スチレン 350質量部
n−ブチルアクリレート 215質量部
アクリル酸 30質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂(StAc樹脂)からなる非晶性樹脂微粒子の水系分散液(X1)を調製した。
得られた非晶性樹脂微粒子の水系分散液(X1)に含まれる非晶性樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は220nmであり、ガラス転移温度(Tg)は55℃であり、重量平均分子量(Mw)は32,000であった。
(製造例12:シェル用非晶性樹脂微粒子の水系分散液(S1)の調製)
両反応性モノマーを含む、下記に示す組成の付加重合系樹脂(スチレンアクリル樹脂)セグメントの原料モノマーおよびラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 80質量部
n−ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 16質量部。
また、下記の重縮合系樹脂(非晶性ポリエステル樹脂)セグメントの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部。
次いで、フラスコの内容物を攪拌しながら、付加重合系樹脂の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合系樹脂の原料モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー比に対してごく微量であった。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.4質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に200℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて所望の軟化点に達するまで反応を行った。次いで脱溶剤を行い、非晶性樹脂としてのシェル用樹脂(s1)を得た。得られたシェル用樹脂(s1)のガラス転移温度(Tg)は60℃であり、重量平均分子量(Mw)は66700であった。
得られたシェル用樹脂(s1)100質量部を、400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し、予め調製した0.26質量%濃度のドデシル硫酸ナトリウム水溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)でV−LEVEL 300μAで30分間超音波分散した。その後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、固形分量13.5質量%のシェル用非晶性樹脂微粒子の水系分散液(S1)を調製した。上記分散液(S1)に含まれる樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は160nmであった。
(製造例13:着色剤微粒子の水系分散液(Cy1)の調製)
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子の水系分散液(Cy1)を調製した。上記分散液(Cy1)に含まれる着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は110nmであった。
〔実施例1:トナー(1)の作製〕
撹拌装置、温度センサーおよび冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性樹脂微粒子の水系分散液(X1)195質量部(固形分換算)、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)15質量部(固形分換算)およびノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)15質量部(固形分換算)、並びにイオン交換水2000質量部を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して溶液のpHを10に調整した。
その後、着色剤微粒子の水系分散液(Cy1)40質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。この系を60分間かけて82℃まで昇温し、82℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmになった時点で、79℃まで冷却し、シェル用非晶性樹脂微粒子の水系分散液(S1)75質量部(固形分換算)を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、74℃まで冷却し、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。74℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子(1X)を得た。
得られたトナー粒子(1X)100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部および疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/secで、32℃にて20分間混合した後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、トナー(1)を作製した。
〔実施例2:トナー(2)の作製〕
ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)に代えて、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N2)を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様にして、トナー(2)を作製した。
〔実施例3:トナー(3)の作製〕
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)の添加量を25質量部とし、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)の添加量を5質量部としたこと以外は、上述した実施例1と同様にして、トナー(3)を作製した。
〔実施例4:トナー(4)の作製〕
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)の添加量を5質量部とし、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)の添加量を25質量部としたこと以外は、上述した実施例1と同様にして、トナー(4)を作製した。
〔実施例5:トナー(5)の作製〕
仕込み時にはハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)を添加せず、会合粒子の粒径(体積基準のメジアン径)が6.0μmになった時点で添加したこと以外は、上述した実施例1と同様にして、トナー(5)を作製した。
〔実施例6:トナー(6)の作製〕
仕込み時にはノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)を添加せず、会合粒子の粒径(体積基準のメジアン径)が6.0μmになった時点で添加したこと以外は、上述した実施例1と同様にして、トナー(6)を作製した。
〔実施例7:トナー(7)の作製〕
仕込み時にはハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)およびノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)を添加せず、ともに会合粒子の粒径(体積基準のメジアン径)が6.0μmになった時点で添加したこと以外は、上述した実施例1と同様にして、トナー(7)を作製した。
〔実施例8〜10:トナー(8)〜(10)の作製〕
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)に代えて、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H2)〜(H4)のいずれかを用いたこと以外は、上述した実施例1と同様にして、トナー(8)〜(10)を作製した。
〔実施例11:トナー(11)の作製〕
ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)を用いず、また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液として水系分散液(H1)に代えて水系分散液(H5)を用い、当該水系分散液(H5)の添加量を30質量部としたこと以外は、上述した実施例1と同様にして、トナー(11)を作製した。
〔比較例1:トナー(12)の作製〕
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)およびノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)をともに用いなかったこと以外は、上述した実施例1と同様にして、トナー(12)を作製した。
〔比較例2:トナー(13)の作製〕
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(H1)を用いず、また、ノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N1)に代えてノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N3)を用い、当該水系分散液(N3)の添加量を30質量部としたこと以外は、上述した実施例1と同様にして、トナー(13)を作製した。
〔比較例3:トナー(14)の作製〕
仕込み時にはノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(N3)を添加せず、会合粒子の粒径(体積基準のメジアン径)が6.0μmになった時点で添加したこと以外は、上述した比較例2と同様にして、トナー(14)を作製した。
<現像剤の作製>
実施例1〜11および比較例1〜3で作製したトナー(1)〜(14)のそれぞれに対して、シリコーン樹脂を被覆した体積基準のメジアン径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤(1)〜(14)をそれぞれ作製した。
<トナーおよび現像剤の評価>
(トナー粒子の断面観察)
装置:透過型電子顕微鏡「JEM−2000FX」(日本電子社製)
試料:四酸化ルテニウム(RuO)によって染色したトナー粒子の切片(切片の厚さ:60〜100nm)
加速電圧:80kV
倍率:50,000倍、明視野像。
・トナー粒子の切片の作製方法
トナー粒子10mgを下記に示す四酸化ルテニウム(RuO)蒸気染色条件下で1〜2回染色後、光硬化性樹脂「D−800」(日本電子社製)中に分散させ、UV光硬化させてブロックを形成する。次いで、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、上記のブロックから厚さ60〜100nmの超薄片状のサンプルを切り出す。
・四酸化ルテニウム染色条件
染色は真空電子染色装置VSC1R1(フィルジェン社製)を用いて行う。装置手順に従い、染色装置本体に四酸化ルテニウムが入った昇華室を設置し、作製した上記超薄切片を染色チャンバー内に導入後、四酸化ルテニウムによる染色条件として、室温(24〜25℃)、濃度3(300Pa)、時間10分の条件下で染色した。
・結晶構造の観察
染色後、24時間以内に透過型電子顕微鏡「JEM−2000FX」(日本電子社製)にて観察した。この際、トナー粒子を構成するトナー母体粒子の断面におけるラメラ状結晶構造および糸状結晶構造の存在位置を確認した。結果を下記の表2に示す。なお、表2において「内」とあるのは、対応する結晶構造がトナー母体粒子の粒径(体積基準のメジアン径)の0.1倍の深さ以深の領域にのみ存在することを意味する。また、「内〜外」とあるのは、対応する結晶構造が上記領域だけでなく、上記領域以外の領域(つまり、トナー母体粒子の粒径(体積基準のメジアン径)の0.1倍の深さよりも浅い領域)にも存在する(つまり、トナー母体粒子の全体に分散している)ことを意味する。
(結晶構造のサイズの測定方法)
トナー母体粒子の断面におけるラメラ状結晶構造および糸状結晶構造のドメイン径は、各結晶構造の水平方向最大弦長(CORD H)として算出した。具体的には、上記と同様にして作製したサンプルの切断面を、透過型電子顕微鏡JEM−2000FX(日本電子社製)により、加速電圧80kVにて50000倍で撮影し、写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置LUZEX AP(ニレコ社製)を用いて、各結晶構造の水平方向最大弦長(CORD H)を測定した。また、同様にして、糸状結晶構造の長径(長さ)および短径(幅)を測定した。この際、結晶構造の測定は、トナー粒子100個について行い、ドメイン径については、測定した100個のトナー粒子のうち結晶構造が観察されたものについての算術平均値として算出した。結果を下記の表2に示す。
また、上述したドメイン径の測定方法と同様の方法により、トナー粒子を構成するトナー母体粒子の断面の断面積に対する結晶構造(ラメラ状結晶構造および糸状結晶構造)の総断面積比率を、「面積AREA」を用いて測定した。結果を下記の表2に示す。
(低温定着性の評価)
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhubC754」(コニカミノルタ社製)の、定着上ベルトおよび定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、現像剤として現像剤(1)〜(14)をそれぞれ搭載し、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下で、記録材「mondi Color Copy A4 90g/m」(mondi社製)上に、トナー付着量11.3g/mのベタ画像を、ニップ幅11.2mm、定着時間34msec、定着圧力133kPa、定着温度100〜200℃にて出力する試験を、定着温度を5℃刻みで変更しながら、コールドオフセットが発生するまで繰り返し行った。そして、コールドオフセットが発生しなかった最低の定着上ベルトの表面温度を調査し、これを定着下限温度として低温定着性を評価した。結果を下記の表3に示す。なお、各試験において、「定着温度」とは定着上ベルトの表面温度をいう。また、定着下限温度が低いほど低温定着性に優れることを示す。
(高速定着性の評価)
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhubC754」(コニカミノルタ社製)の、定着上ベルトおよび定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、現像剤として現像剤(1)〜(14)をそれぞれ搭載し、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下で、初期プロセススピードを200mm/secに設定し、設定スピードを25mm/secずつ順次上昇させながら、各プロセススピードにおける未定着画像(「低温定着性の評価」と同様の「ベタ画像」)の定着を行った。なお、設定温度は低温定着性の評価における各トナーの定着下限温度とした。低温オフセットが確認されず、かつ、得られた定着画像を折り機を用いて折り、これに0.35MPaの空気を吹きつけ、限度見本を参照して折り目の状態を下記の5段階に評価したときにランク2以上となるプロセススピードの上限値を、定着可能なプロセススピード(定着可能線速)とした。また、定着可能線速の際の折りランクを下記の5段階で評価した。結果を下記の表3に示す。なお、ここでは、定着可能線速が300mm/sec以上、折りランク3〜5を合格レベルとした。
ランク5:全く折れ目に剥離なし;
ランク4:一部折り目に従い剥離あり;
ランク3:折り目に従い細い線状の剥離あり;
ランク2:折り目に従い太い剥離あり;
ランク1:画像に大きな剥離あり。
(定着可能温度幅の評価)
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhubC754」(コニカミノルタ社製)の、定着上ベルトおよび定着下ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下で、記録材「mondi Color Copy A4 90g/m」(mondi社製)上に、トナー付着量11.3g/mのベタ画像を、ニップ幅11.2mm、定着時間34msec、定着圧力133kPaにて出力する試験を、画像形成装置の加熱ローラーの表面温度(ローラーの中心部で測定)を100〜200℃の範囲で5℃刻みで変化させながら行い、定着オフセットに起因する画像不良が発生しない温度領域(非オフセット領域)を測定し、測定結果から下記の評価基準に基づき判定を行った。結果を下記の表3に示す。なお、ここでは、定着可能線速が評価Aまたは評価Bを合格レベルとした。
A:非オフセット領域の下限温度が150℃以下である;
B:非オフセット領域の下限温度が155〜160℃である;
C:非オフセット領域の下限温度が165℃以上である。
(耐熱保管性(50%凝集温度)の評価)
トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り蓋を閉めて、振とう機「タップデンサーKYT−2000」(セイシン企業社製)を用いて室温で600回振とうした後、蓋を取った状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmとなる振動強度に調整して10秒間振動を加えた後、篩上に残存したトナー量の比率(質量%)を測定し、下記式によりトナー凝集率を算出した。この試験を、湿度は35%RHのまま、試験温度を0.1℃ずつ上げながら、トナー凝集率が50質量%を超えるまで繰り返し行った。トナー凝集率が50質量%を超えない最大の試験温度(限界耐熱保管温度)を、耐熱保管性の指標とした。結果を下記の表3に示す。なお、ここでは、限界耐熱保管温度が56.5℃以上である場合を合格レベルとした。
トナー凝集率(質量%)=篩上の残存トナー質量(g)/0.5(g)×100
(トナー流動性の評価)
トナー流動性の指標として、川北式かさ密度測定機(IH2000型)により嵩密度を求めた。具体的な嵩密度の測定方法は以下のとおりである。
測定するトナーを常温常湿(20℃、50RH%)の環境下に一晩放置後、48メッシュの篩い上にサンプル20gをのせ振動強度6で30秒落下させた後、振動を停止し3分間静置して、すり切り嵩密度(トナー重量/容積(20cm))を求めた。上記値について、下記の評価基準に基づき判定を行った。結果を下記の表3に示す。なお、ここでは、評価が○〜△のものを合格レベルとした。
○:すり切り嵩密度が40g/100ml以上である(トナー流動性が優良);
△:すり切り嵩密度が35g/100ml以上40g/100ml未満である(トナー流動性が実用可能);
×:すり切り嵩密度が35g/100ml未満である(トナー流動性が不良)。
表3に示す結果から、本発明に係るトナーを用いてなる現像剤では、優れた低温定着性が達成されるだけでなく、高速定着性および定着可能温度幅といった性能も改善されることがわかる。また、本発明に係るトナーは、高い耐熱保管性を示し、流動性も良好であることも確認された。

Claims (7)

  1. 非晶性樹脂および結晶性樹脂を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
    前記結晶性樹脂が、ポリエステル重合セグメントと他の重合セグメントとが化学結合して形成されたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂およびポリエステル重合セグメントと他の重合セグメントとの化学結合を含まないノンハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含み、
    前記トナー母体粒子の断面にラメラ状結晶構造および糸状結晶構造が分散して存在し、
    前記断面において、前記ラメラ状結晶構造および前記糸状結晶構造がともに、前記トナー母体粒子の表面からトナー母体粒子の粒径の0.1倍の深さ以深の領域のみに存在することを特徴とする、静電荷像現像用トナー。
  2. 前記ラメラ状結晶構造の平均ドメイン径が0.1〜2μmであり、かつ、前記糸状結晶構造のドメイン径の長径(平均値)が2μm以下、短径(平均値)が0.01〜1μmであることを特徴とする、請求項に記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 前記断面の断面積に対する前記ラメラ状結晶構造および前記糸状結晶構造の総断面積比率が1〜50%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 前記他の重合セグメントがビニル系重合セグメントである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
  5. 前記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における前記他の重合セグメントの含有量が、前記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂100質量%に対して5〜30質量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
  6. 前記トナー母体粒子における前記非晶性樹脂と前記結晶性樹脂との質量比(非晶性樹脂/結晶性樹脂)が、97/3〜70/30であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
    非晶性樹脂微粒子を含む分散液(a)および結晶性樹脂微粒子を含む分散液(b)を水系媒体に添加して、混合分散液を調製する工程と、
    前記混合分散液を昇温して、前記非晶性樹脂微粒子および前記結晶性樹脂微粒子を凝集させてコア粒子を形成する工程と、
    非晶性樹脂微粒子を含むシェル用分散液(c)を前記混合分散液に添加して、前記コア粒子の表面にシェルを形成する工程と、
    を含むことを特徴とする、製造方法。
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