JP4487544B2 - 洗浄方法および被洗浄物 - Google Patents
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Description
しかしながら、この特許文献1の装置では、回転機構を必要とするため装置が複雑化し、高コストとなる。また、部品から脱離した油が、他の部品に再付着してしまうために、洗浄度が向上しないなどの問題があった。
しかしながら、この特許文献2の装置では、洗浄槽の下部から気泡を供給するだけなので、複雑な形状のワークの洗浄ができない。また、部品から脱離した油が他の部品に再付着し、洗浄度が確保できないなどの問題があった。
この発明による実施の形態1を図1から図3までについて説明する。図1は実施の形態1における洗浄装置の構成を示す断面図である。図2は実施の形態1における洗浄装置に用いるスロープを示す上面図である。図3は実施の形態1における洗浄結果を示す線図である。
その下には高い油分濃度を含んだオーバーフロー液(油溜槽7に溜った)中の油分を除去するために、油水分離機8があり、ppmオーダー以下の油分になった水のみがポンプ9によって再度洗浄槽1に送液される仕組みとなっている。また、微細気泡の生成には添加剤が必須となるため、添加剤注入部10が設けられている。
スロープ3は部品2の重さによって、数度から数10度下向きに傾き、部品2はスロープ3の傾きを伝って下向きに動く。一段目のスロープ3を伝いきった後、二段目のスロープ3という具合に、洗浄槽1の下部に向かって、徐々に落下していく。洗浄槽1の下部およびスロープ3から生成した微細気泡bが部品2に作用し、部品2表面の油を気泡b表面に吸着させて除去する。
界面に達した気泡は、水面ではじける。そして、一般的に水より比重の軽い油は水面上で油膜をはって存在するようになる。したがって、上記のように水面上に存在する油分濃度の高い液をオーバーフローとすることで、部品2から除去した油分は容易に洗浄槽1外へと運び出すことができることになる。
オーバーフローした洗浄液cは、油水分離機8を通過させることで、油分濃度を数ppmまで下げることが可能である。後段の油分検知器11によって油分をモニターし、数ppm以下となった洗浄液cのみをポンプ9によって洗浄槽1に戻すようにしてある。また、気泡bの微細化には添加剤を用いる必要があるので、添加剤注入部10を設け、適切な添加剤濃度を維持するようになっている。
ここでは、部品2の落下速度を制御する方法として、複数のすべり台を用いたが、これを1台にしてもよい。また、らせん構造にしても同様の効果を得ることが可能である。
図3では、比較例として、洗浄かごに100個の部品を入れ、洗浄かごを回転させながら、500秒洗浄した場合、また100個の部品を洗浄槽内で固定化させて、500秒洗浄した場合を示す。
なお、本実験で用いた洗浄時の液温50℃、洗浄液の供給量は14L/min、また、気泡を微細化させる添加剤として酢酸を0.5wt%添加した。洗浄後の部品の残留油分は、洗浄実験後の部品に付着した油分を炭化水素系の溶剤に溶解させ、堀場製作所製の油分濃度計OCMA−300を用いて測定した。測定された油分濃度の値より、部品1cm2あたりの残留油分(μg/cm2)を求めた。
図3より、この発明の装置を用いた場合、従来の洗浄方式を用いた場合よりも、同じ洗浄時間でありながらも、数倍も洗浄度を向上させることが確認された。
この実施例では、部品は5秒ごとに投入したが、洗浄時間は部品の形状や汚れ度合いなどに応じて任意に設定が可能である。
この発明による実施の形態2を図4について説明する。図4は実施の形態2における洗浄結果のpH依存性を示す特性線図である。
この実施の形態2において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1の構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。
さらに、微細気泡を用いた場合の洗浄度の検討を行った結果を示す。図4には洗浄液のpH依存性を、図5には温度依存性を示す。
図4から、pHをアルカリ側とすることで洗浄性を2倍向上させることが可能であることがわかった。本結果よりpHは高いほうが、洗浄度は向上することは容易に推察される。しかしながら、あまりに高いpHでは、部品に対するダメージ(錆の発生やエッチング)の発生、あるいは環境的な側面からも好ましくない。したがって、洗浄を行う場合のpHとしてはpH7〜12が好ましい。
この発明による実施の形態3を図5について説明する。図5は実施の形態3における洗浄結果の温度依存性を示す特性線図である。
この実施の形態3において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1または実施の形態2の構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。
図5に示した温度依存性では、水温を常温よりも少し上げて、ぬるま湯程度にすれば洗浄度が10倍以上に向上する効果があることがわかる。また、さらに水温をあげれば上げるほど洗浄度は高くなることがわかる。
しかしながら、あまりに高い温度では、ミストの問題などによる作業場の安全性、エネルギー消費の観点から好ましくない。好ましくは40度〜80度が適当である。
この発明による実施の形態4を図6ないし図8について説明する。図6は実施の形態4での微細気流洗浄における流速と洗浄結果の関係を示す特性線図である。図7は微細気流洗浄における流速が小さい場合の模式図である。図8は微細気流洗浄における流速が大きい場合の模式図である。
この実施の形態4において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1から実施の形態3までのいずれかの構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
このデータより、気泡を含んだ洗浄液(以下、気泡含有液という)を、高い流速で部品に対して作用させるほど、高い洗浄度が得られることがわかる。その効果は非常に大きく、流速を2.5倍にすることで、洗浄度は約15倍になる。
この発明についての検討の過程で、部品表面にスポット的に塗りつけて洗浄実験を行った後に、その表面に残留した油分が、時間をおくと徐々に広がっていく様子が観察された。そこで、その表面を光学顕微鏡で観察すると、μmオーダーの凹凸が存在し、その微細な溝に沿って油分が表面を広がっていくことがわかった。したがって、この微細な凹部に侵入した油分を除去する必要があることがわかった。
ではなぜ、凹凸よりも大きな気泡で高い洗浄度を得ることが可能であるのか。その気泡を用いた洗浄モデルを、図7および図8に示す。
数10μm以上の大きさがある通常状態の気泡bの大きさでは、図7に示したように、微細な凹凸の中に入り込むことは不可能で、底に入り込んだ油分を除去することはできない。
一方、流速が高い場合を図8に示す。流速が高い場合には、気泡bが部品2表面で変形して変形気泡bxとなったり、凹凸との作用で再微細化して微細化気泡byになったりする効果が生まれると考えられる。このために、気泡のサイズよりも小さな凹部への侵入が可能となり、効率よく油分を除去することが可能となることが考えられる。
この発明による実施の形態5を説明する。
この実施の形態5において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1から実施の形態4までのいずれかの構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。
実施の形態4によって、部品の洗浄度を高めるためには、μmオーダーの部品の凹部の底に付着した油を除去することが、洗浄度向上のポイントであることを実施の形態4で示した。
もう1つの考え方として、部品2の凹部の底に付着した油分を基板部品2の表面方向に移動させ、上方に浮いてきた油を、気泡bの表面に吸着させ、除去する方法が考えられる。そこで、実施の形態1で用いた洗浄装置(図1)において、各スロープ3に超音波素子を備えた洗浄装置を用いて超音波併用の効果を検討した。
洗浄槽1内にスロープ3を4段設け、各スロープ3上での部品の存在時間を15秒に調整した。超音波素子には38kHzで100Wの出力のものを各スロープ3に設置した。超音波5秒、プロペラ4の回転による気泡除去5秒、気泡洗浄5秒のシーケンスを繰り返した。超音波を併用した洗浄によって、同洗浄時間において約2倍の洗浄度の向上が確認された。
この発明による実施の形態6を図9について説明する。図9は実施の形態6における洗浄装置の構成を示す断面図である。
この実施の形態6において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1から実施の形態5までのいずれかの構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
この洗浄方式は、洗浄槽内に複数のプロペラ状の回転体12を設け、その回転体12に対して落下する部品2が接触することで、洗浄槽1内での部品2の落下速度を調節する仕組みとなっている。この装置においては、回転体12の本数、回転速度によって部品2の落下速度を調節することが可能となる。
また、さらに洗浄度を上げる方法として、この回転体12にブラシを付属させることがあげられる。ブラシは、部品との接触による落下速度の制御とともに、その接触による洗浄の効果もあわさるので、さらに効率のよい洗浄を行うことが可能となる。ブラシの素材としては、ポリビニルアルコールやポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの高分子系のブラシ、あるいはステンレスや金属合金などの金属製のものなどを単独、或いは複合的に用いることができる。また、ブラシの先端を非常に細くしておけば、μmオーダーの微細構造や非常に微細な加工穴の洗浄も効率よく行うことができる。これらは洗浄する部品の材質によって適当に選択することが可能である。
この発明による実施の形態7を図10について説明する。図10は実施の形態7における洗浄装置の構成を示す断面図である。
この実施の形態7において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1から実施の形態6までのいずれかの構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
このポール13は多孔性のものでできており、ポール13の全面から微細気泡を供給できる。部品2が落下する際にポール13に接触しながら、落下することによって落下速度を調節することが可能となる。
また、この方式の特長として、ポール13に当たって落下する際には、部品2はゆっくりと自転方向に回転しながら落下する。これによって下から上への流れをもった気泡含有液が部品2の全面にまんべんなく当たることが可能となり、高い洗浄度を得ることができる。ポール13の幅は、部品2の大きさよりも0.1mm〜10mm大きいことが望ましく、1mm〜5mmであることがさらに望ましい。
また、ポール13自体に切り込みや凹凸をつけることでさらに、所望の落下速度を得ることができる。
また、ポール13の形状は、部品2の形状、大きさ、目標とする洗浄度などに依存するものであり、最適化できるように、ポール13の位置は自由に動かせるなり、交換できることが望ましい。
この発明による実施の形態8を図11について説明する。図11は実施の形態8における洗浄装置の構成を示す断面図である。
この実施の形態8において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1から実施の形態7までのいずれかの構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
被洗浄物としての部品2が細長く棒状をしたものや、複雑な形状をしたものに対しては、実施の形態7の方式では、落下速度を制御することが困難が考えられる。
このような場合には、図11に示すように、ポール13の振動部14やポール13の可変機構部15を付加させるとよい。
ポール13を揺らすことによって、ポール13の途中で引っかかった部品2を落下させることができる。
また、ポール13の間隔幅を変化できるような可変機構部15を設けて、一時的に部品2を保持するようにすることで、落下速度の速すぎる部品に対して、洗浄時間を確保することが可能となる。
また、図11に示すように気泡含有液の加速部16や超音波印加部6を付加することで、さらに洗浄度の向上が可能となる。
実施の形態7および実施の形態8において、必ずしもポールの全面から気泡がでる必要はない。場合によってはポールからは気泡を出さず、気泡生成部は別に設けてもよい。
この発明による実施の形態9を図12について説明する。図12は実施の形態9における洗浄装置の構成を示す断面図である。
この実施の形態9において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1から実施の形態8までのいずれかの構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
図12は実施の形態9による部品洗浄装置の構成を模式的に示す図である。
洗浄槽1には仕切り板17が取り付けてあり、洗浄槽1は被洗浄物である部品2が落下する「洗浄部C」と洗浄後の部品2を外部に取り出す「取り出し部P」に2分割されている。
清浄化した部品2は気泡発生器18の間を通過し、洗浄部Cの底面に到達する。部品2の代表長さをD[cm]とすれば、気泡発生器18は洗浄部の底面から2D[cm]以上の離れた箇所に底面に平行に設置するのが望ましい。部品2は洗浄槽1の底面に徐々に蓄積するが、部品群の最大高さが底面から設定値まで到達したことを感知センサ19によって検知する。設定値としては2D[cm]程度が望ましい。
感知センサ19の信号は自動的に駆動機構20に伝達され、押し出し棒20aによって洗浄後の部品2fを部品かご21まで移動する。洗浄槽1の底面にある洗浄済み部品2fがすべて部品かご21に収まった後、駆動機構20は押し出し棒20aを移動前の位置まで戻す。押し出し棒20aの戻り動作と同時に駆動ローラー(図示せず)が作動し、滑車21aを介してひも21bによって部品かご21が吊り上げられて、洗浄済み部品2fは洗浄槽1の外部に取り出される。
一般的に油性成分の比重は1以下であるから、除去された油脂成分は洗浄部Cの液面付近に蓄積し油膜Fを形成する。油膜Fからなる洗浄液表面の油脂成分は清浄な洗浄液の供給によってオーバーフローし、一旦、油溜槽7に貯まる。その後、油水分離機8で数ppm以下まで油分濃度が下げられたのち、再度洗浄液として供給される。部品に付着した油脂成分の量にもよるが、液注入口の先端は洗浄部の液面から1〜15cmの深さにすることが望ましい。
一方、洗浄した部品2fの取り出し部Pには仕切り板17の下を通過して清浄な洗浄液しか導入されないので、洗浄した部品2fが再汚染されることはない。薬液導入に伴って取り出し部Pの液はオーバーフローし、薬液が樋を通じて排出される。
この発明による実施の形態10を図13について説明する。図13は実施の形態10における洗浄装置の構成を示す断面図である。
この実施の形態10において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1から実施の形態9までのいずれかの構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
小さい部品2や厚さが薄い部品2などは、洗浄槽1の底面に沈んだ後、押し出し棒20aで完全に部品かご21まで移動させることが困難である。そのような部品の洗浄に対しては、図13に示すように予め洗浄かご22に複数の部品を入れ、その洗浄かご22を実施の形態1で示したような構成を持つスロープ3やらせん部材を落下させる方法で洗浄することが効果的である。
洗浄槽1の底に到達したかご22の引き上げ方法としては、実施の形態9と同様に、押し出し棒20aで洗浄槽1の端部まで移動させ、滑車21aおよび駆動ローラー(図示せず)で吊り上げられる吊りひも21bの先端に設けたフック21cなどに引っ掛けて、引き上げる方法があげられる。
この発明による実施の形態11を図14について説明する。図14は実施の形態11における洗浄装置の構成を示す断面図である。
この実施の形態11において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1から実施の形態10までのいずれかの構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
洗浄槽1は、被洗浄物である部品2が落下する「洗浄部C」と洗浄後の部品2を外部に取り出す「取り出し部P」に分割するようなコの字型の形状をしている。
洗浄槽1の下方には磁性体付コンベア23があり、常磁性を示す成分が含まれた部品2を洗浄部Cから取り出し部Pを経由して洗浄槽1の外部に移動することができる。常磁性を示す物質としては、電子軌道の3d殻や希土類金属イオンの4f殻のように不完全殻をもった金属が挙げられる。
洗浄部Cでは、ベルトコンベア等によって搬送された部品2が断続的に上方から投入されており、洗浄部Cの液中を自由落下する。一方、洗浄部C下方からは複数の気泡発生器18で発生した微細気泡が上昇し、部品2に付着した油脂成分を部品2から除去する。清浄化した部品2は気泡発生器18の間を通過し、洗浄部Cの底面に到達する。
洗浄槽1の下方には磁性体付のコンベア23があり、設定した速度で回転している。洗浄部Cにおいて洗浄されて、底面に到達した部品2fは、磁性体付コンベア23の磁気的引力によって洗浄部Cから部品取り出し槽1Aに形成された取り出し部Pを経由して洗浄槽1の外部に移動される。
一方、部品2fの取り出し部Pには清浄な洗浄液しか導入されないので、洗浄した部品2fが再汚染されることはない。薬液導入に伴って取り出し部Pの液はオーバーフローし、薬液が樋を通じて排出される。
この発明による実施の形態12を図15について説明する。図15は実施の形態12における洗浄装置の構成を示す断面図である。
この実施の形態12において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1から実施の形態11までのいずれかの構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
図15にその概略図を示す。洗浄槽1の左上方、すなわち部品取り出し口の上方にシャワーノズル24が設けてある。このシャワーノズル24から所定量の水を放出することによって、部品取り出し部Pに設けられた部品取り出し口への油の流入を防止することが可能となる。シャワーノズル24を用いることによって、水面から引き上げられた部品2に付着した洗浄液をリンスすることも兼ねることが可能となる。
ここでは、シャワーノズル24を用いたが、微量な水に大量のガスを吹き込むことで、水を高速化させる2流体洗浄は、油の流入防止、部品のリンスの観点からより効果的である。さらに、シャワーノズル24による水シャワーのみでなく、エアシャワーを用いることも有効である。図15のシャワーノズル24の代わりにエアシャワー用のノズルを用いることで、部品取り出し口への油の混入を防ぐことも可能である。
この発明による実施の形態13を図16について説明する。図16は実施の形態13における洗浄装置の構成を示す断面図である。
この実施の形態13において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1から実施の形態12までのいずれかの構成および方法と同一の構成内容および方法内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
実施の形態9〜13において、それぞれ実際の部品の取り出しを行い確認した。比較例として実施の形態9(図12)において、仕切り板のない状態で部品をひきあげ、部品に付着した油分を測定した。表1に結果を示す。
表1からわかるように、この発明による実施の形態では、いずれも部品を再付着なしにきれいなままで取り出せた。これに対して、比較例では10倍以上高い残留油分濃度であった。
このように、実施の形態9〜13が、洗浄槽の底部からの部品の取り出し方法として有効であることが検証できた。
溶剤を用いた洗浄方法は、溶剤自身が油の強い溶解力を有するので、部品同士の重なりあいや微細構造を有する部品に対しても、溶剤が入り込む隙間が少しでもあれば、脱脂することが可能であった。ただし、こられは前記ですでに述べたように、環境およびコストなどに問題がある。
これに対して、気泡を用いた洗浄方法における最大の課題は、気泡の作用した部分のみしか清浄化できないことである。微細気泡といえども、一般的には数10μm以上の大きさを有する。このため、多数の部品を洗浄かごなどに入れて一括で洗浄する方法では、必ず部品同士が密に重なった部分ができるために、気泡を個々部品の隅々にまで作用させることができなかった。また部品同士が密につまっているために、せっかく部品表面から油を脱離させても、他の部品に再付着してしまう。したがって、従来の洗浄方法では、油の脱離と再付着という最も重要な機能のどちらともに問題を抱えていたことになる。
この発明において、部品を洗浄槽の中に投入し、何の工夫もなく自由落下させたただけでは、殆どの場合において十分な洗浄度が得られない。これは、殆どの部品は鉄あるいはステンレス製であり、水よりも比重がかなり大きいために、水中での落下速度は一般的に非常に速いためである。現実的な深さをもつ洗浄槽を用いた場合には、数秒で洗浄槽の底に到達してしまう。水面から水底につくまでの洗浄時間が短すぎるために、十分な洗浄度を得ることが難しい。十分な洗浄度を達成するために、洗浄槽の深さを数10mにするのは現実的ではない。そこで、この発明においては、この課題を解決するために、水中での部品の落下速度を制御(一般的には遅くする)する手段を備えている。これらの工夫によって、個々の部品に対する洗浄時間を制御することが可能なり、要求される洗浄度を確保することが可能となる。
また、もう1つの工夫ポイントとして、洗浄槽の底に沈んだ部品の取りだし方法があげられる。この発明の特徴は、洗浄終了後の部品を油分濃度が最も低い洗浄槽の底に沈ませることで、清浄化後の部品表面への油の再付着を抑制することである。しかし、洗浄槽の底に沈んだ部品を単純に引き上げたのでは、油分濃度が最も高い(油膜がはった状態の)水面を通過することになり、脱離した油の再付着を招いてしまう。そこで、槽の底に沈んだ部品の取りだし方法に工夫を加えている。
また、さらに、この発明においては、気泡洗浄において非常に重要なことを見出した。それは、部品の清浄度は、気泡を含んだ洗浄液の流速に大きく依存するということである。気泡洗浄の検討過程において、次の2点が明らかとなっていった。1)部品表面には、気泡の直径よりも1桁以上小さいμmオーダーの凹凸が無数に存在する。2)気泡は流速をあげることで、部品表面で変形、或いは再微細化を行う。
したがって、部品表面の凹凸よりも1桁以上大きい気泡をいくら作用させ続けても、凹部に付着した油を除去することはできない。しかし、2)の効果を用いることで、気泡直径よりも小さな構造付着した油を除去することも可能となる。
そこで、この発明では、気泡を含んだ洗浄液の流速を高める手段を具備することを特徴とする洗浄方法を見出したものである。
Claims (6)
- 洗浄槽の洗浄液中に被洗浄物を浸漬させる工程と、
前記洗浄液に添加剤を注入する添加剤注入工程と、
前記添加剤によって前記洗浄液中に球状となる微細気泡を生成する気泡発生工程と、
前記微細気泡を含んだ前記洗浄液を浸漬させた被洗浄物に対して流速が20cm/sec以上かつ55cm/sec以下で衝突させ前記微細気泡を前記被洗浄物の表面で変形または再微細化して洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする洗浄方法。 - 微細気泡は2桁から3桁のμmサイズの気泡であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
- 洗浄液の温度は40℃から80℃としたことを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄方法。
- 洗浄液のpHは7から12としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄方法。
- 洗浄槽からオーバーフローした洗浄液から油分を取り除く油水分離工程と、
前記油水分離工程を通過した前記洗浄液を前記洗浄槽にポンプを用いて戻す工程とを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の洗浄方法。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載の洗浄方法によって洗浄された被洗浄物。
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