JPWO2014156496A1 - 着色組成物、捺染方法、布帛、板材、及びテトラアザポルフィリン系化合物 - Google Patents
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Abstract
Description
近年では、インクジェット法を利用した技術が提案されているが、インクジェット法で捺染する際のインクに使用される染料自体の改善は進んでいないのが実情である。
本発明の第一の目的は、ポリアミドに対する捺染又は染色において、着色部の色相及び耐光性に優れた着色組成物、捺染方法、布帛、及び板材を提供することにある。
また、本発明の第二の目的は、新たな構造を有するテトラアザポルフィリン系化合物を提供することにある。
上記の課題を達成するための具体的な手段は、以下に示す通りである。
R101は、水素原子、酸素ラジカル(−O・)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、R102及びR103は、各々独立に、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。R101、R102、及びR103は、いずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。
L101は、アルキレン基、−O−、−S−、−NR201−、−CO−、−SO2−、−COO−、−SO2NR201−、−CONR201−、−SiR201 2−、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせた2価の連結基を表す。R201は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
なお、L101は、各々独立に、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れてNR101R102R103と結合し、またテトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れてテトラアザポルフィリン骨格と結合している。SO3M102は、各々独立に、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れてNR101R102R103と結合し、および/またはテトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れてテトラアザポルフィリン骨格と結合している。
M101は、銅原子、亜鉛原子、ニッケル原子、又はコバルト原子を表し、M102は、水素原子、アンモニウム、又はアルカリ金属原子を表す。n101及びn103は、各々独立に、1以上の正数を表す。
<3> 一般式(I)において、R101が水素原子であり、R102及びR103が3級アルキル基である<2>に記載の着色組成物である。
<4> 一般式(I)で表される染料化合物が、下記一般式(II)で表される染料化合物である<1>に記載の着色組成物である。
<6> 一般式(II)において、L101がスルファモイル基、又は−SO2(CH2)3SO2NH−である、<5>に記載の着色組成物である。
<7> 捺染に用いられる<1>〜<6>のいずれか1つに記載の着色組成物である。
<8> インクジェット用インクに用いられる<1>〜<7>のいずれか1つに記載の着色組成物である。
<9> 更に、水性有機溶剤と非イオン性界面活性剤とを含んで成る、<8>に記載の着色組成物である。
<10>
水性有機溶剤がグリセリン、および/またはジエチレングリコールであり、非イオン性界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤である、<9>に記載の着色組成物である。
<11> <8>〜<10>のいずれか1つに記載の着色組成物を、インクジェット法により、ポリアミド繊維を含む布帛に付与する捺染方法である。
<12> 着色組成物の布帛への付与に先だって、グアーガム、尿素、硫酸塩および水を含んで成る前処理剤を布帛に付与する、<11>に記載の捺染方法である。
<13> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の着色組成物により捺染された布帛である。
<14> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の着色組成物により染色されたポリアミド材を含む板材である。
<15> 下記一般式(I)で表されるテトラアザポルフィリン系化合物である。
R101は、水素原子、酸素ラジカル(−O・)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、R102及びR103は、各々独立に、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。R101、R102、及びR103は、いずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。
L101は、アルキレン基、−O−、−S−、−NR201−、−CO−、−SO2−、−COO−、−SO2NR201−、−CONR201−、−SiR201 2−、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせた2価の連結基を表す。R201は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
L101は、各々独立に、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れてNR101R102R103と結合し、またテトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れてテトラアザポルフィリン骨格と結合している。SO3M102は、各々独立に、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れてNR101R102R103と結合し、および/またはテトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れてテトラアザポルフィリン骨格と結合している。
M101は、銅原子、亜鉛原子、ニッケル原子、又はコバルト原子を表し、M102は、水素原子、アンモニウム、又はアルカリ金属原子を表す。n101及びn103は、各々独立に、1以上の正数を表す。
本発明によれば、新たな構造を有するテトラアザポルフィリン系化合物が提供される。
本発明においては、ナイロン等のポリアミド材の捺染又は染色に適合する着色成分として、テトラアザポルフィリン骨格に連結基を介してヒンダートアミン構造を導入したテトラアザポルフィリン系化合物(染料化合物)を含有する。テトラアザポルフィリン骨格に連結基を介してヒンダートアミン構造が置換された特定構造を持つことで、ポリアミド繊維を含む布帛に対する捺染や、ポリアミド材を含む板材(フィルム又はシート等)に対する染色において、着色部の色相及び耐光性が改善される。
本発明の着色組成物は、着色成分として、下記一般式(I)で表される染料化合物(テトラアザポルフィリン系化合物)の少なくとも一種を含有する。この染料化合物は、テトラアザポルフィリン骨格に連結基L101を介してヒンダートアミン構造部分が置換されることで、染着部の色合い及びその耐光性が高められており、更に任意の位置にSO3Mが置換されていることで、水系に調製されるインクへの溶解性を保持している。
Y101〜Y112は、後述するX101で置換されていてもよい。
R101で表される炭素数1〜20のアルキル基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよく、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル気、n−ヘキシル基等が挙げられる。
R102及びR103は、好ましくは、各々独立に、炭素数3〜20の2級アルキル基、又は炭素数4〜20の3級アルキル基を表す。
R102、R103で表される炭素数3〜20の2級アルキル基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよく、炭素数3〜10の2級アルキル基が好ましく、炭素数3〜8の2級アルキル基がより好ましく、特に好ましくは炭素数3〜6の2級アルキル基である。2級アルキル基の例としては、イソプロピル基、s−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、R102とR103とは、同一の基を表す場合が好ましい。
形成される環の例としては、アジリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環等が挙げられる。中でも、R102及びR103が3級アルキルを表し、R102及びR103が互いに結合してピペリジン環を形成している態様が好ましい。
中でも、L101としては、アルキレン基、−SO2−もしくはスルファモイル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表すことが好ましい。
R201で表されるアルキル基は、無置換でもよいし置換されていてもよく、直鎖状、分岐鎖、又は環状のいずれでもよい。R201で表されるアルキル基は、炭素数1〜48のアルキル基が好ましく、炭素数1〜24のアルキル基がより好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基等が挙げられる。
また、一般式(I)中の「SO3M102」は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れてNR101R102R103と結合すると共にあるいは結合せずに、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れてテトラアザポルフィリン骨格と結合している。
X101の置換数を表すn102は、0以上の正数を表し、好ましくは0〜4の正数、より好ましくは0〜2の正数、特に好ましくは0〜1の正数である。
下記一般式(Ia)において、X101は、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れてNR101R102R103と結合すると共にあるいは結合せずに、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れてテトラアザポルフィリン骨格と結合している。
また、上記の置換基が更に置換可能な基である場合には、上記で説明した置換基もしくはスルホ基(SO3M)で置換されていてもよい。
また、n101個のL101は各々、(b)で表される構造中の水素原子(すなわち、R101中の水素原子、4つのCH3の水素原子、及び6員環を形成している無置換の3つのCH2の水素原子)の1つが外れることで、(b)で表される構造と結合している。L101は、(b)で表される構造中の6員環を形成している無置換の3つのCH2のいずれかの水素原子が外れて結合している場合が好ましい。
一般式(II)中のL101、R201は、一般式(1)中のL101、R201とそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
一般式(II)中のM101、M102、n101、及びn103は、一般式(1)中のM101、M102、n101、及びn103とそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
X101の置換数を表すn102は、0以上の数字を表し、好ましくは0〜4、より好ましくは0〜2、特に好ましくは0〜1である。
一般式(I)で表される染料化合物の合成方法としては、大別して、フタル酸誘導体から合成する合成法、及びフタロシアニンから合成する合成法などが考えられる。
一般式(I)で表される染料化合物の合成方法の一例として、フタル酸誘導体から合成する方法があり、例えば、「フタロシアニン−化学と機能−」(白井−小林共著、p.1〜p.62、(株)アイピーシー発行)、”Phthalocyanines - Properties andApplications”(C. C.Leznoff-A. B. P. Lever共著、p.1〜54、VCH発行)等の記載を参照して行なうことができる。具体的には、(1)フタロニトリルと金属塩との反応(フタロニトリル法)、(2)無水フタル酸もしくはフタル酸もしくはフタルイミドと尿素との反応(ワイラー法)が挙げられ、置換基導入のしやすさの観点から(1)フタロニトリル法が好ましい。
フタロニトリル法によって種々の置換基が置換したフタロシアニン化合物を得る方法として、下記のように、種々の置換基が置換したフタロニトリルを所望の比率で混合したものをフタロシアニン環化する方法が挙げられる。ここで、アザフタロシアニン誘導体については、原料を対応するアザフタロニトリルとフタロニトリルとを混合しフタロシアニン環化することで得ることができる。
スルファモイル基もしくはスルホ基を導入する際に限った方法であるが、例えば下記スキームのように、フタロシアニンをクロロスルホニル化もしくはスルホ化し、アミド化もしくは加水分解することで側鎖を導入することができる。具体的な方法については、例えば、国際出願第00/17275号パンフレット、国際出願第00/08103号パンフレット、国際出願第00/08101号パンフレット、国際出願第98/41853号パンフレット、特開平10−36471号公報、特表2002−522561号公報、米国特許第6332918号明細書などの記載を参照することができる。
また、一般式(I)で表される染料化合物において、n101個の「−L101−(NR101R102R103)」は、テトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位、β位のいずれに置換されてもよいが、布帛への染色性の観点から、α位に置換することが好ましい。
染料(一般式(I)で表される染料化合物、及びこの染料以外の着色剤を含む)の着色組成物中の含有量としては、良好な発色濃度が得られ、着色組成物の保存安定性を考慮すると、着色組成物の全質量に対して、1質量%〜20質量%が好ましく、4質量%〜15質量%がより好ましく、5質量%〜15質量%が更に好ましい。
本発明の着色組成物は、上記の一般式(I)で表される染料化合物のほか、水を含有する。
水は、特に制限されず、イオン交換水でも水道水でもよい。
水の含有量は、着色組成物が既述の一般式(I)で表される染料化合物のみを含む場合は、着色組成物の全質量から一般式(I)で表される染料化合物の含有量を差し引いた残部である。着色組成物がさらに後述の成分を含む場合、一般式(I)で表される染料化合物と他の成分との全含有量を差し引いた残部である。
本発明の着色組成物が含有し得る有機溶媒は、水性有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒の例としては、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等)、一価アルコール類(例えばメタノール、エタノール、ブタノール等)、多価アルコールのアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、2,2′−チオジエタノール、アミド類(例えばN,N−ジメチルホルムアミド等)、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、複素環類(2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等)、アセトニトリル等が挙げられる。
また、上記の乾燥防止剤は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
本発明の着色組成物中の有機溶媒の含有量は、着色組成物の全質量に対して、1質量%〜60質量%であることが好ましく、2質量%〜50質量%であることがより好ましい。
本発明の着色組成物は、保存安定性、吐出安定性、吐出精度等を高める観点から、各種界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれの界面活性剤も用いることができる
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アセチレングリコール等が挙げられる。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好適な例として挙げられる。
その他、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)において界面活性剤として挙げられているものも用いることができる。
本発明の着色組成物中の界面活性剤の含有量は、着色組成物の全質量に対して、0.001質量%〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、かかる範囲で着色組成物の表面張力を任意に調整することが好ましい。
本発明の着色組成物は、その他に従来公知の添加剤を含有していてもよい。例えば、酸塩基や緩衝液等のpH調整剤、蛍光増白剤、消泡剤、潤滑剤、増粘剤、紫外線吸収剤、退色防止剤、帯電防止剤、マット剤、酸化防止剤、比抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料、還元防止剤、防腐剤、防黴剤等である。
紫外線吸収剤としては、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチ・ディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。紫外線吸収剤を含有することで、画像の保存性を向上させることができる。
退色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の退色防止剤を使用することができる。有機の退色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類等があり、金属錯体としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体等がある。より具体的にはリサーチ・ディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁、及びUS5,356,443に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。退色防止剤を含有することで、画像の保存性を向上させることができる。
本発明の着色組成物は、長期保存安定性を保つため、防腐剤、及び防黴剤の少なくとも一方を含有していてもよい。防腐剤や防黴剤を含有することで、長期での保存安定性を高めることができる。防腐剤及び防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK;ランクセス社製)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL;アーチケミカルズ社製)等が挙げられる。
本発明の着色組成物は、布帛上への着色剤供給量に制約があるインクジェット用インク(以下、単に「インク」ともいう。)として好適に用いることができる。インク中の一般式(I)で表される染料化合物及び水の含有量は、既述の本発明の着色組成物において示した含有量の範囲とすることができる。
その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、退色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加することができる。
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。インクジェット用インクに乾燥防止剤が含有されることで、インクを吐出する吐出ヘッドのノズルのインク噴射口において、上記のインクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止することができる。
乾燥防止剤の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又は、エチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又は、エチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又は、ブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうち、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。
また、乾燥防止剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。上記のインクジェット用インクが乾燥防止剤を含有する場合、乾燥防止剤の含有量は、インクジェット用インクの全質量の全質量に対して、10質量%〜50質量%が好ましい。
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、及びその塩が挙げられる。
防黴剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。インクジェット用インクが防黴剤を含有する場合、防黴剤の含有量は、インクジェット用インクの全質量に対して、0.02質量%〜1.00質量%が好ましい。
pH調整剤としては、有機塩基、無機アルカリ等の中和剤を用いることができる。インクジェット用インクにpH調整剤が含有されることで、インクジェット用インクの保存安定性を向上させることができる。pH調整剤は、インクジェット用インクのpHが6〜10になるように添加することが好ましく、7〜10になるように添加することがより好ましい。
表面張力調整剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の各種界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい例は、既述の界面活性剤の欄にて例示したものと同じである。
消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物が好ましい。
表面張力及び粘度は、種々の添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防黴剤、防錆剤、分散剤、界面活性剤等を添加することによって、調整することができる。
キレート剤は、インク中における沈殿物等の析出物の発生を防止する目的、また、保存安定性や目詰まり回復性を改良する目的で好適に使用される。
インクの着色剤として染料を用いると、インク中に含まれる金属(Ca、Mg、Si、Fe等)が析出物の発生や目詰まり回復性の低下の原因となり得るため、金属イオンを一定量以下に管理する必要があること、また、銅錯体染料を用いた場合には、金属イオンの量を管理しても、遊離の銅イオンの量も管理しなければ、析出物の発生や目詰まり回復性の低下が認められることが知られている(特開2000-355665号、特開2005−126725号公報等参照)。
本発明における一般式(I)で表される染料化合物は、特に銅錯体染料であることが好ましく、本発明の着色組成物が銅錯体染料である一般式(I)で表される染料化合物を含む場合には、インク中の遊離の銅イオンは、10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0ppm〜5ppmである。
なお、金属イオンや遊離の銅イオン濃度を制御する方法としては、キレート剤を使用する方法以外に、染料の精製度を上げる方法も挙げられる。
本発明の布帛は、既述の本発明の着色組成物により捺染されたものである。本発明の着色組成物は、布帛の捺染に好適である。
布帛の種類は、特に制限されず、レーヨン、綿、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等、種々の繊維を含んで構成された布帛を用いることができる。中でも、本発明の効果がより奏される点で、ポリアミド繊維を含む布帛であることが好ましく、ナイロン、絹、羊毛がより好ましい。
特に、本発明の着色組成物は、ナイロンの捺染に特に好適である。本発明の着色組成物によれば、従来の汎用フタロシアニン染料を用いた着色組成物によるナイロン捺染に比べ、染色部の耐光性が高い捺染ナイロンを得ることができる。
ポリアミド繊維は、織物、編物、不織布等いずれの形態であってもよい。
色相角は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した知覚的にほぼ均等な色差を持つ色空間であるL*a*b*色空間の色座標a*、b*を用いて次式により算出される、色相を表すパラメータである。
色相角(hab)=tan-1(b*/a*)
本発明の捺染方法は、既述の本発明の着色組成物を、インクジェット法により、ポリアミド繊維を含む布帛に付与することにより、布帛を染着するものである。布帛は、既述の種々の布帛を用いることができ、中でもポリアミド繊維を含む布帛が好ましく、ポリアミド繊維としてはナイロンが好ましい。
また、本発明の捺染方法では、インクを布帛に付与するにあたっては、着色剤の布帛への固定化がより高まるように、前処理を施してもよい。
本発明の捺染方法は、前処理剤を布帛に付与する前処理工程を有して構成されていてもよい。
前処理工程は、既述の捺染工程における一般式(I)で表される染料化合物の布帛への固定化が高まるように、捺染の前に、予め布帛に対して、ヒドロトロピー剤、水性(水溶性)金属塩、pH調整剤、pH緩衝剤、高分子成分等を含有する前処理剤を付与する工程である。
前処理工程においては、絞り率{(前処理剤質量/布帛質量)×100}5%〜150%、好ましくは10%〜130%の範囲で前処理剤をパッティングすることが好ましい。前処理剤は、更に、撥水剤、界面活性剤等を付与してもよい。
−ヒドロトロピー剤−
本発明において、ヒドロトロピー剤は、一般に、着色組成物が付与された布帛が蒸気下で加熱される際に、画像の発色濃度を高める役割を果たす。ヒドロトロピー剤としては、例えば、通常、尿素、アルキル尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、チオ尿素、グアニジン酸塩、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が挙げられる。
水性(水溶性)金属塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物のように、典型的なイオン結晶を形成するものであって、pH4〜10である化合物が挙げられる。
かかる化合物の代表的な例としては、アルカリ金属では、NaCl、Na2SO4、KCl、CH3COONa等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、CaCl2、MgCl2等が挙げられる。中でも、Na、K、Caの塩類が好ましい。
pH調整剤としては、アルカリ(塩基)、酸、又は、アルカリと酸との組み合わせが挙げられる。pH調整剤とは、布帛に付与される着色組成物の液性(pH)を調整する化合物ないし組成物をいい、着色組成物の液性を変化させる成分をいう。pH調整剤を含有することで、着色剤の布帛への固定化反応を高めることができる。
前処理剤の全質量に対するpH調整剤の含有量は1質量%未満であるが、0質量%であることが好ましい。
pH緩衝剤としては、例えば、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム等に代表される酸アンモニウム塩が挙げられる。pH緩衝剤とは、着色組成物の液性変化を抑制する成分をいう。pH緩衝剤は、pH調整剤と同様に、着色剤の布帛への固定化反応を高めることができる。
高分子成分は、天然高分子であってもよいし、合成高分子であってもよい。また、水性(水溶性)高分子であっても、非水性高分子であってもよいが、本発明の捺染方法に用いる着色組成物用には水性高分子であることが好ましい。高分子成分を含有することで、着色剤を布帛に粘着させる糊剤としての役割を付与できる。
水性高分子としては、例えば、トウモロコシ、小麦等のデンプン物質、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系物質、アルギン酸ナトリウム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラガントガム、グアーガム、タマリンド種子等の多糖類、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質物質、タンニン系物質、リグニン系物質等の公知の天然水性高分子が挙げられる。
また、合成水性高分子としては、例えば、公知のポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、アクリル酸系水性高分子、無水マレイン酸系水性高分子等が挙げられる。これらの中でも多糖類系高分子やセルロース系高分子が好ましい。
撥水剤としては、例えば、パラフィン系、フッ素系化合物、ピリジニウム塩類、N−メチロールアルキルアミド、アルキルエチレン尿素、オキサゾリン誘導体、シリコーン系化合物、トリアジン系化合物、ジルコニウム系化合物、或いはこれらの混合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの撥水剤の中でも、パラフィン系及びフッ素系撥水剤は、滲み防止、濃度の点において特に好ましい。
撥水剤の布帛に対する付与量は、特に制限されないが、布帛の全質量に対して0.05質量%〜40質量%の範囲で付与することが好ましい。これは、0.05質量%未満ではインクの過度の浸透を防止する効果が少なく、40質量%を超えて含有させても性能的に大きな変化がないからである。
撥水剤の布帛の全質量に対する使用量は、0.5質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
前処理剤として使用できる界面活性剤としては、陰イオン性、非イオン性、両性界面活性剤等が挙げられる。特に、HLB12.5以上の非イオン系界面活性剤を用いることが好ましく、14以上の非イオン系界面活性剤を用いることがより好ましい。
両性界面活性剤としては、ベタイン型等を使用することができる。
界面活性剤の布帛に対する付与量は、特に制限されないが、布帛の全質量に対して0.01質量%〜30質量%付与することが好ましい。
前処理剤は、更に、使用する染料の特性等に応じて還元防止剤、酸化防止剤、均染剤、濃染剤、キャリヤー、還元剤、酸化剤等の添加剤を含有していてもよい。
前処理剤が、既述の各種成分の混合物である場合、混合物である前処理剤の全質量に対する各種成分の含有量は、前処理剤を布帛に付与したときに、布帛の全質量に対する各種成分の付与量が、既述の範囲となるように、目的に応じて適宜調整すればよい。
インクジェット法による捺染において、上記の手順を踏むことで、インクを布帛に印字し、そのまま放置しておく場合に比べ、一般式(I)で表される染料化合物の染着が充分に行なわれ、発色濃度が高く、また耐水性に優れる。特に、長尺の布帛をローラー等で搬送しながら長時間印字し続ける場合などは、印字された布帛が延々と搬送されて出てくるため、床等に印字した布帛が重なっていってしまうことがあり、場所をとるばかりか、安全性を損ない、また予期せず汚れてしまう場合がある。そのため、印字後、印字された布帛を巻き取る操作を行なうことが好ましい。この巻き取り操作時に、布帛と布帛の間に紙や布、ビニール等の印字に関わらない媒体を挟んでもよい。但し、印字された布帛を途中で切断する場合や、印字された布帛が短い場合は必ずしも巻き取る必要はない。
捺染工程を経た布帛は、好ましくは後処理に付され、一般式(I)で表される染料化合物の繊維への固定化を促進させ、その後、定着しなかった着色剤、その他の成分、及び前処理剤を十分除去する後処理工程を経ることが好ましい。
後処理工程はいくつかの工程に分かれる。
後処理は、例えば、予備乾燥工程、スチーム工程、洗浄工程、及び乾燥工程を、この順に行なうことによって構成することができる。
まず、捺染工程の後、一般式(I)で表される染料化合物を含有する着色組成物(例えばインクジェット用インク)が付与された布帛を、常温(例えば25℃)〜150℃に0.5分〜30分間放置し、インクを予備乾燥することが好ましい。この予備乾燥により印捺濃度を向上させ、かつ滲みを有効に防止できる。なお、この予備乾燥とは、インクが布帛中に浸透することも含む。
スチーム工程は、インクが付与された布帛を、飽和蒸気中に曝すことで、一般式(I)で表される染料化合物の布帛への固定化を促進する工程である。
本発明の捺染方法によれば、後処理のうちスチーム工程は、布帛の種類によってその条件、特に、その時間を変化させることが好ましい。
例えば、布帛が羊毛である場合、スチーム工程の時間は1分〜120分が好ましく、より好ましくは3分〜90分程度である。また、布帛が絹である場合、時間は1分〜40分が好ましく、より好ましくは3分〜30分程度である。さらに、布帛がナイロンである場合、1分〜90分程度が好ましく、より好ましくは3分〜60分程度である。
このようにして、布帛にインクジェット法により付与されたインクのうち、大部分は布帛に固定化されるが、インクの一部の着色剤は繊維に染着しないものがある。この染着しない着色剤は、洗い流しておくことが好ましい。染着しない着色剤の除去には、従来公知の洗浄方法を採用することができる。例えば、常温(例えば25℃)から100℃の範囲の水もしくは温水を使用したり、アニオン、ノニオン系のソーピング剤を使用したりすることが好ましい。染着していない着色剤が完全に除去されていないと、種々の耐水性、例えば、洗濯堅牢性、耐汗堅牢性等において良好な結果が得られない場合がある。
布帛を洗浄した後は、乾燥させる工程を施すことが好ましい。乾燥は、洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したり、或いは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる等の方法で行なうことができる。
また、一般式(I)で表される染料化合物を含む本発明の着色組成物を、ポリアミド材を含む板材に付与することで、染色部の耐光性に優れたポリアミド材を含む板材(例えば、フィルムやシート)が得られる。
米国公開特許2012−238752に記載の手法にて、中間体001Cを合成した。中間体001Cと1当量の4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを、反応基質合計に対して10重量倍量のアセトニトリル中で攪拌し、析出した結晶を濾取することで中間体001Aを得た。
中間体001Bを19.6g、中間体001Aを12.0g、ジエチレングリコールを142mL、安息香酸アンモニウムを29.5g、無水塩化銅(II)を3.56gを混合し、100℃で12時間加熱攪拌した。ここへ濃塩酸12mLを滴下して、さらに30分間攪拌した後、イソプロピルアルコール2.9Lを添加し、さらに30分間攪拌した。析出した結晶を濾取した。得られた結晶を750mLの水に溶解させ、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶液のpHが12になるまで添加した。得られた溶液を陽イオン交換樹脂(Naフォーム)を充填したカラムを通過させ、エバポレーターで濃縮することで、実施化合物001の結晶を20.5g得た。
中間体001Bを16.3g、中間体001Aを18.0g、ジエチレングリコールを142mL、安息香酸アンモニウムを29.5g、無水塩化銅(II)を3.56gを混合し、100℃で12時間加熱攪拌した。ここへ濃塩酸12mLを滴下して、さらに30分間攪拌した後、イソプロピルアルコール2.9Lを添加し、さらに30分間攪拌した。析出した結晶を濾取した。得られた結晶を750mLの水に溶解させ、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶液のpHが12になるまで添加した。得られた溶液を陽イオン交換樹脂(Naフォーム)を充填したカラムを通過させ、エバポレーターで濃縮することで、実施化合物002の結晶を23.0g得た。
得られた結晶のESI−マススペクトル測定し、1139.1のピーク(ピペリジン部分が1個入ったもの−SO3Hフォーム)と1383.2のピーク(ピペリジン部分が2個入ったもの−SO3Hフォーム)を確認した。また、イオンクロマトグラフィーより、陽イオンはNaであることを確認した。可視吸収スペクトルのλmaxは、673nm(ジメチルホルムアミド溶液)であった。
実施化合物001を水に溶かし、5重量%の水溶液を調整した。この溶液を陽イオン交換樹脂(Kフォーム)を充填したカラムを通過させ、得られた水溶液をエバポレーターで濃縮することで実施化合物003を得た。得られた結晶のESI−マススペクトル測定し、1139.1のピーク(実施化合物003の−SO3Hフォーム)を確認した。K塩になっていることはイオンクロマトグラフィーで確認した。可視吸収スペクトルのλmaxは、669nm(ジメチルホルムアミド溶液)であった。
実施化合物001を水に溶かし、5重量%の水溶液を調整した。この溶液を陽イオン交換樹脂(Liフォーム)を充填したカラムを通過させ、得られた水溶液をエバポレーターで濃縮することで実施化合物004を得た。得られた結晶のESI−マススペクトル測定し、1139.1のピーク(実施化合物004の−SO3Hフォーム)を確認した。Li塩になっていることをイオンクロマトグラフィーで確認した。可視吸収スペクトルのλmaxは、670nm(ジメチルホルムアミド溶液)であった。
実施化合物001を水に溶かし、5重量%の水溶液を調整した。この溶液を陽イオン交換樹脂(NH4フォーム)を充填したカラムを通過させ、得られた水溶液をエバポレーターで濃縮することで実施化合物005を得た。得られた結晶のESI−マススペクトル測定し、1139.1のピーク(実施化合物005の−SO3Hフォーム)を確認した。また、NH4塩になっていることをイオンクロマトグラフィーで確認した。可視吸収スペクトルのλmaxは、669nm(ジメチルホルムアミド溶液)であった。
文献(Negrimovsky,V.等、Phosphorus, Sulfur and Silicon and the Related Elements,1995,vol.104,p.161- 168)記載の手法にて、中間体006Bのプロトン化体(SO3H体)を得た。得られたプロトン化体をイソプロピルアルコール中、1.1当量の酢酸カリウムを作用させ、析出した結晶を濾取することで、中間体006Bを得た。
文献(Negrimovsky,V.等、Phosphorus, Sulfur and Silicon and the Related Elements,1995,vol.104,p.161- 168)記載の手法にて、中間体006Cを合成した。中間体006Cと1当量の4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを、反応基質合計に対して10重量倍量のアセトニトリル中で攪拌し、析出した結晶を濾取することで中間体006Aを得た。
得られた結晶のESI−マススペクトル測定し、1033.1のピーク(実施化合物006の−SO3Hフォーム)を確認した。また、イオンクロマトグラフィーより、陽イオンはNaであることを確認した。可視吸収スペクトルのλmaxは、674nm(ジメチルホルムアミド溶液)であった。
中間体007Cを文献(Russian Journal of General Chemistry, 1997, vol. 67, p. 1289−1293)記載に方法で合成した。
得られた結晶のESI−マススペクトル測定し、1139.1のピーク(SO3Naが3個、SO3NH2が0個、ピペリジンを含む置換基が1個、置換したもののSO3Hフォーム)と1138.1のピーク(SO3Naが2個、SO2NH2が1個、ピペリジンを含む置換基が1個、置換したもののSO3Hフォーム)を確認した。また、イオンクロマトグラフィーより、陽イオンはNaであることを確認した。可視吸収スペクトルのλmaxは、670nm(ジメチルホルムアミド溶液)であった。
中間体008C(東京化成工業株式会社製)を0.17g、中間体001Bを1.63g、中間体001Aを1.20g、ジエチレングリコールを14mL、安息香酸アンモニウムを2.95g、無水塩化銅(II)を0.36gを混合し、100℃で12時間加熱攪拌した。ここへ濃塩酸1mLを滴下して、さらに30分間攪拌した後、イソプロピルアルコール0.3Lを添加し、さらに30分間攪拌した。析出した結晶を濾取した。得られた結晶を75mLの水に溶解させ、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶液のpHが12になるまで添加した。得られた溶液を、陽イオン交換樹脂(Naフォーム)を充填したカラムを通過させ、エバポレーターで濃縮することで、実施化合物008の結晶を1.6g得た。
得られた結晶のESI−マススペクトル測定し、1060.1のピーク(実施化合物008のSO3Hフォーム)を確認した。また、イオンクロマトグラフィーより、陽イオンはNaであることを確認した。可視吸収スペクトルのλmaxは、673nm(ジメチルホルムアミド溶液)であった。
中間体009Cのプロトン化体(SO3H体)を文献(WO2006/51258)記載の方法で合成した。得られたプロトン化体をイソプロピルアルコール中、1.1当量の酢酸カリウムを作用させ、析出した結晶を濾取することで、中間体009Cを得た。
中間体009Cを0.48g、中間体001Bを1.63g、中間体001Aを1.20g、ジエチレングリコールを14mL、安息香酸アンモニウムを2.95g、無水塩化銅(II)を0.36gを混合し、100℃で12時間加熱攪拌した。ここへ濃塩酸1mLを滴下して、さらに30分間攪拌した後、イソプロピルアルコール0.3Lを添加し、さらに30分間攪拌した。析出した結晶を濾取した。得られた結晶を75mLの水に溶解させ、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶液のpHが12になるまで添加した。得られた溶液を、陽イオン交換樹脂(Naフォーム)を充填したカラムを通過させ、エバポレーターで濃縮することで、実施化合物009の結晶を1.7g得た。
得られた結晶のESI−マススペクトル測定し、1260.1のピーク(実施化合物009のSO3Hフォーム)を確認した。また、イオンクロマトグラフィーより、陽イオンはNaであることを確認した。可視吸収スペクトルのλmaxは、672nm(ジメチルホルムアミド溶液)であった。
文献(Phosphorus, Sulfur and Silicon and the Related Elements,1995, vol.104, p. 161−168)記載の方法で合成した中間体010Bと、1当量のN,N−ジイソプロピルエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)を、反応基質合計に対して10重量倍量のアセトニトリル中で攪拌し、析出した結晶を濾取することで中間体010Aを得た。
得られた結晶のESI−マススペクトル測定し、1021.1のピーク(実施化合物010の−SO3Hフォーム)を確認した。また、イオンクロマトグラフィーより、陽イオンはNaであることを確認した。可視吸収スペクトルのλmaxは、671nm(ジメチルホルムアミド溶液)であった。
[ナイロン布帛の染色]
−インク組成物の調製−
下記の組成中の各成分を混合し、得られた混合液を孔径10μmのメンブランフィルターでろ過することにより、捺染用インクを調製した。
<インク組成>
・下記表1に示す染料化合物 ・5質量%
・グリセリン(和光純薬工業社製;水性有機溶媒) ・10質量%
・ジエチレングリコール(和光純薬工業社製;水性有機溶媒)・12質量%
・オルフィンE1010 ・1質量%
(日信化学工業社製;アセチレングリコール系界面活性剤)
・水 ・72質量%
(1)前処理剤の調製
下記組成中の成分を混合して、前処理剤を調製した。
<前処理剤の組成>
・グアーガム(日晶社製、MEYPRO GUM NP)・・・2質量%
・尿素(和光純薬工業社製) ・・・5質量%
・硫酸アンモニウム(和光純薬工業社製) ・・・4質量%
・水 ・・・89質量%
上記で得た前処理剤を用い、絞り率を90%として絹製布帛をパッティングして、処理済み布帛を得た。インクジェットプリンタ(富士フイルムDimatix社製、DMP−2381)に、得られたインクをセットした上、得られた処理済み布帛にベタ画像を形成した。画像が形成された布帛を乾燥した後、スチーム工程にて飽和蒸気中、100℃で120分間スチームをかけ、着色剤を布帛の繊維に固着させた。その後、布帛を冷水で5分間、60℃の温水で5分間洗った後、乾燥した。このようにして、捺染サンプルを作製した。
作製した捺染サンプルの各々について、画像部(染着部)における色相及び耐光性の評価を行なった。評価結果は、下記表1〜表2に示す。
各布帛に形成されたベタ画像について、X−rite分光測色計(X−rite938、X−rite社製)を使用してCIE表色系のa*、及び、b*を測定し、下記式から色相角を算出した。
色相角(hab)=tan−1(b*/a*)
各布帛に形成されたベタ画像について、キセノンフェードメータを用いて、ISO 105−B02に準拠した測定を行なうことで、耐光性を評価した。なお、耐光性の許容範囲は、3級以上である。
−染料溶液の調製−
下記の組成中の各成分を混合し、染料溶液を調製した。
<染料溶液の組成>
・下記表2に示す染料化合物 ・・・0.5質量%
・水 ・・・97.5質量%
・酢酸 ・・・1質量%
・酢酸アンモニウム ・・・1質量%
2cm×4cmサイズにカットした2軸延伸6ナイロンフィルム(ユニチカ社製、EMBLEM(R)、ON−15、厚み15um、内面コロナ処理)を、30mLの染料溶液に浸漬し、80℃に維持した染料溶液中に14時間保持した。その後、フィルムを取り出して十分に水洗し、乾燥した。このようにして、染色サンプルを作製した。
各染色サンプルについて、耐光性の評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。
3.耐光性
キセノンフェードメータを用いて、ISO 105−B02に準じて6時間キセノン光を照射した。照射前後のフィルムの吸収スペクトルを測定し、下記式により色素の残存率を算出した。
残存率(%)=(照射後の600nmの吸光度)/(照射前の600nmの吸光度)×100
本明細書に記述された全ての刊行物や特許出願、並びに技術標準は、それら個々の刊行物や特許出願、並びに技術標準が引用文献として特別に、そして個々に組み込むことが指定されている場合には、該引用文献と同じ限定範囲においてここに組み込まれるものである。本発明の範囲は下記特許請求の範囲及びその等価物に拠って決定されることを企図するものである。
Claims (15)
- 下記一般式(I)で表される染料化合物、及び水を含有する着色組成物。
〔式中、Y101,Y102,Y103,Y104,Y105,Y106,Y107,Y108,Y109,Y110,Y111,及びY112は、各々独立に、CH又は窒素原子を表す。但し、Y101〜Y104、Y105〜Y108、及びY109〜Y112のそれぞれの群の窒素原子の数は、0〜2である。
R101は、水素原子、酸素ラジカル(−O・)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、R102及びR103は、各々独立に、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。R101、R102、及びR103は、いずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。L101は、アルキレン基、−O−、−S−、−NR201−、−CO−、−SO2−、−COO−、−SO2NR201−、−CONR201−、−SiR201 2−、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせた2価の連結基を表す。R201は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。L101は、各々独立に、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れてNR101R102R103と結合し、またテトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れてテトラアザポルフィリン骨格と結合している。SO3M102は、各々独立に、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れてNR101R102R103と結合し、および/またはテトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れてテトラアザポルフィリン骨格と結合している。M101は、銅原子、亜鉛原子、ニッケル原子、又はコバルト原子を表し、M102は、水素原子、アンモニウム、又はアルカリ金属原子を表す。n101及びn103は、各々独立に、1以上の正数を表す。〕 - 一般式(I)において、Y101〜Y112がCHである請求項1に記載の着色組成物。
- 一般式(I)において、R101が水素原子であり、R102及びR103が3級アルキル基である請求項2に記載の着色組成物。
- 一般式(I)で表される染料化合物が、下記一般式(II)で表される染料化合物である請求項1に記載の着色組成物。
〔式中、R101は、水素原子、酸素ラジカル(−O・)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。L101は、アルキレン基、−O−、−S−、−NR201−、−CO−、−SO2−、−COO−、−SO2NR201−、−CONR201−、−SiR201 2−、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせた2価の連結基を表す。R201は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。M101は、銅原子、亜鉛原子、ニッケル原子、又はコバルト原子を表し、M102は、水素原子、アンモニウム、又はアルカリ金属原子を表す。n101及びn103は、各々独立に、1以上の正数を表す。〕 - 一般式(II)において、R101が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、L101がスルファモイル基、アルキレン基、スルホニル基、又はこれらの少なくとも2つを組み合わせた連結基であり、M101が銅原子であり、M102がアルカリ金属原子であり、n101が1〜2であり、n103が3〜4である化合物である請求項4に記載の着色組成物。
- 一般式(II)において、L101がスルファモイル基、または−SO2(CH2)3SO2NH−である、請求項5に記載の着色組成物。
- 捺染に用いられる請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の着色組成物。
- インクジェット用インクに用いられる請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の着色組成物。
- 更に、水性有機溶剤と非イオン性界面活性剤とを含んで成る、請求項8に記載の着色組成物。
- 前記水性有機溶剤がグリセリン、および/またはジエチレングリコールであり、前記非イオン性界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤である、請求項9に記載の着色組成物。
- 請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の着色組成物を、インクジェット法により、ポリアミド繊維を含む布帛に付与する捺染方法。
- 前記着色組成物の前記布帛への付与に先だって、グアーガム、尿素、硫酸塩および水を含んで成る前処理剤を前記布帛に付与する、請求項11に記載の捺染方法。
- 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の着色組成物により捺染された布帛。
- 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の着色組成物により染色されたポリアミド材を含む板材。
- 下記一般式(I)で表されるテトラアザポルフィリン系化合物。
〔式中、Y101,Y102,Y103,Y104,Y105,Y106,Y107,Y108,Y109,Y110,Y111,及びY112は、各々独立に、CH又は窒素原子を表す。但し、Y101〜Y104、Y105〜Y108、及びY109〜Y112のそれぞれの群の窒素原子の数は、0〜2である。
R101は、水素原子、酸素ラジカル(−O・)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、R102及びR103は、各々独立に、炭素数1〜20の2級アルキル基、又は炭素数1〜20の3級アルキル基を表す。R101、R102、及びR103は、いずれか2つが互いに結合して環を形成してもよい。L101は、アルキレン基、−O−、−S−、−NR201−、−CO−、−SO2−、−COO−、−SO2NR201−、−CONR201−、−SiR201 2−、アリーレン基、2価のヘテロ環基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせた2価の連結基を表す。R201は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。L101は、各々独立に、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れてNR101R102R103と結合し、またテトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れてテトラアザポルフィリン骨格と結合している。SO3M102は、各々独立に、R101、R102、及びR103中のいずれかの水素原子が外れてNR101R102R103と結合し、および/またはテトラアザポルフィリン骨格の6員環のα位及びβ位のいずれかの水素原子が外れてテトラアザポルフィリン骨格と結合している。M101は、銅原子、亜鉛原子、ニッケル原子、又はコバルト原子を表し、M102は、水素原子、アンモニウム、又はアルカリ金属原子を表す。n101及びn103は、各々独立に、1以上の正数を表す。〕
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