JP4595764B2 - 洗浄方法および被洗浄物 - Google Patents
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この要請に応える技術として、水を主体とした洗浄液中に微細気泡(マイクロバブル)を発生させる技術が開発されている。
例えば、洗浄装置中に浸漬された被洗浄物を回転させることにより得られる相対速度によって、被洗浄物が気泡と衝突し、洗浄効率を高める方法がある(例えば特許文献1)。
また、浸漬槽の底部から微細気泡と洗浄液を攪拌しうる大きさの気泡とを交互に発生させ、微細な気泡表面に油を付着させ、そこに大きな泡を供給し浮力を与えて、油を水面に浮上させて洗浄する方法がある(例えば特許文献2)。
また、高圧容器内で、高圧容器内で生成された気体溶存水を洗浄水噴射系の洗浄水噴射ノズルから被洗浄体に噴射することにより、被洗浄体に対する洗浄水衝突時の衝撃力によって被洗浄体に付着している異物を剥離して除去するとともに、洗浄水に溶存している気体の分離によって発生した多数の気泡が被洗浄体に衝突して破裂した場合の衝撃力によって、被洗浄体に付着している異物を剥離して除去するようにした洗浄方法もある(例えば特許文献3)。
以下に具体的実施の形態に基づいて説明する。
図1は本発明の洗浄方法を説明するための図である。図において、ベンチュリタイプのマイクロバブル生成器3の気体導入部4、液体導入部5からそれぞれ例えば、空気と水を供給して生成した気泡6を洗浄槽2内に溜められた洗浄液9中に供給する。洗浄液9の表層には気泡6の集合した起泡部7が形成されるが、被洗浄物1の処理面はこの起泡部7の境界部8に接するように配置される。図2は従来の洗浄方法を説明する図であるが、従来は被洗浄物1を洗浄カゴ等に入れて、その処理面は気泡6の通過部に位置する。本発明の特徴は、従来気泡を含む洗浄が洗浄槽内で行われていたものを、気体と液体との境界部付近で行うことにあり、図1によって明確に示される。
無数のマイクロバブルを含む液体の場合には、多数の気泡6が一斉に上昇するために液体の上部に起泡部とよばれる層を形成する。本発明の洗浄の場合には図1に示すように液体部(洗浄液)9、起泡部7が存在する。図1において最も効率よく破泡が起こる位置は、起泡部7と気体が接する境界8である。したがって本発明の境界部8とは、本起泡部と気体との境目のことをいう。これにより既に記述したように破泡の衝撃力を利用した洗浄が可能となる。
図3(b)には本発明の起泡部と気体との境界部での洗浄メカニズムを示す。本境界部8では最も効率よく気泡が破泡6bし、衝撃力を発生させる。その衝撃力を利用して微細な凹部1aに沈み込んだ油脂などの汚れをあたかもかきだすような作用で、被洗浄物表面から除くことができ、洗浄度を向上させることができる。
また、洗浄液の循環を行いたい場合には循環ポンプを、また洗浄液の温度を高めたい場合には温調器を付属させればよい。
実施の形態1の洗浄装置、洗浄方法を用いた洗浄効果について従来技術と対比して説明する。図5は従来の液中洗浄、本発明の境界部(起泡部-気体の界面部)での洗浄の効果を示したもので、洗浄後の残油量を示したものである。従来の液中洗浄は、図2において、洗浄槽2側壁のマイクロバブル生成部3から4cmのところに被洗浄物1の処理面をマイクロバブル生成部3に対面するように固定して行った。本発明の実施においては図1に示すとおり、被洗浄物1の処理面をほぼ境界部、界面に配置して行った。なお、従来、本発明のいずれの実験条件としても、洗浄槽の容量35L,洗浄時の液温50℃、洗浄液の供給量は14 L/min、ガスの供給量は14L/minとした。また、気泡を微細化させる添加剤として酢酸を0.5wt%添加した。SUS316の平板に所定面積・所定量の油分、それぞれ疎水性油(ここでは日本ホートン社製の疎水切削加工油カットマックスを使用)、灯油、サラダ油、を塗布したものを被洗浄物として1分間洗浄した。洗浄後の被洗浄物の残留油分は、実験後に付着した油分を炭化水素系の溶剤に溶解させ、油分濃度計OCMA-300(堀場製作所製)を用いて測定した。測定された油分濃度の値より、部品1cm2あたりの残留油分(μg/cm2)を求めた。
また基板の材質に対しても検討を行ったステンレス以外に、真鍮、銅、鉄、アルミなどの金属系基板、塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル、ポリプロピレン、ポリビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ガラス、シリコン、ガリ砒素、酸化チタンなどの光触媒、セラミックス、超伝導体などの基板や基材についても同様の効果、すなわち従来の液中洗浄やシャワー洗浄よりも十分な洗浄効果を確認した。
以下、境界部での微細気泡の効果について説明する。洗浄条件は実施の形態2と同じ洗浄条件で、添加剤の有無と気泡発生の有無において洗浄効果を確認した。図6には微細気泡で洗浄した場合、微細気泡生成のための添加剤を含まない場合、また気泡を含まず添加剤のみで洗浄した場合の残油量の結果を示す。気泡を含む洗浄の場合、気泡を含まない洗浄よりも4倍以上洗浄度が向上した。さらに、添加剤を含み微細気泡による洗浄では添加剤を含まない気泡(数mmΦ以上)を用いた洗浄よりも5倍以上洗浄効果が高いことを確認した。なお、実施の形態2と同様にいずれの油に対しても効果を奏することを確認した。
なお、本発明の実施の形態で示した結果は、本洗浄条件によらず、たとえば液温、添加剤の種類・濃度、注入するガス量を変化させた場合にも同様の効果が得られた。
次に、被洗浄物を設置する位置ついて検討した。実施の形態1の本発明の洗浄原理の説明において、被洗浄物は境界部の界面に配置するのが気泡の破泡作用を受けやすいことを示したが、その界面近傍の位置について洗浄効果との関係を詳細に検討した。
図7には洗浄時の境界部を座標0とした場合の高さ方向の洗浄度変化を示す。図において0〜−1cmまでは起泡部、−1cm以下は液体部、0cm以上は気体部で洗浄したことを意味する。本結果より深さ方向に対する明確な洗浄度変化がわかる。境界部が最も洗浄度がよく、起泡部では徐々に洗浄度が低下する。さらに液体部では洗浄力は急速に失われる。液中では破泡の効果がなくなるためである。境界部に近い気体部(+1cm)では遠い箇所(+2cm)よりも洗浄度がよいのは、破泡による気泡の飛散によって衝撃力が伝播し、洗浄効果が得られているからである。境界部よりも十分遠い気体部では当然のことながらまったく洗浄効果は得られない。従って本実施の形態により本発明の洗浄方法においては、最適な位置が存在することがわかった。最適位置は無数の気泡を含む洗浄液において、液体の部分と気泡によって起泡する部分において、起泡部と気体との境界であり、この付近で洗浄することが最も望ましい。また境界部でなくとも起泡部で洗浄してもそれに近い洗浄効果が得られる。また、境界部から気体より若干上方であっても洗浄効果を得ることができる。添加剤の種類・濃度、注入するガス量を変化させた場合に起泡部の高さは変化するが、本実施の形態の洗浄位置は起泡部及び境界部上方1cm以内(起泡部もしくは洗浄液面の上方1cm以内)であり、この範囲であれば起泡部の高さに依存せず、同様の洗浄効果が得られる。
次に、気泡よりも微細な凹凸が存在する表面に付着した油脂汚れの除去結果について検討した。図8は、平均気泡径50μm(最小 20μm, 最大500μm)を用いた場合の被洗浄物の凹凸(表面粗さ:それぞれRaおよびRz)に対する洗浄度依存性を示す。RaおよびRzはそれぞれ算術平均粗さ、十点平均粗さの略称で、粗さ形状パラメータとして定JIS B0601-1994に定められている。Raは粗さ曲線(表面形状の曲線) の平均線から絶対値偏差の平均値、Rzは基準長さ毎の山頂の高い方から5点、谷底かの低い方から5点を選んだ場合の平均高さとして定義される。
Ra,Rzいずれの結果においても境界部で洗浄するほうが洗浄度は高くなった。また特徴的なことはRa, Rzの値が大きくなるほど液中と境界部での洗浄度の差が大きくなることである。これは図3のモデルで示したように、液中の洗浄では凹部が細く、深くなるほど気泡が作用できなくなり、その領域が洗浄面全体で増加するために洗浄度が悪化する。一方境界部では同様に粗さの影響は受けるものの、破泡による汚染物の除去効果は維持されており、徐々にしか洗浄度の悪化はみられない。このため表面が粗くなるほど両洗浄方法での洗浄度の差が顕著になるものと推測される。
上記実施の形態1〜5では境界部に浮上した気泡の破泡現象を用いることで洗浄効果を得た。さらに洗浄効率を向上させるためには、気泡を強制的に破泡させる手段を備えればよい。本実施の形態では気泡を効率よく破泡させる手段として超音波を作用させた。
図9には本発明の実施の形態で用いた超音波素子を備えた洗浄装置の構成図を示す。図中(a)は上面図、(b)は図中(a)の矢印方向からみた図である。図において、超音波発信器11に接続された超音波振動子12より石英棒13に超音波が伝播するように配置している。本装置では起泡部付近に洗浄槽をまたぐように一定間隔をおいて直径1〜2cmの石英棒13を設置してある。
さらに、超音波周波数は20kHz〜3MHzの範囲で効果があった。本実施の形態では石英棒を介して超音波を印加する方法をとったが、これに限らず起泡部に超音波を印加した場合であれば、効果を奏することができる。例えば、超音波素子自身を液面近傍に配置してもよいし、石英の代わりに超音波伝播物質である、ステンレスなどの金属製のもの、ポリプロピレン、ポリスチレン等の棒等を配置してもよい。
上記実施の形態における洗浄方法においては、被洗浄物から除去した油脂などの汚れの再付着をさせないことが重要である。起泡部の流動のない条件で洗浄をした場合には、活発な破泡除作用があっても、除去物が液面内を漂い、再度被洗浄物に対して付着してしまうことが危惧される。実際に流動のない条件では、残油量が飽和してしまい、目標レベルの高洗浄度を得ることができなかった。本実施の形態においては、被洗浄物から除去された油等の汚染物の再付着を防止する手段を備えたものである。
再付着を抑制するためには液面の流動性をもたせることが有効な手段となる。たとえば洗浄槽を少し傾斜させると液面は高いほうから低い方へと流動するので、除去した汚れ成分が自ずと基板面の外に運びだされる。境界部付近で水平方向の流れが生じるように液体の流れを制御した場合にも同様に基板への再付着防止が可能となる。
上記実施の形態1〜7においては、被洗浄物が平板の単純な形状を例にして基本的な特性について説明した。一般部品・精密洗浄においては3次元的に形状が複雑なものを洗う場合が多い。本実施の形態においては、これらの洗浄物を効率的に洗浄する方法について説明する。
このように気液界面の位置を制御することで、汚染物の再付着防止の効果もあるが、ポンプ19の近傍にフィルタを設け、除去物を回収するようにすると、再付着の防止効果が一層向上する。
なお、気体にオゾン等の酸化性ガスを用いた場合、オゾンガスとの反応性の高い物質との併用は避けることが好ましく、洗浄液や添加剤としてメタノールなどのアルコール系、アニオン・カチオン・ノニオン系界面活性剤、脂肪酸とその誘導体、グリセリンとその誘導体、アミン系化合物の使用は好ましくない。オゾンガス濃度や添加剤の濃度等注意を払う必要がある。
また上記実施の形態においてはいずれも油脂の汚れの除去を例示して説明したが、粒子汚れについても、破泡のエネルギーによって基板上や被処理物に付着した粒子を脱離させる作用や気泡表面への粒子の付着作用による基板や被処理物への再付着防止などの効果が期待されることは言うまでもない。
3 マイクロバブル生成部、 4 気体導入部、 5 液体導入部、
6、6a 気泡、 6b 破壊した気泡、 7 起泡部、
8 境界部、 9 洗浄液、 10 界面の上昇、
11 超音波発信器、 12 超音波振動子、 13 石英棒、
14 表面流体移動制御装置、 15 除去物の流れ方向、 16 オーバーフロー槽、
17 被洗浄物、 18 洗浄カゴ、 19 ポンプ、 20 予備槽。
Claims (5)
- 気泡発生手段によって洗浄液に気泡を発生させる工程と、
前記気泡を微細化させる添加剤を前記洗浄液に添加する工程と、
前記洗浄液の液面上の表層に前記気泡が集合する起泡部を形成する工程と、
被洗浄物の被処理面を前記起泡部にさらして前記気泡の破泡によって前記被洗浄物を洗浄する洗浄工程とを備えたことを特徴とする洗浄方法。 - 洗浄液の増減によって起泡部を上下に移動させることを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
- 被洗浄物の処理面が起泡部に晒されるように洗浄カゴを可動させることを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
- 気泡の径は1μmから500μmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄方法。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の洗浄方法によって洗浄された被洗浄物。
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