JPWO2011067955A1 - 鋼板の酸洗方法及び酸洗装置 - Google Patents
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Abstract
Description
さらに、酸化物スケール除去の際に酸洗槽内で鋼板と酸の反応によって気泡が発生するため、低い周波数を使用した場合はこの気泡によって超音波伝播が阻害され、超音波による酸化物スケールの溶解性向上効果が低下するといった問題もある。
したがって、鋼板の酸洗において超音波照射を適用しようとしても、酸化物スケールの溶解速度向上を十分に達成することは難しい。
また、前述したように、酸化物スケール酸化物スケールSi酸化物スケールは酸洗溶液中のSiイオンの濃度によっては溶液中でゲル状になり、鋼板の表面に付着していることもあるため、この観点からも、Si酸化物スケールの完全な溶解除去が求められている。
例えば、特許文献4や5では、超音波洗浄の洗浄液に固体粒子を分散させるというような方法もあるが、鋼板の酸洗において超音波照射を適用し、更に、洗浄液に固体粒子を単に分散させるだけでは、上記問題を解決できない。なぜなら、Siを含有する鋼板の酸洗では、洗浄速度が向上せず、均一に洗浄もできないからである。
更に、洗浄液中に固体粒子とマイクロバブルの両方を分散させることも考えられるが、実際に本発明者らが検討した結果、単に固体粒子とマイクロバブルの両方を洗浄液に加えても、固体粒子によってマイクロバブルの安定化が損なわれたり(マイクロバブルの凝集が起こったり)、固体粒子がマイクロバブルの中や気液界面に捕えられて洗浄液中に効率よく分散しなかったりして、むしろ、洗浄力が低下し、効果的な洗浄や均一に洗浄できなかった。
また、酸化物スケールやSi酸化物スケールの溶解除去には、超音波の周波数によりその効果が異なることも見出した。特に、28.0kHz以上1.0MHz未満の周波数の範囲で、2種類以上の周波数の超音波を印加すると、鋼板の酸化物スケールやSi酸化物スケールを効率よく、効果的に除去できることを見出した。
即ち、本発明の要旨は次の通りである。
0.24≦|log(f1)−log(f2)|≦1.55
の関係にあることを特徴とする(1)記載の鋼板の酸洗浄方法。
図2は、走行中の鋼板の洗浄を行う洗浄ラインにおいて、超音波振動子及び平板の反射板を設置した例を示す説明図である。
図3は、走行中の鋼板の洗浄を行う洗浄ラインの例を示す説明図である。
図4は、洗浄槽とリンス槽からなる走行中の鋼板洗浄を行う洗浄ラインの例を示す説明図である。
図5は、洗浄対象物を洗浄液に浸漬して洗浄する場合の、超音波振動子及び反射板の設置例を示す説明図である。
図6は、洗浄対象物を洗浄液に浸漬して洗浄する場合の、洗浄槽の上から見た場合の超音波振動子及び反射板の設置例を示す説明図である。
Siを含有する鋼板における酸化物スケールが、酸洗液に溶解する過程を詳細に調べてみると、酸化物スケールが鋼板表面から徐々に溶解し、鋼板との界面付近に達する最終段階において、Si系酸化物が濃化している層が存在し、この層の部分で、残りの酸化物スケールが鋼板表面より離脱するのが遅いことが分かった。例えば、Fe2O3、Fe3O4、やFeO等のFe系酸化物からなる酸化物スケールと、その下層(地鉄との界面)にFe2SiO4等のSi系酸化物からなる酸化物スケール(Si系酸化物の濃化層)とが存在し、前記Si系酸化物からなる層がスケール除去を困難にしていたが、上記本発明の洗浄液を用いると、容易に除去できることが明らかになった。
しかしながら、上記本発明の洗浄方法を用いると、前記のようなゲル状の形態が表面近傍で漂っている現象は見られず、よって、再付着の現象も殆どなくなっていることが確認された。
これらの効果は、洗浄液に加えた、マイクロバブルと特定の周波数範囲の2種類の超音波との相乗的作用によるものと考えられる。
超音波の周波数は、上述のように、28kHz以上〜1MHz未満の周波数が好ましい。この周波数の範囲内で、周波数(波長)の異なる2種類以上の超音波をマイクロバブルとともに洗浄液に加えると、Siを含有する鋼板の脱スケールに有効となる。以下のような作用によるものと考える。
S=1000×(L/3500)
また、超音波の波長L(mm)は、音速をV(m/s)とすると、超音波の周波数F(Hz)から、
L=1000×(V/F)
で求められる。水中での音速Vが1444m/sとすると、38kHzでは、L=38mmとなり、S=11μmと計算される。100kHzでは、L=14.4mmとなり、S=4μmと計算される。
また、超音波の発信器から発生する超音波は、除去対象物である酸化物スケールに達するまで出来るだけ減衰しないことが好ましい。一般的には、高周波数の超音波は減衰し易く、低周波数の超音波は減衰し難く発信器から遠くまで大きな減衰をせずに届く。したがって、同じ発信強度であれば、低い周波数の超音波ではその強度は減衰せず、酸化物スケール除去性は維持されるが、高い周波数の超音波では、その強度が減衰するために酸化物スケール除去性に問題が生じる。特に、発信器の位置から鋼板までの距離が大きい場合や、マイクロバブルで超音波を散乱さる場合(実質的な超音波伝達距離が大きくなる)には、高い周波数の超音波の減衰が顕著に現れる。
0.24≦|log(f1)−log(f2)|≦1.55 ・・・(式1)
即ち、式1の関係にあるf1の周波数の超音波とf2の周波数の超音波の2種類を少なくとも含む超音波を、マイクロバブルが含まれる洗浄液中に照射すると、前記洗浄液中に浸漬された珪素(Si)含有鋼板の酸化物スケールの除去が更に効率よく、均一に行われる。3以上の周波数を含む超音波の場合、最も低い周波数f1と最も高い周波数f2とが、式1を満たすようにするとよい。
ここで、超音波の周波数は、28.0kHz以上〜1.0MHz未満の範囲である必要がある。28kHz未満の周波数を使用した場合、鋼板と酸洗液の反応により、鋼板表面から500μm以上の気泡が発生し、この大きな気泡によって超音波伝播が阻害され、超音波の溶解性向上効果が低下する。一方、1MHz以上の周波数を使用した場合、超音波の直進性が強くなり洗浄の均一性が低下する場合がある。1MHz以上の周波数の超音波では、マイクロバブルが存在しても、超音波が洗浄液中を散乱し難くなり、酸化物スケールを均一に洗浄できないからである。
より好ましくは、35〜430KHz、更に好ましくは、35〜200KHzの範囲で周波数を設定するとよい。
0.75質量%〜7.00質量%である鋼板で更に優れた脱スケールの効率向上の効果が得られ、1.0〜3.5質量%である鋼板ではより著しい脱スケールの効率向上の効果が得られる。鋼板中に含まれるSiの含有量が0.75質量%以上になると、Si系酸化物からなる層が生成しやすいため、顕著な脱スケールの効率の向上効果が得られ、1.0質量%以上では脱スケールの効率向上効果は確実に得られる。一方、鋼板中に含まれるSiの含有量が7.00質量%を超えると酸化物スケールの構造が変わらなくなるため、得られる脱スケールの効率の向上効果は変わらなくなり、それ以上では脱スケール効率が一定となる場合がある。特に3.5質量%以上になると、脱スケール性がしだいに悪くなり超音波とマイクロバブルを適用しても脱スケールし難くなる。従って、効果がより顕著に出るのは1.0〜3.5質量%である。
使用する粒子サイズ(平均粒子径)は0.05〜50μmであるが、より好ましくは、0.05〜30μmである。粒子の液中の濃度としては数百個/ml〜数万個/mlが好ましい。さらに、液中濃度としては、5百個/ml〜5千個/mlが好ましい。平均粒子径が0.05μm未満の粒子を使用した場合、粒子が洗浄物表面に衝突する衝撃力が弱くなり、脱スケールの向上が期待できない場合がある。また、粒子径が小さ過ぎると、マイクロバブルの中や気液界面に粒子が捕獲されて、超音波を照射しても粒子が洗浄物表面に衝突できず、粒子添加による脱スケールの向上効果が得られない場合がある。平均粒子径が50μm超の粒子を使用した場合、超音波の伝播及びマイクロバブルの洗浄物表面への移動を阻害するため洗浄力の低下が起こる。また、大きな粒子になると、該粒子表面にマイクロバブルを付着させてしまい、実質的に有効なマイクロバブルの濃度が低下するので十分な洗浄力が得られなくなる。なお、本発明における粒子の粒子径の測定方法としては、例えば、レーザー回折散乱法や細孔電気抵抗法を用いた粒度分布測定装置や画像解析から粒度分布を測定する方法が挙げられる。また、ここでいう平均粒子径は数平均粒子径のことを意味する。
マイクロバブルの気泡径は超音波周波数に合わせて選定する必要があり、超音波の周波数が28KHz〜1.0MHzでは
0.22≦|log(m1)−log(m2)|≦1.52
とすることが望ましい。
ここでm1.m2はマイクロバブルの気泡径(μm)である。
超音波周波数がより好ましい範である35〜430kHzでは
0.28≦|log(m1)−log(m2)|≦1.08
が望ましい。
さらに好ましい超音波周波数範囲の35〜200kHzでは
0.28≦|log(m1)−log(m2)|≦0.75
が望ましい。
酸洗液の温度は、特に限定されないが、酸洗効率や温度管理等の理由で常温から97℃であるのがより好ましい。
(実施例1)
珪素(Si)を用いた熱延鋼材を用いて酸化物スケールの除去試験(酸洗)を実施した。鋼板の成分酸化物スケールは、C:0.061質量%、Si:0.89質量%、Mn:1.19質量%、P:0.018質量%、S:0.0018質量%、Al:0.04質量%、Ni:0.021質量%、Cr:0.084質量%、Cu:0.016質量%、残部Fe及び不可避的不純物である。鋼板表面に酸化物スケールが3〜15μmあるものを試験に用いた。酸洗液として塩酸(HCl)水溶液を用い、試験中、塩酸が6〜9質量%の範囲内になるように調整、制御した。更に、溶液中のFe2+が80g/Lになるように、FeCl2を添加した。また、Fe3+に関しても同様に、溶液中のFe3+が1g/Lになるように、FeCl3も添加した。酸洗液の温度は、85℃(±5℃)になるように加温した。
超音波発生装置は出力1200Wであり、振動子はSUS製で表面を耐酸加工したものを用い、表1に示した周波数で試験を行った。酸洗試験前に、表1に示した平均気泡径のマイクロバブル、表1に示した平均粒子径のMgO粒子をHCl水溶液中に分散添加し、超音波を印加してから酸洗試験を行った。マイクロバブルの発生は、OHR流体研究所製 2FKV−27M/MX−F13を用いた。酸洗槽に鋼板を100m/minの速度で走行させ、脱スケール試験を行った。前記マイクロバブルの気泡径の測定は、気泡径分布計測装置を用いた。前記MgO粒子の粒子径の測定は、レーザー回折散乱型粒度分布測定装置(リオン製KS−42Dを用いた。
評価方法としては、30秒酸洗処理後の鋼板表面の酸化物スケール除去面積率が、100%以下〜95%以上の場合:AA、95%未満〜90%以上の場合:A、90%未満〜85%以上の場合:BB、85%未満〜80%以上の場合:B、80%未満〜70%以上の場合:BC、70%未満〜60%以上の場合:C、60%未満〜50%以上の場合:CD、50%未満〜40%以上の場合:D、40%未満の場合:Xとした。
表1に、評価結果を示す。マイクロバブルを導入した酸洗液に、28.0kHz以上1.0kHz未満の周波数の超音波を用いて、2種類の周波数で超音波を照射すると、酸化物スケールの除去が効果的にできた。
次に実施例1と同じ鋼材酸化物スケール酸化物スケールで、表面に酸化物スケールが5〜20μmある鋼板を用いて脱スケール処理を行った。酸洗液、マイクロバブル、添加粒子、超音波印加装置は、実施例1と同じでとし、実施例1と同様に、30秒酸洗処理後の鋼板表面の酸化物スケール除去面積率で評価した。
表2に、評価結果を示す。マイクロバブルを導入した酸洗液に、28.0kHz以上1.0kHz未満の周波数の超音波を用いて、2種類の周波数で超音波を照射すると、実施例1と同様に酸化物スケールの除去が効果的にできることが確認された。
次にSiの含有量の異なる鋼材を用いて酸化物スケールの除去試験(酸洗)を実施した。鋼材としては、表3に示したSi含有量で、C:0.061質量%、Mn:1.01質量%、P:0.015質量%、S:0.0017質量%、Al:0.03質量%、Ni:0.020質量%、Cr:0.085質量%、Cu:0.015質量%、残部Fe及び不可避的不純物である。試験に用いた試験材は、鋼板表面に酸化物スケールが3〜25μmあるもので、この試験材24枚の酸化物スケール厚さの平均は10μmであった。酸洗液としてHCl水溶液を用い、試験中、塩酸が6〜9質量%の範囲内になるように調整、制御した。更に、溶液中のFe2+が75g/Lになるように、FeCl2を添加した。また、Fe3+に関しても同様に、溶液中のFe3+が1.1g/Lになるように、FeCl3も添加した。酸洗液の温度は、85℃(±5℃)になるように加温した。
超音波発生装置は、実施例1、2と同様で出力1200Wであり、振動子はSUS製で表面を耐酸加工したものを用い、表3に示した周波数で試験を行った。酸洗試験前に、表3に示した平均気泡径のマイクロバブル、及び、表3に示した平均粒子径のアルミナ粒子をHCl水溶液中に分散させ、超音波を印加してから酸洗試験を行った。洗浄槽に鋼板を100m/minの速度で走行させ、脱スケール試験を行った。前記マイクロバブルの気泡径の測定は、気泡径分布計測装置を用いた。前記アルミナ微粒子の粒子径の測定は、レーザー回折散乱型粒度分布測定装置を用いた。
表3に、評価結果を示す。Siの含有量が、0.1質量%〜7.00質量%である鋼板で優れた脱スケールの効率向上の効果が得られた。
2 走行する鋼板
3 超音波振動子
4 マイクロバブルと微粒子を含んだ洗浄液
5 反射板
6 ロール
7 リンス液
8 リンス槽
9 洗浄物
Claims (11)
- 珪素を含有する鋼板の酸洗浄方法において、酸洗浄液がマイクロバブルを含有し、当該酸洗浄液に少なくとも2種類の周波数を有する超音波を印加し、当該超音波の周波数が28.0kHz以上1.0MHz未満の周波数であることを特徴とする鋼板の酸洗浄方法。
- 前記超音波の周波数のうち、最も低い周波数f1と最も高い周波数f2とが、
0.24≦|log(f1)−log(f2)|≦1.55
の関係にあることを特徴とする請求項1記載の鋼板の酸洗浄方法。 - 前記酸洗浄液に、平均粒子径0.05〜50μmのセラミックスまたは酸化鉄の粒子が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板の酸洗浄方法。
- 前記マイクロバブルが、平均気泡径の異なるマイクロバブルを2種類以上混合したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼板の酸洗浄方法。
- 前記粒子が、平均粒子径の異なる粒子を2種類以上混合したものであることを特徴とする請求項3に記載の鋼板の酸洗浄方法。
- 前記鋼板に対して凹型となる曲面を有する反射板を用いて前記印加した超音波を反射させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼板の酸洗浄方法。
- 少なくとも酸洗浄槽と当該酸洗浄槽中の酸洗浄液に超音波を印加する超音波印加装置と前記酸洗浄槽に酸洗浄液を供給する酸洗浄液供給装置を備える鋼板の酸洗浄装置であって、前記酸洗浄液供給装置にマイクロバブルを供給する手段を有し、前記超音波印加装置が少なくとも2種類の周波数を有する超音波を印加することができ、当該超音波の周波数が28.0kHz以上1.0MHz以下であることを特徴する鋼板の酸洗浄装置。
- 前記酸洗浄液供給装置に、さらに平均粒子径0.05〜50μmのセラミックスまたは酸化鉄の粒子を供給する手段を有することを特徴とする請求項7記載の鋼板の連続酸洗浄装置。
- 前記マイクロバブルを供給する手段が、平均気泡径の異なるマイクロバブルを2種類以上混合することができることを特徴とする請求項7又は8に記載の鋼板の連続酸洗浄装置。
- 前記粒子を供給する手段が、平均粒子径の異なる粒子を2種類以上混合することができることを特徴とする請求項8に記載の鋼板の連続酸洗浄装置。
- 前記酸洗槽の中を通過する鋼板に対して凹型となる曲面を有し、前記超音波を反射する反射板が、前記酸洗槽の中に設置されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の鋼板の連続酸洗浄装置。
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