JPWO2014097823A1 - 積層セラミック電子部品 - Google Patents

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Abstract

内部電極に対して良好な接合性を有する外部電極を備える、積層セラミック電子部品を提供する。セラミック層と内部電極とが積層された積層体と、内部電極と電気的に接続されるように、積層体の外表面上に形成された外部電極とを備え、外部電極は、内部電極に接する導通層を含み、また、内部電極はNiを含む。導通層は、Cu3Sn合金を含む金属粒子と熱硬化性樹脂とを含む。内部電極と導通層とは、CuSnNi合金相を介して接合される。

Description

この発明は、積層セラミック電子部品に関するもので、特に、外部電極の構成に関するものである。
この発明にとって興味ある技術が、たとえば、国際公開第2004/053901号パンフレット(特許文献1)に記載されている。
特許文献1には、その請求項1にあるように、融点が300℃以下の金属粉末(金属A)、高融点の導電粒子(金属B)、および樹脂を含む熱硬化型導電ペーストで形成された外部電極を有する積層セラミック電子部品が記載されている。同請求項2には、上記ペースト中のA+Bの合計量が、A+B+樹脂の合計量に対して、70〜95重量%であることが規定され、同請求項3には、A:Bの配合割合が、重量比で、5:95〜20:80であることが規定されている。また、同請求項4には、外部電極を得るため、80〜400℃、1〜60分で保持することが規定され、同請求項5には、外部電極中の導電粒子と内部電極の金属とが拡散接合していることが規定されている。
上記の低融点金属(A)の配合比率に注目すると、特許文献1の請求項3には、低融点金属(A)の配合比率は5〜20重量%であると規定されている。しかしながら、本件発明者による実験の結果、Niを含む内部電極を備える積層セラミック電子部品において、外部電極を形成するために、特許文献1に記載の導電性接着剤を用いた場合、低融点金属(A)の比率が5〜20重量%と低いため、内部電極との接合性が悪いことがわかった。仮に、請求項4に規定される80〜400℃の範囲を超えて、500℃以上で熱処理すれば、内部電極との間で良好な接合は可能であるが、外部電極から金属ボールが析出(または噴出)するため、その後に実施されるNiめっきなどのめっき工程で、めっき付き不良を招く。
国際公開第2004/053901号パンフレット
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し、外部電極において内部電極に対して良好な接合性を確保することによって、電気的な安定性を確保できる、積層セラミック電子部品を提供しようとすることである。
この発明は、セラミック層と内部電極とが積層された積層体と、内部電極と電気的に接続されるように、積層体の外表面上に形成された外部電極とを備え、外部電極は、内部電極に接する導通層を含み、また、内部電極はNiを含む、積層セラミック電子部品に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、上記内部電極と上記導通層とは、CuSnNi合金相を介して接合されていることを特徴としている。
好ましくは、上記CuSnNi合金相中のNi固溶量は5〜42atm%である。
この発明によれば、外部電極に備える導通層が、CuSnNi合金相を介して内部電極と接することで、外部電極と内部電極との間で強固な物理的な接合が達成されるので、積層セラミック電子部品の電気特性の安定性を確保することができる。
また、この発明におけるCuSn合金に代えて、仮にAgSn系金属を用いた場合に生成されるNiSnと比べて、この発明において生成されるCuSnNi合金相は、より低温、かつ短時間で生成されることができる。
この発明において、上記CuSnNi合金相中のNi固溶量が5〜42atm%の範囲に選ばれると、内部電極と導通層との間でのNiの過剰な拡散が抑制され、外部電極と内部電極との間で強固な接合をより確実に達成することができる。
この発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサ1を示す断面図である。 図1に示した積層セラミックコンデンサ1の外部電極8および9における導通層10の形成過程を模式的に示す、導通層10の一部拡大断面図であり、(1)は熱処理前の状態、(2)は熱処理後の状態を示す。 内部電極と導通層との接する部分に形成されたCuSnNi合金相を撮影したSEM写真を示す図である。
以下、この発明の実施形態を、積層セラミックコンデンサに関連して説明する。
図1を参照して、積層セラミックコンデンサ1は、誘電体セラミックからなる複数のセラミック層2と各々複数の第1および第2の内部電極3および4とが積層された積層体5を備えている。積層体5において、第1の内部電極3と第2の内部電極4とは積層方向に見て交互に配置され、第1の内部電極3と第2の内部電極4とはセラミック層2を挟んで対向している。第1の内部電極3は、積層体5の第1の端面6にまで引き出され、第2の内部電極4は、積層体5の第1の端面6に対向する第2の端面7にまで引き出されている。内部電極3および4は、導電成分としてNiを含んでいる。
積層セラミックコンデンサ1は、また、積層体5の外表面上に形成された第1および第2の外部電極8および9を備える。第1の外部電極8は、積層体5の第1の端面6を覆うように形成され、第1の内部電極3と電気的に接続される。第2の外部電極9は、積層体5の第2の端面7を覆うように形成され、第2の内部電極4と電気的に接続される。
外部電極8および9の各々は、積層体5の外表面に接する導通層10を含む。したがって、第1および第2の外部電極8および9の各々の導通層10は、それぞれ、第1および第2の内部電極3および4に接している。導通層10の詳細な組成および形成方法については後述する。
なお、図示の実施形態では、樹脂を含む導通層10は1層構造であるが、導通層10の上に樹脂を含むさらなる導通層が形成されていてもよい。
また、図示の実施形態では、外部電極8および9の各々は、導通層10上に形成されるNiめっき層11およびその上に形成されるSnめっき層12をさらに含んでいる。
なお、めっき層11および12をそれぞれ構成するNiおよびSnは、必要に応じて、Cu、Auなどの他の金属に置き換えられてもよい。また、めっき層11および12のいずれか一方が省略されてもよい。さらに、めっき層11および12が形成されず、外部電極8および9が導通層10のみで構成されてもよい。
次に、外部電極8および9の形成方法、特に導通層10の形成方法について説明する。
導通層10を形成するため、Cu粉末とSn粉末と熱硬化性樹脂と有機溶剤とを含む熱硬化型導電性樹脂組成物が用意される。熱硬化型導電性樹脂組成物において、Cu粉末とSn粉末との合計量に対するSn粉末の含有量は、好ましくは、36.5〜47.8重量%である。この熱硬化型導電性樹脂組成物は、硬化後の残留応力が8MPa以上となるように、含有される熱硬化性樹脂を選ぶことが好ましい。
用いる熱硬化性樹脂は、硬化後の残留応力が8MPa以上を満たせば、特に限定されることはなく、たとえば、主剤としてエポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤としてアルカリレゾール型のフェノール樹脂、ノボラック型のフェノール樹脂、ジヒドラジド、ジシアンジアミド、脂肪族もしくは芳香族のアミン、三級アミン、イミダゾールなどの窒素化合物、酸無水物、その他有機酸もしくはその塩を用いたり、あるいは、これらを組み合わせて用いたりすることができる。
また、主剤のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族系のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコン変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、もしくは脂環式エポキシ樹脂を用いたり、あるいは、これらを組み合わせて用いたりすることができる。
また、エポキシ樹脂と硬化剤との組合せでなくとも、熱硬化性樹脂としてイソシアネート化合物とポリオールとの組合せやあるいは、自己重合反応を呈するアルカリレゾール型のフェノール樹脂を単独で用いてもよい。
上述した熱硬化型導電性樹脂組成物は、焼成工程を経て得られた積層体5の端面6および7に付与される。より具体的には、たとえば、ペースト状の未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物をスキージによって所定の厚みに伸ばし、そこに、積層体5の端面6および7の各々を浸漬することによって、未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物が積層体5の端面6および7に付与される。付与された熱硬化型導電性樹脂組成物は、次いで乾燥され、有機溶剤が除去される。
図2(1)には、導通層10を構成すべき上述の熱硬化型導電性樹脂組成物21の乾燥後の状態の断面構造が模式的に示されている。図2(1)に示すように、熱硬化型導電性樹脂組成物21は、Cu粉末22とSn粉末23とが熱硬化性樹脂24中に分散した状態にある。Cu粉末22とSn粉末23とは、各々の少なくとも一部が互いに接触している。
ここで、乾燥後の熱硬化型導電性樹脂組成物21中でのCu粉末22とSn粉末23との合計含有量は、45〜65体積%であることが好ましい。また、硬化前の熱硬化型導電性樹脂組成物に含まれるCu粉末22のD50は0.5〜3.0μmであり、同じくSn粉末23のD50は1.5〜5.0μmであることが好ましい。
次に、熱硬化型導電性樹脂組成物21の熱処理工程が実施される。この熱処理工程では、上述の熱硬化性樹脂24が硬化するとともに、Cu粉末22とSn粉末23との間で相互拡散が進行する。通常、熱硬化性樹脂24がまず硬化し、硬化収縮により、Cu粉末22とSn粉末23との距離が短縮され、接触が多くなる。引き続き、Cu粉末22とSn粉末23との間で相互拡散が進行する。その結果、図2(2)に示すように、CuSn合金を含む複数の金属粒子25が生成される。
前述したように、熱硬化型導電性樹脂組成物21は、図2(1)に示した状態において、Cu粉末22とSn粉末23との合計量に対するSn粉末23の含有量が36.5〜47.8重量%であるとき、図2(2)に示した金属粒子25に含まれる金属成分は、CuおよびSnを含むとともに、SnおよびCuの合計量に対するSnの重量比が36.5〜47.8%となる。
図2(2)では図示されないが、相互拡散の進行状況によっては、金属粒子25には、CuSn合金のほか、CuSn合金、Cu金属および/またはSn金属が残存することがあり、また、相互拡散の結果、熱硬化性樹脂24中におけるCu粉末22またはSn粉末23が存在していた箇所の一部に空孔が残されることもある。
このとき、CuSn合金の存在比率は100重量%に近いほど、後述するCuSnNi合金相が生成しやすくなるため好ましいが、25重量%以上であれば、実用上、問題はない。
以上のようにして、硬化した導通層10が形成されるが、この形成工程において、金属ボールの析出(または噴出)は抑制され得る。CuSnは約676℃の融点を持ち、熱処理過程で再溶融することがないためであると推測される。
また、この熱処理工程において、内部電極3および4の各々と導通層10とに接する部分には、CuSnNi合金相が形成される。図3には、SEM写真によって確認された「CuSnNi合金相」が示されている。図3に示すように、Niを含む「内部電極」と導通層(「CuSn合金」および「熱硬化性樹脂」が存在する部分)とに接する部分には、「CuSnNi合金相」が形成されている。CuSnNi合金相は、(Cu,Ni)Snの合金組成を示し、Niの固溶量によってその組成が変動するものである。この合金相中のNi固溶量は5〜42atm%であることが好ましい。CuSnNi合金相は、外部電極8および9の、内部電極3および4に対する接合性の向上に寄与する。導通層10中で生成され得る金属間化合物である前述のCuSnは、Niを含む内部電極3および4と金属接合し、その結果として、CuSnNi合金相が形成されるものと推測される。
以上、この発明を積層セラミックコンデンサに関連して説明したが、この発明は、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品にも適用することができる。
次に、この発明の範囲およびより好ましい範囲を求めるために実施した実験例について説明する。なお、この発明の範囲内にあるが、より好ましい範囲を外れたものであっても、実用上、問題となることはなく、この発明が解決しようとする課題を解決し得るものであると理解すべきである。
[実験例1](Sn比率を変えた実験例)
(1)熱硬化型導電性樹脂組成物の作製
D50が1.0μmの球状粒子からなるCu粉末と、D50が2.5μmの球状粒子からなるSn粉末と、熱硬化性樹脂としてのレゾール型フェノール樹脂Aと、有機溶剤としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルとを、小型ミキサーで混合した後、金属3本ロールで混練した。その後、E型粘度計を用いて粘度測定しながら、有機溶剤としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルの量を調整することによって、1rpm/30±2Pa・sに粘度調整された、試料となる未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物を得た。
ここで、熱硬化型導電性樹脂組成物中でのCu粉末とSn粉末との合計含有量は、有機溶剤を除いて、55体積%としたが、Sn粉末およびCu粉末の合計量に対するSn粉末の比率を、表1の「Sn比率」の欄に示すように変えた。
なお、上述のD50は、レーザー回折法により測定した体積基準の値である。
(2)導通層の形成
Niを主成分とする内部電極が形成され、平面寸法が1.0mm×0.5mmであり、静電容量が1μFの積層セラミックコンデンサのための部品本体としての積層体を用意した。
他方、上述のように作製された未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物をスキージで150μmの厚みに伸ばし、そこに、上記積層体の一方端面を浸漬することによって、熱硬化型導電性樹脂組成物を塗布し、その後、熱風循環オーブンを用いて、温度150℃で10分間乾燥した。次いで、積層体の他方端面に対しても、同様の工程を実施した。このようにして、両端面に熱硬化型導電性樹脂組成物が付与された積層体を得た。
次に、上記積層体を、実測酸素濃度が10ppm未満の窒素雰囲気中で、昇温速度15℃/分で昇温し、トップ温度450℃で20分キープする条件で熱処理し、熱硬化型導電性樹脂組成物を硬化させた。これによって、外部電極における導通層が両端面に形成された積層体を得た。
(3)めっき層の形成
次に、湿式電解バレル法を用いて、上記導通層上に、約2.5±1.5μmの厚みをもってNiめっき層を形成し、次いで、約3.5±1.5μmの厚みをもってSnめっき層を形成した。これによって、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
(4)評価
(4A)硬化後残留応力(リン青銅板法)
平面寸法が10mm×60mmで厚みが200μmのリン青銅板を用意し、このリン青銅板上に、試料となる熱硬化型導電性樹脂組成物を約150μmの厚みで塗布した。
次いで、リン青銅板上の熱硬化型導電性樹脂組成物を、熱風乾燥オーブンを用いて、温度150℃で10分間乾燥した後、実測酸素濃度が10ppm未満の窒素雰囲気中で、昇温速度15℃/分で昇温し、トップ温度450℃で20分キープする条件で熱処理し、熱硬化型導電性樹脂組成物を硬化させた。
その後、マイクロメータで、上記の硬化した樹脂膜の厚みを測定するとともに、リン青銅板の湾曲量hを画像解析により測定した。また、微小硬度計を用いて、硬化した樹脂膜およびリン青銅板の各々のヤング率を、試料数5個で測定し、その平均値を求めた。そして、以下の井上小畠式より樹脂硬化後の残留応力値を求めた。
残留応力P[GPa]=E2×h2/(12ρ)×F(m,n)/(n(n+1))
ただし、
F(m,n)=((1−mn2)3×(1+m))+(mn(n+2)+1)3+m(mn2+2n+1)3)/(1+mn)3、 曲率半径ρ[mm]=(4x+L)/8x、
x=h/4、
h[mm]:リン青銅板湾曲量、
L[mm]:リン青銅板全長、
E1[GPa]:樹脂ヤング率、
E2[GPa]:リン青銅板ヤング率、
m=E1/E2、
h1[mm]:硬化した樹脂膜の厚み、
h2[mm]:リン青銅板厚み、
n=h1/h2
である。
その結果が表1の「硬化後残留応力」の欄に示されている。なお、表1に示した試料1〜7では、「硬化後残留応力」は試料4についてのみ求めた。
(4B)導通層の外観観察
外部電極における導通層が両端面に形成されためっき前の積層体を各試料につき5個準備し、積層体のいずれか一方の端面上の導通層の中央部を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、二次電子像1000倍で観察した。積層体5個中、1個でも、径10μm以上の金属ボールの噴出が認められたものについては、表1の「金属ボール」の欄に「NG」と表示し、5個すべてで径10μm以上の金属ボールが認められなかったものについては、同欄に「G」と表示した。
なお、表1では、「NG」と表示すべきものはなかった。
(4C)内部電極と外部電極(導通層)との接合性評価
試料としての積層セラミックコンデンサから、各試料につき5個の積層セラミックコンデンサを選出した。
次いで、各試料に係る積層セラミックコンデンサを樹脂包埋して、幅方向寸法の1/2の位置(W/2位置)まで湿式研磨したのち、内部電極と導通層との界面部分を、FE−SEMを用いて、反射電子像1500倍で撮影した。積層セラミックコンデンサ5個中、1個でも内部電極直上でCuSnNi合金相を確認できなかったものについては、表1の「接合性」の欄に「×」と表示し、5個すべてでCuSnNi合金相を確認できたものについては、同欄に「〇」と表示した。
(4D)CuSnNi合金相のNi比率
上記(4C)において評価した試料について、積層方向での中央位置にある内部電極直上に生成したCuSnNi合金相を、エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて加速電圧10kVで点分析し、CuとSnとNiとの金属組成比を定量し、Ni固溶量を求め、5個の試料についてのNi固溶量の平均値を求めた。
その結果が表1の「CuSnNi合金相のNi比率」の欄に示されている。
(4E)電気特性
各試料につき、20個の積層セラミックコンデンサを、150℃の温度で60分間熱処理した後、室温で24時間放置した。その後、LCRメータを用い、1MHz、0.5Vrmsの条件で、静電容量(cap)および誘電正接(DF)を測定した。
その結果が表1の「電気特性」の欄に示されている。
この欄において、「〇」と表示されているものは、静電容量については、試料20個中、すべてが1.0μFの±20%以内、つまり0.8〜1.2μFの範囲にあったとともに、誘電正接については、試料20個中、すべてが7.5%以下であったことを示している。
「×(cap/DF)」と表示されているものは、静電容量については、試料20個中、1個でも0.8〜1.2μFの範囲を外れ、かつ誘電正接については、試料20個中、1個でも15%より高かったことを示している。
「△(DF)」と表示されているものは、誘電正接について、15%より高くはなかったが、1個でも7.5%より高かったことを示している。
なお、表1では、「△(DF)」と表示すべきものはなかった。
(4F)SnおよびCuの合計量に対するSn重量比の定量
試料としての積層セラミックコンデンサから、各試料につき5個の積層セラミックコンデンサを選出した。
次いで、各試料に係る積層セラミックコンデンサを樹脂包埋して、幅方向寸法の1/2の位置(W/2位置)まで湿式研磨したのち、露出した導通層の断面全体を、エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて、加速電圧10kVで分析することでCuとSnとの強度比を求め、SnおよびCuの合計量に対するSn重量比を定量し、平均値を求めた。
得られた値は、熱硬化させる前における熱硬化型導電性樹脂組成物のSn粉末の含有量(表1の「Sn比率」)に一致した。
(4G)導通層に含まれるSnおよびCuの合計量に対するCuSn合金比率
試料としての積層セラミックコンデンサから、各試料につき3個の積層セラミックコンデンサを選出した。次いで、各試料に係る積層セラミックコンデンサを樹脂包埋して、幅方向寸法の1/2の位置(W/2位置)まで湿式研磨したのち、露出した樹脂電極層の断面全体を、XRDを用いて分析することで、樹脂電極層内に含まれるCuとSnとCuSn合金とCuSn合金の強度比を求めた。そして3個の試料についてCuSn合金比率の平均値を求めた。得られた値は表1の「CuSn合金比率」の欄に示されている。
Figure 2014097823
表1ならびに後の表3、表7および表9において、評価結果を示す欄に「−」と表示されているものは、評価しなかったことを示している。
(5)考察
「CuSnNi合金相のNi比率」が0atm%ではない、すなわち、CuSnNi合金相が形成された試料2〜7では、「金属ボール」、「接合性」、および「電気特性」の各評価項目において、好ましい結果が得られた。
これに対し、「CuSnNi合金相のNi比率」が0atm%である、すなわち、CuSnNi合金相が形成されなかった試料1では、「接合性」が「×」となり、「電気特性」が「×(cap/DF)」の評価となった。これは、「Sn比率」が35重量%と低く、内部電極との接合に供するSnが不足したためであると推測できる。
なお、「Sn比率」が48重量%であり、「CuSnNi合金相のNi比率」が44atm%である試料7では、「接合性」が「〇」となったが、内部電極と導通層との間で過剰な拡散が起こり、表1には示されていないが、熱衝撃試験後の電気特性に劣化が認められた。これは、「CuSnNi合金相のNi比率」が44atm%と高すぎたため、接合部が脆弱となったためであると推測できる。
上述のことから、「CuSnNi合金相のNi比率」は、試料2〜6についての5〜42atm%が好ましいことがわかる。
なお、試料4について求めた「硬化後残留応力」は、10MPaの値を示した。このことから、試料4とは「Sn比率」だけが異なる他の試料1〜3および5〜7についても、同じ「硬化後残留応力」が得られるものと推測できる。
[実験例2](硬化時の条件を変えCuSn合金比率を変えた実験例)
(1)熱硬化型導電性樹脂組成物の作製
実験例1における試料4と同様の組成の未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物を作製した。
(2)導通層の形成
硬化時のトップ温度およびキープ時間を、表2の「硬化」における「トップ温度」および「キープ温度」にそれぞれ示すように変更したこと以外は、実験例1の場合と同様の操作を経て、外部電極における導通層が両端面に形成された積層体を得た。
なお、実験例2における試料4−2を得るためのトップ温度およびキープ時間は、実験例1における試料4を得るためのトップ温度およびキープ時間と同じである。
(3)めっき層の形成
実験例1の場合と同様の条件を適用しながら、導通層上に、Niめっき層およびSnめっき層を形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
(4)評価
表2に示すように、各試料について、実験例1の場合と同様の要領で、「金属ボール」、「接合性」、「CuSn合金比率」、および「電気特性」を評価した。
Figure 2014097823
(5)考察
硬化時のトップ温度を低くすると、配合したCu粉とSn粉との相互拡散が促進されにくいため、導通層に含まれるSnおよびCuの合計量に対するCuSn合金比率が低くなった。
CuSn合金比率が低くなると、内部電極と外部電極との間のCuSnNi合金相も形成されにくくなる傾向がある。したがって、CuSn合金比率が15重量%の試料4−5において、「接合性」は「〇」と評価されたものの、CuSn合金の生成比率が低下し、これが原因でCuSnNi合金相がまばらにしか形成されなかった。
以上より、導通層に含まれるSnおよびCuの合計量に対するCuSn合金比率は、試料4−1ないし試料4−4のように、25重量%以上にすることで、CuSnNi合金相を十分に形成できると推測できる。
[実験例3](熱硬化性樹脂を変えた実験例)
(1)熱硬化型導電性樹脂組成物の作製
Sn粉末およびCu粉末の合計量に対するSn粉末の比率を40重量%に固定し、代わりに、熱硬化性樹脂として、表3の「熱硬化性樹脂の種類」の欄に示したものを用いたことを除いて、実験例1と同様の操作を経て、試料となる未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物を得た。
(2)導通層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、積層セラミックコンデンサのための部品本体としての積層体の両端面に熱硬化型導電性樹脂組成物を付与し、熱処理することによって、外部電極における導通層が両端面に形成された積層体を得た。
(3)めっき層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、導通層上に、Niめっき層およびSnめっき層を形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
(4)評価
表3に示すように、実験例1において評価した「硬化後残留応力」、「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」を評価した。
Figure 2014097823
(5)考察
実験例1における試料4では、熱硬化性樹脂として、レゾール型フェノール樹脂Aを用い、表1に示すように、「硬化後残留応力」は10MPaであった。実験例3においては、表3に示すように、試料11では、「熱硬化性樹脂の種類」がレゾール型フェノール樹脂Bであり、「硬化後残留応力」は8MPaであった。これら試料4および11では、「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」のすべてにおいて、良好な結果が得られた。
これに対して、試料12では、「熱硬化性樹脂の種類」がレゾール型フェノール樹脂Cであり、「硬化後残留応力」は5MPaであった。そのため、「電気特性」において、「△(DF)」の評価となり、誘電正接の比較的大きいばらつきが認められた。この原因は、導通層となる樹脂膜の硬化後の締め付け力(収縮力)が不足したため、導通層の導電性が悪化したためであると推測できる。
次に、試料13および14では、熱硬化性樹脂として、レゾール型フェノール樹脂ではなく、多官能エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂との組合せを用いた。試料13と試料14とを比較すると、熱硬化性樹脂として、試料13では、多官能エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂Dとの組合せを用い、試料14では、多官能エポキシ樹脂とノボラック型フェノール樹脂Eとの組合せを用いた。
その結果、試料13では、「硬化後残留応力」が8MPaであり、「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」のすべてにおいて、良好な結果が得られた。他方、試料14では、「硬化後残留応力」が6MPaであり、「電気特性」において、「△(DF)」の評価となり、誘電正接の比較的大きいばらつきが認められた。この原因も、上記試料12の場合と同様、導通層となる樹脂膜の硬化後の締め付け力(収縮力)が不足したため、導通層の導電性が悪化したためであると推測できる。
以上のことから、「硬化後残留応力」が8MPa以上となり得る熱硬化性樹脂を用いれば、電気特性のばらつきを低減できることが推測できる。
[実験例4](乾燥後の金属含有率を変えた実験例)
(1)熱硬化型導電性樹脂組成物の作製
Sn粉末およびCu粉末の合計量に対するSn粉末の比率を40重量%に固定し、代わりに、熱硬化型導電性樹脂組成物中での有機溶剤を除いてのCu粉末とSn粉末との合計含有量、すなわち、「乾燥後の金属含有率」を表4に示すように変えたことを除いて、実験例1と同様の操作を経て、試料となる未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物を得た。
なお、実験例4における試料24は、実験例1における試料4と同じである。
(2)導通層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、積層セラミックコンデンサのための部品本体としての積層体の両端面に熱硬化型導電性樹脂組成物を付与し、熱処理することによって、外部電極における導通層が両端面に形成された積層体を得た。
(3)めっき層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、導通層上に、Niめっき層およびSnめっき層を形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
(4)評価
表4に示すように、実験例1において評価した「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」を評価した。
Figure 2014097823
(5)考察
表4に示すように、「乾燥後の金属含有率」が、それぞれ、40体積%、45体積%、50体積%、55体積%、60体積%、65体積%および70体積%である試料21、試料22、試料23、試料24、試料25、試料26および試料27では、「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」のすべてにおいて、良好な結果が得られた。
しかしながら、導通層となる硬化後の樹脂膜の緻密性を評価したところ、「乾燥後の金属含有率」が70体積%の試料27では、商品特性上、問題となることはないが、樹脂膜の緻密性が悪化していた。
他方、Niめっき付き性を評価したところ、「乾燥後の金属含有率」が40体積%の試料21では、商品特性上、問題となることはないが、Niめっき付き性が悪化していた。これは、導通層での金属量が不足したことが影響しているためであると推測できる。
以上のことから、「乾燥後の金属含有率」は、好ましくは、45〜65体積%であると判断できる。
[実験例5](Cu粉末のD50を変えた実験例)
(1)熱硬化型導電性樹脂組成物の作製
Sn粉末およびCu粉末の合計量に対するSn粉末の比率を40重量%に固定し、代わりに、「Cu粉末のD50」を表5に示すように変えたことを除いて、実験例1と同様の操作を経て、試料となる未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物を得た。
なお、実験例5における試料33は、実験例1における試料4と同じである。
(2)導通層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、積層セラミックコンデンサのための部品本体としての積層体の両端面に熱硬化型導電性樹脂組成物を付与し、熱処理することによって、外部電極における導通層が両端面に形成された積層体を得た。
(3)めっき層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、導通層上に、Niめっき層およびSnめっき層を形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
(4)評価
表5に示すように、実験例1において評価した「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」を評価した。
Figure 2014097823
(5)考察
表5に示すように、「Cu粉末のD50」が、それぞれ、0.3μm、0.5μm、1.0μm、2.0μm、3.0μmおよび5.0μmである試料31、試料32、試料33、試料34、試料35および試料36では、「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」のすべてにおいて、良好な結果が得られた。
しかしながら、「Cu粉末のD50」が0.3μmの試料31では、商品特性上、問題となることはないが、熱硬化型導電性樹脂組成物のペーストの降伏値が高くなるため、熱硬化型導電性樹脂組成物を積層体へ塗布したとき、“ツノ”形状となった。
他方、「Cu粉末のD50」が5.0μmの試料36では、商品特性上、問題となることはないが、Niめっき付き性が悪化していた。
以上のことから、「Cu粉末のD50」は、好ましくは、0.5〜3.0μmの範囲であると判断できる。
[実験例6](Sn粉末のD50を変えた実験例)
(1)熱硬化型導電性樹脂組成物の作製
Sn粉末およびCu粉末の合計量に対するSn粉末の比率を40重量%に固定し、代わりに、「Sn粉末のD50」を表6に示すように変えたことを除いて、実験例1と同様の操作を経て、試料となる未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物を得た。
なお、実験例6における試料42は、実験例1における試料4と同じである。
(2)導通層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、積層セラミックコンデンサのための部品本体としての積層体の両端面に熱硬化型導電性樹脂組成物を付与し、熱処理することによって、外部電極における導通層が両端面に形成された積層体を得た。
(3)めっき層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、導通層上に、Niめっき層およびSnめっき層を形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
(4)評価
表6に示すように、実験例1において評価した「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」を評価した。
Figure 2014097823
(5)考察
表6に示すように、「Sn粉末のD50」が、それぞれ、0.9μm、1.5μm、2.5μm、5.0μmおよび7.5μmである試料41、試料42、試料43、試料44および試料45では、「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」のすべてにおいて、良好な結果が得られた。
しかしながら、「Sn粉末のD50」が0.9μmの試料41では、商品特性上、問題となることはないが、熱硬化型導電性樹脂組成物を積層体へ塗布したとき、“ツノ”形状となった。
他方、「Sn粉末のD50」が7.5μmの試料45では、商品特性上、問題となることはないが、導通層となる硬化後の樹脂膜の緻密性が悪化していた。
以上のことから、「Sn粉末のD50」は、好ましくは、1.5〜5.0μmの範囲であると判断できる。
[実験例7](その他の条件を変えた実験例)
(1)熱硬化型導電性樹脂組成物の作製
Sn粉末およびCu粉末の合計量に対するSn粉末の比率を40重量%に固定し、代わりに、表7に示すように、試料51では、「Cu粉末の形状」を扁平としたことを除いて、実験例1と同様の操作を経て、試料となる未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物を得た。
なお、実験例7における試料52および53に係る熱硬化型導電性樹脂組成物は、実験例1において作製した熱硬化型導電性樹脂組成物と同じである。
(2)導通層の形成
基本的には、実験例1と同様の条件を適用しながら、積層セラミックコンデンサのための部品本体としての積層体の両端面に熱硬化型導電性樹脂組成物を付与し、熱処理することによって、外部電極における導通層が両端面に形成された積層体を得た。異なる点は以下のとおりである。
試料52では、積層体として、表7の「積層体寸法」の欄に「1608」と記載されているように、平面寸法が1.6mm×0.8mmの積層体を用いた。他の試料51および53では、積層体として、表7の「積層体寸法」の欄に「1005」と記載されているように、実験例1の場合と同様、平面寸法が1.0mm×0.5mmの積層体を用いた。
また、試料53では、表7の「硬化トップ温度」の欄に示すように、熱硬化型導電性樹脂組成物の硬化のための熱処理トップ温度を400℃とした。他の試料51および52では、表7の「硬化トップ温度」の欄に示すように、熱硬化型導電性樹脂組成物の硬化のための熱処理トップ温度を、実験例1の場合と同様、450℃とした。
(3)めっき層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、導通層上に、Niめっき層およびSnめっき層を形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
(4)評価
表7に示すように、実験例1において評価した「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」を評価した。
また、試料53については、「硬化後残留応力」および「CuSnNi合金相のNi比率」をも評価した。
Figure 2014097823
(5)考察
表7に示すように、試料51〜53のいずれにおいても、「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」のすべてについて、良好な結果が得られた。
このことから、Cu粉が扁平粉に変更されても、積層体の寸法が変更されても、硬化トップ温度が450℃から400℃に変更されても、所望の特性を発現できることがわかった。
特に、試料53に注目すると、硬化トップ温度が450℃から400℃に変更されても、「硬化後残留応力」として、実験例3で好ましいとされた8MPa以上の9MPaが得られ、また、「CuSnNi合金相のNi比率」として、実験例1で好ましいとされた5〜42atm%の範囲内の8atm%が得られている。
[実験例8](Sn比率についての比較実験例)
(1)熱硬化型導電性樹脂組成物の作製
Sn粉末およびCu粉末の合計量に対するSn粉末の比率を、特許文献2の請求項3に記載の比率に従い、表8の「Sn比率」の欄に示すように変えたことを除いて、実験例1と同様の操作を経て、試料となる未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物を得た。
(2)導通層の形成
表8の「硬化トップ温度」の欄に示すように、試料62および64については、熱硬化型導電性樹脂組成物の硬化のための熱処理トップ温度を550℃としたことを除いて、実験例1と同様の条件を適用しながら、積層セラミックコンデンサのための部品本体としての積層体の両端面に熱硬化型導電性樹脂組成物を付与し、熱処理することによって、外部電極における導通層が両端面に形成された積層体を得た。
(3)めっき層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、導通層上に、Niめっき層およびSnめっき層を形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
(4)評価
表8に示すように、実験例1において評価した「硬化後残留応力」、「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」を評価した。
Figure 2014097823
(5)考察
表8に示すように、試料61〜64では、8MPa以上の「硬化後残留応力」が得られ、「金属ボール」についても「G」の評価が得られた。
しかし、「Sn比率」が5重量%および20重量%といった低レベルの試料61〜64では、「硬化トップ温度」が450℃と比較的低い試料61および63の場合はもちろん、「硬化トップ温度」が550℃と比較的高い試料62および64の場合でさえも、「接合性」が「×」となり、「電気特性」についても「×(cap/DF)」の評価となった。理由は、Snの絶対量が不足していたためであると推測できる。
[実験例9](Cu粉末に代えてAg粉末を用いた比較実験例)
(1)熱硬化型導電性樹脂組成物の作製
Cu粉末に代えてAg粉末を用い、かつAg粉末およびSn粉末の合計量に対するSn粉末の比率を、特許文献2の請求項3に規定された低融点側の金属の比率の上限である20重量%に固定したことを除いて、実験例1と同様の操作を経て、試料となる未硬化の熱硬化型導電性樹脂組成物を得た。
(2)導通層の形成
表9の「硬化トップ温度」の欄に示すように、熱硬化型導電性樹脂組成物の硬化のための熱処理トップ温度を適用しながら、その他の条件については、実験例1と同様の条件で、積層セラミックコンデンサのための部品本体としての積層体の両端面に熱硬化型導電性樹脂組成物を付与し、熱処理することによって、外部電極における導通層が両端面に形成された積層体を得た。
(3)めっき層の形成
実験例1と同様の条件を適用しながら、導通層上に、Niめっき層およびSnめっき層を形成し、試料となる積層セラミックコンデンサを得た。
(4)評価
表9に示すように、実験例1において評価した「硬化後残留応力」、「金属ボール」「接合性」、および「電気特性」を評価した。
Figure 2014097823
(5)考察
表9に示すように、試料71および72では、8MPa以上の「硬化後残留応力」が得られた。
しかし、試料71では、「硬化トップ温度」が450℃であるため、「接合性」は「×」であり、その結果、「電気特性」は「×(cap/DF)」の評価となった。
他方、「硬化トップ温度」が550℃である試料72では、「接合性」は「〇」であり、また、「電気特性」は「〇」の評価となった。この理由は、「硬化トップ温度」の550℃が、生成したAgSnの融点(481℃)より高く、液相が生成したためであると推測できる。しかし、試料72では、上述の液相が導通層の表面にも噴出したため、「金属ボール」が「NG」となって、外観不良を招き、実用上の問題が懸念される。
1 積層セラミックコンデンサ
2 セラミック層
3,4 内部電極
5 積層体
8,9 外部電極
10 導通層
11 Niめっき層
12 Snめっき層
21 熱硬化型導電性樹脂組成物
22 Cu粉末
23 Sn粉末
24 熱硬化性樹脂
25 金属粒子
この発明は、セラミック層と内部電極とが積層された積層体と、内部電極と電気的に接続されるように、積層体の外表面上に形成された外部電極とを備え、外部電極は、内部電極に接する導通層を含み、導通層は、Cu Sn合金およびSn金属を含む金属粒子と熱硬化性樹脂とを含み、また、内部電極はNiを含む、積層セラミック電子部品に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、上記内部電極と上記導通層とは、CuSnNi合金相を介して接合されていることを特徴としている。
図2(2)では図示されないが、相互拡散の進行状況によっては、金属粒子25には、CuSn合金のほか、CuSn合金、Cu金属および/またはSn金属が残存することがあり、また、相互拡散の結果、熱硬化性樹脂24中におけるCu粉末22またはSn粉末23が存在していた箇所の一部に空孔が残されることもある。なお、この発明では、金属粒子25が、Cu Sn合金のほか、上記Sn金属をも含むことを要件とする。

Claims (2)

  1. セラミック層と内部電極とが積層された積層体と、
    前記内部電極と電気的に接続されるように、前記積層体の外表面上に形成された外部電極と
    を備え、
    前記外部電極は、前記内部電極に接する導通層を含み、
    前記導通層は、CuSn合金を含む金属粒子と熱硬化性樹脂とを含み、
    前記内部電極はNiを含み、
    前記内部電極と前記導通層とは、CuSnNi合金相を介して接合されている、
    積層セラミック電子部品。
  2. 前記CuSnNi合金相中のNi固溶量は5〜42atm%である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
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