以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において、化合物名は、IUPAC(The International Union of Pure and Applied Chemistry)で定められたNomenclature(IUPAC Nomencrature of Organic Chemistry)記載の規則に基づく名称を用いる場合が多い。“有機”とは、該規則に開示されている命名法の対象とされる化合物群一般を指す。該対象は、1993年に出された勧告に記載された対象であってもよい。ただし、上記した該Nomencratureの対象とした“有機”化合物には、有機金属化合物、及び金属錯体をも含有される。本実施形態においては、“有機”及び/又は“有機基”及び/又は“置換基”などの用語を用いて、本実施形態で使用する化合物を以下に説明するが、特に説明のない場合、それらは金属原子及び/又は半金属を含まない原子で構成される。H(水素原子)、C(炭素原子)、N(窒素原子)、O(酸素原子)、S(硫黄原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、I(ヨウ素原子)から選ばれる原子から構成される構造として、“有機化合物”、“有機基”、“置換基”を本実施形態では使用する。
以下の説明に、“脂肪族”及び“芳香族”という語を多用する。上記したIUPACの規則によれば、有機化合物は、脂肪族化合物と芳香族化合物に分類されることが記載されている。脂肪族化合物とは、1995年のIUPAC勧告に基づいた脂肪族化合物に沿った基の定義である。該勧告には、脂肪族化合物を“Acyclic or cyclic,saturated or unsaturated carbon compounds,excluding aromatic compounds”と定義している。また、本実施形態の説明で用いる脂肪族化合物及び脂肪族基は、飽和及び不飽和、鎖状及び環状のいずれも包含し、上記したH(水素原子);C(炭素原子);N(窒素原子);O(酸素原子);S(硫黄原子);Si(ケイ素原子);Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)及びI(ヨウ素原子)から選ばれるハロゲン原子;から選ばれる原子で構成され得る。
“アラルキル基”のように、脂肪族基に結合した芳香族基を有する基は、“芳香族基で置換された脂肪族基”、“芳香脂肪族基”又は“芳香族基が結合した脂肪族基からなる基”としばしば表記することがある。これは、本実施形態における反応性に基づくもので、アラルキル基のような基の反応に関する性質は、芳香族性ではなく脂肪族の反応性に極めて類似しているからである。また、アラルキル基、アルキル基等を包含した非芳香族反応性基を、しばしば“芳香族で置換されてもよい脂肪族基”、“芳香族で置換された脂肪族基”、“芳香族基が結合した脂肪族基”などと表記し、“脂肪族基”に含める場合がある。
本明細書で使用する化合物の一般式を説明する際は、上記したIUPACで定められたNomenclature規則に沿った定義を使用するが、具体的な基の名称、例示する化合物名称は、しばしば慣用名を使用している。また、本明細書中に、原子の数、置換基の数、個数をしばしば記載するが、それらはすべて整数を表している。
本明細書中に例示する置換基や化合物が、構造異性体を有する場合には、特に断らない限り、これらの構造異性体を含む。
<樹脂組成物>
いくつかの実施形態に係る樹脂組成物は、窒素−炭素−硫黄結合、及び/又は窒素−炭素−酸素結合を有する樹脂を含有する。ここでいう窒素−炭素−硫黄結合とは、窒素原子、炭素原子、硫黄原子がこの順で結合している状態の構造を指し、当該結合における窒素−炭素結合、炭素−硫黄結合は、単結合であっても不飽和結合であってもよい。ただし、窒素−炭素結合及び炭素−硫黄結合のうち少なくとも一方は、単結合であってもよい。当該結合を形成する窒素原子と硫黄原子は他の原子、例えば、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子等を結合していてもよい。窒素−炭素−酸素結合も同様に定義される。
窒素−炭素−硫黄結合及び/又は窒素−炭素−酸素結合を含む基として、好ましくは下記式で表される構成単位を挙げることができる。
(式中、
R1は、ポリイソシアネートから該ポリイソシアネートを構成するイソシアネート基(−NCO)を2つ除いた残基、又は、ポリイソチオシアネートから該ポリイソチオシアネートを構成するイソチオシアネート基(−NCS)を2つ除いた残基を表し、
X2及びY2は各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、
一つの構成単位中のX2及びY2のうち1つ以上が硫黄原子である。)
(式中、
R3及びR4は、それぞれ独立に脂肪族基又は芳香族基を表し、複数あるR3及びR4は同一でも異なってもよく、
X3は酸素原子又は硫黄原子を表す。)
このような構成単位を分子中に有する樹脂を含有する樹脂組成物は、金属との密着性を大幅に改善する効果を奏する。また、この屈折率が高いことから、光沢性等の塗料物性の改善にも効果が奏される。
塗膜を形成した際の特性としては、耐熱性が重要な特性の一つである。具体的には、5%熱重量減少温度が250℃以上又は300℃以上である樹脂を含有する樹脂組成物であってもよい。ここでいう、5%熱重量減少温度とは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、毎分10℃で温度上昇する炉の中で樹脂を加熱した際に、室温(20℃〜30℃)での樹脂重量に対して5%の重量減少が認められた時点での炉の温度であり、一般的には、熱重量分析計として市販されている装置を使用して測定することができる。
耐熱性の効果を奏する樹脂組成物は、その主鎖骨格、結合様式、分子量、耐熱性の発現に寄与する結合の含有量等により様々である。結合様式の観点では、上記した中でも、上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(41)、(42)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を有する樹脂を含有する樹脂組成物が好ましい。
樹脂の数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは5000以上である。一般的には高分子量の方が、耐熱性が良好となる傾向にあるが、一方で、あまりに高分子量である場合には、塗膜を形成する際の取り扱い性(他の成分との混和性、流動性、展性等)の面で不利となる場合があることから、数平均分子量は好ましくは100万以下、より好ましくは50万以下、更に好ましくは20万以下である。ここでいう数平均分子量は、排除限界分子量1000万以上のカラムを少なくとも1つ具備するゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して測定し、ポリスチレン等の標準物質を用いて保持時間を分子量に換算することで計算した値である。当業者であれば容易に数平均分子量を求めることができる。溶媒に由来するピークは除いて計算する。
耐熱性の発現に寄与する結合の含有量は、上記した数平均分子量Mnとも相関する。1分子あたりに含まれる窒素−炭素−硫黄結合を構成する硫黄原子の数及び窒素−炭素−酸素結合を構成する酸素原子の数n1で樹脂の数平均分子量を除した値(Mn/n1)が、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。本実施の形態の樹脂組成物は、上記したように金属との密着性の面においても効果を奏するが、そのような効果を発現する観点からも、樹脂が1分子あたりに多くの上記結合を有していることが好ましい。一方で、樹脂があまりに多くの上記結合を有している場合、特に、樹脂が上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(41)、(42)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を有する場合、塗膜性能の一つである柔軟性が損なわれる場合もある。そのような観点から、Mn/n1は好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。n1は、例えば、樹脂単位重量(1g)あたりの当該結合の数X1(単位mol/g)を、例えば赤外線吸収スペクトルや1H−NMR等によって求め、上記した数平均分子量(Mn)から、式:n1=Mn・X1によって算出することができる。樹脂が窒素−炭素−硫黄結合及び窒素−炭素−酸素結合の両方を含む場合、n1はそれぞれの結合を構成する硫黄原子及び酸素原子の合計数である。
本実施の形態の樹脂組成物に含まれる樹脂は、上記したように分子鎖を構成する結合(構成単位)に特徴があり、各結合間の骨格構造については特に限定されない。具体的には、以下に例示する本実施の形態の樹脂組成物の製造方法において使用される原料化合物に由来する骨格構造が好ましく使用される。
このような樹脂の中でも、上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(41)、(42)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を含有する樹脂は特性が良好であり、好ましく使用することができる。以下、これらの樹脂について説明する。
≪複素環を有する樹脂≫
<好ましい構造>
本実施の形態で好ましい第1の樹脂は、上記式(6)〜(8)で表される1価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位を2以上有する樹脂である。上記式(6)〜(8)で表される構成単位を有する樹脂は、驚くべきことに、耐熱性が高く、密着性、殊に金属表面への密着性に優れる。このような効果を奏する機構については明らかではないが、本発明者らは、共役系を有する環構造が耐熱性に寄与し、該構成単位に含まれる硫黄原子、殊に、上記式(6)の構成単位が有するチオール基(−SH基)が密着性を高める効果を奏するのではないかと推測している。このような観点からは、上記式(6)で表される構成単位及び/又は上記式(7)で表される構成単位を含む樹脂が好ましい。
このように、本実施の形態の樹脂は、その分子中に含まれる結合様式に特徴があり、該結合以外の骨格構造は特に限定されないが、より好ましい形態は以下の通りである。
樹脂の数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは5000以上である。一般的には高分子量の方が、耐熱性が良好となる傾向にあるが、一方で、あまりに高分子量である場合には、塗膜を形成する際の取り扱い性(他の成分との混和性、流動性、展性等)の面で不利となる場合があることから、数平均分子量は好ましくは100万以下、より好ましくは50万以下、更に好ましくは20万以下である。ここでいう数平均分子量は、排除限界分子量1000万以上のカラムを少なくとも1つ具備するゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して測定し、ポリスチレン等の標準物質を用いて保持時間を分子量に換算することで計算した値である。当業者であれば容易に数平均分子量を求めることができる。溶媒に由来するピークは除いて計算する。
耐熱性の発現に寄与する結合の含有量は、上記した数平均分子量Mnとも相関する。1分子あたりに含まれる窒素−炭素−硫黄結合を構成する硫黄原子の数及び窒素−炭素−酸素結合を構成する酸素原子の数n1で樹脂の数平均分子量を除した値(Mn/n1)が、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。本実施の形態の樹脂組成物は、上記したように金属との密着性の面においても効果を奏するが、そのような効果を発現する観点からも、樹脂が1分子あたりに多くの上記結合を有していることが好ましい。一方で、樹脂があまりに多くの上記結合を有している場合、特に、樹脂が上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(41)、(42)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を有する場合、塗膜性能の一つである柔軟性が損なわれる場合もある。そのような観点から、(Mn/n1は好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。n1は、例えば、樹脂単位重量(1g)あたりの当該結合の数X1(単位mol/g)を、例えば赤外線吸収スペクトルや1H−NMR等によって求め、上記した数平均分子量(Mn)から、式:n1=Mn・X1によって算出することができる。樹脂が窒素−炭素−硫黄結合及び窒素−炭素−酸素結合の両方を含む場合、n1はそれぞれの結合を構成する硫黄原子及び酸素原子の合計数である。樹脂が式(6)〜(8)の構成単位を有する場合、当該樹脂1分子あたりに含まれる式(6)〜(8)で表される構成単位の数の和がn2であるときに、Mn/n2が50以上300以下である。n2は式:n2=X2・Mnにより算出される。X2は当該樹脂1gあたりに含まれる式(6)〜(8)で表される構成単位の数の和であり、X1と同様の方法により求めることができる。
上記構成単位の間に設けられる構造は、特に限定されないが、好ましくは、炭素数1〜25の脂肪族基、炭素数6〜25の芳香族基である。具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から2個の水素原子を除いた残基である。なお、異性体が存在する場合は該異性体も含まれる。
これらの中でも、下記式(301)〜(306)で表される構造を有する樹脂が好ましい。
(式中、iは1〜12の整数を表し、1〜10であってもよい。)
<好ましい製造方法>
本実施の形態の好ましい第1の樹脂は、好ましくは、下記式(1)〜(5)で表される1価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物と、
モノイソシアネート、ポリイソシアネート、モノイソチオシアネート及びポリイソチオシアネートから選ばれる少なくとも1種の化合物と、
を反応させることを含む方法により得られる樹脂である。
本明細書では、上記式(1)で表される基を水酸基、上記式(2)で表される基をアミノ基、上記式(3)で表される基をヒドラジド基、上記式(4)で表される基をセミカルバジド基、上記式(5)で表される基をチオセミカルバジド基と称する場合がある。式(2)の基は、式(3)〜(5)の基とは異なる基として定義される。
以下、本実施の形態の好ましい第1の樹脂の製造方法の例について説明する。
[好ましく使用される化合物]
水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基及びチオセミカルバジド基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を2以上有する化合物は、特に限定されず、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH2)、ヒドラジド基(−C(=O)−NH−NH2)、セミカルバジド基(−NH−C(=O)−NH−NH2)、チオセミカルバジド基(−NH−C(=S)−NH−NH2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を2以上含んでいればよい。例えば、下記式(70)又は式(71)で表される化合物が用いられ得る。
(式中、
R12、R13及びR14は各々独立に有機基を表し、R15は有機基又は単結合を表し、A1及びE1は各々独立に、水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基からなる群から選ばれる基を表し、B1及びD1は各々独立に、水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基からなる群から選ばれる基、有機基、又は水素原子を表し、F1は水素原子又は有機基を表し、dは2〜1000の整数を表し、eは1〜3の整数を表し、xは1以上の整数を表し、yは0又は1以上の整数を表す。同一分子中の複数のR12、R13、R14、A1、E1、B1、D1、F1、及びeは、それぞれ同一でも異なってもよい。
上記式において、R12は好ましくは、炭素数1〜25の脂肪族基、芳香族基(芳香族化合物)で置換された炭素数7〜25の脂肪族基、又は、炭素数6〜25の芳香族基である。R12の具体例は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から1個の水素原子を除いた残基である。本明細書において、「芳香族基で置換された炭素数7〜25の脂肪族基」は、芳香族基及び脂肪族基の組み合わせからなる基であって、芳香族基及び脂肪族基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含むことがあり、当該基中に含まれる炭素原子の総数が7〜25である基を意味する。他の同様な用語も同様に定義される。
上記式において、R13及びR14は好ましくは、炭素数2〜25の脂肪族基、芳香族基で置換された炭素数7〜25の脂肪族基、又は炭素数8〜25の芳香族基である。R13及びR14の具体例は、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルエタン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルエタン、テトラメチルジフェニルエタン等から3個の水素原子を除いた残基である。
上記式において、R15は有機基又は単結合を表すが、有機基である場合は、炭素数1〜25のアルキレン基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基、又は下記式(72)もしくは式(73)で表される基である。
(式中、
R16、R17及びR18は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は単結合を表し、zは1〜10の整数を表す。)
R15が炭素数1〜25のアルキレン基又は炭素数6〜25の芳香族炭化水素基である場合、R15は、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、プロパン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から2個の水素原子を除いた残基である。
R15が単結合とは、R15は基として存在せずにR13にE1が結合することを表す。以下、本明細書中でいう「単結合」は同様に定義して使用している。
上記式(72)及び式(73)において、R16、R17及びR18は、好ましくは、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から2個の水素原子を除いた残基である。異性体が存在する場合は該異性体も含まれる。
上記式(71)において、B1、D1及びF1が有機基である場合、該有機基は、好ましくは、炭素数1〜25のアルキル基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基、又は下記式(74)〜(76)で表される基である。
(式中、
R19、R20、R21は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数6〜10の芳香族基を表し、zは1〜10の整数を表す。)
上記式(74)〜(76)において、R19、R20及びR21は好ましくは、炭素数1〜25のアルキレン基、又は炭素数6〜25の芳香族炭化水素基である。R19、R20及びR21は、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から2個の水素原子を除いた残基である。異性体が存在する場合は該異性体も含まれる。
水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基及びチオセミカルバジド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含む化合物の具体例を以下に示す。
(a)水酸基を有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、オペンタエリトリトール等の多価アルコール、及び繰り返し単位を有するポリオールが例示される。
ポリオールの例としては、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。アクリルポリオールは、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合させることにより得られる。
ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルである。
上記単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和アミド、及びメタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のビニル系単量体、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニル系単量体等が挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。ポリオールの統計的1分子が持つ水酸基数(以下、水酸基平均数)は2以上であることが好ましい。ポリオールの水酸基平均数が2以上であることによって、得られた塗膜の架橋密度の低下を抑制することができる。
ポリビニルアルコールとしては、ビニルエステルを重合して得られたポリビニルエステルをけん化して得られるポリビニルアルコール;ポリビニルアルコールの主鎖にコモノマーをグラフト共重合させた変性ポリビニルアルコール;ビニルエステルとコモノマーとを共重合させた変性ポリビニルエステルをけん化することにより製造された変性ポリビニルアルコール;未変性ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールの水酸基の一部をホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類で架橋した、いわゆるポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。
ポリビニルアルコールの製造に用いられる上記のビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これらの中でもポリビニルアルコールの製造の容易性、入手容易性、コスト等の点から、酢酸ビニルが好ましい。また、変性ポリビニルアルコールの製造に使用される上記のコモノマーは、主としてポリビニルアルコールの変性を目的に共重合されるものであり、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用される。このようなコモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸又はその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(異性体含む)、アクリル酸ブチル(異性体含む)、アクリル酸オクチル(異性体含む)、アクリル酸ドデシル(異性体含む)等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸又はその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(異性体含む)、メタクリル酸ブチル(異性体含む)、メタクリル酸オクチル(異性体含む)、メタクリル酸ドデシル(異性体含む)、メタクリル酸オクタデシル(異性体含む)等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその塩、N−メチロールアクリルアミド又はその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその塩、N−メチロールメタクリルアミド又はその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸又はその塩もしくはエステル;イタコン酸又はその塩もしくはエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等を挙げることができる。これらの中でもα−オレフィン(例えば、炭素数2〜30のα−オレフィン等)、不飽和カルボン酸又はその誘導体、不飽和スルホン酸又はその誘導体が好ましく、α−オレフィンがより好ましく、エチレンが特に好ましい。変性ポリビニルアルコールにおいてコモノマーによる変性量は変性ポリビニルアルコールを構成する全構造単位のモル数に基づいて15モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
以上に列挙したポリオールの中でも、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。
(b)アミノ基を有する化合物の具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、ビスアニリン等のジアミン類、ビスヘキサメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチレンヘキサミン、テトラプロピレンペンタミン等の3個以上のアミノ基を有する鎖状ポリアミン類、1,4,7,10,13,16−ヘキサアザシクロオクタデカン、1,4,7,10−テトラアザシクロデカン、1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン等の環状ポリアミン類、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、下記式(77)〜(80)で表されるポリアミン等のポリマー状ポリアミンが挙げられる。これらの中でも、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンが好ましい。なお、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンは、従来公知の方法で製造されたいずれのものも使用でき、重合度等は特に限定されない。また、他のモノマーとの共重合物でもよい。
(式中、
g’は2〜70の整数を表す。)
(式中、
h’は2〜40の整数を表し、
i’、j’は各々1〜6の整数を表し、i’とj’の和は2〜7の整数である。)
(式中、
R35は水素原子、メチル基及びエチル基からなる群から選ばれる基を表し、
sは0又は1の整数を表し、
r、t、uは各々0又は1以上の整数を表し、
rとtとuの和は5〜90である。)
(c)ヒドラジド基を有する化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水和物と反応させることにより得られるポリヒドラジド等が挙げられる。また、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等の重合物(共重合体であってもよい)にヒドラジンを反応させて得られるポリマーであってもよいし、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等)の重合物(共重合体であってもよい)にヒドラジンを反応させて得られるポリマーであってもよい。
(d)セミカルバジド基を有する化合物としては、例えば、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート又はそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジンを反応させて得られる多官能セミカルバジド等が挙げられる。
(e)チオセミカルバジド基を有する化合物としては、例えば、ビスチオセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソチオシアネートやイソホロンジイソチオシアネート等のジイソチオシアネート又はそれから誘導されるポリイソチオシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジンを反応させて得られる多官能チオセミカルバジド等が挙げられる。
水酸基を有する化合物の例として挙げたポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、フッ素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールであってもよい。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸の群から選ばれた二塩基酸の単独又は混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の群から選ばれた多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール、及び、例えば多価アルコールを用いたε−カプロラクトンの開環重合により得られるポリカプロラクトン類等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール類としては、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、エチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、及び、これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオール類などが含まれる。
多価ヒドロキシ化合物としては、
(1)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、
(2)エリスリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物、
(3)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、
(4)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類、
(5)ラフィトース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類、
(6)スタキオース等の四糖類、
などが挙げられる。
フッ素ポリオールは、分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば特開昭57−34107号公報、特開昭61−275311号公報で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体がある。
ポリカーボネートポリオール類としては、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートのような低分子カーボネート化合物と、前述のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオールとを、縮重合して得られるものが挙げられる。
ポリウレタンポリオールは、常法により、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得ることができる。カルボキシル基を有しないポリオールとしては、低分子量のものとして、エチレングリコール、プロピレングリコール等が例示され、高分子量のものとして、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が例示される。
水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基及びチオセミカルバジド基からなる群から選ばれる1つの基を1つ含む、繰り返し単位を有してもよい化合物は、下記式(81)で表される化合物である。
(式中、
R22は有機基を表し、
A1は上記式(70)で定義した基を表す。)
上記式においては、R22は好ましくは、炭素数1〜25の脂肪族基、炭素数7〜25の芳香族基で置換された脂肪族基、炭素数6〜25の芳香族基である。R22は具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から1個の水素原子を除いた残基である。異性体が存在する場合は該異性体も含まれる。
上記式(81)で表される化合物としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、ジメチルシクロヘキサノール、ジエチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール、トリメチルエチルシクロヘキサノール、ジシクロヘキシルメタノール、テトラメチルジシクロヘキシルメタノール、フェノール、メチルフェノール、キシレノール、エチルフェノール、ジエチルフェノール等のヒドロキシ化合物、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、フェニルアミン、メチルフェニルアミン、ジメチルフェニルアミン、エチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン等のアミン、エチルヒドラジド、プロピルヒドラジド、ブチルヒドラジド、ペンチルヒドラジド、ヘキシルヒドラジド、オクチルヒドラジド、デシルヒドラジド、ドデシルヒドラジド、シクロヘキシルヒドラジド、シクロオクチルヒドラジド、ジメチルシクロヘキシルヒドラジド、フェニルヒドラジド、メチルフェニルヒドラジド、ジメチルフェニルヒドラジド、エチルフェニルヒドラジド、ジエチルフェニルヒドラジド等のヒドラジド、エチルセミカルバジド、プロピルセミカルバジド、ブチルセミカルバジド、ペンチルセミカルバジド、ヘキシルセミカルバジド、オクチルセミカルバジド、デシルセミカルバジド、ドデシルセミカルバジド、シクロヘキシルセミカルバジド、シクロオクチルセミカルバジド、ジメチルシクロヘキシルセミカルバジド、フェニルセミカルバジド、メチルフェニルセミカルバジド、ジメチルフェニルセミカルバジド、エチルフェニルセミカルバジド、ジエチルフェニルセミカルバジド等のセミカルバジド、エチルチオセミカルバジド、プロピルチオセミカルバジド、ブチルチオセミカルバジド、ペンチルチオセミカルバジド、ヘキシルチオセミカルバジド、オクチルチオセミカルバジド、デシルチオセミカルバジド、ドデシルチオセミカルバジド、シクロヘキシルチオセミカルバジド、シクロオクチルチオセミカルバジド、ジメチルシクロヘキシルチオセミカルバジド、フェニルチオセミカルバジド、メチルフェニルチオセミカルバジド、ジメチルフェニルチオセミカルバジド、エチルフェニルチオセミカルバジド、ジエチルフェニルチオセミカルバジド等のチオセミカルバジドが挙げられる。
上記式(81)で表される化合物は、下記式(82)で表される化合物であってもよい。
(式中、
R23は炭素数1〜25の不飽和脂肪族炭化水素基を表し、
R15、E1は上記式(71)で定義した基を表す。)
上記式(82)で表される化合物は、より好ましくは、下記式(83)〜(85)で表される化合物である。
(式中、
R24、R25及びR26は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6の飽和炭化水素基を表し、
R27、R28、R29及びR30は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6の飽和炭化水素基を表し、
R31は炭素数1〜6の飽和炭化水素基又は単結合を表し、E1は上記式(71)で定義した基を表し、
wは1〜3の整数を表す。)
<イソチオシアネート化合物>
イソチオシアネート化合物は、1分子中にイソチオシアネート基を1以上有する化合物であり、モノイソチオシアネートと、ポリイソチオシアネートとに分類される。
本実施形態の樹脂組成物において、モノイソチオシアネートは1分子中にイソチオシアネート基を1つ有する化合物であり、好ましくは、下記式(30)で表される化合物である。
(式中、
R5は有機基を表す。)
上記式(30)において、R5は好ましくは、炭素数1〜25の脂肪族基又は炭素数6〜25の芳香族基である。R5は芳香族基で置換された炭素数7〜25の脂肪族基であってもよい。R5は、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から1個の水素原子を除いた残基である。異性体が存在する場合は該異性体も含まれる。
上記式(1)で表される化合物は具体的には、メタンイソチオシアネート、エタンイソチオシアネート、プロパンイソチオシアネート、ブタンイソチオシアネート、ペンタンイソチオシアネート、ヘキサンイソチオシアネート、オクタンイソチオシアネート、デカンイソチオシアネート、ドデカンイソチオシアネート、オクタデカンイソチオシアネート、シクロヘキサンイソチオシアネート、シクロオクタンイソチオシアネート、ジメチルシクロヘキサンイソチオシアネート、ジエチルシクロヘキサンイソチオシアネート、トリメチルシクロヘキサンイソチオシアネート、トリメチルエチルシクロヘキサンイソチオシアネート、ジシクロヘキシルメタンイソチオシアネート、テトラメチルジシクロヘキシルメタンイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、トルエンイソチオシアネート、キシレンイソチオシアネート、エチルベンゼンイソチオシアネート、ジエチルベンゼンイソチオシアネート、ジフェニルメタンイソチオシアネート、テトラメチルジフェニルメタンイソチオシアネート等が挙げられる。
上記式(30)で表される化合物は、下記式(86)で表される化合物であってもよい。
(式中、
R15、R23は、上記式(82)で定義した基を表す。)
上記式(30)で表される化合物は、より好ましくは、下記式(87)〜(89)で表される化合物である。
(式中、
R24、R25及びR26は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6の飽和炭化水素基を表し、
R27、R28、R29及びR30は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6の飽和炭化水素基を表し、
R31は炭素数1〜6の飽和炭化水素基又は単結合を表し、
wは1〜3の整数を表す。)
式(87)〜(89)で表される化合物の具体例として、アクリル酸イソチオシアナトメチル、メタクリル酸イソチオシアナトメチル、アクリル酸(2−イソチオシアナトエチル)、メタクリル酸(2−イソチオシアナトエチル)、アクリル酸(3−イソチオシアナトプロピル)、メタクリル酸(3−イソチオシアナトプロピル)、2−イソチオシアナトエチルビニルエーテル、4−イソチオシアナトブチルビニルエーテル、p−(イソシアナトメチル)スチレン、p−(イソシアナトエチルスチレン)等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物において、ポリイソチオシアネートは1分子中にイソチオシアネート基を2つ以上有する化合物であり、例えば、下記式(32)で表される化合物である。
(式中、
R6は有機基を表し、
aは2〜1000の整数を表す。)
このようなポリイソチオシアネートの好ましい第1の態様は、下記式(33)で表される繰り返し単位を少なくとも2つ含むポリマーである。
(式中、
R7は有機基を表し、
R7は有機基又は単結合を表し、
bは1以上の整数を表し、
gは1又は2を表す。同一分子中の複数のR7、R8、b及びgはそれぞれ同一でも異なってもよい。)
ここに記載するポリイソチオシアネートの好ましい第1の態様としてのポリマーは、上記式(33)で表される繰り返し単位以外の、1種又は複数種の繰り返し単位を有してもよい。該ポリマーの末端は、重合開始剤、重合停止剤、末端変性剤に由来する基であり製造方法によって異なるが、本実施形態の趣旨に反しない限りは特に限定されない。すなわち、ポリイソチオシアネートの好ましい第1の態様は、より好ましくは、下記式(90)で表される化合物である。
(式中、
R32は有機基を表し、
R33は有機基又は単結合を表し、
B2及びD2は各々独立にイソチオシアネート基、イソチオシアネート基以外の有機基及び水素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、
G1〜Gxはイソチオシアネート基を含んでも含まなくてもよい有機基を表し、xは1以上の整数であり、nxは1以上の整数を表し、
gは1又は2を表し、
fは1以上の整数を表し、
mは2以上の整数を表す。同一分子中の複数のR32、R33、f及びgはそれぞれ同一でも異なってもよい。)
上記式(90)において、G1〜Gxは上記式(33)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を表す。また、nxはGxの繰り返し単位の数を表す。例えば、上記式(43)で表される繰り返し単位以外に、G1、G2、G3の3種の繰り返し単位がそれぞれn1、n2、n3存在する場合は、G1n1G2n2G3n3である。
上記式(90)において、R32は好ましくは、炭素数2〜25の脂肪族基、炭素数7〜25の芳香族化合物で置換された脂肪族基又は炭素数8〜25の芳香族基である。R32の具体例は、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルエタン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルエタン、テトラメチルジフェニルエタン、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、ジメチルシクロヘキサノール、ジエチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール、トリメチルエチルシクロヘキサノール、ジシクロヘキシルエタノール等から3個の水素原子を除いた残基である。
上記式(90)において、R33は有機基又は単結合を表すが、有機基である場合は、炭素数1〜25のアルキレン基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基、又は、下記式(91)、もしくは式(92)で表される基である。
(式中、
R34、R36及びR37は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は単結合を表し、
lは1〜10の整数を表す。)
R34が炭素数1〜25のアルキレン基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基である場合、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から2個の水素原子を除いた残基である。
上記式(91)、(92)において、R34、R36及びR37は好ましくは、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から2個の水素原子を除いた残基である。なお、異性体が存在する場合は該異性体も含まれる。
上記式(90)において、B2及びD2が有機基である場合、該有機基は好ましくは、炭素数1〜25のアルキル基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基、又は、下記式(93)〜(95)で表される基である。
(式中、
R38、R39及びR40は各々独立に、炭素数1〜25のアルキレン基又は炭素数6〜25の芳香族基を表し、
pは1〜10の整数を表す。)
上記式(93)〜(95)において、R38、R39及びR40は好ましくは、炭素数1〜25のアルキレン基、炭素数6〜25の芳香族炭化水素基であり、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から2個の水素原子を除いた残基である。なお、異性体が存在する場合は該異性体も含まれる。
以上に示したポリイソチオシアネートの第1の態様は、例えば上記式(41)で表されるモノイソチオシアネートの重合体であってもよく、該重合体は他のモノマーとの共重合体であってもよい。具体的には、アクリル酸イソチオシアナトメチルをアクリル酸メチルの共重合体、メタクリル酸イソチオシアナトメチルとメタクリル酸メチルの共重合体、アクリル酸(2−イソチオシアナトエチル)とアクリル酸メチルの共重合体、メタクリル酸(2−イソチオシアナトエチル)とメタクリル酸メチルの共重合体、アクリル酸(3−イソチオシアナトプロピル)とアクリル酸メチルの共重合体、メタクリル酸(3−イソチオシアナトプロピル)とメタクリル酸メチルの共重合体等が挙げられる。これらの化合物は公知の方法で製造することができる。
本実施形態の樹脂組成物において、ポリイソチオシアネートの第2の態様は、下記式(40)で表される構成単位と、下記式(41)〜(47)で表される単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位と、を有し、ポリイソチオシアネートを構成する窒素原子が、炭素原子と結合しているポリイソチオシアネートである。
(式中、
R3は各々独立に有機基を表し、
R4は脂肪族基若しくは芳香族基又は脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基を表し、
複数あるR3及びR4は同一であっても異なっていてもよく、
X3は酸素原子又は硫黄原子を表す。)
上記式(40)、式(41)〜(47)において、R3は好ましくは、炭素数1〜25の脂肪族基、炭素数6〜25の芳香族基である。R3は、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から2個の水素原子を除いた残基である。異性体が存在する場合は該異性体も含まれる。
上記式(43)、式(45)に含まれる基−X3−R4について説明する。
後述するが、本発明のポリイソチオシアネートの製造において、上記式(43)で表されるN,N’−ジ置換ジチオアロファン酸結合や、上記式(45)で表される、N−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル基(X3が酸素原子の場合)又はN−置換−S−置換ジチオカルバミン酸エステル基(X3が硫黄原子の場合)を生成させる際には、ヒドロキシ化合物又はチオール類を用いる。基−X3−R4は、このヒドロキシ化合物又はチオール類に由来する基であり、ヒドロキシ化合物を用いる場合、X3は酸素原子、チオール類を用いる場合、X3は硫黄原子である。
R4は炭化水素基であり得る。前記炭化水素基は、脂肪族基及び芳香族基のうち少なくとも一方を有し、炭素原子の他に酸素原子及び窒素原子等を含んでも構わない。R4は、脂肪族基又は芳香族基であり、好ましくは、炭素数1〜22の脂肪族基又は炭素数6〜22の芳香族基であり、より好ましくは、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数1〜22の芳香族基、又は炭素数1〜22の脂肪族基と炭素数6〜22の芳香族基が結合した炭素数7〜22の基である。R4の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、ジブチルシクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、クミルフェニル基、ジメチルフェニル基等が挙げられる。
本実施形態におけるポリイソチオシアネートは、本実施形態のポリイソチオシアネートの1種である下記式(33)に示す化合物を、更に重合させることによって得られるポリイソチオシアネートであってもよい。
(式中、
R3は有機基を表す。)
上記式(33)におけるR3は好ましくは、炭素数1〜25の脂肪族基、炭素数6〜25の芳香族基である。R3の具体例は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から2個の水素原子を除いた残基である。異性体が存在する場合は該異性体も含まれる。R3は、より好ましくは、下記式(300)〜(306)で表される基である。
(式中、iは1〜12の整数を表し、1〜10であってもよい。)
上記式(33)で表される化合物として、更に好ましくは、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、イソホロンジイソチオシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソチオシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソチオシアネート、トルエンジイソチオシアネート(各異性体)、ナフタレンジイソチオシアネート(各異性体)等を挙げることができる。
上記式(33)で表される化合物として、フェニレンジイソチオシアネート、4,4’−ジイソチオシアナトジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−イソチオシアナトフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジイソチオシアナトジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジイソチオシアネート等を挙げることもできる。
以下、上記式(33)で表される化合物を重合させることによって得られる樹脂(ポリイソチオシアネート)について記載する。なお、以下の記載では、上記式(33)で表される化合物を、重合させる前の化合物という意味で「単量体」と記載する場合がある。
上記式(33)で表される「単量体」の重合によって製造されるポリイソチオシアネートは、その製造の際に、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール類を副原料として使用することができる。
ヒドロキシ化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、メチルシクロペンタノール、エチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール、プロピルシクロヘキサノール、ブチルシクロヘキサノール、ペンチルシクロヘキサノール、ヘキシルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、ジエチルシクロヘキサノール、ジブチルシクロヘキサノール、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ジメチルフェノール、メチルエチルフェノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、メチルペンチルフェノール、ジエチルフェノール、エチルプロピルフェノール、エチルブチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジクミルフェノール、トリメチルフェノール、トリエチルフェノール、ナフトール等が挙げられる。
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステル、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール等の低分子量化合物及び分子量約200〜10,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどを用いることもできる。
チオール類としては、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロヘプタンチオール、シクロオクタンチオール、メチルシクロペンタンチオール、エチルシクロペンタンチオール、メチルシクロヘキサンチオール、エチルシクロヘキサンチオール、プロピルシクロヘキサンチオール、ブチルシクロヘキサンチオール、ペンチルシクロヘキサンチオール、ヘキシルシクロヘキサンチオール、ジメチルシクロヘキサンチオール、ジエチルシクロヘキサンチオール、ジブチルシクロヘキサンチオール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、プロピルチオフェノール、ブチルチオフェノール、ペンチルチオフェノール、ヘキシルチオフェノール、オクチルチオフェノール、ノニルチオフェノール、クミルチオフェノール、ジメチルチオフェノール、メチルエチルチオフェノール、メチルプロピルチオフェノール、メチルブチルチオフェノール、メチルペンチルチオフェノール、ジエチルチオフェノール、エチルプロピルチオフェノール、エチルブチルチオフェノール、ジプロピルチオフェノール、ジクミルチオフェノール、トリメチルチオフェノール、トリエチルチオフェノール、チオナフトール等が挙げられる。
ヒドロキシ化合物を使用する場合、上記ヒドロキシ化合物と上記式(33)で表される「単量体」のイソチオシアネート基/水酸基当量比は、10〜100程度の値から目的に応じ選択される。チオール類を使用する場合も同様に、イソチオシアネート基/チオール基当量比は、10〜100程度の値から目的に応じて選択される。
式(33)の単量体の重合反応によって、式(41)で表されるイソチオシアヌレート基が形成され得る。式(41)で表されるイソチオシアヌレート基を形成するためのイソチオシアヌレート化触媒としては、好ましくは第4級アンモニウム塩、より好ましくは第4級アンモニウムヒドロキシド、第4級アンモニウムカルボン酸、更に好ましくは第4級アンモニウムカルボン酸である。具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、酢酸テトラメチルアンモニウム塩、酢酸テトラエチルアンモニウム塩、酢酸テトラブチルアンモニウム塩等の有機弱酸塩などが挙げられる。酢酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の金属塩なども使用できるが、使用量が低減できる観点から有機弱酸塩などが好ましい。
上記イソチオシアヌレート化触媒を希釈するヒドロキシ化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、グリセリン、シクロヘキサノール等のアルコール性ヒドロキシ化合物、フェノール、クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール等のフェノール性ヒドロキシ化合物が挙げられる。これらから得られるポリイソシアネートの結晶性の観点から、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール等の側鎖を有するアルコールが好ましい。また、2種類以上を混合してもよい。なお、該ヒドロキシ化合物に代えてチオール類を使用してもよい。
上記式(33)で表される単量体を、又は、イソチオシアネート基をヒドロキシ化合物でウレタン化した単量体を、上述のイソチオシアヌレート化触媒の存在下で反応させるに際し、上記ヒドロキシ化合物で希釈されたイソチオシアヌレート化触媒の濃度は1〜20質量%で行う。濃度は、好ましくは、1〜10質量%である。濃度が1質量%以上であれば、イソチオシアヌレート化触媒に同伴するヒドロキシ化合物の量が多くなりすぎず、得られるポリイソチオシアネート及び、これで形成される塗膜の物性が低下しにくい。濃度が20質量%以下であれば、同伴するヒドロキシ化合物の助触媒効果が低下せず、その結果、イソチオシアヌレート化触媒の使用量の増加やポリイソチオシアネートの着色等が起こりにくい。
上記式(33)で表される単量体等の原料に微量含まれている酸性成分によりイソチオシアヌレート化触媒が失活する場合を除き、イソチオシアヌレート化触媒の使用量は、単量体ジイソチオシアネートの重量に対し1ppm〜10%、好ましくは10ppm〜5%である。この量が1ppm以上であれば、イソチオシアヌレート化触媒としての機能が充分に発揮できる。この量が3%以下であれば、イソチオシアヌレート化触媒を失活するための酸性リン酸化合物及び酸性リン酸エステル化合物(後述する)の添加量が少なくなる。
反応時、溶媒は使用してもしなくてもよいが、イソチオシアネート基と反応活性を持たない溶媒を使用することにより、反応の制御がより容易になる。
溶媒の例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル又はエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素類などが使用可能である。もちろん、2種類以上の溶媒を混合使用することも可能である。
イソチオシアヌレート化反応は、30℃〜120℃、好ましくは50℃〜100℃で行われる。反応の進行は反応液の1H−NMR分析により確認することができる。
反応が所望の転化率に達した時点で、反応停止剤の投入により触媒を失活させて反応を停止する。転化率は10〜60%の範囲で選定するのが適当であり、好ましくは10〜30%である。低い転化率では、より低い粘度のポリイソチオシアネートを得ることが可能であるが、生産性の点から転化率10%以上が好ましい。一方、転化率60%以下であれば、ポリイソチオシアネートの粘度が高くなりすぎず好ましい。
転化率は下記式で求めることができる。
1H−NMRチャートにおいて、テトラメチルシランのメチル基のピークを0ppmとし、3.5ppmのピークの積分値(A)と4.8ppmのピークの積分値(B)とから次式により転化率を算出する。
転化率(%)=B/(A+B)×100
イソチオシアヌレート化反応の停止剤として、酸性リン酸化合物及び酸性リン酸エステル化合物の1種以上の化合物を用いる。
酸性リン酸化合物は、無機酸であり、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、二亜リン酸、次リン酸、ピロリン酸、ペルオキソリン酸等が挙げられる。酸性リン酸化合物は、好ましくは、リン酸である。
酸性リン酸エステル化合物は、酸性基とエステル基を有する化合物であり、例えば、炭素数2〜8のモノアルキルホスフェート、モノアルキルホスファイト、又は、炭素数4〜16のジアルキルホスフェート、ジアルキルホスファイト、又は、ジラウリルホスフェート、ジフェニルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノフェニルホスフェート、ジラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、モノラウリルホスファイト、モノフェニルホスファイト等が挙げられる。酸性リン酸エステル化合物は、好ましくは、炭素数3〜8のモノアルキルホスフェート、又は、炭素数6〜16のジアルキルホスフェート、より好ましくは、ジオクチルホスフェート、モノオクチルホスフェートである。これらのうち、酸性リン酸化合物を使用することが好ましい。酸性リン酸化合物の添加量は、イソチオシアヌレート化触媒の化学量論量に対し1〜10当量が好ましく、1〜6当量が更に好ましい。添加量が1当量以上であれば、充分にイソチオシアヌレート化触媒を失活することができる。添加量が10当量以下であれば、発生する不溶物のろ過が困難となることもなく好ましい。
本実施形態のポリイソチオシアネートは、下記式(96)〜(99)で表される化合物であってもよい。
(式中、
h’は2〜40の整数を表し、
i’、j’は各々1〜6の整数を表し、i’とj’の和は2〜7の整数である。)
(式中、
kは1〜4の整数を表す。)
(式中、
R35は水素原子、メチル基、エチル基からなる群から選ばれる基を表し、
sは0又は1の整数を表し、
r、t、uは各々0又は1以上の整数を表し、rとtとuの和は5〜90である。)
(式中、
vは2〜70の整数を表す。)
[反応方法]
本実施形態の、水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基及びチオセミカルバジド基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物と、イソチオシアネート(モノイソチオシアネートであってもポリイソチオシアネートであってもよい)とを反応させる方法について説明する。
本実施形態の樹脂組成物は、
1.水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基及びチオセミカルバジド基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を2以上有する化合物と、モノイソチオシアネートとを反応させて得られる樹脂、
2.水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基及びチオセミカルバジド基からなる群から選ばれる1種の基を1つ有する化合物と、ポリイソチオシアネートとを反応させて得られる樹脂、
3.水酸基、アミノ基、ヒドラジド基、セミカルバジド基及びチオセミカルバジド基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を2以上有する化合物と、ポリイソチオシアネートとを反応させて得られる樹脂、
のいずれも含有することができる。いずれも反応させる官能基の組み合わせは同じであり、ここに記載する方法に準拠して行うことができる。
以下の説明では反応を分かりやすくするため反応式を示し、該反応式は単官能化合物を例に記載するが、多官能化合物においても同様の反応が進行することは言うまでもない。
[水酸基を有する化合物との反応]
水酸基を有する化合物とイソチオシアネートとの反応は、下記式(100)で表される。
(式中、R41、R42は各々独立に有機基を表す。)
反応は、溶媒存在下でも溶媒非存在下でも実施することができる。溶媒存在下で行う場合に用いる溶媒は、水酸基とイソチオシアネート基に対して不活性な溶媒、又は、イソチオシアネート基と反応するが目的とする反応に対して速度が極めて遅い溶媒が好ましい。好ましい溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン等の炭化水素化合物;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、オクチルエーテル、ノニルエーテル、デシルエーテル、ドデシルエーテル、テトラデシルエーテル、ペンタデシルエーテル、ヘキサデシルエーテル、オクタデシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の炭化水素化合物がエーテル結合を介して結合したエーテル類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジヘキシルスルフィド、オクチルスルフィド、ノニルスルフィド、デシルスルフィド、ドデシルスルフィド、テトラデシルスルフィド、ペンタデシルスルフィド、ヘキサデシルスルフィド、オクタデシルスルフィド、ノナデシルスルフィド等の炭化水素化合物がチオエーテル結合を介して結合したチオエーテル類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルエタン、(メチルフェニル)フェニルエタン、ジメチルビフェニル、ベンジルトルエン等の芳香族炭化水素化合物;ジフェニルエーテル、ジ(メチルベンジル)エーテル、ジ(エチルベンジル)エーテル、ジ(ブチルベンジル)エーテル、ジ(ペンチルベンジル)エーテル、ジ(ヘキシルベンジル)エーテル、ジ(オクチルベンジル)エーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル等の芳香族炭化水素化合物がエーテル結合を介して結合した芳香族エーテル類;ジフェニルスルフィド、ジ(メチルベンジル)スルフィド、ジ(エチルベンジル)スルフィド、ジ(ブチルベンジル)スルフィド、ジ(ペンチルベンジル)スルフィド、ジ(ヘキシルベンジル)スルフィド、ジ(オクチルベンジル)スルフィド、ジ(メチルフェニル)スルフィド、ジベンジルスルフィド等の芳香族炭化水素化合物がチオエーテル結合を介して結合した芳香族チオエーテル類;メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ブトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン、ジエトキシベンゼン、ジブトキシベンゼン等の炭化水素化合物と芳香族炭化水素化合物とがエーテル結合を介して結合した化合物;クロロメタン、クロロエタン、クロロペンタン、クロロオクタン、ブロモメタン、ブロモエタン、ブロモペンタン、ブロモオクタン、ジクロロエタン、ジクロロペンタン、ジクロロオクタン、ジブロモエタン、ジブロモペンタン、ジブロモオクタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン等のハロゲン化物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;水を挙げることができる。
反応温度は特に限定されないが、0℃〜300℃の範囲で行うことができる。反応時間は任意の反応時間を設定でき、例えば、赤外分光計でイソチオシアネート基の残存量を追跡し、所望の残存量になったところで反応を停止してもよい。
一般的には、水酸基とイソチオシアネート基との反応は遅いため、触媒を使用してもよい。触媒としては、ルイス酸及びルイス酸を生成する遷移金属化合物、有機スズ化合物、銅族金属、亜鉛、鉄族金属の化合物である。触媒の具体例として、AlX3、TiX3、TiX4、VOX3、VX5、ZnX2、FeX3、SnX4(ここでXは、ハロゲン、アセトキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基である)で表されるルイス酸及びルイス酸を生成する遷移金属化合物;(CH3)3SnOCOCH3、(C2H5)SnOCOC6H5、Bu3SnOCOCH3、Ph3SnOCOCH3、Bu2Sn(OCOCH3)2、Bu2Sn(OCOC11H23)2、Ph3SnOCH3、(C2H5)3SnOPh、Bu2Sn(OCH3)2、Bu2Sn(OC2H5)2、Bu2Sn(OPh)2、Ph2Sn(CH3)2、(C2H5)3SnOH、PhSnOH、Bu2SnO、(C8H17)2SnO、Bu2SnCl2、BuSnO(OH)等で表される有機スズ化合物;CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、CuI2、Cu(OAc)2、Cu(acac)2、オレフィン酸銅、Bu2Cu、(CH3O)2Cu、AgNO3、AgBr、ピクリン酸銀、AgC6H6ClO4等の銅族金属の化合物;Zn(acac)2等の亜鉛の化合物;Fe(C10H8)(CO)5、Fe(CO)5、Fe(C4H6)(CO)3、Co(メシチレン)2(PEt2Ph2)、CoC5F5(CO)7、フェロセン等の鉄族金属の化合物などが挙げられる(Buはブチル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトンキレート配位子を表す。)。
[アミノ基を有する化合物との反応]
アミノ基を有する化合物とイソチオシアネートとの反応は、下記式(101)で表される。
(式中、R41、R42は上記式(100)で定義した基である。)
反応は、溶媒存在下でも溶媒非存在下でも実施することができる。溶媒存在下で行う場合に用いる溶媒は、アミノ基とイソチオシアネート基に対して不活性な溶媒、又は、イソチオシアネート基と反応するが目的とする反応に対して速度が極めて遅い溶媒が好ましい。好ましい溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン等の炭化水素化合物;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、オクチルエーテル、ノニルエーテル、デシルエーテル、ドデシルエーテル、テトラデシルエーテル、ペンタデシルエーテル、ヘキサデシルエーテル、オクタデシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の炭化水素化合物がエーテル結合を介して結合したエーテル類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジヘキシルスルフィド、オクチルスルフィド、ノニルスルフィド、デシルスルフィド、ドデシルスルフィド、テトラデシルスルフィド、ペンタデシルスルフィド、ヘキサデシルスルフィド、オクタデシルスルフィド、ノナデシルスルフィド等の炭化水素化合物がチオエーテル結合を介して結合したチオエーテル類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルエタン、(メチルフェニル)フェニルエタン、ジメチルビフェニル、ベンジルトルエン等の芳香族炭化水素化合物;ジフェニルエーテル、ジ(メチルベンジル)エーテル、ジ(エチルベンジル)エーテル、ジ(ブチルベンジル)エーテル、ジ(ペンチルベンジル)エーテル、ジ(ヘキシルベンジル)エーテル、ジ(オクチルベンジル)エーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル等の芳香族炭化水素化合物がエーテル結合を介して結合した芳香族エーテル類;ジフェニルスルフィド、ジ(メチルベンジル)スルフィド、ジ(エチルベンジル)スルフィド、ジ(ブチルベンジル)スルフィド、ジ(ペンチルベンジル)スルフィド、ジ(ヘキシルベンジル)スルフィド、ジ(オクチルベンジル)スルフィド、ジ(メチルフェニル)スルフィド、ジベンジルスルフィド等の芳香族炭化水素化合物がチオエーテル結合を介して結合した芳香族チオエーテル類;メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ブトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン、ジエトキシベンゼン、ジブトキシベンゼン等の炭化水素化合物と芳香族炭化水素化合物とがエーテル結合を介して結合した化合物;クロロメタン、クロロエタン、クロロペンタン、クロロオクタン、ブロモメタン、ブロモエタン、ブロモペンタン、ブロモオクタン、ジクロロエタン、ジクロロペンタン、ジクロロオクタン、ジブロモエタン、ジブロモペンタン、ジブロモオクタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン等のハロゲン化物;水を挙げることができる。
反応温度は特に限定されないが、−50℃〜250℃の範囲で行うことができる。反応時間は任意の反応時間を設定でき、例えば、赤外分光計でイソチオシアネート基の残存量を追跡し、所望の残存量になったところで反応を停止してもよい。
一般的には、アミノ基とイソチオシアネート基との反応は速いため、触媒を使用する必要はないが、使用すること自体は否定されない。触媒としては、上記[水酸基を有する化合物との反応]で挙げた触媒が使用できる。
[ヒドラジド基、セミカルバジド基又はチオセミカルバジド基を有する化合物との反応]
ヒドラジド基、セミカルバジド基又はチオセミカルバジド基を有する化合物とイソチオシアネートとの反応は、用いる化合物によっても種々の反応が生起し得るが、例えば下記式(102)で表される反応が挙げられる。
(式中、
R41、R42は、上記式(100)で定義した基であり、
Yは−NH−基又はCH2−基を表し、
Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
ヒドラジド基、セミカルバジド基又はチオセミカルバジド基を有する化合物とイソチオシアネートとの反応は、溶媒存在下でも溶媒非存在下でも実施することができる。溶媒存在下で行う場合に用いる溶媒は、上記[水酸基を有する化合物との反応]で挙げた溶媒の他、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類も使用することができる。
反応温度は特に限定されないが、0℃〜300℃の範囲で行うことができる。反応時間は任意の反応時間を設定でき、例えば、赤外分光計でイソチオシアネート基の残存量を追跡し、所望の残存量になったところで反応を停止してもよい。
反応は触媒の存在下、非存在下のどちらで行ってもよい。触媒を使用する場合、上記[水酸基を有する化合物との反応]で挙げた触媒を使用することができる。
ヒドラジド基又はセミカルバジド基を有する化合物とイソチオシアネートとの反応の場合は、更に加熱処理を行うことも好ましい。該加熱処理により、樹脂組成物の剛性、硬度、加工性、耐衝撃性、曲げ疲労性等の機械的特性が改善する効果を奏する場合がある。このような効果を奏する機構は明確ではないが、本発明者らは、加熱処理によって、例えば、上記式(102)右辺の結合が下記式(103)や式(104)で表される反応によって分子鎖中に環構造を形成することによるのではないかと推測している。
(式中、
R41、R42、Y、Zは上記式(102)で定義した基である。)
本実施形態の樹脂の好ましい態様の1つは、下記式(6)〜(8)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位を2以上有する樹脂である。
(式中、
Y1は有機基を表し、−NH−基であってもよい。)
Y1は、好ましくは、炭素数1〜12の脂肪族基、又は炭素数6〜12の芳香族基である。炭素数1〜12の脂肪族基としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の炭化水素化合物から誘導される2価の基、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の環状炭化水素基を有する化合物から誘導される2価の基、及び、ベンゼン、メチルベンゼン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、ヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物から誘導される2価の基が挙げられる。
いくつかの態様に係る樹脂は、上記式(6)〜(8)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を、主鎖骨格中に有する。例えば、樹脂が、下記式(105)〜(108)で表される構成単位を有している。
(式中、
R43は有機基を表し、
複数あるR43は同じであっても異なっていてもよく、
Jは上記式(6)、(7)又は(8)で表される2価の基を表し、同一分子中の複数のR43及びJは同一でも異なってもよい。)
上記R43は、好ましくは、炭素数2〜25の脂肪族基、炭素数7〜25の芳香族化合物で置換された脂肪族基又は炭素数8〜25の芳香族基である。R43の具体例としては、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルエタン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルエタン、テトラメチルジフェニルエタン、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、ジメチルシクロヘキサノール、ジエチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール、トリメチルエチルシクロヘキサノール、ジシクロヘキシルエタノール等から3個の水素原子を除いた残基が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物は、更に好ましくは、下記式(109)で表される樹脂を含有する。
(式中、
K1〜Kcは各々独立に、
上記式(6)〜(8)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、
L1〜Lcは各々独立に、式(6)〜(8)からなる群から選ばれる基を含んでも含まなくてもよい有機基を表し、cは1以上の整数を表し、
M1及びM2は各々独立に、イソチオシアネート基を含んでも含まなくてもよい有機基を表し、
wcは1以上の整数を表す。)
上記式(109)において、wcはKc−Lcの繰り返し単位の数を表す。例えば、K1−L1及びK2−L2の2種の繰り返し単位からなる樹脂の場合、上記式(109)は、下記式(110)で表される。
上記式(6)〜(8)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位を2以上有する樹脂を含有する樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、ヒドラジド基、セミカルバジド基又はチオセミカルバジド基を有する化合物とイソチオシアネートとの反応によって製造することができる。
ヒドラジド基、セミカルバジド基又はチオセミカルバジド基を有する化合物とイソチオシアネートとの反応は、溶媒存在下でも溶媒非存在下でも実施することができる。溶媒存在下で行う場合に用いる溶媒は、上記[水酸基を有する化合物との反応]で挙げた溶媒の他、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類も使用することができる。
反応温度は特に限定されないが、0℃〜300℃の範囲で行うことができる。反応時間は任意の反応時間を設定でき、例えば、赤外分光計でイソチオシアネート基の残存量を追跡し、所望の残存量になったところで反応を停止してもよい。
反応は触媒の存在下、非存在下のどちらで行ってもよい。触媒を使用する場合、上記[水酸基を有する化合物との反応]で挙げた触媒を使用することができる。
反応を実施する際に使用する反応装置は、特に制限がなく、公知の反応器が使用できる。反応装置として、例えば、撹拌槽、加圧式撹拌槽、減圧式撹拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等の従来公知の反応器を適宜組み合わせて使用できる。反応器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。反応器の材質として、例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングを行ったものも使用できる。SUS304、SUS316、SUS316L等が安価であり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計等の計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してよく、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法で行えばよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等公知の方法が使用できる。必要に応じて工程を付加することもできる。
このような方法によって、上記式(6)〜(8)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位を含む樹脂を含有する改質された樹脂組成物を製造することもできるが、反応条件によっては、目的とする樹脂が得られない場合もある。そのような場合は、次に示す加熱処理を更に実施することによって、目的とする樹脂を製造することもできる。
加熱処理は、好ましくは、100℃〜300℃の範囲、より好ましくは150℃〜250℃の範囲で行われる。加熱処理は、大気下でも、不活性ガス雰囲気下でも行うことができるが、好ましくは不活性ガス雰囲気下で実施される。ここでいう不活性ガスとは、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン等の気体を指す。また、圧力は加圧でも減圧でも大気圧でもよい。加熱処理を行う時間は特に限定されず、1分〜500時間の範囲で行うことができ、例えば、赤外分光計を使用して上記式(6)〜(8)で表される基の生成量を追跡し、所望量になったところで加熱を停止してもよい。
上述した製造方法では、種々の反応ルートによって上記式(6)〜(8)で表される基が生成していると考えられるが、例えば、下記式(111)による反応、次いで、下記式(111)における右辺の化合物が下記式(112)又は式(113)によって環構造を形成する反応が生じていると推測される。
(式中、
R41及びR42は上記式(100)で定義した基であり、
Yは−NH−基又は有機基を表し、
Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
本実施の形態の改質された樹脂組成物は、単独で用いてもよいし、他の樹脂と混合することも好ましい。混合する他の樹脂は、どのような樹脂であってもよく公知の種々の樹脂が使用できる。
本実施の形態の改質された樹脂組成物は、公知の種々の用途に使用できるが、中でも、金属、ガラス及びプラスチックからなる群から選ばれる少なくとも1種の材質表面で形成させる、塗膜材としての用途は好適である。また、本実施の形態の樹脂組成物は、水に対して安定な官能基の反応により形成されることから、水系塗料への使用も好ましい。
本実施の形態の改質された樹脂組成物は、分子鎖中に硫黄原子を含有することで、金属表面への密着性改善効果が大きい。したがって、樹脂組成物は、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装等に、美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性、密着性等を付与するために好適に用いられ得る。
≪オキサゾリジンチオン≫
<好ましい構造>
本実施の形態で好ましい第2の樹脂は、下記式(10)で表される分子鎖を含む樹脂である。
(式中、
P1は脂肪族基及び/又は芳香族基を表し、Q1は下記式(11)、(12)、(13)又は(14)で表される2価の基からなる群より選択される1種以上の構成単位を表し、複数あるP1及びQ1は同一でも異なってもよく、nは2以上の整数を表す。)
式中、R1は、脂肪族基又は芳香族基を表し、X2及びY2は各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、同一分子中の複数のR1、X2及びY2はそれぞれ同一でも異なってもよい。一つのQ1中のX2及びY2のうち1つ以上が硫黄原子である。言い換えると、一つのQ1は、1つ以上の硫黄原子を含む。
該樹脂を構成する上記式(11)〜(14)で表される構造は、驚くべきことに、密着性、殊に金属表面への密着性に優れる。このような効果を奏する機構については明らかではないが、本発明者らは、該結合に含まれる硫黄原子又は酸素原子が密着性を高める効果を奏するのではないかと推測している。
このように、本実施の形態の樹脂は、その分子中に含まれる結合様式に特徴があり、該結合以外の骨格構造は特に限定されないが、より好ましい形態は以下の通りである。
樹脂の数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは5000以上である。一般的には高分子量の方が、耐熱性が良好となる傾向にあるが、一方で、あまりに高分子量である場合には、塗膜を形成する際の取り扱い性(他の成分との混和性、流動性、展性等)の面で不利となる場合があることから、数平均分子量は好ましくは100万以下、より好ましくは50万以下、更に好ましくは20万以下である。ここでいう数平均分子量は、排除限界分子量1000万以上のカラムを少なくとも1つ具備するゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して測定し、ポリスチレン等の標準物質を用いて保持時間を分子量に換算することで計算した値である。当業者であれば容易に数平均分子量を求めることができる。溶媒に由来するピークは除いて計算する。
耐熱性の発現に寄与する結合の含有量は、上記した数平均分子量Mnとも相関する。1分子あたりに含まれる窒素−炭素−硫黄結合を構成する硫黄原子及び窒素−炭素−酸素結合を構成する酸素原子の数n1で樹脂の数平均分子量を除した値(Mn/n1)が、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。本実施の形態の樹脂組成物は、上記したように金属との密着性の面においても効果を奏するが、そのような効果を発現する観点からも、樹脂が1分子あたりに多くの上記結合を有していることが好ましい。一方で、樹脂があまりに多くの上記結合を有している場合、特に、樹脂が上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(41)、(42)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を有する場合、塗膜性能の一つである柔軟性が損なわれる場合もある。そのような観点から、(Mn/n1は好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。n1は、例えば、樹脂単位重量(1g)あたりの当該結合の数X1(単位mol/g)を、例えば赤外線吸収スペクトルや1H−NMR等によって求め、上記した数平均分子量(Mn)から、式:n1=Mn・X1によって算出することができる。樹脂が窒素−炭素−硫黄結合及び窒素−炭素−酸素結合の両方を含む場合、n1はそれぞれの結合を構成する硫黄原子及び酸素原子の合計数である。
上記式(11)〜(14)におけるR1は、脂肪族基又は芳香族基である。炭化水素基は脂肪族基、芳香族基のうち少なくとも1種以上有し、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子等があっても構わない。脂肪族基は、炭素数1〜22の脂肪族基が好ましく、炭素数1〜18の脂肪族基がより好ましい。芳香族基は炭素数6〜22の芳香族基が好ましく、炭素数6〜15の芳香族基がより好ましい。炭素数1〜5の脂肪族基と炭素数6〜15の芳香族基が結合した炭素数7〜20の基も好ましい。
R1の具体例は、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等の直鎖炭化水素基;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)アルカン等の無置換の脂環式炭化水素由来の基;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のアルキル置換シクロヘキサン由来の基;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換シクロヘキサン由来の基;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換シクロヘキサン由来の基;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換ベンゼン;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換ベンゼン;ジフェニルアルカン、ベンゼン等の芳香族炭化水素由来の基等が挙げられる。
これらの中でも、ヘキサン、ベンゼン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレン、メチルシクロヘキサン、イソホロン又はジシクロヘキシルメタン由来の基が好ましい。「由来の基」とは、その化合物から2個の水素原子を除いた構造の基を示す。
あるいは、R1は、好ましくは、炭素数1〜25の脂肪族基、炭素数6〜25の芳香族基である。R1は、スピロ原子を含有しない基であることが好ましい。R1の具体例は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、トリメチルエチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、テトラメチルジシクロヘキシルメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジフェニルメタン、テトラメチルジフェニルメタン等から2個の水素原子を除いた残基である。異性体が存在する場合は該異性体も含まれる。
これらの中でも、R1は下記式(301)〜(306)で表される2価の基であることが好ましい。
(式中、
iは1〜12の整数を表し、1〜10であってもよい。)
上記式(10)において、P1は脂肪族基及び/又は芳香族基である。P1は、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子等を有していても構わない。
上記式(10)におけるP1は、より好ましくはエーテル結合又はエステル結合を含み、更に好ましくは下記式(114)で表される基である。
(式中、
R43は脂肪族基又は芳香族基を表し、
b2は1〜3の整数を表す。同一分子中の複数のR43及びb2は、それぞれ同一でも異なってもよい。)
上記式(114)において、R43は脂肪族基又は芳香族基である。R43は、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子等を有していても構わない。脂肪族基は環式でも非環式でも構わない。脂肪族基は、炭素数1〜22の脂肪族基が好ましく、炭素数1〜18の脂肪族基がより好ましい。芳香族基は炭素数6〜22の芳香族基が好ましく、炭素数6〜15の芳香族基がより好ましい。炭素数1〜5の脂肪族基とこれに結合した炭素数6〜15の芳香族基とを有する炭素数7〜20の基も好ましい。
上記式(114)におけるR43の好ましい具体的な構造として、下記式(115)で表される基が挙げられる。
(式中、
R44は、水素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子及びメチル基からなる群より選択される1以上の基を表し、
R45は、下記式(116)、(117)、(118)又は(119)で表される基からなる群より選択される基を表し、
複数あるR44は同一でも異なってもよい。)
上記式(10)におけるP1は、より具体的には、下記式(201)〜(204)で表される基であることが好ましい。
上記式(11)〜(14)において、X2及びY2は、各々独立に、酸素原子又は硫黄原子を表し、一単位中のX2とY2とは同時に酸素原子ではない。即ち、一単位中のX2とY2とのうち少なくとも一方は硫黄原子である。硫黄原子が含まれることにより被着体への密着性、特に、金属表面への密着性が向上する。
上記式(10)で表される構造は末端の構造を表していないが、本発明の趣旨は、一つの側面において、エポキシ樹脂及び変性エポキシ樹脂等における密着性の改良であり、上記したように、本発明の化合物中に(本発明の化合物を構成する原子として)硫黄原子及び/又は酸素原子を含むことが重要な点であり、末端の構造の違いによる影響は必ずしも大きくないと考えられる。また、後述するように、上記式(10)で表される化合物は、末端エポキシ基を有する化合物と末端イソチオシアネート基(−NCS)を有する化合物、末端エピスルフィド基を有する化合物と末端イソシアネート基(−NCO)、又は末端エピスルフィド基を有する化合物と末端イソチオシアネート基を有する化合物組み合わせにより製造することができる。上記式(10)の化合物を得るために使用する化合物によって、末端の構造は、エポキシ基、エピスルフィド基、イソシアネート基、又はイソチオシアネート基とすることができる。また、<製造方法>で述べるように、イソシアネート基が3量体化したイソシアヌレート基(イソチオシアヌレート基の場合はイソチオシアヌレート基)が本実施形態に係る化合物に含まれる場合もある。エポキシ樹脂(後述)中のアルコール性水酸基とイソチオシアネート基との反応に由来するN−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル基、エピスルフィド樹脂(後述)中のチオール基とイソシアネート基との反応に由来するN−置換−S−置換チオカルバミン酸エステル基、エピスルフィド樹脂中のチオール基とイソチオシアネート基との反応に由来するジチオカルバミン酸エステル基が含まれる場合もある。
<製造方法>
本実施形態に係る化合物(樹脂)は、例えば、末端エポキシ基を有する化合物と末端イソチオシアネート基(−NCS)を有する化合物、末端エピスルフィド基を有する化合物と末端イソシアネート基(−NCO)を有する化合物、又は末端エピスルフィド基を有する化合物と末端イソチオシアネート基を有する化合物の組み合わせにより製造することができる。
本実施形態に係る化合物(樹脂)は、下記式(31)で表される化合物(末端イソシアネート基を有する化合物、末端イソチオシアネート基を有する化合物)と、下記式(20)で表される化合物(末端エポキシ基を有する化合物、末端エピスルフィド基を有する化合物)の反応によって得ることが好ましい。
(式中、
R2は脂肪族基又は芳香族基を表し、
R1は脂肪族基又は芳香族基を表し、X及びY2は各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。)
式(31)で表される化合物と、式(20)で表される化合物との組み合わせは、Xが硫黄原子である式(31)の化合物及び/又はY2が硫黄原子である式(20)の化合物が1種以上含まれるように選択される。
式(31)で表される化合物、式(20)で表される化合物をそれぞれ複数種組み合わせて反応を行う場合、複数あるR1及びR2は同一でも異なってもよい。
上記式(20)で表される化合物のうち、末端エポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂とも表記する)は、好ましくは下記式(120)で表される化合物である。
(式中、
R2は脂肪族基又は芳香族基を表す。)
式(120)で表される化合物の具体例として、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸やダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類、が挙げられる。これらの末端エポキシ基を有する化合物は単独で使用しても複数種を併用してもよい。
上記式(20)で表される化合物のうち、末端エピスルフィド基を有する化合物(エピスルフィド樹脂とも表記する)は、好ましくは下記式(121)で表される化合物である。
(式中、
R2は脂肪族基又は芳香族基を表す。)
式(121)で表される化合物の具体例として、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をチオグリシジル化したビスフェノール型エピスルフィド樹脂、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をチオグリシジル化したエピスルフィド樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をチオグリシジル化したエピスルフィド樹脂、1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をチオグリシジル化したエピスルフィド樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をチオグリシジル化したノボラック型エピスルフィド樹脂等のチオグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸やダイマー酸のジチオグリシジルエステル等のチオグリシジルエステル類、が挙げられる。これらの末端エピスルフィド基を有する化合物は単独で使用しても複数種を併用してもよい。
式(31)におけるR1は、下記式(301)〜(306)で表される炭化水素基からなる群より選択される炭化水素基であることが好ましい。
(式中、
iは1〜12の整数を表し、1〜10であってもよい。)
上記式(31)で表される化合物のうち、末端イソシアネート基を有する化合物(イソシアネート化合物)は、好ましくは、下記式(122)で表される化合物である。
(式中、
R1は脂肪族基又は芳香族基を表す。)
式(122)で表される化合物の具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(各異性体)、ナフタレンジイソシアネート(各異性体)等を挙げることができる。更に好ましくは、式(122)で表される化合物は、炭素数4〜20の脂肪族ジイソシアネート、炭素数8〜20の脂環族ジイソシアネートである。これらの中でも、耐候性、耐熱黄変性、工業的入手の容易さから、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。これらのイソシアネート化合物は単独で使用しても複数種を併用してもよい。
上記式(31)で表される化合物のうち、末端イソチオシアネート基を有する化合物(イソチオシアネート化合物)は、好ましくは、下記式(123)で表される化合物である。
(式中、
R1は脂肪族基又は芳香族基を表す。)
式(123)で表される化合物の具体例としては、テトラメチレンジイソチオシアネート、ペンタメチレンジイソチオシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソチオシアナトヘキサン、リジンジイソチオシアネート、イソホロンジイソチオシアネート、1,3−ビス(イソチオシアナートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソチオシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソチオシアネート、トルエンジイソチオシアネート(各異性体)、ナフタレンジイソチオシアネート(各異性体)等を挙げることができる。更に好ましくは、式(123)で表される化合物は、炭素数4〜20の脂肪族ジイソシアネート、炭素数8〜20の脂環族ジイソチオシアネートである。これらの末端イソチオシアネート基を有する化合物は単独で使用しても複数種を併用してもよい。
以下、エポキシ樹脂とイソチオシアネート化合物との反応を例に、本実施形態に係る化合物の製造方法について記載する。エポキシ樹脂の代わりにエピスルフィド樹脂を使用する場合も同様の方法であり、下記説明中の、エポキシ樹脂をエピスルフィド樹脂に、エポキシ基をエピスルフィド基に読み替えることができる。また、イソチオシアネート化合物の代わりにイソシアネート化合物を使用する場合についても同様であり、下記説明中のイソチオシアネート化合物とイソシアネート化合物に、イソチオシアネート基をイソシアネート基に読み替えることができる。
イソチオシアネート化合物の使用量は、そのイソチオシアネート基が、エポキシ基に対して、20〜60当量%となる量で用いるのが好ましい。イソチオシアネート化合物の使用量は、より好ましくは25〜50当量%、更に好ましくは30〜47当量%、一層好ましくは30〜45当量%である。イソシアネート化合物中のイソシアネート基は、エポキシ基と反応して環構造を形成する他に、エポキシ樹脂中のアルコール性水酸基とのチオウレタン結合の形成又はイソチオシアネート基の環化3量化によるイソチオシアヌレート環の形成に使用される。
反応は、通常、触媒の存在下に行われる。触媒としては、例えば、ブトキシリチウム、メトキシナトリウム等の金属アルコラート、塩化リチウム、塩化アルミニウム等のルイス酸及びルイス酸とトリフェニルホスフィンオキサイド等のルイス塩基との混合物、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム等のクロライド、ブロマイド、ヨーダイド、アセテート等の4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。これらの触媒は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。触媒としては、4級アンモニウム塩及び3級アミンが特に好ましい。
触媒の使用量は、通常、エポキシ樹脂の総重量に対して、5ppm〜2wt%の範囲で使用される。触媒の使用量は、好ましくは20ppm〜0.5wt%である。触媒は、適当な溶剤に希釈して用いることもできる。
本実施形態に係る製造方法は、無溶剤で行うこともできるし、適当な溶剤の存在下に行うこともできる。
溶剤を使用する場合は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、トルエン、メチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン等の活性水素を含まない溶剤の使用が好ましい。
反応温度は、通常、80℃〜300℃である。好ましくは100℃〜260℃、更に好ましくは120℃〜220℃である。反応温度が低すぎると、触媒の活性が低く、イソシアヌレート環の生成等の副反応が起こる。また、反応温度が高すぎても、触媒の活性低下が起こり、やはり副反応が進行する。
本実施形態に係る化合物の製造は、エポキシ樹脂を所定の温度に昇温し、乾燥空気、窒素等の吹き込みにより樹脂中の水分を極力除去した後、イソチオシアネート化合物及び触媒を投入するのが好ましい。イソチオシアネート化合物及び触媒の投入方法は、適宜選択することが可能であり、一括して投入してもよく、数回に分けて投入してもよく、また、連続的にイソチオシアネート化合物を投入してもよい。この際、イソチオシアネートと触媒との投入は、同時に行っても、別々に行ってもよい。連続的に投入する場合、その投入時間は、1〜10時間が好ましく、より好ましくは、2〜5時間である。投入時間が短い場合、イソチオシアヌレート環の生成量が多くなる場合がある。
本実施形態に係る化合物は、好ましくは、エポキシ樹脂中のエポキシ基20〜45当量%(好ましくは22〜42当量%、更に好ましくは25〜40当量%)が、イソチオシアネート化合物中のイソチオシアネート基と反応してオキサゾリジン−2−チオン環(エピスルフィド樹脂とイソシアネート化合物の反応ではチアゾリン−2−オン環、エピスルフィド樹脂とイソチオシアネート化合物の反応ではチアゾリンチオン環)を形成している。
エポキシ樹脂中のエポキシ基のうち、オキサゾリジン−2−チオン環に関与するものの割合は、例えば、化学的手法によりOxd化率を測定する方法、赤外分光法、及び核磁気共鳴分光法等の機器分析的手法を用いて定量する方法により求めることができる。
Oxd化率は、例えば、オキサゾリジン−2−チオン環を形成したエポキシ基の、元のエポキシ基に対する当量%である。エポキシ基がオキサゾリジン−2−チオン環を形成する反応以外には、実質的に消費されない場合、使用したエポキシ樹脂のエポキシ当量(Ep1と称す)と重量(Wt1と称す)、得られたオキサゾリジン−2−チオン環含有エポキシ樹脂のエポキシ当量(Ep2と称す)と重量(Wt2と称す)を用い、Oxd化率は下記式により求められる。
Oxd化率=100−(Wt2÷Ep2)÷(Wt1÷Ep1)×100
本実施形態に係る化合物(樹脂)は、エポキシ樹脂中のアルコール性水酸基の一部又は全部と、イソチオシアネート化合物中のイソチオシアネート基との反応により得られるチオウレタン結合を含有することができる。チオウレタン結合量は、0.9当量/kg以下が好ましく、より好ましくは0.01〜0.7当量/kg、更に好ましくは0.05〜0.6当量/kg、一層好ましくは0.1〜0.5当量/kgである。
本実施形態に係る化合物(樹脂)は、イソチオシアネート化合物中のイソチオシアネート基が環化3量化したイソチオシアヌレート環を含有することができる。イソチオシアヌレート環の含有量は、オキサゾリジン−2−チオン環の含有量の40当量%以下が好ましく、より好ましくは30当量%以下、更に好ましくは20当量%以下、一層好ましくは10当量%以下である。イソチオシアヌレート環が多すぎると、製造する時に重合安定性が低下する場合がある。
本実施形態に係る化合物(樹脂)は、実質的にイソシアネート基を含有しないのが好ましい。
本実施形態に係る化合物(樹脂)の溶融粘度は、フロー性を向上させるために、低い方が好ましい。具体的には、125℃における溶融粘度が、8000mPa・s以下が好ましい。より好ましくは6000mPa・s以下、更に好ましくは4000mPa・s以下、一層好ましくは3000mPa・s以下である。
本実施形態に係る化合物(樹脂)の加水分解性塩素量は、特に制限されないが、例えば電気・電子用途で使用する場合は、500ppm以下が好ましい。より好ましくは100ppm以下である。
本発明の化合物(樹脂)がエポキシ基を有する場合、エポキシ基の一部又は全部を、変性剤で変性することができる。
変性剤としては、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、キシレノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、アミノエチルエタノールアミンのジメチルケチミン等のアミン類、酢酸、乳酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、安息香酸、ジメタノールプロピオン酸等のカルボン酸類、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物等のスルフィド類、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプタン類などが挙げられる。
また、例えば、アミン類で変性した後、更に、アミノ基を酢酸等を用いてアンモニウム塩に変換する等、イオン性基への変換を行うこともできる。
[硬化性組成物]
本実施形態に係る化合物(樹脂)は、硬化剤と混合して、硬化性組成物を調製するために用いることができる。
硬化形態がエポキシ基を用いた硬化の場合、硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン等の脂肪族アミン類、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテル等の芳香族アミン類、メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物等のメルカプタン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のフェノール樹脂類、ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン類、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の第3級アミン類、ジシアンジアミド等、が挙げられる。また、これらの硬化剤は単独で使用しても複数種を併用してもよい。
硬化形態がエポキシ基の変性により組み込まれた架橋性基や、変性により生成した2級水酸基を用いた硬化の場合は、硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物等が用いられる。また、これらの硬化剤は単独で使用しても複数種を併用してもよい。
メラミン樹脂としては、ヘキサメトキシメチロールメラミン、メチル・ブチル化メラミン、ブチル化メラミン等が例示される。また、これらのメラミン樹脂は単独で使用しても複数種を併用してもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、HDI、2,2,4(又は2,4,4)−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネート及びこれらジイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートが例示される。これらのポリイソシアネートは単独で使用しても複数種を併用してもよい。
ジイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート等がある。これらのポリイソシアネート化合物は単独で用いても複数種を併用してもよい。
ブロックイソシアネート化合物としては、上記ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート化合物をブロック剤でブロックした化合物が用いられる。
ブロック剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン類等が挙げられる。これらのブロック剤は単独で用いても複数種を併用してもよい。
硬化剤の使用量は、本実施形態に係る化合物を含む全量に対して、任意に選択できるが、通常、0.1〜90重量%である。硬化剤の使用量は、好ましくは0.1〜50重量%である。
硬化性組成物は、必要に応じ、溶剤を含むことができる。溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類、水などの群から目的及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
硬化性組成物は、必要に応じて硬化促進剤を含むことができる。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、第3級アミン類、ホスフィン類、アミノトリアゾール類、錫系、亜鉛系等の金属触媒類等が用いられる。これらの硬化促進剤は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
硬化性組成物では、以下に示すような当該技術分野で常用される顔料、充填剤、添加剤等が使用できる。例えば、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料、酸化チタン、金属箔状顔料、防錆顔料等の無機顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック、タルク、クレー等の充填剤、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤、シラン系、チタン系等のカップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、ハジキ防止剤、消泡剤等の添加剤等が挙げられる。また必要に応じて、ガラス繊維、ガラス布、炭素繊維等の強化材を含有することができる。
本実施形態に係る硬化性組成物は、優れた密着性と良好なフロー性を併せ持ち、粉体塗料、電着塗料、PCM塗料等の塗料、接着剤、シーリング材、成型材料、複合材料、積層板、封止材等の材料として好適に使用される。
≪イソチオシアヌレート構造を有する樹脂≫
<好ましい構造>
本実施の形態で好ましい第3の樹脂は、下記式(40)で表される構成単位を2以上有する。当該樹脂は、下記式(41)〜(47)で表される1価、2価又は3価の基からなる群より選択される1種以上の構成単位を更に有する。式(41)〜(47)で表される構成単位中のR3がイソチオシアネート基と直接結合して式(40)の構成単位が形成されていてもよい。式(41)〜(47)で表される1つの構成単位中のNが、式(41)〜(47)で表される他の構成単位中のNと直接結合していない。
(式中、
R3は有機基を表し、R4は、脂肪族基又は芳香族基を表し、X3は酸素原子又は硫黄原子を表す。同一分子中の複数のR3、R4及びX3は同一でも異なってもよい。R3は脂肪族基又は芳香族基であってもよい。)
通常、該ポリイソチオシアネートを構成する実質的に全ての窒素原子は、少なくとも1個の炭素原子と結合している。すなわち、各構成単位同士がN同士で直接結合していない。また、各構成単位におけるR3がイソチオシアネート基と直接結合し、式(40)で表される構成単位が形成されていてもよい。例えば、式(41)で表される構成単位とイソチオシアネート基とが結合することにより、式(46)で表される一官能性繰り返し単位、又は式(47)で表される二官能性繰り返し単位が形成されていてもよい。ポリイソチオシアネートは、R3に結合していないイソチオシアネート基を有していてもよい。
式(43)及び(45)に含まれる−X3−R4で表される官能基について説明する。
後述するポリイソチオシアネートの製造方法において、式(43)で表されるN,N’−ジ置換ジチオアロファン酸結合、又は式(45)で表されるN−置換−O−置換チオカルバミン酸エステル基もしくはN−置換−S−置換ジチオカルバミン酸エステル基を有するポリイソチオシアネートを製造する際には、ヒドロキシ化合物やチオール類を用いる。−X3−R4で表される官能基は、このヒドロキシ化合物又はチオール類に由来する基であり、ヒドロキシ化合物を用いる場合はX3が酸素原子、チオール類を用いる場合はX3が硫黄原子である。
式(40)〜(47)中のR3は、脂肪族基としては、炭素数1〜22の脂肪族基が好ましく、炭素数1〜18の脂肪族基がより好ましい。芳香族基としては炭素数6〜22の芳香族基が好ましく、炭素数6〜15の芳香族基がより好ましい。炭素数1〜5の脂肪族基と該脂肪族基に結合した炭素数6〜15の芳香族基とを有する炭素数7〜20の基も好ましい。
これらの中でも、R3は、下記式(301)〜(306)で表される2価の基であることが好ましい。
(式中、
iは1〜12の整数を表し、1〜10であってもよい。)
R4の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、ジブチルシクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、クミルフェニル基、ジメチルフェニル基等が挙げられる。
該樹脂を構成する上記式(41)〜(47)で表される構成単位は、驚くべきことに、耐熱性が高く、密着性、殊に金属表面への密着性に優れる。このような効果を奏する機構については明らかではないが、本発明者らは、安定な6員環構造を有していることが耐熱性を高め、該結合に含まれる硫黄原子が密着性を高める効果を奏するのではないかと推測している。
このように、本実施の形態の樹脂は、その分子中に含まれる結合様式に特徴があり、該結合以外の骨格構造は特に限定されないが、より好ましい形態は以下の通りである。
樹脂の数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは5000以上である。一般的には高分子量の方が、耐熱性が良好となる傾向にあるが、一方で、あまりに高分子量である場合には、塗膜を形成する際の取り扱い性(他の成分との混和性、流動性、展性等)の面で不利となる場合があることから、数平均分子量は好ましくは100万以下、より好ましくは50万以下、更に好ましくは20万以下である。ここでいう数平均分子量は、排除限界分子量1000万以上のカラムを少なくとも1つ具備するゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して測定し、ポリスチレン等の標準物質を用いて保持時間を分子量に換算することで計算した値である。当業者であれば容易に数平均分子量を求めることができる。溶媒に由来するピークは除いて計算する。
耐熱性の発現に寄与する結合の含有量は、上記した数平均分子量Mnとも相関する。1分子あたりに含まれる窒素−炭素−硫黄結合を構成する硫黄原子及び窒素−炭素−酸素結合を構成する酸素原子の数n1で樹脂の数平均分子量を除した値(Mn/n1)が、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。本実施の形態の樹脂組成物は、上記したように金属との密着性の面においても効果を奏するが、そのような効果を発現する観点からも、樹脂が1分子あたりに多くの上記結合を有していることが好ましい。一方で、樹脂があまりに多くの上記結合を有している場合、特に、樹脂が上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(41)、(42)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を有する場合、塗膜性能の一つである柔軟性が損なわれる場合もある。そのような観点から、(Mn/n1は好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。n1は、例えば、樹脂単位重量(1g)あたりの当該結合の数X1(単位mol/g)を、例えば赤外線吸収スペクトルや1H−NMR等によって求め、上記した数平均分子量(Mn)から、式:n1=Mn・X1によって算出することができる。樹脂が窒素−炭素−硫黄結合及び窒素−炭素−酸素結合の両方を含む場合、n1はそれぞれの結合を構成する硫黄原子及び酸素原子の合計数である。
<好ましい製造方法>
本実施の形態に係る樹脂は、好ましくは、窒素−炭素−硫黄結合を有する化合物と、ポリオイソチオシアネートとを反応させて得られる樹脂である。窒素−炭素−硫黄結合は、窒素原子、炭素原子及び硫黄原子から構成され、これらがこの順で結合している。
また、本実施形態に係る樹脂は、好ましくは、下記式(33)で表される化合物を重合することを含む方法によって得られる樹脂である。
(式中、
R3は有機基を表し、脂肪族基又は芳香族基であってもよい。)
上記式(30)中、R3は、脂肪族基、芳香族基又はこれらの組み合わせからなる基(芳香族基で置換された脂肪族基)を表す。重合の単量体として用いられる式(30)の化合物は、R3が異なる2種以上の化合物の組み合わせであってもよい。R3としての脂肪族基及び芳香族基は、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子等を有していても構わない。脂肪族基としては、炭素数1〜22の脂肪族基が好ましく、炭素数1〜18の脂肪族基がより好ましい。芳香族基は炭素数6〜22の芳香族基が好ましく、炭素数6〜15の芳香族基がより好ましい。炭素数1〜5の脂肪族基と該脂肪族基に結合した炭素数6〜15の芳香族基とを有する炭素数7〜20の基も好ましい。
R3の具体例としては、メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン等の直鎖炭化水素基;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビス(シクロヘキシル)メタン等の無置換の脂環式炭化水素由来の基;メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン(各異性体)、エチルシクロヘキサン(各異性体)、プロピルシクロヘキサン(各異性体)、ブチルシクロヘキサン(各異性体)、ペンチルシクロヘキサン(各異性体)、ヘキシルシクロヘキサン(各異性体)等のアルキル置換シクロヘキサン由来の基;ジメチルシクロヘキサン(各異性体)、ジエチルシクロヘキサン(各異性体)、ジブチルシクロヘキサン(各異性体)等のジアルキル置換シクロヘキサン由来の基;1,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,5,5−トリエチルシクロヘキサン、1,5,5−トリプロピルシクロヘキサン(各異性体)、1,5,5−トリブチルシクロヘキサン(各異性体)等のトリアルキル置換シクロヘキサン由来の基;トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等のモノアルキル置換ベンゼン;キシレン、ジエチルベンゼン、ジプロピルベンゼン等のジアルキル置換ベンゼン;ベンゼン等の芳香族炭化水素由来の基などが挙げられる。
これらの中でも、ヘキサン、ベンゼン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレニル、メチルシクロヘキサン、イソホロン又はジシクロヘキシルメタン由来の基からなる群より選択される1以上の基が好ましい。「由来の基」とは、その化合物から2個の水素原子を除いた構造の基を示す。
上記式(30)におけるR3は、より好ましくは、下記式(301)〜(306)で表される基である。
(式中、
iは1〜12の整数を表し、1〜10であってもよい。)
上記式(30)で表されるイソチオシアネートとして、更に好ましくは、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、イソホロンジイソチオシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソチオシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソチオシアネート、トルエンジイソチオシアネート(各異性体)、ナフタレンジイソチオシアネート(各異性体)等を挙げることができる。
次に、本実施形態に係る樹脂(ポリイソチオシアネート)の製造方法について説明する。
本実施形態に係るポリイソチオシアネートは、例えば、単量体ジイソチオシアネートを単独で重合させて得ることができる。単量体ジイソチオシアネートの重合は、好ましくは、後述のイソチオシアヌレート化触媒等の触媒の存在下で行われる。また、単量体ジイソチオシアネートを重合する際に、ヒドロキシ化合物又はチオール類を副原料として使用して、ジイソチオシアネートとヒドロキシ化合物又はチオール類との反応によりイソチオシアネート基の一部をウレタン化、アロファネート化などすることによりポリイソチオシアネーとを得ることもできる。
単量体ジイソチオシアネートとは、上記式(33)で表される化合物を指す。
ヒドロキシ化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、メチルシクロペンタノール、エチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール、プロピルシクロヘキサノール、ブチルシクロヘキサノール、ペンチルシクロヘキサノール、ヘキシルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、ジエチルシクロヘキサノール、ジブチルシクロヘキサノール、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ジメチルフェノール、メチルエチルフェノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、メチルペンチルフェノール、ジエチルフェノール、エチルプロピルフェノール、エチルブチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジクミルフェノール、トリメチルフェノール、トリエチルフェノール、ナフトール等が挙げられる。また、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステル、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール等の低分子量化合物及び数平均分子量約200〜10,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を用いることもできる。
チオール類としては、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロヘプタンチオール、シクロオクタンチオール、メチルシクロペンタンチオール、エチルシクロペンタンチオール、メチルシクロヘキサンチオール、エチルシクロヘキサンチオール、プロピルシクロヘキサンチオール、ブチルシクロヘキサンチオール、ペンチルシクロヘキサンチオール、ヘキシルシクロヘキサンチオール、ジメチルシクロヘキサンチオール、ジエチルシクロヘキサンチオール、ジブチルシクロヘキサンチオール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、プロピルチオフェノール、ブチルチオフェノール、ペンチルチオフェノール、ヘキシルチオフェノール、オクチルチオフェノール、ノニルチオフェノール、クミルチオフェノール、ジメチルチオフェノール、メチルエチルチオフェノール、メチルプロピルチオフェノール、メチルブチルチオフェノール、メチルペンチルチオフェノール、ジエチルチオフェノール、エチルプロピルチオフェノール、エチルブチルチオフェノール、ジプロピルチオフェノール、ジクミルチオフェノール、トリメチルチオフェノール、トリエチルチオフェノール、チオナフトール等が挙げられる。
ヒドロキシ化合物を使用する場合、上記ヒドロキシ化合物と単量体ジイソチオシアネートとのイソチオシアネート基/水酸基当量比は、10〜100程度の値から目的に応じ選択することができる。チオール類を使用する場合も同様に、イソチオシアネート基/チオール基当量比は、10〜100程度の値から目的に応じて選択することができる。
上記式(41)、(46)又は(47)で表されるイソチオシアヌレート基を形成するためのイソチオシアヌレート化触媒としては、好ましくは第4級アンモニウム塩、より好ましくは第4級アンモニウムヒドロキシド、第4級アンモニウムカルボン酸、更に好ましくは第4級アンモニウムカルボン酸である。
イソチオシアヌレート化触媒の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、酢酸テトラメチルアンモニウム塩、酢酸テトラエチルアンモニウム塩、酢酸テトラブチルアンモニウム塩等の有機弱酸塩等が挙げられる。酢酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の金属塩等も使用できるが、使用量が低減できる観点から有機弱酸塩等が好ましい。
上記イソチオシアヌレート化触媒は希釈して用いてもよい。希釈剤としてはヒドロキシ化合物を用いることができる。ヒドロキシ化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、1−又は2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレングリコール、グリセリン、シクロヘキサノール等のアルコール性ヒドロキシ化合物、フェノール、クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール等のフェノール性ヒドロキシ化合物が挙げられる。これらから得られるポリイソシアネートの結晶性の観点から、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1,3−又は2,3−ブタンジオール等側鎖を有するアルコールが好ましい。また、2種類以上を混合してもよい。当該ヒドロキシ化合物に代えてチオール類を使用してもよい。
上述の単量体ジイソチオシアネート単独又は、単量体ジイソチオシアネートをヒドロキシ化合物でウレタン化したイソチオシアネート化合物を上述のイソチオシアヌレート化触媒の存在下で反応させるに際し、上記ヒドロキシ化合物で希釈されたイソチオシアヌレート化触媒の濃度は1〜20質量%で行うことができる。上記濃度は、好ましくは1〜10質量%である。1質量%以上であれば、イソチオシアヌレート化触媒に同伴するヒドロキシ化合物の量が多くなりすぎず、得られるポリイソチオシアネート及び、これで形成される塗膜の物性が低下しにくい。濃度が20質量%以下であれば、同伴するヒドロキシ化合物の助触媒効果が低下せず、その結果、イソチオシアヌレート化触媒の使用量の増加、ポリイソチオシアネートの着色などが起こりにくい。
単量体ジイソチオシアネートなどの原料に微量含まれている酸性成分によりイソチオシアヌレート化触媒が失活する場合を除き、イソチオシアヌレート化触媒の使用量は、単量体ジイソチオシアネートの重量に対し1ppm〜10%、好ましくは10ppm〜5%である。触媒の量が1ppm以上であれば、イソチオシアヌレート化触媒としての機能が充分に発揮できる。触媒の量が3%以下であれば、イソチオシアヌレート化触媒を失活するため酸性リン酸化合物、酸性リン酸エステル化合物等の反応停止剤(後述する)の添加量を削減することができる。
反応時、溶媒は使用してもしなくてもよいが、イソチオシアネート基と反応活性を持たない溶媒を使用することにより、反応の制御がより容易になる。
溶媒の例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル又はエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素類等が使用可能である。もちろん、2種類以上の溶媒を混合使用することも可能である。
イソチオシアヌレート化反応は、30℃〜120℃、好ましくは50℃〜100℃で行われる。反応の進行は反応液の1H−NMR分析により確認することができる。反応が所望の転化率に達した時点で、反応停止剤の投入により触媒を失活させて反応を停止する。転化率は10〜60%の範囲で選定するのが適当であり、好ましくは10〜30%である。低い転化率では、より低い粘度のポリイソチオシアネートを得ることが可能であるが、生産性の点から転化率10%以上が好ましい。一方、転化率60%以下であれば、ポリイソチオシアネートの粘度が高くなりすぎず好ましい。
転化率は下記式で求めることができる。上記転化率は、1H−NMRチャートにおいて、テトラメチルシランのメチル基のピークを0ppmとし、3.5ppmのピークの積分値(A)と4.8ppmのピークの積分値(B)とから次式により算出する。
転化率(%)=B/(A+B)×100
イソチオシアヌレート化反応の反応停止剤として、酸性リン酸化合物及び酸性リン酸エステル化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を用いる。
酸性リン酸化合物は、無機酸であり、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、二亜リン酸、次リン酸、ピロリン酸、ペルオキソリン酸等が挙げられる。好ましくは、リン酸である。
酸性リン酸エステル化合物は、酸性基とエステル基を有する化合物であり、例えば、炭素数2〜8のモノアルキルホスフェート、モノアルキルホスファイト、炭素数4〜16のジアルキルホスフェート、ジアルキルホスファイト、ジラウリルホスフェート、ジフェニルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノフェニルホスフェート、ジラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、モノラウリルホスファイト、モノフェニルホスファイト等が挙げられる。好ましくは炭素数3〜8のモノアルキルホスフェート、又は炭素数6〜16のジアルキルホスフェート、より好ましくはジオクチルホスフェート、又はモノオクチルホスフェートである。
これらのうち、酸性リン酸化合物を使用することが好ましい。酸性リン酸化合物の添加量は、イソチオシアヌレート化触媒の化学量論量に対し1〜10当量が好ましく、1〜6当量が更に好ましい。添加量が1当量以上であれば、充分にイソチオシアヌレート化触媒を失活することができる。添加量が、10当量以下であれば、発生する不溶物のろ過が困難となることもなく好ましい。
酸性リン酸化合物を用いた場合、失活されたイソチオシアヌレート化触媒は多くの場合不溶物となる場合が多く、ろ過により除去することが可能となる。ろ過により除去することで、ポリイソチオシアネート中の酸性リン酸化合物由来のリンはごく微量に検出される程度まで低減することができる。
酸性リン酸エステル化合物を用いた場合、酸性リン酸エステル及びイソチオシアヌレート化触媒との塩が、ポリイソチオシアネートに溶解するため、単量体ジイソチオシアネートを除去した後の変性ポリイソシアネートに混入する場合がある。
ポリイソチオシアネート中リン濃度の観点から、酸性リン酸化合物を用いる方が好ましい。酸性リン酸化合物を用いた場合、酸性リン酸化合物を添加した後、90〜150℃、好ましくは100〜120℃で、30〜120分間保持することで、ろ過工程において、ろ過時間の短縮といったろ過性が向上する。
ポリイソチオシアネートを得た後に、酸性リン酸化合物、酸性リン酸エステル化合物を添加してもよく、特に酸性リン酸化合物を添加してもよい。
以上のように、イソチオシアヌレート化反応を停止した後、反応液から未反応の単量体ジイソチオシアネート及び溶媒を除去し精製する。精製方法としては、減圧蒸留、溶剤抽出等を挙げることができ、一般には薄膜蒸留器を使用することができる。
精製後のポリイソチオシアネート中の単量体ジイソチオシアネートの含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とすることができる。回収した未反応の単量体ジイソチオシアネートは再度使用することができる。
ポリイソチオシアネートは、有機溶剤と混合して使用することも可能である。この場合、有機溶剤としては、水酸基及びイソシアネート基と反応する官能基を有していないことが好ましい。このような有機溶剤として、エステル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物等を用いることができる。
ポリイソチオシアネートには、目的に応じて、ウレタン化反応等を促進する硬化促進剤、顔料、レベリング材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、表面活性剤等の各種添加剤を混合して使用することもできる。
ポリポリイソチオシアネートは、二液型ポリウレタン塗料、シーリング材、接着剤、インキ、コーティング剤、注型材、エラストマ−、フォーム、プラスチック原料、繊維処理剤、一液硬化型ポリイソチオシアネート等幅広い分野において活用できる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例中の「部」又は「%」は特記しない限り重量基準である。
[分析方法]
(1)1H−NMR分析
試料を約0.3g秤量し、重クロロホルム(米国、アルドリッチ社製、99.8%)を約0.7gと内部標準物質としてテトラメチルシラン(日本国、和光純薬工業社製、和光一級)を0.05g加えて均一に混合した溶液をNMR分析サンプルとした。該サンプルを用いて、日本電子(株)社製JNM−A400FT−NMRシステムにより分析した。
なお、ポリイソシアネート製造時のイソシアネート基の転化率は次の方法で算出した。
1H−NMRチャートにおいて、テトラメチルシランのメチル基のシグナルを0ppmとし、単量体ジイソシアネートに由来する3.3ppmのシグナルの積分値(A)とイソシアヌレート構造に由来する3.8ppmのシグナルの積分値(B)とから次式により、転化率を算出した。
転化率(%)=B/(A+B)×100
また、ポリイソチオシアネート製造時のイソチオシアネート基の転化率は次の方法で算出した。
1H−NMRチャートにおいて、テトラメチルシランのメチル基のシグナルを0ppmとし、単量体ジイソチオシアネートに由来する3.5ppmのシグナルの積分値(A)とイソチオシアヌレート構造に由来する4.8ppmのシグナルの積分値(B)とから次式により、転化率を算出した。
転化率(%)=B/(A+B)×100
(2)数平均分子量
東ソー社製GPC−8020を測定装置として使用し、テトラヒドロフランを展開溶媒とて使用し、東ソー社製TSKgel SuperH3000、SuperH2000、SuperH1000をカラムとして使用してゲル浸透クロマトグラフィー分析(GPC分析)を行った。サンプル約10mgを10mLのテトラヒドロフランに溶解して測定試料とし、注入量は10μLとした。示差屈折率検出器にて観測される分子量既知のポリスチレンの溶出時間との比較で数平均分子量を求めた。
(3)耐熱性評価方法
TG−8120(RIGAKU社製)にて、窒素雰囲気下、試料10mg、昇温速度10℃/minの条件で熱重量減少測定を行い、300℃以内に5%重量減少が認められなかった場合をAとし、300℃以内に5%重量減少が認められた場合をBとした。
(4)塗膜評価方法
塗膜の密着性評価は以下のようにして行った。アルミ板(縦10cm、横10cm、厚み5mm)に形成した塗膜に、1mm角の切り込みを入れてアルミ板ごとアセトンに浸漬し、24時間後に塗膜が残存するかどうかを調べた。1試料につき10回同様の試験を行い、8枚以上で塗膜が残存している場合をA、それ以外をBとした。
(5)銅剥離強度
JIS C 6481に準じて銅剥離強度を測定した。銅剥離強度が良好なものをA、悪いものをBで表した。
[実施例1]
アジピン酸ジヒドラジドとポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)を、イソシアネート基とヒドラジド基の当量比が1.0となるように仕込み、酢酸ブチルを混合して固形分10%の分散液を調製した。この分散液を120℃で12時間攪拌した。反応液を一部採取して1H−NMRで分析したところ、イソシアネートに由来する3.3ppm付近のピークが消滅していた。ロータリーエバポレーターで酢酸ブチルを留去後、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
ヒドラジン・1水和物36gをイソプロパノール1Lに溶解して0℃に冷却し、撹拌しながらヘキサメチレンジイソチオシアネート50gを添加した。生成した固体をろ過により回収し1H−NMRにより分析したところ、4,4’−ヘキサメチレンビスチオセミカルバジドであった。
該4,4’−ヘキサメチレンビスチオセミカルバジドとポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)を、実施例1と同様の方法を行い、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
ヒドラジン・1水和物36gをイソプロパノール1Lに溶解して0℃に冷却し、撹拌しながらヘキサメチレンジイソシアネート50gを添加した。生成した固体をろ過により回収し1H−NMRにより分析したところ、4,4’−ヘキサメチレンビスセミカルバジドであった。
該4,4’−ヘキサメチレンビスセミカルバジドとポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)を、実施例1と同様の方法を行い、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
ヒドラジン・1水和物36gをイソプロパノール1Lに溶解して0℃に冷却し、撹拌しながらメタクリル酸2−イソシアナトエチル280gを添加した。生成した固体をろ過により回収し1H−NMRにより分析したところ、メタクリル酸(2−(ヒドラジンカルボアミド)エチル)であった。
次いで、該メタクリル酸(2−(ヒドラジンカルボアミド)エチル)100gをトルエン1Lに溶解し、メタクリル酸メチル80gとアゾビスイソブチロニトリル0.5gを加え80℃に加熱した。3時間後反応液を採取して1H−NMRで分析したところ、メタクリル酸メチルを構成する二重結合が消失していた。ロータリーエバポレーターでトルエンを留去しセミカルバジド基を有するポリマーを得た。
該ポリマーとポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)を実施例1と同様の方法を行い、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[実施例5〜8]
ポリイソシアネートの代わりに、ヘキサメチレンジイソシアネートを使用した以外は、実施例1と同様の方法を行い、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[実施例9]
実施例4と同様の方法をおこない、メタクリル酸(2−(ヒドラジンカルボアミド)エチル)を製造した。該メタクリル酸(2−(ヒドラジンカルボアミド)エチル)とポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)を実施例1と同様の方法を行い、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[参考例1]
実施例1のアジピン酸ジヒドラジドの代わりにヘキサメチレンジオールを使用した以外は、実施例1と同様の方法を行い、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[参考例2]
実施例1のアジピン酸ジヒドラジドの代わりにヘキサメチレンジアミンを使用した以外は、実施例1と同様の方法を行い、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[参考例3]
メタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)100gをトルエン1Lに溶解し、メタクリル酸メチル80gとアゾビスイソブチロニトリル0.5gを加え80℃に加熱した。3時間後反応液を採取して1H−NMRで分析したところ、メタクリル酸メチルを構成する二重結合が消失していた。ロータリーエバポレーターでトルエンを留去しヒドロキシ基を有するポリマーを得た。該ポリマーとポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)を実施例1と同様の方法を行い、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[参考例4〜6]
比較例1のポリイソシアネートの代わりにヘキサメチレンジイソシアネートを使用した以外は、実施例1と同様の方法を行い、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[参考例7]
実施例1のアジピン酸ジヒドラジドの代わりにメタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)を使用した以外は、実施例1と同様の方法を行い、耐熱性の評価をした。評価結果を表1に示す。
[製造例1]ポリイソチオシアネートの製造
攪拌機、温度計、環流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、ヘキサメチレンジイソチオシアネート600gを仕込み、撹拌下反応器内温度を130℃に保持し、環状3量体化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを1.0g添加した。イソチオシアネート基の転化率が30%になった時点で、リン酸添加し反応を停止した。反応液を濾過した後、薄膜蒸留器で未反応のヘキサメチレン時イソチオシアネートを除去した。得られたポリイソチオシアネートの数平均分子量は620であり、イソチオシアネート基平均数は3.2であった。
[実施例10]
アクリルポリオール(Setalux1903;NUPLEX社製、商品名;水酸基濃度4.5%(樹脂基準)、樹脂固形分75%)と製造例1で得られたポリイソチオシアネートをイソチオシアネート基と水酸基の当量比が1.0となるように仕込み、ジブチル錫ジラウレートを樹脂に対して0.5質量%加え、酢酸ブチルを混合して、固形分50%の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物をアルミ板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。室温で10分セッテングした後、150℃のオーブンに10時間保持し、硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜の密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例11]
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンと製造例1で得られたポリイソチオシアネートを、イソチオシアネート基とアミノ基の当量比が1.0となるように仕込み、酢酸ブチルを混合して、固形分50%の樹脂組成物を調製した以外は、実施例1と同様の方法を行った。硬化塗膜の評価結果を表2に示す。
[実施例12]
アジピン酸ジヒドラジドと製造例1で得られたポリイソチオシアネートを、イソチオシアネート基とヒドラジド基の当量比が1.0となるように仕込み、エタノールを混合して固形分10%の樹脂組成物を調製した以外は、実施例10と同様の方法を行った。硬化塗膜の評価結果を表2に示す。
[実施例13]
ヒドラジン・1水和物36gをイソプロパノール1Lに溶解して0℃に冷却し、撹拌しながらメタクリル酸2−イソシアナトエチル280gを添加した。生成した固体をろ過により回収し1H−NMRにより分析したところ、メタクリル酸(2−(ヒドラジンカルボアミド)エチル)であった。
次いで、該メタクリル酸(2−(ヒドラジンカルボアミド)エチル)100gをトルエン1Lに溶解し、メタクリル酸メチル80gとアゾビスイソブチロニトリル0.5gを加え80℃に加熱した。3時間後反応液を採取して1H−NMRで分析したところ、メタクリル酸メチルを構成する二重結合が消失していた。ロータリーエバポレーターでトルエンを留去しセミカルバジド基を有するポリマーを得た。
該ポリマーと製造例1で得られたポリイソチオシアネートを、イソチオシアネート基とセミカルバジド基の当量比が1.0となるように仕込み、酢酸ブチルを混合して固形分25%の樹脂組成物を調製した。該樹脂組成物を使用して実施例10と同様の方法を行い、硬化塗膜の評価を行った結果を表2に示す。
[実施例14]
ヒドラジン・1水和物36gをイソプロパノール1Lに溶解して0℃に冷却し、撹拌しながらヘキサメチレンジイソチオシアネート50gを添加した。生成した固体をろ過により回収し1H−NMRにより分析したところ、4,4’−ヘキサメチレンビスチオセミカルバジドであった。
該4,4’−ヘキサメチレンビスチオセミカルバジドと製造例1で得られたポリイソチオシアネートを、イソチオシアネート基とチオセミカルバジド基の当量比が1.0となるように仕込み、酢酸ブチルを混合して固形分25%の樹脂組成物を調製した。該樹脂組成物を使用して実施例10と同様の方法を行い、硬化塗膜の評価を行った結果を表2に示す。
[参考例8〜12]
ポリイソチオシアネートの代わりにイソシアヌレートタイプポリイソシアネート(デュラネートTPA−100;旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)を使用した以外は、それぞれ実施例10〜14と同様の方法を行い、硬化塗膜の評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例15]
メタクリル酸2−ヒドロキシエチルと製造例1で得られたポリイソチオシアネートをイソチオシアネート基と水酸基の当量比が水酸基/イソチオシアネート基=1.3となるように仕込み、酢酸ブチルを加えて固形分50%の樹脂組成物とした。該樹脂組成物を130℃で加熱し、1H−NMRでイソチオシアネート基が消失するまで加熱を継続した。次いで、この樹脂組成物をアルミ板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。室温で10分セッテングした後、150℃のオーブンに10時間保持し、硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜の密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
[参考例13]
製造例1で得られたポリイソチオシアネートの代わりにイソシアヌレートタイプポリイソシアネート(デュラネートTPA−100;旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)を使用した以外は、実施例15と同様の方法を行った。硬化塗膜評価結果を表2に示す。
[実施例16]
実施例13と同様の方法を行い、メタクリル酸(2−(ヒドラジンカルボアミド)エチル)を製造し、次いでメタクリル酸(2−(ヒドラジンカルボアミド)エチル)のポリマーを得た。
該ポリマーとアリルイソチオシアネートを、イソチオシアネート基とセミカルバジド基の当量比が1.0となるように仕込み、酢酸ブチルを混合して固形分25%の樹脂組成物を調製した。該樹脂組成物をアルミ板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。室温で10分セッテングした後、150℃のオーブンに10時間保持し、硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜の密着性を評価した。評価結果を表2に示す。
[参考例14]
アリルイソチオシアネートの代わりにメタクリル酸2−イソシアナトエチルを使用した以外は実施例16と同様の方法を行った。硬化塗膜の評価結果を表2に示す。
[実施例17]
水200g及びテトラヒドロフラン800gを入れた2Lのナス型フラスコに、テトラメチレンジイソチオシアネート345gと、アジピン酸ジヒドラジド384gとを加えて60℃で12時間撹拌した後、エチルイソチオシアネート7gを更に加え、析出した固体を濾過し回収した。次いで、2重量%水酸化ナトリウム水溶液1000gを入れた2Lナス型フラスコに、上記固体を加え、100℃で8時間撹拌を行い、析出した固体を濾紙で回収した。回収した固体の1H−NMRを測定し、構造を同定した。図1に実施例17で得た固体の1H−NMRスペクトルを示す。下記式(124)で表される樹脂が得られたと推定される。数平均分子量は5900、上記定義によるMn/n1は150であった。なお、X1は1H−NMR測定試料の仕込み濃度と、クロロホルムのピーク(7.26ppm)と環を形成している窒素原子に直接結合しているメチレン鎖のピーク(2.6ppm)の積分値の比から求めた。
[実施例18]
攪拌器、温度計、環流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、ヘキサメチレンジイソチオシアネート100gを仕込み、撹拌下反応器内温度を100℃に保持した。その後、触媒としてテトラメチルアンモニウムアセテート(2−ブタノール5.0質量%溶液)2gを添加し撹拌した。適宜反応液のサンプリングを行い、1H−NMR分析でイソチオシアネート基の転化率が21%になった時点で、リン酸(85質量%水溶液)0.28g添加し反応を停止した。その後、更に100℃にて1時間加熱し、室温まで冷却し、反応液をろ過して不溶物を除去した後、薄膜蒸留器で単量体ジイソチオシアネートを除去した。単量体ジイソチオシアネート濃度0.4質量%、数平均分子量は860であった。
得られたポリイソチオシアネートの1H−NMRチャートを図2に示す。NMRチャートから、ポリイソチオシアネートが、少なくとも式(28)で表される構成単位を含むことが確認された。数平均分子量は1200、上記定義によるMn/n1は100であった。なお、X1は1H−NMR測定試料の仕込み濃度と、クロロホルムのピーク(7.26ppm)とイソチオシアヌレート環を形成している窒素原子に直接結合しているメチレン鎖のピーク(3.8ppm)の積分値の比から求めた。
得られたポリイソチオシアネートとアクリルポリオール(DIC株式会社製、商品名:アクリディックA−801)をイソチオシアネート基/水酸基比率(当量)が1.0になるように配合し、ジブチル錫ジラウレートをそれぞれ塗料固形分に対して0.5%添加し、これにシンナーとして酢酸エチル/トルエン/酢酸ブチル/キシレン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(重量比=30/30/20/15/5)の混合液を加えた。得られた塗料溶液をエアースプレーガンで乾燥膜厚50μmになるように調整して厚み35μmの銅箔に塗膜し、上に厚み35μmの銅箔を重ねて、120℃に保持されているオーブン中で30分間焼付けたのち、銅剥離強度を評価した。結果を表3に示す。
[実施例19〜23]
表3に示す処方及び条件で、実施例18と同様の方法にてポリイソチオシアネートを製造した。得られたポリイソチオシアネートを用いた以外は実施例18と同様に塗料溶液を調製し、銅剥離強度を評価した。結果を表3に示す。
[比較例15]
ヘキサメチレンジイソチオシアネートの代わりにヘキサメチレンジイソシアネートを使用し、触媒としてテトラメチルアンモニウムアセテート(2−ブタノール5.0質量%溶液)を0.1g使用し、リン酸(85質量%水溶液)12mgを使用した以外は、実施例18と同様の方法で、ポリイソシアネートを製造した。数平均分子量は1100であった。得られたポリイソシアネートを使用した以外は実施例18と同様に塗料溶液を調製し、銅剥離強度を評価した。結果を表4に示す。
[比較例16〜20]
表4に示す処方及び条件で、実施例18と同様の方法にてポリイソシアネートを製造し、銅剥離強度を評価した。結果を表4に示す。
[実施例24]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量189)100部を入れたセパラブルフラスコに、撹拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付け、フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下150℃に昇温し、150℃到達後30分間撹拌を続けた。反応温度を150℃に維持したまま、ヘキサメチレンジイソチオシアネート18.5部とテトラブチルアンモニウムクロライド(和光純薬;Practical Grade)0.05部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、温度を150℃に保ち反応を行った。1H−NMR分析の結果(図3)、下記式(125)又は(126)で表されるオキサゾリジン−2−チオン環を含む化合物が得られたことがわかった。得られた化合物の数平均分子量は2,000であり、数平均分子量2万以上のものは見られなかった。なお、上記数平均分子量は、昭和電工社製shodex A−804、A−803、A−802、A802をカラムとして使用してゲル浸透クロマトグラフィー分析を行った。サンプル約10mgを10mLのテトラヒドロフランに溶解して測定試料とし、注入量は10μLとした。示差屈折率検出器にて観測される分子量基既知のポリスチレンの溶出時間と比較して数平均分子量を求めた。上記定義によるMn/n1は220であった。なお、X1は1H−NMR測定試料の仕込み濃度と、内部標準として加えたトルエンのピーク(2.3ppm)と環構造を形成しているメチンのピーク(4.8ppm)の積分値の比から求めた。
得られた化合物と硬化剤(ジシアンジアミド)と硬化触媒(2−メチルイミダゾール)を添加し、得られた樹脂組成物をガラスクロスに含浸させ、乾燥することにより樹脂含有量50質量%のプリプレグを得た。該プリプレグを4枚重ね、その上下に厚み35μmの銅箔を重ね合わせたものを温度190℃、圧力20kg/cm2の条件下で60分加熱加圧することにより積層板を作製した。該積層板について銅剥離強度を評価した。結果を表5に示す。
[実施例25〜29]
表5に示す化合物を用い、実施例24と同様の方法で反応させ、1H−NMR分析を行ったところ、上記式(125)又は(126)で表されるオキサゾリジン−2−チオン環を含む化合物を得た。得られた化合物を用い、実施例24と同様の方法で銅剥離強度を評価した。結果を表5に示す。
[実施例30〜35]
表6に示す化合物を用い、実施例24と同様の方法で反応させ、1H−NMR分析を行ったところ、下記式(127)又は(128)で表されるチアゾリンチオン環を含む化合物を得た。得られた化合物を用い、実施例24と同様の方法で銅剥離強度を評価した。結果を表6に示す。
[実施例36〜41]
表7に示す化合物を用い、実施例24と同様の方法で反応させ、1H−NMR分析を行ったところ、下記式(129)又は(130)で表されるチアゾリン−2−オン環を含む化合物を得た。得られた化合物を用い、実施例24と同様の方法で銅剥離強度を評価した。結果を表7に示す。
[実施例42〜59]
表8〜10に示す化合物を用い、実施例24と同様の方法で反応させ、1H−NMR分析を行ったところ、上記式(125)又は(126)で表されるオキサゾリジン−2−チオン環を含む化合物を得た。得られた化合物を用い、実施例24と同様の方法で銅剥離強度を評価した。結果を表8〜10に示す。
[実施例60〜62]
表11に示す化合物を用い、実施例24と同様の方法で反応させ、1H−NMR分析を行ったところ、上記式(129)又は(130)で表されるチアゾリン−2−オン環を含む化合物を得た。得られた化合物を用い、実施例24と同様の方法で銅剥離強度を評価した。結果を表11に示す。
[比較例21〜26]
表12に示す化合物を用い、実施例24と同様の方法で反応させ、1H−NMR分析を行ったところ、下記式(131)又は(132)で表されるオキサゾリドン環を含む化合物を得た。得られた化合物を用い、実施例24と同様の方法で銅剥離強度を評価した。結果を表12に示す。
耐熱性の効果を奏する樹脂組成物は、その主鎖骨格、結合様式、分子量、耐熱性の発現に寄与する結合の含有量等により様々である。結合様式の観点では、上記した中でも、上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(43)、(44)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を有する樹脂を含有する樹脂組成物が好ましい。
耐熱性の発現に寄与する結合の含有量は、上記した数平均分子量Mnとも相関する。1分子あたりに含まれる窒素−炭素−硫黄結合を構成する硫黄原子の数及び窒素−炭素−酸素結合を構成する酸素原子の数n1で樹脂の数平均分子量を除した値(Mn/n1)が、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。本実施の形態の樹脂組成物は、上記したように金属との密着性の面においても効果を奏するが、そのような効果を発現する観点からも、樹脂が1分子あたりに多くの上記結合を有していることが好ましい。一方で、樹脂があまりに多くの上記結合を有している場合、特に、樹脂が上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(43)、(44)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を有する場合、塗膜性能の一つである柔軟性が損なわれる場合もある。そのような観点から、Mn/n1は好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。n1は、例えば、樹脂単位重量(1g)あたりの当該結合の数X1(単位mol/g)を、例えば赤外線吸収スペクトルや1H−NMR等によって求め、上記した数平均分子量(Mn)から、式:n1=Mn・X1によって算出することができる。樹脂が窒素−炭素−硫黄結合及び窒素−炭素−酸素結合の両方を含む場合、n1はそれぞれの結合を構成する硫黄原子及び酸素原子の合計数である。
耐熱性の発現に寄与する結合の含有量は、上記した数平均分子量Mnとも相関する。1分子あたりに含まれる窒素−炭素−硫黄結合を構成する硫黄原子の数及び窒素−炭素−酸素結合を構成する酸素原子の数n1で樹脂の数平均分子量を除した値(Mn/n1)が、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。本実施の形態の樹脂組成物は、上記したように金属との密着性の面においても効果を奏するが、そのような効果を発現する観点からも、樹脂が1分子あたりに多くの上記結合を有していることが好ましい。一方で、樹脂があまりに多くの上記結合を有している場合、特に、樹脂が上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(43)、(44)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を有する場合、塗膜性能の一つである柔軟性が損なわれる場合もある。そのような観点から、(Mn/n1は好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。n1は、例えば、樹脂単位重量(1g)あたりの当該結合の数X1(単位mol/g)を、例えば赤外線吸収スペクトルや1H−NMR等によって求め、上記した数平均分子量(Mn)から、式:n1=Mn・X1によって算出することができる。樹脂が窒素−炭素−硫黄結合及び窒素−炭素−酸素結合の両方を含む場合、n1はそれぞれの結合を構成する硫黄原子及び酸素原子の合計数である。樹脂が式(6)〜(8)の構成単位を有する場合、当該樹脂1分子あたりに含まれる式(6)〜(8)で表される構成単位の数の和がn2であるときに、Mn/n2が50以上300以下である。n2は式:n2=X2・Mnにより算出される。X2は当該樹脂1gあたりに含まれる式(6)〜(8)で表される構成単位の数の和であり、X1と同様の方法により求めることができる。
耐熱性の発現に寄与する結合の含有量は、上記した数平均分子量Mnとも相関する。1分子あたりに含まれる窒素−炭素−硫黄結合を構成する硫黄原子及び窒素−炭素−酸素結合を構成する酸素原子の数n1で樹脂の数平均分子量を除した値(Mn/n1)が、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。本実施の形態の樹脂組成物は、上記したように金属との密着性の面においても効果を奏するが、そのような効果を発現する観点からも、樹脂が1分子あたりに多くの上記結合を有していることが好ましい。一方で、樹脂があまりに多くの上記結合を有している場合、特に、樹脂が上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(43)、(44)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を有する場合、塗膜性能の一つである柔軟性が損なわれる場合もある。そのような観点から、(Mn/n1は好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。n1は、例えば、樹脂単位重量(1g)あたりの当該結合の数X1(単位mol/g)を、例えば赤外線吸収スペクトルや1H−NMR等によって求め、上記した数平均分子量(Mn)から、式:n1=Mn・X1によって算出することができる。樹脂が窒素−炭素−硫黄結合及び窒素−炭素−酸素結合の両方を含む場合、n1はそれぞれの結合を構成する硫黄原子及び酸素原子の合計数である。
耐熱性の発現に寄与する結合の含有量は、上記した数平均分子量Mnとも相関する。1分子あたりに含まれる窒素−炭素−硫黄結合を構成する硫黄原子及び窒素−炭素−酸素結合を構成する酸素原子の数n1で樹脂の数平均分子量を除した値(Mn/n1)が、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。本実施の形態の樹脂組成物は、上記したように金属との密着性の面においても効果を奏するが、そのような効果を発現する観点からも、樹脂が1分子あたりに多くの上記結合を有していることが好ましい。一方で、樹脂があまりに多くの上記結合を有している場合、特に、樹脂が上記式(6)〜(8)、(11)〜(14)、(43)、(44)、(45)、(46)又は(47)で表される構成単位を有する場合、塗膜性能の一つである柔軟性が損なわれる場合もある。そのような観点から、(Mn/n1は好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。n1は、例えば、樹脂単位重量(1g)あたりの当該結合の数X1(単位mol/g)を、例えば赤外線吸収スペクトルや1H−NMR等によって求め、上記した数平均分子量(Mn)から、式:n1=Mn・X1によって算出することができる。樹脂が窒素−炭素−硫黄結合及び窒素−炭素−酸素結合の両方を含む場合、n1はそれぞれの結合を構成する硫黄原子及び酸素原子の合計数である。