明 細 書 試料作製方法及び装置 技術分野
本発明は、 試料作製方法及び装置、 さらに詳しくは、 半導体ウェハや半導体デバ イスチップ等からそれらの特定微小領域を含む微小試料片をイオンビームを用いて 分離摘出し、 上記特定微小領域の観察, 分析,:計測を行なうための試料を作製する 方法及びそのための装置に関する。 背景技術
近年半導体素子の微細化が急速に進み、 これら半導体素子の構造解析には、 通常 の走査型電子顕微鏡 (以下、 SEMと略記する) の分解能では最早観察できない程 の極微細構造の観察が要求されるようになつてきており、 上記の S E Mに代えて、 透過型電子顕微鏡 (以下、 TEMと略記する) による観察が不可欠となってきてい る。 し力、し、 従来は、 TEM観察に際しての試料作製は、 熟練者による長時間の手 作業に頼らざるを得ないがために、 上記の TEMによる試料観察法は、 試料作製が 容易で即座に観察結果が得られる上記の S E M観察法のようには普及していないの が実状である。
従来の TEM観察用試料の作製方法について、 以下に説明する。 図 2に、 従来の TEM観察用試料作製のための第 1の方法を示す。 図 2中の(a)は、 L S Iを形成 した半導体ウェハ (以下、 単にウェハ又は基板と略記する) 2を示しており、 この ウェハ 2は、 上層部 2 Aと、 下層部 (基板部) 2 Bとからなっている。 いま、 この ウェハ 2上の特定領域についての T E M観察用試料を作製するものとする。 先ず、 TEM観察したい領域 22に目印 (図示せず) を付けて、 この観察領域 22を破壊 しないようにして、 ウェハ 2にダイアモンドペン等で傷を付けて劈開するか、 また
は、 ダイシングソ一を用いて切断して、 短冊状のペレット 2 1を切り出す (図 2の (b)) 。 次に、 作製する TEM試料の中央部が観察領域 22となるようにするため に、 観察領域 22同士が向かい合うようにして接着剤 23で貼り合わせ、 貼り合わ せ試料 24を作る (図 2の(c)) 。 次に、 この貼り合わせ試料 24をダイヤモンド ガッタでスライスし、 スライス試料 25を切り出す (図 2の(d)) 。 このスライス 試料 25の大きさは、 3mmX 3mmx O. 5mm程度である。 さらに、 このスラ イス試料 25を研磨盤上で研磨材を用いて薄く研磨して、 厚さ 2 Ο μπι程度の研磨 試料 25' を作製し、 これを ΤΕΜステージ上に搭載される単孔メッシュ 28上に 貼り付ける (図 2の(e)) 。 次に、 この研磨試料 25' の両面にイオンビーム 27 を照射して (図 2の(f )) 、 試料中央部のスパッタ (イオンミリング) 加工を行い (図 2の(g)) 、 試料中央部に貫通穴が開いたらイオンビーム 27の照射を止める (図 2の(h)) 。 このようして厚さが 1 00 nm程度以下と薄くなつた薄片部 26 を T E Mにより観察していた。 この方法については、 例えば、 高分解能電子顕微鏡 一原理と利用法一 (堀内繁雄著、 共立出版社) の第 1 82頁 (公知文献 1 ) に記載 されている。
図 3に従来の T EM試料作製のための第 2の方法を示す。 この方法は集束イオン ビーム (以下、 F I Bと略記する) を利用して試料を作製する方法である。 先ず、 ウェハ 2の観察すべき領域 22の近傍にレーザ光または F I Bで目印 (図示せず) を付けて、 図 3の(a)に示すようにウェハ 2をダイシングして短冊状ペレット 2 1 を切り出し (図 3の(b)) 、 次に、 このペレツト 2 1をスライスしてスライス試料
2 Γ を切り出す (図 3の(c)) 。 このスライス試料 2 1 ' の大きさは、 おおよそ
3 mm X 0. 1 mm X 0. 5 mm (ウェハの厚み) である。 さらに、 このスライス 試料 2 1 ' を研磨により薄片化し、 この薄片化試料 2 1 " を切欠き部 3 Γ を持つ 薄い金属円板からなる TEM試料ホルダ 3 1に貝占り付ける (図 3の(d)) 。 次に、 この薄片化試料 2 1 " 中の観察領域 22を厚さ 1 00 nm程度の薄片部 22' のみ が残るように F I B 32を用いて薄片化して (図 3の(e), (f )) 、 これを TEM
観察用試料とする。 この方法に関しては、 例えば、 論文集: Microscopy of Semi - conducting Materials 1989, Institute of Physics Series No.100, pp.501-506 (公知文献 2) に開示されている。
図 4に従来の T EM試料作製のための第 3の方法を示す。 この方法については、 特開平 5— 527 2 1号公報 (公知文献 3 ) に開示されている。 先ず、 試料基板 2 の表面に対し F I B 32が垂直に照射されるように試料 2の姿勢を保ち、 試料 2上 で F I B 32を矩形形状に走査させ、 試料 2表面に所要の深さの矩形穴 33を形成 する (図 4の(a)) 。 次に、 試料 2表面に対し F I B 32の軸が約 20° の傾きと なるよう試料 2を 70° 傾斜させ、 矩形穴 33の側壁に分離用の溝 34を形成する (図 4の(b)) 。 試料 2の傾斜角の変更は試料ステージ (図示せず) によって行わ れる。 次に、 試料 2表面に対し F I B 32が再び垂直となるよう試料 2の姿勢を戻 して、 切り欠き溝 35を形成する (図 4の(c)) 。 次に、 プローブ 36を保持する マニピュレータ (図示せず) を駆動してプローブ 36先端部を試料 2の分離すべき 部分 40の表面に接触させる (図 4の(d)) 。 この状態でガスノズル 37から堆積 性のガス 39を供給しながら、 プローブ 36先端部を含む局所領域に F I B 32を 照射し、 イオンビームアシストデポジション膜 (以下、 I BAD膜またはデポ膜と 略記する) 38を形成する。 これにより、 接触状態であった試料 2の分離部分 40 とプローブ 36先端部とがデポ膜 38を介して固定接続される (図 4の(e)) 。 次 に、 試料 2の分離すべき部分 40の周囲の残りの部分を F I B 32で切り欠き加工 して、 試料 2から分離部分 40を切り離す (図 4の(f )) 。 切り離された分離部分 40はプローブ 36先端部に固定保持された状態となる (図 4の(g)) 。 この分離 部分 40の観察所望領域を厚さ 1 00 nm程度以下に F I Bを用いて薄片化して、 それを TEM観察用の試料とする。
上記した第 1, 第 2の従来方法においては、 研磨や機械加工、 TEM試料ホルダ への試料の貼り付け等試料作製者の熟練を要する手作業に頼らざるを得なかった。 また、 これらの従来方法では、 所望の試料を作製するには、 元のウェハやデバイス
チップ等の基板を劈開や切断により分断せざるを得ず、 所望領域の試料を取得する ためには、 その隣接部分の劈開や切断も余儀なくされる。 一度観察や分析を行った 後に、 さらに別の箇所の観察や分析の必要が生じた場合には、 試料基板が先の試料 作製のために分断されてしまっているので、 後の観察 (分析) 領域が破壊や損傷を 受けてしまっていたり、 観察 (分析) 領域相互間の位置関係が判らなくなってしま つていたりして、 正確な観察 (分析) 情報が継続して得られないと云う問題を有す る。 また、 上記したイオンミリングや F I Bによる薄膜化加工は、 直接的に人手を 要することはないが、 加工時間が長いと云う難点がある。
また、 最近ではウェハ径が 3 0 0 m mへと大口径化する傾向にあるため、 ウェハ 1枚に搭載されるデバイスチップの数が多いこと, デバイスそのものの付加価値が 高いこと等のため、 1箇所の観察や分析のために 1枚のウェハを切断や劈開で分離 してしまい、 観察/分析対象領域以外を廃棄処分してしまうことは非常に不経済で ある。 また、 種々の顕微鏡を駆使してウェハ全体にわたって検査を行なった結果、 ある領域に微小塵埃や異常形状が発見された場合、 ウェハを各チップ毎に分割する 前に、 特に微小塵埃が無くなってしまう前に観察/分析を行なって原因を究明しな ければ、 最終的なデバイス製品に不良品が多発してさらに大きな損害をもたらす。 ウェハを分割することなく、 力、つ複数のサンプルを短時間で作製できれば、 非常に 経済的であると共に、 製品製造歩留まりの向上に大きく貢献する。
また、 上記第 3の従来方法では、 試料を試料ステージに一度セットすれば、 微小 試料片の分離まで人間が直接手作業を行なう必要はないし、 ウェハを不用意に切断 する必要もない。 しかし、 この手法では、 分離された試料片はプローブ先端に支持 されたままの状態であるため、 そのままで観察装置や分析装置内に導入して観察や 分析を行っても、 試料片が振動してしまい、 信頼性ある観察, 分析結果を得ること ができないと云う問題点がある。
また、 従来の T E M用試料ホルダとしては、 図 7に示すような単孔型ホルダ 7 8 (同図の(a ) ) , 切り欠き型ホルダ 8 0 (同図の(b ) ) , およびメッシュ型ホルダ
1 0 9 (同図の(c ) ) が知られている。 上述した従来の第 3の試料作製方法では、 試料片 4 0の大きさが 2 0〜3 0 μ πιと小さい場合、 単孔型ホルダ 7 8や切り欠き 型ホルダ 8 0では、 単孔部 7 9や切り欠き部 1 0 8の内側壁への試料片 4 0の取付 けを正確に位置合わせして行なう必要があり、 この取付け作業が容易でない。 その 点、 メッシュ型ホルダ 1 0 9では、 試料片 4 0の大きさに合わせた網目間隔のもの を用いれば、 試料片取付け位置そのものはある程度任意に選定することができる。 しかし、 このメッシュ型ホルダ 1 0 9の場合には、 図 7の(d )に示すように、 観察 領域 8 1に対応する電子線経路 8 2がメッシュ構成部材 1 0 9 ' により遮断されて しまって、 T E M観察ができなくなってしまう場合がある。 発明の開示
従って、 本発明の目的は、 上述したような従来方法における諸問題を解消できる よう改良された試料作製方法、 およびその方法を実施するのに使用して好適な試料 作製装置を提供することである。
すなわち、 本発明の第 1の目的は、 研磨やダイシング等の熟練の要る手作業を要 さず、 かつ、 半導体ウェハや集積回路チップを劈開や切断等により分断してしまう ことなく して、 T E M等の観察装置や計測 Z分析装置内に導入して観察又は計測 分析する必要のある微小領域についての試料を作製することのできる試料作製方法 を提供することである。
本発明の第 2の目的は、 上記した本発明の試料作製方法を実施するために用いる のに好適な試料作製装置を提供することである。
本発明の第 3の目的は、 摘出された微小試料片の取付けが容易な T E M用の試料 ホルダを提供することである。
上記した第 1の目的を達成するため、 本発明の試料作製方法おいては、 試料台上 に保持された集積回路チップや半導体ウェハ等の試料基板上の観察や計測 分析を 所望する領域 (以下、 観察領域と云う) の近傍部にプローブ先端部を固定接続し、
この観察領域近傍部の周辺にイオンビームを照射して、 イオンビームスパッタ加工 により上記観察領域を含んだ試料片を上記試料基板から分離摘出し、 この分離摘出 された試料片が上記プロ一ブ先端部に固定接続されたままの状態で、 上記プロ一ブ あるいは上記試料台を移動させることにより、 上記した所望の観察や計測ノ分析を 行なう装置用の試料ホルダまで搬送して、 上記試料片を上記試料ホルダに固定接続 し、 しかる後に、 上記プローブ先端部を上記試料片から切り離した上で、 上記した 所望の観察や計測/分析 (以下、 観察と云う) を行なうようにしている。
また、 試料基板上の特定の観察領域の観察を行うためには、 上記プローブ先端部 を上記特定観察領域近傍部に固定接続する前に、 上記特定観察領域を明示するため のマーキングを行っておき、 上記プローブ先端部から上記試料片を切り離した後に 上記のマーキングにより明示された上記特定観察領域に上記 F I Bを照射して薄膜 化等の追加工を行う。
なお、 上記プロ一ブ先端部を上記試料基板の観察領域近傍部に固定接続する工程 では、 イオンビームアシストデポジション膜またはイオンビ一ムスパッタ粒子再付 着膜を介して両者間の接続を行うか、 あるいは、 融着法または金属接合法を用いて 両者間の接続を行うことができる。
また、 上記プローブ先端部を上記試料片から切り離す工程においては、 イオンビ 一ムスパッタ加工法を用いることができる。 あるいは、 上記プローブ先端部を上記 試料片に固定接続する方法として粘着剤を用いる方法を採用することもでき、 その 場合には、 上記プローブ先端部を上記試料片から切り離す工程では、 紫外線照射法 または加熱法を用いることができる。 また、 上記プローブ先端部に上記試料片を固 定接続する方法として靜電吸着法を用いることもできる。
また、 上記第 2の目的を達成するための本発明による試料作製装置は、 試料基板 を載置するための可動の試料台と、 上記試料基板の所望の観察領域の近傍にプロ一 ブを接続するためのプローブ接続手段と、 上記観察領域の周囲にイオンビームを照 射して上記観察領域を含んだ試料片を上記プローブと接続された状態で上記試料基
板から分離するための試料分離手段と、 上記試料基板から分離された上記試料片を 試料ホルダに固定保持するための試料片固定手段と、 上記プロ一ブを上記試料ホル ダに固定保持された上記試料片から分離するためのプロ一ブ分離手段とを含んで構 成され得る。
上記試料台は、 上記試料基板を載置し、 かつ上記試料ホルダ (あるいは観察装置 の試料ステージに着脱可能なホルダカートリッジ) を保持するための試料カセット と、 上記試料カセットを保持するための可動の試料カセットホルダとを含んで構成 され得る。
上記プローブは、 ばね効果を有するものとすることができる。
上記プローブ接続手段は、 上記試料基板の表面に上記プローブを接触させるため のプロ一ブ接触手段と、 上記プ口一ブと上記試料基板表面との接触部にイオンビー ムアシストデポジション膜 ( I B A D膜) を形成させるためのデポ膜形成手段とに より構成することができる。 上記プローブ接触手段は、 上記プローブを保持して、 該プローブを上記試料基板表面に対して相対移動させ得るマニピュレータ機構とす ることができる。 また、 上記デポ膜形成手段は、 上記プローブと試料基板表面との 接触部にイオンビームを照射するためのイオンビーム照射光学系と、 このイオンビ ーム照射部にアシストガスを供給するガス供給手段とより構成することができる。 上記のデポ膜形成手段により形成された上記 I B A D膜を介して、 上記プローブが 上記試料基板表面に固定接続される。
上記試料分離手段は、 上記試料基板にイオンビームを照射するためのイオンビー ム照射光学系を含んで構成される。 該イオンビーム照射光学系は、 イオン源と該ィ オン源からのイオンを成形イオンビーム(P J I B )として上記試料基板上に投射す る投射光学系とからなる P J I B照射光学系、 または、 イオン源と該イオン源から のイオンを集束イオンビーム (F I B ) として上記試料基板上に照射する集束光学 系とからなる F I B照射光学系であることができる。 また、 上記イオンビーム照射 光学系として上記 P J I B照射光学系と上記 F I B照射光学系とを併用することも
できる。 上記イオンビーム照射光学系を用いての上記試料基板上へのイオンビーム ( P J I Bまたは F I B ) の照射により、 該試料基板がスパッタ加工されて、 上記 試料片の分離摘出が行われる。 また、 上記試料分離手段は、 上記試料基板上に第 1 の方向からイオンビームを照射するための第 1のイオンビーム照射光学系と、 上記 試料基板上に上記第 1の方向と異なる第 2の方向からイオンビームを照射するため の第 2のイオンビーム照射光学系とを含んで構成されることができる。 このように、 2系統のイオンビーム照射光学系を備えることにより試料基板からの試料片の摘出 加工がより容易となる。 なお、 上記試料分離手段として、 レーザビーム照射光学系 を用いてもよく、 さらにはまた、 イオンビーム照射光学系とレーザビーム照射光学 系とを併用してもよい。
上記試料片固定手段は、 上記試料ホルダの試料片保持部に上記試料片を接触させ るための試料片接触手段と、 上記試料片と上記試料片保持部との接触部にイオンビ ームアシストデポジション膜 ( I B A D膜) を形成させるためのデポ膜形成手段と より構成することができる。 上記デポ膜形成手段は、 先のプローブ接続手段におけ るデポ膜形成手段と同様な構成とすることができる。 このデポ膜形成手段により形 成された上記 I B A D膜を介して上記試料片が上記試料ホルダの上記試料片保持部 に固定接続される。 また、 上記プローブ分離手段は、 上記試料片を上記試料片保持 部に固定接続している I B A D膜にイオンビームを照射する手段であることができ る。 このイオンビーム照射により上記 I B A D膜がスパッタ加工 (除去) されて、 上記プローブが上記試料片から分離される。
なお、 上記プローブ接続手段および上記試料片固定手段は、 上記した I B A D膜 を利用するものに代え、 イオンビームスパッタ粒子再付着膜を利用するものとして もよく、 さらには、 融着法または金属接合法によるものとすることもできる。 この 場合、 上記プローブ分離手段としては、 イオンビームスパッタ加工法を用いること ができる。 また、 上記プローブ接続手段および上記試料片固定手段としては、 上記 の他、 粘着法によるものであってもよく、 静電吸着法によるものであってもよい。
本発明による試料作製装置は、 さらに、 上記試料基板表面, 上記プローブ先端部 または上記試料ホルダ近傍を観察するための観察装置を含むことができる。 該観察 装置は、 上記観察部位に電子ビームを照射するための電子ビーム照射光学系と、 こ の電子ビーム照射によって上記観察部位から放出される 2次電子を検出するための 2次電子検出器と、 該 2次電子検出器の検出信号を用いて上記観察部位の 2次電子 像を表示させるための表示装置とで構成されることができる。 また、 上記の観察装 置として、 光学顕微鏡等の光学的な観察装置を用いることもできる。 この観察装置 を用いて上記観察部位を観察することにより、 上記プローブと上記試料基板との接 触 Z接続状態, 上記試料基板からの上記試料片の分離状態, さらには上記試料片と 上記試料ホルダとの接触 接続状態等を適確に把握することが可能となる。
また、 本発明による試料作製装置は、 さらに、 上記プローブと試料基板間, 上記 試料片と試料基板間, および上記試料片と上記試料ホルダ間の接触/接続状態およ び分離状態を検知するための検知手段を備えることができる。 該検知手段は、 それ ぞれ対応する部材間の接触抵抗の変化を利用したものであってもよく、 あるいは、 上記した 2次電子像上における電位コントラス卜の変化を利用したものであっても よい。 この検知手段によって、 上記したそれぞれ対応する部材間の接触/接続状態 および分離状態をより正確に把握することができる。
上記試料ホルダは、 特に、 試料片を保持するための金属細線と、 該金属細線の両 端部を固定支持するための支持部とで構成することができる。 かかる試料ホルダ構 成において、 上記金属細線に上記試料片を固定保持させることにより、 T E M観察 に適した試料保持系が得られる。
本発明の上記以外の目的, 構成, 並びにそれによつて得られる作用効果について は、 以下の実施例を挙げての詳細な説明の中で順次明らかにされよう。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の一実施例になる試料作製装置の基本構成を示す図,
図 2は、 従来の T E M観察用試料作製方法の一例を示す工程説明図,
図 3は、 従来の T E M観察用試料作製方法の他の一例を示す工程説明図, 図 4は、 従来の T E M観察用試料作製方法のさらに他の一例を示す工程説明図, 図 5 A, 図 5 Bおよび図 5 Cは、 本発明による試料作製装置において用いられる イオンビーム照射光学系の構成例を示す要部構成図,
図 6 A, 図 6 B及び図 6 Cは、 本発明による試料作製装置において用いられるプ 口一ブ駆動装置の構成例を示す図,
図 7は、 従来の T E Mホルダの構成例を示す図,
図 8 A, 図 8 B, 図 8 C及び図 8 Dは、 本発明による試料作製装置において用い られる金属細線型 T E Mホルダの構成例を示す図,
図 9 Aおよび図 9 Bは、 本発明による試料作製装置において用いられる T E Mホ ルダの試料カセット上への載置方法の一例を示す図,
図 1 0は、 本発明による試料作製装置において用いられる T E Mホルダ力一トリ ッジの試料カセット上への載置方法の一例を示す図,
図 1 1は、 本発明による試料作製装置において用いられるばね効果を有するプロ ―ブのー構成例およびその機能を説明するための図,
図 1 2は、 本発明による試料作製装置におけるプローブの加熱方法の一例を示す 図,
図 1 3は、 本発明による試料作製装置におけるプローブと試料片との間の静電吸 着法による結合方法の一例を示す図,
図 1 4は、 本発明による試料作製装置における T E Mホルダの加熱方法の一例を 示す図,
図 1 5は、 本発明による試料作製装置の別の一構成例を示す図,
図 1 6は、 本発明による試料作製装置の更に別の一構成例における試料片の分離 方法の一例を示す図,
図 1 7は、 本発明による T E M試料作製方法の別の一実施例の工程説明図,
図 1 8は、 本発明による T E M試料作製方法のさらに別の一実施例の部分工程説 明図,
図 1 9は、 本発明のさらに別の実施例になる試料作製装置の基本構成を示す図, 図 2 O A , 図 2 0 B, 図 2 0 Cは、 本発明による試料作製装置において用いられ る試料移送装置の別の構成例を示す図,
図 2 1は、 本発明による試料作製装置において用いられる試料移送装置の設置位 置に関する説明図,
図 2 2は、 本発明による試料作製装置における試料ホルダの設置方式の一例を示 す図,
図 2 3は、 本発明による試料作製装置における試料ホルダの設置方式の別の一例 を示す図,
図 2 4は、 本発明による試料作製装置における試料ホルダの設置方式のさらに別 の一例を示す図,
図 2 5は、 本発明による試料作製装置における試料ホルダの設置方式のさらに別 の一例を示す図,
図 2 6は、 本発明による試料作製装置における試料ホルダの形態についての説明 図,
図 2 7は、 本発明のさらに別の一実施例になる試料作製方法の工程説明図, 図 2 8は、 本発明による試料作製装置において用いられる試料移送装置のさらに 別の構成例を示す図,
図 2 9は、 図 2 8に示した試料移送装置を用いてプローブ先端部を試料基板表面 へ接触させる手順を示す図,
図 3 0は、 図 2 9に示したプローブ先端部を試料基板表面へ接触させる手順を説 明するためのフローチヤ一卜図,
である。
発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施の形態について、 実施例を挙げ、 図面を参照して詳細に説明 する。
く実施例 1 >
図 1に、 本発明による試料作製方法を実施するために用いられる試料作製装置の 一実施例の基本構成を示す。
本実施例になる試料作製装置は、 試料 (観察対象) である半導体ウェハや半導体 チップ等の基板 2にイオンビーム 1 3を照射するイオンビーム照射光学系 1 , 基板 2を載置して移動させる試料台 3 , 基板 2の観察しょうとする箇所 (観察領域) を 特定するために試料台 3の位置を制御する試料台位置制御装置 3 ' , プローブ 1 1 を保持して移動させるプロ一ブ駆動装置 4, プロ一ブ駆動装置 4を制御するプロ一 ブ駆動制御装置 4 ' , 基板 2の上記観察領域近傍に堆積性ガス (デポガス) を供給 するためのデポガス供給源 8 , デポガス供給源 8を制御するデポガス供給制御装置 8 ' , 基板 2表面に電子ビーム 1 6を照射するための電子ビーム照射光学系 9 , お よび、 基板 2表面から放出される 2次電子を検出する 2次電子検出器 1 2を含んで 構成されている。 なお、 イオンビーム照射光学系 1, 試料台 3, プロ一ブ駆動装置 4 , デポガス供給源 8, 電子ビーム照射光学系 9, および 2次電子検出器 1 2は、 高真空排気される真空室 7 7内に配置されていることは云うまでもない。
試料台 3は、 基板 2を載置するための試料カセット 1 7とこの試料カセッ卜を固 定保持するためのカセットホルダ 1 8とから構成されている。 また、 試料台 3上に は基板 2から分離された試料片を保持して T E M等の観察/分析装置 (図示せず) 内に導入するための試料片ホルダ (以下 T E Mホルダと云う) 1 9を保持するため のホルダ保持具 2 0が設けられている。 試料台 3は、 試料台位置制御装置 3 ' によ つて駆動制御され、 基板 2の 3次元方向位置および基板 2表面のイオンビーム軸に 対する傾き角並びに回転方向角度を任意に設定できる。 これによつて、 基板 2表面 上でのイオンビーム照射位置 (加工位置) および基板 2表面に対するイオンビーム
の照射角度並びに回転方向角度を任意に設定できる。
イオンビーム照射光学系 1は、 基板 2の上記観察領域の周囲にイオンビーム 1 3 を照射して、 イオンビ一ムスパッタ加工法によって上記観察領域を含む試料片を分 離する (切り出す) ために用いられる。 また、 イオンビーム 1 3は、 上記観察領域 近傍の基板 2表面にイオンビームアシストデポジション法 (以下、 I BAD法と略 記する) によってプローブ 1 1の先端部を固定接続する際のアシストイオンビーム として、 および、 基板 2から分離された試料片を TEMホルダ 19に I BAD法に より固定接続する際のアシストイオンビームとして、 さらには、 TEMホルダ 19 に固定接続された試料片からプローブ 1 1の先端部をイオンビームスパッタ加工法 により分離する (切り離す) 際の加工用イオンビームとしても用いられる。 イオン ビーム照射光学系 1は、 イオンビーム駆動装置 7によって駆動制御される。
プローブ駆動装置 4は、 プローブ 1 1先端部を基板 2の観察領域近傍に接触させ たり、 基板 2から分離された試料片をプローブ 1 1先端部に固定保持して TEMホ ルダ 19まで搬送したりするための、 いわゆるマニュピユレ一タである。 プローブ 駆動装置 4は、 プローブ駆動制御装置 4' により駆動制御される。
デポガス供給源 8は、 基板 2の上記観察領域近傍にデポガスを供給して I BAD 法によりデポ膜を形成し、 このデポ膜を介してプローブ 1 1先端部を基板 2表面に 固定接続するために用いられる。 また、 このデポガスは基板 2から分離された試料 片を TEMホルダ 19に I BAD法により固定接続する際にも用いられる。 上記の デポガスとしては、 例えばへキサカルポニルタングステン [W(CO)6 ] を用いる ことができ、 このガスを固定接続すべき部分間 (プローブ 1 1先端部と試料片との 間または試料片と TEN/ [ホルダ 19との間) に供給しながら、 そこにイオンビーム 13を照射することにより、 タングステン膜 (W膜) が形成され、 この W膜により 接続すべき部分同士間が固定接続される。 なお、 W膜によって固定接続されたプロ ーブ 1 1先端部と試料片とを分離するには、 両者を接続している W膜部分にイオン ビームを照射し、 イオンビームスパッタ法 (以下、 I B S法と略記する) によって
上記 W膜部分を除去して、 両者間の分離を行なう。 デポガス供給源 8は、 デポガス 供給制御装置 8' によって駆動制御される。
電子ビーム照射光学系 9及び 2次電子検出器 1 2は、 基板 2表面を走査 2次電子 顕微法により観察するための観察装置を構成しており、 該観察装置は、 電子ビーム 源 14からの電子ビーム 16を偏向レンズ 1 5により走査しながら基板 2表面に照 射して、 基板 2表面から放出される 2次電子を 2次電子検出器 1 2で検出し、 表示 装置 (CRT) 5に基板表面の走査 2次電子像 (SEM像) を表示させる。 なお、 この観察装置は、 プローブ 1 1先端部近傍や TEMホルダ近傍を観察するためにも 用いられる。 これにより、 観察領域の表面状態の確認, 試料片の基板 2からの分離 状態の確認, プローブ先端部の基板 2表面への接触状態の確認, 試料片の TEMホ ルダ 1 9への接触状態の確認等ができる。 なお、 試料片の基板 2からの分離状態の 確認は、 上記 SEM像の電位コントラス卜の変化を検知することによつても行なう ことができる。 また、 上記接触状態の確認および分離状態の確認はプローブ 1 1と 試料台 3との間の電気抵抗 (接触抵抗)の変化を検知して行なうようにしてもよい。 電子ビーム照射光学系 9は電子ビーム駆動装置 10によって駆動制御される。 なお、 基板 2から摘出される試料片の大きさは、 10 角〜 100 μπι角程度 であるので、 光学顕微鏡を表面観察手段として用いるようにしてもよい。
なお、 試料台位置制御装置 3' , プローブ駆動制御装置 4' , イオンビーム駆動 装置 7, デポガス供給制御装置 8' , 電子ビーム駆動装置 10, および表示装置 5 は、 中央処理装置 (CPU) 6によって統括制御される。
以下、 上記試料作製装置の各部の具体的な構成、 並びに、 本装置を用いての試料 作製方法の各工程について詳述する。
[イオンビーム照射光学系]
図 5Aは、 成形イオンビーム (P J I B) の照射光学系 1の要部構成図であり、 イオン源 41から放出されたイオンビームをビーム制限アパーチャ 42 , 照射レン ズ 43によりマスク板 44に照射し、 マスク板 44のパターン開口 45を通過した
イオンビ一ムを投射レンズ 4 6によって試料台 3上に載置された基板 2表面に投射 する。 こうして形成された P J I B 1 3により、 基板 2表面をパターン開口 4 5と ほぼ相似形に加工する。 P J I Bの場合には、 イオン源 4 1直後のイオンビームの 拡がりは直接収差には影響しないため、 アパーチャ 4 2によるイオンビーム制限角 を大きく採ることができるので、 イオンビーム電流量を大きく取ることができる。 このため、 加工速度が大きいという特長を持つ。
また、 図 5 Bに示すように、 マスク板 4 4に設ける開口パターン 4 5を光軸 4 7 が通過する辺 4 8を有する矩形状パターンとすることにより、 辺 4 8に対応する P J I Bの辺のボケ力極めて小さくなり、 この P J I Bを投射し続けて形成される基 板 2の凹部の対応辺の分解能を高くできる。 従って、 辺 4 8に対応する加工面は、 基板 2表面に対して垂直な断面となる。 このように、 光軸 4 7を通過する辺 4 8を 有する矩形状開口パターンを駆使することで、 垂直に切り立つた壁面構造を形成す ることができる。 これについては特開平 7— 3 1 7 7 4 5号公報 『イオンビーム加 ェ方法及び装置』 にも開示されている。
図 5 Cは、 基板加工に集束イオンビームを用いる集束イオンビーム (F I B ) 照 射光学系 1の要部構成を示す。 イオン源 4 1から放出されたイオンビームをビーム 制限アパーチャ 4 2 ' 、 イオンビームの拡がりを抑制したり集束させたりする集束 レンズ 4 9, イオンビームを基板 2上に集束させる対物レンズ 5 0を通すことで集 束イオンビーム 5 2を形成する。 この集束イオンビーム 5 2を偏向器 5 1を用いて 基板 2上で走査することにより、 走査形状に合わせて基板 2を加工する。 このよう に集束イオンビーム (F I B ) を用いる場合は、 精密な加工が可能であり、 また、 基板 2表面等の観察手段としても兼用できる。 ただし、 精密加工のために集束ィォ ンビームの集束性を高く保っためには、 色収差や球面収差を抑えるためにビーム制 限アパーチャ 4 2 ' によリイオンビームの開口角を制限しなければならない。 この ため、 ビーム電流量を大きく取ることは難しく、 加工速度があまり大きくならない という欠点がある。 なお、 加工速度を増すには、 基板表面に反応性ガスを供給しな
がらスパッタを行なう集束ィオンビームアシストエツチング法等の手法を用いても よい。 集束イオンビームを観察手段としても用いるには、 集束イオンビーム 5 2に よって基板 2表面を走査し、 基板 2表面からの 2次電子 5 3を 2次電子検出器 1 2 で検出して、 画像化表示させればよい。
上述したように、 試料加工用イオンビームとして、 P J I Bを用いると高速加工 が実現でき、 F I Bを用いると精密加工の実現及び観察手段としての兼用ができる という利点がある。
[プローブ駆動装置]
図 6 A, 図 6 B, 図 6 Cは、 それぞれプローブ駆動装置 4の一構成例を示す図で ある。 プローブ駆動装置 4は、 真空室 7 7の側壁 5 4に設けられた開口 6 2を通し て外から挿入する構造である。 この構造により、 プローブ 1 1を試料台 3とは独立 に移動させることができ、 基板 2と T E Mホルダ 1 9とへのプロ一ブ 1 1の移動が 容易になる。
プローブ駆動装置 4は、 図 6 Aに示すように粗動部 5 6と微動部 5 5との 2部分 から構成される。 粗動部 5 6による耝動軸 6 5の X軸方向の粗動は、 調整ネジ 5 7 により軸 5 9を押した時のバネ 6 0の伸縮によって行われる。 Z軸方向の耝動は、 調整ネジ 5 8で軸 5 9を押した時の支点 6 3を中心としたてこの原理で稼働する。
Y軸方向の調整ネジは図示されていないが、 紙面手前側に存在し、 Z軸方向と同様 の原理で稼働する。 パネ 6 0, 6 1は軸 5 9を調整ねじ 5 7 , 5 8の先端部にそれ ぞれ押しつけるためのものであり、 Y軸用のパネ (図示せず) も Z軸用のパネ同様 に設けられている。 耝動部 5 6の位置精度は、 以下に説明するように、 微動部 5 5 のストロークよりも小さい値を持つものとする。 微動部 5 5は、 できるだけコンパ ク卜であることが要求されるため、 圧電素子を用いて構成されている。 特に、 本実 施例では、 バイモルフ圧電素子を用いている。 バイモルフ圧電素子には、 他の圧電 素子に比べ、 比較的大きな移動範囲 (数 1 O O ^a m以上) を持つ利点がある。 この ため、 粗動部 5 6に高い位置精度を要求する必要が無いので、 粗動部の製作が容易
となる。 また、 プロ一ブ 1 1先端部の位置制御は μ πιのオーダであればよいので、 圧電素子の中では比較的分解能が悪いバイモルフ圧電素子でも十分に対応できる。 図 6 Βに、 3軸バイモルフ圧電素子を用いた微動部 5 5の具体的構成例を示す。 微動部 5 5は、 それぞれ X, Υ , Ζ方向微動を受け持つバイモルフ圧電素子 6 6, 6 7, 6 8を有している。 プローブホルダ 7 0は、 プローブ 1 1を 3軸方向微動部 (バイモルフ圧電素子 6 8の移動端) に固定するためのものである。 また、 バイモ ルフ圧電素子 6 7の固定端は、 微動部固定治具 6 9を介して粗動軸 6 5に固定接続 されている。 バイモルフ圧電素子の駆動には特殊な回路を要することなく、 単純な 電圧印加によって行なうことができる。 このようにバイモルフ圧電素子を利用する ことにより、 コンパクトで、 大きなストロークを有する微動部をより経済的に構成 できる。 微動部 5 5をコンパクトに作成する必要があるのは、 以下のような理由に よる。
基板 2の加工に図 5 Cで説明した集束イオンビーム (F I B ) 5 2を用いる場合 は、 対物レンズ 5 0から基板 2までの距離が短いほど、 より加工精度を上げること ができる。 また、 基板加工に図 5 Aで説明した成形イオンビーム (P J I B ) を用 いる場合は、 開口パターン 4 5の投射倍率を大きく取るために、 P J I B照射光学 系の投射レンズ 4 6と基板 2との間の距離が小さいほど良い。 すなわち、 上記した どちらのビームを用いる場合にも、 基板 2と最終段レンズとの間の距離が小さい方 が望ましい。 このため、 基板 2と最終段レンズとの間およびその周囲空間が体積的 に制限される。 基板 2の周囲には、 観察手段, 2次電子検出器 1 2, デポガス供給 用ノズル 8や、 さらに、 場合によっては、 アシストエッチング用ガスの供給ノズル 等が配置されるので、 これらと場所的に干渉しないためには、 プローブ駆動装置 4 の先端部分 (微動部 5 5 ) は、 できるだけコンパク 卜に構成されていなければなら ない。
図 4に示した従来技術においては、 基板から分離した試料片を搬送するマニピュ レ一タは 3軸バイモルフ圧電素子で構成されているが、 このマニピュレータの設置
位置が明らかにされていない。 ただ、 その出典公報中の図 3からは、 このマニピュ レ一タは、 ステージ上に設置されているものと読み取れる。 このように、 マニピュ レータが試料台上に設置されているために、 観察対象領域がウェハの中心部にある 場合には、 マニピュレータ設置位置から観察対象領域までの距離がマニピュレータ の移動ストロークよりも遥かに大きくなるため、 このようなステージ上に設置され たマニピュレータでは、 観察対象領域まで届かないと云う致命的な問題点を有する ことになる。
一方、 図 6 Aに示したプローブ駆動装置 4は、 試料台 3とは分離して設けられて おり、 観察対象領域が大きな試料 (ウェハ) の中央部であっても、 問題なくそこに アクセスすることができる。 また、 プローブ 1 1の不使用時には粗動部 5 6により 微動部 5 5およびプローブ 1 1を大きく移動させて退避させることができるため、 他の構成部品の邪魔になることはない。
プローブ駆動装置 4の他の一構成例を図 6 Cに示す。 本例では、 粗動機能と微動 機能とを兼備した第 1のプロ一ブ駆動機構 7 6を試料台 3から十分に離れた位置に 設置し、 その移動端側に延長棒 7 1を介して、 Z方向微動機能のみを持った第 2の プローブ駆動機構 (バイモルフ圧電素子) 7 2を取り付けて、 その移動端側にプロ —ブ 1 1を固定保持させてある。 本構成には、 図 6 Bの構成に比較して以下のよう な利点がある。 すなわち、 図 6 Bの構成では、 X, Υ , Zの 3軸方向共バイモルフ 圧電素子で微動させているが、 バイモルフ圧電素子は一端を支点にして他端が橈む 動きをするため、 他端は印加電圧に従って円弧状軌道を描く。 つまり、 X Y平面内 の移動では、 1個のバイモルフ圧電素子 (例えば、 X軸方向微動用圧電素子 6 6 ) の動作のみでは、 プローブ 1 1先端部が対応する軸方向 (X軸方向) に直線的には 移動しない (すなわち正確に X軸方向に移動しない) 。 従って、 3個のバイモルフ 圧電素子 6 6 , 6 7および 6 8で微動部 5 5を形成すると、 プローブ 1 1先端部を 所望位置に正確に移動させるためには、 これら 3個のバイモルフ圧電素子を複雑に 関連させて操作しなければならないと云う問題がある。 この問題を解決するために
は、 正確に直線駆動が可能なプロ一ブ駆動機構を用いればよい力 長いストローク ( 1 Ο Ο μιη〜数 mm) と高い分解能 (^tmオーダ以下) を兼ね備えた構造となる と、 機構を複雑にする必要があり、 バイモルフ圧電素子の場合と比較してサイズが 大きくなる。 このため、 上述の理由から、 試料台 3回りの他の構成部品と場所的に 干渉してしまうと云う問題力残る。
これに対し、 図 6Cでは、 第 1プローブ駆動機構 76は、 X軸方向駆動部 73, Y軸方向駆動部 74, および Z軸方向駆動部 75の移動ストロークがそれぞれ約 5 mm、 移動分解能がそれぞれ 0. l ^m であり、 粗動機能と微動機能とを兼備した 構造としてある。 上述したように、 最終段レンズ 46, 50 (図 5A, 図 5 C) と 基板 2との間にはその他種々の部品が混在配置されている。 図 6 Cのプローブ駆動 装置構成によれば、 これら他部品との場所的な競合から解放され、 容易に試料片を 摘出, 搬送することができる。
上述のようなプローブ駆動装置 4を用いることで、 プローブ 1 1先端部を基板 2 表面上でサブミクロンオーダの分解能で位置決めすることができる。 また、 プロ一 ブ駆動装置 4を試料台 3上には設置せずに、 プローブ 1 1を試料台 3とは独立して 移動させることができるようにしているので、 基板 2および TEMホルダ 1 9への プローブ 1 1先端部のアクセスが容易になる。
プローブ 1 1先端部の基板 2への接触状態確認、 試料片の基板 2からの分離終了 確認、 試料片の TEMホルダ 1 9への接触状態確認、 さらに試料片とプローブ 1 1 との分離状態の確認は、 2次電子検出器 1 2の検出信号から得られる 2次電子像の 電位コントラストの変化を検知することによって確認する。 また、 プローブ 1 1と 試料台 3との間の接触抵抗をモニタして、 その変化を検知することにより確認する ようにしてもよい。
[TEMホルダ]
図 8A, 図 8B, 図 8C, および図 8Dに、 T E Mホルダ 19の具体的構成例を 示す。 図 8 Aに示す TEMホルダ 1 9は、 金属細線 83が切欠き部 84' を有する
ドーナツ状の固定部 84に固定保持された構造を有する。 この金属細線 83の直径 は 1 Ομπ 0〜5 Ο 0 1110の範囲で、 固定部 84は一般的な ΤΕΜ試料導入用の ステージ (以下 ΤΕΜステージと云う) に載置できる寸法であり、 本構成例では、 その外径を 3mm0とした。 以下に、 この金属細線型 TEMホルダ 19の有効性に ついて述べる。
試料片 40を基板 2から分離するためには、 試料片 40の底面と基板 2との分離 (以下底浚いと呼ぶ) が必要であるが、 イオンビームによる底浚いでは、 基板表面 に対してイオンビームを斜め方向から入射させて加工を行なうため、 試料片 40の 底面には底浚い時のビーム入射角と加エアスぺクト比からなる傾斜が付いてレヽる。 しかし、 上記の金属細線型 TE [ホルダ 1 9を用いれば、 かかる底面傾斜を有する 試料片 40であっても、 観察試料断面 86を垂直に保ったままで金属細線に正しく 接触させることができる (図 8 D) 。 例えば、 面積 10 μπιΧ 30 で深さ 10 mの試料片 40を切り出す場合は、 試料台 3を 60° 傾けてイオンビームによる 底浚い加工をすれば、 観察所望領域 86が陰にならないような金属細線 83の径は ほぼ 40 zm〜 50 μιη0程度になる。 このように、 金属細線型 Τ Ε Μホルダ 1 9 に試料片 40を載置することにより、 試料片 40と金属細線 83との接続部に自由 度を持たせることができ、 かつ観察所望領域 86を通過した電子線 82が金属細線 83によって遮断されることがないようにすることができる (図 8Β) 。
また、 図 8 Cに示すような金属細線固定部 85を有する金属細線型 Τ ΕΜホルダ 19でも上記同様の効果が得られる。 また、 1本の金属細線 83上に複数個の試料 片 40— 1, 0- 2, 40— 3を固定することにより、 ΤΕΜ内に複数個の試料 を同時に持ち込むことが可能になり、 Τ Ε Μ観察の効率を向上させ得ると云う利点 が得られる (図 8D) 。 このように、 金属細線型の ΤΕΜホルダを用いることで、 微小な試料片の載置が容易になり、 力、つ、 ΤΕΜ観察用の電子線の経路カ金属細線 によって遮られることがないようにすることができる。
[試料カセットおよび ΤΕΜホルダ]
図 9 A, 図 9 Bに TEMホルダ 1 9を試料カセット 17上に載置するための構成 例を示す。 本例では、 TEMホルダ 1 9として、 図 8 Aに示した金属細線型 TEM ホルダ 19を使用している。 図 9 Aは、 試料カセット 17の全体図およびその一部 (点線の丸で囲んだ部分) の拡大図である。 試料カセット 17に TEMホルダ 19 載置用の溝を形成し、 この溝の端面とホルダ保持具 20とにより TEMホルダ 1 9 を挟んで固定する。 この時に、 TEMホルダ 19の金属細線 83の垂直方向位置を 基板 2表面位置と近くして、 摘出試料片の保持位置を基板 2表面高さとほぼ同じに なるように設定すると、 プローブ 1 1を上下 (Z方向) に大きく動かす必要がなく なるため高速アクセスを実現し易くなり、 また試料片損傷の可能性をも減らすこと ができる。 また、 図 9Bに示すように、 試料カセット 17上に TEMホルダ載置用 の複数の溝 20— 1, 20 - 2, 20 - 3, 20— 4を設け、 複数の T EMホルダ 19- 1 , 19-2, 1 9-3, 1 9— 4を同時に載置できるようにしておけば、 試料室の一度の真空引き操作で、 同一基板 2から複数個の試料片を切り出すことが でき、 試料作製効率をさらに高くできる。
図 1 0に、 TEMホルダ 1 9を試料カセッ卜 1 7上に装着するための一構成例を 示す。 同図に示すように、 TEMステージ 87において、 TEMホルダ 19周辺を カートリッジ化しておき、 このホルダカートリッジ 88を複数個試料カセット 17 上に搭載する。 こうすることで、 真空容器外から TEMステージ 87を挿入 (サイ ドエントリー) し、 所望のホルダカートリッジ 88をそれに装着して、 この TEM ステージ 87をそのまま TEM試料室内に導入できる。 このように、 TEMステー ジ 87の TEMホルダ周辺をカートリッジ化することで、 TEMへの試料の装着が 容易になる。
[プローブ]
図 1 1に、 プローブ 1 1の一構成例を示す。 ここでは、 特に、 ばね効果を有する プローブ構成例を示す。 同図の(a)に示すように、 細長いプローブ 1 1の途中に、 屈曲部からなるばね構造部 89を設けてある。 かかる構成により、 プローブ 1 1の
先端部を基板表面の試料片形成部 2— 1に接触させた時に、 同図の(b )に示すよう に、 プローブ 1 1先端部と試料片形成部 2— 1間にかかる衝撃力をばね構造部 8 9 が吸収するため、 両者の損傷を防止することができる。 また、 試料片形成部 2— 1 上にプローブ 1 1先端部を接触させた後に、 接触位置 9 0とプローブホルダ 9 1と の相対位置が熱ドリフト等により微妙に変化したとしても、 例えば、 同図の(c )に 示すように、 ばね構造部 8 9のばね効果によって両者の接触位置 9 0を安定に保つ ことができる。
このように、 ばね効果を有するプローブを用いれば、 プローブ及び試料片の両方 の損傷を抑制することができ、 また、 熱ドリフト等による両者間の相対位置変化を も補償できる。
[試料片形成部とプロ一ブ先端部との固定及び分離手段]
試料片形成部とプローブ先端部との間の固定, 分離方法として、 先に I B A D法 によるデポ膜形成技術, I B S法によるデポ膜除去技術をそれぞれ用いる例につき 説明したが、 それ以外にも、 以下のような固定, 分離方法を用いることができる。 すなわち、 先のデポガスを用いる I B A D法に代え、 基板 2からのイオンビーム スパッタ粒子の基板 2上への再付着により形成される膜 (以下、 リデポ膜と云う) を介して固定接続する方法を用いることもできる。 この場合の分離方法としては、 上記のリデポ膜を I B S法により剥離する方法を用いることができる。 あるいは、 I B S法によってプローブを切断して分離するようにしてもよい。
また、 プローブ 1 1先端部表面に粘着材を付着させておき、 該プローブ先端部を 試料片形成部 2— 1に接触させるだけで両者間の固定接続ができるようにすること もできる。 この方法は、 先の I B A D法によるデポ膜を用いる場合と異なり、 固定 接続のための作業時間を低減し得る利点を有する。 上記粘着材として紫外線照射に より粘着力を減少させることができる紫外線剥離型粘着材を用いた場合には、 紫外 線照射手段を用いて、 試料片 4 0とプローブ 1 1との分離を行なうことができる。 ただし、 この場合には粘着部に紫外光が照射できると云う条件が必要であり、 紫外
光が遮断されてしまうような条件下では使用できない。 上記の固定用粘着材として 加熱により粘着力を減少させることができる加熱剥離型粘着材を用いた場合には、 加熱手段を用いて、 試料片 4 0とプローブ 1 1との分離を行なうことができる。 例 えば、 図 1 2に示すように、 プローブ 1 1近傍に通電ライン 9 2を設け、 通電加熱 によりプローブ 1 1を 8 0〜 1 0 0 °C程度に加熱することにより、 上記の加熱剥離 型粘着材を容易に剥離させ得る。
図 1 3にさらに他の固定接続方法を示す。 本方法は、 試料加工方法としてイオン ビーム (正イオンビーム) 1 3による I B S法を用いる場合において、 静電吸着法 により試料, プローブ間の固定及び分離を行なうものである。 プローブ 1 1の表面 を絶縁物 9 3で構成し、 プローブ 1 1と試料片形成部 2— 1との間に電位差を与え ることにより、 静電吸着力によって両者間の固定接続を行なう。 本方法は、 化学的 変質や汚染を伴わないという利点を持つ。 ここで、 試料片形成部 2— 1側が正電荷 を持つようにしている (図 1 3の(a ) ) 理由は、 照射される正イオンビーム 1 3に よって中和されることがないようにするためである。 負イオンビームや電子ビーム を照射する場合には試料側を負に帯電させておけばよい。 こうして、 図 1 3の(b ) のように、 試料片 4 0とプローブ 1 1先端部間の固定接続ができる。 このプローブ 1 1先端部に固定接続された試料片 4 0を T E Mホルダへと搬送して金属細線 8 3 に固定 (固定法については後述する) した後に、 図 1 3の(c )のように、 プローブ 1 1と金属細線 8 3間を短絡して上記の帯電電荷を中和することで、 図 1 3の(d ) のように、 プローブ 1 1先端部を試料片 4 0から分離することができる。
また、 その他にも、 プローブ 1 1を通電加熱法 (図 1 2と同様な方法) や局所的 なレーザー照射による加熱法等で高温化し、 試料片形成部 2— 1との接触部を熱的 に反応させて融着による固定を行なうこともできる。 ただし、 試料片形成部 2— 1 全体の高温加熱は、 試料片自体を変質させる可能性があるので、 短時間で局所的な 加熱を行なう必要がある。
また、 清浄な表面を有する金属同士は、 両者を接触させただけで接合することも
良く知られている。 このため、 例えば、 真空中で、 試料片形成部 2— 1の固定部と 金属 (例えばタングステン) 製のプローブ 1 1先端部とに、 それぞれイオンビーム 照射による表面スパッタを施してそれぞれの表面を清浄化した後に、 両表面を接触 させれば、 金属接合によって両者間の固定接続ができる。 また、 この表面清浄化に よる接合は、 シリコン同士でも可能であるため、 試料がシリコンの場合には、 プロ ーブ材にもシリコンを用いることにより、 上記と同様にして、 両者間の固定接続が できる。
[試料片と T E Mホルダとの固定手段]
図 1 4に、 試料片 4 0の T E Mホルダ 1 9への固定方法の他の一例を示す。 本例 では、 T E Mホルダ 1 9と試料片 4 0との接触部を加熱することにより、 両者間の 固定接続を行なっている。 T E Mホルダ 1 9の金属細線 8 3の固定部 8 4を 2部分 に分け、 両部分間に絶縁部 9 4を配置して、 ホルダ支持用電極 9 5, 9 6間に電流 を流すことで、 通電加熱によって金属細線 8 3を高温化する。 高温化した金属細線 8 3に試料片 4 0の固定部位を接触させることにより、 融着によって両者間の固定 接続ができる。
試料片 4 0の T E Mホルダ 1 9への固定には、 この他に、 前述した I B A D法に よるデポ膜を用いる固定方法や I B S法によるリデポ膜を用いる固定方法を用いて もよい。 また、 粘着材を用いて試料片 4 0と T E Mホルダ 1 9とを固定する場合に は、 前述したプローブ 1 1と試料片 4 0との固定の場合のような一時的な固定とは 異なって、 長時間 (少なくとも T E M観察が終了するまで) の安定した固定が要求 されるため、 持続力を持った粘着材を使用することが望ましい。
さらに他の固定方法として、 T E Mホルダ 1 9と試料片 4 0との固定部における 双方の表面を清浄化して、 両清浄化表面を接触させることによって両者間の接合を 得るようにしてもよい。 この表面清浄化には、 イオンスパッタ法等を用いることが できる。
-ム加工による試料片の摘出]
試料片 4 0を基板 2から分離するためには、 前述した底浚い加工の技術が必要で ある。 この底浚い加工には、 次の 4つの方法がある。
第 1の方法は、 図 1で示したように、 加工用ビームとして 1つの P J I B光学系 からのイオンビーム (P J I B ) のみを用いる方法であり、 試料台 3を傾斜させて 基板 2表面に対し斜め方向から P J I Bを照射することにより、 所望の底浚い加工 を行なう。 この方法は、 先に図 4で説明した方法、 または、 後ほど図 1 7において 説明する方法と同じである。
第 2の方法は、 図 5 Cで示したように、 加工用のイオンビームとして集束イオン ビーム (F I B ) を用いる方法であり、 この場合にも、 上記第 1の方法と同様に、 試料台 3を傾斜させて、 F I Bを斜め方向から照射 (走査) することにより、 試料 片摘出のための底浚い加工を行なう。
第 3の方法は、 図 1 5に示すように、 試料基板 2表面に所要深さの垂直溝を形成 するための第 1の P J I B光学系 (カラム I ) 1の他に、 上記した底浚い加工専用 の斜方向に設置した第 2の P J I B光学系 (カラム I I ) 9 7を設けて、 該カラム I I を用いて所望の底浚い加工を行なう。 斜方向のカラム I Iとして、 P J I B光学系の 代わりに F I B光学系を用いてもよい。
第 4の方法は、 図 1 6に示すような、 イオンビームを用いないで底浚い加工する 方法である。 基板 2表面の観察所望領域の周囲に、 イオンビーム加工で深溝 9 8を 形成して凸状の試料片形成部 9 9を形成後、 深溝 9 8のうちの一辺側にテーパ部材 1 0 0を挿入して、 剪断により試料片 4 0を分離する。 この方法は、 上述のイオン ビームを用いる底浚い加工法と比較し、 短時間で底浚い加工ができる特長がある。 また、 上記の剪断分離を容易にするため、 図 1 6の(b )に示すように、 試料片形成 部 9 9の回りに形成する深溝 9 8を少し傾斜させ、 試料片形成部 9 9がその下方に 行く程細くなるようにしておくのもよい。 また、 図 1 6の(c )に示すように、 圧電 素子 1 0 1に取り付けられた微小板材 1 0 2を深溝 9 8内に挿入し、 この圧電素子 1 0 1の駆動によって試料片形成部 9 9に横方向の力を加えて、 試料片 4 0を剪断
分離するようにしてもよい。
上記した底浚い加工を行なうことで、 基板 2の上部の浅い領域だけの微小試料片 を形成することができるため、 加工時間が短くなる。 特に、 底浚い加工に上記した 応力印加による剪断分離法を用いることにより、 高速に試料片を分離摘出すること ができる。
く実施例 2〉
図 1 7に本発明の他の一実施例になる試料作製方法の工程を示す。 本実施例は、 図 1に示した試料作製装置を使用して、 加工用イオンビームとして P J I Bのみを 用いる例である。
始めに、 基板 2内の観察すべき領域 1 03 (図 1 7の(a)) の周囲に、 コの字型 の開口を持ったマスクを用いて P J I B 1 3 ' を照射し (図 1 7の(b)) 、 コの字 型断面形状の溝 1 04を形成する (図 1 7の(c)) 。 次に、 図 1の試料台 3を傾け て、 P J I B 1 3' により、 底浚い加工を行う (図 1 7の(d)) 。 次に、 プローブ 駆動装置 4に保持されたプローブ 1 1の先端部を試料片形成部 99に接触させる。 両者の接触の状態は、 プローブ 1 1と基板 2 (すなわち試料片形成部 99) との間 の接触抵抗の変化や、 2次電子像上での電位コントラス卜の変化等から検知する。 接触させたプローブ 1 1先端部と試料片形成部 99とを I BAD法によるデポ膜を 用いて固定接続する (図 1 7の(e)) 。 その後、 残りの辺を P J I B 1 3' で切断 する (図 1 7の(f )) 。 この切断の完了は、 プローブ 1 1 (即ち、 試料片 40) と 基板 2との間の接触抵抗の増大又は 2次電子像の電位コントラス卜の変化等で検知 する。 このようにして、 基板 2から試料片 40を切り出して、 プローブ駆動装置 4 により TEMホルダ 1 9へと搬送する (図 1 7の(g)) 。 次に、 この切り出された 試料片 40を TEMホルダ 1 9の金属細線 83に接触させる (図 1 7の(h)) 。 こ の時の接触状態の検知は、 プローブ 1 1 (即ち、 試料片 40) と TEMホルダ 1 9 (即ち、 金属細線 83) との間の接触抵抗の減少または 2次電子像上の電位コント ラストの変化により行う。 こうして、 試料片 40を金属細線 83に接触させた後、
I BAD法によるデポ膜を用いて両者間の固定接続を行う。 試料片 40を金属細線 83に固定した後、 プローブ 1 1先端部と試料片 40との接続部に P J I Bまたは F I Bを照射してスパッタ加工を行い、 プローブ 1 1先端部を試料片 40から分離 する (図 1 7の(i)) 。 この分離の完了は、 プローブ 1 1と金属細線 83との間の 接触抵抗の増大や 2次電子像上での電位コントラストの変化等から検知する。 最後 に、 試料片 40に、 再度 P J I Bまたは F I Bを照射して最終的に観察すべき領域 103を厚さ 100 nm以下程度に薄く仕上げカ卩ェして TEM試料とする (図 17 の( j )) 。
本実施例では、 TEM観察用試料の作製を例にとり説明したが、 その他の観察, 分析, 計測用の試料の作製にも同様に用いることができることは云うまでもない。 その場合、 上記した観察領域を薄く仕上げるための加工工程 (図 17の(j )) ) は 必ずしも必要ではない。
本発明による試料作製方法は、 上記実施例に限定されるものではなく、 前述した 他の装置や技術手段と組み合わせるようにしてもよいことは云うまでもない。 例え ば、 底浚い加工を行う工程 (図 1 7の(d)) は、 前述した 4つの方法のいずれでも よく、 プローブ 1 1と試料片形成部 99との固定方法やプローブ 1 1の試料片 40 からの分離方法も前述した他の方法と置換してもよい。 また、 試料片形成に用いる P J I B 1 3' も、 上記実施例に示したコの字断面形状のものに限定されるもので はなく、 矩形パターンの PJ I B投射を複数回組み合わせて同様の加工パターンを 得るようにしてもよく、 矩形パターンの P J I Bを走査して所望の加工パターンを 得るようにしても構わない。 また、 PJ I Bの代わりに、 F I Bを用いてもよい。 また、 試料作製装置に P J I B投射光学系と F I B照射光学系とを併設しておき、 加工目的に応じ P J I Bと F I Bとを使い分けるようにしてもよい。 また、 イオン ビームスパッタ加工法とレーザビーム加工法とを併用して分離加工してもよい。
〈実施例 3 >
図 1 8に本発明による試料作製方法のさらに他の一実施例を示す。 本実施例は、
前述した試料作製方法において、 基板 2中の観察 (分析) 位置を明確化するための マーキング工程をさらに付加したものである。 なお、 その他の工程は、 図 1 7に示 した工程と実質的に同じであるのでここでは図示説明を省略する。 本実施例では、 観察位置を含む試料片 4 0を摘出後に、 観察位置 (すなわち、 T E M観察用の薄壁 部を形成すべき位置) 1 0 5が特定できなくなるのを防止するために、 該観察位置 を明示するためのマーキングを施す工程を付加する。 基板 2がまだウェハやチップ の状態では、 C A Dデータ等から位置割り出しが可能であり、 試料片摘出加工前に 観察位置 (薄壁形成位置) 1 0 5にマーキングを施しておく。 このマーキングは、 例えば観察位置 1 0 5の両端に十字形のマーク 1 0 6, 1 0 7を集束イオンビーム 加工等で施せばよい (図 1 8の(a ) ) 。 こうすることで、 試料片 4 0摘出後でも、 観察位置を明確化することができる (図 1 8の(b ) ) 。 この 2つの十字形マークを 結ぶ線上部分 (観察対象部分) 1 0 5を残して薄壁化することで、 所望位置の断面 観察が可能になる (図 1 8の(c ) ) 。 このように、 マーキングにより、 微小な試料 片となった後でも、 観察位置を正確に特定することができる。 なお、 観察対象部分 1 0 5の保護の目的で、 マ一キングの際に、 予め試料片 4 0の表面にデポジション 膜を形成しておいてもよい。
く実施例 4〉
図 1 9に、 本発明のさらに他の一実施例になる試料作成装置の概略構成を示す。 本実施例の試料作製装置は、 試料基板 2を載せて移動可能な試料台 3 , 試料基板 2 表面に集束イオンビーム(F I B ) 1 3を照射する F I B照射光学系 1, F I B 1 3 の照射によつて試料基板 2表面から放出される 2次粒子( 2次電子や 2次イオン等) を検出するための 2次粒子検出器 1 2, 試料基板 2表面の F I B照射領域にデポジ ション膜形成用の堆積性ガスを供給するデポガス供給源 8, 試料基板 2から摘出さ れた試料片を固定保持する試料ホルダ 1 9 ' , 試料ホルダ 1 9 ' を保持するホルダ カセット 1 7 ' 及び試料基板 2から分離摘出された上記試料片を試料ホルダ 1 9 ' まで移送するための試料移送装置 4を少なくとも備え、 さらに、 試料台 3の位置を
制御する試料台制御装置 3' , デポガス供給源 8を制御するデポガス供給制御装置 8' , 試料移送装置 4を試料台 3とは独立に駆動制御するための試料移送制御装置 4' , 試料基板 2表面や試料ホルダ 1 9' 表面および試料移送装置 4に保持された プローブ 1 1先端部等を映像化表示するための画像表示装置 5, F I B照射光学系 1を駆動制御する F I B制御装置 7等を含んで構成される。 なお、 試料台制御装置 3' , 試料移送制御装置 4' , 画像表示装置 5, F I B制御装置 7, デポガス供給 制御装置 8' 等は、 中央処理装置 (CPU) 6によって制御される。
F I B照射光学系 1は、 液体金属イオン源 41からの放出イオンビームをビーム 制限アパーチャ 42 , 集束レンズ 49および対物レンズ 50を通すことによって、 ビーム径が数 1 0 nm0〜 1 /xm 0程度の集束イオンビーム(F I B)を形成する。 この F I B 1 3を偏向器 5 1〖こより試料基板 2上で走査することにより、 試料基板 2表面を走査パターン形状に従って mからサブ xmレベルの精度で加工できる。 ここでの「加工」とは、 スパッタリングによる凹部の形成や、 イオンビ一ムアシスト デポジション ( I BAD) による凸部の形成、 もしくはそれらを組み合わせて試料 基板表面の形状を変える等の加工操作を指している。 F I B照射により形成される デポジション膜 ( I BAD膜) は、 試料移送装置 4に保持されたプローブ 1 1先端 部を試料基板 2表面に固定接続したり、 試料基板 2からの摘出試料片を試料ホルダ 19' に固定接続するために使用される。 また、 F I B照射時に発生する 2次電子 や 2次イオン等の 2次粒子を二次粒子検出器 1 2で検出し、 この検出信号を用いて F I B照射部を画像化表示させることにより、 F I B照射部 (加工領域等) の観察 ができる。 試料台 3は試料室 77内に設置され、 F I B照射光学系 1等も真空容器 内に配置されている。 試料ホルダ 1 9' を保持するホルダカセット 1 V は試料台 3上に着脱できるようになつており、 試料台 3は 3次元 (X, Y, Ζ) 方向の移動, 及び傾斜, 回転ができるよう構成されており、 これらの駆動制御は試料台制御装置 3 ' によって行われる。
以下、 本実施例による試料作製装置の各部の具体的構成及び機能につき、 さらに
詳細に説明する。
[試料移送装置およびその設置場所]
試料基板 2からの摘出試料片を試料ホルダ 1 9 ' へ移送するための試料移送装置 4の具体的構成例を図 2 O Aに示す。 図において、 試料移送装置 4は、 微動部 5 5 と粗動部 5 6とから構成されている。 粗動部 5 6における X Y Z方向駆動機構は、 モータやギヤ一, 圧電素子等の電気 ·機械部品で構成され、 3 mm以上の移動範囲 (ストローク)で数/ m程度の移動分解能を有している。 微動部 5 5は、 できるだけ コンパク卜で精密移動できることが要求されるため、 圧電素子を用いて構成されて いる。 本例では、 特にバイモルフ圧電素子が用いられている。 バイモルフ圧電素子 は、 他の圧電素子に比べ比較的大きなストローク (数 Ι Ο Ο μ ιη以上) を持つ利点 を有する。 このように、 耝動部 5 6には高い位置精度を要求する必要がないので、 粗動部の製作は容易である。 本実施例で用いた粗動部 5 6は、 その駆動時には 1 0 数 μ πιの振動を伴う力 静止時の振動は殆ど無視できるため、 粗動部 5 6を用いて プローブ 1 1先端部を試料基板 2表面に接近させて静止させてから、 微動部 5 5を 用いてプローブ 1 1先端部を試料基板 2表面に接触させる方法を採った。 この時、 プローブ 1 1先端部の位置制御は^ mオーダの分解能があればよいので、 圧電素子 の中では比較的分解能が悪いバイモルフ圧電素子でも十分に対応でき、 微動部 5 5 を安価に作製できた。
先にも述べたように、 特開平 5— 5 2 7 2 1号公報 (公知文献 3 ) に開示された 従来技術では、 試料基板 2からの摘出試料片 4 0を搬送するための搬送装置 (マ二 ピユレータ) は、 それぞれ X Y Z軸に対応させたバイモルフ圧電素子 3個を用いて 構成されているが、 この搬送装置は上記試料基板を保持する試料台上に設置されて いるため、 試料基板 (ウェハ) が直径 3 0 0 mmもの大径であって観察対象領域が その中央部付近にある場合は、 搬送装置の移動ストロークが足りず、 観察対象領域 まで届かないと云う致命的な問題点があった。 また、 この搬送装置は、 上記のよう に、 3軸方向共にバイモルフ圧電素子を用いて構成されているカ、 バイモルフ圧電
素子はその一端(固定端)を支点にして他端 (移動端)が撓むと云う動きをするため、 該他端 (移動端)は印加電圧に応じて円弧軌道を描く。 つまり、 X Y平面内の移動で は、 1個のバイモルフ圧電素子の動作のみでは、 プローブ先端部を直線移動させる ことができない。 従って、 3個のバイモルフ圧電素子で微動部を構成してプローブ 先端部を所望位置に移動させるためには、 これら 3個のバイモルフ圧電素子を複合 的に制御しなければならない。 これに対し、 正確に直線駆動が可能な 3軸駆動手段 を用いればよいのであるが、 1 0 0 m m以上にも及ぶ長いストロークと mオーダ の分解能を兼ね備えた微動機構のみで搬送装置を構成しょうとすると、 その機構が 複雑かつ大型になってしまうため、 試料台周辺に設置される 2次粒子検出器ゃデポ ガス供給源等のその他構成部品と設置空間上の競合が生じてしまう等、 さらに別の 問題を産み出してしまう。
以上のことから、 本発明では、 試料移送装置 4を、 試料基板 2が大口径ウェハで あっても、 その任意箇所から素速くサンプリングすることを実現するために、 移動 速度が速くてストロークの大きな粗動部 5 6と、 該粗動部 5 6の移動分解能とほぼ 同等のストロークを有し高い移動分解能を持った微動部 5 5とで構成し、 かつ移送 装置 4全体を試料台 3とは独立して設け、 サンプリング位置の大きな移動は試料台 3の移動に分担させた。 さらに、 サイズの大きくなりがちな粗動部 5 6は試料基板 2から極力離間させて設け、 微動部 5 5は Z軸方向のみの微動機構で構成し、 周辺 の他の構成部品との設置スペース上の干渉を避けた。 このように、 試料移送装置 4 は、 その構成, サイズ, 設置位置について充分に考慮しなければならず、 本発明に よる試料作製装置では、 これら全ての点を効果的に解決している。
図 2 O Aにおいて、 耝動部 5 6は、 狭窄部 6 3を支点として、 粗動軸 5 9を 3個 のエンコーダ 2 8 X, 2 8 Z , 2 8 Y (図示省略) によって、 X Y Z軸方向に移動 させる構成である。 粗動ストローク, 移動分解能はこれらエンコーダの性能による が、 1 0 m mのストロークで 2 μ πιの分解能は容易に得られる。 上記エンコーダに よる押圧力に対抗する力はパネ等により与えるが、 ここでは説明を省略する。 粗動
部 5 6の駆動系は、 試料室壁 5 4の横ポート 5 4 ' を介して大気圧側に設けられ、 ベローズ 6 4により真空遮断されている。 耝動軸 5 9の真空室側には、 延長棒 3 0 を介して微動部 5 5が連結されている。 微動部 5 5は、 Z軸方向駆動系のみで構成 され、 この駆動系にはバイモルフ圧電素子 2 9が採用され、 サブ μ ιηの移動分解能 が得られるようにしてある。 パイモルフ圧電素子 2 9の先端部には、 直径 5 0 m Φ程度の先端部を尖らせたタングステン線からなるプローブ 1 1を連結して、 バイ モルフ圧電素子 2 9に駆動電圧を与えることによって、 プローブ 1 1先端部を微動 させている。
図 2 0 Bに、 試料移送装置 4の別の構成例を示す。 本例では、 粗動部 5 6に 3個 のブロック状の圧電素子 7 3 (X), 7 4 (Y ) , 7 5 ( Ζ )を組み合わせた構成を採用 している。 このブロック状圧電素子は、 移動分解能はやや劣るが、 移動ストローク が長く、 また、 反力が大きいため大きな荷重に耐えられると云う特長がある。 この 粗動部 5 6に 1個のバイモルフ圧電素子 7 2 ' からなる微動部 5 5を延長棒 7 1 ' を介して連結し、 該微動部 5 5にプローブ 1 1を保持させてある。
図 2 0 Βに示した試料移送装置 4を試料室壁 5 4に取り付けた例を、 図 2 0 Cに 示す。 本例では、 試料室壁 5 4の横ポート 5 4 ' を介して小型真空室 5 4 " を設け て、 この中に粗動部 5 6を設置している。 試料移送装置 4が不用の時には、 レール 1 1 0上を滑動するスライダ 1 1 1を利用して試料移送装置 4を試料室壁 5 4から 容易に取り外せるようにしてある。 かかる構成により、 試料室内には延長棒 7 1 ' とその先に取り付けたバイモルフ圧電素子 7 2 ' とプローブ 1 1のみとなるため、 試料室内の他のさまざまな構成部品と干渉することなくして、 プローブ 1 1を試料 基板表面にアクセスさせることができる。
図 2 1に、 試料移送装置 4の設置位置についての他の例を示す。 同図の(a )は、 試料室 7 7の側壁 5 4に粗動部 5 6, 微動部 5 5からなる試料移送装置 4を取付け て、 試料台 3上に搭載された試料基板 2表面と該試料基板 2表面に対向設置された F I B照射光学系の最終電極 1 1 2との間にプローブ 1 1をアクセスさせるように
した例であり、 同図の(b )は、 試料室 7 7の上壁 5 4 Aに試料移送装置 4を取付け た例であり、 同図の(c )は、 試料移送装置 4を F I B照射光学系の最終電極 1 1 2 の側面に取付けた例である。 いずれの例にも共通している点は、 試料移送装置 4が 試料台 3上には設置されておらず、 試料台 3とは独立に駆動制御されるように構成 されていることである。 このように、 試料基板 2の移動に際して、 試料移送装置 4 が試料基板 2表面に接触することがないように配慮されている。
図 2 1の(a )では、 試料室 7 7の側壁 5 4に試料移送装置 4を取付けているので 試料室側壁 5 4に横ポートが設けられていない装置であっても対応ができ、 装置の 構成形態に関係なく用いることができる。 同図の(b )では、 試料室の上壁 5 4 Aに 試料移送装置 4を取付けているので、 試料室内空間を有効に利用でき、 装置構成が 異なっても対応できると云う利点がある。 また、 同図の(c )では、 F I B照射光学 系の最終電極 1 1 2の側壁面に試料移送装置 4を取付けているので、 やはり試料室 内部空間を有効に利用でき、 試料室外に余計な構成部品を突出させることがなく、 従って試料室外部が複雑な構成の他機種にも適用でき、 装置外観を簡素にまとめる ことができる利点がある。
この他にも試料移送装置 4の配置構成例は種々考えられるが、 本構成例の基本的 思想は、 試料移送装置 4が試料台 3とは独立して設けられており、 試料台 3の移動 に際して試料移送装置 4が試料基板 2表面に接触しないよう配置されているため、 摘出すべき試料部分が大口径ウェハの中央部であっても、 容易にアクセスが可能な ことにある。
[試料ホルダの設置箇所]
試料基板 2からの摘出試料片 4 0を移送して固定すべき相手部材は、 試料ホルダ 1 9 ' である。 この試料ホルダ 1 9 ' はこれを支えるホルダカセット 1 7 ' 等を介 して試料台 3に搭載する力、、 もしくは、 T E Mステージ等の試料台 3とは独立した サイドエントリ型ステージに搭載する。 試料台 3は、 ウェハそのものを搭載できる 汎用の大型試料台や、 デバイスチップが搭載できる程度の小型試料台を指す。 試料
基板 2からの摘出試料片 40を試料ホルダ 19' へ移送する際、 試料ホルダ 19' の設置位置が以後の作業性を大きく左右するので、 該試料ホルダ 19' の設置箇所 について、 以下に説明する。
ここでは、 試料台 3上に試料ホルダを搭載する方式 (以下、 試料台方式と云う) と、 試料基板 (ウェハ) を収容して試料室内に出し入れできるウェハカセット上に 試料ホルダを搭載する方式 (以下、 ウェハカセット方式と云う) と、 TEMステー ジ (または TEM/F I B兼用ステージ) 上に試料ホルダを搭載する方式 (以下、 TEMステージ方式と云う) とに分類して説明する。
①試料台方式
図 22は試料台方式における試料ホルダの設置箇所を説明する図で、 同図の(a) は上面図、 同図の(b)は中央部の断面図である。 本方式では、 試料ホルダ 1 9' は 試料台 3に着脱し易く構成されたホルダカセット 1 7' 上に搭載されている。 1個 のホルダカセット 17' 上に搭載する試料ホルダ 1 9' の数は 1個でも複数個でも よい。 また、 試料台 3上に設置できるホルダカセット 1 7' の数も 1個でも複数個 でもよい。 図 22では、 ホルダカセット 1 7' が 1個で、 試料ホルダ 1 9' が 5個 の場合を示しており、 各試料ホルダに摘出試料片 40を 3個ずつ搭載すると、 1個 のホルダカセッ卜 17' 上に 1 5個の TEM試料を搭載できる。
試料ホルダ 1 9' の上面は試料基板 2表面とほぼ一致させておく。 それにより、 摘出試料片 40を移送する際に、 摘出試料片 40が試料ホルダ 1 9' 等と接触する ことはない。 さらに、 摘出試料片 40の所望観察面は試料ホルダ 19' の長手方向 (試料ホルダの具体的形状については後述する) と平行とし、 試料ホルダ 19' の 長手方向は試料台 3の傾斜軸 1 13と平行に設定しておく。 この位置関係により、 試料基板 2からの摘出試料片 40は、 回転等の操作を施すこと無くして、 Z方向の 移動のみで試料ホルダ 1 9' 上に搭載できる。 この摘出試料片 40を搭載した試料 ホルダ 1 9' を TEMや SEMステージ上に載置することで、 容易に所望観察面の 観察ができる。
ホルダカセット 17' はスライド式に試料台 3上に着脱でき、 操作棒及びロード ロック室等を用いて、 試料室内の真空を破ることなく、 試料台 3とは独立に、 試料 室外に取り出すことができる。 また、 この方式では、 1個の試料基板 2から多数の TEM試料を連続して作製することができ、 ホルダカセット 17' を試料室外に取 り出す時には一度に多数個の TEM試料を入手できる。 しかも、 試料ホルダ 19' 上に搭載された TEM試料は、 ホルダカセッ卜 1 7' ごと保管庫等に一次保存する ことができるので、 微小 T E M試料の取扱レ、に神経を消耗させられることもない。 さらに、 試料基板 2から摘出されたままで、 まだ薄片化加工 (ウォール加工) が済 んでいない試料片 40が多数個搭載されたホルダカセッ卜 17' を、 別設の F I B 装置内に搬入し、 そこで仕上げ加工(ウォール加工)のみを専念して行なわせること も可能である。
図 22の(b)を用いて、 試料台 3上における試料ホルダ 19' の設置位置を説明 する。 摘出試料片 40は、 上述したウォール加工等を施すために傾斜させなければ ならないが、 その際、 試料台 3が不適切な位置に設置されていると、 試料移送装置 4の破損等の問題を引き起こして所要の試料作製ができない。 試料ホルダ 1 9' を 搭載したホルダカセット 17' , 二次粒子検出器 1 2, デポガス供給源 8等は、 常 に試料移送装置 4を設置した側に設置する。 (図 22の(b)において、 試料台 3の 傾斜軸 1 1 3より左側に設置する。 ) そして、 試料台 3の傾斜は、 常に試料ホルダ 1 9' が搭載されている側 (左側) を水平状態から下げる方向にのみ動作させて、 上述したような試料室内の他の構造物との干渉を避けてやる。
また、 試料ホルダ 1 9' の設置箇所に関する別方法として、 TEMステージ上に おける試料ホルダの固定部分を含む先端部分の構造を改良し、 この TEMステージ を試料台 3上に設置する方法も採用できる。 先ず、 先端部分を着脱可能に構成した TEMステージつき説明する。 図 23の(a)に、 本実施例で用いた T EMステージ 1 14を示す。 TEMステージ 1 14は、 支柱 1 1 5, 握り部 1 16, 位置決め具 1 17, 試料固定具 1 18等から構成され、 試料ホルダ 19' は支柱 1 1 5の切り
欠き部 1 23上に搭載される。 この TEMステージ 1 14の最大の特徴は、 図 23 の(b)に示したように、 その先端部分 1 20が分離位置 1 1 9にて本体部分と着脱 可能に構成されている点である。 つまり、 この先端部分 1 20を本体部分から分離 して試料台 3上に揷着できるようにしてある。 図 23の(c)は、 先端部分 1 20を 試料台 3上に挿着した状態を示している。 TEMステージ先端部分 1 20は試料台 3に設けられた挿着部 1 2 1内に挿入保持される。 揷着部 1 2 1には、 試料ホルダ 1 9' の上方に開口部 1 22が設けられている。 試料基板 2の観察所望箇所 1 24 から摘出された試料片 40は、 試料移送装置 4のプローブ 1 1先端部に保持されて 上記揷着部 1 2 1上に移送され、 上記開口部 1 22を通して試料ホルダ 1 9' 上に 固定保持される。
摘出試料片 40を試料ホルダ 1 9 ' 上へ固定後、 その状態で、 摘出試料片 40を F I B加工により薄片化 (ウォール加工) して TEM試料とする。 この際、 加工用 F I Bは、 図 23の(c)において紙面と垂直方向から、 試料片 40に照射される。 その後、 この試料ホルダ 1 9' 上に固定保持された試料片 40を試料室外に取り 出す際には、 上記挿着部 1 2 1内に TEMステージの本体部分を挿入して、 揷着部 1 2 1内の TEMステージ先端部分 1 20と TEMステージ本体部分とを連結させ た後、 この TEMステージごと試料室外に取り出し、 その状態で TEM試料室内に 導入して TEM観察を行う。 この TEM観察時には、 観察用電子ビームは、 図 23 の(a)において、 紙面と垂直方向から、 試料片 40に照射される。
上述した図 23に示した方法によれば、 TEMステージ本体部分に取り付けたり 取り外したりする先端部分 1 20のサイズは、 cmオーダーであるため、 手作業に よつても特別に神経を使うことなく、 誰にでも簡便に試料作製作業ができるという 利点がある。
図 24に、 上記とは別形式の TEMステージを用いる場合について示す。 同図の (a)に示す TEMステージ 1 14' は、 支柱 1 1 5' , 握り部 1 1 6' , 位置決め 部 1 1 7' , 試料固定具 1 1 8' 等より構成される力、 図 23の(a)に示したよう
な切り欠き部 1 23は設けられていないので、 TEM観察と F I B加工を同一ステ ージ上で行なうことはできない。 そこで、 図 24の (b) に示すように、 ステージ 先端部分 1 20' , 1 20" を分離位置 1 1 9' , 1 1 9" でそれぞれ TEMステ ージ本体部分から分離できるようにしてある。 図 24の(a)及び(b)では、 TEM 試料片 40が試料固定具 1 1 8' 上に搭載された状態を示してあるが、 まだ試料片 40力搭載されていない先端部分 1 20' を、 図 24の(c)に示すように、 試料台 3上に複数個、 試料台上面 (ウェハ搭載面) に垂直に、 かつ試料ホルダ 1 9' 上に TEM試料 40が搭載された時にその TEM観察面が試料台傾斜軸 1 1 3と平行に なるようにして固定する。 試料基板 2の観察所望箇所 1 24からの摘出試料片 40 を試料移送装置 4のプローブ 1 1先端部に保持して移送し、 試料台 3上に固定保持 された TEMステージ先端部分 1 20' 上の試料ホルダ 1 9' 上に固定する。 その 他の観察所望箇所からの摘出試料片についても同様である。 図 24の( c )に示した 例では、 試料台 3上には 7個の試料ホルダ 1 9 ' が搭載されており、 各試料ホルダ 1 9' 上にそれぞれ 3個の摘出試料片 40を固定すれば、 合計 2 1個の TEM試料 を同一試料室内で連続して作製することができる。
②ウェハカセット方式
図 25にウェハカセット方式の装置構成例を示す。 本方式では、 ウェハカセット 1 25に試料ホルダ 1 9 ' を保持したホルダカセット 1 7 ' を装着するようにして いる。 ここで、 ウェハカセット 1 25は、 1枚のウェハ (試料基板) 2を収容する ための専用トレイであるため、 このウェハカセット 1 25内に収容されたウェハは 直接装置部品や人手に触れることはない。 また、 このウェハカセット 1 25は各種 プロセス装置にそのまま出し入れすることができ、 ゥェハの装置間移動に際しても 用いられる。 図 25に示すように、 ホルダカセッ卜 1 7' をウェハカセッ卜 1 25 のホルダカセット装着部 1 2 1 ' に着脱可能に構成しておくことによって、 ウェハ 交換時に加工済みの TEM試料を搭載した複数の試料ホルダ 1 9' を入手すること ができる。 ここで、 ウェハカセット 1 25とホルダカセット 1 7 ' との対応関係,
ホルダカセット 17' とそれに搭載されている試料ホルダ 19' との対応関係及び 試料ホルダ 19' とそれに固定されている摘出試料片 40との対応関係を常に管理 しておくことで、 例えば TEM観察等の観察, 計測, 分析を行なった結果得られた 情報とゥェハ 2の試料摘出位置との対応関係を容易に把握することができる。 ③ TEMステージ方式
本方式では、 試料台 3とは独立に動作するステージ上に試料ホルダ 1 9' を装着 する。 この独立動作するステージとは、 例えばサイ ドエントリ型の TEM [ステージ 等を指す。 本例では、 このサイドエントリ型 TEMステージを試料室内に出し入れ 可能なように構成してある。 この場合、 サイ ドエントリ型 TEMステージの回転軸 を試料台 3の傾斜軸と平行になるよう設定する。 なお、 摘出試料片の観察所望領域 が上記サイドエントリ型 TEMステージの回転軸上に配置されるのが望ましいが、 試料ホルダ上に搭載される摘出試料片は数; m〜 30 μπι程度と微小であるため、 実質的には試料ホルダの試料固定面がサイ ドエントリ型 ΤΕΜステージの回転軸上 に来るように配置しておけばよい。 かかる構成により、 試料基板からの摘出試料片 は、 回転等の操作を要することなく して、 Ζ方向の移動のみで試料ホルダ上に搭載 できるため、 試料移送装置に傾斜機構や回転機構等の煩雑な機構を付加する必要が なくなり、 試料移送装置の構成を簡素化できると云う利点がある。 また、 本方式の 場合、 摘出試料片を試料ホルダ上に固定したら、 ΤΕΜステージを試料室から引き 抜いて、 そのまま ΤΕΜ装置内に装着できるので、 ΤΕΜ観察に至るまでに熟練や 時間を要する手作業が必要でないので、 試料作製に要する時間を大幅に短縮でき、 また、 試料作製時の精神的負担を軽減できると云う効果が得られる。 また、 試料片 の観察部 (ウォール部) 力 ^厚過ぎる等で ΤΕΜ観察しにくい場合には、 ΤΕΜステ ージをそのまま本試料作製装置の試料室内に再挿入するだけで、 直ちに F I Β照射 による再加工を施すことができると云う簡便さを有する。
[試料ホルダの形態]
従来の Τ Ε Μ用試料ホルダとしては、 図 7の(a)に示した単孔型ゃ同図の( b )に
示したメッシュ型等が知られている。 単孔型ホルダ 7 8は、 薄肉金属円板の中央部 に直径 1 mm 0程度の孔 7 9を設けたものである。 この単孔型ホルダを用いる場合 には、 試料片を孔 7 9の内壁面上に正確に位置決めして取り付ける必要があるが、 本発明の試料作製方法により得られる試料片のようにそのサイズが 1 0〜2 0 μ πι と小さいと、 この取付作業が非常に難しい。 メッシュ型ホルダ 1 0 9は、 薄肉金属 円板の中央開口部に金属メッシュ 1 0 9 ' を張ったものであり、 試料片のサイズに 合わせた網目間隔のメッシュを用いれば、 試料片の取付位置はある程度任意に選ぶ ことができるが、 試料透過電子線の経路がメッシュ構成部材に遮断されてしまって 観察所望領域の Τ Ε Μ観察ができなくなるおそれがある。
本発明による試料作製方法では、 摘出試料片のサイズ (高さ) が 1 0〜2 0 μ ιη と小さいため、 ホルダの試料固定面に深さ 2 0 μ πι以上の凹部があると、 摘出試料 片はこの凹部に埋もれてしまい、 Τ Ε Μ観察の際に観察用電子線が遮断され、 折角 試料基板から摘出した試料片の Τ Ε Μ観察ができなくなってしまう。 そこで、 本実 施例では、 図 2 6に示すような試料ホルダを用いた。 つまり、 ここでは F I B加工 に際しての F I B照射方向と T E M観察に際しての観察用電子線の入射方向とが互 いに直角方向となるようにして、 両ビームが遮断されないようなホルダ構造とし、 かつ、 特に観察用電子線を照射し易いようにするために試料固定面の平坦性を良く している。
図 2 6の(a )に示したホルダ 1 2 6は、 シリコンウェハからへき開やダイシング ソーを用いて切り出した短冊状シリコン片 1 2 7上に摘出試料片 4 0を保持させる ものである。 本例でのホルダ 1 2 6の大きさは、 長さ 2 . 5 mm , 幅 5 0 μ πι, 高 さ 0 . 5 mm (シリコンウェハ厚) である。 このように、 シリコンウェハの研磨面 を摘出試料片 4 0の固定面とすることによって、 この固定面の凹凸を小さくできる ので、 T E M観察に際して、 観察用電子線の照射が阻害されることがない。 なお、 ホルダ形状及び寸法は、 上例に限定されるものではなく、 要は、 シリコンウェハの 研磨面を試料片 4 0の固定面とすること、 およびホルダ幅をできだけ薄くすること
である。
図 2 6の( b )に示すホルダ 1 2 8は、 図 2 6の( a )のホルダ 1 2 6の一変形例で ある。 ホルダ 1 2 6では、 T E M観察時にホルダの僅かな傾きにより観察用電子線 の照射が阻害されるのを避けるために、 ホルダ幅をできるだけ薄くすることが望ま しいが、 該ホルダ幅を極端に薄くすると機械的強度が小さくなり、 ホルダの取扱時 に破損する等の問題が発生する。 そこで、 図 2 6の(b )のホルダ 1 2 8では、 十分 な機械的強度を持ちかつ電子線照射の邪魔にならないホルダ構造として、 シリコン ウェハから切り出した短冊状シリコン片 1 2 9を幅広の下方部分 1 2 9 Aと幅狭の 上方部分 1 2 9 Bとからなる凸型断面形状に加工したものを用い、 その幅狭上方部 分 1 2 9 Bの上面 (元のウェハの研磨面) に摘出試料片 4 0を搭載するようにして いる。 なお、 図 2 6の(b )は、 ホルダ 1 2 8上に摘出試料片 4 0を複数個 ( 3個) 搭載した状態を示している。
図 2 6の(c )に示すホルダ 1 3 0は、 半円形状のシリコン板 1 3 1で形成されて おり、 これはシリコンウェハからへき開およびウエットエツチング技術を利用して 作製した。 その直径は約 3 mm, 厚さは約 5 0 mである。 摘出試料片 4 0の固定 面は、 元のウェハのへき開面であり十分な平滑性を有している。 このホルダ 1 3 0 は半円形状であるため、 リング状のヮッシャを用いることによって T E Mステージ 上に容易に搭載することができる。
図 2 6の( d )に示すホルダ 1 3 2は、 半円形状の金属基板 1 3 3の側面に図 2 6 の(a )に示したホルダ 1 2 6を取り付けた構造である。 半円形状金属基板 1 3 3は 厚さ 5 0 z m, 直径 3 m mの薄片であり、 これに取り付けたホルダ 1 2 6は長さ 2 m m , 幅 5 0 μ πι, 高さ 0 . 5 mm程度の短冊状シリコン片 1 2 7から成る。 ホル ダ 1 2 6の基板 1 3 3への取付けには導電性接着材を用いたが、 それに限定される ものではない。 なお、 ホルダ 1 2 6は、 短冊状シリコン片 1 2 7の上面が金属基板 1 3 3の上端面よりも上方に出るようにして取り付け、 T E M観察用電子線が金属 基板によって遮断されるのを避けた。 本例のホルダ 1 2 6においても、 摘出試料片
4 0の固定面は、 元のシリコンウェハの研磨面であり、 十分に平滑である。 また、 金属基板 1 3 3の上端面には直接摘出試料片 4 0を固定しないがため、 この面には 多少凹凸があっても T E M観察には全く支障がない。 このため、 金属基板 1 3 3の 作製には殆ど神経を使う必要はなくなり、 打抜き法やウエットエッチング法, 放電 加工法等により容易かつ安価に作製することができる。 なお、 図 2 6の(d )には、 金属基板 1 3 3に図 2 6の(a )のホルダ 1 2 6を取り付けた例を示したが、 図 2 6 の(b )のホルダ 1 2 8を取り付けた場合にも全く同様の効果が得られる。
以上、 T E M観察用の試料ホルダの形状について 4例を示したが、 それらの基本 思想とするところは、 試料固定面を極力平滑とし、 かつ試料固定面の幅をなるベく 薄くしたことであり、 この基本思想に沿つての種々の改変がなされ得ることは云う までもない。
く実施例 5 >
試料基板から微小試料片を摘出するためには、 摘出する試料片の底面を基板から 分離する工程 (以下、 底浚い工程と呼ぶ) が必須である。 先に図 4で説明した従来 の F I Bによる底浚い加工法 (公知文献 3参照) では、 基板 2表面に対し斜め方向 から F I Bを照射して底浚い加工をするため、 摘出された試料片 4 0の底面には、 底浚い加工時のビーム入射角と加エアスぺクト比によって決まる傾斜がつく。 上記 従来法では、 底浚いする (分離用の溝 3 4を形成する) ために、 試料基板を大きく (約 7 0 ° )傾斜させている。 F I Bの集束性から要求される対物レンズと試料基板 との間隔を考慮すると、 このような大傾斜は F I B性能を劣化させてしまい、 満足 な加工ができないと推察される。 通常用いられている F I B装置性能を維持するに は、 試料基板傾斜角は 6 0 ° 程度が限度である。 また、 直径 3 0 0 m mにも及ぶ大 口径ウェハ用の試料ステージを 7 0 ° も大きく傾斜させることは、 機構的にも非常 に困難である。 また、 たとえ 7 0 ° の大傾斜が可能であったとしても、 摘出試料片 の底面は 2 0 ° の傾斜を持っため、 この摘出試料片を試料ホルダの水平保持面上に 搭載すると、 試料片表面は試料ホルダの水平保持面に対し 2 0 ° も傾斜してしまう
ことになり、 該試料片にその表面に対しほぼ垂直な溝やウォールを形成することが 困難となる。 試料基板表面に対してほぼ垂直な溝やウォールを形成するためには、 この試料片底面の傾斜を小さくし、 試料片底面を試料片表面に平行に近くすること が必須である。 しかし、 そのためには、 上述の底浚い加工時の試料基板の傾斜角を さらに大きくしなければならず、 これは上述した装置構成上の制約からさらに困難 になる。 従って、 本発明で目指すような摘出試料片を別の部材 (試料ホルダ) 上に 搭載して観察装置や分析装置内に導入するためには、 水平底面 (または垂直側面) が形成できるような別の底浚い方法を検討しなければならない。 (但し、 公知文献 3では、 摘出試料片を試料ホルダ等に搭載することなく、 試料移送装置のプローブ 先端部に固定保持したままで観察しているため、 試料底面の形状には何ら影響され ない。 )
このような状況から、 本実施例では、 試料台を極端に大きく傾斜させることなく して、 底浚い加工法により微小試料を摘出できる方法を検討した。
以下に本実施例による試料作製方法の具体的手順について説明する。 ここでは、 T E M観察用試料の作製方法を例にとり、 T E M観察すべき領域のマ一キングから 最終的なウォール加工までの全てを F I Bを用いて行なう方法について説明する。 また、 手順を明確にするために、 以下幾つかの工程に分けて、 図 2 7を用いて説明 する。
( 1 )マーキング工程:
本試料作製方法では、 試料基板から T E M観察すべき領域を含んだ微小試料片を 分離摘出することを前提としている。 このため、 試料基板から分離摘出後の試料片 に T E M観察すべき領域の薄片化加工 (ウォール形成) を施す際に、 上記の T E M 観察すべき領域の位置が特定できなくなってしまうおそれがある。 このため、 観察 領域の位置を特定するためのマーキングが必要となる。 試料基板がウェハやチップ そのままの状態では、 C A Dデータ等からの位置割り出しや、 光学顕微鏡像, 走査 イオン顕微鏡像 ( S I M像) 等による位置確認が可能であるため、 最初に試料基板
上の観察領域 (ウォール形成領域) にマーキングを施しておく。 このマーキングは 例えばウォール形成領域の両端に F I B加工やレーザ加工等でマークを施すことに より行なう。 本実施例では、 観察領域を挟んで 1 0 / m間隔で 2個の十字状マーク 1 34, 1 34' を施した。 上記 2個のマ一ク間を結ぶ直線が試料台傾余斗軸と平行 になるように事前に試料台を回転調整しておく。 また、 このマ一キング工程の際、 ウォール 1 46の保護の目的で、 予めマーク 1 34, 1 34' 間にデポジション膜 (図示せず)を形成しておいてもよい。 (図 2 7の(a))
(2)矩形穴加工工程:
上記 2個のマーク 1 34, 1 34' を結ぶ直線の延長上で、 上記 2個のマークの 両外側に F I B 1 3 5の照射により 2個の矩形穴 1 3 6 , 1 3 6' を設ける。 この 矩形穴の開口寸法は、 例えば面積 1 0 ^1X1 X 7 ^ 111, 深さ 1 5 m程度で、 両矩形 穴間の間隔は 3 0 とした。 なお、 短時間に穴加工ができるようにするために、 ビーム径 0. 1 5 μπι程度, ビーム電流約 1 0 η Αの大電流 F I Bで穴加工した。 所要加工時間はおよそ 7分であった。 (図 2 7の( a ) )
(3)垂直溝加工工程:
次に、 上記マーク 1 34, 1 34' 間を結ぶ直線より約 2 μπιを隔てそれと平行 に、 かつ一端が矩形穴 1 3 6 ' に達し他端が矩形穴 1 3 6には僅かに達しないよう にして、 F I Β走査によって幅約 2 πι, 長さ約 2 8 βτη, 深さ約 1 5 μιηの細長 い垂直溝 1 3 7を形成する。 F I Βの走査方向は、 F I Β照射により発生するスパ ッタ粒子が折角形成した垂直溝 1 3 7や、 矩形穴 1 3 6, 1 3 6' を埋めることが ないようにする。 一方の矩形穴 1 3 6と垂直溝 1 3 7との間に残された幅が 2 m 程度の残存領域 1 3 8は、 後に、 上記観察領域を含む試料片 40を試料基板 2から 分離する際、 試料片 40を仮保持しておくための支持部となる。 (図 2 7の(b)) (4)傾斜溝加工工程:
上記(2), (3)の工程で水平に保たれていた試料基板面を小さく傾斜 (本例では 2 0° ) させてから、 上記マーク 1 34, 1 34' 間を結ぶ直線から約 2 μπを隔
てそれと平行に、 かつ、 先に形成した垂直溝 137とは反対の側に、 F I B照射に よって傾斜溝 139を形成する。 ここで、 上記した 2個のマーク 134, 1 34' 間を結ぶ直線は試料台 (図示省略) の傾斜軸と平行に設定されているので、 垂直溝 137側に対し傾斜溝 139側が上となるように試料基板面を傾斜させる。 傾斜溝 1 39は、 両矩形穴 136 , 1 36 ' 間を結んで、 幅約 2 tm, 長さ約 30 μπι, 深さ約 18 mで形成した。 この際も、 F I B照射により発生するスパッタ粒子が 折角形成した矩形穴 136, 1 36' や垂直溝 137や傾斜溝 139を埋めること がないように留意する。 傾斜溝 139はその底部で先に形成した垂直溝 137底部 と交わり、 その結果、 マーク 1 34, 134' を含んだ、 底部頂角が 20° の直角 三角形断面のクサビ型試料片 140力 支持部 138だけを残し、 試料基板 2から 分離され、 支持部 138によって片持ち支持された状態となる。 (図 27の(c))
(5)プローブ固定用デポ工程:
次に、 試料基板面を水平に戻してから、 試料片 140の支持部 138とは反対側 端部に試料移送装置のプローブ 14 1の先端部を接触させる。 この接触状態は試料 片 140とプローブ 141との間の導通や両者間の容量変化によって感知すること ができる。 また、 不注意なプローブ 141の試料面への押付けにより試料片 140 やプローブ 141が破損されるのを避けるために、 プローブ 14 1が試料片 140 に接触した時点で直ちにプローブ 141の垂直方向駆動 (押し下げ) を停止させる 機能を設けておく。 次いで、 試料片 140にプローブ 141先端部を固定接続する ために、 プローブ 141先端部を含む約 2 tm角の領域に、 デポジション用ガスを 供給しながら、 F I B 1 35を照射 (走査)して、 該 F I B照射領域にデポ膜 142 を形成する。 このデポ膜 142を介してプローブ 141先端部と試料片 140とが 固定接続される。 (図 27の(d), (e))
(6)試料片摘出工程:
試料片 140を試料基板 2から摘出するために、 試料片 140を仮保持している 支持部 1 38に F I B 1 35を照射して、 スパッタ加工により支持部 1 38を除去
して、 試料片 140を仮保持状態から開放させる。 支持部 134は、 試料基板面上 で 2 ^111平方, 深さ約 15 μπιであるので、 約 2〜3分の F I Β照射(走査)で除去 できる。 これにより、 試料片 140は、 試料基板 2から完全に分離摘出された状態 となる。 (図 27の(e), (f ))
(7)摘出試料片移送 (試料ステージ移動) 工程:
次いで、 試料基板 2から分離摘出された試料片 140をプローブ 141先端部に 固定接続した状態で試料ホルダ 143上に移動させるが、 これは、 実際には試料台 側を移動させて、 該試料台上に載置された試料ホルダ 143を F I B 135の走査 範囲内に移動させる。 この時、 不慮の事故を避けるため、 試料片 140をプローブ 141とともに、 矢印で示すように上方に退避させておく。 ここで、 試料台上への 試料ホルダ 143の設置方式には前述したように種々の方式があるが、 本例では、 サイドエントリ型の TEMステージ上に試料ホルダ 143が設置されている場合を 想定している。 (図 27の(f ), (g))
(8)摘出試料片固定工程:
試料台移動により、 試料ホルダ 143が F I B 1 35の走査範囲内に入ったら、 その位置で試料台の移動を停止してから、 プローブ 141を下方に押し下げ、 試料 片 140を試料ホルダ 143上面へと接近させる。 (図 27の(g))
試料片 140が試料ホルダ 143上面に接触したら、 両者の接触部位にデポガス を導入しながら F I B 135を照射してデポ膜 145を形成し、 このデポ膜 145 を介して試料片 140を試料ホルダ 143上に固定接続する。 本実施例では、 試料 片 140の長手方向端面部にデポ膜 145を形成した。 この時の F I B照射領域は 3 m平方程度である。 形成されたデポ膜 145は、 その一部で試料ホルダ 143 上に、 他の一部で試料片 140の側面に付着して、 両者間を固定接続する。 なお、 試料片 140をより確実に試料ホルダ 143に固定するために、 試料ホルダ 143 の試料固定面に幅 2 μπιΧ長さ 32 μπιχ深さ 3 μπι程度の細長溝 144を F I Β 加工により事前に形成しておき、 該細長溝 144内に試料片 140の下端部を挿入
した上で、 試料片 140の長手方向端面部にデポ膜 145を形成するようにしても よい。 図には、 この後者の場合を示してある。 (図 27の(g), (h))
また、 試料片 140中の観察領域がサイドエントリ型 TEMステージの回転中心 軸上に配置されることが望ましいが、 試料ホルダ 143上に固定接続すべき試料片 140が数 μιηから数 10 m程度と微小であるがため、 実質的には、 試料ホルダ 1 3の試料固定面がサイドエントリ型 TEMステージの回転中心軸上に来るよう に配置しておけばよい。 このようにすることにより、 TEMステージを TEM内に 設置した時に、 試料片 140中の観察所望領域を容易に TEMの観察視野内に導入 することができる。
また、 この時、 サイドエントリ型 TEMステージの回転中心軸を試料台の傾斜軸 に平行にしておくと摘出試料片の方向を回転させる必要がなくなるので、 試料移送 装置に複雑な回転機構を設ける必要がない。 さらに、 サイドエントリ型 TEMステ ージを用いることによって、 試料作成後直ちに TEM内に導入でき、 また、 追加工 が必要な場合には、 直ちに再度 F I B装置内に戻して追加工ができるという効果が ある。
(9)プローブ切り離し工程:
次に、 上記したデポガスの供給を停止した後、 プローブ 141と試料片 140と を固定接続しているデポ膜 145に F I Bを照射して、 該デポ膜 145をスパッタ 除去することで、 プローブ 141を摘出試料片 140から切り離す。 これにより、 試料片 140は試料ホルダ 143上に固定保持されて、 プローブ 141からは完全 に自立する。 (図 27の(i))
( 10)ウォール加工工程:
最後に、 F I B照射によって、 試料片の観察所望領域が厚さ 100 nm以下程度 のウォール 146になるように薄く仕上げ加工して、 一連の TEM試料作製工程を 完了する。 この時、 試料片 140の長手方向側面の一方が垂直面であるため、 ゥォ —ル加工のために F I B照射領域を決定する際、 この垂直面を基準にすることで、
元の試料基板表面にほぼ垂直なウォール 146を形成できる。 また、 F I B照射に 先立って、 ウォール面をより平面的に加工するためにゥォール形成領域を含む試料 片上面に F I Bデポ膜を形成しておくとよい。 上述したウォール加工の結果、 横幅 約 1 5μπιで, 深さが約 10 imのウォール 146を形成でき、 TEM観察用試料 とすることができた。 (図 27の(j ))
以上のマーキング工程からウォール加工工程までの全工程に要する時間は、 約 1 時間 30分であリ、 従来の T EM試料作製方法に比べて所要時間を数分の 1に短縮 できた。
(1 1 ) T E M観察工程:
上記したウォール加工終了後、 試料作製用 F I B装置の試料室内からサイドエン トリ型 TEMステージを引き抜き、 TEMの試料室内に導入する。 この時、 観察用 電子線経路と、 ウォール面とが垂直に交わるよう TEMステージを回転させて挿入 する。 その後の TEM観察技術についてはよく知られているので、 ここでは説明を 省略する。
なお、 上記した本実施例における試料作製手順は、 TEM観察用試料に限らず、 その他種々の観察手法や、 分析, 計測手法における試料作製に用いることも可能で ある。
なお、 本実施例による試料作製方法が公知文献 3における試料作製方法と大きく 異なる点は、 (1)試料の摘出 (分離) に際してのビーム照射方法が全く異なり、 本 実施例では、 摘出試料片をなるベく薄くするためと、 試料基板からの試料片底面の 分離 (底浚い) を簡便にするために、 試料片長手方向 (TEM観察面に平行方向) の側面を傾斜加工している点, および、 (2)本実施例では、 摘出試料片は試料移送 装置のプローブとは全く別部材である試料ホルダ上に固定保持される点である。 このように、 本実施例による試料作製方法によれば、 試料基板 (半導体ウェハや デバイスチップ等) の所望の観察または分析領域をマ一キングしたその場にて直ち にその試料基板から、 人の手作業を介することなく、 かつ試料基板を試料作製装置
の真空試料室から外部に出すことなく、 T E M観察用やその他の分析 Z計測 Z観察 のための試料を作製することできる。 また、 本実施例による試料作製装置を用いる ことで、 マークキング工程からゥォール加工までの全ての試料作製工程を同一試料 作製装置内で一貫して行なえるため、 研磨作業や試料片の試料ホルダへの取付け等 の熟練技能と長時間を要する手作業を介することなく、 また、 試料の装置間移動に 伴なう試料落下等の危険性を軽減して、 半導体ウェハや半導体チップを始め、 その 他の材料や部品からの試料片の摘出から試料ホルダ上への搭載までを行なうことが できる。 特に、 T E M試料の作製に関して、 試料作製所要時間を大幅に短縮できる 効果が得られる。
く実施例 6〉
試料基板から試料片を摘出するために試料移送装置によってプローブを試料基板 表面へ接触させる際には、 試料基板を破壊, 損傷させないように細心の注意を払う 必要がある。 本実施例は、 試料基板を破損させないように配慮された試料移送方法 および移送装置に関するものである。
図 2 8に本実施例における試料移送装置 (マニピュレータ) の概略構成を示す。 図において、 試料移送装置 4は、 摘出試料片を保持するプローブ 1 1と、 プローブ 1 1を 3軸 (X, Y, Ζ ) 方向に粗移動させる粗駆動部 1 4 7と、 プローブ 1 1を 1軸 (Ζ ) 方向に微移動させる微駆動部 1 4 8とから成っている。 粗駆動部 1 4 7 は試料台(図示省略)から十分離れた位置に設置されており、 微駆動部 1 4 8に取り 付けられたプローブ 1 1が試料台上の広い範囲にわたりアクセスできるようにする ために、 微駆動部 1 4 8は長い延長棒 1 4 9を介して粗駆動部 1 4 7に連結されて いる。
粗駆動部 1 4 7は、 X軸方向粗動部 1 4 7 X, Υ軸方向耝動部 1 4 7 Υ, Ζ軸方 向粗動部 1 4 7 Ζから構成されており、 各軸方向の移動ストロークは約 3 mmで、 移動分解能は約 0 . 5 mである。 微駆動部 1 4 8は、 バイモルフ圧電素子により 構成されており、 移動ストロークは約 2 0 0 i m、 移動分解能は約 0 . Ο δ μ πιで
ある。
上述したように、 微駆動部 1 4 8を延長棒 1 4 9を介して粗駆動部 1 4 7に連結 する構成としたのは、 以下のような理由による。 すなわち、 本発明の試料作製装置 において用いられるイオンビーム照射光学系の最終段レンズ電極と試料台との間や その周辺には種々の装置部品が混在設置されている。 このような種々の装置部品と の設置場所についての競合を避けるため、 本実施例における試料移送装置 4の本体 部分である粗駆動部 1 4 7は、 できるだけ試料台から離れた位置に設置されるのが 望ましいからである。 本実施例では、 延長棒 1 4 9を用いることにより、 粗駆動部 1 4 7を試料台から十分に離して設置できるようにしている。
以下、 図 2 9を用いて、 プローブ 1 1先端部を試料基板 2表面へ接触させる手順 について説明する。 図 2 9において、 破線 1 5 0が基板 2表面と交差する点 1 5 1 がプローブ 1 1の接触目標位置である。
図 3 0に、 図 2 9に示した手順(a )〜(f )に対応させたフローを示す。 なお、 図 3 0において、 矢印に付された記号 「Y」 は、 その事象が起こったこと (例えば、 「接触確認」 の場合は、 接触確認がなされたこと) を示し、 記号 「Ν」 はその事象 が起こっていないこと (例えば、 「接触確認」 の場合には、 接触確認されていない こと) を示している。 また、 図 3 0における「接触」とは、 特に断わりがない場合、 にはプローブ 1 1と試料基板 2との間での接触を指す。 なお、 実際には、 プローブ 1 1 一試料基板 2間の接触状態は常にモニタされており、 接触確認作業は常時行な われている。 従って、 接触が起こり次第、 記号 「Υ」 で示される動作が行われる。 以下の説明では、 この 「接触確認」 が多数回出てくるため、 説明が冗長となるのを 避けるため、 特別の場合を除き、 この点についての詳しい説明は省略する。
先ず始めに、 プローブ 1 1先端部が基板 2表面に接触していないことを確認した 上で、 X軸方向耝動部 1 4 7 Χ, Υ軸方向粗動部 1 4 7 Υを駆動してプローブ 1 1 先端部を接触目標位置 1 5 1の真上まで移動する ( a ) 。 次に、 プローブ 1 1先端 部が基板 2表面から微駆動部 1 4 8の全ストロ一ク以上離れている状態において、
微駆動部 1 4 8を駆動してプローブ 1 1先端部をその原点位置から Z 0 (例えば、 微駆動部 1 4 8の全ス卜ロークの 5 0 %程度、 本実施例の場合は 1 0 0 μ πι程度) だけ基板 2表面に近づけた状態にする (b ) 。 その後、 Z軸方向粗動部 1 4 7 Zを 駆動して、 プローブ 1 1先端部力基板 2表面に接触するまで微駆動部 1 4 8を基板 2表面に接近させる ( c ) 。 両者間での接触は、 例えば、 プローブ 1 1と基板 2と の間の電気抵抗変化をモニタすることによって、 あるいは、 プローブ 1 1に電圧を 印加しておいて基板 2表面の 2次電子像上での電位コントラス卜変化をモニタする ことによって検知することが可能である。 このようにして、 プローブ 1 1先端部と 基板 2表面との接触が検知されたら、 即座に Z軸方向耝動部 1 4 7 Zの駆動を停止 させると共に、 微駆動部 1 4 8を再駆動して、 プローブ 1 1先端部をその原点位置 ( Ο μ ιη位置) まで退避 (上方後退) させる。 この微駆動部の退避によって、 Ζ軸 方向粗動部 1 4 7 Ζの停止遅れやドリフ卜等によリプローブ 1 1一基板 2間の多少 の余剰接近があっても、 上記した微駆動部退避分 (約 1 Ο Ο μ πι ) でプローブ 1 1 先端部が基板 2表面から十分離れた状態になるため、 両者が損傷を受けずに済む。 即ち、 この場合には、 Ζ軸方向粗動部 1 4 7 Ζの停止遅れ等による余剰接近分より も充分大きなストロークを有する微駆動部 1 4 8を使用する必要がある。 例えば、 本実施例による試料移送装置 (プローブ駆動機構) 4の場合には、 Ζ軸方向粗動部 1 4 7 Ζの余剰接近分は 1 μ πι以内であり、 微駆動部 1 4 8のストロークは 2 0 0 t t あり、 その 5 0 %に当たる 1 0 0 μ πιを微駆動部退避量としているから、 上記 の余剰接近による損傷を回避するには充分である。 ここで、 さらに安全を図るため に、 Ζ軸方向耝動部 1 4 7 Ζの動作をロックし、 このロックの解除を能動的に行な わない限り Ζ軸方向粗動部 1 4 7 Ζは再駆動できないようにしておく (d ) 。 この 状態で、 X軸方向粗動部 1 4 7 X及び Y軸方向粗動部 1 4 7 Yを駆動してプローブ 1 1先端部の接触目標位置 1 5 1の真上への最終的な位置合わせを行なう ( e ) 。 その後は、 微駆動部 1 4 8のみを駆動して、 プローブ 1 1先端部を基板 2表面に軟 接触させる ( f ) 。 この様に、 最終接触を微駆動部 1 4 8のみを用いて行なうこと
ができるため、 基板表面及びプローブ 1 1先端部の破損を抑制することができる。 図 30の(g)は、 接触後に位置ずれが生じていた場合の調整法のフローであリ、 図 29では、 この調整手順の図示は省略されている。 図 30の(g)において、 接触 位置がずれていた場合には、 微駆動部 148を上方に退避させ、 プローブ 1 1先端 部の基板 2表面との接触を解く。 ここで、 もし微駆動部148が原点位置 (0 111 位置) に戻ってもまだ接触したままの場合には、 Z軸方向粗動部 147 Zのロック を解除して Z軸方向粗動によるプローブ 1 1先端部の退避を行ない、 改めて、 上述 した Z軸方向粗動による接近操作からやり直す。 微駆動部 148による微動退避の みで接触が解けた場合には、 その後、 念のために、 微駆動部 148によりプロ一ブ 1 1先端部をさらに Z 1程度上方に後退させる。 Z 1の値は、 プローブ 1 1先端部 の X, Y面内移動量と基板 2表面の凹凸高さから決定されるが、 本実施例の場合は 3 m程度とした。 しかる後に、 X軸方向耝動部 147X, Y軸方向耝動部 147 Yを駆動して接触目標位置 1 5 1の真上にプローブ 1 1先端部を移動させてから、 微駆動部 148によってプローブ 1 1先端部を基板 2表面に接近させ、 両者を接触 させる。
ここで、 上記の粗動停止遅れやクリ一プ現象による余剰接近量が事前に見積もれ る場合には、 図 29の(d)における微動退避は、 必ずしも Z0位置 ( Ι Ο Ο μπι位 置) から原点位置 (Ο μπι位置) までの 100 μπιもの大きな退避量とする必要は ない。 例えば、 上例において、 上記原因による余剰接近量が 5 以下と見積もれ るならば、 10 μπι程度の退避量 ( 100 μπι位置から 90 μπι位置までの退避) でも十分である。 また、 これ以外にも、 一旦、 微駆動部 148を原点位置 (O ^m 位置) まで戻してから、 改めて 90 μπι位置近くまで比較的高速でプローブ 1 1を 基板 2表面に接近させ、 それ以降は十分に低速で 10 O^m位置近くまで接近させ ることによって、 プローブ 1 1先端部を基板 2表面接触させるという速度変化法を 用いてもよい。 この場合には、 接触時におけるプローブの接近速度が小さいため、 より基板破損の確率が減り、 また微駆動部の総合駆動時間を短縮することが可能に
なる。
また、 もし微駆動部 1 4 8によるプローブ 1 1の微駆動が、 X, Y面内での微動 移動も伴なう場合には、 手順(d )におけるプローブ 1 1の微動退避後の、 手順(e ) における X, Y軸方向粗動によるプローブ 1 1先端部の接触目標位置 1 5 1の真上 への移動には意味がなくなる。 従って、 その場合には、 手順(b )での Z 0位置への 微動接近の後に、 X軸, Y軸方向粗動によってプローブ 1 1先端部の接触目標位置 1 5 1上方への移動を行い、 その後に手順(c ), (d )を実行し、 その次の手順(e ) は省略して、 手順(f ), (g )へと進めるようにした方がより効率的である。
以上では、 プローブ 1 1先端部の基板 2表面への接触について述べたが、 試料片 摘出後に、 摘出試料片 4 0を試料ホルダ 1 9に接触させる際にも、 プローブ 1 1を プローブに固定された試料片 4 0に、 基板 2表面を試料ホルダ 1 9表面にそれぞれ 置き換えるだけで、 上記と全く同様の接触法を用いることができ、 その場合にも、 上記と同様に、 試料片および試料片ホルダの損傷を効果的に抑制できることは云う までもない。
以上のような接触法を用いることで、 プローブ, 基板および試料片ホルダの破損 を抑制しての効率的な試料片摘出が可能になる。
以上本発明の種々の実施例について説明してきたが、 本発明は上記実施例に限定 されるものではなく、 例えば、 上記実施例では、 主として T E M観察用試料の作製 について説明したが、 その他の観察装置 (例えば、 S E M等) や分析 Z計測装置用 の試料の作製にも本発明を適用できることは明らかである。
以上説明してきたように、 本発明によれば、 集積回路チップや半導体ウェハ等の 試料基板から、 人の手作業を介することなく して、 直接に、 T E M等の観察装置や その他各種の分析/計測装置用の試料を作製することできる。 また、 摘出試料片を カートリッジ上に保持できるため、 試料片の保守管理を容易にでき、 さらに試料片 の観察, 分析時に外部からの機械振動等の影響を軽減することができる。
産業上の利用可能性
本発明による試料作製方法および装置は、 半導体ウェハや半導体デバイスチップ 等の微小領域についての観察, 分析, 計測を行なうための微小試料作製に利用する ことができ、 特に T E M観察用試料の作製に用いて効果的である。 従って、 高集積 半導体デノ イスの製造過程における不良原因の解明促進に寄与し得るものである。