JP4858957B2 - 気泡添加による超音波化学作用を利用した液処理方法及び装置 - Google Patents

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本発明は、液体に超音波を照射して該液体中に酸化剤を生成させる酸化剤生成方法、その装置、及び化学反応促進方法に関するものであり、更に詳しくは、液体に超音波を照射して酸化剤を生成させる際に、液体中に微細な気泡を添加することにより、キャビテーションを増加させ、酸化剤の生成を増加させる酸化剤生成方法、その装置、及び化学反応促進方法に関するものである。本発明は、超音波照射により生成したヒドロキシラジカル、酸素原子等の酸化剤生成量を増加させて化学反応量を増加、促進することを可能とする、環境汚染物質の分解・無害化を図る環境浄化プロセスや、新規な物質の創製等に有用な新しい超音波化学反応技術を提供するものである。
液体中へ超音波を照射すると、ある強さ(キャビテーション閾値)以上でキャビテーション気泡が発生するが、このキャビテーションは、超音波の周期に応じて膨張収縮を繰り返し、音圧振幅が1気圧を超えると圧縮破壊(圧壊)と呼ばれる急激な収縮を起こし、準断熱圧縮により数千度、数百気圧もの高温高圧の極限環境が短時間かつ限られた気泡近傍の領域に生じる一方、マクロ的には、常温常圧を保つ。この圧壊時に、キャビテーション気泡は、水を分解してOH(ヒドロキシ)ラジカル、酸素原子、過酸化水素等の酸化剤を生成する。本発明は、これらの酸化剤生成量を増加させる酸化剤生成方法、及び該方法を利用した化学反応促進方法及び装置に係るものであり、種々の化学反応を効率良く短時間で行うことが可能であり、汚染物質の分解あるいは無害化を図る環境浄化プロセスへの応用が可能である。
また、本発明は、気泡周辺への衝撃波伝搬や固体表面を打つジェットの作用により、物質輸送による溶解析出を促進し、従来法と比べて、省エネかつ低環境負荷の新規な物質創製方法としても応用可能であり、また、このように、超音波による化学反応は、効率良く短時間で有害物質の分解あるいは無害化、汚染物質の除去、悪性細胞の無害化、また、材料創製を行うことが期待できることから、例えば、環境浄化技術の他に、洗浄技術、癌治療等の医療技術、粉体工業等へも応用可能であるものとして有用である。
これまで、超音波照射における気泡添加効果については、次のような基礎的検討がなされてきた。例えば、Tezcanli−GuyerとInceは、520kHz超音波の化学作用とオゾンないし紫外線照射との組み合わせによるアゾ染料分解について検証を行う中で、空気、アルゴンガス、酸素ガス、オゾンガスの比率を変えたバブリングを行っている(非特許文献1参照)が、これは、マイクロバブルと超音波の組み合わせではない。また、KitanoとHayashiは、20kHz超音波の化学作用の雰囲気圧力依存性を調べており、空気、アルゴン、酸素、窒素それぞれの雰囲気における静圧を変えたときの反応速度を測定し、また、バブリング時間経過による反応速度の変化についても検討している(非特許文献2参照)が、ここでは、マイクロバブルと超音波の組み合わせでの検討は行われていない。
また、従来の先行特許文献には、以下のような事例がある。例えば、ナノバブルの特性について理論的に予想される特性を確定し、また、実験により得られたデータを解析して、新たな特性を発見し、それらの特性の相互関係を解明することにより、ナノバブルを有効に利用する技術及び分野が提示されている(特許文献1参照)。しかしながら、この技術では、超音波の物理作用や化学作用との組み合わせによる液処理は行っておらず、また、気泡の安定化に際して電解質の存在を想定している技術である。
また、表示パネルの薄型化を目的とした化学エッチングにより生じる粉状物を完全に除去して、搬送キャリアやクリーンルーム等他の製造工程の設備に対する汚染を防ぐ技術が提案されている(特許文献2参照)が、この技術は、気泡を含んだ液の吹き付けによる洗浄であり、超音波化学作用を用いていない。同様に、表示パネルを薄型化するための化学エッチングを実施する設備と同じ設備内で付着物質を洗浄除去し、搬送キャリアや他の製造工程の設備等に対する汚染を防ぐ技術が提案されている(特許文献3参照)が、この技術についても、気泡を含んだ液の吹き付けによる洗浄であり、超音波化学作用を用いていない。
また、有害物質であるホルムアルデヒドの副生量を最小限に抑制しながら、液体中の揮発性の低い成分や親水性の強い成分を効率良く分解できる液体処理方法及び処理装置(特許文献4参照)が提案されており、更に、生物を免疫するための、増強され、追跡可能な、光生理学的に磨かれた液体及び気体又は固体又はその組み合わせの製造方法、前記方法を使用する装置、及び利用の好ましい形態を開示する事例(特許文献5参照)があるものの、気泡添加方法が本発明と異なるものであり、気泡添加による微細キャビテーション気泡の増加による化学反応量増大に関する検討は何もなされていないのが現状である。
特開2004−121962号公報 特開2003−066397号公報 特開2002−318545号公報 特開2000−210659号公報 特表2003−531875号公報 Tezcanli−Guyer G,Ince NH,"Individual and combined effects of ultrasound,ozone and UV irradiation:a case study with textile dyes",ULTRASONICS 42(1−9):603−609 APR(2004) KITANO H,HAYASHI S,"SONOCHEMICAL OXIDATION OF IODIDE−IONS IN SOLUTION UNDERSATURATED WITH AMBIENT GASES",JAPANESE JOURNAL OF APPLIED PHYSICS PART 1−REGULAR PAPERS SHORT NOTES & REVIEW PAPERS 34(5B):2721−2724 MAY(1995)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、超音波照射下に、酸化剤を生成し、化学反応を促進させることができる超音波を利用した新しい化学反応技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、液体に超音波を照射する際に、該液体中に微細な気泡を添加してキャビテーションを増加させることにより、酸化剤の生成を増加し、化学反応を促進することが可能であることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
本発明は、液体に超音波を照射する際に、液体中に微細な気泡を添加して、キャビテーションを増加させることによりヒドロキシラジカルや過酸化水素等の酸化剤の生成を増加させる酸化剤生成方法、及びその装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、超音波照射による酸化剤生成を、微細な気泡の添加により増加させて化学反応量を増加、促進させる化学反応促進方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、溶存気体濃度が制御された液体に超音波を照射すること及び/又は超音波が照射される液体を流動させることにより、液体中での酸化剤の生成量をより増加させ、化学反応量を促進する化学反応促進方法を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、上記酸化剤生成方法及び化学反応促進方法を利用した、例えば、新規材料の創製、環境浄化技術、洗浄技術、医療技術、粉体工業等に有用な新しい化学反応技術を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)液体に超音波を照射して該液体中に酸化剤を生成させる酸化剤の生成装置において、該装置が、液体を収容する浴槽、浴槽中の液体に対して超音波を照射する手段、微細な気泡を浴槽中の超音波の音源近傍において音波伝播方向に対し側方より添加する手段、液体を流動させる手段、浴槽中に収容されている液体の溶存気体濃度を20〜74%の範囲に低減する減圧手段、を具備していることを特徴とする酸化剤生成装置。
(2)前記(1)に記載の酸化剤生成装置を利用して浴槽中の液体に対して、超音波照射、微細気泡添加、及び液体への流動付与を行い物質の処理を行う物質処理装置であって、
物質の処理が、浄化、洗浄、分散、乳化、混合、撹拌、流動、又は固体表面改質による反応性の付与もしくは向上、であることを特徴とする上記処理装置。
(3)前記(1)に記載の装置を使用して、液体に超音波を照射して該液体中に酸化剤を生成させる酸化剤の生成方法であって、
超音波照射時に該液体中の溶存気体濃度を20〜74%の範囲に低減、微細気泡(マイクロバブル)添加、液体への流動の付与により酸化剤生成を増加させること、その際に、微細気泡を、超音波の音源近傍において音波伝播方向に対し側方より添加することを特徴とする酸化剤生成方法。
(4)酸化剤が、ヒドロキシラジカル、酸素原子、オゾン、及び/又は過酸化水素である、前記(3)に記載の酸化剤生成方法。
(5)照射する超音波の周波数が、20kHz〜2MHzである、前記(3)又は()に記載の酸化剤生成方法。
(6)前記(3)から(5)のいずれかに記載の酸化剤生成方法を利用して、液体中の酸化剤生成量を増加させて、該酸化剤が促進する化学反応量を増加させることを特徴とする化学反応促進方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、液体に超音波を照射して該液体中に酸化剤を生成させる酸化剤の生成方法において、超音波照射時に該液体中の溶存気体濃度低減及び/又は微細気泡(マイクロバブル)添加により酸化剤生成を増加させることを特徴とするものである。本発明では、微細な気泡を、超音波の音源近傍において超音波の伝搬方向に対し側方より添加すること、また、液流動を付与すること、また、酸化剤が、ヒドロキシラジカル、酸素原子、オゾン、及び/又は過酸化水素であること、を好ましい実施態様としている。
また、本発明は、液体に超音波を照射して該液体中に酸化剤を生成させる酸化剤の生成方法において、照射する超音波の周波数が、20kHz〜2MHzであること、0.1ミクロン〜10ミクロン程度の大きさの範囲にある微細気孔(マイクロバブル)を超音波場へ添加すること、を好ましい実施態様としている。
また、本発明は、上記の酸化剤生成方法を利用して、液体中の酸化剤生成量を増加させて、該酸化剤が促進する化学反応量を増加させることを特徴とする化学反応促進方法の点に特徴を有するものである。また、本発明は、液体に超音波を照射して該液体中に酸化剤を生成させる酸化剤の生成装置において、該装置が、液体を収容する浴槽、浴槽中の液体に対して超音波を照射する手段、微細な気泡を浴槽中に添加する手段及び/又は液体を流動させる手段、を具備している点に特徴を有するものである。
更に、本発明は、上記の酸化剤生成装置を利用して浴槽中の液体に対して、超音波照射、微細気泡添加、及び/又は液流動付与を行い物質の処理を行う物質処理装置の点に特徴を有するものである。
本発明は、超音波を利用した化学反応技術において、酸化剤の生成、及び化学反応の促進作用を、従来技術よりも大きく増進させることが可能な新しい超音波化学技術を提供するものである。本発明は、液体中での超音波照射により形成されたキャビテーションの圧縮破壊時に生ずる高温高圧の反応場に、微細な気泡を添加することによって、酸化剤の生成を増加させ、化学反応量を増加、促進させるものである。
本発明の超音波の照射により酸化剤が生成される反応系としては、液体を反応媒体とする各種の反応系が例示されるが、液体の種類、組成等に関わらず、超音波の照射により酸化剤が生成され、化学反応が促進される液体であれば、任意のものが用いられる。例えば、水を媒体とすると、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、酸素原子、オゾン等の酸化剤が生成し、これらが化学反応に関与する。
本発明において、超音波照射下の液体中に添加される微細気泡(マイクロバブル)としては、その粒径が、好適には、0.1ミクロン〜10ミクロン程度の範囲、更に好適には1ミクロン〜10ミクロン程度の範囲のものが例示される。微細な気泡を形成するための気体の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、空気等の酸素を含む気体が用いられ、それ以外の気体としては、例えば、アルゴン、酸素、アルゴンと酸素の混合気体、キセノンが例示される。
液体中へ微細な気泡を添加するには、例えば、微細な気泡を、超音波音源の近傍において音波伝播方向に対し側方より添加することが好適である。それによって、超音波場内に、キャビテーションの増加に有利な粒径の気泡を多数存在させることができる。また、微細な気泡を形成する装置としては、上記粒径の範囲の気泡を生成することが可能な任意の装置を用いることができるが、好適には、例えば、圧力気体と液流動の混合による旋回流を細孔から噴出させることにより微細な気泡を生成する、バブリング用エアレータが例示される。
後記する実施例に示すように、超音波照射下の液中での酸化剤の生成について、ルミノール水溶液の酸化反応に伴う発光量を測定して検討した。その結果、微細な気泡を超音波場に添加することにより酸化剤の生成が増加すると共に、液体中の溶存気体濃度を制御すること及び/又は液体を流動させることにより、更に酸化剤の生成が増加することが観察され、それによって、化学反応量の増加、促進が可能であることが判明した。
表1に、溶存空気濃度を92%に制御した液体に超音波照射を行った際の発光量(酸化剤の生成量に比例する値である。)を基準値1として、液流動の有無、及び微細な気泡の添加の有無について、異なる溶存空気濃度の下で発光量を測定した結果を示す。それによると、液体中の溶存空気濃度が低下するに伴い、酸化剤の生成量が増加し、溶存濃度を74%とすると、2.7倍の酸化剤を生成する。また、液体を流動させることにより酸化剤の生成量が増加し、液流動のない場合に比較して、2.3〜3.6倍の酸化剤を生成する。更に、微細な気泡を添加すると共に、液体を流動させ、液体中の溶存空気濃度を制御する条件下では、酸化剤の生成量は3.1〜4.3倍に増加することが判明した。
液体中の溶存気体濃度については、一般に、液体中に溶存する気体濃度が高いほどキャビテーション気泡は発生しやすくなるが、過剰に発生した気泡は超音波の伝搬を阻害するため、液体中の気体濃度を適切な値に制御することが好適である。液体中の溶存気体濃度の範囲としては、例えば、20%以上〜100%未満が好適であり、更に好適な範囲は40%以上〜100%未満である。
浴槽中の液体を流動させることにより、液流動が気泡同士の合体を阻害して気泡間距離を適度に保つことが可能となり、個々の気泡の膨張圧縮に際し大きな圧縮比が得られ、高温高圧となる気泡数が増加すると考えられる。超音波場における該気泡数を適切な範囲とするためには、液体の流速を制御することが好適であり、その流速の範囲としては、例えば、100〜1000mL/minが好適であり、更に好適には100〜500mL/minである。
本発明において用いられる超音波としては、好適には、20kHz〜2MHz域の周波数、更に好適には20kHz〜600kHz域の周波数の超音波が例示される。超音波照射装置としては、液体中に超音波を照射してキャビテーションを形成させて、液体中に酸化剤を生成させることができるものであれば、任意の装置が用いられ、市販の装置から適宜選択することが可能である。
本発明の酸化剤生成方法を実施するための装置の一例を、図1に示す。図1には、液体に超音波を照射して該液体中にキャビテーションを形成することにより酸化剤を生成する装置が示されている。該装置は、液体を収容する浴槽3、該浴槽中の液体に対し超音波を照射する手段1、気泡を浴槽中に添加する手段2及び/又は浴槽中の液体を流動させる手段(図示なし)を具備している。
本装置で用いる超音波照射手段としては、例えば、周波数141kHzのランジュバン振動子が例示されるが、これに制限されるものではない。また、超音波照射手段の設置位置については、例えば、図1に示すように、浴槽の底部に超音波振動子設けること、また、浴槽の相対する側面のそれぞれに超音波振動子を設けること、等が例示されるが、これらに制限されるものではない。
気泡を形成して、これを浴槽中の液体に添加する手段としては、例えば、図1に示す、液流動ポンプ、及び空気ポンプを有し、細孔から液体と共に気泡を浴槽中に噴出するバブリング用エアーレータが例示されるが、上記範囲の粒径を有する微細な気泡を生成することができるものであれば任意のものが用いられる。また、該手段は、微細な気泡が超音波場に添加されるように浴槽内に設置されていれば良いが、例えば、図1に示すように、音源近傍において音波伝搬方向に対して側面より微細な気泡を添加できるように設置するのが好適である。
また、浴槽中の液体に流動を与えるには、任意の市販ポンプ類、撹拌装置等を設置して行うことができ、液体の流量の調整は適宜な方法でなされる。また、液体中の気体濃度を制御するには、例えば、液体を密閉容器中に収容し、これを減圧下に撹拌することにより、液中の気体を除去することにより行われる。このとき、減圧の程度、撹拌の強さ、撹拌時間等を適宜調整して気体濃度が制御される。
本発明における化学反応の促進作用は、超音波照射下に微細な気泡を添加したことにより、増加した酸化剤の生成量と、その化学反応量の増加に基づくものである。本発明の化学反応促進方法により、例えば、環境汚染を引き起こすような有機化合物、とりわけ通常の空気酸化法や活性汚泥等による生物的処理法では分解を達成できないような難分解性化合物との反応が促進され、それらの化合物を無害化、又は分解することが可能となる。本発明は、環境浄化プロセス、具体的には、除草剤、殺虫剤等のような塩素含有有機物、種々の難分解性有機化合物等の無害化処理に威力を発揮する。また、本発明により、悪性細胞の無害化処理、及び新規物質を創製する反応を行うことが可能となる。
本発明では、超音波のキャビテーションの圧縮破裂時に生ずる高温高圧の反応場を、最適周波数範囲である100〜600kHz域の周波数の選択下に用いると共に、1〜10ミクロン程度の大きさの範囲にある微細な気泡を超音波場へ添加することで、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、酸素原子、オゾン等の各種酸化剤の生成を増加させることに特徴を有するものであり、それによって、酸化剤の生成と、化学反応の促進が可能となる。
また、本発明では、溶存気体濃度を低減することにより、音波伝搬過程での吸収散乱に伴う音圧振幅の低下を小さくでき、酸化剤の生成に寄与し得る、より多くのキャビテーション気泡の急激な膨張収縮を起こすことが可能となり、それによって、溶存気体濃度を低減した液体における酸化剤の生成を増加させることができる。また、本発明では、超音波の照射下の液体に液流動を付与することにより、超音波照射のみの場合に比べて、酸化剤生成の増加に伴う反応量の増加が観測され、更に、気泡を音源近傍において添加させることにより、著しい反応量の増加が観測される。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)超音波照射の下に、液体中へ微細気泡(マイクロバブル)を添加することにより、キャビテーションを増加させ、それに伴い、酸化剤の生成量を増加させることができる。
(2)超音波照射下の液体中へ微細気泡を添加することにより、キャビテーションを増加させ、酸化剤の生成量を増加させて、化学反応量を増加、促進することができる。
(3)液体中の溶存、気体濃度を低減すること及び/又は液流動を付加することにより、超音波照射下での酸化剤の生成を更に向上させることができる。
(4)従来の電解質による気泡安定化や、酸化力が期待できるオゾンガスを用いることなく酸化剤を効率良く生成させることができる。
(5)上記酸化剤生成の増加による化学反応促進作用を利用して、有害物質の分解あるいは無害化、汚染物質の除去、悪性細胞の無害化、材料創製等が可能となり、これらの方法を、環境浄化、洗浄、癌治療、粉体工業等の分野で応用することが可能となる。
(6)キャビテーション気泡の周辺への衝撃波伝搬やジェットの固体への打撃に起因する、物質輸送による溶解析出を促進することを利用した、従来法と比べて省エネかつ低環境負荷の新規な物質創製方法を提供することが可能となる。
(7)キャビテーション気泡の周辺への衝撃波伝搬やジェットの固体への打撃に起因して、浄化、洗浄、分散、乳化、混合、攪拌、流動の促進とともに、固体表面改質による反応性の付与もしくは向上が可能となる。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、超音波化学反応により生成した酸化剤が、ルミノールを酸化する際に発光する青色蛍光を、光電子倍増管を用いて測定し、その出力起電圧値により、生成した酸化剤の相対生成量を測定した。図1に、実験装置を示す。図1において、1は超音波振動子、2はバブリング用エアレータ(a:液、b:空気)、3は浴槽、4は集光レンズ、5は光電子増倍管、である。超音波の照射は、本多電子製ランジュバン振動子を、周波数141kHz、投入パワー33Wで駆動し、実施した。浴槽3に、3.1Lのルミノール水溶液を入れた。ここで、ルミノール水溶液は、250mM炭酸ナトリウム−2.5mMルミノールという濃度に調整した12.4mLの液に蒸留水を加えて3.1Lとして用いた。
溶存空気濃度の調整については、液を真空ポンプ駆動による減圧環境下に置くと共に、撹拌を与えて脱ガスを適度に行い、濃度を低減した。バブリング用エアレータ2において、液流動ポンプと空気ポンプにより、直径0.6mmの細孔から液と共に気泡を浴槽中へ噴出(バブリング)させた。浴槽3の水温は、27.5℃に合わせた。光電子倍増管5を用いて、超音波化学反応による酸化剤生成量に対応する音響化学発光量を、液流動の有無、気泡添加の有無について、異なる液溶存空気濃度の下で、光電子倍増管出力電圧値として測定した。図2に、その測定データを示す。ここでは、溶存酸素濃度は、溶存空気濃度に比例する値として測定している。液流動の有無、気泡添加の有無、液溶存空気濃度の差異による発光量増加率を見積もった。
表1に、各種条件と、超音波ありで液流動と気泡流れを与えない場合で、溶存空気量が飽和に近いとき(92%)に取得した測定値で規格化した値を示す。表1は、図2の各条件下におけるデータの平均値についてまとめたものである。
超音波照射下で、低溶存空気濃度との組み合わせにより、超音波のみの場合に比べ、2.7倍の高効率反応を得た。一般に、溶存ガス濃度が高いほどキャビテーション気泡は発生しやすくなるが、過剰に発生した気泡は、超音波伝搬を阻害するため、強力な超音波を適用する際に溶存気体を適度に低い濃度に調整すると、このような効果が現れる。
超音波照射下で、液流動の効果として、低溶存空気濃度との組み合わせにより、超音波のみの場合に比べ、3.6倍を得た。液の流動は、気泡同士の合体を阻害し、気泡間距離を適度に保つ効果があり、個々の気泡の膨張収縮に際し、大きな圧縮比が得られるため、高温高圧となる気泡数が増加し、反応量を増加できると考えられる。
超音波照射下で、液流動、微細気泡添加と、これらに伴う気泡流れの効果として、低溶存空気濃度との組み合わせにより、超音波のみの場合に比べ、4.3倍を得た。数ミクロンの気泡は、膨張収縮に際し、大きな圧縮比が得られ、高温高圧を実現できるため、このような気泡を多数添加することにより、反応サイトの増加、すなわち反応量の増加をもたらすことができると考えられる。付随して起こる気泡流れによる液撹拌により、液流動効果と同様の効果も期待することができる。
Figure 0004858957
本実施例では、気泡添加方向の調整による影響評価の検討を行った。図1と異なる配置として、液面から底面にある振動子へ向けてバブリングしてマイクロバブルを添加した。その結果、この場合には、効果がほぼ半減し、0.48倍となった。これは、大きな気泡が浴槽の中間的な高さで多数発生し、音波が液面近傍に設置した噴射口付近のマイクロバブルに効果的に到達せず、気泡の膨張収縮の能率を低下してしまうためと考えられる。したがって、図1の配置によるバブリングが好適であることが分かった。
以上詳述したように、本発明は、超音波照射による酸化剤生成方法、その装置、及び化学反応促進方法に係るものであり、液体に超音波を照射して該液体中に酸化剤を生成する際に、該液体中に微細な気泡を添加してキャビテーションを増加させることを特徴とする酸化剤の生成方法、及び増加した酸化剤による化学反応促進方法に係る新規技術を提供するものである。本発明は、従来技術のように電解質による気泡の安定化やオゾンガスを用いることなく、また、簡便な操作により、酸化剤の生成を増加させて、化学反応を促進することができる超音波化学反応技術を提供することを可能とするものである。
また、本発明は、超音波を応用した新しい技術の開発に利用され得る超音波化学反応技術を提供するものであって、環境浄化技術、洗浄技術、医療技術、新規物質の創製技術等に有用な新しい反応システムの構築を可能にするものとして高い技術的意義を有する。
気泡添加による酸化剤生成装置と化学反応検出に係るスキームを示す。 液流動や気泡による流れの有無、液溶存空気濃度の差異による音響化学発光量の変化を示す。図中、4プロセスの時間割は、(0)0〜27秒、(1)27〜57秒、(2)57〜92秒、(3)92〜120秒である。
符号の説明
1:超音波振動子
2:バブリング用エアレータ(a:液、b:空気)
3:浴槽
4:集光レンズ
5:光電子増倍管

Claims (6)

  1. 液体に超音波を照射して該液体中に酸化剤を生成させる酸化剤の生成装置において、該装置が、液体を収容する浴槽、浴槽中の液体に対して超音波を照射する手段、微細な気泡を浴槽中の超音波の音源近傍において音波伝播方向に対し側方より添加する手段、液体を流動させる手段、浴槽中に収容されている液体の溶存気体濃度を20〜74%の範囲に低減する減圧手段、を具備していることを特徴とする酸化剤生成装置。
  2. 請求項1に記載の酸化剤生成装置を利用して浴槽中の液体に対して、超音波照射、微細気泡添加、及び液体への流動付与を行い物質の処理を行う物質処理装置であって、
    物質の処理が、浄化、洗浄、分散、乳化、混合、撹拌、流動、又は固体表面改質による反応性の付与もしくは向上、であることを特徴とする上記処理装置。
  3. 請求項1に記載の装置を使用して、液体に超音波を照射して該液体中に酸化剤を生成させる酸化剤の生成方法であって、
    超音波照射時に該液体中の溶存気体濃度を20〜74%の範囲に低減、微細気泡(マイクロバブル)添加、液体への流動の付与により酸化剤生成を増加させること、その際に、微細気泡を、超音波の音源近傍において音波伝播方向に対し側方より添加することを特徴とする酸化剤生成方法。
  4. 酸化剤が、ヒドロキシラジカル、酸素原子、オゾン、及び/又は過酸化水素である、請求項3に記載の酸化剤生成方法。
  5. 照射する超音波の周波数が、20kHz〜2MHzである、請求項3又はに記載の酸化剤生成方法。
  6. 請求項3から5のいずれかに記載の酸化剤生成方法を利用して、液体中の酸化剤生成量を増加させて、該酸化剤が促進する化学反応量を増加させることを特徴とする化学反応促進方法。
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