JP7462435B2 - 超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法 - Google Patents

超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法 Download PDF

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Description

本発明は、超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法に関する。
油田の輸送配管には、土壌に有害物質(特に、水銀、ヒ素を含む重金属汚染物質)が含まれる場合に、かかる有害物質が老朽化した輸送配管内に堆積物として蓄積してしまう。そのため、老朽化した輸送配管を取り扱う際には、環境管理基準以下となるように有害物質を除染する必要がある。特に、有害物質が重金属汚染物質である場合、付着した物質が堆積被膜の内部に取り込まれ、洗浄するには堆積物最下層まで除去する必要があることから、洗浄には多くの洗浄工程とコストが必要となる。
土壌汚染の浄化で用いられる洗浄方法の一つに、電気化学的手法を用いて汚染物質を溶出除去する方法がある(例えば、以下の特許文献1及び特許文献2を参照。)。また、汚染物質を、酸や界面活性剤等の薬剤を用いて除染する方法が提案されている(例えば、以下の特許文献3を参照。)。
また、汚染の種別は異なるが、放射線に汚染された表面被覆層を高圧水で剥離させることで、安全な廃棄物とする方法も検討されている(例えば、以下の特許文献4を参照。)。
一方、除染に用いられることは稀であるが、洗浄に用いられる技術の一つに、超音波洗浄がある。例えば、以下の特許文献5には、大型槽であっても均一に洗浄対象物へ超音波伝播が可能となる装置が提案されている。また、以下の特許文献6には、2種類以上の周波数の超音波を組み合わせて用いる酸洗浄装置が提案されている。
特開2007-211315号公報 国際公開第2005/035149号 特開2004-33812号公報 特開平5-19097号公報 国際公開第2018/169050号 国際公開第2011/067955号
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に開示されているような電気化学的手法は、土壌、汚泥及び堆積物質を電極間で循環しながら除去する方法であり、配管等に付着した汚染物質を直接除去することは困難である。また、上記特許文献3に開示されている方法は、いわゆる化学洗浄法に属するものであるが、かかる化学洗浄法では薬剤のコストが高く、処理においても長時間運転が必要であった。更に、上記特許文献4に開示されている方法は、油田の輸送配管のような、配管の内面における蓄積物の剥離には効果が小さく、また、大型・複数の洗浄対象物には対応できない。
上記特許文献5に開示されている方法では、配管内に蓄積した堆積物(特に、重金属汚染物質のような堆積物の最下層に含有される汚染物質)を除去するためには、その洗浄能力に改良の余地があった。また、上記特許文献6に開示されているような、周波数の異なる超音波の組み合わせは、場合によっては超音波が互いに干渉してしまい、出力バランスが崩れてしまう可能性があり、各周波数の超音波を効率良く利用するという点で、改良の余地があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、内表面に汚染物質を含む表面付着物が堆積している処理対象鋼管を、より簡便かつ効率的に洗浄することが可能な、超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の周波数の超音波が印加されることで超音波の高周波成分を発生させる高周波発振材を用いることに想到した。かかる高周波発振材を処理槽の内部に設けることで、母材鋼管の内表面に汚染物質を含む表面付着物が堆積した処理対象鋼管を洗浄する際に、発生した高周波成分を母材鋼板と表面付着物との界面に作用させ、母材鋼板の表面から表面付着物を除去可能であるとの知見を得ることができた。
かかる知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)超音波を用いて、母材鋼管の内表面に汚染物質を含む表面付着物が堆積した処理対象鋼管を洗浄する超音波洗浄装置であって、洗浄液が収容されており、前記処理対象鋼管が浸漬される処理槽と、前記洗浄液に対して超音波を印加する超音波印加機構と、前記洗浄液中の溶存気体量を制御する溶存気体制御機構と、前記洗浄液に対してファインバブルを供給するファインバブル供給機構と、前記処理槽中において、前記超音波印加機構から1m以内の範囲に位置する高周波発振材と、を備え、前記高周波発振材は、JIS Z2242で規定される硬度HVが250~3000の範囲内である浸漬部材であり、前記浸漬部材として、平均粒径が0.1~50.0mmの範囲内である粒状物が、前記処理槽内の前記洗浄液の全体積に対して、1×10 -4 ~10体積%の含有量で、前記処理槽内に浸漬されており、前記浸漬部材に対し前記超音波が印加されることで、前記母材鋼管と前記表面付着物との界面に前記超音波の高周波成分を作用させる、超音波洗浄装置。
)前記超音波印加機構から印加される前記超音波の周波数fは、18~50kHzの範囲内であり、前記超音波印加機構からの前記超音波により前記高周波発振材から発生する高周波成分が前記ファインバブルに作用することで、周波数f’が50×f以上200×f以下の範囲内である高周波成分が発生する、(1)に記載の超音波洗浄装置。
)前記超音波印加機構から印加される前記超音波の周波数fは、18~50kHzの範囲内であり、前記洗浄液に対して、周波数f’が50×f以上200×f以下の範囲内である第2超音波を印加する第2超音波印加機構を更に備え、前記第2超音波印加機構からの前記第2超音波の出力を、周波数fの前記超音波の出力に対して20%以下とする、(1)又は(2)に記載の超音波洗浄装置。
)前記洗浄液は、pH8~10のアルカリ液である、(1)~()の何れか1つに記載の超音波洗浄装置。
)前記洗浄液は、硫化ソーダを含有する、(1)~()の何れか1つに記載の超音波洗浄装置。
)前記溶存気体制御機構は、前記洗浄液の飽和溶存気体量に対して溶存気体量が1~40%の範囲内となるように、前記洗浄液の溶存気体量を制御する、(1)~()の何れか1つに記載の超音波洗浄装置。
)前記ファインバブル供給機構は、平均気泡径が10nm~10μmの範囲内であるファインバブルを、気泡密度が10~10個/mLの範囲内となるように供給する、(1)~()の何れか1つに記載の超音波洗浄装置。
)前記超音波印加機構は、デューティ比が0.2~0.8の範囲内となるように、前記超音波を印加する、(1)~()の何れか1つに記載の超音波洗浄装置。
)超音波を用いて、母材鋼管の内表面に汚染物質を含む表面付着物が堆積した処理対象鋼管を洗浄する超音波洗浄方法であって、洗浄液が収容されており、前記処理対象鋼管が浸漬される処理槽と、前記洗浄液に対して超音波を印加する超音波印加機構と、前記洗浄液中の溶存気体量を制御する溶存気体制御機構と、前記洗浄液に対してファインバブルを供給するファインバブル供給機構と、前記処理槽中において、前記超音波印加機構から1m以内の範囲に位置する高周波発振材と、を備え、前記高周波発振材は、JIS Z2242で規定される硬度HVが250~3000の範囲内である浸漬部材であり、前記浸漬部材として、平均粒径が0.1~50.0mmの範囲内である粒状物が、前記処理槽内の前記洗浄液の全体積に対して、1×10 -4 ~10体積%の含有量で、前記処理槽内に浸漬されており、前記浸漬部材に対し前記超音波が印加されることで、前記母材鋼管と前記表面付着物との界面に前記超音波の高周波成分を作用させる超音波洗浄装置を用い、前記処理槽内に浸漬された前記処理対象鋼管及び前記高周波発振材に対して、前記超音波を印加する、超音波洗浄方法。
10前記表面付着物中に存在する前記汚染物質は、前記母材鋼管の表面から30μmまでの範囲内に存在する、(9)に記載の超音波洗浄方法
11前記表面付着物中に存在する前記汚染物質は、前記母材鋼管の内表面上に位置する黒色酸化被膜(マグネタイト層)中に存在する、(9)又は(10)に記載の超音波洗浄方法
12前記汚染物質は、水銀含有化合物又はヒ素含有化合物の少なくとも何れかである、(9)~(11)の何れか1つに記載の超音波洗浄方法

以上説明したように本発明によれば、内表面に汚染物質を含む表面付着物が堆積している処理対象鋼管を、より簡便かつ効率的に洗浄することが可能となる。
本発明の実施形態で着目する処理対象鋼管について説明するための説明図である。 同実施形態で着目する処理対象鋼管について説明するための説明図である。 同実施形態に係る超音波洗浄装置の構成の一例を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係る超音波洗浄装置について説明するための説明図である。 同実施形態に係る超音波洗浄装置について説明するための説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(処理対象鋼管について)
本発明の実施形態に係る超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法について説明するに先立ち、本発明の実施形態で着目する処理対象鋼管について、図1A及び図1Bを参照しながら簡単に説明する。図1A及び図1Bは、本発明の実施形態で着目する処理対象鋼管について説明するための説明図である。なお、以下では、便宜的に、図1A及び図1Bに示した座標系を適宜利用して、説明を行うものとする。また、処理対象鋼管とあわせて、処理対象鋼管に接続されていたバルブやフランジ等についても、一緒に洗浄処理を実施してもよい。
本発明の実施形態で着目する処理対象鋼管は、油田の輸送配管等に用いられるものであり、図1Aは、図中のy軸方向に延伸している処理対象鋼管を、xz平面で切断した際の断面を模式的に示したものである。
油田の土壌中に有害物質(特に、水銀(Hg)含有化合物やヒ素(As)含有化合物のような重金属汚染物質)が存在する場合、図1Aに模式的に示したように、油田の輸送配管の内表面には、これら汚染物質を含む表面付着物が堆積し、更に、表面付着物の上には、各種の堆積物が堆積している。本発明の実施形態で着目する処理対象鋼管は、図1Aに模式的に示したような、所定の母材鋼管の内表面に、少なくとも汚染物質を含む表面付着物が堆積したものである。
処理対象鋼管における母材鋼管については、特に限定されるものではなく、油田の輸送配管として求められる各種特性を満たすものであれば、任意の化学組成を有するものであってもよい。また、母材鋼管の外径、内径、肉厚についても特に限定されるものではなく、油田の輸送配管として用いられる各種の鋼管を利用することが可能である。このような母材鋼管の外径は、例えば、30~500mmの範囲内であり、母材鋼管の内径は、例えば、20~460mmの範囲内である。また、母材鋼管の肉厚は、例えば、4~20mmの範囲内である。
ここで、図1Aに示した断面では、母材鋼管の内表面の全てに表面付着物及び堆積物が堆積している場合を図示しているが、断面によっては、内表面の一部だけに表面付着物及び堆積物が堆積している場合や、内表面の全てに表面付着物及び堆積物が堆積していない場合も生じうる。
図1Bは、本発明の実施形態で着目する処理対象鋼管を、鋼管の軸方向(図1Bにおけるyz平面)で切断した場合の断面を模式的に示したものである。なお、図1Bでは、表面付着物の上に更に堆積しうる堆積物については、図示を省略している。油田の輸送配管について、本発明者らが検討を行った結果、表面付着物中に存在するHg含有化合物やAs含有化合物のような汚染物質は、母材鋼管の内表面上に位置する黒色酸化被膜(マグネタイト層)中に存在することが多いことが明らかとなった。
一例として、洗浄配管3サンプルの測定結果を、以下の表1に示す。サンプルAは、天然ガス他の使用済配管、サンプルBは、天然ガスの使用済配管、サンプルCは、原油の使用済配管である。各使用済配管を試験片として切り出し、配管内部のHg及びAsの存在を、OLYMPUS製DPO-6000-Cを用いて、XRFの1)Filter Mode、2)GeoChem Modeで確認した。測定1)では、付着物表面2cm×2cmを検出し、測定2)では、更に深さ方向10μmまでを測定する。その結果、測定1)ではAsは検出できたものの、Hgはほぼ検出できず、測定2)ではAsは未検出となり、Hgが検出された。
Figure 0007462435000001
表面付着物中のHg含有化合物及びAs含有化合物の分析結果から、図1Bに模式的に示したように、母材鋼管の表面に近い側にHg含有化合物が偏在しており、母材鋼管の表面から遠い側にAs含有化合物が偏在していることが明らかとなった。すなわち、図1Bに模式的に示したように、表面付着物の母材鋼管の表面に近い側には、Hg含有化合物偏在領域が存在し、母材鋼管の表面から遠い側には、As含有化合物偏在領域が存在していることが明らかとなった。
また、更なる検証の結果、上記のような表面付着物中の汚染物質は、母材鋼管の表面から30μmまでの範囲内(図1Bにおける厚みd=30μmの範囲内)に存在することが多いことが明らかとなった。
図1A及び図1Bに示したような、表面付着物が内表面に堆積している老朽化した輸送配管を取り扱う際には、環境管理基準以下となるように有害物質を除染する必要がある。特に、図1Bに示したように、Hg含有化合物は、堆積被膜のより内部に取り込まれ、洗浄するには堆積物最下層まで除去する必要があることから、洗浄には多くの洗浄工程とコストが必要となる。
以上説明したような、内表面に汚染物質を含む表面付着物が堆積している処理対象鋼管を、より簡便かつ効率的に洗浄することを目的として、本発明者らが鋭意検討した結果、以下で詳述するような本発明の実施形態に係る超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法に想到した。以下、本発明の実施形態に係る超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法について、詳細に説明する。
(超音波洗浄装置について)
以下では、図2~図4を参照しながら、本発明の実施形態に係る超音波洗浄装置について、詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る超音波洗浄装置1の構成の一例を模式的に示した説明図であり、超音波洗浄装置1を、z軸上方から俯瞰した場合の様子を示している。なお、図中の各部材の大きさは、説明を容易とするため適宜強調されており、実際の寸法、部材間の比率を示すものではない。
本実施形態に係る超音波洗浄装置1は、図2に模式的に示したように、処理槽10と、超音波印加機構20と、溶存気体制御機構30と、ファインバブル供給機構40と、高周波発振材50と、を少なくとも有している。
<処理槽10について>
処理槽10には、処理対象鋼管Sを洗浄するために用いられる洗浄液3や、処理対象鋼管Sそのものが収容される。処理槽10に保持される洗浄液3の種類については、特に限定されるものではなく、水等の公知の洗浄液を用いることが可能であるが、pH8~10のアルカリ液を用いることが好ましい。洗浄液3として、pH8~10のアルカリ液を用いることで、重金属化合物をアルカリ成分と反応させて重金属の水酸化物へと形態を変化させるとともに、以下で詳述するような超音波の高周波成分を適切な強度でより確実に発生させることで、重金属を除去することが可能となる。また、洗浄液3には、洗浄性の更なる向上を目的として、公知の粒子等が更に添加されていてもよい。例えば、洗浄液3には、硫化ソーダ(硫化ナトリウム)が含有されていてもよい。洗浄液3が硫化ソーダを含有することで、本実施形態で対象とするような処理対象鋼管Sの洗浄性を、硫化ソーダによる選択的吸着により、より一層向上させることが可能となる。
ここで、本実施形態に係る処理槽10を形成するために用いられる素材は、特に限定されるものではなく、鉄、鋼、ステンレス鋼板等といった各種の金属材料であってもよいし、繊維強化プラスチック(FRP)やポリプロピレン(PP)等といった各種のプラスチック樹脂であってもよいし、耐酸レンガ等のような各種のレンガであってもよい。すなわち、本実施形態に係る超音波洗浄装置1を構成する処理槽10として、上記のような素材で形成された処理槽を新たに準備することも可能であるし、各種の製造ラインにおける既設の処理槽を利用することも可能である。
また、処理槽10の大きさについても特に限定されるものではないが、以下で詳述するような超音波の高周波成分を適切な強度でより確実に発生させるために、処理槽10の大きさは、液面深さ0.3~2.0m程度×全長4~20m程度であるような、各種形状の大型処理槽であることが好ましい。
<超音波印加機構20について>
超音波印加機構20は、処理槽10に収容されている洗浄液3や処理対象鋼管Sや高周波発振材50に対して、所定周波数の超音波を印加するものである。超音波印加機構20は、特に限定されるものではなく、未図示の超音波発振器に接続された超音波振動子など、公知のものを利用することが可能である。
また、図1A~図1Dでは、超音波印加機構20を処理槽10の壁面に設ける場合について図示しているが、超音波印加機構20の処理槽10への設置位置についても特に限定されるものではなく、処理槽10の壁面や底面に対して、1又は複数の超音波振動子を適宜設置すればよい。なお、処理槽10全体に均一に超音波が伝播されるような条件となれば、個々の超音波振動子の発振負荷のバランスが一様となるため、超音波振動子の個数が複数であったとしても、発生した超音波間で干渉が生じなくなる。また、後述するが、処理層10に保持されている洗浄液3の溶存気体量を制御し、かつ、洗浄液3に対してファインバブルを供給することにより、処理槽10全体に対し、より均一に超音波を伝播することが可能となる。
図2では、y軸方向に平行な処理槽10の壁面に対して、4個+5個=9個の超音波印加機構20が設けられており、x軸方向に平行な処理槽10の壁面に対して、2個+2個=4個の超音波印加機構20が設けられる場合を図示している。しかしながら、超音波印加機構20の個数及び設置状態については、図2に示した例に限定されるものではなく、処理槽10の形状や大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。例えば、超音波印加機構20は、処理槽10の片側だけに設置してもよいし、図2に示したように、両側に設置してもよい。また、処理槽10の両側に設置する場合、図2に示したように千鳥配置としてもよいし、対称に配置するようにしてもよい。また、図2に示したように、x軸方向に平行な処理槽10の壁面に設置してもよいし、x軸方向に平行な処理槽10の壁面に設置しなくともよい。また、超音波印加機構20は、処理槽10の内壁側のみに設けても良いし、外壁側のみに設けてもよい。
超音波印加機構20から出力される超音波の周波数fは、例えば、18kHz~50kHzであることが好ましい。超音波の周波数が18kHz未満である場合には、超音波は可聴域へと変化し、液体中への伝播は可能であるが、固体中の伝播で減衰が大きくなる。更には、超音波が騒音として認識され、作業環境悪化につながる可能性がある。また、処理対象鋼管の表面から発生するサイズの大きな気泡により超音波伝播が阻害され、超音波による洗浄性向上効果が低下する場合がある。また、超音波の周波数が50kHzを超える場合には、キャビテーションの発生が少なくなり、堆積物の除去が困難となる可能性がある。超音波印加機構20から出力される超音波の周波数fを18kHz~50kHzの範囲内とし、以下で詳述するような溶存気体量及びファインバブルの制御を行うことで、より強力なキャビテーションを発生させるとともに、超音波をより広い範囲に伝播させることが可能となり、汚染物質を含む表面付着物の更に上部に積層されている堆積物をより確実に除去して、汚染物質を含む表面付着物をより確実に露出させることが可能となる。
また、超音波印加機構20から出力される超音波の周波数fを、18kHz~50kHzとすることで、以下で詳述する高周波発振材50から、より好ましい状態で、超音波(周波数f)の高周波成分を発生させることが可能となる。かかる高周波成分については、以下で改めて詳述する。
超音波印加機構20から出力される超音波の周波数fは、より好ましくは18kHz~40kHzであり、更に好ましくは、18kHz~35kHzである。
また、本実施形態に係る超音波印加機構20は、デューティ比が0.2~0.8の範囲内となるように、前記超音波を印加することが好ましい。超音波印加機構20のデューティ比を上記の範囲内とすることで、超音波はパルス的に発振されるようになる。すると、疎密波で固定されていた表面付着物上部に積層されている堆積物が、信号がゼロになった際に超音波キャビテーションによって亀裂の入った部分から自重で剥離除去される。更に、以下で詳述する高周波成分の発生もパルス的となり、より効率よく表面付着物を母材鋼管の内表面から除去することが可能となる。デューティ比が0.2未満である場合には、超音波の照射時間が短すぎて十分なエネルギーが水中に伝播せず、キャビテーションが発生しないか、又は、発生するキャビテーションが少ない状態となるため好ましくない。一方、デューティ比が0.8を超える場合には、堆積物の剥離に時間がかかり、それに伴って表面付着物の除去も同様に時間がかかるようになるため好ましくない。超音波印加機構20のデューティ比は、より好ましくは0.3~0.7の範囲内であり、更に好ましくは0.4~0.7の範囲内である。
<溶存気体制御機構30について>
溶存気体制御機構30は、処理槽10の内部に保持されている洗浄液3中の溶存気体量を、適切な範囲内に制御するものである。
本実施形態に係る超音波洗浄装置1において、より均一な超音波伝搬と高い洗浄性とを両立するためには、洗浄液3中の溶存気体量を適切な値に制御することが好ましい。このような洗浄液3中の適切な溶存気体量は、洗浄液3における溶存飽和量の1%~40%の範囲内であることが好ましい。溶存気体量が溶存飽和量の1%未満である場合には、超音波によるキャビテーション発生が起こらず、超音波による洗浄性向上能力(表面処理性向上能力)が発揮できないため好ましくない。一方、溶存気体量が溶存飽和量の40%を超える場合には、溶存した気体により超音波の伝搬が阻害され、処理槽10全体への均一な超音波伝搬が阻害されるため、好ましくない。洗浄液3中の溶存気体量は、好ましくは、洗浄液3における溶存飽和量の5%~35%である。
ここで、洗浄液3の温度が変化すれば、洗浄液3の溶存飽和量は変化する。また、洗浄液3の温度変化に起因する、洗浄液3を構成する液体の分子運動量(例えば、水分子運動量)の違いが、伝搬性に影響する。具体的には、温度が低ければ、洗浄液3を構成する液体の分子運動量は少なく、超音波を伝搬しやすくなり、洗浄液3の溶存飽和量も高くなる。従って、上記範囲内となるような所望の溶存気体量を実現可能なように、洗浄液3の温度を適宜制御することが好ましい。洗浄液3の温度は、洗浄液3を用いて実施する具体的な処理内容にもよるが、例えば、20℃~85℃程度であることが好ましい。
具体的には、洗浄液3中の溶存気体量は、例えば、0.1ppm以上11.6ppm以下であることが好ましく、1.0ppm以上10.0ppm以下であることがより好ましい。そのため、溶存気体制御機構30は、処理槽10内に保持された洗浄液3中の溶存気体量が上記のような範囲の値となるように、洗浄液3の温度や洗浄液3中の溶存気体量を制御する。
溶存気体量の制御方法には、真空脱気、化学薬品による脱気等、様々な方法が存在しており、適宜選択することが可能である。また、洗浄液3中の溶存気体量は、隔膜電極法及び光学式溶存酸素計といった、公知の機器によって測定することが可能である。
ここで、水溶液中の溶存気体は、主に、酸素、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンであり、水溶液の温度や成分に影響を受けるものの、酸素と窒素がその大半を占めている。
なお、図2では、溶存気体制御機構30が、処理槽10のy軸方向に平行な壁面に設置される場合について図示しているが、溶存気体制御機構30の設置位置は図2に示した例に限定されるものではなく、処理槽10の任意の位置に設置することが可能である。また、溶存気体制御機構30の個数についても特に限定されるものではなく、処理槽10の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。
<ファインバブル供給機構40について>
ファインバブル供給機構40は、超音波印加機構20から印加される超音波の周波数に応じた気泡径(平均気泡径)を有するファインバブルを、供給管を介して、処理槽10に保持された洗浄液3中へと供給するものである。ファインバブルとは、平均気泡径が100μm以下である微細気泡である。かかるファインバブルのうち、平均気泡径がμmサイズのファインバブルを、マイクロバブルと称することがあり、平均気泡径がnmサイズのファインバブルを、ナノバブルやウルトラファインバブルと称することがある。ファインバブルは、超音波キャビテーションの核として洗浄性を向上させるものであり、高周波成分を励起させるものである。
気泡の周囲の圧力を変動させると、気泡は体積振動し、その体積振動は非線形性が強い。体積振動によって音波を発生し、非線形的なふるまいを示す中で、照射する超音波の周波数のn倍(nは2倍以上の整数)の周波数をもつ高調波成分やn分の1倍の周波数をもつ分調波成分などを含んだ音波を返す現象が起こる(日本流体力学学会誌「ながれ」24,振動圧力場における微小気泡の非線形音響特性,405-412(2005)参照。)。本発明者の検討によると、気泡を含まない条件でも超音波照射によりキャビテーション気泡が発生し、微弱な高調波成分の高周波帯が発生することを確認している。ファインバブルを供給すると、上記のような高調波成分が更に発生することを確認した。
しかしながら、高調波成分である高周波帯の発生によって、洗浄に作用しているかは確認されていなかった。本発明者は、ファインバブルを供給することで、キャビテーション核として洗浄性を向上させると共に、ファインバブルの非線形性の体積振動によって発生した高周波が母材鋼管の内表面に作用し、洗浄性が向上することを見出した。
本実施形態に係る超音波洗浄装置1において、洗浄液中に供給されるファインバブルの平均気泡径は、10nm~10μmの範囲内であることが好ましい。ここで、平均気泡径とは、ファインバブルの直径に関する個数分布において、標本数が最大となる直径である。平均気泡径が10nm未満である場合、ファインバブル供給機構40が大型となり、気泡径を整えてのファインバブルの供給が困難になる場合がある。また、平均気泡径が10μmを超える場合には、共振径に膨張するまでの繰り返しの膨張収縮による体積振動回数が少なくなることで高調波成分が得られにくくなり、更には、キャビテーション気泡内部の空気量が増えることで、洗浄に有効な急激な収縮を誘発するキャビテーションの量が減り、超音波エネルギーが有効に作用しない可能性がある。また、気泡径が大きすぎる場合、超音波の伝播がファインバブルによって阻害され、超音波の持つ洗浄力向上効果が低下してしまう場合がある。
また、洗浄液3中におけるファインバブルの濃度(密度)は、10個/mL~10個/mLであることが好ましい。ファインバブルの濃度が10個/mL未満である場合には、ファインバブルによる超音波伝播性向上作用が十分得られない場合があり、また、洗浄に必要な超音波キャビテーションの核が少なくなってしまい、好ましくない。また、ファインバブルの濃度が10個/mLを超える場合には、ファインバブルを発生させる装置が大型になったり台数を増やすことになったりして、ファインバブルの供給が現実的ではない場合があり、好ましくない。
ここで、ファインバブル発生の基本機構には、気泡のせん断、気泡の微細孔通過、減圧によるキャビテーション(気化)、気体の加圧溶解、超音波、電気分解、化学反応等といった様々な機構が存在し、適宜選択することが可能である。本実施形態に係るファインバブル供給機構40では、ファインバブルの気泡径と濃度とを容易に制御することが可能な、ファインバブル発生方式を利用することが好ましい。ファインバブル発生によって溶存気体量も変化することがあるため、気泡径と濃度のどちらも制御可能な、溶存気体を気泡化する減圧によるキャビテーション(気化)でのファインバブル発生が好ましい。
ここで、ファインバブルの平均気泡径や濃度(密度)は、液中パーティクルカウンターや気泡径分布計測装置等といった、公知の機器により測定することが可能である。
以上のようにして発生させたファインバブルは、一般的な洗浄液3の液性条件下では、表面電位が負に帯電していることが多い。一方で、処理対象鋼管の表面に存在している洗浄対象物(例えば、鋼管のスケール、スマット、油分等)は、正に帯電していることが多いため、ファインバブルが洗浄対象物の近傍まで到達すれば、かかる帯電性の違いによって、ファインバブルが洗浄対象物へと吸着することとなる。本実施形態に係る超音波洗浄装置1がファインバブル供給機構40を有することで、ファインバブルが印加された超音波によってキャビテーションを発生させ、洗浄対象物を確実に洗浄することでき、より効率良く洗浄を行うことが可能となる。
なお、図2では、ファインバブル供給機構40が、処理槽10のy軸方向に平行な壁面に設置される場合について図示しているが、ファインバブル供給機構40の設置位置は図2に示した例に限定されるものではなく、処理槽10の任意の位置に設置することが可能である。また、ファインバブル供給機構40の個数についても特に限定されるものではなく、処理槽10の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。
<高周波発振材50について>
本実施形態に係る高周波発振材50は、図2に模式的に示したように、処理槽10中に位置しており、超音波が印加されてファインバブルが供給されることで、母材鋼管と表面付着物との界面に対して、超音波の高周波成分を作用させるものである。先だって説明したように、本発明者は、ファインバブルの供給と合わせて高周波発振材を設けることで、高い高周波帯が発生することを見出した。
ここで、図2では、4個の高周波発振材50が処理槽10中に設けられる場合を図示しているが、高周波発振材50の設置位置及び設置個数は便宜的に示したにすぎず、その設置位置及び設置個数は、特に限定されるものではない。
図3に模式的に示したように、超音波印加機構20から出力された超音波(周波数f)が、高周波発振材50に照射されると、高周波発振材50から、照射された超音波の高周波成分が発生する。また、この高周波成分がファインバブルに伝播することで更に高い高周波成分(周波数f’)を励起する。発生した高周波成分は、処理対象鋼管の外部から母材鋼管へと入射し、母材鋼管の内部を透過して、母材鋼管とHg含有化合物偏在領域との界面まで到達する。かかる界面に対して高周波成分が作用して、母材鋼管の表面から表面付着物を剥離させる。母材鋼管側に位置するHg含有化合物偏在領域の部分から表面付着物が剥離していくため、母材鋼管の内表面から表面付着物が効率よく除去されるようになる。
また、表面付着物(より詳細には、Hg含有化合物偏在領域)が母材鋼管の表面から剥離し始めると、表面付着物に亀裂が生じるようになる。この亀裂を介して、洗浄液3中を伝播した超音波(周波数f)及びファインバブルFBが母材鋼管の表面近傍まで浸透していくようになり、母材鋼管の表面近傍でファインバブルFBのキャビテーションが生じるようになるため、表面付着物の剥離がより一層進行するようになる。
なお、高周波成分の発生位置及び伝播方向は、図3に示した例に限定されるものではなく、高周波発振材50の形状等に応じて高周波発振材50の様々な場所で発生し、更にはファインバブルに伝播して様々な方向に伝播していく。
ここで、上記のような高周波成分を適切な強度でより確実に発生させるために、高周波発振材50は、超音波印加機構20から1m以内の範囲内に位置することが好ましい。すなわち、超音波印加機構20の発振面から、高周波発振材50の表面までの離隔距離(図3における距離D)は、1m以下であることが好ましい。なお、超音波印加機構20との離隔距離が1m超となる位置に存在している高周波発振材50から、高周波成分が一切発生しないというわけではなく、発生した高周波成分は、離隔距離1m以内に存在する高周波発振材50から発生した高周波成分よりも相対的に微弱ながら、表面付着物の母材鋼管の内表面からの剥離に寄与することとなる。
また、上記のような高周波成分を適切な強度でより確実に発生させるために、高周波発振材50は、JIS Z2242で規定される硬度HVが250~3000の範囲内である浸漬部材であることが好ましい。上記のような硬度を有する浸漬部材を、高周波発振材50として用いることで、高周波成分を適切な強度でより確実に発生させることができる。浸漬部材の硬度HVは、より好ましくは、500以上2000以下である。上記のような硬度HVを有する素材としては、例えば、ガラス(HV550)、超硬合金(HV1700)、セラミックス(HV2350)等を挙げることができる。また、上記のような硬度HVを有している各種の金属体は、高周波発振材50として機能しうる。
また、上記のような浸漬部材として、平均粒径が0.1~50.0mmの範囲内である粒状物を、処理槽10に収容される洗浄液3の全体積に対して、1×10-4~10体積%の含有量で、処理槽10に浸漬させることが好ましい。このような粒状物が処理槽10内に配設されることで、高周波発振材50の取り扱いがより簡便なものとなるに加えて、処理槽10内の各所で反射・散乱し、上記のような超音波の高周波成分を発生させることが可能となり、ファインバブルにも高周波成分が伝播しやすくなることから、より効率よく表面付着物を除去することが可能となる。粒状物の形状に関して、超音波が吸収されるような細孔や気孔が存在するものではなく、反射・散乱させる形状であることが好ましく、球状、更には球状の中空体であることがより好ましい。
粒状物の平均粒径は、より好ましくは0.1~5.0mmである。また、粒状物の含有量は、より好ましくは0.1~1.0体積%である。なお、粒状物の平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。なお、上記のような粒状物としては、特に硬度の高い物質が、高周波成分の発生をより促進させる。
また、超音波印加機構20から印加される超音波の周波数fが18~50kHzの範囲内である場合には、上記のような高周波発振材50からファインバブルに作用して得られる、周波数f’が50×f以上200×f以下(すなわち、f’:900kHz以上10MHz以下)の範囲内である高周波成分が発生するようになる。このような周波数f’を有する高周波成分は直進性を有し、より確実に母材鋼管内を透過して、母材鋼管と表面付着物との界面に作用するようになる。これにより、表面付着物がより確実に母材鋼管の内表面から剥離するようになる。
なお、上記のような高周波成分による表面付着物の剥離効果をより一層促進させるために、図4に模式的に示したように、周波数fが18kHz~50kHzの範囲内の超音波を印加する超音波印加機構20に加えて、周波数f’が50×f以上200×f以下の範囲内である超音波を印加する、第2超音波印加機構25を設けてもよい。この際、第2超音波印加機構25から印加される第2超音波の出力は、周波数がfである超音波(すなわち、超音波印加機構20から印加される超音波)の出力に対して、20%以下とすることが好ましい。第2超音波の出力が20%を超える場合には、堆積物を除去するための超音波印加機構20と干渉が起こり、共に減衰がおこってしまう可能性があるため好ましくない。第2超音波印加機構25から印加される第2超音波の出力は、より好ましくは10%以下である。なお、第2超音波印加機構25の設置位置及び設置個数については、上記の出力に関する条件を満足する範囲内であれば、特に限定するものではない。
以上、図2~図4を参照しながら、本実施形態に係る超音波洗浄装置について、詳細に説明した。
(超音波洗浄方法について)
以上説明したような、本実施形態に係る超音波洗浄装置1を用いた超音波洗浄方法では、超音波洗浄装置1の処理槽10内に浸漬された処理対象鋼管及び高周波発振材に対して、上記のような所定の周波数を有する超音波を印加する。これにより、高周波発振材から、印加した超音波の周波数に応じた高周波成分が発生し、この高周波成分がファインバブルに伝播することで更に高い高周波成分を励起して処理対象鋼管における母材鋼管と表面付着物との界面に、発生した高周波成分が作用する。その結果、母材鋼管と表面付着物との界面の位置から表面付着物が剥離するようになる。
以上、本実施形態に係る超音波洗浄方法について、簡単に説明した。
以下では、実施例及び比較例を示しながら、本発明に係る超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明に係る超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法のあくまでも一例にすぎず、本発明に係る超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法が以下に示す例に限定されるものではない。
(実験例)
厚みが6mmのSUS材を用いて、幅1m×長さ10m×深さ1mの処理槽を形成した。外径100mm×長さ2~8mである使用済み廃油井管を処理対象鋼管Sとして、洗浄液の保持されている処理槽に3分間浸漬し、管内に残存している酸化スケールを水洗する処理を行うことで、検証を行った。洗浄液としては、液温が30℃である上水を使用し、電解を行ってpHを調整した液を使用した。また、別途、更に硫化ソーダを添加した液(表2中に*印を付与)についても、同様に検証を行った。
超音波印加機構の超音波発振器は、出力が1200Wであり、超音波振動子10個を処理槽の内壁片側に設置間隔0.8mで固定して、検証を行った。なお、印加する超音波の周波数は、18~80kHzとした。
また、洗浄液の溶存気体量を、飽和溶存気体量に対して以下の表2に示した値となるように制御するとともに、ファインバブルの平均気泡径及び個数密度が以下の表2に示した値となるように制御した。ここで、溶存気体制御機構として、三浦工業製膜式脱気装置PDO4000Pを用いた。溶存気体量の測定は、YSI製の蛍光式溶存酸素計ProODOを用い、温度自動補正された空気飽和に対する溶存酸素量(%)を測定し、溶存気体量に比例する値として用いた。また、ファインバブル供給機構として、OHR流体研究所製2FKV-27M/MX-F13を用いた。また、ファインバブルの気泡径(平均気泡径)及び濃度は、細孔電気抵抗法(ベックマン・コールター製Multisizer4)及びブラウン運動解析法(Malvern製ナノ粒子解析装置NanoSight)を用いて測定した。
更に、洗浄液に対して、以下の表2に示したようなJIS Z2242で規定される硬度HVを有する高周波発振材を、超音波印加機構(より詳細には、超音波振動子)からの距離及び含有量が以下の表2に示した値となるように、配置した。
なお、表2に示した硬度HVを有する素材の詳細は、以下の通りである。
HV 550:ソーダ石灰ガラス粒子(平均粒径:0.1mm)
HV 660:ホウケイ酸ガラス粒子(平均粒径:4.0mm)
HV 187:SUS304材
HV 280:チタン合金材
HV1800:セラミックス(アルミナ)ボール(平均粒径:40mm)
処理対象鋼管である使用済み廃油井管を3本束にして、クレーンで処理槽の中央に吊り下げながら浸漬させた上で、超音波強度を測定するとともに、洗浄評価を行った。
発生した高周波成分の測定は、周波数解析装置(超音波システム研究所製超音波テスターNA)のバイスペクトル法を用いて、浸漬させた管に測定プローブを接触させて測定した。超音波強度測定は、超音波レベルモニター(カイジョー製19001D)を用いて、処理槽中央長手方向の10点2列の超音波強度(mV)の測定を行った。この際、相対超音波強度(比較例1の測定結果、すなわち、溶液内の溶存気体制御をせず、かつ、ファインバブルを供給しないで高周波発振材が備えられていないことを前提とした場合における測定超音波強度を1としたときの相対強度)と標準偏差σを算出して、処理対象鋼管S及び処理槽内への超音波の伝播性を比較した。
また、本試験例では、水銀の管表面付着物除去率を測定し、測定した除去率を洗浄性能として評価した。より詳細には、洗浄前後の管を一部切り出し、管表面付着物の水銀付着量をオリンパス製DPO-6000-Cを用いたGeoChemモードにてXRF測定を行い、2cm×2cm領域における水銀付着量を算出した。洗浄前の水銀の表面付着残存量に対し、各条件で除去できた水銀除去量の割合を、水銀付着物除去率とした。下記表2における洗浄性能の評価基準階下の通りである。
水銀残存皮膜の除去率
100%以下~95%以上:A
95%未満~90%以上:B
90%未満~80%以上:C
80%未満~60%以上:D
60%未満~40%以上:E
40%未満 :F
すなわち、評点A及び評点Bは、洗浄性能が非常に良好であったことを意味し、評点Cは、洗浄性能が良好であったことを意味し、評点Dは、洗浄性能にやや難があったことを意味し、評点E及び評点Fは、洗浄性能が不良であったことを意味する。評点A~評点Cを合格とした。
超音波印加機構、溶存気体制御機構、及び、ファインバブル供給機構の設定条件、並びに、高周波発振材及び洗浄液を変えて得られた結果を、以下の表2にまとめて示した。
Figure 0007462435000002
上記表2から明らかなように、本発明の比較例に該当する例では、相対超音波強度が比較的小さな値となる場合が発生し、標準偏差が大きくなって超音波が均一に伝わらず、また、洗浄性についても、不合格となった。一方で、本発明の実施例に該当する例では、相対超音波強度が大きな値となるとともに、超音波強度の標準偏差も小さくなり、更に、優れた洗浄性を示した。
なお、本試験例に用いた使用済み廃油井管の比較では、その他の重金属化合物については評価しなかったが、より母材鋼管に近い位置に存在する水銀含有化合物が本発明により除去可能であったことや、目視で堆積物が除去できていたことから、含浸せず堆積物に取り込まれている重金属化合物や、特にヒ素含有化合物が存在する場合、並びに、ヒ素含有化合物及び水銀含有化合物が存在する場合であっても、同様に洗浄が可能であると推察される。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 超音波洗浄装置
3 洗浄液
10 処理槽
20 超音波印加機構
25 第2超音波印加機構
30 溶存気体制御機構
40 ファインバブル供給機構
50 高周波発振材

Claims (12)

  1. 超音波を用いて、母材鋼管の内表面に汚染物質を含む表面付着物が堆積した処理対象鋼管を洗浄する超音波洗浄装置であって、
    洗浄液が収容されており、前記処理対象鋼管が浸漬される処理槽と、
    前記洗浄液に対して超音波を印加する超音波印加機構と、
    前記洗浄液中の溶存気体量を制御する溶存気体制御機構と、
    前記洗浄液に対してファインバブルを供給するファインバブル供給機構と、
    前記処理槽中において、前記超音波印加機構から1m以内の範囲に位置する高周波発振材と、
    を備え
    前記高周波発振材は、JIS Z2242で規定される硬度HVが250~3000の範囲内である浸漬部材であり、前記浸漬部材として、平均粒径が0.1~50.0mmの範囲内である粒状物が、前記処理槽内の前記洗浄液の全体積に対して、1×10 -4 ~10体積%の含有量で、前記処理槽内に浸漬されており、
    前記浸漬部材に対し前記超音波が印加されることで、前記母材鋼管と前記表面付着物との界面に前記超音波の高周波成分を作用させる、超音波洗浄装置。
  2. 前記超音波印加機構から印加される前記超音波の周波数fは、18~50kHzの範囲内であり、
    前記超音波印加機構からの前記超音波により前記高周波発振材から発生する高周波成分が前記ファインバブルに作用することで、周波数f’が50×f以上200×f以下の範囲内である高周波成分が発生する、請求項1に記載の超音波洗浄装置。
  3. 前記超音波印加機構から印加される前記超音波の周波数fは、18~50kHzの範囲内であり、
    前記洗浄液に対して、周波数f’が50×f以上200×f以下の範囲内である第2超音波を印加する第2超音波印加機構を更に備え、
    前記第2超音波印加機構からの前記第2超音波の出力を、周波数fの前記超音波の出力に対して20%以下とする、請求項1又は2に記載の超音波洗浄装置。
  4. 前記洗浄液は、pH8~10のアルカリ液である、請求項1~の何れか1項に記載の超音波洗浄装置。
  5. 前記洗浄液は、硫化ソーダを含有する、請求項1~の何れか1項に記載の超音波洗浄装置。
  6. 前記溶存気体制御機構は、前記洗浄液の飽和溶存気体量に対して溶存気体量が1~40%の範囲内となるように、前記洗浄液の溶存気体量を制御する、請求項1~の何れか1項に記載の超音波洗浄装置。
  7. 前記ファインバブル供給機構は、平均気泡径が10nm~10μmの範囲内であるファインバブルを、気泡密度が10~10個/mLの範囲内となるように供給する、請求項1~の何れか1項に記載の超音波洗浄装置。
  8. 前記超音波印加機構は、デューティ比が0.2~0.8の範囲内となるように、前記超音波を印加する、請求項1~の何れか1項に記載の超音波洗浄装置。
  9. 超音波を用いて、母材鋼管の内表面に汚染物質を含む表面付着物が堆積した処理対象鋼管を洗浄する超音波洗浄方法であって、
    洗浄液が収容されており、前記処理対象鋼管が浸漬される処理槽と、前記洗浄液に対して超音波を印加する超音波印加機構と、前記洗浄液中の溶存気体量を制御する溶存気体制御機構と、前記洗浄液に対してファインバブルを供給するファインバブル供給機構と、前記処理槽中において、前記超音波印加機構から1m以内の範囲に位置する高周波発振材と、を備え、前記高周波発振材は、JIS Z2242で規定される硬度HVが250~3000の範囲内である浸漬部材であり、前記浸漬部材として、平均粒径が0.1~50.0mmの範囲内である粒状物が、前記処理槽内の前記洗浄液の全体積に対して、1×10 -4 ~10体積%の含有量で、前記処理槽内に浸漬されており、前記浸漬部材に対し前記超音波が印加されることで、前記母材鋼管と前記表面付着物との界面に前記超音波の高周波成分を作用させる超音波洗浄装置を用い、
    前記処理槽内に浸漬された前記処理対象鋼管及び前記高周波発振材に対して、前記超音波を印加する、超音波洗浄方法。
  10. 前記表面付着物中に存在する前記汚染物質は、前記母材鋼管の表面から30μmまでの範囲内に存在する、請求項9に記載の超音波洗浄方法
  11. 前記表面付着物中に存在する前記汚染物質は、前記母材鋼管の内表面上に位置する黒色酸化被膜(マグネタイト層)中に存在する、請求項9又は10に記載の超音波洗浄方法
  12. 前記汚染物質は、水銀含有化合物又はヒ素含有化合物の少なくとも何れかである、請求項9~11の何れか1項に記載の超音波洗浄方法
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