JP2005002328A - 新規色素化合物およびそれを用いた記録用材料 - Google Patents

新規色素化合物およびそれを用いた記録用材料 Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェットや電子写真に代表されるハードコピー用色材や、印刷用インク、塗料、筆記用インク、カラーフィルター等の着色に用いることのできる、色合いが鮮明で耐候性に優れた色素化合物を提供すること。また、この色素化合物を色材として用いたインク、トナー等の記録用材料を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されることを特徴とする色素化合物。また、その色素化合物を含有するインクジェットカートリッジ用インク及び電子写真用トナー。
A−L1−X−L2−B (1)
[式中、Aは発色部位を示し、Bは退色防止能を有する安定化部位を示し、L1およびL2はA、X、Bを共有結合により連結するリンカーである]
【選択図】図1

Description

本発明は高い鮮明性を有し、保存安定性に優れた色素化合物およびそれを色材として使用した記録用材料に関する。
科学技術の進歩による生活様式の変化に伴い、色素の用途も従来の繊維やプラスチック、皮革等の材料染色用としてだけでなく、その情報を記録もしくは表示する特性を活かし、様々な産業分野で利用されるようになった。特に、近年におけるパーソナルコンピューターの急速な普及に伴い、それらから出力される文字や画像情報を記録するため、インクジェットや電子写真に代表されるハードコピー技術が発達してきた。
インクジェットプリンティング技術は、画質品位においては銀塩写真を凌駕するまで進歩してきているが、画像の経時安定性に関してはいまだ不十分な場合がある。インクジェット用インクに用いられる色材は染料または顔料であるが、前者は高精細な画質を得ることができるが、保存安定性に劣り、後者は耐候性に関しては比較的良好であるが、色再現範囲が狭く、画質の面で染料インクには劣るといった問題を有する場合が多い。
色材の退色原因は、光や湿度、オゾンなどの環境中の活性ガスであると考えられており、高い耐候性を有する新規な色材の開発が望まれている。
インクジェット用インクの耐候性を向上させる手段として、インク中に添加剤として紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を使用する方法が公開されている(特開平11−170686号公報(特許文献1)、特開2002−317135号公報(特許文献2)および特開2002−348512号公報(特許文献3)参照)。また、記録媒体である紙の改良による耐候性の向上方法に関する技術が公開されている(特開2002−19273号公報(特許文献4)、特開2002−212237号公報(特許文献5)、特開2002−219857号公報(特許文献6)および特開2003−48369号公報(特許文献7)参照)。いずれの技術においても、耐候性の向上は見られるものの、その効果は十分とは言えない場合がある。さらに、染料分子自体に耐候性を向上させる試みもなされている(例えば、シアン染料では、特開2000−303009号公報(特許文献8)、特開2002−249677号公報(特許文献9)および特開2003−34758号公報(特許文献10)参照。マゼンタ染料では、特開2002−302622号公報(特許文献11)参照。イエロー染料は特開2002−285022号公報(特許文献12)参照)。
一方、電子写真用の現像剤、即ちトナー用の色材として要求される性能として、良好な色再現範囲を実現できる吸収特性、OHPシート上での光透明性、および環境安定性が挙げられる。色材として顔料を用いた一般的トナーでは、色調の経時安定性に関しては優れているが、凝集性顔料粒子の光散乱の寄与により透明性が悪い。色材として染料を用いたトナーが公開されている(特開平3−276161号公報(特許文献13)、特開平7−209912号公報(特許文献14)および特開平8−123085号公報(特許文献15)参照)。これらのトナーは、透明性は高いのであるが耐候性に劣る場合がある。
このように、様々な提案がなされてはいるものの、良好な色相および鮮明性をもち、且つ十分な耐候性をもつ色材はいまだ得られていない場合が多い。
特開平11−170686号公報 特開2002−317135号公報 特開2002−348512号公報 特開2002−19273号公報 特開2002−212237号公報 特開2002−219857号公報 特開2003−48369号公報 特開2000−303009号公報 特開2002−249677号公報 特開2003−34758号公報 特開2002−302622号公報 特開2002−285022号公報 特開平3−276161号公報 特開平7−209912号公報 特開平8−123085号公報
本発明の目的は、インクジェットや電子写真に代表されるハードコピー用色材や、印刷用インク、塗料、筆記用インク、カラーフィルター等の着色に用いることのできる、色合いが鮮明で耐候性に優れた色素化合物を提供することである。
本発明の他の目的は、この色素化合物を色材として用いたインク、トナー等の記録用材料を提供することにある。
本発明の一態様によれば、下記一般式(1)で示される色素化合物が提供される。
A−L1−X−L2−B (1)
[式中、Aは発色部位を示し、Bは退色防止能を有する安定化部位を示し、L1およびL2はA、X、Bを共有結合により連結するリンカーであって、それぞれ独立して、−O−、−CO−、−OCO−、−NR1−(R1は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基から選ばれる基である)、−NHCO−、−NHCOO−、−NHCONH−、−NHCSNH−、−SO−、−SO2−、−SO2NH−、−S−、−SS−および−CH2−のいずれかを示し、L1およびL2が同時に−CH2−になることはなく、Xはスペーサー部位であって、炭素原子が1〜10個のアルキレン基、炭素原子が1〜10個のアルケニレン基、炭素原子が2〜10個のアルキニレン基、炭素原子が2〜10個のアルコキシアルキレン基、炭素原子が5〜7個のシクロアルキレン基、炭素原子が6〜10個のアリーレン基および糖単位が1〜7個のピラノース型の糖のいずれかを示す]。
また、本発明の他の態様によれば、上記色素化合物を用いたインクジェット用インクおよび電子写真用トナーが提供される。
以上のように、本発明によれば、[1]光、湿度、オゾンガスに対して十分な耐候性を有する高鮮明な色素化合物が提供され、[2]色調の環境安定性に優れた、インクジェット用インク、電子写真用現像剤、印刷用インク、塗料、筆記用インク、カラーフィルター用の着色剤などの各種記録用材料が提供され、特に、[3]本色素化合物の使用により光および環境中の活性ガス、特にオゾンガスに対する耐候性の高い画像情報を記録することができるインクジェット用インクが提供される。
上記のとおり、本発明においては、Aは色素部位であり、主に発色性および鮮明性に寄与し、Bは安定化部位であり、色素の退色防止能を有し、L1およびL2はA、X、Bを共有結合により連結し、Xはスペーサー部位であり、−L1−X−L2−が色素部位Aと安定化部位Bの空間的距離に寄与する。
一般式(1)におけるAとしては、L1と結合するための置換基を有する、トリフェニルメタン骨格またはキサンテン骨格を有するクロモフォアが好ましく、好ましい具体例としては、限定するものではないが、一般式(2)または(3)で示されるクロモフォアが挙げられる。これらの中では、一般式(2)で示されるものが特に好ましい。
Figure 2005002328
一般式(2)中、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5個の置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアラルキル基を示し、R4は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5個の置換もしくは非置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、R5、R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキレート基またはスルホネート基を示す。
2、R3における炭素数1〜5個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。またこれらのアルキル基が有しても良い置換基としては、ヒドロキシ基、スルホネート基、カルボキシレート基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。またR2、R3におけるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、またアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。これらのアリール基もしくはアラルキル基が有しても良い置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基やハロゲン原子、スルホネート基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。R2、R3において特に好ましいのは、水素原子、炭素数1〜5個のアルキル基、置換基としてアルキル基、アルコキシ基、スルホネート基を有するフェニル基もしくはベンジル基であり、更に好ましくは炭素数1〜5個のアルキル基であり、中でもメチル基が好ましい。
4における炭素数1〜5個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。これらのアルキル基が有しても良い置換基としては、上記R2、R3における炭素数1〜5のアルキル基の置換基と同様のものが挙げられる。R4におけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。R4において好ましいのは、水素原子、炭素数1〜5個のアルキル基、ハロゲン原子であり、さらには水素原子である。また、R4の置換位置は置換アミノ基に対してメタ位であることが好ましい。
5、R6におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。これらのアルキル基が有しても良い置換基としては、上記R2、R3における炭素数1〜5のアルキル基の置換基と同様のものが挙げられる。R5、R6におけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。R5、R6において好ましいのは、水素原子、炭素数1〜5個のアルキル基、ハロゲン原子であり、さらには水素原子である。
一般式(3)中、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5個の置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアラルキル基を示し、R9は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5個の置換もしくは非置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、R10、R11はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキレート基またはスルホネート基を示す。
7、R8における炭素数1〜5個のアルキル基、アリール基、アラルキル基としては、上記R2、R3にて例示したものと同様のものが挙げられる。またR7、R8における炭素数1〜5のアルキル基、アリール基、アラルキル基が有しても良い置換基としては、やはり上記R2、R3にて例示したものと同様のものを挙げることができる。R7、R8において好ましいのは、水素原子、炭素数1〜5個のアルキル基、置換基としてアルキル基、アルコキシ基、スルホネート基を有するフェニル基もしくはベンジル基であり、さらに好ましくは置換基としてアルキル基を有するフェニル基である。
9における炭素数1〜5個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。これらのアルキル基が有してもよい置換基としては、上記R2、R3における炭素数1〜5のアルキル基の場合と同様のものが挙げられる。同じくアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。R9において好ましいものは、水素原子、炭素数1〜5個のアルキル基、ハロゲン原子であり、さらには水素原子である。またR9の置換位置は、置換アミノ基に対してメタ位であることが好ましい。
10、R11におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。これらのアルキル基が有しても良い置換基としては、上記R2、R3における炭素数1〜5のアルキル基の置換基と同様のものが挙げられる。R10、R11におけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。R10、R11において好ましいのは、水素原子、炭素数1〜5個のアルキル基、ハロゲン原子であり、さらには水素原子である。
一般式(2)もしくは(3)において、L1との共有結合を形成するための置換基はR5、R6もしくはR10、R11に少なくとも1つ有することが好ましい。さらにはR5、R6、R10、R11がいずれも水素原子であり、3つのベンゼン間に結合している炭素原子に対し、オルト位でL1と共有結合することが好ましい。
Bとしては、L2と結合するための置換基を有する、ヒンダードアミン骨格、ヒンダードフェノール骨格、ベンゾフェノン骨格、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物が好ましく、好ましい具体例としては、限定するものではないが、一般式(4)〜(7)のいずれかで示される化合物が挙げられる。これらの中では、一般式(4)で示されるものが特に好ましい。
Figure 2005002328
一般式(4)中、R12は水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、アシル基、スルホニル基、スルフィニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、オキシラジカル基を、R13はヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基を表わす。ここでR13はL2と共有結合を形成するための置換基である。
12におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、アリル基、オレイル基等が挙げられ、アルキニル基としてはエチニル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基、ペンタノイル基等が挙げられ、スルホニル基としては、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等が挙げられ、スルフィニル基としては、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、アリールオキシ基としてはフェノキシ基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。R13において好ましいものは、水素原子、炭素数が1〜5個のアルキル基、ベンジル基、オキシラジカル基であり、合成の容易さを考慮すると炭素数1〜5個のアルキル基がより好ましく、中でもメチル基が好ましい。
一般式(5)中、R14、R15はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、tert−ブチル基を、R16は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルホニル基を表わす。ここでR16はL2と共有結合を形成するための置換基である。R14、R15において好ましいものは、メチル基もしくはtert−ブチル基である。
一般式(6)中、R17、R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基、アシル基またはアシルオキシ基を表わす。ここでR17もしくはR18はL2と共有結合を形成するための置換基である。
17、R18におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、アシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基、ペンタノイル基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。R17、R18において好ましいものは、水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基である。
一般式(7)中、R19、R20はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基またはスルホニル基を表わす。ここでR19もしくはR20はL2と共有結合を形成するための置換基である。
19、R20におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、アシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基、ペンタノイル基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられ、スルホニル基としては、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等が挙げられる。R19、R20において好ましいものは、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホニル基である。
1およびL2はそれぞれ独立して、−O−、−CO−、−OCO−、−NR1−(R1は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基から選ばれる基である)、−NHCO−、−NHCOO−、−NHCONH−、−NHCSNH−、−SO−、−SO2−、−SO2NH−、−S−、−SS−および−CH2−のいずれかであるが、L1およびL2が同時に−CH2−になることはない。これらの中では、−O−、−OCO−、−NHCO−、−SO2NH−が好ましく、さらには−O−が好ましく、L1およびL2の両方が−O−であることが特に好ましい。
1におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。また、R1におけるアルキル基は、ヒドロキシ基、スルホネート基、カルボキシレート基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等で置換されていてもよい。またR1におけるアリール基、アラルキル基についても、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基やハロゲン原子、スルホネート基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基等で置換されていてもよい。R1において好ましいものは、水素原子、上記したようなアルキル基、及びベンジル基である。
Xは、炭素原子が1〜10個のアルキレン基、炭素原子が2〜10個のアルケニレン基、炭素原子が2〜10個のアルキニレン基、炭素原子が1〜10個のアルコキシアルキレン基、炭素原子が5〜7個のシクロアルキレン基、炭素原子が6〜10個のアリーレン基および糖単位が1〜7個のピラノース型の糖である。
Xにおける炭素原子が1〜10個のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、ペンチレン基等の直鎖状アルキレン基や、イソプロピレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基等の分岐状アルキレン基が挙げられ、炭素原子が2〜10個のアルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、イソブテニレン基等が挙げられ、炭素原子が2〜10個のアルキニレン基としてはエチニレン基等が挙げられ、炭素原子が5〜7個のシクロアルキレン基としては、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられ、炭素原子が6〜10個のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。また、Xが糖である場合は、グルコース、マンノース、アロース、アルトース、グロース、イドース、キシロース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、フコース及びタガトースから選ばれる単糖類、またはこれらの糖から選択した1種または2種を糖の単位とする二糖類が挙げられる。糖のL1およびL2との結合位置としては、単糖類の場合1位と4位もしくは1位と6位が好ましく、二糖類の場合、1位と1位、1位と4位もしくは1位と6位が好ましい。
上記一般式(1)で表わされる色素化合物として特に好ましい組み合わせは、[1]発色部位Aが一般式(2)で示される化合物から水素をひとつとったものであり、[2]安定化部位Bが一般式(4)で示される化合物から水素をひとつとったものであり、[3]リンカーL1およびL2がともに−O−であり、[4]スペーサー部位XがAとBとの空間的な距離が短くなるものである。かかるXは、具体的には、炭素数2〜5個のアルキレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−グリコシル基、1,6−グリコシル基であることが好ましく、特にはn−ブチレン基であることが好ましい。さらには、一般式(2)で示される化合物のR2およびR3がメチル基であり、R4が水素原子であり、R5およびR6が水素原子であり、R4が水素原子であり、3つのベンゼン間に結合している炭素原子に対し、オルト位でL1と共有結合し、一般式(4)で示される化合物のR13がメチル基であり、R13がL2と共有結合を形成するための置換基であると、極めて優れた耐候性を示す。
一般式(1)で表わす色素化合物として、例えばAとして一般式(2)のマラカイトグリーン誘導体、Bとして一般式(4)のヒンダードアミン誘導体、L1、L2を−O−、部位Xをn−ブチレン基とした化合物の場合、以下のような三段階反応で合成可能である。以下に合成経路の一例を表わす。
Figure 2005002328
上記合成経路の第一工程において、「塩基」として使用できる具体例として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、カリウム−t−ブトキシド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)が挙げられる。一般式(8)と(9)の使用量は、モル比で1:1〜1:5であることが好ましい。また、本反応の触媒としてテトラブチルアンモニウム塩、クラウンエーテル類、グライムエーテル類を用いることができる。
合成経路の第二工程における「塩基」として用いることができる具体例として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、カリウム−t−ブトキシド、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)が挙げられる。一般式(10)と(11)の使用量は、モル比で1:1〜3:1であることが好ましい。また、本反応の触媒としてテトラブチルアンモニウム塩、クラウンエーテル類、グライムエーテル類を用いることができる。
合成経路の第一工程および第二工程の反応は通常有機溶媒中でおこなう。具体的には、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素系溶媒や、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、またテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒を用いることができる。溶媒の使用量は、一般式(8)もしくは(11)の1〜100質量倍、好ましくは5〜50質量倍である。
合成経路の第三工程における「酸化剤」として用いることができる具体例として、二酸化鉛、二酸化マンガン、過マンガン酸カリウム、p−クロラニル、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン等が挙げられる。
これらの反応によって得られる生成物は、通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、精製をおこなうことで目的の用途に用いる。
生成物は、NMR測定、HPLC分析による純度検定[検出波長254nm;メタノール/酢酸Buffer=85/15(v/v)]、質量分析およびUV/Visスペクトル測定等により同定することができる。
本発明の色素化合物は、着色用色材、好ましくは画像情報の記録用材料として用いることができる。具体的には以下に詳述する、インクジェット方式の記録用材料を始めとして、電子写真方式の現像剤用材料、印刷用インク、塗料または筆記具用インクであり、好ましくは、インクジェット方式に用いる記録用材料、電子写真用の記録用材料であり、更に好ましくはインクジェット方式に用いる記録用材料である。また、液晶ディスプレイ等に用いられているカラーフィルター用染色材料にも適用することができる。さらに、本発明の色素化合物は、用途に応じて色調、溶解性、粘度等の最適な物性を得るために、発色部位A、スペーサー部位X、安定化部位B、結合部位L1、L2の種類もしくは置換基を変更することにより調整可能である。
次に、本発明の色素を用いたインクジェット用インクについて説明する。一般式(1)で表わす色素化合物は、親油性媒体もしくは水性媒体に溶解および/もしくは分散させることでインクを作製できる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明のインクは、インク100質量部中に上記色素化合物を0.2〜10質量部含有するのが好ましい。また、本発明のインクジェット用インクには、上記色素化合物とともに他の染料が顔料などの色素を併用してもよい。複数の色素を併用する場合は、色素の含有量の合計が上記範囲となっているのが好ましい。前記水性媒体として、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合媒体を使用できる。水溶性有機溶剤は、水溶性を示すものであれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒等が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤はインクの保湿性維持や色材の溶解性向上、インクの記録紙への効果的な浸透等を考慮すると、水溶性有機溶剤の含有量はインク全体の1〜40質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは3〜30質量%の範囲とする。又、色材である色素のインク中における溶解性が良好であり、安定したインク吐出のための粘度を有し、且つ、ノズル先端における目詰まりを生じさせないために、インク中の水の含有量は30〜95質量%の範囲が好ましい。
本発明で使用するインクのpHは、色材の溶解度性を満足するものであれば特に限定されるものではない。但し、安全性等の面を考慮すると、pH4.0〜11.0の範囲内のものが好ましい。
本発明で使用するインクを作製する場合には、インクの保湿性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の保湿性固形分もインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等、保湿性固形分のインク中の含有量は、一般には、インクに対して0.1〜20.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。更に本発明で使用するインクには、上記成分以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲内において必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させてもよい。以上説明した本発明のインクセットの各実施態様にかかるインクは、熱エネルギーの作用により液滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方式にとりわけ好適に用いられるが、他のインクジェット記録方法や一般の筆記用具としても使用できることはいうまでもない。
本発明の色素化合物を導入するカラートナー用バインダー樹脂としては一般に使用される全てのバインダーが使用出来る。例えば、スチレン系樹脂・アクリル系樹脂・スチレン/アクリル系樹脂・ポリエステル樹脂等が挙げられる。トナーに対して流動性向上、帯電制御等を目的として無機微粉末、有機微粒子を外部添加しても良い。表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。なお、これらは数平均一次粒子径が10〜500nmのものが好ましく、さらにはトナー中に0.1〜20質量%添加するのが好ましい。
離型剤としては、従来使用されている離型剤は全て使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン・低分子量ポリエチレン・エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類、マイクロクリスタリンワックス・カルナウバワックス・サゾールワックス・パラフィンワックス等が挙げられる。これらの添加量はトナー中に1〜5質量%添加することが好ましい。
荷電制御剤としては、必要に応じて添加しても良いが、発色性の点から無色のものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩構造のもの、カリックスアレン構造を有するもの、サリチル酸の金属錯体などが挙げられる。
キャリアとしては、鉄・フェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリア、磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリアのいずれを使用してもよい。このキャリアの平均粒径は体積平均粒径で30〜150μmが好ましい。
本発明のトナーが適用される画像形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば感光体上に繰り返しカラー画像を形成した後に転写をおこない画像形成する方法や、感光体に形成された画像を逐次中間転写体等へ転写し、カラー画像を中間転写体等に形成した後に紙等の画像形成部材へ転写しカラー画像を形成する方法等が挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
下記インク組成1に示した各成分に、以下に示す本発明の色素の比較化合物(17)を3質量部加え、更にイオン交換水を加えて全体量を100質量部としたものを撹拌・溶解・混合し、その後、0.20μmフィルターにて加圧濾過を行って、インク液Aを作製した。
(インク組成1)
・グリセリン 5.0質量部
・尿素 5.0質量部
・ジエチレングリコール 10.0質量部
・アセチレノール 0.3質量部
(川研ファインケミカル社製)
・エタノール 5.0質量部
Figure 2005002328
インク液Aに(17)の等モル量ヒンダードアミン(8)を加えインク液Bを作製した。
本発明の色素化合物(13)〜(16)についても、インク液中の色素のモル濃度がインク液Aと等しくなるように、インク液C〜Fを作製した。なお、化合物(13)〜(16)は、前記のようにNMRスペクトルをJMN−ECA400(商品名:日本電子株式会社製)にて測定し、HPLCをLC−2010A(商品名:株式会社島津製作所製)にて純度検定した後、質量分析をmicroflex(商品名:BRUKER DALTONICS製)にておこない、U−3310形分光光度計(商品名:株式会社日立製作所製)にてUV/Visスペクトルを測定することで同定をおこなった。化合物(13)の分析結果を以下に示す。
[化合物(13)の分析結果]
1H NMR(400MHz、D2O、室温):δ=1.17(s、6H)、1.24(s、6H)、1.38(t、2H)、1.98(d、2H)、2.60(s、3H)、3.47−3.55(m、1H)、6.44−6.58(m、5H)、6.68(m、1H)、6.95(m、5H)、7.40(m、1H)
HPLC純度=96.8面積%、保持時間3.7分、
MALDI−TOF MS:m/z 605(M+:分子イオンピーク)
λmax=624nm(溶媒:H2O、室温中)
以上の結果から、化合物(13)が得られていることを確認できた。
上記で得たインクをキヤノン製インクジェットプリンターBJF930のインクカートリッジに充填し、キヤノン製プロフェッショナルフォトペーパー(PR−101紙)へ印字させ、耐光性、耐オゾン性に関して以下の方法で評価した。
<耐光性>
上記インクジェットプリンターにて、1インチ四方のベタ画像を印字させ印字物を作製した。次に印字物を24時間自然乾燥させた後、シアン画像濃度C0を反射濃度計 X−Rite310TR(商品名:X−rite社製)にて測定し、サンテスターXF−180CPS((株)島津製作所製)を用い画像にキセノン光(照度765w/m2、温度50℃)を25時間照射した。照射後の印字物のシアン画像濃度Cfを測定し、キセノン光照射前後の反射濃度の比からシアン濃度残存率({Cf/C0}×100[%])を算出した。
<耐オゾン性>
耐光性評価の場合と同様に、印字物を印字後24時間自然乾燥させ、初期シアン画像濃度C0を測定する。その後、オゾンフェードメーターにて、オゾン濃度3ppm、温度40℃、相対湿度55%の雰囲気下で印字物を2時間暴露させる。暴露後のシアン画像濃度Cfを測定し、C0、Cfからシアン濃度残存率({Cf/C0}×100[%])を算出した。
Figure 2005002328
表1および図1に示す試験結果より、本発明の色素化合物(13)〜(16)の方が対照化合物(17)よりもシアン濃度の残存率が高く、耐光性、耐オゾン性の向上が観測された。インク液Bとインク液C〜Fの比較から、単純にヒンダードアミンを添加した系よりも、本発明のように分子内に安定化部位を導入した系の方が、退色防止効果が高いことがわかった。また、インク液DとFとの試験結果の比較から、アルキル鎖長がより短い化合物(14)の方が良好な耐候性を持つことがわかった。このことは、トリフェニルメタン骨格とヒンダードアミン骨格との空間距離が耐候性に影響を及ぼしていることを示唆している。
本発明の色素化合物(13)の1H NMRスペクトルである。 実施例及び比較例における、耐光性および耐オゾン性試験後の画像濃度の残存率[%]を示す棒グラフである。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表されることを特徴とする色素化合物。
    A−L1−X−L2−B (1)
    [式中、Aは発色部位を示し、Bは退色防止能を有する安定化部位を示し、L1およびL2はA、X、Bを共有結合により連結するリンカーであって、それぞれ独立して、−O−、−CO−、−OCO−、−NR1−(R1は水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基から選ばれる基である)、−NHCO−、−NHCOO−、−NHCONH−、−NHCSNH−、−SO−、−SO2−、−SO2NH−、−S−、−SS−および−CH2−のいずれかを示し、L1およびL2が同時に−CH2−になることはなく、Xはスペーサー部位であって、炭素原子が1〜10個のアルキレン基、炭素原子が2〜10個のアルケニレン基、炭素原子が2〜10個のアルキニレン基、炭素原子が1〜10個のアルコキシアルキレン基、炭素原子が5〜7個のシクロアルキレン基、炭素原子が6〜10個のアリーレン基および糖単位が1〜7個のピラノース型の糖のいずれかを示す。]
  2. 前記発色部位Aが、トリフェニルメタン骨格またはキサンテン骨格を有することを特徴とする請求項1に記載の色素化合物。
  3. 前記発色部位Aが、下記一般式(2)又は(3)で示される請求項2に記載の色素化合物。
    Figure 2005002328
    (式中、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5個の置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアラルキル基を示し、R4は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5個の置換もしくは非置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、R5、R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキレート基またはスルホネート基を示し、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5個の置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアラルキル基を示し、R9は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5個の置換もしくは非置換のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、R10、R11はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキレート基またはスルホネート基を示す。)
  4. 前記安定化部位Bが、ヒンダードアミン骨格、ヒンダードフェノール骨格、ベンゾフェノン骨格またはベンゾトリアゾール骨格を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の色素化合物。
  5. 前記安定化部位Bが、下記一般式(4)〜(7)のいずれかで示される請求項4に記載の色素化合物。
    Figure 2005002328
    (式中、R12は水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、アシル基、スルホニル基、スルフィニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、オキシラジカル基を、R13はヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基を表わし、R14、R15はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、tert−ブチル基を、R16は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、スルホニル基を表わし、R17、R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基、アシル基またはアシルオキシ基を表わし、R19、R20はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基またはスルホニル基を表わす。)
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の色素化合物を含有することを特徴とするインクジェット用インク。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の色素化合物を含有することを特徴とする電子写真用トナー。
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